(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-15
(54)【発明の名称】トランスアミナーゼ突然変異体及びその応用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/54 20060101AFI20240207BHJP
C12N 9/10 20060101ALI20240207BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240207BHJP
C12P 41/00 20060101ALI20240207BHJP
C12P 19/26 20060101ALI20240207BHJP
C12N 15/10 20060101ALN20240207BHJP
【FI】
C12N15/54
C12N9/10
C12N15/63 Z
C12P41/00 H
C12P19/26
C12N15/10 200Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547522
(86)(22)【出願日】2021-07-06
(85)【翻訳文提出日】2023-08-04
(86)【国際出願番号】 CN2021104841
(87)【国際公開番号】W WO2022166103
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】202110150760.0
(32)【優先日】2021-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110451381.5
(32)【優先日】2021-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516336828
【氏名又は名称】凱菜英医藥集團(天津)股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】ASYMCHEM LABORATORIES (TIANJIN) CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100158920
【氏名又は名称】上野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】洪 浩
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ,ゲイジ
(72)【発明者】
【氏名】肖 毅
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 娜
(72)【発明者】
【氏名】焦 学成
(72)【発明者】
【氏名】▲馬▼ 玉磊
(72)【発明者】
【氏名】牟 慧▲艷▼
(72)【発明者】
【氏名】王 祖建
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼ ▲凱▼▲華▼
(72)【発明者】
【氏名】李 シャン
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼ 桐
(72)【発明者】
【氏名】曹 珊
【テーマコード(参考)】
4B064
【Fターム(参考)】
4B064AE01
4B064CA21
4B064CB30
4B064CC24
4B064DA16
(57)【要約】
トランスアミナーゼ突然変異体及びその応用を提供する。当該トランスアミナーゼ突然変異体は、配列番号2に1つ以上のアミノ酸突然変異が発生して得られたものであるか、又は野生型CvTAトランスアミナーゼの配列番号1を参照として、保存的アミノ酸に突然変異が発生した突然変異体である。野生型トランスアミナーゼに比べ、突然変異体の触媒活性はいずれも異なる程度向上し、そのため、キラルアミン系化合物合成の生産効率を向上させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスアミナーゼ突然変異体であって、(1)配列番号2に、下記から選ばれるいずれか1つのアミノ酸突然変異が発生して得られたものであるか、
【表1】
又は
(2)野生型トランスアミナーゼの保存的アミノ酸の突然変異から得られ、野生型CvTAトランスアミナーゼの配列番号1を参照とし、前記保存的アミノ酸に、(a)L59A+F88A、(b)L59A+F88A+F89D、(c)L59A+F88A+F89D+N86H、(d)L59A+F88A+F89D+N86H+Y85Mのうちのいずれかの組合せ突然変異が発生し、前記野生型トランスアミナーゼは、下表に示される酵素番号が1~54であるいずれか1つに由来するものであることを特徴とするトランスアミナーゼ突然変異体。
【表2】
【請求項2】
請求項1に記載のトランスアミナーゼ突然変異体をコードすることを特徴とするDNA分子。
【請求項3】
請求項2に記載のDNA分子が連結されていることを特徴とする組換えプラスミド。
【請求項4】
キラルアミン化合物の合成方法であって、請求項1に記載のトランスアミナーゼ突然変異体を用いて、アミノ供与体の作用下で、式Iで表されるケトン類基質に対してアミノ基転移反応を行い、前記キラルアミン化合物を獲得し、
【化1】
Ar1は、置換又は非置換のアリール基或いはアリーレン基、又は置換又は非置換のヘテロアリーレン基を表し、
Ar2は、置換又は非置換のアリール基、又はシクロアルキル基を表し、及び
任意的なRであり、Rは、C原子数が1~5の置換又は非置換のアルキレン基を表し、前記Rは前記Ar1或いはAr2と連結して環を形成し、
ここで、前記置換のアリール基或いはアリーレン基、前記置換のヘテロアリーレン基或いは前記置換のアルキレン基の置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ基或いはアミノ基から選択され、前記置換のヘテロアリーレン基中のヘテロ原子はN、O或いはSから選択される、キラルアミン化合物の合成方法。
【請求項5】
前記置換のアリール基或いはアリーレン基中の置換基は、ハロゲン或いは-S-CH
3であり、前記ハロゲン或いは-S-CH
3は、前記アリール基或いはアリーレン基のオルト位、メタ位或いはパラ位のうちのいずれか1つ以上の位置に位置する請求項4に記載の合成方法
【請求項6】
前記ハロゲンは、F、Cl或いはBrである請求項5に記載の合成方法。
【請求項7】
式Iで表されるケトン類基質は、
i)前記Ar1は、置換又は非置換のアリール基或いはアリーレン基を表し、前記Ar2は、非置換のアリール基を表し、前記Rは、C原子数が1~5の非置換のアルキレン基を表し、且つ前記Rは前記Ar1と連結して環を形成するもの、
ii)前記Ar1は、非置換のヘテロアリーレン基を表し、前記Ar2は、ハロゲン置換のアリール基を表し、前記Rは、ヒドロキシ基置換のC原子数が1~5のアルキレン基を表し、且つ前記Rは前記Ar1と連結して環を形成するもの、
iii)前記Ar1は、ハロゲン及びアミノ基置換のアリーレン基を表し、前記Ar2は、炭素数が3~8のシクロアルキル基であるもの、
iv)前記Ar1は、非置換のシクロアルキル基或いはアリール基を表し、前記Ar2は、置換又は非置換のシクロアルキル基或いはアリール基であるもの、
v)前記Ar1は、ヒドロキシ基、メチル基、エチル基或いは-S-CH
3置換のシクロアルキル基或いはアリール基を表し、前記Ar2は、非置換のアリール基或いはアルキル基であるもの、のいずれか1つである請求項4に記載の合成方法。
【請求項8】
前記ケトン類基質は、
【化2】
請求項4に記載の合成方法。
【請求項9】
前記アミノ供与体は、イソプロピルアミン、イソプロピルアミン塩酸塩、アラニン、n-ブチルアミン或いはアニリンである請求項4に記載の合成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物酵素応用の分野に関し、具体的に言えば、トランスアミナーゼ突然変異体及びその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
大きな立体障害のキラルアミン化合物(本願では、潜在的キラルカルボニル基の隣の基がメチル基より大きい一種類の化合物を指す。)は、一種類の光学活性物質及び機能性分子であり、薬物及びリガンドの合成に広く応用される重要なキラル中間体である。しかしながら、このようなキラル化合物の合成に関する報告は少なく、しかも満足できる結果が得られていないのが現状である。例えば、カルボニル基の一側に大きな立体障害のフェニルt-ブチルアミノエステルがあるものの選択性は76%である(Angew.Chem.Int.Ed.2007,46,4367)。現在、小さな立体障害(本願では、潜在的キラルカルボニル基の隣の基がH又はメチル基である一種類の化合物を指す。)の不斉水素化反応に対して、一部の金属触媒、例えばルテニウム、ロジウム、パラジウムなどはいずれも、良い立体選択性を得たことが報告されているが、カルボニル基の近接立体障害が大きいにつれて、触媒効果が悪くなる。
