(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-15
(54)【発明の名称】C4炭化水素流からブテンを除去し、その後のn/iso分離を行うためのエネルギー効率の高い方法
(51)【国際特許分類】
C07C 7/08 20060101AFI20240207BHJP
C07C 11/08 20060101ALI20240207BHJP
C07C 11/09 20060101ALI20240207BHJP
B01D 3/40 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
C07C7/08
C07C11/08
C07C11/09
B01D3/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540550
(86)(22)【出願日】2022-01-21
(85)【翻訳文提出日】2023-08-14
(86)【国際出願番号】 EP2022051387
(87)【国際公開番号】W WO2022161874
(87)【国際公開日】2022-08-04
(32)【優先日】2021-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523448406
【氏名又は名称】エボニック オクセノ ゲーエムベーハー ウント コー. カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ラトズ
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ペイツ
(72)【発明者】
【氏名】アルミン マティアス リクス
(72)【発明者】
【氏名】タニタ バレリー シクス
(72)【発明者】
【氏名】モリッツ シュローダー
(72)【発明者】
【氏名】ニクラス ポール
【テーマコード(参考)】
4D076
4H006
【Fターム(参考)】
4D076AA13
4D076AA22
4D076AA24
4D076BB04
4D076BB10
4D076BB23
4D076DA02
4D076DA05
4D076DA25
4D076FA12
4D076FA15
4D076FA33
4D076GA02
4D076HA11
4D076JA03
4D076JA04
4H006AA02
4H006AB46
4H006AD13
4H006BB24
4H006BC51
4H006BC52
4H006BD35
4H006BD53
(57)【要約】
本発明は、適切な溶媒を用いた抽出蒸留により、ブテンだけでなくブタンも含むC4炭化水素流からブテンを分離する方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒を用いた抽出蒸留により、少なくともブテンとブタンであるn-ブタンおよびイソブタンとを含むC4炭化水素流からブテンを分離する方法であり、
以下:
(a)供給蒸発装置内で液体C4炭化水素流が少なくとも部分的に蒸発され、気体C4炭化水素流が吸収装置に供給され、前記C4炭化水素流の上部の液体溶媒が吸収装置に供給され、
前記吸収装置において、前記C4炭化水素流と前記溶媒とが互いに接触され、主にブテンが前記C4炭化水素流から前記溶媒へ移され、
その含有溶媒が前記吸収装置の液体回収装置に回収され、吸収蒸発装置に通され、次いで前記液体回収装置の下部の前記吸収装置の底部に送られ、主にブタンが前記含有溶媒から脱ガスされ、
その後、前記含有溶媒が底部流として脱離装置に送られ、
前記吸収装置の頂部において、前記使用されたC4炭化水素流と比較してブタンが豊富な流れが得られる工程、
(b)前記含有溶媒が前記脱離装置に供給され、
前記脱離装置の底部は、高温で、好ましくは前記吸収装置の底部よりも低圧であり、前記脱離装置内で前記溶媒からブテンが分離され、前記脱離装置の頂部においてブテンが豊富な流れが得られ、
少なくとも部分的にブテンを含まない溶媒が前記脱離装置の液体回収装置に回収され、脱離蒸発装置に通され、次いで前記液体回収装置の下部の前記脱離装置の底部に送られ、前記溶媒に残っているすべてのブテンが脱ガスされ、
その後、前記溶媒が底部流として前記吸収装置に再循環される工程、
(c)前記ブタンが豊富な流れが、n-ブタンとイソブタンが互い分離されるn/iso分離装置に供給され、前記n/iso分離装置の頂部においてイソブタンが豊富な流れが得られ、および前記n/iso分離装置の底部においてn-ブタンが豊富な流れが得られる工程
を含み、
前記脱離装置の底部流として回収された溶媒の熱が、前記溶媒の熱を少なくとも1つの各熱交換器において、前記脱離装置に送られた前記含有溶媒の予熱のため、前記吸収蒸発装置内での蒸発のため、および前記液体C4炭化水素流の蒸発のために利用することにより、熱統合に利用され、
前記ブテンが豊富な流れが前記脱離装置の頂部で回収され、凝縮に供され、前記凝縮の熱が前記n/iso分離装置の加熱のために少なくとも部分的に使用される方法。
【請求項2】
前記使用された溶媒がNMPである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記溶媒または前記NMPは水を含み、その含水量は1重量%~10重量%、好ましくは4重量%~9重量%である、請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記脱離装置の頂部で得られる前記ブテンが豊富な流は、さらに前記溶媒に由来する水を含む、請求項1~請求項3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記ブテンが豊富な流は、前記脱離装置の頂部で回収され、凝縮に供され、含水流およびブテン含有生成物流に凝縮され、互いに分離される、請求項5記載の方法。
【請求項6】
前記凝縮から得られた前記ブテン含有生成物流は、その全組成に対し、少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも75重量%、特に好ましくは少なくとも86重量%のブテン含有量を有する、請求項6記載の方法。
