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特表2024-506861物質使用障害の治療のための隔離化合物及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-15
(54)【発明の名称】物質使用障害の治療のための隔離化合物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/551 20060101AFI20240207BHJP
   A61K 31/485 20060101ALI20240207BHJP
   A61P 39/02 20060101ALI20240207BHJP
   A61K 31/09 20060101ALI20240207BHJP
   A61P 25/36 20060101ALI20240207BHJP
   A61K 31/724 20060101ALI20240207BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20240207BHJP
   A61P 25/30 20060101ALI20240207BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
A61K31/551
A61K31/485
A61P39/02
A61K31/09
A61P25/36
A61K31/724
A61K31/05
A61P25/30
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546560
(86)(22)【出願日】2022-02-01
(85)【翻訳文提出日】2023-09-26
(86)【国際出願番号】 US2022014695
(87)【国際公開番号】W WO2022165407
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】63/144,441
(32)【優先日】2021-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523290942
【氏名又は名称】クリア サイエンティフィック,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー,シンホワ
(72)【発明者】
【氏名】ザキン,ミッチェル
(72)【発明者】
【氏名】シェティ,チャンドラシェカール
(72)【発明者】
【氏名】オリバー,ピアセン
(72)【発明者】
【氏名】ウォラック,ダン
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB14
4C086CB23
4C086EA20
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA65
4C086NA05
4C086ZC39
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA17
4C206CA34
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA17
4C206NA05
4C206ZC37
4C206ZC39
(57)【要約】
本明細書では、薬物乱用などの毒物に起因する中毒及び関連する症状の治療のためのi)隔離剤及びii)中枢神経系(CNS)活性剤が説明される。また、尿を介した関心の結合分子の隔離及び排泄によるオピオイド過剰摂取の治療における使用のためのククルビットウリル及びナロキソンが本明細書に開示される。また、本開示の治療のキット及び方法も本明細書に提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトにおける少なくとも1つの毒物に起因する、中毒、過剰摂取、又はその症状の治療における使用のための組み合わせであって、
i)前記少なくとも1つの毒物を隔離するのに充分な量の隔離剤又はその薬学的に許容される塩と、
ii)中枢神経系(CNS)活性剤又はその薬学的に許容される塩、
前記隔離剤が、ククルビットウリル、ピラーアレーン、シクロデキストリン、又はカリックスアレーンであり、
前記隔離剤及び前記CNS活性剤が、同時に、又は約5分未満の間隔を空けて逐次的に、投与される、使用のための組み合わせ。
【請求項2】
ヒトにおいて、覚醒剤、神経剤、アレルゲン、及び代謝又は消化誘導性毒性物質からなる群から選択される少なくとも1つの毒物に起因する、中毒、過剰摂取、又はその症状の治療における使用のための組み合わせであって、
i)前記少なくとも1つの毒物を隔離するのに充分な量の隔離剤又はその薬学的に許容される塩と、
ii)中枢神経系(CNS)活性剤又はその薬学的に許容される塩、
前記隔離剤が、ククルビットウリル、ピラーアレーン、シクロデキストリン、又はカリックスアレーンである、使用のための組み合わせ。
【請求項3】
対象における過剰摂取の疑い又はその症状の治療における使用のための組み合わせであって、
i)少なくとも1つの毒物を隔離するのに充分な量の隔離剤又はその薬学的に許容される塩と、
ii)中枢神経系(CNS)活性剤又はその薬学的に許容される塩、
前記隔離剤が、ククルビットウリル、ピラーアレーン、シクロデキストリン、又はカリックスアレーンであり、
前記対象は、複数の毒物からの過剰摂取が疑われる、使用のための組み合わせ。
【請求項4】
前記複数の毒物が、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、又は少なくとも4つの毒物を含む、請求項3に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項5】
前記隔離剤及び前記CNS活性剤が、同時に、又は約5分未満の間隔を空けて逐次的に、投与される、請求項2~4のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項6】
前記隔離剤及びCNS活性剤が、同じ医薬組成物中にある、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項7】
前記隔離剤及びCNS活性剤が、異なる医薬組成物中にある、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項8】
前記隔離剤及びCNS活性剤が同時に投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項9】
前記隔離剤及びCNS活性剤が逐次的に投与される、請求項1~5又は7のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項10】
前記CNS活性剤が最初に投与される、請求項9に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項11】
前記隔離剤が、前記CNS活性剤の約4分、約3分、約2分、又は約1分未満の後に投与される、請求項10に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項12】
前記隔離剤が最初に投与される、請求項9に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項13】
前記CNS活性剤が、前記隔離剤の約4分、約3分、約2分、又は約1分未満の後に投与される、請求項12に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項14】
前記CNS活性剤が、オピオイド受容体拮抗薬である、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項15】
前記CNS活性剤が、ミューオピオイド受容体拮抗薬である、請求項1~14のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項16】
前記CNS活性剤が、ナロキソン、ペンタゾシン、ナルブフィン、ジプレノルフィン、メチルナルトレキソン、ナロキセゴール、アルビモパン、ナルトレキソン、ナルメフェン、及びブプレノルフィン、並びにそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項1~15のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項17】
前記CNS活性剤がナロキソンである、請求項16に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項18】
前記CNS活性剤がベンゾジアゼピンである、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項19】
前記ベンゾジアゼピンが、ロラゼパム、クロノピン、クロノザパム、ジアゼパム、アルプラゾラム、クロルジアゼポキシド、クロラゼプ酸、ハラゼパム、オキサゼパム、プラゼパム、及びクアゼパム、並びにそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項18に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項20】
前記CNS活性剤が抗ヒスタミン剤である、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項21】
前記抗ヒスタミン剤が、セチリジン、ジフェンヒドラミン、フェキソフェナジン、ロラタジン、デスロラタジン、クレマスチン、クロルフェニラミン、レボセチリジン、シプロヘプタジン、カルビノキサミン、エメダスチン、及びレボカバスチン、並びにそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項20に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項22】
前記CNS活性剤が、ケタミン、又はその薬学的に許容される塩である、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項23】
前記CNS活性剤が、アトロピン若しくはスコポラミン、又はその薬学的に許容される塩である、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項24】
前記隔離剤が非環式ククルビットウリルである、請求項1~23のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項25】
前記隔離剤が環式ククルビットウリルである、請求項1~23のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項26】
前記隔離剤がピラーアレーンである、請求項1~23のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項27】
前記隔離剤がシクロデキストリンである、請求項1~23のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項28】
前記隔離剤がカリックスアレーンである、請求項1~23のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項29】
前記隔離剤が、化合物A、又はその任意の誘導体、又はその薬学的に許容される塩であり、化合物Aが、以下の構造を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【化1】
【請求項30】
前記毒物が乱用薬物である、請求項1~29のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項31】
前記毒物がオピオイドである、請求項1及び3~30のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項32】
前記隔離剤が、少なくとも約1×10-1、1×10-1、1×10-1、×10-1、1×10-1、1×10-1、又は1×10-1のKで前記オピオイドに結合する、請求項31に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項33】
前記オピオイドが、フェンタニル、フェンタニル類似体、カルフェンタニル、スフェンタニル、アセチルフェンタニル、アルフェンタニル、ヘロイン、モルヒネ、オキシコドン、コデイン、ヒドロコドン、オキシモルフォン、及び任意の薬学的に許容される塩、並びにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項31又は32に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項34】
前記毒物が、覚醒剤、神経剤、アレルゲン、及び代謝又は消化誘導性毒性物質からなる群から選択される、請求項1~30のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項35】
前記毒物が覚醒剤である、請求項34に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項36】
前記隔離剤が、少なくとも約1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1、又は1×10-1のKで前記覚醒剤に結合する、請求項35に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項37】
前記覚醒剤が、アンフェタミン、メタンフェタミン、リタリン、フェンシクリジン、コカイン、カフェイン、3,4-メチレンジオキシ-メタンフェタミン(MDMA)、及び任意の薬学的に許容される塩、並びにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項35又は36に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項38】
前記CNS活性剤が、少なくとも約1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1、又は1×10-1のKで前記毒物に結合する、請求項1~37のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項39】
前記隔離剤が、少なくとも約1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1、又は1×10-1のKで前記CNS活性剤に結合する、請求項1~38のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項40】
前記隔離剤が、化合物A又はその薬学的に許容される塩であり、化合物A又は前記その薬学的に許容される塩が、約1mg/kg~約2,000mg/kgで投与される、請求項1~39のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項41】
前記CNS活性剤が、ナロキソン又はその薬学的に許容される塩であり、前記ナロキソン又は前記その薬学的に許容される塩が、約0.1~約1,000μg/kgで投与される、請求項1~40のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項42】
医薬組成物であって、
i)少なくとも1つの毒物を隔離するのに充分な量の隔離剤又はその薬学的に許容される塩と、
ii)中枢神経系(CNS)活性剤又はその薬学的に許容される塩と、
iii)薬学的に許容される賦形剤と、を含み、
前記隔離剤が、ククルビットウリル、ピラーアレーン、シクロデキストリン、又はカリックスアレーンである、医薬組成物。
【請求項43】
前記CNS活性剤がオピオイド受容体拮抗薬である、請求項42に記載の医薬組成物。
【請求項44】
前記CNS活性剤が、ミューオピオイド受容体拮抗薬である、請求項42又は43に記載の医薬組成物。
【請求項45】
前記CNS活性剤が、ナロキソン、ペンタゾシン、ナルブフィン、ジプレノルフィン、メチルナルトレキソン、ナロキセゴール、アルビモパン、ナルトレキソン、ナルメフェン、ブプレノルフィン、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項42~44のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項46】
前記CNS活性剤がナロキソンである、請求項42に記載の医薬組成物。
【請求項47】
前記CNS活性剤がベンゾジアゼピンである、請求項42に記載の医薬組成物。
【請求項48】
前記ベンゾジアゼピンが、ロラゼパム、クロノピン、クロノザパム、ジアゼパム、アルプラゾラム、クロルジアゼポキシド、クロラゼプ酸、ハラゼパム、オキサゼパム、プラゼパム、及びクアゼパム、並びにそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項47に記載の医薬組成物。
【請求項49】
前記CNS活性剤が抗ヒスタミン剤である、請求項42に記載の医薬組成物。
【請求項50】
前記抗ヒスタミン剤が、セチリジン、ジフェンヒドラミン、フェキソフェナジン、ロラタジン、デスロラタジン、クレマスチン、クロルフェニラミン、レボセチリジン、シプロヘプタジン、カルビノキサミン、エメダスチン、及びレボカバスチン、並びにそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項49に記載の医薬組成物。
【請求項51】
前記CNS活性剤が、ケタミン又はその薬学的に許容される塩である、請求項42に記載の医薬組成物。
【請求項52】
前記CNS活性剤が、アトロピン若しくはスコポラミン、又はその薬学的に許容される塩である、請求項42に記載の医薬組成物。
【請求項53】
前記隔離剤が非環式ククルビットウリルである、請求項42~52のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項54】
前記隔離剤が環式ククルビットウリルである、請求項42~52のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項55】
前記隔離剤がピラーアレーンである、請求項42~52のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項56】
前記隔離剤がシクロデキストリンである、請求項42~52のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項57】
前記隔離剤がカリックスアレーンである、請求項42~52のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項58】
前記隔離剤が、化合物A、又はその任意の誘導体、又はその薬学的に許容される塩であり、化合物Aが、以下の構造を含む、請求項42~52のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【化2】
