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特表2024-506825S1P受容体調節剤による処置の方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-15
(54)【発明の名称】S1P受容体調節剤による処置の方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240207BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240207BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240207BHJP
   A61K 31/10 20060101ALI20240207BHJP
   A61K 31/661 20060101ALI20240207BHJP
   A61K 38/13 20060101ALI20240207BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20240207BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240207BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240207BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240207BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240207BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20240207BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P35/02
A61P43/00 111
A61K31/10
A61K31/661
A61K38/13
A61K31/519
A61K47/26
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/12
A61K47/04
A61K9/48
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545210
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(85)【翻訳文提出日】2023-09-25
(86)【国際出願番号】 EP2022051940
(87)【国際公開番号】W WO2022162088
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2021/000033
(32)【優先日】2021-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(31)【優先権主張番号】21199256.5
(32)【優先日】2021-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523281412
【氏名又は名称】プリオセラ エスエーエス
(71)【出願人】
【識別番号】521037949
【氏名又は名称】プリオセラ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100141195
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 恵美子
(72)【発明者】
【氏名】ブッチャー,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ダートスチニグ,シモーヌ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA53
4C076CC27
4C076DD29
4C076DD38
4C076DD41
4C076EE31
4C076EE38
4C084AA17
4C084DA11
4C084NA14
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC41
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB09
4C086DA34
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA37
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB27
4C086ZC41
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206JA30
4C206MA57
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZB27
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、急性骨髄性白血病(AML)に罹患し、同種造血幹細胞移植(HSCT)を受けている患者を処置するのに使用するためのS1P受容体調節剤、好ましくはモクラビモドに関する。本発明は、特に、HSCTを受けている対象におけるAMLを処置する方法であって、有効量のS1P受容体調節剤、好ましくはモクラビモドを、それを必要とする前記対象に、少なくとも6ヶ月間、好ましくは少なくとも12ヶ月間毎日投与することを含む方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同種造血幹細胞移植(HSCT)を受けている対象における急性骨髄性白血病(AML)の処置における使用のためのS1P受容体調節剤。
【請求項2】
前記S1P受容体調節剤が、モクラビモド、FTY720、シポニモド、フィンゴリモド、オザニモド、ポネシモド、エトラシモド、AKP-11、セネリモド、アミセリモド、CBP-307、OPL-307、OPL-002、BMS-986166、SCD-044、BOS-173717、CP-1050のうちから選択され、好ましくはモクラビモドである、請求項1に記載の使用のためのS1P受容体調節剤。
【請求項3】
前記S1P受容体調節剤がS1P受容体アゴニストである、請求項1に記載の使用のためのS1P受容体調節剤。
【請求項4】
前記S1P受容体アゴニストが、以下の式(I)または(II)または(IIa)または(IIb)のもの:
【化1】
(式中、
は、H、ハロゲン、トリハロメチル、C1~4アルコキシ、C1~7アルキル、フェネチルまたはベンジルオキシであり;
は、H、ハロゲン、CF、OH、C1~7アルキル、C1~4アルコキシ、ベンジルオキシ、フェニルまたはC1~4アルコキシメチルであり;
およびRの各々は、独立して、Hまたは式(a)の残基
【化2】
であり、
およびRの各々は、独立して、Hまたはハロゲンによって任意選択で置換されたC1~4アルキルであり;
nは、1~4の整数であり;
は水素、ハロゲン、C1~7アルキル、C1~4アルコキシまたはトリフルオロメチルである)
【化3】
またはその薬学的に許容される塩である、請求項3に記載の使用のためのS1P受容体調節剤。
【請求項5】
前記S1P受容体アゴニストがモクラビモド、またはその薬学的に許容される塩である、請求項4に記載の使用のためのS1P受容体調節剤。
【請求項6】
前記対象が、最初の完全寛解にあるが、「CR1高リスク」と呼ばれる有害リスク群であるか、または「CR2」と呼ばれる2回目の完全寛解もしくはそれ以降(or beyond)にあるかのいずれかである患者集団のうちから選択され、前記CR1高リスクまたはCR2患者が、ASBMT RFI 2017 - 米国血液骨髄移植学会のCIBMTR分類に対応する疾患分類に従って定義される、請求項1~5のいずれか1項に記載の使用のためのS1P受容体調節剤。
【請求項7】
前記S1P受容体調節剤が、好ましくは、HSC移植1~14日前の開始日、好ましくはHSC移植の11日前の開始日から、少なくとも6、7、8、9、10、11もしくは12ヶ月またはそれ以上、または再発するまで、毎日投与される、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用のためのS1P受容体調節剤。
【請求項8】
前記S1P受容体調節剤がモクラビモドであり、前記対象が、少なくともシクロスポリンAを含む有効量の免疫抑制剤でさらに処置され、前記免疫抑制剤処置が、少なくとも3ヶ月後に低減または停止され、例えば、少なくとも3ヶ月後に開始用量の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%の量に低減される、請求項1~7のいずれか1項に記載の使用のためのS1P受容体調節剤。
【請求項9】
前記対象が、シクロスポリンA、またはシクロスポリンAおよびメトトレキセートの組合せから本質的になる有効量の免疫抑制剤をさらに投与される、請求項1~8のいずれか1項に記載の使用のためのS1P受容体調節剤。
【請求項10】
前記シクロスポリンAが、2~6mg/kg/日、好ましくは3~5mg/kg/日の範囲の開始用量で投与される、請求項9に記載の使用のためのS1P受容体調節剤。
【請求項11】
前記S1P受容体調節剤がモクラビモドであり、前記モクラビモドが3mgの1日用量で投与される、請求項1~10のいずれか1項に記載の使用のためのS1P受容体調節剤。
【請求項12】
前記S1P受容体調節剤がモクラビモドであり、前記モクラビモドが1mgの1日用量で投与される、請求項1~10のいずれか1項に記載の使用のためのS1P受容体調節剤。
【請求項13】
前記S1P受容体調節剤がモクラビモドであり、前記モクラビモドが固体剤形として製剤化され、前記固体剤形が、
- 好ましくは48~88mg/単位、より好ましくは58~78mg/単位の含有量、さらにより好ましくは約68mg/単位の含有量のマンニトール;
- 好ましくは5~45mg/単位、より好ましくは15~35mg/単位の含有量、さらにより好ましくは約25mg/単位の含有量の結晶セルロース;
- 好ましくは1~8mg/単位、より好ましくは2~6mg/単位の含有量、さらにより好ましくは約4mg/単位の含有量のデンプングリコール酸ナトリウム;
- 好ましくは0.025~4mg/単位、より好ましくは0.5~2mg/単位の含有量、さらにより好ましくは約1mg/単位の含有量のステアリン酸マグネシウム;および
- 好ましくは0.125~2mg/単位、より好ましくは0.25~1mg/単位の含有量、さらにより好ましくは約0.5mg/単位の含有量のコロイド状二酸化ケイ素
を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の使用のためのS1P受容体調節剤。
【請求項14】
前記S1P受容体調節剤が慢性GVHDを処置する、典型的には慢性GVHDの発症を遅延するのに十分な量で投与される、請求項1~13のいずれか1項に記載の使用のためのS1P受容体調節剤。
【請求項15】
同種造血幹細胞移植(HSCT)を受けている対象における慢性GVHDの処置における使用のため、典型的には慢性GVHDの発症を遅延するためのS1P受容体調節剤。
【請求項16】
前記S1P受容体調節剤が、モクラビモド、FTY720、シポニモド、フィンゴリモド、オザニモド、ポネシモド、エトラシモド、AKP-11、セネリモド、アミセリモド、CBP-307、OPL-307、OPL-002、BMS-986166、SCD-044、BOS-173717、CP-1050のうちから選択され、好ましくはモクラビモドである、請求項15に記載の使用のためのS1P受容体調節剤。
【請求項17】
前記S1P受容体調節剤がS1P受容体アゴニストである、請求項15に記載の使用のためのS1P受容体調節剤。
【請求項18】
前記S1P受容体アゴニストが、以下の式(I)または(II)または(IIa)または(IIb)のもの:
【化4】
(式中、
は、H、ハロゲン、トリハロメチル、C1~4アルコキシ、C1~7アルキル、フェネチルまたはベンジルオキシであり;
は、H、ハロゲン、CF、OH、C1~7アルキル、C1~4アルコキシ、ベンジルオキシ、フェニルまたはC1~4アルコキシメチルであり;
およびRの各々は、独立して、Hまたは式(a)の残基
【化5】
であり、
およびRの各々は、独立して、Hまたはハロゲンによって任意選択で置換されたC1~4アルキルであり;
nは、1~4の整数であり;
は、水素、ハロゲン、C1~7アルキル、C1~4アルコキシまたはトリフルオロメチルである)
【化6】
またはその薬学的に許容される塩である、請求項17に記載の使用のためのS1P受容体調節剤。
【請求項19】
前記S1P受容体アゴニストがモクラビモド、またはその薬学的に許容される塩である、請求項18に記載の使用のためのS1P受容体調節剤。
【請求項20】
前記対象が、最初の完全寛解にあるが、「CR1高リスク」と呼ばれる有害リスク群であるか、または「CR2」と呼ばれる、2回目の完全寛解、もしくは2回目の再発を超えた(beyond second relapse)状態にあるかのいずれかである患者集団のうちから選択され、前記CR1高リスクまたはCR2患者が、ASBMT RFI 2017 - 米国血液骨髄移植学会のCIBMTR分類に対応する疾患分類に従って定義される、請求項15~19のいずれか1項に記載の使用のためのS1P受容体調節剤。
【請求項21】
前記S1P受容体調節剤が、HSC移植1~14日前の開始日、好ましくはHSCTの11日前の開始日から、少なくとも6、7、8、9、10、11もしくは12ヶ月またはそれ以上、または再発するまで、毎日投与される、請求項15~20のいずれか1項に記載の使用のためのS1P受容体調節剤。
【請求項22】
前記S1P受容体調節剤がモクラビモドであり、前記対象が、少なくともシクロスポリンAを含む有効量の免疫抑制剤でさらに処置され、前記免疫抑制剤処置が、少なくとも3ヶ月後に低減または停止され、例えば、少なくとも3ヶ月後に開始用量の約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%の量に低減される、請求項15~21のいずれか1項に記載の使用のためのS1P受容体調節剤。
【請求項23】
前記対象が、シクロスポリンA、またはシクロスポリンAおよびメトトレキセートの組合せから本質的になる有効量の免疫抑制剤をさらに投与される、請求項15~22のいずれか1項に記載の使用のためのS1P受容体調節剤。
【請求項24】
前記シクロスポリンAが、2~6mg/kg/日、好ましくは3~5mg/kg/日の範囲の開始用量で投与される、請求項23に記載の使用のためのS1P受容体調節剤。
【請求項25】
前記S1P受容体調節剤がモクラビモドであり、前記モクラビモドが3mgの1日用量で投与される、請求項15~24のいずれか1項に記載の使用のためのS1P受容体調節剤。
【請求項26】
前記S1P受容体調節剤がモクラビモドであり、前記モクラビモドが1mgの1日用量で投与される、請求項15~24のいずれか1項に記載の使用のためのS1P受容体調節剤。
【請求項27】
前記S1P受容体調節剤がモクラビモドであり、前記モクラビモドが固体剤形として製剤化され、前記固体剤形が、
- 好ましくは48~88mg/単位、より好ましくは58~78mg/単位の含有量、さらにより好ましくは約68mg/単位の含有量のマンニトール;
- 好ましくは5~45mg/単位、より好ましくは15~35mg/単位の含有量、さらにより好ましくは約25mg/単位の含有量の結晶セルロース;
- 好ましくは1~8mg/単位、より好ましくは2~6mg/単位の含有量、さらにより好ましくは約4mg/単位の含有量のデンプングリコール酸ナトリウム;
- 好ましくは0.025~4mg/単位、より好ましくは0.5~2mg/単位の含有量、さらにより好ましくは約1mg/単位の含有量のステアリン酸マグネシウム;および
- 好ましくは0.125~2mg/単位、より好ましくは0.25~1mg/単位の含有量、さらにより好ましくは約0.5mg/単位の含有量のコロイド状二酸化ケイ素
を含む、請求項15~26のいずれか1項に記載の使用のためのS1P受容体調節剤。
【請求項28】
同種造血幹細胞移植(HSCT)を受けている対象における急性骨髄性白血病を処置する方法であって、
1)前記対象に有効量のS1P受容体調節剤を投与するステップと、
2)前記対象を、実質的に骨髄および免疫系を破壊するように前処理するステップであって、有効量の化学療法剤による前記対象の処置および/または全身照射を実施することを含むステップと、
3)前記対象にドナー由来の同種造血幹細胞を移植するステップと、
4)任意選択で、有効量の1種または複数の免疫抑制剤を同時投与して、急性GVHDを防止するステップと
を含む方法。
【請求項29】
前記S1P受容体調節剤が、モクラビモド、FTY720、シポニモド、フィンゴリモド、オザニモド、ポネシモド、エトラシモド、AKP-11、セネリモド、アミセリモド、CBP-307、OPL-307、OPL-002、BMS-986166、SCD-044、BOS-173717、CP-1050のうちから選択され、好ましくはモクラビモドである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記S1P受容体調節剤が、S1P受容体アゴニストである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記S1P受容体調節剤が、式(I)または(II)または(IIa)または(IIb)のもの:
【化7】
(式中、
は、H、ハロゲン、トリハロメチル、C1~4アルコキシ、C1~7アルキル、フェネチルまたはベンジルオキシであり;
は、H、ハロゲン、CF、OH、C1~7アルキル、C1~4アルコキシ、ベンジルオキシ、フェニルまたはC1~4アルコキシメチルであり;
およびRの各々は、独立して、Hまたは式(a)の残基
【化8】
であり、
およびRの各々は、独立して、Hまたはハロゲンによって任意選択で置換されたC1~4アルキルであり;
nは、1~4の整数であり;
は、水素、ハロゲン、C1~7アルキル、C1~4アルコキシまたはトリフルオロメチルである)
【化9】
またはその薬学的に許容される塩、好ましくは、モクラビモドまたはその薬学的に許容される塩である、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
前記S1P受容体調節剤、好ましくはモクラビモドの前記投与が、同種HSCTの前、好ましくは、HSCTの少なくとも7日前、より好ましくは、HSCTの11日前に開始される、請求項28~31に記載の方法。
【請求項33】
前記S1P受容体調節剤、好ましくはモクラビモドが、前記HSCT後、少なくとも80日、または少なくとも100日、またはそれ以上に設定された期間にわたって毎日投与される、請求項28~32に記載の方法。
【請求項34】
前記S1P受容体調節剤、好ましくはモクラビモドが、HSCTの1~14日前から、好ましくはHSCTの11日前から、少なくとも12ヶ月もしくはそれ以上にわたって、または再発するまで、毎日投与される、請求項28~33に記載の方法。
【請求項35】
前記S1P受容体調節剤、好ましくはモクラビモドが、1日当たり固定量で投与され、好ましくは、固定1日投薬量が、1日当たり0.05mg~40mg、好ましくは0.1mg~35mg、より好ましくは0.5mg~30mg、さらにより好ましくは1日当たり1mg~15mg、さらにより好ましくは1.5mg~7mg、さらにより好ましくは2mg~5mg、さらにより好ましくは1日当たり約3mgまたは1日当たり約1mgである、請求項28~34に記載の方法。
【請求項36】
前記S1P受容体調節剤がモクラビモドであり、前記モクラビモドが、3mgの1日用量で、好ましくは、1日3個の1mgのカプセル剤を投与される、請求項28~35に記載の方法。
【請求項37】
前記化学療法剤が、シクロホスファミドまたはチオテパ、シタラビン、エトポシド、ブスルファンまたはメルファラン、フルダラビンおよびそれらの混合物、例えば、フルダラビン/ブスルファン、ブスルファン/シクロホスファミドまたはフルダラビン/メルファランの組合せ投与からなる群から選択される、請求項28~36に記載の方法。
【請求項38】
ステップ2)の前記前処置レジメンが、
- シクロホスファミドの投与およびそれに続く全身照射、または
- ブスルファンおよびシクロホスファミドの投与、または
- フルダラビンおよびブスルファンの投与、ならびに任意選択で、低線量での全身照射
で構成される、請求項28~37に記載の方法。
【請求項39】
ステップ3)において、前記造血幹細胞が、高分解能HLAタイピングによって決定してHLA-A、-B、-C、-DRB1および/または-DQB1座で8/8以上の一致を有する、HLA一致した血縁また非血縁ドナーから選択される、請求項28~38に記載の方法。
【請求項40】
ステップ4)において、前記1種または複数の免疫抑制剤が、シクロスポリンA、シロリムス、タクロリムス、メトトレキセートおよびミコフェノール酸、好ましくは、シクロスポリンAまたはシクロスポリンAおよびメトトレキセートもしくはタクロリムスの混合物、またはタクロリムスおよびメトトレキセートの混合物からなる群から選択される、請求項28~39に記載の方法。
【請求項41】
前記免疫抑制剤が、少なくとも、前記S1P受容体調節剤、好ましくはモクラビモドの投与の開始日とHSCTの当日、好ましくはHSCTの3日前との間の期間内に投与されるシクロスポリンAである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記シクロスポリンAが、12時間毎に2時間かけて2.5mg/kgの初期投薬量で、および任意選択で150~400mg/Lに調節して、静脈内投与される、請求項40または41に記載の方法。
【請求項43】
メトトレキセートが、HSCTの当日に10mg/kgの投薬量で、ならびに任意選択で最初の投与後2および5日後ならびにその日から16日目に6mg/kgの投薬量で、シクロスポリンAと一緒に投与される、請求項40~42に記載の方法。
【請求項44】
ステップ4)において使用される前記1種または複数の免疫抑制剤が、タクロリムスを含まない、請求項28~43に記載の方法。
【請求項45】
前記S1P受容体調節剤、好ましくはモクラビモドが、少なくとも6ヶ月、好ましくは12、18もしくは24ヶ月またはそれ以上の期間、または再発するまで、投与され、前記対象が、ステップ4)において、少なくともシクロスポリンAを含む有効量の免疫抑制剤でさらに処置され、前記免疫抑制剤処置が、HSCTに続く6ヶ月の前、好ましくはHSCTに続く3~6ヶ月、または3~5ヶ月、または3~4ヶ月以内に低減または停止される、請求項28~44に記載の方法。
【請求項46】
前記免疫抑制剤処置が、前記免疫抑制剤の開始用量と比較して少なくとも10%低減される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記対象が、1種または複数のAML療法後に難治性または再発AMLを有する、請求項28~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記対象が、急性骨髄性白血病に罹患し、最初の完全寛解にあるが「CR1高リスク」と呼ばれる有害リスク群であるか、または2回目の完全寛解、もしくは2回目の再発を超えた状態(second complete remission or beyond second relapse)(CR2)にあるかのいずれかである患者のうちから選択され、前記CR1高リスクおよびCR2患者が、ASBMT RFI 2017 - 血液および骨髄移植のための米国社会のCIBMTR分類に対応する疾患分類に従って定義され、好ましくは、患者が、CR1高リスクおよびCR2と分類される、請求項28~47に記載の方法。
【請求項49】
前記S1P受容体調節剤が、急性GVHDを防止するのに十分な量で投与される、請求項28~48に記載の方法。
【請求項50】
前記S1P受容体調節剤が、急性および慢性GVHDを防止するのに十分な量で投与される、請求項28~49に記載の方法。
【請求項51】
前記患者が、HSCTから3ヶ月の時点で難治性GvHDがないおよび/または無再発である、請求項28~50に記載の方法。
【請求項52】
前記患者が、HSCTから少なくとも3ヶ月後に、以下:
・少なくとも2ラインの処置に対して抵抗性のグレードIII/IV急性移植片対宿主疾患(GVHD)、
・全身免疫抑制処置に対して抵抗性の広範囲の慢性GVHD、
・疾患再発、
・死亡
のうちの1つまたは複数を示さない、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
HSCTから少なくとも3ヶ月の時点で、難治性GVHDのない無再発生存(rGRFS)、ならびに再発関連死亡率および移植関連死亡率の両方を介して対象の集団における疾病率または死亡率を改善する、請求項28~52に記載の方法。
【請求項54】
前記rGRFS患者が、処置された対象の前記集団の少なくとも40%を占める、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
対象の集団におけるHSCT後12ヶ月の間、GVHD、難治性慢性GVHD、再発または死亡のいずれかの発生率または重症度を低減する、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
対象の集団の全生存を改善する、請求項28~55に記載の方法。
【請求項57】
対象の集団の前記全生存が、前記S1PR調節剤化合物を投与しないHSCTの同じ方法と比較して、少なくとも10、15または少なくとも20%改善される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記S1PR調節剤を投与しないHSCTの同じ方法と比較して、対象の集団の生活の質を改善する、請求項28~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記生活の質が、細胞療法骨髄移植認定財団(FACT-BMT)質問票および/またはMDアンダーソン症状評価票(MDASI)に従って、3ヶ月以上の時点で測定される、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記生活の質が、少なくとも10%改善される、請求項58または59に記載の方法。
【請求項61】
同種造血幹細胞移植(HSCT)を受けている対象における慢性GvHDを防止する方法であって、
1)前記対象に有効量のS1P受容体調節剤を投与するステップと、
2)前記対象を、実質的に骨髄および免疫系を破壊するように前処理するステップであって、有効量の化学療法剤による前記対象の処置および/または全身照射を実施することを含むステップと、
3)前記対象にドナー由来の同種造血幹細胞を移植するステップと、
4)任意選択で、有効量の1種または複数の免疫抑制剤を同時投与して、急性GVHDを防止するステップと
を含む方法。
【請求項62】
前記S1P受容体調節剤が、モクラビモド、FTY720、シポニモド、フィンゴリモド、オザニモド、ポネシモド、エトラシモド、AKP-11、セネリモド、アミセリモド、CBP-307、OPL-307、OPL-002、BMS-986166、SCD-044、BOS-173717、CP-1050のうちから選択され、好ましくはモクラビモドである、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記S1P受容体調節剤が、S1P受容体アゴニストである、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記S1P受容体調節剤が、式(I)または(II)または(IIa)または(IIb)のもの:
【化10】
(式中、
は、H、ハロゲン、トリハロメチル、C1~4アルコキシ、C1~7アルキル、フェネチルまたはベンジルオキシであり;
は、H、ハロゲン、CF、OH、C1~7アルキル、C1~4アルコキシ、ベンジルオキシ、フェニルまたはC1~4アルコキシメチルであり;
およびRの各々は、独立して、Hまたは式(a)の残基
【化11】
であり、
およびRの各々は、独立して、Hまたはハロゲンによって任意選択で置換されたC1~4アルキルであり;
nは、1~4の整数であり;
は、水素、ハロゲン、C1~7アルキル、C1~4アルコキシまたはトリフルオロメチルである)
【化12】
またはその薬学的に許容される塩、好ましくは、モクラビモドまたはその薬学的に許容される塩である、請求項62または63に記載の方法。
【請求項65】
前記S1P受容体調節剤、好ましくはモクラビモドの前記投与が、同種HSCTの前、好ましくは、HSCTの1~14日前、より好ましくは、HSCTの11日前に開始される、請求項61~64に記載の方法。
【請求項66】
前記S1P受容体調節剤、好ましくはモクラビモドが、前記HSCT後、少なくとも80日、または少なくとも100日以上に設定された期間にわたって毎日投与される、請求項61~65に記載の方法。
【請求項67】
前記S1P受容体調節剤、好ましくはモクラビモドが、HSCTの1~14日前から、好ましくはHSCTの11日前から、少なくとも6ヶ月以上にわたって、または再発するまで、毎日投与される、請求項61~66に記載の方法。
【請求項68】
前記S1P受容体調節剤、好ましくはモクラビモドが、一日当たり固定量で投与され、好ましくは、固定1日投薬量が、1日当たり0.05mg~40mg、好ましくは0.1mg~35mg、より好ましくは0.5mg~30mg、さらにより好ましくは1日当たり1mg~15mg、さらにより好ましくは1,5mg~7mg、さらにより好ましくは2mg~5mg、さらにより好ましくは1日当たり約3mgまたは1日当たり約1mgである、請求項61~67に記載の方法。
【請求項69】
前記S1P受容体調節剤がモクラビモドであり、前記モクラビモドが、3mgの1日用量で、好ましくは、1日3個の1mgのカプセル剤を投与される、請求項61~68に記載の方法。
【請求項70】
ステップ2)において、前記化学療法剤が、シクロホスファミド、シタラビン、エトポシド、ブスルファン、フルダラビン、メルファラン、メトトレキセート、シクロスポリンA、ならびにそれらの混合物、例えば、フルダラビン/ブスルファン、ブスルファン/シクロホスファミドおよびフルダラビン/メルファランからなる群から選択される、請求項61~69に記載の方法。
【請求項71】
ステップ2)において、前記処置が、
- シクロホスファミドの投与およびそれに続く全身照射、または
ブスルファンおよびシクロホスファミドの投与、または
- フルダラビンおよびブスルファンの投与、ならびに任意選択で、低線量での全身照射
で構成される、請求項61~70に記載の方法。
【請求項72】
ステップ3)において、前記造血幹細胞が、高分解能HLAタイピングによって決定してHLA-A、-B、-C、-DRB1および/または-DQB1座で8/8以上の一致を有する、HLA一致した血縁また非血縁ドナーから選択される、請求項61~71に記載の方法。
【請求項73】
ステップ4)において、前記1種または複数の免疫抑制剤が、シクロスポリンA、シロリムス、タクロリムス、メトトレキセートおよびミコフェノール酸、好ましくは、シクロスポリンAまたはシクロスポリンAおよびメトトレキセートもしくはタクロリムスの組合せ、またはタクロリムスおよびメトトレキセートの組合せからなる群から選択される、請求項61~72に記載の方法。
【請求項74】
前記免疫抑制剤が、少なくとも、前記S1P受容体調節剤、好ましくはモクラビモドの投与の開始日とHSCTの当日、好ましくはHSCTの3日前との間の期間内に投与されるシクロスポリンAである、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記シクロスポリンAが、12時間毎に2時間かけて2.5mg/kgの初期投薬量で、および任意選択で150~400mg/Lに調節して、静脈内投与される、請求項73または74に記載の方法。
【請求項76】
前記メトトレキセートが、HSCTの当日に10mg/kgの投薬量で、ならびに任意選択で最初の投与後2および5日後ならびにその日から16日目に6mg/kgの投薬量で、シクロスポリンAと一緒に投与される、請求項73~75に記載の方法。
【請求項77】
ステップ4)において使用される前記1種または複数の免疫抑制剤が、タクロリムスを含まない、請求項73~76に記載の方法。
【請求項78】
ステップ1)において、前記S1P受容体調節剤、好ましくはモクラビモドが、少なくとも6ヶ月、好ましくは12、18もしくは24ヶ月またはそれ以上にわたって、または再発するまで、毎日投与され、前記対象が、ステップ4)において、少なくともシクロスポリンAを含む有効量の免疫抑制剤でさらに処置され、前記免疫抑制剤処置が、HSCTに続く6ヶ月の前、好ましくはHSCTに続く3~6ヶ月、または3~5ヶ月、または3~4ヶ月以内に低減または停止される、請求項73~77に記載の方法。
【請求項79】
前記免疫抑制剤処置が、前記免疫抑制剤の開始用量と比較して約10%以上低減される、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記対象が、急性骨髄性白血病に罹患し、初回の完全寛解にあるが(CR1高リスク)と呼ばれる有害リスク群であるか、または2回目の完全寛解、もしくは2回目の再発を超えた状態(CR2)にあるかのいずれかである患者のうちから選択され、前記CR1高リスクおよびCR2患者が、ASBMT RFI 2017 - 血液および骨髄移植のための米国社会のCIBMTR分類に対応する疾患分類に従って定義され、好ましくは、患者が、CR1高リスクおよびCR2と分類される、請求項73~79に記載の方法。
【請求項81】
式(II)または式(IIa)または式(IIb)のS1P受容体調節剤:
【化13】
またはその薬学的に許容される塩と、
マンニトール、結晶セルロースおよびその混合物から選択される少なくとも1種の充填剤と、崩壊剤としてデンプングリコール酸ナトリウムと、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムと、滑剤としてコロイド状二酸化ケイ素と
を含む医薬組成物。
【請求項82】
前記S1P受容体調節剤が、式(II)の塩酸塩である、請求項81に記載の医薬組成物。
【請求項83】
前記充填剤が、マンニトールおよび結晶セルロースの混合物である、請求項81または82に記載の医薬組成物。
【請求項84】
カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤および顆粒剤から選択される経口投与に好適な固体剤形、好ましくは、カプセル剤または錠剤である、請求項81~83に記載の医薬組成物。
【請求項85】
前記固体剤形が、即時、または遅延、標的もしくは延長などの修正、好ましくは即時放出剤形である、請求項81~84に記載の医薬組成物。
【請求項86】
前記固体剤形単位中の前記S1P受容体調節剤、好ましくは式(II)の前記塩酸塩の投薬量強度が、0.05mg~15mg/単位、好ましくは0.1mg~10mg/単位、例えば、約0.1mg/単位、または約0.4mg/単位、または約1mg/単位、または約10mg/単位、より好ましくは約1mg/単位である、請求項81~85に記載の医薬組成物。
【請求項87】
- 48~88mg/単位、好ましくは58~78mg/単位の含有量、より好ましくは約68mg/単位の含有量のマンニトール;
- 5~45mg/単位、好ましくは15~35mg/単位の含有量、より好ましくは約25mg/単位の含有量の結晶セルロース;
- 1~8mg/単位、好ましくは2~6mg/単位の含有量、より好ましくは約4mg/単位の含有量のデンプングリコール酸ナトリウム;
- 0.025~4mg/単位、好ましくは0.5~2mg/単位の含有量、より好ましくは約1mg/単位の含有量のステアリン酸マグネシウム;および
- 0.125~2mg/単位、好ましくは0.25~1mg/単位の含有量、より好ましくは約0.5mg/単位の含有量のコロイド状二酸化ケイ素
を含む、請求項81~86のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項88】
前記S1P受容体調節剤が、8μm以下、好ましくは6μm、より好ましくは5μmの平均粒径および/または25μm以下、好ましくは22μm、より好ましくは18μmのD90を有する、請求項81~87に記載の医薬組成物。
【請求項89】
25℃において少なくとも24ヶ月間安定である、請求項81~88に記載の医薬組成物。
【請求項90】
請求項81~89に記載の医薬組成物を調製する方法であって、
a. 前記S1P受容体調節剤を、結晶セルロース、コロイド状二酸化ケイ素とブレンドするステップと、
b. マンニトールを添加し、得られた混合物をブレンドするステップと、
c. デンプングリコール酸ナトリウムを添加し、得られた混合物をブレンドするステップと、
d. ステアリン酸マグネシウムを添加し、得られた医薬組成物をブレンドするステップと、
e. 前記医薬組成物を回収するステップと
を含む方法。
【請求項91】
f. 前記得られた医薬組成物をカプセルに充填するステップと、
g. 前記医薬組成物を充填された得られたカプセル剤を回収するステップと
をさらに含む、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
同種造血幹細胞移植(HSCT)を受けている対象における急性骨髄性白血病を処置する方法であって、
1)前記対象に有効量のモクラビモドを投与するステップと、
2)前記対象を、実質的に骨髄および免疫系を破壊するように前処理するステップであって、有効量の化学療法剤による前記対象の処置および/または全身照射を実施することを含むステップと、
3)前記対象にドナー由来の同種造血幹細胞を移植するステップと、
4)任意選択で、有効量の1種または複数の免疫抑制剤を同時投与して、急性GVHDを防止するステップと
を含む方法。
【請求項93】
モクラビモドの前記投与が、同種HSCTの前、好ましくは、HSCTの少なくとも7日前、より好ましくは、HSCTの11日前に開始される、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
モクラビモドが、前記HSCT後、少なくとも80日、または少なくとも100日、またはそれ以上に設定された期間にわたって毎日投与される、請求項92または93に記載の方法。
【請求項95】
モクラビモドが、HSCTの1~14日前から、好ましくはHSCTの11日前から、少なくとも12ヶ月もしくはそれ以上にわたって、または再発するまで、毎日投与される、請求項92~94に記載の方法。
