(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-15
(54)【発明の名称】フェナルカミンを含有する組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 59/50 20060101AFI20240207BHJP
C08G 14/073 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
C08G59/50
C08G14/073
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547535
(86)(22)【出願日】2021-02-07
(85)【翻訳文提出日】2023-08-29
(86)【国際出願番号】 CN2021075773
(87)【国際公開番号】W WO2022165796
(87)【国際公開日】2022-08-11
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】キウバイ ペン
(72)【発明者】
【氏名】チャオシン ファン
(72)【発明者】
【氏名】ショーロン マオ
(72)【発明者】
【氏名】リミン チョウ
【テーマコード(参考)】
4J033
4J036
【Fターム(参考)】
4J033FA02
4J033FA04
4J033GA11
4J033HA03
4J033HA27
4J033HB08
4J036AD08
4J036FB08
4J036FB12
4J036FB14
4J036HA12
4J036JA01
4J036JA14
(57)【要約】
式(I)[式中、Xは、HまたはOHであり、R1は、8個を上回る炭素原子を有する脂肪族鎖であり、R2は、H、C1~C10アルキル、フェニル、またはC5~C6脂環式基であり、R3およびR4は、独立して、CH2CH2、CH2CH2CH2、またはCH2CH2CH2CH2であり、PおよびQは、互いに独立して、整数である]によって表されるフェナルカミンを含む組成物が提供される。また、該組成物の製造方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
[式中、Xは、HまたはOHであり、R
1は、8個を上回る炭素原子を有する脂肪族鎖であり、R
2は、H、C1~C10アルキル、フェニル、またはC5~C6脂環式基であり、R
3およびR
4は、独立して、CH
2CH
2、CH
2CH
2CH
2、またはCH
2CH
2CH
2CH
2であり、PおよびQは、互いに独立して、整数である]によって表される、フェナルカミンを含む組成物。
【請求項2】
Qが、1、2または3である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
Pが、1以上50以下の整数である、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
R
1が、少なくとも1つの不飽和結合を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
R
1が、C
15H
31-mまたはC
17H
35-mであり、mが、0、2、4または6である、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
R
2が、HまたはCH
3である、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
式(II):
【化2】
[式中、Xは、HまたはOHであり、R
1は、8個を上回る炭素原子を有する脂肪族鎖であり、R
2は、H、C1~C10アルキル、フェニル、またはC5~C6脂環式基であり、R
3およびR
4は、独立して、CH
2CH
2、CH
2CH
2CH
2、またはCH
2CH
2CH
2CH
2であり、Pは、整数であり、Mは、1以上の整数である]によって表される第1のポリマーをさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
式(III):
【化3】
[式中、Xは、HまたはOHであり、R
1は、8個を上回る炭素原子を有する脂肪族鎖であり、R
2は、H、C1~C10アルキル、フェニル、またはC5~C6脂環式基であり、R
3およびR
4は、独立して、CH
2CH
2、CH
2CH
2CH
2、またはCH
2CH
2CH
2CH
2であり、Pは、整数であり、Jは、2以上の整数である]によって表される第2のポリマーをさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
充填剤、補強剤、カップリング剤、強化剤、消泡剤、分散剤、潤滑剤、着色剤、マーキング材料、染料、顔料、IR吸収剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、核形成剤、結晶化促進剤、結晶化遅延剤、導電性添加剤、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、グラフェン、乾燥剤、離型剤、レベリング助剤、難燃剤、分離剤、蛍光増白剤、レオロジー添加剤、フォトクロミック添加剤、軟化剤、密着促進剤、ドリップ防止剤、金属顔料、安定剤、金属グリッター、金属被覆粒子、多孔性誘導剤、ガラス繊維、ナノ粒子、流動補助剤、またはそれらの組み合わせから選択される1種以上の添加剤をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
式(I):
【化4】
[式中、Xは、HまたはOHであり、R
1は、8個を上回る炭素原子を有する脂肪族鎖であり、R
2は、H、C1~C10アルキル、フェニル、またはC5~C6脂環式基であり、R
3およびR
4は、独立して、CH
2CH
2、CH
2CH
2CH
2、またはCH
2CH
2CH
2CH
2であり、PおよびQは、互いに独立して整数である]によって表されるフェナルカミンを含む組成物を製造するための方法であって、
少なくとも2つの第一級アミノ基および少なくとも1つのオキシエチレン部分を有するポリアミン、アルキルフェノール、および少なくとも1種のアルデヒドを、0℃~150℃の温度に加熱することを含む、方法。
【請求項11】
温度が、0℃~150℃、好ましくは60℃~150℃、より好ましくは70℃~130℃である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
ポリアミンが、NH
2R
3(OCH
2CH
2)
POR
4NH
2として式(IV)によって表され、ここで、R
3およびR
4は、独立して、CH
2CH
2、CH
2CH
2CH
2またはCH
2CH
2CH
2CH
2であり、Pは、1以上50以下の整数である、請求項10記載の方法。
【請求項13】
アルデヒドが、ホルムアルデヒドまたはアセトアルデヒドである、請求項10記載の方法。
【請求項14】
ポリアミンとアルキルフェノールとのモル比が、0.1:1~10:1、好ましくは0.2:1~5:1、より好ましくは0.7:1~2:1の範囲内にある、請求項10記載の方法。
【請求項15】
