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特表2024-506780オイルバームクレンジング化粧料組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-15
(54)【発明の名称】オイルバームクレンジング化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/92 20060101AFI20240207BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20240207BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20240207BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20240207BHJP
   A61Q 1/14 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
A61K8/92
A61K8/73
A61K8/44
A61Q19/10
A61Q1/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538040
(86)(22)【出願日】2020-12-22
(85)【翻訳文提出日】2023-08-18
(86)【国際出願番号】 IB2020001130
(87)【国際公開番号】W WO2022136899
(87)【国際公開日】2022-06-30
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502189579
【氏名又は名称】エルブイエムエイチ レシェルシェ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 友理
(72)【発明者】
【氏名】小澤 舞
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AC012
4C083AC111
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC152
4C083AC172
4C083AC212
4C083AC352
4C083AC422
4C083AC442
4C083AC522
4C083AC661
4C083AC662
4C083AD211
4C083AD212
4C083AD662
4C083BB11
4C083CC23
4C083DD22
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
本発明は、(A)オイル及び(B)オイル用ゲル化剤を含有するオイルバームクレンジング化粧料組成物であって、(B)成分が、(B1)イヌリンの脂肪酸エステルを含む多糖類の脂肪酸エステル、及び、(B2)N-アシルアミノ酸塩2分子がリシンと連結した構造を有する多鎖多親水基型化合物を含有するオイルバームクレンジング化粧料組成物を提供する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)オイル及び(B)オイル用ゲル化剤を含有するオイルバームクレンジング化粧料組成物であって、
(B)成分が、(B1)イヌリンの脂肪酸エステルを含む多糖類の脂肪酸エステル、及び(B2)N-アシルアミノ酸塩2分子がリシンと連結した構造を有する多鎖多親水基型化合物を含有するオイルバームクレンジング化粧料組成物。
【請求項2】
保存剤、保湿剤、着色剤及び有効成分からなる群より選ばれる(C)1または2以上の任意成分を更に含有し、任意成分の1または2以上は電解質である、請求項1に記載のオイルバームクレンジング化粧料組成物。
【請求項3】
多糖類の脂肪酸エステルは、デキストリンの直鎖脂肪酸エステルを更に含む、請求項1又は2に記載のオイルバームクレンジング化粧料組成物。
【請求項4】
多糖類の脂肪酸エステル(B1)は、多糖類と、炭素数12~22の飽和脂肪酸の1種又は2種以上とのエステルである、請求項1~3のいずれか一項に記載のオイルバームクレンジング化粧料組成物。
【請求項5】