【請求項96】
モクラビモドが、1日当たり固定量で投与され、好ましくは、固定1日投薬量が、1日当たり0.05mg~40mg、好ましくは0.1mg~35mg、より好ましくは0.5mg~30mg、さらにより好ましくは1日当たり1mg~15mg、さらにより好ましくは1.5mg~7mg、さらにより好ましくは2mg~5mg、さらにより好ましくは1日当たり約3mgまたは1日当たり約1mgである、請求項92~95に記載の方法。
【請求項97】
モクラビモドが、約3mgの1日用量で、好ましくは1日3個の1mgのカプセル剤を投与される、請求項92~96に記載の方法。
【請求項98】
モクラビモドが、約1mgの用量で毎日投与される、請求項92~96に記載の方法。
【請求項99】
前記化学療法剤が、シクロホスファミドまたはチオテパ、シタラビン、エトポシド、ブスルファンまたはメルファラン、フルダラビンおよびそれらの混合物、例えば、フルダラビン/ブスルファン、ブスルファン/シクロホスファミドまたはフルダラビン/メルファランの組合せ投与からなる群から選択される、請求項92~98に記載の方法。
【請求項100】
ステップ2)の前記前処置レジメンが、
- シクロホスファミドの投与およびそれに続く全身照射、または
- ブスルファンおよびシクロホスファミドの投与、または
- フルダラビンおよびブスルファンの投与、ならびに任意選択で、低線量での全身照射
で構成される、請求項92~99に記載の方法。
【請求項101】
ステップ3)において、前記造血幹細胞が、高分解能HLAタイピングによって決定してHLA-A、-B、-C、-DRB1および/または-DQB1座で8/8以上の一致を有する、HLA一致した血縁また非血縁ドナーから選択される、請求項92~100に記載の方法。
【請求項102】
ステップ4)において、前記1種または複数の免疫抑制剤が、シクロスポリンA、シロリムス、タクロリムス、メトトレキセートおよびミコフェノール酸、好ましくは、シクロスポリンAまたはシクロスポリンAおよびメトトレキセートもしくはタクロリムスの混合物、またはタクロリムスおよびメトトレキセートの混合物からなる群から選択される、請求項92~101に記載の方法。
【請求項103】
前記免疫抑制剤が、少なくとも、モクラビモドの開始日とHSCTの当日、好ましくはHSCTの3日前との間の期間内に投与されるシクロスポリンAである、請求項102に記載の方法。
【請求項104】
前記シクロスポリンAが、12時間毎に2時間かけて2.5mg/kgの初期投薬量で、および任意選択で150~400mg/Lに調節して、静脈内投与される、請求項102または103に記載の方法。
【請求項105】
メトトレキセートが、HSCTの当日に10mg/kgの投薬量で、ならびに任意選択で最初の投与後2および5日後ならびにその日から16日目に6mg/kgの投薬量で、シクロスポリンAと一緒に投与される、請求項102~104に記載の方法。
【請求項106】
ステップ4)において使用される前記1種または複数の免疫抑制剤が、タクロリムスを含まない、請求項102~105に記載の方法。
【請求項107】
前記モクラビモドが、少なくとも6ヶ月、好ましくは12、18もしくは24ヶ月またはそれ以上の期間、または再発するまで、投与され、前記対象が、ステップ4)において、少なくともシクロスポリンAを含む有効量の免疫抑制剤でさらに処置され、前記免疫抑制剤処置が、HSCTに続く6ヶ月の前、好ましくはHSCTに続く3~6ヶ月、または3~5ヶ月、または3~4ヶ月以内に低減または停止される、請求項102~106に記載の方法。
【請求項108】
前記免疫抑制剤処置が、前記免疫抑制剤の開始用量と比較して少なくとも10%低減される、請求項107に記載の方法。
【請求項109】
前記対象が、1種または複数のAML療法後に難治性または再発AMLを有する、請求項92~108のいずれか1項に記載の方法。
【請求項110】
前記対象が、急性骨髄性白血病に罹患し、最初の完全寛解にあるが「CR1高リスク」と呼ばれる有害リスク群であるか、または2回目の完全寛解、もしくは2回目の再発を超えた状態(CR2)にあるかのいずれかである患者のうちから選択され、前記CR1高リスクおよびCR2患者が、ASBMT RFI 2017 - 血液および骨髄移植のための米国社会のCIBMTR分類に対応する疾患分類に従って定義され、好ましくは、患者が、CR1高リスクおよびCR2と分類される、請求項92~109に記載の方法。
【請求項111】
前記モクラビモドが、急性GVHDを防止するのに十分な量で投与される、請求項92~110に記載の方法。
【請求項112】
前記モクラビモドが、急性および慢性GVHDを防止するのに十分な量で投与される、請求項92~111に記載の方法。
【請求項113】
前記患者が、HSCTから3ヶ月の時点で難治性GvHDがないおよび/または無再発である、請求項92~112に記載の方法。
【請求項114】
前記患者が、HSCTから少なくとも3ヶ月後に、以下:
・少なくとも2ラインの処置に対して抵抗性のグレードIII/IV急性移植片対宿主疾患(GVHD)、
・全身免疫抑制処置に対して抵抗性の広範囲の慢性GVHD、
・疾患再発、
・死亡
のうちの1つまたは複数を示さない、請求項113に記載の方法。
【請求項115】
HSCTから少なくとも3ヶ月の時点で、難治性GVHDのない無再発生存(rGRFS)、ならびに再発関連死亡率および移植関連死亡率の両方を介して対象の集団における疾病率または死亡率を改善する、請求項92~114に記載の方法。
【請求項116】
前記rGRFS患者が、処置された対象の前記集団の少なくとも40%を占める、請求項115に記載の方法。
【請求項117】
対象の集団におけるHSCT後12ヶ月の間、GVHD、難治性慢性GVHD、再発または死亡のいずれかの発生率または重症度を低減する、請求項115に記載の方法。
【請求項118】
対象の集団の全生存を改善する、請求項92~117に記載の方法。
【請求項119】
対象の集団の前記全生存が、前記モクラビモドを投与しないHSCTの同じ方法と比較して、少なくとも10、15または少なくとも20%改善される、請求項118に記載の方法。
【請求項120】
前記S1PR調節剤化合物を投与しないHSCTの同じ方法と比較して、対象の集団の生活の質を改善する、請求項92~119のいずれか1項に記載の方法。
【請求項121】
前記生活の質が、細胞療法骨髄移植認定財団(FACT-BMT)質問票および/またはMDアンダーソン症状評価票(MDASI)に従って、3ヶ月以上の時点で測定される、請求項120に記載の方法。
【請求項122】
前記生活の質が、少なくとも10%改善される、請求項120または121に記載の方法。
【請求項123】
同種造血幹細胞移植(HSCT)を受けている対象における慢性GvHDを防止する方法であって、
1)前記対象に有効量のモクラビモドを投与するステップと、
2)前記対象を、実質的に骨髄および免疫系を破壊するように前処理するステップであって、有効量の化学療法剤による前記対象の処置および/または全身照射を実施することを含むステップと、
3)前記対象にドナー由来の同種造血幹細胞を移植するステップと、
4)任意選択で、有効量の1種または複数の免疫抑制剤を同時投与して、急性GVHDを防止するステップと
を含む方法に関する。
【請求項124】
モクラビモドの前記投与が、同種HSCTの前、好ましくは、HSCTの1~14日前、より好ましくは、HSCTの11日前に開始される、請求項123に記載の方法。
【請求項125】
モクラビモドが、前記HSCT後、少なくとも80日、または少なくとも100日、またはそれ以上に設定された期間にわたって毎日投与される、請求項123または124に記載の方法。
【請求項126】
モクラビモドが、HSCTの1~14日前から、好ましくはHSCTの11日前から、少なくとも6ヶ月もしくはそれ以上にわたって、または再発するまで、毎日投与される、請求項123~125に記載の方法。
【請求項127】
モクラビモドが、一日当たり固定量で投与され、好ましくは、固定1日投薬量が、1日当たり0.05mg~40mg、好ましくは0.1mg~35mg、より好ましくは0.5mg~30mg、さらにより好ましくは1日当たり1mg~15mg、さらにより好ましくは1.5mg~7mg、さらにより好ましくは2mg~5mg、さらにより好ましくは1日当たり約3mgまたは1日当たり約1mgである、請求項123~126に記載の方法。
【請求項128】
モクラビモドが、約3mgの用量で、好ましくは1日3個の1mgのカプセル剤を投与される、請求項123~127に記載の方法。
【請求項129】
モクラビモドが、約1mgの用量で毎日投与される、請求項123~127に記載の方法。
【請求項130】
ステップ2)において、前記化学療法剤が、シクロホスファミド、シタラビン、エトポシド、ブスルファン、フルダラビン、メルファラン、メトトレキセート、シクロスポリンA、ならびにそれらの混合物、例えば、フルダラビン/ブスルファン、ブスルファン/シクロホスファミドおよびフルダラビン/メルファランからなる群から選択される、請求項123~129に記載の方法。
【請求項131】
ステップ2)において、前記処置が、
- シクロホスファミドの投与およびそれに続く全身照射、または
- ブスルファンおよびシクロホスファミドの投与、または
- フルダラビンおよびブスルファンの投与、ならびに任意選択で、低線量での全身照射
で構成される、請求項123~130に記載の方法。
【請求項132】
ステップ3)において、前記造血幹細胞が、高分解能HLAタイピングによって決定してHLA-A、-B、-C、-DRB1および/または-DQB1座で8/8以上の一致を有する、HLA一致した血縁また非血縁ドナーから選択される、請求項123~131に記載の方法。
【請求項133】
ステップ4)において、前記1種または複数の免疫抑制剤が、シクロスポリンA、シロリムス、タクロリムス、メトトレキセートおよびミコフェノール酸、好ましくは、シクロスポリンAまたはシクロスポリンAおよびメトトレキセートもしくはタクロリムスの組合せ、またはタクロリムスおよびメトトレキセートの組合せからなる群から選択される、請求項123~132に記載の方法。
【請求項134】
前記免疫抑制剤が、少なくとも、モクラビモドの投与の開始日とHSCTの当日、好ましくはHSCTの3日前との間の期間内に投与されるシクロスポリンAである、請求項133に記載の方法。
【請求項135】
前記シクロスポリンAが、12時間毎に2時間かけて2.5mg/kgの初期投薬量で、および任意選択で150~400mg/Lに調節して、静脈内投与される、請求項133または134に記載の方法。
【請求項136】
メトトレキセートが、HSCTの当日に10mg/kgの投薬量で、ならびに任意選択で最初の投与後2および5日後ならびにその日から16日目に6mg/kgの投薬量で、シクロスポリンAと一緒に投与される、請求項133~135に記載の方法。
【請求項137】
ステップ4)において使用される前記1種または複数の免疫抑制剤が、タクロリムスを含まない、請求項133~136に記載の方法。
【請求項138】
ステップ1)において、モクラビモドが、少なくとも6ヶ月、好ましくは12、18もしくは24ヶ月またはそれ以上にわたって、または再発するまで、毎日投与され、前記対象が、ステップ4)において、少なくともシクロスポリンAを含む有効量の免疫抑制剤でさらに処置され、前記免疫抑制剤処置は、HSCTに続く6ヶ月の前、好ましくはHSCTに続く3~6ヶ月、または3~5ヶ月、または3~4ヶ月以内に低減または停止される、請求項133~137に記載の方法。
【請求項139】
前記免疫抑制剤処置が、前記免疫抑制剤の前記開始用量と比較して約10%以上低減される、請求項138に記載の方法。
【請求項140】
前記対象が、急性骨髄性白血病に罹患し、最初の完全寛解にあるが(CR1高リスク)と呼ばれる有害リスク群であるか、または2回目の完全寛解、もしくは2回目の再発を超えた状態(CR2)にあるかのいずれかである患者のうちから選択され、前記CR1高リスクおよびCR2患者が、ASBMT RFI 2017 - 血液および骨髄移植のための米国社会のCIBMTR分類に対応する疾患分類に従って定義され、好ましくは、患者が、CR1高リスクおよびCR2と分類される、請求項133~139に記載の方法。
【請求項141】
同種造血幹細胞移植(HSCT)を受けている対象における急性骨髄性白血病(AML)の処置において使用するための、式(II)または式(IIa)または式(IIb)のS1P受容体調節剤:
【化14】
またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物であって、マンニトール、結晶セルロースおよびその混合物から選択される少なくとも1種の充填剤と、崩壊剤としてデンプングリコール酸ナトリウムと、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムと、滑剤としてコロイド状二酸化ケイ素とを含む医薬組成物。
【請求項142】
前記S1P受容体調節剤が、式(II)の塩酸塩である、請求項141に記載の医薬組成物。
【請求項143】
前記充填剤が、マンニトールおよび結晶セルロースの混合物である、請求項141または142に記載の医薬組成物。
【請求項144】
カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤および顆粒剤から選択される経口投与に好適な固体剤形、好ましくは、カプセル剤または錠剤である、請求項141~143に記載の医薬組成物。
【請求項145】
前記固体剤形が、即時、または遅延、標的もしくは延長などの修正、好ましくは即時放出剤形である、請求項141~144に記載の医薬組成物。
【請求項146】
前記固体剤形単位中の前記S1P受容体調節剤、好ましくは式(II)の前記塩酸塩の投薬量強度が、0.05mg~15mg/単位、好ましくは0.1mg~10mg/単位、例えば、約0.1mg/単位、または約0.4mg/単位、または約1mg/単位、または約10mg/単位、より好ましくは約1mg/単位である、請求項141~145に記載の医薬組成物。
【請求項147】
- 48~88mg/単位、好ましくは58~78mg/単位の含有量、より好ましくは約68mg/単位の含有量のマンニトール;
- 5~45mg/単位、好ましくは15~35mg/単位の含有量、より好ましくは約25mg/単位の含有量の結晶セルロース;
- 1~8mg/単位、好ましくは2~6mg/単位の含有量、より好ましくは約4mg/単位の含有量のデンプングリコール酸ナトリウム;
- 0.025~4mg/単位、好ましくは0.5~2mg/単位の含有量、より好ましくは約1mg/単位の含有量のステアリン酸マグネシウム;および
- 0.125~2mg/単位、好ましくは0.25~1mg/単位の含有量、より好ましくは約0.5mg/単位の含有量のコロイド状二酸化ケイ素
を含む、請求項141~146に記載の医薬組成物。
【請求項148】
前記S1P受容体調節剤が、一日当たり固定量で投与され、好ましくは、固定1日投薬量が、1日当たり0,05mg~40mg、好ましくは0,1mg~35mg、より好ましくは0,5mg~30mg、さらにより好ましくは1日当たり1mg~15mg、さらにより好ましくは1,5mg~7mg、さらにより好ましくは2mg~5mg、さらにより好ましくは1日当たり約3mgまたは1日当たり約1mgである、請求項141~147に記載の医薬組成物。
【請求項149】
前記S1P受容体調節剤が、約3mgの1日用量で、好ましくは1日3個の1mgのカプセル剤を投与される、請求項141~148に記載の医薬組成物。
【請求項150】
前記S1P受容体調節剤が、約1mgの1日用量で投与される、請求項141~149に記載の医薬組成物。
【請求項151】
前記S1P受容体調節剤が、少なくとも6ヶ月、好ましくは12、18もしくは24ヶ月またはそれ以上にわたって毎日投与される、請求項141~150に記載の医薬組成物。
【請求項152】
- 約68mg/単位の含有量のマンニトール;
- 約25mg/単位の含有量の結晶セルロース;
- 約4mg/単位の含有量のデンプングリコール酸ナトリウム;
- 約1mg/単位の含有量のステアリン酸マグネシウム;および
- 約0.5mg/単位の含有量のコロイド状二酸化ケイ素
を含む、請求項141~151に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、急性骨髄性白血病に罹患し、同種造血幹細胞移植を受けたことがある患者の処置における使用のためのS1P受容体調節剤、好ましくはモクラビモドに関する。
【背景技術】
【0002】
急性骨髄白血病(AML)は、骨髄および血液中にあまりに多くの骨髄芽球(リンパ芽球ではない未成熟の白血球細胞)が見られる、侵攻性の急速に進行する疾患である。急性骨髄芽球性白血病、急性骨髄性白血病、急性非リンパ性白血病、AMLおよびANLLとも呼ばれる。骨髄が成熟した白血球細胞ではなく芽球を作り始めた場合、AMLが生じる。未成熟の芽球は、感染症と闘うことができない。AMLは最も一般的な急性白血病であり、急速に進行する。未処置のまま放置すると、AMLは数週間または数ヶ月以内に死亡に至ることがある。
【0003】
AMLのための現在の処置としては、標的化学療法を含む化学療法、放射線療法および自己造血幹細胞移植または同種造血幹細胞移植が挙げられる。これらの処置の各々の副作用は、十分報告されている。典型的には、新しく診断されたAML患者は、がんを寛解させようとする導入化学療法レジメンにより処置される。しかしながら、寛解は、寛解にある大部分のAML患者が最終的に再発するため、最も多くの場合、一時的な方策(measure)である。寛解後療法としては、地固め化学療法、同種造血幹細胞移植または自己造血幹細胞移植が挙げられる。
【0004】
今日まで、同種造血幹細胞移植(HSCT)が、依然として可能な治癒のための唯一の処置選択肢である。しかしながら、HSCTの主要な合併症として、移植片対宿主疾患(GVHD)および他の生命を脅かす合併症が挙げられる。免疫抑制予防法を使用してさえ、30~60%の患者があるレベルの急性GVHDを発症する(Abo-Zena and Horwitz, Curr Opin Pharmacol. 2002 Aug;2(4):452-7;Jagasia et al., Blood 2012 Jan 5;119(1):296-307;Ruggeri et al., J Hematol Oncol. 2016 Sep 17;9(1):89)。
【0005】
免疫抑制GVHD予防法は、例えば、十分確立された免疫抑制レジメンとしての、カルシニューリン阻害剤(CNI)であるシクロスポリンA(CsA)およびメトトレキセート(MTX)に基づく。最初の完全寛解(CR)にある患者におけるアロHSCTに進む決定を行うための基準は、予後因子に基づくリスク群分類、および導入時点でのドナーの有無を含む。寛解の質、および測定可能な残存疾患(MRD)の持続性、併存疾患(併存疾患の指数としてHCT-CI)、およびレシピエント-ドナープロファイル(Gratwohlスコア)などのいくつかの基準が、地固めの時点で追加される。
【0006】
欧州白血病ネットワーク(ELN)は、良好、中間および有害の3群によるAMLの予後に基づく階層化についての指針を提言している(Dohner et al., Blood 2017 Jan 26;129(4):424-447)。
【0007】
階層化に基づき、ELNは、中間/有害リスクを有する患者におけるアロHSCT適格性、および寛解後療法を評価するための追加の階層化:再発の低、中、高リスクについての指針を提言している(Dohner et al., Blood 2017 Jan 26;129(4):424-447)。例えば、HSCTは、HCT-CIが十分良好である限り、かつドナーが適時に利用可能である限り、有害な細胞遺伝学/分子特性および/または高MRDの最初のCRにある患者に適応される。
【0008】
急性GVHDは炎症性疾患である一方、慢性GVHDは自己免疫症候群に類似しており、典型的には、自己免疫臨床兆候を引き起こす抗原特異的ドナー免疫細胞に起因して、移植後4~6ヶ月で発症する。慢性GVHDは、伝統的形態として急性GVHDとは独立して、または急性特徴の存在するオーバーラップ症候群として生じうる。急性GVHDの病理は、組織炎症および損傷を引き起こすT細胞浸潤によって特徴付けられ、線維性および硬化性疾患である慢性GVHDが後に発症するリスク因子である。しかしながら、急性および慢性GVHDが直接関連するのか、そうであるならば、それらは機構的にどのように関係するのかは依然として不明である。
【0009】
中でも、急性から慢性GVHDへの遷移を促進しうる、1つの潜在的機序は、急性GVHDにおける胸腺機能の不全である。実際、前臨床データが、急性GVHDの間の寛容の誘導が弱まることにより、胸腺から末梢への自己反応性T細胞の出現が引き起こされることを示している(Dertschnig S, et al. Blood. 2013;122(5):837-841;Dertschnig S, et al. Blood. 2015;125(17):2720-2723)。これらの自己反応性T細胞が末梢にあると、それらは、典型的には慢性GVHDの間に観察される自己免疫症候群を引き起こす可能性を有しうる。
【0010】
スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)は、生体膜の成分であるスフィンゴ脂質の代謝産物である。S1Pは、S1P受容体1~5型(S1PR1~5)と名付けられた5つのG-タンパク質共役型受容体のファミリーのリガンドとして作用する。前臨床研究において、FTY720(フィンゴリモド)、S1PR1、3~5のマルチS1PR阻害剤が、急性GVHD標的器官へのドナーT細胞浸潤を阻害することによって同種造血幹細胞移植(HSCT)後の急性GVHDを軽減すること、およびドナーT細胞アポトーシスの増加と関連したドナーT細胞プールの急速な収縮を促進することが示されている(Kim et al. J Clin Invest. 2003; 111: 659-669、Hashimoto D, et al. Eur J Immunol. 2007; 37: 271-281)。
【0011】
S1PR3-5に対するS1PR1への不十分な選択性を示すFTY720とは対照的に、化合物KRP203(モクラビモド)は、潜在的により穏やかな毒性プロファイルでS1PR1に対して特異的に作用する。Yokoyamaらは、KRP203単独での短期間の投与が、二次リンパ器官におけるドナーT細胞のアポトーシスを誘導し、急性GVHDを軽減したことを示している(Yokoyama E, et al. Bone Marrow Transplant. 2020; 55: 787-795)。本発明者らの知識では、特にHSCTを受けているヒト患者における慢性GVHDの防止または処置におけるS1P受容体調節剤の役割は、示されたことがない。
【0012】
CsAおよびタクロリムス(TAC)などのカルシニューリン阻害剤は、ドナーT細胞活性化を抑制し、依然として急性GVHD予防法のための最も一般的に使用される免疫抑制剤である。国際公開第2020/022507号パンフレットは、血液悪性腫瘍を有する患者を処置するための臨床研究の結果を開示しており、前記患者はHSCTを受け、110日の最大継続期間にわたって、CsAおよびMTXまたはMTXおよびTACなどの免疫抑制剤による急性GVHDを防止するための標準治療と一緒に、KRP203で毎日処置される。
【0013】
しかしながら、これらの免疫抑制剤はまた、白血病特異的T細胞応答を阻害して、移植片対白血病(GVL)効果を損なう。実際、Yokoyama Eらは、マウスHSCT後のCsAの長期投与により、KRP203と比較して、GVL効果が大幅に損なわれたことを以前に示した(Yokoyama E, et al. Bone Marrow Transplant. 2020; 55: 787-795)。
【0014】
国際公開第2020/022507号パンフレットは、KRP203の短期投与により、血液悪性腫瘍を有する患者の急性GVHDのリスクが大幅に低減され、生存が改善されたことを示唆した。
【0015】
しかしながら、再発のリスクの高い患者の生存を改善する必要性がなお存在している。特に、再発は、現在の同種HSCT後の処置の不成功の主因である一方、GVHDに起因した移植関連死亡および疾病は、GVHD療法にある程度の前進があるにも関わらず、なお問題である。
【0016】
また、S1Pr薬物を含む最適な安定製剤を見出す必要性がなお存在し、安定性は医薬製剤に関する必須の品質特性である。特に固体形状についての、最適な製剤の予測性は、本産業において依然として課題である(Curr Pharm Des. 2016;22(32):5019-5028)。
【0017】
特に、AMLにおいて、GVLおよび急性GVHDを分離して、患者における再発率を改善する一方、慢性GVHD発生率および重症度を低減することが可能な治療を提供する必要性がなお存在する。
【0018】
本発明を何らかの特定の機序に限定することなく、記載される方法は、高リスクAML患者において、急性および慢性GVHD効果を防止する一方、GVL効果および再発のリスクをさらに改善する相乗的治療効果を提供するため、ここで記載される本発明はこの必要性を満たす。
【発明の概要】
【0019】
したがって、本発明の第1の目的は、急性骨髄性白血病(AML)に罹患し、同種造血幹細胞移植(HSCT)を受けているヒト対象の処置における使用のためのS1P受容体調節剤、好ましくはモクラビモドに関する。
【0020】
本発明の別の目的は、同種造血幹細胞移植(HSCT)を受けているヒト対象における、好ましくは、急性骨髄性白血病を処置するためのHSCTを必要とするヒト対象における、慢性GVHDの処置、典型的には、慢性GVHDの発症(onset)の遅延における使用のためのS1P受容体調節剤、好ましくはモクラビモドに関する。
【0021】
本発明の別の目的は、式(II)または式(IIa)または式(IIb)のS1P受容体調節剤:
【0022】
【化1】
またはその薬学的に許容される塩と、
マンニトール、結晶セルロース(microcrystalline cellulose)およびそれらの混合物から選択される少なくとも1種の充填剤と、崩壊剤としてデンプングリコール酸ナトリウム(sodium starch glycolate)と、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムと、滑剤としてコロイド状二酸化ケイ素(colloidal silicon dioxide)とを含む医薬組成物に関する。
【0023】
本開示は、特に、同種造血幹細胞移植(HSCT)を受けている対象における急性骨髄性白血病を処置する様々な方法であって、
1)対象に有効量のS1P受容体調節剤を投与するステップと、
2)前記対象を、実質的に骨髄および免疫系を破壊するように前処置する(conditioning)ステップであって、有効量の化学療法剤による前記対象の処置および/または全身照射を実施することを含むステップと、
3)前記対象にドナー由来の同種造血幹細胞を移植するステップと、
4)任意選択で、有効量の1種または複数の免疫抑制剤を同時投与(co-administering)して、急性GVHDを防止するステップと
を含む方法に関する。
【0024】
本開示は、同種造血幹細胞移植(HSCT)を受けている対象における慢性GvHDを防止する方法であって、
1)対象に有効量のS1P受容体調節剤を投与するステップと、
2)前記対象を、実質的に骨髄および免疫系を破壊するように前処置するステップであって、有効量の化学療法剤による前記対象の処置および/または全身照射を実施することを含むステップと、
3)前記対象にドナー由来の同種造血幹細胞を移植するステップと、
4)任意選択で、有効量の1種または複数の免疫抑制剤を同時投与して、急性GVHDを防止するステップと
を含む方法にさらに関する。
【0025】
本開示は、同種造血幹細胞移植を受けている対象における急性骨髄性白血病を処置するための医薬の製造における、S1P受容体調節剤の使用にさらに関する。
【0026】
本開示はまた、同種造血幹細胞移植を受けている患者における慢性GVHDを防止する、典型的には慢性GVHDの発症を遅延するための医薬の製造におけるS1P受容体調節剤の使用に関する。
【0027】
本明細書に記載される様々な方法および使用の一部の実施形態では、S1P受容体調節剤は、モクラビモド、FTY720、シポニモド、フィンゴリモド、オザニモド、ポネシモド、エトラシモド、AKP-11、セネリモド、アミセリモド、CBP-307、OPL-307、OPL-002、BMS-986166、SCD-044、BOS-173717、CP-1050のうちから選択され、典型的には、モクラビモド、FTY720およびシポニモドのうちから選択され、最も好ましくはモクラビモドである。好ましくは、前記S1P受容体調節剤は、S1P受容体アゴニストである。より好ましくは、S1P受容体調節剤は、式(I)または(II)のもの:
【0028】
【化2】
(式中、
は、H、ハロゲン、トリハロメチル、C1~4アルコキシ、C1~7アルキル、フェネチルまたはベンジルオキシであり;
は、H、ハロゲン、CF、OH、C1~7アルキル、C1~4アルコキシ、ベンジルオキシ、フェニルまたはC1~4アルコキシメチルであり;
およびRの各々は、独立して、Hまたは式(a)の残基
【0029】
【化3】
であり、
およびRの各々は、独立して、Hまたはハロゲンによって任意選択で置換されたC1~4アルキルであり;
nは、1~4の整数であり;
は、水素、ハロゲン、C1~7アルキル、C1~4アルコキシまたはトリフルオロメチルである)、
【0030】
【化4】
またはその薬学的に許容される塩、より好ましくは、モクラビモドまたはその薬学的に許容される塩である。
【0031】
本明細書に記載される様々な方法および使用の一部の実施形態では、モクラビモドまたはフィンゴリモドなどのS1P受容体調節剤は、40、50、60、70、90時間を超える、好ましくは100時間を超える薬物動態半減期を有するように選択され、したがって、患者の薬物曝露を最大にし、それによって、前処置手順によって毒性、例えば骨髄抑制、脱毛、吐き気、嘔吐、耳下腺腫脹および紅斑が引き起こされた場合、1または複数日間にわたるS1Pr投与の用量のスキップが可能になる。特に、吐き気および/または嘔吐は、患者が治療、例えば経口投薬量のS1Pr薬物を嚥下できなくなるため、長い薬物動態半減期のS1Pr薬物を使用することは患者に有利でありうる。
【0032】
一部の実施形態では、S1P受容体調節剤、好ましくはモクラビモドは、同種HSCTの前、好ましくは、HSCTの7、8、9、10、11、12、13または14日前、より好ましくはHSCTの11日前に開始される。
【0033】
一部の実施形態では、S1P受容体調節剤、好ましくはモクラビモドは、HSCT後、少なくとも80日、または少なくとも100日以上に設定された期間にわたって毎日投与される。
【0034】
好ましい実施形態について、S1P受容体調節剤、最も好ましくはモクラビモドは、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、18もしくは24ヶ月またはそれ以上、好ましくは対象の生涯にわたって、または再発するまで、毎日投与される、すなわち慢性連日処置である。
【0035】
例えば、S1P受容体調節剤、最も好ましくはモクラビモドは、HSCTの1~14日前、好ましくはHSCTの11日前から、HSCT後少なくとも6、7、8、9、10、11、12、18もしくは24ヶ月またはそれ以上にわたって、または再発するまで、毎日投与される。
【0036】
本明細書に記載される方法および使用のうちの任意のものにおいて、S1P受容体調節剤、最も好ましくはモクラビモドの量は、固定量で1日当たりに投与することができる。好ましくは、前記固定1日投薬量は、1日当たり0.05mg~40mg、好ましくは0.1mg~35mg、より好ましくは0.5mg~30mg、さらにより好ましくは1日当たり1mg~15mg、さらにより好ましくは1.5mg~7mg、さらにより好ましくは2mg~5mg、さらにより好ましくは1日当たり約3mgまたは1日当たり約1mgである。
【0037】
例えば、S1P受容体調節剤はモクラビモドでありえ、前記モクラビモドは、1日当たり約1mgの1日用量で投与されてもよい。あるいは、モクラビモドは、1日当たり約3mgの用量で、好ましくは約1mgの3つの固体剤形としてまたは約3mgの1つの固体剤形として、投与されてもよい。あるいは、モクラビモドは、1日当たり約2mgの用量で、好ましくは約1mgの2つの固体剤形としてまたは約2mgの1つの固体剤形として、投与されてもよい。
【0038】
具体的な実施形態では、ステップ2)の前処置レジメンは、シクロホスファミドまたはチオテパ、シタラビン、エトポシド、ブスルファンまたはメルファラン、フルダラビンおよびそれらの混合物、例えば、フルダラビン/ブスルファン、ブスルファン/シクロホスファミドまたはフルダラビン/メルファランの組合せ投与からなる群から選択される化学療法剤による化学療法を含む。
【0039】
具体的な実施形態では、前処置レジメンは以下の通りである:
・有効量のフルダラビンの静脈内投与;好ましくは、1日1回の30mg/mを-8~-4日目まで5日間(合計150mg/m
・有効量のチオテパの静脈内投与;好ましくは、1日2回の5mg/kg IVを-7日目の1日間(合計10mg/kg)
・メルファランの静脈内投与;好ましくは1日1回の60mg/m IVを-2および-1日目の2日間(合計120mg/m
ここで、日番号は、HSCTの当日に対するものである。
【0040】
他の具体的な実施形態では、ステップ2)の前処置レジメンは、以下で構成される:
i. シクロホスファミドの投与およびそれに続く全身照射、または
ii. ブスルファンおよびシクロホスファミドの投与、または
iii. フルダラビンおよびブスルファンの投与、ならびに任意選択で、低線量での全身照射。
【0041】
具体的な実施形態では、造血幹細胞は、ステップ3)において、高分解能HLAタイピングによって決定してHLA-A、-B、-C、-DRB1および/または-DQB1座で8/8以上の一致を有する、HLA一致した血縁また非血縁ドナーから選択される。
【0042】
具体的な実施形態では、方法のステップ4)において、1種または複数の免疫抑制剤は、シクロスポリンA、シロリムス、タクロリムス、メトトレキセートおよびミコフェノール酸モフェチル、好ましくは、シクロスポリンA、または混合物およびメトトレキセートもしくはタクロリムス、またはタクロリムスおよびメトトレキセートの混合物からなる群から選択される。具体的な実施形態では、免疫抑制剤は少なくともシクロスポリンAである。別の具体的な実施形態では、免疫抑制剤は少なくともタクロリムスである。
【0043】
例えば、シクロスポリンAは、S1P受容体調節剤、好ましくはモクラビモドの投与の開始日とHSCTの当日、好ましくはHSCTの3日前との間の期間内に投与することができる。具体的な実施形態では、シクロスポリンAは、12時間毎に2時間かけて2.5mg/kgの初期投薬量で、および任意選択で150~400mg/Lに調節して、静脈内または経口投与される。
【0044】
例えば、タクロリムスは、S1P受容体調節剤、好ましくはモクラビモドの投与の開始日とHSCTの当日、好ましくはHSCTの3日前との間の期間内に投与することができる。具体的な実施形態では、タクロリムスは、連続注入としてまたは1日2回の2つのボーラス注入に分割されてのいずれかで、0.02~0.03mg/kg/日の初期投薬量で静脈内または経口投与される。ある実施形態では、注射される用量は、5~10ng/mLの目標血液濃度を維持するべきである。
【0045】
具体的な実施形態では、メトトレキセートは、HSCTの当日に10mg/kgの投薬量で、ならびに任意選択で最初の投与の2および5日後ならびにその日から16日目に6mg/kgの投薬量で、シクロスポリンAまたはタクロリムスと一緒に投与される。別の実施形態では、メトトレキセートは、HSCTの翌日に1回15mg/m IVの投薬量で、ならびに次いで、HSCTの3日、6日および11日後に1回10mg/m IVの投薬量で投与される。後者の実施形態では、ロイコボリンレスキューの使用が許され、これは、メトトレキセート用量の24時間後に開始して、6時間毎に3用量与えられるメトトレキセートと同じ用量が推奨され、経口またはIVで与えられる。このレジメンの修正は、クリアランスの低減またはメトトレキセート毒性に合わせて行うことができる。
【0046】
好ましい実施形態では、ステップ4)において使用される1種または複数の免疫抑制剤は、タクロリムスを含まない。別の好ましい実施形態では、ステップ4)で使用される1種または複数の免疫抑制剤は、シクロスポリンAを含まない。
【0047】
方法および使用の具体的な実施形態では、S1P受容体調節剤、好ましくはモクラビモドは、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、18、24ヶ月またはそれ以上の期間、好ましくは対象の生涯にわたって、または寛解するまで、投与され、前記対象は、ステップ4)において、少なくともシクロスポリンAを含む有効量の免疫抑制剤でさらに処置され、前記免疫抑制剤処置は、HSCTに続く6ヶ月の前、好ましくはHSCTに続く3~6ヶ月、または3~5ヶ月、または3~4ヶ月の期間以内に低減または停止される。例えば、前記免疫抑制剤処置は、前記免疫抑制剤の開始用量と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%低減される。
【0048】
本明細書で開示される方法および使用の具体的な実施形態では、前記対象は、1種または複数のAML治療後に難治性(refractory)または再発AMLを有する。
【0049】
具体的な実施形態では、前記対象は、急性骨髄性白血病に罹患し、最初の形態学的完全寛解にあるが「CR1高リスク」と呼ばれる有害リスク群であるか、または「CR2」と呼ばれる2回目および後続の形態学的完全寛解(second and subsequent complete morphological remission)にあるかのいずれかである患者のうちから選択され、前記CR1高リスク、CR2患者は、ASBMT RFI 2017 - 血液および骨髄移植のための米国社会のCIBMTR分類に対応する疾患分類に従って定義され、好ましくは、患者は、CR1高リスクおよびCR2と分類される。
【0050】
具体的な実施形態では、対象は、本開示の方法(例えば、モクラビモドによるHSCT)を投与される前に、測定可能な残存疾患(MRD)陽性である。したがって、具体的な実施形態では、ステップ(1)の前に、方法は、対象のMRDステータスを検出するステップを含む。
