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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-15
(54)【発明の名称】組織拡張システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/12 20060101AFI20240207BHJP
【FI】
A61F2/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524587
(86)(22)【出願日】2021-10-22
(85)【翻訳文提出日】2023-05-24
(86)【国際出願番号】 US2021056252
(87)【国際公開番号】W WO2022087410
(87)【国際公開日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】63/104,331
(32)【優先日】2020-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517202788
【氏名又は名称】シエントラ, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Sientra, Inc.
【住所又は居所原語表記】420 S. Fairview Ave., Ste. 200, Santa Barbara, CALIFORNIA 93117 United States
(71)【出願人】
【識別番号】324000678
【氏名又は名称】ガイガー,スティーヴン,チャールズ
(71)【出願人】
【識別番号】324000689
【氏名又は名称】カーライル,ダン
(71)【出願人】
【識別番号】324000690
【氏名又は名称】マクレラン,トム
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ガイガー,スティーヴン,チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】カーライル,ダン
(72)【発明者】
【氏名】マクレラン,トム
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA19
4C097BB01
4C097BB08
4C097CC08
4C097CC18
(57)【要約】
組織拡張器は、排液口及び注入口を含むポートアセンブリと、該ポートアセンブリに取り付けられる磁石ハウジングアセンブリであって、該磁石ハウジングアセンブリは患者の生体組織の外面上で検出可能な磁場を有する単一の磁石を含む、磁石ハウジングアセンブリと、組織拡張器の内部空洞を画定するシェルと、排液管を介して排液口と流体連通する排液アセンブリと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織拡張器であって、
第1のポート及び第2のポートを含むポートアセンブリと、
前記ポートアセンブリに取り付けられる磁石ハウジングアセンブリであって、該磁石ハウジングアセンブリは第1の磁石及び第2の磁石のうちの1つ以上を含む、磁石ハウジングアセンブリと、
当該組織拡張器の内部空洞を画定し、患者の生体組織によって取り囲まれる外面を有するシェルと、
排液管を介して前記第1のポートと流体連通する排液アセンブリであって、
該排液アセンブリは、当該組織拡張器のシェルと一体化された排液マニホールドを含み、該排液マニホールドは、前記排液管に取り付けられる排液穴コンポーネントに連結され、
前記排液アセンブリは、前記シェルの外面の周辺の前記患者の死んだ皮膚を含む漿液への流体アクセスを前記第1のポートに提供する、
排液アセンブリと、
を含む組織拡張器。
【請求項2】
前記第1のポートは、排液口であって、前記排液管が該排液口に及び該排液口から流体を導くように前記排液管に連結された排液口を含み、
前記第2のポートは、注入口であって、該注入口は、前記組織拡張器の前記内部空洞に流体を導いて前記組織拡張器を拡大させることにより、前記組織拡張器を取り囲む前記患者の生体組織を拡張させる、注入口を含む、請求項1に記載の組織拡張器。
【請求項3】
前記磁石ハウジングアセンブリの前記第1の磁石及び前記第2の磁石のうちの少なくとも1つは、ポート探知器内の第3の磁石を引き付ける第1の極性を有し、該ポート探知器は、前記患者の生体組織の外面上で、前記第1のポート及び前記第2のポートの位置を識別するように構成されている、請求項1に記載の組織拡張器。
【請求項4】
前記組織拡張器の前記第1の磁石及び前記第2の磁石は、前記組織拡張器の前記第1のポート及び前記第2のポートから分離されている、請求項1に記載の組織拡張器。
【請求項5】
前記第1の磁石及び前記第2の磁石の直径は約1/2インチ以下である、請求項1に記載の組織拡張器。
【請求項6】
前記組織拡張器を所定の位置に固定するように構成された複数の縫合タブをさらに含み、該複数の縫合タブは前記シェルの基本外周接線に対して垂直な長さ方向の中心線を有するように配置されている、請求項1に記載の組織拡張器。
【請求項7】
組織拡張器の第1のポート及び第2のポートのうちの少なくとも1つを特定する方法であって、当該方法は、
前記組織拡張器が内部に埋め込まれた患者の生体組織の上でポート探知器をホバリングさせることであって、該ポート探知器は少なくとも1つの磁石及び少なくとも1つの探知器開口を含む、ことと、
前記ポート探知器の前記少なくとも1つの磁石が前記組織拡張器内の磁石に引き付けられることに応答して、前記少なくとも1つの探知器開口を用いて、前記組織拡張器の前記第1のポート及び前記第2のポートのうちの1つ以上を識別することであって、前記組織拡張器内の前記少なくとも1つの磁石は、前記組織拡張器の前記第1のポート及び前記第2のポートから分離されている、ことと、
を含む、方法。
【請求項8】
組織拡張器であって、
第1のポート及び第2のポートを含むポートアセンブリと、
前記ポートアセンブリに取り付けられる磁石ハウジングアセンブリであって、該磁石ハウジングアセンブリは、患者の生体組織の外面上で検出可能な磁場を有する単一の磁石を含む、磁石ハウジングアセンブリと、
当該組織拡張器の内部空洞を画定し、前記患者の生体組織に取り囲まれる外面を有するシェルと、
排液管を介して前記第1のポートと流体連通する排液アセンブリであって、
該排液アセンブリは、当該組織拡張器の前記シェルと一体化された排液マニホールドを含み、該排液マニホールドは、前記排液管に取り付けられる排液穴コンポーネントに連結され、
前記排液アセンブリは、前記シェルの外面の周囲の前記患者の死んだ皮膚を含む漿液への流体アクセスを前記第1のポートに提供する、
排液アセンブリと、
を含む組織拡張器。
【請求項9】
前記第1のポートは、排液口であって、前記排液管が該排液口に及び該排液口から流体を導くように前記排液管に連結された排液口を含み、
前記第2のポートは、注入口であって、該注入口は、前記組織拡張器の内部空洞に流体を導いて前記組織拡張器を拡大させることにより、前記組織拡張器を取り囲む前記患者の生体組織を拡張させる、注入口を含む、請求項8に記載の組織拡張器。
【請求項10】
前記組織拡張器を所定の位置に固定するように構成された複数の縫合タブをさらに含み、該複数の縫合タブは前記シェルの基本外周接線に対して垂直な長さ方向の中心線を有するように配置されている、請求項8に記載の組織拡張器。
【請求項11】
前記磁石ハウジングアセンブリは、
ハイブリッド磁石ハウジングアセンブリ、
前記磁石ハウジングアセンブリに取り付けられるブレース構造、
前記第1のポート及び前記第2のポートを取り囲むハウジング、
前記磁石ハウジングアセンブリに取り付けられる1つ以上のバネ機構、
前記磁石ハウジングアセンブリに取り付けられる回転又は線形バネ、及び
前記磁石ハウジングアセンブリが埋め込まれるブリッジ構造、
のうちの1つを含む、請求項8に記載の組織拡張器。
【請求項12】
前記磁石ハウジングアセンブリは、前記第1のポートと前記第2のポートとの間の水平軸に沿って配置されている、請求項8に記載の組織拡張器。
【請求項13】
前記単一の磁石は前記第1のポート及び前記第2のポートから分離されている、請求項8に記載の組織拡張器。
【請求項14】
前記単一の磁石は、ポート探知器による検出のために前記第1のポート及び前記第2のポートの上に磁場を投射する、請求項8に記載の組織拡張器。
【請求項15】
前記ポート探知器は、デジタルポート探知器及びアナログポート探知器のうちの1つを含む、請求項14に記載の組織拡張器。
【請求項16】
前記デジタルポート探知器は、
前記組織拡張器の前記磁石ハウジングアセンブリ内の前記単一の磁石によって投射される磁場の強度、