アルデヒドとアルキルフェノールとのモル比が、0.1:1~10:1、好ましくは0.2:1~5:1、より好ましくは0.7:1~2:1の範囲内にある、請求項10記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本開示は、フェナルカミンを含む組成物、および該組成物の製造方法に関する。
【0002】
背景
マンニッヒ塩基反応は、よく知られている。マンニッヒ塩基化合物は、アルデヒド、概してホルムアルデヒド、フェノール化合物、および有機アミンの反応に基づく生成物である。フェノール化合物、アルデヒド、およびアミンの様々な形態が提案されてきた。マンニッヒ塩基生成物は、エポキシ樹脂の硬化に使用されることが知られている。
【0003】
フェナルカミンは、フェノール化合物、アルデヒドおよびポリアミンを反応させることにより得られるマンニッヒ塩基のクラスである。近年、カルダノールに基づくフェナルカミンが合成され、工業的に製造されている。これらの化学物質は、カシューナッツ殻液(時に短縮して「CNSL」)から誘導されるカルダノール含有抽出物と、ホルムアルデヒドなどのアルデヒド化合物と、ポリアミンとから合成されている。カルダノールおよびカルドールの供給源として、カシューナッツ殻液は、カシュー加工産業の副産物として得られる豊富で持続可能な低コストの製品である。
【0004】
従来、フェナルカミンの合成では、ポリアミンとしてエチレンジアミン(EDA)およびジエチレントリアミン(DETA)が使用されている。フェナルカミンは、室温または低温硬化用途のための良好なエポキシ樹脂硬化剤である。
【0005】
米国特許第6,262,148号明細書には、カルダノールと、芳香族または脂環式ポリアミンおよびアルデヒド化合物とを反応させることによって得られるマンニッヒ塩基反応生成物に基づく硬化剤が教示されている。
【0006】
国際公開第2019207079号には、少なくとも2つの異なる基を有するベンゼン環を有する置換カルダノールが開示されている。各基は、アミン基に連結された少なくとも1個の水素原子を有する。1つの基は、さらにエーテル部分を有する。硬化剤として使用される場合、置換カルダノールは、染料で容易に着色され得る明るい硬化組成物を製造することを可能にし得る。置換カルダノールは、固有の促進特性を有しており、促進剤の添加を低減または回避することができる。
【0007】
それでも、市場では、速い硬化速度を達成し、柔軟性および延性のエポキシ製品をもたらす可能性のある硬化剤が期待されている。
【0008】
概要
本開示の課題の一つは、硬化剤の成分として使用され、かつエポキシ樹脂と組み合わされる場合に、速い硬化を実現し、高い柔軟性および高い伸びを有するエポキシ樹脂をもたらし得る組成物を提供することである。
【0009】
本開示のこの課題は、式(I):
【化1】
[式中、Xは、HまたはOHであり、R
1は、8個を上回る炭素原子を有する脂肪族鎖であり、R
2は、H、C1~C10アルキル、フェニル、またはC5~C6脂環式基であり、R
3およびR
4は、独立して、CH
2CH
2、CH
2CH
2CH
2、またはCH
2CH
2CH
2CH
2であり、PおよびQは、互いに独立して、整数である]によって表される、フェナルカミンを含む組成物を提供することによって達成される。
【0010】
好ましくは、Qは、1、2または3である。
【0011】
好ましくは、Pは、1以上50以下の整数である。
【0012】
好ましくは、R1は、少なくとも1つの不飽和結合を有する。
【0013】
好ましくは、R1は、C15H31-mまたはC17H35-mであり、ここでmは、0、2、4、または6である。
【0014】
好ましくは、R2は、HまたはCH3である。
【0015】
好ましくは、組成物は、式(II):
【化2】
[式中、Xは、HまたはOHであり、R
1は、8個を上回る炭素原子を有する脂肪族鎖であり、R
2は、H、C1~C10アルキル、フェニル、またはC5~C6脂環式基であり、R
3およびR
4は、独立して、CH
2CH
2、CH
2CH
2CH
2、またはCH
2CH
2CH
2CH
2であり、Pは、整数であり、Mは1以上の整数である]によって表される第1のポリマーをさらに含む。
【0016】
好ましくは、組成物は、式(III):
【化3】
[式中、Xは、HまたはOHであり、R
1は、8個を上回る炭素原子を有する脂肪族鎖であり、R
2は、H、C1~C10アルキル、フェニル、またはC5~C6脂環式基であり、R
3およびR
4は、独立して、CH
2CH
2、CH
2CH
2CH
2、またはCH
2CH
2CH
2CH
2であり、Pは、整数であり、Jは2以上の整数である]によって表される第2のポリマーをさらに含む。
【0017】
好ましくは、組成物は、充填剤、補強材、カップリング剤、強化剤、消泡剤、分散剤、潤滑剤、着色剤、マーキング材料、染料、顔料、IR吸収剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、核形成剤、結晶化促進剤、結晶化遅延剤、導電性添加剤、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、グラフェン、乾燥剤、離型剤、レベリング助剤、難燃剤、分離剤、蛍光増白剤、レオロジー添加剤、フォトクロミック添加剤、軟化剤、密着促進剤、ドリップ防止剤、金属顔料、安定剤、金属グリッター、金属被覆粒子、多孔性誘導剤、ガラス繊維、ナノ粒子、流動補助剤、またはそれらの組み合わせから選択される1種以上の添加剤をさらに含む。
【0018】
本開示の別の課題は、式(I):
【化4】
[式中、Xは、HまたはOHであり、R
1は、8個を上回る炭素原子を有する脂肪族鎖であり、R
2は、H、C1~C10アルキル、フェニル、またはC5~C6脂環式基であり、R
3およびR
4は、独立して、CH
2CH
2、CH
2CH
2CH
2、またはCH
2CH
2CH
2CH
2であり、PおよびQは、互いに独立して整数である]によって表されるフェナルカミンを含む組成物を製造するための方法であって、
少なくとも2つの第一級アミノ基および少なくとも1つのオキシエチレン部分を有するポリアミン、アルキルフェノール、および少なくとも1種のアルデヒドを、0℃~150℃の温度に加熱することを含む方法を提供することである。
【0019】
好ましくは、Qは、1、2または3である。
【0020】
好ましくは、Pは、1以上50以下の整数である。
【0021】
好ましくは、温度は、0℃~150℃、より好ましくは60℃~150℃、さらにより好ましくは70℃~130℃である。
【0022】
好ましくは、ポリアミンは、NH2R3(OCH2CH2)POR4NH2として式(IV)によって表され、ここで、R3およびR4は、独立して、CH2CH2、CH2CH2CH2またはCH2CH2CH2CH2であり、Pは、1以上50以下の整数である。
【0023】
好ましくは、アルデヒドは、ホルムアルデヒドまたはアセトアルデヒドである。
【0024】
好ましくは、ポリアミンとアルキルフェノールとのモル比は、0.1:1~10:1、好ましくは0.2:1~5:1、より好ましくは0.7:1~2:1の範囲内にある。
【0025】
好ましくは、アルデヒドとアルキルフェノールとのモル比は、0.1:1~10:1、好ましくは0.2:1~5:1、より好ましくは0.7:1~2:1の範囲内にある。
