(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-15
(54)【発明の名称】ブライトストック基油生成物を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
C10G 65/12 20060101AFI20240207BHJP
【FI】
C10G65/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544767
(86)(22)【出願日】2022-01-26
(85)【翻訳文提出日】2023-09-22
(86)【国際出願番号】 US2022013848
(87)【国際公開番号】W WO2022164861
(87)【国際公開日】2022-08-04
(32)【優先日】2021-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トレビーノ、オラシオ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ミンフイ
(72)【発明者】
【氏名】レイ、グワン - ダオ
(72)【発明者】
【氏名】ファレル、トマス ラルフ
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA02
4H129CA08
4H129KA11
4H129KA12
4H129KB04
4H129KC13Y
4H129MA01
4H129MA12
4H129MB19B
4H129MB20A
4H129NA04
4H129NA05
4H129NA17
4H129NA32
4H129NA35
(57)【要約】
常圧残油フィードストックと、場合により基油フィードストックとを含む基油供給流から、ハイドロプロセシングを介してブライトストック基油を製造するための、改善された方法。概して、この方法は、常圧残油を含む基油供給流を水素化分解ステップ及び脱ろうステップに、ならびに場合により水素化仕上げステップに供して、100℃で少なくとも約22cStの粘度を有するブライトストックグレード基油生成物を含む基油生成物(複数可)を製造することを含む。本発明は、重質基油生成物、例えばブライトストック、ならびにグループII及び/またはグループIII/III+基油の製造に有用である。
【選択図】
図2a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブライトストック基油を製造するための方法であって、
常圧残油フィードストックと、場合により基油フィードストックとを含む基油供給流を、水素化分解条件下で水素化分解触媒に接触させて、水素化分解生成物を形成することと、
前記水素化分解生成物を気体留分及び液体留分に分離することと、
前記液体留分を、水素異性化条件下で脱ろう触媒に接触させて、脱ろう生成物を生成することと、
場合により、前記脱ろう生成物を、水素化仕上げ条件下で水素化仕上げ触媒に接触させて、水素化仕上げ脱ろう生成物を生成することとを含み、
前記常圧残油フィードストックが、約25°API超のAPI比重、約2ppm未満のニッケル及びバナジウム含有量、約1wt.%未満のMCR、ならびに約500ppm未満のアスファルテン含有量を有し、前記方法が、100℃で少なくとも約22cStの粘度を有するブライトストック基油生成物を生成する、前記方法。
【請求項2】
前記方法が、基油プロセスを修正して、100℃で少なくとも約22cStの粘度を有するブライトストック基油を生成するために使用され、前記基油プロセスが、基油供給流を水素化分解ステップ及び脱ろうステップに供して、軽質生成物及び重質生成物を含む脱ろう生成物を形成することを含み、前記方法が、
前記常圧残油フィードストックを含む前記基油供給流を、前記基油プロセスの前記水素化分解ステップ及び前記脱ろうステップに供することを含み、
前記修正された基油プロセスが、
常圧残油フィードストックと、場合により基油フィードストックとを含む基油供給流を、水素化分解条件下で水素化分解触媒に接触させて、水素化分解生成物を形成することと、
前記水素化分解生成物を少なくとも1つの気体留分及び1つの液体留分に分離することと、
前記液体留分を、水素異性化条件下で脱ろう触媒に接触させて、脱ろう生成物を生成することと、
場合により、前記脱ろう生成物を、水素化仕上げ条件下で水素化仕上げ触媒に接触させて、水素化仕上げ脱ろう生成物を生成することとを含み、
前記修正されたプロセスが、100℃で少なくとも約22cStの粘度を有するブライトストック基油生成物を生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1に記載の、基油供給流またはその留分から100℃で少なくとも約22cStの粘度を有するブライトストック基油を製造するための方法であって、
常圧残油フィードストックと、場合により基油フィードストックとを含む基油供給流を準備することと、
前記基油供給流またはその留分を、約700°F以上のフロントエンドカットポイント及び約900°F以下のバックエンドカットポイントを有する減圧軽油留分に分離して、中質減圧軽油MVGO留分及び重質減圧軽油HHVGO留分を形成することと、
前記HHVGO留分を、請求項1に記載の方法における常圧残油フィードストックとして使用することとを含む、前記方法。
【請求項4】
前記基油供給流が基油フィードストックを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記常圧残油フィードストックが、以下の条件:
25~60、もしくは25~45の範囲の、または場合により前記基油フィードストックのAPIよりも高いAPI比重、
50~200もしくは70~190もしくは90~180の範囲、または少なくとも80の、または場合により前記基油フィードストックのVIよりも高いVI、
100℃で、3~30cSt、もしくは3~25cSt、もしくは3~20cSt、もしくは3~10cSTの範囲、または少なくとも3cSt、もしくは少なくとも4cSt、または10cSt未満の粘度、
70℃で、5~25cSt、もしくは5~20cSt、もしくは5~15cStの範囲、または少なくとも5cSt、もしくは少なくとも6cStの粘度、
0.01~0.3wt.%、もしくは0.01~0.2wt.%、もしくは0.02~0.15wt.%の範囲、または0.3wt.%未満、もしくは0.2wt.%未満、もしくは0.1wt.%未満の高温C
7アスファルテン含有量、
5~40wt.%、もしくは5~30wt.%、もしくは10~25wt.%の範囲、または少なくとも5wt.%、もしくは少なくとも10wt.%、もしくは少なくとも15wt.%の、または場合により前記基油フィードストックのろう含有量よりも高いろう含有量、
2500ppm未満、または2000ppm未満、または1500ppm未満、または1000ppm未満、または800ppm未満、または500ppm未満、または200ppm未満、または100ppm未満の窒素含有量、
8000ppm未満、もしくは6000ppm未満、もしくは4000ppm未満、もしくは3000ppm未満、もしくは2000ppm未満、もしくは1000ppm未満、もしくは500ppm未満、もしくは200ppm未満、または100~8000ppm、もしくは100~6000ppm、もしくは100~4000ppm、もしくは100~2000ppm、もしくは100~1000ppm、もしくは100~500ppm、もしくは100~200ppmの範囲の硫黄含有量、及び/または
5~50wt.%、もしくは2~40wt.%、もしくは4~50wt.%、もしくは4~40wt.%、もしくは8~50wt.%、もしくは8~40wt.%の範囲、または最大50wt.%、もしくは最大40wt.%、もしくは最大30wt.%、もしくは最大20wt.%、もしくは最大10wt.%の、場合により前記基油フィードストックの1050+°F含有量よりも高い1050+°F含有量、のうちの1つ以上を満たす、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記常圧残油フィードストックが、約0.3wt.%未満、または約0.2wt.%未満、または約0.1wt.%未満の範囲の高温C
7アスファルテン含有量、及び2500ppm未満、または2000ppm未満、または1500ppm未満、または1000ppm未満、または800ppm未満、または500ppm未満、または200ppm未満、または100ppm未満の窒素含有量を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記常圧残油フィードストックが、約0.3wt.%未満、または約0.2wt.%未満、または約0.1wt.%未満の範囲の高温C
7アスファルテン含有量と、約2500ppm未満、または約2000ppm未満、または約1500ppm未満、または約1000ppm未満、または約800ppm未満、または約500ppm未満、または200ppm未満、または100ppm未満の窒素含有量と、約5ppm未満のニッケル、または約3ppm未満のバナジウム、または約4ppm未満の鉄、またはこれらの組合せの金属含有量とを有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記常圧残油フィードストックが、以下の条件:
100℃で、10cSt未満、または3~10cStの範囲の粘度、
約0.1wt.%未満、または約0.01~0.1wt.%の範囲の高温C
7アスファルテン含有量、
2wt.%未満のMCRT、
800ppm未満の窒素含有量、
3000ppm未満の硫黄含有量、
5ppm未満のニッケル含有量、
3ppm未満のバナジウム含有量、及び
4ppm未満の鉄含有量を満たす、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記基油フィードストックが、以下の条件:
15~40、もしくは15~30、もしくは15~25の範囲、または少なくとも15、もしくは少なくとも17の、場合により前記常圧残油フィードストックよりも低いAPI比重、
30~90、もしくは40~90、もしくは50~90、もしくは50~80の範囲の、場合により前記常圧残油フィードストックのVIよりも低いVI、
100℃で、3~30cSt、もしくは3~25cSt、もしくは3~20cStの範囲、または少なくとも3cSt、もしくは少なくとも4cStの粘度、
70℃で、5~50cSt、もしくは5~80wt.%、もしくは5~70wt.%、もしくは5~60wt.%、もしくは5~50wt.%、もしくは5~40wt.%、もしくは5~30wt.%、もしくは5~20cSt、もしくは5~15cStの範囲、または少なくとも5cSt、もしくは少なくとも6cStの粘度、
0.01~0.3wt.%、もしくは0.01~0.2wt.%、もしくは0.02~0.15wt.%の範囲、または0.3wt.%未満、もしくは0.2wt.%未満の高温C
7アスファルテン含有量、
5~90wt.%、もしくは5~80wt.%、もしくは5~70wt.%、もしくは5~60wt.%、もしくは5~50wt.%、もしくは5~40wt.%、もしくは5~30wt.%、もしくは10~25wt.%の範囲、または少なくとも5wt.%、もしくは少なくとも10wt.%、もしくは少なくとも15wt.%の、または場合により、前記常圧残油フィードストックのろう含有量よりも低いろう含有量、
2500ppm未満、もしくは2000ppm未満、もしくは1500ppm未満、もしくは1000ppm未満、または1000~5000ppm、もしくは2000~5000ppm、もしくは1000~4000ppm、もしくは1000~3000ppmの範囲の窒素含有量、
40000ppm未満、もしくは35000ppm未満、もしくは30000ppm未満、もしくは25000ppm未満、もしくは20000ppm未満、もしくは15000ppm未満、もしくは10000ppm未満、または1000~40000ppm、もしくは1000~35000ppm、もしくは1000~30000ppm、もしくは1000~25000ppm、もしくは1000~15000ppm、もしくは1000~10000ppmの範囲の硫黄含有量、及び/または
