(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(54)【発明の名称】バイオマスの糖化及び発酵によるセルロース系エタノール生産システム及び方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20240206BHJP
C12M 1/02 20060101ALI20240206BHJP
C12P 7/10 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
C12M1/00 D
C12M1/02 A
C12P7/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549920
(86)(22)【出願日】2022-05-10
(85)【翻訳文提出日】2023-08-17
(86)【国際出願番号】 CN2022092087
(87)【国際公開番号】W WO2023092956
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】202111416152.6
(32)【優先日】2021-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520401745
【氏名又は名称】浙江▲華▼康葯▲業▼股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG HUAKANG PHARMACEUTICAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】胡 昌輝
(72)【発明者】
【氏名】羅 家星
(72)【発明者】
【氏名】李 勉
(72)【発明者】
【氏名】廖 承軍
(72)【発明者】
【氏名】楊 武龍
(72)【発明者】
【氏名】厳 良聡
(72)【発明者】
【氏名】甄 ▲ニー▼
(72)【発明者】
【氏名】陳 蘭蘭
【テーマコード(参考)】
4B029
4B064
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB01
4B029BB16
4B029CC01
4B029DA04
4B029DF01
4B029DF02
4B029DF03
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4B029DG06
4B029FA12
4B029GB03
4B064AC03
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4B064CC06
4B064CC07
4B064CC12
4B064CC22
4B064CD22
4B064CE01
4B064DA16
(57)【要約】
本発明は、バイオマス原料の酵素分解反応用の反応器Aと、バイオマス原料の発酵反応用の反応器Bと、反応器Bからの材料を貯蔵するための貯蔵タンクと、バイオマス原料の発酵反応で生成されるセルロース系エタノールを収集するための収集タンクと、を含むバイオマスの糖化及び発酵によるセルロース系エタノール生産システムに関する。反応器Aは、反応器B、貯蔵タンク、及び収集タンクにそれぞれ連通しており、反応器Bは貯蔵タンクに連通している。本発明はまた、該システムを用いたセルロース系エタノール製造方法を開示する。本発明は、バイオマス原料に酵素分解糖化、発酵及びエタノール抽出の循環工程を、間隔をおいて複数回行うことで、エタノールの蓄積による酵素分解及び発酵の阻害を効果的に低下させ、セルロース系エタノールの転化率を向上させ、しかも、貯蔵タンクが設けられることにより、1つのシステムにおいて2バッチの材料を同時に処理することができ、セルロース系エタノールの生産効率を大幅に高める。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスの糖化及び発酵によるセルロース系エタノール生産システムであって、
バイオマス原料の酵素分解反応用の反応器Aと、バイオマス原料の発酵反応用の反応器Bと、バイオマス原料の発酵反応で生成されたセルロース系エタノールを収集するための収集タンクと、を含み、反応器A及び反応器Bのそれぞれに酵素分解供給管及び発酵供給管が個別に設けられ、反応器Aの排出口は設けられた発酵配管を介して反応器Bの投入口に連通し、発酵配管にはダイヤフラムポンプAが設けられ、反応器Bの排出口は設けられた排出配管を介して反応器Aの投入口に連通し、排出配管にはダイヤフラムポンプB及び第1排出管が設けられ、第1排出管はダイヤフラムポンプBよりも後に位置し、反応器Aの上部は、設けられたエタノール配管を介して収集タンクの投入口に接続され、反応器Aの外部には反応器Aを昇温、保温するための保温層が設けられ、反応器Aの上部におけるエタノール配管の接続部位にコイル型保温装置が設けられ、コイル型保温装置及び保温層は、それぞれ、設けられた熱水管を介して熱水タンクに順次連通しており、熱水管に遠心力ポンプが設けられる、ことを特徴とするバイオマスの糖化及び発酵によるセルロース系エタノール生産システム。
【請求項2】
排出配管には、貯蔵タンク、ダイヤフラムポンプC及び第2排出管がさらに設けられ、貯蔵タンクは、第1排出管よりも後に位置し、反応器Bからの材料を貯蔵するために使用され、第2排出管はダイヤフラムポンプCよりも後に位置する、ことを特徴とする請求項1に記載のバイオマスの糖化及び発酵によるセルロース系エタノール生産システム。
【請求項3】
前記収集タンクの頂部におけるエタノール配管の接続部位に、セルロース系エタノール蒸気を凝結するためのエタノール冷却装置が設けられる、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のバイオマスの糖化及び発酵によるセルロース系エタノール生産システム。
