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特表2024-506863熱交換器用のロックストリップおよびその製作方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-15
(54)【発明の名称】熱交換器用のロックストリップおよびその製作方法
(51)【国際特許分類】
   F28F 3/10 20060101AFI20240207BHJP
   F28F 3/00 20060101ALI20240207BHJP
   F28D 9/02 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
F28F3/10
F28F3/00 311
F28D9/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547069
(86)(22)【出願日】2022-02-01
(85)【翻訳文提出日】2023-09-29
(86)【国際出願番号】 US2022014696
(87)【国際公開番号】W WO2022169746
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】17/165,381
(32)【優先日】2021-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515234211
【氏名又は名称】エスピーエックス フロウ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100128428
【弁理士】
【氏名又は名称】田巻 文孝
(72)【発明者】
【氏名】ショー ジョナサン グラハム
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA13
(57)【要約】
改良型漏洩防止策付き熱交換器が第1の熱交換プレート、第2の熱交換プレート、第1の熱交換プレートと第2の熱交換プレートとの間に設けられたガスケット、ならびに第1の熱交換プレートおよび第2の熱交換プレートの複数回の熱膨張・収縮サイクルにわたり第1の熱交換プレートと第2の熱交換プレートのアラインメントを維持するよう構成されたロックストリップを有するのがよい。ロックストリップは、第1の熱交換プレートおよび/または第2の熱交換プレートの突出部に係合してその位置を第1の熱交換プレートおよび第2の熱交換プレートの複数回の熱膨張・収縮サイクルにわたって確保するための少なくとも1つの突出部を有するのがよい。ロックストリップは、プレート式熱交換器のプレートパックを構成する1枚または多数枚のプレートに取り付けられるのがよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
改良型漏洩防止策付き熱交換器であって、
第1の流体通路および第2の流体通路を備えた第1の熱交換プレートと、
第1の流体通路および第2の流体通路を備えた第2の熱交換プレートと、
前記第1の熱交換プレートと前記第2の熱交換プレートとの間に配置されていて、前記第1の流体通路を前記第2通路から分離するよう構成されたガスケットと、
前記第1の熱交換プレートと前記第2の熱交換プレートとの間に配置されていて、前記第1および前記第2の熱交換プレートの複数回の熱膨張・収縮サイクルにわたり前記第1の熱交換プレートと前記第2の熱交換プレートのアラインメントを維持するよう構成されたロックストリップとを有する、熱交換器。
【請求項2】
前記ロックストリップは、前記第1の熱交換プレートの第1の突出部と係合するよう構成された第1の突出部と、前記第2の熱交換プレートに設けられた第1の凹部と嵌合するよう構成された第2の突出部とを有する、請求項1記載の熱交換器。
【請求項3】
前記ロックストリップは、前記第1の熱交換プレートの第2の突出部と係合するよう構成された第3の突出部と、前記第2の熱交換プレートに設けられた第2の凹部と嵌合するよう構成された第4の突出部とを有する、請求項2記載の熱交換器。
【請求項4】
前記ロックストリップは、前記第1の熱交換プレートの突出部を包囲するよう構成されている、請求項2記載の熱交換器。
【請求項5】
複数のロックストリップが前記第1の熱交換プレートと前記第2の熱交換プレートの間に配置されている、請求項1記載の熱交換器。
【請求項6】
前記第1の熱交換プレートおよび前記第2の熱交換プレートは、熱交換プレートパックを構成し、ロックストリップが前記熱交換プレートパック中の前記熱交換プレート内に介在して設けられている、請求項1記載の熱交換器。
【請求項7】
複数のロックストリップが前記熱交換プレートパック中の最初の2枚のプレートと前記熱交換プレートパック中の最後の2枚のプレートとの間に取り付けられている、請求項6記載の熱交換器。
【請求項8】
複数のロックストリップが前記熱交換プレートパック中の最初の3枚のプレートと前記熱交換プレートパック中の最後の3枚のプレートとの間に取り付けられている、請求項7記載の熱交換器。
【請求項9】
前記ロックストリップは、弾性材料で作られている、請求項1記載の熱交換器。
【請求項10】
前記ロックストリップは、EPDM(エチレンプロピレンジエンモノマー)ゴムで作られている、請求項9記載の熱交換器。
【請求項11】
第1のエンドプレートと、
第2のエンドプレートと、
前記第1のエンドプレートおよび前記第2のエンドプレートに連結されていて、前記第1の熱交換プレートおよび前記第2の熱交換プレートを圧縮するよう構成された少なくとも1つの締め付け部材とをさらに有する、請求項1記載の熱交換器。
【請求項12】
熱交換プレートのアラインメントを維持するロックストリップであって、
第1の熱交換プレートの第1の突出部と係合するよう構成された第1の突出部と、
第2の熱交換プレートの第1の凹部と嵌合するよう構成された第2の突出部と、
前記第1の熱交換プレートの凹部を包囲するよう構成されたフック状領域とを有する、ロックストリップ。
【請求項13】
第1の熱交換プレートの第2の突出部と係合するよう構成された第3の突出部と、
第2の熱交換プレートの第2の凹部と嵌合するよう構成された第4の突出部と、
前記フック状領域は、前記第2の熱交換プレートの凹部を包囲するよう構成されている、請求項12記載のロックストリップ。
【請求項14】
改良型漏洩防止策付き熱交換器を製作する方法であって、
第1の熱交換プレートを準備するステップと、
少なくとも1つの熱伝達媒体入口および少なくとも1つの熱伝達媒体出口を穴あけ形成するステップと、
前記第1の熱交換プレートの縁部を押してプレス加工して突出部および凹部を形成するステップと、
第1の流体通路と第2の流体通路を分離するようガスケットを配置するステップと、
ロックストリップを前記第1の熱交換プレートの少なくとも1つの縁部に取り付けて前記ロックストリップの突出部が前記第1の熱交換プレートの前記凹部と嵌合するとともに、フック状領域が前記第1の熱交換プレートの前記突出部を包囲するようにするステップとを含む、改良型漏洩防止策付き熱交換器の製作方法。