【0026】
本開示における組成物は、高速硬化、高い柔軟性、および高い伸びの優れた特性を有する二成分エポキシ系を提供し、これらは、道路上敷き、改質アスファルト舗装、柔軟な接着剤、コーティング、モルタル、複合材等の多くの用途に適している。
【0027】
詳細な説明
以下の説明は、例示のためにのみ使用されるが、本開示の範囲を限定するためのものではない。
【0028】
本開示において提供される組成物は、式(I):
【化5】
[式中、Xは、HまたはOHであり、R
1は、8個を上回る炭素原子を有する脂肪族鎖であり、R
2は、H、C1~C10アルキル、フェニル、またはC5~C6脂環式基であり、R
3およびR
4は、独立して、CH
2CH
2、CH
2CH
2CH
2、またはCH
2CH
2CH
2CH
2であり、PおよびQは、互いに独立して、整数である]によって表されるフェナルカミンを含む。
【0029】
好ましくは、Qは、1、2または3である。
【0030】
好ましくは、Pは、1以上50以下の整数である。より好ましくは、Pは、1、2または3である。
【0031】
好ましくは、R1は、少なくとも1つの不飽和結合を有する。
【0032】
好ましくは、R1は、C15H31-mまたはC17H35-mであり、ここでmは、0、2、4、または6である。
【0033】
好ましくは、R2は、HまたはCH3である。
【0034】
好ましくは、組成物は、式(II):
【化6】
[式中、Xは、HまたはOHであり、R
1は、8個を上回る炭素原子を有する脂肪族鎖であり、R
2は、H、C1~C10アルキル、フェニル、またはC5~C6脂環式基であり、R
3およびR
4は、独立して、CH
2CH
2、CH
2CH
2CH
2、またはCH
2CH
2CH
2CH
2であり、Pは、整数であり、Mは1以上の整数である]によって表される第1のポリマーをさらに含む。
【0035】
第1のポリマーは、一端に1個のアミノ基を有し、他端に1個の部分的に反応したベンゼン環を有する。好ましくは、Mの数は、20以下であり得る。当然のことながら、Mは、反応物のモル比、縮合が実施される温度、反応物の濃度等を含む縮合の条件に依存する。
【0036】
第1のポリマーは、アルキルフェノール、アルデヒドおよびポリアミンの縮合中に製造される。ポリアミンは、CHR2部分を介して2つ以上の芳香環を架橋していてもよい。第1のポリマーの存在は、ゲル浸透クロマトグラフィー分析のピークによって示唆され得る。
【0037】
好ましくは、組成物は、式(III):
【化7】
[式中、Xは、HまたはOHであり、R
1は、8個を上回る炭素原子を有する脂肪族鎖であり、R
2は、H、C1~C10アルキル、フェニル、またはC5~C6脂環式基であり、R
3およびR
4は、独立して、CH
2CH
2、CH
2CH
2CH
2、またはCH
2CH
2CH
2CH
2であり、Pは、整数であり、Jは、2以上の整数である]によって表される第2のポリマーをさらに含む。
【0038】
第2のポリマーは、両端にアミノ基を有する。好ましくは、Jの数は、20以下であり得る。当然のことながら、Jは、反応物のモル比、縮合が実施される温度、反応物の濃度等を含む縮合の条件に依存する。
【0039】
第2のポリマーは、アルキルフェノール、アルデヒドおよびポリアミンの縮合の間に製造される。ポリアミンは、CHR2部分を介して2つ以上の芳香環を架橋していてもよい。第2のポリマーの存在は、ゲル浸透クロマトグラフィー分析のピークによって示唆され得る。
【0040】
組成物は、充填剤、補強剤、カップリング剤、強化剤、消泡剤、分散剤、潤滑剤、着色剤、マーキング材料、染料、顔料、IR吸収剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、核形成剤、結晶化促進剤、結晶化遅延剤、導電性添加剤、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、グラフェン、乾燥剤、離型剤、レベリング助剤、難燃剤、分離剤、蛍光増白剤、レオロジー添加剤、フォトクロミック添加剤、軟化剤、密着促進剤、ドリップ防止剤、金属顔料、安定剤、金属グリッター、金属被覆粒子、多孔性誘導剤、ガラス繊維、ナノ粒子、流動補助剤、またはそれらの組み合わせから選択される1種以上の添加剤をさらに含む。
【0041】
この組成物は、ポリアミン、アルキルフェノール、およびアルデヒドの反応生成物として製造され得る。
【0042】
ポリアミン
本開示によれば、ポリアミンは、少なくとも2つの第一級アミノ基および少なくとも1つのオキシエチレン部分を有する。オキシエチレン部分は、2価のアルキル基を介して第一級アミノ基に結合している。好ましくは、ポリアミンは、H2NR3(OCH2CH2)POR4NH2(式中、Pは、1以上の整数であり、かつR3およびR4は、独立して、C2H4、C3H6またはC4H8である)として式(IV)によって表される。より好ましくは、整数Pは、50以下である。最も好ましくは、Pは、1、2または3である。より好ましくは、R3およびR4は、独立してCH2CH2またはCH2CH2CH2である。さらにより好ましくは、ポリアミンは、Evonik Specialty Chemicals (Shanghai) Co., Ltd.製のAncamine(登録商標)1922Aとして市販されているH2NCH2CH2CH2O(CH2CH2O)2CH2CH2CH2NH2を含む。
【0043】
アルキルフェノール
本開示で使用されるアルキルフェノールは、ベンゼン環上に1つ以上のアルキル基を有するフェノールを指す。好ましくは、アルキルフェノールは、少なくとも1種のq-置換モノアルキルフェノールを含む。より好ましくは、アルキルフェノールは、8個を上回る炭素原子を有する脂肪族鎖を有するフェノールを含む。さらにより好ましくは、アルキルフェノールは、12個を上回る炭素原子を有する脂肪族鎖を有するフェノールを含む。
【0044】
好ましくは、アルキルフェノールは、少なくとも1つの不飽和結合を有する脂肪族鎖を有するフェノールを含み得る。
【0045】
限定により、本開示によるアルキルフェノールは、ノニルフェノール、カルダノール、カルドール、またはそれらの任意の混合物を含む。
【0046】
本明細書において、カルダノールとは、1つのヒドロキシル基を有し、かつメタ位の脂肪族側鎖中の不飽和結合の数が異なるフェノールの混合物を指す。カルダノールの構造は、以下のように示される:
【化8】
[式中、Rは、-C
15H
31、-C
15H
29、-C
15H
27および-C
15H
25からなる群から選択される0~3個の不飽和結合を有する15個の炭素を有する直鎖状アルキル;または-C
17H
33、-C
17H
31および-C
17H
29からなる群から選択される1~3個の不飽和結合を有する17個の炭素を有する直鎖状アルキルである]。
【0047】
カルドールは、以下の構造を有する:
【化9】
[式中、Rは、-C
15H
31、-C
15H
29、-C
15H
27および-C
15H
25からなる群から選択される0~3個の不飽和結合を有する15個の炭素を有する直鎖状アルキル;または-C
17H
33、-C
17H
31および-C
17H
