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特表2024-506805心臓刺激を支援し、心血流予備量比を測定する為のガイドワイヤを備えた冠状動脈診断アセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-15
(54)【発明の名称】心臓刺激を支援し、心血流予備量比を測定する為のガイドワイヤを備えた冠状動脈診断アセンブリ
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/026 20060101AFI20240207BHJP
   A61N 1/365 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
A61B5/026 110
A61N1/365
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543243
(86)(22)【出願日】2022-01-11
(85)【翻訳文提出日】2023-09-07
(86)【国際出願番号】 EP2022050369
(87)【国際公開番号】W WO2022157028
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】2100508
(32)【優先日】2021-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520373084
【氏名又は名称】エレクトロデューサー
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(72)【発明者】
【氏名】フォリ,バンジャマン
【テーマコード(参考)】
4C017
4C053
【Fターム(参考)】
4C017AA11
4C017AB04
4C017AC03
4C017BC11
4C017BD06
4C053KK02
4C053KK03
4C053KK08
(57)【要約】
本発明は、本質的に、冠状動脈診断アセンブリからなり、そのワイヤガイドは、該ワイヤガイド内に組み込まれた圧力センサによって、部分冠血流予備量比(FFR)の為の心腔内の圧力を測定すること、及び偽FFR測定の間に心臓ペーシングを実行することの両方に役立つ。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冠状動脈診断アセンブリであって、
人体の末梢動脈又は静脈内に導入されるように意図された付属カテーテル(1);
前記付属カテーテルの周りに係合されるように適合されたスリーブ(2)、ここで、前記スリーブは、その外側周囲部の少なくとも一部にわたって導電性材料からなり、それにより、前記付属カテーテルが前記人体の前記末梢動脈又は静脈内に導入されたときに、前記スリーブの前記導電性周囲部が、前記人体の皮下組織と、又は前記動脈若しくは前記静脈の壁と接触し、前記スリーブは更に電気接続に接続され、前記電気接続自体は、前記身体の外側の心臓刺激装置(3)の電極に接続されている、
前記付属カテーテルの挿入シース(11)内に導入されるように意図されたガイドワイヤ(4)、ここで、該ガイドワイヤは、その遠位部分に、冠動脈予備能を測定する為の圧力センサ(40)を、及び、その近位部分に、外部の前記心臓刺激装置の他方の電極への接続部として機能する、また前記センサによって測定された圧力の受信器への接続部として更に機能する金属部(41)を、備えている、
を備えている、前記アセンブリ。
【請求項2】
前記付属カテーテルの前記挿入シースの周りに係合される前記導電性スリーブに接続される前記心臓刺激装置の前記電極は陽極であり、一方、前記ガイドワイヤの前記金属部に接続される前記電極は陰極である、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記導電性スリーブは、導電性材料、例えば炭素、からなる単一部片として形成されている、請求項1又は2に記載のアセンブリ。
【請求項4】
前記スリーブは、導電性被膜、例えば炭素の被膜、をその外側周囲部上に備えたシースによって形成されている、請求項3に記載のアセンブリ。
【請求項5】
前記スリーブは、様々な直径、典型的に1.6~20mmの外側直径、の末梢動脈又は静脈カテーテルシースに係合可能であるように弾性である、請求項3又は4に記載のアセンブリ。
【請求項6】
冠状動脈診断アセンブリであって、
