(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-15
(54)【発明の名称】酸化ジスルフィド油添加剤を組み込んだ水蒸気分解方法
(51)【国際特許分類】
C10G 9/36 20060101AFI20240207BHJP
【FI】
C10G9/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545858
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-08-17
(86)【国際出願番号】 US2022014206
(87)【国際公開番号】W WO2022165105
(87)【国際公開日】2022-08-04
(32)【優先日】2021-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599130449
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】オマー・レファ・コセオグル
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ピーター・ホジキンス
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA02
4H129CA07
4H129CA09
4H129DA03
4H129FA02
4H129FA07
4H129HA10
4H129HB06
4H129NA40
(57)【要約】
酸化ジスルフィド油(ODSO)成分又はODSO成分及びジスルフィド油(DSO)成分が水蒸気分解炉供給物に添加される。熱分解の間、水蒸気分解炉混合物中のODSO又はODSO及びDSO成分は水蒸気分解炉コイル状のコークスの形成を最小化する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化ジスルフィド油(ODSO)ストリーム及び水蒸気分解炉供給物ストリームを水蒸気分解コンプレックスに導入する工程;
前記ODSOストリームと前記水蒸気分解炉供給物ストリームを前記水蒸気分解コンプレックス内で混合して、ODSO成分を含む内部水蒸気分解炉混合物を生成する工程;及び
前記内部水蒸気分解炉混合物を前記水蒸気分解コンプレックス内での熱分解に供して、水蒸気分解炉生成物を生成する工程;
を含む、水蒸気分解方法であって、
前記熱分解の間、内部水蒸気分解炉混合物中の前記ODSO成分は、水蒸気分解炉コイル上でのコークスの形成を最小化する、方法。
【請求項2】
MEROX方法の下流で回収された流出物製油所炭化水素ストリームから生じるジスルフィド油(DSO)ストリームの全て又は一部を、前記水蒸気分解コンプレックスに導入する前に前記ODSOストリームと混ぜ合わせて、前記水蒸気分解炉供給物と混合された複合ODSO/DSOストリームを生成し、
前記水蒸気分解炉混合物はODSO及びDSO成分を含み、
前記熱分解の間、前記水蒸気分解炉混合物中の前記ODSO及びDSO成分は、水蒸気分解炉コイル上でのコークスの形成を最小化する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酸化ジスルフィド油(ODSO)ストリームと水蒸気分解炉供給物ストリームを混合して、ODSO成分を含む改良型水蒸気分解炉供給物を生成する工程;
水蒸気分解コンプレックス内に前記改良型水蒸気分解炉供給物を導入する工程;及び
前記改良型水蒸気分解炉供給物を前記水蒸気分解コンプレックス内での熱分解に供して、水蒸気分解炉生成物を生成する工程;
を含む、水蒸気分解方法であって、
前記熱分解の間、前記改良型水蒸気分解炉供給物中の前記ODSO成分は、水蒸気分解炉コイル上でのコークスの形成を最小化する、方法。
【請求項4】
MEROX方法の下流で回収された流出物製油所炭化水素ストリームから生じるジスルフィド油(DSO)ストリームの全て又は一部を、前記水蒸気分解炉供給物ストリームと混合する前に前記OSDOストリームと混ぜ合わせて、前記水蒸気分解炉供給物と混合された複合ODSO/DSOストリームを生成し、
前記改良型水蒸気分解炉供給物がODSO及びDSO成分を含み、
前記熱分解の間、前記改良型水蒸気分解炉供給物中の前記ODSO及びDSO成分は、水蒸気分解炉コイル上でのコークスの形成を最小化する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記DSOストリームが、一つ又は複数のジスルフィド化合物を含む、請求項2又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記DSOストリームは、100:0から95:5、100:0から80:20、又は100:0から60:40の範囲のDSO成分に対するODSOの割合で、前記ODSOストリームと混ぜ合わされる、請求項2、4又は5に記載の方法。
【請求項7】
熱分解の前の水蒸気分解炉供給物に対するODSOストリームの割合が、10から1000ppmw、10から500ppmw、10から300ppmw、又は10から100ppmwの範囲である、請求項1又は3に記載の方法。
【請求項8】
熱分解の前の水蒸気分解炉供給物に対する複合ODSO/DSOストリームの割合が、10から1000ppmw、10から500ppmw、10から300ppmw、又は10から100ppmwの範囲である、請求項2、4、5又は6に記載の方法。
【請求項9】
前記ODSOストリームが、一つ又は複数の酸化ジスルフィド化合物を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記水蒸気分解コンプレックスが、水蒸気分解域、オレフィン回収域、メチルアセチレン/プロパジエン飽和及びプロピレン回収域、ブタジエン抽出域、メチルターシャリーブチルエーテル域、及びブテン-1回収域を含み、
前記水蒸気分解炉生成物が、水素、燃料ガス、エチレン、プロパン、プロピレン、1,3-ブタジエン生成物、メチルターシャリーブチルエーテル、1-ブテン生成物ストリーム、熱分解ガソリン、及び熱分解燃料油を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
約400から600、400から550又は500から600℃の範囲の対流部内の温度で、
約4.3から4.8、4.3から4.6又は4.6から4.8bargの範囲の対流部内の圧力で、
約650から950、650から900又は650から850℃の範囲の熱分解部内の温度で、
約1から4、1から2又は1から1.4bargの範囲の熱分解部内の圧力で、
約0.3:1から2:1、0.5:1から1.5:1又は1:1から1.5:1の範囲の対流部内での蒸気対炭化水素の比率で、及び
約0.05から1.2、0.2から1.2又は0.5から1秒の範囲の熱分解部での滞留時間で、
前記水蒸気分解域を運転する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記水蒸気分解炉供給物は、一つ又は複数の軽質炭化水素、2から4個の炭素原子を含む軽質炭化水素ガス、5から6個の炭素原子を含む軽質ナフサパラフィン系炭化水素、パラフィンを含む重質ナフサ炭化水素、ナフテン、7から12の範囲の炭素数を有する芳香族化合物、パラフィンを含む中間留分炭化水素、180から370℃の範囲の沸点を有するナフテン又は芳香族化合物、370から565℃の範囲の沸点を有する直留又は水素化処理された真空軽油、ディーゼル燃料及び10ppm未満の硫黄を有する超低硫黄ディーゼル燃料からなる群から選択される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記熱分解の間、前記水蒸気分解コンプレックス中に存在する前記ODSO成分又は前記ODSO及びDSO成分は、前記水蒸気分解コンプレックスの冶金を保護する、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ODSOストリームは、改良型MEROX(E-MEROX)方法の下流で回収された流出物製油所炭化水素ストリームから生じる、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ODSO成分は、DSO成分の酸化からの混合物中に含まれ、前記混合物は、ジアルキル-チオスルホキシド(R-SO-S-R’)、ジアルキル-チオスルホン(R-SOO-S-R’)、ジアルキル-スルホンスルホキシド(R-SOO-SO-R’)、ジアルキル-ジスルホン(R-SOO-SOO-R’)、ジアルキル-ジスルホキシド(R-SO-SO-R’)、アルキル-スルホキシドスルホネート(R-SO-SOO-OH)、アルキル-スルホンスルホネート(R-SOO-SOO-OH)、アルキル-スルホキシドスルフィネート(R-SO-SO-OH)及びアルキル-スルホンスルフィネート(R-SOO-SO-OH)を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記ODSOストリームは、一般式(R-SO-S-R’)、(R-SOO-S-R’)、(R-SOO-SO-R’)、(R-SOO-SOO-R’)、(R-SO-SO-R’)、(R-SO-SOO-OH)、(R-SOO-SOO-OH)、(R-SO-SO-OH)、(R-SOO-SO-OH)、(X-SO-OR)及び(X-SOO-OR)〔式中、R及びR’は1から10個の炭素原子を含むアルキル又はアリール基であり、Xはエステルを表し、(R-SO)又は(R-SOO)である。〕を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1つのODSO化合物を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ODSOストリームは、一般式(R-SO-S-R’)、(R-SOO-S-R’)、(R-SOO-SO-R’)、(R-SOO-SOO-R’)、(R-SO-SO-R’)、(R-SO-SOO-OH)、(R-SOO-SOO-OH)、(R-SO-SO-OH)、(R-SOO-SO-OH)、(X-SO-OR)及び(X-SOO-OR)〔式中、R及びR’は1から10個の炭素原子を含むアルキル又はアリール基であり、Xはエステルを表し、(R-SO)又は(R-SOO)である。〕を有する化合物からなる群から選択される2つ以上のODSO化合物の混合物を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コークスの形成を最小限に抑えるために、酸化ジスルフィド油化合物又はジスルフィド油と酸化ジスルフィド油の混合物を水蒸気分解炉(steam cracker)供給物とブレンドすることに関する。
