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特表2024-506820重質グレード基油製品を製造するプロセス
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  • 特表-重質グレード基油製品を製造するプロセス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-15
(54)【発明の名称】重質グレード基油製品を製造するプロセス
(51)【国際特許分類】
   C10G 65/12 20060101AFI20240207BHJP
【FI】
C10G65/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544763
(86)(22)【出願日】2022-01-26
(85)【翻訳文提出日】2023-08-29
(86)【国際出願番号】 US2022013855
(87)【国際公開番号】W WO2022164868
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】63/141,955
(32)【優先日】2021-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トレビーノ、オラシオ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ミンフイ
(72)【発明者】
【氏名】レイ、グワン - ダオ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォ、ルーエン ティー.
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA02
4H129CA08
4H129KA11
4H129KA12
4H129KB04
4H129KC13Y
4H129MA01
4H129MA12
4H129MB19B
4H129MB20A
4H129NA04
4H129NA05
4H129NA17
4H129NA32
4H129NA35
(57)【要約】
常圧残油供給原料及び任意選択で基油供給原料を含む基油供給原料ストリームから、水素化処理を介して重質基油を製造する改良されたプロセス。プロセスは、概して、常圧残油を含む基油供給原料ストリームを水素化分解及び脱ろう工程、及び任意選択で、水素化仕上げに供して、粘度が100℃で少なくとも約12.7cStである重質グレード基油製品を含む基油製品(複数可)を製造することを含む。本発明は、重質グレード基油製品ならびにグループII及び/またはグループIII/III+基油を製造するのに有用である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘度が100℃で少なくとも約12.7cSt、または少なくとも約13cSt、または少なくとも約13.3cStである重質基油を製造するのに有用である、基油を製造するプロセスであって、
水素化分解条件下で常圧残油供給原料及び任意選択で基油供給原料を含む基油供給原料ストリームを水素化分解触媒と接触させて、水素化分解生成物を生成することと、
前記水素化分解生成物を気体留分及び液体留分に分離することと、
水素異性化条件下で前記液体留分を脱ろう触媒と接触させて、脱ろう生成物を生成することと、
必要に応じて、水素化仕上げ条件下で前記脱ろう生成物を水素化仕上げ触媒と接触させて、水素化仕上げ脱ろう生成物を生成することと、を含み、
前記プロセスにより、粘度が100℃で少なくとも約12.7cSt、または少なくとも約13cSt、または少なくとも約13.3cStである重質基油製品を含む少なくとも1つの基油製品を製造する、前記プロセス。
【請求項2】
基油プロセスを改変して、粘度が100℃で少なくとも約12.7cSt、または少なくとも約13cSt、または少なくとも約13.3cStである重質基油を製造するために使用される請求項1に記載の方法であって、
前記基油プロセスは、基油供給原料ストリームを水素化分解及び脱ろう工程に供して、軽質生成物及び重質生成物を含む脱ろう生成物を形成することを含み、
前記方法は、
前記常圧残油供給原料を含む前記基油供給原料ストリームを、前記基油プロセスの前記水素化分解及び前記脱ろう工程に供すること、を含み、
前記改変された基油プロセスは、
水素化分解条件下で常圧残油供給原料及び任意選択で基油供給原料を含む基油供給原料ストリームを水素化分解触媒と接触させて、水素化分解生成物を生成することと、
前記水素化分解生成物を少なくとも気体留分及び液体留分に分離することと、
水素異性化条件下で前記液体留分を脱ろう触媒と接触させて、脱ろう生成物を生成することと、
必要に応じて、水素化仕上げ条件下で前記脱ろう生成物を水素化仕上げ触媒と接触させて、水素化仕上げ脱ろう生成物を生成することと、を含み、
前記改変されたプロセスにより、粘度が100℃で少なくとも約12.7cSt、または少なくとも約13cSt、または少なくとも約13.3cStである少なくとも1つの基油製品を製造する、前記方法。
【請求項3】
請求項1に記載の基油供給原料ストリーム、またはその留分から、粘度が100℃で少なくとも約12.7cSt、または少なくとも約13cSt、または少なくとも約13.3cStである重質基油を製造するプロセスであって、
常圧残油供給原料及び任意選択で基油供給原料を含む基油供給原料ストリームを提供することと、
前記基油供給原料ストリームまたはその留分を、前端留分境界点が約700°F以上、及び後端留分境界点が約900°F以下の減圧軽油留分に分離して、中質減圧軽油MVGO留分及び重質減圧軽油HVGO留分を形成することと、
請求項1に記載のプロセスで前記常圧残油供給原料として前記HVGO留分を使用することと、を含む、前記プロセス。
【請求項4】
前記基油供給原料ストリームは、基油供給原料を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記常圧残油供給原料は、
API比重が20~60もしくは20~45もしくは25~45の範囲、または少なくとも20、もしくは少なくとも22であるか、または任意選択で前記基油供給原料のAPIよりも高いこと;
VIが50~200もしくは70~190もしくは90~180の範囲、または少なくとも80であるか、または任意選択で前記基油供給原料のVIよりも高いこと;
粘度が100℃で3~30cStもしくは3~25cStもしくは3~20cStもしくは3~10cStの範囲、または少なくとも3cSt、もしくは少なくとも4cSt、または10cSt未満であること;
粘度が70℃で5~50cStもしくは5~30cStもしくは5~20cStもしくは5~15cStの範囲、または少なくとも5cSt、もしくは少なくとも6cStであること;
高温Cアスファルテン含有量が約0.01~0.3重量%もしくは約0.01~0.2重量%もしくは約0.02~0.15重量%の範囲、または約0.3重量%未満、もしくは約0.2重量%未満、もしくは約0.1重量%未満であること;
ワックス含有量が5~90重量%もしくは5~80重量%もしくは5~70重量%もしくは5~60重量%もしくは5~50重量%もしくは5~40重量%もしくは5~30重量%もしくは10~25重量%の範囲、または少なくとも5重量%、もしくは少なくとも10重量%、もしくは少なくとも15重量%であるか、または任意選択で前記基油供給原料のワックス含有量よりも多いこと;
窒素含有量が2500ppm未満、または2000ppm未満、または1500ppm未満、または1000ppm未満、または800ppm未満、または500ppm未満、または200ppm未満、または100ppm未満であること;
硫黄含有量が8000ppm未満、もしくは6000ppm未満、もしくは4000ppm未満、もしくは3000ppm未満、もしくは2000ppm未満、もしくは1000ppm未満、もしくは500ppm未満、もしくは200ppm未満、または100~8000ppm、もしくは100~6000ppm、もしくは100~4000ppm、もしくは100~2000ppm、もしくは100~1000ppm、もしくは100~500ppm、もしくは100~200ppmの範囲であること;及び/あるいは
1050+°F含有量が2~50重量%、2~40重量%、もしくは4~50重量%、もしくは4~40重量%、もしくは8~50重量%、もしくは8~40重量%の範囲、または最大50重量%、もしくは最大40重量%、もしくは最大30重量%、もしくは最大20重量%、もしくは最大10重量%であるか、任意選択で前記基油供給原料の1050+°F含有量よりも多いこと、
の条件のうち1つ以上を満たす、請求項1~4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記常圧残油供給原料は、高温Cアスファルテン含有量が約0.3重量%未満、または約0.2重量%未満、または約0.1重量%未満の範囲であり;かつ窒素含有量が2500ppm未満、または2000ppm未満、または1500ppm未満、または1000ppm未満、または800ppm未満、または500ppm未満、または200ppm未満、または100ppm未満である、請求項1~5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記常圧残油供給原料は、高温Cアスファルテン含有量が約0.3重量%未満、または約0.2重量%未満、または約0.1重量%未満の範囲であり;窒素含有量が2500ppm未満、または2000ppm未満、または1500ppm未満、または1000ppm未満、または800ppm未満、または500ppm未満、または200ppm未満、または100ppm未満であり;かつ金属含有量が約5ppm未満のニッケル、または約3ppm未満のバナジウム、または約4ppm未満の鉄であるか、あるいはこれらの組み合わせである、請求項1~6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記常圧残油供給原料は、
粘度が100℃で10cSt未満、または3~10cStの範囲であること;
高温Cアスファルテン含有量が約0.1重量%未満、または約0.01~0.1重量%の範囲であること;
MCRTが2重量%未満であること;
窒素含有量が800ppm未満であること;
硫黄含有量が3000ppm未満であること;
ニッケル含有量が5ppm未満であること;
バナジウム含有量が3ppm未満であること;
鉄含有量が4ppm未満であること、
の条件を満たす、請求項1~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記基油供給原料は、
API比重が15~40もしくは15~30もしくは15~25の範囲、または少なくとも15、もしくは少なくとも17であるか、任意選択で前記常圧残油供給原料よりも低いこと;
VIが30~90または40~90または50~90または50~80の範囲であるか、任意選択で前記常圧残油供給原料のVIよりも低いこと;
粘度が100℃で3~30cStもしくは3~25cStもしくは3~20cStの範囲、または少なくとも3cSt、もしくは少なくとも4cStであること;
粘度が70℃で5~50cStもしくは5~80重量%もしくは5~70重量%もしくは5~60重量%もしくは5~50重量%もしくは5~40重量%もしくは5~30重量%もしくは5~20cStもしくは5~15cStの範囲、または少なくとも5cSt、もしくは少なくとも6cStであること;
高温Cアスファルテン含有量が0.01~0.3重量%もしくは0.01~0.2重量%もしくは0.02~0.15重量%の範囲、または0.3重量%未満、もしくは0.2重量%未満であること;
ワックス含有量が5~90重量%もしくは5~80重量%もしくは5~70重量%もしくは5~60重量%もしくは5~50重量%もしくは5~40重量%もしくは5~30重量%もしくは10~25重量%の範囲、または少なくとも5重量%、もしくは少なくとも10重量%、もしくは少なくとも15重量%であるか、または任意選択で前記常圧残油供給原料のワックス含有量よりも少ないこと;
窒素含有量が2500ppm未満もしくは2000ppm未満もしくは1500ppm未満もしくは1000ppm未満、または1000~5000ppm、もしくは2000~5000ppm、もしくは1000~4000ppm、もしくは1000~3000ppmの範囲であること;
