(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(54)【発明の名称】流体力学的抗力を低減するための装置
(51)【国際特許分類】
B63B 1/38 20060101AFI20240206BHJP
【FI】
B63B1/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573493
(86)(22)【出願日】2022-02-17
(85)【翻訳文提出日】2023-10-10
(86)【国際出願番号】 EP2022053878
(87)【国際公開番号】W WO2022175360
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523311948
【氏名又は名称】ネプテック
【氏名又は名称原語表記】NEPTECH
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ゲッツ タンギー
(72)【発明者】
【氏名】ビゴット コランタン
(72)【発明者】
【氏名】ルーセ クレマン
(57)【要約】
本発明は、船舶(10)の流体力学的抗力を低減するための装置(40)に関する。この装置は、船体(20)と、燃料電池(30)と、船体(20)により構成される少なくとも1つの噴射手段(50)への燃料電池(30)により排出された第1量の空気の運搬手段(42)とを備える。噴射手段(50)は、浸漬されるように意図した船体(20)の表面(22)の反対側に第1量の空気を噴射するように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶(10)の流体力学的抗力を低減するための装置(40)であって、
少なくとも1つの流体の第1噴射手段(50)を含む船体(20)と、
燃料電池(30)と、
少なくとも前記第1噴射手段(50)への前記燃料電池(30)により排出された第1量の空気の運搬手段(42)と、
を備え、
前記第1噴射手段(50)は、浸漬されるように意図した前記船体(20)の表面(22)に沿って前記第1量の空気を噴射するように構成される、
装置(40)。
【請求項2】
前記第1噴射手段(50)は、前記運搬手段(42)への一定量の水の上昇流を制限又は防止する封止要素を含む、
請求項1に記載の装置(40)。
【請求項3】
前記第1量の空気は、気泡の形状で前記第1噴射手段(50)により噴射され、好ましくは、前記気泡は、5mm未満の直径を有する、
請求項1又は2に記載の装置(40)。
【請求項4】
前記船体(20)は、浸漬されるように意図した水翼(60)を備え、前記水翼(60)は、前記第1量の空気の少なくとも一部を噴射するように構成される少なくとも1つの第2噴射手段(50)を含む、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の装置(40)。
【請求項5】
前記水翼(60)の第2噴射手段(50)は、前記水翼(60)の垂直面に沿って前記第1量の空気の一部を噴射するように構成される、
請求項4に記載の装置(40)。
【請求項6】
前記船体(20)は、前記船舶(10)の移動方向に対して前記第1噴射手段(50)の上流側に、セットバックを形成する追加部分を含む、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の装置(40)。
【請求項7】
前記運搬手段(42)における気流のためのコマンド制御装置を備える、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の装置(40)。
【請求項8】
前記運搬手段(42)は、少なくとも1つの気流センサ(46)を備える、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の装置(40)。
【請求項9】
前記船舶(10)の見かけの風からの第2量の空気の回収手段(43)を備え、
前記回収手段(43)は、前記第2量の空気を前記運搬手段(42)に搬送可能である、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の装置(40)。
【請求項10】
船舶(10)の流体力学的抗力を低減するための方法であって、
運搬手段(42)によって、燃料電池(30)により排出された第1量の空気を船体(20)により構成される噴射手段(50)に運搬し、
前記噴射手段(50)によって、浸漬されるように意図した前記船体(20)の表面(22)に沿って前記第1量の空気を噴射する、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、軍艦分野に関する。より正確には、本発明の技術分野は、船舶の流体力学的抗力(流体抵抗)を低減するための装置に関する。そのため、本発明の技術分野は、船舶のエネルギ効率を高める分野に関する。また、本発明の技術分野は、乗り物のモータを駆動する電気エネルギを提供するために、燃料電池を用いる船舶の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
抗力は、流体に浸漬した物体の動きを妨害する力である。この力は、物体上の流体の摩擦によって、流体中を移動する物体に加えられる。