10wt.%未満、もしくは8wt.%未満、もしくは7wt.%未満、もしくは6wt.%未満、もしくは5wt.%未満、もしくは4wt.%未満、もしくは3wt.%未満、もしくは2wt.%未満、または2~15wt.%、もしくは2~10wt.%、もしくは1~7wt.%の範囲の、場合により、前記常圧残油フィードストックの1050+°F含有量よりも低い1050+°F含有量、のうちの1つ以上を満たす、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記基油フィードストックが、2500ppm未満、もしくは2000ppm未満、もしくは1500ppm未満、もしくは1000ppm未満、または1000~5000ppm、もしくは2000~5000ppm、もしくは1000~4000ppm、もしくは1000~3000ppmの範囲の窒素含有量、あるいは40000ppm未満、もしくは35000ppm未満、もしくは30000ppm未満、もしくは25000ppm未満、もしくは20000ppm未満、もしくは15000ppm未満、もしくは10000ppm未満、または1000~40000ppm、もしくは1000~35000ppm、もしくは1000~30000ppm、もしくは1000~25000ppm、もしくは1000~15000ppm、もしくは1000~10000ppmの範囲の硫黄含有量、あるいは10wt.%未満、もしくは8wt.%未満、もしくは7wt.%未満、もしくは6wt.%未満、もしくは5wt.%未満、もしくは4wt.%未満、もしくは3wt.%未満、もしくは2wt.%未満、または2~15wt.%、もしくは2~10wt.%、もしくは1~7wt.%の範囲の、場合により前記常圧残油フィードストックの1050+°F含有量よりも低い1050+°F含有量、あるいはこれらの組合せを有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記基油供給流が、5~95wt.%の常圧残油フィードストック及び95~5wt.%の基油フィードストック、または10~90wt.%の常圧残油フィードストック及び90~10wt.%の基油フィードストック、または10~80wt.%の常圧残油フィードストック及び90~20wt.%の基油フィードストック、または10~60wt.%の常圧残油フィードストック及び90~40wt.%の基油フィードストック、または10~50wt.%の常圧残油フィードストック及び50~90wt.%の基油フィードストック、または10~40wt.%の常圧残油フィードストック及び90~60wt.%の基油フィードストック、または10~30wt.%の常圧残油フィードストック及び90~70wt.%の基油フィードストック、または30~60wt.%の常圧残油フィードストック及び70~40wt.%の基油フィードストック、または40~60wt.%の常圧残油フィードストック及び60~40wt.%の基油フィードストックを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記基油供給流が添加された全原油フィードストックを含まない、または前記基油供給流が減圧残油フィードストックを含まない、または前記基油供給流が脱れき油を含まない、または前記基油供給流が常圧残油フィードストックのみ、及び場合により基油フィードストックを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記方法が、前記基油供給流の一部としての、または前記常圧残油フィードストック及び前記基油フィードストックのいずれか一方もしくは両方としての、液体フィードストックの再利用を含まない、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記常圧残油フィードストック及び前記基油フィードストックが同じではない、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記常圧残油フィードストック及び前記基油フィードストックが、窒素含有量、硫黄含有量、1050+°F含有量、またはこれらの組合せにおいて異なる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記基油フィードストックが、減圧軽油を含む、または減圧軽油である、または本質的に減圧軽油からなる、または減圧軽油からなる、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記減圧軽油が、軽質留分及び重質留分に切り分けられた減圧軽油から得られる重質減圧軽油であり、前記重質留分が約950~1050°Fのカットポイント温度範囲を有する、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記脱ろう生成物及び/または前記水素化仕上げ脱ろう生成物が、軽質基油生成物及び重質基油生成物として得られる、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記軽質基油生成物が、100℃で3~9cSt、または4~8cSt、または5~7cStの範囲の名目粘度を有し、及び/または前記重質基油生成物が、100℃で13~24cSt、または13~21cSt、または13~18cStの範囲の名目粘度を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記重質基油生成物の前記軽質基油生成物に対する収率が、前記基油供給流中に前記常圧残油フィードストックを含まない同じ方法と比較して、少なくとも約0.5Lvol.%、または少なくとも約1Lvol.%、または少なくとも約2Lvol.%、または少なくとも約5Lvol.%増加する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
全体のろう状基油の収率が、前記基油供給流中に前記常圧残油フィードストックを含まない同じ方法と比較して、少なくとも約0.5Lvol.%、または少なくとも約1Lvol.%、または少なくとも約2Lvol.%、または少なくとも約5Lvol.%増加する、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記脱ろう生成物が、100℃で5.5~7.5cStの名目粘度を有する少なくとも1つのより軽質の生成物、または100℃で13cSt以上の名目粘度、または100℃で13~16.5cSt、または100℃で18~23cStを有する少なくとも1つのより重質の生成物、またはこれらの組合せにさらに分離される、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記MVGO留分を水素化分解条件下で水素化分解触媒に接触させて、水素化分解生成物を形成することと、
前記水素化分解生成物を気体留分及び液体留分に分離することと、
前記液体留分を、水素異性化条件下で脱ろう触媒に接触させて、脱ろう生成物を生成することと、
場合により、前記脱ろう生成物を、水素化仕上げ条件下で水素化仕上げ触媒に接触させて、水素化仕上げ脱ろう生成物を生成することとをさらに含み、
前記脱ろう生成物及び/または前記水素化仕上げ脱ろう生成物が、脱ろう後に120以上の粘度指数を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項24】
前記脱ろう生成物及び/または前記水素化仕上げ脱ろう生成物が、脱ろう後130以上、または脱ろう後135以上、または脱ろう後140以上の粘度指数を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記脱ろう生成物及び/または前記水素化仕上げ脱ろう生成物が、グループIIIまたはグループIII+基油生成物を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記水素化分解生成物が、少なくとも約135、または約140、または約145、または約150の粘度指数を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記基油フィードストックが、タイトオイルまたはその留分を含む、及び/または前記常圧残油フィードストックが、タイトオイルまたはその留分から誘導される、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮特許出願第63/141,962号(2021年1月26日出願)の優先権の利益を主張するものであり、その開示内容は、全体として本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、常圧残油フィードストックと基油フィードストックとを組み合わせて組み合わされた供給流を形成し、そこからハイドロプロセシングを介しブライトストック基油生成物を形成することにより、ブライトストック基油生成物を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高品質の潤滑基油(例えば、粘度指数(VI)が120以上(グループII及びグループIII)のもの)は、概して、高沸点減圧蒸留物(例えば、減圧軽油(VGO))から、水素化分解してVIを上昇させ、次に接触脱ろうして流動点及び曇点を下げ、次に水素化仕上げして芳香族を飽和させ安定性を改善することにより、生成することができる。水素化分解では高沸点分子が低沸点分子に分解され、これによりVIは上昇するが、同時に粘度及び収率が低下する。高VI高粘度グレードの基油を高収率で製造するには、水素化分解装置フィードは、ある特定の量の高沸点分子を含まなければならない。典型的には、VGOは、温度及び圧力の実際的な制約ゆえに、減圧カラム内の常圧残油(AR)から非常に高い沸点の分子を回収する能力に制約がある。高沸点分子を水素化分解装置に供給する1つの考えられる手段としては、ARの直接供給があるが、ARは通常、水素化分解装置触媒に極めて有害な物質(例えば、ニッケル、バナジウム、マイクロカーボン残留物(MCR)、及びアスファルテンを含む)を含むため、このような方法は通常は考えられない、または実行可能ではない。これらの物質は、水素化分解触媒の寿命を許容されない程度まで短くし、このようなフィードの使用を実現不可能にする。
【0004】
基油の製造が難しい全原油及び他の中間フィードの使用に対する1つのアプローチは、最初に溶剤脱れき(SDA)ユニットでARまたは減圧残油(VR)などのフィードを処理することである。このような処理は、望ましくない物質のバルクを分離し、同時に許容される水素化分解装置フィード品質の脱れき油(DAO)を生成する上で、通常は必要である。しかしながら、このようなSDAユニットは、資本要件が非常に高いこと、そして運転コストが高いこと、また全体的なプロセスアプローチにより、代替手段として望ましくないものとなる。溶剤脱れきステップの必要性を最小化するかまたはなくそうとする他のアプローチも実行されているが、コストまたは他のプロセスの改善の観点において明確な利点は得られていない。
【0005】
グループIII基油及び完成品のモーターオイルの生成には、通常、高価で供給が限られた粘度指数向上剤(例えば、ポリアルファオレフィン)の使用、または他の高価な処理技法(例えば、(例えば、鉱油の多重水素化分解プロセシングを通じての)ガス・ツー・リキッド(GTL)フィードストックの使用)が必要であった。また、概してグループIII基油の生成には、生成物収率を犠牲にしてVI目標を達成するために、高品質のフィードストック(複数可)及び高転換率での処理も必要である。しかし、産業界の継続的な努力にもかかわらず、比較的安価で好適なフィードストック及びこのような生成物を製造するための簡略化されたプロセスは、まだ開発及び商業化が行われていない。
【0006】