【0051】
具体的な実施形態では、前記S1P受容体調節剤は、AMLを処置し、急性GVHDを防止するのに十分な量で投与される。
【0052】
具体的な実施形態では、前記S1P受容体調節剤は、AMLを処置し、急性および慢性GVHDを防止するのに十分な量で投与される。
【0053】
好ましくは、前記患者は、HSCTから3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24ヶ月の時点で難治性GVHDがなく(GVHD-free)、無再発である(relapse free)。
【0054】
方法および使用の具体的な実施形態では、前記対象は、HSCTから少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24ヶ月後に、以下のうちの1つまたは複数を示さない:
・少なくとも2ラインの免疫抑制処置に対して抵抗性の(refractory)グレードIII/IV急性移植片対宿主疾患(GVHD)、
・全身免疫抑制処置に対して抵抗性の広範囲の慢性GVHD、
・疾患再発、
・死亡。
【0055】
具体的な実施形態では、本明細書に記載される前記方法および使用は、HSCTから3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24ヶ月の時点で、特に難治性GVHDのない無再発生存(rGRFS)、ならびに再発関連死亡率および移植関連死亡率の両方を介して対象の集団の疾病率または死亡率を改善する。
【0056】
例えば、前記方法および使用は、対象の集団において、HSCT後12、18または24ヶ月の間、GVHD、難治性GVHD、再発または死亡のいずれかの発生または重症度を低減する。
【0057】
対象の全生存を改善するための方法であって、各対象について、本明細書で開示されるS1P受容体調節剤を使用する方法のいずれかで対象を処置するステップを含む方法もまた本明細書で開示される。
【0058】
具体的な実施形態では、前記方法は、前記S1PR調節剤の投与なしのHSCTの同じ方法と比較して、好ましくは、細胞療法骨髄移植認定財団(FACT-BMT)質問票および/またはMDアンダーソン症状評価票(MDASI)によって測定して、3、6、12または24ヶ月の時点で対象の集団の生活の質を改善する。改善は顕著でありえ、例えば、生活の質は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%またはそれ以上増加しうる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】KRP 203 1mg+CsA、KRP203 3mg+CsAおよびKRP203 3mg+TACを受けた患者における軽度慢性GVHDの発生率を示す図である。
図2】KRP 203 1mg+CsA、KRP203 3mg+CsAおよびKRP203 3mg+TACを受けた患者における良好な再発の発生率を示す図である。
図3】KRP 203 1mg+CsA、KRP203 3mg+CsAおよびKRP203 3mg+TACを受けた患者における中等度慢性GVHDの発生率を示すである。
図4A】慢性GVHDのための予防的処置としてのKRP203。予防的処置としてKRP203(黒色)またはビヒクル(灰色)のいずれかを受けたGVHDを有するマウスにおける皮膚病理の臨床スコアを示す図である。
図4B】慢性GVHDのための予防的処置としてのKRP203。予防的KRP203処置あり(黒色)またはなし(灰色)のマウスにおける42日目の涙液生成を測定するシルマー試験結果を示す図である。
図5A】短期間または長期間CsAと組み合わせたKRP203処置。T細胞枯渇骨髄(TCDBM)単独、またはTCDBM+T細胞および異なる処置組合せのいずれかを受けたマウスの全生存を示す図である。
図5B】短期間または長期間CsAと組み合わせたKRP203処置。TCDBM単独、またはTCDBM+T細胞および異なる処置組合せのいずれかを受けたマウスにおける腫瘍数を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
詳細な説明
本開示は、急性骨髄性白血病(AML)に罹患し、同種造血幹細胞移植(HSCT)を受けているヒト対象の処置における使用のためのS1P受容体調節剤、好ましくはモクラビモドに関する。
【0061】
一般定義
本明細書で使用される場合、「調節剤」は、対象に投与された場合、受容体自体に直接作用する化合物によるか、または受容体に作用する化合物の代謝産物によるかのいずれかで標的受容体との所望の相互作用をもたらす化合物である。対象に投与されると、S1P受容体調節剤、好ましくはモクラビモドは、受容体のシグナル伝達を活性化するかまたは阻害するかのいずれかによってS1P受容体と相互作用する。
【0062】
本明細書で使用される場合、「S1Pアゴニスト」は、S1P受容体と組み合わせた場合に生理応答を開始する化合物を指す。好ましくは、開始される生理応答は、S1P受容体のアゴニスト誘発内部移行である。細胞膜からのアゴニスト誘発内部移行の動態、および前記化合物脱落後の細胞膜へのS1P受容体の再循環は、化合物に依存する。そのようなS1P受容体アゴニストはまた、機能性アンタゴニストと呼ばれることもある。内部移行の持続性は、アゴニストの「機能性アンタゴニズム」特性を調整する。
【0063】
本明細書で使用される場合、HSCは造血幹細胞を指す。
【0064】
本明細書で使用される場合、HSCTは同種造血幹細胞移植を指す。
【0065】
「その薬学的に許容される塩」という用語は、酸および塩基付加塩の両方を含む。薬学的に許容される酸付加塩の非限定例としては、塩化物、塩酸塩、臭化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、スルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、ギ酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩およびアスコルビン酸塩が挙げられる。薬学的に許容される塩基付加塩の非限定例としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム(置換されたおよび置換されていない)、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガンおよびアルミニウム塩が挙げられる。薬学的に許容される塩は、例えば、薬学分野で周知の標準手順を使用して得ることができる。モクラビモドの場合、モクラビモド自体が塩基であるため、薬学的に許容される塩は、典型的には、酸付加塩であると考えられる。好ましくは、その薬学的に許容される塩は塩酸塩である。
【0066】
「賦形剤」という用語は、本明細書で使用される場合、原薬と共に添加され、製剤混合物の一部である非活性物質を指す。薬学的に許容される賦形剤は、例えば、充填剤、溶媒、希釈剤、担体、助剤(co-agent)、分散および検知剤、送達剤、例えば、保存剤、崩壊剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、増粘剤、甘味料、香味料、芳香剤、抗菌剤、殺菌剤、滑沢剤および長期送達制御剤、抗酸化剤、滑剤である。それらの選択および好適な割合は、投与の性質および方法、ならびに投薬量に依存する。
【0067】
「平均粒径」は、ここでは、粒子の50%が示された値以下のサイズを有することを意味するD50を指す。例えば、8μm以下の平均粒径は、8μmのD50を指し、つまり、粒子の50%が8μm以下の粒径を有する。D90という用語は、粒子の90%が示された値以下の粒径を有することを意味する。例えば、25μm以下のD90は、粒子の90%が25μm以下の粒径を有することを意味する。D50およびD90は、技術マニュアルおよび製造元の説明書に従って、例えば、その小体積分散モジュール(液体経路)を備えたBECKMAN-COULTERレーザー回折粒径分析器LS 230で、液体経路を使用するレーザー光回折によって決定される。
【0068】
「有効量」または「治療有効量」という用語は、活性主成分、例えば、S1P受容体調節剤、好ましくはモクラビモドの、単一用量としてまたは一連の用量の一部としてのいずれかで対象に投与された場合、単独でまたは他の活性剤と組み合わせて、少なくとも1つの治療効果を生じるのに効果的な量を指す。
【0069】
「約」という用語は、本明細書において、それに続く値が±20%、好ましくは±10%、より好ましくは±5%、さらにより好ましくは±2%、さらにより好ましくは±1%変動しうるという意味を有する。
【0070】
「患者」、「対象」、「個体」などの用語は、本明細書において交換可能に使用され、ヒトを指す。一部の実施形態では、処置を必要とする患者、対象または個体は、疾患、状態または障害、すなわち急性骨髄性白血病を既に有する患者、対象または個体を含む。
【0071】
「組合せ」は、1つの単位剤形での固定の組合せ、または本開示の化合物および組合せパートナー(例えば、「治療剤」または「助剤(co-agent)」とも呼ばれる、下記に説明する通りの別の薬物)が同時に独立して、またはとりわけ、組合せパートナーが協同、例えば相乗効果を示すことが可能になる時間間隔以内に別々に投与されてもよい場合の組合せ投与のいずれかを指す。単一成分は、キットに包装されても、または別々に包装されてもよい。成分の一方または両方(例えば、粉末または液体)は、投与前に所望の用量に復元または希釈されてもよい。
【0072】
本明細書で利用される通りの「同時投与」または「組合せ投与」などの用語は、それを必要とする単一対象(例えば、患者)への選択された組合せパートナーの投与を包含することを意味し、薬剤が、必ずしも同じ投与経路によってまたは同時に投与されるとは限らない処置レジメンを含むことを意図する。
【0073】
本明細書で使用される場合、別途指定されない限り、「処置すること」または「処置」という用語は、そのような用語が適用される障害もしくは状態を逆転、緩和、その進行を阻害もしくは防止すること、またはそのような用語が適用される障害もしくは状態の1つまたは複数の症状を逆転、緩和、その進行を阻害もしくは防止することを示す。
【0074】
本明細書で使用される場合、「AUClast」という用語は、時間0~最後の測定可能濃度まで測定した濃度として定義される。
【0075】
本開示の処置方法において活性主成分として使用するためのS1P受容体調節剤
S1P受容体は、G-タンパク質共役型受容体(G-coupled protein receptors)に関連する5つのサブタイプ(すなわち、S1P、S1P、S1P、S1PおよびS1P)に分割され、これらは、幅広い組織において発現し、異なる細胞特異性を示す。
【0076】
ある特定の実施形態では、本開示の本方法に従って使用するためのS1P受容体の調節剤は、シグナル伝達を活性化または阻害することによって5つのS1P受容体1~5型(S1PR1~5)のうちの1つまたは複数をモジュレートする化合物である。そのような化合物はまた、本明細書においてそれぞれ、「S1Pアゴニスト」および「S1P阻害剤」とも呼ばれる。
【0077】
具体的な実施形態では、本開示の処置方法において使用するための前記S1P受容体調節剤は、KRP203(モクラビモド)、FTY720(フィンゴリモド)、シポニモド(Mayzent(登録商標))、フィンゴリモド(Gilenya(商標))、オザニモド(Zeposia(登録商標))、ポネシモド、エトラシモド、AKP-11、セネリモド、アミセリモド、CBP-307、OPL-307、OPL-002、BMS-986166、SCD-044、BOS-173717、CP-1050のうちから選択される。好ましくは、本開示の処置方法において使用するための前記S1P受容体調節剤は、KRP203(モクラビモド)、FTY720(フィンゴリモド)およびMayzent(登録商標)(シポニモド)のうちから選択され、最も好ましくはモクラビモドである。
【0078】
ある実施形態では、本開示の処置方法において使用するための前記S1P受容体調節剤は、S1Pアゴニストである。そのようなS1Pアゴニストは、KRP203(モクラビモド)、S1PR選択的アゴニストもしくはFTY720(フィンゴリモド)、S1PR3~5のマルチS1PRアゴニストもしくはシポニモド、S1PRアゴニスト、またはそれらの薬学的に許容される塩のうちの任意のものである。好ましくは、ある特定の実施形態では、前記S1Pアゴニストは、S1PRを選択的に活性化するS1Pアゴニストのうちから選択される。
【0079】
好ましい実施形態では、本開示に従って使用するためのS1P受容体調節剤は、式(I)の化合物:
【0080】
【化5】
(式中、
は、H、ハロゲン、トリハロメチル、C1~4アルコキシ、C1~7アルキル、フェネチルまたはベンジルオキシであり;
は、H、ハロゲン、CF、OH、C1~7アルキル、C1~4アルコキシ、ベンジルオキシ、フェニルまたはC1~4アルコキシメチルであり;
およびRの各々は、独立して、Hまたは式(a)の残基
【0081】
【化6】
であり、
およびRの各々は、独立して、Hまたはハロゲンによって任意選択で置換されたC1~4アルキルであり;
nは、1~4の整数であり;
は水素、ハロゲン、C1~7アルキル、C1~4アルコキシまたはトリフルオロメチルである)
である。
【0082】
具体的な実施形態では、式(I)の前記化合物はS1Pアゴニスト、好ましくはS1PR選択的アゴニストである。典型的には、好ましい実施形態では、Rは塩素である。より好ましくは、RはHであり、Rは塩素であり、Rは水素である。例えば、RはHであり、Rは塩素であり、Rは水素であり、RおよびRの各々は、独立してHである。
【0083】
より好ましい実施形態では、本開示に従って使用するためのS1P受容体調節剤、好ましくはS1Pアゴニスト、好ましくはS1PR選択的アゴニストは、式(II)の2-アミノ-2-[4-(3-ベンジルオキシフェニルチオ)-2-クロロフェニル]エチル-プロパン-1,3-ジオール(モクラビモドまたはKRP203とも呼ばれる):
【0084】
【化7】
またはその薬学的に許容される塩である。
【0085】
本開示に従って使用するための他のS1P受容体調節剤、好ましくはS1PR選択的アゴニストは、以下の式のリン酸誘導体:
【0086】
【化8】
を含む。
【0087】
本明細書に記載される様々な方法および使用の一部の実施形態では、モクラビモドまたはフィンゴリモドなどのS1P受容体調節剤は、40、50、60、70、90時間を超える、好ましくは100時間を超える薬物動態半減期を有するように選択され、したがって、患者の薬物曝露を最大にし、それによって、前処置手順によって毒性、例えば骨髄抑制、脱毛、吐き気、嘔吐、耳下腺腫脹および紅斑が引き起こされた場合、1または複数日にわたるS1Pr投与のスキップが可能になる。特に、吐き気および/または嘔吐は、患者が治療、例えばS1Pr薬物の経口投薬量を嚥下できなくなるため、長いPK半減期のS1Pr薬物を使用することは患者に有利でありうる。
【0088】
前記化合物およびそれらの合成方法はまた、国際公開第03/029205号パンフレット、国際公開第2004/074297号パンフレット、国際公開第2006/009092号パンフレット、国際公開第2006/041019号パンフレットおよび国際公開第2014128611号パンフレットにも開示されている(これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0089】
モクラビモドが特に好ましい。実際、健康なボランティアにおいて確立された異なるS1P調節剤、例えば、モクラビモド、FTY720およびBAF312の薬力学効果により、リンパ球隔離の有効性の差が明らかになっている。作用様式の維持、すなわち、二次リンパ器官および骨髄におけるリンパ球の隔離を決定する測定可能なパラメーターは、末梢リンパ球数の減少である。FTY720の単回1mg用量、28日間にわたるBAF312の複数回用量適用、またはKRP203の単回3mg用量の後、絶対リンパ球数が正常数の80%への回復に達したのは、それぞれ、8、7および10日超後であった。したがって、KRP203についてのリンパ球回復時間は、BAF312およびFTY720についてよりも大幅に長い。
【0090】
S1P受容体調節剤の粒径
製薬産業において、粉末材料の粒子の特徴決定は、薬物製品開発および固体経口剤形の品質制御の重要な側面の1つになっている。原薬の粒径分布は、最終薬物製品性能(例えば、溶解、バイオアベイラビリティ、含量均一性、安定性など)に対して大きな効果を有しうる。さらに、原薬の粒径分布は、薬物製品の製造性、例えば、流動性、ブレンド均一性、コンパクティビリティに影響を及ぼしえ、予備混合/混合、造粒、乾燥、粉砕、ブレンド、コーティング、封入および圧縮を含む固体経口剤形の製造プロセスのほぼすべてのステップに対して重大な影響を有しうる。したがって、原薬の粒径は、最終的に、安全性、有効性および薬物製品の品質に影響しうる。
【0091】
ある実施形態では、本開示のS1P受容体調節剤は、8μm以下、好ましくは6μm、より好ましくは5μmの平均粒径(D50)を有する。別の実施形態では、本開示のS1P受容体調節剤は、25μm以下、好ましくは22μm、より好ましくは19μmのD90を有する。実際、本発明者らは、8μm超、好ましくは6μm超、より好ましくは5μm超の平均粒径(D50)および/または25μm超、好ましくは22μm超、より好ましくは19μm超のD90が、溶媒との表面接触を減らすことによって薬物の溶解を損ない、バイオアベイラビリティおよびin vivo性能の低下をもたらすことを見出した。
【0092】
S1P受容体調節剤を含む医薬組成物
本開示はまた、特に、開示される通りの処置方法におけるそれらの使用のための、上記の通りの前記S1P受容体調節剤、好ましくはモクラビモドの医薬組成物にも関する。
【0093】
ある実施形態では、本開示の医薬組成物は、S1P受容体調節剤、好ましくはモクラビモドと、1種または複数の薬学的に許容される賦形剤とを含む。
【0094】
医薬組成物に使用されることが当業者に公知の任意の好適な賦形剤が、本明細書に記載される組成物において用いられてもよい。
【0095】
医薬組成物は、医学分野の当業者によって決定される通りの処置される疾患または障害に適切な任意の方式で投与されてもよい。適切な用量ならびに投与の好適な継続期間および頻度は、患者の状態、患者の疾患の種類および重症度、活性成分の特定の形態、ならびに投与の方法を含む本明細書において論じられるような因子によって決定される。一般に、適切な用量(または有効用量)および処置レジメンは、治療効果、例えば、改善された臨床転帰、例えば、より頻繁な完全もしくは部分寛解、またはより長い無病生存および/もしくは全生存、または症状重症度の低下、または本明細書において詳細に記載される通りの他の利益をもたらすのに十分な量の医薬組成物を提供する。
【0096】
本明細書に記載される医薬組成物は、有効量の化合物を効果的に送達することができるいくつかの経路のうちの任意のものによって、それを必要とする対象に投与されてもよい。医薬組成物は、経口、直腸、非経口、大槽内、膣内、腹腔内、局所、頬側、または経口もしくは鼻内スプレーとして投与されてもよい。好ましい実施形態では、医薬組成物は、経口投与するのに好適である。
【0097】
別の実施形態では、医薬組成物は、経口投与に好適な固体剤形であってもよい。経口投与のための固体剤形としては、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤および粒剤が挙げられる。好ましい実施形態では、医薬組成物は、カプセル剤または錠剤である。カプセル剤は、ソフトまたはハードゼラチンカプセル剤、好ましくはハードゼラチンカプセル剤であってもよい。例えば、カプセル剤は、粉砕HGCまたは粉砕HPMCカプセル剤である。
【0098】
ある実施形態では、カプセル剤または錠剤内容物の放出は、即時であっても、または遅延、標的もしくは延長など修正されていてもよい。好ましい実施形態では、固体剤形は、即時放出剤形である。
【0099】
ある実施形態では、医薬組成物は、S1P受容体調節剤、好ましくはモクラビモドと、1種または複数の薬学的に許容される賦形剤と、特に少なくとも1種の充填剤およびそれらの混合物と、崩壊剤と、滑沢剤と、滑剤とを含む。
【0100】
充填剤
充填剤(希釈剤(diluent)、希釈剤(dilutant)または溶剤とも呼ばれる)は、原薬を経口投与に好適なもの(例えば、カプセル剤、錠剤)にするために原薬に添加される物質である。充填剤自体は、ヒトに対して何らかの薬理効果を生じるべきではない。充填剤の例としては、マンニトール、結晶セルロース、ラクトース一水和物、無水ラクトース、トウモロコシデンプン、キシリトール、ソルビトール、スクロース、リン酸二カルシウム、マルトデキストリンおよびゼラチンが挙げられる。本開示の医薬組成物は、マンニトール、結晶セルロースおよびそれらの混合物から選択される少なくとも1種の充填剤を含む。好ましい実施形態では、本開示の医薬組成物は、マンニトールおよび結晶セルロースの混合物を含む。
【0101】
崩壊剤
崩壊剤は、経口固体剤形の脱凝集を補助するために経口固体剤形に添加される。崩壊剤は、固体剤形が水分と接触した場合に、固体剤形の急速な崩壊を引き起こすために配合される。崩壊は、典型的には、溶解プロセスの最初のステップと考えられる。崩壊剤の例としては、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルデンプンナトリウムおよびアルファ化デンプンなどの加工デンプン、架橋ポリビニルピロリドン(クロスポビドン)または架橋カルボキシメチルデンプンナトリウム(クロスカルメロースナトリウム)などの架橋ポリマー、ならびにケイ酸カルシウムが挙げられる。本開示の医薬組成物は、崩壊剤としてデンプングリコール酸ナトリウムを含む。
【0102】
滑沢剤
滑沢剤は、摩擦を低減するために錠剤およびカプセル剤製剤に使用される物質である。滑沢剤は、マトリックスからの錠剤の押出を促進し、したがって、錠剤の表面への傷の形成を防止することができる。滑沢剤は性質によって2つの群に分割することができる:a)脂および脂様物質;b)粉末状物質。脂様物質は錠剤の溶解度および化学安定性に影響を及ぼすため、粉末状物質が、脂様物質よりも適用可能性が高い。粉末状滑沢剤は、顆粒の粉化によって導入される。それらは、ホッパーからマトリックスに打錠のための流出塊を一定速度で供給し、原薬投薬量の正確さおよび不変性を保証する。
【0103】
滑沢剤の例としては、ステアリン酸マグネシウム、水添ヒマシ油、ベヘン酸グリセリル、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、鉱油、シリコーン流体、ラウリル硫酸ナトリウム、L-ロイシンおよびフマル酸ステアリルナトリウムが挙げられる。本開示の医薬組成物は、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムを含む。
【0104】
滑剤
滑剤は、錠剤コアブレンド材料の流動特性を強化するために製剤とブレンドされる。圧縮の早期段階の間に、滑剤が錠剤粉末ブレンドの粒子配列体内に混合されて、錠剤プレスのダイキャビティ内での流動性および均一性が改善される。滑剤は、粒子間の摩擦を減らすことによって錠剤造粒の流動を高める。顆粒の流動に対する滑剤の効果は、顆粒および滑剤の粒子のサイズおよび形状に依存する。それどころかある特定の濃度を超えると、滑剤は流動性を阻害するように機能する。錠剤製造において、滑剤は、通常、圧縮の直前に添加される。滑剤の例としては、コロイド状二酸化ケイ素、デンプン、ステアリン酸マグネシウムおよびタルクが挙げられる。本開示の医薬組成物は、滑沢剤としてコロイド状二酸化ケイ素を含む。
【0105】
本開示の医薬組成物は、S1P受容体調節剤と、マンニトール、結晶セルロースおよびその混合物から選択される少なくとも1種の充填剤と、崩壊剤としてデンプングリコール酸ナトリウムと、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムと、滑剤としてコロイド状二酸化ケイ素とを含む。
【0106】
医薬組成物において当業者に公知の任意の好適な賦形剤が、本明細書に記載される組成物においてさらに用いられてもよい。
【0107】
ある実施形態では、固体剤形中のS1P受容体調節剤、好ましくは式(I)の塩酸塩の投薬量強度は、0.05mg~15mg/単位、好ましくは0.1mg~10mg/単位、例えば、約0.1mg/単位、または約0.4mg/単位、または約1mg/単位、または約10mg/単位、より好ましくは約1mg/単位である。
【0108】
より具体的には、本開示の医薬組成物は、以下の成分をさらに含む:
- 好ましくは48~88mg/単位、より好ましくは58~78mg/単位の含有量、さらにより好ましくは約68mg/単位の含有量のマンニトール;
- 好ましくは5~45mg/単位、より好ましくは15~35mg/単位の含有量、さらにより好ましくは約25mg/単位の含有量の結晶セルロース;
- 好ましくは1~8mg/単位、より好ましくは2~6mg/単位の含有量、さらにより好ましくは約4mg/単位の含有量のデンプングリコール酸ナトリウム;
- 好ましくは0.025~4mg/単位、より好ましくは0.5~2mg/単位の含有量、さらにより好ましくは約1mg/単位の含有量のステアリン酸マグネシウム;および
- 好ましくは0.125~2mg/単位、より好ましくは0.25~1mg/単位の含有量、さらにより好ましくは約0.5mg/単位の含有量のコロイド状二酸化ケイ素。
【0109】
別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、以下の成分を含む:
- 好ましくは0.05%~15%、より好ましくは0.1%~10%mg/単位の含有量、さらにより好ましくは約0.1%、または0.4%、または1%、または10%の含有量のS1P受容体調節剤、好ましくはモクラビモド;
- 好ましくは48%~88%、より好ましくは58%~78%の含有量、さらにより好ましくは約68%の含有量のマンニトール;
- 好ましくは5%~45%、より好ましくは15%~35%の含有量、さらにより好ましくは約25%の含有量の結晶セルロース;
- 好ましくは1%~8%、より好ましくは2%~6%の含有量、さらにより好ましくは約4%の含有量のデンプングリコール酸ナトリウム;
- 好ましくは0.025%~4%、より好ましくは0.5%~2%の含有量、さらにより好ましくは約1%の含有量のステアリン酸マグネシウム;
- 好ましくは0.125~2mg/単位、より好ましくは0.25~1mg/単位の含有量、さらにより好ましくは約0.5mg/単位の含有量のコロイド状二酸化ケイ素
(パーセンテージは、全組成物の乾燥重量でmg/mgを表している)。
【0110】
本開示の好ましい安定な製剤は、以下の通りである(実施例4および5のブレンド17に由来し、実施例6に詳述される):
【0111】
【表1】
【0112】
薬物安定性の評価により、最終薬物製品の毒性を防止し、安全性、有効性および品質を増加させることができる。HSCT療法後数週間で患者の状態が安定したら、患者は病院を退院し、自宅で組成物のカプセル剤を摂取することになるため、このことは、温度変動のある国(高温多湿)の患者の処置にとりわけ重要である。
【0113】
ある実施形態では、本開示の医薬組成物は、50℃で少なくとも1ヶ月間、好ましくは50℃で2ヶ月間安定である。
【0114】
別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、5℃で少なくとも24ヶ月安定である。
【0115】
別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、25℃/60%相対湿度で少なくとも24ヶ月安定である。
【0116】
本明細書で使用される場合、組成物の安定性は、以下の方法に従って測定される:当分野で幅広く知られている高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)。組成物は、[98~102]%の信頼区間で不純物の合計が0.7%以下である場合、安定である。
【0117】
医薬組成物を調製する方法
本開示の別の態様は、上述の医薬組成物を調製する方法であって、
a. S1P受容体調節剤を、好ましくは22rpmで18分間、結晶セルロース、コロイド状二酸化ケイ素とブレンドするステップと、
b. マンニトールを添加し、得られた混合物を、好ましくは22rpmで9分間ブレンドするステップと、
c. デンプングリコール酸ナトリウムを添加し、得られた混合物を、好ましくは22rpmで5分間ブレンドするステップと、
d. ステアリン酸マグネシウムを添加し、得られた医薬組成物を、好ましくは22rpmで5分間ブレンドするステップと、
e. 本開示の医薬組成物を回収するステップと
を含む方法に関する。
【0118】
好ましい実施形態では、方法は、
f. 得られた医薬組成物をカプセルに充填するステップと、
g. 医薬組成物を充填された得られたカプセル剤を回収するステップと
をさらに含む。
【0119】
処置方法が好ましくは標的とする患者集団
本明細書で開示される処置方法は、急性骨髄白血病(AML)を有する患者に好適であり、標準的な医療実務に従って、同種造血幹細胞移植の前に骨髄破壊的前処置を必要とする。
【0120】
本明細書で開示される本処置方法は、特に下記に定義される通りの再発のリスクの高い患者において、より詳細にはS1P受容体調節剤の慢性投与と組み合わせて、および/または次の節に記載される通りの免疫抑制剤処置を漸減して、GVL効果を改善する一方、急性および慢性GVHD、ならびに任意選択で、免疫抑制剤、特にカルシニューリン阻害剤、例えば、シクロスポリンAの副作用を低減する。
【0121】
したがって、本開示の方法は、1種または複数のAML療法後に難治性または再発AMLを有する対象に特に好適である。
【0122】
本明細書で使用される場合、「難治性」という用語は、疾患の処置後、完全寛解(例えば、骨髄中の細胞の5%未満が芽球であり、骨髄中にアウエル杆状体を有する芽球がなく、髄外の疾患がなく、完全な血液学的回復(例えば、絶対好中球数(ANC)>1,000/pLおよび血小板数>100,000/pL)がある)および/もしくはCRiの達成に失敗したか、または例えば、疾患の処置後90日未満続く、骨髄中の細胞の5%未満が芽球であり、骨髄中にアウエル杆状体を有する芽球がなく、髄外の疾患がなく、完全な血液学的回復(例えば、絶対好中球数(ANC)>1,000/pLおよび血小板数>100,000/pL)があるCRおよび/もしくはCRiを達成した対象を意味する。
【0123】
本明細書で使用される場合、「再発」または「再発した」という用語は、当技術分野におけるその通常の意味を有し、処置に起因した完全寛解(例えば、初期完全寛解)の期間後のAMLまたはAMLの徴候および症状の再開を指してもよい。
【0124】
一部の実施形態では、再発は、以下の基準(i)骨髄もしくは末梢血中>5%芽球、ならびに/または(ii)髄外の疾患および/もしくは臨床評価時に医師によって決定された疾患の存在のうちの1つまたは複数を満たす完全寛解後の疾患の再発を指すことがある。一部の実施形態では、「再発」は、90日以上続く、例えば、骨髄中の細胞の5%未満が芽球であり、骨髄中にアウエル杆状体を有する芽球がなく、髄外の疾患がなく、完全な血液学的回復(例えば、絶対好中球数(ANC)>1,000/pLおよび血小板数>100,000/pL)があるCRおよび/またはCRi)後の疾患の再発を指す。
【0125】
本明細書で使用される場合、「寛解」という用語は、当技術分野におけるその通常の意味を有し、がんの徴候および症状の低減または消失を指してもよい。部分寛解では、がんのすべてではないが一部の徴候および症状が消失している。完全寛解(CR)では、がんのすべての徴候および症状が消失しているが、がんは、体内に依然として存在することがある。
【0126】
本明細書で使用される場合、「完全寛解」は、形態学的完全奏功(CMR)によって測定される。形態学的完全奏功は、絶対好中球数および血小板数が正常値であり、髄外の白血病の兆候がなく、輸血を繰り返す必要がないことと併せて、白血病クリアランス(骨髄芽球<5%で、循環する末梢芽球がない)として定義され、下記に定義される通りのCR、CRiおよびCRhを含む。
【0127】
一部の実施形態では、AMLの完全寛解は疾患が処置されていることを意味し、以下が当てはまる:(i)全血球数が正常であること;(ii)骨髄中の細胞の5%未満が芽球(白血病細胞)であること;ならびに(iii)脳および脊髄または体内の他所において白血病の徴候または症状がないこと。一部の実施形態では、AMLの完全寛解は、骨髄中の細胞の5%未満が芽球であり、骨髄中にアウエル杆状体を有する芽球がなく、髄外の疾患がなく、完全な血液学的回復(例えば、絶対好中球数(ANC)>1,000/pLおよび血小板数>100,000/pL)があることを意味する。
【0128】
本明細書で使用される場合、CRは、形態学的完全奏功は、絶対好中球数および血小板数が正常値であり、髄外の白血病の兆候がなく、輸血を繰り返す必要がないことと併せて、白血病クリアランス(骨髄芽球<5%で、循環する末梢芽球がない)として定義される。
【0129】
本明細書で使用される場合、CRiは、絶対好中球数<1,000/μLまたは血小板数<100,000/μLを除くすべてのCMR基準を満たすと定義される。
【0130】
本明細書で使用される場合、CRhは、骨髄中の細胞の5%未満が芽球であり、骨髄中にアウエル杆状体を有する芽球がなく、髄外の疾患がなく、両方の末梢血細胞型の部分的な血液学的回復(例えば、ANC>500/pLおよび血小板数>50,000/pL)があることを意味する。
【0131】
本明細書で使用される場合、「部分寛解」は、骨髄中の細胞の5%以上~25%以下が芽球であること、および芽球のパーセンテージの少なくとも50%の減少を意味する。一部の実施形態では、AMLの部分寛解は、(i)骨髄中の細胞の5%以上~25%以下が芽球であること、(ii)芽球のパーセンテージの少なくとも50%の減少、および(iii)全血球数が正常であることを意味する。
【0132】
ある特定の実施形態では、患者集団は、急性骨髄白血病に罹患しており、CIBMTR分類に従ってCR1またはCR2と分類される患者のうちから選択される。
【0133】
具体的な実施形態では、前記対象は、急性骨髄性白血病に罹患しており、最初の形態学的完全寛解にあるが、「CR1高リスク」と呼ばれる有害リスク群であるか、または「CR2」と呼ばれる2回目および後続の形態学的完全寛解にあるかのいずれかである患者のうちから選択される。
【0134】
最初の完全寛解またはCR1は、「ASBMT RFI 2017 - 米国血液骨髄移植学会(American Society for Blood and Marrow Transplantation)のCIBMTR分類に対応する疾患分類(Disease Classifications Corresponding to CIBMTR Classifications)」に従って、処置応答を有する患者、すなわち、最初の処置後の完全寛解と定義される。
【0135】
CR1患者は、3群分類(良好、中間、有害)に分類される。CR1高リスク患者は、2017欧州白血病ネットワーク(ELN)遺伝的リスク階層化に従って定義される有害群に対応し(Dohner H, et al. Diagnosis and management of AML in adults: 2017 ELN recommendations from an international expert panel. Blood. 2017 Jan 26;129(4):424-447. doi: 10.1182/blood-2016-08-733196. Epub 2016 Nov 28. PMID: 27895058; PMCID: PMC5291965)、これは、t(6;9)(p23;q34.1)、DEK-NUP214t(v;11q23.3)、KMT2A再配列t(9;22)(q34.1;q11.2)、BCR-ABL1 inv(3)(q21.3q26.2)またはt(3;3)(q21.3;q26.2)、GATA2,MECOM(EVI1-5もしくはdel(5q);-7;-17/abn(17p)、複雑核型、一染色体核型、野生型NPM1およびFLT3-ITDhigh、変異型RUNX1、変異型ASXL1および変異型TP53からなる群から選択される遺伝子異常に対応する。
【0136】
2回目の完全寛解またはCR2は、「ASBMT RFI 2017 - 米国血液骨髄移植学会のCIBMTR分類に対応する疾患分類」(https://higherlogicdownload.s3.amazonaws.com/ASBMT/43a1f41f-55cb-4c97-9e78-c03e867db505/UploadedImages/ASBMT_RFI_2018B_CIBMTR_Disease_Classifications.pdf)に従って、2回目および後続の完全寛解(CR)にある患者と定義される。上で定義した通り、CR2患者は、CRを達成し、再発し、1回の完全寛解を再度達成した。最終HSCT前ステータスは、完全寛解でなくてはならない。
【0137】
本明細書で使用される場合、CR2は、「ASBMT RFI 2017 - 米国血液骨髄移植学会のCIBMTR分類に対応する疾患分類」に従って定義される通りのCR2+、すなわち、3回目以降の完全寛解(CR)にある患者を含む。上で定義した通りCR2+患者は、CRを2回達成し、再発し、再度完全寛解を達成した。
【0138】
HSCT基本性能はCRステータスに依存して変動しうるため、CR1およびCR2の間の階層化は、S1P受容体調節剤研究の結果の解釈を必要とする。
【0139】
ある実施形態では、CR1高リスク、CR2患者は、急性骨髄白血病を有する18~70歳の男性または女性対象である。
【0140】
すべてのCR1高リスクおよびCR2患者は、造血幹細胞移植(HSCT)を必要とし、再発のリスクが非常に高い。
【0141】
具体的な実施形態では、本開示の処置方法または使用を必要とする対象は、本明細書に記載されるHSCTおよびS1P受容体調節剤(好ましくは、HSCTとモクラビモド)による処置方法が投与される前に、測定可能な残存疾患(MRD)陽性である。
【0142】
