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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-15
(54)【発明の名称】極低温温度における熱化装置
(51)【国際特許分類】
   H10N 60/81 20230101AFI20240207BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20240207BHJP
   H01L 23/373 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
H10N60/81 ZAA
H01L23/36 C
H01L23/36 M
H01L23/36 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543417
(86)(22)【出願日】2022-02-18
(85)【翻訳文提出日】2023-07-19
(86)【国際出願番号】 FI2022050109
(87)【国際公開番号】W WO2022180302
(87)【国際公開日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】20215201
(32)【優先日】2021-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512068592
【氏名又は名称】テクノロギアン トゥトキムスケスクス ヴェーテーテー オイ
【氏名又は名称原語表記】TEKNOLOGIAN TUTKIMUSKESKUS VTT OY
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プルンニラ、ミカ
(72)【発明者】
【氏名】ロンツァニ、アルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ミュッカネン、エンマ
(72)【発明者】
【氏名】ケンッピネン、アンッティ
(72)【発明者】
【氏名】レフティネン、ヤンネ
【テーマコード(参考)】
4M114
5F136
【Fターム(参考)】
4M114BB02
4M114BB05
4M114CC09
4M114DA35
5F136BA30
5F136BB01
5F136BC03
5F136EA25
5F136FA01
5F136JA01
(57)【要約】
本発明の実施形態は、極低温温度における熱化装置を備える。装置は、誘電体基板(2)層を備え、この基板上に、デバイス又はコンポーネント(1)が位置付け可能である。ヒートシンクコンポーネント(4)は、基板の別の側に取り付けられる。装置は、基板層(2)とヒートシンクコンポーネント(4)との間の導電層(5)を更に備える。基板層(2)と導電層(5)との間の結合部は、最小限の熱境界抵抗を有する。導電層(5)と冷却ヒートシンク層(4)との間の別の結合部は、導電性である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極低温温度における熱化装置であって、
誘電体基板(2)層であって、前記基板上に、デバイス又はコンポーネント(1)が位置付け可能である、誘電体基板(2)層と、
前記基板の別の側に取り付けられたヒートシンクコンポーネント(4)と、を備え、
前記基板層(2)と前記ヒートシンクコンポーネント(4)との間の導電層(5)と、
前記基板層(2)と前記導電層(5)との間の結合部であって、最小限の音子熱境界抵抗を有し、前記導電層内で音子が電子によって吸収されるように配置されている、結合部と、
前記導電層(5)と前記ヒートシンクコンポーネント(4)との間の、導電性である別の結合部と、を更に備えることを特徴とする、熱化装置。
【請求項2】
前記導電層(5)が、縮退ドープケイ素であることを特徴とする、請求項1に記載の熱化装置。
【請求項3】
前記基板層(2)が、高純度ケイ素又は他のケイ素系材料であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の熱化装置。
【請求項4】