前記磁石ハウジングアセンブリ内の前記単一の磁石の幾何学的形状、
前記磁石ハウジングアセンブリ内の前記単一の磁石の向き、及び
前記磁石ハウジングアセンブリ内の前記単一の磁石の極性、
のうちの1つ以上に基づいて前記デジタルポート探知器の動作を較正するソフトウェアを含む、請求項15に記載の組織拡張器。
【請求項17】
前記組織拡張器が流体により膨張するか又は満たされた場合に、前記組織拡張器の前記シェルの上部の拡張を抗するスカートアセンブリをさらに含む、請求項8に記載の組織拡張器。
【請求項18】
前記スカートアセンブリは、流体送達装置によってできた穿刺孔を密封する成形隔壁を含む、請求項17に記載の組織拡張器。
【請求項19】
前記磁石ハウジングアセンブリは、前記単一の磁石が外部磁場と相互作用する場合に、前記スカートアセンブリ、前記第1のポート及び前記第2のポートのうちの1つ以上に対する応力を処理する構造を有するウェブ構成に配置されている、請求項17に記載の組織拡張器。
【請求項20】
前記単一の磁石は、逆磁場にさらされた後に、約3テスラに対応する、強度の約99%を保つ、請求項8に記載の組織拡張器。
【請求項21】
前記単一の磁石は、実質的に直径0.25×長さ0.0375の円筒状の磁石を含む、請求項8に記載の組織拡張器。
【請求項22】
前記磁石ハウジングアセンブリは、内部で収容する前記単一の磁石を、前記第1のポートと前記第2のポートとの間に前記単一の磁石の力を分配する半柔軟性の材料内で拘束する、請求項8に記載の組織拡張器。
【請求項23】
組織拡張器の第1のポート及び第2のポートを特定する方法であって、当該方法は、
組織拡張器が埋め込まれた患者の生体組織の上でポート探知器をホバリングすることであって、該ポート探知器は、
コンピューティングデバイスプロセッサと、
前記組織拡張器内の磁石の磁場を検出及び分析する命令を記憶するメモリと、
を含む、ことと、
前記組織拡張器内の前記磁石の磁場を検出及び分析することに応答して、前記組織拡張器の前記第1のポート及び前記第2のポートの位置を方向的に示すことであって、前記組織拡張器内の前記磁石は、前記組織拡張器の前記第1のポート及び前記第2のポートから分離され、前記組織拡張器の前記第1のポートと前記第2のポートとの間に位置する、ことと、
を含む、方法。
【請求項24】
前記ポート探知器は、前記組織拡張器内の前記磁石の磁場の検出時に自身を較正する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ポート探知器は、前記組織拡張器内の磁石の磁場を検出することに応答して、前記組織拡張器の注入口及び排液口がどこに位置するかの1つ以上の表示を提供するディスプレイ装置を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記第1のポートは、排液口であって、排液管が該排液口に及び該排液口から流体を導くように前記排液管に連結された排液口を含み、
前記第2のポートは、注入口であって、該注入口は、前記組織拡張器の内部空洞に流体を導いて前記組織拡張器を拡大させることにより、前記組織拡張器を取り囲む前記患者の生体組織を拡張させる、注入口を含む、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は組織拡張システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
組織拡張器は乳房再建に関連して一般的に用いられている。手術の後に、組織拡張器は、組織拡張期の周囲の皮膚エンベロープを維持するか又は増やすために、乳房の空洞に埋め込まれる。組織拡張器は、より永続的なインプラントのために最終的に取り除かれる。
【0003】
特許文献1には組織拡張器が開示され、該組織拡張器内の空間に流体を送達し、選択的に流体を加えて組織拡張器を拡張するための第1のポート及び流体の吸引を可能にする一体型排液システムを介して組織拡張器の周囲の空間を処理するための第2のポートを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第8454690号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているもの等の組織拡張器は、流体の送達及び吸引を促進できるよう外科医がポートを見つけることができるようにするため、ポートと同じ場所に位置する磁石の形で大量の金属を含む形で現在作られている。ポート自体も金属で形成されている。組織拡張器に大量の金属を用いることで、そのような組織拡張器を有する患者に対する放射線療法及び/又は磁気共鳴画像法(MRI)技術の使用の妨げとなり得る。より具体的には、組織拡張器で金属を用いることで、放射線療法に伴う線量計算に影響を及ぼすことに加えて、放射線療法の間の組織拡張器の周辺の有機組織と放射線との望ましくない相互作用が生じ得る。組織拡張器内の磁石のサイズ及び強さは、MRI装置によって生成される磁場にも干渉し得るため、組織拡張器の周囲で撮影されたMRIデータにノイズが導入される。したがって、このような組織拡張器を有する患者に放射線療法及び/又はMRI処置を用いることができるようにするために、組織拡張器で用いられる金属の量、磁石のサイズ及び磁石の強さを減らすことが望ましい。
【0006】
本開示は金属及び/又は非金属の充填物(fill)及び/又は排液口の検出を容易にする組織拡張器の実施形態を提供する。そのような組織拡張器の実施形態は、大幅に低いコストで生産されるという追加の利点を有する。
【0007】
さらに、関連するポート(例えば、流体の送達及び/又は流体の排液口)を素早く特定できるようにする組織拡張器構成を有することにより、乳房再建に関連する手順が最適化されるため非常に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、液体送達口又は吸引口から分離された位置磁石を含む、改善された組織拡張器に関する。ポートから磁石を分離することにより、磁石は組織拡張器の表面により近くに位置し得るため、従来技術の磁石ほど強力である必要はない。強度が低減された磁石を利用できるようにすることで、磁石のサイズは小さくなるため、質量及び表面が低減され得る。また、磁石はポートから分離されているため、組織拡張器内で内部ポートの深さが大きくなるため、必要に応じて組織拡張器への流体の送達及び/又は組織拡張器からの液体の回収のために完全な送達装置(例えば、注射器及び針の組み合わせ(syringe and needle combo))を用いることができる。加えて、より多くの流体をポンプで送り出しくみ上げることができるため、流体の送達及び/又は流体抽出プロセスの速度を上げるためにより直径が大きい装置(例えば、ゲージサイズが18の針)を用いることができる。ポートは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)材料及び/又は他のポリマー等の非金属コンポーネントでも構築できるため、組織拡張器内の金属の量がさらに低減される。
【0009】
改善されたポート探知器(port locator)も説明する。ポート探知器は、分離された単一の磁石又は複数の磁石がポート探知器を引き付けて、組織拡張器が埋め込まれている生体組織とぴったり重なることによりポート探知器の少なくとも2つの開口が組織拡張器のポートと揃うように分離された単一の磁石又は複数の磁石と連動するように設計されている。その後、施術者(practitioner)は2つの開口を介して組織拡張器のポートにアクセスし得る。場合によっては、ポート探知器は、組織拡張器の1つのポートから分離された単一の磁石と組み合わせて用いられ得る。そのような場合、組織拡張器内の分離された単一の磁石はポート探知器内の磁石を引き付け、その後、組織拡張器の1つのポートを識別するために生物学的組織とぴったり重なる。
【0010】
改善された排液管についても説明する。改善された排液管は断面積が減少しているため、排液管及び組織拡張器全体をより柔軟にする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A図1Aは例示の組織拡張器を示す。
図1B図1Bは組織拡張器の断面図を示す。
図1C図1Cは組織拡張器の排液口に供給される流体の流路を示す。
図2図2は組織拡張器のスカート/ポートアセンブリの分解図を示す。
図3A図3Aは組織拡張器の排液アセンブリの分解図を示す。
図3B図3Bは排液アセンブリの排液穴の実施形態の切断図を示す。
図3C図3Cは排液アセンブリの排液穴の実施形態の切断図を示す。
図4図4は、患者の生体組織に埋め込まれた組織拡張器の注入口及び排液口を特定するために用いられ得るポート探知器センブリを示す。
