(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-15
(54)【発明の名称】硝子体切除用装置
(51)【国際特許分類】
A61F 9/007 20060101AFI20240207BHJP
【FI】
A61F9/007 130Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023541534
(86)(22)【出願日】2022-01-07
(85)【翻訳文提出日】2023-07-12
(86)【国際出願番号】 EP2022050275
(87)【国際公開番号】W WO2022148842
(87)【国際公開日】2022-07-14
(32)【優先日】2021-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523257152
【氏名又は名称】ユニバーシタイト ハッセルト
(71)【出願人】
【識別番号】523257163
【氏名又は名称】ビシオネア ビーブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【氏名又は名称】庄司 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100224786
【氏名又は名称】大島 卓之
(74)【代理人】
【識別番号】100225015
【氏名又は名称】中島 彩夏
(72)【発明者】
【氏名】ウィレケンス,コーエン
(57)【要約】
本発明はハウジングとカッターとを備える硝子体切除用装置を提供し、該カッターはハウジングに結合された外管と外管内に配置された内管を含み、該内管はその長手方向軸を中心に回転可能であり、ハウジング内に配置された駆動システムが内管に結合され、内管を回転させるように構成され、内管は内管の遠位端にある内管の壁に少なくとも1つの切刃を有する少なくとも1つの開口を備え、外管は外管の遠位端にある外管の壁に切刃を有する開口を備えており、ここで、内管は内管の遠位端にある内管の壁に複数の切刃を有する複数の開口を備え、内管の切刃及び外管の切刃は内管の回転によって互いに対して角度を形成するように構成されることを特徴とする、硝子体切除用装置を提供する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む硝子体切除用装置(100)であって:
- ハウジング(101)、
- カッター(102)、
ここで、該カッタ(102)は、以下を含む:
- 前記ハウジング(101)に結合された外管(103)であって、該外管(103)は、その遠位端の壁に開口部(104)を有する;
- 前記外管(103)内に配置された内管(106)であって、該内管(106)はその長手方向軸の周りに回転可能である;
- 前記ハウジング(101)内に配置され、前記内管(106)を回転させるように構成された駆動システム(109)、
- 前記外管(103)は、該外管(103)の遠位端にある該外管(103)の壁に切刃(105)を有する開口部(104)を備える、
その特徴は、以下である硝子体切除用装置(100):
- 前記内管(106)は、該内管(106)の遠位端にある該内管(106)の壁に複数の切刃(108)を有する複数の開口部(107)を備える;
- 前記内管(106)の前記切刃(108)と前記外管(103)の前記切刃(105)は、該内管(106)の回転によって、互いに対して角度(α)を形成するように構成されている。
【請求項2】
前記内管(106)は、前記外管(103)の前記開口部(104)と前記内管(106)の前記複数の開口部(107)との間の重なり部における回転中に、可変開口面を形成するように構成された、互いに離間した複数の切刃を有する該複数の開口部(107)を有する、請求項1に記載の硝子体切除用装置(100)。
【請求項3】
前記内管(106)は、該内管(106)の回転中の任意の時点で、前記外管(103)の前記切刃(105)と該内管(106)の前記切刃(108)の少なくとも1つとの間に接触を形成するように構成される、請求項2に記載の硝子体切除用装置(100)。
【請求項4】
前記開口部の当該可変開口面は、前記外管(103)の直径の50~150%である、請求項2に記載の硝子体切除用装置(100)。
【請求項5】
前記カッター(102)の前記駆動システム(109)は、モータ(110)と、駆動シャフト(111)と、回転シリンダ(112)とを備える、請求項1に記載の硝子体切除用装置(100)。
【請求項6】
前記内管(106)は、取り外し可能である、請求項1に記載の硝子体切除用装置(100)。
【請求項7】
前記カッター(102)の前記駆動システム(109)の前記回転シリンダ(112)は、複数のチャンバ(113)を備え、該チャンバ(113)のうちの少なくとも1つは前記内管(106)を保持する、請求項5に記載の硝子体切除用装置(100)。