【0003】
不斉水素化とは、ファインケミカル及びプロドラッグを生産するための1種類の技術であるが、この技術は、いくつかの欠点があり、例えば高圧水素ガスを用いる必要があり、生産の安全性に大きな挑戦をもたらし、高価な遷移金属触媒が必要であり、これらの有毒な触媒が後処理過程で慎重に取り扱い、且つ除去する必要があるる。また、この過程では、対応するリガンドをスクリーニングするのに多大な労力や物資を要する。多くの場合、この過程には、立体選択性が高くないという問題も存在する(Science,2010,329,305)。
【0004】
トランスアミナーゼによって触媒される不斉アミノ基転移反応は、キラルアミン化合物の合成に、経済的で、環境に優しい合成考え方を提供した。しかし、トランスアミナーゼの構造に大小2つのポケットが天然に存在するため、転化可能な基質には大きな限界があり、現在は、大きな立体障害のキラルアミン化合物に対して触媒活性を有するトランスアミナーゼがまだ見出されていない。一般的に言えば、潜在的キラルカルボニル基の隣の基が、メチル基より大きい場合に、トランスアミナーゼの小ポケットには受け入れられることができない。そのため、トランスアミナーゼが大きな立体障害のキラルアミン化合物の合成を触媒することは、長年にわたる存在する挑戦である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の主な目的は、トランスアミナーゼが大きな立体障害のキラルアミン化合物の合成を触媒しにくいという従来技術における問題を解決するために、トランスアミナーゼ突然変異体及びその応用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を実現するために、本発明の一態様によれば、トランスアミナーゼ突然変異体を提供し、当該トランスアミナーゼ突然変異体は、(1)配列番号2に、F22A、L59A、W60A、C61A、F88A、Y89A、K90A、T107A、N151A、Y153A、F166A、E171A、K193A、V234A、I262A、I297A、K304A、F320A、T321A、E368A、L380A、F397A、R405A、F409A、D416A、S417A、C418A、S424Aのいずれか1つのアミノ酸突然変異が発生して得られたもの、又は(2)配列番号2に、F88A、と、L59、P83、F84、Y85、N86、T87、Y89、K90、T91、F409及びA417の位置のうちのいずれか1つ以上の位置との突然変異であるアミノ酸突然変異が発生して得られたもの、又は(3)野生型トランスアミナーゼの保存的アミノ酸が突然変異して得られ、野生型CvTAトランスアミナーゼの配列番号1のものを参照とし、保存的アミノ酸が配列番号1の第54~63位及び第84~96位に位置し、保存的アミノ酸に、L59A、W60A、C61A、F84S/C/G/L/R/V/P/A/M/E/K/W/Q/T/H/D/Y/N/I、Y85M、N86H/Q/P/D/K/Y/S/L/M/I/T/W/F/V/R/S/K/G、T87K/C/E/N/Q/H/F/R/D/I/M/W/A/P/V/S/L/G、F88A、Y89D/A/、K90A/F/G/D/C/S/A/E/L/V/I/R/T/Y/M/H/N/P/Q/W、T91M/W/V/G/C/R/A/F/I/M/E/L/S/K/H/Q/D/N/P/Yのうちの少なくともいずれか1つの突然変異が発生して得られたものから選択される。「/」は「又は」を表す。
【0007】
さらに、(3)において、野生型トランスアミナーゼは、配列番号1と69%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上の相同性を有し、且つ、保存的アミノ酸を有する野生型トランスアミナーゼであり、好ましくは、野生型トランスアミナーゼは、表9及び表11に示す酵素番号が1~54に示される供給源のうちのいずれか一つに由来する。
【0008】
さらに、(3)において、保存的アミノ酸に、(a)L59A+F88A、(b)L59A+F88A+F89D、(c)L59A+F88A+F89D+N86H、(d)L59A+F88A+F89D+N86H+Y85Mのうちのいずれか一つの組合せ突然変異が発生する。
【0009】
さらに、(1)又は(2)において、アミノ酸突然変異は、以下のいずれか1つである。
【表1】
【0010】
上記の目的を実現するために、本発明の第2態様によれば、上記のいずれか1つのトランスアミナーゼ突然変異体をコードするDNA分子を提供する。
【0011】
上記の目的を実現するために、本発明の第3態様によれば、上記のDNA分子が連結されている組換えプラスミドを提供する。
【0012】
上記の目的を実現するために、本発明の第4態様によれば、キラルアミン化合物の合成方法を提供し、上記のいずれか1つのトランスアミナーゼ突然変異体を用いて、アミノ供与体の作用下で、式Iで表されるケトン類基質に対してアミノ基転移反応を行い、キラルアミン化合物を獲得し、
【化1】
Ar1は、置換又は非置換のアリール基或いはアリーレン基、又は置換又は非置換のヘテロアリーレン基を表し、Ar2は、置換又は非置換のアリール基、又はシクロアルキル基を表し、任意的なRであり、Rは、C原子数が1~5の置換又は非置換のアルキレン基を表し、RはAr1或いはAr2と連結して環を形成し、ここで、置換のアリール基或いはアリーレン基、置換のヘテロアリーレン基或いは置換のアルキレン基の置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ基或いはアミノ基から選択され、置換のヘテロアリーレン基中のヘテロ原子はN、O或いはSから選択される。
【0013】
さらに、置換のアリール基或いはアリーレン基中の置換基はハロゲン或いは-S-CH3であり、ハロゲン或いは-S-CH3は、アリール基或いはアリーレン基のオルト位、メタ位或いはパラ位のうちのいずれか1つ以上の位置に位置し、好ましくは、ハロゲンは、F、Cl或いはBrである。
【0014】
さらに、Ar1は、置換又は非置換のアリール基或いはアリーレン基を表し、Ar2は、非置換のアリール基を表し、Rは、C原子数が1~5の非置換のアルキレン基を表し、且つRは、Ar1と連結して環を形成する。
【0015】
さらに、Ar1は、非置換のヘテロアリーレン基を表し、Ar2は、ハロゲン置換のアリール基を表し、Rは、ヒドロキシ基置換のC原子数が1~5のアルキレン基を表し、且つRは、Ar1と連結して環を形成する。
【0016】
さらに、Ar1は、ハロゲン及びアミノ基置換のアリーレン基を表し、Ar2は、炭素数が3~8のシクロアルキル基である。
【0017】
さらに、Ar1は、非置換のシクロアルキル基或いはアリール基を表し、Ar2は、置換又は非置換のシクロアルキル基或いはアリール基である。
【0018】
さらに、Ar1は、ヒドロキシ基、メチル基、エチル基或いは-S-CH3によって置換されるシクロアルキル基或いはアリール基を表し、Ar2は、非置換のアリール基或いはアルキル基である。
【0019】
【0020】
さらに、アミノ供与体は、イソプロピルアミン、イソプロピルアミン塩酸塩、アラニン、n-ブチルアミン或いはアニリンである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の技術的解決手段を使用して、特定の基質に対していずれも一定の触媒活性を有する一種類のトランスアミナーゼをスクリーニングし、且つこのようなトランスアミナーゼが有する保存的なアミノ酸配列領域を分析し、保存領域のアミノ酸に対して部位特異的突然変異及び定方向スクリーニングを行い、それにより、野生型に比べ、一連の触媒活性が向上したトランスアミナーゼ突然変異体を取得した。これらの突然変異体を利用してキラルアミン系化合物の合成、特に大きな立体障害のキラルアミンの合成を行い、生産効率の向上、工業生産コストの低減に有利である。且つ、生物酵素でグリーン化学合成を行い、工業の廃液・廃ガス・廃棄物の低減に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本願の一部を構成する明細書の添付図面は、本発明に対する更なる理解を提供するために用いられ、本発明の例示的な実施例及びその説明は、本発明を解釈するために用いられ、本発明を不当に限定するものではない。図面は下記の通りである。
【
図1】本発明の実施例による多重配列(配列番号1及び配列番号3~配列番号20)アラインメントの部分的結果の模式図を示す。
【
図2】本発明の実施例による多重配列(配列番号20~配列番号38)アラインメントの部分的結果の模式図を示す。
【