【請求項4】
前記反応器Bの外部に、反応器B内の発酵材料を降温するための発酵冷却装置が設けられる、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のバイオマスの糖化及び発酵によるセルロース系エタノール生産システム。
【請求項5】
前記反応器A及び反応器Bのそれぞれの内部に、撹拌装置が設けられる、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のバイオマスの糖化及び発酵によるセルロース系エタノール生産システム。
【請求項6】
バイオマスの糖化及び発酵によるセルロース系エタノール生産方法であって、請求項1~5のいずれか1項に記載のバイオマスの糖化及び発酵によるセルロース系エタノール生産システムを使用しており、
バイオマス原料をドライベースで15%~20%の含有量で濃度0.1mol/L、pH 5.0~6.0のクエン酸緩衝溶液に加え、次に、ドライベースの4%~6%を占めるセルラーゼを加え、製造したバイオマス原料を酵素分解供給管を介して反応器Aに加えるステップ1と、
反応器Aの温度を酵素分解反応温度Tに維持して、反応器A内の材料のpH値を維持し、撹拌しながら反応器A内の材料に1回目の酵素分解反応を10h~14h行うステップ2と、
反応器A内の酵素分解反応を受けた材料を発酵配管を介して反応器Bに送り、発酵供給管を介して反応器B内へ0.1質量%~1質量%の発酵菌株を添加し、発酵温度を発酵菌株に適切な発酵温度に制御して、撹拌しながら反応器B内の材料に1回目の発酵反応を10h~14h行うステップ3と、
1回目の発酵反応が終了した後、反応器B内の材料を排出配管を介して反応器Aに送り、材料の発酵により生成されたセルロース系エタノールを反応器A中で蒸発させてセルロース系エタノール蒸気にし、セルロース系エタノール蒸気をエタノール配管を介して収集タンクに流入させて、セルロース系エタノールに凝結するステップ4と、
ステップ2、ステップ3及びステップ4を繰り返し、同バッチの材料を反応器A及び反応器Bのそれぞれにおいて1サイクル運転を4~6サイクル行い、反応器Bで終了させ、最後に、第1排出管を介してシステムから排出するステップ5と、を含む、ことを特徴とするバイオマスの糖化及び発酵によるセルロース系エタノール生産方法。
【請求項7】
バイオマスの糖化及び発酵によるセルロース系エタノール生産方法であって、
請求項2~5のいずれか1項に記載のバイオマスの糖化及び発酵によるセルロース系エタノール生産システムを使用しており、
バイオマス原料を、ドライベースで15%~20%の含有量で、濃度0.1mol/Lのクエン酸緩衝溶液に加え、次に、ドライベースの4%~6%を占めるセルラーゼを加え、クエン酸緩衝溶液のpHを5.0~6.0に維持し、製造済みの第1バッチの材料を、酵素分解供給管を介して反応器Aに加えるステップIと、
反応器Aの温度を酵素分解反応温度Tに維持して、材料のpH値を維持し、撹拌しながら反応器A内の第1バッチの材料に1回目の酵素分解反応を10h~14h行うステップIIと、
反応器A内で酵素分解反応を受けた第1バッチの材料を、発酵配管を介して反応器Bに送り、発酵供給管を介して反応器B内へ0.1質量%~1質量%の発酵菌株を添加し、発酵温度を発酵菌株に適切な発酵温度に制御し、撹拌しながら反応器B内の第1バッチの材料に1回目の発酵反応を10h~14h行い、
反応器A内の酵素分解反応を受けた第1バッチの材料をすべて排出した後、ステップIとステップIIを繰り返し、反応器A内へ第2バッチの材料を添加し、第2バッチの材料を反応器A内で酵素分解反応させるステップIIIと、
1回目の発酵反応が終了した後、反応器B内の第1バッチの材料を、排出配管を介して貯蔵タンクに送って仮貯蔵し、反応器B内の第1バッチの材料をすべて排出した後、ステップIIIを繰り返して、反応器Aの第2バッチの材料を、発酵配管を介して反応器Bに送って発酵反応を行うステップIVと、
反応器Aの第2バッチの材料をすべて排出した後、貯蔵タンクに仮貯蔵して、第1バッチの材料を排出配管を介して反応器Aに送り、さらにステップIIを行い、第1バッチの材料の発酵により生成されたセルロース系エタノールを反応器A中で蒸発させてセルロース系エタノール蒸気にし、セルロース系エタノール蒸気をエタノール配管を介して収集タンクに送って、セルロース系エタノールに凝結し、
貯蔵タンク内の第1バッチの材料をすべて排出した後、ステップIVを繰り返し、反応器B内の第2バッチの材料を排出配管を介して貯蔵タンクに送って仮貯蔵するステップVと、
ステップII~ステップVを繰り返し、2バッチの材料のそれぞれに対して反応器A及び反応器Bにおいて2サイクル運転をそれぞれ4~6サイクル行い、それぞれ反応器Bにおいて終了させ、最後に、2バッチの材料を第1排出管を介してシステムから順次排出するステップVIと、を含む、ことを特徴とするバイオマスの糖化及び発酵によるセルロース系エタノール生産方法。
【請求項8】
酵素分解反応温度Tは、発酵菌種の生存率が80%以上の最高温度である、ことを特徴とする請求項6又は7に記載のバイオマスの糖化及び発酵によるセルロース系エタノール生産方法。
【請求項9】
酵素分解反応温度Tは、濃度0.1mol/Lのクエン酸緩衝溶液を用いて試験系を配置し、それに100g/Lグルコース、1質量%の発酵菌株を加え、それぞれ40℃、41℃、42℃、43℃、44℃、45℃、46℃、47℃、48℃、49℃、50℃の条件で12hインキュベートし、プレートカウント法を利用して発酵菌株の生菌数を計数し、12h後の生菌生存率が80%の最高温度を酵素分解反応温度Tとする方法によって測定される、ことを特徴とする請求項6又は7に記載のバイオマスの糖化及び発酵によるセルロース系エタノール生産方法。
