(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-15
(54)【発明の名称】仙腸関節を治療するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/44 20060101AFI20240207BHJP
A61F 2/46 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
A61F2/44
A61F2/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544701
(86)(22)【出願日】2022-01-24
(85)【翻訳文提出日】2023-09-12
(86)【国際出願番号】 US2022013561
(87)【国際公開番号】W WO2022159837
(87)【国際公開日】2022-07-28
(32)【優先日】2021-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521436740
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ サウス フロリダ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF SOUTH FLORIDA
【住所又は居所原語表記】3802 Spectrum Boulevard,Suite 100,Tampa,Florida 33612(US)
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】フリーマン,トーマス ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ホグハーグ,トーマス ジー.
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA10
4C097BB01
4C097BB04
4C097CC01
4C097CC06
4C097DD15
4C097FF05
4C097MM10
4C097SC10
(57)【要約】
仙腸関節及び/または仙腸関節の近傍領域を治療する方法は、仙骨の仙骨壁と腸骨の腸骨壁との間で陥凹を伸延させる及び/または安定させることと、切断装置を使用して腸骨壁の表面を切断することと、その陥凹内に第一平坦壁部及び第一平坦壁部に対向する第二平坦壁部を有するインプラントを、インプラントの第一平坦壁部が仙骨壁の非切断面に接触し、第二平坦壁部が腸骨壁の切断面に接するように位置決めすることとを含む。インプラントは、楔形状、二重楔形状、または直方体形状として形成されることができる。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仙腸関節及び/または前記仙腸関節の近傍領域を治療する方法であって、
仙骨の仙骨壁と腸骨の腸骨壁との間の陥凹を伸延させることと、
切断装置を使用して前記腸骨壁の表面を切断することと、
第一平坦壁部及び前記第一平坦壁部に対向する第二平坦壁部を有するインプラントを前記伸延した陥凹内に位置決めすることであって、前記インプラントの前記第一平坦壁部が前記仙骨壁の非切断面と接触し、前記第二平坦壁部が前記腸骨壁の前記切断面に接触するように、前記位置決めすることと、を含む、前記方法。
【請求項2】
前記第一平坦壁部及び前記第二平坦壁部のそれぞれは少なくとも1つの第一側縁部及び第二側縁部によって画定され、前記第一平坦壁部の前記第一側縁部は前記第二平坦壁部の前記第一側縁部から第一分離距離だけ離隔され、前記第一平坦壁部の前記第二側縁部は前記第二平坦壁部の前記第二側縁部から第二分離距離だけ離隔され、前記第一分離距離は前記第二分離距離よりも小さい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記インプラントは、前記第一平坦壁部と前記第二平坦壁部との間にそれぞれ延在する第三平坦壁部及び第四平坦壁部を含み、前記第三平坦壁部は、前記第一平坦壁部の第三側縁部と前記第二平坦壁部の第三側縁部との間に延在し、前記第四平坦壁部は、前記第一平坦壁部の第四側縁部と前記第二平坦壁部の第四側縁部との間に延在し、前記第三平坦壁部は、前記第四平坦壁部の長さよりも短い長さを有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記仙骨壁と前記腸骨壁との間の前記陥凹内にガイドチューブを挿入することと、
前記ガイドチューブの2つの遠位タングを使用して前記陥凹内に前記ガイドチューブを位置決めすることであって、前記2つの遠位タングは前記陥凹内に嵌め込むように非対称に形成される、前記位置決めすることと、
ピンを使用して、前記ガイドチューブを前記陥凹内で、かつ前記仙骨壁の少なくとも一部と平行にアンカー固定することと、
前記インプラントを前記ガイドチューブに通して前記陥凹に挿入することと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
後方アプローチによって前記ガイドチューブを前記陥凹に挿入するための外科的アクセスポイントを作成することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記インプラントは、直方体、矩形直方体、楔形状直方体、及び二重楔形状直方体のうちの1つのような形状である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記インプラントの少なくとも1つの表面は、湾曲した表面である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記切断装置を使用して前記腸骨壁の表面を切断することは、
前記切断装置を前記ガイドチューブに通して挿入することと、
前記切断装置を用いて前記腸骨の一部を貫通することと、
前記切断装置を用いて前記腸骨壁の一部を除去して前記腸骨内にキャビティを形成することと、
をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記仙骨壁は前記切断装置によって貫通されない、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記インプラントのホールを通して前記腸骨壁にねじを挿入することをさらに含み、前記ねじは腰仙椎構造体の基部として機能するように構成される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つのねじを、前記インプラントのねじ穴に通して前記腸骨壁及び前記仙骨壁の少なくとも1つに挿入することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
仙腸関節及び/または前記仙腸関節の近傍領域を治療するためのインプラントであって、
第一平坦壁部、及び
前記第一平坦壁部に対向する第二平坦壁部、
を含み、
前記第一平坦壁部及び前記第二平坦壁部のそれぞれは、少なくとも第一側縁部及び第二側縁部によって画定され、
前記第一平坦壁部の前記第一側縁部は前記第二平坦壁部の前記第一側縁部から第一分離距離だけ離隔され、前記第一平坦壁部の前記第二側縁部は前記第二平坦壁部の前記第二側縁部から第二分離距離だけ離隔され、
前記第一分離距離は前記第二分離距離よりも小さく、
前記インプラントは二重楔形状直方体である、前記インプラント。
【請求項13】
前記第一平坦壁部と前記第二平坦壁部との間に延在する第一側壁部及び第二側壁部をさらに含み、前記第二側壁部は前記第一側壁部に対向し、前記第二側壁部は湾曲した側壁部である、請求項12に記載のインプラント。
【請求項14】
前記第一平坦壁部及び前記第二平坦壁部の少なくとも1つは、前記第一平坦壁部及び前記第二平坦壁部の前記少なくとも1つに垂直なアンカーを有する複数の表面特徴を含む、請求項12に記載のインプラント。
【請求項15】
前記インプラントは、前記第一平坦壁部から前記第二平坦壁部まで延在するキャビティを画定し、前記キャビティは、骨癒合材料を受容するように構成される、請求項12に記載のインプラント。
【請求項16】
患者の腸骨壁と仙骨壁との間の陥凹にインプラントを挿入するためのガイドチューブであって、
第一端部と、
前記第一端部の反対側の第二端部と、
前記第一端部から前記第二端部まで延在する壁部であって、前記壁部は前記第一端部と前記第二端部との間にチャンネルを形成し、前記壁部は前記第一端部から前記第二端部まで延在する前記壁部の外面上に形成された第一平坦面及び第二平坦面を有し、前記第一平坦面及び前記第二平坦面は互いに対向して位置決めされる、前記壁部と、
前記第二端部から延出する第一タング及び第二タングであって、前記壁部の平坦な延出部として形成され、前記壁部の前記第一平坦面から遠位方向で、かつ前記第一平坦面に平行に延出する第一縁部、遠位先端部、及び前記遠位先端部から前記壁部の前記第二平坦面にテーパ状になる第二縁部をそれぞれが有する、前記第一タング及び前記第二タングと、
を含む、前記ガイドチューブ。
【請求項17】
前記第一平坦面は、前記患者の前記陥凹内の仙骨壁と接触して位置決めされるように構成される、請求項16に記載のガイドチューブ。
【請求項18】
前記第一タング及び前記第二タングは、前記第一縁部の長さ、前記遠位先端部の幅、または前記第一タングの前記第二縁部の形状のうちの少なくとも1つが前記第二タングと異なるように非対称である、請求項17に記載のガイドチューブ。
【請求項19】
インプラントを使用した仙腸関節及び/または前記仙腸関節の近傍領域を治療するためのキットであって、