超重質グレードの基油は、典型的には、従来から入手可能な原油を用いて経済的に製造することができない。その理由の一つは、このようなフィードストックは通常、このような重質グレードの生成に有用な分子種を十分に含まないためである。重質中性(HN)基油の製造に使用される典型的な減圧軽油(VGO)フィードカットのエンドポイントは1050~1100°Fに過ぎず、基油生成物の粘度は11~12cStの範囲(100℃で測定)に限定される。より重質のグレードの基油を製造するのに必要な分子は、これらの典型的に入手可能なフィードカットには大量には存在しない。より重質のカットを生成するためにこのようなフィードを処理するには、過剰量のヘテロ原子(例えば、窒素)及び芳香族を過剰に導入することになり、大規模な前処理及び高苛酷度の転換が必要である。結果として収率が低くなるため、典型的に入手可能なフィードを用いたこのようなプロセスは不経済的となる。このように、より重質グレードの基油の生成に適したフィード、例えば、より純度が高く、より芳香族含有量が低く、目的の高沸点範囲でよりVIが高いフィードを利用するプロセスが、重質基油生成物を生成するためのフィードとして望ましいと考えられる。
【0007】
以上の考慮事項は、より重質グレードのブライトストック基油においても懸念点となる。ブライトストックは、通常の沸点(NBP)が1000°F以上で、100°Fにおける粘度が約22(またはそれ以上)~約30cStの範囲にある非常に高粘度の基油である。このようなブライトストック基油の分子組成は、通常、600Nのような中性油の生成に使用される典型的なVGOストックの範囲を超える。ブライトストックは通常、減圧残油(VR)または常圧残油(AR)フィードストックから製造される。VR及びARのいずれも、ニッケルやバナジウム含有分子のような触媒毒に加え、基油に適していないアスファルテン、マイクロカーボン残留物(MCR)、及び窒素含有分子のような分子をかなりの高濃度で含むため、典型的には、このようなフィードストックは前処理して品質をアップグレードさせなければならない。典型的には、このようなVR及びARは、プロパン溶剤(PDA)を用いて溶剤脱れきユニットで十分に前処理されて、基油水素化分解装置(HCR)で許容される収率及び触媒寿命を得ることができる。次にHCRは、脱れき油(DAO)を処理及び分解して、粘度指数(VI)を上昇させ、ろう状のブライトストックを生成する。次に、ろう状のブライトストックを脱ろうして流動点及び曇点を下げ、続いて水素化仕上げして微量の不純物を除去する。
【0008】
異なる困難なフィードストックからの基油の生成においては進歩が見られるものの、それゆえに、異なるフィードストックを利用するとともに、価値のあるより重質の基油生成物(ブライトストック基油を含む)の収率を増加させるためのプロセスの改善が継続的に必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、基油供給流のハイドロプロセシングを介してブライトストック基油生成物を製造するための方法を対象とする。必ずしも限定されるものではないが、本発明の目標の1つは、フィードストックの溶剤脱れきを必要としないブライトストックを生成するための方法を提供することである。さらなる目標は、ブライトストック基油の収率を増加させることである。
【0010】
概して、本発明による第1の方法は、常圧残油フィードストックを、場合により従来の基油フィードストックと組み合わせて、基油供給流として準備することにより、ブライトストック基油を製造することと、基油供給流を、水素化分解条件下で水素化分解触媒に接触させて、水素化分解生成物を形成することと、水素化分解生成物を、気体留分及び液体留分に分離することと、液体留分を、水素異性化条件下で水素化脱ろう触媒に接触させて、脱ろう生成物を生成することと、場合により、脱ろう生成物を、水素化仕上げ条件下で水素化仕上げ触媒に接触させて、水素化仕上げ脱ろう生成物を生成することとを含む。概して、常圧残油フィードストックは、約25°API超のAPI比重、約2ppm未満のニッケル及びバナジウムの含有量、約1wt.%未満のMCR、ならびに約500ppm未満のアスファルテン含有量を有する。この方法は、100℃で少なくとも約22cStの粘度を有するブライトストック基油生成物を生成する。いくつかの態様において、この方法は、常圧残油フィードストック構成要素を含まないフィードストックを使用する場合と比較して、1つ以上の基油生成物の有益な収率の改善ももたらすことができる。
【0011】
また、本発明は、従来の基油プロセスにおける基油フィードストックに常圧残油フィードストックを添加することにより、基油プロセスを修正してブライトストック基油を生成するための方法であって、基油供給流を水素化分解ステップ及び脱ろうステップに供して、軽質生成物及び重質生成物を含む脱ろう生成物を形成することを含む、方法にも関する。そのため、修正された常圧残油フィードストック基油プロセスは、常圧残油フィードストックと基油フィードストックとを組み合わせて基油供給流を形成することと、基油供給流を、水素化分解条件下で水素化分解触媒に接触させて、水素化分解生成物を形成することと、水素化分解生成物を、少なくとも1つの気体留分及び1つの液体留分に分離することと、液体留分を、水素異性化条件下で水素化脱ろう触媒に接触させて、脱ろう生成物を生成することと、場合により、脱ろう生成物を水素化仕上げ条件下で水素化仕上げ触媒に接触させて、水素化仕上げ脱ろう生成物を生成することとを含む。概して、常圧残油フィードストックは、約25°API超のAPI比重、約2ppm未満のニッケル及びバナジウムの含有量、約1wt.%未満のMCR、ならびに約500ppm未満のアスファルテン含有量を有する。この修正された方法は、100℃で少なくとも約22cStの粘度を有するブライトストック基油生成物を生成し、また、常圧残油フィードストック構成要素を含まないフィードストックの使用と比較して、1つ以上の基油生成物の有益な収率の改善も提供することができる。
【0012】
本発明はさらに、常圧残油フィードストックと、場合により基油フィードストックを含む基油供給流を、約700°F以上のフロントエンドカットポイント及び約900°F以下のバックエンドカットポイントを有する減圧軽油に分離して、中質減圧軽油MVGO留分及び重質減圧軽油HVGOを形成することにより、100℃で少なくとも約22cStの粘度を有するブライトストック基油を製造するための方法であって、HVGO留分を、水素化分解条件下で水素化分解触媒に接触させて、水素化分解生成物を形成することと、水素化分解生成物を気体留分及び液体留分に分離することと、液体留分を水素化脱ろうして、脱ろう生成物を生成することと、場合により、脱ろう生成物を水素化仕上げして、水素化仕上げ脱ろう生成物を生成することとを含む、方法に関する。概して、常圧残油フィードストックは、約25°API超のAPI比重、約2ppm未満のニッケル及びバナジウムの含有量、約1wt.%未満のMCR、ならびに約500ppm未満のアスファルテン含有量を有する。この方法は、常圧残油フィードストック構成要素を含まないフィードストックを使用した場合と比較して、100℃で少なくとも約22cStの粘度を有するブライトストック基油生成物を生成する。
【0013】
本発明はさらに、MVGO留分を、水素化分解条件下で水素化分解触媒に接触させて、水素化分解生成物を形成することと、水素化分解生成物を気体留分及び液体留分に分離することと、液体留分を、水素化異性化条件下で脱ろう触媒に接触させて、脱ろう生成物を生成することと、場合により、脱ろう生成物を水素化仕上げ条件下で水素化仕上げ触媒に接触させて、水素化仕上げ脱ろう生成物を生成することとにより、中質減圧軽油MVGO留分から基油生成物を製造するためのプロセスを提供し、脱ろう生成物及び/または水素化仕上げ脱ろう生成物は、脱ろう後に120以上の粘度指数を有する。
【0014】
本発明の範囲は、本開示に付随するいかなる代表的な図によっても限定されず、本出願の特許請求の範囲によって定義されるものと理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】基油生成物を製造する先行技術のプロセスにおける、一般的なブロック図の概略的例示である。
【0016】
【
図2a】本発明による常圧残油(AR)または減圧軽油(VGO)及びARのブレンド(VGO/AR)を用いて基油生成物を製造するためのプロセスにおける、1つの実施形態の一般的なブロック図の概略的例示である。
【0017】
【
図2b】本発明による、常圧残油からの中質減圧軽油(MVGO)留分を用いてグループIII/III+基油生成物を製造し、常圧残油からの重質減圧軽油(HVGO)留分またはVGO及びHVGOのブレンド(VGO/HVGO)を用いて重質基油生成物を製造するためのプロセスにおける、1つの実施形態の一般的なブロック図の概略的例示である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書には、1つ以上の態様の例示的な実施形態が示されているが、本開示のプロセスは、任意の数の技法を用いて実施してよい。本開示は、本明細書に示す例示的または特定の実施形態、図面、及び技法(本明細書に示し記載する例示的な設計及び実施形態を含む)に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲内で、等価物の全範囲とともに変更することができる。
【0019】
別段の指示がない限り、以下の用語、専門用語、及び定義は本開示に適用可能である。ある用語が本開示内で使用され、それが本明細書中で具体的に定義されていない場合、IUPAC Compendium of Chemical Terminology,2nd ed (1997)からの定義を適用することができるが、これは、その定義が、本明細書で適用される他のいかなる開示内容もしくは定義とも矛盾しない、またはその定義が適用されるいかなる特許請求の範囲も不明確にしたり使用不可能にしたりしないことを条件とする。参照により本明細書に援用される任意の文書で示される任意の定義または用法が、本明細書で示される定義または用法と矛盾する範囲においては、本明細書で示される定義または用法が適用されるものと理解されたい。
【0020】
「API基油カテゴリー」は、表1に示される種々の基準を満たす基油の分類である。
【表1】
【0021】
「API比重」とは、水に対する石油フィードストックまたは生成物の比重を指し、
ASTM D4052-11またはASTM D1298により定量され、典型的には市販の石油分析装置を用いて実施される。
【0022】
「ISO-VG」とは、工業用途に推奨される粘度分類を指し、
IS03448:1992によって定義されている。
【0023】
「粘度指数」(VI)とは、潤滑油の温度依存性を表し、
ASTM D2270-10(E2011)により定量され、典型的には市販の石油分析装置を用いて実施される。
【0024】
「マイクロカーボン残留物」(MCRT)は、炭素残留物の量を表し、ASTM D4530により定量され、典型的には市販の石油分析装置を用いて実施される。
【0025】
「芳香族抽出」とは、溶剤中性基油の生成に使用されるプロセスの一部である。芳香族抽出の間、減圧軽油、脱れき油、またはこれらの混合物は、溶剤抽出ユニットで溶剤を用いて抽出される。芳香剤抽出により、溶剤の蒸発後にろう状のラフィネート及び芳香抽出物が生じる。
【0026】
「常圧残油(atmospheric resid)」または「常圧残油(atmospheric residuum)」(AR)とは、蒸留中に揮発性物質が除去された大気圧における粗製油蒸留の生成物である。ARカットは、典型的には650°Fから680°Fまでのカットポイントで誘導される。
【0027】
「減圧軽油」(VGO)とは、粗製油減圧蒸留の副生成物であり、ハイドロプロセシングユニットまたは芳香族抽出器に送って基油にアップグレードすることができる。VGOは概して、0.101MPaにおいて343℃(649°F)~538℃(1000°F)の沸点範囲分布を有する炭化水素を含む。本明細書で使用する場合、「中質減圧軽油」(「MVGO」と略記)という用語は、減圧軽油またはその一部を指し、例えば、MVGOが、約700°F以上のフロントエンドカットポイント及び約900°F以下のバックエンドカットポイントを有する減圧軽油またはその一部である場合が含まれる。「重質減圧軽油」(「HVGO」と略記)という用語は、重質減圧軽油またはその一部を指し、例えば、VGOから誘導された留分が含まれる。いくつかの場合において、HVGOは、VGOフィードストックからMVGOカット部分を分離し、残部をHVGO部分として残すVGOフィードストックから誘導することができる。例えば、重質減圧軽油(HVGO)は、MVGO部分が除去されたVGOフィードストックから得られる残部であり得、MVGO部分は約700°F以上のフロントエンドカットポイント及び約900°F以下のバックエンドカットポイントを有する。
