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特表2024-506837イットリウムアルミニウムガーネット粉末およびそれを合成するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-15
(54)【発明の名称】イットリウムアルミニウムガーネット粉末およびそれを合成するための方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/44 20060101AFI20240207BHJP
   C04B 35/505 20060101ALI20240207BHJP
   C01F 17/34 20200101ALI20240207BHJP
【FI】
C04B35/44
C04B35/505
C01F17/34
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545905
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-09-15
(86)【国際出願番号】 US2022014353
(87)【国際公開番号】W WO2022165206
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】63/143,605
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508348680
【氏名又は名称】マテリオン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】チャン,セギョン
(72)【発明者】
【氏名】コタ,マリオ・イー
(72)【発明者】
【氏名】クスナー,ロバート・イー
(72)【発明者】
【氏名】グレンシング,フリツ
【テーマコード(参考)】
4G076
【Fターム(参考)】
4G076AA02
4G076AB02
4G076AC04
4G076BA38
4G076CA02
4G076CA27
4G076DA11
4G076DA30
(57)【要約】
イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)粉末を合成する方法。方法は、イットリアおよびシリカの粉末を導入して粉末混合物を形成するステップを含み、アルミナは粉末混合物に添加されない。アルミナ粉砕媒体および溶媒の存在下で粉末混合物をミリングすると、粉末スラリーが形成される。粉末スラリーを加工すると、圧粉体が形成される。1100℃~1650℃の温度で8時間超、圧粉体を空気中で理論密度の50%以下まで焼成すると、少なくとも92重量%のY3Al5O12のYAG圧密体が形成される。粉砕媒体なしでYAG圧密体をミリングし、乾燥させると、YAG粉末が生成される。方法は、粉末混合物にドーパントを導入して、ドープされたYAG粉末を生成するステップをさらに含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)粉末を合成する方法であって、
イットリアおよびシリカ粉末を導入して粉末混合物を形成するステップであり、アルミナが前記粉末混合物に添加されない、ステップと、
アルミナ粉砕媒体および溶媒の存在下で前記粉末混合物をボールミリングし、粉末スラリーを形成するステップと、
前記粉末スラリーを加工して圧粉体を形成するステップと、
1100℃~1650℃の温度で8時間超、前記圧粉体を空気中で理論密度の50%以下まで焼成し、少なくとも92重量%のYAl12のイットリウムアルミニウムガーネット圧密体を形成するステップと、
粉砕媒体なしで前記イットリウムアルミニウムガーネット圧密体をミリングし、次いで乾燥させて前記イットリウムアルミニウムガーネット粉末を生成するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
加工するステップが、前記粉末スラリーを噴霧乾燥して噴霧乾燥粉末を形成することと、前記噴霧乾燥粉末を理論密度の35%以下まで圧密して圧粉体を形成することとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
焼成するステップが、1450℃~1550℃の温度で8時間~16時間の期間行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記イットリウムアルミニウムガーネット粉末が、理論密度の96%超まで焼結可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記アルミナ粉砕媒体が、95.0~99.8%Alの純度を有し、ボールミリング後の組成物が、化学量論的3Y:5Alおよび3重量%未満の追加のAlを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記追加のAlが、前記アルミナ粉砕媒体の浸食部分を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記イットリウムアルミニウムガーネット圧密体をミリングするステップが、イットリウムアルミニウムガーネット圧密材料自体が自己破砕し、100μm未満の平均粒子サイズ分布を有する前記イットリウムアルミニウムガーネット粉末を生成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
導入する粉末が、ランタニドまたは遷移金属を含むドーパントをさらに含み、前記ランタニドまたは遷移金属が、化合物の形態であり、前記化合物が、酸化物、水和物、硝酸塩、塩化物、もしくはそれらの組合せである、または、前記化合物が、セリア(CeO)、塩化セリウム(III)七水和物(CeCl・7HO)、もしくは硝酸セリウム(III)六水和物(Ce(NO・6HO)である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ランタニドまたは遷移金属が、+3までイオン化され、0.114nm以下のイオン半径を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ランタニドもしくは遷移金属が、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、もしくはそれらの組合せを含む、または、前記ランタニドもしくは遷移金属が、スカンジウム、亜鉛、もしくはセリウムである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記ドーパントが、前記粉末混合物の総重量を基準として10ppm~6重量%である、または、前記ドーパントが、前記粉末混合物の総重量を基準として0.1重量%~5重量%のセリアである、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記ドーパントが、前記粉末混合物の総重量を基準として3重量%未満のセリアである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記イットリア粉末が、2N以上の純度を有し、または3N以上の純度を有し、前記シリカが、前記粉末混合物の総重量を基準として0.1重量%~0.3重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
ドープされたイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)粉末を合成する方法であって、
イットリア、シリカ、およびランタニドまたは遷移金属の酸化物、水和物、硝酸塩または塩化物で形成される少なくとも1種のドーパントの粉末を導入し、混合して粉末混合物を形成するステップであり、アルミナが前記粉末混合物に添加されない、ステップと、
アルミナ粉砕媒体および溶媒の存在下で前記粉末混合物をボールミリングし、粉末スラリーを形成するステップと、
前記粉末スラリーを加工して圧粉体を形成するステップと、
1100℃~1650℃の温度で8時間超、前記圧粉体を空気中で理論密度の50%以下まで焼成し、少なくとも92重量%のYAl12のイットリウムアルミニウムガーネット圧密体を形成するステップと、
粉砕媒体なしで前記イットリウムアルミニウムガーネット圧密体をミリングし、次いで乾燥させて前記ドープされたイットリウムアルミニウムガーネット粉末を生成するステップと
を含む、方法。
【請求項15】
イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)組成物であって、
94重量%~100重量%のYAl12
0重量%~3重量%のドーパント、および
0重量%~3重量%のAl
を含み、追加のAlが、アルミナ粉砕媒体の浸食部分を含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
[0001]本出願は、参照することにより本明細書に組み込まれる、2021年1月29日出願の米国仮特許出願第63/143,605号に関連し、その優先権を主張する。
【0002】
[0002]本開示は、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)粉末の合成、および制御されたドーパント濃度を有するYAG粉末を生成するための加工方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]適切なイオンがドープされたイットリウムアルミニウムガーネット(YAG、イットリウムアルミネート、YAl12)またはYAGは、多種多様に、または固体レーザ等の用途において、とりわけプロジェクタ、固体照明、ヘッドアップディスプレイ、専門的な照明、陰極線管、発光ダイオード、シンチレータにおける蛍光体として使用されている。
【0004】
[0004]YAG粉末を作製する従来の方法には、例示的経路として、とりわけ化学共沈、混合沈殿、グリシン-ニトレート、シトレート、アルミナゾルへのイットリアの溶解、無定形フォーム、誘導結合熱プラズマ合成、水熱、ナノ粉末加工、マイクロ波結合が含まれる。しかしながら、上述の技術により生成される得られる粉末は高価であり、製造に時間がかかり、小さいバッチサイズを必要とし、また同様に、方法に関連した環境的マイナス面を有し得る。さらに、得られる不純物レベルは、いくつかの用途において要求されるものより低くなり得る。これは、資源に対して著しい不必要な需要を課す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0005]YAG粉末を作製するための方法は数多く利用可能であるが、収率の改善、ならびに制御されたレベルのドーパント、二次相もしくは副次相および/または不純物を提供しながら、従来の固体合成粉末より低い温度での焼結性を提供する、複雑でない固体粉末合成プロセスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0006]一実施形態において、本開示は、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)粉末を合成する方法に関する。方法は、イットリアおよびシリカの粉末を混合して粉末混合物を形成するステップを含む。粉末混合物は、アルミナを含まない。粉末混合物は、ドーパントを含んでもよい。方法は、ボールミリングするステップ(ball milling)、噴霧乾燥するステップ、圧密するステップ(compacting)、焼成(か焼)するステップ(calcining)、およびミリングして(milling)YAG粉末を形成するステップをさらに含んでもよい。粉末混合物のボールミリングは、アルミナ粉砕媒体(grinding media)および溶媒の存在下で行われ、粉末スラリーを形成し得る。粉末スラリーを噴霧乾燥すると、噴霧乾燥粉末が形成され得る。噴霧乾燥粉末を理論密度の35%以下まで圧密すると、圧粉体(green compact)が形成され得る。圧粉体を空気中で理論密度の50%以下まで焼成すると、YAG圧密体(YAG compact)が形成され得る。粉砕媒体なしでYAG圧密体をミリングし、次いで乾燥させると、YAG粉末が生成され得る。イットリア粉末は、2N以上の純度、または3N以上の純度を有してもよい。シリカは、粉末混合物の総重量を基準として0.1重量%~0.3重量%であってもよい。シリカは、フュームドシリカであってもよい。アルミナ粉砕媒体は、95.0~99.8%のAlの純度を有してもよい。