AMLなどの血液がんでは、測定可能な残存疾患および微小残存病変は、形態学的検出未満レベルでの白血病細胞の治療後の持続を指す。どのような特定の理論によっても縛られることを望むものではないが、MRDは、AMLなどの血液がんを有する患者における再発またはより短い生存のリスク増加の強い予後指数であると考えられる。AMLについてのMRD試験は、好ましくは、マルチパラメーターフローサイトメトリー(MFC)による免疫表現型の検出、リアルタイム定量的PCR(RT-qPCR)および次世代配列決定技術の3つの技術のうちの1つを使用して行われる。MFCは、蛍光色素標識モノクロナール抗体のパネルを使用して、白血病細胞の異常に曝露された抗原を特定する。RT-qPCRは、白血病に関連する遺伝子異常を増幅するために使用することができる。次世代配列決定技術は、少数の遺伝子またはゲノム全体を評価するために使用することができる。合わせるとRT-qPCRおよび次世代配列決定技術は、MRD試験への分子手法を表す。対象のMRDステータスを検出する前述の方法の各々は、Ravandi, F., et al, Blood Advances 12 June 2018, vol. 2, no. 11およびSchuurhuis, G. J., et al. , Blood 2018 March 22, 131(12): 1275-1291に記載されており、その関連する内容は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0143】
MRD試験への標準化された手法の開発を手引きするため、欧州白血病ネット(ELN)は、AMLにおけるMRDの測定のためのコンセンサス推奨を提言している。ELNによると、MFCによるMRD試験のためのELNの推奨に従ってMFCによって測定された対象の骨髄中の白血球に対するがん(例えば、AML)細胞のパーセンテージが0.1%以上であることは、対象が、MFCによるMRD試験のためのELNの推奨に従うMFCによって、MRD陽性(MRD+)であることを示す。MFCによるMRD試験のためのELNの推奨に従ってMFCによって測定された対象の骨髄中の白血球に対するがん細胞のパーセンテージが0.1%未満であることは、対象が、ELNのものに従うMFCによって、MRD陰性(MRD-)であることを示す。
【0144】
ELNはまた、AMLにおける分子MRD試験のためのガイドラインも提言している。ELNは、完全分子寛解を、形態学的完全寛解+1,000中少なくとも1の感度レベルで>4週の間隔以内に得られた2回の連続したMRD陰性サンプルと定義しており、サンプルは、分子MRD試験のためのELNガイドラインに従って収集および測定される。ELNは、再発の低リスクと関連する低コピー数での分子持続性を、形態学的CRの患者における低コピー数のMRD(参照遺伝子または対立遺伝子負荷に対して<1~2%の標的に対応する<100~200コピー/104ABLコピー)、および処置の終了時に収集した任意の2つの陽性サンプル間での<1logのコピー数または相対的増加と定義しており、サンプルは、分子MRD試験のためのELNガイドラインに従って収集および測定される。ELNは、分子持続性を有する患者における分子進行を、分子MRD試験のためのELNガイドラインに従って収集および測定された任意の2つの陽性サンプル間での>1log10のMRDコピー数増加と定義している。ELNは、分子再発を、以前陰性と試験された患者における2つの陽性サンプル間での>1log10のMRDレベルの増加と定義しており、サンプルは、分子MRD試験のためのELNガイドラインに従って収集および測定される。分子持続性および分子再発はいずれも、RT-qPCRによるMRD試験のためのELNガイドラインに従って行われるRT-qPCRによるMRD陽性対象の指標である。したがって、完全分子寛解の患者および低コピー数で分子持続性を有すると標識された患者は、RT-qPCRによるMRD試験のためのELNガイドラインに従って行われるRT-qPCRによるMRD陰性である。RT-qPCRは、Ravandi, F., el al.およびSchuurhuis, G. J., el al.において論じられる通りのMRD試験に推奨される分子手法である。MRD試験のためのサンプル(例えば、骨髄サンプル)を収集および測定するための具体的な推奨は、Ravandi, F , et al, Blood Advances 12 June 2018, vol. 2, no. 11およびSchuurhuis, G. J., et al, Blood 2018 March 22, 131(12): 1275-1291に記載されており、その関連する内容は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0145】
本明細書において、AMLなどの血液がんを有する対象が、MFCによるまたはRT-qPCRによるなどのさらなる修飾子なしに「測定可能な残存疾患陰性」、「微小残存病変陰性」、「MRD陰性」または「MRD」であると記載される場合、対象は、本明細書に記載されるELNの基準のうちの少なくとも1つ(例えば、MFC、分子生物学)に従ってMRD陰性である。一部の実施形態では、対象は、MRD試験のためのELNガイドラインに従って行われたMFCによってMRD陰性である。一部の実施形態では、対象は、MRD試験のためのELNガイドラインに従って行われたRT-qPCRによってMRD陰性である。一部の実施形態では、対象は、MRD試験のためのELNガイドラインに従って行われたMFCおよびRT-qPCRの両方によってMRD陰性である。一部の実施形態では、対象は、MRD試験のためのELNガイドラインに従って行われたMFCによってMRD陰性であり、MRD試験のためのELNガイドラインに従って行われたRT-qPCRによってMRD陽性である。
【0146】
一部の実施形態では、対象は、MRD試験のためのELNガイドラインに従って行われたMFCよってMRD陽性であり、MRD試験のためのELNガイドラインに従って行われたRT-qPCRによってMRD陰性である。対象が、本明細書に記載されるELNの基準のうちの1つ(例えば、MFCの基準)に従ってMRD陰性であるが、本明細書に記載されるELN基準のうちの別のもの(例えば、RT-qPCRの基準)に従ってMRD陰性である場合、対象は本明細書に記載されるELNの基準の少なくとも1つに従ってMRD陰性であるため、その対象は、本明細書においてその用語の使用に従って、なおMRD陰性と記載することができる。
【0147】
本明細書において、AMLなどの血液がんを有する対象が、「測定可能な残存疾患陽性」、「微小残存病変陽性」、「MRD陽性」または「MRD+」であると記載される場合、対象は、本明細書に記載されるMFCおよびRT-qPCRのためのELNの基準によってMRD陽性である。例えば、AMLについてMRD陽性である対象は、AMLにおけるMRD試験のためのELNガイドラインに従って行われるMFCによってMRD陽性、およびAMLにおけるMRD試験のためのELNガイドラインに従って行われるRT-qPCRによってMRD陽性でありうる。
【0148】
したがって、本明細書に記載される方法の一部の実施形態では、方法は、対象のMRDステータスを検出するステップを(例えば、本明細書に記載される通りのS1P受容体調節剤によるHSCT処置方法を投与する前に)さらに含む。
【0149】
処置方法
これまでの節に開示される通りのS1P受容体調節剤、より好ましくはモクラビモドおよびそれらの医薬組成物は、HSCTを受けている対象、より詳細には、上で定義した通りの患者の分集団において、AMLを処置するための方法における薬物として有用である。
【0150】
これまでの節に開示される通りのS1P受容体調節剤、より好ましくはモクラビモドおよびそれらの医薬組成物はまた、HSCTを受けている対象、特にAMLを処置するためにHSCTを受けている対象、より詳細には、上で定義した通りの患者の分集団において、慢性GVHDを防止するための方法における薬物としても有用である。
【0151】
そのような方法の詳細な実施形態を、以下に開示する。
【0152】
本開示の方法は、少なくとも以下のステップ:
1)対象に有効量のS1P受容体調節剤、例えば、式(I)もしくは(II)の化合物、またはその薬学的に許容される塩を投与するステップと、
2)前記対象を、実質的に骨髄および免疫系を破壊するように前処置するステップであって、有効量の化学療法剤、例えばシクロホスファミドによる前記対象の処置および/または高用量の化学療法により前記対象を処置することを含むステップと、
3)前記対象にドナー由来の同種造血幹細胞を移植するステップと、
4)任意選択で、特に、S1P受容体調節剤処置の開始後最初の3ヶ月間、有効量の1種または複数の免疫抑制剤を同時投与して、急性GVHDを防止するステップと
を含む。
【0153】
各ステップの詳細な実施形態を、以下に記載する。
【0154】
S1P受容体調節剤を投与するステップ(1)
本明細書に開示される通りの処置方法を実施するために、有効量のS1P受容体調節剤(好ましくは、モクラビモドまたは他の上で開示した通りのS1P受容体調節剤)が、そのような処置を必要とする対象に投与される。
【0155】
本明細書で使用される場合、「有効量」は、単独でまたは1種もしくは複数の他の活性剤との組合せでのいずれかで、対象に対して治療効果を付与するのに必要なS1P受容体調節剤(例えば、モクラビモド)の量を指す。有効量は、当業者が認識する通り、例えば、投与経路、賦形剤の使用および他の活性剤の同時使用に応じて変動する。特定の疾患または状態を処置する場合、所望の治療効果は、疾患の進行を阻害することである。これは、疾患の進行の一時的な緩徐化のみを含むことがあるが、より好ましくは、疾患の進行の永続的な停止を含む。これは、日常的な方法によってモニタリングすることができ、または本明細書で論じられる診断方法に従ってモニタリングすることができる。疾患または状態の処置への所望の応答はまた、疾患または状態の開始を遅延することまたはさらには開始を防止することでありうる。具体的な実施形態では、所望の応答は、急性GVHD、慢性GVHD、再発AMLの開始または死亡を遅延または防止することでありうる。具体的な実施形態では、所望の応答は、AMLの再発の開始を遅延または防止しながら、全身免疫抑制処置に対して抵抗性のGVHD(グレードIII/IV)の開始を遅延または防止することができる。他の実施形態では、所望の応答は、HSCT後3、6、12および24ヶ月の時点で、生存を増加させることでありうる。他の実施形態では、所望の応答は、S1P受容体調節剤を投与しない同じHSCT処置と比較して、特にHSCT後3、6、12および24ヶ月の時点で、生活の質を改善することでありうる。
【0156】
S1P受容体調節剤、好ましくはモクラビモドの投与は、同種造血幹細胞移植(HSCT)の前に開始する。好ましくは、投与は、HSCTの少なくとも7日前、例えば、HSCTの14、13、12、11、10、9、8または7日前、好ましくは11日前に開始する。
【0157】
次いで、S1P受容体調節剤、好ましくはモクラビモドは、HSCT後少なくとも80日間、または少なくとも100日、またはそれ以上に設定された期間にわたって、毎日投与される。
【0158】
好ましい実施形態では、S1P受容体調節剤、好ましくはモクラビモドは、より長期間(連用として)、例えば、HSCT後少なくとも6、7、8、9、10、11、12、18、24ヶ月もしくはそれ以上、典型的には対象の生涯にわたって、または再発するまで、毎日投与される。具体的な実施形態では、S1P受容体調節剤、好ましくはモクラビモドは、HSCT後6~24ヶ月間、例えば、12ヶ月間、毎日投与される。
【0159】
本明細書に記載されるS1P受容体調節剤、好ましくはモクラビモドの1日投薬量および用量は、対象の状態、つまり、疾患のステージ、疾患によって引き起こされた症状の重症度、全般的な健康状態、ならびに年齢、性別および体重、ならびに医学分野の当業者に明白な他の因子に依存しうる。同様に、AMLに罹患しており、同種HSC移植を受けているヒト対象を処置するためのS1P調節剤、好ましくはモクラビモドの用量は、医学分野の当業者によって理解されるパラメーターに従って決定されうる。
【0160】
一部の実施形態では、1日当たり投与されるS1P受容体調節剤、好ましくはモクラビモドの量は、固定量である。一部の実施形態では、固定1日投薬量は、1日当たり0.05mg~40mg、好ましくは0.1mg~35mg、より好ましくは0.5mg~30mg、さらにより好ましくは1日当たり1mg~15mg、さらにより好ましくは1.5mg~7mg、さらにより好ましくは2mg~5mg、さらにより好ましくは1日当たり約3mgまたは1日当たり約1mgである。
【0161】
一部の実施形態では、S1P受容体調節剤はモクラビモドであり、前記モクラビモドは、HSCT後少なくとも6、7、8、9、10、11、12、18、24ヶ月またはそれ以上にわたって、1日当たり3mgの投薬量で毎日投与される。
【0162】
1日投薬量は、1日当たり1用量として投与されても、または単一日に複数回用量で投与されてもよい。好ましい実施形態では、1日投薬量は、1日1回投与される。一部の実施形態では、用量は、1日に数回、好ましくは1日に3回投与される。一部の実施形態では、効果的な治療を提供するのに十分な最小用量が使用されてもよい。
【0163】
別の実施形態では、前記S1P受容体調節剤はモクラビモドであり、前記モクラビモドは、3mgの1日用量で、例えば、1日に3つの1mgの固体剤形を投与される。実際、間隔を空けて投与される1mgの3つの固体剤形、例えば、カプセル剤または錠剤は、3mgの単一固体剤形よりも嚥下しやすい。
【0164】
骨髄破壊的前処置のステップ(2)
同種造血幹細胞移植の前に、患者は、好ましくは、化学放射線療法とも呼ばれる、施設実務に適合された国のガイドラインに従って高用量の化学療法を使用する、および/または全身照射(TBI)を実施することによって前処置される必要がある。好ましくは、標準治療は、骨髄破壊的レジメンである。しかしながら、非骨髄破壊的レジメンまたは低強度前処置がまた、患者の一部の部分集団に使用されてもよい(Jethava et al., Bone Marrow Transplant. 2017 Nov;52(11):1504-1511)。
【0165】
高用量化学療法、高線量全身照射(TBI)またはそれらの組合せが、実施される。
【0166】
本明細書で使用される場合、「化学療法剤」および「化学療法」は、例えば、細胞を死滅させる、または細胞分裂を阻害することによってがん細胞の成長を阻害(例えば、停止)する、それぞれ、薬剤および治療を指す。「AMLのための化学療法剤」および「AMLのための化学療法」は、対象においてAMLを処置する目的で、対象に投与される、それぞれ、化学療法剤および化学療法を指す。
【0167】
化学療法剤の例としては、シクロホスファミド(CY)、シタラビン(CA)、エトポシド(ETP)、ブスルファン(BU)、フルダラビン(FLU)、メルファラン(MEL)、メトトレキセート(MTX)、シクロスポリンA(CsA)などおよびそれらの混合物、例えば、フルダラビン/ブスルファン、ブスルファン/シクロホスファミドおよびフルダラビン/メルファランが挙げられうる。
【0168】
例えば、以下の前処置レジメンのうちの1つが投与されてもよい(日数は、HSCTの当日に対するものである)。
【0169】
前処置レジメンの例としては、例えば、
・フルダラビン;30mg/m IVを1日1回、-8~-4日目の5日間(150mg/m
・チオテパ;5mg/kg IVを1日2回、-7日目の1日間(10mg/kg)
・メルファラン;60mg/m IVを1日1回、-2および-1日目の2日間(120mg/m
が挙げられうる。
【0170】
患者の状態および/または現地の実務に合わせるために、前処置レジメンにおける用量変更が行われてもよい。
【0171】
施設実務に従って、以下の3つの前処置レジメンを、本明細書の上で記載した標準レジメンの次に選択してもよい:
・メルファランはブスルファンに置換することができる。
・チオテパはシクロホスファミドに置換することができる。
1. ブスルファン+フルダラビン+シクロホスファミド:
- ブスルファン110mg/m IV、-7~-4日目(440mg/m
- フルダラビン25mg/m、-6~-2日目の5日間(125mg/m
- シクロホスファミド14.5mg/kg IV、-3および-2日目(29mg/kg)
2. ブスルファン+フルダラビン + チオテパ:
- ブスルファン3.2mg/kg/日IV、-5~-3日目の3日間(9.6mg/kg)
- フルダラビン50mg/m/日IV、-5~-3日目の3日間(150mg/m
- チオテパ5mg/kg/日IV、-7および-6日目の2日間(10mg/kg)
3. メルファラン+チオテパ+フルダラビン:
- メルファラン100または140mg/m IV、-6日目
- フルダラビン40mg/m IV、-5~-2日目の4日間(160mg/m
- チオテパ5~10mg/kg IV、-7日目
(日数は、HSCTの当日に対するものである)。
【0172】
例えば、シクロホスファミドの投与およびそれに続く全身照射からなる処置、ブスルファンおよびシクロホスファミドの投与からなる処置などが挙げられうる。
【0173】
HSC処置のステップ(3)
前処置の後に、同種HSCTが続き、その目標は2段階である:最初に、患者の罹患した造血系を遺伝的に異なる健康なドナー由来の新しいHSCステミングで置き換え、次に、ドナー移植片の免疫治療効果、すなわち、「GVL」と呼ばれる移植片対白血病効果を探る。
【0174】
例えば、同種HSCTは、ドナー由来のHSCを前記患者に移植することを含みうる。HSCは、ドナーから収集され、静脈内注入によって患者に投与される。
【0175】
HSCは、異なる供給源から収集することができる。顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)によって末梢血に動員されたHSCが、今日の移植に好ましい供給源である。臨床使用されるHSCの代替の供給源は、骨髄および臍帯血である。好適なドナーは、高分解能HLAタイピングによって決定してHLA-A、-B、-C、-DRB1および/または-DQB1座で8/8以上の一致を有する、HLA一致した血縁また非血縁ドナーであるべきである。
【0176】
同種造血幹細胞移植は、標準治療として実施されてもよい。好適な方法は、例えば、Boglarka Gyurkocza, Andrew Rezvani & Rainer F Storb (2010) Allogeneic hematopoietic cell transplantation: the state of the art, Expert Review of Hematology, 3:3, 285-299, DOI: 10.1586/ehm.10.21に記載されている。
【0177】
好ましくは、幹細胞源は、適合ドナーによってアフェレーシスを介して収集された動員末梢血である。移植片中の最小推奨CD34+細胞用量は2×10/kg、推奨目標用量は約5×10/kgであってもよい。
【0178】
免疫抑制剤処置のステップ(4)
S1P受容体調節剤、好ましくはモクラビモドはまた、単独でおよび/または他の医薬活性化合物との適切な関連付けのほか、組合せで使用されてもよい。
【0179】
急性GVHDのリスクを低減するために、S1P受容体調節剤、好ましくはモクラビモドは、特にHSCT後少なくとも最初の3ヶ月間、免疫抑制剤と併せて同時投与される。
【0180】
免疫抑制剤の例としては、限定なしに、シクロスポリンA、シロリムス、タクロリムス、メトトレキセートおよびミコフェノレートが挙げられる。
【0181】
ある実施形態では、免疫抑制剤は、有効量のシクロスポリンAを含むかまたはそれから本質的になる。
【0182】
シクロスポリンAまたは関連免疫抑制剤の投与は、例えば、S1P受容体調節剤、好ましくはモクラビモドの投与開始日とHSC移植の日との間の期間内、好ましくはHSC移植の3もしくは2日前またはHSC移植の1日前に開始されてもよい。
【0183】
例えば、シクロスポリンAの静脈内投与は、2~6mg/kg/日、好ましくは3~5mg/kg/日の初期投薬量で実施されてもよい。投薬量の調節は、シクロスポリンAの毒性または目標トラフ濃度(150~400mg/L)と比べた濃度に基づいて実施される。シクロスポリンAの投与は、患者が経口投与に耐えうる場合、経口投与に変更することができる。経口投与の初期投薬量は、静脈内投与用の現在の投薬量に設定してもよい。シクロスポリンAの投薬量は、少なくとも毎週モニタリングされ、臨床的に適切な投薬量に変更される。
【0184】
ある実施形態では、2~6mg/kg/日、好ましくは3~5mg/kg/日の投薬量レベルは、HSC移植の当日の間、経口維持療法が変更される前2週間までの期間、継続されてもよい。好ましくは、経口維持療法への変更がなされるとき、シクロスポリンAの1日用量は約12.5mg/kgであってもよい。好ましくは、維持療法は、用量を低減する前に少なくとも3ヶ月間、好ましくは6ヶ月間継続される。特に、シクロスポリンAの用量は、移植後1年かけて徐々にゼロに低減されてもよい。
【0185】
S1Pr薬物の使用は、シクロスポリンA(CsA)およびタクロリムス(TAC)などのカルシニューリン阻害剤の用量低減の加速を促進し、これは、患者への主要な利益であり、使用されるカルシニューリン阻害剤の毒性を最小にし、がんに対してより良好に闘うように免疫系(HSCT)を再構築させるのに有利でありうる。
【0186】
メトトレキセートがS1Pr薬物と一緒に使用される場合、メトトレキセートの投薬スケジュールおよび投薬量は、病院の標準に適合されることになる。例えば、HSCTの投与日(例えば、S1PR調節剤、好ましくはモクラビモドの最初の投与の11日後)、10mg/kgのメトトレキセートが投与され、最初の投与の2および5日後、ならびにそれから16日目に6mg/kgのメトトレキセートがそれぞれ投与される。S1Pr薬物の使用はまた、メトトレキサートの用量低減の加速を促進し、これは、患者への主要な利益であり、メトトレキサートの毒性を最小にし、がんに対してより良好に闘うように免疫系(HSCT)を再構築させるのに有利でありうる。
【0187】
本方法は、有利には、急性および慢性GVHDを防止し、移植片対白血病効果を保持しながら、同種HSC移植後に通常投与される免疫抑制剤の量を減らすことができ、したがって、そのような免疫抑制剤処置の有害効果を低下させる。
【0188】
別の実施形態では、方法で使用される免疫抑制剤は、タクロリムスを含まない。別の実施形態では、方法で使用される免疫抑制剤は、シクロスポリンAを含まない。
【0189】
シクロスポリンA(CsA)およびタクロリムス(TAC)などのカルシニューリン阻害剤は、ドナーT細胞活性化を抑制し、依然として急性GVHD予防法のための最も一般的に使用される免疫抑制剤である。しかしながら、これらの薬剤はまた、白血病特異的T細胞応答を阻害して、GVL効果が損なわれる。
【0190】
本方法によると、S1P受容体調節剤、好ましくはモクラビモドの慢性投与により、慢性GVHDが大幅に防止され、それを必要とする対象に投与されるシクロスポリンAまたは他の免疫抑制薬物の量を減らす(漸減する)ことが可能になり、それによって、そのような免疫抑制化合物の有害効果が低下する一方、なお慢性GVHDは防止され、GVL効果は改善される。
【0191】
S1P受容体、好ましくはモクラビモドが長期間、例えば、少なくとも6ヶ月間、好ましくは、12、18または24ヶ月間、典型的には対象の生涯にわたって、または再発するまで投与される(連用)好ましい実施形態では、前記対象は、少なくともシクロスポリンAを含む有効量の免疫抑制剤でさらに処置され、前記免疫抑制剤処置は、HSCT後6ヶ月の前、好ましくは、HSCT後3~6ヶ月、または3~5ヶ月、または3~4ヶ月の期間内に低減または停止される。
【0192】
具体的な実施形態では、前記免疫抑制剤処置(例えば、シクロスポリンA処置)は、例えば、前記免疫抑制剤の開始用量と比較して少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%実質的に低減(漸減)される。
【0193】
免疫抑制剤処置の漸減は、急速にもしくは徐々に、例えば、HSC移植の1、2もしくは3ヶ月後1、2、3、4、5または6週間にわたる用量の段階的な低減により実施されてもよく、および/またはHSC移植の少なくとも3、4、5もしくは6ヶ月後に処置が中止されてもよい。例えば、免疫抑制用量は、6週間~2ヶ月まで徐々に低減され、HSC移植の3~4ヶ月後に中止されてもよい。医師は、患者の状態に応じて最も適切に漸減レジメンを決定する。
【0194】
別の実施形態では、本開示の方法は、難治性GVHDの発生率の低減、再発の遅延もしくは無再発生存の増加、全生存もしくは無憎悪生存の増加、または生活の質の改善を達成するためのS1P受容体調節剤、好ましくはモクラビモドの投与を含む。
【0195】
具体的な実施形態では、本開示の方法は、特に、HSCT後少なくとも3、6、9、12、18または24ヶ月間にわたって、急性GVHD、慢性GVHD、再発AMLまたは死亡の開始を遅延または防止する。具体的な実施形態では、本開示の方法は、特にHSCT後少なくとも3、6、9、12、18または24ヶ月間にわたって、AML再発の開始を遅延または防止しながら、全身免疫抑制処置に対して抵抗性のGVHD(グレードIII/IV)の開始を遅延または防止する。
【0196】
具体的な実施形態では、方法は、特に、GVHDのない無再発生存、ならびに再発関連死亡率および移植関連死亡率の両方を介して対象の集団における疾病率または死亡率を低減する。例えば、前記方法は、対象の集団において、HSCT後少なくとも3、6、9、12、18または24ヶ月間にわたって、GVHD、難治性GVHD、再発または死亡のいずれかの発生または重症度を低減する。
【0197】
具体的な実施形態では、前記患者は、HSCTから少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24ヶ月後に難治性GvHDがなく、無再発(rGRFS)である。
【0198】
本明細書で使用される場合、解消し、全身処置を必要としないGVHDはrGRFSにおける事象として最後の評価時に除外されることを除き、rGRFSは、事象としてグレードIII~IV急性GVHD、全身処置を必要とする慢性GVHDおよび疾患再発/進行を処理する従来のGRFSと同様に計算される。
【0199】
したがって、方法の具体的な実施形態では、前記対象は、HSCTから少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24ヶ月後に、以下:
・少なくとも2ラインの免疫抑制処置に対して抵抗性のグレードIII/IV急性移植片対宿主疾患(GVHD)、
・全身免疫抑制処置に対して抵抗性の広範囲の慢性GVHD、
・疾患再発、
・死亡
のうちの1つまたは複数を示さない。
【0200】
対象の全生存を改善するための方法であって、各対象について、本明細書で開示されるS1P受容体調節剤を使用する方法のいずれかを用いて対象を処置するステップを含む方法も本明細書で開示される。
【0201】
具体的な実施形態では、前記方法は、HSCTについての標準治療に従ってS1P受容体調節剤の投与なしに処置された対象と比較して、好ましくは、細胞療法骨髄移植認定財団(FACT-BMT)質問票および/またはMDアンダーソン症状評価票(MDASI)によって測定して、3、6、12または24ヶ月の時点で対象の生活の質を改善する。改善は顕著でありえ、例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%またはそれ以上の増加でありうる。
【0202】
別の実施形態では、本開示に従って使用するためのS1P受容体調節剤は、
・0.4ng/mL~1ng/mL、好ましくは0.55ng/mL~0.85ng/mL、より好ましくは0.65ng/mL~0.75ng/mLの最大血漿レベル(Cmax)、
・2h~10h、好ましくは4h~8h、より好ましくは5h~7hの最大血漿レベル到達時間(Tmax)、および
・60h*ng/mL~74h*ng/mL、好ましくは64h*ng/mL~70h*ng/mL、より好ましくは66.5h*ng/mL~67.5h*ng/mLの血漿濃度曲線下面積(AUClast)
を有する。
【0203】
別の実施形態では、本開示に従って使用するためのS1P受容体調節剤は、
・0.6ng/mL~1.20ng/mL、好ましくは0.75ng/mL~1.05ng/mL、より好ましくは0.85ng/mL~0.95ng/mLの最大血漿レベル(Cmax)、
・6h~14h、好ましくは8h~12h、より好ましくは9h~11hの最大血漿レベル到達時間(Tmax)、および
・63.5h*ng/mL~77.5h*ng/mL、好ましくは67.5h*ng/mL~73.5h*ng/mL、より好ましくは69.5h*ng/mL~71.5h*ng/mLの血漿濃度曲線下面積(AUClast)
を有する。
【0204】
別の実施形態では、本開示に従って使用するためのS1P受容体調節剤は、110h~134h、好ましくは116h~128h、より好ましくは121h~123hの半減期(T1/2)を有する。
【0205】
別の実施形態では、本開示に従って使用するためのS1P受容体調節剤は、100h~122h、好ましくは105h~117h、より好ましくは110h~112hの半減期(T1/2)を有する。
【実施例
【0206】
[実施例1]
AMLの処置のためのモクラビモドによるHSCT
本開示の方法は、以下の方法に従って実施することができる。
【0207】
最初の完全寛解(CR1)または2回目の完全寛解もしくはそれ以降(CR2)にあり、兄弟姉妹または一致した非血縁ドナーの末梢血幹細胞から収集したHSCTに適格であるヒト患者が、この治療の対象となりうる。
【0208】
治療は、1日当たり3mgの用量で、HSCT前-11日目に開始し、少なくとも6ヶ月間、好ましくは少なくとも12ヶ月間または再発するまで対象の生涯にわたる(慢性投与)モクラビモドの経口組成物の毎日の慢性投与を含む。
【0209】
KRP203と一緒に、患者は、好ましくは同種HSCT前-4日目に開始し、シクロスポリンAおよびメトトレキセートの組合せを含むGVHD予防法の標準治療を受ける。
【0210】
患者は、以下の前処置レジメンに供される:フルダラビン;30mg/m i.v.を1日1回、-8~-4日目の5日間(150mg/m)、チオテパ;5mg/kg i.v.を1日2回、-7日目の1日間(10mg/kg)、およびメルファラン;60mg/m i.v.を1日1回、-2および-1日目の2日間(120mg/m)。前処置後に同種HSCTが続く。顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)動員末梢血幹細胞(PBSC)は、造血幹細胞(HSC)の好ましい供給源である。ドナーは、高分解能HLAタイピングによって決定してHLA-、-B、-C、-DRB1および/または-DQB1座で8/8以上の一致を有する、HLA一致した血縁者また非血縁者であるべきである。
【0211】
[実施例2]
再発リスクの高いAML患者を処置するための臨床研究
本明細書において、同種造血幹細胞移植(HSCT)を受けている急性骨髄白血病を有する患者におけるモクラビモドの有効性および安全性を評価するための前向き無作為化非盲検多施設第II相比較研究を記載する予測例が提供される。
概要
【0212】
【表2-1】
【0213】
【表2-2】
【0214】
【表2-3】
【0215】
【表2-4】
【0216】
【表2-5】
【0217】
【表2-6】
【0218】
【表2-7】
【0219】
【表2-8】
【0220】
【表2-9】
【0221】
【表2-10】
【0222】
【表2-11】
【0223】
【表2-12】
【0224】
【表2-13】
【0225】
【表2-14】
【0226】
【表2-15】
【0227】
【表2-16】
【0228】
【表2-17】
【0229】
【表2-18】
【0230】
緒言
モクラビモドの使用の根拠
モクラビモドは、同種造血幹細胞移植(アロHSCT)の補助療法として本出願人によって開発されたスフィンゴシン1リン酸受容体調節剤(S1P)である。S1Pは、免疫系に対する効果を伴う製品のクラスである。一部の製品は、開発中であるか、または自己免疫疾患の処置のための免疫療法として既に認可されている。フィンゴリモド(Gilenya;FTY720)は、多発性硬化症(MS)の処置について認可されている。モクラビモドの作用機序はフィンゴリモドに類似している。その両方がプロドラッグであり、それらの活性リン酸化代謝産物は、リンパ節からのリンパ球の流出を遮断し、それによって循環リンパ球数を低減する。しかしながら、モクラビモドプロファイルは、急性骨髄性白血病を有する患者における疾患進行速度、全生存および生活の質を改善するためのアロHSCTおよび標準治療(SoC)と併せた開発が注目されている。モクラビモドによる処置(HSCTの11日前に開始し、HSCT後最大1年間続く)は、二次リンパ器官へのリンパ球の隔離をもたらす。隔離プロセスにより、2つの正の効果が誘発される:1)アロ反応性T細胞が末梢組織に遊走しないため、移植片対宿主効果(GvH)が低減される、2)リンパ節および白脾髄などのリンパ組織に隔離されたアロT細胞による残留疾患の根絶により移植片対白血病効果(GvL)が増加する。白血病細胞(芽球)は骨髄に由来し、形態学的再発が生じた場合、末梢血および他の組織に広がる。しかしながら、患者が完全寛解に達した場合、最小数の芽球のみが、さらには寛解導入/地固め療法まで、骨髄およびリンパ組織で生存することができる。HSCT後の進行性の免疫再構築は、骨髄およびリンパ組織中のアロ反応性細胞によってGvLを支持する。アロT細胞などのリンパ球は、GvL効果において重要な役割を果たし、主としてリンパ組織中に存在する。したがって、モクラビモドは免疫抑制的ではないため、アロ反応性T細胞が抗白血病反応性を保持して、GVHDに翻訳するオフターゲット反応性なしにGvLをブーストすることができる。HSCTを受けている患者におけるSoCへのモクラビモドの付加からの疾病率-死亡率の強い改善が、再発関連死亡率(RRM)および移植関連死亡率(TRM)の両方を介して予期される。
【0231】
診断時に腫瘍の遺伝的プロファイルによって決定された分子バイオマーカーに焦点を当てる標的療法などの代替的な治療選択肢と比較して、アロ反応性T細胞はより幅広い特異度プロファイルを有する。したがって、より幅広い標的集団へのモクラビモドを補助とするHSCTを介したエスケープ変異体白血病の制御により、標的療法の一部の強い制限に対処することができる。臨床的に関連する対照薬が認可されていないため、モクラビモドの評価はプラセボに対して行われる。これらのデータおよび他のデータは、中軸となる臨床研究を進めて、SoCと組み合わせたアロHSCTにおける補助療法としてモクラビモドを評価することを支持する。SoCレジメンは、現地の実務に従って様々であり、MTXなどの別の免疫抑制剤と併せた、CsAなどのカルシニューリン阻害剤(CNI)の使用を含みうる。研究の処置は、初期移植前期間(HSCTの11日前)に開始し、モグラビモド群ではCsAおよびMTXに基づくGVHD予防法レジメンと併せ、対照群では臨床現場の施設実務に従って、全処置相(1年)にわたって投与されることになる。
【0232】
高リスクAMLにおける同種造血幹細胞移植
アロHSCTは、AML管理における現在の標準治療の重要な要素であり、再発後の誘導失敗(難治性)および完全寛解の地固めに適応される。
【0233】
化学療法と比較して、アロHSCTは、再発のリスクを低減するが、処置関連死亡のリスクはより高い。AMLにおいて、アロHSCTは、再発のリスクが>35%である場合(Dohner et al., Blood 2017 Jan 26;129(4):424-447)、ならびに患者の年齢、併存疾患および虚弱により患者が手順に適合する場合、適応される。
【0234】
高リスクAMLにおけるアロHSCTは、現在、唯一の潜在的治癒選択肢である。GvL効果からは利益を得るものの、この手順は、現在、GVHDに起因した非再発疾病および死亡の高リスクを伴う。GVHDのリスクは、現在、GvL効果の強度に関連し、免疫抑制剤予防法によって軽減され、これは次に、GvL効果を低減する。AMLにおいてHSCTと競合する治験処置、例えば、分子標的薬物、モノクロナール抗体およびイムノコンジュゲート、チェックポイント阻害剤、T細胞エンゲージャーおよびCAR-T細胞は、持続的な寛解をもたらすことがあり、したがって、治癒の見込みなしに生存を延長することによりHSCTと競合しうる。モクラビモドがGvLを保持しながらGvH効果を低減する可能性は、移植関連死亡率および疾病率を低減しながら治癒の見込みを維持する方法として有望である。
【0235】
HSCTおよびGVHD
移植片対宿主疾患(GVHD)は、実際に、ドナーT細胞を含む予期される移植片対白血病効果のオフターゲット効果と考えられる。
【0236】
アロ反応性は、移植片対白血病効果(GvL)の基礎である。GvLは、移植後再発の確率を限定する。
【0237】
ミスマッチからのアロ反応性幹:アロ抗原、少量のHLAミスマッチ(ドナー-レシピエント多形性)、主なHLAミスマッチ(A、B、C、DR、DQ、DP)および腫瘍アロ抗原。GvHDは、急性または慢性(aGvHD、cGvHD)に生じうる。
【0238】
GvHDは高有病率でアロHSCT後に一般的である:aGvHD 30~70%、cGvHD 20~50%(Magenau et al., Br J Haematol. 2016 Apr;173(2):190-205)。GvHDは、移植後死亡および疾病の主因、ならびに移植後の生活の質が損なわれる主因である。GvHD管理におけるいくつかの最近の改善にも関わらず、GvHDはなお問題である。CNIおよびMTXによる免疫抑制予防法を介したT細胞抑制、または全身コルチコステロイドを介したファーストライン治療は、日和見感染、臓器毒性、およびGvL効果を最小にするリスクを伴う。あるいは、特定の免疫調節剤の操作は、GvHDおよびGvLに関与するエフェクターT細胞を低減する一方、制御性T細胞を増加し、炎症経路を下方調節することができる。
【0239】
CsAおよびMTXの組合せは、グレードII~IV aGvHDの発生率がより低いことが実証されている(Storb et al., N Engl J Med 1986 Mar 20;314(12):729-35)一方、有効性は依然として約50%の最適以下であり、忍容性は腎毒性および感染と関連する。タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、移植後シクロホスファミド、アルファ1抗トリプシン(AAT)を含む代替的な予防レジメンが、様々な設定で提案されている。ルキソリチニブなどのJAK阻害剤は、適度な有効性を示し、最近、ステロイド難治性GvHD療法について認可された。セカンドライン処置は、抗TNF抗体、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)、シロリムスおよびMMFを含む。
【0240】