【請求項15】
第2の熱交換プレートを準備するステップと、
少なくとも1つの熱伝達媒体入口および少なくとも1つの熱伝達媒体出口を穴あけ形成するステップと、
前記第2の熱交換プレートの縁部を押してプレス加工して突出部および凹部を形成するステップと、
前記第2の熱交換プレートを前記第1の熱交換プレート上に配置して前記ロックストリップの前記突出部が前記第2の熱交換プレートの前記凹部と嵌合するとともに、前記フック状領域が前記第2の熱交換プレートの前記突出部を包囲するようにするステップとをさらに含む、請求項14記載の改良型漏洩防止策付き熱交換器の製作方法。
【請求項16】
第1のエンドプレートおよび第2のエンドプレートを準備するステップと、
2枚の前記熱交換プレートを前記第1のエンドプレートと前記第2のエンドプレートとの間に配置するステップとをさらに含む、請求項15記載の改良型漏洩防止策付き熱交換器の製作方法。
【請求項17】
締め付け部材を前記第1のエンドプレートと前記第2のエンドプレートに連結するステップと、
前記締め付け部材を締め付けることによって前記熱交換プレートに垂直な力を加えるステップとをさらに含む、請求項16記載の改良型漏洩防止策付き熱交換器の製作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示(本発明)は、一般に、プレート式熱交換器用のロックストリップに関する。特に、本発明は、熱交換プレートからの漏れ防止作用を強化するためのロックストリップに関する。
【背景技術】
【0002】
プレート式熱交換器は、熱伝達媒体相互間で効率的な熱伝達を可能にすることが知られている。熱交換プレートのパックがポート部分を有するのがよく、熱交換プレートは、エラストマーガスケットシールにより隣の熱交換プレートに連結され、その結果、相互連結流体伝達ポートが隣り合う熱交換プレート相互間に作られるようになっている。ポート部分により、第1の熱伝達媒体が熱交換プレート相互間の1つ置きの流体通路中に流れてこれと連通することができ、また、第2の熱伝達媒体が熱交換プレート相互間の残りの流路中に流れてこれらと連通することができる。
【0003】
エラストマーガスケット封止型熱交換器に関する1つの欠点は、エラストマーシールを働かせるためには、ガスケットを圧縮する必要があると言うことである。
【0004】
ガスケットシールを圧縮して隣り合うプレート間接触を維持するためには、ヘッドおよびフォロアと呼ばれる場合のある2つの外側フレームが熱交換プレートを結合状態に保つために設けられる場合がある。ガスケットは、熱伝達媒体流れ通路を形成するよう熱交換プレート相互間に配置されるのがよい。熱交換プレートは、これらの表面上に設けられた溝を実際に有する場合があり、その結果、ガスケットは、ガスケットの動きを阻止するようこれら溝内に嵌まり込むことができるようになっている。熱交換プレートは、ガスケットシールを形成するのに十分な力でヘッドとフォロアを押圧することによって互いに押し付けられるのがよく、熱伝達媒体は、高圧で動作される場合がある。
【0005】
この構成では、熱交換器は、種々の熱交換需要を効果的に応えるため、例えば、温度管理を改善すること、プレートの枚数を変化させて増やすこと、流路をストリーミングし直しまたは再配置して圧力降下または減少を良好に管理して維持費を軽減することを行うために汎用性や融通性を有するのがよい。
【0006】
しかしながら、ガスケットを備えたプレート式熱交換器にはさらに、種々の欠点がある。ガスケットを用いた熱交換器の欠点のうちの1つは、漏洩の可能性があることである。熱伝達媒体は、熱を別の熱伝達媒体に伝達するためにヘッドかフォロアかのいずれかから高温の状態で入口ポートに入れられる場合がある。始動時、この高温媒体は、低温の熱交換器に入り、そしてこの高温媒体がプレートチャネルを通って流れているときに熱交換プレートを急速に昇温させる。全てのプレートが同時に加熱されるわけではなく、温度が極めて不均一である期間が存在する。これは、包囲しているフレーム部材、ヘッドプレートおよびフォロアプレートと直接的な機械的および熱的接触関係にあるエンドプレートについて特に当てはまる。フレーム部材に隣接して位置する最初で最後の流体通路は、一方の側だけから熱を受け取り、これに対し、他の全てのチャネルは、2つの通路を側部を介して熱を受け取りまたは失う。このことは、定常動作状態下にあっても、これらエンドプレートがプレートパック内の他のプレートとは異なる温度プロフィール(分布状態)で動作することを意味している。非定常状態またはサイクル動作や入口温度または流量の変化は、プレートパック内のプレート相互間の常時変化する熱膨張量を生じさせる場合があり、したがって、温度のこの不均一性は、始動時または動作停止状態には限定されない。
【0007】
材料の温度が増大するにつれて材料が膨張することは周知である。熱伝達媒体が入口ポート中に入れられて温度を上げる場合、熱交換プレートおよび熱交換プレート相互間のガスケットは、温度の変化に正比例した量、膨張することになる。温度変化は、常に一定であるわけではないので、プレートは、同一のプレートパック内において互いに異なる量、膨張する場合がある。何割かの熱交換プレートおよびガスケットは、膨張に起因して寸法変化をするので、これらの間のシールは、プレート相互間に生じる相対変位によって損なわれる場合がある。隣り合うプレートの相対運動が、ガスケット封止面が対応する相手方プレートともはやアラインメントが取られていないようなものである場合、これにより漏洩が生じることになる。
【0008】
熱交換器には2種類の漏洩の仕方が存在する場合がある。一方は、熱伝達媒体が大気中に漏れ出る外部への漏れである。これは、目で見て検出して修正できるが、熱交換器の使用を中止し、そして修理を行うよう開く必要がある。他方の形式は、熱伝達媒体の内部漏洩または混じり合いである。同時外部漏洩のない内部漏洩は、ガスケットシールの消失やプレート間運動によっては生じる恐れがない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、プレート式熱交換器が隣り合う熱交換プレート相互間の相対プレート運動を減少させるとともに制限することによって、熱交換プレート相互間の改良型漏洩防止方式を備えることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一観点は、改良型漏洩防止策付き熱交換器であって、第1の流体通路および第2の流体通路を備えた第1の熱交換プレートと、第1の流体通路および第2の流体通路を備えた第2の熱交換プレートと、第1の熱交換プレートと第2の熱交換プレートとの間に配置されていて、第1の流体通路を第2通路から分離するよう構成されたガスケットと、第1の熱交換プレートと第2の熱交換プレートとの間に配置されていて、第1および第2の熱交換プレートの複数回の熱膨張・収縮サイクルにわたり第1の熱交換プレートと第2の熱交換プレートのアラインメントを維持するよう構成されたロックストリップとを有する、熱交換器に関する。