複数のインプラントであって、各インプラントは二重楔形状の直方体形状を有する、前記複数のインプラントと、
少なくとも1つのガイドチューブであって、
第一端部、
前記第一端部の反対側の第二端部、
前記第一端部から前記第二端部まで延在する壁部であって、前記壁部は前記第一端部と前記第二端部との間にチャンネルを形成し、前記壁部は前記第一端部から前記第二端部まで延在する前記壁部の外面上に形成された第一平坦面及び第二平坦面を有し、前記第一平坦面及び前記第二平坦面は互いに対向して位置決めされる、前記壁部、ならびに
前記第二端部から延出する第一タング及び第二タングであって、前記壁部の平坦な延出部として形成され、前記壁部の前記第一平坦面から遠位方向で、かつ前記第一平坦面に平行に延出する第一縁部、遠位先端部、及び前記遠位先端部から前記壁部の前記第二平坦面にテーパ状になる第二縁部をそれぞれが有する、前記第一タング及び前記第二タング、
を含む、前記少なくとも1つのガイドチューブと、
を含む、前記キット。
【請求項20】
矩形形状の切断装置、L字形状の切断装置、ボックスカッタ、ボックスチゼル、キュレット、伸延器、ラスプ、挿入装置、除去装置、ねじ、ハンマー、及びピンのうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項19に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年1月25日に出願された米国仮出願第63/141,094号の、米国特許法第119条(e)に基づく利益を主張し、その開示は、すべての目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書は一般に、骨を治療するための技術、例えば、骨を外科的に安定させる、及び/または癒合させるための技術に関する。
【背景技術】
【0003】
仙腸関節(SIJ)の疼痛は、多くの患者が苦しんでいる一般的な苦痛である。仙腸関節は、骨盤領域の仙骨の骨(仙骨)及び腸骨の骨(腸骨)またはその近くに位置している。SIJの疼痛を引き起こす欠損、疾患及び状況は数多くあり、疼痛の根底にある理由を診断するのは難しい場合がある。
【0004】
SIJの疼痛を治療する従来の方法には、仙骨と腸骨との間に、仙骨の皮質及び腸骨の皮質内に延出する円筒形のインプラントを外科的に埋め込むことが含まれる。仙骨、特に外側仙骨(仙骨翼)は「柔らかい」骨であると考えられており、骨密度が低い。最終的に、仙骨及び腸骨を癒合させるために使用されるインプラントの多くは、仙骨壁内へのインプラントの沈下を引き起こし、その結果インプラントが破損し、追加の手術が必要になる。
【0005】
さらに、従来の装置は、通常、側方アプローチによって埋め込まれる。SIJへの側方アプローチでは、複数の筋群をうまく切り抜け、SI関節及び骨盤内の神経根への損傷を回避する必要がある。側方アプローチによる埋め込みは複雑であるため、周囲の組織及び脈管構造が損傷することがある。例えば、上殿動脈外側、または骨盤内の腸骨動脈及び静脈の損傷もまた、側方アプローチによる装置の埋め込み中に発生することがある。
【0006】
その結果、SIJの疼痛にさらに安全で効果的な治療が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
後方アプローチによる装置の外科的埋め込みは、側方アプローチに関連する問題の多くを防ぐことができる。後方アプローチは、SIJの伸延及び追加または代替の安定、ならびにインプラント装置の埋め込みのために、背側陥凹(仙骨と腸骨との間に形成されるSIJ領域の陥凹)内への軌道を提供することで、仙骨頂部上の神経、仙骨孔の神経を含む、その領域の筋肉、神経及び静脈の損傷、または神経、動脈、静脈及び臓器の腹腔内損傷のリスクが低くなる。
【0008】
本明細書に記載される様々な実施形態では、インプラントは、仙骨壁及び腸骨壁に接触するのに十分に大きい表面積を含む壁部を有することにより、仙骨壁内へのインプラントの沈下(癒合不全及び装置の有効性の喪失の一般的な原因)を引き起こす可能性が低くなり、さらに骨癒合を促進する可能性がある。いくつかの実施形態では、楔形状または二重楔形状を有するインプラントは、インプラントのより大きい表面積に沿った荷重分担を最適化するために、患者の背側陥凹の二重楔形状に近似することができる。荷重分担のためにインプラント表面のより大きい表面積が仙骨壁に当接すると、小さい表面積を有するインプラント表面が柔らかい仙骨壁に隣接して押しつけられるときに起こり得る、インプラントの仙骨内への沈下を防止することができる。円形または楕円形のインプラントがインプラントの軸に沿った細い線で骨と接触すると、仙骨壁内へのインプラントの沈下が起こることがある。
【0009】
このインプラントは、インプラントが柔らかい仙骨壁内に沈下するもう1つの原因である仙骨皮質の破壊も回避する。装置を埋め込むために仙骨皮質の一部を除去する(例えば、侵害する)代わりに、インプラントを適応させるために腸骨壁の一部の切断及び/または除去を含む埋め込み方法を利用することができる。これにより、いかなる材料も除去する必要がなくなることができる、または少なくとも仙骨皮質を侵害する必要性、もしくは埋め込み中に外側仙骨のいずれかを除去する必要性が軽減されることができる。次に、インプラント装置は、平坦な表面が腸骨壁の切断部分に面するように位置決めされることができ、対向する平坦な表面がインタクトな仙骨皮質の表面と平行に位置決めされることができる。背側陥凹の患者の解剖学的形態が非常に可変であるため、場合によっては、複数のサイズのインプラントを製造し、陥凹の特定のサイズ及び形状に応じてインプラントに利用可能にする必要がある。インプラントを適応させるために腸骨壁に切り込み、腸骨から材料を除去することにより、解剖学的形態の違いにもかかわらず、インプラントを多くの患者の陥凹内に位置決めすることができる。さらに、仙骨ではなくより硬い腸骨に切り込むことにより、仙骨皮質が維持され、インプラントが仙骨内に沈下する尤度が最小になる。
【0010】
インプラントを陥凹内に位置決めするために、インプラントの平坦壁部が仙骨壁及び腸骨壁と概してアライメントされる(例えば、平行になる)ようにインプラントが位置決めされることを確認するために、インプラント手技中にガイドチューブを任意選択で使用することができる。さらに特に、インプラントの仙骨側は、その平坦壁部が外側仙骨壁と概してアライメントされ、平行になるように位置決めされる。ガイドチューブは、ガイドチューブチャンネルが仙骨壁にほぼ平行であることを確保するために、仙骨とアライメントされることができる1つまたは複数の平坦な外面を有することができる。またガイドチューブは、遠位端部から延出する非対称のタングを含むこともできる。タングは、1つのタングが特定の脊椎位置(例えば、S2レベル)の陥凹内に位置決めされ、もう1つのタングよりも、勾配が急、狭い、または薄い形状を有し、このもう1つのタングが異なる脊椎位置(例えば、S1レベル)に位置決めされるように、背側陥凹内にガイドチューブを位置決めすることを支援するサイズに作られることができる。ガイドチューブは、インプラントの形状で仙骨壁に切り込むことができるように、切断装置(例えば、リーマ)を腸骨壁とアライメントするのに有利に役立ち得る。次に、インプラントの平坦壁部が仙骨に対してほぼ接線方向になり、仙骨または仙骨皮質に埋め込まれないように、インプラントがガイドチューブを通して位置決めされることができる。またインプラントは、インプラントの表面を通して、その中へ、及び/またはその上で骨が成長する、または成長が促進されるように、インプラントの荷重分担側に癒合適合性表面を任意選択で有することもできる。またインプラントは、インプラントの後退または移動を防止するために、そして代替にまたはさらに、章動軸を中心にしたインプラントの運動を防止するために、様々な表面特徴を任意選択で有することもできる。またインプラントは、ねじを固定するためのねじガイドなどの内部固定機構を任意選択で含むこともできる。いくつかの実施形態では、インプラントの内部固定機構は、装置の引き抜きもしくは装置の移動、または仙腸関節の章動を防止するのに役立ち得る。いくつかの実施形態では、インプラントは、腰仙椎構造体など、体内の他の埋め込まれた装置のための二次固定装置として機能することができる。
【0011】
埋め込み方法にはインプラントを適応させるために腸骨壁に切り込むことが含まれることができ、これにより、1つだけ、または少なくともより少ない数のインプラントのサイズ及び形状が広範囲の患者の陥凹の解剖学的形態に適合することが可能になる。いくつかの実施形態では、外科用インプラントキットは、2つまたは3つの異なるサイズまたは形状に作られたインプラント、ガイドチューブ、及び1つもしくは複数の伸延器、ラスプ、キュレット、ボックスもしくはL字形状のカッタ、リーマ、ハンマー、安定化ピン、またはそれらの組み合わせなど、外科的埋め込みに通常使用される任意の他の器具を含み得る。
【0012】
一態様では、仙腸関節及び/または仙腸関節の近傍領域を治療する方法は、仙骨の仙骨壁と腸骨の腸骨壁との間で陥凹を伸延させることと、切断装置を使用して腸骨壁の表面を切断することと、その伸延した陥凹内に第一平坦壁部及び第一平坦壁部に対向する第二平坦壁部を有するインプラントを、インプラントの第一平坦壁部が仙骨壁の非切断面に接触し、第二平坦壁部が腸骨壁の切断面に接するように位置決めすることとを含む。
【0013】
