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特表2024-506912アルカリホスファターゼポリペプチド及びその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-15
(54)【発明の名称】アルカリホスファターゼポリペプチド及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/16 20060101AFI20240207BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20240207BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240207BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240207BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240207BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20240207BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20240207BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240207BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20240207BHJP
   C12N 9/16 20060101ALN20240207BHJP
【FI】
A61K38/16
A61K47/04
A61K47/22
A61K47/26
A61K9/08
A61P19/08
A61P19/10
A61P3/00
A61K38/17
C12N9/16 B ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548692
(86)(22)【出願日】2022-02-10
(85)【翻訳文提出日】2023-09-08
(86)【国際出願番号】 US2022016031
(87)【国際公開番号】W WO2022173987
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】63/149,090
(32)【優先日】2021-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503102674
【氏名又は名称】アレクシオン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ヴォエトリ, ウォルター シー.
(72)【発明者】
【氏名】ウー, ユーホン
(72)【発明者】
【氏名】モンテレオーネ, ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】メジェボフスキー, タチアナ
(72)【発明者】
【氏名】ファルコーネ, エリック
(72)【発明者】
【氏名】グオ, ヤン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076CC09
4C076DD26
4C076DD51
4C076DD60
4C076DD67
4C076EE23
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA22
4C084BA34
4C084CA53
4C084MA17
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA961
4C084ZA962
4C084ZC211
4C084ZC212
(57)【要約】
低ホスファターゼ症(HPP)などの骨石灰化障害、及びその症状を治療するための可溶性アルカリホスファターゼを含む医薬組成物が特徴とされる。ポリペプチドは、天然に存在するアルカリホスファターゼ(ALP)に由来する可溶性アルカリホスファターゼ(sALP)またはその断片を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号5に対して少なくとも80%の配列同一性及び配列番号1に比べてE108M、N213Q、及びN286Qから選択される少なくとも1つの変異を有するポリペプチド、ならびにリン酸塩、プロリン、及びショ糖のうち1つ以上を含む薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項2】
前記ポリペプチドは、配列番号5に対して少なくとも85%、90%、95%、97%、または99%の配列同一性を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記ポリペプチドは、配列番号5の配列を含むか、またはそれで構成される、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記ポリペプチドは、配列番号1に比べて2つまたは3つの変異E108M、N213Q、及びN286Qを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記組成物は、約1mM~約100mMのリン酸塩を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記組成物は、約5mM~約20mMのリン酸塩を含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記組成物は、約10mMのリン酸塩を含む、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記リン酸塩は、リン酸ナトリウムである、請求項1~7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記組成物は、約1mM~約500mMのプロリンを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記組成物は、約50mM~約200mMのプロリンを含む、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記組成物は、約140mMのプロリンを含む、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記組成物は、約1mM~約500mMのショ糖を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記組成物は、約50mM~約200mMのショ糖を含む、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記組成物は、約140