前記ヒートシンクコンポーネント(4)と前記導電層(5)との間の取り付け部が、導電性接着剤(3)を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱化装置。
【請求項5】
前記ヒートシンクコンポーネント(4)と前記導電層(5)との間の前記取り付け部が、導電層と前記導電性接着剤(3)との間の金属層(6)を更に含むことを特徴とする、請求項4に記載の熱化装置。
【請求項6】
前記ヒートシンクコンポーネントが、金属層又はソリッドステート冷却器であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱化装置。
【請求項7】
前記導電層(5)が、いくつかのガルバニック絶縁された導電性領域を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱化装置。
【請求項8】
前記導電層(5)を冷却するために、ソリッドステート冷却器が使用されることを特徴とする、請求項7に記載の熱化装置。
【請求項9】
前記ソリッドステート冷却器が、ソリッドステート冷却器のうちの2つ以上の1つ以上のデイジーチェーンを含み、各ソリッドステート冷却器が、各冷却器にわたる平均電圧降下が完全な冷却器アセンブリに対して最適な全冷却を提供する様式で電気的に電流バイアスされ、前記冷却器チェーン内の異なる前記冷却器が、前記導電層(5)の異なるガルバニック絶縁された導電性領域を冷却するために使用されることを特徴とする、請求項8に記載の熱化装置。
【請求項10】
前記基板層(2)が、前記デバイス又はコンポーネント(1)のノードに対する5ケルビン温度未満のガルバニック絶縁された電子-音子熱化点を形成する、前記誘電体基板内のマイクロメートルスケールの導体突出部(8、8A)を備えることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の熱化装置。
【請求項11】
前記熱化装置が、合計2~10個のマイクロメートルスケールの導体突出部を有する前記誘電体基板内に、更なるマイクロメートルスケールの導体突出部(8B)を備え、前記マイクロメートルスケールの導体突出部が一緒になって、前記ガルバニック絶縁された熱化点を形成することを特徴とする、請求項10に記載の熱化装置。
【請求項12】
前記マイクロメートルスケールの導体突出部(8、8A、8B)が、1~100μmの範囲内の幅を有することを特徴とする、請求項10又は請求項11に記載の熱化装置。
【請求項13】
前記マイクロメートルスケールの導体突出部(8、8A、8B)が、前記マイクロメートルスケールの導体突出部の前記幅に対して少なくとも5:1の比率を有する長さを有することを特徴とする、請求項10~12のいずれか一項に記載の熱化装置。
【請求項14】
前記マイクロメートルスケールの導体突出部が、スパイク又はロッドであることを特徴とする、請求項10~13のいずれか一項に記載の熱化装置。
【請求項15】
前記マイクロメートルスケールの導体突出部が、5K未満の動作温度において非超伝導である導電性材料で作られていることを特徴とする、請求項10~14のいずれか一項に記載の熱化装置。
【請求項16】
複数の熱化素子が、前の素子の活性冷却層(7)が、マイクロメートルスケールの導体突出部を有する素子層(2a)に接続されているか、又は更なる導電層(5a)に接続されている様式で、直列構成で配置されており、前記素子層(2a)又は前記更なる導電層(5a)が、別の導電層(5c)に接続されており、前記別の導電層(5c)が、次いで、別の活性冷却層(7a)に接続されていることを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の熱化装置。
【請求項17】
前記熱化装置が、前記更なる導電層(5a)と前記別の導電層(5c)との間に薄い誘電体層を備えることを特徴とする、請求項16に記載の熱化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極低温温度における熱化装置に関する。具体的には、本発明は、チップ内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
極低温温度は、93K(ケルビン)~ゼロK(絶対零度)の範囲の温度を意味するように定義され得るが、異なる値も使用される。一般に、極低温学は、非常に低い温度での材料の挙動及び現象を研究し、異なる極低温デバイスのための適切な動作条件を生成するために、非常に低い温度を達成するための技術を指す。
