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  • 特表-アルツハイマー病の血液指標 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-15
(54)【発明の名称】アルツハイマー病の血液指標
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/50 20060101AFI20240207BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240207BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240207BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
G01N33/50 Z
A61P25/28
A61K45/00
A61K31/198
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547403
(86)(22)【出願日】2022-02-05
(85)【翻訳文提出日】2023-10-02
(86)【国際出願番号】 IB2022051010
(87)【国際公開番号】W WO2022168006
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】63/146,031
(32)【優先日】2021-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522218367
【氏名又は名称】ジ・インスティテュート・フォー・エスノメディシン・ディビーエイ・ブレイン・ケミストリー・ラブズ
【氏名又は名称原語表記】THE INSTITUTE FOR ETHNOMEDICINE DBA BRAIN CHEMISTRY LABS
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】バナック,サンドラ アナ
(72)【発明者】
【氏名】コックス,ポール アラン
【テーマコード(参考)】
2G045
4C084
4C206
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CA26
2G045DA80
2G045FB06
2G045JA01
2G045JA03
2G045JA06
4C084AA17
4C084NA05
4C084ZA162
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA53
4C206KA17
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA05
4C206ZA16
(57)【要約】
アルツハイマー病を患っているか、またはそれを発症するリスクのある対象を特定する方法であって、前記対象から得た血液または血液製剤におけるリン酸二水素2-アミノエチルまたはタウリンの存在または量を決定することを含む方法が、本明細書で提示される。アルツハイマー病の発症を予防する、治療する、または遅延させる方法もまた、本明細書で提示される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルツハイマー病を患っているか、またはそれを発症するリスクのある対象を特定する方法であって、前記方法が、
(a)前記対象から得たサンプルにおけるリン酸二水素2-アミノエチルまたはタウリンの量を決定すること、および
(b)前記サンプルにおけるリン酸二水素2-アミノエチルまたはタウリンの量に従って、前記対象がアルツハイマー病を患っているか、またはそれを発症するリスクがあるかどうかを決定すること
を含む、方法。
【請求項2】
リン酸二水素2-アミノエチルの量が決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
タウリンの量が決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
リン酸二水素2-アミノエチルおよびタウリンの量が決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
リン酸二水素2-アミノエチルまたはタウリンの量が、あらかじめ定められた閾値を上回る場合に、前記対象が、(b)において、アルツハイマー病を患っているか、またはそれを発症するリスクがあると決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記あらかじめ定められた閾値を上回るリン酸二水素2-アミノエチルまたはタウリンの量が、前記あらかじめ定められた閾値よりも、約20倍、約19倍、約18倍、約17倍、約16倍、約15倍、約14倍、約13倍、約12倍、約11倍、約10.5倍、約10倍、約9.5倍、約9倍、約8.5倍、約8倍、約7.5倍、約7倍、約6.5倍、約6倍、約5.5倍、約5倍、約4.5倍、約4倍、約3.5倍、約3倍、約2.9倍、約2.8倍、約2.7倍、約2.6倍、約2.5倍、約2.4倍、約2.3倍、約2.2倍、約2倍、約1.9倍、約1.8倍、約1.7倍、約1.6倍、約1.5倍、約1.4倍、約1.3倍、約1.2、または約1.1倍高い量である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記あらかじめ定められた閾値が、一つ以上の健常対象コントロール中に存在するリン酸二水素2-アミノエチルまたはタウリンの量の平均値(average)、平均値(mean)、絶対値、または最大値である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
(a)における存在または量の決定が、リン酸二水素2-アミノエチル対タウリンの比を決定することを含み、(b)における決定が、前記サンプルにおけるリン酸二水素2-アミノエチル対タウリンの比に従って、前記対象がアルツハイマー病を患っているか、またはそれを発症するリスクがあるかどうかを決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
リン酸二水素2-アミノエチル対タウリンの比が、あらかじめ定められた閾値を上回る場合に、前記対象が、(b)において、アルツハイマー病を患っているか、またはそれを発症するリスクがあると決定される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記あらかじめ定められた閾値を上回るリン酸二水素2-アミノエチル対タウリンの比が、前記あらかじめ定められた閾値よりも、約20倍、約19倍、約18倍、約17倍、約16倍、約15倍、約14倍、約13倍、約12倍、約11倍、約10.5倍、約10倍、約9.5倍、約9倍、約8.5倍、約8倍、約7.5倍、約7倍、約6.5倍、約6倍、約5.5倍、約5倍、約4.5倍、約4倍、約3.5倍、約3倍、約2.9倍、約2.8倍、約2.7倍、約2.6倍、約2.5倍、約2.4倍、約2.3倍、約2.2倍、約2倍、約1.9倍、約1.8倍、約1.7倍、約1.6倍、約1.5倍、約1.4倍、約1.3倍、約1.2、または約1.1倍高い比である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記あらかじめ定められた閾値が、一つ以上の健常対象コントロール中に存在するリン酸二水素2-アミノエチルまたはタウリンの量の平均値(average)、平均値(mean)、絶対値、または最大値である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記対象がアルツハイマー病を患っているか、またはそれを発症するリスクがあるという決定に応じて、
(c)治療有効量のアルツハイマー病薬を前記対象に投与すること
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記アルツハイマー病薬が、L-セリン、ラリトリン、フェニトイン、ラモトリジン、カルバマゼピン、リドカイン、テトロドトキシン、ニトロインダゾール、スルフォラファンまたはスルフォラファン類縁体、ギャバペンチン、プレガバリン、ミロガバリン、ガバペンチンエナカルビル、フェニブト、イマガバリン、アタガバリン、4-メチルプレガバリン、PD-217,014、リルゾール、エダラボン、テトラベナジン、ハロペリドール、リスペリドン、クエチアピン、アマンタジン、レベチラセタム、クロナゼパム、シタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチン、セルトラリン、オランザピン、バロプロエート、カルバマゼピン、ラモトリジン、ワクチン、コリンエステラーゼ阻害剤、メマンチン、抗うつ剤、N-メチル D-アスパラギン酸(NMDA)アンタゴニスト、オメガ3脂肪酸、クルクミンまたはクルクミン誘導体、ビタミンE、睡眠改善薬、抗不安薬、抗痙攣薬、抗精神病薬、カルビドパ・レボドパ、アマンタジン、ドーパミンアゴニスト、モノアミンオキシダーゼB(MAO-B)阻害薬、カテコール