【0007】
[0007]混合して粉末混合物を形成するステップは、ランタニドまたは遷移金属を含むドーパントをさらに含んでもよい。ランタニドまたは遷移金属は、化合物の形態であってもよく、化合物は、酸化物、水和物、硝酸塩(ニトレート)(nitrate)、塩化物、またはそれらの組合せである。ランタニドまたは遷移金属は、+3までイオン化され、0.114nm以下のイオン半径を有してもよい。ランタニドもしくは遷移金属は、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、もしくはそれらの組合せを含み得る。ランタニドまたは遷移金属は、スカンジウム、亜鉛、またはセリウムであってもよい。ドーパントは、粉末混合物の総重量を基準として10ppm~6重量%を構成し得る。ドーパントは、粉末混合物の総重量を基準として0.1重量%~5重量%のセリアであってもよい。ドーパントは、粉末混合物の総重量を基準として3重量%未満のセリアであってもよい。ドーパント化合物は、セリア(CeO)、塩化セリウム(III)七水和物(CeCl・7HO)、または硝酸セリウム(III)六水和物(Ce(NO・6HO)であってもよい。
【0008】
[0008]粉末スラリーをボールミリングするステップは、粉末混合物、溶媒、およびアルミナ粉砕媒体がポリマー被覆ボールミリング容器内に収容されることを含んでもよい。溶媒は、蒸留水または脱イオン水(エチルおよびイソプロピルアルコール)であってもよい。粉末スラリーを噴霧乾燥する前に、有機結合剤が粉末スラリーに添加されてもよい。有機結合剤は、水溶性であってもよい。有機結合剤は、粉末スラリーの総重量を基準として3重量%~9重量%であってもよい。ボールミリング後の組成物は、化学量論的3Y:5Al(0.6:1)および3重量%未満の追加のAlを含んでもよい。追加のAlは、アルミナ粉砕媒体の浸食部分を含んでもよい。
【0009】
[0009]噴霧乾燥粉末を圧密するステップは、一軸加圧または冷間等方圧加圧を含んでもよい。噴霧乾燥粉末を圧密するステップは、空気中室温で行われてもよい。噴霧乾燥粉末を圧密するステップは、500psi~1250psiの圧力で行われてもよい。焼成は、1100℃~1650℃、または1450℃~1550℃の温度で行われてもよい。焼成は、2時間~64時間、または8時間~16時間の期間行われてもよい。YAG圧密体をミリングするステップは、圧密体および溶媒がポリマー被覆ミリング容器内に収容されることを含んでもよい。溶媒は、エタノールアルコールまたはイソプロピルアルコールであってもよい。YAG圧密体をミリングするステップは、少なくとも6時間ミリングすることを含んでもよい。YAG圧密体をミリングするステップは、YAG圧密材料自体が自己破砕し、100μm未満の平均粒子サイズ分布を有するYAG粉末を生成することを含んでもよい。平均粒子サイズ分布は、63μm未満、または44μm未満であってもよい。ミリングされたYAG圧密材料は、乾燥前に篩い分けされてもよい。YAG粉末は、二峰性粒子サイズ分布を有してもよい。乾燥は、90℃未満の温度で行われてもよい。
【0010】
[0010]一部の実施形態において、ドープされたイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)粉末を合成する方法は、イットリア、シリカ、およびランタニドまたは遷移金属の酸化物、水和物、硝酸塩または塩化物で形成される少なくとも1種のドーパントの粉末を提供し、混合して粉末混合物を形成するステップを含み、アルミナは粉末混合物に添加されない。方法は、アルミナ粉砕媒体および溶媒の存在下で粉末混合物をボールミリングし、粉末スラリーを形成するステップと、粉末スラリーに有機結合剤を添加し、混合して噴霧可能な粉末スラリーを形成するステップと、噴霧可能な粉末スラリーを噴霧乾燥して噴霧乾燥粉末を形成するステップとをさらに含んでもよい。方法は、噴霧乾燥粉末を理論密度の35%以下まで圧密して圧粉体を形成するステップをさらに含んでもよい。方法は、圧粉体を空気中で理論密度の50%以下まで焼成してYAG圧密体を形成するステップをさらに含んでもよい。方法は、イットリウムアルミニウムガーネット圧密体が少なくとも92重量%以上のYAl12であることを含んでもよい。方法は、粉砕媒体なしでYAG圧密体をミリングし、次いで乾燥させてドープされたYAG粉末を生成するステップをさらに含んでもよい。
【0011】
[0011]態様において、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)組成物は、YAl12および3重量%未満の追加のAlを含み、追加のAlは、アルミナ粉砕媒体の浸食部分を含む。組成物は、少なくとも1原子%のドーパント濃度をさらに含んでもよい。蛍光体ホイール等の物品は、上述のようなイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)組成物を含み得る。
【0012】
[0012]開示された技術の性質および利点のさらなる理解は、本明細書の残りの部分および図面を参照することにより実現され得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】[0013]例示的方法のフローチャートである。
図2】[0014]例示的方法による、アルミナ粉砕媒体対イットリアの投入重量比の関数としての浸食されたアルミナの量を示すグラフである。
図3】[0015]例示的方法によりセリアがドープされたYAG粉末のx線回折プロットである。
図4】[0016]例えば空気中1500℃で8時間の焼結後の、例示的方法によるセリウムドープYAG粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
図5】[0017]例示的方法による焼成サイクルの反復後の非ドープYAG粉末のx線回折プロットである。
図6】[0018]例えば空気中1600℃で8時間の焼結後の、比較セリウムドープYAG粉末の様々なスポットにおけるスポットエネルギー分散分光法(EDS)分析を示すSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
緒論
[0019]上で議論したように、以前の方法を使用して生成されたYAG粉末は、収率、コストおよび焼結性の需要を満たさない。具体的には、YAG粉末を作製する以前の固体法は、より長い期間およびより高い温度で焼成を反復することを必要とし、したがってプロセス効率に欠き、例えば生成収率が低い。また、YAG粉末を作製する以前の固体法は、高密度の物品を達成するためにより高い焼結温度、例えば1600℃以上を必要とする。
【0015】
[0020]ここで、本発明者らは、第1の(ボール)ミリングにおいてアルミナ粉砕媒体を使用すること、得られる粉末スラリーを焼成前に圧密すること、および最終ミリングにおいて粉砕媒体をほとんどまたは全く使用しないことによって、より単純で効率的な生成プロセスが達成されることを見出した。
【0016】
[0021]理論に束縛されないが、開示された方法は、焼成中にYAG相へのより効率的な転換を促進し、また各ミリングプロセス中に望ましくない不純物源を防止することが仮定される。アルミナ粉砕媒体を用いたボールミリングを介してアルミナ含有率を制御することによってより効率的なプロセスが得られ、例えば、ミリングを介して化学量論的または超化学量論的アルミナ含有率を提供するプロセスが得られ、これによってYAG相への転換が向上し、望ましくない不純物の導入が回避されることが見出された。焼成前に粉末スラリーを圧密すると、YAG相への転換がさらに向上し、これは有利にはより低い温度、より短い期間、および/またはより少ない焼成サイクルで行うことができ、これらは全てより効率的なプロセス、例えば収率が改善されたプロセスに寄与する。
【0017】
[0022]さらに、焼成後のミリングにいかなる粉砕媒体も導入しないことにより、プロセスは成分組成物のより高い純度およびより良好な制御を提供し、これはより純粋なYAG粉末、例えば不純物がより少ないYAG粉末をもたらす。理論に束縛されないが、ミリングを介したアルミナの導入と併せて焼成前の圧密を組み合わせることは、イットリア内のアルミナのより均一な分散に寄与し、これによってより短い期間および/またはより低い温度でアルミナとイットリアとの間の反応を完了させることができ、これは一方でYAGへの相転換を向上させる。重要なことに、開示された方法を使用することによって、ドーパント濃度は有利に制御され得る。その結果、ドープされたYAGは、より少ない望ましくない不純物を含む。
【0018】
[0023]また、開示された方法は、従来のYAG粉末より良好に機能するYAG粉末を提供する。例えば、開示されたYAG粉末は高い焼結性を示し、例えば、YAG粉末は、従来の固体合成粉末よりも比較的低い焼結温度(sintering temperature)でより高い密度まで焼結される(sinter)。これは、上述のミリングおよび圧密ステップを使用することにより提供されるより低い温度での焼成の使用に起因する。YAG相転換は比較的低い焼成温度で達成されるため、開示されたYAG粉末は、有益にもより少ない硬質凝集体およびより小さい平均粒径を有する。対照的に、従来のYAG粉末はより高い焼成温度で調製され、これは有害にもより硬質の凝集体を形成して低い焼結性をもたらす。例えば、その後の焼結中、開示されたYAG粉末は、1537℃で8時間の焼結で理論密度の98%に達し、一方市販のYAG粉末(Intematix G91、フリーモント、CA)は、1537℃で8時間の焼結で理論密度の83%にしか達し得ない。その結果、固体プロセスは、制御されたドーパント濃度を有し、高い焼結性を有し、よりコスト効率的に製造される高品質粉末を生成することが望ましい。
【0019】
[0024]開示された方法は、多種多様な用途、例えば蛍光体ホイール、白色発光ダイオード(WLED)を含む発光ダイオード(LED)、光学レンズおよびレーザベースの車両用エンジン点火装置(例えばスパークプラグの代替品として)用のNIR(近赤外線)透過窓、レーザ、レーザガン等に好適なYAGを提供する。
【0020】
YAG粉末合成方法
[0025]本開示は、上述の利点を有するYAG粉末を合成するための方法に関する。方法の一例を図1に示す。方法は、イットリアおよびシリカの粉末を混合して粉末混合物を形成するステップと、粉末混合物をボールミリングして粉末スラリーを形成するステップとを含む。重要なことに、ボールミリングは、アルミナ粉砕媒体および溶媒の存在下で行われる。これは、粉末スラリーに対するアルミナの量が制御され得、さらには所望により超化学量論的量のアルミナが導入されるが、従来の粉砕媒体、例えばミリングボールからの望ましくない不純物は導入されないため、重要である。粉末混合物は、いくつかの場合において、アルミナを含まない(アルミナは粉末に添加されない)。方法は、粉末スラリーを噴霧乾燥して噴霧乾燥粉末を形成するステップと、噴霧乾燥粉末を理論密度の35%以下まで圧密して圧粉体を形成するステップとをさらに含む。これによって、有益には、圧粉体は、緩い未加工材料よりも焼成中にYAG相に容易に転換し得る。方法は、圧粉体を空気中で理論密度の50%以下まで焼成してYAG圧密体を形成するステップと、粉砕媒体なしでYAG圧密体をミリングし、次いで乾燥させてYAG粉末を生成するステップとをさらに含む。粉砕媒体なしでYAG圧密体をミリングするステップは、ミリングボールから最終粉末組成物に望ましくない不純物が導入されるのがそれによって防止されるため、重要である。これらのステップのそれぞれを、以下でより詳細に議論する。
【0021】
[0026]上記のように、上述のプロセス、例えばボールミリング(アルミニウム粉砕媒体を使用)と任意選択で併せた圧密ステップの使用は、上述の驚くべき結果を提供する。