【0011】
本発明のもう1つの観点は、熱交換プレートのアラインメントを維持するロックストリップであって、第1の熱交換プレートの第1の凹部と係合するよう構成された第1の突出部と、第2の熱交換プレートの第1の凹部と嵌合するよう構成された第2の突出部と、第1の熱交換プレートの突出部を包囲するよう構成されたフック状領域とを有することを特徴とするロックストリップに関する。
【0012】
本発明のさらにもう1つの観点は、改良型漏洩防止策付き熱交換器を製作する方法であって、第1の熱交換プレートを準備するステップと、少なくとも1つの熱伝達媒体入口および少なくとも1つの熱伝達媒体出口を穴あけ形成するステップと、第1の熱交換プレートの縁部を押してプレス加工して突出部および凹部を形成するステップと、第1の流体通路と第2の流体通路を分離するようガスケットを配置するステップと、ロックストリップを第1の熱交換プレートの少なくとも1つの縁部に取り付けてロックストリップの突出部が第1の熱交換プレートの凹部と嵌合するとともに、フック状領域が第1の熱交換プレートの突出部を包囲するようにするステップとを含むことを特徴とする改良型漏洩防止策付き熱交換器の製作方法に関する。
【0013】
かくして、本明細書における本発明の詳細な説明を良好に理解するとともに当該技術分野に対する本発明の貢献を良好に理解することができるようにするために、本発明のある特定の観点をかなり概要的に説明した。当然のことながら、以下において説明し、そして本明細書に添付した特許請求の範囲に記載された内容をなす本発明の追加の観点が存在する。
【0014】
この点に関し、本発明の少なくとも1つの観点を詳細に説明する前に、本発明は、その用途が以下の説明に記載されまたは図面に示されたコンポーネントの構成の細部および配置には限定されないことが理解されるべきである。本発明は、説明した観点に加えて種々の観点が可能でありかつ種々の仕方で具体化されて実施できる。また、理解されるべきこととして、本明細書において採用する語句および用語ならびに要約書の記載は、説明の目的上のものであって、本発明を限定するものと解されるべきではない。
【0015】
したがって、当業者であれば理解されるように、本発明の基盤となる技術的思想は、本発明の幾つかの目的を達成するための他の構造、他の方法および他のシステムの設計のための基礎として容易に利用できる。したがって、請求項の内容が本発明の精神および範囲から逸脱しない限り、請求項をかかる均等な構成を含むものとして理解することが重要である。
【0016】
上記発明の概要ならびに本発明の以下の詳細な説明は、添付の図と関連して読まれるときに良好に理解される。本発明を説明する目的上、図は、本発明の実施形態を示している。しかしながら、理解されるべきこととして、本発明は、図示の構成、実施例、および機器構成そのものには限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一観点に従って、ガスケットを用いる熱交換器の側面図である。
図2】本発明の一観点に従って、ガスケットパターンを備えた熱交換プレートを簡単に示す図であり、カステレーション(castellation:凹凸の繰り返しパターンから成る構造)と呼ばれるプレートの2つの外縁に沿って設けられた隆起突出部・凹部構造を示す平面図である。
図3】本発明の一観点に従って、ちょうど5枚のプレートから成る熱交換プレートパックの分解組立図である。
図4】本発明の一観点に従って、熱交換パック内の2つの隣り合うプレート上に設けられたプレート・ガスケット・ロックストリップ組立体の分解組立図である。
図5】本発明の一観点に従って、リヤプレート表面上に設けられた例示のロックストリップの斜視図である。
図6】本発明の一観点によるロックストリップ前面と後面の斜視図である。
図7】本発明の一観点に従って、正確にアラインメントが取られた2枚の隣り合うプレート相互間に配置されているロックストリップの断面図である。
図8】本発明の一観点に従って、長軸に沿ってアラインメントを不良状態の2枚のプレート相互間に配置されたロックストリップの断面図である。
図9】本発明の一観点としての改良型漏洩防止策を備えた熱交換プレートを製作する方法を示す図である。
図10】本発明のもう1つの観点による改良型漏洩防止策を備えた熱交換プレートを製作する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の上記目的、特徴、および利点ならびに他の目的、特徴、および利点は、添付の図面と関連して以下の詳細な説明を読むと明らかになろう。
【0019】
以下において、本発明に従って、改良型漏洩防止策を備えた熱交換器、熱交換プレートのアラインメントを維持するロックストリップおよび改良型漏洩防止策を備えた熱交換器を製作する方法について添付の図面を参照して詳細に説明する。説明する観点は、当業者が本発明の技術的精神を容易に理解することができるよう提供されており、かくして、本発明は、これら観点には限定されることはない。加うるに、添付の図面は、本発明の諸観点を容易に理解するための概略的な図であり、かくして、添付の図面に記載されている内容は、実際に実施される内容とは異なっている場合がある。
【0020】
一方、以下に示す各コンポーネントは、本発明を具体化するための一例に過ぎない。したがって、他のコンポーネントは、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の他の具体化例で使用できる。
【0021】
加うるに、理解されるべきこととして、原文明細書において、ある特定の要素を“including”(訳文では「含む」としている場合が多い)という表現は、ある特定のコンポーネントを指示する「非限定的形式」の表現であり、追加のコンポーネントを排除するわけではない。
【0022】
本明細書において、「1つの観点」、「一観点」、「他の観点」、「1つ以上の観点」などと記載されている場合、かかる記載は、これら観点と関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が本発明の少なくとも1つの観点に含まれていることを意味している。例えば、本明細書における種々の場所で「1つの観点では」という語句がある場合、かかる語句は、必ずしも全てが同一の観点を意味しているとは限らず、別々のまたは択一的な観点が他の観点を相互に排除しているわけでもない。さらに、幾つかの観点によって示されている場合があるが、他の観点によっては示されていない場合のある特徴について説明する。同様に、幾つかの観点については構成要件である場合があるが、他の観点については構成要件でない場合のある種々の構成要件について説明する。
【0023】
図1は、本発明の一観点に従ってガスケットを用いる熱交換器の側面図である。
【0024】