【請求項10】
酵素分解反応に使用されるセルラーゼはCellic CTec 2である、ことを特徴とする請求項6又は7に記載のバイオマスの糖化及び発酵によるセルロース系エタノール生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース系エタノール製造の技術分野に属し、特にバイオマスの糖化及び発酵によるセルロース系エタノール生産システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
持続可能で汚染のないエネルギーの開発は技術発展のトレンドで、農業生産では毎年大量のわらやトウモロコシ穂軸などのリグノセルロース廃棄物が発生している。リグノセルロース材料は、セルロース、ヘミセルロース、リグニン及び少量の灰分を主成分とし、セルロース成分はセルラーゼによる酵素分解糖化によりグルコースを得ることができるが、このグルコースは生物発酵によりクリーンな燃料とすることができるセルロース系エタノールを製造することができる。
【0003】
現在、バイオマス原料からセルロース系エタノールを生産するプロセスにはボトルネックが多い。セルロース系エタノールを生産するプロセスは、バイオマスの前処理、セルラーゼによる酵素分解、及びグルコース発酵を主に含む。その中で、セルラーゼによる酵素分解糖化プロセスでは、酵素分解系の固形分を高める過程において生成物グルコースが阻害するという問題がその難問であり、特に酵素分解後期に、放出された単量体グルコース濃度が高くなり、セルラーゼ活性に対する阻害が更に強くなり、このようなことは、全体の酵素分解効率の低下を招き、セルロース酵素分解の転化効率の低下を招く。
【0004】
酵素加水分解における生成物阻害の問題を克服するために、現在最も広く応用されている技術は、グルコースがセルラーゼにより酵素分解されて放出される過程で、微生物によってセルロース系エタノールに発酵されることで、生成物阻害を緩和する同期糖化発酵(SSF)である。セルラーゼによる酵素分解とグルコース発酵の2つの工程を1つにした。しかし、いくつかの問題が存在し、現在よく見られる高性能の市販セルラーゼの最適な反応温度は通常45℃以上であり、よく見られるエタノール発酵菌株、例えばサッカロマイセス・セレビシエなど、菌株の最適な発酵温度は35℃であり、45℃では、エタノール発酵菌株は成長してエタノールを生産することができないだけでなく、アポトーシスが生じやすい。同期糖化発酵プロセスは、酵素分解糖化と発酵の最適条件を両立することができない。また、生産したエタノールはセルラーゼに対しても一定の阻害作用があり、酵素分解と発酵効率のいずれも影響を受ける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする技術的課題は、セルロース酵素分解プロセスとエタノール発酵プロセスを併せて間欠式酵素分解発酵プロセスとすることにより、生成物グルコースがセルラーゼタンパク質活性を阻害するという問題を解決し、セルロース系エタノールの産量を向上するバイオマスの糖化及び発酵によるセルロース系エタノール生産システム及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下のように達成される。バイオマス原料の酵素分解反応用の反応器Aと、バイオマス原料の発酵反応用の反応器Bと、バイオマス原料の発酵反応で生成されたセルロース系エタノールを収集するための収集タンクと、を含み、反応器A及び反応器Bのそれぞれに酵素分解供給管及び発酵供給管が個別に設けられ、反応器Aの排出口は設けられた発酵配管を介して反応器Bの投入口に連通し、発酵配管にはダイヤフラムポンプAが設けられ、反応器Bの排出口は設けられた排出配管を介して反応器Aの投入口に連通し、排出配管にはダイヤフラムポンプB及び第1排出管が設けられ、第1排出管はダイヤフラムポンプBよりも後に位置し、反応器Aの上部は設けられたエタノール配管を介して収集タンクの投入口に接続され、反応器Aの外部には反応器Aを昇温、保温するための保温層が設けられ、反応器Aの上部におけるエタノール配管の接続部位にコイル型保温装置が設けられ、コイル型保温装置及び保温層は、それぞれ、設けられた熱水管を介して熱水タンクに順次連通しており、熱水管に遠心力ポンプが設けられるバイオマスの糖化及び発酵によるセルロース系エタノール生産システムを提供する。
【0007】
具体的には、酵素分解供給管は、反応器A内へ酵素分解可能なバイオマス原料、酸液及び酵素分解料などの酵素分解材料を添加するために使用される。発酵供給管は、反応器B内へ発酵菌株などの発酵材料を添加するために使用される。バイオマス原料は、わらや農業残留物を含み、よく使用されるバイオマス原料は、トウモロコシの茎や葉、トウモロコシ穂軸、バガスなどを含む。エタノール配管は、反応器A内で発酵させたバイオマス原料から蒸発させたセルロース系エタノール蒸気を搬送するために使用される。
【0008】
さらに、排出配管には、貯蔵タンク、ダイヤフラムポンプC及び第2排出管がさらに設けられ、貯蔵タンクは、第1排出管よりも後に位置し、反応器Bからの材料を貯蔵するために使用され、第2排出管はダイヤフラムポンプCよりも後に位置する。
【0009】
本発明は以下のように達成される。前記のバイオマスの糖化及び発酵によるセルロース系エタノール生産システムを使用しており、
バイオマス原料をドライベースで15%~20%の含有量で濃度0.1mol/L、pH 5.0~6.0のクエン酸緩衝溶液に加え、次に、ドライベースの4%~6%を占めるセルラーゼを加え、製造したバイオマス原料を酵素分解供給管を介して反応器Aに加えるステップ1と、