【請求項7】
前記吸収装置の頂部で回収される前記ブタンが豊富な流は、前記n/iso分離装置に入る前に水素化に供され、すべての残留ブテンがブタンに転化される、請求項1~請求項6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記水素化の間に生成された反応熱の少なくとも一部は、前記n/iso分離装置の加熱に利用される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記n/iso分離装置の頂部で得られた前記イソブタンが豊富な流および/または前記n/iso分離装置の底部で得られた前記n-ブタンが豊富な流は、水素化に供され、すべての残留ブテンがブタンに転化される、請求項1~請求項6のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記水素化の間に生成された前記反応熱の少なくとも一部または前記2つの水素化の間に生成された前記反応熱の少なくとも一部は、前記n/iso分離装置の加熱に利用される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記脱離装置に送られた前記含有溶媒の予熱は、2段階で行われ、前記溶媒への1段目の熱伝達は熱交換器内で行われ、前記溶媒への2段目の熱伝達はケトル蒸発装置内で行われる、請求項1~請求項10のいずれか1項記載方法。
【請求項12】
前記脱離蒸発装置内での蒸発のため熱は、適切な熱伝達媒体、特に加熱蒸気による熱伝達により、熱交換器に導入され得る、請求項1~請求項11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
使用される加熱蒸気は、前記熱交換器内で少なくとも部分的に凝縮され、それにより絶対圧10~20バール、好ましくは絶対圧12~17バールかつ温度150℃~200℃、好ましくは160℃~190℃の高温凝縮液が生成され、凝縮液容器に送られる、請求項1~請求項12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記凝縮液容器内の圧力は、前記熱交換器の加熱蒸気側の圧力よりも低く、それにより、前記加熱凝縮液の一部が再蒸発され、その結果、低圧蒸気として混合蒸気が得られる、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記脱離蒸発装置のための前記加熱蒸気は、高圧蒸気または中圧蒸気と凝縮液容器内で得られる低圧蒸気とが供給される蒸気排出装置を用いて提供される、請求項1~請求項14のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適切な溶媒を用いた抽出蒸留により、ブテンだけでなくブタンも含むC4炭化水素流からブテンを分離する方法に関する。本発明による方法は、溶媒の熱を異なる流れの加熱および/または少なくとも部分的な蒸発に利用する熱統合を特徴とする。
【背景技術】
【0002】
抽出蒸留によるブタン-ブテン混合物の分離は、それ自体知られている。これは、非プロトン性溶媒(例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)またはアセトニトリル(ACN))を使用して、アルケンと比べてアルカンの相対揮発性を高める。1つの抽出蒸留塔である吸収装置において、ブテンは、好ましくは溶媒に溶解され、ブタンは塔頂生成物として分離される。続いて、その含有溶媒は、高温および/または減圧下、除去塔である脱離装置内でブテンを除去され、そのブテンは、濃縮された形で塔頂生成物として得られる。次いで、ブテンが除去された溶媒は、抽出蒸留に再循環される。
【0003】
供給原料に対する溶媒の比率が高いため、熱統合は、方法の経済性にとって非常に重要である。高温溶媒は、脱離装置の底部で得られ、そのエネルギー含有量はさまざまな方法で利用され得る。米国特許出願公開第2014/0124358号明細書は、オレフィンの選択的抽出方法を提示しており、これは熱統合の課題を解決すると言われている。この文献は、脱離装置からの側流を加熱するため、脱離装置に送られる吸収装置の底部生成物を加熱するため、吸収装置の1つまたは複数の側流を加熱するため、および供給流を予熱するために、高温溶媒のエネルギー含有量を利用することを提案している。
【0004】
しかしながら、従来技術で提案された解決策では、系内に存在するエネルギー流を理想的には完全に回収するという課題を、不完全にしか、または比較的複雑な構造を介してしか解決することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/0124358号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、改善された、理想的には最大限のエネルギー回収が達成され、それが、それほど複雑でないプラント・エンジニアリングを用いた方法で行われるプロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1で提案された方法の実施形態によって達成可能である。好ましい実施形態は、従属項で特定されている。本発明による方法は、溶媒を用いた抽出蒸留によって、少なくともブテンと、ブタンであるn-ブタンおよびイソブタンと、を含むC4炭化水素流からブテンを分離する方法であり、この方法は以下の工程を含む:
(a)供給蒸発装置内で液体C4炭化水素流が少なくとも部分的に蒸発され、気体C4炭化水素流が吸収装置に供給され、C4炭化水素流の上部の液体溶媒、好ましくはNMPが吸収装置に供給され、
吸収装置において、C4炭化水素流と溶媒とが互いに接触され、主にブテンがC4炭化水素流から溶媒へ移され、
その含有溶媒、好ましくはNMPが吸収装置の液体回収装置に回収され、吸収蒸発装置に通され、次いで液体回収装置の下部の吸収装置の底部に送られ、主にブタンが含有溶媒、好ましくはNMPから脱ガスされ、