図1では、改良型漏洩防止策を備えた熱交換器100が示されている。熱交換器100は、第1の熱交換プレート10および第2の熱交換プレート102を有するのがよい。第1の熱交換プレート10と第2の熱交換プレート102は、互いに間隔を置いた状態で後ろと前が向き合った(back-to-face)関係をなして配置されている。ガスケット20が第1の熱交換プレート10と第2の熱交換プレート102との間に配置されるのがよい。第1の熱交換プレート10と第2の熱交換プレート102を1対として多数回にわたって繰り返し配置してプレートパック30を構成するのがよい。熱交換プレートパックの長さは、1インチ(2.54cm)未満から数メートルまでの場合がある。
【0025】
熱交換プレートパック30は、第1のエンドプレート42(「ヘッド」とも呼ばれる)と第2の可動エンドプレート40(「フォロア」とも呼ばれる)との間に配置されるのがよい。第1のエンドプレート42は、第1の入口50が左上の側部のところに位置し、第2の入口54(第1の出口56の後ろに隠れている)が右下の側部のところに位置した状態で、配置されるのがよい。また、第1のエンドプレート42は、第1の出口56が左下側部のところに位置し、第2の出口52(第1の入口50の後ろに隠れている)が右上側部のところに位置した状態で、配置されるのがよい。第1の入口50、第2の入口54、第1の出口56、および第2の出口52は、熱伝達媒体が第1のエンドプレート42を通ってプレートパック中に流れることができるようにするよう構成されているのがよい。熱交換プレートパック30内では、第2の熱交換プレート102の前面は、第1のエンドプレート42の方へ向き、第1の熱交換プレート10の後面は、第2のエンドプレート40に向いている。
【0026】
熱伝達媒体の流れからの漏洩を防止するため、第2のエンドプレート40と第1のエンドプレート42は、これらの間にガスケットシールを形成し、そして一定のプレート間接触状態を維持するのに十分な力で互いに押し付けるのがよい。第1のエンドプレート42と第2のエンドプレート40は、締め付け部材60により連結されるのがよい。締め付け部材60は、当業者には知られている任意の締め付け部材を含むのがよい。一例を挙げると、締め付け部材60は、ボルトとナット、または「タイバー」を含むのがよく、その結果、締め付け部材60のボルトを回すことによって、第1のエンドプレート42と第2のエンドプレート40を押し付けることができるようになっている。第1のエンドプレート42と第2のエンドプレート40は、2つ以上の締め付け部材60により連結されてもよい。締め付け部材によって、第2のエンドプレート40は、第1のエンドプレート42に近づくようになり、それにより、プレートパック30中の全てのコンポーネントが圧縮状態になる。
【0027】
図2は、本発明の一観点に従って、例示のガスケットパターンを備えた熱交換プレートの平面図である。このプレートは、プレートの2つの外縁に沿って隆起した突出部と凹部から成る「カステレーション(castellation:凹凸の繰り返しパターンから成る構造)」を示している。
【0028】
図2では、例示のガスケットパターンを備えた熱交換プレートが示されている。一例を挙げると、第1の熱交換プレート10がここに示されている。第1の熱交換プレート10は、第1の熱伝達媒体入口12および第2の熱伝達媒体出口16を備えた状態で構成されるのがよい。第1の熱伝達媒体は、第1の熱交換プレート10の前面を横切って流れる。第1の熱交換プレート10はまた、第2の熱伝達媒体入口18および第2の熱伝達媒体出口14を備えた状態で構成されるのがよく、この入口と出口により、第2の熱伝達媒体は、第1の熱交換プレート10の後側の面に沿って流れることができる。
【0029】
熱交換器100の目的は、熱伝導により金属プレートを介して熱を第1の熱伝達媒体から第2の熱伝達媒体に伝達しまたはこの逆の関係を実行することにある。プレートは、2つの媒体を分離した状態のままにする物理的バリヤを維持する。第1および第2の熱伝達媒体は、両方とも液体であってよいし、液体の1つの流れと蒸気の1つの流れであってもよいし、または蒸気の2つの流れであってもよい。場合によっては、一方または両方の流れは、液相と気相の混合状態を有するのがよい。
【0030】
プレートの熱伝達表面内にトラフパターン26がプレス加工されており、このトラフパターン26は、チャネルを通過した熱伝達媒体の乱流状態を増大させ、それにより熱伝達率を増大させるのに役立つ。ガスケット溝により包囲された外側領域周りに、熱伝達プレートは、ひとまとめに「カステレーション」25と呼ばれる交互に位置する突出部71と凹部70から成るプレス加工構造を有する。この図では、これらは、プレート10の長辺に沿って下方に示されているに過ぎないが、実際には、プレート10の周囲全体にわたって延びるのがよい。本発明のこの観点では、パック中の熱伝達プレートは全て、同一のコンポーネントであるが、隣り合うプレートを180°回すことによって、パック内で交互に位置する。
【0031】
隣り合うプレートは全て、互いに交差するとともに当接するトラフを有し、それによりプレート相互間に生じる流体通路チャネル形隙間を維持する剛性構造体が形成される。同様な仕方で、外側カステレーションは、ガスケットを圧縮状態に保つのに役立ち、流体圧力がプレートを押し離すのを阻止することができるハニカム状構造体を形成している。
【0032】
本発明のこの観点では、第1の熱伝達媒体は、第1の熱伝達媒体入口12から熱伝達プレート10の前側に沿って下り、そして第1の熱伝達媒体出口16を通って流れ出るのがよい。第2の熱伝達媒体は、第2の熱伝達媒体入口18を通って流れるのがよく、ついには、この第2の熱伝達媒体は、プレート10の後側に沿って入り、そして第2の熱伝達媒体出口14を通って出る。一例を挙げると、第1の熱伝達媒体入口12と第1の熱伝達媒体出口16との間の領域は、第1の流体通路を含むのがよく、第2の熱伝達媒体入口18と第2の熱伝達媒体出口14との間の領域は、プレートの後側に設けられた第2の流体通路を含むのがよい。
【0033】
2つの熱伝達媒体を接触しないよう保つこと、換言すると、特に食品について内部漏洩を阻止することが重要である。これは、機械的バリヤを提供するプレートの金属および流れを熱伝達プレートの前側および後側に方向づけて媒体分離を維持するガスケットによって達成される。したがって、第1の流体通路と第2の流体通路を分離するよう構成されたガスケット20が設けられている。ガスケット20は、プレート10の前面に装着される。良好な内部漏れ防止のため、ガスケット20は、ポート12,14,16,18とオーバーラップしないことが重要である。また、ガスケット20がポート12,14,16,18とオーバーラップするよう動くことがないようまたは外方に動かされてプレートから外れないようガスケット20の位置を固定することが重要である。
【0034】
加圧されたときにガスケット20が動くのを阻止するため、第1の熱交換プレート10は、ガスケット20の位置を定めるためにプレート10の前面中にプレス加工により凹んだ状態に設けられてガスケットを受け入れる溝11を有するのがよい。図2の溝11のパターンは、例示の観点を示しており、溝11は、これとは異なるパターンを取ることができる。第2の熱交換プレート102は、第1の熱交換プレート10と同一のパターンの溝を有するのがよく、その結果、これらプレートが互いに押し付けた状態で配置されると、ガスケット20は、位置を第1の熱交換プレート10と第2の熱交換プレート102との間に保持するようになっている。