反応器Aの温度を酵素分解反応温度Tに維持して、反応器A内の材料のpH値を維持し、撹拌しながら反応器A内の材料に1回目の酵素分解反応を10h~14h行うステップ2と、
反応器A内の酵素分解反応を受けた材料を発酵配管を介して反応器Bに送り、発酵供給管を介して反応器B内へ0.1質量%~1質量%の発酵菌株を添加し、発酵温度を発酵菌株に適切な発酵温度に制御して、撹拌しながら反応器B内の材料に1回目の発酵反応を10h~14h行うステップ3と、
1回目の発酵反応が終了した後、反応器B内の材料を排出配管を介して反応器Aに送り、材料の発酵により生成されたセルロース系エタノールを反応器A中で蒸発させてセルロース系エタノール蒸気にし、セルロース系エタノール蒸気をエタノール配管を介して収集タンクに流入させて、セルロース系エタノールに凝結するステップ4と、
ステップ2、ステップ3及びステップ4を繰り返し、同バッチの材料を反応器A及び反応器Bのそれぞれにおいて1サイクル運転を4~6サイクル行い、反応器Bで終了させ、最後に、第1排出管を介してシステムから排出するステップ5と、を含む、セルロース系エタノール生産方法をさらに提供する。
【0010】
本発明は以下のように達成される。前記バイオマスの糖化及び発酵によるセルロース系エタノール生産システムを使用しており、
バイオマス原料を、ドライベースで15%~20%の含有量で、濃度0.1mol/Lのクエン酸緩衝溶液に加え、次に、ドライベースの4%~6%を占めるセルラーゼを加え、クエン酸緩衝溶液のpHを5.0~6.0に維持し、製造済みの第1バッチの材料を、酵素分解供給管を介して反応器Aに加えるステップIと、
反応器Aの温度を酵素分解反応温度Tに維持して、材料のpH値を維持し、撹拌しながら反応器A内の第1バッチの材料に1回目の酵素分解反応を10h~14h行うステップIIと、
反応器A内で酵素分解反応を受けた第1バッチの材料を、発酵配管を介して反応器Bに送り、発酵供給管を介して反応器B内へ0.1質量%~1質量%の発酵菌株を添加し、発酵温度を発酵菌株に適切な発酵温度に制御し、撹拌しながら反応器B内の第1バッチの材料に1回目の発酵反応を10h~14h行い、
反応器A内の酵素分解反応を受けた第1バッチの材料をすべて排出した後、ステップIとステップIIを繰り返し、反応器A内へ第2バッチの材料を添加し、第2バッチの材料を反応器A内で酵素分解反応させるステップIIIと、
1回目の発酵反応が終了した後、反応器B内の第1バッチの材料を、排出配管を介して貯蔵タンクに送って仮貯蔵し、反応器B内の第1バッチの材料をすべて排出した後、ステップIIIを繰り返して、反応器Aの第2バッチの材料を、発酵配管を介して反応器Bに送って発酵反応を行うステップIVと、
反応器Aの第2バッチの材料をすべて排出した後、貯蔵タンクに仮貯蔵して、第1バッチの材料を排出配管を介して反応器Aに送り、さらにステップIIを行い、第1バッチの材料の発酵により生成されたセルロース系エタノールを反応器A中で蒸発させてセルロース系エタノール蒸気にし、セルロース系エタノール蒸気をエタノール配管を介して収集タンクに送って、セルロース系エタノールに凝結し、
貯蔵タンク内の第1バッチの材料をすべて排出した後、ステップIVを繰り返し、反応器B内の第2バッチの材料を排出配管を介して貯蔵タンクに送って仮貯蔵するステップVと、
ステップII~ステップVを繰り返し、2バッチの材料のそれぞれに対して反応器A及び反応器Bにおいて2サイクル運転をそれぞれ4~6サイクル行い、それぞれ反応器Bにおいて終了させ、最後に、2バッチの材料を第1排出管を介してシステムから順次排出するステップVIと、を含む、セルロース系エタノール生産方法をさらに提供する。
【発明の効果】
【0011】
従来技術と比べて、本発明のバイオマスの糖化及び発酵によるセルロース系エタノール生産システム及び方法は以下の特徴を有する。
1、バイオマス原料を高固形分で酵素分解して発酵する過程において、本発明の方法は、酵素分解生成物である発酵可能なグルコースが一定濃度まで蓄積された後に、発酵菌種を利用してグルコースを発酵させてセルロース系エタノールを生成することができ、これにより、グルコースの蓄積によるセルラーゼ活性阻害の問題を解決する。
【0012】
2、セルロース酵素分解プロセス、発酵プロセス及びエタノール抽出プロセスの3つを一体化して、バイオマス原料のそれぞれに対して酵素分解糖化、発酵及び抽出エタノールの循環プロセスを間隔をおいて複数回行うことで、エタノール蓄積による酵素分解や発酵への阻害を低減させ、セルロース系エタノールの転化率を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のバイオマスの糖化及び発酵によるセルロース系エタノール生産システムの第1構造の原理概略図である。
【
図2】本発明のバイオマスの糖化及び発酵によるセルロース系エタノール生産システムの第2構造の原理概略図である。
【
図3】グルコース及びエタノールを外添した酵素分解系のグルコースの放出濃度の経時変化図である。
【
図4】サッカロマイセス・セレビシエの耐熱性試験における各温度での生存率の概略ヒストグラムである。
【
図5】ザイモモナス・モビリス耐熱性試験における各温度での生存率の概略ヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明が解決しようとする技術的課題、技術的解決手段及び有益な効果をより明確にするために、以下では、図面及び実施例を参照して、本発明についてさらに詳細に説明する。なお、ここで説明される特定実施例は本発明を解釈するために過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0015】