硫黄含有量が40000ppm未満、もしくは35000ppm未満、もしくは30000ppm未満、もしくは25000ppm未満、もしくは20000ppm未満、もしくは15000ppm未満、もしくは10000ppm、または1000~40000ppmもしくは1000~35000ppmもしくは1000~30000ppmもしくは1000~25000ppmもしくは1000~15000ppmもしくは1000~10000ppmの範囲であること;及び/あるいは
1050+°F含有量が10重量%未満、もしくは8重量%未満、もしくは7重量%未満、もしくは6重量%未満、もしくは5重量%未満、もしくは4重量%未満、もしくは3重量%未満、もしくは2重量%未満、または2~15重量%もしくは2~10重量%もしくは1~7重量%の範囲であるか、任意選択で前記常圧残油供給原料の1050+°F含有量よりも少ないこと、
の条件のうち1つ以上を満たす、請求項1~8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記基油供給原料は、窒素含有量が2500ppm未満もしくは2000ppm未満もしくは1500ppm未満もしくは1000ppm未満、または1000~5000ppm、もしくは2000~5000ppm、もしくは1000~4000ppm、もしくは1000~3000ppmの範囲であるか;あるいは硫黄含有量が40000ppm未満、もしくは35000ppm未満、もしくは30000ppm未満、もしくは25000ppm未満、もしくは20000ppm未満、もしくは15000ppm未満、もしくは10000ppm、または1000~40000ppmもしくは1000~35000ppmもしくは1000~30000ppmもしくは1000~25000ppmもしくは1000~15000ppmもしくは1000~10000ppmの範囲であるか;あるいは、1050+°F含有量が10重量%未満、もしくは8重量%未満、もしくは7重量%未満、もしくは6重量%未満、もしくは5重量%未満、もしくは4重量%未満、もしくは3重量%未満、もしくは2重量%未満、または2~15重量%もしくは2~10重量%もしくは1~7重量%の範囲であるか、任意選択で前記常圧残油供給原料の1050+°F含有量よりも少ないか、あるいはそれらの組み合わせである、請求項1~9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記基油供給原料ストリームは、5~95重量%の常圧残油供給原料及び95~5重量%の基油供給原料、または10~90重量%の常圧残油供給原料及び90~10重量%の基油供給原料、または10~80重量%の常圧残油供給原料及び90~20重量%の基油供給原料、または10~60重量%の常圧残油供給原料及び90~40重量%の基油供給原料、または10~50重量%の常圧残油供給原料及び50~90重量%の基油供給原料、または10~40重量%の常圧残油供給原料及び90~60重量%の基油供給原料、または10~30重量%の常圧残油供給原料及び90~70重量%の基油供給原料、または30~60重量%の常圧残油供給原料及び70~40重量%の基油供給原料、または40~60重量%の常圧残油供給原料及び60~40重量%の基油供給原料を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記基油供給原料ストリームは、追加の全原油供給原料を含有しないか、または前記基油供給原料ストリームは、減圧残油供給原料を含有しないか、または前記基油供給原料ストリームは、脱れき油を含有しないか、または前記基油供給原料ストリームは、常圧残油供給原料及び任意選択で基油供給原料のみを含有する、請求項1~11のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記プロセスは、前記基油供給原料ストリームの一部としてまたは前記常圧残油供給原料及び前記基油供給原料のいずれかもしくは両方として、液体供給原料の再循環を含まない、請求項1~12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記常圧残油供給原料及び前記基油供給原料は、同じものではない、請求項1~13のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記常圧残油供給原料と前記基油供給原料とは、窒素含有量、硫黄含有量、1050+°F含有量、またはそれらの組み合わせが異なる、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記基油供給原料は、減圧軽油を含むか、または減圧軽油であるか、または本質的に減圧軽油からなるか、または減圧軽油からなる、請求項1~15のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記減圧軽油は、軽質留分及び重質留分にカットされる減圧軽油から得られた重質減圧軽油であり、前記重質留分の留分境界点は約950~1050°Fの温度範囲である、請求項1~16のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記脱ろう生成物及び/または前記水素化仕上げ脱ろう生成物は、軽質基油製品及び重質基油製品として得られる、請求項1~17のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記軽質基油製品は、公称粘度が100℃で3~9cSt、または4~8cSt、または5~7cStの範囲であり、及び/あるいは前記重質基油製品は、公称粘度が100℃で13~24cSt、または13~21cSt、または13~18cStの範囲である、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
前記軽質基油製品に対する前記重質基油製品の収量は、前記基油供給原料ストリーム中に前記常圧残油供給原料を含まない同じプロセスと比較して、少なくとも約0.5L体積%、または少なくとも約1L体積%、または少なくとも約2L体積%、または少なくとも約5L体積%増加する、請求項18に記載のプロセス。
【請求項21】
総ろう状基油収量は、前記基油供給原料ストリーム中に前記常圧残油供給原料を含まない同じプロセスと比較して、少なくとも約0.5L体積%、または少なくとも約1L体積%、または少なくとも約2L体積%、または少なくとも約5L体積%増加する、請求項18に記載のプロセス。
【請求項22】
前記脱ろう生成物は、少なくとも公称粘度が100℃で約5.5~7.5cStの範囲であるより軽質な生成物、または少なくとも公称粘度が100℃で13cSt以上、もしくは100℃で13~16.5cSt、もしくは100℃で18~23cSt、もしくはそれらの組み合わせであるより重質な生成物にさらに分離される、請求項1~21のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項23】
水素化分解条件下で前記MVGO留分を水素化分解触媒と接触させて、水素化分解生成物を形成することと、
前記水素化分解生成物を気体留分及び液体留分に分離することと、
水素異性化条件下で前記液体留分を脱ろう触媒と接触させて、脱ろう生成物を生成することと、
必要に応じて、水素化仕上げ条件下で前記脱ろう生成物を水素化仕上げ触媒と接触させて、水素化仕上げ脱ろう生成物を生成することと、をさらに含み、
前記脱ろう生成物及び/または前記水素化仕上げ脱ろう生成物は、粘度指数が脱ろう後120以上であるグループIIIまたはグループIII+基油製品を含む、
請求項3に記載のプロセス。
【請求項24】
前記脱ろう生成物及び/または前記水素化仕上げ脱ろう生成物は、粘度指数が脱ろう後130以上であるか、または脱ろう後135以上であるか、または脱ろう後140以上であるグループIIIまたはグループIII+基油製品を含む、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
前記脱ろう生成物及び/または前記水素化仕上げ脱ろう生成物は、グループIIIまたはグループIII+基油製品を含む、請求項23に記載のプロセス。
【請求項26】
前記水素化分解生成物は、粘度指数が少なくとも約135、または140、または145、または150である、請求項23に記載のプロセス。
【請求項27】
前記基油供給原料は、タイトオイル、またはその留分を含み、及び/あるいは前記常圧残油供給原料は、タイトオイル、またはその留分から誘導される、請求項1~26のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項28】
公称粘度が100℃で13~16.5cStの範囲である、グループII基油製品。
【請求項29】
前記製品は、グレード800の基油である、請求項22に記載のグループII基油製品。
【請求項30】
公称粘度が100℃で18~23cStの範囲である、グループII基油製品。
【請求項31】
前記製品は、グレード900の基油である、請求項30に記載のグループII基油製品。
【請求項32】
請求項1~27のいずれか1項に記載のプロセスに従って製造される請求項28~31のいずれか1項に記載のグループII基油製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年1月26日に出願の米国仮出願番号第63/141,955号の利益を主張するものであり、この開示は、その全体が本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、常圧残油供給原料と基油供給原料とを組み合わせて、組み合わせた供給原料ストリームを形成し、それから水素化処理を介して重質グレード基油製品を形成することによる、重質グレード基油製品を製造するプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
粘度指数(VI)が120以上であるもの(グループII及びグループIII)などの高品質の潤滑油基油は、一般的に、通常、減圧軽油(VGO)などの高沸点減圧留出物から、水素化分解によってVIを上げ、続いて、触媒脱ろうによって流動点及び曇り点を下げ、かつその後、水素化仕上げによって芳香族化合物を飽和させて、安定性を改善することによって製造される場合がある。水素化分解では、高沸点分子は低沸点分子に分解され、これによりVIが上がるが、同時に粘度及び収量は下がる。高VIかつ高粘度グレードの基油を高収量で製造するためには、水素化分解装置の原料に一定量の高沸点分子が含まれている必要がある。通常、VGOは、温度及び圧力の実用的な限界が理由で、減圧カラムにおいて非常に高い沸点の分子を常圧残油(AR)から回収する能力に限界がある。より高い沸点分子を水素化分解装置に供給する可能な一手段は、ARを直接供給することであるが、通常、このようなアプローチは、不可能または実行不可能である。これは、ARは通常、例えば、ニッケル、バナジウム、微小残留炭素分(MCR)及びアスファルテンを含む、水素化分解装置の触媒に対して極めて有害な物質を含んでいることが理由である。これらの物質により、水素化分解装置の触媒寿命が許容できない程度まで短くなり、かかる原料は現実的に使用できないものとなる。
【0004】
基油の製造において取り扱いが困難な全原油及び他の中間原料を使用する1つのアプローチは、最初にARまたは減圧残油(VR)などの原料を溶剤脱れき(SDA)装置で処理することである。このような処理は、通常、水素化分解装置の許容可能な原料品質の脱れき油(DAO)を製造しながら、望ましくない物質の大部分を分離するために必要である。しかし、そのようなSDA装置の非常に高い資金需要及び高い運用コスト、ならびにプロセス全体のアプローチにより、これらは望ましい選択肢とはいえない。溶剤脱れき工程の必要性を最小限に抑えるか排除する他のアプローチがこれまでに実施されているが、コストまたは他のプロセスの改善の観点から明確な利益は得られていない。
【0005】