【0022】
初期粉末
[0027]上記のように、および図1に例示されるように、方法は、初期粉末、例えばイットリア(Y)およびシリカ(SiO)を混合して粉末混合物を形成するステップを含む。
【0023】
[0028]混合ステップにおいて使用される初期粉末は、イットリアおよびシリカを含む。いくつかの場合において、イットリア粉末は、高純度イットリアである。例えば、イットリア粉末は、2N(99%)以上、例えば3N(99.9%)または4N(99.99%)の純度を有してもよい。一部の実施形態において、イットリア粉末は、3Nの純度を有する。いくつかの場合において、イットリア粉末は3N以上の純度を有する。
【0024】
[0029]シリカおよびイットリアは、別個の粉末として混合されてもよく、または、出発粉末は、例えばシリカを富化したイットリアであってもよい。そのような場合、混合ステップは必要なく、シリカ/イットリア粉末が単に提供され得る。好ましい実施形態において、シリカは、フュームドシリカである。フュームドシリカ、または焼成シリカは、低いかさ密度および高い表面積を有する。そのような特徴によって、フュームドシリカは、特に焼成に使用される高い温度の間、粉末合成において極めて反応性となる。焼成中、シリカはイットリアおよびアルミナと反応してY-Al-Si-O液相を形成する。このY-Al-Si-O液相は、1350℃超の温度で蒸発する。シリカを添加して液相を形成することによって、Y-Al-Si-O液相蒸発により洗浄効果が実現される。焼成(または焼結)中に蒸発により除去される過渡的な液相は、洗浄剤となり得る。好適なイットリアおよびシリカ粉末は市販されており、例えば、イットリア(Materion Corp.から)およびフュームドシリカ(Sigma-Aldrichから)がある。
【0025】
[0030]一部の実施形態において、粉末混合物は、0.005重量%~2.0重量%のシリカおよび残余部分のイットリアを含む。例えば、粉末混合物は、0.005重量%~2.0重量%のシリカ、例えば0.01重量%~1.5重量%のシリカ、0.01重量%~1.0重量%のシリカ、0.01重量%~0.5重量%のシリカ、0.05重量%~0.4重量%のシリカ、0.1重量%~0.4重量%のシリカ、0.1重量%~0.3重量%のシリカ、または0.2重量%~0.3重量%のシリカを含んでもよい。下限に関しては、粉末混合物は、0.005重量%超のシリカ、例えば0.01重量%超、0.05重量%超、0.1重量%超、または0.2重量%超のシリカを含んでもよい。上限に関しては、粉末混合物は、2.0重量%未満のシリカ、例えば1.5重量%未満、1.0重量%未満、0.5重量%未満、0.4重量%未満、または0.3重量%未満のシリカを含んでもよい。一部の実施形態において、シリカは、粉末混合物の総重量を基準として0.1重量%~0.3重量%の量で含まれる。本明細書における例は、粉末混合物の総重量を基準として0.25重量%のシリカの量でシリカを含む。
【0026】
[0031]一部の実施形態において、粉末混合物は、93.0重量%~99.99重量%のイットリアを含む。粉末混合物の残余部分であるイットリア含有率はまた、以下で議論されるように、任意選択のドーパントが添加されるかどうかに依存する。例えば、粉末混合物は、93.0重量%~99.99重量%のイットリア、例えば93.0重量%~99.95重量%のイットリア、95.0重量%~99.9重量%のイットリア、97.0重量%~99.8重量%のイットリア、または98.0重量%~99.8重量%のイットリアを含んでもよい。下限に関しては、粉末混合物は、93.0重量%超のイットリア、例えば95.0重量%超、97.0重量%超、98.0重量%超、99.0重量%超、99.5重量%超、または99.9重量%超のイットリアを含んでもよい。上限に関しては、粉末混合物は、99.99重量%未満のイットリア、例えば99.95重量%未満、99.9重量%未満、99.8重量%未満、99.5重量%未満、または99.0重量%未満のイットリアを含んでもよい。一部の実施形態において、イットリアは、ドーパントが添加されない場合、粉末混合物の総重量を基準として99.7重量%~99.8重量%の量で含まれる。一部の実施形態において、イットリアは、ドーパントが添加される場合、粉末混合物の総重量を基準として96.0重量%~99.0重量%の量で含まれる。
【0027】
[0032]いくつかの場合において、粉末混合物は、あるとしても少量のアルミナ(Al)を含む。一部の実施形態において、粉末混合物は、アルミナ(Al)を含まない、または実質的に含まない。いくつかの場合において、アルミナは粉末混合物に添加されない。一部の実施形態において、粉末混合物は、ゼロ(0.00重量%)~0.5重量%のアルミナを含む。例えば、粉末混合物は、0.01重量%~0.5重量%のアルミナ、例えば0.05重量%~0.4重量%のアルミナ、0.1重量%~0.3重量%のアルミナ、または0.1重量%~0.2重量%のアルミナを含んでもよい。上限に関しては、粉末混合物は、0.5重量%未満のアルミナ、例えば0.4重量%未満、0.3重量%未満、または0.2重量%未満のアルミナを含んでもよい。初期粉末としてのアルミナはプロセスから排除できるため、これは重要である。ボールミリング中に導入される唯一のアルミナ源としてアルミナ粉砕媒体を使用することにより、プロセスが単純化されるだけでなく、アルミナがイットリア中に均一に分散され、粉末スラリーに対するアルミナの量がボールミリング中に制御され得ることが見出された。
【0028】
[0033]任意選択で、ドーパントが粉末混合物に含まれる。ドーパントは、化合物の形態で使用されてもよく、またドーパント(ドーパント化合物)は、粉末混合物に添加および/または含有されてもよい。一部の実施形態において、粉末混合物は、10ppm~6.0重量%のドーパント、ならびに上述のシリカおよび残余部分のイットリアを含む。例えば、粉末混合物は、10ppm~6.0重量%のドーパント、例えば0.01重量%~6.0重量%のドーパント、0.5重量%~5.0重量%のドーパント、1.0重量%~4.0重量%のドーパント、1.5重量%~3.5重量%のドーパント、2.0重量%~3.0重量%のドーパント、または2.3重量%~2.7重量%のドーパントを含んでもよい。下限に関しては、粉末混合物は、10ppm超のドーパント、例えば0.01重量%超、0.5重量%超、1.0重量%超、1.5重量%超、2.0重量%超、または2.3重量%超のドーパントを含んでもよい。上限に関しては、粉末混合物は、6.0重量%未満のドーパント、例えば5.0重量%未満、4.0重量%未満、3.5重量%未満、3.0重量%未満、または2.7重量%未満のドーパントを含んでもよい。好ましい実施形態において、ドーパントは、粉末混合物の総重量を基準として2.0重量%~3.0重量%の量で含まれる。
【0029】
[0034]一部の実施形態において、ドーパントは、セリアの形態で添加されるセリウムである。例えば、粉末混合物は、0.1重量%~5.0重量%のセリア、例えば0.5重量%~5.0重量%のセリア、1.0重量%~4.0重量%のセリア、1.5重量%~3.5重量%のセリア、2.0重量%~3.0重量%のセリア、または2.3重量%~2.7重量%のセリアを含んでもよい。下限に関しては、粉末混合物は、0.1重量%超のセリア、例えば0.5重量%超、1.0重量%超、1.5重量%超、2.0重量%超、または2.3重量%超のセリアを含んでもよい。上限に関しては、粉末混合物は、5.0重量%未満のセリア、例えば4.0重量%未満、3.5重量%未満、3.0重量%未満、または2.7重量%未満のセリアを含んでもよい。好ましい実施形態において、セリアは、粉末混合物の総重量を基準として2.5重量%±10%の量で含まれる。
【0030】
[0035]初期粉末の平均粒子サイズは限定されない。例えば、初期粉末は、0.001μm~50μm、例えば0.005μm~25μm、0.01μm~10μm、または0.01μm~5μmの平均粒子サイズの範囲であってもよい。下限に関しては、初期粉末の平均粒子サイズは、0.001μm超、例えば0.005μm超、または0.01μm超であってもよい。上限に関しては、初期粉末の平均粒子サイズは、50μm未満、例えば25μm未満、10μm未満、または5μm未満であってもよい。初期粉末の平均粒子サイズは、例えば、形成される圧粉体の密度および/または焼成後のYAGへの相転換の完全性を予測する上での支配的因子ではない。本明細書の方法における完全YAG相転換の提供により重要なのは、以下で詳細に説明される、焼成前の圧密である。
【0031】
第1のミリング
[0036]上記のように、方法は、アルミナ粉砕媒体および溶媒の存在下で粉末混合物をボールミリングし、粉末スラリーを形成するステップを含む。本明細書において使用される「ボールミリング」は、アルミナが粉砕媒体として使用される方法の第1のミリングステップを表す。このようなアルミナの使用は、アルミナを含まなくてもよい従来のミリングボールの使用とは異なる。このステップは、アルミナ含有率が制御され得るため重要であり、これは、化学量論的YAGまたは所望によりYAGへの相転換を向上させ得る超化学量論的アルミナ含有率の提供をもたらす。
【0032】
[0037]粉末混合物のボールミリングは、アルミナ粉砕媒体(および溶媒)の存在下で行われ、粉末スラリーを形成し得る。本発明者らは、ボールミリング中、粉砕媒体からのアルミナが浸食されて粉末スラリーにアルミナ源を有利に提供することを見出した。有利には、追加のアルミナが添加されるまたは存在する必要がない。
【0033】
[0038]アルミナ粉砕媒体から浸食されたアルミナの量が有益にも制御され得るため、アルミナ粉砕媒体は重要である。その結果、得られるYAGの組成もまた制御され得る。これはプロセス効率に、ならびに上述の生成収率の改善および/またはより少ない焼成サイクルに寄与する。従来のYAG合成プロセスは、アルミナを意図的に浸食するために、および/または化学量論的YAGから逸脱するためにアルミナ粉砕媒体を使用せず、したがってこれらの利益を達成することができない。
【0034】
[0039]ボールミリング中に粉末スラリーに提供されるアルミナの量の決定因子は、ミリングエネルギー、ミリング速度である毎分回転数(RPM)、ボールミリング容器の直径、粉末スラリーへの粉末混合物投入量、粉末スラリーの体積、アルミナ粉砕媒体の体積および/または重量、ならびにアルミナ粉砕媒体の摩耗特性を含む。因子は相互に関連し得、例えば、容器の直径が大きい程、回転は遅い。ミルの周速は、容器内でボールが滝のように流れ落ちずにミルの周辺部分に保持される遠心分離のような作用を防止するように制御される。
【0035】
[0040]Y(イットリア)対Al(アルミナ)のモルによる公称化学量論比は、3:5または3Y:5Alである。いくつかの場合において、ボールミリング後、超化学量論的量のアルミナが粉末スラリー中に存在する。換言すれば、イットリア対アルミナの比は、3:5(0.6:1)以上、例えば3対5.1(0.59:1)、3対5.2(0.58:1)、3対5.3(0.57:1)、3対5.35(0.56:1)、3対5.4(0.555:1)、3対5.5(0.55:1)、3対5.6(0.54:1)、3対5.7(0.53:1)、またはそれを超える。一部の実施形態において、ボールミリング後の粉末混合物の組成は、3:5(0.6:1)~3:5.5(0.55:1)のY:Alの比を有する。
【0036】
[0041]ボールミリング後、組成物は、化学量論的3Y:5Al、および粉末構成成分の総重量を基準として3重量%未満の追加のAlを含む。例えば、追加のAlの量は、ゼロ(0.00)重量%~3.0重量%の追加のAl、例えば0.1重量%~3.0重量%の追加のAl、0.5重量%~2.5重量%の追加のAl、または1.0重量%~2.0重量%の追加のAlであってもよい。下限に関しては、追加のAlの量は、ゼロ(0.00)重量%超の追加のAl、例えば0.1重量%超の追加のAl、0.5重量%超の追加のAl、または1.0重量%超の追加のAlであってもよい。上限に関しては、追加のAlの量は、3.0重量%未満の追加のAl、例えば2.5重量%未満の追加のAl、または2.0重量%未満の追加のAlであってもよい。追加のAlは、アルミナ粉砕媒体の浸食部分を含む。浸食部分は、ボールミリング中のアルミナ粉砕媒体の摩耗に起因する。