【請求項8】
前記回転シリンダ(112)は、溝針、柔らかい先端の針/網膜色素/眼内薬剤から選択される硝子体切除ツールをさらに備えてもよい、請求項7に記載の硝子体切除用装置(100)。
【請求項9】
前記モータ(110)は、少なくとも80.000rpmの高速回転を有する空気圧駆動の滅菌可能な空気モータ、又は少なくとも80.000rpmの高速回転を有する電気モータから選択される、請求項5に記載の硝子体切除用装置(100)。
【請求項10】
前記外管(103)は、前記遠位端において完全に開放している、請求項1に記載の硝子体切除用装置(100)。
【請求項11】
前記回転する内管(106)の前記開口部(107)の少なくとも1つの切刃(108)は、垂直である、請求項1に記載の硝子体切除用装置(100)。
【請求項12】
前記回転する内管(106)の前記開口部(107)の少なくとも1つの切刃(108)は、斜めである、請求項1に記載の硝子体切除用装置(100)。
【請求項13】
前記外管(103)の前記開口部(104)は実質的に半円形であり、特に、前記外管(103)の前記切刃(105)は、実質的に半円形である、請求項1に記載の硝子体切除用装置(100)。
【請求項14】
前記内管(106)は、眼から組織を吸引するように配置された吸引通路である、請求項1に記載の硝子体切除用装置(100)。
【請求項15】
以下の工程を含む請求項1~14の何れか一に記載の硝子体切除用装置(100)を使用する硝子体切除法であって:
- 硝子体切除用装置(100)の眼の硝子体腔への挿入;
- 硝子体切除用装置(100)のカッター(102)の駆動システムをオンにして、硝子体切除用装置のカッター(102)の内管(106)を回転させる;
- カッター(102)による硝子体物質の切断;
- 吸引による前記硝子体腔からの硝子体物質の除去、
その特徴は、
- 切断が、内管(106)の切刃(108)と外管(103)の切刃(105)との間に形成される角度(α)によって達成される、
硝子体切除法。
【請求項16】
前記内管(106)は、互いに間隔を置いて配置された複数の切刃を有し、前記外管(103)の前記開口部(104)と前記内管(106)の少なくとも1つの開口部(107)との間の重なりにおける回転中に可変吸引空間を作り出す、請求項15に記載の硝子体切除法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は眼科手術装置、システム、及び方法に関し、特に、回転する内管を有する硝子体切除用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
微小外科的処置は、多くの場合、様々な身体組織の精密な切断及び/又は除去を必要とする。
【0003】
現在、硝子体切除用装置は、側部に開口部を有する不動の外管と、硝子体を切断するためのギロチンナイフ(垂直カッター)として機能する上下に移動する内管とから作られている。内管の動きは、典型的には空気圧で駆動されるスプリングリターンシステムであり、この技術を用いて、毎分約10.000切断の最大切断速度を得ることができる。最近、二重切断ポートが発明され、切断速度を効果的に2倍にし、100%のオープンデューティサイクル(カッターポートの開口)を維持し、流動容量を増加させ、硝子体物質の粒径を減少させる。しかしながら、これは、牽引のない硝子体切除を行うのに十分ではない。
【0004】
WO2018/011699は、眼科手術システムのシステム、装置、及び方法、並びに眼科手術システムのための方法を開示している。眼科手術システムは、ユーザが把持するための大きさ及び形状のハウジングを有する硝子体切除プローブを含むことができる。硝子体切除プローブは、又、ハウジングから延在し、患者の眼を貫通して治療するように寸法決めされたカッターを含んでもよい。カッターは、ハウジングに結合された外側切断管を含むことができる。この外側切断管は、組織を受容するようなサイズ及び形状である、そこに形成された外側ポートを有することができる。
カッターは、外側切断管内に配置された回転可能な内側切断部材を含むことができる。内側切断部材は、内側切断部材が回転されるときに組織を切断するために、外側ポートを横切って回転する第1の切断面を含んでもよい。硝子体切除プローブは、ハウジング内に配置され、内側切断部材を回転させるように構成された空気圧ベーンアクチュエータを含むことができる。
【0005】
この発明の欠点は、該装置が切断又は吸引のためにのみ使用され、多機能使用を排除することである。
【0006】