【請求項59】
前記隔離剤が、少なくとも約1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1、又は1×10-1のKで前記CNS活性剤に結合する、請求項42~58のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項60】
前記CNS活性剤が、ナロキソン又はその薬学的に許容される塩であり、前記ナロキソン又はその薬学的に許容される塩が、約0.01重量%~約20重量%で存在する、請求項42~59のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項61】
前記医薬組成物が、経口、静脈内、筋肉内、皮下、髄内、くも膜下、腹腔内、鼻腔内、眼、肺、経粘膜、経皮、又は局所投与に好適な形態である、請求項42~60のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項62】
前記医薬組成物が、液体剤形である、請求項42~61のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項63】
前記医薬組成物が、固体剤形である、請求項42~62のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項64】
少なくとも1つの毒物に起因する、中毒、過剰摂取、又はその症状の治療における使用のための、請求項42~63のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項65】
前記毒物が乱用薬物である、請求項64に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項66】
前記毒物がオピオイドである、請求項64又は65に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項67】
前記隔離剤が、少なくとも約1×10-1、1×10-1、1×10-1、×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1のKで前記オピオイドに結合する、請求項66に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項68】
前記オピオイドが、フェンタニル、フェンタニル類似体、カルフェンタニル、スフェンタニル、アセチルフェンタニル、アルフェンタニル、ヘロイン、モルヒネ、オキシコドン、コデイン、ヒドロコドン、オキシモルフォン、及び任意の薬学的に許容される塩、並びにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項66又は67に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項69】
前記毒物が、覚醒剤、神経剤、アレルゲン、及び代謝又は消化誘導性毒性物質からなる群から選択される、請求項64又は65に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項70】
前記毒物が覚醒剤である、請求項69に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項71】
前記隔離剤が、少なくとも約1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1、又は1×10-1のKで前記覚醒剤に結合する、請求項70に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項72】
前記覚醒剤が、アンフェタミン、メタンフェタミン、リタリン、フェンシクリジン、コカイン、カフェイン、3,4-メチレンジオキシ-メタンフェタミン(MDMA)、及び任意の薬学的に許容される塩、並びにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項70又は71に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項73】
前記CNS活性剤が、少なくとも約1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1、又は1×10-1のKで前記毒物に結合する、請求項64~72のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項74】
ヒトにおいて、少なくとも1つの毒物に起因する、中毒、過剰摂取、又はその症状を治療する方法であって、前記方法が、治療有効量の、
i)前記少なくとも1つの毒物を隔離するのに充分な量の隔離剤又はその薬学的に許容される塩と、
ii)中枢神経系(CNS)活性剤又はその薬学的に許容される塩と、を投与することを含み、
前記隔離剤が、ククルビットウリル、ピラーアレーン、シクロデキストリン、又はカリックスアレーンであり、
前記隔離剤及び前記CNS活性剤が、同時に、又は約5分未満の間隔を空けて逐次的に、投与される、方法。
【請求項75】
ヒトにおいて、覚醒剤、神経剤、アレルゲン、及び代謝又は消化誘導性毒性物質に起因する、中毒、過剰摂取、又はその症状を治療する方法であって、前記方法が、
治療有効量の隔離剤又はその薬学的に許容される塩を、治療有効量の中枢神経系(CNS)活性剤又はその薬学的に許容される塩と同時投与することを含み、前記同時投与が、前記覚醒剤、神経剤、アレルゲン、又は代謝及び消化誘導性毒性物質の過剰摂取又はその症状の治療を、それを必要とするヒトにおいて行うために有効である、方法。
【請求項76】
治療有効量の隔離剤又はその薬学的に許容される塩を、治療有効量の中枢神経系(CNS)活性剤又はその薬学的に許容される塩と同時投与することを含む、対象における過剰摂取の疑い又はその症状を治療する方法であって、前記対象は、複数の毒物からの過剰摂取が疑われる、方法。
【請求項77】
前記複数の毒物が、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、又は少なくとも4つの毒物を含む、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記隔離剤及び前記CNS活性剤が、同時に、又は約5分未満の間隔を空けて逐次的に、投与される、請求項75~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記隔離剤及びCNS活性剤が、同じ医薬組成物中で投与される、請求項74~78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記隔離剤及びCNS活性剤が、異なる医薬組成物中にある、請求項74~78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記隔離剤及びCNS活性剤が、同時に投与される、請求項74~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記隔離剤及びCNS活性剤が、逐次的に投与される、請求項74~78又は80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記CNS活性剤が最初に投与される、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記隔離剤が、前記CNS活性剤の約4分、約3分、約2分、又は約1分未満の後に投与される、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記隔離剤が最初に投与される、請求項82に記載の方法。
【請求項86】
前記CNS活性剤が、前記隔離剤の約4分、約3分、約2分、又は約1分未満の後に投与される、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記CNS活性剤がオピオイド受容体拮抗薬である、請求項74~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
前記CNS活性剤がミューオピオイド受容体拮抗薬である、請求項74~87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
前記CNS活性剤が、ナロキソン、ペンタゾシン、ナルブフィン、ジプレノルフィン、メチルナルトレキソン、ナロキセゴール、アルビモパン、ナルトレキソン、ナルメフェン、及びブプレノルフィン、並びにそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項74~88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
前記CNS活性剤がナロキソンである、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記CNS活性剤がベンゾジアゼピンである、請求項74~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
前記ベンゾジアゼピンが、ロラゼパム、クロノピン、クロノザパム、ジアゼパム、アルプラゾラム、クロルジアゼポキシド、クロラゼプ酸、ハラゼパム、オキサゼパム、プラゼパム、及びクアゼパム、並びにそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記CNS活性剤が抗ヒスタミン剤である、請求項74~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
前記抗ヒスタミン剤が、セチリジン、ジフェンヒドラミン、フェキソフェナジン、ロラタジン、デスロラタジン、クレマスチン、クロルフェニラミン、レボセチリジン、シプロヘプタジン、カルビノキサミン、エメダスチン、及びレボカバスチン、並びにそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記CNS活性剤が、ケタミン又はその薬学的に許容される塩である、請求項74~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項96】
前記CNS活性剤が、アトロピン若しくはスコポラミン、又はその薬学的に許容される塩である、請求項74~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
前記隔離剤が非環式ククルビットウリルである、請求項74~96のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
前記隔離剤が環式ククルビットウリルである、請求項74~96のいずれか一項に記載の方法。
【請求項99】
前記隔離剤がピラーアレーンである、請求項74~96のいずれか一項に記載の方法。
【請求項100】
前記隔離剤がシクロデキストリンである、請求項74~96のいずれか一項に記載の方法。
【請求項101】
前記隔離剤がカリックスアレーンである、請求項74~96のいずれか一項に記載の方法。
【請求項102】
前記隔離剤が、化合物A、又はその任意の誘導体、又はその薬学的に許容される塩であり、化合物Aが、以下の構造を含む、請求項74~96のいずれか一項に記載の方法。
【化3】
【請求項103】
前記毒物が乱用薬物である、請求項74~102のいずれか一項に記載の方法。
【請求項104】
前記毒物がオピオイドである、請求項74及び76~103のいずれか一項に記載の方法。
【請求項105】
前記隔離剤が、少なくとも約1×10-1、1×10-1、1×10-1、×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1のKで前記オピオイドに結合する、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
前記オピオイドが、フェンタニル、フェンタニル類似体、カルフェンタニル、スフェンタニル、アセチルフェンタニル、アルフェンタニル、ヘロイン、モルヒネ、オキシコドン、コデイン、ヒドロコドン、オキシモルフォン、及び任意の薬学的に許容される塩、並びにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項104又は105に記載の方法。
【請求項107】
前記毒物が、覚醒剤、神経剤、アレルゲン、及び代謝又は消化誘導性毒性物質からなる群から選択される、請求項74~103のいずれか一項に記載の方法。
【請求項108】
前記毒物が覚醒剤である、請求項107に記載の方法。
【請求項109】
前記隔離剤が、少なくとも約1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1のKで前記覚醒剤に結合する、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
前記覚醒剤が、アンフェタミン、メタンフェタミン、リタリン、フェンシクリジン、コカイン、カフェイン、3,4-メチレンジオキシ-メタンフェタミン(MDMA)、及び任意の薬学的に許容される塩、並びにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項107又は108に記載の方法。
【請求項111】
前記CNS活性剤が、少なくとも約1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1、又は1×10-1のKで前記毒物に結合する、請求項74~110のいずれか一項に記載の方法。
【請求項112】
前記隔離剤が、少なくとも約1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1、又は1×10-1のKで前記CNS活性剤に結合する、請求項74~110のいずれか一項に記載の方法。
【請求項113】
前記隔離剤が、化合物A又はその薬学的に許容される塩であり、化合物A又はその薬学的に許容される塩が、約1mg/kg~約2,000mg/kgで投与される、請求項74~110のいずれか一項に記載の方法。
【請求項114】
前記CNS活性剤が、ナロキソン又はその薬学的に許容される塩であり、前記ナロキソン又は前記その薬学的に許容される塩が、約0.1~約1,000μg/kgで投与される、請求項74~110のいずれか一項に記載の方法。
【請求項115】
前記投与が、経口、静脈内、筋肉内、皮下、髄内、くも膜下、腹腔内、鼻腔内、眼、肺、経粘膜、経皮、又は局所による、請求項74~114のいずれか一項に記載の方法。
【請求項116】
前記対象がヒトである、請求項74~115のいずれか一項に記載の方法。
【請求項117】
前記対象をモニタリングして、CNS活性剤の後続投与が必要かどうかを決定することを更に含む、請求項74~116のいずれか一項に記載の方法。
【請求項118】
前記モニタリングが、前記対象を、異常な心拍数、呼吸数、食欲、認知能力、又はそれらの任意の組み合わせについて測定することを含む、請求項117に記載の方法。
【請求項119】
前記モニタリング後の前記CNS活性剤の投与を更に含む、請求項118に記載の方法。
【請求項120】
前記方法により、麻薬中毒の軽減が得られる、請求項74~119のいずれか一項に記載の方法。
【請求項121】
前記麻薬中毒が、オピオイド過剰摂取、覚醒剤過剰摂取、又はその症状を含む、請求項120に記載の方法。
【請求項122】
前記軽減が、正常な呼吸数の回復を含む、請求項120又は121に記載の方法。
【請求項123】
前記正常な呼吸数が、少なくとも毎分約12~16呼吸を含む、請求項122に記載の方法。
【請求項124】
前記軽減が、食欲の回復を含む、請求項120又は121に記載の方法。
【請求項125】
麻薬中毒の軽減により、被麻薬状態再発が防止される、請求項120に記載の方法。
【請求項126】
前記CNS活性剤の少なくとも第2の投与を更に含む、請求項74~125のいずれか一項に記載の方法。
【請求項127】
前記CNS活性剤の前記少なくとも第2の投与が、8時間にわたる少なくとも約1、2、3、又は4回用量で構成される、請求項126に記載の方法。
【請求項128】
前記CNS活性剤の投与が、8時間にわたる少なくとも約0.4mg、2mg、4mg、8mg、10mg、12mg、又は16mgで構成される、請求項74~127のいずれか一項に記載の方法。
【請求項129】
組成物を含むキットであって、前記組成物が、
i)治療有効量の中枢神経系(CNS)活性剤又はその薬学的に許容される塩と、
ii)治療有効量の隔離剤又はその薬学的に許容される塩と、を含み、前記治療有効量が、少なくとも1つの毒物を隔離するのに有効な量であり、
前記キットが、前記組成物を、それを必要とする対象に投与するための指示を提供する、キット。
【請求項130】
前記隔離剤及び前記CNS活性剤が、同じ製剤中にある、請求項129に記載のキット。
【請求項131】
前記隔離剤及び前記CNS活性剤が、異なる製剤中にある、請求項129に記載のキット。
【請求項132】
前記隔離剤又はその薬学的に許容される塩が、約1mg/kg~約2,000mg/kgで、それを必要とする前記対象に投与される、請求項129~131のいずれか一項に記載のキット。
【請求項133】
前記隔離剤が、化合物A又はその任意の誘導体である、請求項132に記載のキット。
【請求項134】
前記CNS活性剤又はその薬学的に許容される塩が、約0.1~1,000μg/kgで、それを必要とする対象に投与される、請求項129~131のいずれか一項に記載のキット。
【請求項135】
前記CNS活性剤がナロキソンである、請求項134に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2021年2月1日出願の米国仮特許出願第63/144,441号の利益を主張するものであり、この出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦支援による研究に関する声明
本開示は、National Institute of Allergy and Infectious Diseases(NIAID/NIH)のOffice of Biodefense Research(OBRS)内Chemical Countermeasures Research Program(CCRP)の監督下で、NIH Office of the Director(OD)とU.S.Army Medical Research Institute of Chemical Defenseとの間の共同研究をとおして、政府の支援によりなされた。政府は、本開示に関して一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
薬物の過剰摂取又は中毒は、社会のあらゆる側面に影響を与える大きな社会問題である。薬物の過剰摂取は、オピオイド(例えば、フェンタニル及びその誘導体)、覚醒剤(例えば、メタンフェタミン)、及び他の物質などの違法物質のために処方されたことに起因する場合がある。メタンフェタミンなどの覚醒剤、並びに覚醒剤及びオピオイド)の薬物過剰摂取又は中毒も問題である。覚醒剤及び覚醒剤/オピオイドの過剰摂取は、処方された、転用された、又は違法な物質に起因する場合もある。
