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特表2024-506835筋肉のエネルギー産生及び/または筋力と栄養組成物を改善する方法
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  • 特表-筋肉のエネルギー産生及び/または筋力と栄養組成物を改善する方法 図1
  • 特表-筋肉のエネルギー産生及び/または筋力と栄養組成物を改善する方法 図2
  • 特表-筋肉のエネルギー産生及び/または筋力と栄養組成物を改善する方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-15
(54)【発明の名称】筋肉のエネルギー産生及び/または筋力と栄養組成物を改善する方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/00 20160101AFI20240207BHJP
   A23L 33/12 20160101ALI20240207BHJP
   A23L 33/17 20160101ALI20240207BHJP
   A23L 33/125 20160101ALI20240207BHJP
【FI】
A23L33/00
A23L33/12
A23L33/17
A23L33/125
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545898
(86)(22)【出願日】2022-01-21
(85)【翻訳文提出日】2023-08-24
(86)【国際出願番号】 US2022013286
(87)【国際公開番号】W WO2022164722
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】63/142,548
(32)【優先日】2021-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008788
【氏名又は名称】アボット・ラボラトリーズ
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロペス ペドロサ,ジョゼ マリア
(72)【発明者】
【氏名】マンザノ,マニュエル
(72)【発明者】
【氏名】ペレイラ,シュゼット
(72)【発明者】
【氏名】ルエダ カブレラ,リカルド
【テーマコード(参考)】
4B018
【Fターム(参考)】
4B018MD08
4B018MD09
4B018MD20
4B018MD27
4B018ME14
(57)【要約】
対象の筋エネルギー産生及び/または筋力を改善するため、及び/または対象の筋肉損失を低減するための方法は、β-ヒドロキシβ-メチル酪酸(HMB)及び少なくとも1つの柑橘系フラボノイドを前記対象に投与することを含む。栄養組成物は、タンパク質、脂肪、炭水化物、HMB、及び少なくとも1つの柑橘系フラボノイドを含む。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の筋エネルギー産生及び/または筋力を改善するため、及び/または対象の筋肉損失を低減するための方法であって、β-ヒドロキシβ-メチル酪酸(HMB)及び少なくとも1つの柑橘系フラボノイドを前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記対象は筋力低下を有するか、または筋力低下の危険性がある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記筋力の低下またはその危険性は、サルコペニア、入院及び/または異化亢進状態を伴う急性もしくは慢性疾患に関連している、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記対象は、少なくとも40歳、少なくとも50歳、または少なくとも60歳である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記HMBは、HMBの塩もしくはHMB遊離酸を含むか、またはカルシウムHMB一水和物を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの柑橘系フラボノイドは、ヘスペリジン、ヘスペレチン、ジオスミン、ナリルチン、イソナリンギン、ナリンギン、ジジミン、またはこれらの2つ以上の組み合わせを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記HMBは、約0.1~約10g/日、約0.1~約5g/日、約0.5~約5g/日、約0.5~約3g/日、または約0.5~約1.5g/日の量で前記対象に投与される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの柑橘系フラボノイドは、約50~約1000mg/日、約50~約800mg/日、約50~約500mg/日、約50~約300mg/日、約100~約300mg/日、または約100~約500mg/日の量で前記対象に投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記HMB及び前記少なくとも1つの柑橘系フラボノイドは、少なくとも7日間、少なくとも1日1回、前記対象に投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記HMB及び前記少なくとも1つの柑橘系フラボノイドは、タンパク質、脂肪及び炭水化物を含む栄養組成物として前記対象に投与される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
タンパク質、脂肪、炭水化物、β-ヒドロキシβ-メチル酪酸(HMB)、及び少なくとも1つの柑橘系フラボノイドを含む栄養組成物。
【請求項12】