WO2018/178804は、硝子体切除プローブを開示しており、それに関連する方法が該明細書に開示されている。本開示は、回転螺旋カッターを有する様々な実施例の硝子体切除プローブを説明する。実施例の螺旋カッターは、外側カッター部分と、その中に受容される内側カッター部分とを含む。内側カッター部分は、外側カッター部分内でその長手方向軸の周りを回転往復運動するように動作可能である。
内側カッター部分の遠位端に形成された螺旋状剪断表面は、外側カッター部分に形成されたポートを介してカッターに入る材料を切断するように動作可能である。
この発明の欠点は、当該装置は、切断又は吸引のためにのみ使用され、多機能使用を排除することである。
【0007】
結論として、硝子体切除手術の時間をより短くすることができる多機能デバイスが継続的に必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2018/011699公報
【特許文献2】WO2018/178804公報
【発明の概要】
【0009】
本発明はハウジングとカッターとを備える硝子体切除用装置を提供し、該カッターはハウジングに結合された外管と外管内に配置された内管を含み、該内管はその長手方向軸を中心に回転可能であり、ハウジング内に配置された駆動システムが内管に結合され、内管を回転させるように構成され、内管は内管の遠位端にある内管の壁に少なくとも1つの切刃を有する少なくとも1つの開口を備え、外管は外管の遠位端にある外管の壁に切刃を有する開口を備えており、ここで、内管は内管の遠位端にある内管の壁に複数の切刃を有する複数の開口を備え、内管の切刃及び外管の切刃は内管の回転によって互いに対して角度を形成するように構成されることを特徴とする、硝子体切除用装置を提供する。
【0010】
一実施態様では、内管は、互いに離間した複数の切刃を有し、それは、外管の開口部と内管の複数の開口部との間の重なりにおいて、回転中に開口部の可変開口面を形成するように構成されている。
【0011】
別の実施態様では、内管は、内管の回転中の任意の時点で、外管の切刃と内管の切刃との間に接触を形成するように構成される。
【0012】
次の実施態様では、開口部の可変開口面は、外管の直径の50~150%である。
【0013】
さらなる実施態様では、硝子体切除用装置のカッターの駆動システムは、モータ、駆動シャフト、及び回転シリンダを備える。
【0014】
いくつかの実施態様では、内管は、取り外し可能である。
【0015】
別の実施態様では、カッターの駆動システムの回転シリンダは、複数のチャンバ(Chamber:室)を備え、チャンバのうちの少なくとも1つは内管を保持する。
【0016】
さらなる実施態様では、カッターの駆動システムの回転シリンダは、溝針(flute needle)、柔らかい先端の針(soft tipped needle)/網膜色素(retinal dyes)/眼内薬剤(intraocular medication)から選択される硝子体切除ツールをさらに含み得る。
【0017】
さらに別の実施態様では、モータは、少なくとも80.000rpmの高速回転を有する空気圧駆動の滅菌可能な空気モータ、又は、少なくとも80.000rpmの高速回転を有する電気モータから選択される。
【0018】
次の実施態様では、外管は、遠位端において開放されている。
【0019】
別の実施態様では、内管の開口部の少なくとも1つの切刃は、垂直である。
【0020】
さらなる実施態様では、内管の開口部の少なくとも1つの切刃は、斜めである。
【0021】
外管の開口部は、特定の形状に限定されない。さらなる実施態様では、外管の開口部は、実質的に(半)-円形である。特定の実施態様では、外管の開口部の切刃は、実質的に(半)-円形である。
【0022】
さらに別の実施態様では、内管は、眼から組織を吸引するように配置された吸引通路として構成される。
【0023】
次の実施態様では、本発明は、前記特定のいずれか1項に記載の硝子体切除用装置を使用する以下の工程を含む硝子体切除の方法であって
- 硝子体切除用装置の眼の硝子体腔への挿入;
- 硝子体切除用装置のカッターの内管を回転させるための硝子体切除用装置のカッターの駆動システムの起動;
- 硝子体物質をカッターで切断し、
- 吸引による前記硝子体腔からの硝子体物質の除去;
ここで、
- 該切断は、内管の切刃と外管の切刃との間に形成される角度によって達成される、ことを特徴とする、方法。
【0024】
一実施態様では、内管は、互いに間隔を置いて配置された複数の切刃を有し、外管の開口部と内管の少なくとも1つの開口部との間の重なりにおいて、回転中に、可変吸引空間を作り出し、すなわち、可変開放表面開口部を作り出す。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、硝子体物質の切開の方向の概略図の側面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施態様による、硝子体切除用装置の側面図である。
【
図3】