【0003】
極低温デバイスは、繊細なセンサ及び他のデバイスである。室温と比較して、極低温温度は熱ノイズの大幅な低減をもたらし、それによって、センサ及び他のデバイス、例えば、高性能赤外線イメージング(ナイトビジョン、体熱分析、天文学、医療におけるデバイスなどのような)用の低温イメージセンサ、冷却IRセンサ、及び光子検出器の分解能及び感度を向上させる。更に重要なことに、それはソリッドステートにおける超伝導及び量子閉じ込め並びに他の多くの量子現象などの、小さなエネルギースケールでの物理的効果の利用を可能にする。これらの効果は、例えば、量子コンピューティング、通信、及びセンシングにおいて利用され得る。
【0004】
図1は、典型的な先行技術の状況を示している。極低温デバイス又はそれらのコンポーネント1は、動作温度で誘電体材料である、基板2上に取り付けられる。極低温温度では、基板中の音子は長い平均自由行程を有する。音子は、平均自由行程の長さスケールではあまり散乱しない。基板の反対側は、金属層又はソリッドステート冷却素子のような導電性ヒートシンク層4に取り付けられる。
【0005】
冷却層と基板との間、又は接続層3(図1の例における接着剤のような)と基板との間の接合面は、典型的には、当該材料間に音響的不整合と呼ばれる不整合があるため、基板内の音子の反射表面を形成する。したがって、基板の表面上のデバイス/コンポーネントからエネルギーを伝達する音子は、当該接合面及び基板(上)表面から基板内に何度でも反射して戻る場合がある。反射された音子は、基板の表面上のデバイス及びコンポーネントを妨害する場合がある。したがって、冷却/熱化はあまり効果的ではない。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、上記の問題を軽減することである。この目的は、独立請求項に提示された様式で達成される。従属請求項は、本発明の異なる実施形態を示す。
【0007】
本発明の実施形態は、極低温温度における熱化装置を備え、装置は、誘電体基板2層を備え、この基板上に、デバイス又はコンポーネント1が位置付け可能である。ヒートシンクコンポーネント4は、基板の別の側に取り付けられる。装置は、基板層2とヒートシンクコンポーネント4との間の導電層5を更に備える。基板層2と導電層5との間の結合部は、最小限の熱境界抵抗を有する。導電層の内部では、音子は電子に吸収される。導電層5とヒートシンク層4との間の別の結合部は導電性であり、層5の電子をヒートシンク層4に効率的に熱化する。
【0008】
本発明は、基板中の音子の反射を排除し、導電層中の電子によって音子のエネルギーを吸収することを可能にすることによって、基板の表面上のデバイス又はコンポーネントの冷却又は熱化を改善する。したがって、熱エネルギーは、導電層5内の電子によって運ばれるように変化する。電子内の熱エネルギーは、他の導電性結合部を通ってヒートシンクコンポーネント4に効率的に伝達され得る。
【0009】
以下、同封の添付の図面を参照することによって本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】従来技術の熱化装置の例を示す。
図2】本発明の熱化装置の例を示す。
図3】本発明の熱化装置の別の例を示す。
図4】本発明の熱化装置の更に別の例を示す。
図5図4の例の細部を示す。
図6図5の細部を別の角度から示す。
図7図5の細部の別の例を示す。
図8図5の細部の更に別の例を示す。
図9】本発明の装置の更に別の例を示す。
図10】本発明の装置の更に別の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図2は、極低温温度における本発明の熱化装置の例を示している。冷却/熱化されるデバイス又はそれらのコンポーネント1は、基板上にある。1つ又は複数のデバイスは、センサ又は量子コンポーネント(キュービットなど)などのような電気デバイスである。1つ又は複数のコンポーネントは、抵抗器、コンデンサ、インダクタ、トンネル接合部、超伝導コンポーネントなどのような電気コンポーネントである。より正確には、基板は、誘電体基板2層であり、この基板上に、例えば、フリップチップ技術を使用して、デバイス又はコンポーネント1が上部に作製されたか又は取り付けられている。