【0004】
偶発的な薬物の過剰摂取によるか他の手段によるかにかかわらず、薬物の過剰摂取又は薬物中毒に供された患者の治療、オピオイドの過剰摂取に供された患者の治療、覚醒剤の過剰摂取に供された患者の治療、覚醒剤とオピオイドとの組み合わせの過剰摂取に供された患者の治療のための方法及び組成物が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、これらの状況、及び乱用薬物などの毒物を含むが必ずしもこれらに限定されない1つ以上の薬物の効果を逆転させることが望ましい他の状況に対処するための組成物及び方法を提供する。
【0006】
いくつかの実施形態では、本開示は、ヒトにおいて、少なくとも1つの毒物に起因する、中毒、過剰摂取、又はその症状を治療することにおける使用のための薬学的組み合わせを提供し、本薬学的組み合わせは、i)少なくとも1つの毒物を隔離するのに十分な量の隔離剤又はその薬学的に許容される塩と、ii)中枢神経系(CNS)活性剤又はその薬学的に許容される塩と、を含み、この隔離剤は、ククルビットウリル、ピラーアレーン、シクロデキストリン、又はカリックスアレーンであり、隔離剤及びCNS活性剤は、同時に、若しくは約5分未満の間隔を空けて逐次的に投与されるか、又はそれらの投与に好適である。
【0007】
いくつかの実施形態では、本開示は、ヒトにおいて、覚醒剤、神経剤、アレルゲン、及び代謝又は消化誘導性毒性物質からなる群から選択される少なくとも1つの毒物に起因する、中毒、過剰摂取、又はその症状を治療することにおける使用のための薬学的組み合わせを提供し、本薬学的組み合わせは、i)少なくとも1つの毒物を隔離するのに十分な量の隔離剤又はその薬学的に許容される塩と、ii)中枢神経系(CNS)活性剤又はその薬学的に許容される塩と、を含み、この隔離剤は、ククルビットウリル、ピラーアレーン、シクロデキストリン、又はカリックスアレーンである。
【0008】
いくつかの実施形態では、本開示は、対象において過剰摂取の疑い又はその症状を治療することにおける使用のための薬学的組み合わせを提供し、本薬学的組み合わせは、i)少なくとも1つの毒物を隔離するのに十分な量の隔離剤又はその薬学的に許容される塩と、ii)中枢神経系(CNS)活性剤又はその薬学的に許容される塩と、を含み、この隔離剤は、ククルビットウリル、ピラーアレーン、シクロデキストリン、又はカリックスアレーンであり、対象は、複数の毒物からの過剰摂取が疑われる。いくつかの実施形態では、複数の毒物は、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、又は少なくとも4つの毒物を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、本開示は、医薬組成物を提供し、本医薬組成物は、i)少なくとも1つの毒物を隔離するのに十分な量の隔離剤又はその薬学的に許容される塩と、ii)中枢神経系(CNS)活性剤又はその薬学的に許容される塩と、iii)薬学的に許容される賦形剤と、を含み、この隔離剤は、ククルビットウリル、ピラーアレーン、シクロデキストリン、又はカリックスアレーンである。
【0010】
いくつかの実施形態では、本開示は、ヒトにおいて、少なくとも1つの毒物に起因する、中毒、過剰摂取、又はその症状を治療する方法を提供し、本方法は、治療有効量の、i)少なくとも1つの毒物を隔離するのに十分な量の隔離剤又はその薬学的に許容される塩と、ii)中枢神経系(CNS)活性剤又はその薬学的に許容される塩と、を投与することを含み、この隔離剤は、ククルビットウリル、ピラーアレーン、シクロデキストリン、又はカリックスアレーンであり、隔離剤及びCNS活性剤は、同時に、又は約5分未満の間隔を空けて逐次的に、投与される。
【0011】
いくつかの実施形態では、本開示は、ヒトにおいて、覚醒剤、神経剤、アレルゲン、及び代謝又は消化誘導性毒性物質に起因する、中毒、過剰摂取、又はその症状を治療する方法を提供し、本方法は、治療有効量の隔離剤又はその薬学的に許容される塩を、治療有効量の中枢神経系(CNS)活性剤又はその薬学的に許容される塩と同時投与することを含み、この同時投与は、覚醒剤、神経剤、アレルゲン、又は代謝若しくは消化誘導性毒性物質の過剰摂取又はその症状の治療を、それを必要とするヒトにおいて行うために有効である。
【0012】
いくつかの実施形態では、本開示は、対象における過剰摂取の疑い又はその症状を治療する方法を提供し、本方法は、治療有効量の隔離剤又はその薬学的に許容される塩を、治療有効量の中枢神経系(CNS)活性剤又はその薬学的に許容される塩と同時投与することを含み、対象は、複数の毒物からの過剰摂取が疑われる。いくつかの実施形態では、複数の毒物は、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、又は少なくとも4つの毒物を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、隔離剤及びCNS活性剤は、同じ製剤中にある。いくつかの実施形態では、隔離剤及びCNS活性剤は、異なる製剤中にある。製剤は、薬学的に許容される賦形剤を更に含んでもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、隔離剤及びCNS活性剤は、同時に投与される。この実施形態によると、隔離剤及びCNS活性剤は、同じ製剤中に存在してもよい(すなわち、隔離剤及びCNS活性剤は、同時製剤化される。あるいは、隔離剤及びCNS活性剤は、同時に又は近い時間に同時投与される異なる製剤中に存在してもよい。
【0015】
いくつかの実施形態では、隔離剤及びCNS活性剤は、逐次的に、好ましくは約5分未満の間隔、例えば、約4分未満の間隔、3分未満の間隔、2分未満の間隔、1分未満の間隔などを空けて、投与される。例えば、一実施形態では、CNS活性剤が最初に投与され、隔離剤は、CNS活性剤の約4分、約3分、約2分、又は約1分未満の後に投与される。別の実施形態では、隔離剤が最初に投与され、CNS活性剤は、隔離剤の約4分、約3分、約2分、又は約1分未満の後に投与される。
【0016】
いくつかの実施形態では、CNS活性剤はオピオイド受容体拮抗薬である。いくつかの実施形態では、CNS活性剤はミューオピオイド受容体拮抗薬である。いくつかの実施形態では、CNS活性剤は、ナロキソン、ペンタゾシン、ナルブフィン、ジプレノルフィン、メチルナルトレキソン、ナロキセゴール、アルビモパン、ナルトレキソン、ナルメフェン、ブプレノルフィン、又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、CNS活性剤はナロキソンである。
【0017】
いくつかの実施形態では、CNS活性剤はベンゾジアゼピンである。いくつかの実施形態では、ベンゾジアゼピンは、ロラゼパム、クロノピン、クロノザパム、ジアゼパム、アルプラゾラム、クロルジアゼポキシド、クロラゼプ酸、ハラゼパム、オキサゼパム、プラゼパム、及びクアゼパム、又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。
【0018】
いくつかの実施形態では、CNS活性剤は抗ヒスタミン剤である。いくつかの実施形態では、CNS活性剤は、セチリジン、ジフェンヒドラミン、フェキソフェナジン、ロラタジン、デスロラタジン、クレマスチン、クロルフェニラミン、レボセチリジン、シプロヘプタジン、カルビノキサミン、エメダスチン、レボカバスチン、又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。
【0019】
いくつかの実施形態では、CNS活性剤は、ケタミン又はその薬学的に許容される塩である。
【0020】
いくつかの実施形態では、CNS活性剤は、アトロピン又はその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、CNS活性剤は、スコポラミン又はその薬学的に許容される塩である。
【0021】
いくつかの実施形態では、隔離剤はククルビットウリルである。いくつかの実施形態では、隔離剤は非環式ククルビットウリルである。いくつかの実施形態では、隔離剤は環式ククルビットウリルである。いくつかの実施形態では、隔離剤はピラーアレーンである。いくつかの実施形態では、隔離剤はシクロデキストリンである。いくつかの実施形態では、隔離剤はカリックスアレーンである。いくつかの実施形態では、隔離剤は、化合物A又はその任意の誘導体であり、化合物Aは、以下の構造を含む。
【0022】
【化1】
【0023】
いくつかの実施形態では、毒物は乱用薬物である。
【0024】
いくつかの実施形態では、毒物はオピオイドである。いくつかの実施形態では、隔離剤は、少なくとも約1×10-1、1×10-1、1×10-1、×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1のKでオピオイドに結合する。いくつかの実施形態では、オピオイドは、フェンタニル、フェンタニル類似体、カルフェンタニル、スフェンタニル、アセチルフェンタニル、アルフェンタニル、ヘロイン、モルヒネ、オキシコドン、コデイン、ヒドロコドン、オキシモルフォン、及び任意の薬学的に許容される塩、並びにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0025】
いくつかの実施形態では、毒物は、覚醒剤、神経剤、アレルゲン、及び代謝又は消化誘導性毒性物質からなる群から選択される。
【0026】
いくつかの実施形態では、毒物は覚醒剤である。いくつかの実施形態では、隔離剤は、少なくとも約1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1のKで覚醒剤に結合する。いくつかの実施形態では、覚醒剤は、アンフェタミン、メタンフェタミン、リタリン、フェンシクリジン、コカイン、カフェイン、3,4-メチレンジオキシ-メタンフェタミン(MDMA)、及び任意の薬学的に許容される塩、並びにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0027】
いくつかの実施形態では、CNS活性剤は、少なくとも約1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1、又は1×10-1のKで毒物に結合する。
【0028】
いくつかの実施形態では、隔離剤は、少なくとも約1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1、又は1×10-1のKでCNS活性剤に結合する。
【0029】
いくつかの実施形態では、隔離剤(例えば、化合物A又はその薬学的に許容される塩)は、約1mg/kg~約2,000mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、隔離剤(例えば、化合物A又はその薬学的に許容される塩)は、約1mg/kg~約1,000mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、隔離剤(例えば、化合物A又はその薬学的に許容される塩)は、約1mg/kg~500約mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、隔離剤(例えば、化合物A又はその薬学的に許容される塩)は、約10mg/kg~約300mg/kgで投与される。
【0030】
いくつかの実施形態では、CNS活性剤(例えば、ナロキソン)は、約0.1mg/kg~約1,000mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、CNS活性剤は、約1mg/kg~約500mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、CNS活性剤は、約100mg/kg~約500mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、CNS活性剤は、約100mg/kg~約400mg/kgで投与される。
【0031】
いくつかの実施形態では、隔離剤は、化合物A又はその薬学的に許容される塩であり、化合物A又はその薬学的に許容される塩は、約1mg/kg~約2,000mg/kgで投与される。
【0032】
いくつかの実施形態では、CNS活性剤は、ナロキソン又はその薬学的に許容される塩であり、ナロキソン又は前記その薬学的に許容される塩は、約0.1~約1,000μg/kgで投与される。
【0033】
いくつかの実施形態では、隔離剤(例えば、化合物A又はその薬学的に許容される塩)は、約10mg/kg~500mg/kgで存在する。いくつかの実施形態では、CNS活性剤(例えば、ナロキソン又はその薬学的に許容される塩)は、約100~600μg/kgで存在する。いくつかの実施形態では、隔離剤又はその薬学的に許容される塩は、約10mg/kg~300mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、CNS活性剤又はその薬学的に許容される塩は、約100~400μg/kgで投与される。
【0034】
いくつかの実施形態では、CNS活性剤は、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を更に含む医薬組成物中で提供される。いくつかの実施形態では、隔離剤は、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を更に含む医薬組成物中で提供される。いくつかの実施形態では、CNS活性剤及び隔離剤は、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を更に含む医薬組成物中で同時製剤化される。いくつかの実施形態では、本医薬組成物は、化合物A又はその薬学的に許容される塩を含み、化合物A又はその薬学的に許容される塩は、約0.01重量%~約20重量%で存在する。いくつかの実施形態では、本医薬組成物は、ナロキソン又はその薬学的に許容される塩を含み、ナロキソン又はその薬学的に許容される塩は、約0.01重量%~約20重量%で存在する。
【0035】
いくつかの実施形態では、本医薬組成物は、経口、静脈内、筋肉内、皮下、髄内、くも膜下、腹腔内、鼻腔内、眼、肺、経粘膜、経皮、又は局所投与に好適な形態である。いくつかの実施形態では、本医薬組成物は液体剤形である。いくつかの実施形態では、本医薬組成物は固体剤形である。
【0036】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、ある数の投与方法、例えば、経口、静脈内、筋肉内、皮下、髄内、くも膜下、腹腔内、鼻腔内、眼、肺、経粘膜、経皮、局所、舌下、又は口腔による本医薬組成物の投与を含む。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
【0037】
いくつかの実施形態では、本方法は、対象をモニタリングして、CNS活性剤の後続投与が必要かどうかを決定することを更に含む。いくつかの実施形態では、モニタリングは、対象を、異常な心拍数、呼吸数、食欲、認知能力、又はそれらの任意の組み合わせについて測定することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、モニタリング後のCNS活性剤(例えば、ナロキソン)の投与を更に含む。いくつかの実施形態では、本方法により、麻薬中毒の軽減が得られる。いくつかの実施形態では、本方法により、オピオイドの過剰摂取、覚醒剤の過剰摂取、又はその症状の軽減が得られる。いくつかの実施形態では、オピオイドの過剰摂取、覚醒剤の過剰摂取の軽減には、正常な呼吸数の回復が含まれる。いくつかの実施形態では、正常な呼吸数には、少なくとも毎分約15~20呼吸が含まれる。いくつかの実施形態では、正常な呼吸数には、少なくとも毎分約12~16呼吸が含まれる。いくつかの実施形態では、麻薬中毒の軽減には、食欲の回復が含まれる。いくつかの実施形態では、麻酔薬中毒の軽減により、被麻薬状態再発が防止される。いくつかの実施形態では、本方法は、CNS活性剤の少なくとも第2の投与を更に含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、隔離剤又はその薬学的に許容される塩は、約1mg/kg~2,000mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、隔離剤又はその薬学的に許容される塩は、約10mg/kg~500mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、CNS活性剤又はその薬学的に許容される塩は、約1~1,000μg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、CNS活性剤又はその薬学的に許容される塩は、約100~600μg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、隔離剤は、化合物A又はその任意の誘導体を含む。いくつかの実施形態では、CNS活性剤は、ナロキソン又はその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、CNS活性剤の投与を更に含む。いくつかの実施形態では、CNS活性剤の投与は、8時間にわたる少なくとも約1、2、3、又は4回用量で構成される。いくつかの実施形態では、CNS活性剤の投与は、8時間にわたる少なくとも約0.4mg、2mg、4mg、8mg、12mg、又は16mgで構成される。
【0039】
本明細書に提供されるのは、本開示は、組成物を含むキットを提供し、本組成物は、i)治療有効量のCNS活性剤、ii)治療有効量の隔離剤、を含み、治療有効量は、少なくとも1つの毒物を隔離するのに有効な量であり、本キットは、組成物を、それを必要とする対象に投与するための指示を提供する。いくつかの実施形態では、隔離剤及びCNS活性剤は、同じ製剤中にある。いくつかの実施形態では、隔離剤及びCNS活性剤は、異なる製剤中にある。いくつかの実施形態では、隔離剤又はその薬学的に許容される塩は、約1mg/kg~2,000mg/kgで、それを必要とする対象に投与される。いくつかの実施形態では、隔離剤又はその薬学的に許容される塩は、約10mg/kg~500mg/kgで、それを必要とする対象に投与される。いくつかの実施形態では、隔離剤は、化合物A又はその任意の誘導体である。いくつかの実施形態では、CNS活性剤又はその薬学的に許容される塩は、約0.11~1,000μg/kgで、それを必要とする対象に投与される。いくつかの実施形態では、隔離剤は、化合物A又はその任意の誘導体である。いくつかの実施形態では、CNS活性剤又はその薬学的に許容される塩は、約100~600μg/kgで、それを必要とする対象に投与される。いくつかの実施形態では、CNS活性剤はナロキソンである。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
【0040】
参照による組み込み
