(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-15
(54)【発明の名称】乾式真空ポンプ式の真空ポンプおよび吸排気ユニット
(51)【国際特許分類】
F04C 25/02 20060101AFI20240207BHJP
F04B 37/16 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
F04C25/02 A
F04B37/16 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544473
(86)(22)【出願日】2022-01-12
(85)【翻訳文提出日】2023-09-22
(86)【国際出願番号】 EP2022050547
(87)【国際公開番号】W WO2022157049
(87)【国際公開日】2022-07-28
(32)【優先日】2021-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511148259
【氏名又は名称】ファイファー バキユーム
(74)【代理人】
【識別番号】110003292
【氏名又は名称】弁理士法人三栄国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ダルブール
【テーマコード(参考)】
3H076
3H129
【Fターム(参考)】
3H076AA12
3H076AA21
3H076AA29
3H076BB26
3H076BB43
3H076CC62
3H129AA10
3H129AA21
3H129AB06
3H129AB12
3H129BB01
3H129BB41
3H129CC23
(57)【要約】
【課題】吸排気チャンバへのオイル漏れのリスクを抑えることができ、真空ポンプの吸排気性能への影響を抑えることができる真空ポンプを提案する。
【解決手段】本発明は、パージガスをオイルサンプ(6)に注入するようになっているオイルサンプにパージガスを注入するための少なくとも1つの注入デバイス(12)とオイルサンプ(6)内のガスを吸排気するようになっているオイルサンプからガスを吸排気するための少なくとも1つの吸排気デバイス(13)を備える真空ポンプ(1;100)であって、パージガスを当該オイルサンプ(6)に注入し、同時に当該オイルサンプ(6)から吸排気するようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾式真空ポンプ式の真空ポンプ(1、100)は、
- 少なくとも1つのオイルサンプ(6)と、
- 少なくとも1つの吸排気段(T1、T1~T5)と、
- 前記オイルサンプ(6)に含まれる潤滑剤によって潤滑された軸受内で回転が誘導され、かつ前記真空ポンプ(1、100)の入口(2、4)と出口(3、5)との間の前記吸排気段(T1、T1~T5)においてロータ(9)の回転を駆動するようになっている2つの回転シャフト(7)と、
- 各シャフト通路において前記オイルサンプ(6)と前記吸排気段(T1、T1~T5)との間に介在する少なくとも1つの潤滑剤シールデバイス(8)と、を備えており、
前記真空ポンプ(1、100)は、パージガスを前記オイルサンプ(6)に注入するようになっている、前記オイルサンプにパージガスを注入するための少なくとも1つの注入デバイス(12)と、前記オイルサンプ(6)内のガスを吸排気するようになっている、前記オイルサンプから前記ガスを吸排気するための少なくとも1つの吸排気デバイス(13)と、をさらに備え、パージガスを前記オイルサンプ(6)に注入し、同時に前記オイルサンプ(6)から吸排気するようになっていることを特徴とする真空ポンプ(1、100)。
【請求項2】
パージガスを前記オイルサンプに注入するための前記注入デバイス(12)は、前記オイルサンプ(6)のガス空間(20)に開口する注入ライン(14)と、前記注入ライン(14)に直列に取り付けられる絞り(15)および逆止弁(16)と、を備えることを特徴とする請求項1記載の真空ポンプ(1、100)。
【請求項3】
前記オイルサンプから前記ガスを吸排気するための前記吸排気デバイス(13)は、前記オイルサンプ(6)のガス空間(20)と連通する吸排気ライン(17)と、前記吸排気ライン(17)に直列に取り付けられる逆止弁(16)および絞り(15)と、を備えることを特徴とする請求項1または2記載の真空ポンプ(1、100)。
【請求項4】