29からなる群から選択される1~3個の不飽和結合を有する17個の炭素を有する直鎖状アルキルである]。
【0048】
カルダノールまたはカルドールは、カシューナッツ殻液から様々な純度および化学組成で天然に存在する物質として得られることもある。それらは、様々な製造業者から市販されている。
【0049】
アルデヒド
本発明において提供されるフェナルカミン含有組成物を製造するために使用されるアルデヒドは、ホルムアルデヒド(水溶液中またはパラホルムアルデヒドとして)、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ヘプタアルデヒド、ヘキサアルデヒド、2-エチルヘキサナール、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド、任意の他のアルデヒド、またはそれらの混合物であり得る。好ましい実施形態では、本発明において使用されるアルデヒドは、ホルムアルデヒドであり得る。これらの化合物は、当該技術分野で公知であり、商業的供給元から容易に入手可能であるか、または公知の方法を用いて容易に製造される。
【0050】
本開示の組成物は、当該技術分野で公知のマンニッヒ反応条件に従って製造され得る。組成物は、上記のアルデヒド、ポリアミンおよびアルキルフェノールを提供し、それらをマンニッヒ反応によって反応させることによって製造され得る。ベンゼン、トルエンまたはキシレンなどの溶媒は、共沸蒸留点でこの反応の間に生成された水を除去するために使用され得る。窒素は、水の除去を容易にするためにも推奨される。反応は、0~150℃、好ましくは70~150℃、またはより好ましくは70~130℃の温度で実施され得る。いくつかの実施形態では、アルキルフェノールとポリアミンとをまず混合し、次いで、得られた混合物にアルデヒドを添加する。アルデヒドを添加する時間は、0.1~24時間、好ましくは0.5~12時間、またはより好ましくは0.6~4時間の範囲で変化し得る。
【0051】
ポリアミンとアルキルフェノールとのモル比は、好ましくは0.1:1~10:1、好ましくは0.2:1~5:1、より好ましくは0.7:1~2:1である。アルデヒドとアルキルフェノールとのモル比は、好ましくは0.1:1~10:1、好ましくは0.2:1~5:1、より好ましくは0.7:1~2:1である。ポリアミンとアルキルフェノールとのモル比、およびアルデヒドとアルキルフェノールとのモル比は、マンニッヒ反応の縮合物中のフェナルカミン、第1のポリマーおよび第2のポリマーの分布に影響を与える。
【0052】
硬化剤
本開示で提供される組成物は、エポキシ樹脂用の硬化剤として使用され得る。硬化剤は、フェナルカミンおよびポリマーの他に、1種以上の成分を含み得る。これらの成分に関する詳細を以下に説明する。
【0053】
硬化剤は、少なくとも1種の多官能性アミンをさらに含み得る。本明細書で使用される多官能性アミンは、アミン官能基を有し、2つ以上のアミン水素原子を含む化合物を表す。
【0054】
本開示の範囲内にある多官能性アミンの非限定的な例としては、脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミン;脂肪族アミン、脂環式アミン、または芳香族アミンのマンニッヒ塩基誘導体;脂肪族アミン、脂環式アミン、または芳香族アミンのポリアミド誘導体;脂肪族アミン、脂環式アミン、または芳香族アミンのアミドアミン誘導体;脂肪族アミン、脂環式アミン、または芳香族アミンのアミン付加物誘導体、および類似物、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
好ましくは、本開示の組成物には2種以上の多官能性アミンが使用される。例えば、少なくとも1種の多官能性アミンは、脂肪族アミンおよび脂環式アミンのマンニッヒ塩基誘導体を含む。また、少なくとも1種の多官能性アミンは、1種の脂肪族アミンと別の1種の脂肪族アミンとを含む。
【0056】
例示的な脂肪族アミンとしては、ポリエチレンアミン(エチレンジアミンまたはEDA、ジエチレントリアミンまたはDETA、トリエチレンテトラアミンまたはTETA、テトラエチレンペンタミンまたはTEPA、ペンタエチレンヘキサミンまたはPEHA、および類似物)、ポリプロピレンアミン、アミノプロピル化エチレンジアミン、アミノプロピル化プロピレンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、3,3,5-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、3,5,5-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン(Dytek-Aとして市販)、および類似物、またはそれらの組み合わせが挙げられる。さらに、Huntsman CorporationからJeffamineの名称で市販されているポリ(アルキレンオキシド)ジアミンおよびポリ(アルキレンオキシド)トリアミンは、本開示において有用である。例示的な例としては、Jeffamine(登録商標)D-230、Jeffamine(登録商標)D-400、Jeffamine(登録商標)D-2000、Jeffamine(登録商標)D-4000、Jeffamine(登録商標)T-403、Jeffamine(登録商標)EDR-148、Jeffamine(登録商標)EDR-192、Jeffamine(登録商標)C-346、Jeffamine(登録商標)ED-600、Jeffamine(登録商標)ED-900、Jeffamine(登録商標)ED-2001、および類似物、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
脂環式および芳香族アミンとしては、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、水素化オルト-トルエンジアミン、水素化メタ-トルエンジアミン、メタキシリレンジアミン、水素化メタキシリレンジアミン(商業的に1,3-BACと称される)、イソホロンジアミン(IPDA)、様々な異性体またはノルボルナンジアミン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、2,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、ベンジル化エチレンジアミン、メチレン架橋ポリ(シクロヘキシル-芳香族)アミンの混合物、および類似物、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。メチレン架橋ポリ(シクロヘキシル芳香族)アミンの混合物は、MBPCAAまたはMPCAのいずれかと略され、米国特許第5,280,091号明細書に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本開示のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1種の多官能性アミンは、エポキシ化1,3-ベンゼンジメタンアミン(Mitsubishi Gas Chemical CompanyよりGaskamine 328として市販)である。
