(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-15
(54)【発明の名称】スーパーβトライオードトランジスタ、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/331 20060101AFI20240207BHJP
【FI】
H01L29/72 P
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547839
(86)(22)【出願日】2022-07-22
(85)【翻訳文提出日】2023-08-08
(86)【国際出願番号】 CN2022107260
(87)【国際公開番号】W WO2023005819
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】202110858844.X
(32)【優先日】2021-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512154998
【氏名又は名称】無錫華潤上華科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CSMC TECHNOLOGIES FAB2 CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.8 Xinzhou Road Wuxi New District,Jiangsu 214028 China
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リ ヨンスン
(72)【発明者】
【氏名】ジン フゥアジュン
(72)【発明者】
【氏名】ソン リャン
【テーマコード(参考)】
5F003
【Fターム(参考)】
5F003AP04
5F003AZ03
5F003BA23
5F003BA25
5F003BM01
5F003BM02
(57)【要約】
本発明は、スーパーβトライオードトランジスタ及びその製造方法を提供する。当該製造方法は、基板を提供し、基板に基づいて第1導電型の分離埋込層及び第1導電型のドーピング層を形成することと、ドーピング層中に第2導電型のベース領域を形成することと、ベース領域のドーピング濃度よりも大きいドーピング濃度を有する第2導電型のドーピング島をベース領域の外周に形成することと、ベース領域間隔をあけて設けられる第1導電型のコレクタ領域をドーピング層中に形成することと、ベース領域中に第1導電型のエミッタ領域を形成することと、を含む。本発明のスーパーβトライオードトランジスタは、ベース領域の縦方向電界を効果的に低減し、デバイスの横方向リーク電流を低減することができ、ベース領域のパンチスルーの防止と電流増幅係数の向上とのバランスをより良く実現することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を提供し、前記基板に基づいて第1導電型の分離埋込層及び第1導電型のドーピング層を形成し、前記分離埋込層は前記ドーピング層の底部に位置することと、
前記ドーピング層中に第2導電型のベース領域を形成することと、
前記ベース領域のドーピング濃度よりも大きいドーピング濃度を有する第2導電型のドーピング島を前記ベース領域の外周に形成することと、
前記ベース領域と間隔をあけて設けられる第1導電型のコレクタ領域を前記ドーピング層中に形成することと、
前記ベース領域中に第1導電型のエミッタ領域を形成することと、を含む
ことを特徴とするスーパーβトライオードトランジスタの製造方法。
【請求項2】
前記ベース領域のドーピング濃度の範囲は、5e17cm
-3~8e17cm
-3であり、前記ドーピング島のドーピング濃度の範囲は、5e18cm
-3以上である
ことを特徴とする請求項1に記載のスーパーβトライオードトランジスタの製造方法。
【請求項3】
前記コレクタ領域のドーピング濃度は、前記ドーピング層のドーピング濃度よりも大きく、前記分離埋込層のドーピング濃度は、前記ドーピング層のドーピング濃度よりも大きい
ことを特徴とする請求項1に記載のスーパーβトライオードトランジスタの製造方法。
【請求項4】
前記ベース領域の注入の接合深さは、前記ドーピング島の注入の接合深さ以下である
ことを特徴とする請求項1に記載のスーパーβトライオードトランジスタの製造方法。
【請求項5】
前記ベース領域中に第2導電型の接触領域を形成することと、前記コレクタ領域中に第1導電型の接触領域を形成することと、を更に含み、
前記第2導電型の接触領域のドーピング濃度は、前記ドーピング島のドーピング濃度よりも大きく、前記第1導電型の接触領域のドーピング濃度は、前記コレクタ領域のドーピング濃度よりも大きい