本明細書で言及される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、個々の刊行物、特許、又は特許出願の各々が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
本開示の新規の特徴は、添付の特許請求の範囲に詳細に定められている。本開示の特徴及び利点は、本開示の原理が利用される例示的な実施形態を定めた以下の詳細な説明、及び添付の図面を参照することによって、より良く理解される。
図1】関心の化合物に結合する化合物Aの概略図を提供する。例えば、化合物Aは、1×107M-1の結合定数Kaで合成オピオイド(例えば、フェンタニル)に結合して複合体を形成し、合成オピオイドを効果的に隔離した後、腎臓により血液から除去される。
図2】用量依存的治療レジメンにおいて化合物Aを使用した、フェンタニル誘導性呼吸抑制の治療を示す。フェンタニルを投与し、約12~15分後に化合物Aを投与する。化合物Aは、0.5mg/kg、1mg/kg、10mg/kg、及び50mg/kgの様々な濃度で提供される。(T.Thevathasnan et.Al.,British Journal of Anasthesia,2020)。
図3】カルフェンタニル(IV、20μg/kg)、その直後に生理食塩水対照又は製剤(IM、400mg/kgの化合物A及び0.5mg/kgのナロキソン)のいずれかを投与した後120分でのカルフェンタニルの尿中濃度を示す。
図4】DO中、それぞれ、1:0、0:1、0.5:1、及び1:1のモル比で調製した化合物A及びナロキソンのH NMRスペクトルの分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
定義
「拮抗薬」とは、受容体への結合時に生物学的応答を誘発しないが、作動薬媒介性応答を遮断する又は減退させる(減少させる、弱化させるなど)受容体リガンドを意味することが意図される。(「作動薬」は、受容体に結合し、応答をトリガするリガンドであり、すなわち、作動薬は、作用、多くの場合、天然物質の作用を模倣する作用を生じさせる。)このため、拮抗薬は、それらの同族受容体に対して親和性を有するが、有効性はほとんど又は全くなく、拮抗薬の受容体への結合は、相互作用を破壊し、受容体における作動薬又は逆作動薬の機能を阻害する。拮抗薬の活性は、拮抗薬-受容体複合体の寿命に応じて可逆的である場合も不可逆的である場合もあり、これは今度は、拮抗薬受容体結合の性質に依存する。
【0043】
本明細書で使用される場合、「約」又は「およそ」という用語は、当業者によって決定される特定の値についての許容可能な誤差範囲内を意味してもよく、これは、値がどのように測定又は決定されるか、例えば、測定システムの限界に部分的に依存することになる。例えば、当分野の慣行によれば、「約」は、プラスマイナス10%を意味し得る。あるいは、「約」は、所与の値のプラスマイナス20%、プラスマイナス10%、プラスマイナス5%、又はプラスマイナス1%の範囲を意味し得る。あるいは、特に生物学的システム又はプロセスに関して、本用語は、値の5倍以内又は2倍以内の大きさ以内を意味し得る。特定の値が本出願及び特許請求の範囲に記載されている場合、別途記載のない限り、「約」という用語がこの特定の値について許容可能な誤差範囲内であることを意味するとみなすべきである。また、値の範囲及び/又は部分範囲が提供される場合、範囲及び/又は部分範囲は、範囲及び/又は部分範囲の終点を含み得る。
【0044】
本明細書で使用される場合、「含む」という用語は、組成物及び方法が列挙された要素を含むが、他のものを除外しないことを意味することが意図される。「から本質的になる」は、組成物及び方法を定義するために使用されるとき、意図される使用のための組み合わせに、本質的に重要性のある他の要素を排除することを意味するものとする。このため、本明細書に定義される元素から本質的になる組成物は、単離及び生成方法からの微量汚染物質、並びに薬学的に許容される担体、例えば、リン酸緩衝生理食塩水、防腐剤などを除外しない。「からなる」は、他の成分の微量元素以上のもの、及び本開示の組成物を投与するための実質的な方法ステップを排除することを意味するものとする。これらの移行用語の各々によって定義される実施形態は、本開示の範囲内である。
【0045】
本明細書で使用される場合、「乱用薬物」という用語は、過剰消費又は過剰投与が、物質依存若しくは物質乱用(例えば、物質使用障害)、あるいは本明細書に定義される、又はAmerican Psychiatric Associationによって公布される現行のDSM Criteria若しくは同等の基準によって定義されるような中毒の診断を生じさせ得る任意の物質を意味することが意図される。乱用薬物には、限定されないが、コカイン、アンフェタミン、メタンフェタミン、メチルフェニデート、ヘロイン、コデイン、ヒドロコドン、ニコチン、アルコール、処方薬(例えば、Percodan(登録商標)、Percoset(登録商標))、マリファナ、タバコ、メタドンが含まれる。明確にするために、乱用薬物には、限定されないが、ヘロイン、コカイン、メタンフェタミン、オピオイド、フェンタニル、フェンタニル類似体、フェンタニル誘導体、フェンタニル代謝物、カルフェンテニル、又はそれらの任意の組み合わせが含まれることが理解される。更に、乱用薬物には、National Institute of Health(NIH)及びNational Institute of Drug Abuse(NIDA)によって列挙されている薬物が含まれるが、必ずしもこれらに限定されない。NIDAが指摘する例示的な乱用薬物には、アルコール、アヤフアスカ、CNS抑制剤、コカイン、N,N-ジメチルトリプタミン(DMT)、ガンマ-ヒドロキシブチレート(GHB)、幻覚剤、ヘロイン、吸入剤、ケタミン、カート、クラトム、リセルグ酸ジメチルアミド(LSD)、マリファナ(カナビス)、MDMA(モリー/エクスタシー)、メスカリン(ペイヨーテ)、メタンフェタミン、デキストロメトルファン、ロペラミド、PCP、サイロシビン、ロヒプノール、サルビア、ステロイド、合成カンナビノイド、合成カチノン(バスソルト)、ニコチン、タバコ、エキストロアンフェタミン、メチルフェニデート、又はデクスメチルフェニデートが含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
「対象」又は「患者」という用語は、哺乳動物を包含する。哺乳動物の例としては、ヒト、チンパンジーなどの非ヒト霊長類、並びに他の類人猿及びサル種;ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタなどの家畜;ウサギ、イヌ、及びネコなどの飼育動物;ラット、マウス、及びモルモットなどの齧歯類を含む実験動物が挙げられるが、これらに限定されない。一態様では、哺乳動物はヒトである。本明細書で使用される「動物」という用語は、ヒト及び非ヒト動物を含む。一実施形態では、「非ヒト動物」は、哺乳動物、例えば、ラット又はマウスなどの齧歯類である。一実施形態では、非ヒト動物はマウスである。
【0047】
「治療する」、「治療すること」、又は「治療」という用語、本明細書で使用される場合、疾患又は状態の少なくとも1つの症状を軽減する、軽快させる、又は向上させること、追加の症状を予防すること、疾患又は状態を阻害すること、例えば、疾患又は状態の発現を停止させること、疾患又は状態を緩和すること、疾患又は状態の退縮を引き起こすこと、疾患又は状態によって引き起こされる状態を緩和すること、あるいは予防的及び/又は治療的に疾患又は状態の症状を止めること、を含む。
【0048】
「薬学的に許容される賦形剤」、「薬学的に許容される担体」、及び「治療的に不活性な賦形剤」という用語は、互換的に使用されてもよく、治療活性を有しず、投与された対象に対して非毒性である医薬組成物中の任意の薬学的に許容される成分を示してもよく、これは、医薬品を製剤化することに使用される、崩壊剤、結合剤、充填剤、溶媒、緩衝液、張性剤、安定剤、抗酸化剤、界面活性剤、担体、希釈剤、賦形剤、防腐剤、又は潤滑剤などである。
【0049】
「薬学的に許容される塩」という用語は、生物学的に又は別様に望ましくない塩ではない塩を示す。薬学的に許容される塩は、酸及び塩基付加塩の両方を含む。「薬学的に許容される塩」は、投与される生物に著しい刺激を引き起こさない、及び/又は化合物の生物活性及び特性を抑制しない化合物の製剤を指し得る。
【0050】
本明細書に提供される範囲は、その範囲内の値の全てについて略式であることが理解される。例えば、1~50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50からなる群からの、任意の数、数の組み合わせ、又は部分範囲を含むことが理解される。
【0051】
中枢神経系(CNS)活性剤及び隔離剤を含む組み合わせ
本開示は、隔離剤(例えば、環式ククルビットウリル、非環式ククルビットウリル、ピラーアレーン、シクロデキストリン、カリックスアレーンなど)とCNS活性剤との組み合わせを含む、使用の方法、組成物、及びキットに関する。
【0052】
毒物の影響に先行するためのCNS活性剤又は隔離薬剤の単剤使用は、十分ではない場合がある。例えば、ナロキソンは、半減期が短い(約60分)ため、例えば、半減期が10~12時間のフェンタニルなどの、半減期がより長い新しい合成オピオイドに対して有効性が低下している。これは、多くの場合、被麻薬状態再発(renarcotization)として知られる二次的過剰摂取現象をもたらす。被麻薬状態再発を避けるための標準ケアは、より高く頻繁な用量のナロキソンを投与することである。しかしながら、これは、重篤で時には生命を脅かす状態である誘発オピオイド離脱(POW)と呼ばれる二次的合併症につながり得る。更に、一部のCNS活性剤のそれらの受容体への相対的結合親和性は、毒物を完全に置き換えるには十分ではない場合がある。
【0053】
本開示は、隔離剤とCNS活性剤との組み合わせを利用して、毒物を置き換えて除去する。作用機序のいずれの理論にも拘束されることを望むものではないが、CNS活性剤は、その受容体(例えば、オピエート受容体)から毒物を置き換え、隔離剤は、例えば対象の身体から、毒物を捕捉して除去することが企図される。いくつかの実施形態では、隔離剤及びCNS活性剤は、同時製剤化及び/又は同時投与されるか、あるいは互いに近接して(例えば、5分未満の間隔で)投与される。いくつかの実施形態では、CNS活性剤が、毒物をその受容体から遊離させるためにまず投与され、その後に、かかる毒物を対象の循環から捕捉して排除する隔離剤が(好ましくはその約5分未満の後に)投与される。いくつかの実施形態では、CNS活性剤と時間的に近接して隔離剤を投与することで、被麻薬状態再発が防止され、治療を受ける対象からの毒物のクリアランスが促進される。
【0054】
いくつかの実施形態では、本開示は、(フェンタニル中毒の治療に必要とされる量よりも)かなり多量のナロキソンを必要とせずに、また被麻薬状態再発を防止するためにナロキソンを反復投与する必要なく、カルフェンタニル中毒の治療的に有効な処置を提供するものである。このため、これらの結果は、(1)本明細書に記載の隔離剤(例えば、化合物A)が、毒物(例えば、カルフェンタニルなどのオピオイド)を迅速に隔離及び除去することができること、及び(2)CNS活性剤(例えば、ナロキソン)が、複数回投与を必要とせずに、オピオイド受容体に結合して毒物を置き換えるのに有効であったことを示す。
【0055】
本開示は、以下に更に記載される組成物を、中毒剤の影響の逆転のため、及び本明細書でより十分に記載される他の薬剤の効果の逆転のために使用することに関する。いくつかの実施形態では、本開示は、薬物誘発性神経筋遮断の逆転、又は麻酔の逆転、又は薬物乱用若しくは抗鬱剤若しくは他の薬剤による中毒の影響の逆転における使用に好適な実施形態を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、オピオイド、コカイン、ヘロイン、アンフェタミン、メタンフェタミン、フェンシクリジン[PCP])、周術期医療で使用される薬物、例えば非限定的に、局所麻酔薬、ベータ遮断薬、神経遮断薬、又は該薬剤のうちのいずれかの組み合わせを含むがこれらに限定されない、1つ以上の薬剤の影響を逆転させること含む。非限定的で例示的な実施形態では、逆転は、以下に更に記載される隔離剤を含む組成物を個体に投与することにより達成される。一実施形態では、本方法は、コカイン、フェンタニル、フェンタニル類似体、フェンタニル誘導体、若しくはメタンフェタミン、又はそれらの任意の組み合わせによる中毒の逆転を包含する。このため、実施形態では、本明細書に記載の化合物のうちの1つ又は組み合わせを含む組成物は、乱用薬物の中毒に起因する治療を必要とする個体に投与される。
【0056】
隔離剤とCNS活性剤との組み合わせにより、本開示による調製物が、薬物中毒関連症状の効率的な減少を提供すると同時に、CNS活性剤(例えば、ナロキソン)の反復投与の必要性が少なくとも著しく減少することが確実となる。
【0057】
本明細書に提供されるのは、本開示は、ヒトにおいて、少なくとも1つの乱用薬物の使用に起因する、中毒、過剰摂取、又はその症状を治療するための医薬組成物を提供し、本医薬組成物は、i)隔離剤又はその薬学的に許容される塩と、ii)中枢神経系(CNS)活性剤又はその薬学的に許容される塩と、iii)薬学的に許容される賦形剤と、を含み、隔離剤は、環式又は非環式のククルビットウリル、ピラーアレーン、シクロデキストリン、又はカリックスアレーンから選択される。いくつかの実施形態では、隔離剤は、環式又は非環式のククルビットウリル又はピラーアレーンから選択される。
【0058】
本明細書に提供されるのは、本開示は、少なくとも1つの乱用薬物の使用に起因する中毒又はその症状を治療するための医薬組成物を提供し、本医薬組成物は、i)少なくとも1つの毒物を隔離するのに充分な量の隔離剤又はその薬学的に許容される塩と、ii)CNS活性剤又はその薬学的に許容される塩と、を含み、隔離剤は、好ましくは、ククルビットウリル、ピラーアレーン、シクロデキストリン、又はカリックスアレーンから選択される。いくつかの実施形態では、隔離剤は、環式又は非環式のククルビットウリル又はピラーアレーンから選択される。
【0059】
本明細書に提供されるのは、本開示は、少なくとも1つの乱用薬物の使用に起因する中毒又はその症状を治療するための医薬組成物を提供し、本医薬組成物は、i)少なくとも1つの毒物を隔離するのに充分な量の隔離剤又はその薬学的に許容される塩と、ii)CNS活性剤又はその薬学的に許容される塩と、を含む。
【0060】
本明細書に提供されるのは、本開示は、ヒトにおいてオピオイドの過剰摂取の疑い又はその症状を治療する方法を提供し、本方法は、治療有効量のCNS活性剤又はその薬学的に許容される塩と同時投与される治療有効量の隔離剤又はその薬学的に許容される塩を投与することを含み、投与は、オピオイドの過剰摂取の疑いの治療を、それを必要とするヒトにおいて行うために有効である。いくつかの実施形態では、オピオイドは、フェンタニル、フェンタニル類似体、カルフェンタニル、ヘロイン、モルヒネ、スフェンタニル、アセチルフェンタニル、アルフェンタニル、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0061】
本明細書に提供されるのは、本開示は、ヒトにおいて乱用薬物の中毒又はその症状を治療する方法を提供し、本方法は、治療有効量の隔離剤又はその薬学的に許容される塩を、治療有効量のCNS活性剤又はその薬学的に許容される塩と同時投与することを含み、投与は、覚醒剤の過剰摂取の治療を、それを必要とするヒトにおいて行うために有効である。いくつかの実施形態では、覚醒剤は、アンフェタミン、メタンフェタミン、リタリン、コカイン、カフェイン、フェンシクリジン、MDMA、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0062】
本明細書に提供されるのは、本開示は、対象における過剰摂取の疑い又はその症状を治療する方法を提供し、本方法は、治療有効量の隔離剤又はその薬学的に許容される塩を、治療有効量のCNS活性剤又はその薬学的に許容される塩と同時投与することを含み、対象は、複数の乱用薬物からの過剰摂取が疑われる。いくつかの実施形態では、複数の薬物は、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つの乱用薬物を含む。
【0063】
本明細書に提供されるのは、本開示は、対象においてオピオイドの過剰摂取の疑いを治療する方法を提供し、本方法は、隔離剤又はその薬学的に許容される塩をCNS活性剤又はその薬学的に許容される塩と同時投与することを含み、CNS活性剤は、隔離剤の5分未満の後に投与される。
【0064】
隔離剤
本明細書では、本開示の隔離剤が提供される。隔離剤(sequestering agent)(本明細書では、互換的に隔離剤(sequestration agent)とも称される)は、過剰なレベルの毒性物質により引き起こされる疾患の治療に使用される分子である。隔離剤は、薬物乱用、乱用薬物による中毒、乱用薬物の使用、薬物過剰摂取、摂取、又は乱用薬物の別様の摂取若しくは曝露の治療に使用される。加えて、隔離剤は、関心の分子を往々にして腎クリアランスを介して身体から除去する手段を提供する目的で、関心の分子に結合させるために使用することができる。隔離剤は、K(M-1)で表される結合定数で関心の分子に結合することができ、ここで、K=kon/koffである。
【0065】
隔離剤は、生物受容体-薬物拮抗又は薬物動態(PK)アプローチを利用する代替として、毒性物質を除去し、薬物中毒を治療し得る。論文「Supramolecular hosts as in vivo sequestration agents for pharmaceuticals and toxins」(Chem.Soc.Rev.2020,49,7516)(その開示全体は、あらゆる定義、放棄、否認、及び不一致を除いて、参照により本明細書に組み込まれる)は、例示的な隔離剤を提供している。Thevathasan,T.;Grabitz,S.D.;Santer,P.;Rostin,P.;Akeju,O.;Boghosian,J.D.;Gill,M.;Isaacs,L.;Cotton,J.F.;Eikermann,M.「Calabadion 1 selectively reverses respiratory and central nervous system effects of fentanyl in a rat model,」British Journal of Anaesthesia 2020,S0007-0912(20)30134-3も参照されたい。
【0066】
いくつかの実施形態では、隔離剤は、シクロデキストリン、非環式ククルビットウリル、環式ククルビットウリル、ピラーアレーン、カリックスアレーン、又はシクロデキストリンであり得る。いくつかの実施形態では、隔離剤はククルビットウリルである。いくつかの実施形態では、隔離剤は非環式ククルビットウリルである。いくつかの実施形態では、隔離剤は環式ククルビットウリルである。いくつかの実施形態では、隔離剤はピラーアレーンである。いくつかの実施形態では、隔離剤はカリックスアレーンである。いくつかの実施形態では、隔離剤はシクロデキストリンである。