【0058】
マンニッヒ塩基誘導体は、上記の脂肪族アミン、脂環式アミン、または芳香族アミンと、フェノールまたは置換フェノールおよびホルムアルデヒドとの反応によって製造され得る。本開示において有用性を有するマンニッヒ塩基を製造するために使用される例示的な置換フェノールは、カシューナッツ殻液から得られるカルダノールである。代替的には、マンニッヒ塩基は、多官能性アミンと、マンニッヒ塩基を含む第三級アミン、例えば、トリス-ジメチルアミノメチルフェノール(Evonik Operations GmbHからAncamine(登録商標)K54として市販)またはビス-ジメチルアミノメチルフェノールとの交換反応により製造され得る。
【0059】
ポリアミド誘導体は、脂肪族アミン、脂環式アミン、または芳香族アミンと、ダイマー脂肪酸、またはダイマー脂肪酸および脂肪酸の混合物との反応によって製造され得る。アミドアミン誘導体は、脂肪族アミン、脂環式アミン、または芳香族アミンと脂肪酸との反応によって製造され得る。
【0060】
アミン付加物は、脂肪族アミン、脂環式アミン、または芳香族アミンと、エポキシ樹脂、例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、またはエポキシノボラック樹脂との反応によって製造され得る。脂肪族、脂環式および芳香族アミンには、単官能性エポキシ樹脂、例えば、フェニルグリシジルエーテル、クレシルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、他のアルキルグリシジルエーテル、および類似物を付加することもできる。
【0061】
本開示の別の態様では、硬化剤には共硬化剤が含まれる。共硬化剤は、アミドアミン硬化剤、脂肪族硬化剤、ポリアミド硬化剤、脂環式硬化剤、またはマンニッヒ塩基硬化剤であり得る。
【0062】
本開示の幾つかの態様では、可塑剤が、硬化剤に添加される。
【0063】
工業的要求を満たすためにより多くの機能性または特徴をもたらすために、硬化剤組成物には、好ましくは添加剤が含まれる。添加剤とは、例えば、粘度、湿潤特性、安定性、反応速度、ブリスター形成、貯蔵性、または密着性、および使用特性を最終用途に適合させるために、硬化剤組成物の特性を所望の方向に変化させるために添加される物質を意味すると理解される。いくつかの添加剤が、例えば、国際公開第99/55772号、第15~25頁に記載されている。
【0064】
好ましい添加剤は、充填剤、補強剤、カップリング剤、強化剤、消泡剤、分散剤、潤滑剤、着色剤、マーキング材料、染料、顔料、IR吸収剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、核形成剤、結晶化促進剤、結晶化遅延剤、導電性添加剤、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、グラフェン、乾燥剤、離型剤、レベリング助剤、難燃剤、分離剤、蛍光増白剤、レオロジー添加剤、フォトクロミック添加剤、軟化剤、密着促進剤、ドリップ防止剤、金属顔料、安定剤、金属グリッター、金属被覆粒子、多孔性誘導剤、ガラス繊維、ナノ粒子、流動補助剤、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0065】
添加剤は、好ましくは、硬化剤の総重量に対して、90重量%以下、好ましくは70重量%以下、より好ましくは50重量%以下、さらにより好ましくは30重量%以下の割合を構成する。
【0066】
例えば、光安定剤、例えば立体障害アミンまたは他の助剤を、例えば0.05重量%~5重量%の合計量で記載されるように添加することが有利である。
【0067】
本開示の硬化剤組成物を製造するために、レベリング剤、例えばポリシリコーン、または密着促進剤、例えばアクリレートに基づくものなどの添加剤を添加することがさらに可能である。さらに、さらなる成分が任意に存在していてよい。さらに使用される助剤および添加剤は、連鎖移動剤、可塑剤、安定剤および/または阻害剤であり得る。
【0068】
場合により、硬化剤組成物は、好ましくは酸化防止添加剤を含む。酸化防止剤は、立体障害フェノール、スルフィドまたはベンゾエートから選択される1つ以上の構造単位を含み得る。ここで、立体障害フェノールでは、2個のオルト水素原子は、水素ではなく、好ましくは少なくとも1~20個、特に好ましくは3~15個の炭素原子を有し、好ましくは分枝鎖状である化合物で置換されている。ベンゾエートは、また、好ましくは、OH基に対してオルト位で、水素ではなく、特に好ましくは1~20個、より好ましくは3~15個の炭素原子を有する置換基を有し、該置換基は、好ましくは分枝鎖状である。
【0069】
さらに別の実施形態では、必要に応じて、1種以上の触媒が、好ましくは硬化剤組成物の一部として、エポキシ樹脂のエポキシ基と硬化剤組成物のアミン基との反応を促進するために、好ましくは、硬化剤組成物に導入される。硬化剤組成物に導入され得る有用な触媒としては、Evonik Operations GmbHから入手可能なAncamide(登録商標)製品、およびHuntsman Corporationから入手可能な「促進剤」として販売される製品が挙げられる。例示的な触媒の1つは、Huntsman Corporationから入手可能なピペラジン系Accelerator 399である。使用される場合、このような触媒は、好ましくは、全接着剤組成物の0~約10重量%を構成する。
【0070】
好ましくは、硬化剤がエポキシ樹脂と混合された場合、硬化促進剤が、硬化過程を加速させるために、硬化剤組成物に添加され得る。硬化促進剤としては、トリス-(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミン、ノニルフェノールの様々な異性体、トリエタノールアミン、またはN-(3-アミノプロピル)イミノジエタノールから選択される1種以上が挙げられる。
【0071】
システムが使用される最終用途または環境に応じて、他の添加剤または成分がシステムに存在し得る。
【0072】
好ましくは、本開示による硬化剤組成物は、上記で特定された成分を含む。
【0073】
二成分エポキシ系におけるエポキシ樹脂
本開示のフェナルカミン含有組成物は、当該技術分野で既に公知のエポキシ化合物と共に使用されて、二成分エポキシ組成物を形成し得る。
【0074】
有用なエポキシ化合物は、1分子あたり2つ以上のエポキシ基、好ましくは2つのエポキシ基を含む、この目的のために知られている多数のものである。これらのエポキシド化合物は、好ましくは飽和または不飽和のいずれかである。それらは、好ましくは脂肪族、脂環式、芳香族または複素環式であり、かつヒドロキシル基を有する。それらは、好ましくは、混合または反応条件下で副反応を引き起こさないような置換基、例えばアルキルまたはアリール置換基、エーテル部分および類似物を含む。それらは好ましくはグリシジルエーテルであり、多価フェノール、特にビスフェノールおよびノボラックから誘導され、かつ100~1500g/eqの間、特に150~250g/eqの間のエポキシ基の数に基づくモル質量ME(「エポキシ当量」、「EV値」)を有する。
【0075】
