(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-15
(54)【発明の名称】ロードロックゲージ
(51)【国際特許分類】
G01L 21/00 20060101AFI20240207BHJP
G01L 21/12 20060101ALI20240207BHJP
G01L 13/02 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
G01L21/00 Z
G01L21/12
G01L13/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544095
(86)(22)【出願日】2022-01-20
(85)【翻訳文提出日】2023-08-23
(86)【国際出願番号】 US2022013113
(87)【国際公開番号】W WO2022159572
(87)【国際公開日】2022-07-28
(32)【優先日】2021-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592053963
【氏名又は名称】エム ケー エス インストルメンツ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】MKS INSTRUMENTS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【氏名又は名称】笹沼 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100225026
【氏名又は名称】古後 亜紀
(74)【代理人】
【識別番号】100230248
【氏名又は名称】杉本 圭二
(72)【発明者】
【氏名】ブラッカー・ジェラルド・エー
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055BB05
2F055BB08
2F055CC02
2F055CC43
2F055EE14
2F055FF11
(57)【要約】
ロードロック圧力計は、ロードロック真空チャンバに結合されるように構成されたハウジングを備える。ハウジングは、高真空圧力の範囲にわたって瞬時高真空圧力信号を提供する絶対真空圧センサ、及び、ロードロック圧力と周囲圧力との間の瞬時差圧信号を提供するダイヤフラム差圧センサを支持する。ハウジングは、絶対周囲圧力センサをさらに支持する。低真空絶対圧は、瞬時差圧信号及び瞬時周囲圧力信号から計算される。ハウジングのコントローラは、センサの測定された電圧、及び、ロードロックの圧力のルーチンサイクルによる圧力計の通常作動中の測定された周囲圧力に基づいて、ダイヤフラム差圧センサを再較正することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバに結合されるように構成されたハウジングと、
前記真空チャンバにさらされるように構成され、正確な瞬時高真空圧力信号を提供するために高真空で作動可能である、前記ハウジング内の絶対真空圧センサと、
瞬時差圧信号を提供するために、一方の面が前記真空チャンバに、及び、反対側の面が周囲圧力にさらされるように構成されたダイヤフラムを備える、前記ハウジング内のダイヤフラム差圧センサと、
瞬時周囲圧力信号を提供するために、周囲圧力にさらされる、前記ハウジング内の絶対周囲圧力センサと、
前記絶対真空圧センサからの前記高真空圧力信号、前記ダイヤフラム差圧センサからの前記差圧信号、及び前記周囲圧力センサからの前記周囲圧力信号を受信する、前記ハウジング内のコントローラと
を備え、
前記コントローラが、両方とも真空圧の範囲を通して検知される、前記瞬時差圧信号及び前記瞬時周囲圧力信号から、前記真空チャンバの計算された絶対圧を計算し、
前記コントローラが、出力として、前記ダイヤフラム差圧センサ信号からの差圧出力、高真空における前記絶対真空圧センサ信号からとられる絶対真空圧出力、及び低真空における前記計算された絶対圧からの絶対真空圧出力を提供する、
圧力計。
【請求項2】
前記コントローラが、
前記真空チャンバが周囲圧力であるときの前記ダイヤフラム差圧センサの周囲圧力ブリッジ電圧、
前記真空チャンバがフルスケール高真空であるときの前記ダイヤフラム差圧センサのフルスケールブリッジ電圧、及び、
前記絶対周囲圧力センサで測定されたフルスケール周囲圧力
に基づいて、前記ダイヤフラム差圧センサを較正するようにさらに構成される、
請求項1に記載の圧力計。
【請求項3】
前記コントローラが、
前記真空チャンバが周囲圧力であるときに前記ダイヤフラム差圧センサの周囲圧力ブリッジ電圧を測定すること、
前記真空チャンバがフルスケール高真空であるときに前記ダイヤフラム差圧センサのフルスケールブリッジ電圧を測定すること、
前記絶対周囲圧力センサでフルスケール周囲圧力を測定すること、及び、
前記周囲圧力ブリッジ電圧、前記フルスケールブリッジ電圧、及び前記フルスケール周囲圧力から前記ダイヤフラム差圧センサのゲインを決定すること
によって、前記ダイヤフラム差圧センサを較正するようにさらに構成され、
その後、前記瞬時差圧信号が、前記瞬時ブリッジ電圧、前記周囲圧力ブリッジ電圧、及び前記ゲインから決定される、
請求項1に記載の圧力計。
【請求項4】
ゲインが、
a=(V
b,0-V
b,FS)/P
amb,FS
から計算され、ここで、
aはゲインであり、
V
b,0は周囲圧力ブリッジ電圧であり、
V
b,FSはフルスケールブリッジ電圧であり、及び、
P
amb,FSはフルスケール周囲圧力であり、
並びに、
圧力差が、
P
D=(V
b-V
b,0)/a
から計算され、ここで、
P
Dは瞬時圧力差であり、
V
bは前記ダイヤフラム差圧センサからの瞬時電圧である、
請求項3に記載の圧力計。
【請求項5】
前記コントローラが、前記絶対周囲圧力信号から瞬時周囲圧力の出力をさらに提供する、請求項1に記載の圧力計。
【請求項6】