図3】本発明の実施例による多重配列(配列番号39~配列番号56)アラインメントの部分的結果の模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
なお、本願における実施例及び実施例における特徴は、矛盾しない限り、互いに組み合わせることができる。以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
【0024】
用語の解釈
大きな立体障害のキラルアミン化合物:本願では、プロキラルカルボニル基の隣の基がメチル基より大きいケトン類化合物をいい、ここで、メチル基より大きい基は、例えば、エチル、プロピル、t-ブチル或いはフェニルt-ブチルなどであり得る。
【0025】
従来技術には、大きな立体障害のキラルアミン化合物に対して触媒活性を有するトランスアミナーゼが、未だ報告されず、この状況を改善するために、発明者は、既存の報告されているトランスアミナーゼに対してバルクスクリーニングを行い、数千種類の野生型トランスアミナーゼをスクリーニングし、結果は予想に類似し、大多数は触媒活性を有さない(即ち、目標生成物が全く検出されていない)。しかし、このような大きな立体障害のキラルアミン化合物の合成を触媒することが可能なトランスアミナーゼ(表10及び表12)が依然として幾つか発見され、活性(基質を触媒する転化率)が低い(1%より低い)が、少なくとも潜在的な改良の基礎を提供する。
【0026】
発明者は、これらの一定の触媒活性を有する、Chromobaterium violaceumのCvTAトランスアミナーゼ(野生型配列が配列番号1である。)と同属又は異属由来のトランスアミナーゼに対して、CvTAトランスアミナーゼをアミノ酸配列アラインメントを行う参照配列として、多重配列アラインメントを行い、アラインメント結果は、
図1~
図3に示すように、保存的アミノ酸配列領域が複数存在することを見出した。例えば、第37位のT、第41のG、第43~37位のYLWDS、第49位のG、第51~52位のKI、第54~63位のDGMAGLWCVN、第66~69位のGYGR、第75位のA、第78~79位のQM、第81~82位のEL、第84~96位のFYNTFFKTTHPAVなどである。
【0027】
多重配列アラインメントの結果から分かるように、第54位~第63位の保存的アミノ酸配列領域及び第84位~第96位の保存的アミノ酸配列領域は、両領域ともChromobacterium属のトランスアミナーゼ中で保存性が高く、且つ構造上でいずれも基質結合近傍に位置し、比較的重要なアミノ酸である。一般的に言えば、タンパク質配列中の高度保存的な部位の突然変異は酵素活性の損失を招きやすいため、高度保存的な位置で突然変異を行うことは一般的に選択されない。でも、このようなトランスアミナーゼが、一定のトランスアミナーゼ活性を有し、従って、このような保存的アミノ酸配列領域のアミノ酸に対してある突然変異を行った後に、大きな立体障害の基質に対するこのようなトランスアミナーゼの触媒活性を高めるのに役立つかもしれない。
【0028】
このような大きな立体障害の基質に対するこれらの保存的アミノ酸の部位の突然変異の触媒活性が改善されたかをさらに検証するために、発明者は、まず、Chromobaterium violaceum由来のCvTAトランスアミナーゼ(野生型配列が配列番号1である。)をテストし、且つCvTAトランスアミナーゼにT7C、S47C、F89Y、M166F、Y168A、V379A、Q380L、R416D及びA417Sという突然変異が発生した後の変異体を進化型母種とし、当該母種のアミノ酸配列を配列番号2と記す。
【0029】
配列番号1の配列は次のとおりである(459個のアミノ酸)。
【化3】
【0030】
【0031】
さらに、当該母種を基として、タンパク質工学改造を行って、一連のトランスアミナーゼ突然変異体を獲得し、結果から、複数のケトン類基質に対するこれらのトランスアミナーゼ突然変異体の触媒効率がきわめて大きく向上し、複数のキラルアミン化合物の合成、特に大きな立体障害のキラルアミン化合物の高効率合成に使用できることを見出した。
【0032】
さらに、発明者は、上記の異なる由来の野生型トランスアミナーゼ(即ち配列番号3~配列番号56に示すもの)について、いずれも同じ保存部位で同じ突然変異を行わせた。例えば、配列番号1を基にL59A突然変異が発生することにしたがって、他の種属由来のトランスアミナーゼの対応する保存部位に同じLのAへの突然変異を行い、大きな立体障害の基質に対していずれも明らかな改善された触媒活性を有することを見出した。類似して、配列番号1を基にL59A+F88A突然変異が発生することにしたがって、他の種属由来のトランスアミナーゼに対する相応の保存的アミノ酸部位に同じ突然変異を行って、同様に、大きな立体障害の基質に対する触媒活性を得た。
【0033】
実施例部分では、配列番号1を参照とする第54~63位及び第84~96位の保存的アミノ酸突然変異を例とし、異なる種属由来の野生型トランスアミナーゼが、CvTAトランスアミナーゼと同じ保存的アミノ酸部位を有する領域で同じアミノ酸突然変異を行われた後の、大きな立体障害の基質に対する触媒活性の変化について詳細に説明する。
【0034】
これに基づいて、本願の好ましい一実施例において、上記のトランスアミナーゼ突然変異体は、
(1)配列番号2に、F22A、L59A、W60A、C61A、F88A、Y89A、K90A、T107A、N151A、Y153A、F166A、E171A、K193A、V234A、I262A、I297A、K304A、F320A、T321A、E368A、L380A、F397A、R405A、F409A、D416A、S417A、C418A、S424Aのいずれか1つのアミノ酸突然変異が発生して得られたもの、又は
(2)配列番号2に、F88Aと、L59、P83、F84、Y85、N86、T87、Y89、K90、T91、F409及びA417の位置のうちのいずれか1つ以上の位置との突然変異であるアミノ酸突然変異が発生して得られたもの、又は
(3)野生型トランスアミナーゼの保存的アミノ酸が突然変異して得られ、その中の野生型CvTAトランスアミナーゼの配列番号1のものを参照とし、保存的アミノ酸が配列番号1の第54~63位及び第84~96位に位置し、保存的アミノ酸に、L59A、W60A、C61A、F84S/C/G/L/R/V/P/A/M/E/K/W/Q/T/H/D/Y/N/I、Y85M、N86H/Q/P/D/K/Y/S/L/M/I/T/W/F/V/R/S/K/G、T87K/C/E/N/Q/H/F/R/D/I/M/W/A/P/V/S/L/GF88A、Y89D/A/、K90A/F/G/D/C/S/A/E/L/V/I/R/T/Y/M/H/N/P/Q/W、T91M/W/V/G/C/R/A/F/I/M/E/L/S/K/H/Q/D/N/P/Yのうちの少なくともいずれか1つの突然変異が発生して得られたものから選択され、「/」は「又は」を表す。
【0035】
本願の好ましい一実施例において、上記の野生型トランスアミナーゼは、配列番号1と69%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上の相同性を有し、且つ保存的アミノ酸を有する野生型トランスアミナーゼである。例えば、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%以上の相同性を有する野生型トランスアミナーゼであってもよい。例えば、さらに、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、さらには99.9%以上の相同性の野生型トランスアミナーゼであってもよい。
【0036】
本願の好ましい一実施例において、野生型トランスアミナーゼは、酵素番号が1~54に示される54種類の供給源のうちのいずれか1つに由来する。
【0037】
本願の好ましい一実施例において、保存的アミノ酸に、(a)L59A+F88A、(b)L59A+F88A+F89D、(c)L59A+F88A+F89D+N86H、(d)L59A+F88A+F89D+N86H+Y85Mのうちのいずれか一つの組合せの突然変異が発生する。
【0038】
本願の好ましい一実施例において、トランスアミナーゼ突然変異は、表1~表9に示されるトランスアミナーゼ突然変異体である。
【0039】
上記の各トランスアミナーゼ突然変異体は、いずれも野生型に比べ、ケトン類基質に対する触媒活性が大幅に向上し、トランスアミナーゼを利用して大きな立体障害のキラルアミン化合物の合成を触媒することを実現し、重金属触媒を用いる必要がなく、グリーン化学合成が実現され、且つ活性が向上したトランスアミナーゼを使用してアミノ基転移反応を行い、高活性・高選択性の一連のキラルアミン化合物を容易に得ることができる。
【0040】