【0003】
したがって、流体力学的抗力の低減により、船舶で消費するエネルギを制限することにより、船舶の性能を向上させることができる。このように、流体力学的抗力を低減するための装置により、乗り物の効率を向上させることができる。
【0004】
先行技術から、船舶の船体に接触する空気の静的層又は空気の流れを用いることにより、船体に作用する水による摩擦力を低減可能であることが知られている。
【0005】
先行技術の船舶には、特に、そうでなければ水に接触するであろう船体の表面の一部を覆う空気クッションの作成を可能にする嵌合空洞をその船体に含むものが存在する。そのような装置は、特に、米国特許公開第2003/159637号明細書から公知である。そのような装置により、船舶の流体力学的抗力の効果的な低減を可能にする。しかしながら、このタイプの装置は、波が船舶の下に形成された空気クッションを「破壊」するため、うねりがあまりにも強い場合には効果がない。さらに、船舶の下の空気クッションの形成と維持に必要な圧力を提供することができる圧縮機を使用する必要がある。圧縮機の動作はエネルギを消費するが、そのような装置のエネルギ効率は不十分である。さらに、圧縮機の存在は、船舶の質量を増加させ、そのエネルギ効率の低下に寄与してしまう。
【0006】
また、船体に直接接触する空気を噴射するために、船体の下に位置するインジェクタを用いることも知られている。そのような装置は、船舶の船体の下に配置されたインジェクタを含む流体力学的抗力を減少させるための装置を開示する韓国特許公開第2020-0011300号明細書から知られている。インジェクタは、船体と水に直接接触する一定量の空気を噴射する。これは、船体を潤滑し、抗力を減少させる空気量である。そのような装置は、効果的であるが、空気を噴射するのに用いられる圧縮機の動作にエネルギを使用しなければならないという欠点を有する。そのようなエネルギの使用は、そのようなシステムの効率を大幅に低下させる。さらに、圧縮機の存在は、船舶の質量を増加させ、そのエネルギ効率の低下に寄与してしまう。
【0007】
また、先行技術から、モータを電気的に駆動するために燃料電池を用いる船舶も知られている。燃料電池を駆動して電気エネルギをモータに供給するために水素を用いる船舶が特に知られている。典型的に、燃料電池は、タンクから供給される二水素と大気中に存在する二酸素との化学反応を利用して、一定量の電気エネルギを供給する。燃料電池は、この処理中、一定量の暖かく湿った空気を大気中に排出する。また、燃料電池は、電気エネルギの生成中、一定量の水を排出する。そのような船舶は、温室効果ガス排出を制限するモータリゼーションを提供することに関心がある。
【0008】
したがって、本発明は、既存の装置の欠点を克服することができる流体力学的抗力を低減するための装置を提供することを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許公開第2003/159637号明細書
【特許文献2】韓国特許公開第2020-0011300号明細書
【発明の概要】
【0010】
この目的のため、本発明は、船舶の流体力学的抗力を低減するための装置に関する。該装置は、
少なくとも1つの流体の第1噴射手段を含む船体と、
燃料電池と、
少なくとも第1噴射手段への燃料電池により排出された第1量の空気の運搬手段と、
を備え、
第1噴射手段は、浸漬されるように意図した船体の表面に沿って第1量の空気を噴射するように構成される。
【0011】
有利には、本発明にかかる流体力学的抗力を低減するための装置は、燃料電池の使用を提案することにより、温室効果ガス排出の制限から利益を得ることができる。同様に、噴射手段の使用の結果、本装置は、船舶の流体力学的抗力を低減する一定量の空気を船体の下に噴射する。
【0012】
最後に、本発明にかかる装置により、燃料電池から漏れた空気を再利用して船体の下に噴射することができる。船体の下への空気噴射専用の圧縮機を使用することを回避することができるので、この構成は特に有利である。したがって、本発明にかかる装置により、圧縮機により使用されるエネルギが節約されるので、既存の抗力低減システムのエネルギ効率を大幅に向上させることができる。また、専用の圧縮機を持たないという事実により、船舶の質量を低減させることができる。船舶の質量を低減させることにより、船舶のエネルギ消費量を減少させることもでき、これにより、船舶のエネルギ効率を向上させることができる。
【0013】
一実施の形態によれば、第1噴射手段は、運搬手段への一定量の水の上昇流を制限又は防止する封止要素を含む。この構成により、運搬手段及び/又は燃料電池内での水の上昇を防ぐことができる。
【0014】
一実施の形態によれば、第1量の空気は、気泡の形状で噴射手段により噴射され、好ましくは、該気泡は、5mm未満の直径を有する。気泡は、流体力学的抗力を低減する効果的な方法である。5mmの直径は、船体近傍の境界層の厚さに相当し、抗力低減が非常に効果的な寸法を表す。
【0015】
一実施の形態によれば、第1量の空気は、気泡の形状で噴射手段により噴射され、好ましくは、該気泡は、0.4mm~1.3mmの直径を有する。これらの直径値により、流体力学的抗力の効果的低減を可能にする。
【0016】