多鎖多親水基型化合物は、下記一般式(1)で表される化合物である、請求項1~4のいずれか一項に記載のオイルバームクレンジング化粧料組成物。
【化1】

[式中、X、X及びXは、それぞれ独立にアルカリ金属原子であり、R及びRの一方は単結合で、他方はメチレン基又はエチレン基であり、R及びRの一方は単結合で、他方はメチレン基又はエチレン基であり、n及びmはそれぞれ独立に11~21の整数である。]
【請求項6】
成分(B)は、ステアロイルイヌリン、デキストリンパルミテート、およびジラウロイルリシンナトリウム塩である、請求項2~5のいずれか一項に記載のオイルバームクレンジング化粧料組成物。
【請求項7】
オイル(A)が、油脂系クレンジングオイル、エステルオイル系クレンジングオイル、鉱物油系クレンジングオイル、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項2~6のいずれか一項に記載のオイルバームクレンジング化粧料組成物。
【請求項8】
オイル(A)の総量が、前記組成物の総重量に対して、60~90%、好ましくは70~90%である、請求項2~6のいずれか一項に記載のオイルバームクレンジング化粧料組成物。
【請求項9】
保湿剤は、1分子中に3以上の水酸基数を有するポリオールである、請求項2~7のいずれか一項に記載のオイルバームクレンジング化粧料組成物。
【請求項10】
ケラチン物質上、特に皮膚上への、請求項1~9のいずれか一項に記載のオイルバームクレンジングの適用を含む、ケラチン物質のケアおよび/またはメイクアップのための化粧方法。
【請求項11】
オイルバームクレンジングが、それが適用されるケラチン物質に、高いクレンジング性能およびのびの良さを提供する、請求項10に記載の化粧方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルバームクレンジング化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
メイクを落とすクレンジング化粧料組成物としては、界面活性剤のクレンジング作用による水性クレンジングゲル、クリーム状のエマルジョンタイプのクレンジング化粧料組成物、メイク中の油性成分の溶解作用を利用するクレンジングオイルがある。クレンジングオイルとしては、粘度が低い順に、オイルタイプ(液状)、ゲルタイプ(ゲル状)、オイルバームタイプ(固いゲル状)の3種類が用いられている。
【0003】
クレンジング化粧料組成物において、クレンジング性能の高さと、洗い流し後に肌にオイル残りがないこととの両立は困難であるが、この解決を目指したものとして、ゲル化能を有するジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩を含有するクレンジングオイルゲルが知られている(特開2013-1698号)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩を用いたゲル状油性クレンジング化粧料組成物に電解質を含有させると、オイルがゲルから滲出し、場合によっては相分離を生じる等の安定性の問題を生じることを本発明者らは見出した。
【0005】
実用に供される化粧料には、防腐剤、着色剤料、有効成分等の電解質を含有させることが通常であるが、ジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩を含有する組成では、このような電解質を含有させた上で、長期間の安定性を維持することができず、実用化が阻まれていた。
【0006】
そこで、本発明の目的は、クレンジング性に優れるのみならず、電解質を含有させた場合においても安定性に優れ、更に、のびがよく、メイクとなじみやすさにも優れる、油性クレンジング化粧料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(A)オイル及び(B)オイル用ゲル化剤を含有するオイルバームクレンジング化粧料組成物であって、(B)成分として、(B1)イヌリンの脂肪酸エステルを含む、多糖類の脂肪酸エステル、及び、(B2)N-アシルアミノ酸塩2分子をリシンで連結した構造を有する多鎖多親水基型化合物を含有するオイルバームクレンジングを提供する。
【0008】