グループIIIの基油及び完成した潤滑油の製造には、一般に、高価で供給が制限されているポリアルファオレフィンなどの粘度指数向上剤、またはガス液化(GTL)供給原料の使用、もしくは、例えば、鉱油の多重水素化分解処理を介するものなど、高価な他の処理技術の使用が必要であった。また、グループIIIの基油の製造には、一般に、VI目標を満たすために、製品収量を犠牲にして、高品質の供給原料(複数可)及び高転化率で処理することが必要である。しかし、業界の継続的な努力にもかかわらず、比較的安価で好適な供給原料、及びそのような製品を製造するための簡素化されたプロセスは、依然として開発及び商業化の段階にある。
【0006】
超重質のより高いグレードの基油は、典型的には、従来の入手可能な原油を使用して経済的に製造することはできない。この理由の1つは、そのような供給原料が、通常、そのような重質グレードの製造に有用な十分な量の分子種を含有していないことである。重質ニュートラル(HN)基油の製造に使用される典型的な減圧軽油(VGO)原料カットの終点は、1050~1100°Fのみであり、基油製品の粘度は、11~12cStの範囲(100℃で測定)に制限される。より重質なグレードの基油を製造するのに必要な分子は、これらの一般的に入手可能な原料カット中には大量に存在しない。このような原料を処理して、より重質なカットを製造することにより、過剰な量のヘテロ原子(例えば窒素)及び芳香族化合物をもたらすことになり、かつ大規模な前処理及び厳密な転化が必要である。結果として収量が低下するため、通常入手可能な原料を使用したこのようなプロセスは非経済的なものとなる。したがって、より重質なグレードの基油の製造に適した原料、例えば、高純度で芳香族化合物含有量が低く、目標の範囲の高沸点でVIがより高い原料を利用するプロセスは、重質基油製品を製造する供給源として望ましいであろう。
【0007】
異なる困難な原料から基油を製造する進歩にもかかわらず、異なる供給原料を利用するとともに、価値のあるより重質なグレードの基油製品の収量を増加させるための改善されたプロセスに対する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、基油製品、特に、基油供給原料ストリームの水素化処理を介して重質グレード基油製品を製造するプロセスに関する。必ずしもこれに限定されるものではないが、本発明の一目的は、超重質グレード基油製品の基油収量の増加を提供することである。
【0009】
概して、本発明による第1のプロセスは、常圧残油供給原料を必要に応じて従来の基油供給原料と組み合わせて、基油供給原料ストリームとして得ることと、水素化分解条件下で基油供給原料ストリームを水素化分解触媒と接触させて、水素化分解生成物を形成することと、水素化分解生成物を気体留分及び液体留分に分離することと、水素異性化条件下で液体留分を水素化脱ろう触媒に接触させて、脱ろう生成物を生成することと、必要に応じて、水素化仕上げ条件下で脱ろう生成物を水素化仕上げ触媒に接触させて、水素化仕上げ脱ろう生成物を生成することと、によって、基油を製造することを含む。プロセスは、粘度が100℃で少なくとも約12.7cSt、または少なくとも約13cSt、または少なくとも約13.3cStである重質基油製品を含む少なくとも1つの基油製品を製造する。いくつかの態様では、プロセスは、常圧残油供給原料成分を含んでいない供給原料の使用と比較して、1つ以上の基油製品の有益な収量の向上ももたらし得る。
【0010】
本発明はまた、従来の基油プロセスにおける基油供給原料に常圧残油供給原料を加えることによって、基油プロセスを改変する方法にも関し、該方法は、基油供給原料ストリームを水素化分解工程及び脱ろう工程に供して、軽質生成物及び重質生成物を含む脱ろう生成物を形成することを含む。したがって、改変された基油プロセスは、常圧残油供給原料と基油供給原料とを組み合わせて、基油供給原料ストリームを形成することと、水素化分解条件下で基油供給原料ストリームを水素化分解触媒と接触させて、水素化分解生成物を形成することと、水素化分解生成物を少なくとも気体留分及び液体留分に分離することと、水素異性化条件下で液体留分を水素化脱ろう触媒に接触させて、脱ろう生成物を生成することと、必要に応じて、水素化仕上げ条件下で脱ろう生成物を水素化仕上げ触媒に接触させて、水素化仕上げ脱ろう生成物を生成することと、を含む。改変されたプロセスは、粘度が100℃で少なくとも約13cStである少なくとも1つの基油製品を製造し、かつ常圧残油供給原料成分を含んでいない供給原料の使用と比較して、1つ以上の基油製品の有益な収量の向上ももたらし得る。
【0011】
本発明はさらに、常圧残油供給原料及び任意選択で基油供給原料を含む基油供給原料ストリームを、前端留分境界点が約700°F以上、及び後端留分境界点が約900°F以下の減圧軽油に分離して、中質減圧軽油MVGO留分及び重質減圧軽油HVGOを形成することと、水素化分解条件下でHVGO留分を水素化分解触媒と接触させて、水素化分解生成物を形成することと、水素化分解生成物を気体留分及び液体留分に分離することと、液体留分を水素化脱ろうして、脱ろう生成物を生成することと、必要に応じて、脱ろう生成物を水素化仕上げして、水素化仕上げ脱ろう生成物を生成することと、による、粘度が100℃で少なくとも約13cStである重質基油を製造するプロセスに関する。プロセスは、常圧残油供給原料成分を含んでいない供給原料の使用と比較して、粘度が100℃で少なくとも約12.7cSt、または少なくとも約13cSt、または少なくとも約13.3cStである重質基油製品を含む少なくとも1つの基油製品を製造する。
【0012】
本発明は、水素化分解条件下でMVGO留分を水素化分解触媒に接触させて、水素化分解生成物を形成することと、水素化分解生成物を気体留分及び液体留分に分離することと、水素異性化条件下で液体留分を脱ろう触媒に接触させて、脱ろう生成物を生成することと、必要に応じて、水素化仕上げ条件下で脱ろう生成物を水素化仕上げ触媒に接触させて、水素化仕上げ脱ろう生成物を生成することとによる、中質減圧軽油MVGO留分から基油製品を製造するプロセスをさらに提供するが、ここで、脱ろう生成物及び/または水素化仕上げ脱ろう生成物は、粘度指数が脱ろう後120以上である。
【0013】
本発明の範囲は、本開示に添付されているいずれの代表的な図面によっても限定されず、本願の特許請求の範囲によって定義されると理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】基油製品を製造する従来技術のプロセスの一般的なブロック略図である。
図2a】本発明による、常圧残油(AR)、または減圧軽油(VGO)とARとの混合物(VGO/AR)を使用して、基油製品を製造するプロセスの実施形態の一般的なブロック略図である。
図2b】本発明による、常圧残油からの中質減圧軽油(MVGO)留分を使用してグループIII/III+基油製品を製造するプロセス、及び常圧残油からの重質減圧軽油(HVGO)残油留分またはVGOとHVGOとの混合物(VGO/HVGO)を使用して重質基油製品を製造するプロセスの実施形態の一般的なブロック略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1つ以上の態様の例示的実施形態を本明細書で提示するが、開示されるプロセスは、任意数の技法を用いて実施することができる。本開示は、本明細書に例示及び記載されているいずれの例示的な設計及び実施形態も含め、本明細書に例示されている例示的または具体的な実施形態、図面及び技法に限定されず、均等物の全範囲とともに、添付の特許請求の範囲の範囲内で改変されてよい。
【0016】
特に記載がない限り、以下の用語、専門用語、及び定義は、本開示に適用可能である。用語が本開示で使用されているが、本明細書で特段定義づけられていない場合、本明細書で適用される定義がいずれかの他の開示または定義と矛盾しておらず、その定義が適用されるいずれの請求項も不確定または無効にしないという前提で、Chemical Terminology,2nd ed(1997)のIUPAC Compendiumによる定義が適用されてよい。参照により本明細書に援用されるいずれかの文献によって定められているいずれかの定義または用法が、本明細書に定められている定義または用途と矛盾する限りにおいては、本明細書に定められている定義または用法が適用されると理解されたい。
【0017】
「API基油分類」は、表1に示すような様々な基準を満たす基油の分類である。
【表1-1】

【表1-2】
【0018】
「API比重」とは、通常は市販の石油分析装置を使用して実施されるASTM D4052-11またはASTM D1298によって測定した際の、水に対する石油供給原料または製品の比重を指す。
【0019】
「ISO-VG」とは、IS03448:1992で定義されている、工業用途に推奨される粘度分類を指す。
【0020】
「粘度指数」(VI)とは、通常は市販の石油分析装置を使用して実施されるASTM D2270-10(E2011)によって測定した際の、潤滑油の温度依存性を意味する。
【0021】
「微小残留炭素分」(MCRT)とは、通常は市販の石油分析装置を使用して実施されるASTM D4530によって測定した際の、形成された残留炭素分の量を意味する。
【0022】
「芳香族化合物抽出」とは、溶剤ニュートラル基油を製造するために用いられるプロセスの一部である。芳香族化合物抽出中、減圧軽油、脱れき油またはこれらの混合物が、溶剤抽出装置内で溶剤を使用して抽出される。芳香族化合物抽出により、溶剤の蒸発後、ろう状抽残物及び芳香族化合物抽出物が生じる。
【0023】
「常圧残油」または「常圧残油物」(AR)とは、大気圧での原油蒸留による、蒸留中に揮発性物質が除去された生成物である。ARカットは、通常、650°Fから680°Fまでの留分境界点で得られる。
【0024】
「減圧軽油」(VGO)は、基油への品質改善のために、水素化処理装置または芳香族化合物抽出に送られる場合がある原油減圧蒸留の副産物である。VGOは、通常、0.101MPaで沸点範囲分布が343℃(649°F)から538℃(1000°F)の炭化水素を含む。本明細書で使用される場合、「MVGO」と略記される用語「中質減圧軽油」とは、減圧軽油またはその一部分を指し、例えば、MVGOは、前端留分境界点が約700°F以上、及び後端留分境界点が約900°F以下の減圧軽油またはその一部分である。「HVGO」と略記される用語「重質減圧軽油」とは、例えば、VGOから得られる留分を含む、重質減圧軽油、またはその一部分を指す。場合によっては、HVGOは、VGO供給原料から誘導される場合があり、この際、VGO供給原料からMVGOのカット部分が分離されてHVGO部分である残部が残る。例えば、重質減圧軽油(HVGO)は、VGO供給原料からMVGO部分が取り除かれて得られる残部である場合があり、ここで、MVGO部分は、前端留分境界点が約700°F以上、及び後端留分境界点が約900°F以下である。
【0025】
「脱れき油」(DAO)とは、一般に、溶剤脱れきプロセスで脱れきされた、減圧蒸留装置の残油物を指す。製油所における溶剤脱れきについては、J.Speight,Synthetic Fuels Handbook,ISBN 007149023Χ,2008の64、85~85、及び121頁に記載されている。
【0026】
「処理」、「処理された」、「品質改善する」、「品質改善」及び「品質改善された」とは、油供給原料に関して用いられる場合、水素化処理が施されているか、もしくは水素化処理が施された供給原料、または供給原料の分子量が減少し、供給原料の沸点範囲が縮小し、アスファルテンの濃度が低下し、炭化水素遊離基の濃度が低下し、及び/または、硫黄、窒素、酸素、ハロゲン化物、及び金属などの不純物の量が減少した、結果として生じる物質もしくは粗生成物のことを述べている。
【0027】
「溶剤脱ろう」とは、低温でのパラフィンの結晶化及び濾過による分離による、脱ろうのプロセスである。溶剤脱ろうにより、脱ろう油及びスラックワックスが生じる。脱ろう油は、さらに基油を製造するために水素化仕上げされ得る。
【0028】
「水素化処理」とは、望ましくない不純物を除去し、及び/または炭素含有供給原料を所望の生成物に転化する目的で、その炭素含有供給原料を高めの温度及び圧力で、水素及び触媒と接触させるプロセスを指す。水素化処理プロセスの例には、水素化分解、水素化精製、触媒脱ろう、及び水素化仕上げが含まれる。
【0029】