いくつかの実施態様では、インプラントの第一及び第二平坦壁部のそれぞれは、少なくとも1つの第一側縁部及び第二側縁部によって画定され、第一平坦壁部の第一側縁部は第二平坦壁部の第一側縁部から第一分離距離だけ離隔され、第一平坦壁部の第二側縁部は第二平坦壁部の第二側縁部から第二分離距離だけ離隔され、第一分離距離は第二分離距離よりも小さい。いくつかの実施態様では、またインプラントは、第一平坦壁部と第二平坦壁部との間にそれぞれ延在する第三平坦壁部及び第四平坦壁部を含み、第三平坦壁部は、第一平坦壁部の第三側縁部と第二平坦壁部の第三側縁部との間に延在し、第四平坦壁部は、第一平坦壁部の第四側縁部と第二平坦壁部の第四側縁部との間に延在し、第三平坦壁部は、第四平坦壁部の長さよりも短い長さを有する。
【0014】
いくつかの実施態様では、また方法は、仙骨壁と腸骨壁との間の陥凹内にガイドチューブを挿入することと、ガイドチューブの2つの遠位タングを使用して陥凹内にガイドチューブを位置決めすることであって、2つの遠位タングは陥凹内に嵌め込むように非対称に形成される、位置決めすることと、ピンを使用して、ガイドチューブを陥凹内で、かつ仙骨壁の少なくとも一部と平行にアンカー固定することと、インプラントをガイドチューブに通して陥凹に挿入することとを含む。いくつかの実施態様では、また方法は、後方アプローチによってガイドチューブを陥凹に挿入するための外科的アクセスポイントを作成することを含む。いくつかの実施態様では、インプラントは、直方体、矩形直方体、楔形状直方体、及び二重楔形状直方体のうちの1つのような形状である。
【0015】
いくつかの実施態様では、切断装置を使用して腸骨壁の表面を切断するステップは、切断装置をガイドチューブに通して挿入することと、切断装置を用いて腸骨の一部を貫通することと、切断装置を用いて腸骨壁の一部を除去して腸骨内にキャビティを形成することとを含む。仙骨壁は切断装置によって貫通されない。
【0016】
いくつかの実施態様では、また方法は、インプラントのホールを通して腸骨壁にねじを挿入することを含み、ねじは腰仙椎構造体の基部として機能するように構成される。いくつかの実施態様では、また方法は、少なくとも1つのねじを、インプラントのねじ穴に通して腸骨壁及び仙骨壁の少なくとも1つに挿入することを含む。
【0017】
別の態様では、仙腸関節及び/または仙腸関節の近傍領域を治療するためのインプラントは、第一平坦壁部及び第一平坦壁部に対向する第二平坦壁部を含み、第一平坦壁部及び第二平坦壁部のそれぞれは、少なくとも第一側縁部及び第二側縁部によって画定される。第一平坦壁部の第一側縁部は第二平坦壁部の第一側縁部から第一分離距離だけ離隔され、第一平坦壁部の第二側縁部は第二平坦壁部の第二側縁部から第二分離距離だけ離隔される。第一分離距離は第二分離距離よりも小さく、インプラントは二重楔形状直方体である。
【0018】
いくつかの実施態様では、インプラントの第一側壁部及び第二側壁部は第一平坦壁部と第二平坦壁部との間に延在し、第二側壁部は第一側壁部に対向し、第二側壁部は湾曲した側壁部である。いくつかの実施態様では、第一平坦壁部及び第二平坦壁部の少なくとも1つは、第一平坦壁部及び第二平坦壁部の少なくとも1つに垂直なアンカーを有する複数の表面特徴を含む。いくつかの実施態様では、インプラントは、第一平坦壁部から第二平坦壁部まで延在するキャビティを画定し、キャビティは、骨癒合材料を受容するように設計される。
【0019】
別の態様では、患者の腸骨壁と仙骨壁との間の陥凹にインプラントを挿入するためのガイドチューブは、第一端部と、第一端部の反対側の第二端部と、第一端部から第二端部まで延在する壁部と、第一タング及び第二タングとを含む。この壁部は、第一端部と第二端部との間にチャンネルを形成し、第一端部から第二端部までそれぞれが延在する、壁部の外面上に形成された第一平坦面及び第二平坦面を有し、第一平坦面及び第二平坦面は互いに対向して位置決めされる。第一タング及び第二タングは、ガイドチューブの第二端部から延出し、壁部の平坦な延出部として形成され、壁部の第一平坦面から遠位方向で、かつ第一平坦面に平行に延出する第一縁部、遠位先端部、及び遠位先端部から壁部の第二平坦面にテーパ状になる第二縁部をそれぞれが有する。
【0020】
いくつかの実施態様では、ガイドチューブの第一平坦面は、患者の陥凹内の仙骨壁と接触して位置決めされる形状及びサイズに作られる。いくつかの実施態様では、第一タング及び第二タングは、非対称であり、第一縁部の長さ、遠位先端部の幅、または第一タングの第二縁部の形状のうちの少なくとも1つが第二タングとは異なる。
【0021】
別の態様では、インプラントを使用した仙腸関節及び/または仙腸関節の近傍領域を治療するためのキットは、複数のインプラントであって、各インプラントは二重楔形状の直方体形状を有する、複数のインプラント、及び少なくとも1つのガイドチューブを含む。ガイドチューブは、第一端部、第一端部の反対側の第二端部、第一端部から第二端部まで延在する壁部、ならびに第二端部から延出する第一タング及び第二タングを含む。ガイドチューブの壁部は、第一端部と第二端部との間にチャンネルを形成する。ガイドチューブは、第一端部から第二端部まで延在する壁部の外面上に形成された第一平坦面及び第二平坦面を有し、第一平坦面及び第二平坦面は互いに対向して位置決めされる。第一タング及び第二タングは、壁部の平坦な延出部として形成され、それぞれが壁部の第一平坦面から遠位方向で、かつ第一平坦面に平行に延出する第一縁部、遠位先端部、及び遠位先端部から壁部の第二平坦面にテーパ状になる第二縁部を有する。
【0022】
いくつかの実施態様では、またキットは、矩形形状の切断装置、L字形状の切断装置、ボックスカッタ、ボックスチゼル、キュレット、伸延器、ラスプ、挿入装置、除去装置、ねじ、ハンマー、及びピンのうちの少なくとも1つを含む。
【0023】
1つ以上の実施態様の詳細は、添付の図面及び下の説明において述べられる。他の特徴及び利点は、説明及び図面、ならびに請求項から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1A】例示的なインプラント装置の斜視図を示す。
【
図2A】例示的なインプラント装置の斜視図を示す。
【
図2C】
図2Aのインプラント装置の前部平坦面の正面図を示す。
【
図4A】S1レベルの背側陥凹内に位置決めされた例示的なインプラント装置を示す。
【
図4B】S2レベルの背側陥凹内に位置決めされた例示的なインプラント装置を示す。
【
図5】骨盤領域の周囲の解剖学的形態に対する例示的なインプラント装置を示す。
【
図6A】仙骨壁と腸骨壁との間に位置決めされた例示的なインプラント装置の斜視図を示す。
【
図6B】仙骨壁と腸骨壁との間に位置決めされた例示的なインプラント装置の別の斜視図を示す。
【
図6C】腸骨壁に対して位置決めされた例示的なインプラント装置の別の斜視図を示す。
【
図8】
図7Aのガイドチューブの例示的なタングの側面図を示す。
【
図9】陥凹内に位置決めされたガイドチューブ及び切断装置の斜視図を示す。
【
図10】陥凹内に位置決めされたガイドチューブ及びインプラント装置の斜視図を示す。
【
図11】インプラント装置を陥凹に埋め込むための外科手技のステップのフロー図を示す。
【
図12】インプラント装置を陥凹に埋め込むための外科手技のフローチャートを示す。
【
図13】内部固定機構を含む例示的なインプラント装置を示す。
【
図14】骨癒合を促進するためのキャビティを含む例示的なインプラント装置を示す。
【
図15】体内の腰仙椎構造体の基部として機能する2つの例示的なインプラント装置を示す。
【
図16】仙腸関節または仙腸関節の後ろの背側陥凹を安定させて癒合させるための方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
仙腸関節及び/または仙腸関節の近傍領域を治療するためのシステム及び方法の様々な実施態様について以下に説明する。SIJの疼痛、欠損、疾患、または劣化の治療に使用できる様々な整形外科用埋め込み型装置(本明細書では「インプラント」または「装置」と呼ぶ)について以下に説明する。インプラントは、背側陥凹または仙腸関節を伸延させるように機能することができ、追加または代替として、インプラントが移動するのを防ぐのに十分な力を与えることによって、その領域を安定させることができる。またSIJの症状の有無にかかわらず、長い腰仙椎構造体をインプラントで安定させるための実施態様またはシステム及び方法についても以下に説明する。インプラントは、インプラントが仙骨及び腸骨によって形成された陥凹内に位置しているときに仙骨壁、場合によっては腸骨壁と接触する大きい表面積を提供するために平坦な表面を含むことができる。この文書では、「背側陥凹」は、仙骨壁及び腸骨壁によって境を接している、SIJに近接する陥凹であると定義される。本明細書に記載のインプラントは、背側陥凹、SIJ領域の欠損、SIJに近接した陥凹、または身体の骨の間に形成された別の適切な陥凹に埋め込まれることができる。以下に説明されるインプラントはヒトの患者のための医療用インプラントの文脈で説明されているが、インプラントは様々な動物の処置にも使用できる。インプラント、インプラントシステム、インプラントキット、及びインプラントを患者の解剖学的形態に外科的に導入する方法の他の態様については、図面、以下の説明、及び特許請求の範囲を参照して説明する。
【0026】
図1Aは、例示的なインプラント装置100の斜視図を示す。
【0027】
図1B~1Gは、
図1Aのインプラント装置100の様々な追加の図を示す。特に、
図1Bはインプラントの右側面図を示し、
図1Cはインプラントの上面図を示し、
図1Dはインプラントの正面図を示し、
図1Eはインプラントの背面図を示し、
図1Fはインプラントの左側面図を示し、
図1Gはインプラントの底面図を示す。
【0028】
図1Aは、前縁面102、後縁面108、第一平坦側面104、第一平坦側面104に対向して形成された第二平坦側面112、前面106、及び後面110を有するインプラント100を示す。インプラント100の6つの表面はそれぞれ4つの周縁部を有する。前縁面102(