ことを特徴とする請求項1に記載のスーパーβトライオードトランジスタの製造方法。
【請求項6】
前記コレクタ領域の底部は、少なくとも前記分離埋込層の一部に接続され、前記ドーピング島の底部は、少なくとも前記分離埋込層の一部に接続される
ことを特徴とする請求項1に記載のスーパーβトライオードトランジスタの製造方法。
【請求項7】
前記基板に基づいて第1導電型の分離埋込層及び第1導電型のドーピング層を形成し、前記分離埋込層は前記ドーピング層の底部に位置することは、
イオン注入プロセスにより前記基板の内部に前記分離埋込層を形成することと、
イオン注入プロセスにより前記基板の表層に前記ドーピング層を形成すること、を含み、
又は、
イオン注入プロセスにより前記基板の表層に前記分離埋込層を形成することと、
エピタキシャルプロセスにより前記基板上に前記ドーピング層を形成することと、を含む
ことを特徴とする請求項1に記載のスーパーβトライオードトランジスタの製造方法。
【請求項8】
内部に第1導電型の分離埋込層が形成されている基板と、
前記基板の表層又は前記基板上に形成された第1導電型のドーピング層であって、前記分離埋込層は前記ドーピング層の底部に位置する第1導電型のドーピング層と、
前記ドーピング層中に形成された第2導電型のベース領域と、
前記ベース領域の外周に形成された、前記ベース領域のドーピング濃度よりも大きいドーピング濃度を有する第2導電型のドーピング島と、
前記ドーピング層中に形成され、前記ベース領域と間隔をあけて設けられた第1導電型のコレクタ領域と、
前記ベース領域中に形成された第1導電型のエミッタ領域と、を含む
ことを特徴とするスーパーβトライオードトランジスタ。
【請求項9】
前記ベース領域のドーピング濃度の範囲は、5e17cm
-3~8e17cm
-3であり、前記ドーピング島のドーピング濃度の範囲は、5e18cm
-3以上である
ことを特徴とする請求項8に記載のスーパーβトライオードトランジスタ。
【請求項10】
前記分離埋込層のドーピング濃度の範囲は、1e17cm
-3~3e17cm
-3であり、前記ドーピング層のドーピング濃度の範囲は、1e16cm
-3~4e16cm
-3であり、前記コレクタ領域のドーピング濃度の範囲は、1e17cm
-3~5e17cm
-3であり、前記エミッタ領域のドーピング濃度の範囲は、1e17cm
-3~5e17cm
-3である
ことを特徴とする請求項8に記載のスーパーβトライオードトランジスタ。
【請求項11】
前記ベース領域中には、第2導電型の接触領域が更に形成され、前記第2導電型の接触領域のドーピング濃度は、前記ドーピング島のドーピング濃度よりも大きく、
前記コレクタ領域中には、第1導電型の接触領域が更に形成され、前記第1導電型の接触領域のドーピング濃度は、前記コレクタ領域のドーピング濃度よりも大きい
ことを特徴とする請求項8に記載のスーパーβトライオードトランジスタ。
【請求項12】
前記コレクタ領域の底部は、少なくとも前記分離埋込層の一部に接続され、前記ドーピング島の底部は、少なくとも前記分離埋込層の一部に接続される
ことを特徴とする請求項8に記載のスーパーβトライオードトランジスタ。
【請求項13】
前記コレクタ領域のドーピング濃度は、前記ドーピング層のドーピング濃度よりも大きく、前記分離埋込層のドーピング濃度は、前記ドーピング層のドーピング濃度よりも大きい
ことを特徴とする請求項8に記載のスーパーβトライオードトランジスタ。
【請求項14】
前記ベース領域の注入の接合深さは、前記ドーピング島の注入の接合深さ以下である
ことを特徴とする請求項8に記載のスーパーβトライオードトランジスタ。
【請求項15】
前記ベース領域は、前記ドーピング層の上部表層に形成され、前記ドーピング島と前記分離埋込層からなる包囲カバー構造は、前記ベース領域を包囲する
ことを特徴とする請求項8に記載のスーパーβトライオードトランジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスの設計及び製造の分野に関し、特に、スーパーβトライオードトランジスタ、及びその製造方法に関する。
【0002】
本出願は、2021年7月28日に中国特許庁に出願された、出願番号が202110858844.X、発明名称が「スーパーβトライオードトランジスタ、及びその製造方法」である中国特許出願に基づき優先権を主張し、その内容全体を参照により本出願に組み込む。
【背景技術】
【0003】