「水素化分解」とは、水素化及び脱水素に、炭化水素の分解/破砕を伴うプロセス、例えば、より重質な炭化水素をより軽質な炭化水素に転化すること、あるいは芳香族化合物及び/またはシクロパラフィン(ナフテン)を非環状分岐パラフィンに転化することを指す。
【0030】
「水素化精製」とは、典型的には水素化分解と組み合わせて、硫黄及び/または窒素含有量が低減された状態で、硫黄及び/または窒素含有炭化水素原料を炭化水素生成物に転化し、硫化水素及び/またはアンモニアを(それぞれ)副産物として生成するプロセスを指す。
【0031】
「触媒脱ろう」または水素異性化とは、水素の存在下で、かつ触媒を介して、ノルマルパラフィンをそれらのより分岐した対応物に異性化するプロセスを指す。
【0032】
「水素化仕上げ」とは、微量の芳香族化合物、オレフィン、発色体、及び溶剤を除去することによって、水素化仕上げ生成物の酸化安定性、UV安定性、及び外観を改善することを目的としているプロセスを指す。本開示で使用される場合、用語、UV安定性とは、UV光及び酸素に曝される場合に試験される炭化水素の安定性を指す。不安定性は、通常、Hocまたは曇りとして目に見える沈殿物が形成されるか、紫外線及び空気に曝された後に暗い色が発生する場合に示される。水素化仕上げについての一般的な説明は、米国特許第3,852,207号及び同第4,673,487号において確認することができる。
【0033】
「水素(Hydrogen)」または「水素(hydrogen)」という用語は、水素自体及び/または水素源となる化合物もしくは複数の化合物を指す。
【0034】
「留分境界点」とは、所定の分離度に達する真沸点(TBP)曲線上の温度を指す。
【0035】
「TBP」とは、ASTM D2887-13による模擬蒸留(SimDist)によって決定された含炭化水素原料または生成物の沸点を指す。
【0036】
「含炭化水素」、「炭化水素」及び類似の用語は、炭素原子及び水素原子のみを含む化合物を指す。その炭化水素に特定の基が存在する場合には、他の識別語を用いて、その特定の基の存在を示すことができる(例えば、ハロゲン化炭化水素とは、その炭化水素中の等しい数の水素原子と置き換わっているハロゲン原子が1つ以上存在することを示している)。
【0037】
「IIB族」または「IIB族金属」とは、元素形態、化合物形態またはイオン形態のいずれかである亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、水銀(Hg)及びこれらを組み合わせたものを指す。
【0038】
「IVA族」または「IVA族金属」とは、元素形態、化合物形態またはイオン形態のいずれかであるゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)または鉛(Pb)、及びこれらを組み合わせたものを指す。
【0039】
「V族金属」とは、その元素形態、化合物形態またはイオンであるバナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)及びこれらを組み合わせたものを指す。
【0040】
「VIB族」または「VIB族金属」とは、元素形態、化合物形態またはイオン形態のいずれかであるクロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)及びこれらを組み合わせたものを指す。
【0041】
「VIII族」または「VIII族金属」とは、元素形態、化合物形態またはイオン形態のいずれかである鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Rh)、ロジウム(Ro)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)及びこれらを組み合わせたものを指す。
【0042】
「担体」という用語は、特に、「触媒担体」という用語で使用する場合には、典型的には、表面積の大きい固体である従来の材料のうち、触媒材料を担持する材料を指す。担体材料は、不活性であるか、または触媒反応に関与する場合があり、かつ多孔質もしくは非多孔質である場合がある。典型的な触媒担体としては、様々な種類の炭素、アルミナ、シリカ、及びシリカ-アルミナ、例えば、非晶質シリカアルミネート、ゼオライト、アルミナ-ボリア、シリカ-アルミナ-マグネシア、シリカ-アルミナ-チタニア、及び他のゼオライト及びその他の複合酸化物をそれに添加することにより得られる材料などが挙げられる。
【0043】
「モレキュラーシーブ」とは、フレームワーク構造内に、細孔の均一な分子寸法を有しており、モレキュラーシーブの種類に応じて、ある特定の分子のみが、そのモレキュラーシーブの細孔構造に到達できる一方で、その他の分子が、例えば分子のサイズ及び/または反応性により排除されるようになっている物質を指す。ゼオライト、結晶性アルミノリン酸塩、及び結晶性シリコアルミノリン酸塩は、モレキュラーシーブの代表例である。
【0044】
W220及びW600は、ろう状媒体及び重質のグループII基油製品グレードを指し、W220は、100℃で公称粘度が約6cStであるろう状媒体基油製品を指し、W600は、100℃で公称粘度が約12cStであるろう状重質基油製品を指す。脱ろう後の、グループIIの基油の典型的な試験データを以下に示す。
【表2】
【0045】
本開示では、組成物、及び方法またはプロセスが、各種の成分または工程を「含む」という観点で説明されている場合が多いが、その組成物及び方法は、別段の記載のない限り、その各種の成分もしくは工程「から本質的になっても」よいし、またはその各種の成分もしくは工程「からなっても」よい。
【0046】
用語「a」、「an」、及び「the」は、複数の選択肢、例えば、少なくとも1つを含むことを意図している。例えば、「遷移金属」または「アルカリ金属」の開示は、特に明記しない限り、遷移金属またはアルカリ金属の1つ、または2つ以上の混合物もしくは組み合わせを包括することを意味する。
【0047】
本明細書における詳細な説明及び特許請求の範囲内のいずれの数値も、示されている値が「約」または「およそ」によって修飾されており、当業者であれば予測するであろう、実験での誤差及び変動が考慮されている。
【0048】
一態様では、本発明は、基油を製造するプロセスであり、これは、粘度が100℃で少なくとも約13cStである重質基油を製造するのに有用なプロセスであり、該プロセスは、水素化分解条件下で常圧残油供給原料及び任意選択で基油供給原料を含む基油供給原料ストリームを水素化分解触媒と接触させて、水素化分解生成物を形成することと、水素化分解生成物を気体留分及び液体留分に分離することと、水素異性化条件下で液体留分を脱ろう触媒と接触させて、脱ろう生成物を生成することと、必要に応じて、水素化仕上げ条件下で脱ろう生成物を水素化仕上げ触媒と接触させて水素化仕上げ脱ろう生成物を生成することと、を含み、該プロセスにより、粘度が100℃で少なくとも約13cStである重質基油製品を含む少なくとも1つの基油製品を製造する。
【0049】
基油供給原料は、概して、以下の特性条件のうち1つ以上を満たす。
API比重が15~40もしくは15~30もしくは15~25の範囲、または少なくとも15、もしくは少なくとも17であるか、任意選択で常圧残油供給原料よりも低いこと;
VIが30~90または40~90または50~90または50~80の範囲であるか、任意選択で常圧残油供給原料のVIよりも低いこと;
粘度が100℃で3~30cStもしくは3~25cStもしくは3~20cStの範囲、または少なくとも3cSt、もしくは少なくとも4cStであること;
粘度が70℃で5~50cStもしくは5~80重量%もしくは5~70重量%もしくは5~60重量%もしくは5~50重量%もしくは5~40重量%もしくは5~30重量%もしくは5~20cStもしくは5~15cStの範囲、または少なくとも5cSt、もしくは少なくとも6cStであること;
高温Cアスファルテン含有量が0.01~0.3重量%もしくは0.01~0.2重量%もしくは0.02~0.15重量%の範囲、または0.3重量%未満、もしくは0.2重量%未満であること;
ワックス含有量が5~90重量%もしくは5~80重量%もしくは5~70重量%もしくは5~60重量%もしくは5~50重量%もしくは5~40重量%もしくは5~30重量%もしくは10~25重量%の範囲、または少なくとも5重量%、もしくは少なくとも10重量%、もしくは少なくとも15重量%であるか、または任意選択で常圧残油供給原料のワックス含有量よりも少ないこと;
窒素含有量が2500ppm未満もしくは2000ppm未満もしくは1500ppm未満もしくは1000ppm未満、または1000~5000ppm、もしくは2000~5000ppm、もしくは1000~4000ppm、もしくは1000~3000ppmの範囲であること;
硫黄含有量が40000ppm未満、もしくは35000ppm未満、もしくは30000ppm未満、もしくは25000ppm未満、もしくは20000ppm未満、もしくは15000ppm未満、もしくは10000ppm、または1000~40000ppmもしくは1000~35000ppmもしくは1000~30000ppmもしくは1000~25000ppmもしくは1000~15000ppmもしくは1000~10000ppmの範囲であること; 及び/または
1050+°F含有量が10重量%未満、もしくは8重量%未満、もしくは7重量%未満、もしくは6重量%未満、もしくは5重量%未満、もしくは4重量%未満、もしくは3重量%未満、もしくは2重量%未満、または2~15重量%もしくは2~10重量%もしくは1~7重量%の範囲であるか、任意選択で常圧残油供給原料の1050+°F含有量よりも少ないこと。
【0050】
いくつかの態様では、基油供給原料は、窒素含有量が2500ppm未満もしくは2000ppm未満もしくは1500ppm未満もしくは1000ppm未満、または1000~5000ppm、もしくは2000~5000ppm、もしくは1000~4000ppm、もしくは1000~3000ppmの範囲であるか;あるいは硫黄含有量が40000ppm未満、もしくは35000ppm未満、もしくは30000ppm未満、もしくは25000ppm未満、もしくは20000ppm未満、もしくは15000ppm未満、もしくは10000ppm、または1000~40000ppmもしくは1000~35000ppmもしくは1000~30000ppmもしくは1000~25000ppmもしくは1000~15000ppmもしくは1000~10000ppmの範囲であるか;あるいは、1050+°F含有量が10重量%未満、もしくは8重量%未満、もしくは7重量%未満、もしくは6重量%未満、もしくは5重量%未満、もしくは4重量%未満、もしくは3重量%未満、もしくは2重量%未満、または2~15重量%もしくは2~10重量%もしくは1~7重量%の範囲であるか、任意選択で常圧残油供給原料の1050+°F含有量よりも少ないか、あるいはそれらの組み合わせである。
【0051】
好適な基油供給原料は、水素化処理された中間ストリームまたはその他の原料を含む、任意の原油供給原料、またはその留分からのものであり得る。一般に、基油供給原料は、基油の範囲内で沸騰する物質を含有している。供給原料は、全原油及びパラフィンベース原油を含む、様々な供給源からの常圧残油及び減圧残油を含んでいることがある。
【0052】
常圧残油(AR)供給原料は、概して、以下の特性条件のうち1つ以上を満たす。
API比重が20~60もしくは20~45もしくは25~45の範囲、または少なくとも20、もしくは少なくとも22であるか、または任意選択で基油供給原料のAPIよりも高いこと;
VIが50~200もしくは70~190もしくは90~180の範囲、または少なくとも80であるか、または任意選択で基油供給原料のVIよりも高いこと;
粘度が100℃で3~30cStもしくは3~25cStもしくは3~20cStもしくは3~10cStの範囲、または少なくとも3cSt、もしくは少なくとも4cSt、または10cSt未満であること;
粘度が70℃で5~50cStもしくは5~30cStもしくは5~20cStもしくは5~15cStの範囲、または少なくとも5cSt、もしくは少なくとも6cStであること;
高温Cアスファルテン含有量が約0.01~0.3重量%もしくは約0.01~0.2重量%もしくは約0.02~0.15重量%の範囲、または約0.3重量%未満、もしくは約0.2重量%未満、もしくは約0.1重量%未満であること;