【0067】
いくつかの実施形態では、隔離剤は、以下の構造を含み得る。
【0068】
【化2】
【0069】
ククルビットウリル分子容器は、強酸性条件下でのグリコールウリル及びホルムアルデヒドの縮合により調製され得る2nメチレン基により連結したnグリコールウリルモノマーを含む大員環である。ククルビットウリルの分子構造は、強い負の静電ポテンシャルの2つの対称性等価ウレイジルカルボニルポータルにより保護される、中央疎水性空洞を特徴とする。このため、ククルビットウリルは、カチオン性(例えば、アンモニウム)基に隣接した中央疎水性ドメインを特徴とする分子を結合する傾向を示す。分子の結合は、疎水性効果及びイオン-双極子相互作用により媒介される。一部の事例では、アダマンタン、ダイヤマンチン、及びフェロセンに結合するように設計された一部のククルビットウリルにおいて、超緊密な結合(K>1012-1)が観察されている。
【0070】
非環式ククルビットウリル分子容器は、類似しているが、より高い水溶性を呈し、より大きな分子を収容できるより柔軟な結合空洞を提供することができる。非環式ククルビットウリルは、疎水性カチオンの相互作用を介して緊密な結合を媒介するが、合成により修飾することもできる。これらの分子は、2つの末端芳香族側壁によって表され、カチオン-π、CH-π、及び分子とのπ-π相互作用に関与する、C字型の疎水性カチオン結合特性を授ける中央グリコウリル四量体を特徴とする。4つのスルホン酸ナトリウムアームは、水溶性を高め、ククルビットウリルと結合分子との間の二次的静電相互作用を促進するのに役立つ。
【0071】
ピラーアレーンは、nメチレン架橋によってパラ位置で接続しているn芳香族環で構成される大環式分子である。小さなピラーアレーンは狭いn-アルカン分子に結合し、一方でより大きなピラーアレーンは、芳香族、ビオロゲン、及び脂環式分子に結合することができる。例示的なピラーアレーンがここに提供され(Xue et.Al,Angewandte Chemie,2020)、これは、その全体が参照により組み込まれる。
【0072】
いくつかの実施形態では、隔離剤は、以下の構造のピラーアレーンであり、
【0073】
【化3】
式中、nは5~8の整数であり、R=SOH若しくはその塩(例えば、SONa)であるか、又は-CHCOOH若しくはその塩(例えば、CHCOONa)である。
【0074】
いくつかの実施形態では、n=5である。いくつかの実施形態では、n=6である。いくつかの実施形態では、n=7である。いくつかの実施形態では、n=8である。いくつかの実施形態では、n=6であり、R=SOH又はSONaであり、化合物は本明細書では化合物Bと称される。
【0075】
いくつかの実施形態では、隔離剤は、以下の式の環式ククルビットウリルであり、
【0076】
【化4】
式中、nは5~8の整数である。
【0077】
いくつかの実施形態では、n=5である。いくつかの実施形態では、n=6である。いくつかの実施形態では、n=7である。いくつかの実施形態では、n=8である。いくつかの実施形態では、n=7であり、化合物は本明細書では化合物Cと称される。
【0078】
いくつかの実施形態では、隔離剤は、少なくとも約1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1、又は1×10-1のKaで毒物(例えば、乱用薬物)に結合する。いくつかの実施形態では、隔離剤は、約1×10-1~1×10-1、1×10-1~1×10-1、1×10-1~1×10-1、1×10-1~1×10-1、1×10-1~1×10-1、1×10-1~1×10-1、1×10-1~1×10-1、1×10-1~1×10-1、1×10-1~1×10、1×10-1~1×10-1、1×10-1~1×10-1、1×10-1~1×10-1、1×10-1~1×10-1、1×10-1~1×10-1、又は1×10-1~1×10-1若しくは1×10-1~1×10-1のKaで毒物(例えば、乱用薬物)に結合する。
【0079】
中枢神経系(CNS)活性剤
CNS活性剤は、中枢神経系に影響を及ぼす化合物、分子、又は薬物が含まれ得る。例示的なCNS活性剤には、麻酔剤、抗痙攣剤、制吐剤、CNS刺激剤、筋弛緩剤、麻薬性鎮痛薬(鎮痛剤)、非麻薬性鎮痛薬(アセトアミノフェン及びNSAIDなど)、オピオイド受容体拮抗薬、及び鎮静剤が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、CNS活性剤はオピオイド受容体拮抗薬であり得る。
【0080】
オピオイド受容体拮抗薬は、分子であり、この分子は、固体がオピオイド毒性を有する、生命を脅かすオピオイド毒性の逆転において使用される。例示的なオピオイド受容体拮抗薬は、ナロキソン(Narcan(登録商標)又はEvzio(登録商標))、ナルトレキソン、及びSuboxone(登録商標)であり得るが、これらに限定されない。
【0081】
本明細書でいくつかの実施形態において提供されるのは、組成物は、オピオイド受容体拮抗薬を含む。
【0082】
開示された組成物は、ナロキソン、ナルトレキソン、ナルメフェン、ナロルフィン、ナルブフィン、ナロキソンアジネン(naloxoneazinen)、メチルナルトレキソン、ケチルシクラゾシン、ノルビナルトルフィミン、ナルトリンドール、6-13-ナロキソール、6-13-ナルトレキソール、又はその薬学的に許容される塩などのオピオイド受容体拮抗薬を含んでもよい。いくつかの実施形態では、オピオイド受容体拮抗薬は、ナロキソン若しくはナルトレキソンなどのミューオピオイド受容体拮抗薬、又はその薬学的に許容される塩である。一実施形態では、オピオイド受容体拮抗薬は、ナロキソン、ナロキソン塩基、又はその薬学的に許容される塩であり、これには、ナロキソンHCl、ナロキソンHCl二水和物、又はそれらの組み合わせが含まれる。ナロキソン塩酸塩は、オキシモルフォンの合成同族体である。構造において、これは、窒素原子上のメチル基がアリル基によって代置されるという点で、オキシモルフォンとは異なる。これは、17-アリル-4,5α-エポキシ、3-14-ジヒドロキシモルフィナン-6-オン塩酸塩として化学的に知られている。これは、分子量363.84であり、4つのキラル中心、及び以下の構造式を含む。C1922ClNO
【0083】
ナロキソン塩酸塩は、白色からわずかにオフホワイトの粉末として発生し、水、希酸、及び強アルカリに可溶性であり、アルコールにやや可溶性であり、エーテル及びクロロホルムにほとんど不溶性である。ナロキソンは、呼吸抑制、鎮静、及び低血圧を含むオピオイドの影響を防止するか又は逆転させる。またこれは、ペンタゾシンなどの作動拮抗薬の幻覚発現性及び不機嫌性の影響を逆転させることもできる。ナロキソンは、本質的に純粋なオピオイド受容体拮抗薬であり、すなわち、他のオピオイド受容体拮抗薬の特徴である「作動性」又はモルヒネ様の特性を保有しない。オピオイド、又は他のオピオイド受容体拮抗薬の作動性効果の非存在下で通常用量で投与される場合、これは、本質的に薬理活性を呈しない。ナロキソンは、耐性を生じさせるか、又は身体的若しくは精神的依存を引き起こすことが示されていない。オピオイドへの身体的依存がある場合、ナロキソンは離脱症状を生じさせる。しかしながら、オピオイド依存がある場合、離脱症状は、ナロキソン投与から数分以内に現れ、約2時間で治まる。離脱症候群の重症度及び持続時間は、ナロキソンの用量及び投与経路、並びに依存の程度及び種類に関連する。ナロキソンの作用機序は完全には理解されていないが、インビトロの証拠により、ナロキソンが、CNS中のミュー、カッパ、及びシグマのオピエート受容体部位について競合し、ミュー受容体への親和性が最大であることにより、オピオイドの影響に拮抗することが示唆される。他のオピオイド受容体拮抗薬、例えば、ともに窒素上にシクロプロピルメチル置換を有するシラゾシン及びナルトレキソンは、その有効性の大部分を保持し、作用持続時間がはるかに長く、実証後24時間に迫る。
【0084】
ナロキソンは、半減期が短い(約60分)ため、例えば、半減期が10~12時間のフェンタニルなどの、半減期がより長い新しい合成オピオイドに対して有効性が低下している。これは、多くの場合、被麻薬状態再発として知られる二次的過剰摂取現象をもたらす。
【0085】
被麻薬状態再発を避けるための標準ケアは、より高く頻繁な用量のナロキソンを投与することである。しかしながら、これは、重篤で時には生命を脅かす状態である誘発オピオイド離脱(POW)と呼ばれる二次的合併症につながり得る。したがって、フェンタニルの中毒又は過剰摂取を効果的に治療するために、乱用薬物を除去することができる他の治療を見つける必要がある。
【0086】
ナロキソンによるメタンフェタミンの中毒又は過剰摂取の治療は、十分に有効ではない。このため、ナロキソンによる多剤中毒又は過剰摂取の治療は、十分ではない場合がある。したがって、多剤中毒又は過剰摂取を効果的に治療するために、乱用薬物を除去することができる他の治療を見つける必要がある。
【0087】
ナルトレキソンは、別のオピオイド受容体拮抗薬である。しかしながら、ナロキソン、ナルメフェン、シクラゾシン、及びレバロルファンを含むがこれらに限定されない他のオピオイド受容体拮抗薬の等拮抗用量を、本開示に従って利用することができる。かかる他の拮抗薬と特定のオピオイド作動薬との比は、ナルトレキソンとは異なるオピオイド受容体拮抗薬の利用を所望する当業者であれば、必要以上の実験を行うことなく容易に決定することができ、オピオイド拮抗薬とオピオイド作動薬との比は、本明細書で詳細に例証され、考察されている。当業者であれば、例えば、本明細書に添付される実施例に示されているのと同じ又は類似の臨床試験を実施することにより、他の拮抗薬とオピオイド作動薬とのかかる比を決定し得る。このため、経口、静脈内、舌下、筋肉内、又は皮下により、例えば、本明細書に示されるナルトレキソンとヒドロコドンとの比と同等の比で投与されるオピオイド受容体拮抗薬/オピオイド作動薬の組み合わせは、本開示の範囲内であり、添付の特許請求の範囲の範囲内であるとみなされる。例えば、本開示のある特定の実施形態では、ナロキソンは、オピオイド受容体拮抗薬として利用され、剤形に含まれるナロキソンの量は、ナルトレキソンが組み合わせに含まれる場合と等価の拮抗効果を提供するのに十分な大きさである。
【0088】
いくつかの実施形態では、ナロキソン(例えば、Narcan(登録商標))は、経口で、注射剤として、又は吸入剤として投与される。いくつかの実施形態では、オピオイド受容体拮抗薬は、Suboxone(登録商標)、ナルトレキソン、又はメチルナルトレキソンであり得る。
【0089】
いくつかの実施形態では、CNS活性剤はベンゾジアゼピンである。いくつかの実施形態では、ベンゾジアゼピンは、ロラゼパム、クロノピン、クロノザパム、ジアゼパム、アルプラゾラム、クロルジアゼポキシド、クロラゼプ酸、ハラゼパム、オキサゼパム、プラゼパム、及びクアゼパム、又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。
【0090】
いくつかの実施形態では、CNS活性剤は抗ヒスタミン剤である。いくつかの実施形態では、CNS活性剤は、セチリジン、ジフェンヒドラミン、フェキソフェナジン、ロラタジン、デスロラタジン、クレマスチン、クロルフェニラミン、レボセチリジン、シプロヘプタジン、カルビノキサミン、エメダスチン、レボカバスチン、又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。
【0091】
いくつかの実施形態では、CNS活性剤は、ケタミン又はその薬学的に許容される塩である。
【0092】
いくつかの実施形態では、CNS活性剤は、アトロピン又はその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、CNS活性剤は、スコポラミン又はその薬学的に許容される塩である。
【0093】
治療方法
本開示では、薬物乱用による中毒を有する対象を治療するための方法が提供される。一実施形態では、本開示は、対象において乱用薬物による中毒を治療する方法を提供し、本方法は、治療有効量の隔離剤又はその薬学的に許容される塩を、治療有効量のCNS活性剤又はその薬学的に許容される塩と組み合わせて投与することを含み、投与は、毒物、例えば乱用薬物による中毒又は過剰摂取の治療を、それを必要とする対象において行うために有効である。いくつかの実施形態では、CNS活性剤及び隔離剤は、0分、1分、2分、3分、4分、5分、10分、15分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分、又は60分以内に投与される。いくつかの実施形態では、隔離剤が最初に投与される。いくつかの実施形態では、CNS活性剤が最初に投与される。いくつかの実施形態では、隔離剤及びCNS活性剤は、一緒に投与される。いくつかの実施形態では、CNS活性剤を最初に投与し、続いて、隔離剤を、好ましくは、CNS活性剤の5分未満(例えば、同時に、30秒、1分、1.5分、2分、2.5分、3分、3.5分、4分、又は4.5分)後に投与することが好ましい。
【0094】
本明細書では、毒物、例えば乱用薬物による中毒を治療する方法が提供され、本方法は、i)CNS活性剤と、ii)隔離剤と、を投与することを含む。いくつかの実施形態では、CNS活性剤及び隔離剤は、0分、1分、2分、3分、4分、5分、10分、15分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分、又は60分以内に投与される。いくつかの実施形態では、隔離剤が最初に投与される。いくつかの実施形態では、CNS活性剤が最初に投与される。いくつかの実施形態では、隔離剤及びCNS活性剤は、一緒に投与される。
【0095】
本明細書では、乱用薬物による中毒の急性効果を治療するための治療有効量のCNS活性剤と、薬物に結合してそれを血液から除去するための治療有効量の隔離剤とを投与すること含む、毒物、例えば薬物の乱用による中毒を治療する方法が提供される。いくつかの実施形態では、CNS活性剤及び隔離剤は、0分、1分、2分、3分、4分、5分、10分、15分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分、又は60分以内に投与される。いくつかの実施形態では、隔離剤が最初に投与される。いくつかの実施形態では、CNS活性剤が最初に投与される。いくつかの実施形態では、隔離剤及びCNS活性剤は、一緒に投与される。
【0096】
本明細書では、いくつかの実施形態において、乱用薬物による中毒を治療する方法が提供され、本方法は、CNS活性剤と隔離剤とを含む組成物を、それを必要とする対象に投与することを含み、本組成物により、被麻薬状態が防止される。いくつかの実施形態では、本組成物により、CNS活性剤単独の投与よりも効果的に被麻薬状態再発が防止される。
【0097】
いくつかの実施形態では、薬物過剰摂取の症状を軽減するために、CNS活性剤の追加投与が提供され得る。オピオイドの場合、心拍数の低下及び呼吸数の低下がオピオイドの過剰摂取を示し得る。これらの場合、臨床家は、これらの症状を認識し、症状が安定するまで追加の用量のナロキソンを処方する。メタンフェタミンなどの覚醒剤の場合、関連症状には、限定されないが、心拍数の上昇、呼吸の上昇、及び興奮性せん妄が含まれる。
【0098】
いくつかの実施形態では、薬物過剰摂取の症状、薬物中毒、又はその症状を軽減するために、隔離剤の追加投与が提供され得る。オピオイドの場合、心拍数の低下及び呼吸数の低下がオピオイドの過剰摂取を示し得る。これらの場合、臨床家は、これらの症状を認識し、症状が安定するまで追加の用量のナロキソンを処方する。メタンフェタミンなどの覚醒剤の場合、関連症状には、限定されないが、心拍数の上昇、呼吸の上昇、及び興奮性せん妄が含まれる。
【0099】
いくつかの実施形態では、隔離剤及びCNS活性剤の投与後、臨床家は、対象をモニタリングして、過剰摂取に関連する症状を緩和するために、追加用量のナロキソン又はCNS活性剤が必要かどうかを決定する。
【0100】
いくつかの実施形態では、本開示の方法及び医薬組成物は、任意の好適な経路により、例えば、静脈内(i.v.)注入、ボーラス注射、筋肉内、皮下、腹腔内、経口、吸入、舌下、又は口腔により対象に投与されてもよい。
【0101】
米国特許出願第15/417,785号(US 2017/0137431)(あらゆる定義、放棄、否認、及び不一致を除いて、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、例示的なククルビットウリル及び隔離剤を提供している。いくつかの実施形態では、隔離剤は、ククルビットウリル、ピラーアレーン、シクロデキストリン、又はカリックスアレーンであり得る。いくつかの実施形態では、隔離剤は、環式又は非環式ククルビットウリルであり得る。いくつかの実施形態では、隔離剤は、以下の構造を含む。
【0102】
【化5】
【0103】
いくつかの実施形態では、隔離剤又はその薬学的に許容される塩は、約0.05mg/kg~500mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、隔離剤は、約0.05mg/kg~50mg/kg、50~60mg/kg、50~70mg/kg、50~80mg/kg、50~90mg/kg、50~100mg/kg、50~120mg/kg、50~140mg/kg、50~160mg/kg、50~180mg/kg、50~200mg/kg、50~220mg/kg、50~240mg/kg、50~260mg/kg、50~280mg/kg、50~300mg/kg、50~350mg/kg、50~400mg/kg、50~450mg/kg、50~500mg/kg、60~70mg/kg、60~80mg/kg、60~90mg/kg、60~100mg/kg、60~120mg/kg、60~140mg/kg、60~160mg/kg、60~180mg/kg、60~200mg/kg、60~220mg/kg、60~240mg/kg、60~260mg/kg、60~280mg/kg、60~300mg/kg、60~350mg/kg、60~400mg/kg、60~450mg/kg、60~500mg/kg、80~90mg/kg、80~100mg/kg、80~120mg/kg、80~140mg/kg、80~160mg/kg、80~180mg/kg、80~200mg/kg、80~220mg/kg、80~240mg/kg、80~260mg/kg、80~280mg/kg、80~300mg/kg、80~350mg/kg、80~400mg/kg、80~450mg/kg、80~500mg/kg、100~120mg/kg、100~130mg/kg、100~140mg/kg、100~150mg/kg、100~160mg/kg、100~180mg/kg、100~200mg/kg、100~220mg/kg、100~240mg/kg、100~260mg/kg、100~280mg/kg、100~300mg/kg、100~350mg/kg、100~400mg/kg、100~450mg/kg、100~500mg/kg、140~160mg/kg、140~180mg/kg、140~200mg/kg、140~220mg/kg、140~240mg/kg、140~260mg/kg、140~280mg/kg、140~300mg/kg、140~350mg/kg、140~400mg/kg、140~450mg/kg、140~500mg/kg、160~200mg/kg、160~220mg/kg、160~240mg/kg、160~260mg/kg、160~280mg/kg、160~300mg/kg、160~350mg/kg、160~400mg/kg、160~450mg/kg、160~500mg/kg、180~200mg/kg、180~220mg/kg、180~240mg/kg、180~260mg/kg、180~280mg/kg、180~300mg/kg、180~350mg/kg、180~400mg/kg、180~450mg/kg、180~500mg/kg、200~220mg/kg、200~240mg/kg、200~260mg/kg、200~280mg/kg、200~300mg/kg、200~350mg/kg、200~400mg/kg、200~450mg/kg、200~500mg/kg、220~240mg/kg、220~260mg/kg、220~280mg/kg、220~300mg/kg、240~260mg/kg、240~280mg/kg、240~300mg/kg、240~350mg/kg、240~400mg/kg、240~450mg/kg、240~500mg/kg、260~280mg/kg、260~300mg/kg、280~300mg/kg、260~350mg/kg、260~400mg/kg、260~450mg/kg、260~500mg/kg、280~350mg/kg、280~400mg/kg、280~450mg/kg、又は280~500mg/kgで投与される。