O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害薬、および抗コリン薬から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記アルツハイマー病薬が、L-セリン、ラリトリン、フェニトイン、ラモトリジン、カルバマゼピン、リドカイン、テトロドトキシン、リルゾール、エダラボン、ギャバペンチン、プレガバリン、ミロガバリン、ガバペンチンエナカルビル、フェニブト、イマガバリン、アタガバリン、4-メチルプレガバリン、PD-217,014、トリヘキシフェニジル、アミトリプチリン、バクロフェン、ジアゼパム、およびCK-2127107から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記アルツハイマー病薬が、L-セリンを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記サンプルが、血液または血液製剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記血液製剤が、血漿を含むか、またはそれからなる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記対象が、哺乳動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記哺乳動物が、非ヒト霊長類である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記非ヒト霊長類が、サバンナモンキーである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記対象が、ヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記対象が、アルツハイマー病について無症状である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記対象におけるアルツハイマー病の進行を監視することをさらに含む請求項1に記載の方法であって、前記方法が、2回以上行われる、方法。
【請求項24】
前記対象が、(b)における決定の前にアルツハイマー病と診断されていない、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
エクスビボ法である、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
インビトロ法である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年2月5日に提出された「アルツハイマー病の血液指標(BLOOD INDICATORS OF ALZHEIMER'S DISEASE)」という題の米国仮特許出願第63/146,031号の利益および優先権を主張するものであり、その内容は参照により、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明の分野
本発明の特定の実施形態は、サンプルにおけるリン酸二水素2-アミノエチルおよび/またはタウリンの有無または量を検出する方法に関する。本発明の特定の実施形態は、アルツハイマー病の予測および/または診断となる、サンプルにおけるリン酸二水素2-アミノエチルおよび/またはタウリンの量、またはリン酸二水素2-アミノエチル対タウリンの比にもまた関する。本発明の特定の実施形態は、アルツハイマー病の進行を監視する方法、および/またはアルツハイマー病の治療を決定する方法にもまた関する。
【背景技術】
【0003】
アルツハイマー病(AD)の症例の95パーセントは、60~65歳以上の人で起こる。これは、一般に、個人が老後を楽しみに待ち、家族および共同体に大きく貢献する用意ができている人生の時期である。ADは、彼らから人生を奪うだけでなく、死の前に、短期記憶を形成または利用できない、混乱の増加、見当識障害、引きこもり、および晩年の間に強くなる認知症の増加という負担をかける。神経病理学的に見て、AD症状の発現は、ときどき脳神経病理、特に特定の脳領域におけるアミロイド-β-42(Aβ42)プラークおよび高リン酸化タウ沈着で構成される神経原線維変化(NFT)の高密度タウオパチーと相関関係がある。
【0004】
脳におけるAD型神経病理の発生と臨床症状の発現との間に大幅な潜伏期があると思われる。膨大な量の14Cを大気中に放出した、1961年10月31日のソビエト連邦による50メガトンのツァーリボンバの爆発に由来する14C崩壊を用いる研究は、AD患者の死後脳組織から抽出されたNFTおよびAβ42プラークの正確な年代決定を可能にした。研究された6人の患者のうちに2人において、NFTは症状の発現の7年前であると決定され、1人の患者において、Aβ42プラークは、症状発現の9年前であると決定された。ADのバイオマーカー、特に潜伏期におけるそれの発見および使用の利点は、新しい種類の治療を探索するために、または結局は疾患進行のかなり早い時期に処方される可能性がある、以前に失敗した薬を試すために利用される可能性がある。
【0005】
近年のメタ分析は、アミロイド沈着、神経損傷および神経細胞の脱落から生じるいくつかのCSFバイオマーカー、およびNFT、顕著にリン酸化されたタウ(P-tau)、アミロイドベータ(Aβ42)、総タウ(T-tau)、ならびにニューロフィラメント軽鎖タンパク質(NFL)の形成が、ADと強く関連することを示唆した。T-tauの血漿中濃度もまた、さらなる研究を必要とする潜在的に優れたADの指標として示されたが、一方でAβ40およびAβ42の血漿中濃度は、AD診断の優れた候補であるようには見えなかった。アミロイドベータプラーク(PiB-PETスキャン)、タウ沈着(tau-PET)、脳萎縮(構造MRI)、記憶関連活動パターン(fMRI)、および糖代謝の低下(FDG-PET)を評価するイメージングバイオマーカーもまた、ADバイオマーカーとして現在使用されている。
【発明の概要】
【0006】
本明細書に記載されるように、リン酸二水素2-アミノエチル(別名ホスホエタノールアミン)および/またはタウリンの血漿中濃度は、Aβ42、高リン酸化タウ、およびNFTと関連することが知られておらず、独立コホートを用いる再現実験においてAD患者の血液サンプルとコントロールの血液サンプルとを区別することができる。したがって、リン酸二水素2-アミノエチルおよび/またはタウリンの量または比は、しばしば無症状の患者におけるAD発病の予測に有用である。さらに、リン酸二水素2-アミノエチルおよびタウリンの量は、ほとんどの大きな病院でよく見られる、代謝疾患を評価するための機器を用いて容易に測定されるので、その検出および定量化が様々な臨床機関で迅速に実行される場合がある。
【0007】
特定の実施形態において、サンプルにおけるリン酸二水素2-アミノエチルおよび/またはタウリンの量を決定する方法が、本明細書で提示される。いくつかの実施形態において、かかる方法は、アルツハイマー病の診断および早期検出のために使用され得る。
【0008】
本技術の特定の態様は、以下の説明、実施例、特許請求の範囲および図面でさらに記述される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、日立アミノ酸分析計クロマトグラム:タウリン(Tau、1.607分)、およびホスホエタノールアミン(リン酸二水素2-アミノエチル、2.080分)を示す。ピンクの線は、コントロールサンプル中にリン酸二水素2-アミノエチルが存在しないことを示し、青緑色の線は、ADサンプル中のリン酸二水素2-アミノエチルを示し、濃緑色の線は、大きなタウリンのピークを示し、これによりリン酸二水素2-アミノエチルが人為的に持ち上げられ、実験2における曲線下面積プロファイルの面積が大きくなっている。
図2図2は、誘導体化し、合わせた早期アルツハイマー病(AD)サンプルおよびコントロールの三連四重極型質量分析計クロマトグラフを示す:(a)AD3μl注入量、実験1;(b)AD6μl注入、実験1;(c)AD6μl注入、実験2;d)0.15ng リン酸二水素2-アミノエチル標準を添加したAD6μl注入、実験2;(e)コントロール3μl注入、実験1(リン酸二水素2-アミノエチルは検出されず);(f)コントロール6μl注入、実験1;(g)2.05分の保持時間でピークを有する、0.004μg/mlのリン酸二水素2-アミノエチル標準3μl注入。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
本明細書に記載されるように、リン酸二水素2-アミノエチルおよび/またはタウリンの血漿中量は、診断的および治療的有用性を有し、対象がアルツハイマー病を患っているか、またはそれを発症するリスクがあるかどうかについての見識を与える。したがって、いくつかの実施形態において、方法は、アルツハイマー病を発症するリスクがある無症状の対象の治療のために本明細書で提供される。かかる方法は、アルツハイマー病の進行を抑制するか、またはアルツハイマー病の発病を遅延させることができる。
【0011】