ワックス含有量が5~90重量%もしくは5~80重量%もしくは5~70重量%もしくは5~60重量%もしくは5~50重量%もしくは5~40重量%もしくは5~30重量%もしくは10~25重量%の範囲、または少なくとも5重量%、もしくは少なくとも10重量%、もしくは少なくとも15重量%であるか、または任意選択で基油供給原料のワックス含有量よりも多いこと;
窒素含有量が2500ppm未満、または2000ppm未満、または1500ppm未満、または1000ppm未満、または800ppm未満、または500ppm未満、または200ppm未満、または100ppm未満であること;
硫黄含有量が8000ppm未満、もしくは6000ppm未満、もしくは4000ppm未満、もしくは3000ppm未満、もしくは2000ppm未満、もしくは1000ppm未満、もしくは500ppm未満、もしくは200ppm未満、または100~8000ppm、もしくは100~6000ppm、もしくは100~4000ppm、もしくは100~2000ppm、もしくは100~1000ppm、もしくは100~500ppm、もしくは100~200ppmの範囲であること;及び/または
1050+°F含有量が2~50重量%、2~40重量%、もしくは4~50重量%、もしくは4~40重量%、もしくは8~50重量%、もしくは8~40重量%の範囲、または最大50重量%、もしくは最大40重量%、もしくは最大30重量%、もしくは最大20重量%、もしくは最大10重量%であるか、任意選択で基油供給原料の1050+°F含有量よりも多いこと。
【0053】
いくつかの態様では、本明細書に記載の特性を有するAR供給原料は、ライトタイトオイル(LTO、例えば、通常APIが>45のシェールオイル)から有利に誘導され得る。好適な供給原料は、Permian Basin供給原料及びEagle Ford、Avalon、Magellan、Buckeyeなどを含む他の供給原料である場合がある。
【0054】
常圧残油(AR)供給原料は、通常、従来のAR供給原料とは異なる。例えば、AR供給原料は、典型的には、前述の供給原料特性の多くのうち1つが、従来のAR供給原料とは異なり、本発明における有用なAR供給原料は、典型的には、より低い特性値及び範囲を有する。より具体的なケースでは、従来のARと比較して、AR供給原料は、より低い高温Cアスファルテン含有量、窒素及び/または硫黄含有量、1050+°F含有量、金属含有量(例えば、ニッケル、バナジウム、及び/または鉄)またはそれらの組み合わせを有する。
【0055】
場合によっては、常圧残油供給原料は、高温Cアスファルテン含有量が約0.3重量%未満、または約0.2重量%未満、または約0.1重量%未満の範囲であり;かつ窒素含有量が2500ppm未満、または2000ppm未満、または1500ppm未満、または1000ppm未満、または800ppm未満、または500ppm未満、または200ppm未満、または100ppm未満である。常圧残油供給原料はまた、高温Cアスファルテン含有量が約0.3重量%未満、または約0.2重量%未満、または約0.1重量%未満の範囲であり;窒素含有量が2500ppm未満、または2000ppm未満、または1500ppm未満、または1000ppm未満、または800ppm未満、または500ppm未満、または200ppm未満、または100ppm未満であり;かつ金属含有量が約5ppm未満のニッケル、または約3ppm未満のバナジウム、または約4ppm未満の鉄であるか、あるいはこれらの組み合わせであってもよい。さらに、AR供給原料はまた、以下の条件も満たすことができる。常圧残油供給原料は、以下の条件を満たす。粘度が100℃で10cSt未満、または3~10cStの範囲であること;高温Cアスファルテン含有量が約0.1重量%未満、または約0.01~0.1重量%の範囲であること;MCRTが2重量%未満であること;窒素含有量が800ppm未満であること;硫黄含有量が3000ppm未満であること;ニッケル含有量が5ppm未満であること;バナジウム含有量が3ppm未満であること;及び鉄含有量が4ppm未満であること。
【0056】
基油供給原料及び常圧残油供給原料の両方は、記載した広い範囲及び狭い範囲のいずれか及びそのような範囲の組み合わせの範囲内の前述の特性のいずれかを有し得る。
【0057】
基油供給原料ストリームは、概して、5~95重量%の常圧残油供給原料及び95~5重量%の基油供給原料、または10~90重量%の常圧残油供給原料及び90~10重量%の基油供給原料、または10~80重量%の常圧残油供給原料及び90~20重量%の基油供給原料、または10~60重量%の常圧残油供給原料及び90~40重量%の基油供給原料、または10~50重量%の常圧残油供給原料及び50~90重量%の基油供給原料、または10~40重量%の常圧残油供給原料及び90~60重量%の基油供給原料、または10~30重量%の常圧残油供給原料及び90~70重量%の基油供給原料、または30~60重量%の常圧残油供給原料及び70~40重量%の基油供給原料、または40~60重量%の常圧残油供給原料及び60~40重量%の基油供給原料を含む。
【0058】
特定の実施形態では、基油供給原料ストリームは、追加の全原油供給原料を含有せず、及び/または減圧残油供給原料を含有せず、及び/または脱れき油供給原料成分を含有せず、及び/または常圧残油供給原料及び基油供給原料のみを含有する。基油供給原料及びAR供給原料の特定の特性特徴の一部は、類似または重複する特性値または値の範囲を有することがあるが、基油供給原料及びAR供給原料は、典型的には1つ以上の特性特徴が著しく異なるため同じではない。例えば、場合によっては、常圧残油供給原料と基油供給原料とは、それぞれの窒素含有量、硫黄含有量、1050+°F含有量、またはそれらの組み合わせが異なる。
【0059】
直留プロセスに限定されないが、プロセスは、基油供給原料ストリームの一部としてまたは常圧残油供給原料及び基油供給原料のいずれかもしくは両方として、液体供給原料の再循環を含む必要はない。しかし、特定の実施形態では、1つ以上の中間ストリームの再循環が使用される場合がある。
【0060】
基油供給原料は、全未カット供給原料及びカット供給原料を含む、減圧軽油を含むか、または本質的に減圧軽油からなるか、または減圧軽油からなる場合がある。減圧軽油は、減圧軽油から得られた重質減圧軽油である場合があり、それは軽質留分及び重質留分にカットされており、その重質留分の留分境界点は約950~1050°Fの温度範囲である。VGOは、様々な供給原料から誘導された混合物である場合があり、かつ、異なる量の定義された沸点範囲成分を含む場合がある。例えば、特定の供給原料から誘導されたVGOのある成分は、1050+°F含有量がより多いが、他のVGO成分は、VGOに対してより少ない1050+°F含有量の一因となる。
【0061】
脱ろう生成物及び/または水素化仕上げ脱ろう生成物は、典型的には、軽質基油製品及び重質基油製品として得られる。軽質基油製品は、一般に、公称粘度が100℃で約3~9cSt、または4~8cSt、または5~7cStの範囲であり、及び/または重質基油製品は、一般に、公称粘度が100℃で13~24cSt、または13~21cSt、または13~18cStの範囲である。脱ろう生成物は、少なくとも公称粘度が100℃で約6cStである軽質生成物、及び/または少なくとも公称粘度が100℃で13cSt以上、または100℃で13~16.5cSt、または100℃で約13~23cSt、またはそれらの組み合わせである重質生成物にさらに分離され得る。
【0062】
プロセスに関連する利点の1つは、軽質基油製品に対する重質基油製品の収量が、潤滑油供給原料ストリーム中に常圧残油供給原料を含まない同じプロセスと比較して、少なくとも約0.5液体体積%(L体積%)、または少なくとも約1L体積%、または少なくとも約2L体積%、または少なくとも約5L体積%増加し得ることである。いくつかの実施形態では、重質基油製品の収量は、基油供給原料ストリーム中に常圧残油供給原料を含まない同じプロセスと比較して、少なくとも約0.5L体積%、または少なくとも約1L体積%、または少なくとも約2L体積%、または少なくとも約5L体積%、または少なくとも約10L体積%、または少なくとも約20L体積%増加し得る。総ろう状物収量もまた、基油供給原料ストリーム中に常圧残油供給原料を含まない同じプロセスと比較して、少なくとも約0.5L体積%、または少なくとも約1L体積%、または少なくとも約2L体積%、または少なくとも約5L体積%増加し得る。
【0063】
別の態様において、本発明は、従来もしくは既存の基油プロセスを改変して、重質基油製品、特に、粘度が100℃で少なくとも約12.7cSt、または少なくとも約13cSt、または少なくとも約13.3cStである重質基油製品を製造する方法に関する。特に、基油供給原料ストリームを水素化分解及び脱ろう工程に供して、より軽質な生成物及びより重質な生成物を含む脱ろう生成物を形成することを含む基油プロセスは、常圧残油供給原料を含む基油供給原料を基油プロセスの水素化分解及び脱ろう工程に供して、脱ろう生成物を生成することによる本発明に従って改変することができる。必要に応じて、さらに水素化仕上げ条件下で脱ろう生成物を水素化仕上げ触媒と接触させて、水素化仕上げ脱ろう生成物を生成することができる。
【0064】
本発明はさらに、基油供給原料ストリームまたはその留分から、粘度が100℃で少なくとも約12.7cSt、または少なくとも約13cSt、または少なくとも約13.3cStである重質基油を製造するプロセスに関し、該プロセスは、常圧残油供給原料、及び任意選択で基油供給原料を含む基油供給原料ストリームを得ることと、基油供給原料ストリームを前端留分境界点が約700°F以上、及び後端留分境界点が約900°F以下の減圧軽油に分離して、中質減圧軽油MVGO留分及び重質減圧軽油HVGO留分を形成することと、水素化分解条件下でHVGO留分を水素化分解触媒と接触させて、水素化分解生成物を形成することと、水素化分解生成物を気体留分及び液体留分に分離することと、液体留分を脱ろうして、脱ろう生成物を生成することと、必要に応じて、脱ろう生成物を水素化仕上げして、水素化仕上げ脱ろう生成物を生成することと、を含み、その結果、該プロセスにより、粘度が100℃で少なくとも約12.7cSt、または少なくとも約13cSt、または少なくとも約13.3cStである少なくとも1つの重質基油製品を製造する。
【0065】
従来のVGO供給原料の使用と比較して、本明細書では中質減圧軽油(MVGO)と呼ばれる、前端留分境界点が約700°F以上、及び後端留分境界点が約900°F以下の減圧軽油の使用により、基油供給原料としてMVGOを含まない同じプロセスよりも、MVGOが少なくとも約0.5L体積%、または1L体積%、または2L体積%、または3L体積%、または5L体積%多い、グループIII、またはグループIII+粘度が4cSt、100℃のろう状製品の収量の増加がもたらされる。
【0066】
本発明はさらに、2つのプロセスの態様を組み合わせるプロセス、すなわち、供給原料を使用して狭い留分境界点のMVGO留分を誘導し、かつ同じもしくは異なる供給原料を常圧残油留分に対して使用するプロセスに関連する。基油供給原料、またはその留分から基油を製造するために組み合わせたプロセスは、基油供給原料、またはその留分からの常圧残油留分を得ることと、基油供給原料、またはその留分、及び/または基油常圧残油留分を、前端留分境界点が約700°F以上、及び後端留分境界点が約900°F以下の狭い留分境界点の減圧軽油留分に分離して、MVGO留分及び残油HVGO留分を形成することと、第1のプロセスでHVGO留分を常圧残油供給原料として使用して、脱ろう生成物及び/または水素化仕上げ脱ろう生成物を調製することと、第2のプロセスでMVGO留分を基油供給原料として使用して、粘度指数が脱ろう後120以上である脱ろう生成物及び/または水素化仕上げ脱ろう生成物を調製して、それと同時に、粘度が100℃で少なくとも約12.7cSt、または少なくとも約13cSt、または少なくとも約13.3cStである少なくとも1つの重質基油製品を製造することと、を含む。
【0067】
特定の実施形態では、基油供給原料は、タイトオイル、特にライトタイトオイル、またはその留分を含む場合がある。狭い留分境界点の減圧軽油留分はまた、ライトタイトオイルから誘導される常圧残油留分を含む、常圧残油留分から誘導することができる。