【0104】
いくつかの実施形態では、隔離剤又はその薬学的に許容される塩は、約少なくとも0.05mg/kg、1mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、20mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、50mg/kg、60mg/kg、70mg/kg、80mg/kg、90mg/kg、100mg/kg、110mg/kg、120mg/kg、130mg/kg、140mg/kg、150mg/kg、160mg/kg、170mg/kg、180mg/kg、190mg/kg、200mg/kg、210mg/kg、220mg/kg、230mg/kg、240mg/kg、250mg/kg、260mg/kg、270mg/kg、280mg/kg、290mg/kg、300mg/kg、350mg/kg、400mg/kg、450mg/kg、又は500mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、化合物A又はその薬学的に許容される塩は、約50mg/kg、60mg/kg、70mg/kg、80mg/kg、90mg/kg、100mg/kg、110mg/kg、120mg/kg、130mg/kg、140mg/kg、150mg/kg、160mg/kg、170mg/kg、180mg/kg、190mg/kg、200mg/kg、210mg/kg、220mg/kg、230mg/kg、240mg/kg、250mg/kg、260mg/kg、270mg/kg、280mg/kg、290mg/kg、300mg/kg、350mg/kg、400mg/kg、450mg/kg、又は500mg/kg未満で投与される。
【0105】
いくつかの実施形態では、隔離剤又はその薬学的に許容される塩は、約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、約100mg、約100mg、約125mg、約150mg、約175mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約550mg、約600mg、約650mg、約700mg、約750mg、約800mg、約850mg、約900mg、約950mg、約1000mg、約1050mg、約1100mg、約1150mg、約1200mg、約1250mg、約1300mg、約1350mg、約1400mg、約1450mg、約1500mg、約1550mg、約1600mg、約1650mg、約1700mg、約1750mg、約1800mg、約1850mg、約1900mg、約1950mg、又は約2000mgで投与され得る。
【0106】
いくつかの実施形態では、CNS活性剤は、約0.1~1,000μg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、CNS活性剤は、約1~1,000μg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、CNS活性剤は、約1~500μg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、オピオイド拮抗薬は、約100~500μg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、オピオイド拮抗薬は、約100~150μg/kg、100~200μg/kg、100~250μg/kg、100~250μg/kg、100~300μg/kg、100~350μg/kg、100~400μg/kg、100~450μg/kg、100~500μg/kg、又は100~600μg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、CNS活性剤は、約少なくとも100μg/kg、150μg/kg、200μg/kg、250μg/kg、300μg/kg、350μg/kg、又は400μg/kg、450μg/kg、500μg/kg、550μg/kg、600μg/kg、700μg/kg、800μg/kg、900μg/kg、又は1,000μg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、CNS活性剤は、約100μg/kg、150μg/kg、200μg/kg、250μg/kg、300μg/kg、350μg/kg、400μg/kg、450μg/kg、500μg/kg、550μg/kg、600μg/kg、700μg/kg、800μg/kg、900μg/kg、又は1,000μg/kg未満で投与される。
【0107】
いくつかの実施形態では、CNS活性剤は、ナロキソン、ケタミン、ペンタゾシン、ナルブフィン、ブプレノルフィン、ジプレノフィン、メチルナルトレキソン、ナルトレキソン、ナルメフェン、ナロキセゴール、アルビモパン、ナルデメジン、ケタミン、ベンゾジアゼピン、抗ヒスタミン、又はその薬学的に許容される塩であり得る。いくつかの実施形態では、CNS活性剤はオピオイド受容体拮抗薬であり得る。いくつかの実施形態では、オピオイド受容体拮抗薬はナロキソンである。いくつかの実施形態では、CNS活性剤はアトロピン又はスコポラミンである。
【0108】
開示の実施形態は、使用される特定の担体及び他の成分に応じて、様々な投与経路に対して製剤化され得る。例えば、本医薬組成物は、筋肉内、皮下、皮内、又は静脈内に注射することができる。これらはまた、鼻腔内、膣内、直腸内、又は経口など、粘膜を介して投与することもできる。本化合物又は組成物はまた、経皮パッチ、染み付け(spot-on)、注ぎかけ(pour-on)、又はマイクロニードルを介して皮膚をとおして局所的に投与することができる。懸濁剤、液剤、粉剤、錠剤、ゲルキャップなどが、本明細書で企図されている。
【0109】
薬物中毒又は過剰摂取の治療は、CNS活性剤の反復投与を含み得る。いくつかの実施形態では、CNS活性剤の投与は、8時間にわたる少なくとも0、1、2、3、4、又は5回用量で構成され得る。いくつかの実施形態では、CNS活性剤の投与は、8時間にわたる約0~5用量、0~4用量、0~3用量、0~2用量、0~1用量、1~5用量、1~4用量、1~3用量、1~2用量、2~3用量、2~4用量、2~5用量、3~4用量、3~5用量、又は4~5用量で構成され得る。いくつかの実施形態では、CNS活性剤の投与は、8時間にわたる少なくとも4mg、8mg、12mg、又は16mgを含み得る。いくつかの実施形態では、CNS活性剤の投与は、8時間にわたる4~8mg、4~12、4~16mg、8~12mg、8~16mg、12~16mgで構成され得る。
【0110】
いくつかの実施形態では、対象は哺乳動物である。いくつかの実施形態では、対象は非ヒト霊長類である。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
【0111】
毒物及び乱用薬物
いくつかの実施形態では、本開示は、毒物から生じる、過剰摂取の中毒又はその症状を治療又は防止する方法を提供する。いくつかの実施形態では、毒物は乱用薬物である。いくつかの実施形態では、毒物は、オピオイド、覚醒剤、神経剤、アレルゲン、及び代謝又は消化誘導性毒性物質からなる群から選択される。
【0112】
本出願において使用される「物質使用障害」という用語は、乱用物質の投与、依存、及び離脱と関連付けられる任意の段階を指す。これには、物質を渇望すること、物質を投与すること、及び陶酔感(ハイ)、満足感、又は弛緩を経験することが含まれる。物質を断っていると、対象は、過敏、不安、発汗、悪心、嘔吐、下痢、疲労、振戦、頭痛、不眠、集中力の喪失、幻覚、発作、及び渇望の増加を経験し得る。これらは、離脱症状としても知られている。
【0113】
いくつかの実施形態では、毒物はオピオイドである。いくつかの実施形態では、オピオイドは、アヘン、フェンタニル、カルフェンタニル、ヒドロコドン、コデイン、モルヒネ、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。オピオイドの過剰摂取は、縮瞳の出現、意識喪失、心拍数の低下、及び呼吸困難をとおして認識され得る。呼吸困難は、酸素レベルの低下につながる。加えて、これは、オピオイドの過剰摂取を有しない固体と比較して、より低い呼吸数として対象に現れ得る。
【0114】
いくつかの実施形態では、毒物は覚醒剤である。覚醒剤は、体内の生理又は神経活動のレベルを上昇させる物質であり、高用量では、危険なほど高い体温、不整脈、心不全、発作、及び死亡をもたらし得る。いくつかの実施形態では、覚醒剤は、カフェイン、リタリン、コカイン、アンフェタミン、クリスタルメス、メタンフェタミン、フェンシクリジン、コカイン、3,4-メチレンジオキシ-メタンフェタミン(MDMA)などであり得る。覚醒剤の過剰摂取は、興奮性せん妄、興奮状態の増加、被害妄想、精神病、及び血圧上昇の出現をとおして認識され得る。いくつかの実施形態では、隔離剤は、少なくとも約1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×10-1、又は1×10-1のKで覚醒剤に結合する。
【0115】
いくつかの実施形態では、毒物は神経剤である。神経剤は、コリンエステラーゼを阻害し、神経系に影響を及ぼす物質である。例としては、VX、サリン、ソマン、タブン、及び有機リン系殺虫剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0116】
いくつかの実施形態では、毒物は、代謝及び消化誘導性毒性物質である。代謝及び/又は消化誘導性毒性物質は、ヒトの代謝及び消化活性の過程で過剰に産生されるCNS活性物質である。例としては、希少遺伝性代謝疾患であるフェニルケトン尿症及び肝性脳症において産生される過剰なフェニルアラニン、肝機能障害、及びニーマン・ピック病において産生される過剰なコレステロール及び脂肪物質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
薬物中毒又は過剰摂取の治療は、乱用薬物に起因する再発症状を緩和又は軽減するためのCNS活性剤(例えば、オピオイド受容体拮抗薬)の投与を含み得る。いくつかの実施形態では、再発症状は、被麻薬状態再発と関連付けられ得る。
【0118】
薬物乱用による多剤関連中毒
いくつかの実施形態では、乱用薬物による中毒は、多剤(polydrug)としても知られる1つ超の薬物の使用を伴い得る。いくつかの実施形態では、多剤関連中毒は、オピオイドと少なくとも1つの他の薬物とを含み得る。いくつかの実施形態では、多剤関連中毒は、複数の乱用薬物を含み得る。いくつかの実施形態では、複数の乱用薬物は、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つの乱用薬物を含む。
【0119】
乱用薬物は、カフェイン、アルコール、コカイン、オピオイド、覚醒剤、フェンタニル、ケタミン、ヘロイン、アンフェタミン、クリスタルメタンフェタミン、CNS作用分子、ベンゾジアゼピン、アデロール、リタリン、睡眠薬、MDMA、又はそれらの任意の組み合わせであり得るが、これらに限定されない。
【0120】
結合定数
いくつかの実施形態では、隔離剤は、化合物Aなどの非環式ククルビットウリルである。表1は、化合物Aと臨床現場で使用される様々な化合物との間のH NMR滴定によって決定した、化合物Aの毒物への例示的結合定数を集計する。表1の値から明らかになるように、本図及び説明では、逆転を標的にした化合物の結合親和性が高い。
【0121】
【表1】
【0122】
いくつかの実施形態では、隔離剤は、化合物B又はその任意の誘導体の構造によって表されるピラーアレーンであり、化合物Bは、以下の構造を含み、
【0123】
【化6】
式中、nは5~8であり、R=SOH又はSONaである。いくつかの実施形態では、nは6である。
【0124】
表2は、化合物Bと臨床現場で使用される様々な化合物との間のH NMR滴定によって決定した、化合物Bの毒物への例示的結合定数を集計する。表2の値から明らかになるように、本図及び説明では、逆転を標的にした化合物の結合親和性が高い。
【0125】
【表2】
【0126】
いくつかの実施形態では、隔離剤は、化合物C又はその任意の誘導体などの環式ククルビットウリルであり、化合物Cは、以下の構造を含み、
【0127】
【化7】
式中、nは、5、6、7、又は8であり、例えば、n=7である。
【0128】
表3は、化合物Cと臨床現場で使用される様々な化合物との間のH NMR滴定によって決定した、化合物Cの毒物への例示的結合定数を集計する。表3の値から明らかになるように、本図及び説明では、逆転を標的にした化合物の結合親和性が高い。
【0129】
【表3】
【0130】
キット
いくつかの実施形態では、本開示は、本開示の組成物(例えば、隔離剤とCNS活性剤とを含む組成物)(例えば、医薬組成物)を含むキットを提供する。本キットには、臨床家(例えば、医師又は看護師)が、キットに含まれる組成物を対象に投与して、薬物中毒及び関連症状を治療することを可能にするための指示が含まれ得る。
【0131】
ある特定の実施形態では、本キットは、本開示の隔離剤及びCNS活性剤を含む治療有効量の組成物を含む単回用量の医薬組成物のパッケージを含む。任意選択で、この医薬組成物を投与するために必要な器具又はデバイスが本キットに含まれてもよい。例えば、本開示のキットは、治療有効量の本開示の組成物を含む1つ以上のプレフィルドシリンジを提供してもよい。更に、本キットはまた、麻薬中毒及び関連症状を有する対象のための投与スケジュールに関する指示などの追加の構成要素を含んでもよい。
【0132】
いくつかの実施形態では、本化合物又は組成物は、好適な容器に単位剤形で提供され得る。「単位剤形」という用語は、ヒト又は動物使用のための単一用量として好適な物理的に別個の単位を指す。各単位剤形は、所望の効果を生み出すために計算された担体中の所定量の発明化合物(及び/又は他の活性剤)を含んでもよい。他の実施形態では、本化合物は、対象に投与する前に現場で混合するために、担体とは別に(例えば、それ自体のバイアル、アンプル、サシェ、又は他の好適な容器中で)提供され得る。本化合物を含むキットも本明細書に開示される。本キットは、更に、化合物を対象に投与するための指示を含む。本化合物は、薬学的に許容される担体中に既に分散している、剤形の一部として提供されてもよく、担体とは別個に提供されてもよい。本キットは、例えば、本化合物を好適な担体に分散させるための指示を含む、化合物を対象への投与に対して調製するための指示を更に含み得る。
【0133】
いくつかの実施形態では、隔離剤及びCNS活性剤は、同じ製剤中にあり得る。いくつかの実施形態では、隔離及びCNS活性剤は、異なる製剤中にあり得る。
【0134】
本明細書に記載の治療及び予防方法は、イヌ、ネコ、及び他の愛玩動物、並びに齧歯類、霊長類、ウマ、ウシ、ブタなどを非限定的に含む、任意の適切な動物にも適用可能である。本方法は、臨床研究及び/又は試験にも適用することができる。
【0135】
医薬組成物
本開示の組成物は、いくつかの実施形態では、組成物(例えば、医薬組成物)に含まれ得る。本開示の医薬組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤を更に含んでもよい。
【0136】
本明細書で使用される「医薬組成物」という用語は、薬学的に許容可能な担体とともに製剤化され、哺乳動物における障害の治療のための治療レジメンの一部として、政府規制当局の承認を得て製造又は販売される、本明細書に記載の隔離剤及びCNS活性剤を含む組成物を指す。医薬組成物は、例えば、単位剤形(例えば、錠剤、カプセル、カプレット、ゲルキャップ、又はシロップ)での経口投与のために、局所投与(例えば、クリーム、ゲル、ローション、又は軟膏として)のために、静脈内投与(例えば、粒子塞栓を含まない滅菌溶液として、及び静脈内使用に好適な溶媒系中で)のために、又は本明細書に記載の任意の他の製剤で、製剤化することができる。
【0137】
本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という用語は、一緒に投与されるタンパク質の治療特性を保持しながら、治療される哺乳動物(例えば、ヒト)にとって生理学的に許容可能である担体を指す。1つの例示的な薬学的に許容される担体は、生理食塩水である。他の生理学的に許容される担体及びそれらの製剤は、当業者に知られており、例えば、参照により本明細書に組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences(18th edition,A.Gennaro,1990,Mack Publishing Company,Easton,PA)に記載されている。
【0138】
隔離剤及びCNS活性剤を含む医薬組成物は、いくつかの実施形態では、溶液、グリセロール中の分散体、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの油中の任意の組み合わせとして、固形剤形で、吸入可能な剤形として、鼻腔内剤形として、リポソーム製剤として、ナノ粒子を含む剤形、微粒子を含む剤形、高分子剤形、又はそれらの任意の組み合わせとして調製される。
【0139】
薬学的に許容される賦形剤は、いくつかの例では、Handbook of Pharmaceutical Excipients,American Pharmaceutical Association(1986)に記載される賦形剤である。好適な賦形剤の非限定的な例としては、緩衝剤、防腐剤、安定剤、結合剤、圧縮剤、潤滑剤、キレート剤、分散促進剤、崩壊剤、香味剤、甘味剤、着色剤が挙げられる。