図1Dの正面図に示す)は、第一縁部111、第二縁部116、第三縁部113、及び第四縁部115を含む。後縁面108(
図1Eの背面図に示す)は、第五縁部122、第六縁部124、第七縁部123、及び第八縁部125を含む。前縁面102は、第一縁部111を前面106と共有し(
図1Cの上面図に示す)、第三縁部113を後面110と共有する(
図1Gの底面図に示す)。また前縁面102は、第二縁部116を右側平坦側面104(
図1Bの右側面図に示す)と共有し、第四縁部115を左側平坦側面112(
図1Fの左側面図に示す)と共有する。後縁面108は、第五縁部122を前面106と共有し、第六縁部124を左側平坦側面112と共有し、第七縁部123を後面110と共有し、第八縁部125を右側平坦側面104と共有する。前面106は、第九縁部126で右側平坦側面104に当接し、第十縁部127で左側平坦側面112に当接する。後面110は、第十一縁部128で右側平坦側面104に当接し、第十二縁部129で左側平坦側面112に当接する。
【0029】
前縁面102は、第二縁部116及び第四縁部115がY軸に対して角度をなすように、第一縁部111の長さが第三縁部113の長さよりも長く形成される。縁部が合わさる前縁面102の角部のそれぞれは、縁部が接する角度を有する。前縁面102は、第一縁部111と第二縁部116との交差部に第一角度119、第二縁部116と第三縁部113との交差部に第二角度118、第三縁部113と第四縁部115との交差部に第三角度121、及び第四縁部120と第一縁部111との交差部に第四縁部120を含む。対になる角度は、第一角度119と第四角度120との間、及び第二角度118と第三角度121との間に形成される。示されているように、対になる角度は、これらの角度が等しいがy軸を中心に反対方向であるように、y軸に対して角度をなすことができる。一部の実施態様では、対になる角度は、y軸に対して異なる角度を有することができる。いくつかの実施態様では、対になる角度のうちの1つの角度は、y軸に対して0度の角度を有する、すなわち、縁部はy軸に対して平行である。
【0030】
前縁部と同様に、縁部が合わさる後縁面108の角部のそれぞれは、縁部が接する角度を有する。後縁面108は、第一角度130、第二角度133、第三角度132、及び第四角度131を含む。前縁部102と同様に、対になる角度は、これらの角度が等しいがy軸を中心に反対方向であるように、y軸に対して角度をなすことができる。一部の実施態様では、対になる角度は、y軸に対して異なる角度を有することができる。いくつかの実施態様では、対になる角度のうちの1つの角度は、y軸に対して0度の角度を有する、すなわち、縁部はy軸に対して平行である。いくつかの実施態様では、後縁面108の角度は前縁面102の角度と同じであることができる。
【0031】
前縁面102の側縁部は、後縁面108の対応する側縁部から、前縁面の第二側縁部が後縁面の対応する側縁部から離隔される距離よりも小さい距離だけ離隔されることができる。前縁面102、後縁面108、第一平坦側面104、第二平坦側面112、前面106、及び後面110の各表面は、その表面がインプラント100の対向する表面によって形成された平坦面に対して角度をなすように形成されることができる。例えば、いくつかの実施態様では、前面106は、特定の方向では、同じ方向の後面110よりも小さい。
【0032】
前縁面102及び後縁面108の角度をなす縁部は、インプラント100に楔形状を与え、前面106と共有される第一縁部111(及び前面106と共有される第五縁部122)の長さが後面110と共有される第二縁部113(及び後面110と共有される第七縁部123)よりも長いため、前縁面102及び後縁面108は第一側部では反対側の側部よりも広い。さらに、後縁面108の第一縁部122の長さが前縁面102の第一縁部111よりも長いため(そして後縁面108の第七縁部123の長さが前縁面102の第三縁部113よりも長いため)、インプラント100も前縁面102から後縁面108まで楔形状になる。第一平坦側面104、第二平坦側面112、前面106、及び後面110の各表面は、それに応じて楔形状になる。インプラント100は、二重楔形状を有する。
【0033】
3つの表面が合わさるインプラント100の各角部(例えば角部134)は、丸みのある、ベベルを付けられる、面取りされる、または直角にエッジを付けられることができる。インプラント100の各縁部(例えば、縁部135)は、丸みのある、べベルを付けられる、面取りされる、または直角にエッジを付けられることができる。
【0034】
インプラント100は、二重楔形状のインプラントとして示されているが、いくつかの実施態様では、インプラント100は、異なる形状を有することができる。いくつかの実施態様では、インプラント100は、直方体形状、矩形直方体形状、楔形状直方体、及び二重楔形状直方体を有することができ、直角、好ましい角度、または対称角を含む。
【0035】
図1Aのインプラントの二重楔形状は、患者の背側陥凹に、背側陥凹が広くなるまたは狭くなるが嵌め込むことができるように、異なる寸法で形成されることができる。例えば、
図2A~C2に示されるインプラント装置は、幅の狭い二重楔形状を有する。
図2Aは、背側陥凹の幅が狭い患者に使用するためのインプラント装置の斜視図を示す。
図2Bは
図2Aのインプラント装置の正面図を示し、
図2Cはインプラントの上面図を示す。
【0036】
インプラント200は、前縁面202、後縁面208、第一平坦側面204、第一平坦側面204に対向して形成された第二平坦側面212、前面206、及び後面210を含む。インプラント200の6つの表面はそれぞれ4つの周縁部を有する。前縁面202(
図2Cに示す)は、第一縁部211、第二縁部216、第三縁部213、及び第四縁部215を含む。第一縁部211を前縁面202と共有する前面206はまた、前縁面202と共有する第五縁部211、第六縁部227、第七縁部222、及び第八縁部226を含む4つの周縁部を有する。
図1A~1Gのインプラント100と同様に、インプラント200は二重楔形状として形成される。インプラント200は、互いに対する縁部の寸法及び角度がインプラント100とは異なる。例えば、第一及び第二平坦側面212及び204は、前縁面202から後縁面208の方向に非常に長い。第三縁部213は、インプラント100の対応する縁部よりも短い。これらの寸法の変更により、背側領域の解剖学的形態が異なる患者にインプラントを使用することが可能になる。
【0037】
インプラントは、患者の背側陥凹の解剖学的形態の差異に適応させるために、様々な形状及びサイズで製造されることができる。インプラントは、
図1A及び
図2Aに示されるように、各平坦側面が中心軸から前縁インプラント表面の中心を通過して対向するインプラント表面(
図1A及び
図2Aでは背面であるが、インプラントを背側陥凹に挿入する方向で後方から見た場合は上面)まで等しい角度をなす、二重楔形状であることができる。いくつかの実施態様では、平坦側面は中心軸から対称的な角度をなさない。1つの平坦側面は、中心軸からより大きい角度で形成され、「好ましい角度」を形成することができる。いずれの場合も、中心軸に対して平坦側面によって形成される2つの角度は、合計で10度、12度、14度、15度、17度、18度、20度、またはその他の任意の適切な角度の合計角度になることができる。例えば、対称的な角度をなす構成では、合計角度が14度であるように、平坦側面のそれぞれが中心軸から7度の角度をなすことができる。非対称な角度をなす構成では、例えば、第一平坦面は中心軸から10度であることができ、第二平坦面は中心軸から4度の角度をなすことができる。直角の角度をなす構成では、第一平坦面は中心軸に対して角度なし(角度0度)で平行になることができ、第二平坦面は中心軸から14度の角度をなす。いくつかの実施態様では、インプラントは一重楔形状を有することができる。いくつかの実施態様では、第一平坦面は、角度をなすのではなく、第二平坦面に対して平行である。
【0038】
図1A及び
図2Aのインプラントがインプラントの平坦前縁面を有するが、いくつかの実施態様では、インプラントの前縁面は、丸みのある、または弾丸状であることができる。
図3は、丸みのある前縁面302を有するインプラント300の斜視図を示す。
【0039】
インプラント300は、丸みのある表面339として形成された前縁面302、後縁面308、第一平坦側面304、第一平坦側面304に対向して形成された第二平坦側面312、前面306、及び後面310を含む。インプラント300はまた、縁部335、交差部336、第一半径方向337、及び第二半径方向338を含む。
【0040】
前縁面302の丸みのある表面339は、第一平坦側面304から第二平坦側面312まで丸みがある。丸みのある表面339は、第一平坦側面304から第二平坦側面312へと滑らかに移行することができ、または第一平坦側面304及び第二平坦側面312に対して、ある角度として形成される交差部336を有することができる(図示せず)。
【0041】
前面305及び後面310は、前縁面302の丸みのある表面339の結果として弾丸形状である。前面306の丸みのある部分は、前面306と前縁面302との間の縁部の曲線を描く第一半径方向337を有する。後面310の丸みのある部分は、後面310と前縁面302との間の縁部の曲線を描く第二半径方向338を有する。第一半径方向337は、楔形状の前縁面302と一貫して、第二半径方向338より小さくてもよい。
【0042】