前記HMBは、HMBの塩もしくはHMB遊離酸を含むか、またはカルシウムHMB一水和物を含む、請求項11に記載の栄養組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1つの柑橘系フラボノイドは、ヘスペリジン、ヘスペレチン、ジオスミン、ナリルチン、イソナリンギン、ナリンギン、ジジミン、またはこれらの2つ以上の組み合わせを含む、請求項11または12に記載の栄養組成物。
【請求項14】
1回分237mlあたり約0.1~約10g、約0.1~約5g、約0.5~約5g、約0.5~約3g、または約0.5g~約1.5gの量の前記HMBを含む、請求項11~13のいずれか一項に記載の栄養組成物。
【請求項15】
1回分237mlあたり約50~約1000mg、約50~約800mg、約50~約500mg、約50~約300mg、約100~約300mg、または約100~約500mgの量の前記少なくとも1つの柑橘系フラボノイドを含む、請求項11~14のいずれか一項に記載の栄養組成物。
【請求項16】
前記タンパク質は、全卵粉末、卵黄粉末、卵白粉末、乳清タンパク質、乳清タンパク質濃縮物、乳清タンパク質、乳清タンパク質加水分解物、酸カゼイン、カゼインタンパク質分離物、カゼインナトリウム、カゼインカルシウム、カリウムカリウム、カゼイン加水分解物、乳タンパク質濃縮物、乳タンパク質分離物、乳タンパク質加水分解物、脱脂粉乳、脱脂練乳、全牛乳、部分的または完全脱脂乳、ココナッツミルク、大豆タンパク質濃縮物、大豆タンパク質分離物、大豆タンパク質加水分解物、エンドウ豆タンパク質濃縮物、エンドウ豆タンパク質分離物、エンドウ豆タンパク質加水分解物、米タンパク質濃縮物、米タンパク質分離物、米タンパク質加水分解物、大麦米タンパク質、ソラ豆タンパク質濃縮物、ソラ豆タンパク質分離物、ソラ豆タンパク質加水分解物、コラーゲンタンパク質、コラーゲンタンパク質分離物、肉タンパク質、ジャガイモタンパク質、ヒヨコ豆タンパク質、キャノーラタンパク質、緑豆タンパク質、キヌアタンパク質、アマランサスタンパク質、チアタンパク質、麻タンパク質、亜麻仁タンパク質、アーモンドタンパク質、カシュータンパク質、ミミズタンパク質、昆虫タンパク質、その遊離アミノ酸及び/または代謝産物、またはこれらの2つ以上の組み合わせを含む供給源に由来する、請求項11~15のいずれか一項に記載の栄養組成物。
【請求項17】
少なくとも1つの乳タンパク質及び少なくとも1つの植物タンパク質を含む、請求項16に記載の栄養組成物。
【請求項18】
前記脂肪は、藻類油、キャノーラ油、亜麻仁油、ルリヂサ油、ベニバナ油、高オレイン酸ベニバナ油、高ガンマリノレン酸(GLA)、ベニバナ油、トウモロコシ油、大豆油、ひまわり油、高オレイン酸ひまわり油、綿実油、ココナッツ油、分画ココナッツ油、中鎖トリグリセリド(MCT)油、パーム油、パーム殻油、パームオレイン、レシチン、ドコサヘキサン酸、アラキドン酸、ドコサペンタエン酸、エイコサペンタエン酸、またはこれらの2つ以上の組み合わせを含む、供給源に由来する、請求項11~17のいずれか一項に記載の栄養組成物。
【請求項19】
前記炭水化物は、マルトデキストリン、加水分解または加工デンプン、加水分解または加工コーンスターチ、ポリデキストロース、デキストリン、コーンシロップ、コーンシロップ固形物、米由来炭水化物、ショ糖、ブドウ糖、果糖、乳糖、高果糖コーンシロップ、はちみつ、糖アルコール、イソマルツロース、スクロマルト、プルラン、ジャガイモデンプン、コーンスターチ、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、オート麦繊維、大豆繊維、アラビアガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、グアーガム、ジェランガム、ローカストビーンガム、こんにゃく粉、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、トラガカントガム、カラヤガム、アカシアガム、キトサン、アラビノグラクチン、グルコマンナン、キサンタンガム、アルギン酸塩、ペクチン、低メトキシペクチン、高メトキシペクチン、穀物β-グルカン、カラギーナン、オオバコ、果物ピューレ、野菜ピューレ、イソマルトオリゴ糖、単糖、二糖、母乳オリゴ糖(HMO)、タピオカ由来炭水化物、イヌリン、人工甘味料、またはこれらの2つ以上の組み合わせを含む、供給源に由来する、請求項11~18のいずれか一項に記載の栄養組成物。
【請求項20】
栄養組成物の重量に基づき、約2重量%~約25重量%の量のタンパク質源、約5重量%~約30重量%の量の炭水化物源、及び約0.5重量%~約10重量%の量の脂肪源を含み、及び前記栄養組成物は液体の形態であるか、または栄養組成物の重量に基づき、約10重量%~約25重量%の量のタンパク質源、約40重量%~約70重量%の量の炭水化物源、及び約5重量%~約20重量%の量の脂肪源を含み、及び前記栄養組成物は粉末の形態である、請求項11~19のいずれか一項に記載の栄養組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象における筋エネルギー産生及び/または筋力を改善するための、及び/または対象における筋肉損失を低減するための方法、ならびに特に筋エネルギー産生及び/または筋力を改善するための使用に適した、及び/または筋肉の損失の低減に適した栄養組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
サルコペニアは、老化及び/または異化亢進状態に関連する慢性疾患に続発する、骨格筋量ならびに筋力の損失として定義される。サルコペニアには、筋肉の喪失と筋肉の機能不全の両方が含まれ、これには収縮障害、ならびに代謝及び内分泌の異常が伴う。サルコペニアは、60歳以上の男性の25%以上、60歳以上の女性の20%近く、80歳以上の男女の半数以上が罹患している。サルコペニアの原因と加齢に伴う筋肉パフォーマンスの低下に寄与する分子経路は完全には理解されていないが、ミトコンドリアの機能不全と異常な生体エネルギーがこの病状の進行に重要な役割を果たしているという科学的なコンセンサスがある。