【0035】
ガスケット20は、この目的のために一般的に利用される種々の材料から作られるのがよく、このガスケットは、熱伝達媒体が流体通路内を流れるときに受けるべき温度および圧力に耐えることができなければならない。さらに、ガスケット20の材料は、かかる熱伝達媒体に対して不活性でなければならない。ガスケット20の製造は、金型で実施されるのがよいが、熱交換プレートのサイズに従ってまたは用いられる製造技術に従って、ガスケットは、2つ以上の小さなコンポーネントから組み立てられるのがよい。ガスケット20は、弾性材料で作られるのがよい。
【0036】
図3は、本発明の一観点に従ってちょうど5枚のプレートから成る熱交換プレートパックの分解組立図である。図3に示す熱交換プレートパックの実施形態は、5枚の熱交換プレートを有する。プレートパック中の熱交換プレートの枚数は、3から数百まで様々であってよい。
【0037】
図3では、第1の熱伝達媒体および第2の熱伝達媒体が熱交換プレートパック30を通ってどのように流れることができるかが示されている。ある特定の実施形態では、熱交換プレートパック30は、非熱交換プレート108、第1の熱交換プレート10、第2の熱交換プレート102、第3の熱交換プレート104、およびシールプレート106を含むのがよい。非熱交換プレート108は、第1のエンドプレート42に隣接して位置するエンドプレートガスケット21を備えるよう構成されているのがよく、シールプレート106では、第2のエンドプレート40に隣接してポートが切断形成されていないのがよい。熱交換プレートパック30は、ガスケットを含んでもよく、含まなくてもよい。プレート108,106は、「非熱伝達」プレートと見なされ、と言うのは、プレートを介して第1の熱伝達媒体から第2の熱伝達媒体への熱交換が起こらないからである。非熱交換プレート108は、4つ全ての流れポートがガスケットによって封止されたガスケットを有し、したがって、このプレートの表側上でこれに沿って流れる流体は、存在しない。エンドプレートガスケット21は、4つ全ての伝達ポート周りにゴムリングを有し、このガスケットは、プレートパックシールを第1のエンドプレート42にもたらす。本発明のこの観点では、熱伝達媒体の流れを示すために、5枚の熱交換プレートが熱交換プレートパック30中に示されている。しかしながら、注目されるように、熱交換プレートパック30を形成することができる熱交換プレートは2枚だけである。熱交換プレートパック30は、6枚以上の熱交換プレートをさらに含むのがよい。
【0038】
図示のように、熱交換プレートパック30中の熱交換プレートは、180°の回転によって、交互に位置するガスケット溝パターンとセンタートラフの形態26をなして配列されている。例えば、第1の熱交換プレート10は、第2の熱交換プレート102の鏡像ガスケットパターンを有する。一例を挙げると、このように第1の熱交換プレート10の流体通路は、第1の熱伝達媒体を収容するのがよく、第2の熱交換プレート102の流体通路は、第2の熱伝達媒体を収容するのがよい。したがって、第1の流体通路310は、第1の熱伝達媒体が流れることができるよう構成されているのがよく、第2の流体通路320は、第2の熱伝達媒体が流れることができるよう構成されているのがよく、第3の流体通路330は、この場合もまた第1の熱伝達媒体が流れることができるよう構成されているのがよい。
【0039】
今や、各熱伝達媒体が熱交換プレートパック30内で熱交換プレート(10,102,104,106,108)を通ってどのように流れるかについて説明する。第1の流れ通路310が2つの開口ポート12,16、ブリッジガスケットおよび2つの長い側部から成る第1の熱交換プレート10上に設けられた流れガスケット20内に描かれた境界部内に形成されている。このように包囲された流れ通路により、第1の熱伝達媒体は、プレート10の前側またはガスケット付き側上をこれに沿って移動することができ、他方、第2の熱伝達媒体は、ポート14,18上に設けられた2つのゴムリングを通り、そして第2の熱伝達プレート102およびその流れガスケット20により形成された第2の流れ通路320に入る。第2の熱伝達流体は、開口ポート114,118を通過し、そして第2の熱交換プレート102の後面および第3の熱伝達プレート104の前面上をこれに沿って移動する。
【0040】
2枚の熱伝達プレートの任意の倍数を追加することによって熱伝達プレート10,102で作られる流れ構成を多数回繰り返すのがよい。このようにすると、数百の同一の流れ通路を有する熱交換プレートパック30を形成することができる。全ての流体伝達ポートが遮断された状態の「シールプレート」106を追加することによって熱交換プレートパック30を終端させる。このようにすると、2つの熱伝達流体は、効果的に「封止」されて熱交換プレートパック30内に収容される。
【0041】
第1の熱伝達媒体は、第1のエンドプレート42の第1の出口56を通って熱交換プレートパック30に入り、この第1の入口は、熱交換プレートパック30の他の全ての開口ポート形穴と連通する。第1の熱伝達媒体は、1つ置きの流体通路、例えば第1の流体通路310および第3の流体通路330に流入する。
【0042】
第1の熱伝達媒体は、第1のエンドプレート42の第1の入口50を通って熱交換プレートパック30を出、この第1の出口は、熱交換プレートパック30の他の全ての開口ポート形穴と連通する。入口ポート50内の第1の熱伝達媒体圧力は、出口ポート56内の流体圧力よりも高く、第1の熱伝達媒体流れ通路を通る流体の流れを生じさせるのは、この圧力差または駆動力である。熱交換プレートパック30中の全てのプレートは、他の全ての第1の熱伝達媒体流れ通路と連通した入口および出口ポートを有し、このことは、第1の流れ通路が全て、同一の駆動力を有することを意味している。全てのプレートが同一の幾何学的形状を有するならば、第1の熱伝達媒体流れ通路の各々を通る第1の熱伝達媒体流量がほぼ同一であることが推定される。
【0043】
これと類似した仕方で、第2の熱伝達媒体は、第2のエンドプレート40の第2の入口54を通って熱交換プレートパット30に入り、この第2の入口は、他の全ての開口ポート形穴と連通している。第2の熱伝達媒体は、1つ置きの流れ通路、例えば第2の流れ通路320および第4の流れ通路340に流入する。
【0044】
第2の熱伝達媒体は、第2のエンドプレート40の第2の入口54を通って熱交換プレートパック30を出、この第2の入口は、プレートの他の全ての開口ポート形穴と連通している。第2の入口ポート54内の第2の熱伝達媒体流れ圧力は、第2の出口ポート52内の第2の熱伝達媒体流れ圧力よりも高く、第2の熱伝達媒体流れ通路を通る流体の流れを生じさせるのは、この圧力差または駆動力である。熱交換プレートパック30中の全てのプレートは、他の全ての第2の熱伝達媒体流れ通路と連通した入口および出口ポートを有し、このことは、第2の熱伝達媒体流れ通路が全て、同一の駆動力を有することを意味している。全てのプレートが同一の幾何学的形状を有するならば、第2の熱伝達媒体流れ通路の各々を通る第1の熱伝達媒体流量がほぼ同一であることが推定される。