mMのショ糖を含む、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記組成物は、約10mMのリン酸塩、約140mMのプロリン、及び約140mMのショ糖を含む、請求項6~14のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記組成物は、約0.01%~約0.5%のポリオキシエチレン(20)モノオレイン酸ソルビタンを含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記組成物は、約0.01%~約0.1%のポリオキシエチレン(20)モノオレイン酸ソルビタンを含む、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記組成物は、約0.05%のポリオキシエチレン(20)モノオレイン酸ソルビタンを含む、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記組成物は、約140mMのプロリン、約140mMのショ糖、及び約0.05%のポリオキシエチレン(20)モノオレイン酸ソルビタンを含む、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記ポリペプチドは、約1.0mol/mol~約6.0mol/molの総シアル酸含量(TSAC)を含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記TSACは、約3.0mol/mol~約6.0mol/molである、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記TSACは、約3.2mol/mol、5.0mol/mol、または約5.9mol/molである、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記組成物は、約7.3のpHを含む、請求項1~22のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記組成物は、約0.1mg/mL~約200mg/mLの濃度で調製される、請求項1~23のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記組成物は、約0.1mL~約50mLの容量で調製される、請求項1~24のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記組成物は、約1mLの容量中約100mg/mLの濃度で調製される、請求項24または25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
請求項1~23のいずれか1項に記載の医薬組成物を含むバイアル。
【請求項28】
前記組成物は、約0.1mL~約50mLの容量で調製される、請求項27に記載のバイアル。
【請求項29】
前記組成物は、約10mLの容量で調製される、請求項28に記載のバイアル。
【請求項30】
前記組成物は、約0.1mg/mL~約200mg/mLの濃度で調製される、請求項27~29のいずれか1項に記載のバイアル。
【請求項31】
前記組成物は、約100mg/mLの濃度で調製される、請求項30に記載のバイアル。
【請求項32】
前記組成物は、約1mLの容量中約100mg/mLの濃度で調製される、請求項27~31のいずれか1項に記載のバイアル。
【請求項33】
骨石灰化障害を治療することを、それを必要とする患者に対して行う方法であって、請求項1~26のいずれか1項に記載の医薬組成物の用量を前記患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項34】
前記骨石灰化障害は、低ホスファターゼ症(HPP)、骨折、骨粗鬆症、硬結性骨化症、軟骨石灰化症、筋緊張低下、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、気管気管支軟化症、発作、神経線維腫症、及び頭蓋骨早期癒合症から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記ポリペプチドは、前記骨石灰化障害を治療するのに十分な量及び期間で投与される、請求項33または34に記載の方法。
【請求項36】
前記治療することは、前記患者の骨形成を促進する、請求項33~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記ポリペプチドは、約0.01mg/kg~約20mg/kgの投与量で投与される、請求項33~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記ポリペプチドは、約0.1mg/kg~約10mg/kgの投与量で投与される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記ポリペプチドは、1日、1週、1ヶ月、または1年に1回投与される、請求項33~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
週あたり前記ポリペプチドの約10~約100mgが、投与される、請求項33~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
週あたり約15~約90mgのポリペプチドが投与される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
週あたり約15mg、約30mg、約45mg、または約90mgのポリペプチドが、投与される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記ポリペプチドは、少なくとも1日間、1週間、1ヶ月間、1年間、またはそれ以上にわたって投与される、請求項33~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記組成物は、皮下、静脈内、筋肉内、舌下、くも膜下腔内、または皮内投与される、請求項33~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記組成物は、皮下または静脈内投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記患者は、ヒトである、請求項33~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記ヒトは、新生児、小児、青年、または成人である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記方法により、前記患者の血液中で約50μg×時間/mL~約4000μg×時間/mLのAUC0-168hが生じる、請求項33~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記方法により、前記患者の血液中で約1000μg×時間/mL~約3000μg×時間/mLのAUC0-168hが生じる、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記方法により、患者の血液中で約0.5μg/mL~約25μg/mLのCmaxが生じる、請求項33~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記方法により、患者の血液中で約0.6μg/mL~約20μg/mLのCmaxが生じる、請求項49に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。2022年2月4日に作成された上記ASCIIコピーの名前は、50694-094WO2_Sequence_Listing_2_4_22_ST25であり、サイズは27,753バイトである。