体外循環式光化学療法(ECP)もまた、おそらく間葉系幹細胞(MSC)と組み合わせた、高リスク/難治性aGvHDにおいて提案されている。さらに、便微生物移植がaGvHDにおいて調査中である。
【0241】
cGvHD管理は、ファーストラインで長期間漸減による全身コルチコステロイド、およびセカンドラインでECP、リツキシマブまたはイブルチニブを含む。
【0242】
GvHDのいくつかの高リスクバイオマーカーが特定されている:ST2(IL-1R)およびREG3アルファ(腸管損傷バイオマーカー)。
【0243】
HSCTおよび移植後再発
AMLにおける移植後再発は、生物学的および臨床的に異種性である。いくつかの因子は、AMLにおける移植後再発の発生率に影響を及ぼしうる。
【0244】
以下のリスク因子が特定されている:
- 前処置レジメンの種類:強度低減前処置は、高リスクの再発と関連する
- GvHD予防法の種類:抗胸腺細胞グロブリン(ATG)または抗T細胞抗体に基づく集中レジメン、T細胞枯渇移植片は高リスクの再発と関連する
- 慢性GVHDの不在は、不十分なGvLを介して高リスクの再発と関連する
- HLAミスマッチおよび完全なキメリズムの損失
- 移植後に測定可能な残存疾患(MRD):持続性または再出現。
【0245】
最初の再発を超えた(beyond first relapse)(CR2)すべての患者は、HSCTを必要とし、再発のリスクが非常に高い。
【0246】
HSCTの臨床転帰は、寛解の深さ、および誘導の間の真菌感染または臓器不全などの合併性に依存して様々である。
【0247】
CR2 AMLにおけるHSCT転帰は、CR1にあるHSCTを有する患者と比較して合併性および累積化学療法毒性を獲得した患者の実質的な数によって制限される。
【0248】
HSCT基本性能がCRステータスに依存して変動しうるため、モクラビモド研究結果の解釈にはCR2対CR1の階層化が必要である。
【0249】
再発の定義およびMRD評価方法の標準化が必要である。
【0250】
移植後クローンプロファイルは、多くの場合、診断時のクローンプロファイルとは異なることになる。
【0251】
AMLのポリクロナール性質に起因して、事前の分子試験を回避するクローンは再発を決定しうる。
【0252】
様々な防止および治療手法は、再発率の低減について調査されており、
- 高用量前処置レジメン/新しい薬剤、
- 免疫抑制療法の初期の中止、
- MRD陽性ステータスを陰性ステータスに変更する移植後療法
を含む。
【0253】
しかしながら、カスタマイズした分子モニタリング(NGS)、マルチパラメーターフローサイトメトリーおよび日常的なAMLのMRDステータスを評価するキメリズム評価を組み合わせる必要が存在する。
【0254】
- 予防的DLI
- 標的療法を介した寛解の維持、エピジェネティック処置、免疫に基づく手法。
【0255】
より高リスクのAML患者では、再発率は、なお60%を超え、全体的な無病生存中央値(DFS)<1年(範囲:4~11ヶ月)となっている。
【0256】
HSCTを除き、AMLにおいて標準と考えるのに十分な有効性を示した維持療法は存在しない。
【0257】
FLT3阻害剤などの低分子、ハイポメチル化剤または予防的ドナーリンパ球注入は、維持療法である。
【0258】
非再発死亡率(NRM)を低減するいくらかの前進があるが、HSCT後の再発のリスクは、この10年間で大幅には低減されていない。
【0259】
オフターゲット効果を制限し、標的に対するT細胞の利用可能性を改善することを介してGvLおよびGvHを切り離すことは、GVHDのリスクを増加させることなく再発のリスクを低減するための望ましい手法である。モクラビモドは、この目的を満たす好適な薬理プロファイルおよび科学的根拠を有する、現在臨床開発中の唯一の治験品である。
【0260】
HSCTおよび生存、GVHDのない無再発生存(GRFS)エンドポイント
移植後生存は、大部分がHSCT後のAML再発に関連するが、非再発死亡率が顕著である。様々な戦略が、再発を低下し、したがって、OSを改善するために調査されている。
【0261】
強度の低減した前処置では再発率がより高いため、前処置レジメンの用量強度は問題である一方、骨髄破壊的前処置は生存を改善し、再発を低減する。しかしながら、用量強度の影響は、ゲノミクスに依存しうる。
【0262】
免疫チェックポイント遮断(CTLA4、PD1、PDL1,など)、標的療法(TKI)、維持低メチル化剤(HMA)およびワクチンは調査中であり、不十分な忍容性と関連しうる。
【0263】
アロHSCTを、同種GvL効果を保持しながら自己HSCTと同程度に安全で単純なものとすることが、モクラビモド療法の目的である。
【0264】
HSCTの性能はGRFSによって評価され、これは、HSCTへの補助剤として提案された治験医薬品の評価のための複合エンドポイントである。事象がHSCT後1年以内のグレード3~4急性GVHD、全身治療を必要とする慢性GVHD、再発または死亡を含む無GVHD/無再発生存(GRFS)(Holtan et al., Biol Blood Marrow Transplant. 2015 Jun;21(6):1029-36)。
【0265】
より最近では、難治性GRFS(rGRFS)が、長期間HSCT評価の正確なエンドポイントとして提案された。解消し、全身処置を必要としないGVHDはrGRFSにおける事象として最後の評価時に除外されることを除いて、rGRFSは、事象としてグレードIII~IV急性GVHD、全身処置を必要とする慢性GVHDおよび疾患再発/進行を処理する従来のGRFSと同様に計算される。
【0266】
rGRFSは、モクラビモド評価:死亡、再発または持続性の重度GVHDについてGRFSよりも正確である。
【0267】
研究介入およびIMP開発プログラム。
関連する非臨床知見
KRP203(モクラビモド)は、そのリン酸化活性代謝産物を介してスフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体を選択的に標的とする免疫調節剤である。KRP203-リン酸塩は、ヒトS1P1およびS1P4に対する強力なアゴニストであり、hS1P3およびS1P5に対して強力だが部分的なアゴニストである。治療効果は、リンパ組織化から腸、皮膚またはCNSなどの感受性標的器官へのエフェクターリンパ球再循環の防止に起因すると考えられる。
【0268】
KRP203-リン酸塩は、S1P1の長期間続く完全な内部移行を誘導し、これは、これらの細胞をS1Pに対して非感受性にし、リンパ器官から出る不可避シグナルを取り除く。KRP203は、in vitroにおいて治療濃度で、混合リンパ球反応(MLR)における同種刺激T細胞増殖を阻害せず、血液学的細胞毒性を示さず、CD4+ T細胞のアポトーシスも誘導しない。KRP203は、末梢血中のリンパ球数を80%超低減する。
【0269】
GPCR、イオンチャンネル、トランスポーター、核受容体および酵素を含むオフターゲット結合アッセイを使用して、大きな安全マージンを、3mg/日の最大ヒト目的用量で7×10-3nMの推定KRP203-P不含血漿濃度と比較して、計算した。したがって、二次薬理効果が、治療用量での非特異的受容体活性化に起因して生じる可能性は低い。
【0270】
安全性薬理学調査では、最大20mg/kgの用量(試験した最高用量)でイヌの呼吸器機能に対する顕著な効果も、3mg/kgのKRP203で前処置したラットにおいて感作剤によって誘導された気管支収縮反応に対する顕著な効果も明らかにならなかった。いくらかの立毛を除き、最大2000mg/kgの用量でラットにおいて有害な神経薬理効果は見られなかった。VEGF誘導血管漏出モデルにおいて、KRP203は血管保護性(バリア保護性)であることが証明された一方、単回経口用量後に肺の内皮バリアを軽度に減少させた。in vitroにおける心血管安全性薬理学の評価は、hERGチャンネルに対するKRP203のわずかな阻害能(0.5~10μM)を示したが;しかしながら、活性部分は、3μMの試験した最高濃度まで顕著な効果を示さなかった。3μMのKRP203またはそのリン酸塩の濃度でモルモット乳頭筋調製物においてAPD延長は見られなかった。QT延長の示唆は遠隔測定したイヌまたは麻酔科のモルモットにおいて観察されなかったが、KRP203は、心拍数を低下させる(単離されたウサギ心臓またはモルモット;外挿曝露≧0.1μM)または血圧を上昇させる(イヌ;外挿曝露≧0.3μM)潜在能を有することが示された。利用可能なin vitroおよびin vivoデータに基づいて、負の変時効果および血圧のいくらかの軽度の増加を引き起こす潜在能を除き、KRP203が人間において不整脈またはQT延長を引き起こすことは示されなかった。
【0271】
[14C]KRP203の経口投与後、放射能Tmaxは、雄性ラットおよびイヌにおいてそれぞれ7時間および9.3時間であり、吸収が遅いことを示した。[14C]KRP203関連放射能の血液分布は、種に依存し、[14C]KRP203の血漿タンパク質結合は、すべての調査した種において高いことが見出された(ヒト血漿における>99%を含む)。[14C]KRP203の静脈内投与後、放射能は、ラットおよびイヌ組織に同様の分布体積で容易に分布した(ラットにおいてVss=8.0L/kg)。
【0272】
Wistarラットへの[14C]KRP203のp.o.投薬(0.5mg/kg)後、化合物関連放射性物質は、投薬後8~24時間の時点で最大組織濃度を示した。高曝露組織は肝臓であり、より低い程度で腎臓、小腸、副腎、肺、脾臓および腸間膜リンパ節であった。CNS組織(大脳、小脳および延髄)における放射能は、単回投与後の投薬後24hまで血漿中よりも低かった。放射能は、これらの組織から非常にゆっくり排除され、[14C]KRP203関連放射能は、投薬後168hで、血漿中よりもCNS組織において5~6倍高かった。[14C]KRP203(0.5mg/kg/日)複数経口用量の14日後、血漿に比べて脳でより多くの総放射能が蓄積し、はるかに遅く排除された。
【0273】
KRP203のin vitro代謝産物プロファイルの調査により、ラット、イヌおよびヒトの血中、すべての種においてリン酸化KRP203のみが検出され、最高形成率はラット血液であり、イヌおよびヒト血液が続いたことを示した。ヒト肝細胞において、定量的に、リン酸化KRP203が中でもより際立った代謝産物であった。
【0274】
血漿中リン酸化KRP203対KRP203のin vivo比は、ラットにおいて最大45であった。ヒト血液および肝細胞におけるKRP203に対する代謝活性は他の種の代謝活性よりも低かったため、人間におけるKRP203の代謝クリアランスは、ラットおよびイヌにおける代謝クリアランスよりも低いと予想される。in vitro試験を使用して、KRP203は、ヒトシトクロームP450アイソザイムの活性の阻害に関連する可能性を示さなかった。KRP203およびKRP203リン酸塩は、それぞれ6.15μMおよび50μMの濃度までヒトPXR受容体を介したCYP3A4の顕著な誘導を示さなかった。KRP230は、in vitroにおいてヒト肝細胞中、少量の共有結合薬物-タンパク質付加物を形成した。検出レベルが低い(3時間で68pmol/10細胞)ことに起因して、in vitro付加物形成は、低用量レベル(例えば、10mg未満)で臨床的に関連する知見と関連する可能性は低い。
【0275】
単回および複数回用量(4および13週)後のイヌにおける血漿毒物動態学データは、KRP203についてより高用量で曝露および用量間の比例性を超える傾向、ならびにKRP203リン酸塩についてすべての用量レベルで比例下の傾向があったことを実証した。ラットにおいて、単回および複数回投与後のKRP203およびKRP203リン酸塩両方について、曝露および用量間の明らかな比例性があった。1.4~6.6および10.9~19.1のKRP203リン酸塩/KRP203比(AUC0-24hに基づく)が、それぞれイヌおよびラットにおいて観察された。イヌにおいて反復投薬(4および13週)後のKRP203およびKRP203リン酸塩のいずれかについて蓄積の証拠はなかったが、ラットにおいて、曝露は、単回用量と比較して13週処置の終了時に2~5倍増加した。ラットおよびイヌにおいて、KRP203およびKRP203リン酸塩の両方について、曝露における性差は認められなかった。
【0276】
急性毒性研究は、KRP203が、高用量レベルまで十分忍容され、ラットにおいて1000mg/kgの経口用量、またはラットもしくはマウスにおいて50mg/kg超の静脈内用量でのみ致死性があった。イヌにおいて2000mg/kgまでの単回経口投薬後に死亡は見られなかった。
【0277】
マウスにおける反復用量毒性研究(2週間)により、≧45mg/kg/日の用量でのこの種における死亡率が明らかになった一方、ラットおよびイヌ(それぞれ26および52週まで)では、それぞれ50mg/kgおよび15mg/kgの1日用量まで死亡は見られなかった。薬理作用様式から予想される通り、リンパ器官におけるリンパ球枯渇に関連する効果および特性変化は、すべての種において、反復用量毒性研究において試験したすべての用量レベルで認められた。これらの効果のほか、毒性の主標的器官は肺(マウス、ラットおよびイヌ)、肝臓(マウスおよびラット)、ならびに腎臓(マウス)であった。
【0278】
肺は、試験したすべての動物種において一貫した標的器官であることが示された。13、26および52週間のラットおよび/またはイヌ研究の終了時、4週間毒性研究において生じた肺効果の変化と類似した全身曝露での病理組織学的変化は観察されなかった。食細胞の一時的な活性化およびこれらの細胞による可溶性マーカーの分泌増加が、平滑筋肥大/過形成への主な寄与因子であると考えられる。
【0279】
肝臓に対する効果(胆管過形成、胆管における体液貯留(ラットのみ)、胆管線維症および巣状壊死)が、ラットおよびマウスで見られたが、イヌでは見られなかった。ラット肝臓所見は、4から26週間への処置の延長時に大幅には悪化しなかった。
【0280】
一般に、肝臓への効果は軽度であり、一般臨床徴候(例えば、体重および食物消費)と組み合わせて、一部の研究において高用量レベルでのみ生じ、MTDを超えた可能性を示した。さらに、KRP203は、ヒト肝臓副作用のin silico警告部分構造を示さず、ラットにおける2週間探索による毒性研究における肝臓の遺伝子プロファイリングは、肝毒性関連変化を示さなかった。
【0281】
腎臓は、マウスでのみ、≧45mg/kg用量での2週間研究においてのみ毒性の標的器官であった。最小から重度の病変が、いずれの性別でも認められ、尿細管空胞化、拡張、変性、再生、硝子滴、硝子様円柱、有糸分裂像の増加、フィブリノイド沈着を伴う糸球体変性および/または糸球体症からなった。
【0282】
腎損傷は、この研究で見られた死亡/瀕死の主因である可能性が最も高かった。
【0283】
13週マウス研究において20mg/kgの最高用量レベルまで腎臓変化は見られず、全身曝露(AUC0-24h)はおよそ7250ng・h/mLとなった。
【0284】
KRP203によるマウスにおける2つのin vitro遺伝毒性試験(細菌突然変異および染色体異常)および微小核研究からのKRP203またはそのリン酸塩の遺伝毒性能についての証拠はない。
【0285】
ラットおよびウサギにおける生殖毒性研究は、低用量で胎児死亡および奇形をもたらす、生殖器系に対する催奇形性および効果を示した(ラット研究においてNOAELなし)。生殖毒性学研究において、または4もしくは13週間毒性研究における病理組織学的評価から、20mg/kgの最高用量までの雄の生殖能力に対する効果は、試験した最高用量まで観察されなかった。
【0286】
それぞれ26または13週までラットまたはイヌに経口投薬によって与えられた場合、胃腸管においてKRP203によって誘導された局所忍容性が損なわれたことは示されていない。26および52週間イヌ毒性研究では、軟/粘液便および下痢を伴う胃腸障害が、高用量レベルで雄においてのみ生じた。KRP203は、顕著な眼刺激を引き起こすが、ウサギの皮膚には刺激を起こさず、接触感受性能は有さない。
【0287】
全体として、今日までに完了した前臨床研究では、調査臨床研究におけるこの化合物の使用を不可能にするデータは生成されていない。
【0288】
関連する臨床研究および投薬根拠
表1は、KRP203に曝露された対象数により臨床研究をまとめている。
【0289】
全体として、325HVおよび66名の患者(27名の患者が潰瘍性大腸炎、10名が亜急性皮膚エリテマトーデス、および29名がクローン病)が、KRP203のプラセボ対照試に含まれ、KRP203は十分忍容され、良好な安全性プロファイルを示した。
【0290】
血液悪性腫瘍のための同種HSCTを受けている患者におけるKRP203を用いた臨床研究(研究KRP203A2105)が完了している。
【0291】
【表3-1】
【0292】
【表3-2】
【0293】
血液悪性腫瘍のためのHSCTにおける研究CKRP203A2105
血液悪性腫瘍のための同種HSCTを受けている患者におけるPK、安全性、忍容性、薬物動態および有効性(パート2のみ)を評価するための第Ib相研究2パート非盲検研究
・パート1は、10名の患者のうちHSCT患者における標準治療GvHD予防法(シクロスポリンA(CsA)/メトトレキセート)に加えた3mg/日KRP203の安全性を調査するための単一群非盲検研究である。
・パート2は、20名の患者における、タクロリムス/メトトレキセートと組み合わせた3mg/日のKRP203の安全性、有効性およびPKを、CsA/メトトレキセートと組み合わせた1mg/日のKRP203と比較するための無作為化2群非盲検研究である。
【0294】
研究集団は、血液悪性腫瘍と診断され、HLA一致幹細胞供給源が利用可能な標準同種HSCTに適格である男性または女性対象で構成された。そのような悪性腫瘍としては、これらに限定されないが、急性骨髄白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、骨髄異形成症候群(MDS)、慢性リンパ性白血病(CLL)、辺縁帯および濾胞性リンパ腫、大細胞リンパ腫、リンパ芽球性バーキットおよび他の高グレードリンパ腫;マントル細胞リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫;前リンパ球性白血病または多発性骨髄腫が挙げられた。
【0295】
パート1は、スクリーニング期間(-50~-2日目)、ベースライン(-1日目)、KRP203による1日目~111日目の処置期間、および最大365日間(移植から)のフォローアップ期間で構成された。対象は、スクリーニング期間(ベースラインのおよそ2~5日前)に研究現場に収容され、治験品である3mgのKRP203を、1日目から111日目まで、1日1回、標準治療(SOC)GvHD予防法として与えられるシクロスポリンA(CsA)と共に受けた。HSCTを11日目に実施した。KRP203を用いた研究処置に加えて、施設実務に従い、活動は、前処置、標準GvHD予防法、幹細胞の注入、移植前および後の支持療法、ならびにフォローアップ評価を含んだ。対象は、骨髄移植が行われた後2~5日間入院したままであった。後続の研究訪問は、外来、または対象の健康状態に応じて必要であれば入院であった。
【0296】
パート2は、スクリーニング期間(-50~-2日目)、KRP203による1日目~111日目の処置期間、およびフォローアップ訪問で構成された。骨髄破壊的前処置は、化学療法を使用し、SOCに従って2日目~10日目の間に実施した。適格基準を満たす対象を、以下のいずれかを受けるように無作為化した:
・1mg KRP203を1日1回、111日間およびCsAをSOC GvHD予防法として与えたか、または
・3mg KRP203を1日1回、111日間およびタクロリムス(Tac)をSOC GvHD予防法として与えた。
【0297】
パート1と同様に、HSCTを11日目に実施し、すべての他の手順/訪問はパート1と同じであった。
【0298】
研究は、戦略に関する考察に起因して早期に終了した。この決定は、KRP203の安全性の懸念にはなんら関係しなかった。研究は、研究を早期に終了する決定を行った当日に告知に基づく同意書面にサインした対象について、進行中の患者のフォローアップ期間は短縮したが、KRP203の最後の用量後6ヶ月の適切な安全性フォローアップを維持した。
【0299】
研究に登録された合計25名の対象のうち23名の対象が、研究処置を受けた。2名の患者は、ドナーが適格でないため、およびスクリーニングの失敗のために研究処置を受けなかった。パートIでは、10名の対象が3mg KRP203+CSAを受け、パートIIでは、6名の対象が1mg KRP203+CsAを受け、7名の対象が3mg+Tacを受けた。
【0300】
全体として、パートIの10名の対象すべて、ならびにそれぞれパートIIの1mg KRP203+CsA群の3/6名の対象および+3mg+Tac群の1/7名の対象を含む14/23名の対象が研究を完了した。
【0301】
研究中止の主な理由は、離脱の意向(n=14、17%)に続いてAE(n=3、13%)および死亡(n=2、9%)であった。
【0302】
最も頻繁な有害事象
パート1
全体として、パート1のすべての対象が研究処置の30日後にAEを報告し、9名の対象が移植の30日までにAEを報告し、7名の対象が、処置の開始から移植直前までにAEを報告した。
【0303】
AEの大部分は、処置の開始から移植直前までの器官別大分類の胃腸障害(6名、60%)に関係した。移植から移植の30日までに、最も頻繁に罹患した器官別大分類は、胃腸障害(7名、70%)、呼吸器、胸郭および縦隔障害(4名、40%)、血管障害(3名、30%)、免疫系障害(3名、30%)、ならびに神経系障害(3名、30%)であった。移植の30日以降に最も頻繁なAEは、免疫系障害(10名、100%)、一般・全身障害および投与部位の状態(6名、60%)、ならびに感染症および寄生虫症(5名、50%)に属した。
【0304】
処置の開始から移植の直前まで、少なくとも2名の対象における最も頻繁なAEは、嘔吐(4名、40%)、吐き気(2名、20%)および徐脈(2名、20%)であった。徐脈(2名、20%)、高血圧(1名、10%)および洞停止(1名、10%)の事象は、研究者により研究処置との関連が疑われた。
【0305】
移植から移植の30日まで、最も頻繁なAE(少なくとも2名の対象における)は、嘔吐(6名、60%)、吐き気(2名、20%)、腸の急性GvHD(3名、30%)、胸水(2名、20%)および毛細管漏出症候群(2名、20%)であった。これらの事象のうち、胸水(2名、20%)および毛細管漏出症候群(2名、20%)の事象は、研究者により研究処置との関連が疑われた。
【0306】
移植の30日後、最も頻繁なAE(少なくとも2名の対象における)は、慢性GvHD(7名、70%)、肝臓の慢性GvHD(5名、50%)、末梢性浮腫(4名、40%)、皮膚の急性GvHD、腸の急性GvHDおよび皮膚の慢性GvHD(各3名、30%)に続いて、下痢、吐き気、発疹、眼瞼浮腫および腸の慢性GvHD(各2名、20%)であった。これらのうち、末梢性浮腫(2名、20%)の事象は、研究者により研究処置との関連が疑われた。
【0307】
パート2
両方の処置群パート2で無作為化したすべての対象(13名[100%])が、処置の開始から移植直前まで、移植から移植後30日まで、および移植の30日後に少なくとも1つのAEを経験した。
【0308】
処置開始から移植直前まで、罹患した上位3つの器官別大分類(1mg KRP203+CsAおよび3mg KRP203+Tac処置群の両方)は、胃腸管障害、臨床検査、ならびに一般・全身障害および投与部位の状態であった。移植後30日まで、報告された上位3つの器官別大分類は、胃腸障害および臨床検査と共に血管障害であった。移植の30日後、主要な(上位3つ)AEは、器官別大分類免疫系障害、感染症および寄生虫症、ならびに一般・全身障害および投与部位の状態であった。
【0309】
処置の開始から移植の直前までに報告された最も頻繁なAE(1mg KRP203+CsAまたは3mg KRP203+Tac処置群いずれかにおいて少なくとも2名の対象)は、吐き気、嘔吐、体重増加、血中クレアチニン上昇および下痢であった。これらのうち、1名の対象(1mg KRP203+CsA処置群)における血中クレアチニン上昇の事象は、研究者により研究処置との関連が疑われた。
【0310】
移植から移植の30日までに報告された最も頻繁なAE(1mg KRP203+CsAまたは3mg KRP203+Tac処置群の両方において少なくとも2名の対象)は、嘔吐、口内炎、高血圧、血小板減少、背部痛、骨痛、C反応性タンパク質増加、下痢および低マグネシウム血症であった。これらのうち、2名の対象における、C反応性タンパク質の事象(1mg KRP203+CsA処置群)および高血圧の群(3mg KRP203+Tac処置群)は、研究者により研究処置との関連が疑われた。
【0311】
移植の30日後に報告された最も頻繁なAE(1mg KRP203+CsAまたは3mg KRP203+Tac処置群の少なくとも2名の対象)は、慢性GvHD、末梢性浮腫、皮膚における急性GvHD、腸における急性GvHD、ALT増加、下痢および口腔カンジダ症であった。これらのうち、1名の対象(1mg KRP203+CsA群)における末梢性浮腫および2名の対象(1mg KRP203+CsAおよび3mg KRP203+Tac処置群においてそれぞれ1名)におけるALT増加は、研究者により研究処置との関連が疑われた。
【0312】
死亡および他の重篤または臨床的に重大な有害事象
全体として、研究の間、1年および長期間フォローアップ期間に7例の死亡が報告された。3名の対象は、誤嚥性肺炎、肝不全またはホジキン病のグレード3またはグレード4の重篤なAEに起因して死亡した。
【0313】
肝不全およびホジキン病は、研究者により研究処置との関連が疑われた。しかしながら、独立した病理学者およびデータモニタリング委員会もまた肝不全の例を検討し、病理組織学所見に基づいて、肝臓損傷はむしろ急性GvHDに続く同種免疫媒介性肝炎によって引き起こされた(したがって、肝不全は、KRP203に関連した可能性は低い)と結論付けた。ホジキン病に関して、研究者は、ホジキン病とKRP203との関連を疑った。研究者の見解では、KRP203は免疫抑制薬として、GVL効果を鈍らせることがあり、これにより、基礎血液疾患が再発しうる。
【0314】
重篤または臨床的に重大な有害事象
パート1
1名の対象(10%)が、処置の開始から移植の直前までに嘔吐の重篤なAEを報告した。
【0315】
2名の対象(20%)が、移植後30日までに急性GvHD、呼吸困難および体重増加の3つの重篤なAEを報告した。
【0316】
移植の30日後に報告された重篤なAEの数には急激な上昇があった。4名の対象(40%)が、器官別大分類のSAE、主に一般・全身障害および投与部位の状態(3名、30%)、感染症および寄生虫症(2名、20%)、ならびに良性、悪性および詳細不明の新生物(嚢胞およびポリープを含む)(2名、20%)を報告した。この期間中に2名以上の対象において報告された重篤なAEはなかった。
【0317】
パート2
処置開始から移植直前までに重篤なAEは報告されなかった。1mg KRP203+CsA処置群の1名の対象(10%)が、移植後30日までに眼瞼炎および嚢胞様黄斑浮腫の2つの重篤なAEを報告した。
【0318】
主にGvHDの事象に起因して、移植の30日後に報告された重篤なAEの数には急激な上昇があった。報告された最も頻繁な重篤なAE(パート2において少なくとも2名の対象)は、腸の急性GvHD(3名、23%)、下痢(2名、15%)、および全般的な身体健康状態の悪化(2名、15%)であった。
【0319】
研究薬物に関連した重篤な有害事象
パート1
嚢胞様黄斑浮腫、労作時呼吸困難および末梢性浮腫の3つの重篤なAEが、移植の30日後に1名の対象(10%)で報告され、研究者により研究処置との関連が疑われた。これらの事象はすべて軽度の重症度であった。
【0320】
パート2
移植から移植後30日までにKRP203+CsA処置群の1名の対象(17%)において報告された眼瞼炎(グレード2)および嚢胞様黄斑浮腫(グレード3)の2つの重篤なAEは、研究者により研究処置との関連が疑われた。
【0321】
移植の30日後、研究者により研究処置との関連が疑われた、4名の対象(31%)が報告した5例の重篤なAEは、各々1(8%)例の熱性骨髄形成不全(グレード3)、肝不全、ホジキン病(グレード3)、黄斑虚血(グレード3)、および網膜虚血(グレード3)であった。
【0322】
中止につながる有害事象
全体として、3mg KRP203+CsA群の2名(29%)の対象、1mg KRP203+CsA群の2名の対象(33%)、および3mg KRP203+Tac群の1名(14%)の対象が、研究薬物の中止となったAEを有した。研究薬物の中止につながったすべての事象は、パート1における呼吸困難および体重増加の2つの重篤な事象を除き、研究処置への関連が疑われた。
【0323】
本発明の利益
高リスク急性骨髄白血病の患者の場合、依然として同種HSCTが唯一の治療選択肢である。このプロトコルは、これらの患者に、HSCTに関連した全生存、および/または難治性GVHDのない無再発生存(rGRFS)、および/または生活の質を改善する有望な補助処置を受ける機会を提供する。利益の予測は、以前の第IIb相CKRP2032105研究結果に基づく。
【0324】
図1に示される通り、軽度の慢性GVHDの発生率は、3mg KRP203およびタクロリムスまたは1mg KRP203およびシクロスポリンAを受けた患者と比較して、3mg KRP203およびシクロスポリンAを受けた患者で減少する。さらに、中等度の慢性GVHDの発症は、他の処置群と比較して、3mg KRP203およびシクロスポリンAを受けた患者で遅延する(図3を参照されたい)。3mg KRP203およびシクロスポリンAを受けた患者での再発の発生率は、3mg KRP203およびタクロリムスまたは1mg KRP203およびシクロスポリンAを受けた患者と比較して低い。まとめると、これらのヒトにおける最初のデータは、HSCTを受けているAML患者において慢性GVHDの発生を遅延し、原疾患の再発を防止するための、111日超の期間にわたる3mg KRP203の長期間投与を支持する。
【0325】
潜在リスクの評価、ならびに利益およびリスク管理
予想されるリスクはモクラビモド臨床経験に基づき、予想される利益を超えないと予測される。対象は、この臨床試験に参加する負担:スクリーニングおよびフォローアップ通院の頻度、長期の入院および必要に応じた予定外の通院に関して完全かつ明確に情報を提供される。対象はまた、血液試験および骨髄サンプル採取の実施頻度について情報を提供され、試験への参加を決定する前にすべての情報を慎重に検討することを求められる。対象は、重要な臨床事象の発生について詳細にモニタリングし、処置はそれを行うことが安全かつ適切であると考えられる場合のみ継続する。モクラビモドの早期臨床開発は、その使用が一般に安全であり、十分忍容されることを示し、本第IIb相試験におけるその使用の評価を正当付けることができる。第IIb相試験で得られたデータはまた、モクラビモドがAML患者における治療活性の潜在性を有することを示した。
【0326】
試験の目的およびエンドポイント
目的
この研究の目的は、急性骨髄白血病を有する対象における同種HSCTの補助処置としてのモクラビモドの安全性および有効性を対照に対して比較することである。研究の追加の目的は、生活の質に対する2つの処置の効果を比較することである。
【0327】
主目的
HSCTの安全性および有効性を改善するためのHSCTへの補助処置としての、再発およびGVHDに対するモクラビモドの効果を評価すること。HSCTは、最初(CR1)または後続の形態学的完全寛解(CR2)にあるAMLを有する対象において、HLA適合した兄弟姉妹または非血縁ドナーを用いて実施される。
【0328】
二次目的
2年の時点での全生存、2年の時点での無疾患進行生存および生活の質に対するモクラビモドの効果を評価すること。
【0329】
主要エンドポイント
研究の主要エンドポイントは、難治性GVHDのない無再発生存(rGRFS)である。
【0330】
rGRFSは、無作為化から、
・少なくとも2ラインの処置に対して抵抗性のグレードIII/IV急性移植片対宿主疾患(GVHD)、
・全身免疫抑制処置に対して抵抗性の広範囲の慢性GVHD、
・疾患再発、
・死亡
のいずれかが最初に起こるまでの時間として定義される。
【0331】
この複合エンドポイントは、安全性および有効性の両方を捕捉する。様々な重大事象を等級付けする。GRFS確認などの複合エンドポイントは、新しい治療を試験する場合に臨床的に関連する。
【0332】
解消し、全身処置を必要としないGVHDはrGRFSにおける事象として最後の評価時に除外されることを除いて、rGRFSは、事象としてグレードIII~IV急性GVHD、全身処置を必要とする慢性GVHDおよび疾患再発/進行を処理する従来のGRFSと同様に計算される。
【0333】
二次エンドポイント
研究の重要な二次エンドポイントは、全生存である。
【0334】
全生存(OS)は、無作為化から任意の原因による死亡までの時間として定義される。有効性評価のための他の二次エンドポイントは、無増悪生存(PFS)および再発の累積発生率である。PFSは、無作為化から疾患の再発または任意の原因による死亡までの時間として定義される。再発の累積発生率は、無作為化から形態学的または臨床上の再発の発生率として定義される。
【0335】
安全性評価のための二次エンドポイントは、
・黄斑浮腫の発生率
・用量低減/処置の中止につながる肝機能異常の発生率
・重度の徐脈の発生率
・移植後リンパ増殖性疾患の発生率
・EBV/CMVを含むウイルス、細菌および真菌による重度の感染性合併症の発生率、ならびに抗ウイルス療法の先制的治療使用の発生率
・NCI CTCAEグレード3~5有害事象の累積発生率
である。
【0336】
研究目的のための二次エンドポイントは、
・生着までの時間
・急性GvHDまでの時間
・1年の時点でのグレードII~IVおよびグレードIII~IV急性GVHDの累積発生率
・慢性GvHDまでの時間
・1年の時点での中等度から重度の慢性GVHDの累積発生率
・1年の時点での全身免疫抑制処置を必要とする慢性GVHDの累積発生率
・インフルエンザワクチン接種に対する抗体価の反応
・処置の1年目のシクロスポリンAによるGvHD予防法の継続期間中央値および平均用量(mg/kg/日)
・処置の1年目の間の併用療法の発生率およびコルチコステロイドの累積用量
・処置の1年目にわたる併用療法の発生率およびルキソリチニブの累積用量
・NCI CTCAEグレード2~5およびグレード3~5感染症の累積発生率
である。
【0337】
他のエンドポイント
生活の質の評価は、12ヶ月の時点での主要エンドポイントによる質問票を介して行われる。
【0338】
細胞療法骨髄移植認定財団質問票(FACT-BMT、バージョン4)、36項目の簡易健康調査票(SF-36、バージョン2)、およびMDアンダーソン症状評価票(MDASI)を、スクリーニング、3ヶ月目、6ヶ月目、12ヶ月目および24ヶ月目の時点でスコアリングする。ただし、現地の言語への認証された翻訳が利用可能である。
【0339】
研究設計
全体設計
これは、2つの並行群を比較する第IIb相無作為化対照多施設非盲検研究である。告知に基づく同意にサインした後、合計約160名の対象を1:1様式で、CsAおよびモクラビモドに基づくGVHD予防法と組み合わせたモクラビモドの有効群、またモクラビモドを用いない標準治療の対照群のいずれかを受けるように無作為化する。
【0340】
無作為化は、完全寛解ステータス(CR1対CR2)および施設に関して処置群のバランスをとる最小化法を使用する。確率的処置割当て手順を使用して、研究に参加したすべての対象について処置割当てが無作為となるようにする。
【0341】
モクラビモド群に無作為化された対象は、1mg用量の3個のカプセル剤をHSCT前-11日目に開始して12ヶ月の期間、またはすべての免疫抑制剤が漸減され、離脱が少なくとも4週間で完了するまで、受ける。
【0342】
処置の1年目を完了した対象には、非盲検設定でさらにもう1年研究処置を継続して受けることを提案する。
【0343】
すべての患者は、HSCT後24ヶ月間、フォローアップを受ける。
【0344】
研究は、血液悪性腫瘍における非比較第IIa相臨床試験の結果を確認し、HSCTに対する補助療法としてモクラビモドを受けている患者の転帰を、モクラビモドを用いない同様の設定を受けている対照群の患者と比較するように設計する。研究は、対照群と比較して、モクラビモド群の優位性を示すことを目的とする。
【0345】
研究集団
試験集団
兄弟姉妹または一致した非血縁ドナー由来の末梢血から収集したHSCTに適格である完全寛解(CR1、CR2)にあるAMLを有する18~75歳の男性または女性対象。合計で、160名の患者を無作為化することを計画し、欧州、イスラエルおよび北アメリカの60施設が研究への参加者の登録を計画する。
【0346】
組入れ基準
各患者は、この研究に登録するために以下の基準を満たさなくてはならない:
・先行する血液疾患(例えば、骨髄異形成症候群)後の続発AMLおよび治療関連AMLを含む、WHO2016分類に従ってAMLおよび関連前駆腫瘍(急性前骨髄球性白血病を除く)と診断された対象
・対象は、DNAベースタイピングによる高分解能でHLA-A、-B、-CおよびDRB1で8/8の一致を有する完全に一致した兄弟姉妹ドナーまたは非血縁ドナーから同種HSCTを受けることを計画しており、幹細胞源は、適合ドナーによるアフェレーシスを介して収集された末梢血に動員される。移植片中の最小推奨CD34+細胞用量は、2×10/kgであるべきであり、推奨目標用量は約5×10/kgであるべきである。
・最初の細胞形態学的寛解(CR1)およびELN有害分類にあるAMLを有する対象、または後続の細胞形態学的寛解(CR2)にある対象
CRは、形態学的完全奏功は、絶対好中球数および血小板数が正常値であり、髄外の白血病の兆候がなく、輸血を繰り返す必要がないことと併せて、白血病クリアランス(骨髄芽球<5%で、循環する末梢芽球がない)として定義される。
CRiは、絶対好中球数<1,000/μLまたは血小板数<100,000/μLを除くすべてのCMR基準を満たすと定義される。
・スクリーニング時の平均余命≧6ヶ月
・カルノフスキーのパフォーマンスステータス(KPS)≧70%
・≧18歳および≦75歳の男性または女性
・≧65歳の対象は、Sorrorスコア≦3を有さなくてはならない
・書面での告知に基づく同意を提出し、試験プロトコルおよび手順に従うことができ、その意思がある
・妊娠可能であり性活動のある女性、および妊娠可能な女性と性的接触のある男性について:研究への参加中、信頼性の高い避妊法(経口避妊薬、子宮内避妊具、ホルモンインプラント、避妊薬の注射または性交抑制)を使用する意思がある。