【0045】
この構成により、各流れ通路は、交互に位置する熱伝達媒体を有することができる。一例を挙げると、第1の流れ通路310は、流動中の第1の熱伝達媒体を収容し、第2の流れ通路320は、流動中の第2の熱伝達媒体を収容する。第1の流れ通路の入口のところの温度が第2の流れ通路に流入中の温度と異なる場合、熱伝達は、流れ通路を分離したプレートを介して起こる。第1の熱伝達媒体が第2の熱伝達媒体の温度よりも高い温度で流入している場合を検討する。
【0046】
熱伝達に関するニュートンの法則によれば、熱交換量は、全体的な熱伝達係数、熱伝達面積および熱伝達媒体相互間の平均温度差の積に比例する。
【0047】
第1の流れ通路を構成する特定のプレート構成に起因して、第1の熱交換プレート10は、熱交換プレートパック30中の他の全てのプレートよりも高い平均温度の状態にある。これは、第1の流れ通路310が熱をたった1枚の熱伝達プレート10を介して伝達するからである。非熱伝達プレート108の前面に沿ってこれを流下している熱伝達媒体は存在しない。他の全ての第1の流れ通路は、熱を2枚の熱伝達プレートを介して伝達する。
【0048】
熱交換プレートの温度が増大すると、熱交換プレートは、熱膨張に起因して膨張する。全体的なプレート長さおよび幅は、プレート金属の温度変化に正比例した量だけ増大する。第1の熱伝達プレート10は、他の全てのプレートよりも高温であり、この第1の熱伝達プレートは、より大きく膨張する。このために、第1の熱伝達プレートのガスケットセンターライン、ポートセンターラインおよびゴムリングセンターラインは、もはや他の全ての熱伝達プレートの中心線とアラインメントが取られていない(位置が合っていない)状態になる。
【0049】
第1の流れ通路310内の第1の熱伝達媒体は、他の全ての通路の場合よりも高温であり、このことは、プレート10,108が熱交換プレートパック30中の他の全てのプレートよりも高温であることを意味している。プレート10,108は、他の全てのプレートよりも大きく熱膨張する。
【0050】
膨張が起こると、プレート10,108の金属表面は、摩擦力を例えば第1のエンドプレート42と直接的な接触状態にある任意の熱交換プレートパック部材に及ぼす。及ぼされる摩擦力は、多くの要因、例えば接触面積、接触材料の性状(摩擦係数)、および接触圧力で決まる。非熱伝達プレート108,106の状態は、プレートパック中では独特であり、と言うのは、これらは両方とも、圧力保持エンドプレート42,40に直接接触しているからである。大きな接触面積により、これら2枚の非熱交換プレート42,40は、非常に高い摩擦力を受ける。
【0051】
熱交換器の動作を停止させると、温度は減少し、そして最終的には、温度は周囲条件に達する。熱交換プレートパック30中のプレートが全て冷え、そして熱収縮してこれらの元の全体的寸法に戻る。摩擦力がこの場合もまた、プレート収縮中に生じ、プレート10,108相互間の高温の第1の伝達媒体流れ通路は、熱交換プレートパック30中の他のプレートよりも大きく収縮する。これらのプレートの収縮とは反対の摩擦力が生じるが、収縮の発生を阻止することはできない。プレート10,108の全体的な相対的位置が元の位置に再調整されることは保証されない。
【0052】
膨張または収縮時におこる摩擦力の結果として、プレート全体が上方か下方かのいずれかに動く場合がある。この運動は、それ以上の温度変化が起こらなければ止まる。ガスケット封止面の相対位置が動いて隣のプレートの相手方の金属封止面から外れた場合、シールが失われ、そして漏洩が始まる。一回の始動・動作停止事象により生じるプレートの運動度がガスケットシールを失わせるのに十分であることは極めてまれである。しかしながら、数回の始動・動作停止サイクルの間にわたり、または使用が非定常状態にあるとき、プレートの運動は、プレートがゆっくりと移動して次々と起こる各温度変化事象と調和が取れなくなるとより極端な状態になる場合がある。熱交換プレートが相対的に動くと、ガスケット20は、溝11から外れる場合がある。これを防ぐため、ロックストリップ400を設けて隣り合うプレートのアラインメントを取り直すように働く復元力を生じさせるのがよい。
【0053】
図4は、本発明の一観点に従って、熱交換パック内の2つの隣り合うプレート上に設けられたプレート・ガスケット・ロックストリップ組立体の分解組立図である。
【0054】
図4では、ロックストリップ400は、2つの隣り合う熱交換プレート上に配置されている。ロックストリップ400の目的は、隣り合うプレートのある程度の相対的変位を許容するが、隣り合うプレート相互間の大きなアラインメント不良があるとこれを阻止することにある。図4は、ロックストリップが熱伝達プレートの後側に装着されているが、本発明は、この位置には限定されないことを示している。
【0055】
図4は、交互に位置する上方に向いた突出部71と下方に向いた凹部70から成るプレート縁部を示している。このプレートの特徴は、「カステレーテッド(castellated )」縁部と呼ばれる。圧縮状態の熱交換プレートパック30中の隣り合うプレートは、下側のプレートの突出部に接触する上側プレートの凹部70を有し、その結果、横から見た熱交換プレートパック30は、ハニカム構造のように見える場合がある。ロックストリップ400は、上側プレートの突出部71と下側プレートの凹部70により形成された空間内に取り込まれている。ロックストリップの側から見ると、これは、ハニカムの空間を「埋める」ように見える。
【0056】
ロックストリップ400は、上側プレートの突出部71中に上向きに嵌まり込む第1の突出部41を有し、第1の突出部41はまた、下側のプレートの凹部70中に下向きに嵌まり込む。
【0057】
ロックストリップ400を間に取り込んだ状態の隣り合うプレート相互間の任意の相対変位により、これらプレートは、剪断力をロックストリップ突出部に及ぼす。これらロックストリップ突出部は、大きさが等しくかつ向きが逆の反力をプレート凹部または突出部に及ぼし、かかる反力は、プレート間アラインメントを復元するよう働く。隣り合うプレート相互間の相対変位(アラインメント不良)が大きければ大きいほど、アラインメント不良により生じる復元力がそれだけいっそう大きくなる。変形済みのロックストリップ400内のばねのようなこの復元エネルギーは、動作条件が許せばプレートのアラインメントを取り直すよう利用できる。このように、ロックストリップ400は、第1および第2の熱交換プレート10,102の複数回の熱膨張、収縮サイクルにわたり第1の熱交換プレート10と第2の熱交換プレート102のアラインメントを維持するよう構成されている。ロックストリップ400は、熱交換プレートの縁部上に取り付けられるのがよく、このロックストリップは、ガスケット20とオーバーラップすることはない。
【0058】