人体の末梢動脈又は静脈内に導入されるように意図された付属カテーテル、ここで、該付属カテーテルは、少なくとも1つの管状挿入シース及び少なくとも1つの導電性要素を備えており、その遠位部分は、前記人体の皮下組織と又は前記末梢動脈若しくは静脈の壁と接触するように前記シースの外側周囲部の少なくとも一部で曝露されており、前記人体(C)の外側からアクセス可能であるその近位部分は、前記人体の外側の心臓刺激装置の電極への接続部として機能する為の電気接続を備えている;
前記付属カテーテルの前記挿入シース内に導入されるように意図されたガイドワイヤ、ここで、該ガイドワイヤは、その遠位部分に、冠動脈予備能を測定する為の圧力センサを、及び、その近位部分に、外部の前記心臓刺激装置の他方の電極への接続部として、また前記センサによって測定された圧力の受信器への接続部として更に機能する金属部を、備えている、
を備えている、前記アセンブリ。
【請求項7】
前記付属カテーテルに接続される前記心臓刺激装置の前記電極は陽極であり、一方、前記ガイドワイヤの前記金属部に接続される前記電極は陰極である、請求項6に記載のアセンブリ。
【請求項8】
前記付属カテーテルの前記導電性要素は、少なくとも部分的に前記シースの厚み内に収容されたワイヤ又は金属バンドであり、その遠位部分は、前記シースの前記外側周囲部で曝露されている、請求項6又は7に記載のアセンブリ。
【請求項9】
前記ワイヤ又は前記金属バンドの断面積は、0.25~5mmである、請求項8に記載のアセンブリ。
【請求項10】
前記圧力センサが、圧電センサ又は光ファイバーセンサである、請求項1~9のいずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項11】
前記アセンブリは追加的に、ステントの配置を伴う冠状動脈血管形成アセンブリを構成することができ、ここで、前記ガイドワイヤは、前記ステントを前進させる為に適合されている、請求項1~10のいずれか1項に記載のアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適切な場合には冠状動脈血管形成の為の、冠状動脈診断アセンブリに関する。
【0002】
冠状動脈血管形成は、経管的拡張、経皮的冠状動脈血管形成(PTCA:percutaneous transluminal coronary angioplasty)、又は経皮的冠状動脈インターベンション(PCI:percutaneous coronary intervention)とも呼ばれる。
【0003】
本発明は、より特には、特に冠状動脈血管形成を視野に入れて、冠状動脈の機能不全の診断を改良することに関する。
【背景技術】
【0004】
冠状動脈血管形成は、例えば冠状動脈心臓疾患の場合に、膨張可能なバルーンが端部に取り付けられたプローブを用いて、狭くなった冠動脈を拡張することにより、該冠動脈を処置することを伴う。
【0005】
金属ガイドに装着された該プローブは、(橈骨又は大腿骨)末梢動脈から、異常のある動脈内に導入される。狭窄又は閉塞を通り抜ける為に金属ガイドワイヤが使用される。それは、血管形成プローブを安定的に位置付ける為のガイドの役割を果たす。
【0006】
ほとんどの場合、バルーン血管形成は、バルーンにかしめられる小さい金属製補綴物であるステントの配置によって補助される。
【0007】
冠状動脈血管形成を行う前に、施術者は診断を行う。
【0008】
よって、冠状動脈狭窄の血行動態の調査の状況において、冠状動脈の生理機能の使用が、非常にしばしば必要となり、その診断及び予後に関する利益を示している。世界各国におけるその広く確立された使用は、患者の予後を向上させている。
【0009】
より特には、冠動脈予備能又は部分冠血流予備量比(FFR:fractional flow reserve)の測定は、冠状動脈病変の機能的影響を非侵襲的に評価する為の平易で認められている方法である。該FFRの原理は、最大血管拡張(充血)時の狭窄部両端圧の測定に基づいており、それにより特定の冠状動脈病変の影響を定量化することを可能にする。該FFR測定は、中間冠状動脈病変の血管再生を誘導する為の血行動態有意性の標準的な基準指標となっている。
【0010】
該FFRは、圧力ガイドを使用して、狭窄、すなわち疾患のある区間、に対して遠位の冠状動脈圧と、最大心筋充血の状態下にある大動脈圧との比を計算することにより、冠状動脈血管造影中に容易に測定される。
【0011】