前記オイルサンプから前記ガスを吸排気するための前記吸排気デバイス(13)は、前記オイルサンプ(6)のガス空間(20)と連通する吸排気ライン(17)と、前記吸排気ライン(17)への潤滑剤の流入を抑えるために前記吸排気ライン(17)の入口で、前記オイルサンプ(6)内に配置されたデフレクタ(19)と、を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の真空ポンプ(1、100)。
【請求項5】
前記オイルサンプから前記ガスを吸排気するための前記吸排気デバイス(13)は、前記吸排気ライン(17)内に配置されたオイルセパレータ(18)を備えることを特徴とする請求項3または4記載の真空ポンプ(1)。
【請求項6】
前記真空ポンプ(1、100)は、2つのオイルサンプ(6)を備え、1つのオイルサンプ(6)が少なくとも1つの吸排気段(T1、T1~T5)の各側に配置され、前記真空ポンプ(1、100)は、各オイルサンプ(6)に対して、パージガスを前記オイルサンプに注入するための注入デバイス(12)と、前記オイルサンプから前記ガスを吸排気するための吸排気デバイス(13)とを備え、前記オイルサンプから前記ガスを吸排気するための前記吸排気デバイス(13)間に流体連通が設けられていないことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の真空ポンプ(1、100)。
【請求項7】
前記オイルサンプから前記ガスを吸排気するための前記吸排気デバイス(13)は、前記オイルサンプ(6)のガス空間(20)を多段真空ポンプの吸排気段と連通させる吸排気ライン(17)を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の真空ポンプ(1)。
【請求項8】
パージガスを前記オイルサンプに注入するための前記注入デバイス(12)および前記オイルサンプから前記ガスを吸排気するための前記吸排気デバイス(13)は、前記オイルサンプ(6)内の圧力を大気圧より低い圧力、例えば50,000Paより低い圧力に制御するようになっていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の真空ポンプ(1)。
【請求項9】
複数の吸排気段(T1~T5)を有する低真空ポンプ(100)を備える吸排気ユニット(101)であって、前記吸排気ユニット(101)は、前記低真空ポンプ(100)と直列にかつ前記低真空ポンプ(100)の上流に配置された、請求項1から8のいずれか1項記載の真空ポンプ(1)を備え、前記オイルサンプから前記ガスを吸排気するための前記吸排気デバイス(13)は、真空ポンプ(1)のオイルサンプ(6)のガス空間(20)を低真空ポンプ(100)の吸排気段(T1~T5)の1つと連通させる吸排気ライン(17)を備えることを特徴とする吸排気ユニット(101)。
【請求項10】
前記吸排気ライン(17)は、前記オイルサンプ(6)の前記ガス空間を前記低真空ポンプ(100)の前記第2吸排気段(T2)の出口と連通させることを特徴とする請求項9記載の吸排気ユニット(101)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾式真空ポンプ式の真空ポンプおよび吸排気ユニットに関する。より具体的には、真空ポンプの吸排気チャンバとオイルサンプとの間のシールに関する。
【背景技術】
【0002】
容積移送式真空ポンプは、吸気口と排気口との間で吸排気されるガスが流れる直列の1つまたは複数の吸排気段を備える。回転ローブを備えた低真空ポンプ(2つ以上のローブを有する「ルーツ」ポンプとしても知られている)と、「クロー」ポンプまたはスクリューポンプとは、区別される。高流量状況での吸排気能力を高めるために、低真空ポンプの上流で使用されるルーツ圧縮機または「ルーツブロワー」式の真空ポンプも知られている。このような真空ポンプは「ドライ」ポンプと呼ばれる。これは、運転中、ロータが相互にまたはステータと機械的に接触せずにステータ内で回転するためであり、このことは、吸排気段でオイルを使用しないことが可能であることを意味する。
【0003】