【0028】
「脱れき油」(DAO)とは、概して、溶剤脱れきプロセスで脱れきされた減圧蒸留ユニットからの残留物を指す。製油所における溶剤脱れきについては、J. Speight, Synthetic Fuels Handbook, ISBN 007149023Χ,2008の64、85-85、及び121ページに記載されている。
【0029】
「処理」、「処理された」、「アップグレードする」、「アップグレードすること」、及び「アップグレードされた」は、油フィードストックとともに使用される場合、フィードストックの分子量が低下した、フィードストックの沸点範囲が低下した、アスファルテンの濃度が低下した、炭化水素フリーラジカルの濃度が低下した、及び/または不純物(例えば、硫黄、窒素、酸素、ハロゲン化物、及び金属)の量が減少した、ハイドロプロセシングに供されているもしくは供されたフィードストック、または結果として得られる材料もしくは粗生成物を表す。
【0030】
「溶剤脱ろう」とは、パラフィンを低温で結晶化させ、濾過により分離することによって脱ろうするプロセスである。溶剤脱ろうにより、脱ろう油及びスラックろうが生成される。脱ろう油をさらに水素化仕上げして、基油を生成することができる。
【0031】
「ハイドロプロセシング」とは、炭素質のフィードストックを、望ましくない不純物を除去するため及び/または所望の生成物に転換するために、高温及び高圧で水素及び触媒に接触させるプロセスを指す。ハイドロプロセシングの例としては、水素化分解、水素化処理、接触脱ろう、及び水素化仕上げが挙げられる。
【0032】
「水素化分解」とは、炭化水素の分解/断片化(例えば、より重質の炭化水素をより軽質の炭化水素に転換すること、あるいは芳香族及び/またはシクロパラフィン(ナフテン)を非環式分枝状パラフィンに転換すること)に水素化及び脱水素化が付随するプロセスを指す。
【0033】
「水素化処理」とは、硫黄及び/または窒素を含む炭化水素フィードを、典型的には水素化分解とともに、硫黄及び/または窒素含有量が低減した炭化水素生成物に転換するプロセスを指し、このプロセスにより、(それぞれ)硫化水素及び/またはアンモニアが副生成物として生成される。
【0034】
「接触脱ろう」または「水素異性化」とは、通常のパラフィンを水素の存在下で触媒により、より分岐したパラフィンに異性化するプロセスを指す。
【0035】
「水素化仕上げ」とは、微量の芳香族、オレフィン、カラーボディ、及び溶剤を除去することにより、酸化安定性、UV安定性、及び外観を改善することを意図したプロセスを指す。本開示で使用する場合、UV安定性という用語は、UV光及び酸素に曝露したときの試験対象の炭化水素の安定性を指す。不安定性は、視認可能な沈殿物が形成されたり(通常はHoc及び濁りとして見られる)、紫外線及び空気に曝露して色がより濃くなったりしたときに示される。水素化仕上げについての一般的な説明は、米国特許第3,852,207号及び同第4,673,487号において見つけることが可能である。
【0036】
「水素(Hydrogen)」または「水素(hydrogen)」という用語は、水素自体、及び/または水素源を提供する化合物(単数または複数)を指す。
【0037】
「カットポイント」とは、所定の分離度に達する真沸点(TBP)曲線上の温度を指す。
【0038】
「TBP」とは、ASTM D2887-13による模擬蒸留(SimDist)によって定量される炭化水素系フィードまたは生成物の沸点を指す。
【0039】
「炭化水素系」、「炭化水素」、及び同様の用語は、炭素原子及び水素原子のみを含む化合物を指す。他の識別子を使用して、炭化水素中の特定の基の存在(存在する場合)を示すことができる(例えば、ハロゲン化炭化水素は、炭化水素中の同等の数の水素原子を置き換える1つ以上のハロゲン原子の存在を示す)。
【0040】
「IIB族」または「IIB族金属」とは、元素形態、化合物形態、またはイオン形態のいずれかである亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、水銀(Hg)、及びこれらを組み合わせたものを指す。
【0041】
「IVA族」または「IVA族金属」とは、元素形態、化合物形態、またはイオン形態のいずれかであるゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、または鉛(Pb)、及びこれらを組み合わせたものを指す。
【0042】
「V族金属」とは、元素形態、化合物形態、またはイオン形態のいずれかであるバナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、及びこれらを組み合わせたものを指す。
【0043】
「VIB族」または「VIB族金属」とは、元素形態、化合物形態、またはイオン形態のいずれかであるクロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、及びこれらを組み合わせたものを指す。
【0044】
「VIII族」または「VIII族金属」とは、元素形態、化合物形態、またはイオン形態のいずれかである鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Rh)、ロジウム(Ro)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、及びこれらを組み合わせたものを指す。
【0045】
特に「触媒担体」という用語で使用される「担体」という用語は、触媒材料を固定する従来の材料を指し、典型的には高表面積を有する固体である。担体材料は、不活性であっても触媒反応に関与してもよく、多孔質であっても非多孔質であってもよい。典型的な触媒担体としては、様々な種類の炭素、アルミナ、シリカ、及びシリカ-アルミナ、例えば、非晶質シリカアルミネート、ゼオライト、アルミナ-ボリア、シリカ-アルミナ-マグネシア、シリカ-アルミナ-チタニア、ならびに他のゼオライト及び他の複合酸化物をそれに添加することにより得られる材料が挙げられる。
【0046】
「モレキュラーシーブ」とは、フレームワーク構造内に、細孔の均一な分子寸法を有しており、モレキュラーシーブの種類に応じて、ある特定の分子のみが、そのモレキュラーシーブの細孔構造に到達できる一方で、その他の分子が、例えば分子のサイズ及び/または反応性により排除されるようになっている物質を指す。ゼオライト、結晶質アルミノホスフェート、及び結晶質シリコアルミノホスフェートは、モレキュラーシーブの代表例である。
【0047】
W220及びW600とは、ろう状中質及び重質グループII基油生成物グレードを指し、W220は、100℃で約6cStの名目粘度を有するろう状中質基油生成物を指し、W600は100℃で約12cStの名目粘度を有するろう状重質基油生成物を指す。脱ろう後におけるグループII基油の典型的な試験データは以下の通りである。
【表2】
【0048】
本開示では、組成物、及び方法またはプロセスが、様々な構成要素またはステップを「含む」という観点で説明されている場合が多いが、その組成物及び方法は、別段の記載のない限り、その様々な構成要素またはステップ「から本質的になっても」よいし、またはその様々な構成要素またはステップ「からなっても」よい。
【0049】
「a」、「an」、及び「the」という用語は、複数の代替形態、例えば、少なくとも1つを含むように意図されている。例えば、「遷移金属」または「アルカリ金属」と開示した場合、別段の明記がない限り、遷移金属またはアルカリ金属の1つ、または2つ以上の混合物もしくは組合せを包含することを意味する。
【0050】
発明を実施するための形態及び特許請求の範囲内の全ての数値は、「約」または「およそ」によって示された値が修飾され、当業者によって予想されるであろう実験誤差及び変動を考慮に入れている。
【0051】
1つの態様において、本発明は、100℃で少なくとも約22cStの粘度を有するブライトストック基油を製造するための方法であって、常圧残油フィードストックと、場合により基油フィードストックとを含む基油供給流を、水素化分解条件下で水素化分解触媒に接触させて、水素化分解生成物を形成することと、水素化分解生成物を、気体留分及び液体留分に分離することと、液体留分を、水素化異性化条件下で脱ろう触媒に接触させて、脱ろう生成物を生成することと、場合により、脱ろう生成物を、水素化仕上げ条件下で水素化分解触媒に接触させて、水素化仕上げ脱ろう生成物を生成することとを含み、当該方法が、100℃で少なくとも約22cStの粘度を有するブライトストック基油生成物を生成する、方法である。
【0052】
概して、基油フィードストックは、以下の性質条件のうちの1つ以上を満たす:
15~40、もしくは、15~30、もしくは15~25の範囲、または少なくとも15、もしくは少なくとも17の、場合により常圧残油フィードストックよりも低いAPI比重、
30~90、もしくは40~90、もしくは50~90、もしくは50~80の範囲の、場合により常圧残油フィードストックのVIよりも低いVI、
100℃で、3~30cSt、もしくは3~25cSt、もしくは3~20cStの範囲、または少なくとも3cSt、もしくは少なくとも4cStの粘度、
70℃で、5~50cSt、もしくは5~80wt.%、もしくは5~70wt.%、もしくは5~60wt.%、もしくは5~50wt.%、もしくは5~40wt.%、もしくは5~30wt.%、もしくは5~20cSt、もしくは5~15cStの範囲、または少なくとも5cSt、もしくは少なくとも6cStの粘度、
0.01~0.3wt.%、もしくは0.01~0.2wt.%、もしくは0.02~0.15wt.%の範囲、または0.3wt.%未満、もしくは0.2wt.%未満の高温C7アスファルテン含有量、
5~90wt.%、もしくは5~80wt.%、もしくは5~70wt.%、もしくは5~60wt.%、もしくは5~50wt.%、もしくは5~40wt.%、もしくは5~30wt.%、もしくは10~25wt.%の範囲、または少なくとも5wt.%、もしくは少なくとも10wt.%、もしくは少なくとも15wt.%の、または場合により、常圧残油フィードストックのろう含有量よりも低いろう含有量、
2500ppm未満、もしくは2000ppm未満、もしくは1500ppm未満、もしくは1000ppm未満、または1000~5000ppm、もしくは2000~5000ppm、もしくは1000~4000ppm、もしくは1000~3000ppmの範囲の窒素含有量、
40000ppm未満、もしくは35000ppm未満、もしくは30000ppm未満、もしくは25000ppm未満、もしくは20000ppm未満、もしくは15000ppm未満、もしくは10000ppm未満、または1000~40000ppm、もしくは1000~35000ppm、もしくは1000~30000ppm、もしくは1000~25000ppm、もしくは1000~15000ppm、もしくは1000~10000ppmの範囲の硫黄含有量、及び/または
10wt.%未満、もしくは8wt.%未満、もしくは7wt.%未満、もしくは6wt.%未満、もしくは5wt.%未満、もしくは4wt.%未満、もしくは3wt.%未満、もしくは2wt.%未満、または2~15wt.%、もしくは2~10wt.%、もしくは1~7wt.%の範囲の、場合により、常圧残油フィードストックの1050+°F含有量よりも低い1050+°F含有量。
【0053】