1.0のFFRが、正常として広く受け容れられている。0.80未満のFFRは、一般に、冠状動脈虚血に関連しており、保守的管理よりは血管再生を必要とするとみなされる。
【0012】
FFRは、冠状動脈狭窄(狭小化)を確定又は除外することができる。70%の狭窄がステントを必要としないことがあり得、逆に50%の狭窄がステントを必要とすることがありうる。
【0013】
FFRを測定する現在の標準的方法は、圧力ガイドを冠動脈に挿入し、同時に、充血剤、通例はアデノシン、が冠状動脈内ボーラスによって投与されるものである。
【0014】
今日まで、冠状動脈の生理機能、特にFFR、の実施は、複雑なままであり、上記で説明されたように、充血を生じさせる為の薬剤の投与を必要とし、この薬剤の中で最もよく知られているものはアデノシンである。冠状動脈内経路によって運ばれることから、この薬剤は、望ましくない副作用の要因(vector)であり、その最も一般的なものは、迷走神経タイプの不快感や一過性の心停止を患者に生じさせる、心臓不整脈、例えば徐脈又は不快な若しくは危険でさえある心臓停止、である。
【0015】
それ故に、この技術の使用は、この種の合併症又は副作用に遭遇するという恐れによって制限されることがある。
【0016】
それ故に、上記の欠点を克服する為に、特に血管形成を視野に入れて、冠状動脈の診断、より特にはFFRによる冠状動脈生理機能の診断、を改良する必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、この必要性を少なくとも部分的に満たすことである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この為に、本発明の主題は、第1の代替態様に従うと、冠状動脈診断アセンブリであって、
人体の末梢動脈又は静脈内に導入されるように意図された付属カテーテル;
該付属カテーテルの周りに係合されるように適合されたスリーブ、ここで、該スリーブは、その外側周囲部の少なくとも一部にわたって導電性材料からなり、それにより、該付属カテーテルが該人体の該末梢動脈又は静脈内に導入されたときに、該スリーブの該導電性周囲部が、該人体の皮下組織と、又は該動脈若しくは該静脈の壁と接触し、該スリーブは更に電気接続に接続され、該電気接続自体は、該人体の外側の心臓刺激装置の電極に接続されている;
該付属カテーテルの挿入シース内に導入されるように意図されたガイドワイヤ、ここで、該ガイドワイヤは、その遠位部分に、冠動脈予備能を測定する為の圧力センサを、及び、その近位部分に、外部の該心臓刺激装置の他方の電極への接続部として、また該センサによって測定された圧力の受信器への接続部として更に機能する金属部を、備えている、
を備えている、上記冠状動脈診断アセンブリである。
【0019】
有利な特徴に従うと、該付属カテーテルの該挿入シースの周りに係合される該導電性スリーブに接続される該心臓刺激装置の該電極は陽極であり、一方、該ガイドワイヤの該金属部に接続される該電極は陰極である。
【0020】
有利な変形の実施態様に従うと、該導電性スリーブは、導電性材料、例えば炭素、からなる単一部片として形成されている。
【0021】
好ましくは、該スリーブは、導電性被膜、例えば炭素の被膜、をその外側周囲部上に備えたシースによって形成されている。
【0022】
有利には、該スリーブは、様々な直径、典型的に1.6~20mmの外側直径、の末梢動脈又は静脈カテーテルシースに係合可能であるように弾性である。
【0023】
本発明はまた、第2の代替態様によると、冠状動脈診断アセンブリであって、
人体の末梢動脈又は静脈内に導入されるように意図された付属カテーテル、ここで、該付属カテーテルは、少なくとも1つの管状挿入シース及び少なくとも1つの導電性要素を備えており、その遠位部分は、該人体の皮下組織と又は該末梢動脈若しくは静脈の壁と接触するように該シースの外側周囲部の少なくとも一部で曝露されており、該人体(C)の外側からアクセス可能であるその近位部分は、該人体の外側の心臓刺激装置の電極への接続部として機能する為の電気接続を備えている;
該付属カテーテルの該挿入シース内に導入されるように意図されたガイドワイヤ、ここで、該ガイドワイヤは、その遠位部分に、冠動脈予備能を測定する為の圧力センサを、及び、その近位部分に、外部の該心臓刺激装置の他方の電極への接続部として、また該センサによって測定された圧力の受信器への接続部として更に機能する金属部を、備えている、
を備えている、上記冠状動脈診断アセンブリに関する。
【0024】