【背景技術】
【0002】
水蒸気分解
エタン、プロパン及びブタンなどのガス状の炭化水素並びに軽質C5~C6ナフサなどの液状の炭化水素の水蒸気分解は、エチレンの生成のための先導技術である。水蒸気分解プロセスにおいて、原料は蒸気で希釈されて水蒸気分解炉に送達される。分解炉はプロセスの中心である。水蒸気分解は、冷却、圧縮及び分離の工程が続く、複雑なプロセスである。
【0003】
コーキングは、水蒸気分解からの望ましくない副反応である。コーキングは、水蒸気分解炉及び伝熱ライン交換機の放射部における主要な運転上の問題である。水蒸気希釈により分解化合物の炭化水素分圧が低下するため、一次反応生成物の形成が促進される。水蒸気はさらに、炉管上にコークスが堆積する傾向を軽減する。
【0004】
コークスは、望ましい生成物ではないが、熱分解の避けられない副生成物である。表面触媒反応がコークスの形成をもたらすことがよく知られている。多くの場合において、コークスの形成は合金表面のニッケルと鉄によって引き起こされる。コークスの形成により、圧力降下の増加、熱伝達の障害、燃料消費の増加が生じ、ひいては高い生産損失を引き起こす。コークスの形成が増加するにつれて、外側のチューブ表面温度は継続的に上昇する。このことは、プロセスの選択性に影響を与え、さらにより急速なコークスの形成を引き起こす。形成されたコークスは、蒸気と空気による制御された燃焼により除去され得る。このコークス除去プロセスの間、水蒸気分解炉は非生産的なダウンタイム状態にある。さらに、デコーキングサイクルは、水蒸気分解炉内のコイルの寿命の短縮につながる。
【0005】
MEROXプロセス
一般にMEROXプロセスと呼ばれるメルカプタン酸化プロセスは、多くの炭化水素ストリームにおいて見られる一般に悪臭を放つメルカプタンの除去に長い間使用されており、50年以上も前に精製産業に導入された。環境上の理由から燃料の硫黄含量を低減する規制要件のために、精製所はこれまで、またこれからも大量の硫黄含有副生成物の廃棄に直面する。
【0006】
ジスルフィド油(DSO)化合物は、液化石油ガス、ナフサ及び他の炭化水素留分を含む様々な石油ストリームのいずれかからメルカプタンが除去されるMEROXプロセスの副生成物として生成される。これは、原油に存在する酸敗臭又は悪臭を放つメルカプタンを除去するため、一般に「スイートニングプロセス」と呼ばれる。「DSO」という用語は、本明細書及び特許請求の範囲において便宜上使用され、メルカプタン酸化プロセスの副生成物として生成されるジスルフィド油の混合物を含むことが理解される。
【0007】
上記したように、「MEROX」という名称は、プロセス自体の機能、すなわち酸化によるメルカプタンの転化に由来する。その用途の全てにおけるMEROXプロセスは、周囲温度及び周囲圧力付近でのメルカプタンのジスルフィドへの酸化を加速する、苛性環境等の塩基性環境における有機金属触媒の能力に基づく。全体的な反応は、以下のように表され得る:
【数1】
【0008】
(式中、Rは、直鎖状、分岐鎖状、又は環状であってもよい炭化水素鎖であり、鎖は、飽和又は不飽和であり得る)ほとんどの石油留分では、Rが鎖内に1、2、3、最大10、又はそれより多くの炭素原子を有し得るようにメルカプタンの混合物が存在する。この可変鎖長は、反応においてR及びR’により示される。ひいては反応は以下のように記述される:
【数2】
【0009】
この反応は、任意の酸敗性メルカプタンを含む留出物が大気中の酸素に曝露されるといつでも自発的に生じるが、非常に遅い速度で進行する。さらに、上記の触媒反応(1)は、水性水酸化ナトリウム等のアルカリ苛性溶液の存在を必要とする。メルカプタン酸化は、中程度の精製下流温度で経済的に実用的な速度で進行する。
【0010】
MEROXプロセスは、液状ストリーム、並びに複合ガス状及び液状ストリームの両方で行うことができる。液状ストリームの場合、メルカプタンはジスルフィドに直接転化され、これは生成物中に残留し、したがって流出物ストリームの全硫黄含量は低減されない。
【0011】
MEROXプロセスは、典型的には、液状ストリームのための固定床反応器システムを利用し、通常、135℃超~150℃の終点を有する投入原料と共に使用される。メルカプタンは、固定床反応器システム内の触媒上で、例えばMEROX試薬が含浸され、苛性溶液で湿潤した活性炭上でジスルフィドに転化される。反応器の前の炭化水素供給ストリーム中に空気が注入され、触媒含浸床の通過中に供給物中のメルカプタンがジスルフィドに酸化される。ジスルフィドは苛性溶液に実質的に不溶性であり、炭化水素相に残留する。既知の副反応、例えばH2Sの中和、フェノール化合物の酸化、同伴苛性溶液等により生じる望ましくない副生成物を除去するために、後処理が必要である。
【0012】
ジスルフィドの蒸気圧はメルカプタンの蒸気圧に比べ比較的低いため、その存在は、臭気の観点からはそれほど不快ではないが、その硫黄含量のために環境上許容されず、その廃棄は困難となり得る。
【0013】
ガス及び液体の混合ストリームの場合、炭化水素ストリームの両方の相に抽出が適用される。メルカプタン抽出の完全性の程度は、個々のメルカプタンの分子量、メルカプタン分子の分岐度、苛性ソーダの濃度、及びシステムの温度の関数であるアルカリ溶液へのメルカプタンの溶解度に依存する。その後、得られたDSO化合物は分離され、苛性溶液は、触媒の存在下での空気による酸化によって再生され、再利用される。
【0014】
添付の図を参照すると、
図1は、メルカプタンを含むプロパン及びブタンの複合炭化水素ストリーム(1)が処理される実施形態における、硫黄化合物を除去するための液-液抽出を用いる、一般化された従来型の先行技術のMEROXプロセス、すなわち、MEROXユニット(1010)の簡略図であり、これは、苛性溶液(2)を含む抽出槽(10)に均一触媒を有する炭化水素ストリーム(1)を導入する工程であって、いくつかの実施形態において、触媒は均一コバルト系触媒である、工程と;
抽出(10)槽の抽出部に向流で炭化水素触媒ストリームを通過させる工程であって、抽出部は、メルカプタンを水溶性アルカリ金属アルカンチオレート化合物に転化する循環苛性溶液との触媒反応のための1つ又は複数の液-液接触抽出デッキ又はトレイ(図示せず)を含む、工程と;
メルカプタンを含まない、又は実質的に含まない炭化水素生成物ストリーム(3)を抽出槽(10)から引き出す工程と;
使用済み苛性溶液及びアルカリ金属アルカンチオレートの複合ストリーム(4)を抽出槽(10)から回収する工程と;
触媒(5)及び空気(6)が導入される反応器(20)内で使用済み苛性溶液を触媒湿式空気酸化に供して、再生された使用済み苛性溶液(8)を提供し、アルカリ金属アルカンチオレート化合物をジスルフィド油に転化する工程と;
DSO化合物及び低い割合の他のスルフィド、例えばモノスルフィド及びトリスルフィドの副生成物ストリーム(7)を回収する工程と;
を含む。
【0015】
MEROXプロセスにおける湿式空気酸化工程の流出物は、好ましくは、低い割合のスルフィド及び高い割合のジスルフィド油を含む。当業者に知られているように、この流出物ストリームの組成はMEROXプロセスの有効性に依存し、スルフィドは持ち越し材料であると推定される。プロセスの商業的実践のために様々な触媒が開発されている。MEROXプロセスの効率はまた、ストリーム中に存在するH2Sの量の関数である。H2S除去のために事前洗浄工程を設けることが、一般的な精製所における慣行である。
【0016】
MEROXプロセスにおいて生成されたジスルフィド油化合物は、様々なジスルフィドを含み得る。例えば、プロパン及びブタンの回収のために設計されたMEROXユニットは、表1に記載の組成を有するジスルフィド油混合物を生産する。
【0017】
【0018】
表1は、半定量的GC-MSデータから得られるジスルフィド油の組成を示す。成分に対して標準は測定されなかったが、表1のデータは相対量を示すには正確である。定量的な全硫黄含量はエネルギー分散X線蛍光分光法により決定され、63wt%の硫黄が示されたが、この値は後の計算に使用される。GC-MSの結果は微量のトリ-スルフィド種の証拠を示しているが、ジスルフィド油ストリームの大部分は表1に特定される3つの成分を含む。
【0019】
MEROXユニットにより生成された副生成物ジスルフィド油は、様々な他の精製ユニット操作において加工及び/又は廃棄され得る。例えば、DSOは、結果的なプールのより高い硫黄含量を犠牲にして、燃料油プールに添加され得る。DSOは、より高い水素消費を犠牲にして、水素処理/水素化分解ユニットで加工され得る。ジスルフィド油はまた不快な悪臭又は酸敗臭を有し、これは周囲温度での蒸気圧が比較的低いため、あまり発生しないものの、この油の取扱いにおいて問題がある。
【0020】
改良型MEROX(enhanced MEROX)プロセス(“E-MEROX”)は、追加工程が追加された変形型MEROXプロセスである。追加工程では、DSO化合物を触媒の存在下において酸化剤で酸化し、酸化ジスルフィド油(ODSO)化合物の混合物を生成する。メルカプタン酸化プロセスからの副生成物DSO化合物は、好ましくは触媒の存在下で酸化され得、スルホキシド、スルホネート、スルフィネート、スルホン及びそれらの対応する二硫黄混合物であるODSO化合物の豊富な供給源を構成する。
【0021】