図1を参照して、本発明のバイオマスの糖化及び発酵によるセルロース系エタノール生産システムの第1実施例が示されている。図における矢印に示される方向はシステム内の材料、例えばバイオマス原料、蒸気、冷凍水、凝結水、菌種、エタノールなどが搬送される方向である。該システムは、バイオマス原料の酵素分解反応用の反応器A1と、バイオマス原料の発酵反応用の反応器B2と、バイオマス原料の発酵反応で生成されたセルロース系エタノールを収集するための収集タンク4と、を含む。
【0016】
反応器A1及び反応器B2のそれぞれに酵素分解供給管11及び発酵供給管21が個別に設けられ、反応器A1の排出口は設けられた発酵配管6を介して反応器B2の投入口に連通する。発酵配管6にはダイヤフラムポンプA7が設けられ、反応器B2の排出口は設けられた排出配管8を介して反応器A1の投入口に連通する。排出配管8にはダイヤフラムポンプB9及び第1排出管16が設けられ、第1排出管16はダイヤフラムポンプB9よりも後に位置する。反応器A1の上部は設けられたエタノール配管10を介して収集タンク4の投入口に接続される。
【0017】
反応器A1の外部には反応器A1を昇温、保温するための保温層12が設けられ、反応器Aの上部におけるエタノール配管10の接続部位にコイル型保温装置13が設けられ、コイル型保温装置13及び保温層12は、それぞれ、設けられた熱水管14を介して熱水タンク5に順次連通しており、熱水管14に遠心力ポンプ15が設けられる。コイル型保温装置13は、反応器A1内で蒸発させたセルロース系エタノール蒸気が凝結せずに、収集タンク4に送られることを確保するために使用される。熱水タンク5内の熱水は、遠心力ポンプ15によって反応器A1の上部におけるコイル型保温装置13及び反応器A1の外部における保温層12に入って、反応器A1及びコイル型保温装置13の温度を制御する。
【0018】
前記収集タンク4の頂部におけるエタノール配管10の接続部位に、セルロース系エタノール蒸気を凝結するためのエタノール冷却装置19が設けられる。エタノール冷却装置19は、エタノール配管10内を通過するセルロース系エタノール蒸気を冷凍水で凝結して収集することを容易にする。
【0019】
前記反応器B2の外部に、反応器B2内の発酵材料を降温するための発酵冷却装置20が設けられる。
【0020】
前記反応器A1及び反応器B2のそれぞれの内部に、撹拌装置(図示せず)が設けられる。
【0021】
該実施例では、同バッチのバイオマス材料は、反応器A1と反応器B2との間で1サイクル流動を行う。
【0022】
図2を参照して、本発明のバイオマスの糖化及び発酵によるセルロース系エタノール生産システムの第2実施例が示されている。前記の実施例と比べて、該実施例では、排出配管8には貯蔵タンク3、ダイヤフラムポンプC17及び第2排出管18がさらに設けられ、貯蔵タンク3は、第1排出管16よりも後に位置し、反応器B2からの材料を貯蔵するために使用され、第2排出管18は、ダイヤフラムポンプC17よりも後に位置する。他の構造は第1実施例と同様であるので、それ以上言及しない。
【0023】
該実施例では、貯蔵タンク3が運転仮貯蔵タンクとして増設されているので、本発明のバイオマスの糖化及び発酵によるセルロース系エタノール生産システムでは、2バッチのバイオマス材料についての同時運転が可能になり、2バッチのバイオマス材料は、それぞれ、反応器A1と反応器B2との間で2サイクル流動を順次行う。
【0024】
本発明は、バイオマスの糖化及び発酵によるセルロース系エタノール生産方法をさらに開示し、この方法は、前記のバイオマスの糖化及び発酵によるセルロース系エタノール生産システムを採用しており、下記のステップ1~ステップ5を含む。
【0025】
ステップ1:バイオマス原料を、ドライベースで15%~20%(w/w)の含有量で、濃度0.1mol/L、pH 5.0~6.0のクエン酸緩衝溶液に加え、次に、ドライベースで4%~6%(w/w)のセルラーゼを加え、製造済みのバイオマス原料を、酵素分解供給管11を介して反応器A1に加える。
【0026】
ステップ2:反応器A1の温度を酵素分解反応温度Tに維持して、反応器A内の材料のpH値を維持し、撹拌しながら反応器A1内の材料に1回目の酵素分解反応を10h~14h行う。
【0027】
ステップ3:反応器A1内の酵素分解反応を受けた材料を、発酵配管6を介して反応器B2に送り、発酵供給管21を介して反応器B2内へ0.1質量%~1質量%の発酵菌株を添加し、発酵温度を発酵菌株に適切な発酵温度に制御して、撹拌しながら反応器B2内の材料に1回目の発酵反応を10h~14h行う。
【0028】
ステップ4:1回目の発酵反応が終了した後、反応器B2内の材料を、排出配管8を介して反応器A1に送り、材料の発酵により生成されたセルロース系エタノールを反応器A中で蒸発させてセルロース系エタノール蒸気にし、セルロース系エタノール蒸気を、エタノール配管を介して収集タンクに流入させて、セルロース系エタノールに凝結する。
【0029】
ステップ5:ステップ2、ステップ3及びステップ4を繰り返し、同バッチの材料を、反応器A1及び反応器B2のそれぞれにおいて1サイクル運転を4~6サイクル行い、かつ酵素分解反応と発酵反応をそれぞれ4~6回行い、反応器B2において終了させ、最後に、第1排出管16を介してシステムから排出する。
【0030】
該方法は、バイオマスの糖化及び発酵によるセルロース系エタノール生産方法の1サイクル方式である。
【0031】