該付属カテーテルは、患者の橈骨又は大腿骨動脈に挿入されるイントロデューサであることができる。
【0025】
有利な特徴に従うと、該付属カテーテルに接続される該心臓刺激装置の該電極は陽極であり、一方、該ガイドワイヤの該金属部に接続される該電極は陰極である。
【0026】
有利な変形の実施態様に従うと、該付属カテーテルの該導電性要素は、少なくとも部分的に該シースの厚み内に収容されたワイヤ又は金属バンドであり、その遠位部分は、該シースの該外側周囲部で曝露されている。
【0027】
有利には、該ワイヤ又は該金属バンドの断面積は、0.25~5mmである。
【0028】
該圧力センサは、電線又は光ファイバーによってそれぞれ中央の圧力測定装置に接続される、圧電センサ又は光ファイバーセンサであることができる。所望の心臓刺激の為の電流の生成が圧力測定の為の電気信号又は光ファイバー信号に追加されるので、発明者はこの点に関する先入観を克服した。また、外乱が導入されない、すなわち、圧力測定が該心臓刺激の該電気信号によって妨害されない、ことも判明している。
【0029】
本発明に従う該アセンブリは追加的に、ステントの配置を伴う冠状動脈血管形成アセンブリを構成することができ、ここで、該ガイドワイヤは、該ステントを前進させる為に適合されている。
【0030】
本発明はまた、診断の、及び適切な場合には心臓インターベンションの、方法に関し、該方法は、
i/スリーブを付属カテーテルの周りに係合させること、ここで、該スリーブは、その外側周囲部の少なくとも一部にわたって導電性材料からなり、身体の外側の心臓刺激装置の電極への電気接続を更に備えている、
ii/付属カテーテルを人体の末梢動脈又は静脈に、該スリーブの該導電性周囲部が該人体の皮下組織と又は該動脈若しくは該静脈の壁と接触するように、導入すること、
iii/ガイドワイヤを該付属カテーテルの挿入シース内に導入すること、ここで、該ガイドワイヤは、その遠位端に圧力センサを、及び、その近位部に、外部の該心臓刺激装置の他方の電極への接続部として更に機能する金属部を、備えている、
iv/冠動脈予備能の測定値として、該センサを用いて圧力を測定し、該冠動脈予備能の該測定と同時に、外部の該心臓刺激装置を用いて直接的な心臓刺激を該ガイドワイヤ上で行うこと、
v/適用可能である場合、ステントが配置された場合に、外部の該心臓刺激装置を用いて心臓刺激を行うこと、ここで、該ガイドワイヤは、工程iv/が一旦実施されると適所に保持されたままにされる、
の工程を含む。
【0031】
本発明は最後に、診断の、及び適切な場合には心臓インターベンションの、方法に関し、該方法は、
i’/付属カテーテルを人体の末梢動脈又は静脈内に導入すること、ここで、該付属カテーテルは、少なくとも1つの管状挿入シース及び少なくとも1つの導電性要素を備えており、その遠位部分は、該人体の皮下組織と又は該末梢動脈若しくは静脈の壁と接触するように該シースの外側周囲部の少なくとも一部にわたって曝露されており、該人体(C)の外側からアクセス可能であるその近位部分は、該人体の外側の心臓刺激装置の電極への接続部として機能する為の電気接続を備えている、
ii’/ガイドワイヤを該付属カテーテルの該挿入シース内に導入すること、ここで、該ガイドワイヤは、その遠位端に圧力センサを、及び、その近位端に、外部の該心臓刺激装置の他方の電極への接続部として更に機能する金属部を、備えている、
iii’/冠動脈予備能の測定値として、該センサを用いて圧力を測定し、該冠動脈予備能の該測定と同時に、外部の該心臓刺激装置を用いて直接的な心臓刺激を該ガイドワイヤ上で行うこと、
iv’/適用可能である場合、ステントが配置された場合に、外部の該心臓刺激装置を用いて心臓刺激を行うこと、ここで、該ガイドワイヤは、工程iii’/が一旦実施されると適所に保持されたままにされる、
の工程を含む。
【0032】
このように、本発明は基本的に冠状動脈診断アセンブリからなり、該アセンブリのガイドワイヤは、該ガイドワイヤに内蔵された該圧力センサにより、冠動脈予備能(FFR)に関する狭窄部両端圧を測定すること、及びこのFFR測定中に該心臓刺激を実施することの両方の働きをする。
【0033】
直接の心臓刺激を、FFR測定用のガイドワイヤ上で導入することにより、本発明に従う該アセンブリは、心臓不整脈又は伝導障害、例えば徐脈又は有害な心臓停止、並びにFFR測定の前に実施されなければならない充血に関係する望ましくない副作用を回避することを可能にする。
【0034】