図5図5は、組織拡張器に液体を送達するか又は液体を抽出するために用いられる送達装置を示す。
図6図6は、組織拡張器に関連するポート探知器の分解図を示す。
図7図7は、ポート探知器が収容され得るパウチを示す。
図8図8は、組織拡張器の注入口及び排液口を特定するための例示のフローチャートを示す。
図9図9は、組織拡張器の注入口及び排液口に対して水平軸上に整列された磁石ハウジングアセンブリの実施形態を示す。
図10図10は、組織拡張器の磁石ハウジングアセンブリ内に配置された磁石の例示の磁場を示す。
図11図11は、患者の生体組織に埋め込まれた組織拡張器の注入口及び排液口を識別するために用いられる例示のデジタルポート探知器を示す。
図12図12は、組織拡張器の注入口及び排液口を特定するためにデジタルポート探知器を用いるための例示のフローチャートを示す。
図13図13A及び図13Bは、単一のスカート/ポートアセンブリを有する組織拡張器の一実施形態を示す。、単一のスカート/ポートアセンブリを有する組織拡張器の一実施形態を示す。
図14図14A図14Dは、組織拡張器の磁石ハウジングアセンブリの例示の実施形態を示す。
図15図15A図15Hは、組織拡張器の磁石ハウジングアセンブリの例示の実施形態を示す。
図16図16A図16Bは、組織拡張器の磁石ハウジングアセンブリの例示の実施形態を示す。
図17図17A図17Bは、組織拡張器の磁石ハウジングアセンブリの例示の実施形態を示す。
図18図18A及び18Bは、外部磁場により第1方向に回転し、外部磁場の影響を離れた後に定常位置により第2の方向に回転する磁石ハウジングアセンブリを示す。
図19図19は、磁石ハウジングアセンブリがスカートアセンブリに融合される例示の実施形態を示す。
図20図20は、組織拡張器の注入口及び排液口の両方を含む例示の単一のポートアセンブリを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
組織拡張器
【0013】
乳がんの治療では、悪性のがん腫瘍のある乳房を乳房切除術と呼ばれる手術で切除するされることが時としてある。乳房切除術を受けた患者はさらに乳房再建術を受けることがあり、その際には、乳房を切除した組織(例えば、皮膚組織又は無血管組織)の下に組織拡張器を即座に設置して、該組織を伸ばす及び/又は将来の乳房移植に対応するため既存の組織ポケットを維持する。場合によっては、患者の組織の下に組織拡張器を設置することは乳房切除術の後しばらく遅れることがある。しばらくすると、患者は治癒過程の一環として、組織拡張器の周囲の組織ポケット内に流体(例えば、死んだ皮膚を含む漿液腫)を溜め得る。本開示は、流体の効率的な抽出、漿膜腫に関連する感染症の消毒、組織拡張器の充填/吸引、そのような処置のためのポートのシームレスな識別を可能にし、組織拡張器を有する患者が埋め込まれた組織拡張器を取り除く必要なしに放射線療法及びMRI等の治療を受けることを可能にする、改良された特徴を有する組織拡張器を提示する。
【0014】
図1Aは、本開示の一実施形態に係る組織拡張器100を示す。組織拡張器は、磁石ハウジングアセンブリ102、注入口104、排液口106、排液管108及び1つ以上の縫合タブ110a~110dを含み得る。組織拡張器100はスカート/ポートアセンブリ200も含み、それらの内に磁石ハウジングアセンブリ102と、注入口104及び排液口106とがそれぞれ配置されている。操作上、組織拡張器100のシェル112は、シェル112を拡大することにより組織拡張器100を囲む患者の生体組織(例えば乳房/皮膚組織)の拡大をもたらすために流体(例えば、食塩水、水、空気等)を受容する内部空洞114を定義する。縫合タブ(suture tabs)110a~110dは、組織拡張器100が患者の無血管の組織ポケット内を動き回らないようにするために所定の位置に固定する。一実施形態によれば、縫合タブ110a~110dは、シェル112の基本周囲接線に垂直な長さ方向の中心線を有するように位置し得る。これにより、縫合タブ110a~110dは、患者の無血管組織ポケット内に配置された後に組織拡張器100が組織拡張器100の伸長及び/又は他の動きによって外れるのを防止する望ましい伸長補強特性を有することができる。
【0015】
組織拡張器100の断面図120図1B)は、管結合部(tubing junction)12(図2参照)と排液管108(図1参照)の連結を示す。一実施形態では、この連結は接着剤を用いてさらに強化され得る。図1Cの組織拡張器100の斜視図は、排液口106に供給される(例えば、注入される)流体(例えば、抗生物質)の流路130を示す。図2に関連してさらに説明するように、流体は先ず排液口カップ5を通過し、次に、排液アセンブリ300に到着する前に流路130を介して排液管108を通過する(図1C参照)。
【0016】
図2のスカートアセンブリ200の分解図は、磁石ハウジングアセンブリ102に加えて、注入口104及び排液口106のコンポーネントの配置を収容するスカートアセンブリ200を示す。スカートアセンブリ200は、注入口104に関連する注入口カップ4と、排液口106に関連する排液口カップ5(図1Cにも示す)とを含む。一実施によれば、流体(例えば、食塩水、水、空気等)は注入口カップ4を介して組織拡張器100の内部空洞114に供給され及び/又は内部空洞114から抽出される。この流体は、組織拡張器100の内部空洞内の流体の量に応じて、組織拡張器を拡張及び/又は収縮させる。また、排液口カップ5は、排液管108を介して排液アセンブリ300(図1A参照)と流体連通している。注入口カップ4及び排液口カップ5は、スカートアセンブリ200のスカート2の上に位置する。一部の実施によれば、注入口カップ4は、組織拡張器の内部空洞114への流体の流れ(例えば、食塩水の流れ)を調整するように構成され得る。同様に、排液口カップ5は、組織拡張器100の排液アセンブリ300からの流体の流れ(例えば、胸ポケット内の漿液)を調整するように構成され得るか又は組織拡張器100の排液アセンブリ300への流体の流れ(例えば、抗生物質の流れ)を調整するように構成され得る。
【0017】
少なくとも1つの溝が、該少なくとも1つの溝内に磁石ハウジングアセンブリ6(磁石ハウジングアセンブリ102として図1Aに示す)が収容されるようにスカート2に作成され得る。一実施形態によれば、各磁石ハウジングアセンブリ6は、図4に関連して後述するように、施術者(例えば、外科医、看護師、医師等)が容易に注入口104及び排液口106を特定できるようにガイドするために、各磁石ハウジングアセンブリ6内に取り付けられた磁石を有し得る。
【0018】
理解できるように、磁石ハウジングアセンブリ6に磁石を配置すると、注入口104及び排液口106から磁石を効果的に分離できる。これにより、注入口104及び排液口106のそれぞれに最適な設計上の考慮事項に影響を与えることなく、組織拡張器100の磁石を小型化できるという利点がある。例えば、注入口カップ4及び排液口カップ5は、磁石ハウジングアセンブリ6内の磁石の表面積に対してより大きな入口表面積を有し得る。例えば、各磁石ハウジングアセンブリ6内の磁石の表面積はそれぞれ、注入口カップ4又は排液口カップ5の入口表面積の約0.01~0.1倍であり得るか又はそれぞれ、注入口カップ4又は排液口カップ5の入口表面積の約0.2~0.3倍であり得るか又はそれぞれ注入口カップ4又は排液口カップ5の入口表面積の約0.3~0.4倍であり得る。場合によっては、組織拡張器100及び/又はポート探知器600で用いられる磁石は約700~1200ガウスの強度を有する。加えて、本開示で説明した磁石は、従来技術の組織拡張器システムで用いられる磁石に対して大幅に直径が小さい。一部の実施形態では、本開示の磁石の直径は、従来技術の磁石に対して直径が50%以上小さい。実際に、直径が約1/2インチであり、従来技術の磁石に対して小さい磁石が考えられる。本開示で説明した磁石の低減されたサイズにより、従来技術の磁石に対して磁石の質量がはるかに小さくなる。
【0019】
なお、磁石ハウジングアセンブリ6内の磁石を除く組織拡張器の様々なコンポーネントは、一部の実施によれば非金属である。例えば、従来技術の組織拡張器はチタンポートを利用していたが、本開示では、ポートにPEEK材料等のポリマーを用いることを考えるため、組織拡張器内の金属の量がさらに低減される。
【0020】
ポートから磁石を分離し、金属ポートを取り除いた結果、組織拡張器内の金属の量が全体的に低減されるため、そのような組織拡張器を有する患者は医療処置(例えば、放射線療法)及び/又は磁気共鳴画像法(MRI)を伴う他の処置を受けることができる。実際に、より小さな磁石の使用を介してMRIの条件付き状態を実現できる。繰り返しになるが、組織拡張器100で用いられる磁石を注入口104及び/又は排液口106から分離することで、注入口カップ4及び排液口カップ5の最適な入口のサイズ等の設計上の考慮事項を犠牲にすることなく、組織拡張器100内で小さな磁石を用いることができる。