前記絶対真空圧センサが、5Torrの高真空圧力で、7%以上の精度を有する、請求項1に記載の圧力計。
【請求項7】
前記瞬時差圧読み取り値からの前記計算された絶対圧力が、60Torrで1%以上の精度を有する、請求項1に記載の圧力計。
【請求項8】
前記コントローラが、
中間の真空圧で、前記瞬時高真空圧力信号及び前記計算された絶対圧から混合された圧力を計算し、
チャンバ圧力信号として、高真空圧力の範囲にわたる前記瞬時高真空圧力信号、低真空圧の範囲にわたる前記計算された絶対圧、及び前記中間の真空圧における前記混合された圧力を出力する
ように構成される、
請求項1に記載の圧力計。
【請求項9】
前記コントローラが、周囲圧力における前記絶対真空圧信号をゼロにするように構成される、請求項1に記載の圧力計。
【請求項10】
前記絶対真空圧センサが、熱伝導率センサである、請求項1に記載の圧力計。
【請求項11】
前記熱伝導率センサが、MEMSピラニセンサである、請求項10に記載の圧力計。
【請求項12】
前記ダイヤフラム差圧センサが、差動ピエゾ抵抗ダイヤフラム圧力センサである、請求項1に記載の圧力計。
【請求項13】
前記絶対周囲圧力センサが、一方の面で基準真空にさらされて、反対側の面で周囲圧力にさらされるダイヤフラムを備える、請求項1に記載の圧力計。
【請求項14】
ロードロックのロードロックポート及び移送ポートを制御する方法であって、
絶対真空圧センサから瞬時高真空圧力信号を提供することと、
一方の面で前記ロードロックにさらされて、反対側の面で周囲圧力にさらされるダイヤフラムを有するダイヤフラム差圧センサから瞬時差圧信号を提供することと、
絶対周囲圧力センサから瞬時周囲圧力信号を提供することと、
電子コントローラにおいて、計算された絶対周囲圧力を前記瞬時差圧信号及び前記瞬時周囲圧力信号から計算することと、
前記ロードロックが前記絶対真空圧センサからの前記瞬時高真空圧力信号によって示されるような十分に低い圧力に到達した後のみ、前記移送ポートを高真空チャンバに対して開けることと、
前記ダイヤフラム差圧センサからの前記瞬時差圧信号が周囲圧力と少なくとも同じぐらい高いロードロック圧力を示した後のみ、前記ロードロックポートを周囲に対して開けることと、
前記コントローラから絶対真空圧出力を提供することと
を含み、
前記絶対真空圧出力が、高真空の前記絶対真空圧センサから、及び、低真空の前記計算された絶対圧からとられる、
方法。
【請求項15】
前記コントローラが、
前記ロードロックが周囲圧力であるときの前記ダイヤフラム差圧センサの周囲圧力ブリッジ電圧、
前記ロードロックがフルスケール高真空であるときの前記ダイヤフラム差圧センサのフルスケールブリッジ電圧、及び、
前記絶対周囲圧力センサで測定されたフルスケール周囲圧力
に基づいて、前記ダイヤフラム差圧センサをさらに較正する、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記コントローラが、
前記ロードロックが周囲圧力にさらされるときに前記ダイヤフラム差圧センサの周囲圧力ブリッジ電圧を測定すること、
前記ロードロックがフルスケール高真空であるときに前記ダイヤフラム差圧センサのフルスケールブリッジ電圧を測定すること、
前記ロードロックがフルスケール高真空であるときに前記絶対周囲圧力センサでフルスケール周囲圧力を測定すること、及び、
前記コントローラにおいて、前記周囲圧力ブリッジ電圧、前記フルスケールブリッジ電圧、及び前記フルスケール周囲圧力から前記ダイヤフラム差圧センサのゲインを計算すること
によって、前記ダイヤフラム差圧センサをさらに較正し、
その後、瞬時差動読取値が、前記瞬時ブリッジ電圧、前記周囲圧力ブリッジ電圧、及び前記ゲインから計算される、
請求項14に記載の方法。
【請求項17】
ゲインが、
a=(V
b,0-V
b,FS)/P
amb,FS
から計算され、ここで、
aはゲインであり、
V
b,0は周囲圧力ブリッジ電圧であり、
V
b,FSはフルスケールブリッジ電圧であり、及び、
P
amb,FSはフルスケール周囲圧力であり、
並びに、
圧力差が、
P
D=(V
b-V
b,0)/a
から計算され、ここで、
P
Dは瞬時圧力差であり、
V
bは前記ダイヤフラム差圧センサからの瞬時電圧である、
請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記コントローラが、前記瞬時絶対周囲圧力信号から瞬時周囲圧力の出力をさらに提供する、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記コントローラが、即時の真空圧における、前記瞬時高真空圧力信号及び前記計算された絶対圧信号から混合された圧力を計算する、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
周囲圧力における前記絶対真空圧信号をゼロにすることをさらに備える、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2021年1月21日に出願された米国特許出願第17/154,698号明細書の継続である。上記出願の全教示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ロードロックは、産業用及び実験用の真空プロセスチャンバの標準機構である。
図1に示されるように、試料102は、ロードロックポート104を通してロードロック106に供給され、一方、ロードロック106は、周囲(大気)圧力までベントされる。ほとんどのロードロックは、周囲にさらされるとき、パーティクルフリーのままであることが期待される。試料が中に置かれて、固定されると、ロードロックポートは閉じられ、真空ポンプ108を通して高真空に向けてポンプダウンが始まる。ロードロックの圧力が十分に低いとき、移送ポート110は、ロードロックチャンバ106をプロセスチャンバ112に接続するために開けられ、プロセスチャンバ112は、その独自の真空ポンプ112及び圧力計107を有する。次いで、試料は、それらが処理されるプロセスチャンバに、移送ポートを通して移送される。プロセスが完了すると、試料は、依然として高真空であるロードロックに戻され、移送ポートは閉じられ、ロードロックポートが周囲又はfront opening unified pod(FOUP)に開けられると、処理された試料を取り外すことができるように、ロードロックはベントされる。