【背景技術】
【0002】
低ホスファターゼ症(HPP)は、最も重篤な形態の疾患の場合、発症率が100,000出生児あたり1例の稀な遺伝性骨格疾患である。この障害は、通常、組織非特異アルカリホスファターゼ(TNSALP)をコードする遺伝子の機能喪失型変異によって引き起こされる。HPPは、早期の歯牙喪失から子宮内での骨石灰化のほぼ完全な欠如に至るまで、非常に幅広い症状及び重症度を呈する。HPPの症状は、患者によって著しく異なり、患者の年齢によっても著しく異なる。多くのHPP患者が、骨格の変化、低身長、慢性疼痛、下肢の痛み、歩行障害、及び早期の非外傷性歯牙喪失を示す。
TNSALPの可溶性断片を含む、組換えにより製造された酵素補充療法(ERT)であるアスホターゼアルファ(STRENSIQ(登録商標)、Alexion Pharmaceuticals,Inc.)が、HPP患者が利用できる最初のERTである。アスホターゼアルファは、骨石灰化及び密度に加えて、呼吸機能及び運動機能、認知発達、ならびに筋力の改善によって証明されているように、HPPの最も重篤な形態に対して革新的な効果をこれまでに示している(Whyte et al.,New Engl.J.Med.366:904-913,2012)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Whyte et al.,New Engl.J.Med.366:904-913,2012
【発明の概要】
【0004】
第1の態様は、配列番号5に対して少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、90%、95%、97%、99%、または100%)の配列同一性を有するアルカリホスファターゼポリペプチド、及び薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物を特徴とする。ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列に比べて、E108M、N213Q、及びN286Qから選択される少なくとも1つの変異を含み得る(例えば、ポリペプチドは、これらの変異のうち2つまたは3つの全てを含み得る)。例えば、ポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、90%、95%、97%、99%、または100%)の配列同一性を有し、かつE108M、N213Q、及びN286Qから選択される変異のうち少なくとも1つ、2つ、または3つの全てを含む。薬学的に許容される担体は、リン酸塩、プロリン、及びショ糖のうち1つ以上を含み得る。例えば、ポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列を含むか、またはそれで構成され得る。
【0005】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドのアルカリホスファターゼ部分は、配列番号3に対して少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、90%、95%、97%、99%、または100%)の配列同一性を有する。このポリペプチドは、さらにFc領域(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4Fc領域)及び/またはポリアスパラギン酸領域に連結され得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、IgG2/4Fc領域を含み、例えば、配列番号4に対して少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、90%、95%、97%、99%、または100%)の同一性を有する。ポリアスパラギン酸は、例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個のアスパラギン酸残基を含み得る。いくつかの実施形態では、ポリアスパラギン酸は、10個のアスパラギン酸残基(D10)を含む。
【0006】
組成物は、約0.1mg/mL~約200mg/mL(例えば、約1、10、20、25、50、75、100、125、150、175、または200mg/mL)の投与量のアルカリホスファターゼポリペプチドを含有するように調製され得る。組成物は、約0.1mL~約50mL(例えば、約0.1~約10mL、例えば、約0.1mL、0.2mL、0.3mL、0.4mL、0.5mL、0.6mL、0.7mL、0.8mL、0.9mL、または1.0mL、例えば、約1mL~約10mL、例えば、約2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、7mL、8mL、9mL、または10mL)の容量で調製され得る。いくつかの実施形態では、組成物は、約1mLで調製される。例えば、組成物は、配列番号5に対して、少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、90%、95%、97%、または99%)の配列同一性、またはその配列を有する100mg/mLのアルカリホスファターゼポリペプチド(例えば、ポリペプチドは、配列番号5のE108M、N213Q、及びN286Qから選択される変異のうち少なくとも1つ、2つ、または3つの全てを含む)、及び薬学的に許容される担体を含有する場合がある。
【0007】