図3Aは、本発明の一実施態様による、硝子体切除用装置の外管の側面図である。
図3Bは、本発明の一実施態様による、硝子体切除用装置の内管の側面図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施態様による、硝子体切除用装置の側面図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施態様による、硝子体切除用装置の側面図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施態様による、カッターの遠位端の詳細な側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、特定の実施態様に関して、特定の図面を参照して説明されるが、本発明は、それらに限定されない。図面は、さらに説明されるように、単に概略的であり、非限定的である。図面において、要素のいくつかは、説明のために一定の縮尺で描かれていない場合がある。寸法及び相対寸法は、本発明の実施に対する実際の縮小に対応しない。
【0027】
さらに、本明細書及び特許請求の範囲における、第1、第2、さらに及びその他等の用語は、類似の要素を区別するために使用され、時間的に、空間的に、ランク付けで、又は任意の他の方法で、シーケンスを説明するために必ずしも使用されない。そのように使用される用語は、適切な状況下で互換可能であり、本明細書に記載される本発明の実施態様は、本明細書に記載又は図示される以外の他の順序で動作することが可能であることを理解されたい。
【0028】
特許請求の範囲で使用される「含む:comprising」という語は、その後に列挙される手段に限定されるものと解釈されるべきではなく、他の要素又はステップを排除するものではないことに留意されたい。従って、言及された特徴s、整数s、ステップs、又は構成要素sの存在を特定するものとして解釈されるべきであるが、1つ以上の他の特徴s、整数s、ステップs、又は構成要素s、又はそれらの群sの存在又は追加を排除するものではない。
従って、「A及びBを含む生成物」という表現の範囲は、成分A及びBのみからなる装置に限定されるべきではない。 本考案に関して、生成物の関連成分はA及びBであり、C等のさらなる成分が存在し得ることを意味する。
【0029】
本明細書を通して、「一の実施態様(one embodiment)」又は「一実施態様(an embodiment)」という言及は、当該実施態様に関連して説明される、特定の機能(feature)、構成(又は構造:structure)、又は特徴(characteristic)が本実施態様の少なくとも1つの実施態様に含まれることを意味する。
従って、本明細書全体にわたる様々な場所における「一の実施態様では」又は「一実施態様では」という語句の出現は、必ずしもすべてが同じ実施態様を指すわけではない。
さらに、特定の機能、構造、又は特徴は、1つ又は複数の実施態様において、本開示から、当業者に明らかであるように、任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0030】
同様に、本発明の例示的な実施態様の説明では、開示を簡素化し、様々な発明の態様のうちの1つ又は複数の理解を助ける目的で、本発明の様々な特徴が単一の実施態様、図、又はそれらの説明にまとめられることがあることを諒解されたい。
しかしながら、この開示方法は、請求される発明が各請求項に明示的に列挙されるよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映するものとして解釈されるべきではない。
むしろ、以下の特許請求の範囲が表すように、決して先に開示した単一の実施態様のすべての特徴に発明的要素が存在するわけではない。
従って、詳細な説明に続く特許請求の範囲は、この詳細な説明に明示的に組み込まれ、各請求項は、本発明の別個の実施態様として独立している。
【0031】
さらに、本明細書に記載されるいくつかの実施態様は、他の実施態様に含まれるが、他の特徴を含まない、いくつかの特徴を含むが、異なる実施態様の特徴の組み合わせは、当業者によって理解されるように、本発明の範囲内であり、異なる実施態様を形成することを意味する。
例えば、以下の特許請求の範囲において、特許請求される実施態様のいずれも、任意の組み合わせで使用することができる。
【0032】
本明細書で提供される説明では、多数の具体的な詳細が説明される。しかし、本発明の実施例を、こうした特定の詳細なしにおいて、実施し得るということが分かる。他の例では、この記載の理解を不明瞭にしないために、周知の方法、構造、及び技術は、詳細に示されていない。
【0033】
本明細書で使用される場合、特に明記しない限り、「遠位端」という用語は、装置の長手方向軸に沿って、装置の中心から離れて位置する末端、として理解されるべきである。