いくつかの実施形態において、リン酸二水素2-アミノエチルおよび/またはタウリンの量は、サンプルにおいて決定される。「サンプル」は、しばしば適当な方法を用いて適当な対象から得られる。サンプルは、対象またはその一部から単離されるか、または直接得られることがある。いくつかの実施形態において、対象から得たサンプルは、対象に由来するサンプルである。特定の実施形態において、対象から得たサンプルは、第三者、例えば対象からサンプルを得たか、または抽出した第三者から得たサンプルである。いくつかの実施形態において、サンプルは、個人または医療従事者から直接得られる。サンプルは、対象またはその一部から単離されるか、または得られるあらゆる標本であり得る。サンプルは、一つ以上の対象から単離されるか、または得られるあらゆる組織または液体であり得る。限定されないサンプルの例には、対象から得たか、または対象に由来する液体または組織、例えば、これらに限らないが、血液または血液製剤(例えば、血清、血漿、血小板、バフィーコート、リンパ液または同類のもの)、臍帯血、絨毛膜絨毛、羊水、脳脊髄液(CSF)、髄液、洗浄液(例えば、肺、胃、腹腔、腺管、耳、関節鏡視下)、生検サンプル、腹腔穿刺サンプル、細胞(血液細胞、リンパ球、胎盤細胞、幹細胞、骨髄由来細胞、胚または胎児細胞、ニューロン)またはその一部(例えば、ミトコンドリア、核、抽出物、ライセート、または同類のもの)、尿、糞便、痰、唾液、経鼻粘膜、前立腺液、洗浄、精液、リンパ液、胆汁、涙、汗、母乳、乳汁、および同類のものまたはそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態において、サンプルは、血液または血液製剤を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、血液製剤は、血漿を含む。
【0012】
本明細書に記載される特定の実施形態において、サンプルは、対象から得られ、対象は、ADを患っているか、またはそれを患うリスクがあると決定され、および/または治療(例えば、薬物の投与)は、対象に実施される。限定されない対象の例には、哺乳動物、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、類人猿、テナガザル、チンパンジー、オランウータン、サル、マカク、および同類のもの)、飼育動物(例えば、イヌおよびネコ)、家畜(例えば、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、およびブタ)および実験動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、およびモルモット)が挙げられる。いくつかの実施形態において、対象は、哺乳動物である。特定の実施形態において、対象は、霊長類である。いくつかの実施形態において、対象は、非ヒト霊長類である。いくつかの実施形態において、対象は、サバンナモンキーである。特定の実施形態において、対象は、ヒトである。対象は、いかなる年齢であっても、いかなる発育段階であってもよく、例えば、成人(例えば、18、19、20または21歳およびそれ以上)、老人(例えば、55歳以上、60歳以上、または65歳以上)、10代(例えば、12歳から19歳)、小児(例えば、1歳から12歳)、乳児(例えば、生後から1歳まで)、または子宮内の哺乳動物である。対象は、オスでもメスでもよい。
【0013】
いくつかの実施形態において、対象は、アルツハイマー病の疑いがあるか、またはそれを発症するリスクがある。いくつかの実施形態において、アルツハイマー病を患っている対象は、本明細書に記載の方法によって、アルツハイマー病を患っていると診断される対象である。いくつかの実施形態において、アルツハイマー病を患っている対象は、医療従事者(例えば、医師)によって、例えば一つ以上の診断症状の存在および/または一つ以上の標準化された診断検査の結果に基づいて、アルツハイマー病を患っていると診断される対象である。アルツハイマー病の疑いがある対象は、しばしば、医療従事者によって、アルツハイマー病を患っているとまだ診断されていない対象である。いくつかの実施形態において、アルツハイマー病の疑いがある対象は、一つ以上のアルツハイマー病の症状を示す場合があるが、これらの症状は、対象がアルツハイマー病を患っていることの決定的な証拠ではない。いくつかの実施形態において、アルツハイマー病の疑いがある対象は、一つ以上のアルツハイマー病の症状を持つ場合があるが、対象がアルツハイマー病を患っていることを確実に示すのに十分なデータがないため、アルツハイマー病を患っていると診断されない。いくつかの実施形態において、アルツハイマー病の疑いがある対象は、ADの疑いがある対象であるが、医療従事者によってADを患っているとまだ診断されていない。
【0014】
いくつかの実施形態において、対象は、本明細書に記載の方法を実行することによって、アルツハイマー病を発症するリスクがある対象であると決定される。いくつかの実施形態において、アルツハイマー病を発症するリスクがある対象は、アルツハイマー病について無症状である対象である。いくつかの実施形態において、アルツハイマー病を発症するリスクがある対象は、一つ以上のアルツハイマー病の症状を持つ対象であるが、これらの症状は、本質的に軽度または一過性である場合がある。いくつかの実施形態において、アルツハイマー病を発症するリスクがある対象は、アルツハイマー病を患っているとまだ診断されていない対象である。いくつかの実施形態において、アルツハイマー病を発症するリスクがある対象は、アルツハイマー病の疑いがある対象である。
【0015】
いくつかの実施形態において、対象は、健常対象である。健常対象は、しばしば、神経変性疾患または障害を患っていない対象である。健常対象は、しばしば、神経変性疾患または障害のいかなる症状も持たない、および/または示さない対象である。いくつかの実施形態において、健常対象は、アルツハイマー病を患っていない対象である。いくつかの実施形態において、健常対象は、アルツハイマー病のいかなる症状も持たない、および/または示さない対象である。特定の実施形態において、健常対象は、18から40歳の対象である。
【0016】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される方法は、アルツハイマー病(AD)を患っているか、またはそれを発症するリスクのある対象を特定する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される方法は、ADを患っているか、またはそれを発症するリスクがあると決定された対象を治療する方法を含む。いくつかの実施形態において、対象は、本明細書に記載の方法によって、アルツハイマー病を患っているか、またはそれを患うリスクがあると特定され、方法は、(例えば、適当な薬物の投与によって)適当な治療を対象に実施することをさらに含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、アルツハイマー病を治療する方法は、アルツハイマー病の発病または進行を抑制するか、または遅延させることを含む。いくつかの実施形態において、アルツハイマー病を治療する方法は、一つ以上のADの症状の発現または進行を抑制するか、または遅延させることを含む。いくつかの実施形態において、アルツハイマー病を治療する方法は、一つ以上のアルツハイマー病の症状を軽減または緩和することを含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、アルツハイマー病を治療する方法は、治療有効量の適当なアルツハイマー薬を対象に投与することを含む。限定されないAD薬の例には、L-セリン、ラリトリン、フェニトイン、ラモトリジン、カルバマゼピン、リドカイン、テトロドトキシン、ニトロインダゾール、スルフォラファンまたはスルフォラファン類縁体、ギャバペンチン、プレガバリン、ミロガバリン、ガバペンチンエナカルビル、フェニブト、イマガバリン、アタガバリン、4-メチルプレガバリン、PD-217,014、リルゾール、エダラボン、テトラベナジン、ハロペリドール、リスペリドン、クエチアピン、アマンタジン、レベチラセタム、クロナゼパム、シタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチン、セルトラリン、オランザピン、バロプロエート、カルバマゼピン、ラモトリジン、ワクチン(例えば、アジュバントを伴うか、または伴わない、免疫応答を引き起こす量のアミロイドペプチド、またはその断片もしくはバリアント)、コリンエステラーゼ阻害剤(例えば、ドネペジル、ガランタミンまたはリバスチグミン)、メマンチン、抗うつ剤、N-メチル D-アスパラギン酸(NMDA)アンタゴニスト、オメガ3脂肪酸、クルクミンまたはクルクミン誘導体、ビタミンE、睡眠改善薬(例えば、ゾルピデム、エスゾピクロンまたはザレプロン)、抗不安薬(例えば、ロラゼパムまたはクロナゼパム)、抗痙攣薬(例えば、バルプロ酸ナトリウム、カルバマゼピン、またはオクスカルバゼピン)、抗精神病薬(例えば、リスペリドン、クエチアピンまたはオランザピン)、カルビドパ・レボドパ、アマンタジン、ドーパミンアゴニスト(例えば、プラミペキソール、ロピニロール、ロチゴチンまたはアポモルヒネ)、モノアミンオキシダーゼB(MAO-B)阻害薬(例えば、セレギリン、ラサギリンまたはサフィナミド)、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害剤(例えば、エンタカポンまたはトルカポン)、抗コリン薬(例えば、ベンズトロピンまたはトリヘキシフェニジル)、および同類のもの並びにそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態において、アルツハイマー薬は、ラリトリン、フェニトイン、ラモトリジン、カルバマゼピン、リドカイン、テトロドトキシン、リルゾール(RILUTEK(登録商標);TIGLUTIK(登録商標))、エダラボン(RADICAVA(登録商標))、ギャバペンチン、プレガバリン、ミロガバリン、ガバペンチンエナカルビル、フェニブト、イマガバリン、アタガバリン、4-メチルプレガバリン、PD-217,014、トリヘキシフェニジル、アミトリプチリン、バクロフェン、ジアゼパム、L-セリン、CK-2127107(レルデセムチブ(reldesemtiv))、ヌシネルセン、オナセムノゲンアベパルボベク(ZOLGENSMA(登録商標))、NUEDEXTA(登録商標)、および同類のものまたはそれらの組み合わせのうちの一つ以上から選択される。いくつかの実施形態において、AD薬は、L-セリン、またはその塩、代謝前駆体、誘導体、ポリマーもしくはコンジュゲートを含む。