【0003】
骨格筋線維の収縮により、移動及び他の体の動き、姿勢の維持、呼吸(横隔膜及び肋間筋)、及びコミュニケーション(言語筋及び顔面筋)が可能になる。分泌器官として機能する筋肉の収縮は、サイトカインまたはマイオカイン(他の筋線維由来ペプチド)の産生、分泌及び発現を刺激する。収縮誘発性マイオカインは、自己分泌、内分泌または傍分泌の形で様々な臓器間のクロストークに影響を及ぼし、グルコースの取り込み、耐糖能、脂肪の酸化の制御、及びサテライト細胞の増殖にプラスの効果をもたらす。したがって、筋肉の収縮障害は個人に様々な悪影響を及ぼす。収縮力の低下は、慢性疾患患者及び高齢者における力の低下(すなわち、ダイナペニア)、疲労、虚弱及び転倒、肺換気障害、骨粗鬆症、ならびに機械的骨刺激の減少による骨折につながる。
【0004】
筋細胞では、エネルギー需要の大部分は、酸化的リン酸化によって生成されるアデノシン三リン酸(ATP)によって満たされている。このプロセスは、ATPシンターゼがアデノシン二リン酸(ADP)をリン酸化してATPを生成するために使用する電気化学ポテンシャルの生成を通じて、細胞の発電所と呼ばれることが多いミトコンドリアで生じる。筋細胞は、総ATP生産能力の一部のみを必要とする基礎レベルで動作できるが、筋細胞が突然のエネルギーの爆発を必要とする特定の状況がある。例えば、筋肉細胞はストレスまたは仕事量の増加に応答する必要がある場合があり、その場合、細胞機能を維持するためにより多くのATPが必要になる。ミトコンドリアによる基礎ATP産生と最大活動時のATP産生の差は、予備呼吸能(SRC)と称される。
【0005】
SRCは、ミトコンドリアの生体エネルギー論の最も重要な側面の1つである。様々な組織のエネルギー要件が変動し、組織のエネルギー要件を正確に満たすためにATP合成がそれに応じて上方制御または下方制御されることは周知である。より大きなSRCを備える細胞は、より多くのストレスを克服するためにより多くのATPを生成できる。これは、筋肉の収縮を促進するために必要なイオン勾配を再確立するための高いATP需要の期間に直面する、筋肉細胞などの電気的に興奮しやすい細胞において特に重要になる。ミトコンドリアSRCは、ミトコンドリア機能の重要な側面とみなされる。エネルギー需要が供給を上回る場合(例えば、作業負荷の増加)、SRCは供給を増やす可能性があり、これにより「ATP危機」を回避できる。しかし、SRCが必要なATPを供給するのに十分でない場合、細胞は老化または死に追い込まれる危険性がある。17歳から91歳の範囲のヒトから採取された骨格筋生検を用いたいくつかの大規模試験では、ミトコンドリアSRC及び骨格筋の酸化能力の加齢に伴う低下が示されている。
【0006】
筋肉の収縮活動は、ATP代謝回転の加速、及び同時に起こる細胞内カルシウム濃度の上昇と密接に関係している。加齢に伴う筋肉機能の低下は、呼吸能力及びATP産生を含むミトコンドリアの様々な生化学的特性の大幅な低下と関連し、収縮障害を引き起こすことが証拠によって示唆されている。したがって、エネルギー需要に合わせてエネルギー産生の効率を高めることによってミトコンドリアの機能を改善することにより、筋肉の収縮が最適化され、老化及び異化亢進状態に関連するミトコンドリアの機能不全に対抗する。ミトコンドリア機能のそのような改善を簡便に提供し、したがって、個人、例えば、高齢の個人、または異化亢進状態に関連する急性もしくは慢性疾患を患う個人において、筋エネルギー産生及び/または筋力を改善し、及び/または筋肉損失を低減する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0007】
したがって、本発明の目的は、筋エネルギー産生及び/または筋力を改善し、及び/または筋損失を低減することを必要とする個体において、筋エネルギー産生及び/または筋力を改善し、及び/または筋損失を低減するための便利な手段を提供することである。
【0008】
一実施形態では、本発明は、対象における筋エネルギー産生及び/または筋力を改善するための方法、及び/または対象における筋肉損失を低減するための方法に関する。本方法は、β-ヒドロキシβ-メチル酪酸(HMB)及び少なくとも1つの柑橘系フラボノイドを対象に投与することを含む。
【0009】
別の実施形態では、本発明は、タンパク質、脂肪、炭水化物、HMB、及び少なくとも1つの柑橘系フラボノイドを含む栄養組成物に関する。
【0010】
本発明の方法及び栄養組成物は、筋エネルギー産生の改善、筋力の改善、ならびに特定の実施形態では、筋収縮性の改善、及び/または筋肉損失の低減において有利である。
【0011】
本発明の追加の態様及び利点は、発明を実施するための形態の観点から更に十分に説明されるであろう。
【0012】
図面は、本発明の実施形態の特定の態様を示している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例に記載されているように、デキサメタゾン(DEX)で処理されたC2C12筋管における酸素消費速度(OCR)に対する、HMB及びフラボノイド含有柑橘系抽出物の個別の効果、ならびにこれらの組み合わせの効果を示す図である。
図2】実施例に記載されているように、デキサメタゾン(DEX)で処理されたC2C12筋管における酸素消費速度(OCR)に対する、HMB及びヘスペリジンの個別の効果、ならびにこれらの組み合わせの効果を示す図である。
図3】実施例に記載されているように、デキサメタゾン(DEX)で処理されたC2C12筋管における酸素消費速度(OCR)に対する、HMB及びヘスペレチンの個別の効果、ならびにこれらの組み合わせの効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
一般的な発明の概念は多くの異なる実施形態で可能であるが、本開示が一般的な発明の概念の原理の例示として考慮されるべきであることを理解した上で、本明細書では本発明の特定の実施形態について詳細に説明する。したがって、一般的な発明の概念は、本明細書に図示されかつ説明される特定の実施形態に限定されることを意図するものではない。