組成物は、リン酸塩(例えば、リン酸ナトリウム)を、例えば、約1mM~約100mM、または約5mM~約20mM、例えば、約2mM、3mM、4mM、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、20mM、30mM、40mM、50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、または100mM、例えば、約10mMの濃度で含み得る。組成物は、さらにプロリン及び/またはショ糖を含み得る。組成物は、さらにプロリンを含み得る。組成物は、さらにショ糖を含み得る。例えば、組成物は、約1mM~約500mMのプロリン、例えば、約70mM~約280mm、例えば、約50mM~約200mM、例えば、約2mM、3mM、4mM、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、20mM、30mM、40mM、50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、100mM、110mM、120mM、130mM、140mM、150mM、160mM、170mM、180mM、190mM、200mM、300mM、400mM、または500mM、例えば、約140mMのプロリン、及び/または約1mM~約500mMのショ糖、例えば、約70mM~約280mm、例えば、約50mM~約200mM、例えば、約2mM、3mM、4mM、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、20mM、30mM、40mM、50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、100mM、110mM、120mM、130mM、140mM、150mM、160mM、170mM、180mM、190mM、200mM、210、mM、220mM、230mM、240mM、250mM、260mM、270mM、280mM、290mM、300mM、350mM、400mM、450mM、または500mM、例えば、約140mMのショ糖、または約210mMのショ糖を含み得る。いくつかの実施形態では、組成物は、約1:0~約1:3、例えば、約1:1のプロリン:ショ糖のモル比を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、約1mM~約500mMのプロリン(例えば、約50mM~約200mMのプロリン、例えば、約140mMのプロリン)、及び約1mM~約500mMのショ糖(例えば、約40mM~約280mM、例えば、約50mM~約200mMのショ糖、例えば、約140mMまたは約210mMのショ糖)を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、約140mMのプロリンを含む。いくつかの実施形態では、製剤は、約140mMのショ糖を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、約210mMのショ糖を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、約210mMのショ糖を含むが、プロリンは含まない。いくつかの実施形態では、製剤は、約140mMのプロリン、及び約140mMのショ糖を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、約140mMのプロリン、及び約140mMのショ糖、及び約10mMのリン酸塩(例えば、リン酸ナトリウム)を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、約210mMのショ糖、及び約10mMのリン酸塩(例えば、リン酸ナトリウム)を含む。製剤は、さらに約0.01%~約0.5%のポリオキシエチレン(20)モノオレイン酸ソルビタン、例えば、約0.01%~約0.1%のポリオキシエチレン(20)モノオレイン酸ソルビタン、例えば、約0.05%のポリオキシエチレン(20)モノオレイン酸ソルビタンなどを含み得る。ポリオキシエチレン(20)モノオレイン酸ソルビタンは、例えば、ポリソルベート80(PS80)であってもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、pH約7.0~pH約7.6(例えば、pH約7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、または7.6、例えば、pH約7.3)のpHで調製され得る。いくつかの実施形態では、組成物は、pH約7.3で、約10mMのリン酸塩、約140mMのプロリン、約140mMのショ糖、及び約0.05%のポリオキシエチレン(20)モノオレイン酸ソルビタン(例えば、PS80)を含む。
【0008】
組成物は、ポリペプチド(例えば、配列番号5のポリペプチド、及びそれに対して少なくとも約85%の配列同一性を有するその多様体(例えば、ポリペプチドは、配列番号5のE108M、N213Q、及びN286Qから選択される変異のうち1つ、2つ、または3つの全てを含むものである))を含有する溶液として調製された医薬組成物であり得る。医薬組成物は、ポリペプチドを、例えば、約0.1mg/mL~約200mg/mL、例えば、約100mg/mLの量で含有し得る。医薬組成物は、皮下投与用に、例えば、約0.1mg/mL~約10mg/mLのポリペプチドの投与量で調製され得る。組成物は、約0.1mL~約50mL(例えば、約0.1~約10mL、例えば、約0.1mL、0.2mL、0.3mL、0.4mL、0.5mL、0.6mL、0.7mL、0.8mL、0.9mL、または1.0mL、例えば、約1mL~約10mL、例えば、約2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、7mL、8mL、9mL、または10mL)の容量の溶液で調製され得る。いくつかの実施形態では、組成物は、約1mLで調製される。溶液は、pH約7.3で、約10mMのリン酸塩、約140mMのプロリン、約140mMのショ糖、及び約0.05%のポリオキシエチレン(20)モノオレイン酸ソルビタン(例えば、PS80)を含有し得る。
【0009】
また、本明細書に記載の医薬組成物を含有するバイアルも特徴とする。バイアルは、ポリペプチド(例えば、約0.1mg~約1.0g(例えば、約10mg~約200mg)の量で)を含有する溶液(例えば、pH約7.3で、約10mMのリン酸ナトリウム、約140mMのプロリン、約140mMのショ糖、及び約0.05%のポリオキシエチレン(20)モノオレイン酸ソルビタン(例えば、PS80))を、例えば、約0.1mL~約10mL(例えば、約1mL)の容量で、含有し得る。バイアルは、ポリペプチドを、例えば、約0.1mg/mL~約500mg/mL、約1mg/mL~約200mg/mL、約50mg/mL~約150mg/mL、または約100mg/mLの量で含有し得る。ポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有するその多様体を有してよい(例えば、ポリペプチドは、配列番号5のE108M、N213Q、及びN286Qから選択される変異のうち1つ、2つ、または3つの全てを含むものである)。
【0010】