酸化剤は、アルキルヒドロペルオキシド、アリールヒドロペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、ジアリールペルオキシド、ペルエステル及び過酸化水素からなる群から選択される液体過酸化物であり得る。酸化剤はまた、空気、酸素、オゾン、及び窒素の酸化物を含むガスであり得る。触媒は、好ましくは、Mo(VI)、W(VI)、V(V)、Ti(IV)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される活性種を含む遷移金属である均一な水溶性化合物である。
【0022】
E-MEROXプロセスで生成されたODSO化合物は、一般に水溶性相及び非水溶性相の2つの相を含む。E-MEROXプロセスは、生成物ODSO混合物中に存在する水溶性化合物と非水溶性化合物の所望の比率に応じて調整され得る。DSO化合物の部分酸化により、ODSO生成物中に存在する非水溶性ODSO化合物の相対量が増加し、DSO化合物のほとんど又はほぼ完全な酸化により、ODSO生成物中に存在する水溶性ODSOの相対量が増加する。ODSO組成物の詳細は、参照により本明細書に組み込まれるUSP 10,781,168において説明される。
【0023】
表2は、メルカプタンを含む炭化水素のMEROX硫黄還元又はスイートニングプロセスで生成されるDSO副生成物化合物の酸化によって生成されるODSO化合物の例を含み、ここで、R及びR’は、1~10個の炭素原子を含むアルキル基である。
【0024】
【0025】
図2は、E-MEROXユニット(1030)を含む一般化された従来型のE-MEROXプロセスの簡略図である。MEROXユニット(1010)は、
図1と同様に動作し、同様の参照番号は同様のユニット/供給物を表す。
【0026】
図2において、
図1の一般化されたMEROXユニットからの流出物ストリーム(7)が処理される。
図1のプロパン及びブタンの複合ストリームの処理は、例示に過ぎず、生成物の別々のストリーム、及び他の混合されたより長鎖の生成物の複合された又は別々のストリームは、DSOを回収及び酸化してODSO化合物を生成するプロセス、すなわちE-MEROXプロセスの対象となり得ることが理解される。
【0027】
E-MEROXプロセスを実行するために、MEROXプロセスから副生成物DSO化合物を回収する装置を追加し、(a)DSO化合物が触媒(32)及び酸化剤(34)の存在下で導入され、DSO化合物を触媒酸化工程に供して、水とODSO化合物の混合ストリーム(36)を生成する適切な反応器(30)、並びに(b)副生成物(44)をODSO化合物(42)から分離するための従来型の分離槽(40)を提供することが必要である。副生成物(44)は、酸化剤として過酸化水素が使用される場合に、一般に排水を含む。あるいは、他の有機過酸化物が酸化剤として使用される場合に、副生成物(44)は一般に、使用される過酸化物のアルコールを含む。例えば、過酸化ブチルが酸化剤として使用される場合、副生成物アルコール(44)はブタノールとなる。
【0028】
水溶性ODSO化合物は、排水留分から分離された後、回収のための分留域(図示せず)に送られる。分留域は蒸留ユニットを含み得る。特定の実施形態において、蒸留ユニットは、互いにより大きな重なりを有する蒸留カットを得るために理論段を持たないフラッシュ蒸留ユニットとすることができ、あるいは、他の実施形態では、蒸留ユニットは、カットの間に効果的な分離を持たせるために、少なくとも15の理論段を持つフラッシュ蒸留ユニットとすることもできる。特定の実施形態において、蒸留ユニットは周囲圧力及び100℃から225℃の範囲の温度で動作し得る。他の実施形態において、分留は、真空条件下で連続的に実施され得る。これらの実施形態において、分留は、減圧下でそれぞれの沸点で行われる。例えば、それぞれ、350mbar及び10mbarで、温度は80℃から194℃及び11℃から98℃の範囲である。分留の後、排水は廃棄前に従来の処理のための排水プール(図示せず)に送られる。排水副生成物留分は、少量の、例えば、1ppmwから10,000ppmwの範囲の非水溶性ODSO化合物を含み得る。排水副生成物留分は、少量の、例えば100ppmwから50,000ppmwの範囲の水溶性ODSO化合物を含み得る。アルコールが副生成物アルコールである実施形態において、アルコールは回収され、商品として販売されたり、ガソリンなどの燃料に添加されたりすることができる。アルコール副生成物留分は、少量の、例えば1ppmwから10,000ppmwの範囲の非水溶性ODSO化合物を含み得る。アルコール副生成物留分は、少量の、例えば100ppmwから50,000ppmwの範囲の水溶性ODSO化合物を含み得る。
【0029】
US 2020/0181517に記載されるように、ODSO化合物は、ディーゼル燃料のための潤滑性添加剤として有用であり、その目的で現在入手可能な添加剤よりも経済的であることが判明しており、また、USP 10,793,782に記載されるように、ODSO化合物は、芳香族溶媒抽出プロセスのための溶媒として有用であることも判明しており、両方とも、参照により本明細書に組み込まれる。精製業者が、これらの用途又はその他の用途のために予測可能な必要量を超える量のDSO化合物を生成した場合、又は手元に持っている場合、精製業者は、貯蔵槽を空にするために、及び/又は在庫から生成物を取り除いて製油所の廃棄物を削減するために、DSO化合物の処分を希望することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】USP 10,781,168
【特許文献2】US 2020/0181517
【特許文献3】USP 10,793,782
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
したがって、大量のDSO副生成物及びそれらの誘導体を処理するための効率的かつ経済的なプロセスを提供し、その特性に影響を与え、改善することで、環境的に許容可能な処分を容易にし、簡素化すること、及び/又は製油所での改質生成物の利用を可能にして、それによって、精製業者にとってこのクラスの副生成物の価値を高めることが、長年にわたって明確に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0032】
比較的価値の低い酸化ジスルフィド油又は酸化ジスルフィド油及びジスルフィド油のブレンドを、水蒸気分解プロセスの添加剤として経済的に使用する本発明のプロセスによって、上記の必要性が満たされ、他の利点が提供される。当該添加剤は、水蒸気分解チューブ内でのコークスの形成を最小限に抑えることによって水蒸気分解操作を改善し、水蒸気分解炉ユニットの冶金を保護することもできる。特定の実施形態において、MEROX、E-MEROX及び水蒸気分解炉の統合プロセスは、ODSO化合物及びODSO/DSO混合物のための排出口を追加することによる製油所効率の改善も提供する。
【0033】
一実施形態において、本開示は、
酸化ジスルフィド油(ODSO)ストリーム及び水蒸気分解炉供給物ストリームを水蒸気分解コンプレックスに導入する工程;
前記ODSOストリームと前記水蒸気分解炉供給物ストリームを前記水蒸気分解コンプレックス内で混合して、ODSO成分を含む内部水蒸気分解炉混合物を生成する工程;
前記内部水蒸気分解炉混合物を前記水蒸気分解コンプレックス内での熱分解に供して、水蒸気分解炉生成物を生成する工程;
を含む、水蒸気分解方法であって、
前記熱分解の間、内部水蒸気分解炉混合物中の前記ODSO成分は、水蒸気分解炉コイル上でのコークスの形成を最小化する、方法に向けられている。
【0034】
別の実施形態において、本開示は、
酸化ジスルフィド油(ODSO)ストリームと水蒸気分解炉供給物ストリームを混合して、ODSO成分を含む改良型水蒸気分解炉供給物を生成する工程;
水蒸気分解コンプレックス内に前記改良型水蒸気分解炉供給物を導入する工程;
前記改良型水蒸気分解炉供給物を前記水蒸気分解コンプレックス内での熱分解に供して、水蒸気分解炉生成物を生成する工程;
を含む、水蒸気分解方法であって、
前記熱分解の間、前記改良型水蒸気分解炉供給物中のODSO成分は、水蒸気分解炉コイル上でのコークスの形成を最小化する、方法に向けられている。
【0035】
さらに他の態様、実施形態、及びこれらの例示的な態様及び実施形態の利点は、以下に詳細に説明される。さらに、前述の情報及び以下の詳細な説明は、両方とも、様々な態様及び実施形態の単なる例示的な例であり、特許請求される態様及び実施形態の性質及び特徴を理解するための概要又は枠組みを提供することを意図していることを理解されたい。添付の図面は、様々な態様及び実施形態を説明し、さらの理解を促すために含まれており、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。図面は、本明細書の残りの部分と共に、記載され特許請求される態様及び実施形態の原理及び動作を説明するのに役立つ。
【0036】
本開示の方法は、添付の図面を参照しながら以下でより詳細に記載されるが、同じ又は類似の要素には同じ番号が使用される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】複合プロパン及びブタンストリームの液-液抽出のための一般化型の先行技術メルカプタン酸化又はMEROXプロセスの簡略図である。
【
図2】一般化型の先行技術改良型メルカプタン酸化又はE-MEROXプロセスの簡略図である。
【
図5】本開示の統合プロセスの実施形態の簡略図である。
【
図6】本開示の統合プロセスの実施形態の簡略図である。
【
図7】本開示の統合プロセスの実施形態の水蒸気分解コンプレックスの簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本明細書で開示されるのは、比較的価値の低い酸化ジスルフィド油又は酸化ジスルフィド油及びジスルフィド油のブレンドを、水蒸気分解プロセスの添加剤として経済的に使用するプロセス及びシステムであり、これによって水蒸気分解チューブ内でのコークスの形成が抑制され、水蒸気分解炉ユニットの冶金が保護される。