酵素分解反応温度Tは、発酵菌種の生存率が80%以上の最高温度である。酵素分解反応温度Tは、濃度0.1mol/Lのクエン酸緩衝溶液を用いて試験系を調製し、それに100g/Lグルコース、1質量%の発酵菌株を加え、それぞれ40℃、41℃、42℃、43℃、44℃、45℃、46℃、47℃、48℃、49℃、50℃の条件で12hインキュベートし、プレートカウント法を利用して発酵菌株の生菌数を計数し、12h後の生菌生存率が80%の最高温度を酵素分解反応温度Tとする方法によって測定される。
【0032】
酵素分解反応に使用されるセルラーゼは、Cellic CTec 2である。
【0033】
本発明は、別のバイオマスの糖化及び発酵によるセルロース系エタノール生産方法を開示し、この生産方法は、前記のバイオマスの糖化及び発酵によるセルロース系エタノール生産システムを使用しており、下記のステップI~ステップVを含む。
【0034】
ステップI:バイオマス原料を、ドライベースで15%~20%(w/w)の含有量で、濃度0.1mol/L、pH 5.0~6.0のクエン酸緩衝溶液に加え、次に、ドライベースの4%~6%(w/w)を占めるセルラーゼを加え、製造済みの第1バッチの材料を酵素分解供給管11を介して反応器A1に加える。
【0035】
ステップII:反応器A1の温度を酵素分解反応温度Tに維持して、材料のpH値を維持し、撹拌しながら反応器A1内の第1バッチの材料に1回目の酵素分解反応を10h~14h行う。
【0036】
ステップIII:反応器A1内の酵素分解反応を受けた第1バッチの材料を、発酵配管6を介して反応器B2に送り、発酵供給管21を介して反応器B2内へ0.1質量%~1質量%の発酵菌株を添加し、発酵温度を発酵菌株に適切な発酵温度に制御して、撹拌しながら反応器B2内の第1バッチの材料に1回目の発酵反応を10h~14h行う。
【0037】
反応器A1内の酵素分解反応を受けた第1バッチの材料をすべて排出した後、ステップIとステップIIを繰り返し、反応器A内へ第2バッチの材料を添加し、第2バッチの材料を反応器A内で酵素分解反応させる。
【0038】
ステップIV:1回目の発酵反応が終了した後、反応器B2内の第1バッチの材料を、排出配管8を介して貯蔵タンク3に送って仮貯蔵し、反応器B2内の第1バッチの材料をすべて排出した後、ステップIIIを繰り返し、反応器A1の第2バッチの材料を、発酵配管6を介して反応器B2に送って発酵反応を行う。
【0039】
ステップV:反応器A1の第2バッチの材料をすべて排出した後、貯蔵タンク3に仮貯蔵した第1バッチの材料を排出配管8を介して反応器A1に送り、さらにステップIIを行い、第1バッチの材料の発酵により生成されたセルロース系エタノールを反応器A中で蒸発させてセルロース系エタノール蒸気にし、セルロース系エタノール蒸気をエタノール配管を介して収集タンクに送って、セルロース系エタノールに凝結する。
【0040】
貯蔵タンク3内の第1バッチの材料をすべて排出した後、ステップIVを繰り返し、反応器B2内の第2バッチの材料を、排出配管8を介して貯蔵タンク3に送って仮貯蔵する。
【0041】
ステップVI:ステップII~ステップVを繰り返し、2バッチの材料のそれぞれに対して反応器A1及び反応器B2において2サイクル運転をそれぞれ4~6サイクル行い、酵素分解反応と発酵反応をそれぞれ4~6回行い、順次反応器B2において終了させ、最後に、2バッチの材料を、第1排出管16を介してシステムから順次排出する。
【0042】
他のステップは、前の実施例と同様であるので、それ以上言及しない。
【0043】
該方法は、バイオマスの糖化及び発酵によるセルロース系エタノール生産方法の2サイクル方式である。
【0044】
以下、特定実施例によって、本発明のバイオマスの糖化及び発酵によるセルロース系エタノール生産システム及び方法についてさらに説明する。
<実施例1>
グルコース及びエタノールによる酵素分解反応の阻害作用を検証する実験
【0045】
0.1mol/Lクエン酸緩衝溶液を用いて反応系を製造した。ドライベースで15%(w/w)のトウモロコシ穂軸残渣系にクエン酸緩衝溶液を加え、pHを5.0~6.0に維持し、ドライベースの4%(w/w)を占めるセルラーゼCellic CTec 2を加え、3群の1L反応系を製造した。
【表1】
【0046】
300rpmで撹拌しながら、50℃で72h酵素分解し、12hおきにサンプリングして、酵素分解により放出されたグルコース量を測定した。その結果を
図3に示す。
【0047】
結論:グルコース及びエタノールは、いずれも、セルラーゼの酵素分解に所定の阻害作用がある。その中でも、b群では、100g/Lグルコースを添加した後、72h酵素分解して放出したグルコース量は、阻害剤を加えない対照群であるa群よりも24%低い。C群では、50g/Lエタノールを添加した後、72h酵素分解して放出したグルコース量は、対照群であるa群よりも8%低い。
<実施例2>
安▲チー▼社製のサッカロマイセス・セレビシエ及びザイモモナス・モビリスの耐熱性実験を通じて、酵素分解反応温度Tを確認した。
【0048】
本発明の方法は、多種のエタノール発酵菌株に適用でき、本実施例では、一般的な2種のエタノール発酵菌株である安▲チー▼社製のサッカロマイセス・セレビシエ及びザイモモナス・モビリスを例として説明した。
【0049】
クエン酸緩衝溶液を用いて100g/Lグルコース溶液を製造して、2つの部分に分けて、それぞれに濃度1質量%の安▲チー▼社製のサッカロマイセス・セレビシエ粉及び濃度1質量%のザイモモナス・モビリス菌液を加えて、サンプリングした。それぞれ、40℃~50℃の範囲内の1℃おきの異なる温度で放置し、それぞれ12hインキュベートし、プレートカウント法を利用してインキュベート前後の生菌数を計数し、インキュベート後の菌株の接種時に対する変化を統計した。統計結果をそれぞれ以下の
図4及び
図5に示す。
【0050】