【0021】
図2に戻って、スカートアセンブリ200は磁石ハウジングアセンブリ6内の磁石に磁気絶縁を提供する磁気スペーサーディスク7も含む。スカートアセンブリ200のスカート取り付け層3は、スカート2の底面に取り付けられる上面を有する。排液口カップ5の管結合部12は、排液管108(図1A参照)を排液アセンブリ300(図1A参照)に流体連結し得ることが理解されよう。そのような実施形態では、排液管108は、シェル112の内面と内部空洞114(図1A参照)の外面との間に位置し得る。一実施形態では、排液管108はシェル112の内面に取り付けられている。他の実施形態では、排液管108は内部空洞114の外面に取り付けられている。一部の実施形態によれば、排液管108はシェル112の内面と内部空洞114の外面との間の空間を自由に通過するようにも構成され得る。排液管108が内部空洞114の内部区画を通過して排液アセンブリ300と結合する構成も本明細書で考慮される。
【0022】
図3Aは、本開示の一実施形態に係る排液アセンブリ(drain assembly)300の分解図を示す。排液アセンブリ300は、排液バッキング層8、排液バッキング取り付け層9、排液マニホールド10及び排液マニホールド取り付け層11を含み得る。排液バッキング層は、その入口が排液管108(図1A参照)と嵌合するように構成された排液穴7を含む。好ましい実施形態によれば、排液穴7は、排液アセンブリ300のいかなる部分によっても塞がれていない。一部の実施形態によれば、取り付け層9及び11は、排液マニホールド10の穴の寸法と同様の穴の寸法を有するように構成されている。本開示で提供される様々な組織拡張器の実施形態に関連して説明する排液アセンブリは、組織拡張器のシェルの下部の周りに位置し得る及び/又は組織拡張器の上部の周りに位置し得る及び/又は組織拡張器のシェルの複数の部分の周りに位置し得ることが理解されよう。開示する組織拡張器の様々な実施形態は、必要に応じて複数の排液アセンブリを含み得ることがさらに理解されよう。
【0023】
一部の実施によれば、排液アセンブリ300のコンポーネントは、流体の送達及び/又は流体の抽出のために最適化され得る。例えば、図3Aの排液バッキング層8、排液バッキング取り付け層9、排液マニホールド10及び排液マニホールド取り付け層11は、排液バッキング層8、排液バッキング取り付け層9、排液マニホールド10及び排液マニホールド取り付け層11の継ぎ目が両端で先細りになり且つ半球状になって排液の断面積が小さくなるように組織拡張器100のシェル112内に形成されるか又は埋め込まれる。これにより、組織拡張器の内部空洞114内の流体(例えば、食塩水、ガス又は水)に基づいて、排液がシェル112に対してより拡張及び/又は収縮しやすくなる。
【0024】
図3B及び図3Cは、排液アセンブリ300の排液穴7の実施形態の断面図を示す。図3Bは、スペーサ層310を含むツーピース構造を示すの対して、図3Cは、スペーサ層が取り除かれ、結果として単一部品(one-piece)なった実施形態を示す。図3Cの排液アセンブリの実施形態は、スペーサ層の取り除くことにより、スペーサ層に関連する接着層の必要性も取り除かれるため、とりわけ有利である。そのため、図3Cの単一部品の実施形態はさらに所望な柔軟性を実現する。双方の実施形態において、流体及び/又は他の物質(例えば、不純物)が排液穴7に付着するのを防止する付着防止コーティング特性を排液穴7に持たせるために排液穴7をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に浸漬させる前に、金型のマンドレルに置かれ得る。組織拡張器100の他のコンポーネントも付着防止性を高めるためにPTFEでコーティングされ得ることが認識されよう。例えば、排液マニホールド取り付け層11、排液バッキング層8及び排液管108もPTFEでコーティングされ得る。
【0025】
一部の例では、排液アセンブリのコンポーネントの1つ以上は、図3B及び/又は図3Cの排液穴7が排液アセンブリのコンポーネントが統合されているシェル112の内面のレセプタクル内に摺動され得るか又は別の方法で取り付けられるように組織拡張器100のシェル112に直接統合される。前に述べたように、複数の排液アセンブリは、必要に応じて組織拡張器の様々な開示の実施形態の特定の位置に存在し得る及び/又は組織拡張器の様々な開示の実施形態のシェルの周りの複数の位置の周りに位置し得る。場合によっては、組織拡張器の各排液アセンブリは、組織拡張器のシェルに連結されたシェルレセプタクルに個別に統合され得る。一部の実施形態では、各排液アセンブリは、単一のシェルレセプタクルに連結され、単一のシェルレセプタクルは、組織拡張器の1つ以上の排液アセンブリから流体を収集及び/又は受け取り及び/又は組織拡張器の1つ以上の排液アセンブリに流体(例えば、抗生物質/消毒液、液剤等)を送達する。
【0026】
ポート探知器
【0027】
図4は、患者の生体組織に埋め込まれた組織拡張器100の注入口104及び排液口106を容易に識別するために用いられ得るポート探知器センブリ400を示す。ポート探知器センブリ400はタグ402及びチェーン404を含み得る。ポート探知器センブリ400は、ポート探知器600内に磁石位置406及び探知器開口408も含む。タグ402は、施術者(例えば、外科医、看護師等)が組織拡張器100を適切なタグ402に容易に一致させるのに役立つように、組織拡張器100の識別子情報(例えは、型番、型名等)を有し得る。ポート探知器は、探知器開口を組織拡張器内の特定の注入口及び排液口に対応させるために、「注入」及び「排液」等マーキングも有し得る。
【0028】
チェーン404(例えば、ボールチェーン)はタグ402をポート探知器600に取り付ける。一実施形態では、タグ402は、組織拡張器100を埋め込まれた患者の組織(例えば、乳房組織等の無血管組織)の外面の領域の上で施術者がポート探知器600をホバリングさせるために保持できる機構を提供する。例えば、施術者が、ポート探知器600をタグ402に連結するボールチェーンに接続されたタグ402を保持し、組織拡張器100が埋め込まれている患者の組織の表面の領域にわたってそれを動かすと、ポート探知器600は、組織拡張器100内の磁石がポート探知器600内の磁石を引き付けるまで、ポート探知器600と組織拡張器100との磁気相互作用に応答して自由に移動又は回転する。この磁力により、ポート探知器600は患者の組織の外面上の特定の位置に安定して配置される。この位置では、探知器開口408は、組織拡張器100の注入口104及び排液口106と整合する。各磁石位置406は、各磁石位置406内の両方の磁石の底部が、組織拡張器100の磁石ハウジングアセンブリ102内の上向き及び反対向きの磁石(例えば、S極、N局)に対応する反対の極性(例えば、N極、S極)を有するように配向されるよう磁石を収容し得ることが理解されよう。
【0029】
一実施形態では、ポート探知器600の磁石位置406内の磁石の反対の極性が、組織拡張器100の磁石ハウジングアセンブリ102内の反対向きの磁石と整合する場合、探知器開口408は注入口104及び排液口106と整合するため、組織拡張器100に流体を送達する及び/又は組織拡張器100から流体を抽出するために送達装置500が用いられ得る。より具体的には、組織拡張器が患者の生体組織(例えば、乳房等の無血管組織)内に埋め込まれており、組織拡張器100の注入口104及び排液口106は患者の生体組織の一部で覆われているため、施術者はこれらのポートを視覚的に識別することができない。そのため、開示の組織拡張器により、施術者はポート探知器600を用いて組織拡張器100の注入口及び排液口を容易に識別できる。
【0030】
組織拡張器100の注入口及び排液口を識別した後、施術者は送達装置500の先端502(例えば、注射器及び針の組み合わせ)を用いて、状況に応じて、探知器開口408を介して患者の組織に経皮的にアクセスするか、あるいは穿刺孔して、液体を投与及び/又は抽出し得る。
【0031】