【0019】
L-セリン
いくつかの実施形態において、対象は、治療有効量のL-セリン、またはその塩、代謝前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートを投与される。いくつかの実施形態において、対象は、治療有効量の遊離L-セリン、またはその塩を投与される。治療有効量のL-セリンまたは遊離L-セリンは、一つ以上の医薬品添加剤、添加物、担体および/または希釈剤を含む医薬組成物として投与される場合がある。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、L-セリン、またはその塩、代謝前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートを含むか、それからなるか、または本質的にそれからなる治療有効量の組成物を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、遊離L-セリン、またはその塩、誘導体もしくはコンジュゲートを含むか、それからなるか、または本質的にそれからなる治療有効量の組成物を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、L-セリンのポリマー、またはその塩、誘導体もしくはコンジュゲートを含むか、それからなるか、または本質的にそれからなる治療有効量の組成物を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、本質的にL-セリン、遊離L-セリン、またはそれらの塩、前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートからなる組成物は、100%、99%、98%未満、95%未満、90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、または50%未満のL-セリン(wt/wt)を含むタンパク質またはタンパク質分画を除外する。いくつかの実施形態において、本質的にL-セリン、遊離L-セリン、またはそれらの塩、前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートからなる組成物は、5%より大きい、10%より大きい、20%より大きい、30%より大きい、40%より大きい、50%より大きいまたは60%より大きい割合でタンパク質(wt/wt)を含むタンパク質またはタンパク質分画を除外する。いくつかの実施形態において、本質的にL-セリンからなる組成物は、遊離L-セリン、または少なくとも99%、98%、95%、90%、85%または少なくとも80%のL-セリンのアミノ酸含有量を有するL-セリンのポリマーを含む。いくつかの実施形態において、本質的にL-セリンからなる組成物は、クレアチン、クレアチンピルベート、グアニジノ酢酸(GA)、グリコシアミン、N-アミジノグリシン、およびそれらの塩またはエステルを除外する。いくつかの実施形態において、本質的にL-セリンからなる組成物は、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の純度で遊離L-セリンを含む組成物である。特定の実施形態において、本質的にL-セリン、遊離L-セリン、またはL-セリンの塩、前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートからなる組成物は、亜鉛もまた含む組成物である。
【0020】
遊離L-セリンは、単一アミノ酸の形にあるL-セリンまたはその塩を指す。いくつかの実施形態において、組成物は、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の純度で遊離L-セリンを含む。特定の実施形態において、遊離L-セリンは、いかなるその他のアミノ酸とも共有結合していない。
【0021】
いくつかの実施形態において、L-セリンを含む組成物は、その他の活性成分を除外する場合がある。いくつかの実施形態において、組成物は、L-セリンを含有するタンパク質を除外する場合がある。いくつかの実施形態において、組成物は、10kDaより大きい、20kDaより大きい、30kDaより大きい、または50kDaより大きい分子量を有するタンパク質を除外する場合がある。いくつかの実施形態において、組成物は、99%、98%、95%、92%、90%、80%、70%、60%未満、または50%未満のL-セリンを含有するタンパク質を除外する場合がある。いくつかの実施形態において、組成物は、クレアチン、またはクレアチンのあらゆるエネルギー代謝前駆体、例えばグアニジノ酢酸(GA)、それらの等価物、およびそれらの混合物を除外する場合がある。
【0022】
特定の実施形態において、組成物は、L-セリンを含み、限定されないこれの例には、遊離L-セリン、および少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の重量またはアミノ酸含有量でL-セリンを含むポリマーまたはポリペプチドが挙げられる。いくつかの実施形態において、L-セリンのポリマーまたはL-セリンを含むポリペプチドは、共有結合で結合している、2~50,000個、2~500個、2~100個、2~50個、2~20個、2~15個、2~10個、2~9個、2~8個、2~7個、2~6個、2~5個、または2~4個のL-セリンアミノ酸を含む。特定の実施形態において、組成物は、L-セリンを含み、限定されないこれの例には、20%~100%、30%~100%、35%~100%、40%~100%、45%~100%、50%~100%、55%~100%、60%~100%、65%~100%、70%~100%、75%~100%、80%~100%、85%~100%、90%~100%、95%~100%、96%~100%、97%~100%、98%~100%、または99%~100%の含有量(wt/wt)またはアミノ酸含有量(すなわち、L-セリンモノマー/総アミノ酸モノマー)でL-セリンを含むポリマーまたはポリペプチドが挙げられる。
【0023】
限定されないL-セリンの塩の例には、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、アンモニウム塩;無機塩(例えば塩化水素、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、および炭酸水素ナトリウムなど);有機塩(例えばクエン酸ナトリウム、クエン酸塩、酢酸塩、および同類のものなど)が挙げられる。特定の実施形態において、組成物は、アルキル化L-セリン(例えば、アルキル基、または例えば1~20個の炭素原子を含むアルキルを有するL-セリンなど)としてL-セリンを含む。特定の実施形態において、L-セリンの誘導体には、L-セリンエステル、L-セリンジエステル、L-セリンのリン酸エステル、またはL-セリンの硫酸もしくはスルホン酸エステルが挙げられる。限定されないL-セリンのコンジュゲートの例には、ペグ化L-セリン(例えば、一つ以上のポリエチレングリコール(PEG)部分を含むL-セリン)、および脂質付加L-セリンが挙げられる。限定されないL-セリンの前駆体の例には、L-ホスホセリンが挙げられる。
【0024】
限定されないL-セリンの前駆体の例には、対象の消化器系によってL-セリンモノマーに分解される、L-セリンのプロフォーム(pro-form)が挙げられる。いくつかの実施形態において、L-セリンまたはそのコンジュゲートは、徐放性バージョンからなる。いくつかの実施形態において、L-セリンの誘導体は、血液脳関門を通過した後にL-セリンが放出されるプロドラッグを形成する異なる分子にコンジュゲートされる。
【0025】
いくつかの実施形態において、本質的にL-セリンからなる組成物は、ある程度の量のD-セリンを含む場合がある。例えば、本質的にL-セリンからなる組成物は、少量のD-セリン、例えば、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.9%未満、0.8%未満、0.7%未満、0.6%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、0.2%未満、または0.1%未満の重量(例えば、wt/wt)またはアミノ酸含有量(例えば、D-セリン/総アミノ酸含有量)でD-セリンを含む場合がある。例えば、組成物は、0.001%~30%、0.005%~30%、0.1%~30%、1%~30%、2%~30%、3%~30%、4%~30%、5%~30%、6%~30%、7%~30%、8%~30%、9%~30%、10%~30%、0.001%~20%、0.005%~20%、0.1%~20%、1%~20%、2%~20%、3%~20%、4%~20%、5%~20%、6%~20%、7%~20%、8%~20%、9%~20%、または10%~20%のD-セリンを含む場合がある。いくつかの実施形態において、L-セリンを含むか、または本質的にそれからなる組成物は、相当量のD-セリンを含まない。いくつかの実施形態において、L-セリンを含むか、または本質的にそれからなる組成物は、D-セリンを含有しない。
【0026】
任意の適当な方法が、サンプルにおけるリン酸二水素2-アミノエチルおよび/またはタウリンの有無および/または量を検出および/または定量化するために使用され得る。特定の実施形態において、サンプルにおけるリン酸二水素2-アミノエチルおよび/またはタウリンの有無および/または量は、質量分析法(MS)の使用を含む方法によって決定される。