本願の典型的な実施例において、前述のいずれか1つのトランスアミナーゼ突然変異体をコードするDNA分子をさらに提供する。当該DNA分子がコードしたトランスアミナーゼ突然変異体は、一連のケトン類基質化合物に対して高い触媒活性を有し、生物酵素で触媒する方法によりこのようなキラルアミン化合物を合成するのに有利である。
【0041】
本発明の上記DNA分子は、「発現カセット」の形態で存在してもよい。「発現カセット」とは適切な宿主細胞において特定のヌクレオチド配列の発現を指示することができるDNA及びRNA配列を包含する、線形又は環状の核酸分子を指す。一般に、目的ヌクレオチドに効果的に連結されたプロモーターを含み、これは任意選択で停止シグナル及び/又は他の調節エレメントに効果的に連結されている。発現カセットは、また、ヌクレオチド配列の正確な翻訳に必要な配列を含んでもよい。コード領域は、通常、目的タンパク質をコードするが、センス又はアンチセンス方向に目的機能性RNA、例えばアンチセンスRNA又は非翻訳RNAもコードする。目的ポリヌクレオチド配列を含む発現カセットは、キメラであってもよく、ここで、キメラとは、少なくとも1つのその成分と、その少なくとも1つの他の成分とが異種であることを意味する。発現カセットは、また、天然に存在するが、異種発現のための効果的な組換え形成によって得られることができる。
【0042】
本願の典型的な一実施例において、前述のDNA分子が連結されている組換えプラスミドをさらに提供する。当該組換えプラスミドは、上記いずれかのDNA分子を含有する。上記組換えプラスミド中のDNA分子は、組換えプラスミドの適切な位置に配置されることにより、上記DNA分子は、複製、転写又は発現を正確かつ円滑に行うことができる。
【0043】
本発明において上記DNA分子を限定する際に用いる限定語は「含有」であるが、DNA配列の両端にその機能に関与しない他の配列を任意に付加できることを意味するものではない。当業者は、組換え操作の要求を満たすために、DNA配列の両端に適切な制限酵素の酵素切断部位を付加するか、又は開始コドン、終止コドンなどをさらに付加する必要があることを知っており、従って、閉鎖式の表現で限定すれば、これらの状況を真実にカバーすることができない。
【0044】
本発明において用いられる用語「プラスミド」は、二本鎖又は一本鎖の線形又は環状の形態の任意のプラスミド、コスミド、バクテリオファージ又はアグロバクテリウム二元核酸分子を含み、好ましくは組換え発現プラスミドであり、原核生物発現プラスミドであっても真核生物発現プラスミドであってもよいが、好ましくは原核生物発現プラスミドであり、幾つかの実施方案において、組換えプラスミドは、pET-21b(+)、pET-22b(+)、pET-3a(+)、pET-3d(+)、pET-11a(+)、pET-12a(+)、pET-14b、pET-15b(+)、pET-16b(+)、pET-17b(+)、pET-19b(+)、pET-20b(+)、pET-21a(+)、pET-23a(+)、pET-23b(+)、pET-24a(+)、pET-25b(+)、pET-26b(+)、pET-27b(+)、pET-28a(+)、pET-29a(+)、pET-30a(+)、pET-31b(+)、pET-32a(+)、pET-35b(+)、pET-38b(+)、pET-39b(+)、pET-40b(+)、pET-41a(+)、pET-41b(+)、pET-42a(+)、pET-43a(+)、pET-43b(+)、pET-44a(+)、pET-49b(+)、pQE2、pQE9、pQE30、pQE31、pQE32、pQE40、pQE70、pQE80、pRSET-A、pRSET-B、pRSET-C、pGEX-5X-1、pGEX-6p-1、pGEX-6p-2、pBV220、pBV221、pBV222、pTrc99A、pTwin1、pEZZ18、pKK232-8、pUC-18又はpUC-19から選択される。より好ましくは、上記の組換えプラスミドはpET-22b(+)である。
【0045】
本発明の典型的な一実施形態によれば、上記のいずれか1つの組換えプラスミドを含有する宿主細胞を提供する。本発明に適用される宿主細胞は、原核細胞又は真核細胞を含むが、これらに限定されない。好ましくは、原核細胞は大腸菌BL21細胞又は大腸菌DH5α形質転換受容性細胞であり、真核細胞は酵母である。
【0046】
本願の典型的な実施例において、キラルアミン化合物の合成方法をさらに提供し、当該合成方法は、上記のいずれか1つのトランスアミナーゼ突然変異体を用いてアミノ供与体の作用下で、式Iで表されるケトン類基質に対してアミノ基転移反応を行い、キラルアミン化合物を獲得し、
【化5】
Ar1は、置換又は非置換のアリール基或いはアリーレン基、又は置換又は非置換のヘテロアリーレン基を表し、Ar2は、置換又は非置換のアリール基、又はシクロアルキル基を表し、任意的なRであり、Rは、C原子数が1~5の置換又は非置換のアルキレン基を表し、RはAr1或いはAr2と連結して環を形成し、ここで、置換のアリール基或いはアリーレン基、置換のヘテロアリーレン基或いは置換のアルキレン基の置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ基或いはアミノ基から選択され、置換のヘテロアリーレン基中のヘテロ原子はN、O或いはSから選択される。
【0047】
本発明の上記のトランスアミナーゼは上記の式Iで表される基質に対してより高い酵素触媒活性を有するため、本発明のトランスアミナーゼ突然変異体を利用してキラルアミン系化合物、特に大きな立体障害のキラルアミン系化合物を製造し、生産コストを低減できるだけでなく、得られた大きな立体障害のキラルアミンの純度及びee値がより高い。
【0048】
上記の置換のアリール基或いはアリーレン基中の置換基はハロゲン或いは-S-CH3であり、ハロゲン或いは-S-CH3は、アリール基或いはアリーレン基のオルト位、メタ位或いはパラ位のうちのいずれか1つ以上の位置に位置し、好ましくは、ハロゲンは、F、Cl或いはBrである。
【0049】
好まいし一実施例において、Ar1は、置換又は非置換のアリール基或いはアリーレン基を表し、Ar2は、非置換のアリール基を表し、Rは、C原子数が1~5の非置換のアルキレン基を表し、且つRは、Ar1と連結して環を形成する。
【0050】
好ましい一実施例において、Ar1は、非置換のヘテロアリーレン基を表し、Ar2は、ハロゲン置換のアリール基を表し、Rは、ヒドロキシ基置換のC原子数が1~5のアルキレン基を表し、且つRは、Ar1と連結して環を形成する。
【0051】
好ましい一実施例において、Ar1は、ハロゲン及びアミノ基置換のアリーレン基を表し、Ar2は、炭素数が3~8のシクロアルキル基である。
【0052】
好まし一実施例において、Ar1は、非置換のシクロアルキル基或いはアリール基を表し、Ar2は、置換又は非置換のシクロアルキル基或いはアリール基である。
【0053】
好ましい一実施例において、Ar1は、ヒドロキシ基、メチル基、エチル基或いは-S-CH3置換のシクロアルキル基或いはアリール基を表し、Ar2は、非置換のアリール基或いはアルキル基である。
【0054】
好ましい一実施例において、ケトン類基質は、
【化6】
である。
【0055】
好ましい一実施例において、アミノ供与体は、イソプロピルアミン、イソプロピルアミン塩酸塩、アラニン、n-ブチルアミン或いはアニリンである。
【0056】
以下、具体的な実施例を参照しながら、上記の技術的解決手段及び技術的効果について説明する。以下の実施例に使用される基質は次のとおりである。
【化7】
【0057】
(一)第一部分では、配列番号2を母種として改造を行った。
【0058】
(実施例1)
母種を基に定方向突然変異を行い、具体的な突然変異部位は下表を参照し、下記のような反応条件にしたがって突然変異体の触媒活性を検出した。
【0059】
1mL体系には、1mgの基質1、1mgのPLP、1mgのイソプロピルアミン塩酸塩、50mgの酵素粉末、pH8.0の、100mMのリン酸塩緩衝液が含まれ、50℃で40h反応した。
【0060】
検出結果は、下表を参照する。
【表2】
備考:上表中で、0は、転化率<1%を表し、+は、転化率が1%以上且つ5%未満であることを表し、++は、転化率が5%以上且つ10%以下であることを表す。
【0061】
(実施例2)
実施例1を基に組合せ突然変異を行い、実施例1と同じ反応条件にしたがって組合せ突然変異に対して活性スクリーニングを行い、結果は下表を参照する。
【表3】
備考:上表中で、0は、転化率<1%を表し、+は、転化率が1%以上且つ5%未満であることを表し、++は、転化率が5%以上且つ10%未満であることを表し、+++は、転化率10%以上且つ15%未満であることを表し、++++は、転化率が15%以上且つ20%未満であることを表す。
【0062】