一実施によれば、送達装置は注射器及び針の組み合わせであり、針のサイズは約15ゲージ~21ゲージであるか又はそれよりも大きい針である。例示の実施形態では、注入口104及び/又は排液口106を介して組織拡張器100に迅速に流体を送達すること及び/又は組織拡張器100から迅速に液体を抽出することを可能にする18ゲージの針である。例えば、組織拡張器周辺の患者の生体組織内の液体の蓄積(例えば、漿液腫)は死んだ皮膚の粒子を含み得る。そのため、施術者が漿液だけでなく、死んだ皮膚の粒子をより効率的に抽出することにより患者の感染症への曝露を最小限に抑えることができる針のサイズを有することが望ましい。開示の組織拡張器100は、組織拡張器100の排液口を介して漿液腫及び死んだ皮膚を迅速に抽出することを容易にするために、大きな針のサイズ(例えば、18ゲージ以上)の使用を可能にする。抗生物質は、漿液腫によって発生した可能性のある感染症を治療するために、組織拡張器100の排液口を介して送達され得る。さらに、一部の実施では、排液口及び注入口は、組織拡張器100内の磁石の位置に対して、患者の無血管組織よりも深くなるように構成されている。これは、一部には、組織拡張器100の磁石ハウジングアセンブリ102内の磁石が、排液口106及び注入口104からそれぞれ分離されているためである。その結果、組織拡張器の磁石をポートから分離することで、より大きく且つ深い穿通点点の送達装置(例えば、針のサイズが18ゲージ以上の注射器及び針の組み合わせ)の使用を効果的に可能にするため、流体のより迅速な送達及び/又は抽出が可能になる。従来技術の構成に対するこの利点により、組織拡張器100のシームレス且つ迅速な充填及び/又は吸引が可能になり、患者の快適性が高まる。
【0032】
図6は、本開示の一実施形態に係るポート探知器600の分解図を示す。ポート探知器600は、探知器本体1、少なくとも2つの磁石2、磁石ハウジング3、探知器スペーサ4、止めねじ5及びストッパ6を含み得る。探知器本体1は、止めねじ5と磁石2との間の磁力を用いて探知器スペーサ4に固定され得る。磁石ハウジング3は磁石2を保持するか、あるいは収納するように構成される一方、ストッパ6はチェーン404を効果的に所定の位置に固定することで、ポート探知器600をタグ402に取り付ける。磁石ハウジング3(図1の磁石ハウジングアセンブリ102も)は、磁石2が不当な外部干渉から確実に遮断されるようにする。好ましい実施形態では、探知器本体1は、ポート探知器600の磁石を組織拡張器100内の磁石と適切に整合させた後に、患者の組織の下にある関連するポートを施術者により良く知らせるために、探知器開口408(図4参照)の周囲/近くに位置するテキスト(例えば、ラベリング等)及び/又はグラフィカル(例えば、マーキング)識別子610を含み得る。
【0033】
図4及び図6から分かるように、探知器開口408の位置は磁石ハウジング3の位置とは別であり、磁石2を組織拡張器100の注入口及び排液口から効果的に分離することを示す。一実施形態では、磁石ハウジング3の位置が互いに平行であるのと同様に、探知器開口408は互いに平行である。そのため、探知器開口408を通る仮想中心線区画と、磁石ハウジング3の位置を通る別の仮想中心線区画とは、90度の角度を形成するように交差する。本願では、交差する角度が非垂直である他の実施形態も考えられる。ポート探知器600内の磁石の位置は、探知器開口408の位置に対してより高くてもよいことが理解されよう。
【0034】
一部の実施形態では、ポート探知器600は、図7に示すように、一次パウチ11内に配置され得る。一次パウチ11は、次に、1つ以上のポート探知器を含む1つ以上の一次パウチ11をさらに含み得る二次パウチ12内に配置され得る。場合によっては、一次パウチ11は、ポート探知器600内の磁石が磁気を失って弱くなるのを効果的に絶縁する。つまり、一次パウチ11は、ポート探知器600を収容し、ポート探知器が使用されていない間に望ましくない温度変化、外部電荷、リラクタンス変化及び/又は磁石に悪影響を及ぼす他の条件から保護するように構成され得る。
【0035】
方法
【0036】
図8は、組織拡張器100の注入口及び/又は排液口を特定するための例示のフローチャートを示す。ブロック802で、施術者は、内部に組織拡張器100が埋め込まれている患者の組織(例えば、乳房組織等の無血管組織)の外面の周りにポート探知器600を配置し得る。施術者は、先ず、ポート探知器600内の磁石が組織拡張器100内の磁石に結合するまで患者の組織の外面にポート探知器600を導き得る。一実施形態によれば、施術者は、ポート探知器600に連結されたタグを保持することによりポート探知器600を導き、ポート探知器600が組織拡張器100内の磁石に引き付けられるまで、患者の組織の外面上をホバリングさせる。この引き付けが起こるためには、ポート探知器600内のN極性の磁石が組織拡張器100内のS極性の磁石に引き寄せられ、ポート探知器600内のS極性の磁石が組織拡張器100内のN極性の磁石に引き寄せられる。ポート探知器600の磁石と組織拡張器100の磁石との間の引力により、組織拡張器100の注入口及び排液口がポート探知器600の探知器開口と効果的に整合804するように、ポート探知器600が患者の組織の外面の特定の位置に置かれるか、あるいは固定される。前に説明したように、探知器開口は、送達装置(例えば、注射器及び針の組み合わせ)が組織拡張器100の注入口及び排液口にアクセスできる開口を備えた構造的に中空(例えば、開口した円筒形状)であり得る。図8のブロック806で、施術者は、状況に応じて、探知器開口を介して、組織拡張器100の注入口及び/又は排液口に経皮的にアクセスし、流体を投与及び/又は抽出し得る。
【0037】
他の実施形態
【0038】
一部の実施では、組織拡張器100は、単一の磁石を保持するように構成された磁石ハウジングアセンブリ102’を有するように設計され得る。そのような構成は、例えば、図9の上部断面図に示すように、注入口104’と排液口106’との間に置かれた磁石ハウジングアセンブリ102’を有し得る。
【0039】
図9の例は、注入口104’及び排液口106’とのそれぞれ平行な水平軸906’に沿って単一の磁石を水平に保持又は配置できるように設計された磁石ハウジングアセンブリ102’を示すが、本願では、単一の磁石を注入口104’及び排液口106’のそれぞれの間の角度のある非平行軸908’に沿って配置するか又は斜めに配置できるように磁石ハウジングアセンブリ102’が構成され得ることが考えられる。図1の排液口106と同様に、図9の排液口106’は、組織拡張器の排液管に連結された管結合部12’を含むことが理解されよう。一部の例では、磁石ハウジングアセンブリ102’は、ポート探知器が磁石ハウジングアセンブリ102’内の単一の磁石の磁気の向きを容易に検出できるようにするために、組織拡張器の上面近くに作られる。そのような実施では、注入口104’及び排液口106’のそれぞれは、磁石ハウジングアセンブリ102’内の単一の磁石の磁極(例えば、N極及びS極)又は磁場を用いて特定され得る。つまり、磁石ハウジング102’内に配置された単一の磁石は、注入口104’及び排液口106’を識別しやすくするために、ポート探知器によって容易に検出できる磁場(例えば、図10の磁場1000)を注入口104’及び排液口106’に投射し得る。そのため、磁石ハウジングアセンブリ102’は、磁石ハウジングアセンブリ102’内の単一磁石が、組織拡張器を用いている患者の生体組織の外面で検出可能な磁場を投射するように、組織拡張器のポートアセンブリに取り付けられ得る。他の実施形態では、磁石ハウジングアセンブリ102’は、MRI装置内等の強い外部磁場に応答して磁石を回転又は並進させ、その後に該磁場を離れた後にその元の位置に戻ることを可能にし得る。
【0040】
組織拡張器と他の医療機器(例えば、MRI装置、放射線治療装置)との間の望ましくない磁気的又は電磁的な相互作用が望まれる実施では、図9の構造により、磁石ハウジングアセンブリ102’内で非常に小さな磁石の使用を可能にして、感度の高い外部機器(例えば、MRI装置、放射線治療装置等)との非常に低い磁気的及び/又は電磁的相互作用及び/又は感度の高い内部機器(例えば、ペースメーカー等)との磁気的又は電磁的相互作用を実現し得る。一実施形態によれば、小さな磁石は、注入口104’及び排液口106’のそれぞれから効果的に分離される。磁石ハウジングアセンブリ102’内の単一の磁石によって生成される低磁場(例えば、図10の磁場1000)により、磁石ハウジングアセンブリ102’内の単一の磁石の磁場を検出及び/又は分析するのにデジタルポート探知器がより適している場合がある。例えば、図11のデジタルポート探知器600’は、磁石ハウジングアセンブリ102’内の単一の磁石の磁場を検出することと、該磁場を分析することと、該分析に基づいて、注入口104’及び排液口106’のそれぞれの位置を特定することを行うよう動作可能な、専用ソフトウェアを備えた1つ以上のコンピューティングデバイスプロセッサを含み得る。この、デジタルポート探知器を用いる注入口及び排液口の識別のプロセスは、図12のステップ1202~1206で概説されている。デジタルポート探知器/ファインダー600’のソフトウェアは、組織拡張器の様々な構成又は実施形態に適応するように構成され得ることが理解されよう。とりわけ、デジタルポート探知器600’は、必要に応じて最適に動作するように、磁石(例えば、磁石ハウジングアセンブリ102’内の磁石(図9))又は複数の磁石(例えば、磁石ハウジングアセンブリ102(図1A)内の磁石)の磁場の検出時に自身を較正し得るか又はデジタルポート探知器600’の動作モードを決定し得る。このような較正の汎用性(例えば、自動較正又は手動較正)により、組織拡張器100の複数の実施形態にわたって単一のデジタルポート探知器の使用を可能にする。さらに、デジタルポート探知器は、組織拡張器の磁石ハウジングアセンブリ内の磁石の磁場を検出することに応答して、組織拡張器の注入口及び排液口がどこに位置するかの1つ以上の表示を提供する表示装置1100(例えば、ディスプレイ画面、タッチスクリーン等)を含み得る。