【0012】
基板は、例えば、通常、200μm~1mmの範囲の厚さを有するケイ素系材料である。例えば、ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素又はそれらの組み合わせは、ウェハ(基板)として使用される材料である。基板に使用される材料は、非退縮ドープされた半導体が十分に低い温度で誘電体になるため、誘電体又は半導体である。
【0013】
ヒートシンク層4は、基板の別の側に取り付けられる。装置は、基板層2とヒートシンクコンポーネント4との間の導電層5を更に備える。基板層2と導電層5との間の結合部は、最小限の熱境界抵抗を有する。導電層の内部には、音子は電子によって吸収されるように配置されている。導電層5とヒートシンクコンポーネント4との間の別の結合部は、導電性である。ヒートシンクコンポーネントは、例えば、超伝導状態ではない金属板、又はソリッドステート冷却器であり得る。
【0014】
導電層5とヒートシンクコンポーネント4、7との間の他の結合部は、図3及び4のように直接的であり得るが、導電性であるが超伝導状態ではない追加の層を使用することによって形成することもできる。例えば、ヒートシンク4と導電層5との間の取り付け部は、導電性接着剤を含むことができる。更に、取り付け部は更なる層を有し得る。例えば、ヒートシンクコンポーネント4と導電層5との間の取り付け部は、導電層と導電性接着剤との間の金属層6を更に含むことができる。この実施形態は、図2の実施形態である。
【0015】
本発明は、基板上の音子の反射を排除し、導電層上の電子による音子を吸収することを可能にすることによって、基板の表面上のデバイス又はコンポーネントの冷却又は熱化を改善する。
【0016】
基板層2は、極低温温度における誘電体材料である。したがって、基板層は、基板の表面上のデバイス又はコンポーネントとの関係で寄生容量、誘電損失などを低減する。基板層は、例えば、高純度ケイ素、半導体(極低温温度における誘電体)などである。高純度ケイ素は、意図的にドーパント種を添加することなく精製されたケイ素である。したがって、基板層は、用途(デバイス又はコンポーネント)の要件に一致する。
【0017】
音子は、表面上のデバイス又はコンポーネント内のホット電子に起因して基板層内で励起される。音子は、格子振動の量子である。音子の非常に長い平均自由行程のために、音子は、基板層2と導電層5との間の結合/取り付け部まで、困難を伴わずに熱エネルギーを伝達することができる。
【0018】
基板層2と導電層5との間の結合/取り付け部は、高い音響的整合があるように作られており、これは、音子が高い確率で結合/取り付け部を通過し、反射して戻ることはないことを意味する。言い換えれば、これは、基板層2と導電層5との間に最小音子熱境界抵抗が存在することを意味し、例えば、音子熱境界抵抗は、RBd=10K/(W/cm)/T未満であり、式中、Tは、層2内の音子温度である。これは、例えば、高純度の単結晶ケイ素を基板層として、及び単結晶縮退ドープケイ素を導電層5として使用して達成することができ、これにより、両側での音子伝搬のための良好な格子整合及び同様の特性が可能になる。結合/取り付け部は高品質の結合部であるため、材料間の原子不整合は最小限必要があることを意味する。
【0019】
上述したように、導電層5は、層2と同様の音響特性を有する縮退ドープケイ素又は導体から作られている。結合/取り付け接合面を通過する音子は、導電層5によって吸収される。縮退ドーピングに起因して、導電層は自由担体(電子又は正孔)を有する。導電層は、音子熱を電子の熱にスムーズに変化させ、この熱は、電子伝達によって効率的に層4に伝達される。
【0020】
上から下へ伝搬する音子は、そのエネルギーを自由担体にスムーズに放出する。低温で動作するケイ素の実用的なドーピング範囲は、約5E18cm-3以上である。導電層5の底部、すなわち、ヒートシンクコンポーネント4の近くの部分は、金属によって確実に接触され得るように、更により高いドーピング(1~10E20cm-3の範囲のケイ素の場合)を有し得る。底部の超高濃度ドーピングは、ショットキーバリアが電荷担体及び関連する熱伝達の動きを妨げないことを保証する。
【0021】