第一平坦側面304及び第二平坦側面312は、インプラントが背側陥凹内に位置決めされる場合、仙骨、場合によっては腸骨壁の一部に当接するように設計される。インプラント300は、前縁面302の丸みのある表面339を備えて示されているが、いくつかの実施態様では、丸みのある表面339は、第一平坦側面304から第二平坦側面312までだけでなく、前面306から後面310側へも丸みのあるように弾丸状になる。丸みのあるまたは弾丸状になる前縁面302は、解剖学的構造体に引っかかることなく、背側陥凹内へのインプラントの位置決めを可能にするのに役立つ。インプラントが挿入中に解剖学的構造に衝突する場合、その結果、インプラントがその位置から回転し得、柔らかい仙骨壁に衝突する可能性がある。上述のように、インプラント前縁面の周囲で面取りされる、角度をなす、または丸みのあることができる縁部と同様に、丸みのあるまたは弾丸状になるインプラント前縁面により、この発生を防止することができる。前縁面302は丸みのある表面339を有するように示されているが、いくつかの実施態様では、インプラント300の他の表面は、湾曲している、丸みがある、肩部がある、または不規則であることができる。
【0043】
図1A~G、
図2A~C、及び
図3に示される楔形状または二重楔形状は、ほとんどの背側陥凹の楔形状に近似する。背側陥凹は背側/腹側方向に楔形状に作られ、陥凹の背側または後部で広くなり、腹側または前部に向かい狭くなる。また背側陥凹は、頭側/尾側方向から楔形状であり、腸骨棘の頂部のS1レベルで広くなり、S2レベルに向かい狭くなる。二重楔形状は背側陥凹の両方の楔に近似することができるが、上述のように、インプラントの他の構成及び幾何学的形状も使用することができる。例えば、インプラントは、直方体形状、矩形直方体形状、楔形状直方体、及び二重楔形状直方体、または任意の他の適切な形状を有することができる。いくつかの実施態様では、腸骨壁に切り込むことによって、二重楔形状のインプラント、または別の形状のインプラントを背側陥凹に適応させることができる。
【0044】
図4AはS1レベルで背側陥凹455内に位置決めされたインプラント400の断面図を示し、
図4BはS2レベルでインプラント400の断面図を示す。インプラント400は、既に伸延した背側陥凹455内に、陥凹を伸延状態に維持するために挿入される。インプラント400の存在により、ガイドチューブまたは伸延器を利用して背側陥凹及び/または仙腸関節のリガメントタキシスを維持した後、陥凹が開いた状態に保持される。いくつかの実施態様では、陥凹を埋め込み前に伸延させず、インプラントを陥凹に埋め込み、陥凹を安定させ、この装置の移動を防ぐのに十分な力を与える。いくつかの実施態様では、陥凹を埋め込み前に伸延させず、インプラント自体が陥凹を伸延させる。いくつかの実施態様では、インプラント400は、陥凹を伸延させることと、陥凹を安定させることとの両方に役立つ。
【0045】
上述のように、背側陥凹及び周囲領域の解剖学的形態は患者間でばらつきがある。さらに、疾患、年齢、または欠損による変性変化によっても、背側陥凹の解剖学的形態が変わる可能性がある。例えば、腸骨硬化症、軟骨下嚢胞、または軟骨減少により、背側陥凹及び周囲の解剖学的構造の形状が変わる可能性がある。しかしながら、一般に、背側陥凹は、背側が広く腹側が狭いうえ、頭側が広く尾側が狭い、二重楔形状の陥凹として形成されている。
図4A及び4Bはそれぞれ背側陥凹455の断面図を示す。背側陥凹455は、仙骨450と腸骨452との間の断面がV字形状に形成されている。仙骨壁451及び腸骨壁453は、背側陥凹455の両側の境界を形成する。背側陥凹455は、通常、25~28mmの間の深さ(背側端から腹側端まで)、及び2cmの幅(外側から内側まで)であるが、一部の患者はこの範囲外となる場合もある。背側陥凹455は、陥凹の頭側から尾側まで、4mmから50mmの間の長さを有することができ、通常は約30mmの長さである。
【0046】
図4Aでは、S1レベル(より尾側)での背側陥凹455の断面図を示しており、インプラント400は、仙骨壁451と腸骨壁453との間に位置決めされている。インプラント400の第一平坦面440は、仙骨壁451にほぼ平行であり、当接している。インプラント400は、腸骨壁453の切断部分456に隣接し、部分的にその中にある。インプラント400の第二平坦面441は腸骨壁453とほぼ平行であるが、必ずしもそうである必要はない。腸骨壁453の切断部分456は、第一平坦面440が仙骨壁451と接触している状態でインプラント400が位置決めされる場合にインプラント400を適応させるように切断される。腹側/背側方向内に延在する切断部分456の高さ457a及び457bだけでなく、腸骨壁453内への切断部分456の深さは、頭側/尾側方向の背側陥凹455内では、S2レベルでの背側陥凹の狭い端でインプラント400をより多く適応させるように可変である。例えば、S1レベルでの切断部分456は、S2レベルでの高さ457bに比べて、より小さい高さ457aを有する。
図4BではS2レベルで腸骨壁453と仙骨壁451との間に形成された背側陥凹455が狭くなるほど、切断部分457bが長くなり、
図4Aに示されるS1レベルよりも腸骨壁453内のより遠くまで延在することから恩恵が受けられる。
【0047】
インプラント400は、本明細書に記載される任意のインプラントであることができる。いくつかの実施態様では、インプラント400は、背側陥凹455の形状に近似するように構築される。いくつかの実施形態では、インプラント400は、例えば3Dプリンタによって、特定の患者の背側陥凹455の形状を有するように製造される。他の実施態様では、インプラント400は、特定の患者の背側陥凹455に最もよく適合するように、様々なサイズのインプラントのセットから選択される。インプラントは第一及び第二平坦側面440及び441を有することができ、これらは、仙骨壁451(場合によっては腸骨壁452の一部)と接触して荷重をより大きい面積に分散させるための大きい表面積を提供するために平坦である。いくつかの実施態様では、平坦側面は、実質的に平らまたは平坦であるが、インプラント400の運動を防止するためのスパイクまたは隆起部(図示せず)などの表面特徴をさらに含んでもよい。インプラントは、前縁部よりも後縁部で幅が広くなることができ、
図3に示されるように、前縁部は、解剖学的特徴に引っかかることなくインプラントの配置を容易にするために丸くなることができる。前縁部は、患者がうつぶせになる場合、尻に向かい背側陥凹455内に位置決めされる。後縁部は前縁部より幅が広く、形状が丸くなってもよい、または矩形になってもよい。
【0048】
両刃形状は陥凹に近似しているが、それでも腸骨壁453の一部を切断するまたはチゼルで切断することによってインプラント400を適応させる必要がある場合がある(以下でさらに説明する)。腸骨壁453に切り込み、インプラント400を適応させることにより、単一サイズのインプラントを様々な患者の解剖学的形態に利用することが可能になる。腸骨壁453は、柔らかい仙骨壁よりもはるかに硬い骨であり、仙骨450よりもインプラントが腸骨壁453内に沈下する可能性が低い。腸骨壁453の切断領域457内にインプラント400を適応させることにより、サイズまたは形状の異なる少数のインプラント400のみを含む、より単純な手術キットを準備することが可能になる。インプラント400の全部または一部が切断領域457内にある場合、インプラント400の第二平坦壁部441は腸骨壁453と平行であっても、平行でなくてもよい。インプラント400の第二平坦壁部441の全部か一部かにかかわらず背側陥凹455の患者の解剖学的形態に依存し得る。インプラントは、患者の背側陥凹の撮像または蛍光透視に基づいて少数の中から選択されることができ、背側陥凹に対するインプラントのサイズと形状との間の差異には、腸骨壁453に切り込むことによって適応することができる。腸骨壁453に切り込むことによって、仙骨壁451が保存されることができ、埋め込み中に切断されない。いくつかの実施形態では、仙骨壁451はインプラント400によって貫通されない。腸骨壁453の一部は、装置の埋め込みに適応させるために除去されることができるが、切断及び/または除去される仙骨壁451はない(または無視できる程度である)。このようにして、インプラント400を適応させるために仙骨壁451に切り込む必要はなく、インプラントは仙骨壁の「非切断面」(または損なわれていない表面)に支えられている。このため、少数のインプラントサイズ(例えば、1~5つのインプラントサイズ)を利用して、幅広い患者集団を治療することができる。さらに、大きい平坦側面(第一平坦面440及び第二平坦面441)は、仙骨壁451及び腸骨壁453に接触する大きい表面積を有するため、インプラント400は、骨を突き抜いて骨内へのインプラント400の沈下を引き起こす可能性が低くなる。いくつかの実施態様では、仙骨壁451は骨の成長及び癒合を促進するために皮質を除去されているが、インプラント400が仙骨450の外面に隣接して位置するように、インプラント400が仙骨壁451の皮質に貫入することなく挿入されることが好ましい。
【0049】
インプラント400が背側陥凹455内に位置決めされると、腸骨452と仙骨450との間の骨癒合は、インプラント400内に形成されたキャビティまたはウィンドウを通して起こることができる。
図14は、前縁面1402及び後縁面1408にほぼ平行に、第一平坦面1404から第二平坦面1412まで延在するキャビティ1407を有するインプラント1400の一例を示すが、必ずしもそうである必要はない。