(実施例3)
実施例2を基に組合せ突然変異を行い、実施例1と同じ反応条件にしたがって組合せ突然変異に対して活性スクリーニングを行い、結果は下表を参照する。
【表4】
備考:0は、転化率<1%を表し、+は、転化率が1%以上且つ5%未満であることを表し、++は、転化率が5%以上且つ10%未満であることを表し、+++は、転化率10%以上且つ15%未満であることを表し、++++は、転化率が15%以上且つ20%未満であることを表し、+++++は、転化率が20%以上且つ40%以下であることを表す。
【0063】
(実施例4)
実施例3を基に組合せ突然変異を行い、実施例1と同じ反応条件にしたがって組合せ突然変異に対して活性スクリーニングを行い、結果は下表を参照する。
【表5】
備考:上表中で、0は、転化率<1%を表し、+は、転化率が1%以上且つ5%未満であることを表し、++は、転化率が5%以上且つ10%未満であることを表し、+++は、転化率10%以上且つ15%未満であることを表し、++++は、転化率が15%以上且つ20%未満であることを表し、+++++は、転化率が20%以上且つ40%未満であることを表し、++++++は、転化率が40%以上であることを表す。
【0064】
(実施例5)
実施例4を基に組合せ突然変異を行い、具体的な突然変異部位は下表を参照し、下記のような反応条件にしたがって突然変異体の触媒活性を検出した。
【0065】
1mL体系には、10mgの基質1、1mgのPLP、1mgのイソプロピルアミン塩酸塩、5mgの酵素粉末、pH8.0の、100mMのリン酸塩緩衝液が含まれ、50℃で40h反応し、結果は下表を参照する。
【表6】
備考:上表中で、+は、転化率が0%以上且つ20%未満であることを表し、++は、転化率が20%以上且つ40%未満であることを表す。
【0066】
(実施例6)
実施例5を基に組合せ突然変異を行い、実施例5と同じ反応条件にしたがって組合せ突然変異に対して活性スクリーニングを行い、結果は下表を参照する。
【表7】
備考:+は、転化率が0%以上且つ20%未満であることを表し、++は、転化率が20%以上且つ40%未満であることを表し、+++は、転化率が40%以上且つ80%未満であることを表す。
【0067】
(実施例7)
実施例6を基に組合せ突然変異を行い、実施例5と同じ反応条件にしたがって組合せ突然変異に対して活性スクリーニングを行い、結果は下表を参照する。
【表8】
備考:上表中、+は、転化率が0%以上且つ20%未満であることを表し、++は、転化率が20%以上且つ40%未満であることを表し、+++は、転化率が40%以上且つ80%未満であることを表し、++++は、転化率が80%以上であることを表す。
【0068】
(実施例8)
実施例7を基に組合せ突然変異を行い、実施例5と同じ反応条件にしたがって組合せ突然変異に対して活性スクリーニングを行い、結果は下表を参照する。
【表9】
備考:上表中で、+は、転化率が0%以上且つ20%未満であることを表し、++は、転化率が20%以上且つ40%未満であることを表し、+++は、転化率が40%以上且つ80%未満であることを表し、++++は、転化率が80%以上であることを表す。
【0069】
(実施例9)
実施例8を基に組合せ突然変異を行った。反応条件は、下記のとおりである。
1mL体系には、10mgの基質1、1mgのPLP、1mgのイソプロピルアミン塩酸塩、3mgの酵素粉末、pH8.0の、100mMのリン酸塩緩衝液が含まれ、50℃で40h反応し、結果は下表を参照する。
【表10】
備考:上表中で、+は、転化率が0%以上且つ20%未満であることを表し、++は、転化率が20%以上且つ40%未満であることを表し、+++は、転化率が40%以上且つ80%未満であることを表し、++++は、転化率が80%以上であることを表す。
【0070】
(実施例10)
室温で250mLの四ツ口フラスコ内に100mmol/Lリン酸塩緩衝液(5vol)を50mL、5mol/Lイソプロピルアミン塩酸塩溶液(2vol)を20mL加え、pH=8.5~9.0に調整した。続いて、ピリドキサルリン酸(1wt%)を0.1g、
【化8】
(基質1)を10g加え、均一に撹拌してから、配列番号2を基に突然変異したCvTAのトランスアミナーゼ突然変異体(F88A+L59A+Y89D+N86H+Y85M+K90G+T91M+P83S+V234A+L380A+S417I)の酵素液を10mL(0.5wt、0.5g/mL)加えて、pH=8.5~9.0に調整した。50℃に昇温させ、夜通し撹拌しながら反応させた。完全に反応させた後、体系の酸性をpH=2~3に調整して、変性タンパク質にした。濾過後、50mLのメチルt-ブチルエーテルで濾液を抽出した。水相をpH=12に調整してから、50mLのメチルt-ブチルエーテルを用いて2回抽出した。有機相を合併して無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、T<40℃、P≦-0.06Mpa条件下で、留分がないまで濃縮した。目標生成物
【化9】
を得た。
HPLC検出を経て、純度>98%、de値>99%、収率84%であった。
【0071】
(実施例11)
室温で250mLの四ツ口フラスコ内に100mmol/Lリン酸塩緩衝液(5vol)を50mL、5mol/Lイソプロピルアミン塩酸塩溶液(2vol)を20mL加え、pH=8.5~9.0に調整した。続いて、ピリドキサルリン酸(1wt%)を0.1g、
【化10】
(基質2)を10g加え、均一に撹拌してから、配列番号2を基に突然変異したCvTAのトランスアミナーゼ突然変異体(F88A+L59A+Y89D+N86H+Y85M+K90G+T91M+P83S+V234A+L380A+S417I)酵素液を10mL(0.5wt、0.5g/mL)加えて、pH=8.5~9.0に調整した。50℃に昇温させ、夜通し撹拌しながら反応させた。完全に反応させた後、体系の酸性をpH=2~3に調整して、変性タンパク質にした。濾過後、50mLのメチルt-ブチルエーテルで濾液を抽出した。水相をpH=12に調整してから、50mLのメチルt-ブチルエーテルを用いて2回抽出した。有機相を合併して無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、T<40℃、P≦-0.06Mpa条件下で、留分がないまで濃縮した。目標生成物
【化11】
を得た。
HPLC検出を経て、純度>98%、de値>99%、収率82%であった。
【0072】
(実施例12)
室温で250mLの四ツ口フラスコ内に100mmol/Lリン酸塩緩衝液(5vol)を50mL、5mol/Lイソプロピルアミン塩酸塩溶液(2vol)を20mL加え、pH=8.5~9.0に調整した。続いて、ピリドキサルリン酸(1wt%)を0.1g、
【化12】
(基質3)を10g加え、均一に撹拌してから、配列番号2を基に突然変異したCvTAのトランスアミナーゼ突然変異体(F88A+L59A+Y89D+N86H+Y85M+K90G+T91M+P83S+V234A+L380A+S417I)酵素液を10mL(0.5wt、0.5g/mL)加えて、pH=8.5~9.0に調整した。50℃に昇温させ、夜通し撹拌しながら反応させた。完全に反応させた後、体系の酸性をpH=2~3に調整して、変性タンパク質にした。濾過後、50mLのメチルt-ブチルエーテルで濾液を抽出した。水相をpH=12に調整してから、50mLのメチルt-ブチルエーテルを用いて2回抽出した。有機相を合併して無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、T<40℃、P≦-0.06Mpa条件下で、留分がないまで濃縮した。目標生成物
【化13】
を得た。
HPLC検出を経て、純度>98%、ee値>99%、収率80%であった。
【0073】
(実施例13)
室温で250mLの四ツ口フラスコ内に100mmol/Lリン酸塩緩衝液(5vol)を50mL、5mol/Lイソプロピルアミン塩酸塩溶液(2vol)を20mL加え、pH=8.5~9.0に調整した。続いて、ピリドキサルリン酸(1wt%)を0.1g、
【化14】
(基質4)を10g加え、均一に撹拌してから、配列番号2を基に突然変異したCvTAのトランスアミナーゼ突然変異体(F88A+L59A+Y89D+N86H+Y85M+K90G+T91M+P83S+V234A+L380A+S417I)酵素液を10mL(0.5wt、0.5g/mL)加えて、pH=8.5~9.0に調整した。50℃に昇温させ、夜通し撹拌しながら反応させた。完全に反応させた後、体系の酸性をpH=2~3に調整して、変性タンパク質にした。濾過後、50mLのメチルt-ブチルエーテルで濾液を抽出した。水相をpH=12に調整してから、50mLのメチルt-ブチルエーテルを用いて2回抽出した。有機相を合併して無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、T<40℃、P≦-0.06Mpa条件下で、留分がないまで濃縮した。目標生成物