多価フェノールの例としては、とりわけ、レゾルシノール、ハイドロキノン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、ビス(4-グリシジルオキシフェニル)メタン(ビスフェノールE)、ジヒドロキシジフェニルメタン(ビスフェノールF)の異性体混合物、4,4’-ジヒドロキシジフェニルシクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルプロパン、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1-エタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1-イソブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-tert-ブチルフェニル)プロパン、ビス(2-ヒドロキシナフチル)メタン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、および前述の化合物の塩素化および臭素化生成物、例えばテトラブロモビスフェノールAが挙げられる。非常に特に好ましいのは、150~200g/eqのエポキシ当量を有するビスフェノールAおよびビスフェノールFに基づく液体ジグリシジルエーテルを使用することである。また、ポリオールのポリグリシジルエーテル、例えば、エタン-1,2-ジオールジグリシジルエーテル、プロパン-1,2-ジオールジグリシジルエーテル、プロパン-1,3-ジオールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ペンタンジオールジグリシジルエーテル(ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルを含む)、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、高級ポリオキシアルキレングリコールジグリシジルエーテル、例えば、高級ポリオキシエチレングリコールジグリシジルエーテルおよびポリオキシプロピレングリコールジグリシジルエーテル、コ-ポリオキシエチレン-プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリオキシテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセノールの、ヘキサン-1,2,6-トリオールの、トリメチロールプロパンの、トリメチロールエタンの、ペンタエリスリトールの、またはソルビトールのポリグリシジルエーテル、オキシアルキル化ポリオールのポリグリシジルエーテル(例えば、とりわけ、グリセロールの、トリメチロールプロパンの、ペンタエリスリトールのもの)、シクロヘキサンジメタノールの、ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)メタンの、および2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのジグリシジルエーテル、ヒマシ油のポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートを使用することも可能である。
【0076】
さらなる有用な成分A)としては、エピクロロヒドリンとアミンとの反応生成物、例えばアニリン、n-ブチルアミン、ビス(4-アミノフェニル)メタン、m-キシリレンジアミン、またはビス(4-メチルアミノフェニル)メタンの脱ハロゲン化水素によって得られるポリ(N-グリシジル)化合物が挙げられる。また、ポリ(N-グリシジル)化合物としては、トリグリシジルイソシアヌレート、トリグリシジルウラゾールおよびそのオリゴマー、シクロアルキレン尿素のN,N’-ジグリシジル誘導体、および特にヒダントインのジグリシジル誘導体も挙げられる。
【0077】
さらに、ポリカルボン酸のポリグリシジルエステルを使用することも可能であり、これらは、エピクロロヒドリンまたは類似のエポキシド化合物と、脂肪族、脂環式または芳香族ポリカルボン酸、例えば、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、フタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸および高級ジグリシジルジカルボキシレート、例えば、二量化または三量化されたリノレン酸との反応によって得られる。例は、ジグリシジルアジペート、ジグリシジルフタレートおよびジグリシジルヘキサヒドロフタレートである。
【0078】
さらに、不飽和カルボン酸のグリシジルエステル、および不飽和アルコールまたは不飽和カルボン酸のエポキシ化エステルが挙げられる。ポリグリシジルエーテルに加えて、少量のモノエポキシド、例えばメチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、エチルヘキシルグリシジルエーテル、長鎖脂肪族グリシジルエーテル、例えばセチルグリシジルエーテルおよびステアリルグリシジルエーテル、高級異性体アルコール混合物のモノグリシジルエーテル、C12~C13アルコールの混合物のグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、p-オクチルフェニルグリシジルエーテル、p-フェニルフェニルグリシジルエーテル、アルコキシル化ラウリルアルコールのグリシジルエーテル、さらにはエポキシ化された一価不飽和炭化水素(ブチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド)などのモノエポキシドを、ポリグリシジルエーテルの質量を基準として、30重量%まで、好ましくは10重量%~20重量%の質量割合で使用することが可能である。
【0079】
有用なエポキシド化合物としては、好ましくは、グリシジルエーテルおよびグリシジルエステル、脂肪族エポキシド、ビスフェノールA、ビスフェノールEおよび/またはビスフェノールFに基づくジグリシジルエーテル、ならびにグリシジルメタクリレートが挙げられる。かかるエポキシドの他の例は、トリグリシジルイソシアヌレート、ジグリシジルテレフタレートとトリグリシジルトリメリテートとの混合物(商標名:ARALDIT PT 910および912、Huntsman)、バーサチック酸のグリシジルエステル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ECC)、エチルヘキシルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ペンタエリスリチルテトラグリシジルエーテル、および遊離エポキシ基を有する他のポリポックス生成物である。言及されたエポキシド化合物の混合物を使用することも可能である。
【0080】