一実施の形態によれば、船体は、浸漬されるように意図した水翼を備え、水翼は、第1量の空気の少なくとも一部を噴射するように構成される少なくとも1つの第2噴射手段を含む。この構成により、水翼を含む船舶における流体力学的抗力を低減させることができる。
【0017】
一実施の形態によれば、水翼の第2噴射手段は、水翼の垂直面に沿って第1量の空気の一部を噴射するように構成される。この構成によれば、垂直面に空気を噴射することにより、噴射が有効な時、水翼の揚力を低減させないことを可能にする。
【0018】
一実施の形態によれば、船体は、船舶の移動方向に対して第1噴射手段の上流側に、セットバックを形成する追加部分を含む。この構成により、追加部分の下流に窪みを形成することができる。この窪みにより、空気を噴射し、抗力を低減する噴射手段を通して、空気を吸引することができる。この構成により、局所的に乱流を生成させることができる。乱流は、流体力学的抗力を低減するために噴射した空気の効率を強化する。
【0019】
一実施の形態によれば、装置は、運搬手段内の気流を指令し、制御するための装置を備える。この構成により、噴射した気流を制御して、流体力学的抗力の低減を最適化することができる。
【0020】
一実施の形態によれば、運搬手段は、少なくとも1つの気流センサを備える。この構成により、運搬手段内の気流を知ることができる。また、これにより、その測定値を考慮することによって、この気流を調整することができる。本発明にかかる装置は、コマンド制御装置を備える場合には、フロー情報により、コマンド制御装置にフロー情報を提供することができ、これにより、より効果的に気流を制御することができる。
【0021】
一実施の形態によれば、装置は、乗り物の見かけの風からの第2量の空気の回収手段を備える。回収手段は、第2量の空気を運搬手段に搬送可能である。この構成により、噴射手段に搬送した気流を見かけの風で補完することができる。
【0022】
また、一態様によれば、本発明は、以下のステップを含む、船舶の流体力学的抗力を低減するための方法に関する:
運搬手段によって、船体により構成される噴射手段への燃料電池により排出された第1量の空気を運搬するステップ、及び
噴射手段によって、浸漬されるように意図した船体の表面に沿って第1量の空気を噴射するステップ。
【0023】
有利には、本発明にかかる方法は、燃料電池の使用を提案することにより、温室効果ガス排出の制限から利益を得ることができる。同様に、噴射手段の使用の結果、船体の下に噴射する空気量は、船舶の流体力学的抗力を低減する。
【0024】
最後に、本発明にかかる方法により、燃料電池から漏れた空気を再利用して船体の下に噴射することができる。この構成により、船体の下への空気の噴射専用の圧縮機の使用を避けることができるので、この構成は特に有利である。したがって、本発明にかかる方法により、圧縮機により使用されるエネルギが節約されるので、既存の抗力低減システムのエネルギ効率を大幅に向上させることができる。また、専用の圧縮機を持たないという事実により、船舶の質量を低減させることができる。船舶の質量を低減させることにより、船舶のエネルギ消費量を減少させることもでき、これにより、船舶のエネルギ効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明の他の特徴及び利点は、添付図面を参照して、以下の詳細な説明を読むことにより、より明確になるであろう。
【
図1】本発明の実施の形態1にかかる抗力を低減するための装置を備える船舶の概略縦断図である。
【
図2】本発明の実施の形態2にかかる抗力を低減するための装置を備える船舶の概略縦断図である。
【
図3】本発明の実施の形態3にかかる抗力を低減するための装置を備える船舶の船体の概略部分断面図である。
【
図4】本発明の実施の形態4にかかる船舶の船体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明の実施の形態1を示す。この図は、本発明にかかる流体力学的抗力を低減するための装置を備える船舶10の概略断面図である。船舶10は、本出願では任意のタイプの浮遊している乗り物を意味するものとする。したがって、本発明は、例えば、ボートや荷船等の海上船舶に関する。あらゆるタイプの浮遊装置も本発明の範囲内にある。浮遊装置及び/又は潜水可能な装置も本発明の範囲内にある。本実施の形態の後半では、船舶10及びボート10という用語は、同じ意味で用いられる。
【0027】
本発明にかかる流体力学的抗力を低減するための装置のすべての特徴は、本発明にかかる流体力学的抗力を低減するための方法にも適用可能である。
【0028】
船舶10は、船体20を備える。船体20は、船舶10の外側ケーシングであり、船舶10が浮き、及び/又は浸漬される水に接触する。
【0029】
図1の船舶は、燃料電池30を備える。燃料電池30は、水素を用いて、電気エネルギを生成する。この電気エネルギは、船舶にエネルギを供給するために用いられる。燃料電池により生成されるエネルギは、電気モータ30に電力を供給するために用いられてもよい。電気モータ30は、船舶10を推進する役割を果たす。その代わりに又はそれに加えて、燃料電池30は、照明、暖房、又は他のシステム等のオンボードシステムに電気エネルギを供給する。また、本発明は、水素を用いない燃料電池にも関する。したがって、改質メタノール又は直接メタノールで動作する燃料電池を有することができる。また、直接水素化ホウ素、ギ酸、リン酸、溶融炭酸塩、又はプロトン性セラミックで動作する燃料電池を提供することができる。すべてのタイプの燃料電池化学が想定され得る。