結論:テスト及び統計の結果、12hインキュベート後の生存率が80%以上の最高温度を酵素分解反応温度Tとすると、安▲チー▼社製のサッカロマイセス・セレビシエの酵素分解反応温度Tは45℃、ザイモモナス・モビリスの酵素分解反応温度Tは48℃である。
<実施例3>
本発明のバイオマスの糖化及び発酵によるセルロース系エタノール生産方法は1サイクルの第1実施例は、下記のステップ(11)~ステップ(17)を含む。
【0051】
ステップ(11):酵素分解反応温度Tが実施例2において確認したため、直接ステップ(12)へ進む。
【0052】
ステップ(12):反応系材料の製造
ドライベース含有量が15kg(w/w)ドライベースのトウモロコシ穂軸残渣に、クエン酸緩衝系を含有する水溶液を100kgまで加え、pHを5.0~6.0に維持し、0.6kgのセルラーゼCellic CTec 2を加え、均一に撹拌して、酵素分解供給管11を介して反応系材料を反応器A1に加えた。
【0053】
ステップ(13):反応器A1の温度を45℃に設定して維持し、300rpmで撹拌しながら酵素分解反応を10h~14h行った。
【0054】
ステップ(14):反応器B2の温度を35℃(サッカロマイセス・セレビシエの最適な発酵温度)に設定し、ステップ(13)で酵素分解した材料を反応器A1からダイヤフラムポンプA7により反応器B2に送り、反応器B2の発酵供給管21から1kgの安▲チー▼社製のサッカロマイセス・セレビシエ粉を反応器B2に接種し、100rpmで撹拌しながら発酵反応を10h~14h行い、これにより、1つの反応サイクルを完了した。
【0055】
ステップ(15):ステップ(14)で発酵させた材料を反応器B2から反応器A1に送り、さらに撹拌して2回目の酵素分解反応を行い、生成したセルロース系エタノールを蒸発させて収集タンク4に収集した。
【0056】
ステップ(16):ステップ(15)で2回目の酵素分解を受けた材料を反応器A1から反応器B2に更に送った。
【0057】
ステップ(17):ステップ(14)~(16)を5サイクル繰り返した。
【0058】
最後に収集タンク4内において材料4.4kgが得られ、それにはセルロース系エタノールが35%含有されており、セルロース系エタノールが1.54kg得られる。反応器B2内において材料89.5kgが得られ、それにはセルロース系エタノールが3.1%含有されており、セルロース系エタノールが2.77kg得られ、セルロース系エタノールが合計4.31kg得られ、計算した結果、セルロース系エタノールの転化率は84.5%である。
<実施例4>
本発明のバイオマスの糖化及び発酵によるセルロース系エタノール生産方法の1サイクルの第2実施例は、下記のステップ(21)~ステップ(27)を含む。
【0059】
ステップ(21):実施例3と同様であるので、直接ステップ(22)へ進む。
【0060】
ステップ(22):反応系材料の製造
ドライベース含有量が20kg(w/w)ドライベースのトウモロコシ穂軸残渣に、クエン酸緩衝系を含有する水溶液を100kgまで加え、pHを5.0~6.0に維持し、0.8kgのセルラーゼCellic CTec 2を加え、均一に撹拌して、酵素分解供給管11を介して該反応系材料を反応器A1に加えた。
【0061】
ステップ(23):反応器A1の温度を45℃に設定して維持し、300rpmで撹拌しながら酵素分解反応を10h~14h行った。
【0062】
ステップ(24):反応器B2の温度を35℃に設定して、ステップ(23)で酵素分解した材料を反応器A1からダイヤフラムポンプA7により反応器B2に送り、反応器B2の発酵供給管21から1kgの安▲チー▼社製のサッカロマイセス・セレビシエ粉を反応器B2に接種し、100rpmで撹拌しながら発酵反応を10h~14h行い、これにより、1つの反応サイクルを完了した。
【0063】
ステップ(25):ステップ(24)で発酵した材料を反応器B2から反応器A1に送り、さらに撹拌して2回目の酵素分解反応を行い、生成したセルロース系エタノールを蒸発して収集タンク4に収集した。
【0064】
ステップ(26):ステップ(25)で2回目の酵素分解を受けた材料を反応器A1から反応器B2に更に送った。
【0065】
ステップ(27):ステップ(24)~(26)を6サイクル繰り返した。
【0066】
最後に収集タンク4において材料4.7kgが得られ、それにはセルロース系エタノールが38%含有されており、セルロース系エタノールが1.79kg得られ、反応器B2において材料90.5kgが得られ、それにはセルロース系エタノールが4.1%含有されており、セルロース系エタノールが3.71kg得られ、セルロース系エタノールが合計5.50kg得られ、計算した結果、セルロース系エタノールの転化率は80.9%である。
<実施例5>
本発明のバイオマスの糖化及び発酵によるセルロース系エタノール生産方法の1サイクルの第3実施例は、下記のステップ(31)~ステップ(37)を含む。
【0067】
ステップ(31):実施例3と同様であるので、直接ステップ(32)へ進む。
【0068】
ステップ(32):反応系材料の製造
ドライベース含有量が20kg(w/w)ドライベースのトウモロコシ穂軸残渣に、クエン酸緩衝系を含有する水溶液を100kgまで加え、pHを5.0~6.0に維持し、0.8kgのセルラーゼCellic CTec 2を加え、均一に撹拌して、酵素分解供給管11を介して、得た材料を反応系として反応器A1に加えた。
【0069】
ステップ(33):反応器A1の温度を48℃に設定して維持し、300rpmで撹拌しながら酵素分解反応を10h~14h行った。
【0070】