【0037】
[0042]アルミナ粉砕媒体は、高純度のものである。一部の実施形態において、アルミナ粉砕媒体は、95.0%~99.99%のAlの純度を有する。例えば、アルミナ粉砕媒体は、95.0%~99.9%のAl、例えば95.0%~99.8%のAl、97.0%~99.8%のAl、98.0%~99.8%のAl、99.0%~99.8%のAl、または99.5%~99.8%のAlの純度を有する。下限に関しては、アルミナ粉砕媒体は、95.0%超のAl、例えば95.0%超のAl、96.0%超のAl、97.0%超のAl、98.0%超のAl、99.0%超のAl、99.5%超のAl、99.8%超のAl、または99.9%超のAlの純度を有する。上限に関しては、アルミナ粉砕媒体は、100%未満のAl、例えば99.99%未満のAl、99.9%未満のAl、または99.8%未満のAlの純度を有する。好ましい実施形態において、アルミナ粉砕媒体は、95.0%~99.8%のAlの純度を有する。高純度アルミナ粉砕媒体は、α-Alである。アルミナ粉砕媒体は、3mm~25mmの範囲の直径を有する。アルミナ粉砕媒体は、耐摩耗性であり、14GPa(±10%)のビッカース硬度および3.88g/cm~3.97g/cmの密度を有する。アルミナ粉砕媒体の摩耗は、ミクロン範囲内、例えば1~10μmの平均粒子サイズ分布を有するAl粒子を粉末混合物に付与する。態様において、Al粒子は、1~5μmまたは1~3μmである。これは、焼成中のYAG相への転換が、存在するアルミナの量を制御することにより、およびアルミナ粒子のサイズを制御することにより向上し得るため、重要である。
【0038】
[0043]いくつかの場合において、ボールミリングは、ポリマー被覆ボールミリング容器内で行われる。容器の直径は、直径15cm~60cm、高さ15cm~60cmの範囲であってもよい。ボールミリングは、非反応性の容器、例えばポリウレタン被覆ミリングジャー、例えば(直径30cm×高さ30cm)の寸法を有するPaul O’Abbe(ベンセンビル、IL)製のリフターユニット付きAbbethaneジャー内で行われてもよい。ポリマー被覆ボールミリング容器の内容物は、粉末混合物、溶媒、およびアルミナ粉砕媒体を含む粉末スラリーを含む。溶媒は、蒸留水または脱イオン水であってもよい。溶媒の量は、粉末混合物の総重量を基準として50~80重量%の範囲であってもよい。
【0039】
[0044]ボールミリングは、15RPM~70RPMの範囲の速度で行われてもよい。例えば、ボールミリング速度は、15RPM~70RPM、例えば30RPM~70RPM、または50RPM~70RPMであってもよい。ボールミリングは、1時間~64時間の期間行われてもよい。例えば、ボールミリングの期間は、1時間~64時間、例えば4時間~48時間、8時間~24時間、または12時間~20時間であってもよい。一部の実施形態において、ボールミリングは、60RPMで16時間行われる。粉末スラリーに付与されるアルミナの量は、アルミナ粉砕媒体の初期重量に対するボールミリング後のアルミナ粉砕媒体の重量の差を測定することにより計算され得る。粉砕媒体は、直径および/または高さ約13mmの寸法を有する円筒形または球形または他の形状であってもよい。例えば、粉砕媒体は、直径10mm~20mmおよび高さ10mm~20mm、例えば、直径12mm~18mmおよび高さ12mm~18mm、または直径13mm~16mmおよび高さ13mm~16mmであってもよい。アルミナ粉砕媒体の摩耗(重量による浸食)は、5重量%~10重量%、例えば6重量%~8重量%、または6.5重量%~7重量%であってもよい。
【0040】
[0045]粉末スラリーを噴霧乾燥する前に、有機結合剤が粉末スラリーに添加されてもよい。有機結合剤は、好ましくは水溶性である。好適な有機結合剤は、アクリルポリマーベースアンモニウム溶液(B-60A、Rohm and Haasから市販されている)、またはポリビニルアルコール溶液等を含む。
【0041】
[0046]噴霧乾燥の前に添加される有機結合剤は、粉末スラリーの総重量を基準として3重量%~9重量%の有機結合剤、例えば4重量%~8重量%の有機結合剤、5重量%~7重量%の有機結合剤、または5.5重量%~6.5重量%の有機結合剤の範囲の量で存在してもよい。下限に関しては、添加される有機結合剤の量は、3重量%超の有機結合剤、例えば4重量%超の有機結合剤、5重量%超の有機結合剤、または5.5重量%超の有機結合剤であってもよい。上限に関しては、添加される有機結合剤の量は、9重量%未満の有機結合剤、例えば8重量%未満の有機結合剤、7重量%未満の有機結合剤、または6.5重量%未満の有機結合剤であってもよい。好ましい実施形態において、添加される有機結合剤の量は、粉末混合物の総重量を基準として6重量%±10%である。その後有機結合剤は、後の加工中に、例えば焼成中に、例えば500℃以上で燃焼する。
【0042】
噴霧乾燥
[0047]方法は、粉末スラリーを噴霧乾燥して噴霧乾燥粉末を形成するステップをさらに含んでもよい。このステップは、噴霧乾燥が、イットリア、シリカ、アルミナ、および任意選択のドーパントの均一な分布を有する離散粒体を形成するため、重要である。噴霧乾燥は、Yamato DL4120(サンタクララ、CA)ユニットを使用して行うことができる。入口温度は、200℃~400℃、例えば200℃~350℃、200℃~300℃、200℃~280℃、210℃~270℃、220℃~260℃、または230℃~250℃の範囲であってもよい。下限に関しては、入口温度は、200℃超、例えば210℃超、220℃超、または230℃超であってもよい。上限に関しては、入口温度は、400℃未満、例えば350℃未満、300℃未満、280℃未満、270℃未満、260℃未満、または250℃未満であってもよい。好ましい実施形態において、入口温度は240℃±10%である。出口温度は、70℃~110℃、例えば75℃~105℃、80℃~100℃、または85℃~95℃の範囲であってもよい。下限に関しては、出口温度は、70℃超、例えば75℃超、80℃超、または85℃超であってもよい。上限に関しては、出口温度は、110℃未満、例えば105℃未満、100℃未満、または95℃未満であってもよい。好ましい実施形態において、出口温度は、85℃~95℃である。噴霧乾燥は、圧縮空気下で行われる。噴霧乾燥のための圧力は、0.01MPa~0.6MPaの圧縮空気、例えば0.02MPa~0.5MPa、0.05MPa~0.4MPa、または0.1MPa~0.3MPaの圧縮空気の範囲であってもよい。下限に関しては、圧力は、0.01MPa超、例えば0.02MPa超、0.05MPa超、または0.01MPa超であってもよい。上限に関しては、圧力は、0.6MPa未満、例えば0.5MPa未満、0.4MPa未満、または0.3MPa未満であってもよい。好ましい実施形態において、圧力は、0.1~0.3MPaの圧縮空気である。
【0043】
[0048]噴霧乾燥粉末は、0.1μm~425μmの範囲の平均粒体サイズ分布を含む。平均粒体サイズ分布は、0.1μm~425μm、例えば0.1μm~300μm、0.1μm~200μm、0.1μm~100μm、0.1μm~75μm、または0.1μm~50μmの範囲であってもよい。下限に関しては、平均粒体サイズ分布は、0.1μm超、例えば0.2μm超、0.3μm超、0.4μm超、または0.5μm超であってもよい。上限に関しては、平均粒体サイズ分布は、425μm未満、例えば300μm未満、200μm未満、100μm未満、75μm未満、または50μm未満であってもよい。実施形態において、噴霧乾燥粉末は、あらゆる粒体425μmが圧密に使用され得るように、篩(USメッシュサイズNo.40、425μm)に通されてもよい。
【0044】
圧密
[0049]方法は、噴霧乾燥粉末を圧密して圧粉体を形成するステップをさらに含む。噴霧乾燥粉末は圧密されるが、これは、このように圧密しない従来の粉末固体焼成プロセスに勝るいくつかプロセス上の利点を提供する。第一に、圧粉体は焼成用の緩く充填された粉末の未加工密度に比べてより高い未加工密度を有し、したがってYAG相を形成するために必要なイオンの拡散距離がより短いため、粉末組成物はその後の焼成中により容易にYAG相に変換する。したがって、焼成中、YAGの形成は、緩く充填された粉末において必要となるものより低い焼成温度および/またはより短い時間で進行する。さらに、一部の実施形態において、YAGへの転換は、単一の焼成サイクルで完了する。第二に、初期粉末混合物に導入されるシリカの場合のように、過渡的な焼結助剤を使用することによって、Y-Al-Si-O液相が焼成中に形成する。これはまた、液体Y-A-Si-O焼結助剤による向上した大規模転換に起因して、より容易に、およびより低い焼成温度で(および/またはより短い時間もしくはより少ない焼成サイクルで)進行するYAGの形成をもたらす。したがって、本明細書に記載の方法による圧密は、あるとしてもより少ない焼成サイクルの繰り返しを必要とするYAGの形成に重要である。
【0045】
[0050]噴霧乾燥粉末の圧密は、粉末粒子間距離を低減してその後の焼成中のYAG形成を向上させるために行われる。噴霧乾燥粉末を圧密して圧粉体を形成するステップは、理論密度の35%以下まで圧密することを含んでもよい。例えば、噴霧乾燥粉末を圧密して圧粉体を形成するステップは、理論密度の20%の~理論密度の40%、例えば理論密度の25%~理論密度の40%、理論密度の30%~理論密度の40%、または理論密度の35%~理論密度の40%まで圧密することを含んでもよい。噴霧乾燥粉末を圧密して圧粉体を形成するステップは、理論密度の20%以下、理論密度の25%以下、理論密度の30%以下、理論密度の35%以下、または理論密度の40%以下まで圧密することを含んでもよい。好ましい実施形態において、圧密の量は、理論密度の35%±10%以下である。理論密度の35%の目標まで圧密された材料の密度は、1.593g/cm±10%である。
【0046】
[0051]噴霧乾燥粉末を圧密するステップは、一軸加圧または冷間等方圧加圧を含んでもよい。圧密は、Hydrametユニットを使用して行われてもよい。圧密のための圧力は、200psi~2000psi、例えば300psi~1800psi、400psi~1600psi、500psi~1500psi、または1000psi~1500psiの範囲であってもよい。下限に関しては、圧力は、200psi超、例えば300psi超、400psi超、500psi超、または1000psi超であってもよい。上限に関しては、圧力は、2000psi未満、例えば1800psi未満、1600psi未満、または1500psi未満であってもよい。好ましい実施形態において、圧力は、500psi~1500psi、例えば1000psi~1500psiである。
【0047】
[0052]一部の実施形態において、圧密は、一軸加圧、例えばHydramet一軸加圧を使用して、噴霧乾燥粉末(または粒体)を粉砕媒体形状(直径1.905cm(0.75インチ)×高さ1.905cm(0.75インチ))に成形することを含む。高温が企図されるが、噴霧乾燥粉末の圧密は、空気中室温で有利に行われ得る。圧密は、冷間圧密を含み得る。以下は、本明細書の一部の実施形態による噴霧乾燥粉末の圧密に好適となり得る限定されない例示的圧力である:噴霧乾燥粉末の圧密は、500psi~1500psi、例えば500psi~1250psi、または750psi~1000psiの圧力で行われてもよい。
【0048】
焼成(Calcining)
[0053]方法は、圧粉体を空気中で理論密度の50%以下まで焼成してYAG圧密体を形成するステップをさらに含む。換言すれば、焼成は、圧粉体からYAl12の転換を提供し、これは任意選択で上述のようなドーパントをさらに含む。焼成は、離散粒子を粉末として維持しながら所望の相を達成する。一部の実施形態において、3Y:5Alの少なくとも95%、または少なくとも97%、または少なくとも98%、または少なくとも99%がYAl12に転換される。一部の実施形態において、3Y:5Alの100%がYAl12に転換される。焼成は、圧密体を圧粉体に比べて理論密度のより高いパーセンテージまでさらに高密度化するが、YAG圧密体は焼結されていない状態である。換言すれば、粉末は高密度固体に成形されていない。