【0039】
以下の記載において、「ジスルフィド油」、「DSO」、「DSO混合物」及び「DSO化合物」という用語は、便宜上同じ意味で使用され得る。
【0040】
以下の記載において、「酸化ジスルフィド油」、「ジスルフィド油の誘導体」、「ODSO」、「ODSO混合物」及び「ODSO化合物」という用語は、便宜上同じ意味で使用され得る。
【0041】
以下の記載において、「DSO/ODSO」、「DSO/ODSO混合物」及び「DSO/ODSO化合物」という用語は、便宜上同じ意味で使用され得る。
【0042】
特定のストリーム又は複数のストリームに関する「主要部分」という語句は、少なくとも約50質量%及び最大100質量%、又は別の特定の単位の同じ値を意味する。
【0043】
特定のストリーム又は複数のストリームに関する「大部分」という語句は、少なくとも約75質量%及び最大100質量%、又は別の特定の単位の同じ値を意味する。
【0044】
「相当部分」という語句は、少なくとも約90、95、98又は99質量%及び最大100質量%、又は別の特定の単位の同じ値を意味する。
【0045】
特定のストリーム又は複数のストリームに関する「微量部分」という語句は、約1、2、4又は10質量%から、最大約20、30、40又は50質量%、又は別の特定の単位の同じ値を意味する。
【0046】
本明細書で使用される場合、全ての沸点は、大気経由で原油から得られる炭化水素留分に相対し、及び/又は原油分析から得られる真沸点(True Boiling Point)値、又は商業的に許容される同等のものを指すものとする。
【0047】
本明細書で使用される「ナフサ」という用語は、約20~205、20~193、20~190、20~180、20~170、32~205、32~193、32~190、32~180、32~170、36~205、36~193、36~190、36~180又は36~170℃の範囲で沸騰する炭化水素を指す。
【0048】
特定の実施形態において、ナフサ、軽質ナフサ及び/又は重質ナフサは、原油蒸留、又は本明細書に記載の中間精製プロセスの蒸留によってえられる石油留分を指す。
【0049】
「直留(straight run)」という修飾用語は、その周知の意味を有して本明細書で使用され、すなわち、水素化処理、流動式接触分解、又は水蒸気分解などの他の精製処理を行わずに、任意選択で水蒸気ストリッピングを受けた常圧蒸留ユニットから直接得られる留分を表す。この例としては、「直留ナフサ(straight run naphtha)」及びその頭文字「SRN」が挙げられ、これは、周知のように、任意選択で水蒸気ストリッピングを受けた常圧蒸留ユニットから直接得られる、上記で定義された「ナフサ」を指す。
【0050】
本明細書で使用される「常圧軽油(atmospheric gas oil)」という用語及びその頭文字「AGO」は、約205~400、205~380、205~370、205~360、205~340、205~320、240~400、240~380、240~370、240~360、240~340、240~320、270~400、270~380、270~370、270~360、270~340又は270~320℃の範囲で沸騰する炭化水素を指す。
【0051】
本明細書で使用される「真空軽油(vacuum gas oil)」という用語及びその頭文字「VGO」は、約370~550、370~540、370~530、370~510、400~550、400~540、400~530、400~510、420~550、420~540、420~530又は420~510℃の範囲で沸騰する炭化水素を指す。
【0052】
「燃料」という用語は、エネルギー担体として使用される原油由来の生成物を指す。製油所で一般的に生成される燃料には、これらに限定されないが、ガソリン、ジェット燃料、ディーゼル燃料、燃料油及び石油コークスが含まれる。明確に定義された化合物の集合体である石油化学製品とは異なり、燃料は通常、様々な炭化水素化合物の複雑な混合物である。
【0053】
「芳香族炭化水素」又は「芳香族(芳香族化合物)」という用語は、当技術分野で非常によく知られている。したがって、「芳香族炭化水素」という用語は、仮定上の局在構造(例えば、ケクレ構造)のものよりも著しく高い安定性(非局在化による)を有する環状共役炭化水素を指す。所定の炭化水素の芳香族性を測定する最も一般的な方法は、その1H NMRスペクトルにおけるジアトロピシティ(diatropicity)、例えば、ベンゼン環プロトンの7.2~7.3ppmの範囲の化学シフトの存在を観察することである。
【0054】
「C#炭化水素」又は「C#」という用語は、そのよく知られた意味を有して本明細書で使用され、「#」が整数の値であり、その数値の炭素原子を有する炭化水素を意味する。「C#+炭化水素」又は「C#+」という用語は、数値以上の炭素原子を有する炭化水素を指す。「C#-炭化水素」又は「C#-」という用語は、数値以下の炭素原子を有する炭化水素を指す。同様に、範囲も記載され、例えば、C1~C3は、C1、C2及びC3を含む混合物を意味する。
【0055】
「石油化学品」又は「石油化学製品」という用語は、燃料として使用されない原油から得られる化学製品を指す。石油化学製品には、化学製品及びポリマーを製造するための基本原料として使用されるオレフィン及び芳香族化合物が含まれる。典型的なオレフィン系石油化学製品には、これらに限定されないが、エチレン、プロピレン、ブタジエン、ブチレン-1、イソブチレン、イソプレン、シクロペンタジエン及びスチレンが含まれる。典型的な芳香族石油化学製品には、これらに限定されないが、ベンゼン、トルエン、キシレン及びエチルベンゼンが含まれる。
【0056】
「オレフィン」という用語は、よく知られた意味で、すなわち、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む不飽和炭化水素化合物という意味で本明細書で使用される。複数形で、「オレフィン(olefins)」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む不飽和炭化水素化合物の2つ以上を含む混合物を意味する。特定の実施形態において、「オレフィン(olefins)」という用語は、エチレン、プロピレン、ブタジエン、ブチレン-1、イソブチレン、イソプレン、及びシクロペンタジエンの2つ以上を含む混合物に関する。
【0057】
特定のストリーム又は複数のストリームに関する「主要部分」という語句は、少なくとも約50質量%及び最大100質量%、又は別の特定の単位の同じ値を意味する。
【0058】
特定のストリーム又は複数のストリームに関する「大部分」という語句は、少なくとも約75質量%及び最大100質量%、又は別の特定の単位の同じ値を意味する。
【0059】
特定のストリーム又は複数のストリームに関する「相当部分」という語句は、少なくとも約90、95、98又は99質量%及び最大100質量%、又は別の特定の単位の同じ値を意味する。
【0060】
特定のストリーム又は複数のストリームに関する「微量部分」という語句は、約1、2、4又は10質量%から、最大約20、30、40又は50質量%、又は別の特定の単位の同じ値を意味する。
【0061】
図3を参照すると、プロセス及びシステムの一実施形態において、ODSOストリーム(1042)及び水蒸気分解炉供給物(1202)が混合され、スチーム源(1223)と共に水蒸気分解コンプレックス(1215)内の水蒸気分解域(1220)に送られる。
【0062】
特定の実施形態において、ODSOストリーム(1042)はDSO化合物の酸化からの混合物を含み、混合物は、ジアルキル-チオスルホキシド(R-SO-S-R’)、ジアルキル-チオスルホン(R-SOO-S-R’)、ジアルキル-スルホンスルホキシド(R-SOO-SO-R’)、ジアルキル-ジスルホン(R-SOO-SOO-R’)、ジアルキル-ジスルホキシド(R-SO-SO-R’)、アルキル-スルホキシドスルホネート(R-SO-SOO-OH)、アルキル-スルホンスルホネート(R-SOO-SOO-OH)、アルキル-スルホキシドスルフィネート(R-SO-SO-OH)及びアルキル-スルホンスルフィネート(R-SOO-SO-OH)を含む。特定の実施形態において、ODSOストリーム(1042)は、一般式(R-SO-S-R’)、(R-SOO-S-R’)、(R-SOO-SO-R’)、(R-SOO-SOO-R’)、(R-SO-SO-R’)、(R-SO-SOO-OH)、(R-SOO-SOO-OH)、(R-SO-SO-OH)、(R-SOO-SO-OH)、(X-SO-OR)及び(X-SOO-OR)を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1つのODSO化合物を含む、からなる、又は実質的にからなる。特定の実施形態において、ODSOストリーム(1042)は、一般式(R-SO-S-R’)、(R-SOO-S-R’)、(R-SOO-SO-R’)、(R-SOO-SOO-R’)、(R-SO-SO-R’)、(R-SO-SOO-OH)、(R-SOO-SOO-OH)、(R-SO-SO-OH)、(R-SOO-SO-OH)、(X-SO-OR)及び(X-SOO-OR)を有する化合物からなる群から選択される2つ以上のODSO化合物の混合物を含む、からなる、又は実質的にからなる。特定の実施形態において、ODSOストリーム(1042)は、一般式(R-SOO-SO-R’)、(R-SOO-SOO-R’)、(R-SO-SOO-OH)、(R-SOO-SOO-OH)、(R-SOO-SO-OH)、(X-SO-OR)及び(X-SOO-OR)を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1つの水溶性ODSO化合物を含む、からなる、又は実質的にからなる。特定の実施形態において、ODSOストリーム(1042)は、一般式(R-SOO-SO-R’)、(R-SOO-SOO-R’)、(R-SO-SOO-OH)、(R-SOO-SOO-OH)、(R-SOO-SO-OH)、(X-SO-OR)及び(X-SOO-OR)を有する化合物からなる群から選択される2つ以上の水溶性ODSO化合物の混合物を含む、からなる、又は実質的にからなる。特定の実施形態において、ODSOストリーム(1042)は、(R-SOO-SO-R’)、(R-SOO-SOO-R’)、(R-SO-SOO-OH)、(R-SOO-SOO-OH)、(R-SO-SO-OH)、(R-SOO-SO-OH)及びこれらの混合物からなる群から選択されるODSO化合物を含む、からなる、又は実質的にからなる。DSOの供給源は精製所の供給物ストリームであるため、R及びX置換基は多様であり、例えばメチル及びエチルのサブグループがあり、受け取ったままの供給物ストリーム中の硫黄の原子の数Sは、3、例えばトリスルフィド化合物、まで拡張され得ることが理解され得る。特定の実施形態において、上記式中、R及びR’は1~10個の炭素原子を含むアルキル又はアリール基である。さらに、Xはエステルを示し、(R-SO)又は(R-SOO)であり、Rは上で定義したとおりである。