【0003】
適切なロードロックの作動中、いくつかの重要な要求事項がある。
【0004】
ロードロックは、いつでもパーティクルフリーのままでなければならない。これは、ロードロックポートが開けられたときに、周囲圧力に対してわずかに正圧でなければならないことを確実になることを要求する。これにより、ロードロックポートが開けられたときに、任意の空気流がチャンバから出るという保証が与えられ、部屋の塵粒がロードロックチャンバに入ることを防ぐ。周囲空気の流入がない場合、塵粒の侵入は避けられる。ロードロックチャンバと周囲との間の正確な差圧測定は、ロードロックチャンバの圧力が周囲圧力より大きいときのみロードロックポートが開けられることを保証するために必要である。ロードロック圧力計は、非常に正確な差の測定を提供することが期待される。
【0005】
ロードロック圧力も、ポンプダウンの間、慎重に監視されなければならない。移送ポートは、ロードロックチャンバからプロセスチャンバへの塵粒の移送を排除するのに十分な低圧のときのみ開けられる。一般に、移送中、高真空プロセスチャンバへの塵粒の巻き上げを排除するために、ロードロックチャンバにおいて1Torr未満の圧力が必要とされる。ロードロックチャンバの高真空での正確な絶対圧測定が必要であり、ロードロック操作者によって要求される。
【0006】
よって、ロードロックチャンバには、高精度で2つの非常に重要な測定を実行することができる高精度圧力測定ゲージを取り付ける必要がある:
a.ロードロックポートを周囲状態に対して開ける前に、ロードロックチャンバと周囲との間の差圧を測定する。
b.特に移送ポートをプロセスチャンバに対して開ける前に、ロードロックチャンバの内部の高真空での絶対圧を測定する。
【0007】
ロードロックチャンバにおける圧力監視及び制御のために使用されるゲージは、多くの場合、ロードロックゲージと呼ばれる。
【0008】
上記の要件を満たしたロードロックゲージは、米国特許第6,672,171号明細書(特許文献1)で開示された。ゲージは、微小電気機械システム(MEMS)ピラニセンサ、特に、MicroPirani(商標)ゲージの形態の高真空絶対圧センサと、ロードロックの圧力にさらされるダイヤフラムの一方の面及び周囲圧力にさらされるダイヤフラムの反対側の面を有する差動ダイヤフラムセンサの形態の差圧センサとの両方を含んだ。装置は上記の要件を満たしたが、移送ポートを制御するために必要とされる高真空圧における高精度を提供するMEMSピラニゲージは、周囲においては約+/-25%のみの精度を有する。しかし、一部のプロセスエンジニアは、周囲から高真空までの圧力範囲を通して、ロードロックにおける正確な絶対圧測定の期待を有した。米国特許第6,909,975号明細書(特許文献2)は、その追加の要件に対処した。
【0009】
米国特許第6,909,975号明細書の1つの実施形態では、差圧センサは、ロードロックの低真空圧において正確であったピエゾ抵抗ダイヤフラム絶対圧センサ、及び、ロードロックの外の周囲圧力において正確な絶対圧センサの2つの絶対圧センサと置き換えられた。次いで、ロードロックポートを開けるための差圧要件は、低真空圧センサと周囲圧力センサとの差を計算することによって満たされた。完全な絶対圧範囲は、高真空におけるピラニセンサ、低真空における絶対ピエゾ抵抗ダイヤフラムセンサ、及び、中間真空レベルにおける2つの出力の混合物に基づくことによって得られた。その実施形態の早期の実施態様は、MKS390圧力計であった。MKS390ゲージは、MEMSピラニセンサ、絶対ピエゾ抵抗ダイヤフラムセンサ、及び気圧計を含んだ。それは、ピラニセンサによってサポートされる可能性があるよりさらに高い真空での非常に高真空絶対圧読取値を提供するための、米国特許第6,909,975号でも提案されたような、電離圧力計をさらに含んだ。
【0010】
対象の差圧を計算するために個別の絶対ゲージを使用することによる難しさは、対象の差圧が直接検知されないこと、及び、別個のセンサの検知された圧力に基づく計算は誤りが生じやすいことである。プロセスエンジニアは、差動ダイヤフラムセンサからの非常に信頼性のある直接の差動読取値を好む。
【0011】
米国特許第6,909,975号明細書は、ダイヤフラム差圧センサ出力が低真空圧で正確な絶対圧読取値を提供するために使用される可能性がある方法を提示した。そのため、絶対圧測定値と差圧測定値との間の相関係数が、チャンバの絶対圧が正確に且つ確実に測定される可能性があるところでとられ、相関係数は保存された。その後、差圧測定値は、仮想絶対圧測定値を提供するために、相関係数で調整された。差圧がゼロを測定したとき、その相関係数が大気圧でとられて、保存される可能性があるが、好ましい方法は、負周囲圧力に等しい高真空で差圧センサの出力を測定すること、及び、相関係数として絶対値を保存することであった。次いで、その相関係数は、ロードロックの全範囲の圧力を通して絶対圧読取値を提供するために、差圧センサの差動出力に加えられる可能性がある。その後、ピラニセンサの出力は正確な高真空絶対圧読取値を提供し、差圧センサ出力から計算された仮想絶対圧は低真空での絶対圧を提供し、2つの混合物は中間の真空圧での絶対圧を提供した。そのアプローチは、非常に成功したMKS901Pゲージで使用され、それは、10年以上の間、産業界で最も広範に使用されたロードロックゲージであった。
【0012】