【0027】
本明細書で使用される「量」は、サンプルにおける物質の質量、重量、体積、および/または濃度を指す。量は、平均値(average)、平均値(mean)、最大値、または絶対値である場合がある。最大値は、平均(average)、平均(mean)または絶対最大値である場合がある。特定の実施形態において、量は、サンプルにおける第1の物質(例えば、リン酸二水素2-アミノエチル)の量対サンプル(例えば、同一サンプル)における第2の物質(例えば、タウリン)の量の比である。
【0028】
いくつかの実施形態において、量は、あらかじめ定められた閾値と比較される。いくつかの実施形態において、量は、あらかじめ定められた閾値より下であるか、それと実質的に同じであるか、またはそれより上であるかが決定される。いくつかの実施形態において、あらかじめ定められた閾値は、健常対象から得たサンプルにおける物質の量である。いくつかの実施形態において、あらかじめ定められた閾値は、一つ以上の健常対象から得た一つ以上のサンプルにおいて決定された物質の量である。いくつかの実施形態において、あらかじめ定められた閾値は、一つ以上の健常対象から得た一つ以上のサンプルにおいて決定されたリン酸二水素2-アミノエチルの量である。いくつかの実施形態において、あらかじめ定められた閾値は、一つ以上の健常対象から得た一つ以上のサンプルにおいて決定されたタウリンの量である。いくつかの実施形態において、あらかじめ定められた閾値は、一つ以上の健常対象から得た一つ以上のサンプルにおいて決定されたリン酸二水素2-アミノエチル対タウリンの比である。
【0029】
特定の実施形態において、血漿におけるタウリンのあらかじめ定められた閾値は、200μモル/L(タウリン/血漿量)以下、175μモル/L以下、150μモル/L以下、140μモル/L以下、130μモル/L以下、または125μモル/L以下の量である。特定の実施形態において、血漿におけるリン酸二水素2-アミノエチルのあらかじめ定められた閾値は、100μモル/L(リン酸二水素2-アミノエチル/血漿量)以下、90μモル/L以下、80μモル/L以下、75μモル/L以下、70μモル/L以下、または60μモル/L以下の量である。
【0030】
いくつかの実施形態において、リン酸二水素2-アミノエチル対タウリンの比であるあらかじめ定められた閾値は、0.30以下、0.25以下、0.20以下、0.19以下、0.18以下、0.17以下、0.16以下、0.15以下、または0.14以下の平均(average)、平均(mean)または絶対比である。
【0031】
特定の実施形態において、対象がADを患っているか、またはそれを発症するリスクがあることを示す、対象から得たサンプルにおけるリン酸二水素2-アミノエチルおよび/またはタウリンの量は、あらかじめ定められた閾値よりも、約20倍、約19倍、約18倍、約17倍、約16倍、約15倍、約14倍、約13倍、約12倍、約11倍、約10.5倍、約10倍、約9.5倍、約9倍、約8.5倍、約8倍、約7.5倍、約7倍、約6.5倍、約6倍、約5.5倍、約5倍、約4.5倍、約4倍、約3.5倍、約3倍、約2.9倍、約2.8倍、約2.7倍、約2.6倍、約2.5倍、約2.4倍、約2.3倍、約2.2倍、約2倍、約1.9倍、約1.8倍、約1.7倍、約1.6倍、約1.5倍、約1.4倍、約1.3倍、約1.2、または約1.1倍高い量である
【0032】
特定の実施形態において、対象がADを患っているか、またはそれを発症するリスクがあることを示す、対象から得たサンプルにおけるリン酸二水素2-アミノエチル対タウリンの比は、リン酸二水素2-アミノエチル対タウリンのあらかじめ定められた閾値(比)よりも、約20倍、約19倍、約18倍、約17倍、約16倍、約15倍、約14倍、約13倍、約12倍、約11倍、約10.5倍、約10倍、約9.5倍、約9倍、約8.5倍、約8倍、約7.5倍、約7倍、約6.5倍、約6倍、約5.5倍、約5倍、約4.5倍、約4倍、約3.5倍、約3倍、約2.9倍、約2.8倍、約2.7倍、約2.6倍、約2.5倍、約2.4倍、約2.3倍、約2.2倍、約2倍、約1.9倍、約1.8倍、約1.7倍、約1.6倍、約1.5倍、約1.4倍、約1.3倍、約1.2、または約1.1倍高い、リン酸二水素2-アミノエチル対タウリンの比である。
【0033】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法は、2回以上行われ得、それにより対象におけるアルツハイマー病の進行を監視する、および/または対象におけるアルツハイマー病の治療への反応を監視する。
【0034】
投与
対象に治療を実施するか、または薬物を投与する、あらゆる適当な方法が使用され得る。あらゆる適当な製剤および/または投与経路が、本明細書に開示される治療または薬物の実施または投与のために使用され得る(例えば、Fingl et al. 1975, in “The Pharmacological Basis of Therapeutics”を参照されたく、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。適当な製剤および/または投与経路は、医療従事者(例えば、医師)によって、例えば、対象の疾患、状態、症状、体重、年齢、および/または全体的な健康を考慮して選択され得る。限定されない投与経路の例には、局所(topical)または局所(local)(例えば、経皮(transdermally)または経皮(cutaneously)(例えば、皮膚または表皮上)、眼内または眼上、鼻腔内、経粘膜、耳内、耳の内側(例えば、鼓膜の裏側))、経腸(例えば、消化管を通って、例えば、経口(例えば、錠剤、カプセル、顆粒、液体、エマルジョン、ロゼンジ、またはそれらの組み合わせとして)、舌下、胃栄養チューブによって、直腸、および同類のもので送達される)、非経口投与(例えば、非経口、例えば、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、皮内、皮下、腔内、頭蓋内、関節内、関節腔内、心臓内(心臓の中に)、陰茎海綿体内注射、病巣内(皮膚病変の中に)、骨髄内輸液(骨髄の中に)、髄腔内(脊柱管の中に)、子宮内、膣内、膀胱内注入、硝子体内)、および同類のものまたはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0035】
いくつかの実施形態において、薬物を対象に投与することは、例えば自己投与に関して、または他者(例えば、非医療従事者によって)による対象への投与に関して、薬物を対象に提供することを含む。もう一つの例として、薬物は、本明細書に記載の薬物または治療を患者に提供することを許可する、医師によって書かれた指示(例えば、処方箋)として提供され得る。さらにもう一つの例において、薬物は、対象に提供され得、ここで、対象は、例えば経口で、静脈内に、または吸入器を介して、組成物を自己投与する。
【0036】
あるいは、薬物は、全身的な方法よりも局所的な方法で、例えば、デポ剤または徐放性製剤の使用を含む、皮膚、粘膜または治療に関して興味の対象となる領域への直接適用によって、投与され得る。
【0037】
特定の実施形態において、薬物は、単独で(例えば、単一の活性成分(AI)として、または、例えば、単一の有効活性成分(API)として)投与される。他の実施形態において、薬物は、一つ以上のさらなるAI/APIと組み合わせて、例えば、2つの別々の組成物として、あるいは一つ以上のさらなるAI/APIが医薬組成物中で薬物と一緒に混合されているか、または製剤化されている単一の組成物として、投与される。
【0038】
いくつかの実施形態において、対象に投与されるアルツハイマー病薬の量は、治療有効量である。いくつかの実施形態において、薬物の治療有効量は、有効な治療成績を得るために必要な量である。特定の実施形態において、薬物の治療有効量は、一つ以上のアルツハイマー病の症状を治療する、その重症度を軽減する、その発現を抑制するか、または遅延させる、それを緩和および/または軽減するのに十分な量である。治療有効量の決定は、特に本明細書で提供される詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0039】
特定の実施形態において、治療有効量は、有効な治療効果(例えば、有益な治療効果)を提供するのに十分高い量であり、望ましくない有害反応を最小化するのに十分低い量である。したがって、特定の実施形態において、薬物の治療有効量は、対象によって異なる場合があり、しばしば、対象の年齢、体重、全体的な健康または状態、治療されている病態の重症度および/または対象に投与される薬物の特定の組み合わせに依存する。それゆえ、いくつかの実施形態において、治療有効量は、経験的に決定される。したがって、特定の実施形態において、対象に投与される薬物の治療有効量は、動物試験または臨床研究で有効であるとわかった量、医師の経験、および/または提案される用量範囲もしくは投与ガイドラインに基づいて、当業者によって決定され得る。
【0040】
特定の実施形態において、治療有効量のL-セリンまたは本明細書に開示される組成物は、対象の体重1kgあたり、少なくとも0.1mg/kg、少なくとも5mg/kg、少なくとも10mg/kg、少なくとも15mg/kg、少なくとも20mg/kg、少なくとも25mg/kg、少なくとも50mg/kg、少なくとも100mg/kg、少なくとも250mg/kg、少なくとも500mg/kg、少なくとも1000mg/kg、少なくとも5000mg/kg、または少なくとも7500mg/kgのL-セリン、またはその塩、前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートを含む一つ以上の用量(対象に投与される)を含む。