特に好ましいエポキシド成分は、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールEジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、4,4’-メチレンビス[N,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)アニリン]、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、プロパン-1,2,3-トリオールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルおよびジグリシジルヘキサヒドロフタレートに基づくポリエポキシドである。
【0081】
本開示によれば、これらのエポキシド化合物の混合物をエポキシ樹脂中で使用することも好ましくは可能である。
【0082】
エポキシ樹脂は、結晶形、粉末形、半固体形、液体形等の様々な形であり得る。液体形の場合、エポキシ樹脂は、溶媒、例えば、水に溶解し得る。好ましくは、エポキシ樹脂は、混合プロセスを容易にするために、液体の形である。
【0083】
本開示のフェナルカミン含有組成物は、様々な用途、例えば、建築用の防水材料、耐食塗料などの塗料、および道路舗装およびメンテナンス用途で使用され得る。特に、該組成物は、道路舗装およびメンテナンス用途、例えばタックコート、フォグシール、スラリーシールおよびマイクロサーフェシングに適している。フェナルカミン含有組成物は、二成分エポキシ系に一般的に使用される従来の装置で供給することができる。現場での適用の間、1つの部分(フェナルカミンを含有するアスファルト組成物)および他の部分(エポキシ樹脂)を、2つの異なるタンクに貯蔵し、混合し、任意にアグリゲートなどの硬化性アスファルト組成物中で他の任意成分と混合し、次いで道路舗装などの基材に塗布することができる。本開示で提供されるフェナルカミン含有組成物は、硬化プロセスを短縮し、アスファルトとの良好な相溶性をもたらし、道路舗装用途における柔軟性および機械的強度を高めることができる。
【0084】
本開示を、合成例および以下の比較例によって説明する。
【0085】
実施例
以下の実施例において、使用される材料または定義を以下に列挙する。
【0086】
Ancamine(登録商標)1922は、3,3’-(オキシビス(2,1-エタン-ジイルオキシ))ビス-1-プロパンアミンであり、Evonik (Shanghai) Specialty Chemicals Co., Ltd.製のオキシエチレン部分を有するジアミンであった。
【0087】
Huntsman Corporation製のJeffamine(登録商標)D230およびJeffamine(登録商標)D400は、オキシプロピレン部分を有するジアミンであった。Huntsman Corporation製のJeffamine(登録商標)T403は、オキシプロピレン部分を有するトリアミンであった。
【0088】
Huada Saigao (Beijing) Technology Co., Ltd製の精製されたカシューナッツ殻液HD-F170は、85重量%の純度を有するカルダノールであった。
【0089】
Sinopharm Chemical Reagent Co., Ltd.製の37重量%のホルムアルデヒド水溶液を、ホルムアルデヒド源として使用した。
【0090】
カルダノールのモル数を単位(1)としてモル比を計算した。
【0091】
D.E.R.(商標)331は、Olin Corporation製のビスフェノールAのジグリシジルエーテルであり、エピクロロヒドリンとビスフェノールAとの液体反応生成物であった。D.E.R.(商標)331は、182~192g/molのEEWを有する。
【0092】
本開示で提供されたフェナルカミン含有組成物を市販の硬化剤と比較するために、3種のAncamine(登録商標)硬化剤を試験した。
【0093】
Ancamine(登録商標)2758は、Evonik Specialty Chemicals (Shanghai) Co., Ltd.製のフェナルカミンである。硬化剤の使用レベルは、D.E.R.331について35phrであった。
【0094】
Ancamine(登録商標)2770は、Evonik Specialty Chemicals (Shanghai) Co., Ltd.製のフェナルカミンである。硬化剤の使用レベルは、D.E.R.331について65phrであった。
【0095】
Ancamine(登録商標)1637は、Evonik Specialty Chemicals (Shanghai) Co., Ltd.製のマンニッヒ塩基硬化剤である。硬化剤の使用レベルは、D.E.R.331について26phrであった。
【0096】
アミン水素当量(g/mol)またはAHEWを、アミンの分子量を1分子あたりのアミン水素原子の数で割ったものとして計算する。
【0097】
エポキシ当量またはEEWで示されるエポキシ基含有量は、エポキシドの分子量とエポキシ基の数との間の比率である。
【0098】
二成分エポキシ系の化学組成を説明する際、硬化剤の使用レベルについて言及されることが多い。これは、樹脂100あたりの硬化剤の使用量(phr)である。実施例では、これを187g/molのEEWを有するエポキシ樹脂(D.E.R.331)あたりのフェナルカミンの量として計算する。
【0099】
試料の物理的性能または特性を試験するために、以下のプロトコルを使用した:
【0100】
粘度を、ASTM D445-83に従ってBrookfield DV-II+Pro粘度計によって25℃で測定した。薄膜硬化時間(TFST)を、ASTM D5895に従って、Beck-Koller乾燥記録計を使用して測定した。
【0101】
アミン価を、ASTM D 2074に従ってメトラー滴定装置で測定した(過塩素酸滴定)。
【0102】
合成された硬化剤の分子量分布を評価するために、ガス透過クロマトグラフィー(GPC)分析を行った。Agilent Technolgies, Inc.製のPLgel MIXED GPCカラムを使用した。流量を0.3mL/分に設定した。テトラヒドロフラン(THF)溶離液中の分析対象の濃度は、5mg/mLであった。注入量は20μLであった。カラム温度およびポンプ温度は、40℃であった。ポリスチレンを校正標準として使用した。屈折率(RI)検出器を使用した。
【0103】
ガードナー色を、ASTM D 1544-80に従って測定した。
【0104】
光沢を、ASTM D 523-85に従ってBYK光沢計により測定した。
【0105】
乾燥時間を、ASTM D5895に従って、BY乾燥記録計で試験した。段階1は、指触乾燥時間である。段階2は、不粘着時間である。段階3は、硬化乾燥時間である。段階4は、完全乾燥時間である。硬度を、GB/T2411に従ってショアD試験機で試験した。
【0106】
水スポット耐性は、カルバメート化耐性、耐白化性としても知られている。これは内部試験法に従って測定されたもので、以下のように記載されている。一定の期間、例えば、1日または2日間の硬化後、水を含ませた綿球をコーティング表面上に置き、次いで水ガラスで覆った。翌日、綿を取り除いた後のコーティング表面の外観を、1~5の等級で評価する。
1 - 非常に悪い 白色表面
2 - 悪い 軽度の白化
3 - 中程度 曇った表面
4 - 良好 可視の輪郭
5 - 非常に良好 光沢表面
【0107】
引張強度、破断点伸び、および引張弾性率を含む引張特性を、GB/T 2567-2008に従って測定した。
【0108】