トライオードトランジスタ(Triode Transistor)は、P型領域を取り囲む2つのN型領域を有する。1つのN型領域は、コレクタであり、もう1つのN型領域は、エミッタであり、P型領域は、ベースである。トライオードトランジスタの電圧バイアス方式に応じて、トライオードトランジスタは、異なる動作モードを持つことになる。エミッタ-ベース接合が逆方向にバイアスされるとともにコレクタ-ベース接合が逆方向にバイアスされると、トライオードトランジスタはオフモードで動作する。エミッタ-ベース接合が順方向にバイアスされるとともにコレクタ-ベース接合が逆方向にバイアスされると、トライオードトランジスタはアクティブモードで動作する。エミッタ-ベース接合が順方向にバイアスされるとともにコレクタ-ベース接合が順方向にバイアスされると、トライオードトランジスタは飽和モードで動作する。トライオードトランジスタを増幅器として使用する場合は、アクティブモードを使用し、トライオードトランジスタをスイッチングとして使用する場合は、オフモード及び飽和モードを使用する。トライオードトランジスタのパラメータの1つは、一般にβ又はHFEと呼ばれる共通エミッタ電流増幅率である。アクティブモードにある場合、共通エミッタ電流増幅率は、コレクタ電流とベース電流との比である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のトライオードトランジスタでは、ベース領域の再結合を低減し、十分なベース領域の輸送係数を保証し、共通エミッタ電流増幅率を向上させるために、一般的には、より浅いベース領域及びより低いベース領域のドーピング濃度を追求しているが、これによってトライオードトランジスタのベース領域のパンチスルーがより大きくなるというリスクをもたらす。なお、横方向(導電チャネルの幅方向)に均一に分布したベース領域の濃度により、横方向のNPNの非動作ベース領域でのリーク電流の発生をもたらすことになり、従来のトライオードトランジスタは、エミッタ接合の注入効率がより低く、リーク電流が大きく、電流増幅率がより小さいなどの弊害もある。
【0005】
上記の従来技術の欠点に鑑み、本発明は、従来技術においてトライオードトランジスタ構造のベース領域のパンチスルーのリスクがより大きいという問題を解決するための、スーパーβトライオードトランジスタ、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的及び他の関連する目的を実現するために、本発明では、基板を提供し、前記基板に基づいて第1導電型の分離埋込層及び第1導電型のドーピング層を形成し、前記分離埋込層は前記ドーピング層の底部に位置することと、前記ドーピング層中に第2導電型のベース領域を形成することと、前記ベース領域のドーピング濃度よりも大きいドーピング濃度を有する第2導電型のドーピング島を前記ベース領域の外周に形成することと、前記ベース領域と間隔をあけて設けられる第1導電型のコレクタ領域を前記ドーピング層中に形成することと、前記ベース領域中に第1導電型のエミッタ領域を形成することと、を含むスーパーβトライオードトランジスタの製造方法が提供される。
【0007】
選択的に、前記ベース領域のドーピング濃度の範囲は、5e17cm-3~8e17cm-3であり、前記ドーピング島のドーピング濃度の範囲は、5e18cm-3以上である。
【0008】
選択的に、前記コレクタ領域のドーピング濃度は、前記ドーピング層のドーピング濃度よりも大きく、前記分離埋込層のドーピング濃度は、前記ドーピング層のドーピング濃度よりも大きい。
【0009】
選択的に、前記ベース領域の注入の接合深さは、前記ドーピング島の注入の接合深さ以下である。
【0010】
選択的に、前記製造方法は、前記ベース領域中に第2導電型の接触領域を形成することと、前記コレクタ領域中に第1導電型の接触領域を形成することと、を更に含み、前記第2導電型の接触領域のドーピング濃度は、前記ドーピング島のドーピング濃度よりも大きく、前記第1導電型の接触領域のドーピング濃度は、前記コレクタ領域のドーピング濃度よりも大きい。
【0011】
選択的に、前記コレクタ領域の底部は、少なくとも前記分離埋込層の一部に接続され、前記ドーピング島の底部は、少なくとも前記分離埋込層の一部に接続される。
【0012】
選択的に、前記基板中に第1導電型の分離埋込層及び第1導電型のドーピング層を形成し、前記分離埋込層は前記ドーピング層の底部に位置することは、イオン注入プロセスにより前記基板の内部に分離埋込層を形成することと、イオン注入プロセスにより前記基板の表層にドーピング層を形成すること、を含み、又は、イオン注入プロセスにより前記基板の表層に分離埋込層を形成することと、エピタキシャルプロセスにより前記基板上にドーピング層を形成することと、を含む。
【0013】