いくつかの態様において、基油フィードストックは、2500ppm未満、もしくは2000ppm未満、もしくは1500ppm未満、もしくは1000ppm未満、または1000~5000ppm、もしくは2000~5000ppm、もしくは1000~4000ppm、もしくは1000~3000ppmの範囲の窒素含有量、あるいは40000ppm未満、もしくは35000ppm未満、もしくは30000ppm未満、もしくは25000ppm未満、もしくは20000ppm未満、もしくは15000ppm未満、もしくは10000ppm未満、または1000~40000ppm、もしくは1000~35000ppm、もしくは1000~30000ppm、もしくは1000~25000ppm、もしくは1000~15000ppm、もしくは1000~10000ppmの範囲の硫黄含有量、あるいは10wt.%未満、もしくは8wt.%未満、もしくは7wt.%未満、もしくは6wt.%未満、もしくは5wt.%未満、もしくは4wt.%未満、もしくは3wt.%未満、もしくは2wt.%未満、または2~15wt.%、もしくは2~10wt.%、もしくは1~7wt.%の範囲の、場合により前記常圧残油フィードストックの1050+°F含有量よりも低い1050+°F含有量、あるいはこれらの組合せを有する。
【0054】
好適な基油フィードストックは、ハイドロプロセシングされた中間流または他のフィードストックを含む、任意の原油フィードストックまたはその留分に由来し得る。概して、基油フィードストックは、基油の範囲内で沸騰する材料を含む。フィードストックは、全原油及びパラフィン系原油を含む、様々な供給源からの常圧及び減圧残油を含むことができる。
【0055】
概して、常圧残油(AR)フィードストックは、以下の性質条件のうちの1つ以上を満たす:
20~60、もしくは20~45、もしくは25~45の範囲、または少なくとも20、もしくは少なくとも22の、または場合により基油フィードストックのAPIよりも高いAPI比重、
50~200、もしくは70~190、もしくは90~180の範囲、または少なくとも80の、または場合により基油フィードストックのVIよりも高いVI、
100℃で、3~30cSt、もしくは3~25cSt、もしくは3~20cSt、もしくは3~10cStの範囲、または少なくとも3cSt、もしくは少なくとも4cSt、または10cSt未満の粘度、
70℃で、5~50cSt、もしくは5~30cSt、もしくは5~20cSt、もしくは5~15cStの範囲、または少なくとも5cSt、もしくは少なくとも6cStの粘度、
約0.01~0.3wt.%、もしくは約0.01~0.2wt.%、もしくは約0.02~0.15wt.%の範囲、または約0.3wt.%未満、もしくは約0.2wt.%未満、もしくは約0.1wt.%未満の範囲の高温C7アスファルテン含有量、
5~90wt.%、もしくは5~80wt.%、もしくは5~70wt.%、もしくは5~60wt.%、もしくは5~50wt.%、もしくは5~40wt.%、もしくは5~30wt.%、もしくは10~25wt.%の範囲、または少なくとも5wt.%、もしくは少なくとも10wt.%、もしくは少なくとも15wt.%の、または場合により、基油フィードストックのろう含有量よりも高いろう含有量、
2500ppm未満、または2000ppm未満、または1500ppm未満、または1000ppm未満、または800ppm未満、または500ppm未満、または200ppm未満、または100ppm未満の窒素含有量、
8000ppm未満、もしくは6000ppm未満、もしくは4000ppm未満、もしくは3000ppm未満、もしくは2000ppm未満、もしくは1000ppm未満、もしくは500ppm未満、もしくは200ppm未満、または100~8000ppm、もしくは100~6000ppm、もしくは100~4000ppm、もしくは100~2000ppm、もしくは100~1000ppm、もしくは100~500ppm、もしくは100~200ppmの範囲の硫黄含有量、及び/または
2~50wt.%、もしくは2~40wt.%、もしくは4~50wt.%、もしくは4~40wt.%、もしくは8~50wt.%、もしくは8~40wt.%の範囲、または最大50wt.%、もしくは最大40wt.%、もしくは最大30wt.%、もしくは最大20wt.%、もしくは最大10wt.%の、場合により基油フィードストックの1050+°F含有量よりも高い1050+°F含有量。
【0056】
いくつかの態様において、本明細書に記載の性質特徴を有するARフィードストックは、有利には、軽質タイトオイル(LTO、例えば、典型的には45超のAPIを有するシェール油)から誘導することができる。好適なフィードストックは、Permian Basinフィードストック及びその他(Eagle Ford、Avalon、Magellan、Buckeyeなどを含む)であり得る。
【0057】
概して、当該常圧残油(AR)フィードストックは、従来のARフィードストックとは異なる。例えば、典型的には、当該ARフィードストックは、従来のARフィードストックとは前述のフィードストック性質のうちの1つ以上が異なり、本発明で有用なARフィードストックは、全般的に低い性質値及び範囲を有する。より詳細な場合において、当該ARフィードストックは、従来のARのものと比較して、より低い高温C7アスファルテン含有量、窒素及び/または硫黄含有量、1050+°F含有量、金属含有量(例えば、ニッケル、バナジウム、及び/または鉄)、またはこれらの組合せを有する。
【0058】
いくつかの例において、当該常圧残油フィードストックは、約0.3wt.%未満、または約0.2wt.%未満、または約0.1wt.%未満の範囲の高温C-7アスファルテン含有量、及び2500ppm未満、または2000ppm未満、または1500ppm未満、または1000ppm未満、または800ppm未満、または500ppm未満、または200ppm未満、または100ppm未満の窒素含有量を有する。また、当該常圧残油フィードストックは、約0.3wt.%未満、または約0.2wt.%未満、または約0.1wt.%未満の範囲の高温C-7アスファルテン含有量と、約2500ppm未満、または約2000ppm未満、または約1500ppm未満、または約1000ppm未満、または約800ppm未満、または約500ppm未満、または200ppm未満、または100ppm未満の窒素含有量と、約5ppm未満のニッケル、または約3ppm未満のバナジウム、または約4ppm未満の鉄、またはこれらの組合せの金属含有量とを有してもよい。またさらに、当該ARフィードストックは、以下の条件も満たし得る:当該常圧残油フィードストックは、以下の条件を満たす:100℃で10cSt未満、または3~10cStの範囲の粘度;約0.1wt.%未満、または約0.01~0.1wt.%の範囲の高温C-7アスファルテン含有量;2wt.%未満のMCRT;800ppm未満の窒素含有量;3000ppm未満の硫黄含有量;5ppm未満のニッケル含有量;3ppm未満のバナジウム含有量;及び4ppm未満の鉄含有量。
【0059】
基油フィードストック及び常圧残油フィードストックのいずれも、言及された広い範囲及びより狭い範囲、ならびにこのような範囲の組合せの中で、前述の性質のいずれかを有することができる。
【0060】
概して、基油供給流は、5~95wt.%の常圧残油フィードストック及び95~5wt.%の基油フィードストック、または10~90wt.%の常圧残油フィードストック及び90~10wt.%の基油フィードストック、または10~80wt.%の常圧残油フィードストック及び90~20wt.%の基油フィードストック、または10~60wt.%の常圧残油フィードストック及び90~40wt.%の基油フィードストック、または10~50wt.%の常圧残油フィードストック及び50~90wt.%の基油フィードストック、または10~40wt.%の常圧残油フィードストック及び90~60wt.%の基油フィードストック、または10~30wt.%の常圧残油フィードストック及び90~70wt.%の基油フィードストック、または30~60wt.%の常圧残油フィードストック及び70~40wt.%の基油フィードストック、または40~60wt.%の常圧残油フィードストック及び60~40wt.%の基油フィードストックを含む。
【0061】
ある特定の実施形態において、基油供給流は、添加された全原油フィードストックを含まない、及び/または減圧残油フィードストックを含まない、及び/または脱れき油フィードストック構成要素を含まない、及び/または常圧残油フィードストック及び基油フィードストックのみを含む。基油フィードストックとARフィードストックの特定の性質特徴の一部は、類似または重複する性質の値または値の範囲を有することがあるが、典型的には、基油フィードストック及びARフィードストックは、1つ以上の性質特徴が顕著に異なるため、同じではない。例えば、いくつかの場合において、常圧残油フィードストック及び基油フィードストックは、それぞれの窒素含有量、硫黄含有量、1050+°F含有量、またはこれらの組合せが異なる。
【0062】
直留プロセスに限定されるものではないが、このプロセスは、基油供給流の一部としての、または常圧残油フィードストック及び基油フィードストックのいずれか一方もしくは両方としての、液体フィードストックの再利用を含む必要はない。ただし、ある特定の実施形態では、1つ以上の中間流が再利用される場合がある。
【0063】
基油フィードストックは、カットされていない全フィードストック及びカットされたフィードストックを含めて、減圧軽油を含む場合も、減圧軽油から本質的になる場合も、減圧軽油からなる場合もある。減圧軽油は、軽質留分及び重質留分に切り分けられた減圧軽油から得られる重質減圧軽油とすることができ、重質留分は約950~1050°Fのカットポイント温度範囲を有する。VGOは、様々なフィードストックから誘導されたブレンドとすることができ、定義された沸点範囲の構成要素を異なる量で含むことができる。例えば、特定のフィードストックから誘導されたVGOのある構成要素が高い1050+°F含有量を有し、他のVGO構成要素が低い1050+°F含有量に寄与することがある。
【0064】
典型的には、脱ろう生成物及び/または水素化仕上げ脱ろう生成物は、軽質基油生成物及び重質基油生成物として得られる。軽質基油生成物は、概して、100℃で約3~9cSt、または4~8cSt、または5~7cStの範囲の名目粘度を有し、及び/または重質基油生成物は、概して、100℃で13~24cSt、または13~21cSt、または13~18cStの範囲の名目粘度を有する。脱ろう生成物は、100℃で約6cStの名目粘度を有する少なくとも1つの軽質生成物、及び/または100℃で13cSt以上、または100℃で13~16.5cSt、もしくは100℃で約13~23cStの名目粘度を有する少なくとも1つの重質生成物、あるいはこれらの組合せにさらに分離することができる。
【0065】
このプロセスに付随する利点の1つは、重質基油生成物の軽質基油生成物に対する収率が、潤滑油供給流中に常圧残油フィードストックを含まない同じプロセスと比較して、少なくとも約0.5液体体積%(Lvol.%)、または少なくとも約1Lvol.%、または少なくとも約2Lvol.%、または少なくとも約5Lvol.%増加し得ることである。いくつかの実施形態において、重質基油生成物の収率は、基油供給流中に常圧残油フィードストックを含まない同じプロセスと比較して、少なくとも約0.5Lvol.%、または少なくとも約1Lvol.%、または少なくとも約2Lvol.%、または少なくとも約5Lvol.%、または少なくとも約10Lvol.%、または少なくとも約20Lvol.%増加し得る。また、全体のろう収率も、基油供給流中に常圧残油フィードストックを含まない同じプロセスと比較して、少なくとも約0.5Lvol.%、または少なくとも約1Lvol.%、または少なくとも約2Lvol.%、または少なくとも約5Lvol.%増加し得る。
【0066】
別の態様では、本発明は、従来または既存の基油プロセスを修正して、100℃で少なくとも約22cStの粘度を有するブライトストック基油生成物を生成するための方法に関する。詳細には、基油供給流を水素化分解ステップ及び脱ろうステップに供して、軽質生成物及び重質生成物を含む脱ろう生成物を形成することを含む基油プロセスは、常圧残油フィードストックを含む基油フィードストックを、基油プロセスの水素化分解ステップ及び脱ろうステップに供して脱ろう生成物を生成することにより、本発明に従って変更することができる。脱ろう生成物は、場合によりさらに、水素化仕上げ条件下で水素化仕上げ触媒に接触させて、ブライトストック生成物を含む水素化仕上げ脱ろう生成物を生成することができる。