【化15】
を得た。
HPLC検出を経て、純度>98%、de値>99%、収率89%であった。
【0074】
(実施例14)
室温で250mLの四ツ口フラスコ内に100mmol/Lリン酸塩緩衝液(5vol)を50mL、5mol/Lイソプロピルアミン塩酸塩溶液(2vol)を20mL加え、pH=8.5~9.0に調整した。続いて、ピリドキサルリン酸(1wt%)を0.1g、
【化16】
(基質13)を10g加え、均一に撹拌してから、配列番号2を基に突然変異したCvTAのトランスアミナーゼ突然変異体(F88A+L59A+Y89D+N86H+Y85M+K90G+T91M+P83S+V234A+L380A+S417I)酵素液を10mL(0.5wt、0.5g/mL)加えて、pH=8.5~9.0に調整した。50℃に昇温させ、夜通し撹拌しながら反応させた。完全に反応させた後、体系の酸性をpH=2~3に調整して、変性タンパク質にした。濾過後、50mLのメチルt-ブチルエーテルで濾液を抽出した。水相をpH=12に調整してから、50mLのメチルt-ブチルエーテルを用いて2回抽出した。有機相を合併して無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、T<40℃、P≦-0.06Mpa条件下で、留分がないまで濃縮した。目標生成物
【化17】
を得た。
HPLC検出を経て、純度>98%、ee値98%、収率81%であった。
【0075】
(実施例15)
配列番号2を基に突然変異したCvTAのトランスアミナーゼ突然変異体(F88A+L59A+Y89D+N86H+Y85M+K90G+T91M+P83S+V234A+L380A+S417I+A168E+A379L+S424A+F301S+G164S+T452S+M180V+F449L+F320H+Y322T+M91I)の酵素液を用いて、実施例10~実施例14の触媒合成ステップを参照して、対応する基質に対して触媒反応を行い、結果はそれぞれ(1)~(5)である。
(1)基質1を触媒して合成した目標生成物の純度が>99%、de値が>99%、収率が87%であり、
(2)基質2を触媒して合成した目標生成物の純度が>98%、de値が>99%、収率が84%であり、
(3)基質3を触媒して合成した目標生成物の純度が>98%、ee値が>99%、収率が82%であり、
(4)基質4を触媒して合成した目標生成物の純度が>99%、de値が>99%、収率が91%であり、
(5)基質13を触媒して合成した目標生成物の純度が>98%、ee値が>99%、収率が85%である。
【0076】
以上の実施例の記述から分かるように、上記の実施例により下記のような技術的効果が実現された。
1)活性が向上したトランスアミナーゼを使用してアミノ基転移反応を行い、高活性、高選択性で一連のキラルアミン化合物を得ることができる。
2)トランスアミナーゼ突然変異体を使用して生物触媒を行い、重金属触媒を用いる必要がなく、グリーン化学を実現した。
3)当該トランスアミナーゼ突然変異体は、触媒効率が高く、反応体積が少なく、製品の収率が高く、廃液・廃ガス・廃棄物を大幅に低減させ、生産コストを節約する。
【0077】
(二)第二部分では、さらに、このような大きな立体障害の基質に対する異なる種属由来のトランスアミナーゼ突然変異体の触媒活性に対してスクリーニング及び検証を行った。
【0078】
(実施例16)他の由来の野生型トランスアミナーゼの触媒活性に対するテスト
本実施例では、Chromobaterium violaceum由来の野生型トランスアミナーゼ(即ち配列番号1)と同属であるが異なる種類であり、且つ配列番号1に比べ、アミノ酸配列の相同性が82%以上である野生型トランスアミナーゼを選択し(具体的には表10を参照)、且つ基質4に対する触媒活性をテストし、結果はCvTA野生型トランスアミナーゼに類似し(1%以下である。)、具体的な結果は表11を参照する。
【表11】
10
*:番号10の酵素は、Chromobacterium属に属さないが、相同性が高いため、同表に示した。
【0079】
(実施例17)目標の大きな立体障害の基質を触媒する活性突然変異体をスクリーニングする。
本実施例において、上記表10における野生型トランスアミナーゼは、配列番号1に対応する第59位でL59A突然変異を行うとともに、Y85M、N86H、F88A及びF89Dのいずれか1つ以上の突然変異をさらに行った後、目標の大きな立体障害基質(基質4)を触媒する活性がいずれも異なる程度で向上した(表11を参照)。当該結果から分かるように、配列番号1と相同性が82%~95%であるトランスアミナーゼは、保存的アミノ酸部位で同じアミノ酸突然変異が発生した後、大きな立体障害の基質に対する触媒活性が全部向上した。
【表12】
上表中で、+は、転化率が1~20であることを表し、++は、転化率が20%以上であることを表す。
【0080】
(実施例18)
Chromobacterium由来のトランスアミナーゼ以外に、本願では、Chromobaterium violaceumと69%~87%の相同性を有する他の由来のトランスアミナーゼをさらにテストした。同様に、基質4に対する触媒活性が1%より低い。しかし、これらのトランスアミナーゼの保存的アミノ酸配列領域に、表11と同じアミノ酸突然変異が発生した後に、いずれも活性が異なる程度向上した。具体的な情報リストは表12及び表13を参照する。
【表13】
【表14】
上表中で、+は、転化率が1~20であることを表し、++は、転化率が20%以上であることを表す。
【0081】
(実施例19)
室温で250mLの四ツ口フラスコ内に100mmol/Lリン酸塩緩衝液(5vol)を50mL、5mol/Lイソプロピルアミン塩酸塩溶液(2vol)を24ml加えて、pH=7.5~8.0に調整した。続いて、ピリドキサルリン酸(1wt%)を0.1g、
【化18】
(基質5)を1g加え、均一に撹拌してから、配列番号1を基とするCvTAの突然変異体(L59A+Y85M+N86H+F88A+F89D)酵素液を10ml(5wt、0.5g/ml)加えて、pH=7.5~8.0に調整した。30℃に昇温させ、夜通し撹拌しながら反応させた。完全に反応させた後、体系の酸度をpH=1に調整し、変性タンパク質にした。濾過後、濾液を、50mLのジクロロメタンで抽出した。水相をpH=12に調整してから、50mlのジクロロメタンを用いて3回抽出した。有機相を合併して無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、有機相を、T<35℃、P≦-0.06Mpa条件で留分がないまで濃縮した。目標生成物
【化19】
を得た。
HPLC検出を経て、純度>98%、ee値>99%、収率84%であった。
【0082】
(実施例20)
室温で250mLの四ツ口フラスコ内に100mmol/Lリン酸塩緩衝液(6vol)を60mL、5mol/Lイソプロピルアミン塩酸塩溶液(2vol)を18ml加えて、pH=8.0~8.5に調整した。続いて、ピリドキサルリン酸(1wt%)を0.1g、
【化20】
(基質1)を1g加え、均一に撹拌してから、配列番号1を基とするCvTAの突然変異体(L59A+Y85M+N86H+F88A+F89D)酵素液を10ml(5wt、0.5g/ml)加えて、pH=8.0~8.5に調整した。20℃に温度を調整して、夜通し撹拌しながら反応させた。完全に反応させた後、体系の酸度をpH=2に調整し、変性タンパク質にした。濾過後、濾液を、50mLのジクロロメタンで抽出した。水相をpH=13に調整してから、50mlの酢酸エチルを用いて3回抽出した。有機相を合併して無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、有機相を、T<45℃、P≦-0.08Mpa条件下で留分がないまで濃縮した。目標生成物
【化21】
を得た。
HPLC検出を経て、純度>98%、de値>99%、収率89%であった。
【0083】
(実施例21)
室温で250mLの四ツ口フラスコ内に100mmol/Lリン酸塩緩衝液(7vol)を70mL、5mol/Lイソプロピルアミン塩酸塩溶液(2vol)を13ml加えて、pH=7.0~7.5に調整した。続いて、ピリドキサルリン酸(1wt%)を0.1g、
【化22】
(基質2)を1g加え、均一に撹拌してから、配列番号1を基とするCvTAの突然変異体(L59A+Y85M+N86H+F88A+F89D)酵素液を10ml(5wt、0.5g/ml)加えて、40℃に昇温させて夜通し撹拌しながら反応させた。完全に反応させた後、体系の酸度をpH=1に調整し、変性タンパク質にした。濾過後、濾液を、50mLのジクロロメタンで抽出した。水相をpH=13に調整してから、50mlのジクロロメタンを用いて3回抽出した。有機相を合併して無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、有機相を、T<35℃、P≦-0.06Mpa条件下で留分がないまで濃縮した。目標生成物