用語「遠位」は、概して、当該分野において、外科医の装置側から離れ、患者の側に近いことを意味すると理解することができる。
【0034】
本明細書で使用される場合、特に明記しない限り、「回転する」という用語は、その長手方向軸の周りを移動するものとして理解されるべきである。
【0035】
本明細書で使用される場合、特に明記しない限り、「取り外し可能」という用語は、その場所又は位置から容易に移動することができるものとして理解されるべきである。
【0036】
本明細書で使用される場合、特に明記されない限り、「駆動システム」という用語は、硝子体切除用装置の内部部品を駆動する、例えば、回転シリンダ及び/又は内管に回転を与えるシステムとして理解されるべきである。
【0037】
本発明の実施態様の利点は、異なるタイプの硝子体切除ツールが、1つの硝子体切除用装置において使用され得、切断だけでなく、他の硝子体切除手技をも履行し、硝子体切除手術の速度を高めることができることである。
【0038】
本発明の実施態様のさらに別の利点は、内管及び外管のそれぞれの構成及び切刃の位置により、切刃が常に活性状態(active)にあることである。
【0039】
また、本発明の実施態様の利点は、迅速かつ一定の切断により、切断された硝子体粒子のサイズが減少し、硝子体が、吸引速度をも著しく増加させる、非ニュートン流体の特性を失うことである。
【0040】
また、本発明の実施態様の利点は、硝子体切除用装置は、内管及び外管の切刃のそれぞれの構成及び位置に起因して、連続的に開いた吸引ポート(aspiration port)を有することである。
【0041】
ここで、
図1を参照すると、繊維(fiber)116の形態で概略的に表される、硝子体物質の、切断115の方向の概略的表現の側面図が示されている。
この図は、硝子体物質が、水平な切刃を有する垂直なカッターを使用する場合のように、繊維116に沿って切断されない、及び、垂直な切刃を有する回転カッターを使用する場合のように、繊維116を横切らない、が、切断115が、いくつかの場所(places)(位置:location))において繊維116の表面に対してある角度で、達成されることを明確に示す。
【0042】
ここで、本発明の一実施態様による硝子体切除用装置100の側面図を示す
図2を参照する。この図は、硝子体切除用装置100が外管103と、それらの壁に開口部を有する内管106(点線によっても示される)とを備えることを明確に示す。
この実施例では、外管103は、その遠位端に開口部104を有する。好ましくは、外管103は、その壁に開口部104を有し、その端部が閉鎖されている。あるいは、外管103は、その端部が開放されていてもよい。好ましくは、開口部104の形状は、少なくとも実質的に半円形(semi-circular)であり、外管103の切刃105もまた、少なくとも実質的に半円形(semi-circular)である。
あるいは、開口部104は、実質的に円形(circular)であってもよい。あるいは、切刃105は、実質的に円形(circular)であってもよい。別段の定めがない限り、「半円形:semi-circular」という用語は、半円形の形態の物体若しくは物体のアレンジ(arrangement:配置)として理解されるべきである。例えば、円が2つの半分に切断されるとき、又は円の円周が2で割られるとき、半円形状が得られる。
本明細書で使用するとき、用語「(半)-円形:(semi)-circular」は、半円形及び円形アレンジの両方を含むことを意味する。"実質的に半円形及び実質的に円形"とは、形状は半円形又は円形に限定されず、(半)-長円形(oval)、(半)-卵形(egg)、(半)-楕円形(ellipsoid)等の任意の、全体的な円形(overall round)~半円(semi-round)形を含むことを示す。
【0043】
内管106は、内管106の遠位端にある内管106の壁に複数の切刃108を有する複数の開口部107を備える。好ましくは、内管106は、遠位端で閉鎖される。好ましくは、回転する内管106の開口部107の切刃108は、前記内管の長手方向軸LAに対して斜めである。
【0044】
図3Aは、本発明の一実施態様による、半円形の切刃105を有する硝子体切除用装置100の外管103の別個の側面図を示す。
【0045】
図3Bは、本発明の実施態様による、硝子体切除用装置100の内管103の別個の側面図を図示する。この図は、内管は、内管106の壁に複数の切刃108を有する複数の開口部107を備えることを明確に示す。
【0046】
ここで、本発明の一実施態様による硝子体切除用装置100の側面図を示す
図4を参照する。この図は、硝子体切除用装置100は、外管103と、それらの壁に開口部を有する内管106(点線によっても示される)とを備えることを明確に示す。