【0140】
いくつかの実施形態では、賦形剤は緩衝剤である。好適な緩衝剤の非限定的な例としては、クエン酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、重炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、及び重炭酸カルシウムが挙げられる。緩衝剤として、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、水酸化マグネシウム、乳酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、クエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、メタリン酸カリウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、酢酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、及び他のカルシウム塩又はそれらの組み合わせが、いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物中で使用される。
【0141】
いくつかの実施形態では、賦形剤は防腐剤を含む。好適な防腐剤の非限定的な例としては、アルファ-トコフェロール及びアスコルベートなどの抗酸化剤、並びにパラベン、クロロブタノール、及びフェノールなどの抗菌剤が挙げられる。いくつかの例では、抗酸化剤には、限定されないが、EDTA、クエン酸、アスコルビン酸、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、亜硫酸ナトリウム、p-アミノ安息香酸、グルタチオン、没食子酸プロピル、システイン、メチオニン、エタノール、及びN-アセチルシステインが含まれる。いくつかの事例では、防腐剤には、バリダマイシンA、TL-3、オルトバナジウム酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、N-a-トシル-Phe-クロロメチルケトン、N-a-トシル-Lys-クロロメチルケトン、アプロチニン、フェニルメチルスルホニルフルオリド、ジイソプロピルフルオロホスフェート、キナーゼ阻害剤、ホスファターゼ阻害剤、カスパーゼ阻害剤、グランザイム阻害剤、細胞接着阻害剤、細胞分裂阻害剤、細胞周期阻害剤、脂質シグナル伝達阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、還元剤、アルキル化剤、抗菌剤、オキシダーゼ阻害剤、又は他の阻害剤が含まれる。
【0142】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、賦形剤として結合剤を含む。好適な結合剤の非限定的な例としては、デンプン、アルファ化デンプン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルオキソアゾリドン、ポリビニルアルコール、C12-C18脂肪酸アルコール、ポリエチレングリコール、ポリオール、糖類、オリゴ糖、及びそれらの組み合わせが挙げられる。医薬製剤で使用される結合剤は、いくつかの例では、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、小麦デンプンなどのデンプン;スクロース、グルコース、ブドウ糖、ラクトース、マルトデキストリンなどの糖類;天然及び合成ゴム;ゼラチン;微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースなどのセルロース誘導体;ポリビニルピロリドン(ポビドン);ポリエチレングリコール(PEG);ワックス;炭酸カルシウム;リン酸カルシウム;ソルビトール、キシリトール、マンニトールなどのアルコール類、並びに水、又はそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0143】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、賦形剤として潤滑剤を含む。好適な潤滑剤の非限定的な例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、水素化植物油、ステロテックス、モノステアリン酸ポリオキシエチレン、タルク、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、及び軽油が挙げられる。医薬製剤で使用される潤滑剤は、いくつかの実施形態では、金属ステアリン酸(ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウムなど)、脂肪酸エステル(フマル酸ステアリルナトリウムなど)、脂肪酸(ステアリン酸など)、脂肪アルコール、ベヘン酸グリセリル、鉱油、パラフィン、水素化植物油、ロイシン、ポリエチレングリコール(PEG)、金属ラウリルサルフェート(ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウムなど)、塩化ナトリウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、及びタルク、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0144】
いくつかの実施形態では、医薬製剤は、賦形剤として分散促進剤を含む。好適な分散剤の非限定的な例としては、いくつかの例では、デンプン、アルギン酸、ポリビニルピロリドン、グアーゴム、カオリン、ベントナイト、精製木材セルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、同形シリケート、及び高HLB乳化剤界面活性剤としての微結晶性セルロースが挙げられる。
【0145】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、賦形剤として崩壊剤を含む。いくつかの実施形態では、崩壊剤は非発泡性崩壊剤である。好適な非発泡性崩壊剤の非限定的な例としては、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、そのアルファ化加工デンプンなどのデンプン、甘味剤、ベントナイトなどの粘度、微結晶セルロース、アルギネート、デンプングリコール酸ナトリウム、寒天、グアー、ローカストビーン、カラヤ、ペシチン(pecitin)、及びトラガカントなどのゴムが挙げられる。いくつかの実施形態では、崩壊剤は発泡性崩壊剤である。好適な発泡性崩壊剤の非限定的な例としては、クエン酸と組み合わせた重炭酸ナトリウム、及び酒石酸と組み合わせた重炭酸ナトリウムが挙げられる。
【0146】
いくつかの実施形態では、賦形剤は香味剤を含む。外層に組み込まれる香味剤は、いくつかの例では、合成香味油及び香味芳香物質;天然油;植物、葉、花、及び果物からの抽出物;並びにそれらの組み合わせから選ばれる。いくつかの実施形態では、香味剤は、シナモン油;冬緑油;ペパーミント油;クローバー油;乾草油;アニス油;ユーカリ;バニラ;レモン油、オレンジ油、グレープ及びグレープフルーツ油などの柑橘油;並びにリンゴ、モモ、洋ナシ、イチゴ、ラズベリー、サクランボ、プラム、パイナップル、及びアンズを含む果実精からなる群から選択され得る。
【0147】
いくつかの実施形態では、賦形剤は甘味剤を含む。好適な甘味剤の非限定的な例としては、グルコース(コーンシロップ)、デキストロース、転化糖、フルクトース、及びそれらの混合物(担体として使用されない場合);サッカリン、及びナトリウム塩などのその様々な塩;アスパルテームなどのジペプチド甘味剤;ジヒドロカルコン化合物、グリチルリチン;Stevia Rebaudiana(ステビオシド);スクラロースなどのスクロースのクロロ誘導体;並びに糖アルコール、例えば、ソルビトール、マンニトール、シリトール(sylitol)などが挙げられる。
【0148】
いくつかの例では、本明細書に記載される医薬組成物は、着色剤を含む。好適な着色剤の非限定的な例としては、食品、薬物、及び化粧品用の染料(FD&C)、薬物及び化粧品用の染料(D&C)、並びに外部薬物及び化粧品用の染料(Ext.D&C)。着色剤は、色素又はそれらに対応するレーキとして使用することができる。
【0149】
いくつかの例では、本明細書に記載される医薬組成物は、キレート剤を含む。いくつかの例では、キレート剤は殺真菌性キレート剤である。例としては、エチレンジアミン-N,N,N’,N’-四酢酸(EDTA);EDTAの二ナトリウム、三ナトリウム、四ナトリウム、二カリウム、三カリウム、二リチウム、及び二アンモニウム;EDTAのバリウム、カルシウム、コバルト、銅、ジスプロシウム、ユーロピウム、鉄、インジウム、ランタン、マグネシウム、マンガン、ニッケル、サマリウム、ストロンチウム、又は亜鉛キレート;trans-1,2-ジアミノシクロヘキサン-N,N,N’,N’-四酢酸一水和物;N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン;1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン-N,N,N’,N’-四酢酸;1,3-ジアミノプロパン-N,N,N’,N’-四酢酸;エチレンジアミン-N,N’-二酢酸;エチレンジアミン-N,N’-ジプロピオン酸ジヒドロクロリド;エチレンジアミン-N,N’-ビス(メチレンリン酸)半水和物、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン-N,N’,N’-三酢酸;エチレンジアミン-N,N,N’,N’-テトラキス(メチレンホスポン酸);O,O’-ビス(2-アミノエチル)エチレングリコール-N,N,N’,N’-四酢酸;N,N-ビス(2-ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン-N,N-二酢酸;1,6-ヘキサメチレンジアミン-N,N,N’,N’-四酢酸;N-(2-ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸;イミノ二酢酸;1,2-ジアミノプロパン-N,N,N’,N’-四酢酸;ニトリロ三酢酸;ニトリロ三プロピオン酸、ニトリロトリス(メチレンリン酸)の三ナトリウム塩;7,19,30-トリオキサ-1,4,10,13,16,22,27,33-オクタアザビシクロ[11,11,11]ペンタトリアコンタンヘキサヒドロブロミド、又はトリエチレンテトラミン-N,N,N’,N”,N’“,N’“-六酢酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0150】
また、本明細書に開示される隔離剤及びオピオイド拮抗薬、並びに1つ以上の他の抗菌剤又は抗真菌剤、例えば、アムホテリシンB、アムホテリシンB脂質複合体(ABCD)、リポソームアムホテリシンB(L-AMB)、及びリポソームナイスタチンなどのポリエン、ボリコナゾール、フルコナゾール、ケトコナゾール、イトラコナゾール、ポザコナゾールなどといったアゾール及びトリアゾール;カスポファンギン、ミカファンギン(FK463)、及びV-エキノカンジン(LY303366)などのグルカンシンターゼ阻害剤;グリセオフルビン;テルビナフィンなどのアリルアミン;フルシトシン、又は本明細書に記載されるものを含む他の抗真菌剤である。加えて、ペプチドは、シクロピロクスオラミン、ハロプロジン、トルナフテート、ウンデシレン酸塩、局所用ナイサチン(nysatin)、アモロルフィン、ブテナフィン、ナフチフィン、テルビナフィン、及び他の局所用剤などの局所用抗真菌剤と組み合わせることができることが企図される。いくつかの例では、医薬組成物は、追加の薬剤を含む。いくつかの事例では、追加の薬剤は、医薬組成物中に治療有効量で存在する。
【0151】
通常の保存及び使用条件下で、本明細書に記載される医薬組成物は、微生物の成長を防止するために防腐剤を含む。ある特定の例では、本明細書に記載される医薬組成物は、防腐剤を含まない。注射可能な使用に好適な医薬品形態には、滅菌水溶液又は分散液、及び滅菌注射溶液又は分散液の即時調製のための滅菌粉末が含まれる。医薬組成物は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、及び/又は植物油、又はそれらの任意の組み合わせを含む溶媒又は分散媒体である担体を含む。適当な流動性が、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散液の場合には必要な粒径の維持により、及び界面活性剤の使用により、維持される。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらされる。多くの場合、等張剤、例えば、糖類又は塩化ナトリウムが含まれる。注射可能な組成物の長期間の吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物中で使用することによってもたらされ得る。
【0152】
水溶液、例えば液体剤形での非経口投与については、例えば、液体剤形は、必要に応じて好適に緩衝され、液体希釈剤は、十分な生理食塩水又はグルコースで等張にされる。液体剤形は、静脈内、筋肉内、皮下、及び腹腔内投与に特に好適である。この関連で、用いることができる滅菌水性媒体は、当業者であれば本開示に照らして分かるであろう。例えば、ある特定の事例では、1つの剤形を1mL~20mLの等張性NaCl溶液に溶解させ、100mL~1000mLの流体、例えばナトリウム-重炭酸塩緩衝生理食塩水に加えるか、又は提案された注入部位に注射する。
【0153】
ある特定の実施形態では、滅菌注射溶液は、免疫療法剤を、必要に応じて、上で列挙した様々な他の成分とともに適切な溶媒に必要な量で組み込み、その後、濾過滅菌することにより調製される。概して、分散剤は、様々な滅菌された活性成分を、塩基性分散媒体及び上で列挙したものから必要とされる他の成分を含む滅菌ビヒクルに組み込むことにより調製される。本明細書に開示の組成物は、いくつかの例では、中性形態又は塩形態で製剤化される。薬学的に許容される塩には、例えば、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基で形成される)が含まれ、これは、例えば、塩酸若しくはリン酸などの無機酸、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸で形成される。遊離カルボキシル基で形成される塩は、いくつかの場合、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、又は水酸化第二鉄などの無機塩基、並びにイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどといった有機塩基に由来する。製剤化の際、医薬組成物は、いくつかの実施形態では、投与製剤と互換性のある様式で、治療的に有効である量で投与される。
【0154】
ある特定の実施形態では、本開示の医薬組成物は、薬学的に許容される担体と組み合わせた、有効量の本明細書に開示される隔離剤及びCNS活性剤を含む。本明細書で使用される「薬学的に許容される」には、活性成分の生物活性の有効性に干渉しない、及び/又はそれが投与される患者に毒性でない、任意の担体が含まれる。好適な医薬担体の非限定的な例としては、リン酸緩衝生理食塩水、水、油/水エマルションなどのエマルション、様々なタイプの湿潤剤、及び滅菌溶液が挙げられる。薬学的に互換性のある担体の追加の非限定的な例としては、ゲル、生体吸収性基質材料、免疫療法剤を含む移植要素、又は任意の他の好適なビヒクル、送達若しくは分注のための手段若しくは材料を挙げることができる。かかる担体は、例えば、従来の方法により製剤化され、有効量で対象に投与される。
【実施例
【0155】
実施例1:麻薬中毒の解消及び被麻薬状態再発の緩和のためのナロキソンと隔離剤との組み合わせの評価
アフリカミドリザル(AGM、n=8)を、15μg/kg(sc)のカルフェンタニルに曝露させた。ナロキソン(355.12μg/kg、im)を、姿勢が乱れるか又は毎分の呼吸数(bpm)が10回未満になったときに投与し、その直後に化合物A(100又は200mg/kg、im)を投与した。呼吸数が10bpm以下であるか、又は呼吸の質が低下していた場合、ナロキソンの2回目の用量(355.12μg/kg、im)を約3分以内に投与した。
【0156】
ナロキソン投与までの平均潜時を以下の表に示す。化合物A(100mg/kg)及びナロキソンによる初回治療は、3/8(応答数/総数)において、実験期間中にカルフェンタニル誘導性呼吸抑制を減弱させるのに十分であった。試験終了時の呼吸数は、試験終了時に追加のナロキソンを必要としなかった3匹のAGMについて、毎分15~20呼吸(bpm)であった。残りの5匹のAGMは、2回目のナロキソン用量を必要とした)。1匹のAGMは、ナロキソンの初回用量後も無呼吸状態のままであったため2回目のナロキソン用量を必要とし、これは初回治療から3分以内に投与した。2回目の用量を超える追加のナロキソンは不要であった。他の4匹は、約12bpm又はそれ未満の浅く不規則な呼吸で失調性であった。対照的に、200mg/kgの化合物Aを投与したAGMのいずれも、一日の終わりに追加のナロキソン用量を必要とせず、14bpmの一定速度であった1匹のAGMを除いて、一日の終わりに呼吸数はほぼ正常(16~24bpm)であった。200mg/kg群では、ナロキソンの初回用量に応答しなかったAGMは1匹のみであり、これには3分後に別の用量を投与した。
【0157】
【表4】
【0158】
曝露後に100mg/kgの化合物Aを投与されたAGM(6/8)の大部分は、一日の終わりまでに、毎日のおやつ及び/又はビスケットの一部又は全部を消費した。残りのAGMは各々、毎日のビスケット配当割り当ての39%を残した。ビスケット廃棄(22%)は、200mg/kgの化合物Aで治療した場合、8匹のAGMのうち1匹のみで明らかであった。対照的に、カルフェンタニルに曝露させ、ナロキソンで治療したほとんどのAGMは、食物への関心はほとんど示さない。以前の試験では、15μg/kgのカルフェンタニルに曝露させ、ナロキソンで治療した雄のAGM5匹中4匹が、割り当てられたビスケットの50%以上を残した。
【0159】
安全性評価では、化合物Aと、化合物A及びナロキソンの組み合わせとの両方が、全ての試験対象により忍容性良好であった。
【0160】
実施例2:フェンタニル誘導性呼吸抑制のための化合物Aを使用した用量依存的治療
この試験では、30匹のラットにフェンタニルを投与し、フェンタニル注入開始の約12~15分後に化合物Aを筋肉内投与した。12~15分で、分時換気量(フェンタニル投与前のベースラインからの割合)は、ベースラインよりも有意に低かった(*:p<0.001)。化合物A治療の投薬スキームにおいて、各投薬スキームにより、先行するより低い用量の化合物Aと比較して、分時換気の有意な改善が得られた(#:p<0.001)(図2)。