女性は、完全な不妊でない限り、初潮後閉経するまで妊娠可能であると考える。女性は、適切な臨床プロファイル(例えば、適切な年齢、血管運動徴候の病歴)で12ヶ月の自然(自発的な)無月経であるか、または少なくとも6週前に両側卵巣摘出(子宮摘出ありもしくはなし)もしくは卵管結紮の手術を受けている場合、閉経後であり、妊娠可能でないと考える。卵巣摘出単独の場合は、女性の生殖ステータスが、フォローアップのホルモンレベル評価によって確認されている場合のみ、彼女は妊娠可能ではないと考える。
・国民健康保険制度への加入(適用可能な現地の要件に従う)
【0347】
除外基準
以下の基準のうちのいずれかを満たす患者は研究から除外する:
・以前に同種HSCTを受けたことがある対象または実質臓器移植のレシピエント
・急性前骨髄球性白血病を有する対象
・対象が、登録の少なくとも6ヶ月前にその悪性腫瘍のための治癒目的の処置を完了(化学療法および/または手術および/または放射線療法)を完了している場合を除き、任意の以前のまたは併存悪性腫瘍の診断は除外基準である
・慢性骨髄白血病の急性転化

○臨床的に重大な肺線維症
○成功裡に処置された結核の病歴または陽性PPD皮膚反応後の予防的処置の病歴を除く結核
○喘息の慢性(毎日)治療を受けている患者
○任意の他の種類の臨床的に重大な気管支収縮性疾患を有する患者
○研究者が評価して管理されていない糖尿病、または糖尿病性腎症もしくは網膜症などの臓器障害を合併した糖尿病
○管理されていない発作障害
○管理されていない抑うつまたは自殺企図/念慮の病歴
を含む同時発生の重度および/または管理されていない医学状態

○試験参加の終了前3ヶ月以内の心筋梗塞、または
○スクリーニング前28日以内のマルチゲート収集(MUGA)スキャンもしくは心臓超音波検査(心エコー)によって測定して駆出分画<40%の左心室機能の低下、または
○安定または不安定虚血性心疾患(IHD)、心筋炎もしくは心筋症の病歴もしくは存在、または
○ニューヨーク心臓病学会(NYHA)クラスII~IVうっ血性心不全、または
○症候性徐脈の病歴または存在を含む不安定心不整脈、
○安静時心拍数(検診または12誘導ECG)<60bpm
○安全性の重大なリスクを示すECG異常の病歴または現在の診断、例えば、併存する臨床的に重大な心不整脈、例えば、持続性心室頻拍、洞不全症候群もしくは洞房心ブロックを含む臨床的に関連する心伝導の障害の存在、臨床的に重大なAVブロック、脚ブロックまたはスクリーニングもしくはベースラインECG時の安静時QTc(Fridericiaが好ましいが、Bazzetも許容される)>450msec(男性)および>470msec(女性)
○症候性不整脈または処置を必要とするかもしくはその他の臨床的に重大である不整脈の病歴または存在
○管理されていない動脈性高血圧;管理されている場合、薬物治療はベースライン訪問前3ヶ月間にわたって安定でなくてはならない
○心伝導を損なう薬物治療(例えば、ベータ遮断薬、ベラパミル型およびジルチアゼム型カルシウムチャネル遮断薬または強心配糖体)による処置
○それらが研究の継続期間にわたって永続的に中止できるのでない限り、QT間隔を延長することが公知の薬剤の併用
○キニジンによる処置
心臓由来であることが疑われる卒倒の病歴
○家族性QT延長症候群または多形性心室頻拍の既知の家族歴
によって定義される通りの心機能不全
・室内気に対して酸素飽和度<90%によって定義される肺機能障害。スクリーニング前28日以内の症候性または以前に既知の障害の場合のみ、肺機能検査(PFT)が必要であり、一酸化炭素に対する肺の拡散能(DLCO)および1秒間の努力呼気量(FEV1)で補正した肺機能<50%
・重大な肝疾患もしくは肝損傷、またはアルコール乱用の既知の病歴、慢性肝臓もしくは胆管疾患
・ASTおよび/またはALT>5×ULNによって定義される肝機能障害
・血清クレアチニン>2.0mg/dL(176μmol/L)の腎機能障害
・スクリーニング前4週間以内の弱毒化生ワクチンのワクチン接種
・併存疾患のための免疫抑制薬物。対象は、研究の処置開始前少なくとも3日間、プレドニゾンまたは他の免疫抑制薬物治療を休止することが可能でなくてはならない
・スクリーニング前6ヶ月以内の卒中または蓋内出血の病歴
・特定の治療を必要とする活性な感染(ウイルス、細菌または真菌)。急性抗感染症療法は、研究処置前14日以内に完了していなくてはならない
・陽性HIV抗体、B型肝炎表面抗原またはC型肝炎として定義されるヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはB型肝炎ウイルス(HBV)もしくはC型肝炎ウイルス(HCV)への活性な感染の病歴
・皮膚の限局性基底細胞癌またはin-situ子宮頚がんを除く、局所再発または転移の証拠の有無に関わらない、過去5年以内に処置されたまたは処置されていない、以前の悪性腫瘍の病歴
・現在の併用化学療法、放射線療法または免疫療法
・スクリーニング前4週間以内の大手術または完全に治癒していない大きな創傷
・対象の陽性妊娠検査または母乳育児(妊娠可能年齢の女性のみ)
・生存3ヶ月未満の推定確率
・モクラビモドの成分のいずれか(例えば、賦形剤)への既知のアレルギー
・シクロスポリンAまたはメトトレキセートを用いたGVHD予防法への何らかの禁忌
・スクリーニングの間の黄斑浮腫の診断。黄斑浮腫の病歴を有する患者は、スクリーニング時の眼科検査で黄斑浮腫を有さないことを条件に研究に参加することができる
・試験登録前4週以内の別の介入臨床試験への参加、または同時介入臨床試験への参加
・研究者の意見で、患者またはドナーが研究に不適格となる任意の他の条件
・法的保護手段(後見人、受託人または司法の保護)下にある、および/またはこの試験の要件および手順に従うことができないまたはその意思がない対象
【0348】
研究介入
IMPおよび付随する非治験医薬品(NIMP)の同定
IMPはモクラビモドである。
【0349】
IMP活性物質:
2-アミノ-2-[2-[2-クロロ-4-[[3-(フェニルメトキシ)フェニル]チオ]フェニル]エチル]-1,3-プロパンジオール塩酸塩
【0350】
研究介入の説明
研究のすべての患者は、-11日目に開始し、HSCT後1年間にわたって経口経路による3個のカプセル剤の1日用量レジメンでモクラビモドを受ける。
【0351】
NIMPSは、前処置、GVHD予防法および感染合併症予防法のためにHSCTで使用される製品であり、様々なブランド名でヒト使用のために市販されている。
【0352】
投薬および投与
モクラビモドは、ハードゼラチンカプセル剤として製剤化され、経口投与のための即時放出剤形である。ハードゼラチンカプセル剤は、サイズ#4の不透明ピンク色(スウェーデンではオレンジ色)のカプセル中に白色からオフホワイト色粉末を含有する。
【0353】
ハードゼラチンカプセル剤は、HSCT前-11日目に開始し、HSCT後1年間にわたって経口経路による3カプセルの1日用量レジメンで投与される。
【0354】
調製/取り扱い/保存/計量管理
この研究では、モクラビモドのトレーサビリティは、保存から対象への分配または廃棄までの任意のステップの間のモクラビモドの各個単位の所在を定め、特定する能力として定義される。これはまた、研究現場で対象を特定する能力、ならびにモクラビモドと接触する生成物および材料に関するすべての関連データの所在を定め、特定する能力も含意する。
【0355】
モクラビモドの計量管理は、研究施設において文書化される。計量管理に関する詳細な説明は、薬事マニュアルに提供される。
【0356】
国際ガイドラインに従って、資金提供者は、世界中で調剤されたすべての製品の記録を保持する。製造設備および研究現場でのモクラビモドの調製に使用されたすべての廃棄材料は、現地の規制に従って継続的に処分される。
【0357】
対象のトレーサビリティは、研究現場での対象番号を含む対象の身元情報(identity)を文書化することによって確実にされる。対象の身元情報は保護され、研究現場で彼らの完全な身元情報と紐づけることができるコード番号によってのみ識別される。製造から臨床現場への輸送までのモクラビモドバッチのトレーサビリティは、医薬品製造受託機関の手順によって確実にされる。研究現場でのモクラビモドのトレーニングは、モクラビモドの計量管理ログを保持することによって確実にされる。
【0358】
製剤化、外見、包装および標識
モクラビモドは、即時放出形態として経口投与のためのハードゼラチンカプセル剤として調製される。原薬に加えて、カプセルは、以下の標準的な薬局方賦形剤を含有する:マンニトール;結晶セルロース/セルロース、微結晶;デンプングリコール酸ナトリウム;ステアリン酸マグネシウムおよびコロイド状二酸化ケイ素/シリカ;コロイド状無水物。
【0359】
ハードゼラチンカプセル剤は、サイズ#4の不透明ピンク色(スウェーデンではオレンジ色)のカプセルに白色からオフホワイト色粉末を含有する。
【0360】
包装は、HDPEボトルであり、各ボトルは、30個のカプセル剤、すなわち10日間分の処置を含有する。
【0361】
製品の保存および安全性
利用可能な安全性データは、5℃/周囲RHで保存したモクラビモド1mgハードゼラチンカプセル剤が、HDPEボトルに包装した場合48ヶ月間安定であり、PVC/PCTFE/PVC(Aclar)ブリスターパックに包装した場合、24ヶ月間安定であることを示している。
【0362】
さらに、モクラビモド1mgハードゼラチンカプセル剤は、25℃/60%RHでの保存後、HDPEボトル中で36ヶ月間安定である。薬品はまた、40℃/75%RHで両方のHDPEボトルに包装した場合に6ヶ月間安定である。
【0363】
以前のおよび併用薬物治療および治療
研究介入に加え、研究の間に使用したすべての併用処方薬物治療は、併用と考える。以下の併用薬物治療は、電子症例報告フォーム(eCRF)に記録するべきである:
・GVHDの処置のための薬物治療
・抗感染症薬物治療の予防的または先制的使用を含む、感染症の処置のための薬物治療
・疾患再発の処置のための薬物治療
・他の報告されたAEの処置のための薬物治療
・モクラビモド群におけるシクロスポリンAおよびメトトレキセート以外の免疫抑制薬物治療の移植後の予防的使用
・前処置により誘導されるAEに対する予防のための薬物治療
・追加の造血幹細胞移植
・ドナーリンパ球注入
・造血成長因子
・ワクチン接種
【0364】
GVHD不在下でのコルチコステロイドによる移植後免疫抑制療法は、医学適応でない限り、回避するべきである。
【0365】
モクラビモド群の対象は、シクロスポリンAおよびメトトレキセートに基づくGVHD予防法のための免疫抑制レジメンをおよそ6ヶ月間受ける。漸減および離脱は、臨床現場の施設実務に従って行われる。
【0366】
シクロスポリンAおよびメトトレキセート以外のGVHDに対する移植後予防は、モクラビモド群では認められない。
【0367】
サイトメガロウイルス(CMV)による感染症を防止するために、CMV陽性であるかまたはCMV陽性ドナーを有する患者は、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、レテルモビルおよびホスカルネットを含む予防的処置を投与されてもよく、すべての患者は、定期的な定量的PCRモニタリングに供される。
【0368】
予防的CMV処置の場合、以下の投薬スケジュールが推奨される(0日目はHSCTの日である):
・-9日目~-2日目:ガンシクロビル5mg/kg IV q12h。
・4日目~20日目:ホスカルネット90mg/kg IV q24h。
・21日目から100日目まで:バルガンシクロビル900mg PO毎日、週に5日、またはガンシクロビル5mg/kg IV q24h、週に5日。
・投薬量は、腎機能に応じて調整される。
【0369】
定量されたウイルスDNAレベルがCMV処置のための施設閾値(研究への参加前に各研究センターで確立された通り)を超える場合、患者は、ガンシクロビル(推奨用量5mg/kg IV q12h)またはバルガンシクロビル(推奨用量900mg PO1日2回)で先制的に処置されるべきである。
【0370】
エプスタイン・バーウイルス(EBV)による感染を防止するため、EBV陽性であるかまたはEBV陽性ドナーを有する患者は、定期的な定量的PCRモニタリング後、適応であった場合、適当な(先制的)処置に供されるべきである。定量されたウイルスDNAレベルがEBV処置のための施設閾値(研究への参加前に各研究センターで確立された通り)を超える場合、患者は、リツキシマブで処置されるべきである。また、過去にEBV陽性であった患者がリンパ節の肥大を示す場合、EBVについてのPCRが低または陰性であっても、リツキシマブの開始が推奨される。
【0371】
以下のスケジュールが推奨される:
・EBV DNAの上昇が検出された直後、リツキシマブ(抗CD20)375mg/m IVを週に1回、EBVについてのPCRが陰性になるまで開始する。
・臨床症状に基づいてPTLDが疑われる場合、胸部、腹部および骨盤のCTスキャン、ならびに骨髄穿刺および生検、ならびに可能な場合、リンパ節生検を行うべきである。CTスキャン、骨髄検査およびリンパ節の結果がPTLDを示す場合、リツキシマブを少なくとも2週間にわたって毎週繰り返す。
【0372】
他のウイルス、真菌および細菌予防は、現地の施設ガイドラインに従って与えられる。
【0373】
KRP203が、CYP3A4および2D6によって限られた程度にしか肝臓で代謝されないと予想されること(in vitroデータに基づいて)、ならびにシトクロームP450酵素および輸送体に対するKRP203およびKRP203-Pの効果の欠如を考慮し、KRP203およびCsAまたはTACまたは他の類似の併用薬物治療のPK DDIのリスクは低いと考える。肝CYP3A4に対するシクロスポリンの弱い阻害効果は、KRP203のPKに関連する影響を及ぼす可能性は低い。結果として、薬物-薬物相互作用(DDI)は排除できないとしても、とりわけ、CsAまたはTACのPKを変更しうる他の併用薬物治療のために、KRP203のPKよりもCsAまたはタクロリムス(TAC)のPKが影響を受ける可能性はより高い。
【0374】
それにも関わらず、保守的な理由で、KRP203をCsAまたはTACと組み合わせる場合、注意を払う必要がある。KRP203がCsAまたはTACと同時投与される試験(例えば、研究CKRP203A2105)において、KRP203およびKRP203-PのPK特性は、ならびにCsAおよびTACの濃度は、DDIリスクを低減するために継続的に評価した。
【0375】
治験計画
研究相
各対象の試験は、4相:
・告知に基づく同意
・スクリーニングおよび登録相
・処置相
・HSCT後24ヶ月の時点でのEOT訪問フォローアップ相
からなる。
【0376】
処置相
処置相は、モクラビモド群のHSCT前-11日目の相IMPレジメンの開始から、最後のIMP摂取までに対応する。対照群における処置相は、HSCTの当日に開始し、HSCT後1年までである。
【0377】
モクラビモド群に登録された対象は、毎日3個のカプセル剤をHSCT後1年間摂取する。前処置後に医学上の理由(例えば、感染、AEモニタリング)でHSCTが計画通りに行えなかった場合、追加の7日間のウィンドウが許容される。
【0378】
0日目に、対象はHSCTを受ける。最後のIMP摂取は、モクラビモド群の処置の終了時点に対応する。
【0379】
処置相は、前処置およびHSCTの施設実務に従って、外来患者設定で開始し、その直後に、入院患者(入院)設定となる。対象は、前処置レジメンの開始から研究者の決定により退院するまで、入院する。したがって、処置相は、HSCT前、ならびにHSCT前-6、-5、-4および-3日目に前処置が投与される前の-11日目に開始する。
【0380】
有効性評価
標準治療研究手順
適格対象は、モクラビモド群または対照群のいずれかに無作為化される。両群の対象は、臨床ケアの一般標準の一部として前処置レジメンの後、HSCTを受ける。この節では、前処置レジメンおよびHSCT手順について記載する。
【0381】
前処置レジメン
すべての患者は、HSCT前に前処置レジメンを受ける。
【0382】
以下の前処置レジメンのうちの1つが投与される(日数は、HSCTの当日に対するものである)。これらの前処置レジメンからの予定の逸脱は主任研究者および研究の医療監視者間で議論される。
・フルダラビン;30mg/m IVを1日1回、-8~-4日目の5日間(150mg/m
・チオテパ;5mg/kgIVを1日2回、-7日目の1日間(10mg/kg)
・メルファラン;60mg/m IVを1日1回、-2および-1日目の2日間(120 mg/m)。
【0383】
患者の状態および/または現地の実務に合わせるために、前処置レジメンにおける用量変更が可能である。
【0384】
施設実務に従って、以下の3つの前処置レジメンが、本明細書の上で記載した標準レジメンの次に可能である:
・メルファランはブスルファンに置換することができる。
・チオテパはシクロホスファミドに置換することができる。
1. ブスルファン+フルダラビン+シクロホスファミド:
- ブスルファン110mg/m IV、-7~-4日目(440mg/m
- フルダラビン25mg/m、-6~-2日目の5日間(125mg/m
- -3日目および-2日目にシクロホスファミド14.5mg/kg IV(29mg/kg)
2. ブスルファン+フルダラビン+チオテパ:
- -5日目~-3日目にブスルファン3.2mg/kg/日IVを3日間(9.6mg/kg)
- フルダラビン50mg/m/日IV、-5~-3日目の3日間(150mg/m
- チオテパ5mg/kg/日IV、-7および-6日目の2日間(10mg/kg)
3. メルファラン+チオテパ+フルダラビン:
- メルファラン100または140mg/m IV、-6日目
- フルダラビン40mg/m IV、-5~-2日目の4日間(160mg/m
- チオテパ5~10mg/kg IV、-7日目
(日数は、HSCTの当日に対するものである)
【0385】
疾患評価
rGRFSは、有効性評価のための主要エンドポイントである。無憎悪生存および再発の累積発生率は、有効性評価のための二次エンドポイントである。
【0386】
AML血液疾患のステータスは、再発が既に確認されていない限り、スクリーニング訪問、3ヶ月目、6ヶ月目および12ヶ月目の処置訪問、18および24ヶ月目のフォローアップ訪問時にBM生検または穿刺によって形態学的に現地の研究室で評価する。AML疾患評価はまた、再発が疑われる場合にも実施される。
【0387】
形態学的再発は、骨髄または他の髄外部位における白血病の形態学的証拠として定義される。
【0388】
再発または疾患進行の詳細は、eCRFの再発/疾患進行評価の頁に記録される。
【0389】
骨髄生検を得ることができない場合、骨髄穿刺に置き換えてもよい。骨髄穿刺および/または生検が計画訪問前6週間以内に既に得られている場合、評価を繰り返す必要はない。加えて、HSCT後に再発が疑われる場合、診断を支持するためにキメリズムが評価される。
【0390】
移植片対宿主疾患評価
GVHD事象は、表3にまとめられる通り、NIH基準に基づいて診断および分類される(Filipovich et al., Biol Blood Marrow Transplant. 2005 Dec;11(12):945-56;Jagasia et al., Biol Blood Marrow Transplant 2015 Mar;21(3):389-401.e1)。
【0391】
【表4】
【0392】
急性GVHDは、修正Glucksbergスケールに従って等級付けされる(Harris et al., Biol Blood Marrow Transplant 2016 Jan;22(1):4-10)(下記を参照されたい)。慢性GVHDは、表3にまとめられる通り、NIH基準に基づいて等級付けされる(Filipovich et al., Biol Blood Marrow Transplant. 2005 Dec;11(12):945-56;Jagasia et al., Biol Blood Marrow Transplant 2015 Mar;21(3):389-401.e1)(下記を参照されたい)。可能であると考えられる限り、組織生検を得て、GVHD診断の診断を確認し、その重症度を評価する。しかしながら、急性および慢性GVHDは依然として臨床診断であり、これは、生検による確認がなくても診断および処置された場合には存在すると考える。
【0393】
開始日、終了日、NCI CTCAE重症度グレード、GVHDグレード、転帰および取られた対応を含む、すべてのGVHD事象の詳細は、eCRFのGVHD AEの頁に記録される。慢性GVHD事象の場合、全身免疫抑制処置が必要であるかどうかも記録される。GVHD事象の開始日は、GVHD処置の開始日またはGVHDの生検確認日のいずれか早い方として定義される。GVHD事象の解消は、完全奏功、すなわちすべての徴候および症状の解消として定義される。
【0394】
死亡率
対象の死亡後、以下の情報をeCRFに記録しなくてはならない:
・死亡日
・死亡原因(詳細)
・以下の死亡原因への研究者分類:
・疾患再発
・疾患進行
・疾患再発または疾患進行以外の原因に起因した死亡として定義される移植関連死亡(TRM)。
【0395】
すべての死亡原因は独立した判定に供される。
【0396】
生活の質
細胞療法骨髄移植認定財団質問票(FACT-BMT、バージョン4およびMDアンダーソン症状評価票(MDASI)を、スクリーニング、+14日目、+28日目、+60日目、3ヶ月目、6ヶ月目、12ヶ月目および24ヶ月目の時点でスコアリングする。ただし、現地の言語への認証された翻訳が利用可能である。
【0397】
統計学的考察
統計学的仮説
下記に概説する統計分析の技術詳細を提供する別々の統計分析計画(SAP)を用意し、研究データ分析前に認可を受ける。これらの分析からの偏差は、臨床研究報告において正当付けられる。
【0398】
主要エンドポイントrGRFSについて、目的は、活性群における危険率が対照群における危険率と有意に異なるかに焦点を当てる。したがって、帰無仮説および対立仮説は、
危険比モクラビモド/対照=1
危険比モクラビモド/対照≠1
である。
【0399】
サンプルサイズ決定
主要エンドポイント、rGRFSに対して、12ヶ月rGRFSは、対照群において最大40%に対してモクラビモド群において少なくとも60%(危険比は0.55)となると予測される。この大きさの処置効果のためには0.8の検定力が必要であり、両側有意レベルは0.05に設定する。
【0400】
これらの仮定に基づいて、必要なサンプルサイズは、140名の対象であり、rGRFSの最終分析を行うために116例の事象が必要である。途中離脱および1年時点でのフォローアップの亡失を補償するため、合計で160名の対象をこの研究に登録する。
【0401】
分析のための集団
無作為化されたすべての登録患者を分析に含める。以下の分析データセットを識別する:
【0402】
処置意図(ITT)集団
ITT集団は、すべての無作為化された患者からなる。ITT集団は、主要および二次エンドポイントのための一次有効性データセットである。
【0403】
修正処置意図(MITT)集団
MITT集団は、HSCTおよびモクラビモド(活性群)、または少なくとも1用量のGVHD要望(対照群)を受けたすべての無作為化された患者からなる。
【0404】
パープロトコル(PP)集団
データベースをロックする前に、資金提供者は、PP集団を、重大なプロトコル逸脱のないMITT集団の患者のサブセットとして定義する。PP集団は、(1)ITT集団の一次分析が有意差に達しなかった潜在的理由に光を当てるか、または(2)重大なプロトコル逸脱が処置利益の大きさに対してどのように影響を有しえたかを調査するために使用される。「重大な」プロトコル逸脱の定義は、処置割当てに盲検化されたチームによって合意され、そのような重大な逸脱のすべての例は、データベースロックの前に判定される。
【0405】
安全性集団
安全性集団は、HSCTを受けたすべての患者からなる。
【0406】
統計分析
一般手法
事象エンドポイントまでの時間について、Kaplan-Meier曲線、ログランク検定およびCox比例ハザードモデルを含む標準的な統計法を使用する。比例ハザードの仮定を試験する。すべての分析を形態学的完全寛解ステータス(CR1対CR2)によって階層化する。
【0407】
二元エンドポイントについて、処置群をCochran-Mantel-Haenszel検定により比較し、CR1対CR2によって階層化する。これらのエンドポイントに対する予後因子の影響を、ロジスティック回帰モデルにより評価する。
【0408】
別に指定されない限り、記述統計量(累積発生率または目的の事象のない患者の割合)は、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月および24ヶ月の時点での事象までの時間エンドポイントで表される。95%信頼区間は、処置コントラストについて計算する。
【0409】
主要有効性エンドポイントおよび二次エンドポイントについて、以下の欠測データ取り扱い戦略を使用する:
・欠測値の補完は行わない。
・いかなる理由でも「管理上の」打ち切りはない、すなわち、すべての事象を分析に使用する。唯一の打ち切られる観察は、目的の事象を経験していない患者についてである。例えば、疾患再発または疾患進行に起因して死亡した患者は、TRMの時間の分析においては打ち切られる。
【0410】
主要有効性エンドポイントの分析
研究の主要エンドポイントは、事象までの時間変数として処理されるrGRFSである。一次有効性分析のための主要な手法は、処置割当て手順を反映する無作為化試験である。無作為化試験は、Sという多数のシミュレートされた試験に基づき、そこで処置は、同じ最小化アルゴリズムを使用して、研究に実際に参加する患者に再割当てされる(同じ参加順で)。各シミュレートされた試験は、乱数発生装置の異なるシードを使用する。Δという試験統計は、実際の試験数(Δobs)および各シミュレートされた試験(Δi、i=1,…,S)について計算する。無作為化試験の有意性確率(P値)は、帰無仮説下でのΔの経験的分布から直接計算する。sは|Δi|≧|Δobs|となるΔI_の数である。両側無作為化P値はs/Sに等しい。シミュレートされた試験Sの数は、P値が有効数字2桁まで正確に推測されることを確実にするように選択される(Buyse M., Stat Med. 2010 Dec 30;29(30):3245-57)。
【0411】
二次エンドポイントの分析
二次エンドポイントは、Hochberg手順を使用して有意性について試験する。行う手順は、以下の通りである:p1、p2、p3およびp4を4つの二次エンドポイントの各々についての試験のp値とする。p1≧p2≧p3≧p4。αを、分析に適切な有意性レベル(例えば、5%)とする。p1≦αの場合、すべての4つの二次エンドポイントは、有意な処置効果を示す。p1>αかつp2≦α/2の場合、p2、p3およびp4に対応するエンドポイントは、有意な処置効果を示す。p1>α、かつp2>α/2、かつp3≦α/3の場合、p3およびp4に対応するエンドポイントは、有意な処置効果を示す。Ip1>α、かつp2>α/2、かつp3>α/3、かつp4≦α/4の場合、p4に対応するエンドポイントは、有意な処置効果を示す。p1>α、かつp2>α/2、かつp3>α/3、かつp4>α/4の場合、いずれの二次エンドポイントも有意な処置効果を示さない。
【0412】
略号一覧および用語の定義
AMLおよび関連前駆腫瘍の世界保健機構(WHO)2016分類(Arber DA, Semin Hematol. 2019 Apr;56(2):90-95)。
【0413】
【表5-1】
【0414】
【表5-2】
【0415】
その他
疾患リスク指数(DRI)
DRIは公有であり、したがって、公共用途に利用可能である(Armand P., et al. Validation and refinement of the Disease Risk Index for allogeneic stem cell transplantation. Blood. 2014; 123(23): 3664-3671)。
【0416】
【表6】
【0417】
血液・骨髄移植のための欧州グループ(EBMT)リスクスコア
EMBTリスクスコアは公有であり、したがって、公共用途に利用可能である(Gratwohl A. The EBMT risk score. Bone Marrow Transplant. 2012; 47(6):749-56)。
【0418】
【表7】
【0419】
Glucksberg急性移植片対宿主(GVHD)スコア
Glucksberg急性GVHDスコアは公有であり、したがって、公共用途に利用可能である(Gratwohl A. The EBMT risk score. Bone Marrow Transplant. 2012; 47(6):749-56)。
【0420】
皮膚
ステージ0:活性な(紅斑性)GVHD発疹なし
ステージ1:体表の<25%に関与する斑状丘疹状皮疹
ステージ2:体表の25~50%に関与する斑状丘疹状皮疹
ステージ3:体表の>50%に関与する斑状丘疹状皮疹
ステージ4:全身性紅皮症(体表の>50%)+水疱形成および落屑(体表の>5%)
【0421】
肝臓
ステージ0:ビリルビン<2mg/dL
ステージ1:ビリルビン2~3mg/dL
ステージ2:ビリルビン3.1~6mg/dL
ステージ3:ビリルビン6.1~15mg/dL
ステージ4:ビリルビン>15mg/dL
【0422】
上部消化管(GI)
ステージ0:吐き気、嘔吐または食欲不振なしまたは間欠性
ステージ1:持続性の吐き気、嘔吐または食欲不振
ステージ2:n/a
ステージ3:n/a
ステージ4:n/a
【0423】
下部GI(成人について下痢便量/日)
ステージ0:<500mL/日または<3回のエピソード/日
ステージ1:500~999mL/日または3~4回のエピソード/日
ステージ2:1000~1500mL/日または5~7回のエピソード/日
ステージ3:>1500mL/日または>7回のエピソード/日
ステージ4:腸閉塞またはひどい血便ありまたはなしの重度の腹痛(便量に関わらない)
【0424】
【表8】
【0425】
国立保健研究機構(NIH)慢性GVHDスコア
NIH慢性GVHDスコアは公有であり、したがって、公共用途に利用可能である(Filipovich et al. National Institutes of Health consensus development project on criteria for clinical trials in chronic graft-versus-host disease: I. Diagnosis and staging working group report. Biol Blood Marrow Transplant. 2005;11(12):945-56;Jagasia et al. National Institutes of Health consensus development project on criteria for clinical trials in chronic Graft-versus-Host Disease: I. The 2014 Diagnosis and Staging Working Group report. Biol Blood Marrow Transplant. 2015;21(3):389-401)。
【0426】
慢性GVHDのためのNIH包括的スコアリングシステムは、患者の機能状態に対する慢性GVHDの臨床効果を反映する。8つの器官または部位(皮膚、口、眼胃腸管、肝臓、肺、関節および筋膜、ならびに生殖管)が、包括的スコアを計算するために考察される。提案された包括的スコアリングに含まれる要素は、関与する器官または部位の数、および各罹患器官内での重症度スコアの両方を含む。パフォーマンスステータススコアリングは、包括的スコアリングシステムに組み込まれない。軽度、中等度および重度の包括的記載は、慢性GVHDに起因した器官への影響および機能不全の度合いを反映するように選択した。包括的スコアリングシステムは、慢性GVHDの診断が(1)診断特徴の存在、または診断特徴が存在しない場合、(2)任意の部位からのGVHDの組織学、放射線学または臨床的証拠によって支持される診断を有する慢性GVHDの少なくとも1つの明白な出現のいずれかによって確認された後にのみ適用することができることに留意したい。
【0427】
・軽度慢性GVHD:
○1以下のスコアの1または2つの器官の関与+肺スコア0
・中等度慢性GVHD:
○1以下のスコアの3以上の器官の関与または
○2のスコアの少なくとも1つの器官(肺ではない)または
○肺スコア1
・重度慢性GVHD:
○3のスコアの少なくとも1つの器官または
○2または3の肺スコア
【0428】
【表9】
【0429】
[実施例3]
KRP203はマウスにおいて慢性GVHDを防止する
方法
KRP203が慢性GVHDの発症に対して有益な効果を有するかを調査するために、臨床的に関連する十分確立された皮膚性慢性GVHDのマウスモデルを使用した。簡潔に述べると、Balb/cマウスは、5.5~6Gyの全身照射(TBI)による前処置を受け、その後、慢性GVHDを誘導するための、同種B10.D2ドナー由来の2.5×10脾細胞を補充した8×10骨髄(BM)の静脈注射が続いた。GVHDなしの対照は同系Balb/cマウス由来のドナー細胞を受けた。GVHD群の一部のレシピエントは、-1日目(すなわち、0日目の骨髄移植(BMT)および慢性GVHD誘導の1日前)に開始して、最終分析まで3mg/kg KRP203を受けた。慢性GVHDを、BMT後42日目まで異なる時点で評価した。慢性皮膚GVHDの古典的な病理学的変化、例えば、毛包の減少および線維症を、収集した皮膚サンプルにおいて分析した。
【0430】
KRP203による処置が、確立された慢性GVHDを軽減しうるかを調査するために、同種マウスを、21日目から42日目まで3mg/kg KRP203で処置した。一部の同種マウスはビヒクルを受けた。GVHDなしの対照は同系BALB/cマウス由来のドナー細胞を受けた。
【0431】
慢性GVHDを、全生存、GVHDスコア、慢性GVHD皮膚スコア、涙液排泄検査、皮膚および涙腺の組織学的分析、ならびに皮膚および涙腺のSircolコラーゲンアッセイによって評価した。免疫細胞輸送に対するKRP203の効果を、脾臓、皮膚および涙腺の免疫細胞表現型決定の分析によって分析した。
【0432】
結果
慢性GVHDの予防法としてのKRP203
GVHDレシピエントの皮膚病理を0~42日目に評価した。-1日目に開始して予防的処置としてKRP203を受けたマウスは、慢性GVHDにより引き起こされた病理学的皮膚変化を示さず、毛皮はいずれのGVHDなしの対照レシピエントとも異なり正常な外見であった(図4A)。これは、-1日目以降にビヒクル処置を受けた慢性GVHDを患うマウスとは対照的であった。これらのマウスは、病理学的皮膚変化および目に見える脱毛を伴って慢性GVHDを罹患した。結果として、それらの皮膚臨床スコアは、慢性GVHD予防法としてKRP203を受けたマウスと比較して増加した。さらに、骨髄移植後42日目に実施して涙液生成を決定するためのシルマー試験は、ビヒクルを受けたGVHDマウスにおいて低い試験結果(<5mm)を示し、重度のドライアイを伴う眼性慢性GVHDの診断を支持する(図4B)。KRP203による予防的処置は、この状態を改善した。
【0433】
まとめると、これらのデータは、KRP203が、慢性GVHDのための予防的処置として使用することができ、臨床病理を低減し、生存を改善したことを示す。
【0434】
結論
-1~42日目(すなわち最終分析)のKRP203処置は、遺伝的にミスマッチのドナー由来の骨髄およびT細胞を受けたマウスにおける慢性GVHDの発症を防止するのに効果的であった。これは、KRP203による長期間の処置が、生活の質を向上し、移植転帰を改善するのに有益であることを示す。
【0435】
[実施例4]
S1P受容体調節剤を含む医薬組成物の調製
12種の賦形剤を、KRP203(S1P受容体調節剤)の適合性研究のために選択した。賦形剤の最適な組合せを選択するため、安定性損失のリスクを考慮して、以下の17種のブレンドを、下記の表4に従って調製した。
【0436】
【表10】
【0437】
[実施例5]
50℃で保存した実施例1の医薬組成物の安定性データ
実施例1の17種のブレンドを、乾燥および湿条件の両方で調製し、所定条件で6週間保存した。17種のブレンドを所定条件で3、6週間保存し、アッセイおよび分解生成物について分析した。
【0438】
【表11-1】
【0439】
【表11-2】
【0440】
【表11-3】
【0441】
乾燥および湿状態の一般ブレンド(generic blend)はいくらかの不適合性を示し、分解の程度は、湿条件の場合により明白であった。したがって、湿式造粒は開発のためのプロセスとして選択しなかった。乾燥ブレンドの異なる組合せのうち、ブレンド7、10、16および17は、6週間の終了時点でそれぞれ98.7%、98.4%、99.5%および98.4%のアッセイデータを有し高度に適合性であることが見出された。これらのうち、ブレンド17は、S1P受容体調節剤のカプセル剤または錠剤製剤に必要な賦形剤、すなわち、充填剤、崩壊剤、滑沢剤および滑剤を含みながら、最良の安定性を示したため、選択のうちの最適なブレンドであることが見出された。
【0442】
[実施例6]
本発明による医薬組成物
【0443】
【表12】
【0444】
【表13】
【0445】
以下のプロセスを使用して、1mg KRP203カプセル剤のバッチを製造した:
・必要量のKRP203塩酸塩、コロイド状二酸化ケイ素、マンニトール、デンプングリコール酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムを適切に標識した容器/バッグに分注する。
・必要量の結晶セルロースを表7に詳述する通りの5つの別個のサブロットに分注する。
・投入ボトルをVSEに入れる。
・VSEにおいて、結晶セルロースの最初のサブロット、KRP203塩酸塩およびコロイド状二酸化ケイ素を灰色のポリプロピレン容器に添加し、Turbulaミキサー中24rpmで3分間ブレンドする。
・VSEにおいて、ポリプロピレン容器からのブレンドを、500ミクロンメッシュを通してPEバッグにふるい入れる。
・セルロースのサブロット2でポリプロピレン容器をすすぎ、次いで、サブッロト2をPEバッグにふるい入れる。
・ふるいにかけたブレンドを投入ボトルに移す。
・結晶セルロースのサブロット4を、50L IBCに直接ふるい入れる。
・投入ボトルの外側を清浄した後、VSEから取り出す。
・Ezi-dockシステムを使用してブレンドを投入ボトルから50L IBCに移す。