本発明のオイルバームクレンジング化粧料組成物は上記組成を有するため、オイルの含有量を高めることができ、ウォータープルーフマスカラ等のようなメイクに対しても高いクレンジング性を発揮する。また、(B1)成分と(B2)成分とを組み合わせたことから、電解質を含有させた場合においても良好な安定性を発揮する。
【0009】
本発明のオイルバームクレンジング化粧料組成物はまた、のびがよく、メイクとなじみやすさにも優れる。更には、さっぱりとした感触で、ベタつきを生じないという効果も発揮する。マッサージ中において、クレンジング化粧料組成物のなじみやすさは、そのクレンジング性能を評価する上で重要な性質である。
【0010】
本発明のオイルバームクレンジング化粧料組成物は、保存剤、保湿剤、着色剤及び有効成分からなる群より選ばれる(C)任意成分の少なくとも1種を更に含有させ、この任意成分の少なくとも1つを電解質とすることができる。
【0011】
上記の任意成分は、製品として含有させることが好ましい成分であり、これらを含有させても長期の安定性が保たれることから、実用に適したオイルバームクレンジング化粧料組成物が提供可能になる。また、多様な成分を含有させることができるため、適用可能な用途が広がり、ユーザの嗜好にも合致させた様々な製品設計が可能になる。
【0012】
多糖類の脂肪酸エステル(B1)は、デキストリンの直鎖脂肪酸エステルを更に含んでいてもよい。また、多糖類の脂肪酸エステルとしては、多糖類と、炭素数12~22の飽和脂肪酸の1種又は2種以上とのエステルが好ましい。
【0013】
デキストリンの脂肪酸エステルとして、分岐脂肪酸エステルを用いた場合は、安定性(特に高温での安定性)を確保することができないため、直鎖脂肪酸エステルを用いる必要がある。なお、(B1)成分は界面活性剤に分類される場合もあるが、本発明においては、(B1)成分はオイル用ゲル化剤として捉え、通常の界面活性剤とは区別して考える。
【0014】
多鎖多親水基型化合物(B2)は、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
【化1】

[式中、X、X及びXは、それぞれ独立にアルカリ金属原子、R及びRの一方は単結合、他方はメチレン基又はエチレン基、R及びRの一方は単結合、他方はメチレン基又はエチレン基、n及びmはそれぞれ独立に11~21の整数、を表す。]
【0015】
(R及びR)並びに(R及びR)の組み合わせにおいて、一方は単結合、他方はメチレン基又はエチレン基であるため、一般式(1)で表される化合物(B2)は、N-アシルグルタミン酸塩又はN-アシルアスパラギン酸塩を、リシンで連結した構造を有することになる。
【0016】
上記のような構造、すなわちアミノ酸系界面活性剤がスペーサ(リシン残基)で連結した構造(ジェミニ型と呼ばれることがある。)のオイル用ゲル化剤と、(B1)成分とを組み合わせることにより、オイルの滲出が防止されるのみならず、優れたのび、さっぱりとした感触、ベタつき防止といった、クレンジング剤として望ましい特性が発揮される。なお、(B2)成分は界面活性剤に分類される場合もあるが、本発明においては、(B2)成分はオイル用ゲル化剤として捉え、通常の界面活性剤とは区別して考える。
【0017】
(C)任意成分の一つである保湿剤としては、ポリオールを含有させることができる。しかしながら、本発明においてジオールを用いると、ゲルの生成が困難となることが今回見出されたことから、ポリオールは、1分子中に3以上の水酸基数を有するポリオールを用いることが好ましい。すなわち、1分子中に3以上の水酸基数を有するポリオールを用いることで、オイルバームとして十分に高い粘度にすることが容易になり、本来の機能である保湿効果も発揮される。
【0018】
本発明はまた、ケラチン物質上、特に皮膚上へのオイルバームクレンジングの適用を含む、ケラチン物質のケアおよび/またはメイクアップのための化粧方法を提供する。
【0019】