熱交換プレートの幾分かの熱膨張度を可能にするため、ロックストリップ400は、弾性材料で作られるのがよい。ロックストリップ400は、ゴム状材料で作られるのがよい。ロックストリップ400は、EPDM(エチレンプロピレンジエンモノマー)ゴムまたは適当な機械的性質を備えた任意他の弾性材料で作られるのがよい。例えば、ロックストリップ400の材料は、75~83のIRHD値を有するのがよい。
【0059】
図5は、本発明の一観点に従って、リヤプレート表面上に設けられた例示のロックストリップの斜視図である。
【0060】
図5は、1つのロックストリップ400が取り付けられた熱伝達プレート10を裏返して示す図であり、この図5を用いると、ロックストリップをどのようにするかを良く説明することができる。本発明のこの観点では、ロックストリップ400は、4つの突出部41,42,43,44から成り、これら突出部は全て、共通の「ヘッダ」401(フック状領域とも呼ばれている)によって接合されている。ロックストリップ400は、4つの突出部には限定されず、2つ以上の任意の数を有することができる。第1の突出部41は、第1の熱交換プレート10の第1の凹部71(図4にも示されている)に係合し、突出部42,43,44は全て、熱交換プレート10の同様な凹部内に係合するよう構成されている。ロックストリップ突出部41,42,43,44およびヘッダ401は全て、熱交換プレート10の突出部70周りにループ状に配置されている。
【0061】
図4に戻ってこれを参照すると、熱交換プレート10のロックストリップ突出部41,42,43,44は、第2の熱交換プレート102の凹部70中に下向きに嵌まり込む。第2の熱交換プレート102を第1の熱交換プレート10に押し当てると、その突出部41,42,43,44は、第1の熱交換プレート10の突出部に接触する。今や、共通のヘッダ401は、第1の熱交換プレート10の凹部の後ろに捕捉される。ロックストリップ400は、熱交換プレートが熱交換プレートパック30内で互いに押されると、今や固定される。ロックストリップは、接着剤を用いることによって熱交換プレートパック30の圧縮に先立って定位置に保たれるのがよい。
【0062】
図6は、本発明の一観点によるロックストリップ前面と背面の斜視図である。ロックストリップ400をプレートの後面上の定位置に取り付けるため、ストリップの頂面は、ロックストリップ400が定位置に押し込まれる前に塗布される接着剤を有するのがよい。理解されるように、熱交換プレートの縁部は、繰り返しパターンを形成する凹部70と突出部71から成り、図示のようにロックストリップを種々の場所に嵌め込むことができ、2つ以上のロックストリップは、熱交換プレートの2つの長い外縁部の各々に沿って下方に取り付けることができるようになっている。
【0063】
図7は、本発明の一観点に従って、正確にアラインメントが取られた2枚の隣り合う熱交換プレート相互間に配置されているロックストリップの断面図である。
【0064】
図7では、ロックストリップ400は、完全なアラインメントの関係にある第1の熱交換プレート10と第2の熱交換プレート102との間に捕捉されている。ロックストリップ400の上半分は、第1の熱交換プレート10の突出部中に嵌まり込み、ロックストリップ400の下半分は、第2の熱交換プレート102の凹部中に嵌まり込んでいる。プレート10,102を互いにアラインメントを取る場合、剪断力がロックストリップ突出部に加えられることはない。
【0065】
図8は、本発明の一観点に従って、長軸に沿ってアラインメント不良状態の2枚のプレート相互間に配置されたロックストリップの断面図である。
【0066】
図8では、上側プレート100は、下側プレート102に対して左側にずらされている。ロックストリップ突出部42に対するこの変位の効果を検討する。上側プレート10の突出部の第1の側壁または「フランク」74は、ロックストリップの上半分上のロックストリップ材料を左側にずらす力をロックストリップ突出部42に及ぼし、下側プレート102の凹部の第2の側壁または「フランク」75は、ロックストリップ突出部42に作用して突出部の下半分を右側に変位させる。このように、ロックストリップ突出部42は、正味の剪断力を受ける。ロックストリップ400の全ての突出部41,42,43,44は、同一の変位量を生じ、そして等しく剪断される。
【0067】
ロックストリップの弾性特性に起因して、突出部43を変形させると、この突出部は、ばねように働く。突出部43の弾性分子構造は、ロックストリップ400に加えられる剪断力と大きさが等しいが向きが逆の力を及ぼし、そしてアラインメント不良状態のプレート表面「フランク」76,77に作用する。これら復元力は、プレート10の2つの変位済み突出部とプレート102の凹部のアラインメントを取り直すよう働く。全てのロックストリップ突出部41,42,43,44は、同一の復元力をこれら突出部が接触する「フランク」に及ぼす。
【0068】
ロックストリップ400は、モジュール式であり、任意数のロックストリップ400を各側のプレート10の長軸全体に沿って下に追加することができ、その結果、多くの突出部が温度サイクル動作に起因して生じる場合のある相対的なプレート間アラインメント不良量を制限するのに十分大きな復元力を及ぼすことができるようになっている。プレート位置合わせ不良を制限することによって、ガスケットシールの消失を阻止することができる。
【0069】
図9は、本発明の一観点としての改良型漏洩防止策を備えた熱交換プレートを製作する方法を示す図である。
【0070】
図9には、改良型漏洩防止策を備えた熱交換器を製作する方法が示されている。本発明の一観点では、改良型漏洩防止策付き熱交換器を製作する方法は、第1の熱交換プレートを準備するステップと、少なくとも1つの熱伝達媒体入口および少なくとも1つの熱伝達媒体出口を穴あけ形成するステップと、第1の熱交換プレートの縁部を押してプレス加工して突出部および凹部を形成するステップと、第1の流体通路と第2の流体通路を分離するようガスケットを配置するステップと、ロックストリップを第1の熱交換プレートの少なくとも1つの縁部に取り付けてロックストリップの突出部が第1の熱交換プレートの凹部と嵌合するとともに、フック状領域が第1の熱交換プレートの突出部を包囲するようにするステップとを含むのがよい。
【0071】
次に、改良型漏洩防止策を備えた熱交換器を製作する方法について、より詳細に説明する。最初に、第1の熱交換プレート10を準備するのがよい(802)。第1の熱交換プレート10を穴あけして少なくとも1つの熱伝達媒体入口および少なくとも1つの熱伝達媒体出口を作るのがよい(804)。第1の熱交換プレート10もまた、穴あけして第1の熱伝達媒体入口12、第1の熱伝達媒体出口16、第2の熱伝達媒体入口14、および第2の熱伝達媒体出口18を作るのがよい。
【0072】