その後、含有溶媒、好ましくはNMPが底部流として脱離装置に送られ、
吸収装置の頂部において、使用されたC4炭化水素流と比較してブタンが豊富な流れが得られる工程、
(b)含有溶媒、好ましくはNMPが脱離装置に供給され、
脱離装置の底部は、高温で、好ましくは吸収装置の底部よりも低圧であり、脱離装置内で溶媒、好ましくはNMPからブテンが分離され、脱離装置の頂部においてブテンが豊富な流れが得られ、
少なくとも部分的にブテンを含まない溶媒、好ましくはNMPが脱離装置の液体回収装置に回収され、脱離蒸発装置に通され、次いで液体回収装置の下部の脱離装置の底部に送られ、溶媒に残っているすべてのブテンが脱ガスされ、
その後、溶媒が底部流として吸収装置に再循環される工程、
(c)ブタンが豊富な流れが、n-ブタンとイソブタンとが互い分離されるn/iso分離装置に供給され、n/iso分離装置の頂部においてイソブタンが豊富な流れが得られ、およびn/iso分離装置の底部においてn-ブタンが豊富な流れが得られる工程
であり、
脱離装置の底部流として回収された溶媒の熱が、溶媒の熱を少なくとも1つの各熱交換器において、脱離装置に送られた含有溶媒の予熱のため、吸収蒸発装置内での蒸発のため、および液体C4炭化水素流の蒸発のために利用することにより、熱統合に利用され、
ブテンが豊富な流れが脱離装置の頂部で回収され、凝縮に供され、凝縮の熱がn/iso分離装置の加熱のために少なくとも部分的に使用される。
【0008】
本発明の方法の1つの利点は、熱統合の構造が比較的単純であるにもかかわらず、効率的なエネルギー回収が可能な点である。本発明の最も単純な実施形態は、追加の複雑なプラント・エンジニアリング、ひいてはコストの上昇を伴う追加の側方蒸発装置を必要としない。また、この場合、ブテンが豊富な流れの凝縮において生成される凝縮熱と、場合により上流の水素化工程または1つもしくは2つの下流の水素化工程の水素化熱と、を、n/iso分離装置を使用するブタンのn/iso分離に利用することができ、その結果、このような工程に供給する必要がある外部エネルギーは、たとえあったとしても、より少なくなる。本発明による方法、または他の追加の統合された方法において生成される大量の廃熱も、n/iso分離装置の加熱に使用可能である。
【0009】
熱統合により、溶媒から熱が除去される。この理由は、他の流れまたは塔が一緒に加熱されるためだけではなく、むしろ、主に吸収のために溶媒が冷却されるためである。ブテンの吸収(本明細書では、工程a)は通常、脱離(本明細書では、工程b)よりも低い温度で実施される。熱統合の過程で溶媒から十分な熱が奪われる場合、つまり溶媒が適切な温度である場合、溶媒は吸収装置に直接送られ得る。しかしながら、熱統合があるにもかかわらず、溶媒がまだ適切な温度になっていないことも考えられる。このような場合、溶媒は、熱統合後かつ吸収装置に入る前に、残留冷却器に通されて適切な温度まで冷却され得る。
【0010】
熱は、プロセスパラメータである。供給または除去される熱は、内部エネルギーからかかった労力を差し引いたものに相当する。本明細書で使用される熱、熱輸送および熱統合という用語は、あらゆる場合においてこの定義に基づいている。
【0011】
本方法は、ブテン含有C4炭化水素流からのブテンの分離に関する。これらの流れには、ブテンだけでなくアルカン(n-ブタンおよびイソブタン)も含まれる。本明細書の文脈では、他に何か説明されていない限り、ブタンという用語は、n-ブタンとイソブタンの両方を意味すると理解されるべきである。本発明の方法では、ブテンを少なくとも部分的に分離した後、アルカンをn-ブタンとイソブタンに分離して、n-ブタンとイソブタンの両方を可能な限り最高の純度で得る。この目的のために、本発明によれば、n/iso分離装置でのn/iso分離が提供される。流れ中の残留ブテンの水素化は、ブタンのこの分離の前または後に行われ得る。したがって、本発明による方法は、ブテンおよび/またはブタンの存在量が本方法を経済的に実施できる量であることを条件として、少なくともブテンおよびブタンを含むあらゆるC4炭化水素流を使用することができる。本発明の好ましい実施形態では、使用されるC4炭化水素流は、本質的に、すなわち98重量%を超える程度、好ましくは99重量%を超える程度のブタンおよびブテンからなる。対応する流れには、不純物、あるいは1,3-ブタジエンまたはC5炭化水素などの他の炭化水素が少量含まれ得る。
【0012】
本発明による方法において、工程aは、使用される気体C4炭化水素流のブテンを主に溶解する液体溶媒を使用する。適切な溶媒は、非プロトン性溶媒、例えばN-メチル-2-ピロリドン(NMP)である。本発明による方法は、溶媒としてNMPを用いて実施されることが好ましい。本発明のさらに好ましい実施形態では、溶媒は、いずれの場合も溶媒の総量に対し、特に1重量%~10重量%、好ましくは4重量%~9重量%の範囲の水を含む。
【0013】
使用され得る吸収装置としては、特に、少なくとも2つのランダム充填床を含むランダム充填塔が挙げられる。このような塔は、原則として当業者には知られている。好ましくは、最初のランダム充填床の上に、気相中に同伴される溶媒を留めるための複数の理論トレイを備える逆洗区域が配置される。逆洗区域の上には吸収装置の頂部があり、そこでは、使用されたC4炭化水素流と比較してブタンが豊富な流れが得られる。本発明による液体回収装置は、最後のランダム充填床の下に配置され、吸収装置の底部は、上記回収装置の下に配置される。吸収装置の正確な構造は、さまざまなパラメータに左右され、特定の態様において可変的である。
【0014】