【0161】
実施例3:カルフェンタニル及びメタンフェタミン中毒の化合物A治療の評価
アフリカミドリザル(AGM)を、15μg/kg(sc)のカルフェンタニル及びメタンフェタミンに曝露させ、ナロキソン及び化合物Aを投与する。例えば、ナロキソン(355.12μg/kg、im)は、姿勢が乱れるか又は毎分の呼吸数(bpm)が10回未満になるときに投与し、その直後に化合物A(100又は200mg/kg、im)を投与する。呼吸数が10bpm以下であるか、又は呼吸の質が低下する場合、ナロキソンの2回目の用量(355.12μg/kg、im)を約3分以内に投与する。
【0162】
例えば、化合物A(100mg/kg又は200mg/kg)及びナロキソンによる初回治療は、カルフェンタニル/メタンフェタミン誘導性呼吸抑制を減弱させるのに十分であり得る。姿勢の乱れ又は呼吸数抑制が観察される場合、別用量のナロキソンを投与する。姿勢の乱れ又は呼吸数抑制が観察されない場合には、ナロキソンをAGMに投与しない。加えて、食欲喪失をモニタリングし、治療後に食欲が回復するかどうかを決定する。
【0163】
実施例4:化合物A隔離化合物の腎クリアランスの決定
試験した化合物の化合物A隔離の有効性を決定することは、血流中の化合物の減少につながる。
【0164】
例えば、アフリカミドリザル(AGM)を、異なるオピオイド、覚醒剤、及び麻薬に曝露させる。ナロキソン(355.12μg/kg、im)を、姿勢が乱れるか又は毎分の呼吸数(bpm)が10回未満になるときに投与し、その直後に化合物A(100又は200mg/kg、im)を投与する。呼吸数が10bpm以下であるか、又は呼吸の質が低下する場合、ナロキソンの2回目の用量(355.12μg/kg、im)を約3分以内に投与する。治療過程中、及び治療後、尿を収集して分析し、増加した化合物A結合化合物が排泄されるかどうかを決定する。
【0165】
実施例5:化合物A及びナロキソンの同時製剤を使用する用量依存的治療
Sprague-Dawleyラットに、20μg/kgのカルフェンタニルvi IVを投与し、直後に、IM注射を介して化合物A(400mg/kg)及びナロキソン(0.5mg/kg)の同時製剤を投与した。
【0166】
化合物A及びナロキソンの同時製剤は、適切な量のナロキソン及び化合物Aを計量し、所望される体積の注射用水(WFI)の90%に溶解させることによって調製した。1分間、又は透明な溶液が得られるまでボルテックスする。必要に応じてpHを7~8に調整する。WFIを最終体積まで必要なだけ加える。
【0167】
化合物A及びナロキソンの同時製剤は、血漿中のカルフェンタニルを急速に隔離し、生理食塩水対照を与えたラットのカルフェンタニルのレベルと比較して、同時製剤を与えたラットの血漿中のカルフェンタニルのレベルを有意に低下させた。
【0168】
図3は、カルフェンタニル(IV、20μg/kg)、その直後に生理食塩水対照又は製剤(IM、400mg/kgの化合物A及び0.5mg/kgのナロキソン)のいずれかを投与した後120分でのカルフェンタニルの尿中濃度を示す。本製剤で治療した動物は、カルフェンタニルの尿へのクリアランスが生理食塩水対照と比べて約5倍増加したことを示す。エラーバーは、各群の最大値及び最小値を示す。
【0169】
加えて、同時製剤は、生理食塩水の60分に対して14分で正向反射の消失(LORR)を逆転させる。更に、同時製剤は5分で呼吸を回復させる。以下の表5は、20ug/kgのカルフェンタニル、その直後の400mg/kg化合物A及び0.5mg/kgナロキソンの同時製剤後の毎分呼吸を示す。
【0170】
【表5】
【0171】
毎分呼吸は、製剤投与後のラットの高画質映像から胸部の収縮を手作業で計数することに基づいて計算した。
【0172】
ヒト等量(HED)に変換した0.5mg/kgのナロキソンは、70kgのヒトについて0.081mg/kg又は5.6mgであることに留意されたい。
【0173】
カルフェンタニルは合成オピオイドであり、モルヒネの約10,000倍、フェンタニルの約100倍強力である。ヒトにおけるフェンタニルの推定致死量は2mgである。オピオイド受容体拮抗薬の欠点は、初回治療後に被麻薬状態再発が起こり、それによって反復投与が必要となることである。CDC並びに他の連邦及び州当局からの長年にわたる助言は、他のオピオイドと比べて増加したフェンタニルの効力に起因して、過剰摂取事象1件につき複数用量のナロキソンを投与する必要があり得ると警告している。
【0174】
本開示の組み合わせ及び方法は、(フェンタニル中毒の治療に必要とされる量よりも)かなり多量のナロキソンを必要とせずに、また被麻薬状態再発を防止するためにナロキソンを反復投与する必要なく、カルフェンタニル中毒の治療的に有効な処置を提供するものである。このため、これらの結果は、(1)本明細書に記載の隔離剤(例えば、化合物A)が、毒物(例えば、カルフェンタニルなどのオピオイド)を迅速に隔離及び除去することができること、及び(2)CNS活性剤(例えば、ナロキソン)が、複数回投与を必要とせずに、オピオイド受容体に結合して毒物を置き換えるのに有効であったことを示す。
【0175】
本明細書に記載のデータは、化合物A及びナロキソンを投与する記載の方法が、実施例1のように、又は実施例5のように同時製剤中で投与されたときに、呼吸を迅速に回復させ、LORRを逆転させ、血漿中のオピオイドのレベルを減少させ、尿へのオピオイドのクリアランスを増加させ、被麻薬状態再発を減少させることを示す。これは、幅広いCNS活性剤及び幅広い同時製剤比にわたって有効である。
【0176】
実施例6:ナロキソン及び化合物Aの同時製剤
化合物A及びナロキソンの試料を、DO中、それぞれ、1:0、0:1、0.5:1、0.75:1、1:1、1:1.05、1:1.10、1:1.2、及び1:1.35のモル比で調製した。これらの試料のH NMRスペクトルの分析(図4)により、化合物Aがナロキソンに結合していることが示される。まず、化合物Aの芳香族プロトンに対応する一重項は、ナロキソンを加えると非対称になる(スペクトルC、D)。加えて、いくつかの重大な化学シフトの変化が起こる。δ 5.09(スペクトルB)でのナロキソン一重項は、化合物Aを加えると見えなくなり(スペクトルC及びD)、水シグナルによって遮蔽され得る高磁場にシフトした可能性が高い。同様に、ナロキソンのビニルプロトンからの信号(δ 5.96、5.68)は、化合物Aを加えた後にシフトし、結合が生じたことを示す。化合物Aとナロキソンと比が1:1に達した後で化合物Aを更に加えても、得られたNMRスペクトルに有意な変化は生じず、これは、H NMRを使用してはこの時点を超えて結合の有意な変化が観察されないことを示す。
【0177】
実施形態
実施形態1.ヒトにおいて、少なくとも1つの乱用薬物の使用に起因する、中毒、過剰摂取、又はその症状を治療するための医薬組成物であって、
i)隔離剤又はその薬学的に許容される塩と、
ii)中枢神経系(CNS)活性剤又はその薬学的に許容される塩と、
iii)薬学的に許容される賦形剤と、を含み、
隔離剤が、環式又は非環式のククルビットウリル又はピラーアレーンから選択される、医薬組成物。
【0178】
実施形態2.少なくとも1つの乱用薬物の使用に起因する中毒又はその症状を治療するための医薬組成物であって、
i)少なくとも1つの毒物を隔離するのに充分な量の隔離剤又はその薬学的に許容される塩と、
ii)中枢神経系(CNS)活性剤又はその薬学的に許容される塩と、
隔離剤が、ククルビットウリル、ピラーアレーン、シクロデキストリン、又はカリックスアレーンから選択される、医薬組成物。
【0179】
実施形態3.少なくとも1つの乱用薬物の使用に起因する中毒又はその症状を治療するための医薬組成物であって、
i)少なくとも1つの毒物を隔離するのに充分な量の隔離剤又はその薬学的に許容される塩と、
ii)中枢神経系(CNS)活性剤又はその薬学的に許容される塩と、を含む、医薬組成物。
【0180】
実施形態4.隔離剤及びCNS活性剤が、同じ製剤中にある、実施形態1~3のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0181】
実施形態5.隔離剤及びCNS活性剤が、異なる製剤中にある、実施形態1~3のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0182】
実施形態6.CNS活性剤が、ナロキソン、ペンタゾシン、ナルブフィン、ジプレノルフィン、メチルナルトレキソン、ナロキセゴール、アルビモパン、ナルトレキソン、ナルメフェン、及びブプレノルフィン、又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、実施形態1~5のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0183】
実施形態7.前記CNS活性剤がナロキソンである、実施形態6に記載の医薬組成物。
【0184】
実施形態8.隔離剤が、環式又は非環式ククルビットウリルである、実施形態1~7に記載の医薬組成物。
【0185】
実施形態9.ククルビットウリルが、化合物A又はその任意の誘導体であり、化合物Aが、以下の構造を含む、実施形態8に記載の医薬組成物。
【0186】
【化8】
【0187】
実施形態10.化合物A又はその薬学的に許容される塩が、約10mg/kg~300mg/kgで存在する、実施形態9に記載の医薬組成物。
【0188】
実施形態11.ナロキソン又はその薬学的に許容される塩が、約100~400μg/kgで存在する、実施形態7又は8に記載の医薬組成物。
【0189】
実施形態12.隔離剤が、少なくとも約1×10-1、×10-1、1×10-1、又は1×10-1のKでオピオイドに結合する、実施形態1~9のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0190】
実施形態13.隔離剤が、少なくとも約1×10-1、1×10-1、1×10-1、又は1×10-1のKで覚醒剤に結合する、実施形態1~9のいずれか1つに記載の組成物。
【0191】
実施形態14.オピオイドが、フェンタニル、フェンタニル類似体、カルフェンタニル、アセチルフェンタニル、アルフェンタニル、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、実施形態12に記載の医薬組成物。
【0192】
実施形態15.覚醒剤が、アンフェタミン、メタンフェタミン、ライタリン、フェンシクリジン、コカイン、MDMA、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、実施形態13に記載の医薬組成物。
【0193】
実施形態16.ヒトにおけるオピオイドの過剰摂取の疑い又はその症状を治療する方法であって、本方法が、
治療有効量の中枢神経系(CNS)活性剤と同時投与される治療有効量の隔離剤を投与することを含み、投与が、オピオイドの過剰摂取の疑いの治療を、それを必要とするヒトにおいて行うために有効である、方法。
【0194】
実施形態17.オピオイドが、フェンタニル、フェンタニル類似体、カルフェンタニル、ヘロイン、モルヒネ、アセチルフェンタニル、アルフェンタニル、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、実施形態16に記載の方法。
【0195】
実施形態18.ヒトにおける乱用薬物の中毒又はその症状を治療する方法であって、本方法が、
治療有効量の隔離剤を治療有効量の中枢神経系(CNS)活性剤と同時投与することを含み、投与が、覚醒剤の過剰摂取又はその症状の治療を、それを必要とするヒトにおいて行うために有効である、方法。
【0196】
実施形態19.覚醒剤が、アンフェタミン、メタンフェタミン、リタリン、コカイン、カフェイン、フェンシクリジン、MDMA、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、実施形態18に記載の方法。
【0197】
実施形態20.治療有効量の隔離剤を、治療有効量の中枢神経系(CNS)活性剤と同時投与することを含む、対象における過剰摂取の疑い又はその症状を治療する方法であって、対象は、複数の乱用薬物からの過剰摂取が疑われる、方法。
【0198】
実施形態21.複数の薬物が、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つの乱用薬物を含む、実施形態20に記載の方法。
【0199】
実施形態22.乱用薬物が、オピオイド又は覚醒剤を含む、実施形態20~21に記載の方法。
【0200】
実施形態23.オピオイドが、フェンタニル、カルフェンタニル、フェンタニル類似体、フェンタニル誘導体、ヘロイン、モルヒネ、アセチルフェンタニル、アルフェンタニル、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、覚醒剤が、アンフェタミン、メタンフェタミン、リタリン、フェンシクリジン、コカイン、及びMDMAからなる群から選択される、実施形態22に記載の方法。
【0201】
実施形態24.隔離剤が、CNS活性剤の前に投与される、実施形態16~23のいずれか1つに記載の方法。
【0202】
実施形態25.隔離剤が、CNS活性剤の後に投与される、実施形態16~23のいずれか1つに記載の方法。
【0203】
実施形態26.CNS活性剤が、隔離剤の5分、4分、3分、2分、又は1分未満の後に投与される、実施形態16~25に記載の方法。
【0204】
実施形態27.隔離剤が、CNS活性剤の5分、4分、3分、2分、又は1分未満の後に投与される、実施形態16~25に記載の方法。
【0205】
実施形態28.CNS活性剤の投与を更に含む、実施形態16~27のいずれか1つに記載の方法。
【0206】
実施形態29.方法が、筋肉内、鼻腔内、舌下、口腔、又は静脈内に施される、実施形態16~28のいずれか1つに記載の方法。
【0207】
実施形態30.対象がヒトである、実施形態16~29のいずれか1つに記載の方法。
【0208】
実施形態31.対象をモニタリングして、CNS活性剤の後続投与が必要かどうかを決定することを更に含む、実施形態30に記載の方法。
【0209】
実施形態32.モニタリングが、対象を、異常な心拍数、呼吸数、食欲、認知能力、又はそれらの任意の組み合わせについて測定することを含む、実施形態31に記載の方法。
【0210】
実施形態33.モニタリング後のナロキソンの投与を更に含む、実施形態32に記載の方法。
【0211】
実施形態34.方法により、オピオイドの過剰摂取、覚醒剤の過剰摂取、又はその症状の軽減が得られる、実施形態1~33のいずれか1つに記載の方法。
【0212】
実施形態35.オピオイドの過剰摂取、覚醒剤の過剰摂取の軽減が、正常な呼吸数の回復を含む、実施形態34に記載の方法。
【0213】
実施形態36.正常な呼吸数が、少なくとも毎分約15~20呼吸を含む、実施形態35に記載の方法。
【0214】
実施形態37.麻薬中毒の軽減が、食欲の回復を含む、実施形態34に記載の方法。
【0215】
実施形態38.麻薬中毒の軽減により、被麻薬状態再発が防止される、実施形態34に記載の方法。
【0216】
実施形態39.隔離剤又はその薬学的に許容される塩が、約10mg/kg~300mg/kgで投与される、実施形態16~38のいずれか1つに記載の方法。
【0217】
実施形態40.CNS活性剤又はその薬学的に許容される塩が、約100~400μg/kgで投与される、実施形態16~39のいずれか1つに記載の方法。
【0218】
実施形態41.隔離剤が、化合物A又はその任意の誘導体を含む、実施形態16~40のいずれか1つに記載の方法。
【0219】
実施形態42.CNS活性剤が、ナロキソン又はその薬学的に許容される塩を含む、実施形態16~41のいずれか1つに記載の方法。
【0220】
実施形態43.CNS活性剤の投与を更に含む、実施形態16~42のいずれか1つに記載の方法。
【0221】
実施形態44.CNS活性剤の投与が、8時間にわたる少なくとも約1、2、3、又は4回用量で構成される、実施形態43に記載の方法。
【0222】
実施形態45.CNS活性剤の投与が、8時間にわたる少なくとも約4mg、8mg、12mg、又は16mgで構成される、実施形態43に記載の方法。
【0223】
実施形態46.組成物を含むキットであって、組成物が、
i)治療有効量の中枢神経系(CNS)活性剤、
ii)治療有効量の隔離剤、を含み、
キットが、組成物を、それを必要とする対象に投与するための指示を提供する、キット。
【0224】
実施形態47.隔離剤及びCNS活性剤が、同じ製剤中にある、実施形態46に記載のキット。
【0225】
実施形態48.隔離剤及びCNS活性剤が、異なる製剤中にある、実施形態[0217]に記載のキット。
【0226】
実施形態49.隔離剤又はその薬学的に許容される塩が、約10mg/kg~300mg/kgで、それを必要とする対象に投与される、実施形態46~48のいずれか1つに記載のキット。
【0227】
実施形態50.隔離剤が、化合物A又はその任意の誘導体である、実施形態49に記載のキット。
【0228】
実施形態51.CNS活性剤又はその薬学的に許容される塩が、約100~400μg/kgで、それを必要とする対象に投与される、実施形態46~48のいずれか1つに記載のキット。
【0229】
実施形態52.前記CNS活性剤がナロキソンである、実施形態51に記載のキット。
【0230】
実施形態53.対象がヒトである、実施形態46に記載のキット。
【0231】
実施形態54.対象においてオピオイドの過剰摂取の疑いを治療する方法であって、本方法が、隔離剤を中枢神経系(CNS)活性剤と同時投与することを含み、CNS活性剤が、隔離剤の5分未満の後に投与される、方法。
【0232】
実施形態55.CNS活性剤の投与を更に含む、実施形態54に記載の方法。
【0233】
実施形態56.隔離剤又はその薬学的に許容される塩が、約10mg/kg~300mg/kgで投与される、実施形態54~55のいずれか1つに記載の方法。
【0234】
実施形態57.CNS活性剤又はその薬学的に許容される塩が、約100~400μg/kgで投与される、実施形態54~56のいずれか1つに記載の方法。
【0235】
実施形態58.隔離剤が、化合物A又はその任意の誘導体を含む、実施形態54~57のいずれか1つに記載の方法。
【0236】
実施形態59.CNS活性剤が、ナロキソン又はその薬学的に許容される塩を含む、実施形態54~58のいずれか1つに記載の方法。
【0237】
本開示の好ましい実施形態を本明細書に示し、説明してきたが、かかる実施形態が単に例として提供されることは、当業者には明らかであろう。この時点で、当業者には、本開示から逸脱することなく、多数の変形、変化、及び代置が想起されるであろう。本明細書に記載された本開示の実施形態に対する様々な代替手段が、本開示の実施に用いられてもよいことが理解される。以下の特許請求の範囲が本開示の範囲を定義すること、並びにこれらの特許請求の範囲内の方法及び構造と、それらの等価物とがそれによって包含されることが意図される。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】