【化23】
を得た。
HPLC検出を経て、純度が97%より大きく、de値が>99%、収率が86%であった。
【0084】
(実施例22)
室温で250mLの四ツ口フラスコ内に100mmol/Lリン酸塩緩衝液(5vol)を50mL、5mol/Lイソプロピルアミン塩酸塩溶液(2vol)を38ml加えて、pH=8.5~9.0に調整した。続いて、ピリドキサルリン酸(1wt%)を0.1g、
【化24】
(基質6)を1g加え、均一に撹拌してから、配列番号1を基とするCvTAの突然変異体(L59A+Y85M+N86H+F88A+F89D)酵素液を10ml(5wt、0.5g/ml)加えて、pH=8.5~9.0に調整した。温度を10℃に調整して、夜通し撹拌しながら反応させた。完全に反応させた後、体系の酸度をpH=2に調整し、変性タンパク質にした。濾過後、濾液を、50mLのジクロロメタンで抽出した。水相をpH=13に調整してから、50mlのジクロロメタンを用いて3回抽出した。有機相を合併して無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、有機相を、T<35℃、P≦-0.06Mpa条件で留分がないまで濃縮した。目標生成物
【化25】
を得た。
HPLC検出を経て、純度>95%、de値>99%、収率:85%であった。
【0085】
(実施例23)
室温で250mLの四ツ口フラスコ内に100mmol/Lリン酸塩緩衝液(7vol)を70mL、5mol/Lイソプロピルアミン塩酸塩溶液(2vol)を17ml加えて、pH=7.5~8.0に調整した。続いて、ピリドキサルリン酸(1wt%)を0.1g、
【化26】
(基質3)を1g加え、均一に撹拌してから、配列番号1を基とするCvTAの突然変異体(L59A+Y85M+N86H+F88A+F89D)酵素液を10ml(5wt、0.5g/ml)加えて、pH=7.5~8.0に調整した。29℃に昇温させ、夜通し撹拌しながら反応させた。完全に反応させた後、体系の酸度をpH=1に調整して、変性タンパク質にした。濾過後、濾液を、50mLのジクロロメタンで抽出した。水相をpH=12に調整してから、50mlの酢酸エチルを用いて3回抽出した。有機相を合併して無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、有機相を、T<45℃、P≦-0.08Mpa条件下で留分がないまで濃縮した。目標生成物
【化27】
を得た。
HPLC検出を経て、純度>96%、ee値>99%、収率:77%であった。
【0086】
(実施例24)
室温で500mLの四ツ口フラスコ内に100mmol/Lリン酸塩緩衝液(7vol)を140mL、5mol/Lイソプロピルアミン塩酸塩溶液(2vol)を50ml加えて、pH=7.5~8.0に調整した。続いて、ピリドキサルリン酸(1wt%)を0.2g、
【化28】
(基質7)を2g加え、均一に撹拌してから、配列番号1を基とするCvTAの突然変異体(L59A+Y85M+N86H+F88A+F89D)酵素液を20ml(5wt、0.5g/ml)加えて、pH=7.5~8.0に調整した。32℃に昇温させ、夜通し撹拌しながら反応させた。完全に反応させた後、体系の酸度をpH=1に調整して、変性タンパク質にした。濾過後、濾液を100mLのジクロロメタンで抽出した。水相をpH=12に調整してから、100mlの酢酸エチルを用いて3回抽出した。有機相を合併して無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、有機相を、T<45℃、P≦-0.08Mpa条件下で留分がないまで濃縮した。目標生成物
【化29】
を得た。
HPLC検出を経て、純度>95%、ee値>99%、収率:80%であった。
【0087】
(実施例25)
室温で500mLの四ツ口フラスコ内に100mmol/Lリン酸塩緩衝液(11vol)を220mL、5mol/Lイソプロピルアミン塩酸塩溶液(2vol)を50ml加えて、pH=7.5~8.0に調整した。続いて、ピリドキサルリン酸(1wt%)を0.2g、
【化30】
(基質8)を2g加え、均一に撹拌してから、配列番号1を基とするCvTAの突然変異体(L59A+Y85M+N86H+F88A+F89D)酵素液を40ml(10wt、0.5g/ml)加えて、pH=7.5~8.0に調整した。32℃に昇温させ、夜通し撹拌しながら反応させた。完全に反応させた後、体系の酸度をpH=1に調整して、変性タンパク質にした。濾過後、濾液を100mLのジクロロメタンで抽出した。水相をpH=12に調整してから、100mlの酢酸エチルを用いて3回抽出した。有機相を合併して無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、有機相を、T<45℃、P≦-0.08Mpa条件下で留分がないまで濃縮した。目標生成物
【化31】
を得た。
HPLC検出を経て、純度>95%、ee値>99%、収率:86%であった。
【0088】
(実施例26)
室温で500mLの四ツ口フラスコ内に100mmol/Lリン酸塩緩衝液(12vol)を180mL、5mol/Lイソプロピルアミン塩酸塩溶液(2vol)を36ml加え、pH=7.5~8.0に調整した。続いて、ピリドキサルリン酸(1wt%)を0.15g、
【化32】
(基質9)を1.5g加え、均一に撹拌してから、配列番号1を基とするCvTAの突然変異体(L59A+Y85M+N86H+F88A+F89D)酵素液を30ml(1wt、0.5g/ml)加えて、pH=7.5~8.0に調整した。35℃に昇温させ、夜通し撹拌しながら反応させた。完全に反応させた後、体系の酸度をpH=1に調整して、変性タンパク質にした。濾過後、濾液を100mLのジクロロメタンで抽出した。水相をpH=12に調整してから、100mlの酢酸エチルを用いて3回抽出した。有機相を合併して無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、有機相を、T<45℃、P≦-0.08Mpa条件下で留分がないまで濃縮した。目標生成物
【化33】
を得た。
HPLC検出を経て、純度>96%、ee値>99%、収率:85%であった。
【0089】
(実施例27)
室温で500mLの四ツ口フラスコ内に100mmol/Lリン酸塩緩衝液(12vol)を180mL、5mol/Lイソプロピルアミン塩酸塩溶液(2vol)を26ml加え、pH=7.5~8.0に調整した。続いて、ピリドキサルリン酸(1wt%)を0.15g、
【化34】
(基質10)を1.5g加え、均一に撹拌してから、配列番号1を基とするCvTAの突然変異体(L59A+Y85M+N86H+F88A+F89D)酵素液を30ml(10wt、0.5g/ml)加えて、pH=7.5~8.0に調整した。40℃に昇温させ、夜通し撹拌しながら反応させた。完全に反応させた後、体系の酸度をpH=1に調整して、変性タンパク質にした。濾過後、濾液を100mLのジクロロメタンで抽出した。水相をpH=12に調整してから、100mlの酢酸エチルを用いて3回抽出した。有機相を合併して無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、有機相を、T<45℃、P≦-0.08Mpa条件下で留分がないまで濃縮した。目標生成物
【化35】
を得た。
HPLC検出を経て、純度>97%、ee値>99%、収率:79%であった。
【0090】
(実施例28)
室温で500mLの四ツ口フラスコ内に100mmol/Lリン酸塩緩衝液(11vol)を110mL、5mol/Lイソプロピルアミン塩酸塩溶液(2vol)を23ml加え、pH=7.5~8.0に調整した。続いて、ピリドキサルリン酸(1wt%)を0.1g、
【化36】
(基質11)を1g加え、均一に撹拌してから、配列番号1を基とするCvTAの突然変異体(L59A+Y85M+N86H+F88A+F89D)酵素液を10ml(5wt、0.5g/ml)加えて、pH=7.5~8.0に調整した。40℃に昇温させて夜通し撹拌しながら反応させた。完全に反応させた後、体系の酸度をpH=2に調整し、変性タンパク質にした。濾過後、濾液を、50mLのジクロロメタンで抽出した。水相をpH=12に調整してから、50mlの酢酸エチルを用いて3回抽出した。有機相を合併して無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、有機相を、T<45℃、P≦-0.08Mpa条件下で留分がないまで濃縮した。目標生成物
【化37】
を得た。