MKS901Pゲージは、絶対高真空(低圧)出力のためのMEMSピラニセンサ、及び、差動出力及び低真空仮想圧力出力のための差動ピエゾ抵抗ダイヤフラム(DPRD)センサに基づいている。ロードロックが約1Torr未満にポンピングされるたびに、差圧の絶対値が測定されて、一定の大きさの正数としてメモリに保存される。これは、基本的には、高精度で、DPRD自体で実行される周囲圧力の最新の測定値である。それ以降、DPRDからのすべての差動読取値は、ロードロックチャンバで絶対圧を提供するために、その一定の値から引くことができる。DPRDが周囲圧力の保存された値を生成するために使用されて(ポンプダウン中)、次いで、ベント中、ロードロックチャンバ圧力を計算するために使用されるので、読取値は、ピラニセンサによって提供されるものより、低真空においてより正確である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第6672171号明細書
【特許文献2】米国特許第6909975号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
MKS901Pゲージは、米国特許第6,909,975号明細書の仮想圧力アプローチを使用して、移送ポートを制御するためのピラニセンサからの必要な非常に高精度の高真空圧力、ロードロックポートを制御するための高精度差圧、さらに、低真空においてさえの高精度絶対圧を提供する。その高精度低真空絶対圧を維持するために、相関係数が実際の周囲圧力に対応することは重要である。したがって、ロードロック圧力が高真空に減少されるたびに、相関係数は更新される。しかしながら、+/-10Torrの周囲圧力の変動が、一日を通して起こることがある。相関係数があまり十分に更新されない場合、周囲圧力の変動は、低真空絶対圧読取値の不正確さにつながる可能性がある。それらの読取値は移送ポート又はロードロックポートの差動には重要ではないが、それらは最適よりは悪い。低真空圧でさえ、さらによりよい精度を提供するために、MKS390の製品で使用される絶対ピエゾ抵抗ダイヤフラムセンサなどの別の絶対圧センサが、ゲージに加えられる可能性がある。しかしながら、そのようなセンサは、ゲージ全体の費用を大きく増加させ、それ自体、好ましくないヒステリシスの欠点を有する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
合理的な費用でダイヤフラム差圧センサから導かれる絶対低真空圧読取値の精度を改善するために、絶対周囲圧力センサがゲージに加えられる。そのようなゲージは、一方の面で基準真空にさらされて、反対側の面で周囲圧力にさらされるダイヤフラムを含む。それらは、たとえば、高度計において、気圧計として広範に使用され、そのため、低い追加コストで非常に正確な周囲圧力読取値を提供する。周囲圧力センサがゲージに含まれることで、特定のプロセス状態における相関係数を保存することがもはや必要でない。むしろ、正確な瞬時周囲圧力を、ロードロック圧力の全範囲で、非常に正確な差圧に加えることができる。ゲージに含まれる周囲圧力センサは、周囲圧力におけるピラニゲージの同期、及び、検知された周囲圧力に基づく通常の作動サイクル中の差圧センサの自動再校正も可能にする。
【0016】
圧力計は、真空チャンバに結合されるように構成されたハウジングを備える。ハウジング内の絶対真空圧センサは、真空チャンバにさらされるように構成され、高真空圧力の範囲にわたって正確な瞬時高真空圧力信号を提供するために高真空で作動可能である。ハウジング内のダイヤフラム差圧センサは、瞬時差圧信号を提供するために、一方の面が真空チャンバに、及び、反対側の面が周囲圧力にさらされるように構成されたダイヤフラムを備える。ハウジング内の絶対周囲圧力センサは、瞬時周囲圧力信号を提供するために、周囲圧力にさらされる。ハウジング内のコントローラは、絶対真空圧センサからの高真空圧力信号、ダイヤフラム差圧センサからの差圧信号、及び周囲圧力センサからの周囲圧力信号を受信する。コントローラは、両方とも低真空圧の範囲を通して検知される、瞬時差圧信号及び瞬時周囲圧力信号から、真空チャンバの計算された絶対圧を計算する。コントローラは、出力として、ダイヤフラム差圧センサ信号からの差圧出力、高真空における絶対真空圧センサ信号からとられる絶対真空圧出力、及び低真空における計算された絶対圧からの絶対真空圧出力を提供する。
【0017】
コントローラは、真空チャンバが周囲圧力であるときのダイヤフラム差圧センサの周囲圧力ブリッジ電圧、真空チャンバがフルスケール高真空であるときのダイヤフラム差圧センサのフルスケールブリッジ電圧、及び、真空チャンバがフルスケール高真空であるときに絶対周囲圧力センサで測定されたフルスケール周囲圧力に基づいて、ダイヤフラム差圧センサを較正するようにさらに構成されてもよい。
【0018】
コントローラは、真空チャンバが周囲圧力であるときにダイヤフラム差圧センサの周囲圧力ブリッジ電圧を測定すること、真空チャンバがフルスケール高真空であるときにダイヤフラム差圧センサのフルスケールブリッジ電圧を測定すること、及び、真空チャンバがフルスケール高真空であるときに絶対気圧センサでフルスケール周囲圧力を測定することによって、ダイヤフラム差圧センサを較正するように構成されてもよい。コントローラは、周囲圧力ブリッジ電圧、フルスケールブリッジ電圧、及びフルスケール周囲圧力からダイヤフラム差圧センサのゲインを決定してもよい。その後、瞬時差圧信号は、瞬時ブリッジ電圧、周囲圧力ブリッジ電圧、及びゲインから決定されてもよい。ゲインは、
【0019】
a=(Vb,0-Vb,FS)/Pamb,FS
【0020】
から計算されてもよく、ここで、aはゲインであり、Vb,0は周囲圧力ブリッジ電圧であり、Vb,FSはフルスケールブリッジ電圧であり、及び、Pamb,FSはフルスケール周囲圧力である。圧力差は、
【0021】
PD=(Vb-Vb,0)/a
【0022】
から計算されてもよく、ここで、PDは瞬時圧力差であり、Vbはダイヤフラム差圧信号からの瞬時電圧である。
【0023】
圧力計は、絶対周囲圧力信号から瞬時周囲圧力の出力をさらに提供してもよい。