【0063】
特定の実施形態において、DSOストリーム(1024)はODSOストリーム(1042)と混合され、複合DSO/ODSOストリーム(1046)を生成することができ、次いで、これを水蒸気分解炉供給物(1202)と混合する。特定の実施形態において、混合は、スターラー、インジェクター及び/又はインラインミキサー(図示せず)を備えた別個の混合槽設備などの当技術分野で知られる混合技術によって実施され得る。
【0064】
ストリーム(1046)において、DSOに対するODSOの割合は、100:0から0.001:99.999の範囲であり得る。特定の実施形態において、DSO/ODSOストリーム(1046)の相当部分は、DSO化合物を含み、DSO/ODSOストリーム(1046)の微量部分はDSO化合物を含み、例えば、ストリーム(1046)においてDSOに対するODSOの割合は、100:0から99:1又は100:0から95:5、又は100:0から90:10V%の範囲であり得る。特定の実施形態において、DSO/ODSOストリーム(1046)の大部分はODSO化合物を含み、DSO/ODSOストリーム(1046)の微量部分はDSO化合物を含み、例えば、ストリーム(1046)においてDSOに対するODSOの割合は100:0から80:20又は100:0から75:25V%の範囲であり得る。特定の実施形態において、DSO/ODSOストリーム(1046)の主要部分はODSO化合物を含み、DSO/ODSOストリーム(1046)の微量部分はDSO化合物を含み、例えば、ストリーム(1046)においてDSOに対するODSOの割合は100:0から60:40又は100:0から50:50V%の範囲であり得る。
【0065】
特定の実施形態において、ODSOストリーム(1042)と混合されるDSOストリームがなく、したがって、ストリーム(1046)においてDSOに対するODSOの割合は100:0 V%である。
【0066】
水蒸気分解炉供給物(1202)は、ODSOストリーム(1042)(又はDSO/ODSOストリーム(1046))と混合されて、改良型水蒸気分解炉供給物(1222)を形成し、これは、スチーム源(1223)と共に水蒸気分解域(1220)の1つ又は複数の入り口に送られる。特定の実施形態において、ODSOストリーム(1042)(又はDSO/ODSOストリーム(1046))は、水蒸気分解炉供給物(1202)を含む水蒸気分解炉供給物パイプに注入される。特定の実施形態において、パイプ内の乱流により、水蒸気分解炉のパイプに入る前にストリームが十分に混合される。
【0067】
特定の実施形態において、水蒸気分解コンプレックス(1215)は、水蒸気分解域(1220)及び以下で詳細に記載される他の追加の下流処理ユニットを含む。
【0068】
それぞれの実施形態において、水蒸気分解コンプレックス(1215)内の水蒸気分解域(1220)は、大規模又は小規模の熱分解プロセスとして作動し、一般に、水蒸気分解炉供給物(1222)を水蒸気分解コンプレックス(1215)から得られる水蒸気分解炉生成物に転化し、これは一般に、混合C1~C4パラフィン及びオレフィン、熱分解ガソリン(1226)及び熱分解燃料油(1228)を含む混合ガス生成物ストリーム(1225)を含む。
【0069】
水蒸気分解コンプレックス(1215)の特定の構成に応じて(
図7を参照して以下でより詳細に記載する)、水蒸気分解炉生成物(1225)は、一般に水素(1232)、燃料ガス(1234)、エチレン(1236)、プロパン(1246)、プロピレン(1248)、1,3-ブタジエン生成物(1252)、メチルターシャリーブチルエーテル(1262)、及び1-ブテン生成物ストリーム(1268)を含む。いくつかの実施形態において、水素(1232)、燃料ガス(1234)、エチレン(1236)、プロパン(1246)、プロピレン(1248)、1,3-ブタジエン生成物(1252)、メチルターシャリーブチルエーテル(1262)、及び1-ブテン生成物ストリーム(1268)のストリームは、混合生成物ストリーム(1225)で表される。
【0070】
改良型水蒸気分解炉供給物(1222)内のODSO成分又はDSO/ODSO成分の組み合わせは、分解炉(cracker)コイル上でのコークスの形成を最小限に抑える又は抑制するのに役立ち、また、水蒸気分解炉の冶金を保護する。
【0071】
水蒸気分解炉供給物(1202)の例には、1つ又は複数の軽質炭化水素、例えばエタン、プロパン、ブタン;5~6個の炭素原子を含有する軽質ナフサパラフィン系炭化水素;パラフィンを含む重質ナフサ炭化水素;ナフテン;7~12個の範囲の炭素数を有する芳香族化合物;パラフィンを含む中間留分炭化水素;180~370℃の範囲の沸点を有するナフテン及び芳香族化合物、370から565℃の範囲の沸点を有する直留又は水素化処理された真空軽油が含まれる。一つ又は複数の特定の実施形態において、水蒸気分解炉供給物(1202)は、ディーゼル燃料、及びより詳細には、選択された実施形態において10ppm未満の硫黄を有する超低硫黄ディーゼル燃料を含んでもよい。
【0072】
いくつかの実施形態において、好ましい水蒸気分解炉供給物は、1つ又は複数の低硫黄含油供給物、例えばエタン、プロパン、ブタンなどの軽質炭化水素;5~6個の炭素原子を含有する軽質ナフサパラフィン系炭化水素を含む。
【0073】
いくつかの実施形態において、DSOは、水蒸気分解炉の対流部に添加され得、ODSOは熱分解部に添加され得る。
【0074】
本プロセス及びシステムの別の実施形態の、
図4を参照すると、ODSOストリーム(1042)、水蒸気分解炉供給物(1202)及びスチーム源(1223)は、水蒸気分解コンプレックス(1215)内の水蒸気分解域(1220)に送られる。
【0075】
図4に示す実施形態は、
図3に示す実施形態と同様に動作し、同様の参照番号は同様のユニット/供給物を表す。特定の実施形態において、ODSO化合物及び水蒸気分解炉供給物を別の入り口を介して水蒸気分解炉に送ることが好ましい場合がある。例えば、ODSOストリーム(1042)(又はDSO/ODSOストリーム(1046))中に存在するODSO化合物の正確な組成及び量に応じて、ODSO化合物は水蒸気分解炉供給物(1202)と部分的に又は完全に非混和性であり得る。例えば、2つの酸素原子を有するODSO化合物は油溶性であり、水蒸気分解炉供給物に混和性を有する。一方、3個以上の酸素原子を有するODSO化合物は水溶性であり、一般に水蒸気分解炉供給物に非混和性である。いくつかの実施形態において、ppmレベルの3個以上の酸素原子を有するODSO化合物は、水蒸気分解炉供給物と混和性を有し得る。
【0076】
水蒸気分解炉供給物(1202)及びODSOストリーム(1042)(又はDSO/ODSOストリーム(1046))は、スチーム源(1223)と共に、水蒸気分解コンプレックス(1215)の水蒸気分解域(1220)の別々の入り口を介して、送られる。この実施形態において、水蒸気分解炉供給物(1202)及びODSOストリーム(1042)(又はDSO/ODSOストリーム(1046))は、熱分解の前に水蒸気分解域(1220)内で内部混合される。
【0077】
図3で参照して記載したのと同様の方法で、DSOストリーム(1024)の全部又は一部をODSOストリーム(1042)と混合して複合DSO/ODSOストリーム(1046)を生成することができ、次いで、これは水蒸気分解域(1220)の一つ又は複数の入り口に送られる。
【0078】
水蒸気分解域(1220)内に存在するODSO成分及び/又はDSO/ODSO成分の組み合わせは、分解炉コイル上でのコークスの形成を最小限に抑える又は抑制するのに役立ち、また、水蒸気分解炉の冶金を保護する。
【0079】
特定の実施形態において、水蒸気分解炉供給物(1202)に添加され得るODSOストリーム(1042)又は複合DSO/ODSOストリーム(1046)の量は、10~1000ppmw、10~500ppmw、10~300ppmw、又は10~100ppmwの範囲であり得る。水蒸気分解炉供給物に添加されるODSO又はODSO/DSO化合物の量は、ODSO化合物が水蒸気分解炉に導入される前に水蒸気分解炉供給物に添加されるか、又はODSO化合物が水蒸気分解炉内に直接添加されるかに依存しない。
【0080】
図3及び4を参照して記載されるように、ODSO化合物は水蒸気分解炉でのコークスの形成を低減するために使用される。特定の実施形態において、E-MEROXユニットとの直接統合、MEROXユニットとの直接統合、又はE-MEROXユニット及びMEROXユニットとの直接統合が可能である。
【0081】
MEROXユニットとE-MEROXユニットの両方を含む統合プロセスにおいて、副生成物の酸化ジスルフィド油を処理するための本開示のプロセスの実施形態は、
図5及び6を参照して記載される。E-MEROXユニット又はMEROXユニットの1つが統合される実施形態は示されていないが、同様に実施され得る。例えば、ODSOストリームが運び込まれて統合MEROXユニットからのDSOストリームに組み合されることができ、あるいは、DSOストリームが運び込まれて統合E-MEROXユニットからのODSOストリームに組み合されることができる。