ロータの回転は、ギアを使って同期される。ロータは、一般に吸排気チャンバの両側に配置された玉軸受によって回転が誘導される。これらのギアと軸受とは、シャフトが回転できるシール手段によって吸排気チャンバから隔離されているオイルサンプに含まれるオイルまたはグリースで潤滑されている。シール手段は主に、ラビングリップシール、エジェクタディスク、ガスパージ、またはラビリンスおよびバッフルなどの障害物など、潤滑剤に対する物理的バリアを備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、運転中、真空ポンプ内の圧力は、特に、太陽光発電パネルの吸排気用途の分野などの大量のガスが周期的に真空下に置かれる用途において、大きく変動する。オイルサンプ内の雰囲気は真空ではなく大気圧のままであるが、この雰囲気も同様に、吸排気部で発生する圧力変動を多少なりとも受ける。これは、潤滑剤に対して比較的効果的なシール手段が、シャフトの回転を可能にする必要があるため、ガスに対しては完全にシールされていないためである。したがって、オイルサンプと吸排気チャンバとの間に圧力差が生じ、特に吸排気されたガスがオイルサンプに向かって漏れる原因となる可能性がある。時には腐食性があり、またはシリカベースの研磨粒子および硬質粒子などの汚染粒子を伴う可能性があるこれらのガスは、その後オイルサンプに流入する。このガスまたは固体の汚染は、潤滑剤の特性の早期劣化を引き起こす可能性があり、あるいは転がり軸受の潤滑不良を引き起こす可能性がある。これにより、時間の経過とともに玉軸受が早期に摩耗し、さらには破損する可能性があり、真空ポンプの寿命が短くなる可能性がある。この現象は、オイルサンプを空にしたり充填したりすることの繰り返しによりガスの移動が促進され、これにより潤滑剤の汚染が促進されるような周期的な吸排気用途で加速される。
【0005】
したがって、本発明の課題は、先行技術の欠点を少なくとも部分的に解消する乾式真空ポンプ式の真空ポンプを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明の1つの課題は、乾式真空ポンプ式の真空ポンプであり、
- 少なくとも1つのオイルサンプと、
- 少なくとも1つの吸排気段と、
- オイルサンプに含まれる潤滑剤によって潤滑された軸受内で回転が誘導され、かつ真空ポンプの入口と出口との間の吸排気段においてロータの回転を駆動するようになっている2つの回転シャフトと、
- 各シャフト通路においてオイルサンプと吸排気段との間に介在する少なくとも1つの潤滑剤シールデバイスと、を備えており、
真空ポンプは、パージガスをオイルサンプに注入するようになっている、オイルサンプにパージガスを注入するための少なくとも1つの注入デバイスと、オイルサンプ内のガスを吸排気するようになっている、オイルサンプからガスを吸排気するための少なくとも1つの吸排気デバイスと、をさらに備え、パージガスをオイルサンプに注入し、同時にオイルサンプから吸排気するようになっていることを特徴とする。
【0007】
パージガスの注入により、一方ではオイルサンプ内に存在する吸排気されるガスを希釈することができる。これにより、反応性ガス種の分圧が減少し、他方では、オイルサンプ内の圧力が上昇して、オイルサンプへの流入漏れの原因となる圧力差を小さくすることができる。オイルサンプからのガスの吸排気により、一方では、吸排気チャンバへの過大な漏れが生じる可能性がある吸排気チャンバに対する過大な過圧を回避することが可能になり、他方では、オイルサンプ内に含まれるガスを循環させることができる。ガスがオイルサンプ内に滞留するのを防止することにより、ガスが潤滑剤と反応して潤滑剤を劣化させる可能性が低減される。完全な流体密封手段を設けることができないため、本発明は、吸排気されるガスが潤滑剤を汚染する前に、希釈し、同時に除去することを提案する。オイルサンプの希釈と吸排気との組み合わせにより、オイルサンプの潤滑剤の汚染のリスクを低減することが可能になる。
【0008】
真空ポンプはさらに、以下に説明する特徴のうちの1つ以上を、単独でまたは組み合わせて備えることができる。
【0009】
パージガスをオイルサンプに注入するための注入デバイスは、例えばオイルサンプのガス空間に開口する注入ラインを備える。オイルサンプに含まれる潤滑剤が液体の場合、注入ラインは、液体潤滑剤の液面より上で開口する。
【0010】
注入されるパージガスは、例えば窒素である。
【0011】
パージガスをオイルサンプに注入するための注入デバイスは、注入ラインに直列に取り付けられる絞りおよび逆止弁を備えることができる。逆止弁は、オイルサンプと注入ラインとの間の圧力差が逆止弁の定格圧力閾値を超えるときに、オイルサンプ内のガスが注入ラインに流入するのを防ぐことを可能にする。絞り(校正されたオリフィスまたはノズルとも呼ばれる)により、パージガスの最大注入量を固定することができる。したがって、絞りおよび逆止弁により、注入ガスの流れの機械的制御が可能となり、実装が簡単で安価である。
【0012】
パージガスの最大注入量は、例えば2slm(約3.6Pam3/s)である。
【0013】