本発明では、内部に第1導電型の分離埋込層が形成されている基板と、前記基板の表層又は前記基板上に形成された第1導電型のドーピング層であって、前記分離埋込層は前記ドーピング層の底部に位置する第1導電型のドーピング層と、前記ドーピング層中に形成された第2導電型のベース領域と、前記ベース領域の外周に形成された、前記ベース領域のドーピング濃度よりも大きいドーピング濃度を有する第2導電型のドーピング島と、前記ドーピング層中に形成され、前記ベース領域と間隔をあけて設けられた第1導電型のコレクタ領域と、前記ベース領域中に形成された第1導電型のエミッタ領域と、を含むスーパーβトライオードトランジスタが更に提供される。
【0014】
選択的に、前記ベース領域のドーピング濃度の範囲は、5e17cm-3~8e17cm-3であり、前記ドーピング島のドーピング濃度の範囲は、5e18cm-3以上である。
【0015】
選択的に、前記分離埋込層のドーピング濃度の範囲は、1e17cm-3~3e17cm-3であり、前記ドーピング層のドーピング濃度の範囲は、1e16cm-3~4e16cm-3であり、前記コレクタ領域のドーピング濃度の範囲は、1e17cm-3~5e17cm-3であり、前記エミッタ領域のドーピング濃度の範囲は、1e17cm-3~5e17cm-3である。
【0016】
選択的に、前記ベース領域中には、第2導電型の接触領域が更に形成され、前記第2導電型の接触領域のドーピング濃度は、前記ドーピング島のドーピング濃度よりも大きく、前記コレクタ領域中には、第1導電型の接触領域が更に形成され、前記第1導電型の接触領域のドーピング濃度は、前記コレクタ領域のドーピング濃度よりも大きい。
【0017】
選択的に、前記コレクタ領域の底部は、少なくとも前記分離埋込層の一部に接続され、前記ドーピング島の底部は、少なくとも前記分離埋込層の一部に接続される。
【0018】
選択的に、前記コレクタ領域のドーピング濃度は、前記ドーピング層のドーピング濃度よりも大きく、前記分離埋込層のドーピング濃度は、前記ドーピング層のドーピング濃度よりも大きい。
【0019】
選択的に、前記ベース領域の注入の接合深さは、前記ドーピング島の注入の接合深さ以下である。
【0020】
選択的に、前記ベース領域は、前記ドーピング層の上部表層に形成され、前記ドーピング島と前記分離埋込層からなる包囲カバー構造は、前記ベース領域を包囲する。
【発明の効果】
【0021】
上記のように、本発明のスーパーβトライオードトランジスタ、及びその製造方法は、以下の有益な効果を有する。
【0022】
本発明では、ベース領域の外周に高濃度のイオンを注入してベース領域のドーピング濃度よりも大きいドーピング濃度を有するドーピング島を形成し、当該ドーピング島とベース領域との間に濃度勾配を形成することによって、一方では、当該ドーピング島は底部の横方向の空乏を補助し、ベース領域の底部の迅速なピンチオフを補助して、ベース領域のパンチスルーを防止すると同時に、依然としてベース領域の再結合を低減し、共通エミッタ電流増幅率を向上させることができ、もう一方では、当該ドーピング島の存在により、非動作ベース領域のP型濃度がより高く、横方向のNPNのリーク電流を大幅に減少させ、それによってデバイスにより高い電流増幅率を発生させることができる。
【0023】
本発明のスーパーβトライオードトランジスタは、ベース領域の縦方向電界を効果的に低減し、デバイスの横方向のリーク電流を低減することができ、ベース領域のパンチスルーの防止と電流増幅係数の向上とのバランスをより良く実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施例に係るスーパーβトライオードトランジスタの製造方法における各ステップに示された構成模式図である。
【
図2】本発明の実施例に係るスーパーβトライオードトランジスタの製造方法における各ステップに示された構成模式図である。
【
図3】本発明の実施例に係るスーパーβトライオードトランジスタの製造方法における各ステップに示された構成模式図である。
【
図4】本発明の実施例に係るスーパーβトライオードトランジスタの製造方法における各ステップに示された構成模式図である。
【
図5】本発明の実施例に係るスーパーβトライオードトランジスタの製造方法における各ステップに示された構成模式図である。
【
図6】本発明の実施例に係るスーパーβトライオードトランジスタの製造方法における各ステップに示された構成模式図である。
【
図7】本発明の実施例に係るスーパーβトライオードトランジスタの構成模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、特定の具体例を挙げて本発明の実施形態を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容から、本発明の他の利点及び効果を了解することができる。本発明は、更に別の異なる具体的な実施形態によって実施又は応用することができ、本明細書の各詳細については、異なる観点及び応用に基づいて、本発明の精神から逸脱することなく様々な修正又は変更を行うことができる。