【0049】
[0054]例えば、圧粉体を焼成してYAG圧密体を形成するステップは、理論密度の50%以下まで圧密することを含んでもよい。例えば、圧粉体を焼成してYAG圧密体を形成するステップは、理論密度の40%~理論密度の60%、例えば理論密度の45%~理論密度の60%、または理論密度の45%~理論密度の55%まで焼成することを含んでもよい。圧粉体を焼成してYAG圧密体を形成するステップは、理論密度の40%以下、理論密度の45%以下、理論密度の50%以下、理論密度の55%以下、または理論密度の60%以下まで焼成することを含んでもよい。好ましい実施形態において、YAG圧密体は、理論密度の50%±10%以下まで焼成される。理論密度の50%の目標まで焼成されたYAG圧密体の密度は、2.275g/cm±10%である。
【0050】
[0055]焼成は、任意の好適な炉、例えばArmil炉内で、1100℃~1650℃の範囲の温度で2~64時間の範囲の期間行われてもよい。焼成は、空気中で行われてもよい。
【0051】
[0056]焼成が行われる温度は、1100℃~1650℃の範囲である。例えば、焼成は、1200℃~1650℃、例えば1350℃~1600℃、または1450℃~1550℃で行われる。下限に関しては、焼成は、1100℃超、例えば1200℃超、1350℃超、または1450℃超の温度で行われてもよい。上限に関しては、焼成は、1650℃未満、例えば1660℃未満、または1550℃未満の温度で行われてもよい。好ましい実施形態において、焼成は、1450℃~1550℃の温度で行われる。重要なことに、焼成は、一部の実施形態において、従来焼結温度と見なされていた温度未満の温度で行われ、これによって、いくつかの場合において焼結が上記のように回避される。開示された方法ステップは、より低い温度での焼成を可能にし、これらの方法ステップがなければ、焼成ステップはより高い温度を必要とし、それに関連した問題および不利益に見舞われるであろう。
【0052】
[0057]焼成は、2時間~64時間の範囲の期間、上述の温度で行われてもよい。例えば、焼成は、2時間~64時間、例えば4時間~48時間、6時間~24時間、または8時間~16時間、または10時間~14時間行われる。下限に関しては、焼成は、2時間超、例えば4時間超、6時間超、8時間超、または10時間超の期間行われてもよい。上限に関しては、焼成は、64時間未満、例えば48時間未満、24時間未満、16時間未満、または14時間未満の期間行われてもよい。好ましい実施形態において、焼成は、8~16時間の期間行われる。
【0053】
[0058]焼成は、単一の焼成サイクルで1回または複数回の保持を含む熱処理スケジュールを使用して行われてもよい。有利には、2つ(またはそれ以上)の温度段階の焼成が、所望のYAG相へのより完全な転換を提供する。各保持は、温度およびその温度での期間に関連する。一部の実施形態において、焼成は、1回の保持、2回の保持、3回の保持、4回の保持、またはそれ以上の保持を有する熱処理スケジュールを含む。例えば、焼成は、第1の期間の第1の温度での第1の保持、第2の期間の第2の温度での第2の保持、任意選択で第3の期間の第3の温度での第3の保持、および任意選択で第4の期間の第4の温度での第4の保持を含んでもよい。
【0054】
[0059]したがって、焼成は、少なくとも2つの保持温度を含んでもよい。焼成が行われる少なくとも2つの保持温度は、1100℃~1650℃の範囲であってもよい。例えば、少なくとも2つの保持温度は、1200℃~1650℃、例えば1350℃~1600℃、または1450℃~1550℃の範囲である。下限に関しては、少なくとも2つの保持温度は、1100℃超、例えば1200℃超、1350℃超、または1450℃超であってもよい。上限に関しては、少なくとも2つの保持温度は、1650℃未満、例えば1660℃未満、または1550℃未満であってもよい。好ましい実施形態において、少なくとも2つの保持温度は、1450℃~1550℃である。少なくとも2つの保持温度は、同じまたは異なってもよい。
【0055】
[0060]少なくとも2つの保持温度を含む焼成は、各保持につき2時間~64時間の範囲の期間、上述の温度で行われてもよい。例えば、少なくとも2つの保持時間は、2時間~64時間、例えば4時間~48時間、6時間~24時間、または8時間~16時間、または10時間~14時間の範囲であってもよい。下限に関しては、少なくとも2つの保持時間は、2時間超、例えば4時間超、6時間超、8時間超、または10時間超の期間であってもよい。上限に関しては、少なくとも2つの保持時間は、64時間未満、例えば48時間未満、24時間未満、16時間未満、または14時間未満の期間であってもよい。好ましい実施形態において、少なくとも2つの保持時間は、8~16時間の期間である。少なくとも2つの保持時間は、同じまたは異なってもよい。
【0056】
[0061]好ましい実施形態において、焼成は、第1の期間の第1の温度を有する第1の保持、および第2の期間の第2の温度を有する第2の保持を含み、例えば、焼成は、8~16時間の第1の期間の1450℃~1550℃の第1の温度での第1の保持、および8~16時間の第1の期間の1450℃~1550℃の第1の温度での第1の保持を含む。一例において、焼成は、単一サイクルで8時間の期間1525℃の第1の温度で行われ、次いで8時間の期間1550℃の第2の温度で行われる。単一サイクルとは、連続的であること、および保持の間に冷却がないことを意味する。
【0057】
[0062]重要なことに、焼成は、以前は未加工であった圧密体からイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)圧密体への転換に影響し、相の含有率は、x線回折等の好適な技術により決定され得る。YAGは、本明細書において、立方晶カテゴリ内の結晶構造を有するYAl12と呼ばれる。YAG圧密体の相の含有率は、少なくとも90重量%のYAl12、例えば少なくとも91重量%のYAl12、少なくとも92重量%のYAl12、少なくとも93重量%のYAl12、少なくとも94重量%のYAl12、少なくとも95重量%のYAl12、少なくとも96重量%のYAl12、少なくとも97重量%のYAl12、少なくとも98重量%のYAl12、または少なくとも99重量%のYAl12を含む。
【0058】
[0063]焼成後、相の含有率は、少量の副次相を有利に含み得る。副次相は、シリカ、アルミナ、セリア(または他のドーパント)、またはYAGへの不完全な相転換を示す相YAMもしくはYAPを含み得る。YAG圧密体の相含有率は、最大10重量%の副次相、例えば最大9重量%の副次相、最大8重量%の副次相、最大7重量%の副次相、最大6重量%の副次相、最大5重量%の副次相、最大4重量%の副次相、最大3重量%の副次相、最大2重量%の副次相、最大1重量%の副次相を含む。一部の実施形態において、ゼロまたは実質的にゼロの副次相が存在する、および/または検出可能である。
【0059】
[0064]結合剤の燃焼のための追加の保持が、焼成前にあってもよい、または焼成熱処理スケジュールに含まれてもよい。この保持は、典型的には、YAGへの相転換を達成する焼成のための保持温度より低い温度である。結合剤の燃焼は、上で詳述したような焼成温度への熱の上昇の一部として行われてもよい。結合剤の燃焼が行われる温度は、400℃~600℃の範囲である。例えば、結合剤の燃焼は、400℃~600℃、例えば425℃~575℃、または450℃~550℃、または475℃~525℃で行われる。下限に関して、結合剤の燃焼は、400℃超、例えば425℃超、450℃超、または475℃超の温度で行われてもよい。上限に関しては、結合剤の燃焼は、600℃未満、例えば575℃未満、550℃未満、または525℃未満の温度で行われてもよい。好ましい実施形態において、結合剤の燃焼は、約500℃±10%の温度で行われる。
【0060】
[0065]任意選択で、焼成は反復されてもよい。好ましい実施形態において、YAGへの転換を提供するために単一の焼成のみが行われる。一部の実施形態において、焼成は1回反復され、他の実施形態においては2回反復される。方法は、合計で1回、2回または3回の焼成を含んでもよい。一部の実施形態において、焼成は、最大で1回反復される。方法は、3回を超える焼成を含まない。焼成が反復される実施形態において、各後続の焼成の前にシリカが添加される。反復焼成の場合、反復サイクルは、シリカを添加するステップ、ボールミリングするステップ、噴霧乾燥するステップ、圧密するステップのいずれかまたは全てを各反復サイクル中に含んでもよい。
【0061】
第2のミリング(焼成後)
[0066]方法は、YAG圧密体をミリングするステップと、続いてミリングされた圧密体を乾燥させてYAG粉末を生成するステップとをさらに含んでもよい。本発明者らは、ミリングがいかなる添加された粉砕媒体または粉砕ボールの非存在下で行われてもよいことを発見した。有益には、YAG圧密材料自体が粉砕媒体として機能する、換言すればミリングが自己発生的であるため、粉砕媒体は必要ではなく、添加されない。一部の実施形態において、YAG圧密体は、上述の冷間圧密ステップの場合のように一軸加圧を使用して粉砕媒体形状(直径1.905cm(0.75インチ)×高さ1.905cm(0.75インチ))に成形されたような複数の圧密体を含む。YAG圧密体を使用して自己ミリングさせるこのステップは、ミリング中に不純物が導入されないことが確実となるため、重要である。したがって、粉砕媒体からのもの等の不純物による追加的汚染の一般的な源が有利に排除される。
【0062】
[0067]ミリングは、ポリマー被覆ミリング容器内で行われてもよい。いくつかの場合において、以前に説明したようなボールミリングにおいて使用される容器に関して、容器の直径は、直径15cm~60cm、および高さ15cm~60cmの範囲であってもよい。ミリングは、非反応性の容器、例えばポリウレタン被覆ミリングジャー、例えば(直径30cm×高さ30cm)の寸法を有するPaul O’Abbe(ベンセンビル、IL)製のリフターユニット付きAbbethaneジャー内で行われてもよい。ポリマー被覆ミリング容器の内容物は、YAG圧密体および溶媒を含む。容器は、追加の粉砕媒体を含まない、または実質的に含まない。YAG圧密体をミリングするステップは、YAG圧密材料自体が自己破砕し、YAG粉末を生成することを含む。溶媒は、エタノールアルコールまたはイソプロピルアルコールであってもよい。溶媒の量は、YAG固体構成物質の総重量を基準として50~80重量%の範囲である。
【0063】
[0068]YAGのミリングは、15RPM~70RPMの範囲の速度で行われてもよい。例えば、ミリング速度は、15RPM~70RPM、例えば30RPM~70RPM、または50RPM~70RPMであってもよい。ミリングは、1時間~64時間の期間行われてもよい。例えば、ミリングの期間は、1時間~64時間、例えば4時間~48時間、8時間~24時間、または12時間~20時間であってもよい。一部の実施形態において、ミリングは、60RPMで16時間行われる。好ましい実施形態において、YAG圧密体のミリングは、少なくとも6時間の期間行われる。
【0064】
[0069]YAG圧密体をミリングすると、100μm未満の平均粒子サイズ分布を有する粉末が生成される。一部の実施形態において、平均粒子サイズ分布は、63μm未満である。これは、230メッシュ篩を通過する粉末に対応する。他の実施形態において、平均粒子サイズ分布は、44μm未満である。これは、325メッシュ篩を通過する粉末に対応する。ミリングされたYAG圧密材料は、いかなる凝集体も除去するために乾燥前に篩い分けされる。一部の実施形態において、YAG粉末は、二峰性粒子サイズ分布を有する。ミリングされたYAG圧密体は、次いで乾燥され、YAG粉末を生成する。
【0065】
乾燥
[0070]乾燥は、好適な乾燥機内で、例えばFisher Scientific Lab乾燥炉内で、90℃以下の温度で行われてもよい。一部の実施形態において、乾燥は、90℃未満の温度で行われる。乾燥は、2時間~24時間の期間行われてもよい。