オイルサンプからガスを吸排気するための吸排気デバイスは、オイルサンプのガス空間と連通する吸排気ラインを備えることができる。オイルサンプ内に含まれる潤滑剤が液体である場合、吸排気ラインの入口は、液体潤滑剤の液面よりも上に位置する。
【0014】
オイルサンプからガスを吸排気するための吸排気デバイスは、吸排気ラインに直列に取り付けられる逆止弁および絞りを備える。逆止弁は、吸排気段と吸排気ラインとの間の圧力差が逆止弁の定格圧力閾値を超えるときに、低真空ポンプによって吸排気されたガスが吸排気ラインに入るのを防ぐことを可能にする。絞り(校正されたオリフィスまたはノズルとも呼ばれる)により、最大吸排気量を決定することができる。したがって、絞りおよび逆止弁は、吸排気されたガスの流れを機械的に制御し、実装が簡単で安価である。
【0015】
オイルサンプからガスを吸排気するための吸排気デバイスは、吸排気ラインへの潤滑剤の侵入を制限するために吸排気ラインの入口で、オイルサンプ内に配置されたデフレクタを備えることができる。
【0016】
注入ラインへの潤滑剤の流入を抑えるために、注入ラインの出口のオイルサンプ内に同じタイプのデフレクタを配置することができる。
【0017】
オイルサンプからガスを吸排気するための吸排気デバイスは、吸排気ライン内、例えば逆止弁または絞りの上流に配置されたオイルセパレータを備えることができる。オイルセパレータは、ガスからオイルを分離することができるため、オイルサンプからオイルが汲み上げられないようになる。オイルセパレータは、例えば焼結ステンレス鋼フィルタなどのフィルタを備える。
【0018】
最大吸排気量は、例えば10slm(約18Pam3/s)である。
【0019】
真空ポンプは、2つのオイルサンプを備えることができ、1つのオイルサンプが少なくとも1つの吸排気段の各側に配置される。真空ポンプは、各オイルサンプに対して、パージガスをオイルサンプに注入するための注入デバイスと、オイルサンプからガスを吸排気するための吸排気デバイスとを備えることができ、オイルサンプからガスを吸排気するための吸排気デバイス間に流体連通が設けられていない。
【0020】
吸排気ラインは、オイルサンプのガス空間を、例えば、吸排気段の入口および/または最後の吸排気段を除く吸排気段の出口で、例えば、1つの吸排気段の出口と次の吸排気段の入口とを接続する多段真空ポンプの段間通路で、多段真空ポンプの吸排気段と連通させることができる。このようにして、オイルサンプからガスを吸排気するための吸排気デバイスは、追加の吸排気デバイスを必要としない。したがって、実装が簡単で、安価で、自律的かつコンパクトである。
【0021】
パージガスをオイルサンプに注入するための注入デバイスおよびオイルサンプからガスを吸排気するための吸排気デバイスは、例えば、オイルサンプ内の圧力を大気圧より低い圧力、例えば50,000Pa(500mbar)より低い圧力、例えば、5,000Pa(50mbar)と40,000Pa(400mbar)との間の圧力に制御するようになっている。
【0022】
本発明の別の課題は、複数の吸排気段を含む低真空ポンプを備える吸排気ユニットであって、この吸排気ユニットは、低真空ポンプと直列かつその上流に配置された上述のルーツ真空ポンプを備え、オイルサンプからガスを吸排気するための吸排気デバイスは、真空ポンプのオイルサンプのガス空間を、例えば、吸排気段の入口において、および/または最後の吸排気段を除く吸排気段の出口において、例えば、ある吸排気段の出口と次の吸排気段の入口を接続する低真空ポンプの段間通路において、低真空ポンプの吸排気段の1つと連通させる吸排気ラインを備える。次に、低真空ポンプの異なる吸排気量を有するいくつかの吸排気段の中から選択する。選択された吸排気段により、特に、真空ポンプの性能への影響と吸排気チャンバへのオイル漏れのリスクとを抑えるために、吸排気チャンバに対するオイルサンプ内の必要な過圧レベルに応じて、ガスを吸排気するための吸排気デバイスを最適化することができる。したがって、オイルサンプからガスを吸排気するための吸排気デバイスは、選択された吸排気段に応じて「調整可能」である。
【0023】
吸排気ラインは、例えば、オイルサンプのガス空間を低真空ポンプの第2吸排気段の出口と連通させる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】吸排気ユニットの一実施例を示す模式図である。
【
図2】
図1に示す吸排気ユニットの真空ポンプの拡大詳細図である。
【