【0026】
本発明の実施例を詳細に説明する際に、説明の便宜上、デバイス構造を示す断面図は一般的な割合に応じて部分的に拡大されず、かつ、示された模式図は単なる例示に過ぎず、ここで本発明の保護の範囲を制限されるものではない。なお、実際の製作では、長さ、幅、及び深さの3次元空間寸法を含めるべきである。
【0027】
説明の便宜上、ここでは、「下」、「下方」、「よりも低い」、「以下」、「上方」、「上」等の空間関係用語を使用して図面に示された1つの要素又は特徴と他の要素又は特徴との関係を説明する。理解すべきものとして、これらの空間関係用語は、使用中又は動作中のデバイスの図面に示された方向以外の他の方向を含むことを意図している。なお、1つの層が2つの層の「間」に位置すると呼ばれる場合、当該1つの層は前記2つの層の間に位置する唯一の層であってもよいし、或は、2つの層同士の間に1つ又は複数の介在する層が存在してもよい。
【0028】
本発明の文脈において、説明される第1の特徴が第2の特徴「の上」に位置する構造は、第1の特徴と第2の特徴とが直接接触するように形成された実施例を含んでもよいし、別の特徴が第1の特徴と第2の特徴との間に形成された実施例を含んでもよく、この場合、第1の特徴と第2の特徴とは直接接触していなくてもよい。
【0029】
説明すべきものとして、本実施例によって提供される図面は、本発明の基本的な思想を模式的に説明するものだけであり、図面では、実際に実施する際の部品の数、形状、及び寸法でなく、本発明に関連する部品のみが示されており、実際の実施時の各部品の形態、数、及び割合は、任意に変更され得、その部品のレイアウト形態もより複雑であってもよい。
【0030】
従来のトライオードトランジスタは、ベース領域の再結合を低減し、十分なベース領域の輸送係数を保証し、共通エミッタ電流増幅率を向上させるために、一般的には、より浅いベース領域及びより低いベース領域のドーピング濃度を追求しているが、これによってトライオードトランジスタのベース領域のパンチスルーがより大きいというリスクをもたらす。なお、横方向(導電チャネルの幅方向)に均一に分布したベース領域の濃度により、横方向のNPNの非動作ベース領域でのリーク電流の発生をもたらすことになり、従来のトライオードトランジスタは、エミッタ接合の注入効率がより低く、リーク電流が大きく、電流増幅率がより小さいなどの弊害もある。本発明では、ベース領域104の外周に高濃度のイオンを注入してベース領域104のドーピング濃度よりも大きいドーピング濃度を有するドーピング島105を形成し、当該ドーピング島105とベース領域104との間に濃度勾配を形成することによって、一方では、当該ドーピング島105は底部の横方向の空乏を補助し、ベース領域の底部の迅速なピンチオフを補助して、ベース領域のパンチスルーを防止すると同時に、依然としてベース領域の再結合を低減し、共通エミッタ電流増幅率を向上させることができ、もう一方では、当該ドーピング島105の存在により、非動作ベース領域のP型濃度がより高く、横方向のNPNのリーク電流を大幅に減少させ、それによってデバイスにより高い電流増幅率を発生させることができる。
【0031】
上記の問題を解決するために、
図1~
図7に示されたように、本実施例は、以下のステップを含むスーパーβトライオードトランジスタの製造方法を提供する。
【0032】
図1に示されたように、まず、ステップ1)において、基板101を提供し、前記基板101中に第1導電型の分離埋込層102を形成する。
【0033】
一例として、前記基板は、Si基板、Ge基板、SiGe基板、SOI(絶縁体上シリコン)、又はGOI(絶縁体上ゲルマニウム)等の半導体基板であってもよい。他の実施例において、前記半導体基板は、GaAs、InP、又はSiC等の他の元素半導体又は化合物半導体を含む基板であってもよいし、Si/SiGe等の積層構造であってもよいし、SGOI(絶縁体上ゲルマニウムシリコン)等の他のエピタキシャル構造であってもよい。本実施例において、前記基板は、Si基板である。
【0034】
一例として、イオン注入プロセス及びアニーリングプロセスにより、前記基板中に第1導電型の分離埋込層102を形成することができる。本実施例において、前記分離埋込層102のドーピング濃度の範囲は、1e17cm-3~3e17cm-3である。
【0035】
図2に示されたように、次に、ステップ2)において、前記基板101上に第1導電型のドーピング層103を形成し、前記分離埋込層102は前記ドーピング層の底部に位置する。