【0015】
本明細書で使用されるすべてのパーセンテージ、部及び比率は、特に明記しない限り、全組成物の重量に基づく。記載された成分に関連するすべての重量は活性レベルに基づいているため、特に明記しない限り、市販の材料に含まれ得る溶媒または副生成物は含まれない。
【0016】
本明細書に記載される用語は、実施形態を説明するためだけのものであり、本開示全体を限定するものとして解釈されるべきではない。特に明記しない限り、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」及び「少なくとも1つ」は同じ意味で使用される。更に、説明及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈が他に明確に示さない限り、それらの複数形をも含む。
【0017】
本明細書を通して、本発明の特定の特性に関して値の範囲が定義される場合、本発明は、その中のあらゆる特定の部分範囲に関連し、かつその中のあらゆる特定の部分範囲を明示的に組み込む。更に、本明細書を通して、本発明の特定の特性に関して物質の群が定義される場合、本発明は、その中のあらゆる特定の下位群に関連し、かつその中のあらゆる特定の下位群を明示的に組み込む。指定された範囲または群は、範囲または群のすべてのメンバー、及びそこに含まれるすべての可能な部分範囲または下位群を個別に指す簡略的な方法として理解されるべきである。
【0018】
本明細書に記載の方法及び栄養組成物は、本明細書に記載の必須の工程及び要素のそれぞれ、ならびに本明細書に記載の任意の追加または任意選択の工程及び要素をそれぞれ含む、それらからなる、または本質的にそれらからなってもよい。本明細書で使用される方法またはプロセス工程の任意の組み合わせは、特に明記しない限り、または参照される組み合わせがなされる文脈によって反対のことが明確に暗示されない限り、任意の順序で実行され得る。
【0019】
本発明の栄養組成物の様々な実施形態はまた、残りの栄養組成物が本明細書に記載の必要な成分または特徴のすべてを依然として含有するという条件で、本明細書に記載の任意のもしくは選択された成分または特徴を実質的に含まなくてもよい。これに関連して、かつ特に明記しない限り、「実質的に含まない」という用語は、選択された栄養組成物が、機能量未満の任意選択の成分、そのような任意のまたは選択された必須成分の0.5重量%未満を含む、0.1重量%未満を含む及び更に0重量%を含む、典型的には1重量%未満を意味する。
【0020】
本明細書に特に明記しない限り、すべての例示的な実施形態、サブ実施形態、特定の実施形態、及び任意選択の実施形態は、本明細書に記載されるすべての実施形態に対するそれぞれの例示的な実施形態、サブ実施形態、特定の実施形態、及び任意選択の実施形態である。
【0021】
第1の実施形態では、本発明は、対象における筋エネルギー産生及び/または筋力を改善するための方法、及び/または対象における筋肉損失を低減するための方法に関する。理論に限定されるものではないが、本発明の方法は、エネルギー需要に合わせてエネルギー産生の効率を高めることによってミトコンドリアの機能を改善し、その結果、筋肉の収縮が改善され、例えば、老化及び異化亢進状態に関連するミトコンドリアの機能不全に対抗すると考えられる。筋エネルギー産生及び/または筋力の改善、及び/または筋肉損失の低減がもたらされる。本方法は、β-ヒドロキシβ-メチル酪酸(HMB)及び少なくとも1つの柑橘系フラボノイドを対象に投与することによって、そのような改善を好都合にも提供する。したがって、第2の実施形態では、本発明は、HMB及び少なくとも1つの柑橘系フラボノイドを含む栄養組成物に関する。本発明の栄養組成物は、本発明の方法を実施するための簡便な手段を提供する。
【0022】
特定の実施形態では、対象は、筋エネルギー産生または筋力の改善を必要としている。例えば、対象は、筋収縮機能が低下しているか、その危険性がある、及び/または筋肉喪失の危険性がある可能性がある。上で議論したように、筋収縮機能の低下は、力の低下、疲労、虚弱及び転倒、肺換気障害、骨粗鬆症、ならびに機械的骨刺激の低下による骨折によって証明され得る。筋収縮機能の低下は、多くの場合、サルコペニア、入院、及び/または異化亢進状態を伴う急性もしくは慢性疾患に関連している。したがって、特定の実施形態では、対象は、サルコペニア、入院、及び/または異化亢進状態を伴う急性もしくは慢性疾患のうちの1つ以上を経験している可能性があるか、またはその危険性があり得る。更なる特定の実施形態では、対象は、少なくとも40歳、少なくとも50歳、少なくとも60歳、少なくとも70歳、または少なくとも80歳であり得る。このような対象は、筋収縮機能の低下を患っている可能性あるか、もしくはその危険性があり得るか、または筋肉喪失の危険性があり得る。特定の実施形態では、対象はヒトである。
【0023】
遊離酸、水和塩もしくは無水塩を含む塩、エステル、ラクトン、または投与した場合に生体利用可能な形態のHMBを提供する他の製品形態を含む、任意の適切なHMB源を本発明の方法及び栄養組成物に使用することができる。本明細書で使用するのに適したHMB塩の非限定的な例としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、クロム、カルシウム、または他の非毒性塩形態のHMB塩(水和物または無水物)が挙げられる。より具体的な実施形態では、HMBはカルシウムHMB、または更に具体的にはカルシウムHMB一水和物の形態である。
【0024】
本明細書に記載の方法及び栄養組成物は、柑橘系フラボノイドと組み合わせて、筋エネルギー産生及び/または筋力を改善し、及び/または筋損失を低減し、より具体的には、これらの効果のうちの1つ以上が、HMB単独で達成される効果よりも大きくなることを達成するのに有効な量のHMBを使用する。本発明の方法の特定の実施形態では、HMBは、約0.1~約10g/日、約0.1~約5g/日、約0.5~約5g/日、約0.5~約3g/日、または約0.5~約1.5g/日の量で対象に投与される。