図3】一定量のガスを周期的に吸排気する用途における時間(単位:hr)に対する圧力(単位:mbar)の曲線を示すグラフであり、- 真空ポンプの吸気側または上流側の圧力(曲線A)、- 曲線Aに応じて変化する従来技術の第1真空ポンプのオイルサンプの入口圧力(曲線B)、- 曲線Aに応じて変化する従来技術の第2真空ポンプのオイルサンプの入口圧力(曲線C)、および- 曲線Aに応じて変化する本発明による真空ポンプのオイルサンプの入口圧力(曲線D)。
【発明を実施するための形態】
【0025】
さらなる利点および特徴は、本発明の明細書を読み、添付の図面を検討することによって明らかになるであろう。
【0026】
これらの図において、同一の要素には同一の符号が付されている。図は、理解しやすくするために簡略化されている。
【0027】
以下の実施形態は一例である。本明細書では1つ以上の実施形態に言及しているが、各言及が同じ実施形態に言及していること、または特徴が1つの単一実施形態にのみ適用されることを必ずしも意味するものではない。様々な実施形態の単純な特徴を組み合わせて、または入れ替えて、他の実施形態を提供することもできる。
【0028】
「上流」とは、吸排気されるガスの循環方向に対して他の構成要素の前に位置する構成要素を意味する。対照的に、「下流」とは、吸排気されるガスの循環方向に対して次々に配置される構成要素を意味する。
【0029】
本発明は、任意のタイプの乾式真空ポンプ、すなわち、1段または少なくとも2段の吸排気段、例えば1~10段の吸排気段を備える真空ポンプに適用される。この真空ポンプは、複数の吸排気段を備え、吸排気されたガスを大気圧で排気するようになっている低真空ポンプ100、またはルーツポンプまたはルーツコンプレッサと呼ばれる乾式真空ポンプ1とすることができる。乾式真空ポンプ1は、1~3の吸排気段を有し、使用中、低真空ポンプの上流に直列に接続され、その排気圧力は低真空ポンプによって得られるものである。
【0030】
図1は、ルーツ真空ポンプ1と低真空ポンプ100とを備える吸排気ユニット101の一例を示す。ルーツ真空ポンプ1の入口2は、遮断弁を介して吸排気される閉鎖チャンバに接続されるようになっている。ルーツ真空ポンプ1の出口3は、出口5が大気圧以上となる低真空ポンプ100の入口4に接続されている。
【0031】
ルーツ真空ポンプ1または低真空ポンプ100は、少なくとも1つのオイルサンプ6と、少なくとも1つの吸排気段T1~T5を備える吸排気チャンバと、2つの回転シャフト7(
図1の吸排気ユニット101の2つの真空ポンプのそれぞれに1つだけが示されている)と、オイルサンプ6と回転シャフト7が通過する各通路の吸排気段との間に介在する潤滑剤をシールするための少なくとも1つのシールデバイス8と、を備える。
【0032】
例示的な実施例では、ルーツ真空ポンプ1は、単一の吸排気段T1を備える。
【0033】
低真空ポンプ100は、入口4と出口5との間に直列に取り付けられたいくつかの、例えば5段の吸排気段T1~T5を備える。シールデバイス8の隣の吸排気段T1、T5は、この例では、最初と最後の吸排気段である。
【0034】
各吸排気段T1~T5は、それぞれの入口および出口を備える。真空ポンプ1、100がいくつかの吸排気段を備える場合、連続する吸排気段は、前の吸排気段の出口を次の段の入口に接続するそれぞれの段間通路によって次々に直列に接続される。吸排気段T1~T5の吸排気量は、真空ポンプの入口と出口の間の位置に応じて減少するか等しくなり、最小圧力の第1吸排気段T1によって生成される流量が最大の吸排気量に対応する。
【0035】
回転シャフト7は、吸排気段T1~T5内のロータ9の回転を駆動して、真空ポンプ1、100の入口から出口まで吸排気されるガスを運ぶ。低真空ポンプ100のロータ9は、低真空ポンプ100の少なくとも1つのモータM1によって回転駆動される。ルーツ真空ポンプ1のロータ9は、ルーツ真空ポンプ1の少なくとも1つのモータM2によって回転駆動される。
【0036】
ロータ9の回転中、入口から吸引されたガスは、ロータ9とステータによって形成された空間に閉じ込められ、ロータ9によって次のステージに向かって運ばれる。低真空ポンプ100のロータ9は、例えば、「ルーツ」式(数字の8またはインゲンマメの形の断面)または「クロー」式のような同一の輪郭のローブを有しているか、またはスクリュー式であるか、または他の同様の容積移送式真空ポンプの原理に従うものである。
【0037】
ロータ9を支える回転シャフト7は、オイルサンプ6内に含まれる潤滑剤によって潤滑される軸受により回転が誘導される。オイルまたはグリースなどの潤滑剤は、特に玉軸受10およびシャフトを同期させる役割を果たすギア11を潤滑することを可能にする。