液体溶媒は、C4炭化水素流用入口の空間的に上にある吸収装置に供給される。好ましい実施形態では、溶媒は、最初のランダム充填床の上の吸収装置に供給され、C4炭化水素流は、最初のランダム充填床の下の1つまたは複数のランダム充填床内の吸収装置に入れられる。吸収装置内では、液体溶媒が下方に滴下され、(上昇する)蒸気状のC4炭化水素流と接触され、主にブテンを含むC4炭化水素流の一部が溶媒に移され、含量溶媒が生成される。工程aでは、C4炭化水素流と溶媒を、特に向流で互いに接触させる。本発明の好ましい実施形態では、溶媒に移される一部のC4炭化水素流は、溶媒に移される一部のC4炭化水素流の組成に対し、少なくとも70重量%、特に好ましくは少なくとも80重量%のブテンを含む。これにより、使用されるC4炭化水素流中に存在するブテンの特に少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%が溶媒に移されるという結果が得られる。
【0015】
その含有溶媒は、吸収装置内を下方に流れ、適切な液体回収装置、特に煙突トレイに回収される。液体回収装置内で得られる含有溶媒の温度は、好ましくは40℃~90℃、特に好ましくは45℃~65℃である。含有溶媒は、液体回収装置から回収され、吸収蒸発装置に通され、次に液体回収装置の下の吸収装置の底部に送られ、充填溶媒から主にブタンが脱ガスされる。吸収蒸発装置は、好ましくは、含有溶媒が蒸発装置を一度だけ通過するワンスルー蒸発装置である。これにより、可能な限り低い温度を達成することができ、汚れを防ぐことが可能になる。運転温度差がさらに大きくなるため、NMP流のエネルギー利用をさらに効率的に行うことができる。吸収蒸発装置は、多段装置として構成され得る。すなわち、吸収蒸発装置に属する複数の熱交換器/複数の蒸発装置が存在し得る。
【0016】
次に、主にブテンを含む溶媒は底部に残り、そこから回収され、底部流として脱離装置に送られる。脱離装置に供給される吸収装置の底部流の温度は、好ましくは70℃~130℃、特に好ましくは85℃~120℃である。
【0017】
使用されたC4炭化水素流と比較してブタンが豊富な流れが吸収装置の頂部で得られる。ブタンが豊富なこの流れは、溶媒に由来する水をさらに含み得る。この水は、次の工程で分離され得る。ブタンが豊富な流れは、吸収装置の頂部で回収され、一段階または多段階の凝縮に供され、含水流とブタン含有生成物流とに凝縮される。これらの2つの流れは、適切な装置、例えばスパイダー内で互いに分離され得る。ブタン含有生成物流から分離された含水流は、その組成に応じて、吸収装置または脱離装置に送られ、および/または本方法から部分的に排出され得る。
【0018】
このようにして凝縮から得られたブタン含有生成物流は、依然として少量の水を、特にブタン含有生成物流の全組成に対し、最大1500ppmwの量で含有し得る。加えて、凝縮から得られるブタン含有生成物流は、残留ブテンをさらに含有してもよく、この流れは、典型的には、ブタン含有生成物流の総組成に対し、20重量%未満、好ましくは15重量%未満、特に好ましくは5重量%未満のブテンを含む。
【0019】
得られたブタン含有生成物流の要件に応じて、凝縮後にブタン含有生成物流を、好ましくは乾燥塔中で乾燥させて、依然として存在する水を分離することが必要な場合がある。ブタン含有生成物流は、乾燥後に、最大で50ppmw、好ましくは25ppmwの水を含むことが好ましい。乾燥中に得られた水は、吸収装置内での凝縮に再循環され得る。
【0020】
本発明によれば、ブタンが豊富な流れ、または凝縮が行われる場合にはブタン含有生成物流れがn/iso分離装置に送られ、n-ブタンとイソブタンが互いに分離される。n/iso分離装置は、特に、適切な蒸留塔である。イソブタンに富む流れがn/iso分離装置の頂部で得られ、n-ブタンに富む流れがn/iso分離装置の底部で得られる。本発明によるn/iso分離装置は、イソブタンからn-ブタンを分離するのに適した装置、特に蒸留塔である。 n/iso分離装置の底部の温度は、50℃~70℃が好ましく、55℃~65℃が特に好ましい。n/iso分離装置内の圧力は、好ましくは絶対圧4~10バール、特に好ましくは絶対圧5~7バールである。対応するn/iso分離装置/対応する蒸留塔の正確な構成および操作は、当業者には既知である。
【0021】
n/iso分離装置の上部で得られるイソブタンが豊富な流れは、主にイソブタンからなる。イソブタンが豊富な流れは、好ましくは98重量%、より好ましくは99重量%、特に好ましくは99.5重量%程度のイソブタンからなる。n/iso分離装置の底部で得られるn-ブタンが豊富な流れは、主にn-ブタンからなる。n-ブタンが豊富な流れは、好ましくは98重量%、より好ましくは99重量%、特に好ましくは99.5重量%程度のn-ブタンからなる。
【0022】
n/iso分離装置を加熱し、したがってブタンの分離を達成するのに必要なエネルギーは、脱離装置の頂部で回収されたブテンに富む流れを凝縮する際に生成される凝縮熱から少なくとも部分的に得られる。したがって、凝縮熱は、少なくとも部分的に利用される。脱離装置の頂部で回収されたブテンに富む流れを凝縮するための対応するコンデンサは、当業者に知られている熱交換器であり得る。脱離装置のコンデンサがケトルの形であることも考えられる。内部流の利用可能性に応じて、コンデンサを多段装置として構成することも可能である。この場合、熱統合は第1段階の凝縮でのみ行われ、第2段階では外部冷却媒体が使用される。
【0023】
ブタンが豊富な流れ、または凝縮が行われる場合にはブタン含有生成物流は、主にn-ブタンおよびイソブタンからなることはすでに上で述べた。抽出中に溶媒に移されなかったブテンも、これらの流れの中に依然として存在し得る。n/iso分離によってオレフィンを含まないn-ブタン/イソブタン流を得ようとする場合は、吸収装置の頂部で回収されたブタンが豊富な流れ、または凝縮が行われる場合はブタン含有生成物が、n/iso分離装置に入る前に、水素化に供され、残留ブテンがブタンに転化され得る。このような残留オレフィンの水素化は、一般に当業者にはよく知られており、本明細書では詳細に説明しないものとする。
【0024】
特に好ましい実施形態では、n/iso分離装置の上流での水素化中に生成された反応熱の少なくとも一部が、n/iso分離装置の加熱に使用される。 これにより、n/iso分離装置を加熱するために必要な外部エネルギーの少なくとも一部を節約することが可能になる。