【0030】
燃料電池30は、燃料電池システムアセンブリを意味すると考えられる。したがって、我々は、空気中の酸素等の酸化剤の他方の電極上の還元に結合した還元燃料の酸化のおかげでの生成が達成される酸化還元化学反応のおかげで化学エネルギを電気エネルギに変換することにより発電する電気化学デバイスのいずれかである燃料電池のコアと、燃料電池の両方の補助システム、とりわけ、電池管理電子機器と、酸素をもたらすために燃料電池のコアに空気を供給する圧縮機とについて述べる。
【0031】
燃料電池30は、周囲の空気から取られた二水素と二酸素との間の化学反応を用いて電気エネルギを生成する。燃料電池30の動作は、水素動力船のために、通常周囲環境に放出される空気の放出を生成する。上述の燃料電池のように、水素が供給されない燃料電池の場合、燃料電池は、動作中に空気も放出する。したがって、前後で述べた特徴は、水素燃料電池以外の燃料電池にも適用される。
【0032】
本発明の範囲内において、流体力学的抗力を低減するための装置40は、空気の運搬手段42を備える。空気の運搬手段42は、燃料電池30の出口に配置される。この運搬手段42は、燃料電池の通常運転時に燃料電池30から漏れ出すガスを回収する。運搬手段42は、燃料電池30の排気口に直接接続される。
【0033】
運搬手段42は、噴射手段50に接続される。噴射手段50は、船体20に統合される。噴射手段50は、運搬手段42により搬送された空気を噴射するように構成される。これを行うために、噴射手段50は、ボート10が航行しているときに浸漬されるように意図した船体20の表面と反対側の船体20の近くに、一定量の空気52を噴射する。したがって、噴射手段50は、船舶10の水線の下に位置する。より正確には、噴射手段50は、浸漬されるように意図した船体20の表面22の近くに空気52を噴射する。
【0034】
ここで、流体力学的抗力を低減するためのシステム40の動作について説明する。
【0035】
燃料電池30は、船舶10の動作中に、船舶10用の電気エネルギを生成する。燃料電池30が電気エネルギを生成すると、燃料電池30は、第1量の空気を放出する。この第1量の空気は、燃料電池30の排気である。第1量の空気は、運搬手段42により収集される。運搬手段42は、第1量の空気を噴射手段50に搬送する。この噴射手段は、船舶10の船体20の下に位置する。噴射手段50は、浸漬されるように意図した船体20の表面22の反対側に第1量の空気52を噴射する。浸漬されるように意図した船体20の表面22は、船舶10の水線の下に配置される船体20の表面22を意味すると想起される。
【0036】
このように、流体力学的抗力を低減するための装置は、燃料電池30と、運搬手段42と、船体20と、噴射手段50とを備える。
【0037】
したがって、本発明にかかる流体力学的抗力を低減するための装置により、燃料電池が電気エネルギを生成する際に燃料電池から放出される空気を再利用することができる。燃料電池から放出される空気は、燃料電池内で起こる化学反応中に生成される空気を意味すると考えられる。
【0038】
噴射手段50に搬送される第1量の空気の再利用により、船体20近くに当該量の空気を噴射することができる。この空気噴射は、水が船体20に加える流体力学的抗力を低減する船体20の「潤滑」を可能にする。したがって、本発明にかかる装置40は、船舶10のエネルギ消費量を低減することができる流体力学的抗力の低減を可能にする。さらに、空気が燃料電池から直接取り込まれるので、装置40は、噴射を実行するために空気を加圧する外部手段を欠いている。したがって、本発明にかかる装置20により、先行技術の装置で利用可能な出力を大幅に増加させることができる。なぜならば、燃料電池30の電気エネルギの生成の副産物である空気を噴射するためのエネルギを消費しないからである。さらに、本発明にかかる抗力を低減するための装置により、船舶10の質量を低減することができる。なぜならば、圧縮機は、重い装置だからである。また、質量の低減により、船舶10のエネルギ効率を高めることもできる。その代わりに、抗力を低減するための装置40は、追加の圧縮機を備えてもよい。追加の圧縮機は、運搬手段42における気流を補う。このように、燃料電池30により供給される流量及び/又は空気圧が不十分であるならば、追加の圧縮機は、必要な流量及び/又は圧力を供給する。追加の圧縮機が存在するにもかかわらず、やはり、抗力を低減するための装置40により、抗力を低減するための従来の装置に比較して、エネルギ効率を向上させることができる。なぜならば、必要な追加の圧縮機は、先行技術の装置で用いられる圧縮機よりも低い出力及び質量で構成されているからである。
【0039】
船舶10は、水素タンク32を備えてもよい。
図1に示す例では、船舶10は、3つの水素タンク32を備える。これらのタンク32は、ボート10のよりも低い出力及び質量で構成されている。水素タンク32は、燃料電池30がその動作のために用いる気体及び/又は液体形状の二水素を貯蔵する有効な手段である。水素以外で動作する燃料電池の場合、タンク32は、二水素以外のガスを貯蔵するために用いられてもよい。