【0041】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される治療有効量のアルツハイマー病薬または組成物を投与することは、適当な用量を1時間ごとに、2時間ごとに、4時間ごとに、6時間ごとに、8時間ごとに、または12時間ごとに投与することを含む。特定の実施形態において、アルツハイマー病薬は、1日あたり少なくとも1回、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、または少なくとも6回、例えば、1日あたり1~12回、1日あたり1~8回、または1日あたり1~4回投与され得る。特定の実施形態において、本明細書に開示されるアルツハイマー病薬は、1日あたり1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、または12回投与され得る。アルツハイマー病薬は、単一剤形で、または一つ以上の剤形で投与される場合がある。1日量は、単一用量の形で、または複数の部分用量の形で達成され得る。
【0042】
アルツハイマー病薬は、毎日または投与しない日を含むスケジュールで投与され得る。例えば、投与は隔日に行われてもよいし、1週間のうち2、3、4、または5日連続で投与され、その後、1~5日間投与しない日が続いてもよい。
【0043】
アルツハイマー病薬は、治療効果をさらに改善、維持、または保持するために、少なくとも1日間、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも1か月間、少なくとも2か月間、少なくとも3か月間、少なくとも6か月間、少なくとも1年間、少なくとも2年間、またはそれ以上の間、または任意の延長期間投与され得る。特定の実施形態において、アルツハイマー病薬は、1週から10年またはそれ以上の期間投与される。いくつかの実施形態において、治療有効量の薬物、または薬物を含む医薬組成物を投与することは、有効な治療成績を得るのに必要な頻度または間隔で適当な用量を投与することを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される治療有効量の薬物または医薬組成物を投与することは、1時間ごとに、2時間ごとに、4時間ごとに、6時間ごとに、1日3回、1日2回、1日1回、1週間に6回、1週間に5回、1週間に4回、1週間に3回、1週間に2回、1週間に1回、それらの組み合わせで、および/またはそれらの規則的または不規則な間隔で、および/または単に、医療従事者によって必要とされるか、または推奨される頻度または間隔で適当な用量を投与することを含む。いくつかの実施形態において、治療有効量の薬物または治療有効量の薬物を含む医薬組成物は、例えば静脈内投与によって、連続的に投与される。
【実施例
【0044】
実施例1
方法
本実験で使用される血漿は、早期アルツハイマー患者についてのFDA承認第IIa相ヒト臨床試験(NCT03062449)から、およびInnovative Research Inc.(米国ミシガン州ノバイ)によって回収された2バッチのコントロールサンプルから供給された、最初の採血に由来した。独立したサンプルは、各群で異なる個人を用いて2つのコホートに分けられた。第1のコホートは、n=11の早期アルツハイマー患者およびn=11のコントロールを含んだ。第2のコホートは、こちらも異なる個人を用いてn=14の異なるアルツハイマー患者およびn=14のコントロールを含んだ。
【0045】
血漿は、K2-EDTA管に回収され、回収後に複数回これを転倒させた。サンプルを2000xgで15分間、4℃で直ちに遠心分離した。採血と凍結との間の時間は、1時間未満で、サンプルは、-80℃で保管された。血漿サンプルは、冷蔵庫(4℃)で2時間解凍され、等体積の冷10%(w/v)トリクロロ酢酸(TCA)と混ぜ合わせた。サンプルを室温で2時間沈殿させ、続いて14,000xgで5分間遠心分離した。上清をピペットで除去し、14,000xgで5分間、遠心式フィルター(0.2μm PVDF、Millipore Ultrafree(登録商標)-MC)を用いて濾過した。
【0046】
Hitachi Reactionカラム(PN 855-3533)、高速生体液分析分析カラムLi型樹脂#2622SC 6mm ID x 40L 060928C(PN855-4515)、およびAmmonia Filterカラム(Ion exchange 4.6 x 40 Column #2650L、PN 855-3523)を備えたHitachi Amino Acid Analyzer L8900に、誘導体化していない上清(20μL)を135℃で注入した。Hitachiプリメイドバッファーを以下のように使用した:(B1)PF-1/AN0-5031、(B2)PF-2/AN0-5032、(B3)PF-3/AN0-5033、(B4)PF-4/AN0-5034、(B6)PF-5/AN0-5035、(R1)ニンヒドリン溶液、および(R2)酢酸リチウム二水和物のニンヒドリン緩衝液。洗浄溶液には、(B5)5%エタノール、(R3)10%メタノール、および(C1)10%メタノールが含まれた。分離は、流速0.54mL/分のポンプ1、流速0.47mL/分のポンプ2、135℃に設定したリアクターカラム、146分のグラジエント溶出:0.00分=100% B1、カラムオーブン温度 35℃、50% R1、50% R2;16.0分=100% B1;16.1分=81% B1、19% B2、カラムオーブン 58℃;41.0分=カラムオーブン 32℃;57.0分=カラムオーブン 70℃;69.5分=カラムオーブン 65℃;70.0分=15% B1、75% B2、10% B3;88.0分=カラムオーブン 60℃;94.0分=20% B2、80% B4;94.1分=25% B2、75% B4;109.0分=25% B2、75% B4、カラムオーブン 70℃;109.1分=100% B4;123.0分=100% B4;123.1分=100% B6;127.0分=50% R1、50% R2;127.1分=100% R3;129.0分=100% B6、129.1分=100% B1;131.0分=カラムオーブン 35℃;132.0分=100% R3;132.1分=50% R1、50% R2;146.0分=100% B1によって達成された。アミノ酸標準(Sigma A6407-酸性アミノ酸および中性アミノ酸+Sigma A6282-塩基性アミノ酸)を等濃度に混合し、5、10、25、50 100、250、500、1000μmol/Lの濃度で検量線を作成した。全てのアミノ酸曲線は、この範囲において線形であった(R=99%)。さらに、リン酸二水素2-アミノエチル(Sigma-Aldrich P0503-1G)およびタウリン(Sigma-Aldrich T0625-10G)について保持時間のチェックを行った。下端曲線(1.4、3.5、7.1、14.2、70.9μmol/L)は、リン酸二水素2-アミノエチルが1.4μmol/L(R=99.9%)まで線形であることを示した。
【0047】
サンプルにおけるリン酸二水素2-アミノエチルの確認は、三連四重極型質量分析を通じて行われた。AD患者およびコントロールからの血漿サンプルを上記のようにタンパク質除去し、10μlの上清、70μlのホウ酸塩緩衝液および20μlのAQCを用いて、6-アミノキノリル-N-ヒドロキシスクシンイミジルカルバメート(AQC、WAT052880、Waters Corp、Milford、MA)で誘導体化した。AD血液サンプルは、コントロールサンプルと同じように、一緒に混ぜ合わせられ、単一のサンプルとなり、1つのサンプルにつき複数回注入してThermo TSQ Quantiva(商標)三連四重極型質量分析計で分析した。質量分析計は、Thermo Vanquish(商標)ポンプ、オートサンプラー、H-ESIプローブ、および65℃に設定した加熱カラムコンパートメントを備えていた。Thermo Scientific OPTON-10005 Genius 3022デュアルN2発生装置(Peak Scientific、Billerica、MA)は、質量分析計に精製窒素を供給した。分離は、Kinetex C-18カラム(1.7μm 100A、100 x 2.1mm、00D-4475-AN);およびグラジエント溶出(流速0.5ml/分、移動相A=氷酢酸(Fisher Scientific A385-500)でpH5.0に調整した20mM 酢酸アンモニウム(Fisher Scientific A11450)≧99%、B=100%メタノール≧99.9% Chromasolv;34885-4x4、Honeywell Burdick&Jackson、Muskegon、MI):初期条件 99.8% A、1.0分 99.8% A、1.5分 40% A、2.0分 25% A、2.5分 25% A、2.6分 10% A、5.5分 10% A、6分 98% A、8分 98% A(全て曲線5に設定)を用いて達成された。質量分析計は、以下の設定:スプレー電圧=静電;シースガス=5.6Arb;補助ガス=23.5Arb;スイープガス=1.2Arb;イオン移動管=150℃;蒸発温度=450℃;Q1分解能=0.7FWHM;Q3分解能=0.7FWHM;およびCIDガス=2mTorrで、ポジティブモード(4400V)で実行された。誘導体化されたリン酸二水素2-アミノエチルのスキャンは、以下のトランジション(312~171.2m/z 衝突エネルギー(CE) 17.1、312~142m/z CE 17.1、312~312m/z CE 2、RFレンズ 90)で実行された。この実験は、再現性を確実にするために2回目が繰り返された。この方法の検出限界は、0.004μg/mlであり、定量化の下限値は、0.01μg/mlであった。検量線は、20pg/ml、40pg/ml、0.2ng/ml、0.4ng/ml、2ng/ml、4ng/ml、10ng/ml、20ng/ml、0.1μg/ml、0.2μg/mlの濃度で作成され、線形性は、99%のR値を有した。