ステップ(34):反応器B2の温度を35℃に設定して、ステップ(33)で酵素分解した材料を反応器A1からダイヤフラムポンプA7により反応器B2に送り、反応器B2の発酵供給管21から1kgの活性化ザイモモナス・モビリス菌液を反応器B2に接種し、100rpmで撹拌しながら発酵反応を10h~14h行い、これにより、1つの反応サイクルを完了した。
【0071】
ステップ(35):ステップ(34)で発酵した材料を反応器B2から反応器A1に送り、さらに撹拌して2回目の酵素分解反応を行い、生成したセルロース系エタノールを蒸発させて収集タンク4に収集した。
【0072】
ステップ(36):ステップ(35)で2回目の酵素分解を受けた材料を反応器A1から反応器B2に更に送った。
【0073】
ステップ(37):ステップ(34)~(36)を6サイクル繰り返した。
【0074】
最後に収集タンク4において材料4.8kgが得られ、それにはセルロース系エタノールが39%含有されており、セルロース系エタノールが1.87kg得られ、反応器Bにおいて材料93.5kgが得られ、それにはセルロース系エタノールが4.13%含有されており、セルロース系エタノール3.86kgが得られ、セルロース系エタノールが合計5.73kg得られ、計算した結果、セルロース系エタノールの転化率は84.3%である。
<実施例6>
【0075】
本発明のバイオマスの糖化及び発酵によるセルロース系エタノール生産方法の2サイクルの第1実施例は、下記のステップ(41)~ステップ(48)を含む。
【0076】
ステップ(41):実施例3と同様であるので、直接ステップ(42)へ進む。
【0077】
ステップ(42):第1バッチの反応系材料の製造
ドライベース含有量が20kg(w/w)ドライベースのトウモロコシ穂軸残渣に、クエン酸緩衝系を含有する水溶液を100kgまで加え、pHを5.0~6.0に維持し、0.8kgのセルラーゼCellic CTec 2を加え、均一に撹拌して、第1バッチの反応系材料を得て、酵素分解供給管11を介して反応系の第1バッチの材料を反応器A1に加えた。
【0078】
ステップ(43):反応器A1の温度を45℃に設定して維持し、300rpmで撹拌しながら酵素分解反応を10h~14h行った。
【0079】
ステップ(44):反応器B2の温度を35℃に設定し、ステップ(43)で酵素分解した第1バッチの材料を反応器A1からダイヤフラムポンプA7により反応器B2に送り、反応器B2の発酵供給管21から1kgの安▲チー▼社製のサッカロマイセス・セレビシエ粉を反応器B2に接種し、100rpmで撹拌しながら発酵反応を10h~14h行い、これにより、第1バッチの材料の1つの反応サイクルを完了した。
【0080】
第1バッチの材料のすべてを反応器A1からダイヤフラムポンプA7により反応器B2に送った後、ステップ(42)の製造方法に従って第2バッチの反応系材料を製造し、ステップ(43)のように第2バッチの反応系材料を処理し、すなわち、ステップ(42)で製造した第2バッチの材料を、酵素分解供給管11を介して反応器A1に送り、300rpmで撹拌しながら酵素分解反応を10h~14h行った。
【0081】
ステップ(45):反応器B2内の第1バッチの材料をダイヤフラムポンプB9で貯蔵タンク3に送り、その後、反応器A1内の第2バッチの材料を反応器B2に送り、ステップ(44)に従って操作し、これにより、第2バッチの材料の1つの反応サイクルを完了した。
【0082】
ステップ(46):貯蔵タンク3内の第1バッチの材料を、排出配管8を介して反応器A1に送り、さらに撹拌して反応させ、生成したセルロース系エタノールを蒸発させて収集タンク4に収集するとともに、第2バッチの材料を反応器B2から貯蔵タンク3に送った。
【0083】
ステップ(47):第1バッチの材料を再度反応器A1から反応器B2に送った。第2バッチの材料は常に第1バッチの材料よりも1つの容器だけ遅い。
【0084】
ステップ(48):ステップ(44)~(46)を6サイクル繰り返した。
【0085】
最後に収集タンク4において材料8.8kgが得られ、それにはセルロース系エタノールが38.5%含有されており、セルロース系エタノールが3.39kg得られ、2バッチの材料は合計178.5kg排出され、それにはセルロース系エタノールが4.2%含有されており、セルロース系エタノールが7.50kg得られ、セルロース系エタノールが合計10.85kg得られ、計算した結果、セルロース系エタノールの転化率は80.1%である。
<実施例7>
【0086】
本発明の方法と同期糖化発酵プロセスの酵素分解効果の比較
【0087】
実施例4、実施例5のデータを収集して、本発明の方法により20%ドライベースのトウモロコシ穂軸残渣を酵素分解して発酵する場合のエタノール転化率を統計した。
【0088】
従来の同期糖化発酵:ドライベース含有量が20kg(w/w)ドライベースのトウモロコシ穂軸残渣に、クエン酸緩衝系を含有する水溶液を100kgまで加え、pHを5.0~6.0に維持し、0.8kgのセルラーゼCellic CTec 2を加え、均一に撹拌するとともに、1kgの安▲チー▼社製の酵母粉を接種し、35℃、300rpmで撹拌しながら、6日間反応させ、材料100.5kgを得て、それにおけるセルロース系エタノールの含有量は5.2%であり、計算した結果、セルロース系エタノールの転化率は76.9%である。
【0089】
従来の同期糖化発酵プロセスと比べて、本発明の方法では、セルロース系エタノールの転化率は76.9%から80%以上に向上し、効果は明らかである。
【0090】
以上は本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を制限するものではなく、本発明の主旨及び原則を逸脱することなく行われる全ての修正、等同置換及び改良などは、本発明の特許範囲に含まれるものとする。
【国際調査報告】