【0066】
[0071]得られるYAG粉末は、YAl12の組成の粉末であり、一部の実施形態において、0.1重量%~3.0重量%のドーパント濃度を有する。最初に導入されるドーパントの濃度は、方法の間約±10%に維持される。一部の実施形態において、ドーパントの濃度は、方法のステップを通して不変である。態様において、YAG粉末は、x線回折(XRD)分析により決定されるように、YAG粒界において最大3体積%の酸化物を有し得る。酸化物は、例えば、アルミナまたはセリアを含み得る。一部の実施形態において、1体積%未満の酸化物がYAG粒界に存在する。粒界に存在する酸化物によって、YAG粉末は透明性が必要なある特定の用途に好適ではなくなる可能性があるが、そのような粉末は、半透明性を必要とする用途、または粒界におけるいくらかの酸化物の存在が許容され得、さらには有利となり得る用途には有用となり得る。例えば、YAG粒界における過剰のアルミナは、最終生成物の熱特性の増加、例えば熱拡散率の増加をもたらし得る。超化学量論的量のアルミナ、例えば2.1重量%のAlでは、YAGの熱拡散率は、3.00mm/秒から3.11mm/秒に大きく4%改善される。
【0067】
[0072]本明細書における方法による得られたYAG粉末は、次いで最終生成物に作製され得、これには高密度生成物を達成するための焼結が含まれてもよい。当技術分野において知られている方法による焼結は、固体焼結、熱間加圧、熱間等方圧加圧等を含む。YAGの焼結には、1500℃~1800℃の温度が必要である。
【0068】
[0073]焼結が行われる温度は、典型的には、本明細書におけるプロセスの焼成温度より高い。例えば、焼結は、1500℃~1800℃、例えば1525℃~1775℃、または1550℃~1750℃で行われる。下限に関しては、焼結は、1500℃超、例えば1525℃超、1550℃超、または1575℃超の温度で行われてもよい。上限に関しては、焼結は、1800℃未満、例えば1775℃未満、または1750℃未満の温度で行われてもよい。
【0069】
[0074]焼結は、2時間~64時間の範囲の期間、上述の温度で行われてもよい。例えば、焼結は、2時間~64時間、例えば4時間~48時間、6時間~24時間、または8時間~16時間、または10時間~14時間行われる。下限に関しては、焼結は、2時間超、例えば4時間超、6時間超、8時間超、または10時間超の期間行われてもよい。上限に関しては、焼結は、64時間未満、例えば48時間未満、24時間未満、16時間未満、または14時間未満の期間行われてもよい。好ましい実施形態において、焼結は、8~16時間の期間行われる。
【0070】
YAG構造および組成
[0075]本開示は、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)粉末合成に関する。YAGは、Y(イットリア)対Al(アルミナ)の化学量論的な3:5の比または3Y:5Alに対応する標準式YAl12を有する、または比は0.6:1のY対Alと記述することができる。YAG結晶構造は、3つの異なる酸素多面体を含有する複雑な立方構造であり、Y+3イオンが12面体部位を占有し、Al3+イオンが2:3の比で8面体および四面体部位を占有している。この配置は、イオン半径:O-2(1.4Å)、Y+3(1.281Å)、Al3+(0.51Å)の差に起因する。単位格子パラメータは、異なるイオン半径のカチオンとの置換により立方対称性から変化し得る。類似したイオン半径を有するカチオンは、例えばCe+3でカチオン置換を行うことによるYAGのドープと同様に、Y+3を置き換えることができる。セリウムがドープされたYAG、またはCe:YAGは、陰極線管、白色発光ダイオード、およびシンチレータにおける蛍光体として有用である。他のドーパントもまた企図される。蛍光体は、例えば、遷移金属またはランタニドで活性化され得る。
【0071】
[0076]有利には、所望のドーパントに容易に調整可能であることに加えて、本明細書におけるプロセスに従って形成されたYAG粉末は、高密度の最終物品に容易に焼結され得る。例えば、その後の焼結後、開示されたYAG粉末は、1537℃で8時間の焼結で理論密度の98%に達し得る物品を形成し、一方市販のYAG粉末(Intematix G91、フリーモント、CA)は、1537℃で8時間の焼結で理論密度の83%にしか達し得ない。一部の実施形態において、焼結YAG物品は、理論密度の90%~理論密度の100%、例えば理論密度の92%~理論密度の100%、または理論密度の94%~理論密度の99%となり得る。焼結してYAG物品を形成するステップは、理論密度の90%以上、理論密度の92%以上、理論密度の94%以上、理論密度の96%以上、または理論密度の97%以上まで焼結することを含んでもよい。好ましい実施形態において、YAG圧密体は、理論密度の98%±10%以下まで焼結される。
【0072】
ドープされたYAG
[0077]本明細書で開示されるようなYAG粉末合成は、初期イットリアおよびシリカをYAGに転換する前にランタニドまたは遷移金属を含むドーパントを使用するステップをさらに含んでもよい。好適なドーパントは、+3にイオン化されたランタニドまたは遷移金属を含む。好適なドーパントは、0.114nm以下のイオン半径を有するものを含み得る。ドーパントは、初期イットリア、シリカ、および/またはシリカ富化イットリア粉末と共にプロセスに導入される。ドーパントは、イットリア粉末内で富化されてもよく、または粉末スラリーを作製する前に混合される別個の粉末として導入されてもよい。
【0073】
[0078]ランタニドは、原子番号57~71を有する化学元素を含み、5d殻に1つの価電子を有するものとして特徴付けられる。好適なランタニドは、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウムおよびルテチウムを含む。一般に、遷移金属は、その原子が部分的に充填されたd亜殻を有する、または不完全d亜殻を有するカチオンを生じ得る元素である。本明細書の目的において、スカンジウムおよび亜鉛が遷移金属と見なされる。好適な遷移金属は、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウムを含む。本明細書におけるドーパントとしてのランタニドまたは遷移金属は、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、またはそれらの組合せを含み得る。一部の実施形態において、ドーパントは、スカンジウム、亜鉛、またはセリウムである。
【0074】
[0079]本明細書で開示されるようなYAG粉末合成中に導入されるドーパントは、化合物の形態であってもよい。化合物は、酸化物、水和物、硝酸塩、塩化物、またはそれらの組合せであってもよい。ドーパントとしてセリウムを導入するための例示的化合物は、これらに限定されないが、セリア(CeO)、塩化セリウム(III)七水和物(CeCl・7HO)、硝酸セリウム(III)六水和物(Ce(NO・6HO)、またはそれらの組合せを含む。ドーパントとしてスカンジウムを導入するための例示的化合物は、これらに限定されないが、酸化スカンジウム(Sc)および塩化スカンジウム六水和物(ScCl・6HO)を含む。ドーパントとして亜鉛を導入するための例示的化合物は、これらに限定されないが、酸化亜鉛(ZnO)および塩化亜鉛(ZnCl)を含む。
【0075】
[0080]本明細書で開示される構成要素、方法および装置のより完全な理解は、添付の図面を参照することにより得ることができる。これらの図は、本開示を実証する利便性および容易性に基づく単なる概略的表現であり、したがって、デバイスもしくはその構成要素の相対的サイズおよび寸法を示すこと、ならびに/または例示的実施形態の範囲を画定もしくは制限することを意図しない。
【0076】
[0081]図1は、例示的実施形態による方法100のフローチャートを示す。ステップ110は、初期粉末の導入である。初期粉末は、イットリア、シリカ、および任意選択のドーパント(またはドーパント化合物)を含んでもよい。粉末は導入されていてもよく(例えばシリカを富化したイットリア)、または混合されて粉末混合物を形成する別個の粉末として導入されてもよい(例えばイットリアおよびフュームドシリカ)。粉末混合物にはアルミナがなくてもよく、例えば、粉末混合物にはアルミナが含まれない。ステップ120は、粉末混合物をミリングすることを含む。ステップ120におけるボールミリングは、溶媒およびアルミナ粉砕媒体と共にステップ110の粉末混合物を含む容器を回転させることを含む。上で議論したような様々なパラメータを介して制御されるミリング120中のアルミナ粉砕媒体の摩耗により、アルミナが粉末スラリーに導入される。所望量のアルミナが粉末スラリーに組み込まれた後、任意選択の有機結合剤が添加され、粉末スラリーを噴霧乾燥するステップ130が行われて、アルミナ、イットリア、シリカ、および任意選択のドーパントの離散した、均一に分布した粒子を生成する。方法100は、圧密するステップ140をさらに含む。圧密は、理論密度の35%以下を達成するように行われる。このステップは、圧粉体中のイオン間の距離を短縮するのに重要である。したがって、次の焼成するステップ150中、圧粉体のアルミナ、イットリア、およびシリカ相(および任意選択のドーパント)からYAG相への転換はより容易に達成され、YAG圧密体が形成される。より容易に達成される相転換は、緩い材料の焼成と比較して、以下の少なくとも1つに等しくなり得る。焼成は、より低い温度、より短い期間、および/またはより少ないサイクルで行われ得る。方法100は、粉砕媒体の非存在下でYAG圧密体をミリングするステップ160を含み、YAG材料を使用してそれ自身と衝突および粉砕させ、ミリングされたYAGを形成し、これは次いで乾燥するステップ170および任意選択の篩い分けに供されてYAG粉末を生成する。
【0077】
[0082]一部の実施形態において、本明細書で開示されたステップまたは構成要素のいずれかまたはいくつかは、任意選択的と見なされ得る。いくつかの場合において、本明細書における上述の項目のいずれかまたはいくつかは、例えば特許請求の範囲の文言により明示的に除外され得る。例えば、特許請求の範囲の文言は、粉末混合物が特定の酸化物またはドーパントを含まない、または除外することを記載するように修正され得る。
【0078】
[0083]本明細書において使用される場合、限界値「超」および「未満」は、それに関連する数値もまた含み得る。換言すれば、「超」および「未満」は、「以上」および「以下」として解釈され得る。この文言は、特許請求の範囲において「またはそれに等しい」を含むように後に修正され得ることが考えられる。例えば、「4.0超」は、「4.0以上」として解釈され得、また後に特許請求の範囲において修正され得る。
【実施例
【0079】
[0084] 実施例1
[0085]セリウムドープYAG(Ce:YAG)粉末を、2.58重量%のCeOのドーパント濃度で合成した。
【0080】
[0086]71.33gのイットリア(純度99.9%、Y-104、Materion)、0.313gのフュームドシリカ(Sigma-Aldrich)、および3.225gのセリア(純度99.9%、C-1064、Materion)を、バッチとしてAbbethane(Paul O’Abbe)1.6ガロンポリウレタン内部被覆ミリングジャーに導入し、粉末混合物を形成した。ミリングジャーに、756.4gのアルミナ粉砕媒体(純度97.7%、直径約13mm×高さ約13mm)および300mlの脱イオン水もまた添加して、粉末スラリーを形成した。実施例1のシリカの重量パーセントは、粉末混合物の総重量を基準として0.25重量%であった。次いで、粉末スラリーを60RPMで16時間ボールミリングした。
【0081】