図14のインプラント1400は、インプラント1400を通して骨癒合を促進するためのキャビティ1407を含む。キャビティ1407は、骨の成長を促進する材料または物質で処理されてもよく、いくつかの実施態様では、患者またはドナーからの骨材料で充填されてもよい。いくつかの実施態様では、キャビティ1407は、キャビティを通した骨の成長を促進するように設計された3Dプリントされた蛇行状構造体で充填されることができる。いくつかの実施態様では、インプラント400(または
図14のインプラント1400)は、インプラント自体の上または中に骨が成長することを促進するために、平坦側面または他の表面への表面処理を含む。いくつかの実施態様では、平坦側面または他の表面は、インプラント内への骨の内殖を促進するために多孔質材料から形成される。いくつかの実施態様では、インプラントが背側陥凹455内に位置決めされた後、骨の成長及び癒合を促進するために、追加の骨成長材料または骨材料をインプラントとともに背側陥凹455に詰め込むことができる。
【0050】
図5及び
図6A~Cは、骨盤領域の周囲の解剖学的形態に対するインプラント500の配置を示す。
図5は、仙骨550、仙骨壁551、腸骨552、腸骨壁553、仙腸関節558(上記で定義したSIJ)、及び尾骨562に関連したインプラント500を示す。章動運動軸560もまた、章動運動方向564と同様に、
図5に示されている。インプラント500は、仙骨550と腸骨552との間に位置決めされる。上述のように、インプラント500は、仙骨壁551及び腸骨壁553と接触している。章動運動軸560は、患者の通常の運動中に腸骨552が回転して移動する点を表す。章動運動方向564は、通常の運動中の運動の範囲及び方向を示す。
【0051】
インプラント500が章動運動軸560の近くまたはそれに位置しているため、いくつかの実施態様では、インプラント500の表面特徴を使用して、患者の運動に起因するインプラントの移動を防止することができる。例えば、スパイクまたは隆起部は、インプラント500の移動を防止するために、仙骨壁551及び腸骨壁553の一方または両方と係合するように、インプラント500の平坦面上で、かつ平坦面に垂直に配置されることができる。いくつかの実施態様では、スパイクまたは隆起部は、インプラント500の章動、回転、または他の運動を防止するために、同心リング、星形パターンとして、または章動運動方向564に垂直なエッチングとして配置される。さらに、いくつかの実施態様では、スパイクまたは隆起部は、インプラントの引き抜き方向に対して垂直なアンカーを有するようにインプラントの平坦面上に位置決めされる。加えて、または代替として、いくつかの実施態様では、インプラント500は、インプラント500を適所にアンカー固定し、装置の引き抜きもしくは移動、または仙腸関節の章動を防ぐためのねじなど、内部固定機構を含む。
【0052】
図6A~6Cは、仙骨壁651と腸骨壁653との間に位置決めされたインプラント600の斜視図を示す。
図6A~6Cは、仙骨650、腸骨652、仙骨壁651、腸骨壁653、仙腸関節660、及び尾骨662を含む解剖学的形態の態様を示す。インプラント600は、解剖学的構造に対して異なる斜視図で示されている。いずれの場合も、インプラント600は、仙骨壁651及び腸骨壁653に当接する平坦面を含む。
【0053】
図6Aは、仙骨650と腸骨652との間の骨の成長及び癒合を促進するために、平坦面を通って延在するウィンドウ607を含むインプラント600を示す。
図6Bは、仙腸関節660に対する、仙骨650と腸骨652との間のインプラント600を示す。
図6Cは、挿入軸661を含むインプラント600を示し、挿入軸に沿ってインプラントが背側陥凹に挿入される。インプラント600の挿入は、側方アプローチではなく、後方アプローチによるものである。外科医は、患者の後側にアクセスポイントを開き、患者の筋膜の下に、腸骨の内側に沿って筋膜の下方向に延伸させる。後方アプローチは、従来の側方アプローチとは異なり、筋肉を介してアクセスしない。挿入軸661は患者の大腿骨頭に向かい延伸し、平坦面を有するインプラント600を、その平坦面が仙骨壁651、場合によっては腸骨壁653に当接するように配向する。
【0054】
図7Aは、例示的なガイドチューブ700の斜視図を示す。ガイドチューブは、近位端部774、遠位端部776、外面770、第一タング778、及び第二タング780を含む。外面770は第一平坦面771及び第二平坦面772を含み、外面770は、近位端部774から遠位端部776まで延在する内部チャンネル775を画定する。第一タング778及び第二タング780は、遠位端部776で外面770から延出する。
【0055】
第一タング778及び第二タング780は、タングが第一平坦面771及び第二平坦面772に対して垂直に配置されるように、第一平坦面771及び第二平坦面772の両側で遠位端部776から延出するほぼ直角をなす三角形のタブとして形成される。第一タング778及び第二タング780のそれぞれは、ガイドチューブ700の第二平坦面772に平行な第一縁部を有する。いくつかの実施態様では、第一縁部は、内部チャンネル775内の第二平坦面772の内面と平行であるように、第二平坦面772から離れて段差を付けられる。第一タング778及び第二タング780のそれぞれの第二縁部は、第一平坦面771に向かい傾斜している。第一タング778及び第二タング780の第一縁部は真っ直ぐであり、仙骨壁に平行に位置決めされるように第二平坦面772に対して平行である。第一タング778及び第二タング780の第二縁部の角度は、ガイドチューブ700を背側陥凹内に位置決めするのに役立つ。
【0056】
図7Bに示されるように、第一タング778は、ガイドチューブ700の外面770の遠位端部776から長さL1だけ延出する。第二タング780は、遠位端部776から長さL2だけ延出する。第一タング778及び第二タング780は、長さL3だけ離隔されている。L3は、第一平坦面771及び第二平坦面772に対して平行に測定される。いくつかの実施態様では、L1及びL2は同じ長さである。いくつかの実施態様では、L1はL2よりも大きい。いくつかの実施態様では、L1はL2よりも小さい。
【0057】
図7Cは、ガイドチューブ700の遠位端部776の斜視図を示す。第一タング778及び第二タング780は、第一平坦面771と第二平坦面772との間のガイドチューブの外面770の延出部である。第一タング778及び第二タング780は、丸みのある先端部を有する三角形のタブとして示されている。いくつかの実施態様では、第一タング778及び第二タング780は対称であり、すなわち、それらは形状及びサイズが同じである。いくつかの実施態様では、第一タング778及び第二タング780は非対称であり、少なくとも1つの寸法または態様が異なる。例えば、第一タング778及び第二タング780は、背側陥凹内でガイドチューブ700を優先的に配向するために、異なる形状及びサイズであることができる。第一タング778は、陥凹がより狭くてもよいS2レベルの背側陥凹内にガイドチューブ700を位置決めするために、第二タング780よりも狭くなる、薄くなる、またはより急な角度をなすことができる。第二タング780は、以下でさらに説明されるように、ガイドチューブ700をS1レベルに位置決めすることを支援することができる。
【0058】
図8は、
図7Aのガイドチューブの例示的なタングの側面図を示す。第一タング878は、第一タング878の基部881から先端部887まで延在する長さL1を有する。第一タング878は、底部での幅W1bと、長さL1の中点での幅W1aとを有する。先端部887は丸みがあり、曲率半径D1を有する。第二タング880は、第二タング880の基部882から先端部888まで延在する長さL2を有する。第二タング880は、底部での幅W2bと、長さL2の中点での幅W2aとを有する。先端部888は丸みがあり、曲率半径D2を有する。
【0059】
図8では、第一タング878は、第二タング780よりも形状が高く、狭い。特に、第一タング878は、第二タング880の長さL2よりも長い長さL1を有する。さらに、W1b及びW1aはそれぞれW2b及びW2aよりも小さい。最後に、D1はD2よりも小さい。より幅の狭い第一タング878は、より幅の狭いS2レベルで背側陥凹に嵌め込まれることができ、より幅の広い第二タング880は、S1レベルで背側陥凹に嵌め込まれる。第一タング878及び第二タング880は、ガイドチューブを配向するために陥凹に挿入されることができるが、これはタングが背側陥凹の特定の部分(S1及びS2レベル)にのみ嵌め込まれ、力が必要になる前のある点までしか挿入されることができないからである。第一タング878及び第二タング880はそれぞれ中心軸に対して対称である実質的に三角形のタブとして示されているが、第一タング878及び第二タング880は中心軸に対して対称である必要はない。いくつかの実施態様では、第一タング878及び第二タング880のそれぞれの前縁部は傾斜しており、後縁部は実質的に真っ直ぐである。第一タング878及び第二タング880の幾何学的形状は、ガイドチューブを解剖学的形態内に位置決めすることを支援し、平坦壁部を有するインプラントを、平坦壁部が仙骨に平行である状態で適切に位置決めすることを確保することができる。
【0060】
図9は、陥凹955内に位置決めされたガイドチューブ970及び切断装置990の斜視図を示す。ガイドチューブ993(例えば、
図7A~Cのガイドチューブ700)は、外面970、第一平坦面971、内部チャンネル975、遠位端部976、及び第二タング980を含む(
図9が輪郭でガイドチューブ993を示し、第一タングが第二タング980の背後に隠れて見えないことに留意されたい)。切断装置990は、細長いハンドル991と、細長いハンドル991の遠位端部にある切断面992とを含む。
【0061】