【0025】
あるいは、そのような水素化をn/iso分離装置の上流ではなく下流に配置することも可能である。あらゆる残留1-ブテンおよびイソブテンは通常、n/iso分離装置の頂部で得られ、そのためイソブタンが豊富な流れの中に存在する。2-ブテンは、最終的に底部に行き、n-ブタンが豊富な流れの中に存在する。本発明の好ましい実施形態では、イソブタンに富む流れとn-ブタンに富む流れの一方、または両方が水素化に供され、あらゆる残留ブテンがブタンに転化される。したがって、n/iso分離装置から得られる一方の流れのみを水素化し、他方の流れを水素化しないことも可能である。
【0026】
本発明の特に好ましい実施形態では、2つの流れのうちの一方の水素化の際に生成される反応熱の少なくとも一部、または2つの流れの2回の水素化の際に生成される反応熱の少なくとも一部が、n/iso分離装置の加熱に使用される。これにより、n/iso分離装置を加熱するために必要な外部エネルギーをさらに節約することができる。場合によっては、追加の外部エネルギーが不要となる。生成された反応熱の適切な熱統合は、例えば内部温水回路によっても提供できる。このようなプラント・エンジニアリング工程は、それ自体当業者にはよく知られている。
【0027】
吸収装置の底部で回収され、主にブテンを含有する溶媒は、脱離装置に供給される。この目的のために、その含有溶媒は、例えばポンプを使用して、脱離装置に送られ得る。吸収装置の底部と比較して、脱離装置の底部は高温であり、好ましくはより低圧である。脱離装置の底部の温度は、好ましくは120℃~200℃、より好ましくは130℃~195℃である。脱離装置内のヘッド圧力は、絶対圧1~6バール、好ましくは絶対圧2~5バールであり得る。吸収装置に比べて高い温度および好ましくは低い圧力により、ブテンおよび場合により依然として存在するブタンが少なくとも部分的に溶媒から除去されるという結果が得られる。好ましい実施形態では、少なくとも部分的にブテンを含まない溶媒は、最大5000ppmw、特に好ましくは100~900ppmwのブテンを含有する。少なくとも部分的にブテンが除去された溶媒は、脱離装置内を下方に流れ、脱離装置の液体回収装置に回収される。そこから、少なくとも部分的にブテンを含まない溶媒は、脱離蒸発装置に通され、次に液体回収装置の下の脱離装置の底部、特に煙突トレイに送られ、溶媒中に残留しているすべてのブテンが脱ガスされる。脱離蒸発装置は、好ましくは、少なくとも部分的にブテンを含まない溶媒が蒸発装置に一度だけ通されるワンスルー蒸発装置である。これにより、可能な限り低い温度を達成することができ、汚れを防ぐことが可能になる。脱離蒸発装置は、多段装置としても構成され得る。すなわち、脱離蒸発装置に属する複数の熱交換器が存在し得る。次いで、ブテンを含まない溶媒が底部に残り、そこから回収され、底部流として吸収装置に送られ、そこでブテンの吸収のための溶媒として再利用される。
【0028】
吸収装置に送られる前に、ブテンを含まない溶媒は、部分的または完全に再生に供され、不純物、例えば、使用されるC4炭化水素流中に存在する、および/または脱離装置内の温度でブテンから生成される上述の副生成物(オリゴマー化合物またはポリマー化合物など)が溶媒、好ましくはNMPから除去され得る。再生は、ブテンを含まない溶媒を容器に移し、絶対圧500ミリバール未満、より好ましくは絶対圧200ミリバール未満、かつ温度100℃~150℃で蒸発させるように行うのが好ましい。容器には、塔が接続されていてもよい。特に重ボイラは、再生により分離される。ブテンを含まない溶媒の一部のみが再生に供される場合、溶媒の再生された部分は、その後、未再生の溶媒と混合され、吸収装置に再循環される。
【0029】
次いで、特に、使用されるC4炭化水素流と比べてブテンが豊富な流れが脱離装置の頂部で得られる。ブテンが豊富なこの流れは、溶媒に由来する水をさらに含み得る。この水は、後の工程で分離され得る。ブテンが豊富な流れは、脱離装置の頂部で回収され、一段階または多段階の凝縮に供され、水だけでなく有機物の残留物やブテン含有生成物流を含み得る含水流に凝縮される。これらの2つの流れは、適切な装置、例えばスパイダー内で互いに分離され得る。 次に、ブテン含有生成物流から分離された含水流は、脱離装置に再循環され得る。有機物を除去するために、含水流の全体または一部を排出することも可能である。
【0030】
本発明の好ましい実施形態では、脱離装置の頂部で回収されたブテンに富んだ流れの凝縮は、2段階凝縮として構成され、第1段階では、含水流が凝縮され、その後、脱離装置に再循環され、第2段階では、ブテン含有生成物流が凝縮される。ただし、残留水も第2段階で凝縮される場合もあり得る。この残留水は、適切な装置、例えばスパイダーを介してブテン含有生成物流から分離され得る。
【0031】
凝縮から得られるブテン含有生成物流は、ブテン含有生成物流の全組成に対し、20重量%未満、より好ましくは16重量%未満のブタンを含有することが好ましい。対照的に、凝縮から得られるブテン含有生成物流は、ブテン含有生成物流の全組成に対し、少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも75重量%、特に好ましくは少なくとも86重量%のブテンを含有することが好ましい。
【0032】
本発明の特徴は、脱離装置から吸収装置に戻る途中で溶媒の熱を利用する熱統合である。本発明によれば、脱離装置の底部流として回収される溶媒、好ましくはNMPの熱は、脱離装置に送られる含有溶媒の予熱のため、吸収蒸発装置内での蒸発のため、および液体C4炭化水素流の蒸発のために、少なくとも1つの各熱交換器内で溶媒の熱を使用することにより熱統合に利用される。
【0033】