[0087]ボールミリング後、粉末スラリーを、ポリエチレン篩(メッシュ#230)を使用して篩い分けし、アルミナ粉砕媒体および粗大粒子を粉末スラリーから分離した。アルミナ粉砕媒体を乾燥炉内で乾燥させ、再び重量を測定した。ボールミリング後のアルミナ粉砕媒体の重量は700.1gであり、粉砕媒体から浸食されたアルミナの量は、56.3gと計算された。図2のプロット200は、ボールミリング中にアルミナ粉砕媒体から浸食されたアルミナの量を示し、一方、粉砕媒体から浸食されたアルミナの量は、アルミナ粉砕媒体対イットリアの投入重量比の関数として示されている。ドーパントおよびフュームドシリカの量を考慮しなければ、粉末スラリー中のイットリアおよびアルミナ構成物質は、3Y:5Alの化学量論的YAG(71.33gのイットリアおよび53.67gのアルミナ)ならびに追加の2.63gのアルミナを提供する。粉末スラリー中のイットリア対アルミナ(Y:Al)のモル比は、3対5.25(0.57:1)と計算された。
【0082】
[0088]粉末スラリーは、8gのアクリルポリマーベース結合剤(B-60A、Rohm and Hass)をさらに含んでいたが、これは磁気バーおよび磁気撹拌器を使用して30分間粉末スラリー中に撹拌混合した。次いで、Yamato DL410噴霧乾燥機を使用して、240℃の入口温度、90℃の出口温度、および0.1MPaの空気圧力で粉末スラリーを噴霧乾燥した。噴霧乾燥粉末スラリーを325メッシュポリエチレン篩に通過させ、圧密用の造粒粉末を形成した。
【0083】
[0089]次いで、造粒粉末を圧粉体に圧密し、これをHydramet一軸加圧により粉砕媒体形状(直径1.905cm(0.75インチ)×高さ1.905cm(0.75インチ))に成形した。圧粉体の密度は1.49g/cm、またはYAGの理論密度の32.7%と同等であった。
【0084】
[0090]焼成は、以下の熱処理スケジュールを使用して行った:単一サイクルにおいて、500℃の温度に加熱し、1時間保持して有機結合剤を除去し(結合剤燃焼保持)、1525℃の温度に昇温し、8時間保持して焼成し、次いで1550℃の温度に昇温し、8時間保持してさらに焼成した。焼成された圧密体の密度は2.21g/cm、またはYAGの理論密度の48.6%と同等であった。圧粉体の全ての脱結合および焼成は、空気雰囲気中で行った。
【0085】
[0091]300mlのエタノール中の焼成された圧密体を60RPMで6時間ミリングし、次いで230メッシュのポリエチレン篩により篩い分けした。ミリングされたスラリーを、乾燥炉内で90℃の温度で一晩(12時間超)乾燥させた。乾燥後、YAG粉末を325メッシュポリエチレン篩に通過させた。
【0086】
[0092]図3は、実施例1の得られたYAG粉末のx線回折パターンを示す。プロット300は、主要相が「Y」で示されるピークを有するYAGであることを示している。より低い強度のピークで示されるように検出された副次相は、「M」で示されるピークを有するYAl(YAM)、「P」で示されるピークを有するYAlO(YAP)、「C」で示されるピークを有するセリア、および「A」で示されるピークを有するアルミナを含む。これは、有益には、従来の固体焼結プロセスから形成されたYAGと比較して高YAG含有率である。YAG相含有率は、約92重量%のYAl12と推定された。
【0087】
[0093]合成されたYAGの焼結性を評価するために、次いでYAG粉末を0.25重量%のフュームドシリカと混合し、一軸加圧により圧密し、次いで空気中1500℃で8時間焼結して、焼結された高密度圧密体を生成した(図4に示される通り)。
【0088】
[0094]図4は、空気中1500℃で8時間の焼結後の、2.58重量%CeOのドーパント濃度を有する、実施例1のように合成されたYAG粉末の典型的な微細構造を示す走査型電子顕微鏡(SEM)画像400である。粉末の組成は、化学量論的YAGおよび追加の2.13重量%のアルミナである(酸化セリウムを考慮していない)。焼結された高密度YAGセラミックは、4.41g/cmの密度を有するように測定され、これは理論密度の97%に等しい。画像400に示されるように、焼結されたYAG 400は、YAG粒410を含み、いくつかの粒界にサブミクロンの球状CeO粒420を有する。有利には、アルミナ粒は画像400に存在しない。
【0089】
[0095] 実施例2
[0096]非ドープYAG(YAG)粉末を合成した。バッチは、実施例1の場合のように71.33gのイットリア(99.9%、Y-104、Materion)および0.31gのフュームドシリカ(Sigma-Aldrich)を含んでいたが、CeOは添加しなかった。実施例2のシリカの重量パーセントは、粉末混合物の総重量を基準として0.25重量%であった。この粉末は、0.25重量%の超アルミナYAG組成を目標として合成された。粉末スラリー中のイットリア対アルミナ(Y:Al)のモル比は、3対5(0.6:1)と計算された。圧粉体の熱処理スケジュールは以下の通りであった:500℃の温度に加熱し、1時間保持して有機結合剤を除去し、1525℃の温度に昇温し、8時間保持して焼成し、次いで1550℃の温度に昇温し、8時間さらに焼成した。全ての熱処理は、全て空気中で行った。焼成された圧密体の密度は、YAGの理論密度の約50%であった。実施例2の熱処理後のXRDプロット(図示せず)は図3に類似していたが、CeO相のピークはなかった。中間相であるYAPおよびYAMが観察された。アルミナは副次相として検出されなかった。
【0090】
[0097]次いで、1525℃の温度で8時間保持し、次いで1550℃に昇温して8時間保持する焼成熱処理スケジュールを第2のサイクルとして繰り返すことによって、実施例2の得られた粉末を再焼成した。第2のサイクルでの焼成は、圧密体の密度に大きく影響せず、第2の焼成サイクル後はYAGの理論密度の約50%であった。
【0091】
[0098]次いで、2回の焼成サイクル後の実施例2の得られたYAG粉末のx線回折パターンを示す図5に示されるように、あらゆる中間相(YAPおよびYAM)を純粋なYAGに転換した。このように、再焼成された実施例2は、YAG相のみの存在を示し(副次相が存在しない)、これはYAGへの完全な相転換を示す。
【0092】
[0099] 比較例A
[0100]セリウムドープYAG(Ce:YAG)粉末を、3.0重量%CeOのドーパント濃度を有する従来の市販のイットリアおよびアルミナ粉末混合物のin situ焼結によって調製した。粉末の組成は、化学量論的YAGおよび追加の12重量%のアルミナであった(酸化セリウムを考慮していない)。図6は、理論密度の97%に等しい4.43g/cmの密度をもたらした空気中1600℃で8時間の焼結後の、比較例AのYAG粉末の様々なスポットにおけるスポットエネルギー分散分光法(EDS)分析を示すSEM画像600である。重要なことに、この比較試料は、実施例1と同じ密度を達成するために、大幅により高い焼結温度を必要とした。さらに、比較例Aは副次相として高含有率のアルミナを含んでいたが、これはYAG物品の純度および透過特性に影響するため望ましくない。副次相は、それぞれ約12重量%および3重量%の量のアルミナおよびセリアを含んでいた。
【0093】
[0101]図6に示されるように、EDS分析結果を5つの位置で収集した。表1は、比較例AのEDS結果を要約している。EDS分析に基づいて、YAG 610、セリア620およびアルミナ630の相を確認した。このように、比較例Aは、副次酸化物相としてアルミナ相を含有し、一方実施例1および(再焼成された)実施例2は含有しない。
【0094】
【表1】
【0095】
[0102] 実施例3および4、比較例BおよびC
[0103]異なる焼成熱処理(温度および/または期間および/またはサイクル数により変化)の生成される相に対する効果を比較するために、実施例2において調製されるような非ドープ粉末の拡大(目標375g)バッチを、214gのイットリアおよび0.938gのフュームドシリカから出発して合成した。実施例1および2の場合のように、拡大バッチ用のシリカの重量パーセントは、粉末混合物の総重量を基準として0.25重量%であった。ミリング中のアルミナ粉砕媒体の摩耗を介して、実施例1および2と同様にアルミナを導入した。この粉末は、1.1重量%の過剰アルミナを有する化学量論的YAG組成を目標として合成された。粉末スラリー中のイットリア対アルミナ(Y:Al)のモル比は、3対5.13(0.58:1)と計算された。
【0096】
[0104]実施例3~4および比較例BおよびCを、圧粉体に成形した。焼成前後の平均密度(例毎に少なくとも5つの試料圧密体の平均密度、理論密度のパーセンテージとして)を、表2に示す。
【0097】
[0105]全ての圧粉体を500℃の温度に加熱し、結合剤の燃焼のために、換言すれば有機結合剤を除去するために1時間保持した。
【0098】
[0106]次いで、実施例3~4および比較例BおよびCを、以下の異なる熱処理条件で焼成した。
実施例3の焼成サイクル - 単一サイクルにおいて、1525℃の温度に昇温し、8時間保持して焼成し、次いで1550℃の温度に昇温し、8時間保持してさらに焼成した。
比較例Bの焼成サイクル - 1475℃の温度に昇温し、8時間保持して空気中で焼成した。
比較例Cの焼成サイクル - 1525℃の温度に昇温し、8時間保持して空気中で焼成した。
実施例4は、比較例Cに従って熱処理され(上述のような焼成サイクルによる)、次いで空気中での焼成の追加の焼成サイクルにおいて1550℃で焼成されて8時間保持された圧密体を含んでいた。
【0099】
[0107]x線回折分析により決定されるように存在する相を、実施例3、実施例4、ならびに比較例BおよびCに関して比較した。表2は、再焼成された実施例2のデータも含む。再焼成された実施例2を、焼成熱処理の2回のサイクルに供したが、各サイクルは1525℃で8時間および1550℃で8時間を含んでいた。YAGおよび他の相(存在する場合)の含有率に関して、XRDデータを表2に要約する。他の相は、例えば、YAP、YAM、およびアルミナを含み得る。実施例3に関して存在する相を推定した。焼成熱処理後の相対密度(理論密度のパーセンテージとしての、例毎に少なくとも5つの試料圧密体の平均)もまた表2に要約する。すでに粉末形態で合成されていた実施例4については、相対密度は該当しない。
【0100】
【表2】
[0108]実施例2に従う焼成によって最も純粋なYAG粉末(副次相が検出されないYAl12への完全転換)が得られ、この焼成は、1525℃で8時間および1550℃で8時間の第1および第2の焼成サイクルを含んでいた。1525℃で8時間の第1の焼成サイクルおよび1550℃で8時間の第2の焼成サイクルを含んでいた実施例4もまた、少なくとも94重量%のYAl12の相含有率を伴う高YAG転換をもたらす。単一焼成サイクルでの1525℃/8時間+1550℃/8時間の実施例3による焼成は、92重量%のYAl12の相含有率を伴う高YAG転換をもたらす。
【0101】
[0109]比較例BおよびCは、許容され得ない量の非YAG相を示し、YAGへの転換が未だ完全ではないことを示唆していた。比較例Bは、わずか約65重量%のYAl12の相含有率を示し、比較例Bより高い焼成温度を有する比較例Cは、わずか約75重量%のYAl12の相含有率を示した。
【0102】
実施形態
[0110]以下の実施形態が企図される。特徴および実施形態の全ての組合せが企図される。
【0103】
[0111]実施形態1:イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)粉末を合成する方法であって、イットリアおよびシリカの粉末を導入して粉末混合物を形成するステップであり、アルミナが粉末混合物に添加されない、ステップと、アルミナ粉砕媒体および溶媒の存在下で粉末混合物をボールミリングし、粉末スラリーを形成するステップと、粉末スラリーを噴霧乾燥して噴霧乾燥粉末を形成するステップと、噴霧乾燥粉末を理論密度の35%以下まで圧密して圧粉体を形成するステップと、圧粉体を空気中で理論密度の50%以下まで焼成してYAG圧密体を形成するステップと、粉砕媒体なしでYAG圧密体をミリングし、次いで乾燥させてYAG粉末を生成するステップとを含む方法。
【0104】
[0112]実施形態2:混合粉末が、ランタニドまたは遷移金属を含むドーパントをさらに含む、前述または後述の実施形態のいずれかの方法。
【0105】