柔軟性を、ASTM D522に従って測定した。
【0109】
耐衝撃性を、ASTM D2794に従って測定した。
【0110】
コーティングと基材のコーティングされた表面との間の密着性についてのクロスカット試験を、DIN EN ISO 2409に従って測定した。
【0111】
Tgとしても知られるガラス転移温度は、ASTM D 3418-82に従って、0~200℃、10℃/分の加熱速度でDSCによって測定される2回目の走査での値であった。
【0112】
ゲル化時間を、150グラムの混合物を使用して、Cole-Parmer Instrument Company, LLC製のTechne(登録商標)Gelation Timerによって測定した。
【0113】
ポットライフを、混合物の粘度の値が、その初期値の2倍になるのに必要な時間を測定することによって決定した。
【0114】
室温で24時間後の外観を、目視により評価した。
【0115】
合成例によって調製した組成物、比較例によって調製した組成物、および市販の硬化剤を、それぞれの化学量論量に従ってEEW187の標準的な液体エポキシ樹脂で硬化させた。D.E.R.(商標)331を、液体エポキシ樹脂として使用した。これは、Olin Corporation製のビスフェノールAのジグリシジルエーテルである。合成例および比較例における使用レベルを、第1表に示す。全ての試料を、試験前に室温21~25℃で最低24時間コンディショニングした。フェナルカミン含有組成物を、スピードミキサーを使用して1,500rpmで2分間、D.E.R.(商標)331と混合し、次いで試験基材に塗布するか、または試験型に注入した。特定の温度で一定時間硬化させた後、試験片を、標準方法に従って試験した。
【0116】
合成手順
カルダノールおよびアミンを、1Lのフラスコに装入した。撹拌しながら70~80℃に昇温させた。カルダノールアミン混合物を撹拌しながら、37重量%のホルムアルデヒド水溶液を、フラスコに滴加した。ホルムアルデヒド溶液の添加が完了した後、フラスコ内の内容物を100℃に加熱した。温度を100分間維持した。次いで、これを30~50分にわたり120℃に上昇させた。水を減圧下で除去した。有機混合物を排出し、試験のために冷却した。
【0117】
合成例SE1~SE5では、Evonik Specialty Chemicals (Shanghai) Co., Ltd.製のAncamine(登録商標)1922を、ポリアミンとして使用した。比較例CE1~CE3では、ポリ(プロピレングリコール)ベースのポリエーテルアミン、例えばHuntsman Corporation製のJeffamine(登録商標)D230、Jeffamine(登録商標)D400、Jeffamine(登録商標)T403を、ポリアミンとして使用した。合成例および比較例の詳細を第1表に示した。
【0118】
GPC分析から、カルダノール:ポリアミン:アルデヒドのモル比が異なる合成されたアミンは、様々な成分を、主に、1つ、2つ、またはそれより多くのカルダノール部分を有する縮合物の形で含み、それぞれ、1つまたは2つの-CH2NH-結合に直接結合している。それらの存在および内容を、個々のピークによって示唆した。1:1:1および1:1:1.5(カルダノール/ポリアミン/アルデヒド)のモル比を有する合成されたアミンの平均ピーク分子量(Mp)は、それぞれ584(カルダノール部分の繰り返し数である)および1234であった。これらの結果は、過剰なアルデヒドが高レベルの縮合をもたらし、より高度の縮合物の量を増加させる可能性があることを示した。
【0119】
試験結果を、第2表および第3表に示した。比較試料CE3は、いくつかの試験条件下で、エポキシ樹脂で不完全に硬化するため、ほとんど試験データがなかった。硬化条件2では、引張特性データが得られた。引張強度は、47.4MPaであった。伸びは、8.7%であった。弾性率は、1357MPaであった。市販の硬化剤Ancamine(登録商標)2758、Ancamine(登録商標)2770およびAncamine(登録商標)1637を、本開示において提供されるフェナルカミン含有組成物の性能をさらに評価するために使用した。第3表では、それらを、それぞれA2758、A2770およびA1637と略した。
【0120】
第2表および第3表に示すように、合成例のフェナルカミン含有組成物は、ゲル化時間およびポットライフに関して、比較例CE1およびCE2のポリ(プロピレングリコール)ベースのジアミンから製造した組成物よりも高速の硬化特性を有し、乾燥時間がはるかに速い。また、より速い硬度発現が低温で示された。
【0121】
機械的性能に関して、合成例のアミンは、従来のエチレンジアミン変性フェナルカミン(Ancamine(登録商標)2758、Ancamine(登録商標)2770など)およびポリエチレンポリアミン変性マンニッヒ塩基(Ancamine(登録商標)1637など)と比較して、高い伸び、優れた耐衝撃性および-20℃での曲げ柔軟性で表される良好な柔軟性を示した。また、合成例の組成物は、優れた密着性、優れたカルバメート化耐性および低温での光沢仕上げを示し、これは保護コーティングにおける用途に非常に適している。引張弾性率、引張強度、およびショア硬度は、合成中のホルムアルデヒドの一部を変化させることにより、高速硬化または優れた柔軟性を損なうことなく改善することができる。
【0122】
フェナルカミン含有組成物はまた、カルバメート化に対して良好な耐性を示し、このことは光沢のある表面につながり得、道路のオーバーレイ、改質アスファルト舗装、柔軟な接着剤、コーティング、モルタル、および複合材などの多くの用途において非常に望ましい。
【0123】
コーティング、道路のオーバーレイおよび舗装の用途では、高速硬化特性と優れた柔軟性が望ましく、これにより迅速な交通開通が可能になり、亀裂抵抗が大幅に向上する。合成例により製造したフェナルカミン含有組成物は、ASTM C881/C881M-14に従って、通常、30%より高い伸びが要求されるので、道路のオーバーレイ用途に適している。
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
様々な態様および実施形態が可能である。これらの態様および実施形態のいくつかは、本明細書に記載されている。本明細書を読んだ後、当業者は、これらの態様および実施形態が単なる例示であり、本開示の範囲を限定しないことを認めるであろう。実施形態は、以下に列挙する実施形態のいずれか1つ以上に従っていてよい。
【0128】
上記の説明は、当業者が本開示を製造および使用することを可能にするために提示されており、出願およびその要件の文脈において提供されている。好ましい実施形態に対する様々な修正は、当業者には明らかであり、本明細書で定義される一般的な原理は、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、他の実施形態および用途に適用され得る。したがって、本開示は、示された実施形態に限定されることを意図するものではないが、本明細書に開示された原理および特徴と一致する最も広い範囲に認められるべきである。この点に関して、本開示内の特定の実施形態は、広く考慮されている本開示の全ての利点を示していない場合がある。
【国際調査報告】