上述のように、ガイドチューブ993は、仙骨950と腸骨952との間に形成された陥凹955内に、陥凹では第一タング(図示せず)がS2レベルにあり第二タング980がS1レベルにあるように第一タング及び第二タング980が配向されている状態で、ガイドチューブ993を挿入することによって位置決めされる。第一タング及び第二タング980の形状は、ガイドチューブ993の平坦面971が仙骨壁951と平行であるようにガイドチューブ993を配向する。内部チャンネル975は、ガイドチューブ993の平坦面971が仙骨壁951に平行である場合、同様に仙骨壁951に平行である。仙骨壁951が様々な形状及び特徴を有することができるため、ガイドチューブ993の平坦面971は、仙骨壁951に対して、または背側陥凹内の仙骨壁951の一部に対して実質的に平行であることができ、その全体は仙骨壁951と完全に平行である必要はない。
【0062】
ガイドチューブ993が陥凹955内に位置決めされた後、切断装置990はガイドチューブ993の内部チャンネル975を通して挿入される。切断面992は、細長いハンドル991の遠位端部に結合され、切断装置990がガイドチューブ993を通して背側陥凹955内に位置決めされるときに切断面992の操作を可能にする。切断装置990は、第一タングと第二タング980との間の遠位端部976でガイドチューブの内部チャンネル975から延出する。
【0063】
切断装置990は、仙骨壁951に平行なガイドチューブ993を通して延在し、同様に仙骨壁951に平行である。切断装置990は、腸骨壁953の一部を貫通し、腸骨952の一部を切断して骨を除去するように操作されることができる。切断装置990によって腸骨壁953から除去される骨の部分(腸骨952の「切断部分」956)は、撮像法、蛍光透視法、または背側陥凹955内に位置決めされるインプラントのサイズ及び形状と比較した、患者の背側陥凹955の形状及びサイズに関するビジュアルキューに基づいて外科医によって決定される。切断装置990による腸骨壁953の一部の除去により、腸骨952内に切断部分956、またはキャビティが形成される。腸骨壁953の組織及び骨は、ガイドチューブ993が隣接し平行である、仙骨壁951からの距離に基づいて、意図されたインプラントのサイズ及び形状に適応させるように切り取られる。
図4に関して上記で説明されるように、陥凹955がS2レベルに向かい狭くなるにつれて、腸骨壁953から除去される骨の量は、陥凹955の長さに沿って変わる可能性があり、インプラントに適応させるためにより多くの材料を除去する必要がある場合がある。仙骨壁951は、キャビティの切断中に貫通されない(例えば、壁の一部が除去または「侵食」されない)が、場合によっては、骨癒合を促進するために仙骨壁951の皮質を除去することができる。
【0064】
切断面992は、腸骨壁953を切断するための箱形状のカッタとして示されている。いくつかの実施態様では、切断面992は、仙骨壁951へのいかなる損傷も防ぐために、仙骨壁951に面する切断用の表面のないL字形状のカッタである。いくつかの実施態様では、切断面992は、ラスプ、チゼル、キュレット、メス、ブレード、または任意の他の適切な形状及びサイズに作られたカッタである。いくつかの実施態様では、切断装置990はリーマである。
【0065】
いくつかの実施態様では、ガイドチューブ993を通して追加のツールを挿入し、操作することができる。例えば、腸骨の除去中のより良い可視化のために、ガイドチューブ993にライトを挿入して陥凹を照明することができる。腸骨壁953の部分を除去するために、切断面992に加えて、またはその代わりに、チゼルをガイドチューブに通して挿入することができる。
【0066】
腸骨壁953から骨の一部を除去した後(切断部分956を形成した後)、切断装置990を除去し、インプラント900を挿入することができる。ガイドチューブ993を背側陥凹内に挿入すると、インプラントが適所になるまで、伸延した背側陥凹が開いた状態に保持される。いくつかの実施態様では、ガイドチューブ993の挿入前に伸延器を利用して背側陥凹を開き、ガイドチューブ993を挿入して背側陥凹及び/または仙腸関節のリガメントタキシスを維持する。
【0067】
図10は、埋め込み前に陥凹1055内に位置決めされたガイドチューブ1093及びインプラント装置1000の斜視図を示す。ガイドチューブ1093(例えば、
図7A~
図7Cのガイドチューブ700、
図9のガイドチューブ993、または
図10のガイドチューブ1093)は、外面1070、内部チャンネル1075、遠位端部1076、及び第二タング1080(
図10が輪郭でガイドチューブ1093を示し、第一タングが第二タング1080の背後で隠れて見えないことに留意されたい)。インプラント1000(
図1A~Gのインプラント100、
図2A~Cのインプラント200、
図3のインプラント300、
図4A~Bのインプラント400、
図5のインプラント500、
図6A~Cのインプラント600など)は、前縁面1002、第一平坦側面1004、及び第二平坦側面1012を含む。インプラント1000は、挿入装置1094に結合される。
【0068】
インプラント1000は、ガイドチューブ1093を通して挿入される。ガイドチューブ1093(または外面1070上に形成された平坦面)が仙骨壁1051に平行であるため、インプラント1000は、仙骨壁1051に平行であるようにガイドチューブ1093の内部チャンネル1075を通して挿入される。いくつかの実施態様では、インプラント1000の第一平坦面1004は、ガイドチューブ1093の平坦な外側及び/または内側に面してガイドチューブ1093に挿入され、ガイドチューブ1093によって仙骨壁1051に平行であり、当接するようにガイドされる。
【0069】
インプラント1000は、ガイドチューブ1093によって仙骨壁1051とアライメントされ、仙骨1050と腸骨1052との間の背側陥凹1055に挿入される。インプラント1000は、第一タング(図示せず)と第二タング1080との間で、かつ腸骨壁1053の切断部分1056内に延在する。いくつかの実施態様では、インプラント1000は、伸延及び癒合を提供するために、背側陥凹1055内に位置決めされるように、例えばハンマーの使用によってさらに操作され得る。
【0070】
インプラント1000が仙骨1050と腸骨1052との間の適所にあると、インプラント1000を挿入装置1094から解放することができ、挿入装置1094をガイドチューブ1093に通して背側陥凹1055から除去することができる。インプラント1000は、ねじ機構、鈎に基づいた機構、または別の適切な機構によって挿入装置1094に結合される。挿入装置1094は、近位ハンドル(図示せず)を備えた細長いシャフトとして形成され得る。ハンドルは、インプラント1000が背側陥凹1055内に位置決めされた後にインプラント1000を解放するための機構を含んでもよく、またはハンドルを回してインプラント1000から挿入装置1094の細長いシャフトのねじを外すことができる。これらのような場合、インプラント1000は、挿入装置1094と結合するための少なくとも1つのボアホール、インデンテーション、または他の係合機構を含む。
【0071】
腸骨壁1053から組織を除去してインプラント1000を適応させることによって、仙骨壁1051の皮質が保存され、インプラント1000が柔らかい仙骨1050内に沈下するリスクが低減される。インプラント1000は、大きい平坦面が腸骨壁1053及び仙骨壁1051と接触しているので、背側陥凹1055の伸延(及び/または場合によっては安定)を維持することができる。従来の装置と比較して大きい表面積を有する大きい平坦面により、仙骨内へのインプラント1000の沈下及びインプラントの破損のリスクがさらに最小になる。
【0072】
図12は、インプラント装置を陥凹に埋め込むための外科手技1200のフローチャートを示す。この手技は、
図11ではインプラント装置を陥凹に埋め込むための外科手技のステップのフロー図として示され、
図11は
図12の手技と関連して参照される。
図11の(A)に示されるように、この手技は、伸延器1194または他のツールを使用して腸骨1152と仙骨1150との間の陥凹を伸延させることによってステップ1202で始まる。伸延器1194は、伸延器を操作するための細長いハンドル1197を含むことができる。伸延器1194は、仙骨1150と腸骨1152との間の陥凹を開く。いくつかの実施態様では、伸延は、ガイドチューブを陥凹に挿入することによって達成される。
図11の(B)に示されるように、ステップ1204では、この手技は、腸骨1152と仙骨1150との間の陥凹にガイドチューブ1193を挿入して、インプラント装置の埋め込みの軌道及び配向をガイドすることを含む。ガイドチューブ1193は、外科医に見えるビジュアルキュー及びガイドを使用して、撮像技術もしくは蛍光透視法を使用して、またはガイドチューブ1193を陥凹内に位置決めするガイドチューブ1193自体の特徴によって、陥凹内で配向されることができる。例えば、
図7~9に示されるガイドチューブは非対称のタング(上述)を含み、これらタングは、S1及びS2レベルの背側陥凹に嵌め込むことによってガイドチューブの平面または平坦面を仙骨壁に平行であるように配向する。
【0073】
図11の(C)に示されるステップ1206では、ガイドチューブ1193は、ピン1195の挿入によって適所で安定する。ピン1195は、ピン1195を配置するためのハンドル及び細長いガイド1196を含むことができるピン挿入装置1195を使用して挿入されることができる。いくつかの実施態様では、ガイドチューブ1193は1つまたは複数のガイドまたはチャンネルを含み、これらを通してピン1195は、挿入され、仙骨1150の壁の少なくとも一部に平行な適所にガイドチューブ1193をアンカー固定することができる。いくつかの実施態様では、ピン1195は腸骨1152に挿入される。いくつかの実施態様では、ガイドチューブ1193の一方または両方のタングは、安定化ピン1195を挿入することができる開口部を含む。