【0082】
図5を参照すると、本プロセス及びシステムの一実施形態は、MEROXユニット(1010)、改良型MEROX(E-MEROX)ユニット(1030)、及び水蒸気分解コンプレックス(1215)を含む。MEROXユニット(1010)及び改良型MEROX(E-MEROX)ユニット(1030)は、
図1~2のものと同様に動作し、同様の参照番号は同様のユニット/供給物を表す。MEROXユニット(1010)からのDSO化合物(1007)の副生成物ストリームの全て又は一部は、ODSOストリーム(1042)に転化するためにストリーム(1022)を介してE-MEROXユニット(1030)に送られる。
【0083】
特定の実施形態において、DSOストリーム(1007)の一部であるストリーム(1024)は、ODSOストリーム(1042)と混合されて、複合DSO/ODSOストリーム(1046)を生成し、次いで、それが水蒸気分解炉供給物(1202)と混合される。
【0084】
水蒸気分解炉供給物(1202)は、ODSOストリーム(1042)(又はDSO/ODSOストリーム(1046))と混合されて、改良型水蒸気分解炉供給物(1222)を形成し、これは、スチーム源(1223)と共に水蒸気分解コンプレックス(1215)に送られる。特定の実施形態において、混合は、スターラー、インジェクター及び/又はインラインミキサーを備えた別個の混合槽設備などの当技術分野で知られる混合技術によって実施され得る。特定の実施形態において、ODSOストリーム(1042)(又はDSO/ODSOストリーム(1046))は、水蒸気分解炉供給物(1202)を含む水蒸気分解炉供給物パイプに注入される。特定の実施形態において、パイプ内の乱流により、ストリームが十分に混合される。
【0085】
改良型水蒸気分解炉供給物(1222)内のODSO成分又はDSO/ODSO成分の組み合わせは、分解炉コイル上でのコークスの形成を最小限に抑える又は抑制するのに役立ち、また、水蒸気分解炉の冶金を保護する。
【0086】
図6を参照すると、本プロセス及びシステムの別の実施形態は、MEROXユニット(1010)、改良型MEROX(E-MEROX)ユニット(1030)、及び水蒸気分解コンプレックス(1215)を含む。MEROXユニット(1010)及び改良型MEROX(E-MEROX)ユニット(1030)は、
図1~5のものと同様に動作し、同様の参照番号は同様のユニット/供給物を表す。特定の実施形態において、ODSO化合物及び水蒸気分解炉供給物を別の入り口を介して水蒸気分解炉に送ることが好ましい場合がある。
【0087】
MEROXユニット(1010)からのDSO化合物(1007)の副生成物ストリームの全て又は一部は、ODSOストリーム(1042)に転化するためにストリーム(1022)を介してE-MEROXユニット(1030)に送られる。水蒸気分解炉供給物(1202)及びODSOストリーム(1042)(又はDSO/ODSOストリーム(1046))は、別の入り口を介してスチーム源(1223)と共に水蒸気分解コンプレックス(1215)に送られる。この実施形態において、水蒸気分解炉供給物(1202)及びODSOストリーム(1042)(又はDSO/ODSOストリーム(1046))は、熱分解の前に水蒸気分解コンプレックス(1215)内で内部混合される。
【0088】
図5で参照して記載したのと同様の方法で、DSOストリーム(1007)の全部又は一部、ストリーム(1024)をODSOストリーム(1042)と混合して複合DSO/ODSOストリーム(1046)を生成することができ、次いで、これは水蒸気分解コンプレックス(1215)に送られる。
【0089】
水蒸気分解コンプレックス(1215)内に存在するODSO成分及び/又はDSO/ODSO成分の組み合わせは、分解炉コイル上でのコークスの形成を最小限に抑える又は抑制するのに役立ち、また、水蒸気分解炉の冶金を保護する。
【0090】
特定の実施形態において、水蒸気分解炉供給物(1202)に添加され得るODSOストリーム(1042)又は複合DSO/ODSOストリーム(1046)の量は、10~1000ppmw、10~500ppmw、10~300ppmw、又は10~100ppmwの範囲であり得る。水蒸気分解炉供給物に添加されるODSO又はODSO/DSO化合物の量は、ODSO化合物が水蒸気分解炉に導入される前に水蒸気分解炉供給物に添加されるか、又はODSO化合物が水蒸気分解炉内に直接添加されるかに依存しない。
【0091】
図7を参照すると、前述したように、いくつかの実施形態において、水蒸気分解コンプレックス(1215)は、水蒸気分解域(1220)及び他の追加の下流処理ユニットを含み、少なくとも熱分解ガソリン(1226)及び熱分解燃料油(1228)、並びに
図7に示すように水素(1232)、燃料ガス(1234)、エチレン(1236)、プロパン(1246)、プロピレン(1248)、1,3-ブタジエン生成物(1252)、メチルターシャリーブチルエーテル(1262)、及び1-ブテン生成物ストリーム(1268)を生成する。
【0092】
図7は、水蒸気分解炉供給物(1221)を含み、これは、
図3及び
図5の改良型水蒸気分解炉供給物(1222)又は
図4及び
図6の分解炉に別の入り口を介して送られる水蒸気分解炉供給物(1202)及びODSOストリーム(1042)(又はDSO/ODSOストリーム(1046))を表す。水蒸気分解炉供給物(1221)とスチーム源(1223)は、大規模又は小規模の熱分解プロセスとして作動する水蒸気分解域(1220)に投入され、一般に水蒸気分解炉供給物(1221)は、主に混合C1~C4パラフィン及びオレフィンを含む混合生成物ストリーム(1224)に転化され、熱分解ガソリン(1226)及び熱分解燃料油(1228)が同時に生成される。
【0093】
水蒸気分解域(1220)の動作中、分解炉からの流出物は、例えば伝熱ライン交換機を用いれ急冷され(図示せず)、急冷塔に送られる。軽質生成物、急冷された分解ガスストリームは、オレフィン回収域(1230)に送られる。重質生成物は高温蒸留部で分離される。原熱分解燃料油ストリーム(1228)は急冷システム内で回収される。熱分解ガソリン(1226)は、急冷塔の前の一次分留塔(図示せず)で分離される。
【0094】
水蒸気分解域(1220)の一実施形態の動作中、原料は対流部で予熱される。予熱された原料は、分解炉の放射部又は熱分解部に取り付けられた管型反応器に供給される。炭化水素は、フリーラジカル熱分解反応を起こして、軽質オレフィンであるエチレン及びプロピレン、並びに他の副生成物を形成する。ある特定の実施形態において、エタン、プロパン、及びブタン/ナフサを含む、主要原料の種類のそれぞれに最適化された分解管形状を持つ専用分解炉が提供される。価値の高くない炭化水素、例えば、エタン、プロパン、C4ラフィネート、及び芳香族化合物ラフィネートなども、統合システム及びプロセス内で生成するが、これらは水蒸気分解域(1220)で消滅するまで循環使用される。
【0095】
特定の実施形態において、炉からの分解ガスは、伝熱ライン交換機(クエンチ冷却器)で冷却されて、例えば、希釈蒸気として適した1800psigの蒸気を生成する。クエンチされた分解ガスは、熱分解燃料油塔底分をより軽質の成分から取り出すため、水蒸気分解コンプレックス(1215)に付随した一次分留塔に入る。一次分留塔は、熱分解燃料油の効率的な回収を可能にする。熱分解燃料油は、燃料油ストリッパで、蒸気によりストリッピングされ、生成物蒸気圧が制御されるとともに冷却される。また、熱分解燃料油をクエンチ油として液体炉流出物に直接注入することにより、二次クエンチを行うことが可能である。ストリップ及び冷却が行われた熱分解燃料油は、燃料油プール又は生成物貯蔵部に送ることが可能である。一次分留塔塔頂分は、クエンチ水塔に送られ;プロセス水処理用の圧縮希釈蒸気、及び原熱分解ガソリンが回収される。クエンチ水塔塔頂分は、オレフィン回収域(1230)、特に第一圧縮段に送られる。原熱分解ガソリンは、ガソリン安定化装置に送られ、あらゆる軽留分が除去され、また下流の熱分解ガソリン処理における蒸気圧が制御される。閉鎖ループ希釈蒸気/プロセス水システムが可能であり、その場合、希釈蒸気は、一次分留塔クエンチポンプアラウンドループからの熱回収を使用して生成する。一次分留塔は、エネルギーの統合及び軽質留分ストリーム中の熱分解燃料油含有量のため、熱分解燃料油の効率的回収を可能にする。
【0096】
水蒸気分解域(1220)から出る混合生成物ストリーム(1224)流出物はオレフィン回収域(1230)に送られる。例えば、クエンチ工程から出る軽質生成物、C4-、H2、及びH2Sは、オレフィン回収域(1230)に送られる混合生成物ストリームに含まれている。生成物は、以下を含む:水素(1232)、これは循環使用に使用される、及び/又は使用部に送られる;燃料ガス(1234)、これは燃料ガスシステムに送られ得る;エタン(1242)、これは水蒸気分解域(1220)に循環使用される;エチレン(1236)、これは生成物として回収される;混合C3ストリーム(1238)、これはメチルアセチレン/プロパジエン飽和及びプロピレン回収域(1244)に送られる;ならびに、混合C4ストリーム(1240)、これはブタジエン抽出域(1250)に送られる。
【0097】
オレフィン回収域(1230)は、混合生成物ストリームから、仕様を満たす軽質オレフィン(エチレン及びプロピレン)生成物を生成するように作動する。例えば、水蒸気分解炉から出る冷却されたガス中間生成物は、分解ガス圧縮機、腐食洗浄域、及び蒸留により生成物を分離するための1つ又は複数の分離トレインに供給される。ある特定の実施形態において、2つのトレインが提供される。蒸留トレインは、低温蒸留部を備え、より軽質の生成物、例えば、メタン、水素、エチレン、及びエタンなどは、極低温蒸留/分離運転で分離される。水蒸気分解炉から出る混合C2ストリームは、アセチレンを含有し、このアセチレンは、アセチレン選択的水素化ユニットで、水素化されてエチレンを生成する。このシステムは、エチレン、プロパン、及び/又はプロピレン冷却設備も備えることが可能であり、極低温蒸留を可能にする。