【0038】
真空ポンプ1、100は、例えば、少なくとも1つの吸排気段の両側に1つずつ配置された2つのオイルサンプ6、および、オイルサンプ6と吸排気段の両側においてシャフトが通過する各通路における吸排気段との間に介在する潤滑剤をシールするためのシールデバイス8を備える。
【0039】
シールデバイス8は、例えば「動的」シール、すなわち、セグメントシール、ラビリンスシールまたはバッフルまたはガスの「カーテン」などの非摩擦シール、またはリップシールなどの摩擦環状シール、またはそのような実施形態の組み合わせなどの少なくとも1つの環状シールを備えることができる。この環状シールは、回転シャフト7の周囲に非常に低いコンダクタンスを形成し、それによってオイルサンプ6から乾式吸排気段への、また、その逆への潤滑流体の通過を大幅に抑え、同時にシャフト7の回転を可能にする。シールデバイス8はまた、回転シャフト7と一体となって回転するように回転シャフト7に取り付けられたディスクの全体形状をしたデフレクタディスクを備えることもできる。デフレクタディスクの高速回転によって生じる遠心力により、環状シールへのオイルの侵入が抑えられる。ステータの下部には各回転シャフトのデフレクタディスクに対向して配置され、吐き出された潤滑剤をオイルサンプ6に向けて戻すためのオイル回収通路を形成することができる。
【0040】
真空ポンプ1、100は、パージガスをオイルサンプ6に注入するようになっている、オイルサンプにパージガスを注入するための少なくとも1つの注入デバイス12、およびパージガスをオイルサンプ6に注入し、同時にオイルサンプ6からガスを吸排気するように、オイルサンプからガスを吸排気するための少なくとも1つの吸排気デバイス13をさらに備える。
【0041】
パージガスの注入により、一方ではオイルサンプ6内に存在する吸排気されるガスを希釈することができる。これにより、反応性ガス種の分圧が減少し、他方では、オイルサンプ6内の圧力が上昇して、オイルサンプ6への流入漏れの原因となる圧力差が小さくなる。オイルサンプ6からのガスの吸排気により、一方では、吸排気チャンバへの過大な漏れが生じる可能性がある吸排気チャンバに対する過大な過圧を回避することが可能になり、他方では、オイルサンプ6内に含まれるガスを循環させることができる。ガスがオイルサンプ6内に滞留するのを防止することにより、ガスが潤滑剤と反応して潤滑剤を劣化させる可能性が低減される。完全な流体密封手段を設けることは困難なため、本発明は、吸排気されるガスが潤滑剤を汚染する前に、希釈し、同時に除去することを提案する。オイルサンプ6の希釈と吸排気との組み合わせにより、オイルサンプ6の潤滑剤の汚染のリスクを低減することが可能になる。
【0042】
パージガスをオイルサンプ6に注入するための注入デバイス12は、例えば、オイルサンプ6のガス空間20に開口する注入ライン14を備える。オイルサンプ6内に含まれる潤滑剤が液体である場合、注入ライン14は、液体潤滑剤の液面(
図1の点線)より上で開口する。注入ライン14の入口は、例えば流量計(または「質量流量コントローラ」)を介してパージガス源に接続される。注入されるパージガスは、例えば窒素である。
【0043】
パージガスをオイルサンプ6に注入するための注入デバイス12は、注入ライン14に直列に取り付けられた絞り15および逆止弁16を備えることができる。
【0044】
逆止弁16は、オイルサンプ6と注入ライン14との間の圧力差が逆止弁16の定格圧力閾値を超えるときに、オイルサンプ6内のガスが注入ライン14に流入するのを防ぐことを可能にする。絞り15により、パージガスの最大注入量を設定することができる。したがって、絞り15および逆止弁16により、注入ガスの流れの機械的制御が可能となり、実装が簡単で安価である。
【0045】
パージガスの最大注入量は、例えば2slm(約3.6Pam3/s)である。
【0046】
オイルサンプからガスを吸排気するための吸排気デバイス13は、例えば、オイルサンプ6のガス空間20と連通する吸排気ライン17を備える。オイルサンプ6内に含まれる潤滑剤が液体である場合、吸排気ラインの入口は、液体潤滑剤の液面よりも上に位置する。
【0047】
吸排気ライン17は、オイルサンプ6のガス空間20を、例えば、吸排気段の入口および/または最後の吸排気段を除く吸排気段の出口で、例えば、1つの吸排気段の出口と次の吸排気段の入口とを接続する多段真空ポンプの段間通路で、多段真空ポンプの吸排気段と連通させる。このようにして、オイルサンプからガスを吸排気するための吸排気デバイス13は、追加の吸排気デバイスを必要としない。したがって、実装が簡単で、安価で、自律的かつコンパクトである。