【0067】
本発明はさらに、基油供給流またはその留分から、100℃で少なくとも約22cStの粘度を有するブライトストック基油を製造するための方法であって、常圧残油フィードストックと、場合により基油フィードストックとを含む基油供給流を準備することと、基油供給流を、約700°Fのフロントエンドカットポイント及び約900°Fのバックエンドカットポイントを有する減圧軽油に分離して、中質減圧軽油MVGO留分及び重質減圧軽油HVGO留分を形成することと、HVGO留分を、水素化分解条件下で水素化分解触媒に接触させて、水素化分解生成物を形成することと、水素化分解生成物を気体留分及び液体留分に分離することと、液体留分を脱ろうして、脱ろう生成物を生成することと、場合により、脱ろう生成物を水素化仕上げして、水素化仕上げ脱ろう生成物を生成し、当該方法が、100°で少なくとも約22cStの粘度を有する少なくとも1つのブライトストック基油を生成する、方法に関する。
【0068】
従来のVGOフィードストックを使用した場合と比較すると、約700°F以上のフロントエンドカットポイント及び約900°F以下のバックエンドカットポイントを有する減圧軽油(本明細書では中質減圧軽油(MVGO)と称する)を使用することで、MVGOの100℃で4cStのグループIIIまたはグループIII+粘度において、基油フィードストックとしてMVGOを含まない同じ方法よりも、少なくとも約0.5lvol.%、または1lvol.%、または2lvol.%、または3lvol.%、または5lvol.%高いろう状生成物の収率改善がもたらされる。
【0069】
本発明はさらに、2つの方法態様を組み合わせた方法、すなわち、狭いカットポイントのMVGO留分を得るためにフィードストックが使用され、同じフィードストックまたは異なるフィードストックが常圧残油留分のために使用される方法に関する。基油フィードストックまたはその留分から、ブライトストックを含む基油を製造するための組み合わされた方法は、基油フィードストックまたはその留分から常圧残油留分を準備することと、基油フィードストックもしくはその留分、及び/または基油常圧残油留分を、約700°F以上のフロントエンドカットポイント及び約900°F以下のバックエンドカットポイントを有する狭い減圧軽油カットポイント留分に分離して、MVGO留分及び残留HVGO留分を形成することと、HVGO留分を常圧残油フィードストックとして第1の方法で使用して、脱ろう生成物及び/または水素化仕上げ脱ろう生成物を調製し、及び/またはMVGO留分を基油フィードストックとして第2の方法で使用して、脱ろう後に120以上の粘度指数を有する脱ろう生成物及び/または水素化仕上げ脱ろう生成物を調製し、その一方で100℃で少なくとも約22cStの粘度を有する少なくとも1つのブライトストック基油生成物も生成することとを含む。
【0070】
ある特定の実施形態において、基油フィードストックは、タイトオイル、詳細には軽質タイトオイル、またはその留分を含むことができる。狭い減圧軽油カットポイント留分は、常圧残油留分(軽質タイトオイルから誘導された常圧残油留分を含む)から誘導することもできる。
【0071】
有利なことに、ARフィードストックをMVGO留分及びHVGO留分に分留することで、グループIII/III+基油生成物を製造する能力がもたらされ、その一方でさらに、HVGO留分を従来のVGO基油フィードストックとともに使用して、重質基油生成物、詳細には100℃で少なくとも約22cStの粘度を有するブライトストック基油生成物を生成することが可能になる。例えば、生成することができるグループIII/III+生成物には、100℃で約4cSt(例えば、100℃で3~5cSt)の粘度を有する基油生成物が含まれる。いくつかの実施形態において、MVGOを使用してグループIII/III+基油生成物を生成することで、結果としてこのような生成物の収率が高くなる。
【0072】
本発明の1つの実施形態による方法またはプロセスの例示が
図2aに概略的に示されており、この図面では、従来の基油の水素化処理、水素化分解、水素化脱ろう、及び水素化仕上げのプロセスステップ、条件、及び触媒が使用されている。
図1に示す先行技術の基油プロセスの概略図と比較すると、
図2aは、VGO及び常圧残油(AR)のフィードブレンドの使用を示している(従来のプロセスの場合、典型的にはVGO基油フィードストックを使用する)。
図2bはさらに、中質減圧軽油留分(MVGO)及び重質VGO留分(HVGO)を形成するためのARフィードストックの使用を示しており、MVGO留分供給流は、グループIII/III+基油生成物を生成するために使用され、HVGO留分供給流は、重質基油生成物(例えば、ブライトストック基油生成物を含む生成物)を生成するために従来のVGO基油フィードストックと組み合わされる。
【0073】
このプロセス及び方法における水素化分解、脱ろう、及び水素化仕上げの触媒として使用するのに適した触媒、ならびに関連するプロセス条件は、例えば、米国特許公開第3,852,207号;同第3,929,616号;同第6,156,695号;同第6,162,350号;同第6,274,530号;同第6,299,760号;同第6,566,296号;同第6,620,313号;同第6,635,599号;同第6,652,738号;同第6,758,963号;同第6,783,663号;同第6,860,987号;同第7,179,366号;同第7,229,548号;同第7,232,515号;同第7,288,182号;同第7,544,285;同第7,615,196号;同第7,803,735号;同第7,807,599号;同第7,816,298号;同第7,838,696号;同第7,910,761号;同第7,931,799号;同第7,964,524号;同第7,964,525号;同第7,964,526号;同第8,058,203号;同第10,196,575号;WO2017/044210などを含む多数の刊行物に記載されている。概して、好適な触媒としては、担持触媒、すなわち、本明細書に記載され当技術分野で知られているような1つ以上の担体を含む触媒が挙げられる。非担持またはバルク触媒、例えば、US2015/136646に記載のような混合金属硫化物触媒は、概して、本発明のプロセスで使用する必要はない。
【0074】
水素化分解に適した触媒は、例えば、水素化-脱水素活性を有する材料を活性分解構成要素担体とともに含む。このような触媒については、多くの参考特許及び参考文献に十分に記載されている。例示的な分解構成要素担体としては、シリカ-アルミナ、シリカ-酸化ジルコニア複合体、酸処理粘土、結晶質アルミノシリケートゼオライト分子ふるい(例えば、ゼオライトA、フォージャサイト、ゼオライトX、及びゼオライトY)、ならびにこれらの組合せが挙げられる。触媒の水素化-脱水素構成要素は、好ましくは、VIII族金属及びその化合物、ならびにVIB族金属及びその化合物から選択される金属を含む。好ましいVIII族構成要素としては、コバルト及びニッケル、特にその酸化物及び硫化物が挙げられる。好ましいVIB族構成要素としては、モリブデン及びタングステンの酸化物及び硫化物がある。水素化分解プロセスステップで使用するのに適した水素化分解触媒の例としては、ニッケル-タングステン-シリカ-アルミナ、ニッケル-モリブデン-シリカ-アルミナ、及びコバルト-モリブデン-シリカ-アルミナの組合せがある。このような触媒は、その組成及び調製に応じて、水素化及び分解の活性、ならびに長期間の間高い活性を保持する能力が異なり得る。
【0075】
典型的な水素化分解反応条件としては、例えば、450°F~900°F(232℃~482℃)(例えば、650°F~850°F(343℃~454℃))の温度;500psig~5000psig(3.5MPa~34.5MPaゲージ)(例えば、1500psig~3500psig(10.4MPa~24.2MPaゲージ))の圧力;0.1hr-1~15hr-1(v/v)(例えば、0.25hr-1~2.5hr-1)の液空間速度(LHSV)に換算した液体反応体フィード速度;500SCF/bbl~5000SCF/bbl(89~890m3H2/m3フィードストック)の液体基油(潤滑)フィードストックのH2/炭化水素比率に換算した水素フィード速度、及び/または200psig超(例えば、500~3000psig)水素分圧;ならびに500SCF/B超(例えば、1000~7000SCF/B)の水素再循環速度が挙げられる。
【0076】
水素化脱ろうは、主に、基油からろうを除去することにより、基油の流動点を低下させる及び/または曇点を低下させるために使用される。典型的には、脱ろうは、ろうを処理するために触媒プロセスを使用し、脱ろうフィードは、概して脱ろうの前にアップグレードして、粘度指数を高め、芳香族及びヘテロ原子含有量を減少させ、脱ろうフィード中の低沸点の構成要素を低減する。いくつかの脱ろう触媒は、ろう分子を分解して低分子量の分子にすることにより、ろう変換反応を達成する。他の脱ろうプロセスは、ろうの異性化により、プロセスに対する炭化水素フィードに含まれるろうを転換して、異性化されていない分子対応物よりも流動点が低い異性化分子を生成する場合がある。本明細書で使用する場合、異性化は、触媒的異性化条件下においてろう分子異性化で水素を使用するための水素異性化プロセスを包含する。
【0077】
脱ろうは、概して、脱ろうフィードストックを水素異性化により処理して、少なくともn-パラフィンを転換し、イソパラフィンを含む異性化生成物を形成することを含む。脱ろうステップでの使用に適した異性化触媒としては、限定されるものではないが、担体上のPt及び/またはPdを挙げることができる。好適な担体としては、限定されるものではないが、ゼオライトCIT-1、IM-5、SSZ-20、SSZ-23、SSZ-24、SSZ-25、SSZ-26、SSZ-31、SSZ-32、SSZ-32、SSZ-33、SSZ-35、SSZ-36、SSZ-37、SSZ-41、SSZ-42、SSZ-43、SSZ-44、SSZ-46、SSZ-47、SSZ-48、SSZ-51、SSZ-56、SSZ-57、SSZ-58、SSZ-59、SSZ-60、SSZ-61、SSZ-63、SSZ-64、SSZ-65、SSZ-67、SSZ-68、SSZ-69、SSZ-70、SSZ-71、SSZ-74、SSZ-75、SSZ-76、SSZ-78、SSZ-81、SSZ-82、SSZ-83、SSZ-86、SSZ-91、SSZ-95、SUZ-4、TNU-9、ZSM-S、ZSM-12、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-35、ZSM-48、EMTタイプゼオライト、FAUタイプゼオライト、FERタイプゼオライト、MELタイプゼオライト、MFIタイプゼオライト、MTTタイプゼオライト、MTWタイプゼオライト、MWWタイプゼオライト、MREタイプゼオライト、TONタイプゼオライト、結晶質アルミノホスフェートベースの他のモレキュラーシーブ材料(例えば、SM-3、SM-7、SAPO-ll、SAPO-31、SAPO-41、MAPO-ll、及びMAPO-31)が挙げられる。異性化は、酸性担体材料(例えば、ベータまたはゼオライトYモレキュラーシーブ、シリカ、アルミナ、シリカ-アルミナ、及びこれらの組合せ)に担持されたPt及び/またはPd触媒を伴ってもよい。好適な異性化触媒は特許文献に十分に記載されており、例えば、米国特許第4,859,312号、同第5,158,665号、及び同第5,300,210号を参照。
【0078】
水素化脱ろうの条件は、概して、使用するフィード、使用する触媒、触媒前処理、所望の収率、及び所望される基油の性質に依存する。典型的な条件には、500°F~775°F(260℃~413℃)の温度、15psig~3000psig(0.10MPa~20.68MPa)の温度、0.25hr-1~20hr-1のLHSV、及び2000SCF/bbl~30,000SCF/bbl(356~5340m3H2/m3フィード)の水素/フィード比率が含まれる。概して、水素は生成物から分離し、異性化ゾーンに再利用する。好適な脱ろうの条件及びプロセスについては、例えば、米国特許第5,135,638号、同第5,282,958号、及び同第7,282,134号に記載されている。