この実施例では、外管103は、その遠位端に開口部104を有する。開口部104は半円形であり、外管103の切刃105も半円形である。
内管は、前記内管106の遠位端に、該内管106の壁において、複数の切刃108をもつ、複数の開口部107を備える。切刃108間の開口部107は、異なる幅とすることができる。
この実施態様の理論的な利点は、内管106の最大開口部107を外管103の開口部104と整列させることによって、切断することなく、単に吸引を適用することによって、より大きな流量を達成できることである。
好ましくは、内管106は、遠位端で閉鎖される。好ましくは、回転する内管106の開口部107の切刃108は、前記内管の長手方向軸(LA)に対して斜めである。
【0047】
ここで、本発明の一実施態様による硝子体切除用装置100の側面図を示す
図5を参照する。この図は、硝子体切除用装置100は、使用者の手によって把持されるようなサイズ及び形状にされたハウジング101と、患者の眼に挿入されるように構成されたカッター102とを備えることを明確に示す。
カッター102は、長手方向軸(LA)に沿ってハウジング101の遠位部分114から延びる。カッター102は、ハウジング101に結合され、ハウジング101から延在する外管103を備える。外管103は、遠位端の壁に開口部104を有する。
【0048】
この実施例では、外管103は、遠位端で完全に開放している。好ましくは、外管103は、遠位端で閉鎖される。カッター102は、外管103内に配置された内管106をさらに備え、内管106は、その長手方向軸の周りを回転可能であり、この実施態様では、長手方向軸LAと同軸である。内管106及び外管103は、互いに緊密に嵌合する。
内管106は、内管106の遠位端にある内管106の壁に少なくとも1つの切刃108を有する少なくとも1つの開口部107を備える。
【0049】
この実施例では、内管106は、内管106の遠位端にある内管106の壁に複数の切刃108を有する複数の開口部107を備える。好ましくは、内管106の複数の切刃108は、互いに離間している。好ましくは、内管106は、外管103の開口部104と内管106の複数の開口部107との間の重なりにおける回転中に、開口部104の可変の開放面を生成するように構成される。
好ましくは、回転する内管106の開口部107の少なくとも1つの切刃108は、例えば、内管の長手方向軸に対して、垂直、すなわち沿っている又は斜めであってもよい。
【0050】
あるいは回転する内管106の複数の開口部107の切刃108のすべては、内管の長手方向軸に対して、沿って若しくは斜めに、互いに平行であってもよい。
あるいは、回転する内管106の開口部107の少なくとも1つの切刃108は、内管の長手方向軸に対して、わずかに湾曲、すなわち、滑らかに丸められていてもよい。
あるいは、回転する内管106の複数の開口部107の切刃108の全ては、内管の長手方向軸に対して、わずかに湾曲、すなわち、滑らかに丸められていてもよく、特に互いに平行な向きであってもよい。
【0051】
回転する内管106の開口部107の切刃108の当該垂直及び/又はわずかに湾曲した向きは、切断運動を改善する。
この実施例では、内管106の開口部107の複数の切刃108は、内管の長手方向軸に対して斜めである。
外管103は、該外管103の遠位端で外管103の壁に、切刃105を有する開口部104を備える。
この実施例では、外管103の開口部104は、半円形であり、特に、外管103の切刃105は、半円形である。
【0052】
あるいは、開口部104は、実質的に円形であってもよい。あるいは、切刃105は、実質的に円形であってもよい。
カッター102の内管106は、内管106の遠位端が外管103の遠位端を越えて延在しないという事実によって特徴付けられる特別な位置にあり、従って、内管106の切刃108及び外管103の切刃105は、内管106の回転によって互いに対して角度α(
図6に示される)を形成する。
好ましくは、内管106は、内管106の回転中の任意の時点で、外管103の切刃105と内管106の切刃108の少なくとも1つとの間に接触、すなわち角度αを形成するように構成される。
【0053】
言い換えれば、内管106の壁に複数の切刃108を有する複数の開口部107は、好ましくは、外管103の切刃105と、外管に対する内管の任意の回転位置における内管106の切刃108の少なくとも1つと、の間の接触を形成するように構成される。
【0054】
そのような構成は、任意の回転位置で切断可能条件を提供し、内管106の回転中の任意の時点で連続的な切断を可能にする。当業者には明らかなように、内管106の開口部107間の距離及び/又は切刃108の向きは、内管106の回転の任意の時点で、そのような連続的な切断を可能にすることができる。
【0055】