【0040】
有利には、船舶10は、双胴船であってもよい。双胴船とは、二つの船体又は浮体を含む船舶を意味すると考えられる。特に、これは、本出願の図に示す船舶10の場合であり、示される船体20の部分は、船体20を含む二つの浮体のうちの一つである。しかしながら、本発明は、単胴船や多胴船にも関する。このように、本出願で提示された本発明にかかる抗力を低減するための装置40のすべての特徴は、単胴船、双胴船、多胴船、又はあらゆる他のタイプの船舶にも無関係に適用される。
【0041】
船舶10は、排気スタック37を含んでもよい。排気スタックにより、燃料電池30に形成され得るガス過圧力を逃がすことができる。この排気スタック37は、燃料電池に接続され、燃料電池30に過圧力が生じた場合に用いられる。また、排気スタック37は、例えば、分配システム又はタンク等の燃料電池30の補助システムに過圧力が生じた場合にも用いられる。
【0042】
一態様によれば、燃料電池30は、電気モータ35に電気的に動力を供給する。この電気モータ35は、船舶10の推進を可能にする。
【0043】
一態様によれば、燃料電池30は、燃料電池30により充電される1以上の電池に電気的に電力を供給する。この態様によれば、電気モータ35に電気的に電力を供給するのは電池である。
【0044】
一態様によれば、船舶10は、旅客輸送船である。この特徴によれば、旅客は、船舶10の船室12内で輸送される。その代わりに又はそれに加えて、船舶10は、例えば、貨物輸送、漁業、レクリエーション、軍事用途等の別の目的に特化した船舶である。このボート10の用途のリストは、網羅的ではない。
【0045】
第1量の空気の運搬
一態様によれば、燃料電池30により排出される空気の運搬手段は、導管である。導管は、パイプ又は互いに連結されたパイプセット等の任意のタイプの手段を意味すると考えられる。その代わりに又はそれに加えて、運搬手段42は、チューブであり、好ましくは、可撓性チューブである。また、運搬手段42は、互いに接続されたチューブセットであってもよい。例えば、運搬手段は、直列に配置された硬質チューブと可撓性チューブとを含むように設けられてもよい。
【0046】
一態様によれば、運搬手段42は、その通路上に熱交換器44を備える。熱交換器44は、燃料電池30により排出される第1量の空気から熱を回収する。なお、燃料電池30により排出される空気は高温である。有利には、熱交換器30により回収される熱は、船舶10の船室12を暖めるために用いられる。
【0047】
一態様によれば、流体力学的抗力を低減するための装置は、運搬手段42により搬送される空気の流れのためのコマンド制御装置を備える。この態様によれば、コマンド制御装置により、運搬手段42を通過する流れを制御することができる。この構成により、燃料電池30から出る気流を制御することができる。また、この構成により、噴射手段50により噴射される気流を制御することもできる。このように、噴射した気流を制御して、空気による船体20の潤滑を最適化することができる。一態様によれば、運搬手段42は、排気(図示せず)を備える。これにより、過剰な気流を放出することができる。このように、燃料電池30から出る気流が潤滑のために所望されるものよりも大きいならば、この気流の一部を周囲の空気又は周囲の水に放出して、噴射手段50により放出された流れを適応させることができる。
【0048】
また、一態様によれば、コマンド制御装置は、燃料電池30の動作も制御する。例えば、コマンド制御装置は、水素等の試薬の供給と同様に、燃料電池30により生成した電力を制御することができる。また、コマンド制御装置は、抗力を低減するための装置10に加えて、船舶10の他の要素を制御するためにも用いられてもよい。
【0049】
一態様によれば、流体力学的抗力を低減するための装置10は、少なくとも1つの流量センサ46を備える。流量センサ46は、気流を測定する。流量センサ46は、燃料電池30の出口に配置されてもよい。例えば、流量センサは、空気の運搬手段42により構成されてもよい。例えば、流量センサは、運搬手段42内の気流を測定するために燃料電池30の出口に配置されてもよい。また、噴射手段50の前の運搬手段42の出口に流量センサ46を設けてもよい。一態様によれば、装置10は、いくつかの流量センサ46を備える。例えば、これらのセンサは、運搬手段42の入口及び出口に配置されてもよい。
【0050】
一態様によれば、流体力学的抗力を低減するための装置10は、少なくとも1つの圧力センサ48を備える。圧力センサ48は、空気圧を測定する。圧力センサ48は、燃料電池30の出口に配置されてもよい。例えば、圧力センサ48は、空気の運搬手段42により構成されてもよい。例えば、圧力センサ48は、運搬手段42内の空気圧を測定するために燃料電池30の出口に配置されてもよい。また、噴射手段50の前の運搬手段42の出口に圧力センサ48を設けることもできる。一態様によれば、装置10は、いくつかの圧力センサ48を備える。例えば、これらの圧力センサ48は、運搬手段42の入口及び出口に配置されてもよい。
【0051】
一態様によれば、運搬手段42は、少なくとも1つの圧力センサ48と、少なくとも1つの流量センサ46とを備える。