【0024】
絶対真空圧センサは、5Torrの高真空圧力で、7%又は7%よりよい精度を有してもよい。瞬時差圧読取値からの計算された絶対圧は、60Torrで1%又は1%よりよい精度を有してもよい。
【0025】
コントローラは、中間の真空圧で、瞬時高真空圧力信号及び計算された絶対圧から混合された圧力を計算するように構成されてもよい。コントローラは、チャンバ圧力信号として、高真空圧力の範囲にわたる瞬時高真空圧力信号、低真空圧の範囲にわたる計算された絶対圧、及び、中間の真空圧における混合された圧力を出力してもよい。
【0026】
コントローラは、周囲圧力における絶対真空圧信号をゼロにするように構成されてもよい。
【0027】
絶対真空圧センサは、熱伝導率センサ、たとえば、MEMSピラニセンサであってもよい。ダイヤフラム差圧センサは、差動ピエゾ抵抗ダイヤフラム圧力センサであってもよい。他の差動ダイヤフラムゲージも使用されてもよいが、ピエゾ抵抗ゲージは小さくて安価である利点を有する。絶対周囲圧力センサは、一方の面で基準真空にさらされて、反対側の面で周囲圧力にさらされるダイヤフラムを備えてもよい。
【0028】
ロードロックのロードロックポート及び移送ポートを制御する方法において、瞬時高真空圧力信号は、絶対真空圧センサから提供されてもよい。瞬時差圧信号は、一方の面でロードロックにさらされて、反対側の面で周囲圧力にさらされるダイヤフラムを有するダイヤフラム差圧センサから提供されてもよい。瞬時周囲圧力信号は、絶対周囲圧力センサから提供されてもよい。電子コントローラにおいて、計算された絶対周囲圧は、瞬時差圧信号及び瞬時周囲圧力信号から計算されてもよい。ロードロックが絶対真空圧センサからの瞬時高真空圧力信号によって示されるような十分に低い圧力に到達した後のみ、移送ポートは高真空チャンバに対して開かれる。ダイヤフラム差圧センサからの瞬時差圧信号が周囲圧力と少なくとも同じぐらい高いロードロック圧力を示した後のみ、ロードロックポートは周囲に対して開けられる。コントローラからの絶対真空圧出力は、高真空の絶対真空圧センサから、及び、低真空の計算された絶対圧からとられる絶対真空圧出力である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
前述のものは、添付の図面に示されるような例示的な実施形態の以下のより具体的な記載から明らかであり、図面において、同様の参照符号は、異なる図を通して同じ部分を言及する。図面は必ずしも縮尺通りではなく、代わりに、実施形態を示すことに重点が置かれている。
【
図1】ロードロックゲージを有するロードロックの略図であり、ロードロックがプロセスチャンバに結合されている。
【
図2】本発明を具現化するロードロック圧力計の断面図である。
【
図3A】ロードロックの3つの異なる圧力状態の1つにおける、
図2のダイヤフラム差圧センサの断面概略図である。
【
図3B】ロードロックの3つの異なる圧力状態のまた別の1つにおける、
図2のダイヤフラム差圧センサの断面概略図である。
【
図3C】ロードロックの3つの異なる圧力状態のさらにまた別の1つにおける、
図2のダイヤフラム差圧センサの断面概略図である。
【
図5】
図2のMEMSピラニゲージの概略断面図である。
【
図6】
図2のゲージの圧力測定ループのフローチャートである。
【
図7】差圧に対してプロットされた、
図3A~Cの差圧センサからのブリッジ電圧出力のグラフである。
【
図8A】差圧センサオフセットの決定のための圧力計コントローラマイクロプロセッサのフローチャートである。
【
図8B】差圧センサの勾配の決定及びフルスケール較正のためのコントローラマイクロプロセッサのフローチャートである。
【
図9】
図1に類似したシステムの概略図であるが、ロードロックに結合された追加の非常に高真空圧力センサを有する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
例示的な実施形態の説明は以下である。
【0031】
複数センサゲージは、現在の装置の制限なしに、圧力の全範囲を通して、ロードロックチャンバの絶対圧及び差圧の両方を正確に測定する能力を提供する。MEMSピラニセンサは、移送ポート制御のために高真空絶対圧を提供する。差動ピエゾ抵抗ダイヤフラム(DPRD)圧力センサは、産業界がMKS901P及びそのロードロックスイッチから期待するようになった単一のセンサ差圧測定値を提供する。
【0032】
気圧計の追加は、リアルタイムでの周囲圧力測定の更新を可能にし、差圧センサからのロードロックチャンバの内部の最新の絶対圧を提供し、901Pによって保存されて、ロードロックポンプダウンの間のみ更新される固定周囲圧力相関係数の改善を提供する。周囲圧力を知り、DPRD測定値から正確なロードロックチャンバ絶対圧を計算するために、一日を通して反復的なポンプダウンを行う必要がない。
【0033】
センサを同期させる機会もある。
【0034】
高真空がロードロックチャンバの内部の約0.5Torrより小さいたびに、差動センサは周囲センサと同期することができる。絶対圧が、気圧計のほぼ典型的な精度である0.5Torrより小さいとき、周囲センサ及びDPRDが同じ0.5Torr程度以内を読み取ることを確認することができる。そうでない場合、差圧センサは、以下で論じられるように自動的に再較正することができる。周囲センサは、移行する周囲圧力を高精度で追跡し続け、ロードロックチャンバ絶対圧の正確な計算を保証し続ける。周囲センサは、使用前に精密に較正され、周囲圧力の信頼される測定のために、動作中、信頼することができる。
【0035】
MEMSピラニ大気読取値は、ロードロックチャンバが周囲にベントされるたびに、同期することができる。この時点で、差動センサはゼロ差圧を読み取り、ピラニは気圧計に同期する。これにより、ほぼ周囲圧力におけるピラニセンサの精度を改善する。
【0036】