本発明の好ましい実施形態では、脱離装置に送られる含有溶媒の予熱は、2段階で行われる。脱離装置に送られる含有溶媒への最初の熱伝達は、熱交換器、好ましくは管束熱交換器内で行われ、脱離装置に送られる含有溶媒への2 回目の熱伝達は、ケトル蒸発装置内で行われる。このような実施形態は、上述の好ましい実施形態において、両方の段階、すなわち熱交換器内およびケトル蒸発装置内で含有溶媒に伝達される熱が、熱伝達媒体としての脱離装置の底部流として回収される溶媒に由来するという利点を有する。ケトル蒸発装置を使用すると、脱離装置へ繋がる導管内の供給圧力を低くできるという利点もある。通常は、パイプ導管の破裂などの問題を引き起こす可能性があるパイプ導管内での蒸発を防ぐために、高い供給圧力が必要である。さらなる利点は、熱負荷が制限されるので、温度差が熱伝達にとって十分に大きいか、あるいは十分に大きく維持されることが確保される点である。
【0034】
本発明によれば、少なくとも部分的にブテンを含まない溶媒、好ましくはNMPは、脱離装置の液体回収装置に回収され、脱離蒸発装置に通され、溶媒中に残っているすべてのブテンを脱ガスできる。脱離蒸発装置での蒸発のための熱は、適切な熱伝達媒体からの熱伝達によって熱交換器に導入され得る。熱伝達媒体は、特に、中圧上記または高圧蒸気の形で使用される加熱蒸気であり得る。好ましい加熱蒸気は、150℃~270℃、好ましくは160℃~250℃の温度を有する中圧蒸気である。中圧蒸気は、好ましくは絶対圧15~30バール、特に好ましくは絶対圧17~25バールの圧力を有する。絶対圧30バールを超える蒸気も加熱蒸気として使用可能である。このような加熱蒸気は、高圧蒸気と呼ばれることもある。
【0035】
蒸発に使用される加熱蒸気は、熱交換器内で少なくとも部分的に凝縮され得る。その結果、絶対圧10~20バール、好ましくは絶対圧12~17バール、かつ温度150℃~210℃、好ましくは160℃~200℃の高温凝縮液が生成される。好ましくは、熱交換器の下流に、高温凝縮液を蒸気から分離し得る凝縮液容器が配置される。高温凝縮液はさらに、n/iso分離装置の加熱に使用され得る。凝縮液容器内の圧力は、加熱蒸気側の熱交換器よりも低いことが好ましい。圧力が低いと、高温凝縮液の一部が蒸発する可能性があり、その結果、混合蒸気、すなわち、加熱蒸気の非凝縮部分と減圧により凝縮液容器内で蒸発した高温凝縮液とが、凝縮液容器内で低圧蒸気として得られる。この場合、低圧蒸気は、0バールを超え、10バール未満の絶対圧を有することが好ましい。低圧蒸気の温度は100℃~180℃が好ましい。
【0036】
そこで得られる低圧蒸気には、依然としてエネルギーが含まれているが、これはいかなる既知の方法でも利用されていない。しかしながら、これは、エネルギー的または経済的な観点から有利ではない。しかし、このエネルギーは、本発明の好ましい実施形態において利用することができる。この目的を達成するために、脱離蒸発装置内での蒸発に使用される加熱蒸気は、好ましくは制御可能な蒸気排出装置(サーモコンプレッサ)を使用して提供され得る。次に、サーモコンプレッサには、例えば適切な蒸気ネットワークから生じる使用される加熱蒸気、特に使用されるのが好ましい中圧蒸気と、凝縮液容器からの低圧蒸気と、の両方が供給され、それにより、脱離蒸発装置用の熱伝達媒体である混合蒸気が生成される。したがって、この実施形態では、混合蒸気は加熱蒸気である。このような蒸気排出装置は、駆動蒸気で動作し、負圧(蒸気排出装置内の背圧)によって容器から吸引蒸気を吸引して、熱伝達媒体として使用される混合蒸気を生成できるように構成されている。この場合、駆動蒸気は、加熱蒸気/中圧蒸気であり、低圧蒸気は、凝縮液容器から吸引蒸気として吸引され、駆動蒸気と混合される。
【0037】
このような実施形態の利点は明らかである。凝縮液容器内で得られる低圧蒸気のエネルギーを利用することができ、エネルギーとコストを節約できる。このような手順は、別の理由でも有利になる可能性がある。使用される蒸気排出装置は、例えば特定のプロセスパラメータに従って中圧上記および低圧蒸気の量を調整できるように制御可能であり得る。吸引蒸気量は、駆動蒸気量により調整される。低圧上記および中圧蒸気の量は、例えば脱離装置内の温度に従って調整され得る。
【0038】
さらに好ましい実施形態では、脱離装置は側方蒸発装置を備える。このような場合、側方蒸発装置に使用される熱伝達媒体は、蒸気排出装置からの混合蒸気であり得る一方、脱離蒸発装置は、加熱蒸気として中圧蒸気を使用する。次いで、脱離蒸発装置および側方蒸発装置からの高温凝縮液は、上記の実施形態に従って凝縮液容器に送られる。そこで得られた低圧蒸気は、蒸気排出装置で使用され、その混合蒸気は、側方蒸発装置で使用される。この変形例の利点は、得られた高温凝縮液をさらに減圧して、より大量の低圧蒸気を提供できる点である。
【0039】
現在記載されている方法は、特にオリゴマー化および場合によりヒドロホルミル化を含む統合化学系において使用され得る。本発明の方法によるブテンの分離は、統合プラント内の様々な地点で使用されることが可能である。本発明によるブテンの分離は、統合化学プラント内の様々な地点で行うことも可能である。例えば、本明細書に記載の方法は、そのような統合系の始まりで使用され得る。使用されるC4炭化水素流は、特にクラックC4、ラフィネート1、ラフィネート2、またはそれらの混合物であり得る。クラックC4および/またはラフィネート2が使用される場合、ブタジエンが選択的に水素化されるクラックC4の水素化、またはブタジエンがNMPまたはニトリルなどの溶媒を用いて抽出的に除去され、ブタジエン含有量が減少されるブタジエン分離が、本発明による分離方法の上流に配置され得る。本発明の方法における分離作業を促進するために、抽出ブタジエン分離の下流かつ本発明による分離の上流に、水素異性化を配置することが可能である。なぜなら、これにより、1-ブテンが、より容易に溶媒に吸収される2-ブテンに転化されるからである。
【0040】