好ましくは、開口部107は、内管106の少なくとも2つの切刃108が外管103の切刃105に対して角度αを形成するように、配置される。従って、連続切断は、内管106の回転ごとに2つの切断によって達成される。
【0056】
好ましくは、角度αは、可変であり、それは、内管106の切刃108が外管103の切刃105に最初に接触するときである、切断の開始時の90°と、切断は開放104の形状に従うので、内管106の切刃108が外管103の切刃105の最後の点に接触するときである、切断の最終時の180°の間である。
【0057】
特定の実施態様では、回転する内管106の複数の開口部107の切刃108は、斜め又はわずかに湾曲した向きで互いに平行に間隔を置いて配置され、外管103の切刃105は、実質的に(半)-円形であり、開口部107は、内管106の少なくとも2つの切刃108が外管103の切刃105に対して角度αを形成するように、配置される。
そのような構成は、内管106の吸引通路に向かって引っ張られているときに、繊維性硝子体物質の切断及び迅速な吸引をもたらす最良の結果を提供することが観察されている。
【0058】
好ましくは、内管106は、取り外し可能である。硝子体切除用装置100は、ハウジング101内に配置された駆動システム109をさらに備え、該駆動システム109は、内管106に結合され、該内管106を回転させるように構成される。
【0059】
好ましくは、カッター102の駆動システム109は、モータ110と、駆動シャフト111と、回転シリンダ112とを備える。好ましくは、カッター102の駆動システム109の回転シリンダ112は、その長手方向軸の周りに対称に配置された複数のチャンバ113を備える。
この実施例では、回転シリンダ112は、4つのチャンバ113を備え、該チャンバ113のうちの1つは内管106を保持する。回転シリンダ112は、例えば、溝針、柔らかい先端の針/網膜色素/眼内薬剤等から選択される硝子体切除ツールをさらに備えてもよい。
【0060】
内管106は、他の外科的処置を行うために、外管103内の該硝子体切除ツールと置き換えられてもよい。駆動システム109のモータ110は、例えば、少なくとも80.000rpmの高速回転を有する空気圧駆動の滅菌可能な空気モータ、又は少なくとも80.000rpmの高速回転を有する電気モータから選択される。
【0061】
互いに離間した内管106の複数の切刃108は、回転中に、外管103の開口部104と内管106の開口部107との間の重なり(overlap)に可変吸引空間(variable aspiration space)を形成する。
【0062】
内管及び外管の切刃のそれぞれの位置のこの構成は、硝子体切除用装置100が連続的な開放吸引ポートcontinuous open aspiration port)を有することを可能にする。開口部104の可変開口面(variable open surface)は、外管103の直径の50~150%である。該内側において、内管106は、眼から組織を吸引するように配置された吸引通路である。
【0063】
ここで、本発明の実施態様による、カッター102の遠位端の詳細な側面図を示す、
図6を参照する。この図は、内管106は、前記内管106の遠位端にある内管106の壁に複数の切刃108を有する複数の開口部107を備え、回転する内管106の開口部107の複数の切刃108が内管の長手方向軸に対して斜めであることを明確に示す。内管106の切刃108と外管103の切刃105とは、内管106の回転によって互いに対して角度αを形成する。
【0064】
硝子体切除用装置100を使用する硝子体切除の方法は、以下のように実行される。硝子体切除用装置100は、眼の硝子体腔内に挿入される。硝子体切除用装置100のカッター102の駆動システムがオンになり、硝子体切除用装置のカッター102の内管106を回転させる。硝子体物質は、カッター102によって切断され、次いで吸引によって前記硝子体腔から除去される。切断は、内管106の切刃108と外管103の切刃105との間に形成される角度αによって達成される。
【符号の説明】
【0065】
100:硝子体切除用装置
101:ハウジング
102:カッター
103:外管
104:外管の開口部
105:外管の切刃
106:内管
107:内管の開口部
108:内管の切刃
109:駆動システム
110:モータ
111:駆動シャフト
112:回転シリンダ
113:チャンバ
114:ハウジング101の遠位部分
115:硝子体物質の切断
116:硝子体物質のグレイン(繊維)
LA:内管の長手方向軸
α:内管106の切刃108と外管103の切刃105との間の角度
【手続補正書】
【提出日】2022-10-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む硝子体切除用装置(100)であって:
- ハウジング(101)、
- カッター(102)、
ここで、該カッタ(102)は、以下を含む:
- 前記ハウジング(101)に結合された外管(103)であって、該外管(103)は、その遠位端の壁に開口部(104)を有する;
- 前記外管(103)内に配置された内管(106)であって、該内管(106)はその長手方向軸の周りに回転可能である;
- 前記ハウジング(101)内に配置され、前記内管(106)を回転させるように構成された駆動システム(109)、
- 前記外管(103)は、該外管(103)の遠位端にある該外管(103)の壁に切刃(105)を有する開口部(104)を備える、
その特徴は、以下である硝子体切除用装置(100):
- 前記内管(106)は、該内管(106)の遠位端にある該内管(106)の壁に複数の切刃(108)を有する複数の開口部(107)を備える;
- 前記内管(106)の前記切刃(108)と前記外管(103)の前記切刃(105)は、該内管(106)の回転によって、互いに対して角度(α)を形成するように構成されている;
- 前記内管(106)は、該遠位端において、閉鎖している;及び
- 前記外管(103)は、該遠位端において、完全に開放している。
【請求項2】
前記内管(106)は、前記外管(103)の前記開口部(104)と前記内管(106)の前記複数の開口部(107)との間の重なり部における回転中に、可変開口面を形成するように構成された、互いに離間した複数の切刃を有する該複数の開口部(107)を有する、請求項1に記載の硝子体切除用装置(100)。
【請求項3】
前記内管(106)は、該内管(106)の回転中の任意の時点で、前記外管(103)の前記切刃(105)と該内管(106)の前記切刃(108)の少なくとも1つとの間に接触を形成するように構成される、請求項2に記載の硝子体切除用装置(100)。
【請求項4】
前記開口部の可変開口面は、前記外管(103)の直径の50~150%である、請求項2に記載の硝子体切除用装置(100)。
【請求項5】
前記カッター(102)の前記駆動システム(109)は、モータ(110)と、駆動シャフト(111)と、回転シリンダ(112)とを備える、請求項1に記載の硝子体切除用装置(100)。
【請求項6】
前記内管(106)は、取り外し可能である、請求項1に記載の硝子体切除用装置(100)。
【請求項7】
前記カッター(102)の前記駆動システム(109)の前記回転シリンダ(112)は、複数のチャンバ(113)を備え、該チャンバ(113)のうちの少なくとも1つは前記内管(106)を保持する、請求項5に記載の硝子体切除用装置(100)。
【請求項8】
前記回転シリンダ(112)は、溝針、柔らかい先端の針/網膜色素/眼内薬剤から選択される硝子体切除ツールをさらに備えてもよい、請求項7に記載の硝子体切除用装置(100)。
【請求項9】
前記モータ(110)は、少なくとも80.000rpmの高速回転を有する空気圧駆動の滅菌可能な空気モータ、又は少なくとも80.000rpmの高速回転を有する電気モータから選択される、請求項5に記載の硝子体切除用装置(100)。
【請求項10】
前記回転する内管(106)の前記開口部(107)の少なくとも1つの切刃(108)は、垂直である、請求項1に記載の硝子体切除用装置(100)。
【請求項11】
前記回転する内管(106)の前記開口部(107)の少なくとも1つの切刃(108)は、斜めである、請求項1に記載の硝子体切除用装置(100)。
【請求項12】
前記外管(103)の前記開口部(104)は実質的に半円形であり、特に、前記外管(103)の前記切刃(105)は、実質的に半円形である、請求項1に記載の硝子体切除用装置(100)。
【請求項13】
前記内管(106)は、眼から組織を吸引するように配置された吸引通路である、請求項1に記載の硝子体切除用装置(100)。
【請求項14】
以下の工程を含む請求項1~13の何れか一に記載の硝子体切除用装置(100)を使用する硝子体切除法であって:
- 硝子体切除用装置(100)の眼の硝子体腔への挿入、
- 硝子体切除用装置(100)のカッター(102)の駆動システムをオンにして、硝子体切除用装置のカッター(102)の内管(106)を回転させる、
- カッター(102)による硝子体物質の切断、
- 吸引による前記硝子体腔からの硝子体物質の除去、
その特徴は、
- 切断が、内管(106)の切刃(108)と外管(103)の切刃(105)との間に形成される角度(α)によって達成される、
硝子体切除法。
【請求項15】
前記内管(106)は、互いに間隔を置いて配置された複数の切刃を有し、前記外管(103)の前記開口部(104)と前記内管(106)の少なくとも1つの開口部(107)との間の重なりにおける回転中に可変吸引空間を作り出す、請求項15に記載の硝子体切除法。
【国際調査報告】