図2は、ロードロックゲージとしての特定の用途を有する圧力計を示し、それは、MKS901Pゲージに基づくが、MKS901Pゲージを改善する。ブロック202は、ロードロックチャンバの側部にゲージを取り付けるために、フランジ204を有する。ブロック内の容積206は、ロードロックチャンバにさらされる。容積206からブロックを通る導管208は、チューブ210をロードロック圧力にさらす。チューブ210は、差動ピエゾ抵抗ダイヤフラムセンサ(DPRD)であってもよい差圧センサ212まで延在する(ゲージは
図2の固体ブロックとしてのみ示される。さらなる詳細は
図3A~Cに示される)。差動センサ212は、センサボード213に取り付けられる。それは、ゲージの外側からの周囲圧力への差動センサの曝露を可能にする保護缶215を含む。
【0037】
ブロック202の第2の導管214は、MEMSピラニ絶対圧センサ218がさらされる容積216まで延在する(センサ218は、この図において固体ブロックとしてのみ示され、
図5に関してさらに記載される)。ピラニゲージ218は、電気ピン219によってセンサボード213の下に吊り下げられる。
【0038】
901Pゲージでは利用できない追加のセンサは、従来の気圧計であってもよい周囲圧力センサ220である。センサ220は、周囲圧力にのみさらされる。気圧計は、プラスマイナス2Torr未満の高精度で、広範に利用できる。再較正によって、その精度は、プラスマイナス0.5Torr、好ましくは、プラスマイナス0.25Torr、又はそれ以上に改善させることができる。気圧計は通常、温度補償を含む。
【0039】
コントローラマイクロプロセッサ226を含む、追加の電子部品は、ボード213に、及び、マイクロプロセッサボード222に取り付けられる。センサ及び電子部品は、保護ハウジング223内に封入される。圧力計との通信は、電気的接続224を通して行われる。以下に詳細に論じられるように、マイクロプロセッサ226は、圧力測定及び出力に対して責任を負う。特に、マイクロプロセッサは、ピラニセンサの圧力同期及び差動ダイヤフラムセンサの同期及び較正に対して責任を負う。
【0040】
図3A~Cは、3つの異なる状態の差圧センサ212の略図である。センサは、上部容積304の周囲圧力にさらされるダイヤフラム302を含む。その反対側の面は、チューブ210と流体連通するチャンバ306においてロードロック圧力にさらされる。ダイヤフラム302は、たとえば、シリコンであってもよく、その上に取り付けられるピエゾ抵抗起歪体を有する。容積304及び306内の圧力が同じであるとき、ダイヤフラムは、
図3Aに示されるように、ゼロ偏向を有し、較正された装置は、ゼロ差圧出力を提供する。正圧がロードロックに加えられた場合、ダイヤフラムは、
図3Bに示されるように、上向きに押されて、正差圧出力に変換される電圧出力を提供する。ロードロック内が真空引きされると、ダイヤフラムは、
図3Cの場合のように、下向きに引かれ、センサは、負差圧読取値に変換される負電圧出力を出力する。これは、直接の、気体種非依存性差圧読取値である。
【0041】
図4は、周囲圧力センサで使用される気圧計の略図である。それも、ハウジング410の穴408を通して周囲圧力にさらされる容積404に頂面でさらされるシリコンダイヤフラム402などのダイヤフラムを含む。ダイヤフラム402の底面は、基準圧力の閉じたチャンバにさらされる。センサは、チャンバ406内の基準圧力に対する周囲圧力によって駆動されるダイヤフラムの曲げによって電圧出力を提供するピエゾ抵抗ダイヤフラムセンサであってもよい。適切に較正されると、電圧出力は、周囲圧力の非常に正確な読取値に変換される。
【0042】
高真空絶対圧センサ218は、熱伝導率センサ、特に、MEMSピラニセンサである。他のセンサ、たとえば、ワイヤベースピラニセンサも使用されてもよい。熱伝導率センサは、加熱されたセンサ抵抗の温度とセンサ抵抗に加えられる加熱電力の量との関係に基づいて圧力を測定する。たとえば、細線(センサ抵抗)を一定の温度(Ts)に維持するのに必要な加熱電力の量を監視してもよい。気体の圧力が増加すると、気体の熱伝導率は増加し、気体は、加熱されたワイヤからさらに熱を奪い、ワイヤを一定の温度に維持するのに必要な加熱電力は増加する。加熱電力を圧力と関連づける気体種依存型較正曲線は、圧力測定を可能にする。較正は通常、工場において、純窒素気体に対して行われる。これは、加熱電力が気体圧力に比例する間接的な圧力測定である。
【0043】
この原理は、よく知られたピラニゲージで使用され、熱損失は、検出素子の加熱及びその抵抗の測定の両方の役割を果たすホイートストンブリッジネットワークで測定される。ピラニゲージでは、感温抵抗は、ホイートストンブリッジの1つのアームとして接続される。感温抵抗は、圧力が測定される真空環境にさらされるチャンバ内に取り付けられる。
【0044】
従来のピラニゲージは、気体の圧力と気体又はブリッジ電圧への電力損失との関係を決定するために、いくつかの知られている圧力に対して較正される。その場合、端損失及び放射損失が一定のままであるとすると、気体の未知の圧力は、気体に失われた又はブリッジバランスにおけるブリッジ電圧に関連する電力によって、直接決定されてもよい。
【0045】
ここで使用される具体的な熱伝導率センサは、
図5に示されるような、MEMSピラニセンサである。このセンサは、容積504及び容積506を有しているチャンバ全体に延在するシリコン窒化物膜502を含む。容積504及び506は、圧力計の容積216と連通し、したがって、ロードロック圧力である。加熱される抵抗素子は、508において膜502上に形成される。センサの幾何学的形状のために、対流が空洞内で起こることができず、結果的に、センサは、取付位置に影響されない。気体分子は、気体に対する熱損失が測定される加熱された要素にのみ、拡散によって渡される。従来のピラニゲージと同様に、熱は、加熱された抵抗から、膜502上の抵抗素子からの510及び512における周囲気体に伝導される。従来のピラニセンサのように、気体の圧力が増加すると、気体の熱伝導率は増加し、気体は、加熱された抵抗からさらに熱を奪い、ワイヤを一定の温度に維持するのに必要な加熱電力は増加する。較正曲線は、加熱電力を圧力と関連づける。MEMSピラニセンサは、高真空における非常に正確な圧力読取値を提供し、したがって、特に、高真空プロセスチャンバへの移送ポートを制御することに適している。しかしながら、上述のように、それは、周囲圧力に近づくより高い圧力においては、それほど正確ではない。