【0048】
結果および考察
リン酸二水素2-アミノエチルは、エタノールアミンの2番目の炭素に結合したリン酸基からなり、141.06g/molの分子量を有する。それは、エタノールアミンから生合成され得(Human Metabolome Database;HMDB0000224)、ホスホチジルコリン合成に関与し、ホスホチジルエタノールアミンの前駆体である。それは、242℃の融点を有する固体である。
【0049】
1回目のHitachiアミノ酸分析計実験において、AD患者(n=11)におけるリン酸二水素2-アミノエチルのピークが一貫して高いことが分かったが、一方でコントロール(n=11)におけるリン酸二水素2-アミノエチルは、存在したとしても、検出限界を下回った。AD患者の新たなコホート(n=14)からの血漿および新たな一揃いのコントロール血漿(n=14)を用いて、この実験を繰り返した。2回目の実験において、8個のコントロール血漿サンプルで過度に大きなタウリンのピークが見られた。
タウリンは、クロマトグラフィーの初期にC-18カラムで分離した後、リン酸二水素2-アミノエチルの近くに溶出するので(それぞれ1.6および2.0分;図1)、いくつかのサンプルにおける高いタウリン濃度が、これら2つのピークの間に分離の問題を引き起こした。これは、これらのサンプルにおけるリン酸二水素2-アミノエチルの曲線下面積を人為的に大きくした。この問題を修正するために、マン・ホイットニーの両側U検定を用いて、両方の実験におけるリン酸二水素2-アミノエチル/タウリン比を算出し、AD患者における比とコントロールにおける比との間に大きな有意差(p<0.0001)を特定した(表1)。
【表1】
【0050】
正常な人の血漿中タウリン濃度は、25~150μモル/Lの範囲で、低いと一般に考えられている(Jacobsen and Smith 1968)。サンプルにおける血漿中タウリン濃度の測定値は、本実験では個人差が大きく(3~403μモル/L)、8/50が150μモル/Lを超える値を示した。我々は、これら8つのサンプルにおいて値が高いことの原因をタウリンが豊富な血小板または白血球による血漿のコンタミに起因するものとしており(Jacobsen and Smith 1968)、これらのサンプルは全て、Innovative Research Inc.から受け取った単一のバッチのコントロールに由来しているが、一方で第II相AD試験からのサンプルは、どれ一つとして同じパターンのコンタミを示さず、Innovative Research Inc.から受け取った第1のバッチに由来するコントロールのいずれにおいても同じ問題が生じなかったことに留意されたい。
【0051】
タウリンが何らかの理由で、8人のコントロール患者において自然に高かった可能性を除外することはできない。高いタウリン濃度は、細胞外のリン酸二水素2-アミノエチルの増加をもたらすことを示している。インビボウサギモデルにおいて、背側海馬へのタウリン(2mM)の投与は、観察されるリン酸二水素2-アミノエチルの経時的な増加をもたらした(Lehmann and Hamberger 1984)。その研究は、タウリンおよびリン酸二水素2-アミノエチルが一緒になると、カルシウム輸送の減少をもたらし得る、これらの組織のリン脂質含有量の減少として、シナプトソーム膜カルシウムフラックスを安定化させる可能性があると結論付けた(Lehmann and Hamberger 1984)。しかしながら、血漿中天然由来のタウリンが高い場合、リン酸二水素2-アミノエチル/タウリン比で補正され得る。
【0052】
他の研究との濃度比較として、血漿中アミノ酸濃度を報告する研究のほんのわずかだけが、リン酸二水素2-アミノエチル濃度を報告していることに留意されたい。そのような報告の中で、健常成人の基準範囲は、「検出されず」から69μモル/Lまでである(Perry and Hansen 1969, McGale et al. 1977, Slocum and Cummings 1991, Tan and Gajra 2006)。メイヨー・クリニックは、アミノ酸の基準範囲を報告しており、正常なリン酸二水素2-アミノエチル濃度を以下の通りに示している:18歳以上の成人は12未満、2~17歳の小児は5未満、2歳未満の小児は6未満(URL:https://neurology.testcatalog.org/show/AAQP)。アミノ酸の定量化は、利用される方法に大きく依存し、回収、処理、保管の方法、および検出に使用される器具類のバリエーションが、変動性を生む。我々の研究の強みは、全てのサンプルが同じプロトコールを用いて回収され、同じ機器で解析されたため、高度に比較可能なデータが得られたことである。
【0053】
リン酸二水素2-アミノエチルは、AD血漿中で顕著に見られたが、コントロールサンプルにおいては認識できるほど見られなかったので、ADの血液バイオマーカーとして有望である。採血は診療において日常的であるので、診断上の指標として使用される可能性があり、ほとんどの大きな病院および診断研究室にある標準的なアミノ酸分析計を用いて検出され得る。さらに、リン酸二水素2-アミノエチルの蓄積は、ADにおいて異常をきたす細胞経路についての重要な側面を教示する場合がある。
【0054】
リン酸二水素2-アミノエチルの確認は、2つの実験で質量分析法によって実行された。リン酸二水素2-アミノエチルは存在し、ADサンプルにおける濃度は、コントロール血漿サンプルにおけるそれよりも5~10倍高かった。第1のHitachiアミノ酸分析計分析におけるリン酸二水素2-アミノエチルもまた、ADサンプルの方がコントロールで見られたものよりも10倍高かった。
【0055】
第1の質量分析計実験解析において、合わせたADサンプルの曲線下面積は、合わせたコントロールサンプルの10倍の面積であり、注入間でわずかな変動があった(ADの平均値=208+/-13(標準偏差)、コントロールの平均値=27+/-13、n=5 注入;n=11 ADサンプル;n=10 コントロールサンプル;図2a、b、e、f)。第2の再現において、ADサンプルは、コントロールサンプルと比較して5倍の面積を有した(平均値55+/-9 AD;10+/-6 コントロール;n=4 注入;n=11 ADサンプル;n=11 コントロール。図2c、d)。面積は、第1の実験においてのみADサンプルで定量限界(LOQ)を上回り(0.1μg/ml)、他の全ては、LOQを下回ったが、検出限界(LOD)を上回った。
【0056】
ピークはMS/MS分析において小さかったが、注入量に一致して面積が倍増しており(図2a、b)、低濃度スパイクは、リン酸二水素2-アミノエチル標準の保持時間と一致して2.05分のピークのみを増加させることに留意された(図2c、d、g)。血漿サンプルでのみ見られるが、リン酸二水素2-アミノエチル標準では見られない2.10におけるピークの正体は分からない(図2)。
【0057】
リン酸二水素2-アミノエチルは、細胞膜の構造および機能において重要であり、哺乳動物において、ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルコリンの前駆体である。リン酸二水素2-アミノエチルは、タンパク質を原形質膜に結合する哺乳動物グリコシルホスファチジルイノシトールアンカー型タンパク質(GPI)の生合成に必須であり、進化的に高度に保存されている(Kamitani et al., 1992)。GPIの生物活性は、完全には知られていないが、細胞間コミュニケーション、細胞シグナル伝達、シグナル伝達、および脂質ラフト輸送に関与する可能性がある(Paulick et al., 2008)。研究によって、GPI合成におけるリン酸二水素2-アミノエチルの直接の原料は、ホスファチジルエタノールアミンであることが示唆されている(Menon et al,. 1993)。
【0058】
細胞培養において、リン酸二水素2-アミノエチルは、ミトコンドリア膜電位を攪乱することによって、ミトコンドリア呼吸を阻害し、アポトーシスを誘導することが示されている(Modica-Napolitano and Renshaw 2004, Ferreira et al,. 2013)。血液中リン酸二水素2-アミノエチル濃度の増加の影響は、全く知られていない。脳におけるリン酸二水素2-アミノエチルの濃度が、AD患者の方がコントロールよりも低いという逆の知見は、興味深い(Ellison et al.. 1987)。その研究において、リン酸二水素2-アミノエチル濃度は、死後のAD脳組織の側頭皮質(64%、ブロードマン21野)、前頭皮質(48%、ブロードマン9野)、および海馬(40%)において有意に低かったが、頭頂葉皮質(ブロードマン3~12野)または後頭葉皮質(ブロードマン17野)においてはそうでなかった。ハンチントン病において、リン酸二水素2-アミノエチルは、コントロール組織と比較したとき、CSFおよび死後脳組織の両方でより低かった。有意差は、尾状核、被殻、および側坐核で見られたが、前頭皮質では見られなかった(Ellison et al.. 1987, Koroshetz et al., 1997)。同様に、リン酸二水素2-アミノエチルの有意な減少は、プロトン磁気共鳴分光イメージング実験によると、コントロール脳組織と比較したパーキンソン病(PD)患者の被殻においてもまた、確認されている(Hattingen et al., 2009)。Hattingen et al., 2009は、これがミトコンドリア機能障害による膜のターンオーバーの減少を反映していることを示唆する。ミトコンドリア機能不全は、一部の研究者によってADの要因と考えられている(Sheng et al., 2012)。細胞膜の合成における基質としてのリン酸二水素2-アミノエチルの重要性、およびその濃度がAD患者の脳ではなく血液において増加することは、この分子のさらなる研究が神経変性の研究に新たな洞察をもたらすかもしれないということを示唆する。