HPLC検出を経て、純度>95%、収率:73%であった。
【0091】
(実施例29)
室温で500mLの四ツ口フラスコ内に100mmol/Lリン酸塩緩衝液(11vol)を110mL、5mol/Lイソプロピルアミン塩酸塩溶液(2vol)を23ml加え、pH=7.5~8.0に調整した。続いて、ピリドキサルリン酸(1wt%)を0.1g、
【化38】
(基質12)を1g加え、均一に撹拌してから、配列番号1を基とするCvTAの突然変異体(L59A+Y85M+N86H+F88A+F89D)酵素液を10ml(5wt、0.5g/ml)加えて、pH=7.5~8.0に調整した。40℃に昇温させて夜通し撹拌しながら反応させた。完全に反応させた後、体系の酸度をpH=2に調整し、変性タンパク質にした。濾過後、濾液を、50mLのジクロロメタンで抽出した。水相をpH=12に調整してから、50mlの酢酸エチルを用いて3回抽出した。有機相を合併して無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、有機相を、T<45℃、P≦-0.08Mpa条件下で留分がないまで濃縮した。目標生成物
【化39】
を得た。
HPLC検出を経て、純度>95%、ee値>99%、収率:67%であった。
【0092】
(実施例30)
室温で500mLの四ツ口フラスコ内に100mmol/Lリン酸塩緩衝液(11vol)を110mL、5mol/Lイソプロピルアミン塩酸塩溶液(2vol)を23mL加え、pH=7.5~8.0に調整した。続いて、ピリドキサルリン酸(1wt%)を0.1g、
【化40】
(基質4)を1g加え、均一に撹拌してから、配列番号1を基とするCvTAの突然変異体(L59A+Y85M+N86H+F88A+F89D)酵素液を10mL(5wt、0.5g/mL)加えて、pH=7.5~8.0に調整した。40℃に昇温させ、夜通し撹拌しながら反応させた。完全に反応させた後、体系の酸度をpH=2に調整し、変性タンパク質にした。濾過後、濾液を、50mLのジクロロメタンで抽出した。水相をpH=12に調整してから、50mlの酢酸エチルを用いて3回抽出した。有機相を合併して無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、有機相を、T<45℃、P≦-0.08Mpa条件下で留分がないまで濃縮した。目標生成物
【化41】
を得た。
HPLC検出を経て、純度>95%、de値>99%、収率:80%であった。
【0093】
(実施例31)
室温で250mLの四ツ口フラスコ内に100mmol/Lリン酸塩緩衝液(5vol)を50mL、5mol/Lイソプロピルアミン塩酸塩溶液(2vol)を20mL加え、pH=8.5~9.0に調整した。続いて、ピリドキサルリン酸(1wt%)を0.1g、
【化42】
(基質13)を1g加え、均一に撹拌してから、配列番号1を基とするCvTAのトランスアミナーゼ突然変異体(L59A+Y85M+N86H+F88A+F89D)酵素液を10mL(0.5wt、0.5g/mL)加えて、pH=8.5~9.0に調整した。40℃に昇温させ、夜通し撹拌しながら反応させた。完全に反応させた後、体系の酸度をpH=2~3に調整して、変性タンパク質にした。濾過後、50mLのメチルt-ブチルエーテルで濾液を抽出した。水相をpH=12に調整してから、50mLのメチルt-ブチルエーテルを用いて2回抽出した。有機相を合併して無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、有機相を、T<40℃、P≦0.06Mpa条件で留分がないまで濃縮した。目標生成物
【化43】
を得た。
HPLC検出を経て、純度93%、ee値98%、収率73%であった。
【0094】
(実施例32)
基質1を例とし、反応の酵素量を最適化し、具体的な操作は次のとおりである。
室温で10mLのバイアル内に100mmol/Lリン酸塩緩衝液(6vol)を1.2mL、5mol/Lイソプロピルアミン塩酸塩溶液(2vol)を0.4ml加え、pH=8.0~8.5に調整した。続いて、ピリドキサルリン酸(1wt%)を0.002g、
【化44】
(基質1)を0.02g加えて、均一に混合し、CvTAの突然変異体(L59A+Y85M+N86H+F88A+F89D)酵素液をそれぞれ0.04mL、0.08mL、0.12mL、0.16mL、0.2mL、0.24mL、0.28mL、0.32mL、0.36mL、0.4mL(酵素液の濃度は0.5g/mLであり、対応する質量比はそれぞれ1wt、2wt、3wt、4wt、5wt、6wt、7wt、8wt、9wt、10wtである。)加え、pH=8.0~8.5に調整した。シェーカーの回転速度は170rpmであり、30℃に昇温させた条件で夜通し反応させた。転化率の結果は下表に示すとおりであり、5wtの基質の転化率は99%より大きく、酵素量が増大し続けても顕著な効果がないことを証明した。
【表15】
【0095】
(実施例33)
基質1を例として、反応の基質濃度を最適化した。具体的な操作は次のとおりである。
室温で10~50mLのバイアル内(反応体積に応じて適切な振とうフラスコを選択する。)にそれぞれ100mmol/Lリン酸塩緩衝液を0.5mL加え、5mol/Lイソプロピルアミン塩酸塩溶液(2vol)を0.4ml加え、pH=8.0~8.5に調整した。続いて、ピリドキサルリン酸(1wt%)を0.002g、
【化45】
を0.02g(1vol、0.02ml)加えて、均一に混合し、CvTAの突然変異体(L59A+Y85M+N86H+F88A+F89D)酵素液を0.2ml(1vol、5wt、酵素液濃度が0.5g/mlである。)加え、100mmol/Lのリン酸塩緩衝液を反応体積がそれぞれ2mL、2.2mL、2.4mL、3mL、3.4mL、4mLになるまで補充し、対応する反応体積は、それぞれ100vol、110vol、120vol、150vol、170vol、200volであった。pH=8.0~8.5に調整した。シェーカーの回転速度が170rpmであり、30℃に昇温した条件で夜通し反応させた。下表に示すように、5~10g/Lの濃度で、基質の転化率が99%より大きいことを証明した。基質濃度を下げ続けると反応体積が増加し、廃液・廃ガス・廃棄物が増加した。
【表16】
【0096】
(実施例34)
基質1を例として、反応のアミノ供与体を最適化し、具体的な操作は次のとおりである。
室温で10mLのバイアル内に100mmol/Lリン酸塩緩衝液(6vol)を1.2mL加え、3volのアミノ供与体の体系(アミノ供与体は、それぞれイソプロピルアミン、イソプロピルアミン塩酸塩、アラニン、アニリン、n-ブチルアミンである)をそれぞれ用いて、pH=8.0~8.5に調整した。続いて、ピリドキサルリン酸(1wt%)を0.002g、
【化46】
を0.02g加えて、均一に混合し、CvTAの突然変異体(L59A+Y85M+N86H+F88A+F89D)酵素液を0.2ml(5wtで、酵素液濃度が0.5g/mlである。)加えて、pH=8.0~8.5に調整した。シェーカーの回転速度が170rpmであり、29℃に昇温させた条件で夜通し反応させた。転化率の結果は、下表に示すとおりであり、イソプロピルアミン、イソプロピルアミン塩酸塩、アラニン、n-ブチルアミンをアミノ供与体として、基質の転化率が99%より大きいことを証明した。アニリンはアミノ供与体として、この反応条件で転化率は、75%のみである。
【表17】
【0097】
以上の記述から分かるように、本発明の上記の実施例では、次のような技術的効果が実現された。
1)異なる由来のトランスアミナーゼを用いて、保存部位の突然変異を行った後のトランスアミナーゼ突然変異体は、複数のケトン類基質の生物転化反応を触媒し、ワンステップ反応で必要な目標化合物を得ることができ、基質タイプが、広く適用可能である。
2)トランスアミナーゼを用いて当該生物転化反応を行うと、選択性が非常に高く、製品のee値又はde値が99%より大きい。
3)前述の異なる由来の突然変異のトランスアミナーゼ変異体を用いて、触媒反応を行い、基質濃度は、100g/Lに達することができ、生産効率が大幅に向上した。
4)トランスアミナーゼを用いて生物触媒を行い、重金属触媒を用いる必要がなく、グリーン化学が実現された。
5)当該トランスアミナーゼの触媒効率が高く、反応体積が少なく、合成経路が短く、製品の収率が高く、廃液・廃ガス・廃棄物を大幅に下げ、生産コストを節約した。
【0098】
以上は、本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明を限定するものではなく、当業者にとって、本発明は様々な修正及び変更が可能である。本発明の精神と原則内で、行われたいかなる修正、等価置換、改善などは、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【国際調査報告】