【0046】
高価な、そして、おそらく、あまり正確ではない絶対圧センサを必要とすることなく、低真空での正確な絶対圧読取値を得るために、このシステムは、DPRDセンサで検知される差圧から、ロードロック圧力の絶対圧を決定する。差圧は周囲圧力と関連するので、絶対真空圧は、周囲圧力を加えることによって決定することができる。この計算は、実際の瞬時周囲圧力が保存された相関係数よりもむしろ演算で使用されることを除いて、米国特許第6,909,975号明細書のアプローチと類似している。差圧センサの両面が周囲にさらされる場合、差圧読取値はゼロである。したがって、周囲の差圧から絶対圧を計算することは、気圧計によって検知された周囲圧力が差圧に加えられることを必要とする。同様に、より低い圧力まで排気されたロードロックで、それらの絶対圧は、
PLL=PD+Pamb (1)
から計算することができ、ここで、PLLはロードロック絶対圧であり、PDは差圧であり、Pambは気圧計によって検知された瞬時周囲圧力、すなわち、演算の瞬間の周囲圧力である。
【0047】
ロードロック圧力計は、高真空(非常に低い圧力)ではピラニゲージから、及び、低真空(圧力が周囲圧力により近い)ではDPRDセンサの差圧プラス気圧計からの周囲圧力から導かれるロードロック圧力の絶対圧出力PLLを提供する。ロードロック圧力PLLのための単一の出力は、ピラニ測定値から差動プラス周囲測定値に移行するので、ロードロックの気体が、センサが較正された純窒素気体以外にある場合、2つの測定値の違いは予想することができる。その移行による出力のステップを避けるため、産業界でよく知られており、MKS901P製品で使用される技術は、圧力の範囲にわたって、2つの測定値を混合することである。混合の1つの例では、2つの工場設定閾値は、測定値が、ピラニセンサから単独でとられる、差動及び気圧計センサから単独でとられる、又は、2つの混合物であるときに定義する。閾値PX,Lを下回る場合、ピラニ測定値のみ使用される。閾値PX,Hを上回る場合、PD及びPambから計算された測定値のみ使用される。それらの閾値の間で、混合のいくつかの形態が、純粋なピラニ測定値から純粋なPDプラスPamb測定値までの連続移行を可能にする。混合は、線形又は非線形であってもよいが、下側閾値の近くでは、混合された値は、ピラニ測定値により重きが置かれ、上側閾値に向けて、測定値は、計算された測定値の方へより重きが置かれる。典型的な下側閾値は20Torrで、ユーザ設定可能であってもよく、上側閾値は60Torrで、ユーザ設定可能であってもよい。
【0048】
上側閾値及び下側閾値は同じであってもよく、又は単純な値PX、たとえば、約40Torrに設定されてもよい。いずれの場合も、混合はないが、圧力上下としての読取値間の急激な移行、及び、移行における圧力出力PLLの可能性のあるステップは存在する。
【0049】
図6は、測定ループを介した圧力計の圧力測定のフローチャートである。任意の順序ではあるが、602において、ロードロック圧力がピラニセンサで測定され、604において、ロードロック圧力と周囲圧力との間の差がDPRDセンサで測定され、606において、周囲圧力が気圧計で測定される。それらの測定値のそれぞれは、測定ループを通してロードロック操作者が利用できる。608において、ピラニ圧力読取値P
MPが下側混合閾値P
X,Lより小さいかどうかは判定される。そうである場合、610において、ロードロック圧力P
LLはP
MPに等しいようにセットされる。608のピラニ圧力が下側閾値より小さくない場合、612において、ピラニ圧力は、上側混合閾値P
X,Hと比較される。ピラニ圧力がその閾値を上回る場合、614において、ロードロック圧力P
LLは、P
D及びP
ambの合計と等しいようにとられる。ピラニ圧力が下側閾値を下回らず且つ上側閾値を上回らない場合、圧力は混合圧力範囲であり、616において、ロードロック圧力P
LLは、ピラニ圧力P
MPと、計算された圧力P
DプラスP
ambとの混合から決定される。ステップ610、614、又は616で定義された圧力は、ユーザに利用可能となる。次いで、システムは、測定値の別の組をとるためにループバックする。動作中、ピラニセンサによって提供された圧力P
MP、DPRDによって提供される差圧P
D、気圧計によって提供されるP
amb、及び、決定されたロードロック圧力P
LLは、制御及び監視の両方の目的のためにユーザが利用できる。
【0050】
DPRDセンサは、工場較正され、プラスマイナス1%Torr又はそれ以上の精度を有する。センサ出力は非常に安定していて、線形であり(通常、圧力範囲にわたって0.1%の線形よりよく、プラス及びマイナス1%よりよい再現性である)、センサは、適切に較正を保持する。しかしながら、時間が経つにつれて、精度を維持する必要のある電圧オフセット及びゲインの変動がある可能性がある。動作中、リアルタイム周囲圧力測定値を有することにより、通常動作中、DPRDの定期的な較正を可能にする。
【0051】
DPRDからの出力信号は、ダイヤフラム上の差圧に略線形関係であるブリッジ電圧V
bである。ブリッジ電圧と差圧との関係は
図7に示される。P
LLがP
ambに等しく、したがって、P
Dが0に等しいように、ロードロックチャンバが周囲にさらされるとき、ブリッジ電圧は、いくらかオフセットV
b,0している。ロードロックが真空圧まで排気されると、ブリッジ電圧は、よりマイナスになる。P
LLは、ほぼ0、通常は、1.2Torr未満、おそらく、約0.5Torrであるので、ロードロック圧力の方にDPRDダイヤフラムの最大負偏向はあり、フルスケールブリッジ電圧V