【0048】
ルーツ真空ポンプ1の場合、吸排気ライン17は、例えば、ルーツ真空ポンプ1のオイルサンプ6のガス空間20を、ルーツ真空ポンプ1と直列で、かつその下流に位置する低真空ポンプ100の最後の吸排気段T5を除く吸排気段T1~T4のうちの1つの出口と連通させる(
図1)。次に、低真空ポンプ100の異なる吸排気量を有するいくつかの吸排気段の中から選択する。選択された吸排気段により、ガスを吸排気するための吸排気デバイス13を、オイルサンプ6内の望まれる過圧のレベルに応じて最適化することができる。隣接する吸排気段T1に関しては、特に真空ポンプの性能への影響と、吸排気チャンバへのオイル漏れのリスクを抑える観点が考慮される。したがって、オイルサンプからガスを吸排気するための吸排気デバイス13は、選択された吸排気段に応じて「調整可能」である。吸排気ライン17は、例えば、オイルサンプ6のガス空間20を低真空ポンプ100の第2吸排気段T2の出口と連通させる。
【0049】
パージガスをオイルサンプに注入するための注入デバイス12およびオイルサンプからガスを吸排気するための吸排気デバイス13は、例えば、オイルサンプ6内の圧力を大気圧より低い圧力、例えば50,000Pa(500mbar)より低い圧力、例えば5,000Pa(50mbar)と40,000Pa(400mbar)との間の圧力に制御するようになっている。
【0050】
オイルサンプからガスを吸排気するための吸排気デバイス13は、吸排気ライン17に直列に取り付けられた逆止弁16および絞り15を備えることができる。
【0051】
逆止弁16は、吸排気段T2と吸排気ライン17との間の圧力差が逆止弁16の定格圧力閾値を超えるときに、低真空ポンプ100によって吸排気されたガスが吸排気ライン17に入るのを防ぐことを可能にする。絞り15(校正されたオリフィスまたはノズルとしても知られる)により、最大吸排気量を決定することができる。したがって、絞り15および逆止弁16は、吸排気されたガスの流れを機械的に制御し、実装が簡単で安価である。
【0052】
最大吸排気量は、例えば10slm(約18Pam3/s)である。
【0053】
オイルサンプからガスを吸排気するための吸排気デバイス13は、吸排気ライン17、例えば逆止弁16または絞り15の上流に配置されたオイルセパレータ18を備えることもできる。オイルセパレータ18は、ガスからオイルを分離することができるため、オイルがオイルサンプ6から汲み上げられず、したがってオイルサンプ6でオイルが空になることはない。オイルセパレータ18は、例えば焼結ステンレス鋼フィルタなどのフィルタを備える。
【0054】
このようにして設けられたオイルサンプからガスを吸排気するための吸排気デバイス13の別の利点は、吸排気段T2の過圧の結果として逆止弁16が自動的に閉じることである。これは、吸排気ユニット1によって吸排気された密閉チャンバ内の吸排気のサイクルによってもたらされるため、一般に周期的であり、これにより、ガスがフィルタを吹き抜けてオイルを排出し、フィルタの自己洗浄が可能になる。こうして、フィルタが周期的に自動再生される。
【0055】
オイルサンプからガスを吸排気するための吸排気デバイス13は、吸排気ライン17への潤滑剤の流入を抑えるために、吸排気ライン17の入口においてオイルサンプ6のガス空間20内に配置されたデフレクタ19をさらに備えることができる。
【0056】
例示的な一実施形態は、
図2のオイルサンプのステータの断面図で見ることができる。この図は、焼結ステンレス鋼フィルタで形成されたオイルセパレータ18が吸排気ライン17に配置されていることを示している。デフレクタ19は、この同じライン17の入口の前に配置されている。ここでデフレクタ19は、ほぼL字形のプレートを備える。デフレクタ19のL字の垂直な第1部分は、潤滑剤が吸排気ライン17に正面から入るのを防ぐスクリーンを形成するように、吸排気ライン17の入口からある程度の距離を置いて、吸排気ライン17の入口に面して配置されている。ただし、ガスがこのスクリーンとオイルサンプ6のステータの壁との間を通過することでガスが吸排気ライン17に流入することは可能である。デフレクタ19のL字の第2部分は、ポーチのようなライン17の入口のためのシェルターを形成するようにステータの壁から突出している。
【0057】
注入ライン14への潤滑剤の流入を抑えるために、注入ライン14の出口のオイルサンプ6内に同じタイプのデフレクタを配置することができる。
【0058】