分離方法が統合系の始まりで使用される場合、得られた生成物流は、MTBE合成に供給され、その後、好ましくは1-ブテン分離、オリゴマー化、および精製オリゴマーの1回または複数回のヒドロホルミル化が連続して行われ得る。ヒドロホルミル化は、オリゴマー化からの生成物流により実施されてよく、これにより、その後の水素化後にジ-n-ブテンからINA(イソノナノール)を生成したり、トリブテンからITDA(イソトリデカナール)を生成したりすることが可能になる。同様に、ヒドロホルミル化は、オリゴマー化の未転化ブテンにより実施されてもよく、これにより、その後のアルドール縮合とそれに続く水素化の後に2-PH(2-プロピルヘプタノール)を生成することが可能になる。オリゴマー化からの未転化ブテンは、ヒドロホルミル化の代わりにさらなるオリゴマー化を操作するために、必要に応じて使用されることもできる。個々の工程の条件は、当業者にはよく知られている。個々の工程には、例えば生成物の分離または結果として得られた流れの処理などのさらなる工程が含まれ得るが、本明細書中では明示的に言及しない。しかしながら、本発明による分離方法は、そのような統合系の他のどんな地点にも導入され得る。
【0041】
本発明の一実施形態では、本発明による分離方法で使用されるC4炭化水素流は、MTBEの分離後にMTBE合成か回収され、その後、ブテン含有生成物流が1-ブテン分離に供給され、その後、オリゴマー化と、その後の2-PHおよび/またはINAの生成のための1つまたは複数のヒドロホルミル化と、が連続して実施される。個々の工程には、例えば生成物の分離または結果として得られた流れの処理などのさらなる工程が含まれ得るが、本明細書中では明示的に言及しない。
【0042】
本発明の一実施形態では、本発明による分離方法で使用されるC4炭化水素流は、MTBEの分離後にMTBE合成から回収され、その後、ブテン含有生成物流が1-ブテン分離に供給され、その後、オリゴマー化と、その後の2-PH、ITDAおよび/またはINAの生成のための1つまたは複数のヒドロホルミル化が連続して実施される。個々の工程には、例えば生成物の分離または結果として得られた流れの処理などのさらなる工程が含まれ得るが、本明細書中では明示的に言及しない。
【0043】
本発明のさらなる実施形態では、本発明による分離方法で使用されるC4炭化水素流はオリゴマー化から回収され、その後、ブテン含有生成物流は、その後の2-PHの製造のためのヒドロホルミル化に供給される。個々の工程には、例えば生成物の分離または結果として得られた流れの処理などのさらなる工程が含まれ得るが、本明細書中では明示的に言及しない。
【0044】
本発明のさらなる実施形態では、本発明による分離方法は、統合系の末端で使用される。その場合、使用するC4-炭化水素流は、ヒドロホルミル化の下流の2-PH生成物から回収される。この場合、本発明による分離方法から得られるブテン含有生成物流は、再循環され、統合系内の適切な時地点で、例えば1-ブテンの分離、オリゴマー化、または1つまたは複数のヒドロホルミル化のために使用される。これにより、統合系全体の効率を高めることが可能になる。なぜなら、統合系の最終工程を通過した後であっても最大で20重量%のブテンが依然として存在し得るためである。
【0045】
本発明による分離方法が配置される統合系内の地点とは独立して、ブタン含有生成物流は、例えば断熱オリゴマー化、依然として存在するブテンの水素化、またはn-ブタンとイソブタンが互いに分離されるブタンのn/iso分離装置に供給され得る。n/iso分離装置はまた、断熱オリゴマー化の後に実施され得る。別の可能性は、MTBE合成、1-ブテン分離、オリゴマー化、およびヒドロホルミル化から構成される上述の統合系において、オリゴマー化の上流にブタン含有生成物流を含めることであろう。
【0046】
本発明の特に好ましい実施形態では、n/iso分離装置に必要なエネルギーは、脱離装置の頂部における2段階凝縮の第1段階との熱統合により、少なくとも部分的に影響を受け得る。これには、凝縮で得られたエネルギーが、従来技術のように周囲に単に放出されるのではなく、利用されるという利点がある。
【0047】
以下、図面を参照して本発明を説明する。図面は例示であり、限定するものとして理解されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図2】
図2は、蒸気排出装置(12)が脱離蒸発装置(7)に存在する本発明のさらに好ましい実施形態を示す。
【
図3】
図3は、脱離装置(2)に送られる含有溶媒の予熱が2段階で行われる本発明の好ましい実施形態を示す。
【
図4】
図4は、水素化が水素化ユニット(22)内で行われる本発明の好ましい実施形態を示す。
【
図5】
図5は、同様に凝縮液容器(11)内で得られる高温凝縮液の熱が、熱交換器(23)を介して、n/iso分離装置(20)の加熱に付加的に使用される、本発明の好ましい実施形態を示す。
【
図6】
図6は、ケトル蒸発装置(10)の概略構成を示す。
【
図7】
図7は、蒸気排出装置(12)の概略構成を示す。
【0049】
図1は本発明の基本構成を示す。液体C4炭化水素流は、熱交換器(4)を介して蒸発され、吸収装置(1)に送られる。溶媒は、必要に応じて、残留冷却装置(3)を介して所望の温度にされ、同様に吸収装置に送られる。入口は、C4炭化水素流用の入口よりも空間的に上にあり、この場合、第1ランダム充填床よりも上にある。吸収装置(1)の頂部でブタンが豊富な流れが得られ、それはn/iso分離装置(20)に送られる。凝縮が先行してもよい(図示せず)。n/iso分離装置は、2段コンデンサでもあり得るコンデンサ(21)からの凝縮熱を使用して加熱される。含有溶媒は、図の煙突トレイで示されているように、吸収装置(1)の底部に回収される。そこで、含有溶媒の少なくとも一部が回収され、吸収蒸発装置(5)を介して吸収装置(2)の底部に送られる。含有溶媒は、吸収装置(1)の底部から回収され、ポンプ(9)を使用し、熱交換器(6)を経由して、含有溶媒の予熱のために、脱離装置(2)へ送られ、そこで溶媒中に存在するブテンが溶媒から分離される。ブテンが豊富な流れは、脱離装置の頂部で得られる。この流れは、コンデンサ(21)内の凝縮に送られ、相分離装置(18)に送られる。水相は脱離装置に送られる。ブテン含有生成物流は排出される。あり得る再循環流のみが示されている。少なくとも部分的にブテンを含まない溶媒は、図の煙突トレイで示されているように、脱離装置(2)の底部に回収される。そこで、含有溶媒の少なくとも一部が回収され、脱離蒸発装置(7)を介して脱離装置の底部に送られる。次に、ブテンを含まない溶媒は、脱離装置(2)の底部から回収され、ポンプ(8)を使用して、充填溶媒を予熱するための熱交換器(6)を介して吸収装置に、吸収蒸発装置(5)に、C4炭化水素流を蒸発させるための熱交換器(4)に、および残留冷却装置(3)に再循環される。