【0059】
L-セリンがADの進行を緩徐化し得るかどうかを試験する、早期アルツハイマー病についての第IIa相臨床試験(NCT03580616)と交差する、興味の対象となる一つの経路は、セリンパルミトイルトランスフェラーゼが、スフィンゴイド塩基を形成するL-セリンとパルミトイルコエンザイムAの反応を触媒する、デノボスフィンゴ脂質生合成経路である。スフィンガニンおよびスフィンゴシンの両方の分解が、リン酸二水素2-アミノエチルの産生をもたらすことは興味深い(Duan and Merrill 2015; Harrison et al., 2018)。さらに、インビトロにおいて、スフィンガニンキナーゼの増加は、遊離スフィンガニンの濃度を減少させ、培養海馬神経細胞における軸索伸長の破壊をもたらすことが示されている(van Echten-Deckert 1998)。スフィンゴ脂質代謝は、代謝産物が細胞シグナル伝達に関与するので強く制御されると考えられる(van Echten-Deckert 1998)。スフィンゴ脂質生合成経路がADにおいて攪乱された場合、下流のリン酸二水素2-アミノエチルの増加が起こり得る。さらに、経路を前に進めるためにL-セリンがさらに必要になるということも起こり得る(Metcalf et al., 2018)。さらに、原形質膜のリン脂質組成の変化は、異常なシグナル伝達を引き起こし得、膜破壊は、ADにおける神経変性の原因になり得ることもまた示唆されている(Wells et al., 1995; Gonzalez-Dominguez et al., 2014)。
この経路におけるリン酸二水素2-アミノエチルの増加を予測する研究は、我々の実験で経験的に示されるように、ADの病因に新たな洞察をもたらす可能性がある。
【0060】
低ホスファターゼ症として知られる珍しい遺伝性疾患において、個人は、主に尿中のリン酸二水素2-アミノエチルが増加している(Goyer 1963, Imbard 2012, Whyte 2016, Salles 2020)。疾患は、組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNSALP)遺伝子の変異によって起こると考えられている(Salles 2020)。この疾患の症状は、非常に多様であるが、いつも骨および歯石灰化に問題があり、頻繁に神経学的合併症を伴う(Linglart and Biosse-Duplan 2016)。
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【0061】
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【0065】
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【0066】
~より大きい(more/greater)または未満と付く整数への言及は、それぞれ、言及される数より大きい、またはより小さいあらゆる数を含む。それゆえ、例えば、100未満という言及は、99、98、97など、数字の1までの全ての数を含み、10未満は、9、8、7など、数字の1までの全ての数を含む。
【0067】
本明細書で使用される全ての数値または範囲は、文脈上明白に別段の指示がない限り、かかる範囲内の値および整数の分数、ならびにかかる範囲内の整数の分数を含む。それゆえ、説明のためになるが、例えば1~10などの数値範囲への言及は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、並びに1.1、1.2、1.3、1.4、1.5などを含む。したがって、1~50という範囲への言及は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20など、50まで(50を含む)、並びに1.1、1.2、1.3、1.4、1.5など、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5などを含む。
【0068】
一連の範囲への言及は、その一連の範囲内の異なる範囲の境界の値を組み合わせた範囲を含む。それゆえ、説明のためになるが、例えば、1~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、60~75、75~100、100~150、150~200、200~250、250~300、300~400、400~500、500~750、750~1,000、1,000~1,500、1,500~2,000、2,000~2,500、2,500~3,000、3,000~3,500、3,500~4,000、4,000~4,500、4,500~5,000、5,500~6,000、6,000~7,000、7,000~8,000、または8,000~9,000という一連の範囲への言及は、10~50、50~100、100~1,000、1,000~3,000、2,000~4,000などの範囲を含む。
【0069】
修正は、本技術の基本的な態様から逸脱することなく上述の内容に対して行われ得る。本技術は、一つ以上の具体的な実施形態に関連して実質的に詳細に記載されているが、当業者は、本出願に具体的に開示される実施形態に対して変更が行われ得るが、これらの修正および改善は、本技術の範囲および趣旨の範囲内であることを認識する。
【0070】
本発明は、概して、多数の実施形態および態様を記載するために肯定的な言葉を用いて本明細書に開示される。本発明は、例えば物質または材料、方法のステップおよび条件、プロトコール、または手順などの特定の特許発明の対象が完全に、または部分的に除外される実施形態もまた、具体的に含む。例えば、本発明の特定の実施形態または態様において、材料および/または方法のステップが除外される。それゆえ、概して、本発明が何を含まないかについて本明細書で表現されていないにもかかわらず、本発明で明確に除外されていない態様は、やはり本明細書に開示される。
【0071】
本明細書で説明的に記載される技術は、本明細書で具体的に開示されていないあらゆる要素がない状態で適切に実施され得る。それゆえ、例えば、本明細書のそれぞれの例において、「を含む」、「本質的に~からなる」、および「からなる」という用語のいずれかが、他の2つの用語のいずれかと置換され得る。本明細書に記載される技術のいくつかの実施形態は、本明細書で具体的に開示されていない要素がない状態で適切に実施され得る。したがって、いくつかの実施形態において、「含む」という用語は、「本質的に~からなる」または「からなる」またはそれらの文法的なバリエーションと置換され得る。「本質的に~からなる」組成物は、請求項に記載の活性成分(例えば、活性成分(AI)または有効活性成分(API);例えば、L-セリン、またはその塩、代謝前駆体、誘導体もしくはコンジュゲート)のみを含む組成物を指し、この組成物は、製剤材料、添加剤、添加物、担体、防腐剤、希釈剤、溶媒、充填剤、塩、緩衝液、コーティング、結合剤、および滑沢剤などのその他の成分を含む場合があり、この組成物は、請求項に記載されていないその他のAPIを除外する。
【0072】
「一つの(a)」または「一つの(an)」という用語は、要素のうちの一つまたは要素のうちの二つ以上のいずれかが記載されていることが文脈上明白でない限り、それが修飾する要素の一つまたは複数を指し得る(例えば、「一つの試薬(a reagent)」は一つ以上の試薬を意味し得る)。本明細書で使用される「約」という用語は、基礎となるパラメータの10%以内の値(すなわち、プラスマイナス10%)を指し、一連の値の最初に「約」という用語を用いた場合、それらの値のそれぞれを修飾する(すなわち、「約1、2および3」は約1、約2および約3を指す)。例えば、「約100グラム」の重量は、90グラムから110グラムまでの重量を含み得る。本明細書で使用される「実質的に」という用語は、「少なくとも95%」、「少なくとも96%」、「少なくとも97%」、「少なくとも98%」、または「少なくとも99%」を意味する、値の修飾語句を指し、100%を含む場合がある。例えば、実質的にXを含まない組成物は、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、または1%未満のXを含む場合がある、および/またはXは組成物中に存在しないか、または検出できない場合がある。
【0073】
それゆえ、本技術が、代表的な実施形態および任意的な特徴によって具体的に開示されているが、当業者であれば本明細書に開示される概念の修正およびバリエーションを用いることができ、かかる修正およびバリエーションは、本技術の範囲内であると見なされることが理解されるべきである。
図1
図2
【国際調査報告】