【0068】
有利には、AR供給原料のMVGO及びHVGO留分への分留により、グループIII/III+基油製品を製造する能力が得られるのと同時に、HVGO留分を従来のVGO基油供給原料と共に使用して、重質グレード基油製品、特に粘度が100℃で少なくとも約12.7cSt、または少なくとも約13cSt、または少なくとも約13.3cStである重質基油製品を製造することが可能となる。例えば、製造され得るグループIII/III+製品は、粘度が100℃で約4cSt(例えば、100℃で3~5cSt)である基油製品を含む。いくつかの実施形態では、グループIII/III+基油製品を製造するためにMVGOを使用することにより、結果としてかかる製品がより高い収量で得られる。
【0069】
本発明の実施形態による方法またはプロセスの図を図2aに概略的に示すが、ここでは、従来の基油水素化精製、水素化分解、水素化脱ろう、及び、水素化仕上げプロセス工程、条件、及び触媒を用いている。図1の先行技術の基油プロセス概略図と比較して、図2aは、VGOと常圧残油(AR)との原料混合物の使用を示しており、通常、従来のプロセスでは、VGO基油供給原料が使用される。図2bは、中質減圧軽油留分(MVGO)及び重質VGO留分(HVGO)を形成するためのAR供給原料の使用をさらに示す。ここで、MVGO留分供給原料ストリームを使用して、グループIII/III+基油製品を製造し、かつHVGO留分供給原料ストリームを従来のVGO基油供給原料と組み合わせて重質基油製品を製造する。
【0070】
プロセス及び方法における水素化分解、脱ろう、及び水素化仕上げ触媒としての使用に適した触媒、ならびに関連するプロセス条件については、例えば、米国特許公開第3,852,207号;同第3,929,616号;同第6,156,695号;同第6,162,350号;同第6,274,530号;同第6,299,760号;同第6,566,296号;同第6,620,313号;同第6,635,599号;同第6,652,738号;同第6,758,963号;同第6,783,663号;同第6,860,987号;同第7,179,366号;同第7,229,548号;同第7,232,515号;同第7,288,182号;同第7,544,285号,7,615,196号;同第7,803,735号;同第7,807,599号;同第7,816,298号;同第7,838,696号;同第7,910,761号;同第7,931,799号;同第7,964,524号;同第7,964,525号;同第7,964,526号;同第8,058,203号;同第10,196,575号;WO2017/044210などを含む、複数の出願で記載されている。好適な触媒としては、一般に、担体触媒、すなわち、本明細書に記載し、かつ当技術分野において既知の1つ以上の担体を含む触媒が挙げられる。非担体触媒またはバルク触媒、例えば、米国第2015/0136646号に記載されているような混合金属硫化物触媒は、通常、本プロセスで使用する必要はない。
【0071】
水素化分解に適した触媒は、例えば、活性分解成分担体と共に、水素化-脱水素活性を有する材料を含む。このような触媒は、多くの特許及び参考文献に詳しく記載されている。例示的な分解成分担体としては、シリカ-アルミナ、シリカ-酸化ジルコニア複合材料、酸処理粘土、ゼオライトA、フォージャサイト、ゼオライトX、及びゼオライトYなどの結晶性アルミノケイ酸塩ゼオライトモレキュラーシーブ、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。触媒の水素化-脱水素成分は、好ましくは、VIII族金属及びその化合物、ならびにVIB族金属及びその化合物から選択される金属を含む。好ましいVIII族金属成分としては、コバルト及びニッケル、特にその酸化物及び硫化物が挙げられる。好ましいVIB族成分は、モリブデン及びタングステンの酸化物及び硫化物である。水素化分解プロセス工程における使用に適した水素化分解触媒の例は、ニッケル-タングステン-シリカ-アルミナ、ニッケル-モリブデン-シリカ-アルミナ、及びコバルト-モリブデン-シリカ-アルミナの組み合わせである。このような触媒は、その組成及び調製に応じて、水素化及び分解に対する活性、及び長時間の使用の間に高い活性を維持する能力が異なる場合がある。
【0072】
典型的な水素化分解反応条件には、例えば、450°F~900°F(232℃~482℃)、例えば、650°F~850°F(343℃~454℃)の温度;500psig~5000psig(3.5MPa~34.5MPaゲージ)、例えば、1500psig~3500psig(10.4MPa~24.2MPaゲージ)の圧力;0.1時間-1~15時間-1(体積/体積)、例えば、0.25時間-1~2.5時間-1の液時空間速度(LHSV)に換算した液体反応物供給速度;液体基油(潤滑油)供給原料の500SCF/bbl~5000SCF/bbl(89~890m/m供給原料)のH/炭化水素比率に換算した水素供給速度、及び/または500~3000psigなど、200psigを超える水素分圧;ならびに1000~7000SCF/Bなどの500SCF/Bを超える水素再循環速度が含まれる。
【0073】
水素化脱ろうは主に、基油からワックスを除去することによって、基油の流動点を低下させるため、及び/または基油の曇り点を低下させるために使用される。通常、脱ろうには、ワックスを処理するために触媒プロセスが使用され、脱ろう原料は、一般に、粘度指数を高め、芳香族化合物及びへテロ原子含有量を減らし、かつ脱ろう原料中の低沸点成分の量を減らすために、脱ろうの前に品質改善される。一部の脱ろう触媒は、ろう状分子を低分子量分子に分解することによって、ワックス転化反応を達成する。その他の脱ろうプロセスにより、炭化水素原料に含有されているワックスを、ワックス異性化によってプロセスに転化して、対照物である非異性化分子よりも流動点が低い異性化分子を生成することもできる。本明細書で使用する場合、異性化は、触媒水素異性化条件下でワックス分子の異性化で水素を使用するための水素異性化プロセスを包含する。
【0074】
脱ろうは、一般に、脱ろう供給原料を水素異性化によって処理して、少なくともn‐パラフィンを転化して、イソパラフィンを含む異性化された生成物を形成することを含む。脱ろう工程での使用に好適な異性化触媒としては、担体上のPt及び/またはPdが挙げられるが、これらに限定されない。好適な担体としては、ゼオライトCIT-1、IM-5、SSZ-20、SSZ-23、SSZ-24、SSZ-25、SSZ-26、SSZ-31、SSZ-32、SSZ-32x、SSZ-33、SSZ-35、SSZ-36、SSZ-37、SSZ-41、SSZ-42、SSZ-43、SSZ-44、SSZ-46、SSZ-47、SSZ-48、SSZ-51、SSZ-56、SSZ-57、SSZ-58、SSZ-59、SSZ-60、SSZ-61、SSZ-63、SSZ-64、SSZ-65、SSZ-67、SSZ-68、SSZ-69、SSZ-70、SSZ-71、SSZ-74、SSZ-75、SSZ-76、SSZ-78、SSZ-81、SSZ-82、SSZ-83、SSZ-86、SSZ-91、SSZ-95、SUZ-4、TNU-9、ZSM-S、ZSM-12、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-35、ZSM-48、EMT型ゼオライト、FAU型ゼオライト、FER型ゼオライト、MEL型ゼオライト、MFI型ゼオライト、MTT型ゼオライト、MTW型ゼオライト、MWW型ゼオライト、MRE型ゼオライト、TON型ゼオライト、SM-3、SM-7、SAPO-ll、SAPO-31、SAPO-41、MAPO-ll及びMAPO-31などの結晶性アルミノリン酸塩に基づくその他のモレキュラーシーブ物質が挙げられるが、これらに限定されない。また、異性化には、ベータもしくはゼオライトYモレキュラーシーブ、シリカ、アルミナ、シリカ-アルミナ及びこれらの組み合わせなどの酸性担体物質に担持されたPt及び/またはPd触媒が必要であることもある。好適な異性化触媒については、特許文献に詳しく記載されており、例えば、米国特許第4,859,312号;同第5,158,665号;及び同第5,300,210号を参照されたい。
【0075】
水素化脱ろう条件は、一般に、使用される原料、使用される触媒、触媒の前処理、所望の収量、及び基油の所望の特性に依存する。典型的な条件には、例えば、500°F~775°F(260℃~413℃)の温度;15psig~3000psig(0.10MPa~20.68MPaゲージ)の圧力;0.25時間-1~20時間-1のLHSV;及び2000SCF/bbl~30,000SCF/bbl(356~5340m/m原料)の水素対供給速度が含まれる。一般に、水素は、生成物から分離され、異性化ゾーンへ再循環される。好適な脱ろう条件及びプロセスは、例えば、米国特許第5,135,638号、同第5,282,958号、及び同第7,282,134号に記載されている。
【0076】
ろう状製品W220及びW600を脱ろうして、220N及び600Nニュートラル製品を形成することができ、これらは、潤滑油基油として、または潤滑剤配合物中での使用に適している(またはより適している)場合がある。例えば、脱ろう生成物は、新しい基油を生成するか、または既存の基油の特性を改変するために、例えば、220N及び600Nのような特定の基油グレードに対する粘度目標条件またはNoack目標条件などの特定の目標条件を満たすために、既存の潤滑油基油と混合または配合され得る。異性化及び混合を用いて、基油の流動点及び曇り点を調整して、適正値を維持することができる。ノルマルパラフィンは、他の基油成分と混合されて、その後、触媒異性化され得るが、これには、ノルマルパラフィンと、異性化された生成物を混合することが含まれる。脱ろう工程で製造され得る潤滑油基油は、軽質生成物を除去するために分離工程で処理される場合がある。潤滑油基油は、潤滑油基油を製造するために、常圧蒸留、及び任意選択で減圧蒸留を用いた蒸留によってさらに処理され得る。
【0077】
典型的な水素化精製条件は、広範囲にわたって変化する。概して、全体的なLHSVは、約0.25時間-1~10時間-1(体積/体積)、あるいは約0.5時間-1~1.5時間-1である。全圧力は、200psig~3000psigであるか、あるいは約500psia~約2500psiaの範囲である。H/炭化水素比率に換算される水素供給速度は、通常、500SCF/Bbl~5000SCF/bbl(89~890m/m3供給原料)であり、かつ、多くの場合、1000~3500SCF/Bblである。反応器中の反応温度は、典型的には、約300°F~約750°F(約150℃~約400℃)の範囲であるか、あるいは、450°F~725°F(230℃~385℃)の範囲となるであろう。
【0078】
実際には、水素化精製(HDT、HDM、DEMETなど)触媒、水素化分解(HCR)触媒、水素化脱ろう(HDW)触媒、及び水素化仕上げ(HFN)触媒を含む、層状の触媒系を用いて、シングルまたはマルチ反応器システムを使用して、中間基油及び/または完成基油を製造することができる。典型的な構成には、2つの反応器が含まれ、最初の反応器は、DEMET、HDT前処理、HCR、及び/またはHDW活性をもたらす層状触媒を含んでいる。類似の機能を果たす異なる触媒、例えば、異なるレベルの水素化分解活性もまた、例えば、シングル反応器内の異なる層で、または別々の反応器で使用することもできる。
【0079】
誤解を避けるために、本出願は、以下の番号の付いた条項に記載されている主題に関する。
1.粘度が100℃で少なくとも約12.7cSt、または少なくとも約13cSt、または少なくとも約13.3cStである重質基油を製造するのに有用である、基油を製造するプロセスであって、
水素化分解条件下で常圧残油供給原料及び任意選択で基油供給原料を含む基油供給原料ストリームを水素化分解触媒と接触させて、水素化分解生成物を生成することと、
前記水素化分解生成物を気体留分及び液体留分に分離することと、
水素異性化条件下で前記液体留分を脱ろう触媒と接触させて、脱ろう生成物を生成することと、
必要に応じて、水素化仕上げ条件下で前記脱ろう生成物を水素化仕上げ触媒と接触させて、水素化仕上げ脱ろう生成物を生成することと、を含み、