本発明はさらに、オイルバームクレンジングが、それが適用されるケラチン物質に、高いクレンジング性能およびのびの良さを提供する化粧方法を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、クレンジング性能に優れるのみならず、電解質を含有させた場合においても安定性に優れ、更に、のびがよく、メイクとなじませている間の滑り性にも優れる、オイルバームクレンジング化粧料組成物が提供可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施形態に係るオイルバームクレンジングは、油性クレンジング剤のうち、オイルバームタイプに相当する。ここでオイルバームタイプとは、25℃における粘度が50000cps(50Pa・s)以上であるものを意味する。粘度の測定は、B型回転粘度計(例えば、アントンパール(Anton Parr)社製のRheolab QC)を用い、ancre型スピンドルを、内径4.5cmの容器に収容され25℃に保たれたオイルバームクレンジング中に挿入し、回転数10rpmで測定する。なお、25℃における粘度は50000~150000mPa・sが好ましい。
【0022】
クレンジングオイル(A)
オイルバームクレンジング化粧料組成物は、(A)オイルを含有するが、(A)成分としては、化粧品用クレンジング剤に使用可能なオイルであれば制限なく使用可能である。
【0023】
特定の実施態様において、クレンジングオイル(A)は、油脂系クレンジングオイル、エステルオイル系クレンジングオイル、鉱物油系クレンジングオイル及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。油脂系クレンジングオイルとしては、オリーブ油、菜種油、ツバキ油、ヒマワリ種子油、マカダミアナッツ油、コーン油、コメヌカ油、アボカド油、メドウフォーム油が例示でき、エステルオイル系クレンジングオイルとしては、イソノニルイソノナノネート、パルミチン酸エチルヘキシル、エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、トリエチルヘキサノイン、トリデシルイソノナノエートが挙げられる。鉱物油系クレンジングオイルとしては、ミネラルオイル、イソヘキサデカン、水添ポリイソブテン等がある。
【0024】
オイル用ゲル化剤(B)
オイルバームクレンジング化粧料組成物は、(B)オイル用ゲル化剤を含有しており、(B)成分は、(B1)イヌリンの脂肪酸エステルを含む多糖類の脂肪酸エステルと、(B2)N-アシルアミノ酸塩2分子がリシンと連結した構造を有する多鎖多親水基型化合物とを含有している。
【0025】
脂肪酸エステル(B1)
(B1)成分は、イヌリンの脂肪酸エステルを必須成分としており、当該成分を含有する限りにおいて、デキストリンの直鎖脂肪酸エステルを更に含有してもよい。すなわち、(B1)成分は、イヌリンの脂肪酸エステルのみからなっていても、イヌリンの脂肪酸エステルとデキストリンの直鎖脂肪酸エステルの双方を含有していてもよい。
【0026】
オイルバームクレンジング化粧料組成物の重要な特性の一つとして、のびの良さ、すなわちメイクとのなじみやすさが挙げられるが、この特性は、多糖類の脂肪酸エステルとして、デキストリンの直鎖脂肪酸エステルのみを含有させている場合は、不十分になる。一方、オイルバームクレンジング化粧料組成物の他の重要な特性として、マッサージの間にオイルバームからオイルに変化する「融ける感触」(Breaking Sensation)がある。この特性は、イヌリンの脂肪酸エステルよりもデキストリンの直鎖脂肪酸エステルの方が若干優れている。したがって、のびの良さと「融ける感触」を両立させるためには、イヌリンの脂肪酸エステル単独よりも、イヌリンの脂肪酸エステルとデキストリンの直鎖脂肪酸エステルとの組み合わせを採用することが好ましい。但し、イヌリンの脂肪酸エステル単独であっても実用途で十分使用可能である。
【0027】
イヌリンの脂肪酸エステルとデキストリンの直鎖脂肪酸エステルとを組み合わせる場合、前者100重量部に対して、後者を50~500重量部とすることが好ましく、前者100重量部に対して、後者を100~200重量部とすることがより好ましい。特定の実施形態において、成分(B)は、組成物の総重量に対して0.5~5%、好ましくは1~4%の範囲の総量で組成物中に存在する。(B)成分中、組成物の全重量に対して(B1)成分は0.5~2重量%、(B2)成分は0.5~2重量%存在することが好ましい。
【0028】