【0036】
一例として、気相エピタキシャルプロセスにより前記基板101上に第1導電型のドーピング層103を形成することができ、好ましくは、前記ドーピング層103の材料は、前記基板101と同じ材料として選択され、本実施例においては、前記ドーピング層103の材料は、Siである。
【0037】
前記ドーピング層103のドーピング濃度の範囲は、1e16cm-3~4e16cm-3であってもよい。1つの具体的な実施例において、前記ドーピング層103のドーピング濃度は、2e16cm-3である。前記ドーピング層103のドーピング濃度を調整することによって、デバイスのターンオン抵抗及びブレークダウン電圧を効果的に調整して、異なるデバイスの性能要件を満たすことができる。
【0038】
もう一実施例において、まず、イオン注入プロセスにより前記基板の内部に前記分離埋込層102を形成し、次に、イオン注入プロセスにより前記基板の表層にドーピング層103を形成し、前記分離埋込層102の深さ位置を制御することによって、前記分離埋込層102を前記ドーピング層103の底部に位置させてもよい。
【0039】
図3に示されたように、続いて、ステップ3)において、前記ドーピング層103中に第2導電型のベース領域104を形成する。
【0040】
例えば、フォトリソグラフィプロセス、イオン注入プロセス、及びアニーリングプロセスにより、前記ドーピング層103中に第2導電型のベース領域104を形成することができ、前記ベース領域104のドーピング濃度の範囲は、5e17cm-3~8e17cm-3であってもよい。1つの具体的な実施例において、前記ベース領域104のドーピング濃度は、6e17cm-3である。本実施例のベース領域104のドーピング濃度は、より低く、即ち、ベース領域104のドーピング濃度は更に低下し、且つ、従来のベース領域のドーピング濃度よりも低いため、ベース領域104の再結合を効果的に減少し、十分なベース領域104の輸送係数を保証すると同時に、依然としてベース領域のパンチスルーのリスクを低減することができ、さらに横方向の非動作ベース領域のリーク電流を遮蔽し、三者のバランスをより良くとることができる。
【0041】
図4に示されたように、続いて、ステップ4)において、前記ベース領域104のドーピング濃度よりも大きいドーピング濃度を有する第2導電型のドーピング島105を前記ベース領域104の外周に形成する。前記ドーピング島105の底部は少なくとも前記分離埋込層102の一部に接続される。
【0042】
本実施例において、前記ベース領域104の注入の接合深さは、前記ドーピング島105の注入の接合深さ以下である。前記ベース領域104は、前記ドーピング層103の上部表層に形成される。前記ドーピング島105と前記分離埋込層102とからなる包囲カバー構造は、前記ベース領域104を包囲する。
【0043】
例えば、フォトリソグラフィプロセス、イオン注入プロセス、及びアニーリングプロセスにより、前記ベース領域104のドーピング濃度よりも大きいドーピング濃度を有する第2導電型のドーピング島105を前記ベース領域104の外周に形成することができる。本実施例において、前記ドーピング島105のドーピング濃度の範囲は、5e18cm-3以上であり、例えば8e18cm-3~9e18cm-3であってもよい。本発明では、ベース領域104の外周に高濃度のイオンを注入してドーピング島105を形成し、当該ドーピング島105の高濃度とベース領域104の低濃度との間に濃度勾配を形成することによって、一方では、当該ドーピング島105は底部の横方向の空乏を補助し、ベース領域104の底部の迅速なピンチオフを補助して、ベース領域104のパンチスルーを防止すると同時に、依然としてベース領域の再結合を低減し、共通エミッタ電流増幅率を向上させることができ、もう一方では、当該ドーピング島105の存在により、非動作ベース領域104のP型濃度がより高く、横方向のNPNのリーク電流を大幅に減少させ、それによってデバイスにより高い電流増幅率を発生させることができる。
【0044】
図5に示されたように、続いて、ステップ5)において、前記ベース領域104と間隔をあけて設けられる第1導電型のコレクタ領域106を前記ドーピング層103中に形成する。
【0045】
例えば、フォトリソグラフィプロセス、イオン注入プロセス、及びアニーリングプロセスにより、前記ドーピング層103中に第1導電型のコレクタ領域106を形成することができ、前記コレクタ領域106は前記ベース領域104と間隔をあけて設けられるとともに、前記コレクタ領域106の底部は、少なくとも前記分離埋込層102の一部に接続される。一例として、前記コレクタ領域106のドーピング濃度の範囲は、1e17cm-3~5e17cm-3である。1つの具体的な実施例において、前記コレクタ領域106のドーピング濃度は、3e17cm-3である。