本発明の利点は、太陽光発電パネルに必要な吸排気用途の分野で、大気圧で大量のガスを周期的に吸排気する用途向けの異なる真空ポンプのオイルサンプ内の圧力曲線を示す
図3のグラフを参照することにより、よりよく理解することができる。
【0059】
曲線Aは、吸排気ユニットのルーツ真空ポンプ1の吸気側または上流側の圧力変化の一実施例を示す。大気圧1,000mbar(100,000Pa)と5mbar(500Pa)の間で、圧力に大きな周期的な変動を見ることができる。
【0060】
曲線Bは、従来技術の吸排気ユニットの第1ルーツ真空ポンプのオイルサンプ内の圧力の変化を示す。パージガスの注入もオイルサンプからのガスの吸排気も行われず、吸気口またはその上流の圧力が曲線Aに応じて変化する。吸排気ユニットの上流の遮断弁が開くたびに、吸排気されたガスが真空ポンプに突然流入し、オイルサンプ内の圧力が上昇することがわかる。圧力は、100mbar(10,000Pa)まで急速に上昇し、その後数十分かけて約5mbar(500Pa)まで低下し、このサイクルが40分ごとに繰り返される。オイルサンプ内の周期的な圧力上昇は、吸排気チャンバからシーリングデバイスを通ってオイルサンプへ吸排気ガスが流入することによって引き起こされる。これにより、オイルサンプの潤滑剤が汚染されるリスクが高くなる。
【0061】
曲線Cは、従来技術の吸排気ユニットの第2真空ポンプのオイルサンプの圧力を示しており、吸気口またはその上流の圧力が曲線Aに応じて変化する。パージガスは、同時に吸排気されることなく、大気圧に対して過圧下でオイルサンプに注入される。この過圧は、2bar(200,000Pa)程度である。この場合、真空ポンプは、オイルサンプの「吸排気」の影響を受けにくくなる。さらに、ガスの漏れは、オイルサンプから吸排気チャンバに向けられるため、吸排気チャンバから発生する吸排気ガスまたは粒子による潤滑剤の汚染のリスクを抑えることができる。しかし、この過圧により、オイルサンプから吸排気チャンバに向かってパージガスが大幅に漏れる。これは、潤滑剤が吸排気チャンバに混入するリスクがあり、軸受の潤滑に影響を与え、吸排気チャンバが汚染される。
【0062】
曲線Dは、本発明によるルーツ真空ポンプ1のオイルサンプ6内の圧力の変化を示しており、吸気口またはその上流の圧力が曲線Aに応じて変化する。パージガスをオイルサンプに注入するための注入デバイス12、およびオイルサンプからガスを吸排気するための吸排気デバイス13により、オイルサンプ6内の圧力を大気圧より低く、この例では5,000Pa(50mbar)と40,000Pa (400mbar)との間に制御することができる。オイルサンプ6内の圧力変動が大幅に減衰されていることがわかる。それらはおよそ100mbar(10,000Pa)付近で変化し、オイルサンプ6が吸排気チャンバに対してわずかな過圧に置かれる。これにより、吸排気チャンバへのオイル漏れのリスクを抑えることができ、吸排気性能への影響を抑えることができる。
【0063】
図1には、2つのオイルサンプ6のうちの1つのみについて、オイルサンプにパージガスを注入するための注入デバイス12と、オイルサンプからガスを吸排気するための吸排気デバイス13とが示されているけれども、本発明は、ルーツ真空ポンプ1の2つのオイルサンプ6のそれぞれに適用することができる。さらに、ルーツ真空ポンプ1のオイルサンプ6からガスを吸排気するための2つの吸排気デバイス13間に流体連通がないようにすることで、相互に汚染するリスクを回避することができる。
【0064】
同様に、本発明は、低真空ポンプ100がルーツ真空ポンプ1の下流に接続されているかどうかに関係なく、低真空ポンプ100のオイルサンプ6の一方または両方に関して適用することができる。低真空ポンプ100のオイルサンプからガスを吸排気するための2つの吸排気デバイスの間、またはルーツ真空ポンプ1および低真空ポンプ100のオイルサンプからガスを吸排気するための吸排気デバイスの間で、流体連通がないようにすることもできる
【符号の説明】
【0065】
1 乾式真空ポンプ(ルーツ真空ポンプ)
2 入口(ルーツ真空ポンプ)
3 出口(ルーツ真空ポンプ)
4 入口(低真空ポンプ)
5 出口(低真空ポンプ)
6 オイルサンプ
7 回転シャフト
8 シールデバイス
9 ロータ
10 玉軸受
11 ギア
12 注入デバイス
13 吸排気デバイス
14 注入ライン
15 絞り
16 逆止弁
17 吸排気ライン
18 オイルセパレータ
19 デフレクタ
20 ガス空間
100 低真空ポンプ
101 吸排気ユニット
T1-T5 吸排気段
M1 モータ(低真空ポンプ)
M2 モータ(ルーツ真空ポンプ)
【国際調査報告】