よって、本発明は、FFR測定手順を施術者及び患者にとってより安全なものにし、また、充血を実施する為に必要なアデノシンの使用に対する理論的禁忌が発生した場合でも、この種の生理学的調査をどのタイプの患者においても実施することを可能にする。禁忌の一例は、第1度の房室ブロックである。
【0035】
加えて、FFR測定中に心臓機能停止の為に必要とされる刺激強度は低い。典型的に、心臓機能停止を視野に入れた、供給される電流の強度は4~25mAの範囲であることができ、供給される電圧は1~15ボルトの範囲であることができる。
【0036】
これは、患者が望ましくない副作用(徐脈、心臓停止)から保護されることだけでなく、血管内電極、典型的に陽極、が大きい寸法であることを考慮すると、患者が該心臓刺激に関係する感覚をほとんど又は全く感じないことも保証する。
【0037】
よって、手術を担当する1人又は複数の外科医は、電極、典型的に該心臓刺激装置の該陽極、を、該付属カテーテルの周りに係合された該導電性スリーブに容易に接続し、次に、通常通り、他方の電極、典型的に該陰極、を該カテーテル/ステントアセンブリの該ガイドワイヤ又は該バルーン単独に接続することができる。これは特に虚弱な患者に対して重要である。
【0038】
要約すると、冠状動脈診断アセンブリの利点は多く、その中でも以下が言及されうる:
薬剤、例えばFFRに先立って充血を実施する為に必要とされるアデノシン、の摂取に関係する全ての望ましくない副作用を解消することにより、冠状動脈FFR測定手順がより安全にされる;
「緊急」刺激の実施、すなわち緊急の状況、を視野に入れた、一時的な刺激の保証。これは、電気刺激電流によって遭遇される脈管系のより低いインピーダンスの為に望ましく、何故ならば、付属静脈カテーテルの周りの該スリーブ又は後者が、該電極に接続される該金属部を内蔵している場合、上記脈管系と直接接触する為である;
任意の既存の末梢静脈又は動脈カテーテル上での実装の可能性。これは、末梢静脈又は動脈への該カテーテルの導入と、該カテーテルに挿入された該ガイドワイヤへの電気接続とが行われる必要がある前に、導電性スリーブが、単に、末梢静脈又は動脈カテーテルの周りに係合されればよいためである。
【0039】
該スリーブの唯一の相対的制約は、インターベンションの開始時、準備中におけるものであり、該付属(末梢動脈)カテーテルの該挿入シースの周りに該スリーブを係合させることである。
【0040】
しかしながら、この動作は、実施するのが非常に簡易で容易であり、この作業の為の特別な技量を必要としない助手又は看護師によって実施されることができる。
【0041】
他の利点及び特徴は、非制限的な例として与えられる詳細な説明を添付図面を参照しながら読むと、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1は、本発明に従う末梢動脈カテーテル及び刺激スリーブを有する、本発明に従う診断アセンブリの使用を説明する模式図であり、該カテーテルは、患者の末梢動脈に直接導入される。
図2図2は、診断される冠動脈内への図1による該アセンブリのガイドワイヤの配置を示す。
図3図3は、図1及び図2に示されているように末梢動脈カテーテルの周りに係合されることが意図される、本発明に従う導電性スリーブの斜視図である。
図4図4は、末梢動脈カテーテルの周りに係合された図3によるスリーブを示す、部分長手方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下の説明において、また本出願全体を通じて、語「遠位」及び「近位」は、必要な場合にはその後に冠状動脈血管形成が行われる、冠状動脈診断を受けている患者の身体を基準として使用される。よって、ガイドワイヤの遠位端は、該診断中に該患者の内部で最も遠くに位置する端部である。
【0044】
様々な要素は必ずしも実際の縮尺で示されていないことが留意されるべきである。
【0045】
図1及び図2は、本発明に従う冠状動脈診断アセンブリを示す。
【0046】
付属カテーテルとも呼ばれる末梢動脈カテーテル1が、末梢動脈V内に導入される。
【0047】
そのような動脈カテーテル1は、小さい直径、典型的に2mm又はそれ未満、及び短い長さであることができる。それは、既存の末梢血管内カテーテルに適用される規格を満たす。該カテーテル1は、該カテーテル1の内部を好適な洗浄液で洗浄する為に、一般に「フラッシュ」と呼ばれる、栓の付いた内蔵洗浄デバイス10を備えることができる。
【0048】