【0025】
様々な柑橘系フラボノイドが、本発明の方法及び栄養組成物での使用に適している。例には、ヘスペリジン、ヘスペリジンのアグリコンであるヘスペレチン、ナリルチン、ジオスミン、イソナリンギン、ナリンギン及びジジミンが含まれるが、これらに限定されず、これらは、単独でまたは任意の2つ以上の組み合わせで使用され得る。特定の実施形態では、柑橘系フラボノイドは、ヘスペリジン、ヘスペレチン、またはこれらの組み合わせを含む。ヘスペリジンはスイートオレンジ中に存在する主要なフラボノイドであるが、レモン、ライム、グレープフルーツ、マンダリン及び他の種類のオレンジを含む他の柑橘類にも含まれている。摂取すると、ヘスペリジンは、吸収される前に結腸細菌叢によってヘスペレチン(アグリコン)に加水分解される。本明細書に記載の方法及び栄養組成物は、HMBと組み合わせて、筋エネルギー産生及び/または筋力を改善し、及び/または筋損失を低減し、より具体的には、これらの効果のうちの1つ以上が、柑橘系フラボノイド単独で達成される効果よりも大きくなることを達成するのに有効な量の柑橘系フラボノイドを使用する。本発明の方法の特定の実施形態では、柑橘系フラボノイドは、約50~約1000mg/日、約50~約800mg/日、約50~約500mg/日、約50~約300mg/日、約100~約300mg/日、または約100~約500mg/日の量で投与される。
【0026】
HMB及び少なくとも1つの柑橘系フラボノイドは、同時にまたは連続して投与され得る。以下に詳細に説明する特定の実施形態では、HMB及び少なくとも1つの柑橘系フラボノイドは、栄養組成物中で同時に対象に投与される。特定の実施形態では、HMB及び少なくとも1つの柑橘系フラボノイドは、タンパク質、脂肪及び炭水化物を含む栄養組成物中で同時に対象に投与される。本発明の方法の別の特定の実施形態では、HMB及び少なくとも1つの柑橘系フラボノイドは、一定期間毎日対象に投与される。特定の実施形態では、HMB及び少なくとも1つの柑橘系フラボノイドは、5日、7日、10日、2週間、1か月またはそれ以上の期間、1日1回、2回または3回以上対象に投与される。より具体的な実施形態では、HMB及び少なくとも1つの柑橘系フラボノイドは、少なくとも1日1回、少なくとも7日間、少なくとも14日間または少なくとも30日間対象に投与される。
【0027】
別の実施形態では、本発明は、タンパク質、脂肪、炭水化物、HMB、及び少なくとも1つの柑橘系フラボノイドを含む栄養組成物に関する。栄養組成物は、液体栄養組成物であっても粉末栄養組成物であってもよい。本明細書で使用する場合、「液体栄養組成物」という用語は、特に明記しない限り、乳化液体、例えば水の添加による希釈を目的とした濃縮液体、すぐに飲める液体、及び液体の添加、例えば水またはジュースの添加によって粉末形態から再構成される液体を含む液体栄養組成物のあらゆる形態を包含する。栄養組成物は、ヒトによる摂取に適しており、特定の実施形態では、経口摂取に適した形態である。
【0028】
栄養組成物は、柑橘系フラボノイドと組み合わせて、筋肉エネルギー産生及び/または筋力を改善し、及び/または筋肉損失を低減するのに有効な量のHMBを含む。特定の実施形態では、栄養組成物は、柑橘系フラボノイドと組み合わせて、筋エネルギー産生及び/または筋力を改善し、及び/または筋損失を低減し、より具体的には、これらの効果のうちの1つ以上が、HMB単独で達成される効果よりも大きくなることを達成するのに有効な量のHMBを含む。更なる特定の実施形態では、栄養組成物は、1回分237mlあたり約0.1~約10g、1回分237mlあたり約0.1~約5g、1回分237mlあたり約0.5~約5g、1回分237mlあたり約0.5g~約3g、または1回分237mlあたり約0.5~約1.5gの量のHMBを含む。栄養組成物は、HMBと組み合わせて、筋肉エネルギー産生及び/または筋力を改善し、及び/または筋肉損失を低減するのに有効な量の柑橘系フラボノイドを含む。特定の実施形態では、栄養組成物は、HMBと組み合わせて、柑橘系フラボノイド単独で達成されるよりも大きな程度までこれらの効果のうちの1つ以上を達成するのに有効な量の柑橘系フラボノイドを含む。更なる特定の実施形態では、栄養組成物は、1回分237mlあたり約50~約1000mg、1回分237mlあたり約50~約800mg、1回分237mlあたり約50~約500mg、1回分237mlあたり約50~約300mg、1回分237mlあたり約100~約300mg、または1回分237mlあたり約100~約500mgの量の柑橘系フラボノイドを含む。
【0029】
栄養組成物に含まれるタンパク質は、栄養組成物での使用が公知の任意の1つ以上のタンパク質であり得る。多種多様なタンパク質源及び種類を栄養組成物に使用することができる。例えば、タンパク質源には、乳(例えば、カゼイン、乳清)、動物(例えば、肉、魚)、穀物(例えば、米、玄米、オート麦、大麦など)、野菜(例えば、大豆、トウモロコシ、エンドウ豆、黄エンドウ豆、ソラ豆、ヒヨコ豆、キャノーラ、ジャガイモ、緑豆、キヌアなどの古代穀物、アマランサス、及びチア、麻、亜麻仁など)、ナッツ(例えば、アーモンド及びカシューナッツ)、及びこれらの2つ以上の組み合わせなどの適切な供給源から得られ得る無傷タンパク質、加水分解タンパク質、ならびに部分的加水分解タンパク質が含まれ得るが、これらに限定されない。タンパク質にはまた、栄養製品での使用が公知の天然アミノ酸または合成アミノ酸(遊離アミノ酸と称されることが多い)及び/またはその代謝産物の1つまたは混合物が、単独で、または本明細書に記載の無傷タンパク質、加水分解タンパク質及び/または部分的加水分解タンパク質と組み合わせて含まれ得る。
【0030】