次に、第1の熱交換プレート10の縁部をプレス加工して少なくとも1つの突出部71を形成するのがよい(806)。第1の熱交換プレートの縁部もまたプレス加工して少なくとも1つの凹部70を形成するのがよい(806)。第1の熱交換プレートの縁部の少なくとも何割かの部分をプレス加工して交互に位置する突出部と凹部を形成するのがよい。交互に位置する突出部と凹部を第1の熱交換プレート10の2つの長い縁部上に形成するのがよい。第1の熱交換プレート10の4つの縁部全てをプレス加工して交互に位置する突出部と凹部を形成するのがよい。
【0073】
第1の流体通路と第2の流体通路を分離するようガスケット20を配置するのがよい(808)。1つのガスケット20は、第1の流体通路と第2の流体通路を分離するよう構成されるのがよい。変形例として、第1のガスケットは、第1の流体通路を封止するよう構成されてもよく、第2のガスケットは、第2の流体通路を封止するよう構成されてもよく、またその逆の関係が成り立つ。
【0074】
ロックストリップ400を第1の熱交換プレート10の縁部に取り付けるのがよい(810)。ロックストリップ400は、第1の熱交換プレート10の凹部71と嵌合するよう構成された第1の突出部41を有するのがよい。ロックストリップは、3つ以上の突出部を有するのがよく、このロックストリップは、第1の熱交換プレート10の交互に位置する突出部と凹部と係合するよう構成されているのがよい。2つ以上のロックストリップを第1の熱交換プレート10の縁部に取り付けることができる。2つ以上のロックストリップを第1の熱交換プレート10の縁部に取り付けると、少なくとも1つのロックストリップを第1の熱交換プレート10の長い縁部の各々に取り付けるのがよい。
【0075】
図10は、本発明のもう1つの観点による改良型漏洩防止策を備えた熱交換プレートを製作する方法を示す図である。
【0076】
本発明のもう1つの観点では、改良型漏洩防止策を備えた熱交換器を製作する方法は、第2の熱交換プレートを準備するステップと、少なくとも1つの熱伝達媒体入口および少なくとも1つの熱伝達媒体出口を穴あけ形成するステップと、第2の熱交換プレートの縁部を押してプレス加工して突出部および凹部を形成するステップと、第2の熱交換プレートを第1の熱交換プレート上に配置してロックストリップの突出部が第2の熱交換プレートの凹部と嵌合するとともに、フック状領域が第2の熱交換プレートの突出部を包囲するようにするステップとをさらに含むのがよい。
【0077】
次に、改良型漏洩防止策を備えた熱交換器を製作する方法のもう1つの観点についてより詳細に説明する。第2の熱交換プレート102を準備するのがよい(902)。第1の熱交換プレート10の場合と同様、第2の熱交換プレート102を穴あけして少なくとも1つの熱伝達媒体入口および少なくとも1つの熱伝達媒体出口を作るのがよい(904)。第2の熱交換プレート102もまた、穴あけして第1の熱伝達媒体入口112、第1の熱伝達媒体出口116、第2の熱伝達媒体入口114、および第2の熱伝達媒体出口118を作るのがよい。
【0078】
次に、第2の熱交換プレート102の縁部をプレス加工して少なくとも1つの突出部78を形成するのがよい(906)。第1の熱交換プレートの縁部もまたプレス加工して少なくとも1つの凹部72を形成するのがよい(906)。第2の熱交換プレートの縁部の少なくとも何割かの部分をプレス加工して交互に位置する突出部と凹部を形成するのがよい。交互に位置する突出部と凹部を第2の熱交換プレート102の2つの長い縁部上に形成するのがよい。第2の熱交換プレート102の4つの縁部全てをプレス加工して交互に位置する突出部と凹部を形成するのがよい。
【0079】
第2の熱交換プレート102を第1の熱交換プレート10上に配置するのがよく、その結果、ガスケット20は、第1の熱交換プレート10と第2の熱交換プレート102との間の第1の流体通路と第2の流体通路を分離することができるようになっている(908)。第1の熱交換プレート10および第2の熱交換プレート102は、熱交換プレートパック30を含むのがよい。加うるに、溝11を形成してガスケット20を第1の熱交換プレート10および第2の熱交換プレート102の表面上に固定するのがよい。第2の熱交換プレート102を第1の熱交換プレート10上に配置すると、第2の熱交換プレートは、ロックストリップ400の第2の突出部42を第2の熱交換プレート102の凹部と嵌合させることができるよう配置される。ロックストリップ400が第3および第4の突出部を備えている場合、これら突出部は、第1の熱交換プレート10の第2の凹部および第2の熱交換プレート102の第2の凹部と嵌合するよう構成されるのがよい。第1の熱交換プレート10に取り付けられるロックストリップが2つ以上の場合、ロックストリップのあらゆる突出部を第2の熱交換プレート102の凹部と嵌合させるのがよい。
【0080】
加うるに、第1のエンドプレート42および第2のエンドプレート40を準備するのがよい。熱交換プレートパック30を第1のエンドプレート42と第2のエンドプレート40との間に配置するのがよい。第1のエンドプレート42と第2のエンドプレート40は、熱交換プレートパック30を適当な圧力で押すことができるよう互いに押されるのがよい。圧力は、ガスケット20を第1の熱交換プレート10と第2の熱交換プレート102との間に配置した状態に固定するよう計算されるのがよい。締め付け部材60を第1のエンドプレート42と第2のエンドプレート40との間に連結するのがよい。圧力は、締め付け部材60を回すことによって調節できる。第1の熱交換プレート10と第2の熱交換プレート102との間に取り付けられたロックストリップ400もまた、締め付け部材60により提供される圧力によって押されるのがよい。第1の熱伝達媒体が第1の流れ通路を通って流れると、第1の熱交換プレート10およびガスケット20が膨張する。ロックストリップ400により、熱交換プレートおよびガスケットの完全膨張が起こることができるが、このロックストリップは、これら2枚のプレートと同一の平面内における2枚のプレート相互間の任意の相対変位を制限するよう働く。
【0081】
図3を参照されたい。各々がロックストリップを備えた1枚以上の熱交換プレート10を180°逆さまにして交互に位置する隣のプレートの各々と一緒に配置すると、熱交換プレートパック30が構成される。プレート10を逆さまにすると、このプレートがプレート102になることに注目されたい。第1の非熱交換プレート108は、ロックストリップおよびエンドガスケット21を備え、最終の熱交換プレート106には流れポートが開けられておらず、しかもロックストリップが装着されていないが、この最終の熱交換プレートは、流れガスケット20を備えている。
【0082】
本発明の多くの特徴および多くの利点は、詳細な説明から明らかであり、かくして、本発明の真の精神および範囲に属する本発明のかかる特徴および利点を全て含むことが添付の特許請求の範囲の記載によって意図されている。さらに、多くの改造および変形が当業者には容易に思いつくので、本発明を図示するとともに説明した構成および作用そのものに限定することは望ましくなく、したがって、全ての適当な改造例および均等例を想到することができ、これらは、本発明の範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】