前記プロセスにより、粘度が100℃で少なくとも約12.7cSt、または少なくとも約13cSt、または少なくとも約13.3cStである重質基油製品を含む少なくとも1つの基油製品を製造する、前記プロセス。
【0080】
2.基油プロセスを改変して、粘度が100℃で少なくとも約12.7cSt、または少なくとも約13cSt、または少なくとも約13.3cStである重質基油を製造するために使用される方法であって、前記基油プロセスは、基油供給原料ストリームを水素化分解及び脱ろう工程に供して、軽質生成物及び重質生成物を含む脱ろう生成物を形成することを含み、
前記方法は、
前記常圧残油供給原料を含む前記基油供給原料ストリームを、前記基油プロセスの前記水素化分解及び脱ろう工程に供すること、を含み、
前記改変された基油プロセスは、
水素化分解条件下で常圧残油供給原料及び任意選択で基油供給原料を含む基油供給原料ストリームを水素化分解触媒と接触させて、水素化分解生成物を生成することと、
前記水素化分解生成物を少なくとも気体留分及び液体留分に分離することと、
水素異性化条件下で前記液体留分を脱ろう触媒と接触させて、脱ろう生成物を生成することと、
必要に応じて、水素化仕上げ条件下で前記脱ろう生成物を水素化仕上げ触媒と接触させて、水素化仕上げ脱ろう生成物を生成することと、を含み、
前記改変されたプロセスにより、粘度が100℃で少なくとも約12.7cSt、または少なくとも約13cSt、または少なくとも約13.3cStである少なくとも1つの基油製品を製造する、条項1に記載の方法。
【0081】
3.条項1に記載の基油供給原料ストリーム、またはその留分から、粘度が100℃で少なくとも約12.7cSt、または少なくとも約13cSt、または少なくとも約13.3cStである重質基油を製造するプロセスであって、
常圧残油供給原料及び任意選択で基油供給原料を含む基油供給原料ストリームを得ることと、
前記基油供給原料ストリームまたはその留分を、前端留分境界点が約700°F以上、及び後端留分境界点が約900°F以下の減圧軽油留分に分離して、中質減圧軽油MVGO留分及び重質減圧軽油HVGO留分を形成することと、
条項1に記載のプロセスで前記常圧残油供給原料として前記HVGO留分を使用することと、を含む、前記プロセス。
【0082】
4.前記基油供給原料ストリームは、基油供給原料を含む、条項1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
【0083】
5.前記常圧残油供給原料は、
API比重が20~60もしくは20~45もしくは25~45の範囲、または少なくとも20、もしくは少なくとも22であるか、または任意選択で前記基油供給原料のAPIよりも高いこと;
VIが50~200もしくは70~190もしくは90~180の範囲、または少なくとも80であるか、または任意選択で前記基油供給原料のVIよりも高いこと;
粘度が100℃で3~30cStもしくは3~25cStもしくは3~20cStもしくは3~10cStの範囲、または少なくとも3cSt、もしくは少なくとも4cSt、または10cSt未満であること;
粘度が70℃で5~50cStもしくは5~30cStもしくは5~20cStもしくは5~15cStの範囲、または少なくとも5cSt、もしくは少なくとも6cStであること;
高温Cアスファルテン含有量が約0.01~0.3重量%もしくは約0.01~0.2重量%もしくは約0.02~0.15重量%の範囲、または約0.3重量%未満、もしくは約0.2重量%未満、もしくは約0.1重量%未満であること;
ワックス含有量が5~90重量%もしくは5~80重量%もしくは5~70重量%もしくは5~60重量%もしくは5~50重量%もしくは5~40重量%もしくは5~30重量%もしくは10~25重量%の範囲、または少なくとも5重量%、もしくは少なくとも10重量%、もしくは少なくとも15重量%であるか、または任意選択で前記基油供給原料のワックス含有量よりも多いこと;
窒素含有量が2500ppm未満、または2000ppm未満、または1500ppm未満、または1000ppm未満、または800ppm未満、または500ppm未満、または200ppm未満、または100ppm未満であること;
硫黄含有量が8000ppm未満、もしくは6000ppm未満、もしくは4000ppm未満、もしくは3000ppm未満、もしくは2000ppm未満、もしくは1000ppm未満、もしくは500ppm未満、もしくは200ppm未満、または100~8000ppm、もしくは100~6000ppm、もしくは100~4000ppm、もしくは100~2000ppm、もしくは100~1000ppm、もしくは100~500ppm、もしくは100~200ppmの範囲であること;及び/または
1050+°F含有量が2~50重量%、2~40重量%、もしくは4~50重量%、もしくは4~40重量%、もしくは8~50重量%、もしくは8~40重量%の範囲、または最大50重量%、もしくは最大40重量%、もしくは最大30重量%、もしくは最大20重量%、もしくは最大10重量%であるか、任意選択で前記基油供給原料の1050+°F含有量よりも多いこと、
の条件のうち1つ以上を満たす、条項1~4のいずれか1項に記載のプロセス。
【0084】
6.前記常圧残油供給原料は、高温Cアスファルテン含有量が約0.3重量%未満、または約0.2重量%未満、または約0.1重量%未満の範囲であり;かつ窒素含有量が2500ppm未満、または2000ppm未満、または1500ppm未満、または1000ppm未満、または800ppm未満、または500ppm未満、または200ppm未満、または100ppm未満である、条項1~5のいずれか1項に記載のプロセス。
【0085】
7.前記常圧残油供給原料は、高温Cアスファルテン含有量が約0.3重量%未満、または約0.2重量%未満、または約0.1重量%未満の範囲であり;窒素含有量が2500ppm未満、または2000ppm未満、または1500ppm未満、または1000ppm未満、または800ppm未満、または500ppm未満、または200ppm未満、または100ppm未満であり;かつ金属含有量が約5ppm未満のニッケル、または約3ppm未満のバナジウム、または約4ppm未満の鉄であるか、あるいはこれらの組み合わせである、条項1~6のいずれか1項に記載のプロセス。
【0086】
8.前記常圧残油供給原料は、
粘度が100℃で10cSt未満、または3~10cStの範囲であること;
高温Cアスファルテン含有量が約0.1重量%未満、または約0.01~0.1重量%の範囲であること;
MCRTが2重量%未満であること;
窒素含有量が800ppm未満であること;
硫黄含有量が3000ppm未満であること;
ニッケル含有量が5ppm未満であること;
バナジウム含有量が3ppm未満であること;
鉄含有量が4ppm未満であること、
の条件を満たす、条項1~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【0087】
9.前記基油供給原料は、
API比重が15~40もしくは15~30もしくは15~25の範囲、または少なくとも15、もしくは少なくとも17であるか、任意選択で前記常圧残油供給原料よりも低いこと;
VIが30~90または40~90または50~90または50~80の範囲であるか、任意選択で前記常圧残油供給原料のVIよりも低いこと;
粘度が100℃で3~30cStもしくは3~25cStもしくは3~20cStの範囲、または少なくとも3cSt、もしくは少なくとも4cStであること;
粘度が70℃で5~50cStもしくは5~80重量%もしくは5~70重量%もしくは5~60重量%もしくは5~50重量%もしくは5~40重量%もしくは5~30重量%もしくは5~20cStもしくは5~15cStの範囲、または少なくとも5cSt、もしくは少なくとも6cStであること;
高温Cアスファルテン含有量が0.01~0.3重量%もしくは0.01~0.2重量%もしくは0.02~0.15重量%の範囲、または0.3重量%未満、もしくは0.2重量%未満であること;
ワックス含有量が5~90重量%もしくは5~80重量%もしくは5~70重量%もしくは5~60重量%もしくは5~50重量%もしくは5~40重量%もしくは5~30重量%もしくは10~25重量%の範囲、または少なくとも5重量%、もしくは少なくとも10重量%、もしくは少なくとも15重量%であるか、または任意選択で前記常圧残油供給原料のワックス含有量よりも少ないこと;
窒素含有量が2500ppm未満もしくは2000ppm未満もしくは1500ppm未満もしくは1000ppm未満、または1000~5000ppm、もしくは2000~5000ppm、もしくは1000~4000ppm、もしくは1000~3000ppmの範囲であること;
硫黄含有量が40000ppm未満、もしくは35000ppm未満、もしくは30000ppm未満、もしくは25000ppm未満、もしくは20000ppm未満、もしくは15000ppm未満、もしくは10000ppm、または1000~40000ppmもしくは1000~35000ppmもしくは1000~30000ppmもしくは1000~25000ppmもしくは1000~15000ppmもしくは1000~10000ppmの範囲であること;及び/または
1050+°F含有量が10重量%未満、もしくは8重量%未満、もしくは7重量%未満、もしくは6重量%未満、もしくは5重量%未満、もしくは4重量%未満、もしくは3重量%未満、もしくは2重量%未満、または2~15重量%もしくは2~10重量%もしくは1~7重量%の範囲であるか、任意選択で前記常圧残油供給原料の1050+°F含有量よりも少ないこと、
の条件のうち1つ以上を満たす、条項1~8のいずれか1項に記載のプロセス。
【0088】
10.前記基油供給原料は、窒素含有量が2500ppm未満もしくは2000ppm未満もしくは1500ppm未満もしくは1000ppm未満、または1000~5000ppm、もしくは2000~5000ppm、もしくは1000~4000ppm、もしくは1000~3000ppmの範囲であるか;あるいは硫黄含有量が40000ppm未満、もしくは35000ppm未満、もしくは30000ppm未満、もしくは25000ppm未満、もしくは20000ppm未満、もしくは15000ppm未満、もしくは10000ppm、または1000~40000ppmもしくは1000~35000ppmもしくは1000~30000ppmもしくは1000~25000ppmもしくは1000~15000ppmもしくは1000~10000ppmの範囲であるか;あるいは、1050+°F含有量が10重量%未満、もしくは8重量%未満、もしくは7重量%未満、もしくは6重量%未満、もしくは5重量%未満、もしくは4重量%未満、もしくは3重量%未満、もしくは2重量%未満、または2~15重量%もしくは2~10重量%もしくは1~7重量%の範囲であるか、任意選択で前記常圧残油供給原料の1050+°F含有量よりも少ないか、あるいはそれらの組み合わせである、条項1~9のいずれか1項に記載のプロセス。
【0089】
11.前記基油供給原料ストリームは、5~95重量%の常圧残油供給原料及び95~5重量%の基油供給原料、または10~90重量%の常圧残油供給原料及び90~10重量%の基油供給原料、または10~80重量%の常圧残油供給原料及び90~20重量%の基油供給原料、または10~60重量%の常圧残油供給原料及び90~40重量%の基油供給原料、または10~50重量%の常圧残油供給原料及び50~90重量%の基油供給原料、または10~40重量%の常圧残油供給原料及び90~60重量%の基油供給原料、または10~30重量%の常圧残油供給原料及び90~70重量%の基油供給原料、または30~60重量%の常圧残油供給原料及び70~40重量%の基油供給原料、または40~60重量%の常圧残油供給原料及び60~40重量%の基油供給原料を含む、条項1~10のいずれか1項に記載のプロセス。
【0090】
12.前記基油供給原料ストリームは、追加の全原油供給原料を含有しないか、または前記基油供給原料ストリームは、減圧残油供給原料を含有しないか、または前記基油供給原料ストリームは、脱れき油を含有しないか、または前記基油供給原料ストリームは、常圧残油供給原料及び任意選択で基油供給原料のみを含有する、条項1~11のいずれか1項に記載のプロセス。
【0091】