本明細書に記載の例示的な栄養組成物での使用に適したタンパク質源のより具体的な例としては、全卵粉末、卵黄粉末、卵白粉末、乳清タンパク質(α-ラクトアルブミン及びβ-ラクトグロブリンなどの乳清タンパク質成分を含むが、これらに限定されない)、乳清タンパク質濃縮物、乳清タンパク質分離物、乳清タンパク質加水分解物、酸性カゼイン、カゼインタンパク質分離物、カゼインナトリウム、カゼインカルシウム、カゼインカリウム、カゼイン加水分解物、乳タンパク質濃縮物、乳タンパク質分離物、乳タンパク質加水分解物、脱脂粉乳、脱脂練乳、全牛乳、部分的または完全脱脂乳、ココナッツミルク、大豆タンパク質濃縮物、大豆タンパク質分離物、大豆タンパク質加水分解物、エンドウ豆タンパク質濃縮物、エンドウ豆タンパク質分離物、エンドウ豆タンパク質加水分解物、米タンパク質濃縮物、米タンパク質分離物、米タンパク質加水分解物、大麦米タンパク質、ソラ豆タンパク質濃縮物、ソラ豆タンパク質分離物、ソラ豆タンパク質加水分解物、コラーゲンタンパク質、コラーゲンタンパク質分離物、牛肉タンパク質分離物及び/または鶏肉タンパク質分離物などの肉タンパク質、ジャガイモタンパク質、ヒヨコ豆タンパク質、キャノーラタンパク質、緑豆タンパク質、キヌアタンパク質、アマランサスタンパク質、チアタンパク質、麻タンパク質、亜麻仁タンパク質、アーモンドタンパク質、カシュータンパク質、ミミズタンパク質、昆虫タンパク質、及びこれらの2つ以上の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。栄養組成物は、任意の個々のタンパク質源、または任意の2つ以上のタンパク質源の組み合わせを含むことができる。特定の実施形態では、栄養組成物は、少なくとも1つの乳タンパク質、または少なくとも1つの植物タンパク質、または少なくとも1つの乳タンパク質及び少なくとも1つの植物タンパク質を含む。
【0031】
栄養組成物中のタンパク質源の量は、例えば、対象となる使用者の特定の食事の必要性及び/または組成物の形態、すなわち、液体または粉末に応じてかなり変化し得る。例えば、特定の実施形態では、タンパク質源は、栄養組成物の約1重量%~約30重量%を含む。より具体的な実施形態では、タンパク質源は、栄養組成物の約2重量%~約20重量%、約2重量%~約15重量%、約5重量%~約20重量%、約5重量%~約25重量%、約10重量%~約25重量%または約5重量%~約15重量%を含む、栄養組成物の約2重量%~約25重量%を含む。
【0032】
本発明の栄養組成物には脂肪も含まれる。本明細書で使用する場合、「脂肪」という用語は、特に明記しない限り、脂質、脂肪、油及びこれらの組み合わせを指す。栄養組成物での使用に適した脂肪源としては、藻類油、キャノーラ油、亜麻仁油、ルリヂサ油、ベニバナ油、高オレイン酸ベニバナ油、高ガンマリノレン酸(GLA)ベニバナ油、トウモロコシ油、大豆油、ひまわり油、高オレイン酸ひまわり油、綿実油、ココナッツ油、分画ココナッツ油、中鎖トリグリセリド(MCT)油、パーム油、パーム殻油、パームオレイン、レシチン、ならびにドコサヘキサン酸(DHA)、アラキドン酸(ARA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、エイコサペンタエン酸(EPA)及びこれらの組み合わせなどの長鎖多価不飽和脂肪酸が挙げられるが、これらに限定されない。栄養組成物は、任意の個々の脂肪源、または任意の2つ以上の脂肪源の組み合わせを含むことができる。
【0033】
特定の実施形態では、栄養組成物は、約0.5重量%~約20重量%の脂肪源を含む。より具体的な実施形態では、脂肪源は、栄養組成物の約0.5重量%~約15重量%、約0.5重量%~約10重量%、約0.5重量%~約5重量%、約2重量%~約8重量%、約2重量%~約10重量%、約5重量%~約15重量%または約5重量%~約20重量%を含む、栄養組成物の約0.5重量%~約18重量%を含む。
【0034】
栄養組成物での使用に適した炭水化物源は、単純でも複合体でも変形でも、これらの組み合わせでもよい。炭水化物源が栄養組成物での使用に適しており、栄養組成物中に存在する他の選択された成分または特徴と適合する限り、様々な炭水化物源を使用することができる。栄養組成物での使用に適した炭水化物源の非限定的な例としては、マルトデキストリン、加水分解または加工デンプン、加水分解または加工コーンスターチ、ポリデキストロース及びデキストリンなどのグルコースポリマー、コーンシロップ、コーンシロップ固形物、米マルトデキストリンなどの米由来炭水化物、玄米マイルド粉末及び玄米シロップ、ショ糖、ブドウ糖、果糖、乳糖、高果糖コーンシロップ、はちみつ、糖アルコール(例えば、マルチトール、エリスリトール、ソルビトール)、イソマルツロース、スクロマルト、プルラン、ジャガイモデンプン、コーンスターチ、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、オート麦繊維、大豆繊維、アラビアガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、グアーガム、ジェランガム、ローカストビーンガム、こんにゃく粉、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、トラガカントガム、カラヤガム、アカシアガム、キトサン、アラビノグラクチン、グルコマンナン、キサンタンガム、アルギン酸塩、ペクチン、低メトキシペクチン、高メトキシペクチン、穀物β-グルカン、カラギーナン、オオバコ、ファイバーソル(商標)、果物ピューレ、野菜ピューレ、イソマルトオリゴ糖、単糖、二糖、母乳オリゴ糖(HMO)、タピオカ由来炭水化物、イヌリン、他の難消化性デンプン、及び人工甘味料、ならびにこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。栄養組成物は、任意の個々の炭水化物源、または2つ以上の炭水化物源の組み合わせを含み得る。
【0035】