図1に示す実施の形態によれば、運搬手段42は、燃料電池30の出口に、流量センサ46と、圧力センサ48とを備える。本実施の形態によれば、運搬手段42は、噴射手段50の上流側の運搬手段42の出口にも、流量センサ46と、圧力センサ48とを備える。
【0052】
本発明の一態様によれば、流体力学的抗力を低減するための装置40は、気流のコマンド制御システムを備える。この態様によれば、装置40は、少なくとも1つの圧力センサ48と、1つの流量センサ46とを備える。この態様によれば、装置40は、上述のような少なくとも1つの排気も備える。この態様によれば、コマンド制御装置は、センサ46、48により送信される圧力及び/又はフロー情報の関数として排気を開放することができる。この構成により、例えば、過圧力の場合に回路を自動的に開放することができる。
【0053】
一態様によれば、抗力を低減するための装置40は、計算機を備える。計算機は、圧力センサ48からの圧力データの関数として排気の開放を命令するように構成される。また、計算機は、流量センサ46からの流量データの関数として排気の開放を命令することもできる。
【0054】
見かけの風の捕獲
図3に示す一実施の形態によれば、抗力を低減するための装置40は、船舶10の見かけの風からの空気の回収手段43を備える。見かけの風とは、船舶10が移動しているときに船舶10上で受ける風を意味すると考えられる。見かけの風は、実際の風と船舶10の移動によって生じる相対的な風との合成である。
【0055】
見かけの風の回収手段43は、船舶10の水線より上のレベルで船舶10に配置される。したがって、回収手段43は、水ではなく見かけの風を回収する。
【0056】
回収手段43は、運搬手段42に第2量の空気を搬送する。このように、第2量の空気は、燃料電池30から来る第1量の空気に追加される。したがって、1以上の噴射手段50に搬送される気流を増加させてもよい。同様に、燃料電池30が十分な抗力低減を保証するのに十分な空気を提供していないならば、十分な空気を噴射するために、第2量の空気を追加することができる。
【0057】
一態様によれば、回収手段43は、見かけの風が集められる開口45を含む。この開口45は、外気の吸入口であってもよい。
【0058】
一態様によれば、回収手段43は、チューブ又はパイプを備える。このチューブ又はパイプは、剛性であってもよく、可撓性であってもよい。チューブ又はパイプは、回収手段43の開口45又は吸入口を運搬手段42に接続する。
【0059】
一態様によれば、回収手段43は、接合部47のレベルで運搬手段42に連結される。
【0060】
一態様によれば、回収手段43は、セクションの減少部49を含む。この構成によれば、回収手段43のチューブ又はパイプは、通常のセクションを含む。通常のセクションは、チューブ又はパイプに沿って実質的に一定である。セクションの減少部49のレベルでは、セクションが狭まる。この構成により、ベンチュリ効果によって、回収手段43への空気の流れを加速することができる。
【0061】
一態様によれば、運搬手段42と回収手段43の間の接合部47は、回収手段43のセクションの減少部49のレベルに位置する。この構成は、
図3に示される。この構成により、ベンチュリ効果によって、運搬手段42から来る第1量の空気の流れを加速することができる。
【0062】
一態様によれば、接合部47は、運搬手段のセクションの減少部41のレベルに位置する。この構成は、ベンチュリ効果により、回収手段43からの第2量の空気の流れを加速する。
【0063】
一実施の形態によれば、回収手段43は、少なくとも1つの圧力センサ(図示せず)を備える。圧力センサは、回収手段43内の空気圧を測定する。
【0064】
一実施の形態によれば、回収手段43は、少なくとも1つの流量センサ(図示せず)を備える。流量センサは、回収手段43内の気流を測定する。
【0065】
一態様によれば、回収手段43の流量センサ及び/又は回収手段43の圧力センサは、コマンド制御システムに接続される。このシステムは、回収手段43の開閉を制御して、回収手段43から運搬手段42への気流を制御することができる。
【0066】
見かけの風の回収手段43に関して本明細書に記載されたすべての構成は、他の実施形態に記載された特徴と両立する。
【0067】
空気噴射
前述のように、抗力を低減するための装置40は、空気の少なくとも1つの噴射手段50を備える。
【0068】
噴射手段50は、例えば、インジェクタ50を意味すると考えられる。また、噴射手段は、船舶10の船体20のレベルにおける運搬手段42の開口部であってもよい。
【0069】
一構成によれば、船体20は、
図1に示す噴射手段50に加えて、複数の噴射手段50を備える。例えば、船体50は、2つの噴射手段50を備えてもよい。1つは、船舶10の船体の縦軸に対してわずかに左舷に位置し、もう一つは右舷に位置する。このように、船体50の浸漬した部分は、船体50の全幅にわたって噴射された空気によって潤滑される。また、いくつかの噴射手段50は、船舶10の船首から船尾に向かう軸上に設けられてもよい。一態様によれば、複数の噴射手段50は、船体20の浸漬されるように意図した表面22の大部分を覆う。抗力を低減するシステム40がいくつかの噴射手段50を備える場合、運搬手段42は、すべての噴射手段50に空気を供給するための複数の分岐を含む。
【0070】