・結晶セルロースのサブロット3を、使用したPEバッグにふるい入れ、次いで、投入ボトルに移す。
・投入ボトルをかきまぜて、投入ボトルが十分にすすがれることを確実にし、次いで、Ezi-dockシステムを使用してセルロースを投入ボトルから50L IBCに移す。
・セルロースのサブロット5を50L IBCにふるい入れる。
・22rpmで18分間ブレンドする。
・ブレンドをPEバッグに取り出し、VSEに移し、500ミクロンメッシュを通して手動でPEバッグにふるい入れる。
・ブレンドをPEバッグから50L IBCに移す。
・事前に秤量したマンニトールを、500ミクロンメッシュを通して手動でふるいにかけ、ふるいにかけたブレンドを50L IBCに添加する。
・22rpmで9分間ブレンドする。
・ブレンドをPEバッグに取り出し、VSEに移し、500ミクロンメッシュを通して手動でPEバッグにふるい入れる。
・ブレンドをPEバッグから50L IBCに移す。
・事前に秤量したデンプングリコール酸ナトリウムを、500ミクロンメッシュを通して手動でふるいにかけ、ふるいにかけたブレンドを50L IBCに添加する。
・22rpmで5分間ブレンドする。
・事前に秤量したステアリン酸マグネシウムを、500ミクロンメッシュを通して手動でふるいにかけ、ブレンドを50L IBCに添加する。
・22rpmで5分間ブレンドする。
・ブレンドを取り出し、標識した二重ポリエチレンバッグに入れる。
・カプセル化のためのビルディング6に移す。
・カプセル充填速度法(capsule filling speed challenge)をMG2 Labbyで実施し、開発記録に捕捉する。
・MG2 Labbyカプセル化装置を使用して、カプセル(サイズ4)にブレンド(100mg充填重量)をカプセル化する。インプロセス重量確認を、20個のカプセルに対して20分毎に実施する。
・カプセルを手動で除塵する。
・カプセルを二重PEバッグに封入し、結束バンドで閉じる。
・PEバッグをアルミニウム箔バッグに入れ、ヒートシールで閉じる。
製造は円滑に行われ、問題は起きなかった。
【0446】
[実施例7]
シクロスポリンA(CsA)の短期間または長期間投与によるKRP203処置の効果
方法
マウス:雌B6(H-2b)およびB6D2F1(H-2b/d)マウスを、CLEA Japan(Tokyo、Japan)から購入し、8~12週齢で同種骨髄移植に使用した。すべての動物実験は、施設内動物管理および研究諮問委員会の援助の下で実施した。
【0447】
骨髄移植:B6D2F1レシピエントに、0日目に、致死量の照射(11~13Gy)を行い、MHCハプロ一致B6ドナー由来の5×10個のT細胞枯渇骨髄細胞および1×10個の精製T細胞をi.v.注射した。T細胞の精製およびT細胞枯渇は、マウス汎T細胞単離キットII(Miltenyi Biotec、Auburn、CA)および抗CD90マイクロビーズ(Miltenyi Biotec)を使用してAutoMACS Pro Separator(Miltenyi Biotec)で実施した。移植片対白血病効果を評価するために、5×10個のP815-luc+細胞を幹細胞移植(SCT)の0日目にマウスに注射した。
【0448】
試薬:KRP203(Priothera、Dublin、Ireland)を滅菌水に溶解し、1~3mg/kgの用量で移植後0日目~14、28日目または分析の最終日に経口投与した。25mg/kg/日の用量のシクロスポリンA(CsA;Novartis、Tokyo、Japan)を、移植後0日目~14または28日目まで毎日経口投与した。
【0449】
移植片対宿主疾患の評価:生存を毎日モニタリングし、体重、活動性、姿勢、毛並み(fur texture)および脱毛の5つのパラメーターによるGVHDスコアリングシステムを使用することによって、臨床GVHDを評価した。病理学的スコアリングのために、組織サンプルを10%ホルマリン中で固定し、パラフィンに包埋し、切片にし、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色した。肝臓、腸および皮膚を含む標的組織へのT細胞浸潤を、フローサイトメトリー分析によって評価した。
【0450】
移植片対白血病効果の評価:in vivoにおける生物発光イメージング(BLI)を、移植後毎週行った。マウスに500μg d-ルシフェン(Promega、Madison、WI)を皮下注射し、5分後にin vivoイメージングを行った。IVIS Imaging System ver.4.3.1(Perkin Elmer、Waltham、MA)を使用して、ルシフェラーゼ+細胞を検出した。発光は、ステラジアン(steer radiant)当たり平方センチメートル当たり毎秒フォトン(ph/s/cm/sr)として表される。
【0451】
結果
GVHDを有するマウスは、KRP203処置単独、KRP203+シクロスポリンA短期間(すなわち、14日目まで)、KRP203+シクロスポリンA長期間(すなわち、最終分析までの全観察期間)、またはプラセボのいずれかを受けた。GVHDなしの対照マウスは、T細胞を含まないT細胞枯渇骨髄のみを受けた。シクロスポリンAの短期間適用は、長期間CsA処置と比較して生存利益を示さなかった一方、KRP203処置単独を受けたGVHD+マウスは、最高の生存を有した(図5A)。T細胞を受けなかったどのGVHDなしの対照マウスも移植片対白血病(GVL)効果を有さず、したがって、この群における腫瘍成長は最高であり、最終的にすべてのマウスが白血病のために死亡した(図5B)。GVHDを有するマウスのうち、腫瘍成長は、KRP203処置単独を受けた群で最良に制御され、この群では白血病死亡は記録されなかった。腫瘍数の定量化は、KRP203上への短期間シクロスポリンAが、KRP203処置上への長期間シクロスポリンAと比較して、より少ない腫瘍細胞となったことを示した。マウスは、GVHDで死亡しなかった。これらのデータは、シクロスポリンAが、GVHDを損なうことなく早期に停止されうるが、KRP203処置が継続される場合、移植片対白血病がより良好であることを示す。
【0452】
結論
腫瘍成長は、KRP203との組合せでの長期間投与と比較して、シクロスポリンAが早期に低減または停止された場合により良好に制御された。
【0453】
[実施例8]
HSCTを受けているAML患者を処置するための臨床研究
本明細書において、同種造血幹細胞移植(HSCT)を受けている成人急性骨髄白血病(AML)患者における補助および維持処置としてのモクラビモドの有効性および安全性を評価するための前向き無作為化二重盲検プラセボ対照多施設第IIb相研究を記載する予測例が提供される。
【0454】
緒言
モクラビモドの使用の理論的根拠
同種HSCTは、AMLのための標準治癒的処置である。同種HSCTの成功した転帰の主な制限は、疾患再発である。移植片対白血病(GVL)は、疾患再発を防止するために重要であり、白血病細胞に対する免疫応答を誘発する、HSCT移植片に含有されるドナーT細胞によって媒介される。所望のGVL効果のオフターゲット効果である移植片宿主疾患(GVHD)は、特に初期管理に対して難治性である場合、依然として、顕著な疾病率および死亡率を伴うHSCTの主な合併症である。新しい戦略は、GVHDを防止しながら疾患再発を低減するために、GVLを維持または再付与するように設計されている。その新規の作用機序により、モクラビモドが所望のGVL効果を保持しながらGVHDを低減する潜在力は、治癒の見込みを維持し、一方、同種HSCTを受けているAML患者における移植関連死亡率および疾病率を低減する有望な方法である。
【0455】
疾患再発、幹細胞生着およびGVHD阻害に対するモクラビモドの正の効果は、以前の前臨床および臨床研究で示されている。成人における血液悪性腫瘍のためのHSCT設定におけるモクラビモドの投薬レジメンは、第Ib相研究CKRP203A2105(ClinicalTrials.gov識別子:NCT01830010)において確立されており、そこでは、モクラビモド(1mg/日または3mg/日)が、様々な免疫抑制GVHD予防的レジメンと組み合わせて、約3ヶ月の処置継続期間にわたって投与された。データは、中軸となる臨床研究を進めて、生存を改善しうる1年間までのより長い処置継続期間にわたる同種HSCTのための補助および維持療法としてのモクラビモドの有効性および安全性を評価することを支持する。
【0456】
今日まで、提案された適応の範囲にわたって認可された対照薬は存在しない。したがって、プラセボ対照設計を、この研究のために選択した。この研究の目的は、1年間の処置期間での、CR1またはCR2にあるAML患者における同種HSCTのための補助および維持療法としての、プラセボと比較したモクラビモド(1mg/日および3mg/日)の有効性および安全性を評価することである。この研究において、モクラビモドまたはプラセボによる処置は、前処置の2日前に開始し、最初の用量の12ヶ月後に終了する。
【0457】
目的およびエンドポイント
【0458】
【表14-1】
【0459】
【表14-2】
【0460】
【表14-3】
【0461】
研究設計
この第IIb相研究は、以下の通り設計する:
・前向き多施設無作為化二重盲検プラセボ対照および並行群研究
・およそ300名の対象を、スクリーニングして、同種HSCTを受けている、CR1またはCR2にあるAMLを有するおよそ249名の対象を無作為化する
・この研究は、北アメリカ、欧州およびおそらくアジア太平洋のおよそ80の研究現場で行われる
・適格対象は、完全寛解ステータス(CR1対CR2)およびGVHDの予防法に使用される処置(CsA対TAC)によって階層化する。自動音声/ウェブ応答システム(IxRS)を無作為化(モクラビモド1mg、モクラビモド3mgまたは一致するプラセボ[1:1:1比])のために使用する
○1mg/日モクラビモド(1mg群):およそ83名の対象が、1mgのモクラビモドを-9日目±1日から最初の治験医薬品(IMP)摂取後12ヶ月まで1日1回経口で受ける
○3mg/日モクラビモド(3mg群):およそ83名の対象が、3mgのモクラビモドを-9日目±1日から最初のIMP摂取後12ヶ月まで1日1回経口で受ける
○プラセボ(プラセボ群):およそ83名の対象が、プラセボを-9日目±1日から最初のIMP摂取後12ヶ月まで1日1回経口で受ける
・対象は、処置遵守を確実にするために、対象の日記にIMPの各投与を記録する必要がある。
・研究継続期間は、以下の相を含むおよそ24ヶ月である:
○スクリーニングおよび登録相(研究処置の開始日またはその前日の無作為化まで最大28日のスクリーニング相)
○二重盲検処置相(前処置の開始の2日前から12ヶ月目の終了、または再発もしくは死亡または忍容されない毒性の開始に起因したもしくは任意の他の理由に起因した処置の終了まで)。
○RFSフォローアップ相(研究処置を早期に中止したが、再発も死亡もしなかった対象について;12ヶ月目の終了まで)
OSフォローアップ相(12ヶ月での処置の終了、またはRFSフォローアップ相の終了時、または再発のいずれかから追加の12ヶ月にわたる無処置期間)
○対象は、無作為化のための地固めの開始およびIMPの投与の開始の2日前に入院し、その後、前処置レジメンおよび同種HSCT(0日目)が続く。HSCT後の入院の長さは、対象の状態、研究者の判断および現地の実務に依存する
・研究は、以下の訪問からなる:
○スクリーニングおよび無作為化相:研究処置の開始前28日以内のスクリーニング訪問;研究処置の開始日またはその前日に無作為化。
○二重盲検処置相:
- 地固めの開始前2日目(前処置レジメンの開始2日前に入院、ベースラインおよびIMPの開始)
- モクラビモドPK採血(前処置および最初のIMP投与の24時間後)
- -7日目±1日(前処置レジメンの開始)
- -5日目(モクラビモドPK採血)
- -2日目(CsA/TAC PK採血)
- 0日目(HSCT)
- 14日目±2日
- 1ヶ月目(28日目)±2日
- 2ヶ月目(56日目)±2日
- 3ヶ月目(84日目)±2日
- 4ヶ月目(112日目)±2日
- 5ヶ月目(140日目)±2日
- 6ヶ月目(168日目)±2日
- 7ヶ月目(196日目)±2日
- 8ヶ月目(224日目)±2日
- 9ヶ月目(252日目)±2日
- 10ヶ月目(280日目)±2日
- 11ヶ月目(308日目)±2日
- 12ヶ月目(336日目)±2日(処置の終了[EOT]/早期中止[ED]訪問)
○RFSフォローアップ相
- 二重盲検処置相における通り毎月の訪問
○OSフォローアップ相:
- 13ヶ月目(364日目)±7日(最後のIMP摂取の28日後)
- 15ヶ月目(420日目)±7日
- 18ヶ月目(504日目)±7日
- 21ヶ月目(588日目)±7日
- 24ヶ月目(672日目)±7日(研究の終了[EOS]/ED)
○予定されていない訪問が、必要に応じて設定されてもよい
・安全性の検討は、独立データモニタリング委員会(IDMC)によって実施される。主要エンドポイントの判定は、独立審査委員会(IAC)によって実施される。
・疾患再発または死亡の14例の事象が起こった場合、無益性中間分析を実施する。これは、安全性の知見に起因して早期に停止した処置群が存在しない場合、および少なくとも20名の対象の募集が保留になっている場合のみ実施される。募集は、事象が達成されたら凍結し、分析が完了したら再開する。臨床研究機構(CRO)において専門の非盲検チームが分析を実施し、結果は、無益性群を停止するかしないかを評価し、決定するIDMCと共有される。
【0462】
研究設計の科学的根拠
この研究は、前向き多施設無作為化二重盲検プラセボ対照および並行群研究として設計される。この研究の目的は、同種HSCTを受けている、CR1またはCR2にあるAML患者のための補助および維持処置としての、プラセボと比較したモクラビモド(1mg/日および3mg/日)の有効性および安全性を評価することである。MTX+CsAまたはMTX+TACの現地の標準治療GVHD予防法を使用する。今日まで、提案された適応のために認可された対照薬は存在しない。したがって、プラセボ対照設計を、この研究のために選択して、起こりうる有効性および安全性の変化の大きさを予測的に評価した。
【0463】
処置割当ては、データ収集および研究エンドポイントの評価の間の潜在的バイアスを低減するために、二重盲検処置相全体にわたって研究者、研究の実施に関与した研究チーム、および対象に対して盲検とする。すべての対象がEOT訪問またはRFSフォローアップ相を完了したら、研究データは非盲検とする。
【0464】
疾患再発または死亡の14例の事象が起こった場合、無益性中間分析を実施する。これは、安全性の知見に起因して早期に停止した処置群が存在しない場合、および少なくとも20名の対象の募集が保留になっている(there are at least 20 subjects pending recruitment)場合のみ実施される。無益性中間分析の目的は、3mg群に対する1mg群の有効性を評価して、潜在的に劣る処置への対象の曝露を回避することである。
【0465】
用量の正当付け
この研究において、モクラビモド(1mg/日または3mg/日)またはプラセボによる処置は、前処置の開始の2日前に開始し、最初の研究薬物摂取の12ヶ月後に終了する。
【0466】
モクラビモド(1mg/日+CsAまたは3mg/日+CsAもしくはTAC)の第Ib相研究(CKRP203A2105)において、安全性プロファイルは1mgおよび3mgモクラビモド用量群間で同等であった。モデルに基づくPK/PD分析を、この研究からのデータを用いて実施した。利用可能なデータがまばらであることに起因して、曝露応答分析は、この研究のGRFS有効性エンドポイントに関して1mgおよび3mg用量間での潜在的な差に対する情報をもたらすことができなかった。しかしながら、モデリングおよびシミュレーション分析において、サロゲートエンドポイント絶対リンパ球数(ALC)、CD4+およびCD8+ T細胞数が用量に関連する場合、SOC+CsAと共に与えられた3mg用量でより顕著なCD8+ T細胞数の減少が明らかになった一方、最大または近最大細胞数の減少がCD4+およびALC数について見られた。
【0467】
モクラビモドによる臨床経験は健康なボランティアにおける最大40mgの単回用量ならびに健康なボランティアおよび患者における最大3mg/日の複数回用量を含む。合計325名の健康なボランティアがモクラビモドの第I相プラセボ対照研究に参加し、モクラビモドは十分忍容され、好都合な安全性プロファイルを示した。モクラビモドはまた、潰瘍性大腸炎、亜急性皮膚エリテマトーデスおよびクローン病を有する患者における第II相研究においても十分忍容された。第Ib/IIa相研究において、モクラビモドを、同種HSCTを受けている、いくつかの異なる血液悪性腫瘍を有する患者に最大およそ3ヶ月にわたって投与した。この研究で評価した1mgおよび3mgの両方の用量レベルは、安全性および有効性の点で有意差を示さなかった。しかしながら、患者数は少なく、有効性の結果は、より均質な患者集団におけるより多くのデータを得ることを正当化する。両方の用量でのより多くのデータを集めるために、この第IIb相研究は、1mgおよび3mgの1日用量の2つの異なる用量レベルでモクラビモドを調査する。
【0468】
この研究のために選択した研究集団において、大部分の再発が早期(<1年)に起こり、大部分のGVHD事象が1年までに生じる。したがって、1年の処置継続期間を、本研究のために選択する。
【0469】
第Ib/IIa相研究において安全性および有効性の予備徴候に対する用量依存性効果が観察されなかったため、この研究におけるモクラビモドの投薬は、体重に関連しない。
【0470】
研究集団
組入れ基準
各対象は、この研究に登録するために以下の基準を満たさなくてはならない:
対象の種類および疾患特性
1. 先行する血液疾患(例えば、骨髄異形成症候群)後の続発AMLおよび治療関連AMLを含む、AMLおよび関連前駆腫瘍の世界保健機構2016分類に従って、AML(急性
前骨髄球性白血病を除く)と診断された対象。
2. CR1にあるELN高リスクAMLまたはCR2にある任意の他のAMLを有する対象(血球数回復(count recovery)が不完全な完全寛解[CRi]も許される)。
○完全寛解は、絶対好中球数および血小板数が正常値であり、髄外の白血病の兆候がなく、輸血を繰り返す必要がないことと併せて、白血病クリアランス(骨髄芽球<5%で、循環する末梢芽球がない)として定義される。
○CRiは、絶対好中球数<1,000/μLまたは血小板数<100,000/μLを除くすべての完全寛解基準を満たすと定義される。
3. 以下のパラメーターのすべてを満たして同種HSCTを受けることを計画する対象:
○完全一致した血縁または非血縁ドナー(10/10 HLA一致)の使用、および
○顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)動員末梢血幹細胞の使用、および
○プロトコル認証(骨髄破壊的)前処置レジメンの使用の計画、および
○GVHD予防法としてのMTX+CsAまたはMTX+TAC使用の計画
4. スクリーニング時の平均余命≧6ヶ月。
5. カルノフスキーのパフォーマンスステータス(KPS)≧70%。
性別および年齢
6. ≧18歳および≦75歳の男性または女性
≧65歳の対象は、Sorror(造血細胞移植特異的併存疾患指数[HCT-CI])スコア≦3を有さなくてはならない。
告知に基づく同意
7. 書面での告知に基づく同意を提出し、研究プロトコルおよび手順に従うことができ、その意思がある。
避妊/バリア要件
8. 妊娠可能であり性活動のある女性、および妊娠可能な女性と性的接触のある男性について:研究への参加中、信頼性の高い避妊法(経口避妊薬、避妊薬注射、男性の精管切除、殺精子剤入りコンドームまたは性交抑制)を使用する意思がある。避妊法は、スクリーニング訪問からEOT訪問まで、およびどのような場合にも、IMPの最後の用量後少なくとも6ヶ月にわたって使用される。
女性は、完全な不妊でない限り、初潮後閉経するまで妊娠可能であると考える。女性は、適切な臨床プロファイル(例えば、適切な年齢、血管運動徴候の病歴)で12ヶ月の自然(自発的な)無月経であるか、またはIMP処置の少なくとも6週前に両側卵巣摘出(子宮摘出ありもしくはなし)もしくは卵管結紮の手術を受けている場合、閉経後であり、妊娠可能でないと考える。卵巣摘出単独の場合、女性の生殖ステータスが、フォローアップのホルモンレベル評価によって確認されている場合のみ、彼女は妊娠可能ではないと考える。
妊娠可能な女性は、毎月妊娠検査を受ける意思がなくてはならない。
9. 性活動のある男性は、スクリーニング訪問からIMPの最後の用量の少なくとも6ヶ月後まで、性交の間にコンドームを使用しなくてはならず、この期間に子供の父親となるべきではない。精管切除した男性も、精液を介したIMPの送達を防止するためにコンドームを使用する必要がある。
他の組入れ
10. 国民健康保険制度への加入(適用可能な現地の要件に従う)。
【0471】
除外基準
以下の基準のうちのいずれかを満たす対象は研究から除外する:
以前の/併用療法
1. GVHD予防法のための抗胸腺細胞グロブリン(ATG)、移植後シクロホスファミド、またはミコフェノール酸モフェチルの使用の計画。
2. ATGおよびアレムツズマブを含む前処置の間の血清療法の使用の計画。
3. T細胞枯渇またはCD34+選択を含むex vivo大移植片操作の計画。
4. 以前に同種HSCTを受けたことがある対象または実質臓器移植のレシピエント。
5. 無作為化の前4週間以内のワクチン接種。
6. 併存疾患のための免疫抑制薬物。対象は、研究の処置開始前少なくとも3日間、プレドニゾン(>10mg/日)または他の免疫抑制薬物治療を休止することが可能でなくてはならない。ヒドロコルチゾンの生理学的置換投薬は許容される。
7. 無作為化前4週間以内の大手術または完全に治癒していない大きな創傷。
8. 心機能不全には以下の処置のいずれかが必要である:
○心伝導を損なう薬物治療(例えば、ベータ遮断薬、ベラパミル型およびジルチアゼム型カルシウムチャネル遮断薬または強心配糖体)による処置、または
○それらが研究の継続期間にわたって永続的に中止できるのでない限り、QT間隔を延長することが公知の薬剤の併用、または
○キニジンによる処置。
医学的状態
9. 急性前骨髄球性白血病を有する対象。
10. 皮膚の限局性基底細胞癌もしくはin-situ子宮頚がんと診断された、または登録の少なくとも3年前にその悪性腫瘍のための治癒目的の処置(化学療法および/もしくは手術および/もしくは放射線療法)を完了している対象を除く、任意の以前のまたは併存悪性腫瘍の診断。
11. 慢性骨髄白血病の急性転化。
12. ○臨床的に重要な肺線維症
○成功裡に処置された結核の病歴または陽性精製タンパク誘導体(PPD)皮膚反応後の予防処置の病歴を除く結核
○喘息の慢性(毎日)治療を受けている対象
○任意の他の種類の臨床的に重大な閉塞性肺疾患を有する対象
○研究者が評価して管理されていない糖尿病、または糖尿病性腎症もしくは網膜症などの器官障害を合併した糖尿病
○管理されていない発作障害
○管理されていない抑うつまたは自殺企図/念慮の病歴
を含む同時発生の重度および/または管理されていない医学状態。
13. ○試験参加の最後の3ヶ月以内の心筋梗塞、または
○告知に基づく同意にサインする前6週以内のマルチゲート収集(MUGA)スキャンもしくは心臓超音波検査(心エコー)によって測定して駆出分画<40%の左心室機能の低下、または
○安定または不安定虚血性心疾患(IHD)、心筋炎もしくは心筋症の病歴もしくは存在、または
○ニューヨーク心臓病学会(NYHA)クラスII~IVうっ血性心不全、または
○症候性徐脈の病歴もしくは存在を含む不安定心不整脈、または
○安静時心拍数(検診または12誘導心電図[ECG])<60bpm、または
○安全性の重大なリスクを示すECG異常の病歴または現在の診断、例えば、併存する臨床的に重要な心不整脈、例えば、持続性心室頻拍、洞不全症候群もしくは洞房心ブロックを含む臨床的に関連する心伝導の障害の存在、臨床的に重大な房室(AV)ブロック、脚ブロックまたはスクリーニングもしくはベースラインECG時の安静時QTc(Fridericiaが好ましいが、Bazettも許容される)>450msec(男性)および>470msec(女性)、または
○症候性不整脈または処置を必要とするかもしくはその他の臨床的に重大である不整脈の病歴または存在、または
○管理されていない動脈性高血圧;管理されている場合、薬物治療はベースライン訪問前3ヶ月間にわたって安定でなくてはならない、または
○「除外基準 - 以前の/併用療法」で列挙した禁止薬物治療による処置を必要とすること
○心臓由来であることが疑われる卒倒の病歴、または
○家族性QT延長症候群の病歴もしくは多形性心室頻拍の既知の家族歴
によって定義される通りの心機能不全。
14. 室内気に対して酸素飽和度<90%によって定義される肺機能障害。告知に基づく同意にサインする前6週以内の症候性または以前に既知の障害の場合のみ、肺機能検査(PFT)が必要であり、一酸化炭素に対する肺の拡散能(DLCO)および<50%の予測1秒間の努力呼気量(FEV)で補正した肺機能<50%。
15. 重大な肝疾患もしくは肝損傷、またはアルコール乱用の既知の病歴、慢性肝臓もしくは胆管疾患。アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)および/もしくはアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)>2.5×正常条件(ULN);または総ビリルビン>1.5mg/dL、ジルベール症候群に帰する場合<3mg/dLによって定義される肝機能障害。
16. 腎臓病における食事の変更(MDRD)法による推定クレアチニンクリアランス<60ml/分/mを有する腎機能障害
17. スクリーニング前1年以内の卒中または蓋内出血の病歴。
18. 進行中の抗菌療法を必要とし、研究者の判断で、HSCTを進行させるリスクを表す、活性な臨床的に重大な感染(ウイルス、細菌または真菌)。
19. 陽性HIV抗体、B型肝炎表面抗原またはC型肝炎抗原として定義されるヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはB型肝炎ウイルス(HBV)もしくはC型肝炎ウイルス(HCV)への活性な感染の病歴。
20. 授乳しているまたは陽性妊娠検査を有する対象(妊娠可能な女性についてはスクリーニングにおいて、血清妊娠検査が必須である)。
21. モクラビモドの成分(例えば、賦形剤)、前処置レジメン薬剤およびGVHD予防法、ならびにこの研究でおそらく使用される併用薬物治療および治療を含む非治験医薬品(NIMP)のいずれかへの既知のアレルギー。
22. NIMP医薬品についての現地の処方情報に記述される、前処置レジメン薬剤およびGVHD予防法、ならびにこの研究でおそらく使用される併用薬物治療および治療を含むNIMPへの何らかの禁忌。
23. スクリーニングの間の黄斑浮腫の診断。黄斑浮腫の病歴を有する対象は、スクリーニング時の眼科検査で黄斑浮腫を有さないことを条件に研究に参加することができる。
以前/同時発生の臨床研究経験
24. 無作為化前4週以内の別の介入臨床試験への参加、または同時介入臨床試験への参加。
他の除外
25. 研究者の意見で、対象が研究に不適格となる任意の他の条件。
26. 法的保護手段(後見人、受託人または司法の保護)下にある、ならびに/またはこの試験の要件および手順に従うことができないもしくはその意思がない対象。
【0472】
研究処置および併用療法
研究処置は、研究プロトコルに従って研究対象に投与することを目的とした任意の治験処置、市販製品およびプラセボとして定義される。IMPは、モクラビモドおよびプラセボを含む。NIMPは、前処置および標準治療GVHD予防法(MTX+CsAまたはMTX+TAC)のためのHSCTに使用される製品を含む。
【0473】
群毎に投与された治験医薬品
【0474】
【表15】
【0475】
処置群
【0476】
【表16】
【0477】
非治験医薬品
NIMPは、前処置およびGVHD予防法(MTX+CsAまたはMTX+TAC)のためのHSCTに使用される製品を含む。それらは、様々なブランド名でヒト使用のために市販されており、別途記述されない限り、現地の実務に従って投与される。
【0478】
前処置レジメン
すべての患者は、HSCT前に前処置レジメンを受ける。以下の前処置レジメンのうちの1つが投与されることになる。前処置レジメンは、-7日目±1日から開始するべきである。対象の状態および/または現地の実務に合わせるために、前処置レジメンにおける用量およびタイミングの変更が可能である。前処置レジメンにおける投薬量またはタイミングの任意の変更は、研究者および医療監視者間で議論され、電子症例報告フォーム(eCRF)に記録される。
【0479】
以下のレジメンのうちの1つを使用しなくてはならない:
1. メルファラン+フルダラビン+チオテパ
・フルダラビン120~180mg/m静脈(IV)
・メルファラン110~140mg/m IV
・チオテパ5~10mg/kg IV
2. ブスルファン+フルダラビン:
・ブスルファン9.6~12.8mg/kg IV
・フルダラビン120~180mg/m IV
3. ブスルファン+シクロホスファミド:
・ブスルファン9.6~12.8mg/kg IV
・シクロホスファミド 120mg/kg IV
4. ブスルファン+フルダラビン+チオテパ:
・ブスルファン9.6~12.8mg/kgIV
・フルダラビン150~180mg/m IV
・チオテパ5~10mg/kg IV
【0480】
前処置レジメンの成分としてブスルファンが利用される場合、必要に応じた用量調節による適切なPKモニタリングが、施設の標準治療に基づいて実施されるべきである。1日曝露のための提案されるAUC範囲は、3600~6000μM×分(約14.4~24.6mg×h/L)である。投薬頻度(例えば、毎日対q6h)は、研究者の裁量であるが、ブスルファンはすべて静脈内投与しなくてはならない。
【0481】
移植片対宿主疾患予防法
・カルシニューリン阻害剤(CNI)治療
CsAおよびTACは、幹細胞注入前の-1または-2日目に開始するべきである。CNI予防法は、HSCT後少なくとも3ヶ月まで継続するべきであり、施設標準に従って漸減し、GVHDの非存在下でHSCT後6ヶ月までに中止することが目標である。
毒性(高血圧、高血糖、低マグネシウム血症、神経学的合併症など)の適切な臨床モニタリングおよび管理は、施設実務に基づいて行われるべきである。
ケアは、潜在的薬物-薬物PK相互作用(例えば、アゾール抗真菌薬)に基づいて用量を調節するために行われるべきである。
○シクロスポリンA(CsA)
- CsAは、3mg/kg/日IV(1日2回の2ボーラス注入に分割)の用量で開始するべきである。経口投与への変換は、施設実務に基づく変換比で臨床状況に基づいて行われるべきである。経口経路を介してCsAを開始する場合、開始用量は、12mg/kg/日の分割BIDである(Ruutu et al 2014)。
- 薬物モニタリング:CsAトラフレベルは、用量の12時間後(次の予定された用量の投与の直前)に測定し、定期的にモニタリングするべきであり;用量は、HSCT後最初の3~4週間の200~300μg/Lの目標濃度を維持するように調節する。GVHDの非存在下で、用量は、その後100~200μg/Lの濃度に達するまで低減する。
○タクロリムス(TAC)
- TACは、0.02~0.03mg/kg/日(連続注入または1日2回の2ボーラス注入に分割のいずれか)の用量で開始するべきである。経口投与への変換は、施設実務に基づく変換比で臨床状況に基づいて行われるべきである。
- 薬物モニタリング:TACトラフレベルは、用量の12時間後(次の予定された用量の投与の直前)に測定し、定期的にモニタリングするべきであり;用量は、5~10ng/mLの目標濃度を維持するように調節するべきである。
【0482】
・MTX用量/スケジュール:
○+1日目:15mg/m IV1回。
○+3、+6、+11日目:10mg/m IV1回。
○ロイコボリンレスキューの使用が許され、推奨される(MTX用量の24時間後に開始して、6時間毎に3用量与えられるMTXと同じ用量;経口またはIVで与えられる)。
【0483】
クリアランスの低減またはMTX毒性に合わせてこのレジメンの修正が許されるが、医療監視者と議論するべきである。
【0484】
調製、取り扱い、保存および計量管理
この研究で使用されるIMPは、資金提供者または被指名人の標準作業手順(SOP)、医薬品査察共同スキーム(PIC/S)適正製造基準(GMP)ガイドライン、医薬品規制調和国際会議のヒト使用のための医薬のための技術要件(ICH)優良臨床試験基準(Good Clinical Practice)(GCP)ガイドライン、ならびに適用可能な現地の法/規制に従って、資金提供者から資格を受けた者または被指名人の責任下で調製、包装および標識される。製品は、現地の言語で「臨床研究使用に限る」の記載、ならびに現地の規制要件に従って他の必要な情報を標識される。
【0485】
IMPは、使用準備ができた状態で資金提供者または被氏名人によって研究現場に供給される。IMPの投与前にさらなる調製は必要ない。無作為化の際、対象は、二重盲検処置相の訪問間の期間をカバーするのに十分な、自身が割り当てられた処置群に対応するIMPを提供される。IMPは、室温で保存することができる。詳細については薬事マニュアルを参照されたい。
【0486】
利用可能な安定性データは、高密度ポリエチレン(HDPE)ボトルに包装された場合、モクラビモド1mgハードゼラチンカプセル剤およびプラセボカプセル剤が、5℃/周囲相対湿度(RH)で保存された場合48ヶ月;25℃/60%RHで保存された場合36ヶ月、および40℃/75%RHで保存された場合6ヶ月安定であることを示している。
【0487】
受け取ったら、IMPは、薬事マニュアルに特定された保存要件に従って、対象への分配まで臨床現場において現地で保存する。すべてのIMPは、出入りが研究者および認証された現場スタッフに限られる、保護され、環境制御され、モニタリングされた(手動または自動)エリアで、標識された保存条件に従って保存しなくてはならない。
【0488】
IMPの計量管理は、研究現場において文書化される。IMPが対象に分配される度に、これを薬物分配/計量管理ログに記録しなくてはならない。一定間隔で、臨床開発モニター(CRA)が、「薬物調整訪問」を実施し、研究現場に輸送されたすべてのIMPが、受け取り、分配および処分の記録で説明できることを確認する。分配されていない未使用のIMPは、指定のCROの代理人の承認に後にのみ処分してもよく、処分は、完全に文書化されるべきである。あるいは、IMPは、資金提供者に返却してもよい。詳細については薬事マニュアルを参照されたい。
【0489】
EOT時、送達記録を使用および処分または返却した在庫の記録とつき合わせることが可能でなくてはならない。研究者または研究現場がIMPについて説明し、どのような不一致も説明および文書化されることが必須である。
【0490】
バイアスを最小にする手段:無作為化および盲検
各対象は、7桁:4桁の研究現場番号に続き、連番で3桁の個々の対象番号(例えば、0001-001)の対象番号を受け、これは、研究現場でスクリーニング訪問時に割り当てられ、研究全体を通して使用される。
【0491】
無作為化
この研究は、無作為化二重盲検プラセボ対照研究として設計される。対象は、完全寛解ステータス(CR1またはCR2)およびGVHD予防法処置(CsA対TAC)によって階層化され、HSCTのための補助処置として1mg/日もしくは3mg/日のモクラビモドまたは一致するプラセボのいずれかを受けるように無作為化(1:1:1比)される。
【0492】
すべての適格対象は、IxRSを使用して無作為化IMPに一元的に割り当てられる。研究が開始する前に、自動音声応答システム(IVRS)の電話番号および電話連絡の使用法または自動ウェブ応答システム(IWRS)のログイン情報および使用法が各現場に提供される。
【0493】
盲検
処置割当ては、データ収集および研究エンドポイントの評価の間の潜在的バイアスを低減するために、二重盲検処置相全体にわたって研究者、研究の実施に関与する研究チーム、および対象に対して盲検とする。すべての対象がEOT訪問またはRFSフォローアップ相を完了したら、研究データは非盲検とする。
【0494】
疾患再発または死亡の14例の事象が起こった場合、無益中間分析を実施する。これは、安全性の知見に起因して早期に停止した処置群が存在しない場合、および少なくとも20名の対象の募集が保留になっている場合のみ実施される。募集は、事象が達成されたら凍結し、分析が完了したら再開する。臨床研究機構(CRO)において専門の非盲検チームが分析を実施し、結果は、無益性群を停止するかしないかを評価し、決定するIDMCと共有される。
【0495】
各研究現場には、同一包装のIMPを供給する。モクラビモドおよびプラセボカプセル剤は、同一の外見:不透明ピンク色(スウェーデンではオレンジ色)のカプセル、サイズ#4中に白色からオフホワイト色粉末である。
【0496】
緊急非盲検化の手順
IxRSは盲検解除の命令をプログラムされる。緊急の場合、研究者は、対象の処置割当ての非盲検が是認されるかを単独で決定する責任を有する。そのような決定を行う上で、対象の安全性が、常に1番目の考慮事項でなければならない。研究者が非盲検化の是認を決定した場合、研究者は、それにより対象の緊急処置が遅延しうるのでない限り、対象の処置割当てを非盲検化する前に、資金提供者に連絡することにあらゆる努力を払わなければならない。対象の処置割当てが非盲検化された場合、資金提供者は、24時間以内にこのことを通知されなくてはならない。Eメールによる通知により、対象またはインベントリ項目が非盲検化された場合、事前に指定されたeメール受信者に情報を提供することができる。非盲検化の日付および理由は記録しなくてはならない。
【0497】
IMPは、緊急非盲検化後に中止しなくてはならず、対象は、OSフォローアップ相に従う。処置コードが不注意により壊れた対象の場合、または何らかの緊急ではない理由の場合、研究者の裁量でIMPは中止しても、またはしなくてもよい。
【0498】
治験医薬品遵守
対象は、処置遵守を確実にするために、対象の日記にIMPの各投与を記録する必要がある。研究者は、対象に、IMPを処方された通り正確に摂取するよう指導することによって、ならびに対象の安全性および研究の正当性のために遵守が必要であることを説明することによって、遵守を促進するべきである。対象には、何らかの理由で記載された通りにIMPを摂取できない場合、研究者に連絡するように指導する。
【0499】