特定の実施形態では、炭水化物源は、栄養組成物の約5重量%~約75重量%の量で存在する。より具体的な実施形態では、炭水化物源は、栄養組成物の約5重量%~約65重量%、約5重量%~約50重量%、約5重量%~約40重量%、約5重量%~約30重量%、約5重量%~約25重量%、約10重量%~約65重量%、約20重量%~約65重量%、約30重量%~約65重量%、約40重量%~約65重量%、約40重量%~約70重量%、または約15重量%~約25重量%を含む、栄養組成物の約5重量%~約70重量%の量で存在する。栄養組成物が液体である特定の実施形態では、炭水化物源は栄養組成物の約5重量%~約30重量%を含む。より具体的な液体の実施形態では、炭水化物は、栄養組成物の約5重量%~約25重量%、約5重量%~約20重量%、約5重量%~約15重量%、約10重量%~約25重量%、約10重量%~約20重量%、約15重量%~約25重量%、または約15重量%~約30重量%を含む。栄養組成物が粉末である別の実施形態では、炭水化物源は栄養組成物の約25重量%~約75重量%を含む。より具体的な粉末の実施形態では、炭水化物は、栄養組成物の約30重量%~約70重量%、約35重量%~約65重量%、約40重量%~約65重量%、約40重量%~約70重量%、約50重量%~約70重量%、または約50重量%~約75重量%を含む。
【0036】
栄養組成物中のタンパク質源、脂肪源及び炭水化物源の量は、例えば、対象となる使用者の特定の食事の必要性及び/または組成物の形態、すなわち、液体または粉末に応じてかなり変化し得る。特定の実施形態では、栄養組成物は、栄養組成物の重量に基づいて、約2重量%~約25重量%の量のタンパク質源、約5重量%~約75重量%の量の炭水化物源、及び約0.5重量%~約20重量%の量の脂肪源を含む。特定の実施形態では、栄養組成物は、栄養組成物の重量に基づいて、約2重量%~約25重量%の量のタンパク質源、約5重量%~約30重量%の量の炭水化物源、及び約0.5重量%~約10重量%の量の脂肪源を含み、更に具体的には、そのような組成物は液体形態である。別の特定の実施形態では、栄養組成物は、栄養組成物の重量に基づいて、約10重量%~約25重量%の量のタンパク質源、約40重量%~約70重量%の量の炭水化物源、及び約5重量%~約20重量%の量の脂肪源を含み、更に具体的には、そのような組成物は粉末形態である。
【0037】
特定の実施形態では、栄養組成物は中性pH、すなわち約6~8、より具体的には約6~7.5のpHを有する。より具体的な実施形態では、栄養組成物は、約6.5~7.2、より具体的には約6.8~7.1のpHを有する。
【0038】
栄養組成物は、栄養組成物の物理的、化学的、審美的もしくは加工特性を改変し得るか、または追加の栄養成分として機能し得る、1つ以上の追加成分を更に含んでもよい。追加成分の非限定的な例としては、保存剤、乳化剤(例えば、レシチン)、緩衝剤、人工甘味料(例えば、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロース)を含む甘味料、着色剤、香味料、増粘剤、安定剤などが挙げられる。
【0039】
更に、栄養組成物は、ビタミンまたは関連栄養素を更に含んでもよく、その非限定的な例としては、ビタミンA、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンK、チアミン、リボフラビン、ピリドキシン、ナイアシン、葉酸、パントテン酸、ビオチン、コリン、イノシトール、それらの塩及び誘導体、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。水溶性ビタミンは、水溶性ビタミン(WSV)プレミックスの形態で添加することができ、及び/または油溶性ビタミンは、所望に応じて1つ以上の油担体中に添加することができる。
【0040】
追加の実施形態では、栄養組成物は、1つ以上のミネラルを更に含んでもよく、その非限定的な例としては、カルシウム、リン、マグネシウム、亜鉛、マンガン、ナトリウム、カリウム、モリブデン、クロム、塩化物、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0041】
追加の実施形態では、栄養組成物は、1つ以上のプロバイオティクスを更に含んでもよい。本明細書で使用する場合、「プロバイオティクス」という用語は、消化過程を生き延び、対象に健康上の利益をもたらす細菌または酵母などの微生物を指す。栄養組成物中に単独または組み合わせて含めることができるプロバイオティクスの例としては、ビフィズス菌(B.)、例えばB.ブレベ、B.インファンティス、B.ラクティス、B.ビフィドゥム、B.ロンガム及びB.アニマリス、ならびにラクトバチルス(L.)、例えばL.ラムノサス、L.アシドフィルス、L.ファーメンタム、L.ロイテリ、ストレプトコッカス・サーモフィルス、アッカーマンシア、バクテロイデス、エンテロコッカス、ユーバクテリウム、フィーカリバクテリウム、ロゼブリア、及び/またはサッカロミセスが挙げられる。
【0042】
栄養組成物は、当技術分野で公知の任意の技術を使用して形成され得る。一実施形態では、栄養組成物は、(a)タンパク質及び炭水化物を含む水溶液を調製すること、(b)脂溶性成分及び油溶性成分を含む油ブレンドを調製すること、(c)水溶液と油ブレンドを混合し、乳化液体栄養組成物を形成すること、によって形成され得る。HMB及び柑橘系フラボノイドは、プロセス中、所望によりいつでも、例えば、水溶液または乳化ブレンドに添加することができる。粉末製品が望ましい場合には、組成物を噴霧乾燥するか、または他の方法で乾燥させることができる。あるいは、粉末製品は、原料を乾式混合することによって形成できる。典型的には、栄養組成物は、所望の保存期間にわたって組成物の微生物学的安定性を維持するのに十分な滅菌を提供する、熱処理を受ける。
【0043】
本発明の方法によって提供される改善を以下の実施例で実証する。
【実施例
【0044】
本実施例では、確立されたマウス筋肉細胞株であるC2C12筋管を使用した、グルココルチコイドデキサメタゾン(DEX)への曝露によって引き起こされる筋ミトコンドリアの機能不全に対する、HMB、フラボノイド含有柑橘系抽出物、ヘスペリジン及びヘスペレチンのそれぞれ単独の効果、ならびにHMBとフラボノイド含有柑橘系抽出物、ヘスペリジン及びヘスペレチンそれぞれとの組み合わせの効果を評価した。デキサメタゾンは、筋肉内のタンパク質分解を引き起こすことが知られており、老化及び/または異化亢進状態で遭遇するミトコンドリア機能不全を誘発するために使用される。