イヌリンの脂肪酸エステルとしては、イヌリンと、炭素数12~22の飽和脂肪酸の1種又は2種以上とのエステルが挙げられる。ここで飽和脂肪酸の炭素数は12~18が好ましく、飽和脂肪酸としては、炭素数14のミリスチン酸、炭素数16のパルミチン酸、炭素数18のステアリン酸がより好ましい。なお、イヌリンの脂肪酸エステルは、イヌリンの直鎖脂肪酸エステルであることが好ましい。
【0029】
イヌリンの脂肪酸エステルは、下記一般式(2)で表すことができる。式中、Aは炭素数12~22のアシル基であり、複数存在するAはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。qは1以上の整数である。Aの一部は水素原子であってもよい。好適なAとしては、炭素数14のミリスチロイル基、炭素数16のパルミトイル基、炭素数18のステアロイル基が挙げられる。
【化2】
【0030】
デキストリンの脂肪酸エステルとしては、デキストリンと、炭素数12~22の飽和直鎖脂肪酸の1種又は2種以上とのエステルが挙げられる。ここで飽和直鎖脂肪酸の炭素数は12~18が好ましく、飽和脂肪酸としては、炭素数14のミリスチン酸、炭素数16のパルミチン酸、炭素数18のステアリン酸がより好ましい。
【0031】
デキストリンの脂肪酸エステルは、下記一般式(3a)又は(3b)で表すことができる。式中、Bは炭素数12~22のアシル基であり、複数存在するBはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。Bの一部は水素原子であってもよい。好適なBとしては、炭素数14のミリスチロイル基、炭素数16のパルミトイル基、炭素数18のステアロイル基が挙げられる。
【化3】
【0032】
特定の好ましい態様において、オイルバームクレンジング化粧料組成物は、成分(B1)として、ステアロイルイヌリンを単独でまたはデキストリンパルミテートとの組み合わせで含む。
【0033】
多鎖多親水性基含有化合物(B2)
(B)オイル用ゲル化剤における、(B1)成分以外の成分である、(B2)N-アシルアミノ酸塩2分子をリシンで連結した構造を有する多鎖多親水基型化合物は、例えば一般式(1)で表すことができる。
【化4】

式中、X、XおよびXはそれぞれ独立にアルカリ金属原子であり、RおよびRの一方は単結合であり、他方はメチレン基またはエチレン基であり、RおよびRの一方は単結合であり、他方はメチレン基またはエチレン基であり、nおよびmはそれぞれ独立に11~21の整数を表す。特定の実施形態では、X、X及びXは、それぞれ独立にアルカリ金属原子であり、ナトリウム原子又はカリウム原子が好ましく、ナトリウム原子がより好ましい。X、X及びXは同一のアルカリ金属原子であることが好ましい。n及びmはそれぞれ独立に11~17の整数であることが好ましく、13、15又は17が好ましい。n及びmは同一の整数であることが好ましい。
【0034】
一般式(1)で表される化合物(B2)は、例えば以下の一般式(1a)~(1d)で表すことができる。X、X、X、n及びmの意義及び好適例は上記と同様である。X、X及びXが共にナトリウム原子であり、n及びmが共に11である場合は、一般式(1a)~(1d)で表される化合物は、好ましい成分(B2)であるジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウムに該当する。
【化5】
【0035】
一般式(1)で表される化合物(B2)は、更に、以下の一般式(1e)~(1h)で表すことができる。X、X、X、n及びmの意義及び好適例は上記と同様である。X、X及びXが共にナトリウム原子であり、n及びmが共に11である場合は、一般式(1e)~(1f)で表される化合物は、ジラウロイルアスパラギン酸リシンナトリウムに該当する。
【化6】
【0036】
(B2)成分としては、ジラウロイルグルタミン酸リシン塩及びジラウロイルアスパラギン酸リシン塩の少なくとも一方を含有することが好ましく、ジラウロイルグルタミン酸リシン塩(特にナトリウム塩)を含有することが更に好ましい。特定の実施形態では、成分(B2)は、組成物の総重量の0.2~3%、好ましくは0.5~2%の範囲の量で組成物中に存在する。特定の好ましい実施形態では、オイルバームクレンジング化粧料組成物は、ステアロイルイヌリン、デキストリンパルミテートおよびジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム塩を含む。