b,FSに、P
D=-P
amb,FSにおいて到達する。前述のように、V
bとP
Dとの関係は、以下の関係が当てはまるように、略線形である。
【0052】
Vb=Vb,0+((Vb,0-Vb,FS)/Pamb,FS)PD (2)
【0053】
ここで、V
b,0は、ゼロ差圧における電圧オフセットである。P
Dに加えられるゲインである
図7の勾配aが
【0054】
a=(Vb,0-Vb,FS)/Pamb,FS (3)
【0055】
であることは、この式から分かる。b=オフセット=Vb,0で式2を簡略化すると、圧力差PDは、
【0056】
PD=(Vb-b)/a (4)
【0057】
である。
【0058】
MKS901Pゲージは、工場で較正される。その較正は通常、ゲージの寿命のためになるが、ゲージは、差圧PDの後続の測定のためのオフセットb及び勾配aを決定するために、通信接続22を通しての特別コードを使用して、正確な外部周囲圧力検定ゲージを使用して、及び、周囲及び高圧状態を通してロードロックゲージを働かせることによって、現場でも再較正することができる。ここで開示されるゲージは、通常動作中に自己較正することができる。
【0059】
ロードロックが周囲にさらされるときはいつでも、通信入力224を通してシステムコントローラから示されるように、オフセットVb,0は確認することができて、必要に応じて保存された値を更新することができる。その後、約ゼロのロードロック圧力において、フルスケールのVb,FS及びPamb,FSはどちらも、勾配(ゲイン)aの演算を可能にするために測定することができる。これにより、オフセット及び勾配のDPRD較正パラメータは、必要に応じて、動作の各サイクルにおいて再決定することができる。動作中、圧力計マイクロプロセッサ226で実行される較正手順は、工場で実行されるものと略同じであってもよい。圧力計の周囲圧力センサ220を含む大きな利点は、必要であると判定されるたびに、たとえば、高真空での差圧演算によって示される絶対圧力が測定された周囲圧力の負数に一致しないとき、手順は、現場において、自動的に実行することができることである。
【0060】
図8Aは、マイクロプロセッサ制御の下でのオフセットの決定を示す。802において、たとえば、システムコントローラから合図されたときに、ロードロックが周囲にベントされると、ロードロック圧力P
LLは周囲圧力V
ambに等しく、差動P
Dはゼロであることが知られている。804において、ロードロックがベントされると、P
D=0におけるブリッジ電圧V
bであるV
b,0が、高分解能アナログデジタルコンバータを通して電圧V
bを読み取ることで測定される。その測定された電圧は、電圧オフセットbとして、806において、較正メモリに保存される。
【0061】
勾配は、
図8Bのマイクロプロセッサ手順において、フルスケール較正のために決定される。ロードロックは、ピラニセンサで測定されるように、ほぼ気圧計の精度内で、約ゼロのロードロック圧力まで、通常動作において、ポンプダウンされる。その圧力で、808において、圧力差は-P
amb,FSに等しい。810において、フルスケールブリッジ電圧V
b,FSが測定され、正確なフルスケール周囲圧力P
amb,FSが気圧計を使用して測定される。812において、V
b,FS及びP
amb,FSの両方が較正メモリに保存される。814において、差圧を決定するために適用されるゲインである、
図7の勾配が計算される。その勾配aは、816において、較正メモリに保存される。
【0062】
その後、保存された値Vb,0及びaは、式(4)を使用して圧力差動PDを計算するために、任意の圧力の瞬時電圧Vbと組み合わされる。ロードロック圧力PLLは、PD及びPambのリアルタイム測定値を使用して、式(1)で計算することができる。
【0063】
901Pのように、DPRD測定値の温度補償も提供されてもよい。
【0064】
ここで説明されるマルチセンサの実施態様に加えて、本開示の範囲は、
図9において902で示されるようなアレイにイオン化センサなどの第4のセンサを加える、非常に高真空及び超高真空レベルに拡大されることができる。電離真空計(低温又は高温実施態様)が加えられると、ここで、ユーザは、移送弁が起動される前に、ピラニセンサが監視できるよりもずっと低い圧力までポンプダウンする必要があるロードロックチャンバを取り扱うことができる。そのようなマルチセンサは、ロードロックチャンバの周囲への正確なベントを可能にする際に、及び、高真空(非常に低圧)でプロセスチャンバに試料を移送する前に高真空レベルを確認する際に、非常に汎用的である。
【0065】
本開示は、リアルタイムの連続的な周囲圧力測定値を提供するために、標準的な気圧センサの追加にずっと焦点を合わせてきた。気圧計は、海水面と最高峰との間の周囲圧力の測定を非常に高い分解能で可能にするという点で非常に特異である。それらは一般に、高度計として使用される。しかしながら、本開示の範囲は、それらの標準的なセンサを越えて拡がり、周囲圧力を正確に測定可能な任意のセンシング技術を含む。これは、ピエゾ抵抗容量性及び光学偏向ダイヤフラムセンサなどの、ハイエンドのダイヤフラム偏向センサを含む。
【0066】
本システムは、差動ピエゾ抵抗ダイヤフラムセンサの使用に限定されない。器具は、たとえば、差動ダイヤフラム偏向の光学的及び容量性測定に基づく差動ダイヤフラムセンサを使用して、同様に構築される可能性がある。容量及び光学ダイヤフラム偏向圧力センサは、たとえば、金属、セラミック、又はサファイヤ膜から作ることができる。
【0067】
本明細書に引用されるすべての特許、公開出願、及び参考文献の教示は、その全体が参照により組み込まれる。
【0068】
例示的な実施形態について詳細に図示及び説明したが、添付の特許請求の範囲に包含された実施形態の範囲を逸脱しない範疇で、形態及び細部にさまざまな変更が施されてもよいことは当業者によって理解されるであろう。
【国際調査報告】