図11の(D)に示されるように、ステップ1208では、ボックスカッタ、L字形状カッタ、リーマ、または他の切断装置などの切断装置1192は、ガイドチューブ1193を通して挿入され、腸骨1152の壁に隣接して位置決めされる。次いで切断装置1192を使用して、腸骨1152の壁の一部を除去する。切断装置1192は、仙骨1150の壁を切断することなく、腸骨1152の壁に切り込み、インプラントに適応させる形状に切断部分1156を形成する形状に作られることが好ましい。いくつかの実施態様では、仙骨壁1150は骨の成長及び癒合を促進するために皮質を除去されているが、インプラントが仙骨壁1150の皮質に貫入することなく、インプラントが仙骨1150の非切断面に隣接して位置するように挿入されることが好ましい。
【0074】
図11の(E)に示されるステップ1210では、インプラント1100は、ガイドチューブ1193を通して、腸骨1152と仙骨1150との間の伸延した陥凹に挿入される。インプラント1100は、1つの平坦面が仙骨1150の非切断面と平行であり、接触し、インプラント1100の対向する平坦面が仙骨1152の切断部分1156と接触するように位置決めされる。インプラント1100は、任意の適切な挿入器を使用して挿入されることができる。挿入器は、ねじ装置または鈎(図示せず)によってインプラントに結合される細長いハンドルを含むことができる。インプラント1100は、腸骨1152及び仙骨1150の伸延を維持して患者に緩和及び治療を提供するように陥凹内に位置決めされる。
【0075】
任意選択で、ステップ1212では、必須または必要ではないが、特定の場合には有益または有利となり得る様々な追加のステップを実行することができる。例えば、インプラントの後退または移動を防止するために、ねじを利用してインプラントを陥凹内の適所に固定することができる。別の例として、骨の成長及び癒合を促進するために、インプラントのキャビティに、またはインプラントの挿入後の陥凹に骨材料を追加することができる。別の例では、インプラントは追加の脊椎インプラント及び装置のための基部として機能することができ、インプラントは脊椎ケージまたは腰仙椎構造体の基部に、また基部用に結合されることができる。
【0076】
インプラントの用途に応じて、インプラントは、インプラントを配置するための外科用コンポーネントを含むキットの一部として製造されることができ、入手可能になる。キットには、複数のサイズ及び/または幾何学的形状のインプラント(例えば、小型、中型、及び大型またはわずかに角度が付いている、より角度が付いている、角度が付いていない)が含まれる。インプラントに適応させるように腸骨壁が切り込まれるため、患者の解剖学的形態に完全に適合する必要はなく、キットに含まれるインプラントの数を減らすことができる。このキットには、インプラントを背側陥凹内に位置決めするためのガイドチューブも含まれる。またキットには、矩形形状の切断装置、L字形状の切断装置、ボックスカッタ、ボックスチゼル、キュレット、伸延器、ラスプ、挿入装置、除去装置、1つ以上のねじ、ハンマー、及びピンが含まれてもよい。
【0077】
図13は、内部固定機構を含む例示的なインプラント1300を示す。インプラント1300は、第一平坦面1304、第二平坦面1312、及び後縁面1308を含む。後縁面1308は、ねじ開口部1321a、1321b、及び1321cを含み、第一平坦面1304は、ねじ出口部1325a及び1325cを含む。第二平坦面1312に形成されたねじ出口部は示されていない。ねじ1323a、1323b、及び1323cは、ねじ開口部1321a、1321b、及び1321cを通り、ねじ出口部1325a、1325c(1325bは図示せず)まで延在する。インプラント1300は、仙骨1350と腸骨1352との間の背側陥凹1355内に位置決めされる。
【0078】
ねじ1323a、1323b、及び1323cは、インプラント1300を周囲の解剖学的形態に取り付ける内部固定機構として機能し、インプラント1300の運動または移動を防止する。ねじ1323a、1323b、及び1323cは、腸骨1352及び仙骨1350の一方または両方に挿入されて、インプラント1300を適所に固定することができる。いくつかの実施態様では、ねじを腸骨1352にのみ挿入する。他の実施態様では、ねじを腸骨1352及び仙骨1350の両方に挿入する。
【0079】
図15は、体内の腰仙椎構造体1537の基部として機能する、仙骨1550と腸骨1552との間に位置決めされた2つの例示的な第一及び第二インプラント装置1501a及び1501bを示す。腰仙椎構造体1537は、脊柱の上方に延伸する第一ケージ部分1533a及び第二ケージ部分1533bを含む。第一ボルト1531aは、第一ケージ部分1533aの底部から第一インプラント1501aを通して延出する。第一ボルト1531は、腸骨1552内に延出することができる。第二ボルト1531bは、第二ケージ部分1533bの底部から第一インプラント1501bを通して腸骨1552内に延出する。
【0080】
SIJインプラントを腰仙椎構造体または他の脊椎ケージもしくは装置の基部として使用すると、構造体の安定に役立つことができる。構造体をインプラント1501a及び1501bに結合することによって、腰仙椎構造体は、ねじと、背側陥凹内で癒合されるインプラントとの両方を使用して安定する。
【0081】
図16は、仙腸関節を安定させて癒合させるための方法1600のフローチャートを示す。ステップ1602では、背側陥凹を伸延させる。背側陥凹は、仙骨壁及び腸骨壁によって形成される(
図4A及び4Bに示されるように)。背側陥凹を伸延させると、陥凹が広がり、その領域からある程度の応力を取り除くことができる。いくつかの実施態様では、背側陥凹は、仙腸関節または周囲領域を安定させるために、インプラントの埋め込み前に伸延しない。
【0082】
任意選択で、ステップ1604では、ガイドチューブ(例えば、
図7A~Cのガイドチューブ700、
図9のガイドチューブ993、または
図10のガイドチューブ1093)を、仙骨壁と腸骨壁との間の背側陥凹に挿入する(
図9及び10に示されるように)。ガイドチューブは、仙骨壁の少なくとも一部に平行であるように位置決めされる。任意選択で、ステップ1606では、安定化ピンは、挿入されると、ガイドチューブの位置を背側陥凹内に固定し、仙骨壁の一部と平行にするように固定する。
【0083】
ステップ1608では、腸骨壁の表面は、切断装置(
図9の切断装置990など)を使用して切断される。いくつかの実施態様では、切断装置は、ガイドチューブを通して挿入され、腸骨壁の表面を切断し、インプラントの一部に適応させる形状及びサイズに作られたキャビティを形成するために使用される。腸骨壁の切断面は、仙骨壁に対して切断されている。
【0084】
ステップ1610では、インプラント(
図1A~Gのインプラント100、
図2A~Cのインプラント200、
図3のインプラント300、
図4A~Bのインプラント400、
図5のインプラント500、
図6A~Cのインプラント600、
図10のインプラント1000、
図13のインプラント1300、
図14のインプラント1400、または
図15のインプラント1500)は、インプラントの少なくとも一部が腸骨壁の切断面に接触しているように、伸延した陥凹内に位置決めされる。インプラントは、第一平坦壁部と、第一平坦壁部に対向する第二平坦壁部とを含み、インプラントの第一平坦壁部が仙骨壁の非切断面と接触するように陥凹内に位置決めされる。したがって、埋め込み方法は、インプラントに適応させるために、仙骨皮質の一部を除去する代わりに、腸骨壁の一部を切断する、及び/または除去することを含む。これにより、いかなる材料も除去する必要がなくなることができる、または少なくとも、埋め込み中に仙骨から除去される材料の量を減らすことができる。インプラントは背側陥凹の伸延を維持する機能を果たし、そのうえ仙骨及び腸骨の骨の成長及び癒合を促進することもできる。
【0085】
本明細書には多くの特異的な実施態様の詳細が含まれているが、これらは、開示された技術の範囲またはクレームされ得るものの範囲の限定として解釈されるべきではなく、むしろ、特定の開示された技術の特定の実施態様に特異的であり得る特徴の説明として解釈されるべきである。別個の実施態様の文脈で本明細書に説明される特定の特徴は、単一の実施形態において部分的または全体的に組み合わせて実施されることもできる。逆に、単一の実施形態の文脈において説明される様々な特徴を、複数の実施態様で別々に、または任意の好適な副組み合わせで実施することもできる。さらに、本明細書では、特徴が特定の組み合わせで作用するものとして説明され、及び/または最初にそのようにクレームされる場合があるが、場合によっては、クレームされた組み合わせからの1つまたは複数の特徴はその組み合わせから除外されることができ、クレームされた組み合わせは副組み合わせまたは副組み合わせの変形形態を対象とすることがある。同様に、操作は特定の順序で説明される場合があるが、望ましい結果を達成するために、そのような操作が特定の順序もしくは連続した順序で実行されること、またはすべての操作が実行されることを必要とするものとして理解されるべきではない。主題の特定の実施形態について説明した。他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内である。
【国際調査報告】