導電性スリーブ2が、末梢動脈カテーテル1の周りに直接係合される。該スリーブ2は電気接続20に接続され、電気接続20自体は、電力供給線30を介して、電極、典型的に身体Cの外側の心臓刺激装置3の陽極、に接続されている。
【0049】
ガイドワイヤ4が、付属カテーテル1の挿入シース内に導入される。
【0050】
図2に示されているように、ガイドワイヤ4は、その遠位部分に、冠動脈A内で狭窄部両端圧を測定する為の圧力センサ40を、及び、その近位部分に、他方の電極、典型的に外部の該心臓刺激装置の陰極、への接続部として更に機能する金属部41を、備えている。電気接続を確実にする為に、ワニ口型のクリップ5が、ガイドワイヤ4の金属部41を挟むことによって固定される。このクリップ5は、電力供給線31を介して該心臓刺激装置の該陽極に接続される。
【0051】
本発明に従うスリーブ2が図3に示され、これは管の形態であり、その外側周囲部の少なくとも一部が導電性である。
【0052】
この導電性部分は、電力供給線21を介して、典型的にクリップの形態である、電気接続20に接続される。該スリーブ2、クリップ20、及び電力供給線21は、カテーテル1の周りに係合され心臓刺激装置電極3に接続されることが可能な状態のキットを有利に構成することができる。
【0053】
該スリーブ2は、円筒形状又は円錐台形状であることができる。その形状は、末梢動脈カテーテル1の該挿入シースの外側形状に可能な限り一致する。
【0054】
図4に見られることができるように、典型的に1ミリメートル又はそれ未満程度である、このスリーブ2の厚みは、該動脈カテーテル1のシース11にわずかな余分の厚みしか与えず、それ故に末梢動脈V内に導入されたときに後者の進行を妨げない。
【0055】
該スリーブ2は、全体が導電性の単体構成部品の形態で、又は導電性被膜で被覆された構成部品の形態で、作られることができる。炭素が導電性材料として有利に選択されることができる。
【0056】
有利な変形例に従うと、該スリーブ2は、弾性で、よってどのサイズの既存の末梢動脈カテーテルにも追従することが可能となるように設計されることができる。
【0057】
実践時、心臓刺激と併せて診断を行おうとする外科医又はインターベンション医師は、下記で説明されるように、導電性スリーブ2を末梢動脈カテーテル1の周りに位置付けることによって開始する。該導電性スリーブの配置は非常に単純で容易であるため、それは、特別な技術を使用する必要なく、助手や看護師によって行われることができる。
【0058】
上記スリーブ2が該患者の皮下領域又は該患者の末梢静脈の壁のいずれかに接するように、該スリーブ2が、該動脈カテーテル1の該挿入シースの周りに係合され且つ配置されると、該配置が達成される。
【0059】
この配置が実施されると、電気接続20が、接続ワイヤ30を介して外部心臓刺激装置3の陽極に直接接続されることができる。
【0060】
次に、通常、クリップ5、例えばワニ口クリップ、が、ガイドワイヤ4の金属部41を挟むことによって固定されることができ、ガイドワイヤ4は、末梢カテーテル1のシース11に挿入され、その圧力センサ40が診断される該冠動脈内に位置付けられる。このクリップ5は、接続ワイヤ31を介して外部心臓刺激装置3の該陰極に接続される。
【0061】
よって、狭窄部両端圧の測定中に求められる心臓機能停止を実現する為の一時的心臓刺激は、ガイドワイヤ4に電気的に接続された該陰極と、末梢静脈カテーテル1の周りの本発明に従うスリーブ2に電気的に接続された該陽極との間で発生することができる。
【0062】
上記で説明されたアセンブリによって実施される、冠状動脈診断の、及び必要な場合は心臓インターベンションの、方法が次に説明される。
【0063】
この方法は、施術者が、冠動脈A内の狭窄、例えば図2にSとして示されている狭窄、を疑うため、冠状動脈の診断、特に冠動脈予備能の測定、を行いたいときに適用される。
【0064】
工程i/:看護師又は施術者が、導電性スリーブ2を末端(付属)カテーテル1の周りに係合することに進む。
【0065】
工程ii/:次に、該施術者が、人間の身体Cの末梢動脈又は静脈に、該スリーブ2の導電性周囲部が該人体の皮下組織と又は該動脈又は静脈の壁と接触するように、該カテーテル1を導入する。
【0066】
工程iii/:次に、該施術者が、圧力センサ40が診断される冠動脈A内に正しく位置付けられることが確実にされるまで、付属カテーテル1の挿入シース11にガイドワイヤ4を導入する。
【0067】
次に、該施術者は、外部心臓刺激装置3への電気接続に進む。
【0068】