13.前記プロセスは、前記基油供給原料ストリームの一部としてまたは前記常圧残油供給原料及び前記基油供給原料のいずれかもしくは両方として、液体供給原料の再循環を含まない、条項1~12のいずれか1項に記載のプロセス。
【0092】
14.前記常圧残油供給原料及び前記基油供給原料は、同じものではない、条項1~13のいずれか1項に記載のプロセス。
【0093】
15.前記常圧残油供給原料と前記基油供給原料とは、窒素含有量、硫黄含有量、1050+°F含有量、またはそれらの組み合わせが異なる、条項14に記載のプロセス。
【0094】
16.前記基油供給原料は、減圧軽油を含むか、または減圧軽油であるか、または本質的に減圧軽油からなるか、または減圧軽油からなる、条項1~15のいずれか1項に記載のプロセス。
【0095】
17.前記減圧軽油は、減圧軽油から得られた重質減圧軽油であり、軽質留分及び重質留分にカットされており、前記重質留分の留分境界点は約950~1050°Fの温度範囲である、条項1~16のいずれか1項に記載のプロセス。
【0096】
18.前記脱ろう生成物及び/または前記水素化仕上げ脱ろう生成物は、軽質基油製品及び重質基油製品として得られる、条項1~17のいずれか1項に記載のプロセス。
【0097】
19.前記軽質基油製品は、公称粘度が100℃で3~9cSt、または4~8cSt、または5~7cStの範囲であり、及び/または前記重質基油製品は、公称粘度が100℃で13~24cSt、または13~21cSt、または13~18cStの範囲である、条項18に記載のプロセス。
【0098】
20.前記軽質基油製品に対する前記重質基油製品の収量は、前記基油供給原料ストリーム中に前記常圧残油供給原料を含まない同じプロセスと比較して、少なくとも約0.5L体積%、または少なくとも約1L体積%、または少なくとも約2L体積%、または少なくとも約5L体積%増加する、条項18に記載のプロセス。
【0099】
21.前記総ろう状基油収量は、前記基油供給原料ストリーム中に前記常圧残油供給原料を含まない同じプロセスと比較して、少なくとも約0.5L体積%、または少なくとも約1L体積%、または少なくとも約2L体積%、または少なくとも約5L体積%増加する、条項18に記載のプロセス。
【0100】
22.前記脱ろう生成物は、少なくとも公称粘度が100℃で約5.5~7.5cStの範囲であるより軽質な生成物、または少なくとも公称粘度が100℃で13cSt以上、もしくは100℃で13~16.5cSt、もしくは100℃で18~23cSt、もしくはそれらの組み合わせであるより重質な生成物にさらに分離される、条項1~21のいずれか1項に記載のプロセス。
【0101】
23.水素化分解条件下で前記MVGO留分を水素化分解触媒と接触させて、水素化分解生成物を形成することと、
前記水素化分解生成物を気体留分及び液体留分に分離することと、
水素異性化条件下で前記液体留分を脱ろう触媒と接触させて、脱ろう生成物を生成することと、
必要に応じて、水素化仕上げ条件下で前記脱ろう生成物を水素化仕上げ触媒と接触させて、水素化仕上げ脱ろう生成物を生成することと、をさらに含み、
前記脱ろう生成物及び/または前記水素化仕上げ脱ろう生成物は、粘度指数が脱ろう後120以上であるグループIIIまたはグループIII+基油製品を含む、
条項3に記載のプロセス。
【0102】
24.前記脱ろう生成物及び/または前記水素化仕上げ脱ろう生成物は、粘度指数が脱ろう後130以上であるか、または脱ろう後135以上であるか、または脱ろう後140以上であるグループIIIまたはグループIII+基油製品を含む、条項23に記載のプロセス。
【0103】
25.前記脱ろう生成物及び/または前記水素化仕上げ脱ろう生成物は、グループIIIまたはグループIII+基油製品を含む、条項23に記載のプロセス。
【0104】
26.前記水素化分解生成物は、粘度指数が少なくとも約135、または140、または145、または150である、条項23に記載のプロセス。
【0105】
27.前記基油供給原料は、タイトオイル、またはその留分を含み、及び/または前記常圧残油供給原料は、タイトオイル、またはその留分から誘導される、条項1~26のうち1項に記載のプロセス。
【0106】
28.公称粘度が100℃で13~16.5cStの範囲である、グループII基油製品。
【0107】
29.前記製品は、グレード800の基油である、条項22に記載のグループII基油製品。
【0108】
30.公称粘度が100℃で18~23cStの範囲である、グループII基油製品。
【0109】
31.前記製品は、グレード900の基油である、条項30に記載のグループII基油製品。
【0110】
32.請求項1~27のいずれか1項に記載のプロセスに従って製造される条項28~31のいずれか1項に記載のグループII基油製品。
【実施例
【0111】
減圧軽油(VGO)及び常圧残油(AR)のサンプルを市販の供給源から入手し、図2aに示すプロセススキームで使用した。
【0112】
0.5時間-1LHSV、1700~1800psiaの反応器H分圧、約4500scfbの水素原料軽油(再循環)比、及び700~770+°Fの範囲の反応器温度とするプロセス条件を使用した。温度及びその他のプロセス条件を、VIが約109、及び粘度が約100℃で6cStである軽質基油目標製品を製造するように選択した。重質基油留分については、以下の各実施例でさらに具体的に説明する。
【0113】
図2aによる各反応器への触媒の充填は、本明細書で前述したような従来の基油製造スキームに従った。触媒構成には、反応器触媒ベッドの上部に卑金属水素化脱金属(デメット)触媒の層、続いて、卑金属水素化精製触媒、さらにその後に、ゼオライト含有卑金属水素化分解触媒の層を含む、次第に活性が高まる層状触媒システムを含めた。
【0114】
実施例1-減圧軽油(VGO)供給原料(比較供給原料)
基油製品の製造に使用する市販の供給源から減圧軽油(VGO)供給原料のサンプルを入手し、比較基準ケースとして分析した。以下の実施例において、図1及び図2aに示すプロセス構造に従ってこのVGO供給原料を使用した。このVGO供給原料(サンプルID2358)の特性を表1に示す。
【表3】
【0115】
実施例2-常圧残油(AR)供給原料の特性
市販の供給源から常圧残油のサンプル(AR1~AR5)を入手し、分析した。本発明に従って供給原料成分として使用したこれらのARサンプルの特性を、表2に示す。
【表4-1】

【表4-2】
【0116】
比較のための従来のAR基油プロセス供給原料成分の特性を表2Aに提示する。表2に示す各ARは、表2Aに示すAR0とは大きく異なることを認識されよう。
【表5】
【0117】
実施例3-常圧残油(AR)供給原料と減圧軽油(VGO)供給原料との混合物の特性
実施例2の常圧残油AR1~AR5のサンプルを、実施例1の減圧軽油(VGO)供給原料と重量比に基づいて混合し、その混合物を分析した。本発明に従って例示的な供給原料として使用したこれらのAR/VGO混合物サンプルの特性を、表3に示す。
【表6-1】

【表6-2】
【0118】
実施例4-常圧残油(AR)供給原料と減圧軽油(VGO)供給原料との混合物-AR1/VGO混合物からの重質基油製造の評価
実施例3の常圧残油AR1と減圧軽油(VGO)との混合供給原料サンプルを、図2aに示したプロセスに従った重質基油製造に関して評価した。AR1/VGO供給原料混合物(45重量%のAR1、55重量%のVGO)全液体生成物を、8つの留分に蒸留し、その最も重質なものの留分境界点は911°Fであった。蒸留モデルは、40,000BPODの水素化分解装置の原料の全液体生成物を、以下の製品に蒸留することが可能であることを示した。
製品の36.2重量%に相当する14,460BPODのろう状重質ニュートラル基油製品(100℃で17.05cSt、114のVI、898°F+)、
製品の32.5重量%に相当する13,010BPODのろう状220ニュートラル基油製品(100℃で6.0cSt、108のVI、754~898°F)、
液体製品の68.7重量%に相当する27,470BPODの総ろう状基油製品、754°F+油。
【0119】
実施例5-常圧残油(AR)供給原料と減圧軽油(VGO)供給原料との混合物-AR2/VGO混合物からの重質基油製造の評価
実施例3の常圧残油AR2と減圧軽油(VGO)との混合供給原料サンプルを、図2aに示したプロセスに従った重質基油製造に関して評価した。
【0120】
基油の合計は、液体製品の56重量%である。個々の基油は以下の特性を有していた。
液体製品合計の34重量%は、ろう状220ニュートラル基油製品であった(100℃で6.0cSt、114のVI、750~905°F);
液体製品合計の24重量%は、重質ニュートラル基油製品であった(100℃で12.85cSt、118のVI、905°F+)。
【0121】
実施例6-常圧残油(AR)供給原料と減圧軽油(VGO)供給原料との混合物-AR3/VGO混合物からの重質基油製造の評価
実施例3の常圧残油AR3と減圧軽油(VGO)との混合供給原料サンプルを、図2aに示したプロセスに従った重質基油製造に関して評価した。基油の合計は、液体製品の56重量%である。個々の基油は以下の特性を有していた。
液体製品合計の34重量%は、ろう状220ニュートラル基油製品であった(100℃で6.0cSt、108のVI、750~903°F);
液体製品合計の22重量%は、重質-重質ニュートラル基油製品であった(100℃で14.50cSt、114のVI、903°F+)。
【0122】
実施例7-常圧残油(AR)供給原料と減圧軽油(VGO)供給原料との混合物-50%AR4/VGO混合物からの重質基油製造の評価
実施例3の常圧残油AR4を50%で、減圧軽油(VGO)と混合させた、サンプルID7200の混合供給原料を、図2aに示したプロセスに従った重質基油製造に関して評価した。基油の合計は、液体製品の68重量%である。個々の基油は以下の特性を有していた。
液体製品合計の55重量%は、ろう状220ニュートラル基油製品であった(100℃で6.0cSt、118のVI、708~977°F);
液体製品合計の13重量%は、高粘度の重質ニュートラル基油製品であった(100℃で21.12cSt、111のVI、977°F+)。
【0123】
実施例8-減圧軽油(VGO)供給原料を使用した比較供給原料からの重質基油製造の評価
実施例3の減圧軽油(VGO)の供給原料サンプルを、図1に示したプロセスに従った重質基油製造に関して評価した。基油の合計は、液体製品の48重量%である。個々の基油は以下の特性を有していた。
液体製品合計の27重量%は、ろう状220ニュートラル基油製品であった(100℃で6.0cSt、109のVI、750~885°F);
液体製品合計の21重量%は、重質ニュートラル基油製品であった(100℃で11.61cSt、116のVI、885°F+)。
【0124】
前述の実施例4~7では、重質ニュートラル基油は、比較基準ケースの実施例8で製造された重質ニュートラル製品よりも粘度が高い。具体的には、VGOのみから製造されるより重質な基油製品(実施例8、ARを含まない基準ケース)では、100℃で約13cStの目標粘度は達成されない。供給原料または供給原料混合物としての常圧残油の使用により、全ての水素化処理ルートの後に、超重質グレードの基油を有利に製造できることが明らかとなった。AR原料成分の使用により、結果として、より高い収量及びより高い製品品質が得られ、かつより重質な成分を含み、より高い終点の原料混合物を処理することが可能となる。分留目標及び条件の変更により、追加のまたは異なる特性を有する基油製品が得られる可能性があるが、全ての場合において、典型的なまたは標準的な基油供給原料単独のプロセスでは通常達成不可能な超重質基油の製造が、常圧残油供給原料の使用により可能となる。
【0125】
本発明の1つ以上の実施形態の上記の説明は、主に例示のためのものであり、変形形態を用いてよく、その上、その変形形態が、本発明の本質に組み込まれることは認識されている。本発明の範囲を判断する際には、下記の請求項を参照すべきである。
【0126】
米国特許の実施慣行の目的上、及び認められる場合には、その他の特許庁においては、本発明の上記の説明で引用したいずれの特許及び刊行物も、それらに含まれるいずれかの情報が、上記の開示内容と整合し及び/または上記の開示内容を補う限りにおいては、参照により、本明細書に援用される。
図1
図2a
図2b
【国際調査報告】