【0041】
一部の実施によれば、磁石ハウジングアセンブリ102’は、磁石をその場所に固定するように構成されているため、例えばポート探知器及び/又はMRI装置からの外部の磁力/磁場により磁石が回転するのを防止する。磁石ハウジングアセンブリ102’のこの構造は、例えばポート探知器又はMRI装置からの外部の磁気トルクが磁石ハウジングアセンブリ102’内の磁石に加えられた場合に、磁石ハウジングアセンブリ102’内の磁石を維持するか又は望ましい向きに反発させることができる。
【0042】
図13Aは、単一のスカート/ポートアセンブリ200’’を有する組織拡張器100の一実施形態を示す。そのような実施形態では、注入口104’’及び排液口106’’は単一のスカート/ポートアセンブリ200’’に直接形成されるか又は埋め込まれる。磁石ハウジングアセンブリ102’’は、図9の磁石ハウジングアセンブリ102’に関連して説明した全ての特徴を有し得る。場合によっては、図13の磁石ハウジングアセンブリ102’’は、磁石ハウジングアセンブリ102’’が注入口104’’及び排液口106’’に対して等距離又は実質的に等距離になるように、注入口104’’及び排液口106’’の間の中央に位置し得る。一部の実施によれば、注入口104’’及び排液口106’’のそれぞれは、磁石ハウジングアセンブリ102’’の「上に掛かる(go over)」か又は「上」にあるように設計されている。とりわけ、単一のポートアセンブリ200’’の中心軸1300は、図13Bに示すように、直接磁石ハウジングアセンブリ102’’の上に掛かり得る。
【0043】
図13A又は図13Bの構成を有することのいくつかの利点は、組織拡張器200の単一のポートアセンブリ200’’は製造コストが低く、患者により良い快適さを提供することである。何故なら、磁石ハウジングアセンブリ102’’、注入口104’’及び排液口106’’を単一のポートアセンブリ200’’に統合することで組織拡張器100のかさばりが少なくなるからである。さらに、本開示で説明する組織拡張器100の様々な実施形態は、組織拡張器100の構成(例えば、図9図13A及び図13B)により放射線ビームを屈折させることができる複数の磁石又は単一の磁石(例えば、非常に小さな複数の磁石又は単一の磁石)の使用を可能にする。
【0044】
磁気相互作用
【0045】
なお、組織拡張器100の一部のユーザーは、組織拡張器100に配置された磁石と磁気的又は電磁的に相互作用し得る機器を伴う特定の医療処置を受け得る。例えば、組織拡張器100に関連して説明した磁石は、組織拡張器100の患者/ユーザーがMRI処置を受けるときに、磁気共鳴画像法(MRI)装置によって生成される磁場と相互作用し得る。MRIの例を考慮すると、特徴(例えば、磁石ハウジングアセンブリ102’又は102’’、単一のポートアセンブリ200’’、本開示により提供される小型の複数の磁石又は単一の磁石等)は以下の追加の利点を可能にすることが理解されよう。
(i)患者/ユーザーがMRI装置のボアに入るときに組織拡張器100及び/又は患者に対する変位力は臨床的に許容可能である。
(ii)MRI装置のボアに入る間及び入った後の組織拡張器100及び患者に対するトルクは臨床的に許容可能である。
(iii)MRI処置の前後における組織拡張器100の機能、動作又は使用が維持される(例えば、組織拡張器は構造的に影響を受けていないか又はその動作はMRI処置の影響を受けない。)。
(iv)組織拡張器100内で用いられる小さな複数の単一の磁石又は磁石の磁場は影響を受けない(組織拡張器で用いられる複数の磁石又は単一の磁石のいずれもMRI処置の後に消磁されない)。
【0046】
開示の組織拡張器は、温度(熱)及び逆の外部磁場による磁石の消磁を防止するように堅牢に構築されている。磁石の消磁に抗する能力は、幾何学(透過係数)、固有保磁力HCi又はHCj及び固有B-H曲線の形状と関連し得る。より長い及び/又はより細い磁石は、より短く厚い磁石よりも消磁に抗し得る。組織拡張器100を用いている患者とMRIの磁場方向との関係を考慮すると、一部の実施形態によれば、組織拡張器100内の磁石は、それを消磁するのに十分高い逆外部磁場を経験しないように設計されている。さらに、本願で開示の複数の磁石又は単一の磁石は消磁に抗するよう構造化されている。本開示で説明した組織拡張器100の様々な実施形態を用いて実施された試験の一部によれば、組織拡張器100で用いられる複数の磁石又は単一の磁石は、例えば、完全な逆磁場(例えば、MRI磁場によってもたらされる逆磁場)で少なくとも3T(例えば、3テスラの磁気共鳴)にさらされた後も、その強度の99%保持する。
【0047】
一部の実施によれば、組織拡張器で用いられる磁石は以下の追加の利点を有する。
・アナログのポート探知器(例えば、ポート探知器のポート探知器センブリ400)を介したポートアクセスを容易にするのに十分な強度。
・アナログポート探知器400(例えば、ポート探知器のポート探知器センブリ400)及び/又はデジタルポート探知器(例えば、デジタルポート探知器600’)の使用を容易にするのに十分な磁気強度。
・少なくとも3TのMRI被曝の前後に維持される十分な磁気強度。
・ポートの特定を容易にするために組織拡張器内の位置に適合し、組織拡張器100の嵩高さ又は他の望ましい特性に影響を与えない。
【0048】
一実施によれば、組織拡張器100で用いられる磁石は、直径0.25インチ×長さ0.375インチのグレードN32のネオジム鉄ホウ素円筒状磁石を含む。他の例示的な磁石のサイズは、ネオジム鉄ホウ素又はサマリウムコバルト又は熱及び逆磁場等の消磁の影響に適切に抗する他の製法から作られる直径0.25インチ×長さ0.25インチ又は直径0.1875インチ×長さ0.375インチのものを含む。
【0049】
さらに、前に説明したように、磁石ハウジングアセンブリ(例えば、磁石ハウジングアセンブリ102’及び/又は102’’)内の磁石は、磁石ハウジングアセンブリ内に配置された磁石が組織拡張器100の注入口及び排液口の上に磁場を投射し、ポートファインダ(例えば、ポートファインダ600’)を用いて注入口及び排液口の識別が容易になるよう屈曲するように組織拡張器100の注入口及び排液口の間及び/又は下に配置される。一部の実施形態では、ポートファインダ又はデジタルポート探知器は、
・組織拡張器100の磁石ハウジングアセンブリ内の磁石によって投射される磁場の強度、
・磁石ハウジングアセンブリ内の磁石の形状、
・磁石ハウジングアセンブリ内の磁石の向き、
・磁石ハウジングアセンブリ内の磁石の極性、
のうちの1つ以上に基づいてポートファインダの動作を較正するソフトウェアを含む。
【0050】
一部の実施によれば、磁石ハウジングアセンブリは、組織拡張器100を用いる患者及び/又は組織拡張器が保存されている環境を、組織拡張器100の磁石ハウジングアセンブリ内の磁石の悪影響への曝露から保護する。場合によっては、組織拡張器100の磁石ハウジングアセンブリは、磁石がその中に置かれた後に密閉される。磁石ハウジングアセンブリの一部の実施形態は、生体適合性コーティング及び/又は磁石ハウジングアセンブリ内の磁石の有害な影響を緩和する金メッキを用いた磁石ハウジングアセンブリ内のコーティングを含む。
【0051】
図13A及び図13Bに戻って、スカート/ポートアセンブリ200’’は、組織拡張器100が流体により膨張するか又は流体が注入された場合に、組織拡張器100の上部エキスパンダーシェルの膨張に抗し得ることが理解されよう。これにより、組織拡張器が埋め込まれる生体組織の周囲により解剖学的な乳房の形状と皮膚の膨張とが望ましい形で形成され得る。場合によっては、スカート/ポートアセンブリ200’’は、組織拡張器の注入口及び排液口にアクセスする場合に穿刺孔(例えば、針等の送液装置による穿刺孔)を密閉する成形中隔を含み得る。一部の実施では、組織拡張器100のスカート/ポートアセンブリは、アナログ及び/又はデジタルポートファインダ/ポート探知器の使用を有利な形で可能にする磁石を所定の位置で保持するバンパー領域(例えば、磁石ハウジングアセンブリ102’’)を含む。