【0098】
一実施形態において、水蒸気分解域(1220)から出る混合生成ストリーム(1224)は、3~5段の圧縮を通過する。酸性ガスは、腐食洗浄塔で腐食性を用いて除去される。圧縮及び乾燥のさらなる段階後、軽質分解ガスは、冷却されて脱プロパン塔に送られる。特定の実施形態において、軽質分解ガスは、極低温分離のため、カスケード式2レベル冷凍システム(プロピレン、混合2元冷媒)で冷却される。フロントエンド脱プロパン塔は、冷却トレイン及び脱メタン塔負荷を最適化する。脱プロパン塔は、C3及びそれより軽質の分解ガスを塔頂ストリームとして、C4及びそれより重質の炭化水素を塔底ストリームとして、分離する。脱プロパン塔塔底分は、脱ブタン塔に送られ、脱ブタン塔は、粗C4ストリーム(1240)及び任意の痕跡量熱分解ガソリンを回収する。
【0099】
脱プロパン塔塔頂分は、一連のアセチレン転化反応器を通過し、それから脱メタン塔冷却トレインに供給され、脱メタン塔冷却トレインは、濃水素生成物を、水素精製システム、例えば圧スイング吸着などを介して分離する。フロントエンドアセチレン水素化は、温度制御を最適化し、緑油形成を最小限に抑え、及びC2スプリッタパスツリゼーション部を排除することによりエチレン生成物回収を簡素化するように実施され、C2スプリッタパスツリゼーション部は、本発明でなければ、生成物回収に典型的に含まれるものである。また、圧スイング吸着を介した水素精製は、メタン化反応器の必要性も排除し、メタン化反応器は、本発明でなければ、生成物回収に典型的に含まれるものである。
【0100】
脱メタン塔は、塔頂で、燃料ガス用にメタンを回収し、また脱メタン塔塔底で、C2及びそれより重質のガスを回収して、脱エタン塔に送る。脱エタン塔は、エタン及びエチレン塔頂分を分離し、これらはC2スプリッタに供給される。C2スプリッタは、塔頂で、エチレン生成物(1236)を、特定の実施形態においてポリマー純度のエチレン生成物を回収する。C2スプリッタ塔底から出るエタン(1242)は、水蒸気分解域(1220)に循環使用される。脱エタン塔塔底分は、C3を含有し、ここから、プロピレン生成物(1248)が、特定の実施形態においてポリマー純度のプロピレン生成物が、C3スプリッタの塔頂分として回収され、C3スプリッタ塔底から出るプロパン(1246)は、水蒸気分解域(1220)に循環使用される。
【0101】
メチルアセチレン/プロパジエン(MAPD)飽和及びプロピレン回収域(1244)は、メチルアセチレン/プロパジエンを転化させ選択的水素化のため、及びオレフィン回収域(1230)から出る混合C3ストリーム(1238)からプロピレンを回収するため、提供される。オレフィン回収域(1230)から出る混合C3(1238)は、相当量のプロパジエン及びプロピレンを含有する。メチルアセチレン/プロパジエン飽和及びプロピレン回収域(1244)は、プロピレン(1248)の生成を可能にし、プロピレン(1248)は、特定の実施形態において、ポリマー純度のプロピレンであることが可能である。
【0102】
メチルアセチレン/プロパジエン飽和及びプロピレン回収域(1244)は、オレフィン回収域(1230)から水素及び混合C3(1238)を受け取る。メチルアセチレン/プロパジエン飽和及びプロピレン回収域(1244)から出る生成物は、プロピレン(1248)及び循環使用C3ストリーム(1246)であり、プロピレン(1248)は回収され、循環使用C3ストリーム(1246)は水蒸気分解域(1220)に送られ得る。特定の実施形態において、メチルアセチレン及びプロパジエンを飽和させるために使用される水素は、オレフィン回収域(1230)から得られる水素(1232)に由来する。
【0103】
オレフィン回収域(1230)から出る、粗C4として知られるC4混合物を含有するストリーム(1240)は、ブタジエン抽出域(1250)に送られて、混合粗C4から高純度1,3-ブタジエン生成物(1252)が回収される。特定の実施形態において(図示せず)、ブタジエン抽出域(1250)前の混合C4の水素化工程を、例えば、固定床反応器を使用する適切な接触水素化プロセスと統合して、アセチレン化合物を除去することが可能である。1,3-ブタジエン(1252)は、例えば、溶媒としてn-メチル-ピロリドン(NMP)又はジメチルホルムアミド(DMF)を用いる抽出蒸留により、水素化混合C4ストリームから回収される。ブタジエン抽出域(1250)は、ブタン/ブテンを含有するラフィネートストリーム(1254)も生成させ、これは、メチルターシャリーブチルエーテル域(1256)に送られる。
【0104】
一実施形態において、ブタジエン抽出域(1250)における運転では、ストリーム(1240)は、予熱され、気化されて、第一抽出蒸留塔に入り、第一抽出蒸留塔は、例えば2つの部(section)を備える。NMP又はDMF溶媒は、1,3-ブタジエンを、ストリーム(1254)に含まれるその他のC4成分から分離させる。濃縮溶媒を、気化ガスでフラッシュして第二抽出蒸留塔に送り、第二抽出蒸留塔は、高純度1,3-ブタジエンストリームを塔頂生成物として生成する。フラッシュ及び第二蒸留塔塔底から出る液状溶媒は、一次溶媒回収塔に送られる。塔底液は、抽出装置に再循環させられ、塔頂液は、二次溶媒回収又は溶媒精製(polishing)塔に送られる。回収塔から出る気化塔頂分は、循環使用ブタジエン生成物とまとめられて、抽出装置の塔底に入り、1,3-ブタジエンの濃度を上昇させる。1,3-ブタジエン生成物(1252)は、あらゆる痕跡量の溶媒を除去するために水洗浄することが可能である。特定の実施形態において、生成物純度(重量%)は、97~99.8、97.5~99.7、又は98~99.6の1,3-ブタジエンであり;供給原料の1,3-ブタジエン含有量の94~99、94.5~98.5、又は95~98(重量%)が回収される。DMFなどの溶媒の他に、ブタジエン回収率を向上させるために、添加剤化学物質を溶媒にブレンドする。また、抽出蒸留塔及び一次溶媒回収塔は、高圧蒸気(例えば、600psig)及び別の供給源から出る循環熱油を熱交換流体として使用して、再沸騰させる。
【0105】
メチルターシャリーブチルエーテル域(1256)は、第一C4ラフィネートストリーム(1254)からメチルターシャリーブチルエーテル(1262)及び第二C4ラフィネート(1260)を生成させるために統合される。特定の実施形態において、C4ラフィネート1(1254)は、選択的水素化に供されて、あらゆる残存ジエンが選択的に水素化され、イソブテンがメタノールと反応するより先に、メチルターシャリーブチルエーテルを生成させる。
【0106】
1-ブテン生成物ストリーム(1268)の回収に関する純度仕様は、第二C4ラフィネート(1260)中のイソブチレンレベルが低下していることを必要とする。一般に、混合ブタン及びブテンを含有する第一C4ラフィネートストリーム(1254)は、イソブチレンも含んだ状態で、メチルターシャリーブチルエーテル域(1256)に送られる。メタノール(1258)も加えられ、これは、イソブチレンと反応して、メチルターシャリーブチルエーテル(1262)を生成する。例えば、メチルターシャリーブチルエーテル生成物及びメタノールは、一連の分留塔で分離され、第二の反応段に送られる。メタノールは、水洗浄及び最終分留段で取り出される。
【0107】
メチルターシャリーブチルエーテル域(1256)の一実施形態の運転において、ラフィネートストリーム(1254)は、重量で35~45%、37~42.5%、38~41%、又は39~40%のイソブチレンを含有する。この成分は、必要とされる純度仕様、例えば、ブテン-1回収域(1266)から出る1-ブテン生成物ストリーム(1268)に関して98重量%以上、を達成するため、C4ラフィネート(1260)から取り出される。メタノール(1258)は、特定の実施形態において、装置の境界の外側からくる98重量%以上の純度レベルを有する高純度メタノールであるが、このメタノールと、ラフィネートストリーム(1254)に含有されるイソブチレン、及び特定の実施形態において任意選択のメタセシス工程から出るイソブチレンが、一次反応器で反応する。特定の実施形態において、一次反応器は、固定床ダウンフロー型脱水素化反応器であり、重量基準で約70~95%、75~95%、85~95%、又は90~95%の範囲でイソブチレン転化するように作動する。一次反応器から出る流出物は、反応塔に送られ、ここで反応が完了する。特定の実施形態において、反応塔及び一次反応器の発熱による熱は、任意選択で、提供される蒸気とともに塔リボイラーへの補充に使用することが可能である。反応塔塔底分は、一次反応器及び反応塔で生成した、メチルターシャリーブチルエーテル、痕跡量、例えば2%未満の未反応メタノール、及び重質生成物を含有する。反応塔塔頂分は、未反応メタノール及び無反応性C4ラフィネートを含有する。このストリームを水洗浄して、未反応メタノールを取り出してから、C4ラフィネート(1260)として1-ブテン回収域(1266)に送る。回収されたメタノールは、メタノール回収塔で洗浄水から取り出され、一次反応器に循環使用される。
【0108】
メチルターシャリーブチルエーテル域(1256)から出るC4ラフィネートストリーム(1260)は、ブテン-1回収用の分離域(1266)に送られる。特定の実施形態において、メチルターシャリーブチルエーテル域(1256)の上流、又はメチルターシャリーブチルエーテル域(1256)とブテン-1回収用の分離域(1266)との間に、選択的水素化域も備えることが可能である(図示せず)。例えば、特定の実施形態において、メチルターシャリーブチルエーテル域(1256)から出るラフィネートは、選択的水素化ユニットで選択的に水素化されて、ブテン-1を生成する。他のコモノマー及びパラフィンも同時生成する。選択的水素化域は、選択的水素化域内の循環使用から得られる水素及びメイクアップ水素による有効量の水素の存在下で作動し;特定の実施形態において、選択的水素化域用のメイクアップ水素の全部又は一部は、オレフィン回収トレイン(1230)から出る水蒸気分解炉水素ストリーム(1232)に由来する。