【0037】
任意成分(C)
オイルバームクレンジング化粧料組成物は、保存剤、保湿剤、着色剤及び有効成分からなる群より選ばれる(C)任意成分の少なくとも1種を更に含有していてもよく、その場合、これらの少なくとも1つを電解質とすることができる。ここで電解質とは、溶媒中に溶解した際に、陽イオンと陰イオンに電離する物質をいい、本発明においては、カルボン酸、スルホン酸、リン酸等の酸基又はこれらの塩を有している物質が好ましい。塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、ストロンチウム塩、アンモニウム塩が含まれる。
【0038】
(C)成分として用いられる保存剤としては、防腐剤、酸化防止剤等の材料が含まれ、例えば、ジグルコン酸クロルヘキシジン、ヒドロキシアセトフェノン、エチルヘキシルグリセリン、フェネチルアルコール、カプリルグリコール、安息香酸ナトリウム、イソプロピルメチルフェノール、エチルラベン、塩化ベンザルコニウム、カプリル酸グリセリル、グリセリン脂肪酸エステル、クロルフェネシン、サリチル酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチル、ビサボロール、ヒノキチオール、フェニルエチルアルコール、フェネチルアルコール、フェノキシエタノール、ブチルパラベン、プロピルパラベン、ベンザルコニウムクロリド、メチルイソチアゾリノン、メチルクロロイソチアゾリノン、メチルパラベンが挙げられる。
【0039】
(C)成分として用いられる保湿剤としては、グリセリン、グルシトール(ソルビトール)、オクタンジオール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、フェニルアラニンやロイシン等のアミノ酸、塩酸ヒスチジンや塩酸リジン等のアミノ酸塩、糖類、アロエエキス等の植物エキスが挙げられる。なお、ゲル化能を高めるため、保湿剤としては、1分子中に3以上の水酸基数を有するポリオールを用いることが好ましく、1分子中に3~6の水酸基数を有するポリオールを用いることが更に好ましい。
【0040】
(C)成分として用いられる着色剤としては、無機顔料、有機合成色素、天然色素のいずれもが使用可能である。有機合成色素としては、FD & C Red No.4、FD & C Yellow No.5、FD & C Yellow No.6、FD & C Blue No.1、FD & C Blue No.2が挙げられる。
【0041】
(C)成分として用いられる有効成分としては、肌に対して肌荒れ抑制効果、しわ抑制効果といった美容効果をもたらす成分が含まれる。このような有効成分としては、例えば、レチノール、パルミチン酸レチノール又は酢酸レチノール等のビタミンA、エルゴカルシフェロール又はコレカルシフェロール等のビタミンD、トコフェロール、トコトリエノール等のビタミンEといった脂溶性ビタミン、dl-カンフル、l-メントール、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸二カリウム、サリチル酸、尿素、ヒノキチオールが挙げられる。有効成分は、アスタキサンチン、リコピン又はフコキサンチン等のカロチノイド等のように、色素としての機能を兼ね備えていてもよい。
【0042】
(C)成分として上記した成分は、いずれも本発明のオイルバームクレンジング化粧料組成物に含有させることができるが、電解質に相当する成分を含有させた場合であっても、十分なクレンジング性及びのびの良さを維持しながら、オイルの滲出が防止される。
【0043】
(C)成分としては、保存剤、保湿剤、着色剤及び有効成分以外の成分、例えば、界面活性剤(アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤等)、香料、水、溶剤等を含有させることも可能である。
【0044】
特定の実施形態では、オイルバームクレンジング化粧料組成物における(A)成分の含有量は60~90重量%、好ましくは70~90重量%、(B)成分の含有量は、0.5~5重量%、好ましくは1~4重量%とすることができる。(B)成分のうち、(B1)成分は0.5~2重量%、(B2)成分は0.5~2重量%が好ましい。(C)成分は合計で0.8~3.0重量%が好ましい。