【0046】
図6に示されたように、続いて、ステップ6)において、前記ドーピング島105のドーピング濃度よりも大きいドーピング濃度を有する第2導電型の接触領域107を前記ベース領域104中に形成して、ベース領域104の接触抵抗を低下させる。
【0047】
図7に示されたように、最後に、ステップ7)において、前記ベース領域104中に第1導電型のエミッタ領域108を形成する。
【0048】
例えば、フォトリソグラフィプロセス、イオン注入プロセス、及びアニーリングプロセスにより、前記ベース領域104中に第1導電型のエミッタ領域108を形成することができ、前記エミッタ領域108のドーピング濃度の範囲は1e17cm-3~5e17cm-3である。1つの具体的な実施例において、前記エミッタ領域108のドーピング濃度は、5e17cm-3である。本ステップにおいて、前記コレクタ領域106のドーピング濃度よりも大きいドーピング濃度を有する第1導電型の接触領域109を前記コレクタ領域106中に形成するステップを更に含む。一例として、前記第1導電型のエミッタ領域108と前記第1導電型の接触領域109とは同一のドーピングステップで形成されてもよい。即ち、1回のフォトリソグラフィプロセス、イオン注入プロセス、及びアニーリングプロセスにより、前記第1導電型のエミッタ領域108と前記第1導電型の接触領域109を同時に形成してもよい。これにより、プロセスコストを削減し、プロセス効率を向上させることができる。他の実施例において、前記コレクタ領域106、前記ベース領域104、及び前記エミッタ領域108は、いずれも基板の表面まで引き出され、引出し方法としては、接触領域の注入、ドーピング領域の引き出し、貫通孔の設置を含むがこれらに限定されない。
【0049】
本実施例において、前記第1導電型は、N型導電であり、前記第2導電型は、P型導電である。当然ながら、他の実施例において、前記第1導電型は、P型導電であり、前記第2導電型は、N型導電であってもよい。
【0050】
図7に示されたように、本実施例は、スーパーβトライオードトランジスタを更に提供する。当該スーパーβトライオードトランジスタは、内部に第1導電型の分離埋込層102が形成されている基板101と、前記基板101の表層又は前記基板101上に形成された第1導電型のドーピング層103であって、前記分離埋込層102は前記ドーピング層103の底部に位置する第1導電型のドーピング層103と、前記ドーピング層103中に形成された第2導電型のベース領域104と、前記ベース領域104の外周に形成された、前記ベース領域104のドーピング濃度よりも大きいドーピング濃度を有する第2導電型のドーピング島105と、前記ドーピング層103中に形成され、前記ベース領域104と間隔をあけて設けられた第1導電型のコレクタ領域106と、前記ベース領域104中に形成された第1導電型のエミッタ領域108と、を含む。
【0051】
一例として、前記基板101は、Si基板、Ge基板、SiGe基板、SOI(絶縁体上シリコン)、又はGOI(絶縁体上ゲルマニウム)等の半導体基板であってもよい。他の実施例において、前記半導体基板は、GaAs、InP、又はSiC等の他の元素半導体又は化合物半導体を含む基板であってもよいし、例えば、Si/SiGe等の積層構造であってもよいし、SGOI(絶縁体上ゲルマニウムシリコン)等の他のエピタキシャル構造であってもよい。本実施例において、前記基板は、Si基板である。
【0052】
一例として、前記ドーピング層103のドーピング濃度の範囲は、1e16cm-3~4e16cm-3であってもよい。1つの具体的な実施例において、前記ドーピング層103のドーピング濃度は、2e16cm-3である。前記ドーピング層103のドーピング濃度を調整することによって、デバイスのターンオン抵抗及びブレークダウン電圧を効果的に調整することによって、異なるデバイスの性能要件を満たすことができる。
【0053】
一例として、前記ベース領域104のドーピング濃度の範囲は、5e17cm-3~8e17cm-3であってもよい。1つの具体的な実施例において、前記ベース領域104のドーピング濃度は、6e17cm-3である。本実施例のベース領域104のドーピング濃度は、より低く、即ち、ベース領域104のドーピング濃度は更に低下し、且つ、従来のベース領域のドーピング濃度よりも低いため、ベース領域104の再結合を効果的に減少し、十分なベース領域104の輸送係数を保証すると同時に、依然としてベース領域のパンチスルーのリスクを低減することができ、さらに横方向の非動作ベース領域のリーク電流を遮蔽し、三者のバランスをより良くとることができる。
【0054】