【0052】
磁石ハウジングアセンブリの例
【0053】
図14A図17Bは、磁石ハウジングアセンブリ201’の例示の実施を示す。図Aは、例えばシリコーン構造に対して表面積を最大化し、それによりそこに収容された磁石の動きに抗するように設計されたハイブリッド磁石ハウジングアセンブリ102’を示す。場合によっては、図14Aの磁石ハウジングアセンブリ102’の構造は、(例えば、MRI装置から)外部の磁力との磁気相互作用の間に磁石ハウジングアセンブリ102’のわずかなねじれを許容しながら、中心方向から平行移動し得る移動アーム1400aを含む。図14Bに示すもの等の一部の実施形態によれば、磁石ハウジングアセンブリ102’は、トルク(例えば、外部の磁気相互作用によって磁石ハウジングアセンブリ102’内の磁石によって加えられるトルク)に対するより大きな抵抗を可能にする複数のアーム1400bをさらに含み得る。磁石ハウジングアセンブリ102’によるトルクに対するこの抵抗は、例えばアーム1400bのためにより大きな表面積を覆う磁石ハウジングアセンブリ102’に起因する。図14Cでは、磁石ハウジングアセンブリ102’は、注入口104及び排液口106のそれぞれを取り囲むハウジング(例えば、硬質のハウジング)内で構造化されている。とりわけ、図14Cの磁石ハウジングアセンブリ102’の構造は、センターブリッジ1400Cに配置された磁石ハウジングアセンブリ102’が注入口104及び排液口106の周りをループする。一部の実施形態によれば、磁石ハウジングアセンブリ102’を製造又は構築するのにシリコーンが用いられ得る。図14Cの磁石ハウジングアセンブリ102’の構造は、磁石ハウジングアセンブリ102’内に収容された磁石を、収容された磁石の力を注入口104と排液口106との間及び磁石ハウジングアセンブリ102’に分配する半柔軟性材料(例えば、シリコーン、弾性材料等)に制約することが理解されよう。
【0054】
磁石ハウジングアセンブリ102’は、例えば、図14Dに示すように、磁石ハウジングアセンブリ102’に取り付けられたブレース構造1400dを含み得る。一部の実施形態によれば、ブレース構造1400dは、磁石ハウジングアセンブリ102’内の磁石上のトルクによってもたらされる動きを減衰するために、例えば、シリコーン形状に圧入された磁石ハウジングアセンブリ102’を有すことにより、磁石ハウジングアセンブリ102’の動きに抵抗するために磁石ハウジングアセンブリ102’に対して最大の表面積を提供し得る。磁石ハウジングアセンブリ102’はPEEK材料及び/又は同様のポリマーを用いて構築され得ることが理解されよう。
【0055】
図15Aに示す実施では、磁石ハウジングアセンブリ102’は、例えばMRI装置との相互作用により、そこに含まれる磁石のわずかな回転を可能にするように構成されている。さらに、図15Aの磁石ハウジングアセンブリ102’の動的構造は、例えばMRI装置との相互作用の後に磁石ハウジングアセンブリ102’内の磁石が跳ね返って定常状態又は通常の位置に戻ることを可能にする。一部の例では、磁石ハウジングアセンブリ102’の構造は、図15Bに示すように、磁石ハウジングアセンブリ102’内の磁石のより大きな回転支持を可能にする特徴を採用する。これは、磁石ハウジングアセンブリ102’に収容された磁石のより大きな角度回転であっても、磁石ハウジングアセンブリ102’内の磁石のトルクを低減する。
【0056】
図15Cは、磁石ハウジングアセンブリ内の磁石が実質的に常に非静止である実施形態を示す。一部の場合では、図15Cの構造は図14Cの構造と同様であるが、図15Cでは、2つの磁石(例えば、2つの小さなディスク磁石1500a及び1500b)が磁石の端部又はその周辺に位置する点で異なる。例えば、1つの小さな磁石が磁石ハウジングアセンブリ102’内の磁石の第1の端部に位置し、別の小さな磁石が磁石ハウジングアセンブリ102’の第2の端部に位置し得る。組織拡張器が外部磁場(例えば、MRI装置から)の影響から取り除かれると、2つの小さな磁石は磁石ハウジングアセンブリ102’内の磁石(例えば、磁石1500c)を正しい向きに戻し得る。
【0057】
図15D及び図15Eに示す磁石ハウジングアセンブリ102’の実施形態は小さな磁石を採用する。考えられる小さな磁石のサイズの例としては、直径0.25インチ×長さ0.375インチのグレードN32のネオジム鉄ホウ素円筒状磁石又はネオジム鉄ホウ素又はサマリウムコバルト又は熱及び逆磁場等の消磁の影響に適切に抗する他の製法から作られる直径0.25インチ×長さ0.25インチ又は直径0.1875インチ×長さ0.375インチのものが挙げられる。一実施によれば、小さな磁石は、磁石ハウジングアセンブリ102’内の磁石のモーメントアームと、その小さな磁石に対するトルクとを低減するような構造を有する。さらに、図15Eに示す構造は、一定の磁場を維持しながら、比較的少量のトルクを受ける2つの小さな磁石を示す。
【0058】
図15Fは、ブリッジ構造1500f内に設計又は埋め込まれた磁石ハウジングアセンブリ102’の一実施形態を示す。ブリッジ構造1500fはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)材料又は弾性特性を有する他の最適な性能の工学的熱可塑性材料で作られ得る。一実施によれば、図15Fに示す構造は、スカートに作用する力及び/又は重量を、組織拡張器のスカートの複数の部分にわたって分散させ得る。
【0059】
図15Gでは、磁石ハウジングアセンブリ102’は、外部の駆動力(例えば、MRI装置からの磁気相互作用)により、磁石ハウジングアセンブリ102’内の磁石を注入口と排液口との間で自由に移動できるようにする格子バネ構造1500gに取り付けられている。この構造により、磁石ハウジングアセンブリ102’と注入口及び/又は排液口との間の接触が最小限にとどめられる。
【0060】
図15Hに示す実施形態では、磁石ハウジングアセンブリ102’は、磁石ハウジングアセンブリ102’内の磁石が外部磁場と相互作用するときに、スカートアセンブリ及び/又は注入口及び排液口に対する応力を処理する構造を有するウェブ構成1500
hに位置する。場合によっては、図15Hの構造は、磁石ハウジングアセンブリ102’内の磁石に相当量の外部トルクが加えられた場合に、磁石ハウジングアセンブリ102’内の磁石を最大約70度回転させることができる。一部の場合では、ウェブ構成1500hの他のコンポーネントが設計に含まれるのに十分な構造を可能にするために、図15Hの構成でより小さな磁石が用いられる。
【0061】
図16Aのペグ回転設計は、ペグ(例えば、シリコンペグ)を用いることにより組織拡張器の磁石がスカート表面にわずかに持ち上げられ得ることを考慮する。例えば、シリコンペグは、磁石ハウジングアセンブリ102’内の磁石のねじれの影響を受ける可能性があり、(例えば、MRI装置から)外部磁力との相互作用の後に磁石をその定常状態の位置に戻すことができるようにし得る。
【0062】
図16Bは、内部に磁石ハウジングアセンブリ102’が取り付けられているか又は埋め込まれた封入PEEKブリッジ(encased PEEK bridge)を示す。この設計では、磁石を収納する1つ以上のPEEKコンポーネントを用い、1つ以上のPEEKコンポーネントはさらにシリコーン製の鋳物に包み込まれる。この設計は製造が容易であるだけでなく、組み立ても容易である。封入シリコーン部品を用いることで、磁石ハウジングアセンブリ102’内の磁石は、少なくともPEEKコンポーネントとシリコーン部品との間にそのねじり力を広げることによりわずかに移動できる。
【0063】