【0045】
上述した任意成分を含有するオイルバームクレンジング化粧料組成物は、例えば、以下の製造方法により製造が可能である。すなわち、先ず、(B2)成分と、水、保存剤、着色剤とを加温しながら均一に混合する。一方、(A)成分、(B1)成分及び界面活性剤を加温しながら均一に混合する。そして、両混合物を所定の混合速度で均一に混ぜ合わせ、最後に香料を添加する。
【0046】
オイルバームクレンジング化粧料組成物は、密閉容器、例えば、チューブ、瓶、缶に収容することができる。また、保管は室内又は冷暗所で行うことが好ましい。
【実施例
【0047】
以下、実施例により本発明について説明するが、本発明は下記例に制限されない。
【0048】
表1におけるPhase1を、バルクが均一になるまで40℃で混合した。Phase2のクレンジング剤(オイル)を80℃まで加熱し、界面活性剤及びオイル用ゲル化剤を分散させ、バルクが均一になるまで混合した。Phase1にPhase2を5%/分で加え、Phase2添加後、20分混合した。バルクが均質なゲルであるか確認し、室温まで冷却を開始した。その後、Phase3を加えバルクが均一になるまで混合し、実施例及び比較例のオイルバームクレンジング化粧料組成物を得た。なお、実施例及び比較例のオイルバームクレンジング化粧料組成物には、電解質が含まれている。
【0049】
【表1】
【0050】
実施例及び比較例のオイルバームクレンジング化粧料組成物について、pH、粘度、安定性及び官能評価を以下に述べる方法により試験した。結果をまとめて表2に示す。
【0051】
[pH]
HORIBA社製、pHメーターF-51により、25℃におけるpHを測定した。
【0052】
[粘度]
B型回転粘度計(アントンパール(Anton Parr)社製のRheolab QC)を用い、ancre型スピンドルを、内径4.5mmの容器に収容され25℃に保たれたオイルバームクレンジング化粧料組成物中に挿入し、回転数10rpmで測定した。
【0053】
[安定性]
(1)4℃、25℃(室温)、45℃及び50℃での安定性
透明容器にオイルバームクレンジング化粧料組成物を収容し、蓋をして密閉したうえで、4℃、25℃(室温)、45℃又は50℃で1か月保管した。保管後、室温(25℃)に戻し、オイルの滲出を観察した。オイルが滲出せず安定であったもの、オイルの滲出が見られたもの、相分離を生じたもの、が観察された。
(2)40℃及び-10℃でのサイクル試験
透明容器にオイルバームクレンジング化粧料組成物を収容し、蓋をして密閉したうえで、40℃で12時間の保管、-10℃で12時間の保管を交互に繰り返して、合計1か月保管した。サイクル後、室温(25℃)に戻し、オイルの滲出を観察した。オイルが滲出せず安定であったもの、オイルの滲出が見られたもの、相分離を生じたもの、が観察された。
【0054】
[クレンジング性能の評価]
上記のオイルバームクレンジング化粧料組成物について、下記の方法でウォータープルーフマスカラに対する洗浄力評価を行った。塩化ビニルプレート上に、ウォータープルーフマスカラ(Dior社製、マスカラ ディオールショウ アイコニック オーバーカール ウォータープルーフ)5mgを1cmの円状に塗布し、1晩以上乾燥した。実施例及び比較例のオイルバームクレンジング化粧料組成物20mgをマスカラに塗布して指で80回マッサージを行った。水道水ですすぎ後、残存したマスカラの状態を比較し、クレンジング性能を評価した。
A:優れる
B:やや劣る
C:劣る
【0055】
[のびの良さの官能評価]
のびの良さについて、本発明者らが所属する組織の化粧品専門評価パネル10名で評価を行った。
A:優れる
B:やや劣る
C:劣る
【0056】
【表2】

これらの結果は、(A)オイルおよび(B)オイル用ゲル化剤の組み合わせであって、(B)成分がイヌリンの脂肪酸エステルを含む多糖類の脂肪酸エステル(B1)と、2つのN-アシルアミノ酸塩分子がリジンに結合した構造を有する多鎖多親水性基含有化合物(B2)とを含むものが、比較例と比べてクレンジング性能およびのびの良さに優れていることを示している。特に、比較例1は、多糖類の脂肪酸エステルとしてデキストリンの直鎖脂肪酸エステルのみを用いた場合には、のびの良さ、すなわちメイクとのなじみやすさが不十分であることを示している。
【国際調査報告】