ヒートシンクコンポーネント4は、金属層のように、導電性接着剤又は他の手段によって導電層5の装着の反対側に接続される。上述したように、装着部も直接的であり得る。導電層5とヒートシンクコンポーネントとの間の接続は、可能な限り低い電気抵抗である。これは、例えば、導電性エポキシなどによって達成することができる。
【0022】
ヒートシンクコンポーネント4は、図3に示されるように、ソリッドステート冷却器7によって交換することもできる。導電層5の電子又は正孔は、能動冷却によって冷却される。このソリッドステート冷却器はまた、デイジーチェーン接続された冷却器を利用することによって、実際に2つ以上の冷却器を含むように形成することができる。この場合、導電層5は、2つ以上のガルバニック絶縁された領域に分割され得る。(図9参照)。層5とソリッドステート冷却器7との間は、図9の破線によって示されるように、任意選択でbea導電層(金属)6とすることができる。
【0023】
例えば、マイクロメートルスケールのNIS冷却器は、ソリッドステート冷却器7として使用され得る。これは、通常の金属N(非超伝導、層5)、絶縁体I(5~7の間の接合面)、及び超伝導体S(層7)の構造に基づいている。高温の電子は、通常の金属から超伝導体への超伝導ギャップで濾過され、すなわち、通常の金属電子は、基板音子よりも低温になる。本発明の装置を使用して、低温電子は、基板内の格子の音子で熱化される。マイクロメートルスケールのソリッドステート冷却器の別のタイプは、NIS冷却器と同じ動作原理を有する半導体-絶縁体-超伝導体又は半導体-超伝導体(Sm-S)冷却器である。
【0024】
デイジーチェーン接続された電流バイアス方式は、より良好な接合部パラメータ拡散耐性で、より耐障害性の高い動作を可能にする。デイジーチェーン接続された冷却器は、数十個の個々の冷却器から数万個までのNIS型冷却器(マイクロメートルスケールのソリッドステート冷却器)の長いチェーンを含み得る。各々の個々の冷却器は、層5内のガルバニック分離された熱化体積を必要とする。
【0025】
したがって、ソリッドステート冷却器は、ソリッドステート冷却器のうちの2つ以上の1つ以上のデイジーチェーンを含み得、各ソリッドステート冷却器は、各冷却器にわたる平均電圧降下が完全な冷却器アセンブリのための最適な全冷却を提供する様式で、電気的に電流バイアスされる。冷却器チェーン内の異なる冷却器は、導電層(5)の異なるガルバニック絶縁された導電領域を冷却するために使用される。
【0026】
図4は、本発明の熱化装置の更なる実施形態を示している。この実施形態では、基板層2は、当該デバイス又はコンポーネント1のノードへの5ケルビン温度未満のガルバニック絶縁された電子-音子熱化点を形成する誘電体基板内のマイクロメートルスケールの導体突出部8を備える。図5~8は、突出部8、8A、8Bの異なる実施形態をより詳細に示す。
【0027】
非常に低い温度では、電子-音子結合を利用した電子の熱化は、それらの間の結合が減少することに起因して非常に困難である。典型的には、電子と音子との間の熱エネルギー交換Pは以下のようになる。
【数1】

式中、Tは電子系(抵抗器2内にあるようなもの)の温度であり、Tは音子系(基板1及び抵抗器2内にあるようなもの)の温度、Vは相互作用体積(例えば、抵抗器の体積)であり、
【数2】

は、材料依存性の電子-音子結合係数である。n乗は、電子-音子相互作用の顕微鏡的な詳細に依存する(例えば、金属ではしばしばn~5が見られる)。これは、非常に低い温度で動作する場合、音子と電子との間の温度差が相対的に大きい場合でも、当該熱エネルギー交換が非常に弱いことを意味する。
【0028】
極低温デバイスは、数十mKのように、絶対零度に非常に近いところで冷凍され得、これは、基板の温度が冷凍温度にあることを意味する。冷凍は、既知のデバイス及び手段によって、例えば、He/He希釈冷凍を使用して達成することができる。しかし、マイクロスケール極低温デバイスの動作のための有効な温度は、デバイス内の電子の温度であり、これは著しく高くなり得る。これは、例えば、信号線を介して有意義に使用されるために、デバイスが常により高い温度に接続される必要があるという事実によるものであり、これは、主に電子に結合する極低温デバイスへの熱流を引き起こす。また、デバイスの動作は、電気デバイスの場合には、電子温度の上昇として観察される散逸を伴い得る。