本実施例において、前記ドーピング島105のドーピング濃度の範囲は、5e18cm-3以上であり、例えば8e18cm-3~9e18cm-3であってもよい。本発明では、ベース領域104の外周に高濃度のイオンを注入してドーピング島105を形成し、当該ドーピング島105の高濃度とベース領域104の低濃度との間に濃度勾配を形成することによって、一方では、当該ドーピング島105は底部の横方向の空乏を補助し、ベース領域104の底部の迅速なピンチオフを補助して、ベース領域104のパンチスルーを防止すると同時に、依然としてベース領域の再結合を低減し、共通エミッタ電流増幅率を向上させることができ、もう一方では、当該ドーピング島105の存在により、非動作ベース領域104のP型濃度がより高く、横方向のNPNのリーク電流を大幅に減少させ、それによってデバイスにより高い電流増幅率を発生させることができる。
【0055】
本実施例において、前記ベース領域104の注入の接合深さは、前記ドーピング島105の注入の接合深さ以下である。前記ベース領域104は、前記ドーピング層103の上部表層に形成され、前記ドーピング島105と前記分離埋込層102とからなる包囲カバー構造は、前記ベース領域104を包囲する。
【0056】
一例として、前記分離埋込層102のドーピング濃度の範囲は、1e17cm-3~3e17cm-3である。前記コレクタ領域106のドーピング濃度の範囲は、1e17cm-3~5e17cm-3である。1つの具体的な実施例において、前記コレクタ領域106のドーピング濃度は、3e17cm-3である。前記エミッタ領域108のドーピング濃度の範囲は、1e17cm-3~5e17cm-3である。1つの具体的な実施例において、前記エミッタ領域108のドーピング濃度は、5e17cm-3である。
【0057】
本実施例において、前記ベース領域104中には、前記ドーピング島105のドーピング濃度よりも大きいドーピング濃度を有する第2導電型の接触領域107が更に形成される。前記コレクタ領域106中には、前記コレクタ領域106のドーピング濃度よりも大きいドーピング濃度を有する第1導電型の接触領域109が更に形成される。
【0058】
本実施例において、前記コレクタ領域106の底部は、少なくとも前記分離埋込層102の一部に接続され、前記ドーピング島105の底部は、少なくとも前記分離埋込層102の一部に接続される。
【0059】
本実施例において、前記第1導電型は、N型導電であり、前記第2導電型は、P型導電である。当然ながら、他の実施例において、前記第1導電型は、P型導電であり、前記第2導電型は、N型導電であってもよい。
【0060】
上記のように、本発明のスーパーβトライオードトランジスタ、及びその製造方法は、以下の有益な効果を有する。
【0061】
本発明では、ベース領域104の外周に高濃度のイオンを注入してベース領域104のドーピング濃度よりも大きいドーピング濃度を有するドーピング島105を形成し、当該ドーピング島105とベース領域104との間に濃度勾配を形成することによって、一方では、当該ドーピング島105は底部の横方向の空乏を補助し、ベース領域の底部の迅速なピンチオフを補助して、ベース領域のパンチスルーを防止すると同時に、依然としてベース領域の再結合を低減し、共通エミッタ電流増幅率を向上させることができ、もう一方では、当該ドーピング島105の存在により、非動作ベース領域のP型濃度がより高く、横方向のNPNのリーク電流を大幅に減少させ、それによってデバイスにより高い電流増幅率を発生させることができる。
【0062】
本発明のスーパーβトライオードトランジスタは、ベース領域104の縦方向電界を効果的に低減し、デバイスの横方向のリーク電流を低減することができ、ベース領域104のパンチスルーの防止と電流増幅係数の向上とのバランスをより良く実現することができる。
【0063】
したがって、本発明は、従来技術の様々な欠点を効果的に克服して高度な産業上利用価値を備えている。
【0064】
上記の実施例は、本発明の原理及びその効果を例示的に説明するものに過ぎず、本発明を限定するものではない。当業者であれば、本発明の精神及び範囲を違反することなく、上記の実施例を修正又は変更することができる。したがって、本発明に開示された精神及び技術思想から逸脱することなく、当業者が行った全ての同等の修正または変更は、依然として本発明の特許請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
101 基板、102 分離埋込層、103 ドーピング層、104 ベース領域、105 ドーピング島、106 コレクタ領域、107 第2導電型の接触領域、108 エミッタ領域、109 第1導電型の接触領域。
【国際調査報告】