よって、該看護師又は該施術者は、一方で該スリーブ2を、電極、典型的に外部心臓刺激装置3の該陽極、に、他方でガイドワイヤ4の金属部40を刺激装置3の他方の電極に、接続する。
【0069】
工程iv/:該患者体内に充血を生じさせた後、該施術者は、該冠動脈予備能の指標として、センサ40を用いて該狭窄部両端圧を測定することができる。
【0070】
該冠動脈予備能又はFFRの測定と同時に、直接的な心臓刺激がガイドワイヤ4上で行われる。
【0071】
より正確には、該患者に投与されたアデノシンが効果を奏したことを該施術者が確信すると、該圧力又はFFRが測定される。
【0072】
該心臓刺激は、該圧力測定の開始前に、典型的にアデノシンが効いたことを該施術者が保証する前又はそれと同時に、トリガされることができる。該施術者は、本発明に従う該ガイドワイヤを用いた心臓刺激下でアデノシンを投与することを決定することもできる。
【0073】
心臓刺激の率に関して、該施術者は、以下の2つのモードから選択することができる。
「見張り(sentinel)」と表現されることのできる刺激モード:該外部心臓刺激は、該患者の安静時心拍よりも低い周期性閾値に設定される。患者の心拍数が該閾値よりも低くなるとすぐに、該刺激装置が動作状態にされ、該心臓刺激は、該ガイドワイヤの該電極と、該スリーブに又は該付属カテーテルに内蔵されている該電極とを介して効果を有する。例えば、患者の心臓は安静時に1分当たり80回拍動することができ、それがFFR診断中に60回拍動するようになるとすぐに、該外部心臓刺激装置がトリガされる。
該外部心臓刺激装置が該FFR診断中に常時、及び必要であればアデノシンが投与されたときに、該患者の安静時心拍数よりも高い周波数でトリガされる、常時刺激モード。例えば、該患者の安静時心拍数が1分当たり60回である場合、該外部心臓刺激装置は、1分当たり80回の拍動の率で継続的に動作する。
【0074】
どちらのモードが該施術者によって選択されても、FFR手順に従い、該患者の該心拍数が最初にモニターされ、次に、インターベンション中にわたって(診断の後に冠状動脈血管形成が行われる可能性がある)継続的にモニターされることを認識して、この率の刺激は容易に実施されることができる。
【0075】
心臓刺激がこのように同時に実施されることにより、該患者は、充血によって引き起こされ得る徐脈又は有害な心臓停止に伴うあらゆるリスクを回避する。
【0076】
ここまで説明された該冠状動脈診断アセンブリは、冠状動脈血管形成を行う為にも使用されることができる。
【0077】
実際、工程iv/の終わりに、特定された狭窄Sが冠動脈Aへのステントの配置を必要とする場合、膨張可能なバルーンをもステントと共に内蔵するガイドワイヤ4を選択した上で、該アセンブリの構成部品をいずれも取り外していない状態で、該ステントを適所に入れることが可能である。
【0078】
よって、工程v/によれば、該バルーン及び該ステントの配設中に、該施術者は、該外部心臓刺激装置を用いて別の心臓刺激を行い、ここで該ガイドワイヤは、工程iv/が一旦実施されると適所に保持されたままにされる。
【0079】
本発明は、ここまで説明された例に限定されず、特に、説明された該例の特徴を説明されていない変形例内で共に組み合わせることが可能である。
【0080】
本発明の範囲から逸脱することなく、他の変形例及び改良が提供されうる。
【0081】
説明された該例の全てにおいて、圧力センサ及び外部心臓刺激電極としての金属部の両方を内蔵しているガイドワイヤが冠状動脈診断アセンブリの中で使用される場合、それは、経カテーテル大動脈弁移植(TAVI:transcatheter aortic valve implantation)による大動脈弁の移植の文脈において、仏国特許出願公開第3079404号明細書、欧州特許第3522800号明細書、欧州特許出願公開第3280338(B1)号明細書、仏国特許出願公開第3057153号明細書、及び国際公開第2019/185880号パンフレットの教示に従って、心腔内の狭窄部両端圧を取る為及び心臓刺激に使用されることができる。
【0082】
冠状動脈診断(FFR)アセンブリ用のガイドワイヤは、典型的に0.035mm(0.014インチ)に等しい、小さい直径を有することができ、一方、心腔内の圧力を測定するアセンブリ用のガイドワイヤは、典型的に0.9mm(0.35インチ)程度の、より大きい直径であることができる。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】