【0029】
したがって、コンポーネント又はデバイス内の電子は、格子(基板)内の温度よりも高い温になる場合があるため、デバイスの性能はそれによって制限されるか、又は低閾値エネルギーデバイスの場合、動作はこれによって完全に無効にされる。
【0030】
一方、電子は格子の温度よりも低温であり得る。例えば、マイクロメートルスケールのドープ半導体又は通常の金属-超伝導体冷却器などの極低温冷却器では、通常の金属の電子が基板音子温度未満に冷却される。冷却された電子をデバイスに直接結合すること、すなわち、電子が冷却されることは、冷却されたデバイスの動作に有害又は不利益であるため、典型的には不可能であるため、冷却器と冷却されたデバイスとの間の結合は、音子を介して行われる。冷却器の電子は音子に結合され、これらの冷却された音子は冷却されたデバイスの電子に結合される必要がある。これは、冷却が効率的であるために、すなわち、熱を電子から音子に、そして音子から電子に伝達するために、非常に大きな熱化体積を必要とする。
【0031】
図5は、突出部8の例を示している。図5の装置は誘電体基板2を示しており、ここで、マイクロメートルスケールの導体突出部8が電気回路のノードに形成されている。マイクロメートルスケールの導体突出部は、典型的にはノードに直接ガルバニック接触するが、特別な場合には、近傍界熱伝達接触を介して接続され得る。近傍界熱伝達は、素子が非常に薄い真空又は誘電体バリア、すなわち非ガルバニック接続によってのみ分離されることを意味するが、それでも典型的な遠方界黒体限界を超える熱伝達を可能にする。この装置は、ノード9に対してガルバニック絶縁された電子-音子熱化点を形成する。温度は5ケルビン未満であり、その範囲内で本発明の装置が効率的に機能することが見出されている。
【0032】
既知のように、ノード9は、2つ以上の回路素子の端子が合流する回路上の点である。図5及び6では、電線10、10Aは、太い破線で示されており、その線は、例えば、電圧源又は電流源(図には示されていない)に接続される。この簡単な例では、抵抗器1及びライン10、10Aのようなコンポーネントの接続は、ノード9を提供する。電気回路がオンになっているときに、ノードがノード比電圧レベルを有することが特徴である。
【0033】
図5は、抵抗器のような電気コンポーネント1上に、表面上に2つのノードを有する、非常に単純な例である。基板上の電気回路がはるかに複雑であり得、したがって多数のノードを含むことは明らかである。マイクロメートルスケールの導体突出部8は、ノード固有である。したがって、図5の例は、2つの導体突出部を有する。電気回路が正しく動作するために、導体突出部8は、典型的には、ノードにガルバニック接続されるが、そうでなければ、それはガルバニック絶縁される。言い換えれば、導体突出部は、基板からガルバニック絶縁される。この装置により、ノード内の電子と基板内の音子との間の熱化を強化することが可能である。
【0034】
図6は、上記の図3の例を示している。突出部を使用する更なる利点は、既知のオンチップ金属熱化/冷却器素子と比較すると明らかになる。これらの既知の素子は、典型的には、例えば、マスクを通してめっきすることによって、又はデバイス、そのコンポーネント若しくはそのリードの上に金属島をスパッタリング及びエッチングすることによって作製される。マスクを通るめっきが使用されるとき、隣接する素子間の典型的な最小距離は、マスク厚さの程度である。マスク厚さは、めっき構造の最大高さを設定する。最近の作製の典型的な値は、マスク厚さ10~50μm程度であり、隣接する素子の分離は、厚さ、すなわち、10~50μmに対応する。めっき及び湿式エッチングを使用する場合、隣接する素子の距離は、フィルム(めっき)の高さの少なくとも2倍に制限される。同様の数値は、スパッタフィルムにも適用可能であるが、フィルムの厚さは、ひずみ及び長い堆積時間などの他の問題によっても制約を受ける。
【0035】
本発明は、基板内の溝を充填している。充填材は、上記のような導電性材料である。素子間の最小分離は、サブμmスケールであり得る(薄い)マスク技術によって定義される。溝は、例えば、1~2度の正の勾配を有するボッシュエッチングプロセスでエッチングすることができる。したがって、100μmの深さの溝では、わずか2μmの開口部が必要である。