また、浸漬されるように意図した船体20の表面22に沿って配置される複数の噴射手段50を設けてもよい。例えば、船体20の下に「V」字を形成する2つの線に沿って整列された複数の噴射手段50であってもよい。「V」字の先端は、船舶10の船首に向けてもよいし、船舶10の船尾に向けてもよい。また、船舶10の縦軸に垂直な船体20の線に沿って配置されたいくつかの噴射手段50を設けてもよい。また、船体20に沿った噴射手段50のいくつかの線を設けてもよい。例えば、それぞれが複数の噴射手段50を含む平行な2本の線を設けてもよい。2本の線は、船舶10の縦軸に垂直である。各線に沿った噴射手段50の数は、線毎に異なっていてもよい。例えば、線毎に10個の噴射手段50があってもよい。また、10個の噴射手段50を有する線と、5個の噴射手段50を有する線とがあってもよい。
【0071】
流体力学的抗力の低減効率を最大化するために、噴射手段50の数及び分布は、当業者の裁量に委ねられる。
【0072】
一実施の形態によれば、浸漬されるように意図した船体20の表面22は、実質的に平坦な底部を含む。この構成によれば、平坦な底部により、噴射した気流を船体の下に維持することができる。このように、空気は、船体20の側面を通って水面に上昇しない。その結果、噴射した気流は、端部で逃げるのではなく、より大きな表面を覆う。このように、浸漬されるように意図した表面22のより多くの部分が気流により覆われる。したがって、船体20の潤滑はより効率的である。
【0073】
一態様によれば、噴射手段50は、戻り防止手段を備える。戻り防止手段は、運搬手段42による船舶10の外部からの水の上昇を防止する装置である。この構成により、船舶内への、特に燃料電池30への水の上昇を防止することができる。
【0074】
一態様によれば、戻り防止手段は、逆流防止弁である。その代わりに、戻り防止手段は、バルブ、好ましくは、コマンド制御システムにより命令される電磁弁である。
【0075】
一態様によれば、噴射手段50は、戻り防止手段を備えない。この代替案によれば、外部水は、運搬手段42に進入してもよい。空気を噴射しないと、水は、運搬手段42内で船舶10の水線まで上昇する。抗力を低減するための装置40のスイッチを入れると、噴射した空気は、運搬手段42から水を押し出す。
【0076】
一態様によれば、噴射手段50により噴射した空気は、気泡の形で噴射される。気泡は、船体20の空気潤滑の非常に有効な手段である。
【0077】
一態様によれば、噴射した気泡は、0.1mmと100mmの間で構成される直径を有する。一態様によれば、噴射した気泡は、0.2mmと20mmの間で構成される直径を有する。
【0078】
一態様によれば、気泡は、5mm未満の直径を有する。したがって、この構成によれば、気泡は、船体20近傍の流体の流れの境界層の厚さに対応する距離である5mm未満の直径を有する。
【0079】
一態様によれば、噴射した気泡は、0.4mmと1.3mmの間で構成される平均直径を有する。この範囲の直径の気泡は、流体力学的抗力を低減するための高い効率を有する。
【0080】
一実施の形態によれば、噴射した気泡は、船舶の船体の下に空気のシートを形成する。一実施の形態によれば、気泡は、噴射手段を出た後に合流するのに十分な流量で噴射される。そのような構成により、船体の下に空気シートを形成することができ、このシートにより、船体上の摩擦を大幅に低減することができる。したがって、流体力学的抗力は、大幅に低減される。
【0081】
一実施の形態によれば、気泡は、船体の下に混合層を形成する。混合層は、シートの形態である部分と、気泡の形態である部分とを含む層を意味すると考えられる。この構成により、シートの場合より少ない噴射気流を必要としつつ、船舶の船体の摩擦を低減させることができる。
【0082】
一態様によれば、噴射手段50は、適応ノズルを備える。この態様によれば、ノズルは、空気噴射を適応させるために適応可能な形状を有する。一態様によれば、ノズルの直径は適応可能である。この態様によれば、ノズルの直径は、噴射した気泡のサイズを制御するために適応する。一態様によれば、ノズルの適応は、コマンド制御装置により制御される。このように、コマンド制御装置は、空気噴射を制御することができる。好ましくは、コマンド制御装置は、ノズルの直径を制御する。したがって、気泡の直径は、コマンド制御装置により直接制御される。
【0083】
水翼
一実施の形態によれば、船体20は、少なくとも1つの水翼60を備える。また、船体は、1つ、2つ、3つ、又は4つ以上の追加の水翼60を備えてもよい。水翼60は、船体20の一部であり、流体力学的プロファイルを含む。流体力学的プロファイルにより、水翼60が動いている間、船舶10を上昇させることができる。また、このタイプの装置は、しばしば水中翼船又はフォイルとも呼ばれる。
【0084】
船舶10が移動している間船舶10を上昇させることにより、水中にある船舶の表面及び体積を減少させることができる。したがって、このタイプの装置により、周囲の水による船舶10の移動を妨害する力を低減させることができる。
【0085】
図2は、2つの水翼60を備える船体20の場合を示す。また、
図2は、船舶の水線70も示す。この水線70は、水翼60の影響下で、停止時に船舶10の水線よりも船体30上で低い位置にある。したがって、アルキメデスモードにおける水線70のレベルでボート10が動いているとき、その水線では、その動きを妨害する水の力は、水翼60がない場合よりも低い。