【0079】
ろう状生成物W220及びW600は、脱ろうして220N及び600Nの中性生成物を形成することができ、これらは、潤滑基油としての、または潤滑油製剤での使用に適している(またはより適合している)。例えば、脱ろう生成物は、新たな基油を作出する目的で、または、例えば、220N及び600Nのような特定の基油グレードについて、特定の目標条件(例えば、粘度もしくはNoack目標条件)を満たすために、既存の基油の性質を修飾する目的で、既存の潤滑基油と混合または混和することができる。異性化及びブレンドは、基油の流動点及び曇点を好適な値に調節及び維持するために使用することができる。ノルマルパラフィンは、触媒異性化に供する前に他の基油構成要素とブレンドしてもよく、これにはノルマルパラフィンを異性化生成物とブレンドすることが含まれる。脱ろうステップで生成することができる潤滑基油は、分離ステップで軽質生成物を除去するように処理することができる。潤滑基油は、常圧蒸留と、場合により減圧蒸留とを用いた蒸留によってさらに処理して、潤滑基油を生成することができる。
【0080】
典型的な水素化処理条件は、広範囲にわたって変化する。概して、全体のLHSVは、約0.25hr-1~10hr-1(v/v)、または約0.5hr-1~1.5hr-1である。合計圧力は、200psig~3000psig、または代替的に約500psia~約2500psiaの範囲である。H2/炭化水素比率に換算した水素フィード速度は、典型的には500SCF/Bbl~5000SCF/Bbl(89~890m3H2/m3フィードストック)であり、多くの場合1000~3500SCF/Bblである。典型的には、反応器内の反応温度は、約300°F~約750°F(約150℃~約400℃)の範囲内、または代替的に450°F~725°F(230℃~385℃)の範囲内となる。
【0081】
実際には、水素化処理(HDT、HDM、DEMETなど)、水素化分解(HCR)、水素化脱ろう(HDW)、及び水素化仕上げ(HFN)触媒を含む層状化触媒システムを使用して、シングルまたはマルチ反応器システムを用いて中間基油及び/または仕上げ基油を生成することができる。典型的な構成は、DEMET、HDT前処理、HCR、及び/またはHDW活性を提供する層状化触媒を含む第1の反応器を備えた2つの反応器を含む。同様の機能(例えば、異なるレベルの水素化分解活性)を発揮する異なる触媒を、例えば、単一の反応器内の異なる層で、または別々の反応器で使用してもよい。
【0082】
誤解を避けるため、本出願は、以下の番号付けされた項目に記載された主題を対象とする。
1.ブライトストック基油を製造するための方法であって、
常圧残油フィードストックと、場合により基油フィードストックとを含む基油供給流を、水素化分解条件下で水素化分解触媒に接触させて、水素化分解生成物を形成することと、
前記水素化分解生成物を気体留分及び液体留分に分離することと、
前記液体留分を、水素異性化条件下で脱ろう触媒に接触させて、脱ろう生成物を生成することと、
場合により、前記脱ろう生成物を、水素化仕上げ条件下で水素化仕上げ触媒に接触させて、水素化仕上げ脱ろう生成物を生成することとを含み、
前記常圧残油フィードストックが、約25°API超のAPI比重、約2ppm未満のニッケル及びバナジウム含有量、約1wt.%未満のMCR、ならびに約500ppm未満のアスファルテン含有量を有し、前記方法が、100℃で少なくとも約22cStの粘度を有するブライトストック基油生成物を生成する、前記方法。
2.前記方法が、基油プロセスを修正して、100℃で少なくとも約22cStの粘度を有するブライトストック基油を生成するために使用され、前記基油プロセスが、基油供給流を水素化分解ステップ及び脱ろうステップに供して、軽質生成物及び重質生成物を含む脱ろう生成物を形成することを含み、前記方法が、
前記常圧残油フィードストックを含む前記基油供給流を、前記基油プロセスの前記水素化分解ステップ及び前記脱ろうステップに供することを含み、
前記修正された基油プロセスが、
常圧残油フィードストックと、場合により基油フィードストックとを含む基油供給流を、水素化分解条件下で水素化分解触媒に接触させて、水素化分解生成物を形成することと、
前記水素化分解生成物を少なくとも1つの気体留分及び1つの液体留分に分離することと、
前記液体留分を、水素異性化条件下で脱ろう触媒に接触させて、脱ろう生成物を生成することと、
場合により、前記脱ろう生成物を、水素化仕上げ条件下で水素化仕上げ触媒に接触させて、水素化仕上げ脱ろう生成物を生成することとを含み、
前記修正されたプロセスが、100℃で少なくとも約22cStの粘度を有するブライトストック基油生成物を生成する、第1項に記載の方法。
3.第1項に記載の、基油供給流またはその留分から100℃で少なくとも約22cStの粘度を有するブライトストック基油を製造するための方法であって、
常圧残油フィードストックと、場合により基油フィードストックとを含む基油供給流を準備することと、
前記基油供給流またはその留分を、約700°F以上のフロントエンドカットポイント及び約900°F以下のバックエンドカットポイントを有する減圧軽油留分に分離して、中質減圧軽油MVGO留分及び重質減圧軽油HHVGO留分を形成することと、
前記HHVGO留分を、第1項に記載の方法における常圧残油フィードストックとして使用することとを含む、前記方法。
4.前記基油供給流が基油フィードストックを含む、第1~3項のいずれか1項に記載の方法。
5.前記常圧残油フィードストックが、以下の条件:
25~60、もしくは25~45の範囲の、または場合により前記基油フィードストックのAPIよりも高いAPI比重、
50~200もしくは70~190もしくは90~180の範囲、または少なくとも80の、または場合により前記基油フィードストックのVIよりも高いVI、
100℃で、3~30cSt、もしくは3~25cSt、もしくは3~20cSt、もしくは3~10cSTの範囲、または少なくとも3cSt、もしくは少なくとも4cSt、または10cSt未満の粘度、
70℃で、5~25cSt、もしくは5~20cSt、もしくは5~15cStの範囲、または少なくとも5cSt、もしくは少なくとも6cStの粘度、
0.01~0.3wt.%、もしくは0.01~0.2wt.%、もしくは0.02~0.15wt.%の範囲、または0.3wt.%未満、もしくは0.2wt.%未満、もしくは0.1wt.%未満の高温C7アスファルテン含有量、
5~40wt.%、もしくは5~30wt.%、もしくは10~25wt.%の範囲、または少なくとも5wt.%、もしくは少なくとも10wt.%、もしくは少なくとも15wt.%の、または場合により前記基油フィードストックのろう含有量よりも高いろう含有量、
2500ppm未満、または2000ppm未満、または1500ppm未満、または1000ppm未満、または800ppm未満、または500ppm未満、または200ppm未満、または100ppm未満の窒素含有量、
8000ppm未満、もしくは6000ppm未満、もしくは4000ppm未満、もしくは3000ppm未満、もしくは2000ppm未満、もしくは1000ppm未満、もしくは500ppm未満、もしくは200ppm未満、または100~8000ppm、もしくは100~6000ppm、もしくは100~4000ppm、もしくは100~2000ppm、もしくは100~1000ppm、もしくは100~500ppm、もしくは100~200ppmの範囲の硫黄含有量、及び/または
5~50wt.%、もしくは2~40wt.%、もしくは4~50wt.%、もしくは4~40wt.%、もしくは8~50wt.%、もしくは8~40wt.%の範囲、または最大50wt.%、もしくは最大40wt.%、もしくは最大30wt.%、もしくは最大20wt.%、もしくは最大10wt.%の、場合により前記基油フィードストックの1050+°F含有量よりも高い1050+°F含有量、のうちの1つ以上を満たす、第1~4項のいずれか1項に記載の方法。
6.前記常圧残油フィードストックが、約0.3wt.%未満、または約0.2wt.%未満、または約0.1wt.%未満の範囲の高温C7アスファルテン含有量、及び2500ppm未満、または2000ppm未満、または1500ppm未満、または1000ppm未満、または800ppm未満、または500ppm未満、または200ppm未満、または100ppm未満の窒素含有量を有する、第1~5項のいずれか1項に記載の方法。
7.前記常圧残油フィードストックが、約0.3wt.%未満、または約0.2wt.%未満、または約0.1wt.%未満の範囲の高温C7アスファルテン含有量と、約2500ppm未満、または約2000ppm未満、または約1500ppm未満、または約1000ppm未満、または約800ppm未満、または約500ppm未満、または200ppm未満、または100ppm未満の窒素含有量と、約5ppm未満のニッケル、または約3ppm未満のバナジウム、または約4ppm未満の鉄、またはこれらの組合せの金属含有量とを有する、第1~6項のいずれか1項に記載の方法。
8.前記常圧残油フィードストックが、以下の条件:
100℃で、10cSt未満、または3~10cStの範囲の粘度、
約0.1wt.%未満、または約0.01~0.1wt.%の範囲の高温C7アスファルテン含有量、
2wt.%未満のMCRT、
800ppm未満の窒素含有量、
3000ppm未満の硫黄含有量、
5ppm未満のニッケル含有量、
3ppm未満のバナジウム含有量、及び
4ppm未満の鉄含有量を満たす、第1~7項のいずれか1項に記載の方法。
9.前記基油フィードストックが、以下の条件:
15~40、もしくは15~30、もしくは15~25の範囲、または少なくとも15、もしくは少なくとも17の、場合により前記常圧残油フィードストックよりも低いAPI比重、
30~90、もしくは40~90、もしくは50~90、もしくは50~80の範囲の、場合により前記常圧残油フィードストックのVIよりも低いVI、
100℃で、3~30cSt、もしくは3~25cSt、もしくは3~20cStの範囲、または少なくとも3cSt、もしくは少なくとも4cStの粘度、
70℃で、5~50cSt、もしくは5~80wt.%、もしくは5~70wt.%、もしくは5~60wt.%、もしくは5~50wt.%、もしくは5~40wt.%、もしくは5~30wt.%、もしくは5~20cSt、もしくは5~15cStの範囲、または少なくとも5cSt、もしくは少なくとも6cStの粘度、
0.01~0.3wt.%、もしくは0.01~0.2wt.%、もしくは0.02~0.15wt.%の範囲、または0.3wt.%未満、もしくは0.2wt.%未満の高温C7アスファルテン含有量、
5~90wt.%、もしくは5~80wt.%、もしくは5~70wt.%、もしくは5~60wt.%、もしくは5~50wt.%、もしくは5~40wt.%、もしくは5~30wt.%、もしくは10~25wt.%の範囲、または少なくとも5wt.%、もしくは少なくとも10wt.%、もしくは少なくとも15wt.%の、または場合により、常圧残油フィードストックのろう含有量よりも低いろう含有量、
2500ppm未満、もしくは2000ppm未満、もしくは1500ppm未満、もしくは1000ppm未満、または1000~5000ppm、もしくは2000~5000ppm、もしくは1000~4000ppm、もしくは1000~3000ppmの範囲の窒素含有量、
40000ppm未満、もしくは35000ppm未満、もしくは30000ppm未満、もしくは25000ppm未満、もしくは20000ppm未満、もしくは15000ppm未満、もしくは10000ppm未満、または1000~40000ppm、もしくは1000~35000ppm、もしくは1000~30000ppm、もしくは1000~25000ppm、もしくは1000~15000ppm、もしくは1000~10000ppmの範囲の硫黄含有量、及び/または