処置遵守は、これらに限定されないが、IMPのバッチ番号、処置投与の中止/中断の可能性、投与されたIMP単位の総数、および薬事マニュアルに記載された通りIMPを対象に送達した指定された研究員の署名の情報を記録(すなわち、薬物計量管理、投与ログおよび対象のeCRF)に文書化することによって実現される。処方された投薬量レジメンからの逸脱は記録されるべきである。
【0500】
標準治療GVHD予防法曝露:
MTX+CsAまたはMTX+TACの標準治療GVHD予防法の曝露データを収集する。対象が現場で投薬される場合、対象は、MTXおよびCsAまたはMTX+TACを、医療監督下で研究者または資格を受けた研究現場スタッフから直接受ける。現場での投与された各用量の用量、日付および時間、ならびに用量変更(ある場合)の理由は、原文書および関連フォームに記録される。
【0501】
対象が自宅でCsAまたはTACを自己投与する場合、各訪問時に遵守を評価し、原文書および関連フォームに記録する。処方された投薬量レジメンからの逸脱は記録されるべきである。各対象に分配され、各対象によって投与された処置の量の記録は、維持し、遵守記録とつき合わせなくてはならない。処置遅延および/または用量低減の日付を含む処置開始および停止日付もまた、記録する。
【0502】
CsAおよびTACレベルは注意深くモニタリングする。
【0503】
用量修正
研究の間に研究者によって対象に処方され分配されたすべての投薬量およびすべての用量変更が記録される。
【0504】
用量低減(下方用量設定)および用量増加を含むIMP用量修正は、研究の間に可能ではない。
【0505】
IMPは、AEなどの文書化された理由で一時的に中断することができる。IMPの中断を取り巻く状況は、医療監視者と議論されなくてはならず、IMPは、可能な限り早く再開される。これらの変更は、原文書およびeCRFに記録しなくてはならない。
【0506】
研究終了後の治験医薬品の継続評価
モクラビモドは、開発中のIMPであり、結果として、二重盲検処置相完了後、再発後、または対象もしくは資金提供者による研究中止の場合、対象の処置に利用できなくなる。
【0507】
参加後、対象は、現地の臨床実務に従って、すなわち、現地のガイドラインおよび標準治療に従って管理される。
【0508】
過量服用の処置
3個超のカプセル剤の1日用量は、プロトコル逸脱であり、過量服用と考える。過量服用に起因するAEは報告されるべきである。
【0509】
資金提供者は、過量服用のための特定の処置を推奨していない。
【0510】
過量服用の事象では、研究者は、以下を行うべきである:
・医療監視者に直ちに連絡する。
・少なくとも3日間にわたる徐脈事象について12誘導ECGによる対象のモニタリングを増加させる。
・医療監視者と相談し、対象を評価してIMPを中断するべきかを決定する。
・医療監視者から要求された場合(場合に応じて決定される)、最後の用量の日から2日以内にPK分析のための血漿サンプルを得る。
【0511】
過剰用量の量、および過量服用の継続期間を文書化する。
【0512】
併用および禁止薬物治療および治療
対象が登録の時点で受けている、または研究の間に受ける、薬物治療もしくはワクチン(処方箋不要もしくは処方医薬品、ビタミンおよび/またはハーブサプリメントを含む)または治療は、IMP、HSCT、前処置レジメン、およびGVHD予防法のために使用されるMTX+CsAまたはTACを除き、併用と考える。すべての併用薬物治療は、eCRFに記録しなくてはならない。
【0513】
医療監視者は、併用または以前の治療に関して疑問がある場合、連絡を受けるべきである。
【0514】
併用薬物治療および治療
サイトメガロウイルス感染症のための予防的処置
サイトメガロウイルス(CMV)による感染を防止するために、CMV陽性であるかまたはCMV陽性ドナーを有する対象は、施設実務に従って、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、レテルモビルおよびホスカルネットを含む予防的処置を投与されうる。すべての対象は、化学予防戦略に関わらず、定期的な定量的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)モニタリングに供される。
【0515】
CMV予防的処置およびCMV再活性化の処置の適応は、現地のSoCに従うべきである。
【0516】
エプスタイン・バーウイルス感染症のための先制的処置
エプスタイン・バーウイルス(EBV)による感染を防止するため、EBV血清陽性であるかまたはEBV血清陽性ドナーを有する対象は、定期的な定量的PCRモニタリング後、適応であった場合、適当な(先制的)処置に供されるべきである。定量されたウイルスDNAレベルがEBV再活性化の処置のための施設閾値を超える場合、対象は、リツキシマブで処置されるべきである。また、過去にEBV陽性であった対象がリンパ節の肥大を示す場合、EBVについてのPCRが低または陰性であっても、リツキシマブの開始が推奨される。
【0517】
以下のスケジュールが推奨される:
・EBV DNAの上昇が検出された直後、リツキシマブ(抗CD20モノクローナル抗体)375mg/m IVを週に1回、EBVについてのPCRが陰性になるまで開始する。
・臨床症状に基づいて移植後リンパ増殖性障害(PTLD)が疑われる場合、頸部、胸部、腹部および骨盤のコンピュータ断層撮影(CT)スキャン、ならびに骨髄穿刺および生検、ならびに可能な場合、リンパ節生検を行うべきである。PET/CTもまた、診断および応答評価のために考慮されるべきである。CTスキャン、骨髄検査およびリンパ節の結果がPTLDを示す場合、リツキシマブを少なくとも2週間にわたり、応答に基づいて後続の投薬および追加処置と共に、毎週投与するべきである。
【0518】
ヒトヘルペスウイルス6再活性化の先制的処置
ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)PCR予測モニタリングは、対象のリスクおよび治験標準治療に基づいて、研究者の裁量で行われる。HHV-6再活性化はまた、対象が、それ以外に説明されない熱、紅斑性皮疹、生着の遅延、または移植後血球減少、間質性肺炎、脳炎もしくは肝炎を発症する事象でも疑われるべきである。HHV-6関連症状または十分なウイルス負荷(研究者の判断)は、対象の臨床状態および合併性に基づいて、以下の選択肢を含む適切な抗ウイルス療法の開始を促すべきである:
・ホスカルネット90mg/kg IV q2hまたは60mg/kg IV q8h
・シドホビル5mg/kg IV毎週または1mg/kg IV週に3回(プロベネシドと共に)
・ガンシクロビルまたはバルガンシクロビル
【0519】
ドナー選択
HLA同一兄弟姉妹が好ましいドナーである。この選択肢がない場合、DNAベースタイピングに基づいてHLA-A、-B、-C、-DRB1および-DQB1(10/10)で一致した非血縁ドナーが第2選択である。2名以上の好適なドナー選択肢が利用可能な場合、中でもドナーの年齢、性別、ABO適合性、CMV血清状態およびパリティなどの非HLA特性を組み込む、ドナー選択のための施設アルゴリズムを使用するべきである。
【0520】
幹細胞源および移植片注入
高用量造血成長因子動員後の白血球アフェレーシスによって得られた末梢血幹細胞が、好ましい幹細胞源である。最小CD34+細胞用量は2×10個の細胞/レシピエントの体重(kg)であり、目標用量は5×10個の細胞/レシピエントの体重(kg)である。幹細胞移植片は、前薬物治療のための施設の標準実務を使用して、患者に注入されるべきである。
【0521】
新鮮な末梢血幹細胞の注入(PBSC)が好ましいものの、以前に収集した細胞の凍結保存が、COVID-19関連制限などの研究者の制御外の要因に起因して必要な場合があり、これは許容される。
【0522】
造血成長因子
HSCT後造血成長因子の日常的な先制的使用は認められるが、必要ではない。これは、幹細胞注入後最短24時間で開始でき、十分に好中球が回復するまで継続される。
【0523】
他の支持治療
適切な抗菌予防法およびモニタリングが、施設実務に基づいて用いられるべきである。他所に記載されるウイルスモニタリングおよび予防法/先制的治療以外に、研究指定の抗菌予防法レジメンはなく、施設標準を観察するべきである。しかしながら、すべての対象が、患者特有の因子に基づき、HSCT後のタイミングで真菌および細菌生物(少なくとも好中球減少期間の間)、ならびにニューモシスチス(リンパ球減少または免疫抑制療法の間)に対する化学的予防法を受けることが提案される。GVHDを発症した対象は、被包正生物に対する抗細菌予防法(cGVHDの事象における)を含む抗菌予防法の再開または増加を必要としうる。加えて、静脈内免疫グロブリン(IVIg)補充が、研究者の選好に基づいて認められる。
【0524】
汎血球減少症の期間の血液製剤支持の投与は、施設標準を守るべきであるが;しかしながら、顆粒球輸血の日常的な使用は認められない。
【0525】
禁止薬物治療および治療
以下の薬物治療または治療は、研究の間、禁止される:
・寛解維持療法:
○標的処置FLT3阻害剤
○低メチル化剤
○IDH阻害剤
○Bcl-2阻害剤
○HDAC阻害剤
○免疫療法または任意の治験薬物を含む、アロHSCT後の任意の他の維持療法
○再発要望法のためのドナーリンパ球注入(DLI)
- 例えば、MRD陽性疾患の事象におけるDLIの先制的使用は認められない
・GVHD予防法:
○移植前ATG
○移植後シクロホスファミド
○ミコフェノール酸モフェチル
・前処置の間の血清療法の使用:
○ATG
○アレムツズマブ
・CYP3A4阻害剤および誘導剤:
○モクラビモドは、酵素CYP3A4によって主に代謝され、強いCYP3A4阻害剤および誘導剤は、可能な場合回避するべきである。
・生または弱毒生ワクチンは、対象が研究処置を受けている間、および研究処置中止後2ヶ月間は禁止される。
・血圧降下剤
○徐脈はモクラビモドのAESIであるため、カルシウムチャネル遮断薬およびβ-遮断薬などの一般に心拍数の減少をもたらす薬剤は回避するべきである。
○生命を脅かす状況の事象においては、対象の安全性を優先し、これらの薬剤を、研究者の裁量で使用するべきである。
○高血圧の日常的な処置については、可能であれば他のクラスの薬剤を用いるべきである。カルシウムチャネル遮断薬およびβ遮断薬は、他の選択肢が禁忌であり、対象がIMP曝露後に徐脈を示していない場合、医療監視者との議論後に利用することができる。
【0526】
研究完了後の用量選択
安全性の知見が3mg群で観察されない場合、ならびに主要エンドポイントの分析の時点で1mgおよび3mgの間で有効性が同等である場合、3mg/日モクラビモドを、今後の研究および論文投稿のために選択する。
【0527】
有効性評価
疾患評価
AML疾患評価は、骨髄穿刺および/または形態学のための生検によって、再発の確認まで、現地の研究所において訪問時に評価する。AML疾患評価はまた、研究訪問間に生じた再発が疑われる場合にも実施される。形態学的再発のないMRD陽性は、再発とは考えない。髄外の疾患の病歴を有する対象については、レントゲン写真(および/または脳脊髄液[CSF])の評価を疾患評価に含める。
【0528】
形態学的再発は、骨髄における白血病の形態学的証拠(≧5%の白血病性芽球)または末梢血中もしくは他の髄外部位におけるにおける芽球の出現として定義される。再発の詳細は、eCRFに記録される。
【0529】
骨髄穿刺および/または生検が、二重盲検処置相の間もしくはRFSフォローアップ相の間の毎月の訪問間、またはOSフォローアップ相の間の予定された訪問前6週間以内に既に得られている場合、評価を繰り返す必要はない。加えて、アロHSCT後に再発が疑われる場合、診断を支持するためにキメリズムが評価される。
【0530】
二重盲検処置相の間に再発した対象は、IMP処置を中止する。対象はOSフォローアップ相に移行し、さらに12ヶ月にわたって観察される。
【0531】
死亡率評価
死亡率評価は訪問時に行う。
【0532】
対象の死亡後、以下の情報をeCRFに記録しなくてはならない:
・死亡日
・死亡原因(詳細)
・死亡原因の研究者分類:
○白血病再発
○疾患再発または疾患進行以外の原因に起因した死亡として定義される移植関連死亡(TRM)
○その他
【0533】
移植片対宿主疾患評価
GVHD評価は訪問時に行う。全体的なGVHD事象はコンセンサス基準に基づいて分類する。aGVHDはMAGICスケールに従ってグレード決定する(Harris et al 2016)。cGVHDは、国立保健研究機構(NIH)基準に従ってグレード決定する(Filipovich et al 2005;Jagasia et al 2015)。
【0534】
【表17】
【0535】
可能であると考えられる限り、組織生検を得て、GVHDの診断を確認し、その重症度を評価する。しかしながら、急性および慢性GVHDは依然として臨床診断であり、これは、生検による確認がなくても診断および処置された場合には存在すると考える。
【0536】
すべてのGVHD事象の詳細は、eCRFに記録される。cGVHDおよびaGVHD事象について、全身免疫抑制処置の使用が記録される。GVHD事象の開始日は、GVHD処置の開始日またはGVHDの生検確認日のいずれか早い方として定義される。
【0537】
GVHDの処置は、GVHD臓器障害、重症度および患者の臨床状態に基づいて、研究者の裁量による。GVHDを対象とする治療の詳細は、処置の開始、用量、継続期間(開始/停止)、ならびに最良な応答のタイミングおよび大きさを含み、eCRFに記録される。これは、上部/下部GI GVHDの非吸収性経腸ステロイド、および皮膚、口腔または眼性GVHDのための局所療法を含む。
【0538】
生活の質の評価
細胞療法骨髄移植認定財団(FACT BMT、バージョン4)は、47項目自己報告質問票であり、これは、身体、機能、社会/家族、感情の健康状態、および移植特有の懸念事項を含む複数のドメインを評価する。質問票は、訪問時にスコアリングする。
【0539】
実験的免疫関連評価
生着
生着は訪問時に評価する。
【0540】
好中球の生着は、前の7日以内の輸血なしでの、3日連続の好中球数≧0.5×10/Lと定義され、血小板回復は、3日連続の血小板数≧20×10/Lと定義される。両方の基準の発生の最初の日が記録される。
【0541】
一次移植片の失敗は、ドナー細胞の初期生着がないこととして定義される。この場合、対象は、好中球減少(好中球数<0.5×10/L)から回復せず、汎血球減少症となり、緊急の再移植が必要となる。二次移植片の失敗は、初期生着後のドナー細胞の喪失として定義される。この場合、自己回復が一般的であるが、しかしながら、骨髄形成不全および汎血球減少症も発症しうる。
【0542】
キメリズム
キメリズムは、訪問時に現地の研究所でPCR増幅によって全血中で評価する。キメリズムはまた、再発が疑われる場合にも評価される。
【0543】
免疫表現型決定
血液サンプルを、訪問時に免疫表現型決定のために収集する。バイオマーカー(T/B/NKパネル)は、CD3(CD3 T細胞)、CD4(CD4 T細胞)、CD8B(CD8 T細胞)、LRP5(B細胞)、OSBPL5(NK細胞)を含む。T/B/NKパネルの潜在的拡大が、将来的に考えられうる。
【0544】
免疫表現型決定は、検証された分析方法を使用し、SOPまたは研究所マニュアルに従って、中央研究所によって実施される。サンプル処理、取り扱い、保存および輸送に関する詳細は、研究の開始前に、研究に特化した中央研究所マニュアルに別途提供される。
【0545】
実験的薬物動態評価
モクラビモド
血液サンプルを、モクラビモド全身濃度の決定のために訪問時に収集する。1つの用量前サンプルを、各PK訪問時に収集する。トラフレベルを、すべてのPK訪問時に決定し、12時間にわたる血液濃度-時間プロファイルを、-9日目、1ヶ月目および6ヶ月目に実施する。
【0546】
-9日目、1ヶ月目および6ヶ月目に、標準12誘導ECG評価に続いて脈および血圧測定を、用量後6hの時点でPK血液サンプル収集5分前に行うべきである。正確な日付およびサンプル採取時間が記録される。
【0547】
血液サンプル収集およびECG評価の正確な日付およびサンプル採取時間は、eCRFに記録される。
【0548】
生物分析による決定は、検証されたLC-MS/MS分析方法を使用し、SOPおよび研究所マニュアルに従って、中央研究所によって実施される。すべての血液サンプルは、直接静脈穿刺または前腕の静脈に挿入された留置カニューレのいずれかによって取る。PK評価のための血液サンプル(2mL)は、EDTA管に収集する。EDTA管は、中央研究所に輸送するまで現場の冷凍庫で保存する。サンプル処理、取り扱い、保存および輸送に関する詳細は、研究の開始前に、研究に特化した中央研究所マニュアルに別途提供される。
【0549】
PK分析のための血液サンプルは、非認証冷代謝産物同定法を使用して、実験による代謝産物同定のために使用されてもよい。PK(および任意選択の代謝)評価は、別々に報告される。
【0550】
結果は、研究データが非盲検化されるまでは資金提供者、研究スタッフおよび対象に開示されない。
【0551】
シクロスポリンA/タクロリムス
血液サンプルを、CsA/TAC全身濃度の決定のために訪問時に収集する。評価は、現地の実務に従って行われる。CsA/TAC目標濃度範囲は、「移植片対宿主疾患予防法」の節に記載されている。正確な日付およびサンプル採取時間がeCRFに記録される。
【0552】
統計分析
一般に、測定変数および導出パラメーターは、対象別に列挙し、表にまとめる。結果の表は、処置群別および集団全体、ならびに適用可能な場合、訪問別に示す。すべての研究現場のデータを、統計分析のためにプールする。
【0553】
別に指定されない限り、連続変数は、対象数、平均、中央値、標準偏差(SD)、四分位範囲(IQR)、範囲(最小および最大)、ならびに平均および中央値の95%信頼区間(CI)(適宜)により記述的にまとめる。カテゴリー変数は、対象の頻度およびパーセンテージならびに/または事象数(適用可能な場合)によってまとめる。存在する場合、欠測値の数も特定する。訪問別の要約表について、欠測値を有する対象数は、処置中止訪問までに評価または訪問の欠如を有する対象を含む。
【0554】
ベースライン値は、他に記載されない限り、無作為化前の最後の非欠測値として定義される。
【0555】
事象までの時間エンドポイントは、生存分布、95%CIでの事象までの時間中央値および選択した時点での生存確率を推測するKaplan-Meier法を使用して分析し;リスクのある対象数、事象を有する対象数、選択した時点で打ち切られる対象数も報告する。
【0556】
別に指定されない限り、記述統計(累積発生率または目的の事象のない対象の割合)は事象までの時間エンドポイントで表される。
【0557】
すべての統計学的検定は、別に指定されない限り、両側であり、0.05αレベルで実施される。
【0558】
一般に主要な(重要な)プロトコル逸脱を構成するものを含むプロトコル逸脱が、ICHガイドラインに従ってSAPに詳述されることがある。すべてのプロトコル逸脱は、一次分析前にデータ検討ミーティングにおいて検討され、最終的に、主要であるかまたは重要でないかのいずれかに分類される。
【0559】
人口統計およびベースライン特性
ベースラインおよび疾患特性を含むすべての背景および人口統計データを表にまとめ、ITTに基づいて列挙する。
【0560】
医療および手術歴データは、医薬品規制用語集(MedDRA)器官別大分類(SOC)および優先使用語(PT)によってまとめ、データリストに含む。
【0561】
処置曝露
すべての研究処置データは、IMPおよび標準治療GVHD予防法背景(MTX+CsAまたはMTX+TAC)を含むSAF設定を使用してまとめる。
【0562】
少なくとも、以下の変数を、用量スケジュールの変更およびそれらの変更理由と共にまとめる:
・全処置曝露(週)は、最後の投薬日および最初の投薬日の間の時間間隔であり、研究処置の一時的な中断の期間を含む。
・臨床的に関連する用量中断は、AEに起因し、>15日続く研究処置の用量中断である。
・全処置継続期間(週)は、対象が割り当てられた研究処置を受けた累積日数である(すなわち、この計算に中断期間は含まれない)。
・実際の用量強度(mg/日)は、研究全体の間に受けた実際の用量(総用量)を曝露の継続期間で割ったものである。用量中断期間については、用量はゼロに等しい。実際の用量は、期間にわたる累積1日用量(mg)である。実際の用量強度は、記述統計を使用してまとめる。
【0563】
以前のおよび併用薬物治療
IMPの開始前に終了した薬物治療およびIMPの開始後に摂取された薬物治療は、世界保健機構(WHO)薬物辞典の解剖学的治療化学物質(ATC)コードを使用して薬物治療のカテゴリーによる頻度統計としてまとめる。禁止薬物治療もまとめる。
【0564】
二重盲検処置相の間に摂取される併用薬物治療は、フォローアップ相の間に摂取されるものとは別に提示する。
【0565】
有効性分析
有効性分析は、ITTに基づいて実施される。
【0566】
安全性の検討は、IDMCによって実施される。
【0567】
1)主要エンドポイント分析
主要エンドポイントは12ヶ月目のRFSである。3mg群が安全性の知見に起因して中止されない限り、3mg群対プラセボを評価し、3mg群が中止された場合、1mg群対プラセボを評価する。分析は、12ヶ月目のランドマーク分析であり、すなわち、各対象の最初の12ヶ月間のデータ(計画された処置期間)のみが分析に含まれる。主要エンドポイントについての変数は、無作為化から疾患再発または死亡(任意の原因)の最初の発生までの継続期間として定義される。
【0568】
一次有効性変数は、Kaplan-Meier推定の視覚的表示および四半期間隔によってこれらの推定を報告する表を使用して記載する。中央値の推定は、ハザード比推定と共に、両側95%CIと、25および75パーセンタイルとにより提供される。
【0569】
対象無作為化のために使用される階層化因子を使用する階層化グランク検定を、モクラビモド群対プラセボ群を比較するために実施する。
【0570】
さらに、比例ハザードの確認後、Cox回帰モデルを使用して、処置群を比較する。モデルの調節に使用される因子のリストは、これらに限定されないが、完全寛解ステータス(CR1対CR2)、GVHD予防法処置(CsA対TAC)、年齢、ドナーの種類(兄弟姉妹対非血縁)、ドナーレシピエント性別組合せ、AMLの疾患ステージおよび診断から移植までの時間間隔を含んでもよい。
【0571】
分析の時点で事象(すなわち、再発または死亡)を有さない対象は、その対象が無再発であったかもしくは生きていたことが分かっている最後の日、または無作為化から12ヶ月の終了時のいずれか早い方に達した時点で打ち切る。
【0572】
打ち切りの時間はまた、逆Kaplan-Meierプロットを使用して記載し、毎月の間隔によって、考慮される期間にわたって提示し、表にまとめる。
【0573】
主要エンドポイント、すなわち最も早いものを定義する成分の分布は、処置群別に表にまとめる。
【0574】
さらに、無作為化からのフォローアップ時間全体は、処置群の各々についてKaplan-Meier推定のプロットを使用して記載し、ログランク検定により比較する。
【0575】
フォローアップ時間全体は、それぞれ、無作為化から事象の最初の発生日まで、または分析の時点で事象が起こっていない場合、打ち切りの日までの時間間隔(週)として定義される。
【0576】
処置群が安全性またはより低い有効性に起因して中止した場合、用量を切り替えることを選択した対象は、一次分析に含まれないことに留意されたい。潜在的処置切り替えの影響は、SAPにおいて調べられ、議論される。
【0577】
2)感受性分析
この研究で仮定される比例ハザードからの潜在的逸脱の影響は、Fleming-Harrington重み付けログランク統計の組合せを使用して評価する。
【0578】
他の感受性分析は、SAPに詳述される。
【0579】
3)二次有効性エンドポイント分析
重要な二次有効性分析
第1の重要な二次エンドポイントは、モクラビモド群およびプラセボ群間を比較して、各対象の12ヶ月OSフォローアップ期間後に評価する。3mg群が安全性の知見に起因して中止されない限り、3mg群対プラセボを評価し、3mg群が中止された場合、1mg群対プラセボを評価する。第2の重要な二次エンドポイントは、適用可能な場合、第2のモクラビモド群およびプラセボ群間で比較した、二重盲検処置期間または12ヶ月前のRFSフォローアップ期間後に評価したRFSである。
【0580】
対応する分析変数は、無作為化の日から最初の24ヶ月以内の、任意の原因に起因した死亡日までの時間間隔として定義され、分析は、すべての対象が研究を終了したときに(すなわち、24ヶ月であり、フォローアップ期間を含む)に実施される。
【0581】
OS分析は、主要エンドポイントと同じ手法を使用して実施される。24ヶ月の研究フォローアップの終了時になお生きている、またはフォローアップを亡失した対象は、対象が生きていたことが分かっている最後の時点で打ち切る。
【0582】
24ヶ月以内に起こった死亡に関する情報は、研究に無作為化されたすべての対象について収集する。
【0583】
第2の重要な二次エンドポイントについての統計学的仮説および分析は、主要エンドポイントと同じであった。
【0584】
他の二次分析
ITTにおいて分析される他の二次変数は、以下を含む:
・24ヶ月目後のRFS
・再発までの時間
・12ヶ月目および24ヶ月目における再発の累積発生率
・12ヶ月目および24ヶ月目における非再発関連死亡率
・モクラビモド対プラセボの第2の用量のOS(3群すべてが一次分析に達した場合のみ適用可能)
・12ヶ月目におけるグレードIII.IV aGVHDのない生存
・aGVHDまでの時間
・24ヶ月目における中等度/重度のcGVHDのない生存
・cGVHDまでの時間
・12ヶ月目および24ヶ月目におけるGRFS
・12ヶ月目および24ヶ月目におけるrGRFS
・安全性
・生活の質
【0585】
12ヶ月目におけるグレードIII/IV aGVHDのない生存
グレードIII/IV aGVHDのない生存は、無作為化から、任意の原因による死亡またはMAGICスコアによって定義される通りのグレードIII/IV aGVHDの最初の発生のいずれかが最初に起こるまでの時間間隔(週)として定義される。
【0586】
対象について事象が報告されない場合、観察は、対象がグレードIII/IV aGVHDのなかったことが分かっている最後の日で打ち切る。
【0587】
グレードIII/IV aGVHDのない生存は、Kaplan Meierプロットおよび生存推定サマリーを使用して、処置群別にまとめる。対象無作為化のために使用される階層化因子を使用する階層化ログランク検定を使用して、各モクラビモド群およびプラセボ群間の統計学的有意差の存在を別々に評価する。
【0588】
さらに、支持分析として、比例ハザードの確認後、Cox回帰モデルを使用して、処置群を比較する。モデルの調節に使用される因子のリストは、これらに限定されないが、完全寛解ステータス(CR1対CR2)、GVHD予防法処置(CsA対TAC)、年齢、ドナーの種類(兄弟姉妹対非血縁)、ドナーレシピエント性別組合せ、AMLの疾患ステージおよび診断から移植までの時間間隔を含んでもよい。
【0589】
12ヶ月目のグレードIII/IV aGVHDは、RFSフォローアップ期間の間のグレードIII/IV aGVHDの少なくとも1回の発生を有する対象の累積割合としてまとめる。各モクラビモド群は、階層化CMH検定を使用して別々にプラセボと比較し、オッズ比および対応する95% CIが提供される。
【0590】
aGVHDまでの時間
aGVHDまでの時間は、無作為化からMAGICによって定義される通りのグレードIII/IV aGVHDの最初の発生までの時間間隔(週)として定義される。
【0591】
aGVHDまでの時間は、グレードIII/IV aGVHDの発生を有する患者についてのみ、平均、標準偏差、最小、下側四分位数、中央値、上側四分位数および最大を使用して、処置群別に記述的にまとめる。
【0592】
不均衡、または比較に不十分な群中の事象に起因して記述的サマリーが不十分である場合、すべての対象を含むさらなる調査を実施する。この分析について、対象がグレードIII/IV aGVHDの発生前に死亡した場合、死亡日を最終フォローアップ時間として使用し、死亡は競合事象と考える。対象についてグレードIII/IV aGVHDまたは死亡の発生が報告されない場合、aGVHDまでの時間は、対象がaGVHDのなかったことが分かっている最後の日で打ち切る。
【0593】
aGVHDまでの時間は、累積発生数関数プロットおよび生存推定サマリーを使用して、処置群別にまとめる。対象無作為化のために使用される階層化因子を使用するグレイ検定を使用して、各モクラビモド群およびプラセボ群間の統計学的有意差の存在を別々に評価する。
【0594】
競合リスクモデルは、処置効果の調節推定を提供するために使用される。モデルの調節に使用される因子のリストは、これらに限定されないが、完全寛解ステータス(CR1対CR2)、GVHD予防法処置(CsA対TAC)、年齢、ドナーの種類、ドナーレシピエント性別組合せ、AMLの疾患ステージおよび診断から移植までの時間間隔を含んでもよい。
【0595】
24ヶ月目における中等度/重度のcGVHDのない生存
24ヶ月目における中等度/重度cGVHDのない生存は、無作為化から、研究期間全体の間の、全身免疫抑制処置に対して抵抗性の中等度/重度cGVHDの最初の発生までの時間間隔(週)として定義される。
【0596】
対象について事象が報告されない場合、観察は、対象が中等度/重度cGVHDのなかったことが分かっている最後の日で打ち切る。
【0597】
中等度/重度cGVHDのない生存は、Kaplan-Meierプロットおよび生存推定サマリーを使用して、処置群別にまとめる。対象無作為化のために使用される階層化因子を使用する階層化ログランク検定を使用して、各モクラビモド群およびプラセボ間の統計学的有意差の存在を別々に評価する。
【0598】
Cox回帰モデルは、寛解ステータス、GVHD予防法処置(CsA対TAC)、年齢、ドナーの種類、ドナーレシピエント性別組合せ、AMLの疾患ステージおよび診断から移植までの時間間隔に対する処置効果の調節推定を提供するために使用される。
【0599】
24ヶ月目の中等度/重度cGVHDは、全研究期間の間の中等度/重度cGVHDの少なくとも1回の発生を有する対象の累積割合としてまとめる。各モクラビモド群は、階層化Cochran-Mantel-Haenszel(CMH)検定を使用して別々にプラセボと比較し、オッズ比および対応する95%CIが提供される。
【0600】
cGVHDまでの時間
cGVHDまでの時間は、無作為化から中等度/重度cGVHDの最初の発生までの時間間隔(週)として定義される。
【0601】
cGVHDまでの時間は、中等度/重度cGVHDの発生を有する患者についてのみ、平均、標準偏差、最小、下側四分位数、中央値、上側四分位数、最大、ならびに平均および中央値のCI(適宜)を使用して、処置群別に記述的にまとめる。
【0602】
不均衡、または比較に不十分な群中の事象に起因して記述的サマリーが不十分である場合、すべての対象を含むさらなる調査を実施する。この分析について、対象が中等度/重度cGVHDの発生前に死亡した場合、死亡日を最終フォローアップ時間として使用し、死亡は競合事象と考える。対象について中等度/重度cGVHDまたは死亡の発生が報告されない場合、cGVHDまでの時間は、対象がcGVHDのなかったことが分かっている最後の日で打ち切る。
【0603】
cGVHDまでの時間は、累積発生数関数プロットおよび生存推定サマリーを使用して、処置群別にまとめる。対象無作為化のために使用される階層化因子を使用するグレイ検定を使用して、各モクラビモド群およびプラセボ群間の統計学的有意差の存在を別々に評価する。
【0604】
競合リスクモデルは、処置効果の推定の調節を提供するために使用される。モデルの調節に使用される因子のリストは、これらに限定されないが、完全寛解ステータス(CR1対CR2)、GVHD予防法処置(CsA対TAC)、年齢、ドナーの種類、ドナーレシピエント性別組合せ、AMLの疾患ステージおよび診断から移植までの時間間隔を含んでもよい。
【0605】
12ヶ月目および24ヶ月目における非再発死亡率
非再発死亡率は、白血病再発の証拠のない死亡として定義される。
【0606】
十分な事象が起こった場合、12ヶ月目における非再発死亡率の累積発生率を、95%信頼区間で処置群別にまとめる。
【0607】
対象無作為化のための階層化因子を使用するCMH階層化検定を実施し、オッズ比は、各モクラビモド群を別々にプラセボ群と比較して表す。
【0608】
対象が再発した場合、再発日を最終フォローアップ時間として使用し、再発は競合事象と考える。対象について非再発死亡の発生が報告されない場合、非再発死亡までの時間は、対象が死亡していなかったことが分かっている最後の日で打ち切る。
【0609】
非再発死亡は、十分な事象が起こった場合、累積発生数関数プロットおよび生存推定サマリーを使用して、処置群別にまとめる。対象無作為化のために使用される階層化因子を使用するグレイ検定を使用して、各モクラビモド群およびプラセボ群間の統計学的有意差の存在を別々に評価する。
【0610】
競合リスクモデルは、処置効果の推定の調節を提供するために使用される。モデルの調節に使用される因子のリストは、これらに限定されないが、寛解ステータス(CR1対CR2)、GVHD予防法処置(CsA対TAC)、年齢、ドナーの種類、ドナーレシピエント性別組合せ、AMLの疾患ステージおよび診断から移植までの時間間隔を含んでもよい。
【0611】
さらに、24ヶ月目の非再発死亡率は、12ヶ月目の分析時の非再発死亡率と同じ手法を使用して分析される。
【0612】
12ヶ月目および24ヶ月目におけるGRFS
GVHDは、グレードIII/IV aGVHDまたは中等度/重度cGVHDとして定義される。
【0613】
12ヶ月目および24ヶ月目におけるGVHDのない生存は、無作為化から、任意の原因による死亡、またはGVHDの最初の発生、または再発のいずれかが最初に起こるまでの時間間隔(週)として定義される。
【0614】
対象について事象が報告されない場合、観察は、対象がGVHDのなかったことが分かっている最後の日で打ち切る。
【0615】
GVHDのない生存は、Kaplan-Meierプロットおよび生存推定サマリーを使用して、処置群別にまとめる。対象無作為化のために使用される階層化因子を使用する階層化ログランク検定を使用して、各モクラビモド群およびプラセボ間の統計学的有意差の存在を別々に評価する。
【0616】
24ヶ月目のGVHDは、全研究期間の間の中等度/重度cGVHDの少なくとも1回の発生を有する対象の累積割合としてまとめる。各モクラビモド群は、階層化CMH検定を使用して別々にプラセボと比較し、オッズ比および対応する95% CIが提供される。
【0617】
12ヶ月目および24ヶ月目におけるrGRFS
12ヶ月目および24ヶ月目におけるrGRFSは、全研究期間の間のrGRFSを定義する事象の少なくとも1回の発生を有する対象の累積割合としてまとめる。rGRFSは、無作為化から、以下の最初の発生までの継続期間(週)として定義される(Kawamura et al 2018):
・処置にも関わらず解消しないグレードIII/IV活性aGVHD
・全身処置を必要とするにも関わらず解消しない活性cGVHD
・疾患再発
・任意の原因による死亡
【0618】
最後の評価で解消し、全身処置を必要としなかったGVHDは、事象と考えない。
【0619】
rGRFSは、Kaplan-Meierプロットおよび生存推定サマリーを使用して、処置群別にまとめる。対象無作為化のために使用される階層化因子を使用する階層化ログランク検定を使用して、各モクラビモド群およびプラセボ間の統計学的有意差の存在を別々に評価する。
【0620】
対象無作為化のために使用される階層化因子を使用する階層化CMH計定検定は、各モクラビモド群およびプラセボ群間で別々に、12ヶ月目および24ヶ月目について別々に、実施し、オッズ比および対応する95%CIが提供される。
【0621】
他の有効性分析
24ヶ月目における無再発生存
RFSは、無作為化から疾患再発または任意の原因による死亡のいずれかが最初に起こるまでの時間間隔(週)定義としてされ、24ヶ月目に分析する。
【0622】
対象について死亡も再発も報告されない場合、RFSは、対象が再発がなかったことが分かっている最後の日で打ち切る。
【0623】
RFSは、Kaplan-Meierプロットおよび生存推定サマリーを使用して、処置群別にまとめる。対象無作為化のために使用される階層化因子を使用するログランク検定を使用して、各モクラビモド群およびプラセボ群間の統計学的有意差の存在を別々に評価する。
【0624】
さらに、比例ハザードの確認後、Cox回帰モデルを使用して、処置群を比較する。モデルの調節に使用される因子のリストは、これらに限定されないが、完全寛解ステータス(CR1対CR2)、GVHD予防法処置(CsA対TAC)、年齢、ドナーの種類(兄弟姉妹対非血縁)、ドナーレシピエント性別組合せ、AMLの疾患ステージおよび診断から移植までの時間間隔を含んでもよい。
【0625】
12ヶ月目および24ヶ月目における再発の累積発生率
12ヶ月目および24ヶ月目における再発の累積発生率は、処置群別に95%信頼区間によりまとめる。
【0626】
各モクラビモド群およびプラセボ間別々の、対象無作為化のために使用される階層化因子を使用するCMH層化検定を実施し、オッズ比が示される。
【0627】
さらに、24ヶ月目の再発の累積発生率は、主要分析における再発の累積発生率と同じ手法を使用して分析する。
【0628】
再発までの時間(TTR)
TTRは、無作為化から疾患再発までの時間間隔(週)として定義される。
【0629】
TTRは、再発を有する対象についてのみ、平均、標準偏差、最小、下側四分位数、中央値、上側四分位数、最大を使用して、処置群別に記述的にまとめる。
【0630】
不均衡、または比較に不十分な群中の事象に起因して記述的サマリーが不十分である場合、すべての対象を含むさらなる調査を実施する。この分析について、対象が再発の発生前に死亡した場合、死亡日を最終フォローアップ時間として使用し、死亡は競合事象と考える。対象について再発または死亡の発生が報告されない場合、再発までの時間は、対象が再発がなかったことが分かっている最後の日で打ち切る。
【0631】
次いで、TTRを、累積発生数関数プロットおよび生存推定サマリーを使用して、処置群別にまとめる。
【0632】
競合リスクモデルも使用されてもよい。モデルは、これらに限定されないが、完全寛解ステータス(CR1対CR2)、GVHD予防法処置(CsA対TAC)、年齢、ドナーの種類、ドナーレシピエント性別組合せ、AMLの疾患ステージおよび診断から移植までの時間間隔などの因子を含んでもよい。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
【国際調査報告】