[0113]実施形態3:ランタニドまたは遷移金属が、化合物の形態であり、化合物は、酸化物、水和物、硝酸塩、塩化物、またはそれらの組合せである、前述または後述の実施形態のいずれかの方法。
【0106】
[0114]実施形態4:ランタニドまたは遷移金属が、+3までイオン化され、0.114nm以下のイオン半径を有する、前述または後述の実施形態のいずれかの方法。
【0107】
[0115]実施形態5:ランタニドまたは遷移金属が、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、またはそれらの組合せを含む、前述または後述の実施形態のいずれかの方法。
【0108】
[0116]実施形態6:ランタニドまたは遷移金属が、スカンジウム、亜鉛、またはセリウムである、前述または後述の実施形態のいずれかの方法。
【0109】
[0117]実施形態7:ドーパントが、粉末混合物の総重量を基準として10ppm~6重量%を構成する、前述または後述の実施形態のいずれかの方法。
【0110】
[0118]実施形態8:ドーパントが、粉末混合物の総重量を基準として0.1重量%~5重量%のセリアである、前述または後述の実施形態のいずれかの方法。
【0111】
[0119]実施形態9:ドーパントが、粉末混合物の総重量を基準として3重量%未満のセリアである、前述または後述の実施形態のいずれかの方法。
【0112】
[0120]実施形態10:化合物が、セリア(CeO)、塩化セリウム(III)七水和物(CeCl・7HO)、または硝酸セリウム(III)六水和物(Ce(NO・6HO)である、前述または後述の実施形態のいずれかの方法。
【0113】
[0121]実施形態11:イットリア粉末が、2N以上の純度を有する、前述または後述の実施形態のいずれかの方法。
【0114】
[0122]実施形態12:イットリア粉末が、3N以上の純度を有する、前述または後述の実施形態のいずれかの方法。
【0115】
[0123]実施形態13:シリカが、粉末混合物の総重量を基準として0.2重量%~0.3重量%である、前述または後述の実施形態のいずれかの方法。
【0116】
[0124]実施形態14:シリカが、フュームドシリカである、前述または後述の実施形態のいずれかの方法。
【0117】
[0125]実施形態15:アルミナ粉砕媒体が、95.0~99.8%のAlの純度を有する、前述または後述の実施形態のいずれかの方法。
【0118】
[0126]実施形態16:粉末スラリーをボールミリングするステップが、粉末混合物、溶媒、およびアルミナ粉砕媒体がポリマー被覆ボールミリング容器内に収容されることを含む、前述または後述の実施形態のいずれかの方法。
【0119】
[0127]実施形態17:溶媒が、蒸留水または脱イオン水である、前述または後述の実施形態のいずれかの方法。
【0120】
[0128]実施形態18:粉末スラリーを噴霧乾燥する前に、有機結合剤を粉末スラリーに添加し、混合するステップをさらに含む、前述または後述の実施形態のいずれかの方法。
【0121】
[0129]実施形態19:有機結合剤が、水溶性である、前述または後述の実施形態のいずれかの方法。
【0122】
[0130]実施形態20:有機結合剤が、粉末スラリーの総重量を基準として3重量%~9重量%である、前述または後述の実施形態のいずれかの方法。
【0123】
[0131]実施形態21:ボールミリング後の組成物が、化学量論的3Y:5Al(0.6:1)および3重量%未満の追加のAlを含む、前述または後述の実施形態のいずれかの方法。
【0124】
[0132]実施形態22:追加のAlが、アルミナ粉砕媒体の浸食部分を含む、前述または後述の実施形態のいずれかの方法。
【0125】
[0133]実施形態23:噴霧乾燥粉末を圧密するステップが、一軸加圧または冷間等方圧加圧を含む、前述または後述の実施形態のいずれかの方法。
【0126】
[0134]実施形態24:噴霧乾燥粉末を圧密するステップが、空気中室温で行われる、前述または後述の実施形態のいずれかの方法。
【0127】
[0135]実施形態25:噴霧乾燥粉末を圧密するステップが、500psi~1250psiの圧力で行われる、前述または後述の実施形態のいずれかの方法。
【0128】
[0136]実施形態26:焼成するステップが、1100℃~1650℃の温度で行われる、前述または後述の実施形態のいずれかの方法。
【0129】
[0137]実施形態27:焼成するステップが、1450℃~1550℃の温度で行われる、前述または後述の実施形態のいずれかの方法。
【0130】
[0138]実施形態28:焼成するステップが、2時間~64時間の期間行われる、前述または後述の実施形態のいずれかの方法。
【0131】
[0139]実施形態29:焼成するステップが、8時間~16時間の期間行われる、前述または後述の実施形態のいずれかの方法。
【0132】
[0140]実施形態30:YAG圧密体をミリングするステップが、圧密体および溶媒がポリマー被覆ミリング容器内に収容されることを含む、前述または後述の実施形態のいずれかの方法。
【0133】
[0141]実施形態31:溶媒が、エタノールアルコールまたはイソプロピルアルコールである、前述または後述の実施形態のいずれかの方法。
【0134】
[0142]実施形態32:YAG圧密体をミリングするステップが、少なくとも6時間ミリングすることを含む、前述または後述の実施形態のいずれかの方法。
【0135】
[0143]実施形態33:YAG圧密体をミリングするステップが、YAG圧密材料自体が自己破砕し、100μm未満の平均粒子サイズ分布を有するYAG粉末を生成することを含む、前述または後述の実施形態のいずれかの方法。
【0136】
[0144]実施形態34:平均粒子サイズ分布が、63μm未満である、前述または後述の実施形態のいずれかの方法。
【0137】
[0145]実施形態35:平均粒子サイズ分布が、44μm未満である、前述または後述の実施形態のいずれかの方法。
【0138】
[0146]実施形態36:ミリングされたYAG圧密材料が、乾燥前に篩い分けされる、前述または後述の実施形態のいずれかの方法。
【0139】
[0147]実施形態37:YAG粉末が、二峰性粒子サイズ分布を有する、前述または後述の実施形態のいずれかの方法。
【0140】
[0148]実施形態38:乾燥が、90℃未満の温度で行われる、前述または後述の実施形態のいずれかの方法。
【0141】
[0149]実施形態39:ドープされたイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)粉末を合成する方法であって、イットリア、シリカ、およびランタニドまたは遷移金属の酸化物、水和物、硝酸塩または塩化物で形成される少なくとも1種のドーパントの粉末を提供し、混合して粉末混合物を形成するステップであり、アルミナが粉末混合物に添加されない、ステップと、アルミナ粉砕媒体および溶媒の存在下で粉末混合物をボールミリングし、粉末スラリーを形成するステップと、粉末スラリーに有機結合剤を添加し、混合して噴霧可能な粉末スラリーを形成するステップと、噴霧可能な粉末スラリーを噴霧乾燥して噴霧乾燥粉末を形成するステップと、噴霧乾燥粉末を理論密度の35%以下まで圧密して圧粉体を形成するステップと、圧粉体を空気中で理論密度の50%以下まで焼成してYAG圧密体を形成するステップと、粉砕媒体なしでYAG圧密体をミリングし、次いで乾燥させてドープされたYAG粉末を生成するステップとを含む方法。
【0142】
[0150]実施形態40:YAl12および3重量%未満の追加のAlを含む、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)組成物であって、追加のAlは、アルミナ粉砕媒体の浸食部分を含む組成物。
【0143】
[0151]実施形態41:少なくとも1原子%のドーパント濃度をさらに含む、前述または後述の態様のいずれかの組成物。
【0144】
[0152]実施形態42:前述の態様のいずれかの組成物を含む、蛍光体ホイールまたはLED照明。
【0145】
[0153]以下の説明では、明確性のために特定の用語が使用されているが、これらの用語は、図面における例示に選択された実施形態の特定の構造を示すことのみを意図し、本開示の範囲を画定または限定することを意図しない。図面および以下の説明において、類似の数値表示は類似の機能の構成要素を指すことを理解されたい。
【0146】
[0154]文脈上異なる定義が明示されていない限り、単数形「a」、「an」、「the」は複数形の呼称も含む。
【0147】
[0155]本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、「備える」という用語は、「~からなる」および「から本質的になる」という具体的表現を含み得る。用語「備える」、「含む」、「有する(having)」、「有する(has)」、「できる」、「含有する」およびそれらの変化形は、本明細書において使用される場合、指定された成分/構成要素/ステップの存在を必要とし、他の成分/構成要素/ステップの存在を許容する非制限的な移行句、用語または単語であることを意図する。しかしながら、そのような説明は、列挙された成分/構成要素/ステップ「からなる」および「から本質的になる」ような組成物、物品または方法も説明しているとして解釈されるべきであり、これは、指定された成分/構成要素/ステップおよびそれらから生じ得る任意の不純物のみの存在を許容し、他の成分/構成要素/ステップを除外する。
【0148】
[0156]本出願の明細書および特許請求の範囲における数値は、同じ有効桁数まで丸めた場合に同じである数値、および値を決定するための本出願に記載される種類の従来の測定技術の実験誤差未満だけ記述された値から異なる数値を含むことが理解されるべきである。
【0149】
[0157]本明細書に開示される全ての範囲は、列挙された端点を含み、独立して組み合わせ可能である(例えば、「2グラム~10グラム」の範囲は、端点である2グラムまたは10グラム、および全ての中間値を含む)。
【0150】
[0158]材料が平均粒子サイズまたは平均粒子サイズ分布を有すると説明されている場合、これは、粒子の総数の50(体積)%の累積パーセンテージが達成される粒子直径として定義される。換言すれば、粒子の50%が平均粒子サイズ超の直径を有し、粒子の50%が平均粒子サイズ未満の直径を有する。粒子のサイズ分布はガウス分布であり、述べられた平均粒子サイズの25%および75%に上位および下位四分位点を有し、全ての粒子は述べられた平均粒子サイズの150%未満である。
【0151】
[0159]本明細書に記載の方法ステップは温度に言及しており、指定されない限り、熱源(例えば炉、オーブン)が設定される温度ではなく、参照される材料によって達成される温度を指す。「室温」という用語は、20℃~25℃(68°F~77°F)の範囲を指す。
【0152】
[0160]「約」という用語は、その値の基本機能を変化させることなく変動し得る任意の数値を含むように使用され得る。範囲と共に使用される場合、「約」はまた、2つの端点の絶対値によって画定される範囲も開示し、例えば、「約2~約4」はまた、「2~4」の範囲も開示する。「約」という用語は、示された数字のプラスまたはマイナス10%を指し得る。
【0153】
[0161]本発明を詳細に説明してきたが、本発明の趣旨および範囲内の修正は、当業者に容易に明らかとなるであろう。上記の議論、当技術分野における関連する知識、ならびに背景技術および発明を実施するための形態と併せて上記で議論された参考文献を鑑みて、それらの開示は全て参照により本明細書に組み込まれる。さらに、以下で、および/または添付の特許請求の範囲において列挙される本発明の態様および様々な実施形態の一部および様々な特徴は、全体的または部分的に組み合わされ得る、または交換され得ることが理解されるべきである。様々な実施形態の上記説明において、別の実施形態を参照するそれらの実施形態は、当業者には理解されるように、他の実施形態と適切に組み合わされ得る。さらに、当業者には、上記説明が例示のみを目的とし、制限を意図しないことが理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】