【0050】
図2は、蒸気排出装置(12)が脱離蒸発装置(7)に存在する本発明のさらに好ましい実施形態を示す。この蒸気排出装置には、通常の加熱蒸気、すなわち、例えば蒸気ネットワークからの中圧蒸気と凝縮液容器(11)で得られる低圧蒸気とが供給され、それにより、混合蒸気が生成され、その後、この混合蒸気は、脱離蒸発装置(7)用の加熱蒸気として使用される。蒸気排出装置の動作モードは、
図7の説明に記載されている。その他はすべて、
図1に関連して先に規定されたものに対応する。
【0051】
図3は、脱離装置(2)に送られる含有溶媒の予熱が2段階で行われる本発明の好ましい実施形態を示す。最初の熱伝達は、熱交換器(6)内で行われ、続く2回目の熱伝達はケトル蒸発装置(10)内で行われる。ケトル蒸発装置の動作モードは、
図6の説明に記載されている。他のすべては、
図2に関連して先に規定されたものに対応する。
【0052】
図4は、水素化が水素化ユニット(22)内で行われる本発明の好ましい実施形態を示す。水素化の配置は可変的であり、そのため、さまざまな可能性が破線で示されている。水素化は、n/iso分離装置に入る前、またはn/iso分離装置の後のいずれかで行われ得る。n/iso分離装置の後、水素化は、頂部流および/または底部流で実施され得る。他のすべては、
図1に関連して先に規定されたものに対応する。
【0053】
図5は、同様に凝縮液容器(11)内で得られる高温凝縮液の熱が、熱交換器(23)を介して、n/iso分離装置(20)の加熱に付加的に使用される、本発明の好ましい実施形態を示す。他のすべては、
図2に関連して先に規定されたものに対応する。
【0054】
図6は、ケトル蒸発装置(10)の概略構成を示す。液体供給物は、シェル側の供給ポート(101)を介して蒸発装置に送られる。液体供給物は、ケトル蒸発装置内で部分的に蒸発され、シェル側のガスポート(103)を介して脱離装置に送られる。蒸発しなかった供給物の一部は、堰を通過し、シェル側の生成物ポート(102)を介して液体生成物として脱離装置(2)に送られる。管側では、脱離装置(2)の高温底部生成物が加熱媒体として使用され、入口ポート(104)を介して管を通過し、出口ポート(105)から再び排出される。
【0055】
図7は、蒸気排出装置(12)の概略構成を示す。駆動蒸気(121)は加熱蒸気、特に蒸気ネットワークからの中圧蒸気である。蒸気(123)は、凝縮液容器からの低圧蒸気である。この2つは、制御ユニット(124)を介して混合され、出口を介して混合蒸気(122)として脱離蒸発装置(7)に送られる。駆動蒸気と吸引蒸気の量は、制御ユニットを介して調整できるため、混合蒸気の圧力と温度、ひいては加熱出力に影響を与えることが可能となる。
【0056】
実施例
実施例1-
図1に従った実施形態
図1に示すブタン-ブテンの分離を、Aspen Plus v10を使用してシミュレートした。構成要素間の相互の影響を記載するために、修正NRTL式パラメータセットを使用した。シミュレーションでは、19t/hの炭化水素含有原料を(
図1による)ブタン/ブテン分離装置に送った。当該供給物は、全体で、45重量%のブタン(35重量%のn-ブタンおよび10重量%のイソブタン)と、30重量%のイソブテンと、25重量%のn-ブテンと、を含有する。
【0057】
合計で7t/hのブタン含有塔頂生成物が吸収装置で回収される。吸収装置のブタン含有塔頂生成物は、70重量%のn-ブタンと、27重量%のイソブタンと、3重量%のブテンと、を含有する。ブテン含有生成物流を含む溶媒は、底部で回収される。ブテン含有生成物流は、14重量%のn-ブタンと、47重量%のイソブテンと、39重量%のn-ブテンと、を含有する。したがって、供給物に対する溶媒の比が13と確定することにより、98%のブテン収率を達成することができる。次いで、大過剰の溶媒は、熱統合にも使用される。
【0058】
エネルギーは、プラントの外部から、すなわち、脱離蒸発装置(7)用の加熱蒸気を介して、脱離装置(2)にのみ導入される。6.9MWが脱離蒸発装置(7)に移される。それ以外の場合は、この実施例全体を通じて溶媒による熱統合が実施されるので、さらなる外部エネルギーは必要とされない。脱離装置(2)の高温底部生成物は、脱離装置の予熱のための熱交換器(6)に通される。8.4MWがここに移される。脱離装置(6)の予熱後、溶媒は、吸収装置(1)の底部に送られ、そこで熱交換器(5)を介して7.8MWが移される。さらに1.8MWが、供給物の蒸発のために熱交換器(4)を介して溶媒から供給物へと移され、C4供給物流が蒸発される。残留冷却装置(3)では、溶媒は、冷却水で最適な抽出温度に調整される。 この実施例では、温度を40℃と仮定した。したがって、この温度に達するには、さらに2.5MWが溶媒から除去される必要がある。この相互接続により、外部からの熱のインプットが低減され、内部の熱が最適に利用されるようになる。実際、熱交換器 (4)、(5)、(6)の少なくとも1つが存在しない場合、未伝達エネルギーは、残留冷却装置(3)で除去され、従って消滅される必要がある。加えて、その際の未伝達のエネルギーは外部から供給される必要がある。この方法様式では、合計で6.9MWの外部エネルギーしか必要とされない。
【0059】
加えて、n/iso分離装置は、凝縮熱によって加熱される。これにより、凝縮からの3.5MWを、n/iso分離装置での分離に利用できるようになる。さらに、水素化も存在する場合には、水素化からのさらなる0.7MWがn/iso分離装置での分離に利用され得る。
【国際調査報告】