【0045】
C2C12筋芽細胞は、10%ウシ胎児血清、4mMグルタミン、100単位/mlペニシリン及び0.1mg/mlストレプトマイシンを補充した高グルコースダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で、37℃にて5%COを含む加湿95%空気中で増殖させた。90%コンフルエントに達した後、2%ウマ血清を補充した高グルコースDMEMの分化培地中で細胞の分化を誘導した。細胞は、それぞれ、(1)HMB(50μM)、(2)フラボノイド含有柑橘系抽出物(20μM)、(3)ヘスペリジン(5μM)、(4)ヘスペレチン(0.1μM)、ならびに(5)HMB(50μM)とフラボノイド含有柑橘系抽出物(20μM)、(6)HMB(50μM)とヘスペリジン(5μM)及び(7)HMB(50μM)とヘスペレチン(0.1μM)の組み合わせの存在下で24時間分化された。続いて、細胞、及びHMBまたは柑橘系フラボノイドなしでインキュベートした細胞試料(陰性対照)を、分化の最後の24時間にデキサメタゾン(DEX、5μM)と共にインキュベートした。
【0046】
酸化的代謝の変化を評価するために、ミトコンドリア代謝の間接的な指標である酸素消費速度(OCR)を、Agilent Seahorse XFe24細胞外フラックスアナライザー(Agilent,Santa Clara,CA,USA)を使用して測定した。この試験では、オリゴマイシン(1μM)、プロトンイオノフォアカルボニルシアニド-pトリフルオロメトキシフェニルヒドラゾン(FCCP、0.5μM)ならびにロテノン及びアンチマイシンA(0.5μM)を順次添加し、予備呼吸能(SRC)を含むミトコンドリア呼吸の重要なパラメータを測定する。「予備呼吸能(reserve respiratory capacity)」及び「予備呼吸能(spare respiratory capacity)」という用語は、細胞のエネルギー需要が突然増加した場合に、酸化的リン酸化によって生成できる追加のATPの量を説明するために使用される。これは、筋萎縮を引き起こす異化亢進状態及び炎症状態のときに特に必要である。ミトコンドリア機能のこれらの呼吸パラメータは、装置のソフトウェアによって計算した。
【0047】
すべての結果は、HMB、柑橘類系フラボノイドまたはDEXを含まずにインキュベートされた細胞の陽性対照群に対して正規化され、平均±SEMとして表された。正規化した結果を、図1図3に示す。統計解析は、スチューデントt検定を使用して実行した。0.05未満の確率値は統計的に有意であるとみなされ、図1図3では異なる文字(a、b、c)で示されている。
【0048】
図1図3に示すように、陰性対照のDEX処理(5μM)C2C12筋管は、HMB、柑橘系フラボノイドまたはDEX処理を含まない陽性対照群と比較して、SRCの一般的な機能障害、具体的にはSRCの48%減少を示した。対照群の値に近いSRC値は、DEX処理細胞をHMB(50μM)、フラボノイド含有柑橘系抽出物(20μM)、ヘスペリジン(5μM)及びヘスペレチン(0.1μM)で個別に処理することによって得られた。個々の処理は、DEXによる減少から細胞を実質的に保護し、HMBは、フラボノイド含有柑橘系抽出物(20μM)、ヘスペリジン(5μM)及びヘスペレチンのいずれよりも個別に同等以上の保護を提供することを示している。しかし、驚くべきことに、HMBと、3つの柑橘系フラボノイド源のうちの1つをそれぞれ組み合わせて処理した細胞は、大幅に改善され、かつ予想外の保護SRCを提供し、DEXによって引き起こされた悪影響を逆転させ、SRCを改善した。
【0049】
具体的には、HMB(50μM)とフラボノイド含有柑橘系抽出物(20μM)の組み合わせの存在下で増殖させたC2C12(図1)は、DEX処理した陰性対照と比較して、SRCの約55%の有意な増加を示した。更に、SRCの増加は、それぞれ1つの個々の成分で観察された効果よりも高かった(+21%)。HMB(50μM)とヘスペリジン(5μM)の組み合わせの存在下で細胞を増殖させた場合にも同様の結果が観察され(図2)、DEX処理細胞と比較して約+50%のSRCの増加を示し、個々の成分のそれぞれで観察された効果と比較して約+23%の増加を示した。
【0050】
最も改善された効果は、HMB(50μM)と、前述したようにヘスペリジンのアグリコン型であるヘスペレチン(0.1μM)の組み合わせの存在下でインキュベートした細胞で観察された。SRCは、DEX処理した陰性対照の細胞に対して約100%、個々の成分の効果に対して約50%、陽性対照群に対して約40%増加した。
【0051】
このデータは、DEX処理によって誘発されたミトコンドリア機能不全において、HMBと柑橘系フラボノイドの相乗的な組み合わせがミトコンドリアの呼吸能に高い値をもたらし、細胞はATP需要の増分を供給し、細胞活動の増加によるエネルギー需要の増加に適応できることを示している。これらの結果は、HMBと柑橘系フラボノイドの組み合わせが、例えば、サルコペニア、入院、または異化亢進状態を伴う急性もしくは慢性疾患に関連した筋肉減少に伴うストレス状態において、筋肉収縮の改善に必要なミトコンドリア機能の損失を予防または回復できることを示している。
【0052】
本出願は、その実施形態の説明によって例示され、実施形態はかなり詳細に説明されているが、そのような説明は、添付の特許請求の範囲をそのような詳細に限定したり、いかなる意味でも限定したりすることを意図したものではない。追加の利点及び変更は、当業者には容易に明らかであろう。したがって、本発明は、そのより広範な態様において、特定の詳細、代表的な方法もしくは組成物、または図示されかつ説明された例示的な実施例に限定されない。したがって、一般的な発明の概念の趣旨または範囲から逸脱することなく、そのような詳細から進展することができる。

図1
図2
図3
【国際調査報告】