【0086】
一態様によれば、水翼60は、運搬手段42により搬送される空気の少なくとも1つの噴射手段50を備える。水翼60の噴射手段50により、水翼60の表面を潤滑することができる。この構成は、水翼60が被る流体力学的抗力を低減することにより、抗力を低減するための装置40の効率を高めることができる。船体20がいくつかの水翼60を備える場合、それらの各々は、少なくとも1つの噴射手段50を備えてもよい。
【0087】
一態様によれば、水翼60の噴射手段50は、水翼の垂直部分のみに配置される。この構成によれば、水翼60の近傍に噴射した空気は、水翼の水平部分の近傍には関係しない。水翼の水平部分は、水翼60の揚力を担う。換言すれば、水翼60の水平部分は、船舶10が動いているときに船舶10を上昇させることができる。噴射した空気でこれらの部分を潤滑しないことにより、水翼60が関与する揚力を低下させないことができる。このように、水翼60の上昇効果は限定されない。
【0088】
一態様によれば、コマンド制御システムにより、1又はいくつかの噴射手段50のレベルで空気の噴射を停止することができる。
【0089】
一態様によれば、コマンド制御システムは、運搬手段42のバルブの閉止を制御することができる。したがって、コマンド制御システムは、所望の噴射手段50における空気の噴射を停止することができる。
【0090】
船体のレイアウト
本発明の一態様によれば、船体20は、セットバック24を備える。このセットバック24を
図3に示す。セットバック24は、船舶10が水上にあるときに垂直である表面を含む船体24の段差である。セットバック24の垂直面は、船舶10の後部に向かって自由側に向けられている。
【0091】
一態様によれば、噴射手段50は、セットバック24の垂直面上に配置される。このように、噴射手段50は、ボート10の前方から後方に向かう方向に空気を水中に噴射する。有利には、セットバック24により、ボート10が動いているときに、セットバック24の背後に水の窪みを作ることができる。この窪みは、噴射手段50により、運搬手段42から空気を吸引する。したがって、この構成は、空気の噴射を容易にする。さらに、セットバック24により、セットバック24に近い水流を乱流にすることができる。セットバック24の近傍及び後方に乱流を形成することにより、船体30の長さに沿って噴射した気泡を振動させることができる。噴射した気泡の振動は、潤滑効率を高め、したがって、抗力を低減するための装置40の効率を高める。
【0092】
一態様によれば、船体20は、刻み目(窪み)26を含む。刻み目26は、船体26から内側に押し込まれる船体20の一部である。有利には、刻み目26は、セットバック24を含む。また、刻み目26は、少なくとも2つの他の横方向のセットバックによって形成される。刻み目26は、噴射した空気を船体20と接触して保持する空洞を船体20の表面22に形成し、該空洞は、空気が船体20の側面において上昇するのを防止する。このように、噴射した空気は、その全長に沿って船体を追いかける。したがって、船体20の後部は、噴射した空気により十分に潤滑される。したがって、刻み目26は、噴射した空気のためのチャネルを形成する。
【0093】
一構成によれば、船体20は、その表面22上に配置された少なくとも一つのスライダを備える。スライダは、船体20から突出するビードの形態を意味すると考えられる。好ましくは、突起は、低い高さであり、したがって、スライダの下流の水の流れを乱流にすることができる。換言すれば、スライダは、船体20上に配置されたビード形状又は半ビード形状を有する。また、半シリンダ形状を有する1以上のスライダを設けてもよい。好ましくは、スライダは流線型形状を有する。流線型形状は、形状の周囲の流体の流れに対する抵抗が少ない形状を意味すると考えられる。好ましくは、このスライダは、1以上の噴射手段50のすぐ上流側に位置する。このスライダは、1以上の噴射手段50のすぐ下流側に位置してもよい。有利には、スライダにより、水の流れをスライダの通路で乱流にすることができる。したがって、この構成により、噴射した空気による潤滑をより効果的にする。さらに、船体20は、各噴射手段50の上流側及び下流側に位置する複数のスライダを備えてもよい。また、複数のスライダは、噴射手段50の下流側に設けられてもよいが、それらからさらに離れた位置に配置されてもよい。これらのスライダは、噴射した空気の通過を通して船体に接触する乱流を維持する目的で、船体に接触する流れが層流になるのを防止することができる。
【符号の説明】
【0094】
10:船舶
12:船室
20:船体
22:浸漬されるように意図した船体の表面
24:船体のセットバック
26:船体の刻み目
30:燃料電池
32:水素タンク
35:モータ
37:排気スタック
40:流体力学的抗力を低減するための装置
42:燃料電池により排出される空気の運搬手段
43:見かけの風のための回収手段
44:熱交換器
45:見かけの風のための回収手段の開口
46:気流センサ
47:接合部
48:圧力センサ
49:見かけの風の回収手段のセクションの低減
50:第1量の空気の噴射手段
52:噴射手段により噴射される空気
60:水翼
70:浮揚線
【国際調査報告】