【0036】
例えば、4つのガルバニック絶縁された熱化点を有する10×10μm2の表面積を考慮する。既知の解決策を使用する場合、この領域は、金属線に対して1:1の充填比、及び1:1のマスク対金属比を想定すると最大で金属体積を含むことになり、高さ3.33μm、幅3.33μm、長さ3.33μmの4つの冷却フィンがもたらされ、体積合計は148μmとなる。本発明の解決策を使用する場合、寸法幅4.5μm、長さ4.5μm、及び深さ250μmの4つのマイクロメートルスケールの熱化は、ボッシュプロセスなどの薄いマスク及び高アスペクト比エッチングを使用して現在の技術で作製するのが合理的であり、10125μmの熱化体積合計が得られる。従来の表面実装方式を使用する解決策がこの体積に近づくことさえないことは明らかである。
【0037】
例では、本発明の解決策は、スパイク形状を有する250μmの深さの突出部を有する。基板内の体積が大きいほど、突出部内の電子と基板内の音子との間の電子-音子結合は、より効果的であることを意味する。隣接する素子、すなわちノード間の距離はより小さい。したがって、本発明は、基板の表面上の熱化プール/ノードの高いパッキング比を可能にする。
【0038】
ひずみは、従来の技術で多くの材料の使用を制限する厚い堆積金属フィルムにとって重大な問題となり得る。基板溝内の金属化を行うことにより、表面ひずみの蓄積は無視できる。更に、厚い金属層が基板の上部に堆積されるとき、それらは、堆積後の潜在的な作製ステップを防止又は制限する。作製方法のほとんどは、平面、すなわち、例えば、フリップチップ技術を有するチップの積層にのみ使用され得る。充填された溝の場合には、表面は熱化プール作製の後で平面となることになる。
【0039】
溝構造は、基板の一方の側のみが基板の上部となる基板上の薄膜とは対照的に、全ての可能なモードの基板音子と直接接触しており、これにより熱化が制限される。また、典型的な冷却フィン解決策は、熱化されるデバイスの上部に配置されるため、少なくとも部分的に基板音子から絶縁される。これは、フィンと基板との間の複数の材料接合面によって引き起こされる高い音子熱抵抗をもたらし得る。
【0040】
超伝導電極に関連してマイクロメートルスケール熱化装置を使用する場合、それらは準粒子緩和、及び非平衡準粒子のエネルギーの基板音子への関連する伝達のための効率的な手段を提供する。この文脈における効率は、準粒子の緩和中に生成された音子が、任意の方向に移動することができ、超伝導電極の上部に配置されたフィンの場合とは対照的に、超伝導体に戻る可能性が低いことを意味する。フィンで生成された音子は、基板の音子で緩和する前に、超伝導体を通過する可能性がより高く、有害な影響を引き起こす可能性がある。
【0041】
マイクロメートルスケールの導体突出部は、異なる形状を有することができる。図5では、突出部はロッドである。更に、ロッドは、円(図6)、矩形断面などのような異なる断面を有し得る。図7は、突出部8Aがスパイクであることを示している。スパイクはまた、円形又は長方形のような異なる断面を有し得る。スパイクの先端(すなわち、突出部の底部)は、湾曲又は平坦にすることもできる。導体突出部のための他の可能な形状もある。
【0042】
図5及び6は、1つのノードに1つの導体突出部しかないことを示している。しかしながら、本発明の装置は、ノードごとにいくつかの導体突出部を有することも可能である。図8は、ノードごとに2つの導体突出部8Bを使用する例を示している。しかしながら、導体突出部の数が過度に多くなると、充填された溝のために基板上で使用される面積が増加し、効率的ではなくなるため便利ではない。1~10個のマイクロメートルスケールの導体突出部を使用すると、単一のノードの熱化に対する良好な結果が得られることが見出されている。これらの突出部は一緒になって、当該ガルバニック絶縁された熱化点を形成する。
【0043】
マイクロメートルスケールの導体突出部は、1~100μmの範囲内の幅を有することができる。導体突出部の長さは、導体突出部の幅に対して少なくとも5:1の比率である。導体突出部が基板を通って延在し得ることに言及する価値がある。
【0044】