10wt.%未満、もしくは8wt.%未満、もしくは7wt.%未満、もしくは6wt.%未満、もしくは5wt.%未満、もしくは4wt.%未満、もしくは3wt.%未満、もしくは2wt.%未満、または2~15wt.%、もしくは2~10wt.%、もしくは1~7wt.%の範囲の、場合により、前記常圧残油フィードストックの1050+°F含有量よりも低い1050+°F含有量、のうちの1つ以上を満たす、第1~8項のいずれか1項に記載の方法。
10.前記基油フィードストックが、2500ppm未満、もしくは2000ppm未満、もしくは1500ppm未満、もしくは1000ppm未満、または1000~5000ppm、もしくは2000~5000ppm、もしくは1000~4000ppm、もしくは1000~3000ppmの範囲の窒素含有量、あるいは40000ppm未満、もしくは35000ppm未満、もしくは30000ppm未満、もしくは25000ppm未満、もしくは20000ppm未満、もしくは15000ppm未満、もしくは10000ppm未満、または1000~40000ppm、もしくは1000~35000ppm、もしくは1000~30000ppm、もしくは1000~25000ppm、もしくは1000~15000ppm、もしくは1000~10000ppmの範囲の硫黄含有量、あるいは10wt.%未満、もしくは8wt.%未満、もしくは7wt.%未満、もしくは6wt.%未満、もしくは5wt.%未満、もしくは4wt.%未満、もしくは3wt.%未満、もしくは2wt.%未満、または2~15wt.%、もしくは2~10wt.%、もしくは1~7wt.%の範囲の、場合により前記常圧残油フィードストックの1050+°F含有量よりも低い1050+°F含有量、あるいはこれらの組合せを有する、第1~9項のいずれか1項に記載の方法。
11.前記基油供給流が、5~95wt.%の常圧残油フィードストック及び95~5wt.%の基油フィードストック、または10~90wt.%の常圧残油フィードストック及び90~10wt.%の基油フィードストック、または10~80wt.%の常圧残油フィードストック及び90~20wt.%の基油フィードストック、または10~60wt.%の常圧残油フィードストック及び90~40wt.%の基油フィードストック、または10~50wt.%の常圧残油フィードストック及び50~90wt.%の基油フィードストック、または10~40wt.%の常圧残油フィードストック及び90~60wt.%の基油フィードストック、または10~30wt.%の常圧残油フィードストック及び90~70wt.%の基油フィードストック、または30~60wt.%の常圧残油フィードストック及び70~40wt.%の基油フィードストック、または40~60wt.%の常圧残油フィードストック及び60~40wt.%の基油フィードストックを含む、第1~10項のいずれか1項に記載の方法。
12.前記基油供給流が添加された全原油フィードストックを含まない、または前記基油供給流が減圧残油フィードストックを含まない、または前記基油供給流が脱れき油を含まない、または前記基油供給流が常圧残油フィードストックのみ、及び場合により基油フィードストックを含む、第1~11項のいずれか1項に記載の方法。
13.前記方法が、前記基油供給流の一部としての、または前記常圧残油フィードストック及び前記基油フィードストックのいずれか一方もしくは両方としての、液体フィードストックの再利用を含まない、第1~12項のいずれか1項に記載の方法。
14.前記常圧残油フィードストック及び前記基油フィードストックが同じではない、第1~13項のいずれか1項に記載の方法。
15.前記常圧残油フィードストック及び前記基油フィードストックが、窒素含有量、硫黄含有量、1050+°F含有量、またはこれらの組合せにおいて異なる、第14項に記載の方法。
16.前記基油フィードストックが、減圧軽油を含む、または減圧軽油である、または本質的に減圧軽油からなる、または減圧軽油からなる、第1~15項のいずれか1項に記載の方法。
17.前記減圧軽油が、軽質留分及び重質留分に切り分けられた減圧軽油から得られる重質減圧軽油であり、前記重質留分が約950~1050°Fのカットポイント温度範囲を有する、第1~16項のいずれか1項に記載の方法。
18.前記脱ろう生成物及び/または前記水素化仕上げ脱ろう生成物が、軽質基油生成物及び重質基油生成物として得られる、第1~17項のいずれか1項に記載の方法。
19.前記軽質基油生成物が、100℃で3~9cSt、または4~8cSt、または5~7cStの範囲の名目粘度を有し、及び/または前記重質基油生成物が、100℃で13~24cSt、または13~21cSt、または13~18cStの範囲の名目粘度を有する、第18項に記載の方法。
20.前記重質基油生成物の前記軽質基油生成物に対する収率が、前記基油供給流中に前記常圧残油フィードストックを含まない同じ方法と比較して、少なくとも約0.5Lvol.%、または少なくとも約1Lvol.%、または少なくとも約2Lvol.%、または少なくとも約5Lvol.%増加する、第18項に記載の方法。
21.全体のろう状基油の収率が、前記基油供給流中に前記常圧残油フィードストックを含まない同じ方法と比較して、少なくとも約0.5Lvol.%、または少なくとも約1Lvol.%、または少なくとも約2Lvol.%、または少なくとも約5Lvol.%増加する、第18項に記載の方法。
22.前記脱ろう生成物が、100℃で5.5~7.5cStの名目粘度を有する少なくとも1つのより軽質の生成物、または100℃で13cSt以上の名目粘度、または100℃で13~16.5cSt、または100℃で18~23cStを有する少なくとも1つのより重質の生成物、またはこれらの組合せにさらに分離される、第1~21項のいずれか1項に記載の方法。
23.前記MVGO留分を水素化分解条件下で水素化分解触媒に接触させて、水素化分解生成物を形成することと、
前記水素化分解生成物を気体留分及び液体留分に分離することと、
前記液体留分を、水素異性化条件下で脱ろう触媒に接触させて、脱ろう生成物を生成することと、
場合により、前記脱ろう生成物を、水素化仕上げ条件下で水素化仕上げ触媒に接触させて、水素化仕上げ脱ろう生成物を生成することとをさらに含み、
前記脱ろう生成物及び/または前記水素化仕上げ脱ろう生成物が、脱ろう後に120以上の粘度指数を有する、第3項に記載の方法。
24.前記脱ろう生成物及び/または前記水素化仕上げ脱ろう生成物が、脱ろう後130以上、または脱ろう後135以上、または脱ろう後140以上の粘度指数を有する、第23項に記載の方法。
25.前記脱ろう生成物及び/または前記水素化仕上げ脱ろう生成物が、グループIIIまたはグループIII+基油生成物を含む、第23項に記載の方法。
26.前記水素化分解生成物が、少なくとも約135、または約140、または約145、または約150の粘度指数を有する、第23項に記載の方法。
27.前記基油フィードストックが、タイトオイルまたはその留分を含む、及び/または前記常圧残油フィードストックが、タイトオイルまたはその留分から誘導される、第1~26項のいずれか1項に記載の方法。
【0083】
例
減圧軽油(VGO)及び常圧残油(AR)の試料を市販の供給元から入手し、
図2aに示すプロセススキームで使用した。ARを、場合によりVGOとともに、溶剤脱れき前処理なしで、直接的に基油水素化分解装置に供給した。
【0084】
使用したプロセス条件には、0.5hr-1のLHSV、1700~1800psiaの反応器H2分圧、約4500scfbの水素フィード軽油(再利用)比率、及び700~770+°Fの範囲の反応器温度が含まれた。温度及び他のプロセス条件は、約109のVI及び100°で約6cStの粘度を有する軽質基油目標生成物を生成するように選択した。
【0085】
図2aに従った各反応器内への触媒装填は、本明細書で上述したように、従来の基油生成用スキームとした。触媒構成には、反応器触媒床の最上部の卑金属水素化脱金属(demet)触媒の層、続いて卑金属水素化処理触媒の層、次に活性を高めるゼオライト含有卑金属水素化分解触媒の層を含む層状化触媒システムが含まれた。
【0086】
例1:減圧軽油(VGO)フィードストック(比較用フィードストック)
基油生成物の生成に使用する減圧軽油(VGO)フィードストックの試料を市販の供給元から入手し、比較用のベースケースとして分析した。VGOフィードストックを、
図1及び
図2aに示すプロセス構成に従って以下の例で使用した。このVGOフィードストック(試料ID2358)の性質を表1に示す。
【表1】
【0087】
例2:常圧残油(AR)フィードストックの性質
常圧残油の試料(AR1~AR5)を市販の供給元から入手し、分析した。本発明によるフィードストック構成要素として使用したこれらのAR試料の性質を表2に示す。
【表2】
【表2】
【0088】
表2Aは、比較用の従来のAR基油プロセスのフィードストック構成要素における性質を示している。注目され得るように、表2に示すARは、表2Aに示すAR0と顕著に異なる。
【表2A】
【0089】
例3:常圧残油(AR)フィードストックと減圧軽油(VGO)フィードストックとのブレンドの性質
例2の常圧残油の試料AR1~AR5を、例1の減圧軽油(VGO)フィードストックとともに重量比に基づいてブレンドし、これらのブレンドを分析した。本発明による例示的フィードストックとして使用したこれらのAR/VGOブレンド試料の性質を表3に示す。
【表3】
【表3】
【0090】
例4:常圧残油(AR)フィードストック及び減圧軽油(VGO)フィードストックのブレンド(AR1/VGOブレンド)からのブライトストック基油生成の評価
例3の常圧残油AR1と減圧軽油(VGO)とのブレンドフィードストック試料を、
図2aに表すプロセスに従って重質基油生成に関し評価した。AR1/VGOフィードストックブレンド(45wt.%のAR1、55wt.%のVGO)の全液体生成物を8つの留分に蒸留した。このうちの最も重質の留分は、カットポイントが911°Fであった。蒸留モデルからは、40,000BPODの水素化分解装置フィードの全液体を以下の生成物に蒸留できることが示された:
6,150BPODブライトストック基油生成物(100℃で29.9cSt、117のVI、1005°F+)、生成物の11%に相当;
8,310BPODろう状重質600中性基油生成物(100℃で11.69cSt、112のVI、898~1005°F)、生成物の15%に相当;
13,010BPODろう状220中性基油生成物(100℃で6.0cSt、108のVI、754~898°F)、生成物の24%に相当;及び
27,470BPOD全ろう状基油生成物、754°F+の油、液体生成物の50%に相当。
【0091】
以上の例(実施例)では、常圧残油をフィードストックまたはフィードストックブレンドとして使用することで、ブライトストックを含む超重質グレード基油を全ハイドロプロセシング経路に従って有利に製造できるようになることが示されている。ARフィード構成要素を使用することで、より高い収率及びより高い生成物品質が得られ、より重質の構成要素及びより高いエンドポイントを有するフィードブレンドの処理ができるようになる可能性がある。分留の対象及び条件のバリエーションにより、追加的なまたは異なる性質を有する基油生成物を得る可能性はあるものの、典型的または標準的な基油フィードストックのみを溶剤脱れきを使用せずに処理することでは一般的には達成できない、ブライトストックを含む超重質基油の生成が、常圧残油フィードストックを使用することで可能になり得る。
【0092】
本発明の1つ以上の実施形態についての上記の説明は、主に例示目的のためであり、本発明の本質を引き続き組み込む変形形態が使用されてもよいことが認識されている。本発明の範囲を判断する際には、下記の請求項を参照すべきである。
【0093】
米国特許の実施の目的において、及び許可されている他の特許庁において、上記の本発明の説明で引用された全ての特許及び刊行物は、そこに含まれる情報が上記の開示と一致する及び/またはそれを補足する限りにおいて、参照により本明細書に援用される。
【国際調査報告】