一部の実施によれば、磁石ハウジングアセンブリ102’内の磁石は、柔軟性があり、磁石ハウジングアセンブリ102’内の磁石が(例えば、MRI装置のフィールドからの)外部磁場に合わせて回転できるようにする周囲の幾何学的形状内に保持され得る。磁石がMRI磁場と整合すると、例えば、磁石に対するトルクが減少し得る。完全に整合すると、磁石に対するトルクは0になり得る。結果として得られる、組織拡張器のユーザー(例えば、患者)に対するトルクは、磁石ハウジングアセンブリ102’に関連するバネ機構をその初期位置から磁石ハウジングアセンブリ102’内の磁石が回転を停止する位置に変位させるのに必要なトルクと等しい可能性がある。一部の場合では、有利なトルク閾値に達するまで、磁石ハウジングアセンブリ102’内の磁石が周囲の幾何学的形状によって所定の位置で保持され得る。磁石が回転するトルク閾値は、該トルク閾値が著しく大きい場合でも、ユーザーに害又は不快感を与えることはない。一部の例では、磁石ハウジングアセンブリ102’の周りの周囲の幾何学的形状は厚い壁を有し、柔軟で、磁石が回転できる隣接する空隙を含む。例えば、磁石ハウジングアセンブリの周りの幾何学的形状は厚い壁を有し、その中の磁石は球形又は丸みを帯び得る。磁石は回転し、MRIの磁場に整合するために摩擦に打ち勝ち得る。磁石を取り囲む幾何学的形状は厚い壁を有し得るが、例えば、MRIの磁場と整合するために磁石を回転させるのに十分な軟性及び/又は柔軟性を有し得る。他の実施形態では、磁石ハウジングアセンブリ102’の周囲の幾何学的形状は、その中の磁石の回転を容易にするために薄い壁を有し、柔軟であり得る。磁石ハウジングアセンブリ102’及び/又はその一部を取り囲む幾何学的形状は、簡素化された製造のために十分な壁厚を保持しながら、より容易な磁石の回転を可能にするために、柔軟な材料が磁石の回転時により少ない拘束力で変形することを可能にする蛇腹のような特性を有し得る。一実施では、磁石ハウジングアセンブリ102’を取り囲む幾何学的形状は、初期トルク閾値を超えた後に、磁石がより容易にMRIの磁場に整合できる柔軟性を有する可変の壁厚を有利に可能にする。
【0064】
他の実施では、磁石ハウジングアセンブリ102’は、図17A及び図17Bに示すように、コンビネーション回転バネ及び/又は線形バネ(例えば、コンビネーション回転バネ1700a)に取り付けられ得る。回転バネ及び/又は線形バネに磁石を取り付けることにより、例えば、MRIによって生成される磁場に整合するように磁石を回転させることができる。例えば、磁石がMRIの磁場と整合すると、磁石に対するトルクが低減し得る。完全に整合すると、磁石に対するトルクはほぼ0になる。結果として得られるユーザーに対するトルクは、バネをその初期位置から磁石の回転が停止する位置まで変位させるのに必要なトルクと等しい場合がある。バネは、ユーザーに伝達される最大トルクがユーザーに害又は不快感を与えることがないように設計され得る。ユーザーがMRIの磁場から出ると、磁石ハウジングアセンブリ内の磁石は回転して元の位置に戻り、前で説明したようにアナログ又はデジタルのポート探知器を用いたその後のポートの特定を容易にする。一実施形態では、磁石ハウジングアセンブリ102’は、ゴム(例えば円筒状ゴム)又はシリコーンバネに連結され得るか又は接続され得る。一部の場合では、磁石ハウジングアセンブリ102’は2つ以上のシリコーン又はゴムのバネに接続され得る。他の実施形態では、バネはプラスチック又はPEEKポリマーであり得る。
【0065】
図18A及び図18Bに示す実施形態は、(例えば、MRI装置から)外部磁場により第1の方向1800aに回転し、外部磁場の影響を離れた後に第2の方向1800bに回転して定常位置に戻る磁石ハウジングアセンブリ102’を示す。これは、例えば、前で説明したようにコンビネーション回転及び/又は線形バネを用いて実現され得る。
【0066】
一部の実施によると、磁石ハウジングアセンブリ102’内の磁石は、MRI装置によって生成された磁場等の外部磁場と相互作用した後に、バネを用いて磁石を元の位置に戻す磁石ハウジングアセンブリ102’の凹んだ幾何学的形状に位置し得る。一部の実施形態によれば、この構造は図15Gに示す構造と同様であり得る。この実施形態では、磁石は、1つ以上のバネが取り付けられている磁石ハウジングアセンブリ102’の凹んだ幾何学的形状内に位置し得る。凹んだ幾何学的形状は半円形、V字状、螺旋状又は可変断面の形状を含む他の形状を有し得る。ユーザーがMRIの磁場等の外部磁場に入ると、磁石は磁石ハウジングアセンブリ102’に取り付けられた1つ以上のバネによって提供される拘束力を抗して変位し、それと同時に凹んだ幾何学的形状内の元の位置から変位する。外部磁場から取り除かれた後に、凹んだ幾何学的形状及びバネの力によって磁石が元の位置に戻り得る。磁石ハウジングアセンブリ102’内の磁石は円板状、円筒状、楕円状、球状、楕円状又は本願で開示したもの以外の他の幾何学的形状をとることができることが理解されよう。
【0067】
図9図13A及び図13Bに示す実施形態と同様に、図19は、磁石ハウジングアセンブリ102’が注入口104’と排液口106’との間に置かれるか又は注入口104’と排液口106’の間のスカートアセンブリ200’に融合される例示の実施形態を示す。磁石ハウジングアセンブリ102’、注入口104’及び排液口106’をスカートアセンブリ200’に直接融合することは、様々な磁気及び/又は電磁条件下で組織拡張器の最適な性能を確保するために、スカートアセンブリ200’に融合又は埋め込まれる様々なコンポーネントの壁厚を用いることを伴い得る。例えば、磁気ハウジングアセンブリ102’の壁厚は1.25mm~2.75 mmの範囲であり、分解能(resolution)が約0.5mmである。つまり、図19に関連して説明した壁厚は、一部の実施形態によれば、約1.25mm又は約1.75mm又は約2.25mm又は約2.75mmの壁厚を含み得る。さらに、例えば、磁石ハウジングアセンブリ102’に提供される壁厚は、磁石ハウジングアセンブリ内の磁石の回転に対するより大きな抵抗(例えば、30度の回転、45度の回転、90度の回転等)を可能にするため、外部磁場(例えば、MRI装置からの磁場)からの相互作用により、磁石ハウジングアセンブリ102’内で該磁石が過度に回転するのを防ぐことができる。さらに、一部の実施によれば、磁石ハウジングアセンブリ102’内の磁石は、磁石が磁石ハウジングアセンブリ102’内で過度に回転又は移動するのをさらに制限又は防止するために、磁石ハウジングアセンブリ102’内にしっかりと固定され得る。一部の実施形態では、磁石ハウジングアセンブリ102’は、外部磁場の影響下にあるときに、内部の磁石を回転させるか又は0度~90度ジャンプさせることができるポケットを含む。組織拡張器が外部磁場の影響から取り除かれると、磁石ハウジングアセンブリ102’内の磁石はその後元の位置に戻る。一部の場合では、磁石ハウジングアセンブリ102’内の磁石をシールするためのシールが提供される。
【0068】
図20は、組織拡張器の注入口104’及び排液口106’の両方を含む例示の単一のポートアセンブリを示す。この実施形態では、磁石ハウジングアセンブリ102’を注入口104’と排液口106’との間の単一のポートアセンブリに成形され得る。注入口104’及び排液口106’は、組織拡張器に沿って水平に配置されているように示されているが、これらのポートは垂直に配置されてもよいことが考えられる。この磁石ハウジングアセンブリは、注入口104’及び排液口106’の上の単一のポートアセンブリの上面の周りに位置し得るか又は注入口104’及び排液口106’の下の単一のポートアセンブリの下面の下に位置し得る。一実施形態によれば、磁石ハウジングアセンブリ102’内に収容される単一の磁石は、例えば、図に示すように、単一の磁石の各極が注入口104’及び排液口106’のいずれかに面するように、注入口104’と排液口106’との間で東西方向を向くように配置され得る。この構成は、組織拡張器のユーザーの生体組織の下のより深い深さにある注入口104’及び排液口106’の検出を有益に可能にする。さらに、この設計は、上述の小さな磁石等の小さな単一の磁石の使用に依拠するため、非常に少量の金属を用いて実施され得る。この実施のいくつかの利点は、コンパクトで、MRI治療に安全で及び/又は放射線治療に安全な組織拡張器が、本開示によって提供される技術及び構造に基づいて製造及び使用され得ることである。加えて、前に説明したデジタルポートファインダ等の単一のポートファインダ又は単一の磁石を必要とする変更されたアナログポートファインダを用いて、図20に示す単一のポートアセンブリの注入口104’及び排液口106’がシームレスに特定され得る。
【0069】
特定の実施形態を参照しながら上記の説明を提供した。しかしながら、上記の例示の説明は網羅的であることを意図していないだけでなく、本開示を提示された正確な形式に限定するものでもない。上記の教示を考慮して、多くの修正及び変形が可能である。本開示の原理及びその実用的な用途を説明して、当業者が、考えられる特定の用途に適した様々な修正を加えて、説明した原理及び様々な実施形態を利用できるようにするために実施形態を選択し、説明した。
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図14C
図14D
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
図15F
図15G
図15H
図16A
図16B
図17A
図17B
図18A
図18B
図19
図20
【国際調査報告】