【0109】
1-ブテン生成物ストリーム(1268)の選択的回収のため、ならびに水蒸気分解域(1220)に送られる循環使用ストリーム(1264)の回収のため、1つ又は複数の分離工程が使用される。例えば、1-ブテンは、2つの分離塔を使用して回収することが可能であり、第一塔は、パラフィンからオレフィンを回収し、第二塔は、2-ブテンを含む混合物から1-ブテンを分離し、2-ブテンを含む混合物は、第一塔から出るパラフィンとブレンドされて、循環使用ストリーム(1264)として水蒸気分解炉に循環使用される。
【0110】
特定の実施形態において、メチルターシャリーブチルエーテル域(1256)から出るC4ラフィネートストリーム(1260)は、第一スプリッタに送られ、そこで、イソブタン、1-ブテン、及びn-ブタンが、より重質のC4成分から分離される。イソブタン、1-ブテン、及びn-ブタンは、塔頂分として回収され、空気冷却器で凝縮され、第二スプリッタに送られる。第一スプリッタから出る塔底分は、主にcis-及びtrans-2-ブテンを含有し、これは、循環使用ストリーム(1264)に加えることが可能である。特定の配置において、第一スプリッタの塔頂分は、第二スプリッタの中間部に入る。イソブタン生成物は、任意選択で、塔頂で回収することが可能であり、1-ブテン生成物(1268)は、側流(sidecut)として回収され、n-ブタンは、塔底流として回収される。両方のスプリッタから出る塔底分は、循環使用ストリーム(1264)の全部又は一部として回収される。
【0111】
水蒸気分解域(1220)は、供給原料を分解して、エチレン、プロピレン、ブタジエン、及び混合ブテンを含む所望の生成物にするのに有効なパラメーター下で作動する。熱分解ガソリン及び熱分解油も回収される。特定の実施形態において、水蒸気分解炉(複数可)は、プロピレン対エチレン重量比が約0.3~0.8、0.3~0.6、0.4~0.8、又は0.4~0.6である流出物を生成するのに有効な条件下で操作される。
【0112】
水蒸気分解域(1220)は一般に1つ又は複数の炉トレインを含む。特定の実施形態において、ODSOストリーム(1042)(又はDSO/ODSOストリーム(1046))は水蒸気分解炉(1220)の1つ又は複数の炉のいずれか又は全てに注入され得る。
【0113】
特定の実施形態において、1つ又は複数のODSOストリーム(1042)は水蒸気分解炉(1220)に注入され得る。いくつかの実施形態において、1つ又は複数のDSO/ODSOストリーム(1046)は水蒸気分解炉(1220)に注入され得る。いくつかの実施形態において、1つ又は複数のODSOストリーム(1042)及びDSOストリーム(1007)に由来する1つ又は複数のDSOストリーム(1024)は水蒸気分解炉(1220)に注入され得る。
【0114】
特定の実施形態において(図示せず)、ODSOストリーム(1042)及びDSOストリーム(1024)の一部は水蒸気分解域(1220)の1つ又は複数の異なる炉に注入され得る。例えば、特定の実施形態において、ODSOストリーム(1042)は水蒸気分解炉(1220)の1つ又は複数の炉の第一の炉に注入されることができ、DSOストリーム(1024)は水蒸気分解炉(1220)の1つ又は複数の炉の第二の炉に注入されることができる。これらは限定的な例ではなく、1つ又は複数のODSOストリーム(1042)、1つ又は複数のDSO/ODSOストリーム(1046)、及び/又はDSOストリーム(1024)に由来する1つ又は複数のDSOストリームの可能な注入点の様々な変更は当業者には明らかであろう。
【0115】
水蒸気分解域(1220)の典型的な配置は、周知の蒸気熱分解方法に基づいて作動可能な反応器を備え、周知の蒸気熱分解方法とは、すなわち、原料の温度を上昇させるための蒸気の存在下で熱分解供給原料を対流部に投入すること、及び加熱された供給原料を、分解用炉管を備える放射又は熱分解反応器に送ることである。対流部では、混合物は、例えば、1つ又は複数の排熱ストリーム又は他の適切な加熱配置を用いて、所定の温度に加熱される。
【0116】
供給原料混合物は、対流部で高温に加熱され、所定の温度より低い沸点の物質は、気化する。加熱された混合物は(特定の実施形態において、追加蒸気とともに)さらに上昇した温度で作動する熱分解部に送られ、そこに短い滞留時間、例えば1~2秒未満滞留して、熱分解を起こして混合生成物ストリームを生成する。
【0117】
特定の実施形態において、水蒸気分解域(1220)に入ってくる異なる供給原料用に、別々になった対流部及び放射部が使用され、それぞれの条件は、特定の供給原料に最適化されている。
【0118】
特定の実施形態において、水蒸気分解域(1220)での水蒸気分解は、以下の条件を用いて行われる:対流部の温度(℃)が、約400~600、400~550、450~600、又は500~600の範囲;対流部の圧力(barg)が、約4.3~4.8、4.3~4.45、4.3~4.6、4.45~4.8、4.45~4.6又は4.6~4.8の範囲;熱分解部の温度(℃)が、約650~950、650~900、650~850、700~950、700~900、700~850、750~950、750~900又は750~850の範囲;熱分解部の圧力(barg)が、約1~4、1~2又は1~1.4の範囲;対流部の蒸気対炭化水素の割合が、約0.3:1~2:1、0.3:1~1.5:1、0.5:1~2:1、0.5:1~1.5:1、0.7:1~2:1、0.7:1~1.5:1、1:1~2:1又は1:1~1.5:1の範囲;熱分解部の滞留時間(秒)が、約0.05~1.2、0.05~1、0.1~1.2、0.1~1、0.2~1.2、0.2~1、0.5~1.2又は0.5~1の範囲。
【実施例】
【0119】
市販の水素化処理ユニットから得られた水素化処理ディーゼルサンプル(その特性及び組成を表3に示す)を、ベンチスケール水蒸気分解ユニットで水蒸気分解した。当該反応ユニットは、従来の水蒸気分解炉ユニットを代表するものである。供給原料を50:50の重量比で混合されたジスルフィド油及び酸化ジスルフィド油のブレンドで210ppmwの濃度でドープした。ブレンド中のDSOは表1で特徴付けられるDSOである。ブレンド中のODSOはE-MEROXプロセスを介した表1で特徴付けられるDSOの酸化の生成物である。反応器の運転条件は、温度675℃、反応器排出口圧力1barであった。炭化水素(HC)の質量流量を、8秒の平均滞留時間を達成するために固定した。蒸気希釈係数は0.6kgH2O/kgHC・sに設定した。
【0120】
【0121】
実施例の生成物収率を表4に示す。液状及びガス状生成物の生成物収率は100%Wに正規化した。
【0122】
【0123】
本発明でなければ廃棄となる生成物(otherwise waste product)の水蒸気分解コンプレックスへの添加は、分解炉コイル上のコークスの形成を最小化又は抑制し、水蒸気分解炉の冶金を保護するという利点を達成するだけでなく、副生成物廃棄物の環境に適した処分手段を提供し、また、コークスの形成を最小化するために本発明でなければ必要となるDMDSのような工業用化学物質を購入する必要性を排除する。本明細書に記載のプロセスの更なる利点には、廃棄物保管及び処理ユニット、並びにDSO及び/又はODSO廃棄物の処分に本発明でなければ必要となる費用の排除又は削減が含まれる。
【0124】
以上の説明から、本開示のプロセスは、副生成物の酸化ジスルフィド油を処分するための費用効率が高く、環境的に許容可能な手段を提供し、本質的に価値の低い製油所材料を商業的に重要なコークス抑制及び冶金保護製品に変換できることが理解される。
【0125】
本発明のプロセスは、上記及び添付の図面で説明され;プロセスの変更及び変形は本明細書から当業者には明らかであり、保護の範囲は後に続く特許請求の範囲によって決定されるものである。
【符号の説明】
【0126】
炭化水素ストリーム(1)
苛性溶液(2)
炭化水素生成物ストリーム(3)
使用済み苛性溶液及びアルカリ金属アルカンチオレートの複合ストリーム(4)
触媒(5)
空気(6)
副生成物ストリーム(7)
再生された使用済み苛性溶液(8)
抽出槽(10)
反応器(20)
反応器(30)
触媒(32)
酸化剤(34)
混合ストリーム(36)
従来型の分離槽(40)
ODSO化合物(42)
副生成物(44)
DSOストリーム、DSO化合物(1007)
MEROXユニット(1010)
ストリーム(1022)
DSOストリーム(1024)
改良型MEROX(E-MEROX)ユニット(1030)
ODSOストリーム(1042)
複合DSO/ODSOストリーム(1046)
水蒸気分解炉供給物(1202)
水蒸気分解コンプレックス(1215)
水蒸気分解域(1220)
水蒸気分解炉供給物(1221)
改良型水蒸気分解炉供給物(1222)
スチーム源(1223)
混合生成物ストリーム(1224)
混合ガス生成物ストリーム、水蒸気分解炉生成物(1225)
熱分解ガソリン(1226)
熱分解燃料油(1228)
オレフィン回収域(1230)
水素(1232)
燃料ガス(1234)
エチレン(1236)
混合C3ストリーム(1238)
混合C4ストリーム(1240)
エタン(1242)
メチルアセチレン/プロパジエン飽和及びプロピレン回収域(1244)
プロパン(1246)
プロピレン生成物(1248)
ブタジエン抽出域(1250)
高純度1,3-ブタジエン生成物(1252)
ラフィネートストリーム、第一C4ラフィネートストリーム(1254)
メチルターシャリーブチルエーテル域(1256)
メタノール(1258)
第二C4ラフィネート(1260)
メチルターシャリーブチルエーテル(1262)
循環使用ストリーム(1264)
ブテン-1回収域(1266)
1-ブテン生成物ストリーム(1268)
【国際調査報告】