マイクロメートルスケールの導体突出部は、5K未満の動作温度で非超伝導である導電性材料から作られる。例えば、タングステンチタン、銅、金、白金、縮退ドープされた半導体又は非超伝導シリサイド合金を使用することができる。臨界温度未満では超伝導であるが、コンポーネント/デバイスの動作温度では超伝導ではない材料も使用することができる。例えば、チタン及びアルミニウムは、それぞれ400mK及び1.2Kの超伝導臨界温度よりも高い温度で使用することができる。
【0045】
図10は、本発明の更なる実施形態を示している。図10に見ることができるように、ヒートシンクコンポーネントは、同様に、より複雑な構造を有し得る。例えば、ソリッドステート冷却器7は、マイクロメートルスケール導体突出部を有する更なる素子層2a、又は層5に類似する更なる導電層5aに更に接続され得る。更なる層2a、5aの後に、別の更なる層5cがあり、これは、次に、別のソリッドステート冷却器7aなどに接続される。したがって、当該素子2、5、及び7によって形成された構造は、前の素子の活性冷却層7が次の層2、5に接続されるように直列構成で配置される。層2が層5によって置き換えられた場合、後続の層5の間に薄い誘電体が存在する。このような構造は、例えば、導電ハンドル及びSOI層の両方を有するSOIウエハから作製することができる。
【0046】
断熱核冷凍、より具体的にはNDR(核減磁冷凍)は、銅などの突出部に好適な材料を組み込むことによって、マイクロメートルスケールの導体突出部と組み合わせて使用することができる。NDRは、材料を変化する磁場にさらすことによって材料の温度が冷却される磁気熱力学現象に基づいている。冷却力は、材料中の原子核の磁気双極子から得られる。プロセスが断熱的である場合、すなわち絶縁されている場合、周囲熱エネルギーはプロセス中に材料を加熱することができず、NDRは核、すなわち音子を冷却する。本発明のマイクロメートルスケール導体突出部をNDR冷却と併せて使用することによって、電子を10mK未満の温度まで冷却することもできる。
【0047】
突出部は、基板上に1つ又は複数の溝をエッチングすることによって作製することができる。例えば、ボッシュエッチング又は同様の高アスペクト比の方法を使用することができる。好適な導電性材料による溝の充填は、LPCVD、ALD、又は化学めっきなどの高カバレッジコーティング方法で行うことができる。基板の表面は、表面から余分な金属を除去することによって平面化することもできる。
【0048】
以上、本発明のいくつかの利点について述べた。音子は、基板層2内でそれほど容易に反射しないが、導電層5に伝搬され、導電層5は音子を吸収し、音子の熱エネルギーを自由担体(電子)の熱エネルギーに変化させる。これは、基板層とそれらの間に音響的整合を有する導電層との融合によって達成される。ユーザは、デバイス作製の最後のステップとして、冷却器(ヒートシンク)コンポーネント4(金属層又は電気ソリッドステート冷却器)を作成することができる(あるいは、基板ベンダーは、金属層も提供することができる)。したがって、熱エネルギーは、導電層5内の電子によって運ばれるように変化する。電子内の熱エネルギーは、他の導電性結合部を介してヒートシンクコンポーネント4に便利に伝達され得る。低温における当該突出部を利用して、電子と音子との間の熱伝達の妥当な効率を得るために、デバイス当たりの必要な熱化体積は、10000umにも達し得る。この場合、必要な体積の合計は、105~108umの程度となる。これにより、熱化フットプリントを最小限に抑えることが、コンパクトな冷却器を作るための主要な要因となる。ミクロンスケール導体突出部により、必要な面積を少なくとも100分の1に縮小することができる。したがって、ガルバニック絶縁された熱化突出部を使用すると、コンパクトで効率的な固体冷却器を実現することができる。
【0049】
同心プール設計、すなわち、通常の状態の導体である必要がある誘電体材料で分離された2つ以上の同心導電層又は超伝導層を有することにより、熱化機能が可能になるが、加えて、これらの素子は、冷却された体積及び/又は信号経路の信号ルーティング及びEMシールドに使用され得る。
【0050】
上記から、本発明は、本明細書に記載の実施形態に限定されないが、独立した特許請求の範囲の範囲内の他の多くの異なる実施形態において実装され得ることが明らかである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】