第2の態様は、患者(例えば、ヒト患者)における骨石灰化障害または骨疾患の症状(例えば、低ホスファターゼ症(HPP)、骨折、骨粗鬆症、硬結性骨化症、軟骨石灰化症、筋緊張低下、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、気管気管支軟化症、発作、神経線維腫症(例えば、NF-1)及び頭蓋骨早期癒合症からなる群から選択される疾患、またはそれらの1つ以上の症状)を、第1の態様の医薬組成物をそれを必要とする患者に投与することによって治療する方法を特徴とする。組成物は、疾患を治療するか、またはその1つ以上の症状を緩和するのに十分な量及び期間で投与されてよい。本治療法は、患者における骨形成を促進する可能性がある。本ポリペプチドは、筋力低下を治療するために使用することができる。
【0011】
ポリペプチドまたはそれを含有する医薬組成物は、約0.01mg/kg~約60mg/kgの投与量(例えば、約0.1mg/kg~約50mg/kg、例えば、約0.1mg/kg~約20mg/kg、または、例えば、約0.1mg/kg~約10mg/kg)で投与されてよい。ポリペプチドは、1日、1週、1ヶ月、または1年に1回(例えば、1週に1回)投与されてよい。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、または31日ごとに1回以上投与される。ポリペプチドは、1週に1回、2週に1回、3週に1回、4週間以上に1回、投与されてよい。ポリペプチドは、約0.01mg/kg/週~約50mg/kg/週(例えば、約0.01mg/kg/週~約40mg/kg/週、例えば、約0.1mg/kg/週~約20mg/kg/週、または、例えば、約0.1mg/kg/週~約10mg/kg/週)の投与量で投与されてよい。ポリペプチドは、少なくとも1日間、1週間、1ヶ月間、1年間、またはそれ以上にわたって(例えば、患者の生涯にわたって)投与されてよい。
【0012】
ポリペプチドまたはそれを含有する医薬組成物は、皮下、静脈内、筋肉内、舌下、くも膜下腔内、または皮内投与されてよい。特に、ポリペプチドまたは該ポリペプチドを含有する組成物は、皮下投与または静脈内投与によって投与されてよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、皮下投与(例えば、腹部または大腿部に)される。例えば、約10mg~約100mg(例えば、約10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、または100mg、例えば、約15mg、45mg、または90mg、例えば約15mg、45mg、または90mg)が、1週に1回または2回、例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10週間、もしくはそれ以上にわたって、またはそれよりも長い期間にわたって(例えば、患者の生涯にわたって)患者に皮下投与されてよい。組成物は、例えば、約5mL以下の容量(例えば、4.0mL、3.0mL、2.0mL、1.0mL、0.9mL、0.8mL、0.7mL、0.6mL、0.5mL、0.4mL、0.3mL、0.2mL、もしくは0.1mL、または約5mL~約0.1mLの範囲の容量)で投与されてよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、静脈内投与(IV)される。例えば、約10mg~約100mg(例えば、約10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、または100mg、例えば、約15mg、45mg、または90mg)が、1週に1回または2回、例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10週間、またはそれ以上にわたって(例えば、3週間にわたって)、またはそれよりも長い期間にわたって(例えば、患者の生涯にわたって)患者に静脈内投与されてよい。例えば、医薬組成物は、約5mL以下の容量(例えば、4.0mL、3.0mL、2.0mL、1.0mL、0.9mL、0.8mL、0.7mL、0.6mL、0.5mL、0.4mL、0.3mL、0.2mL、もしくは0.1mL、または約5mL~約0.1mLの範囲の容量)でIVによって投与される。
【0015】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、静脈内投与及び皮下投与(例えば、腹部または大腿部に)される。例えば、医薬組成物は、静脈内投与と皮下(例えば、腹部または大腿部への)投与とを組み合わせた治療レジメンで投与される。例えば、組成物は、まず、約10mg~約100mg(例えば、約10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、または100mg、例えば、約15mg、45mg、または90mg)の量で、単回投与で患者に静脈内投与され、その後、経時的に1回以上の投与で患者に皮下投与(例えば、腹部または大腿部に)されてよい。例えば、皮下投与量は、約10mg~約100mg(例えば、約10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、または100mg、例えば、約15mg、45mg、または90mg、例えば約15mg、45mg、または90mg)であってよい。皮下投与量は、例えば、1週に1回もしくは2回、2週に1回、3週に1回、または4週に1回、例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、または50週間以上にわたって、またはそれよりも長い期間にわたって(例えば、1~10年間にわたって、または患者の生涯にわたって)投与されてよい。静脈内投与量及び皮下投与量は、例えば、約5mL以下の容量(例えば、4.0mL、3.0mL、2.0mL、1.0mL、0.9mL、0.8mL、0.7mL、0.6mL、0.5mL、0.4mL、0.3mL、0.2mL、もしくは0.1mL、または約5mL~約0.1mLの範囲の容量)で投与されてよい。
【0016】
患者は、新生児、乳児、小児、青年、または成人など、ヒト対象であってよい。
【0017】
いくつかの実施形態では、組換えアルカリホスファターゼポリペプチドのTSACは、約1.0mol/mol~約6.0mol/molである。いくつかの実施形態では、TSACは、組換えアルカリホスファターゼに対して約1.2mol/mol~約6.0mol/molである。いくつかの実施形態では、TSACは、組換えアルカリホスファターゼに対して約1.5mol/mol~約6.0mol/molである。いくつかの実施形態では、TSACは、組換えアルカリホスファターゼに対して約3.0mol/mol~約6.0mol/molである。いくつかの実施形態では、TSACは、組換えアルカリホスファターゼに対して約3.2mol/mol~約5.9mol/molである。いくつかの実施形態では、TSACは、組換えアルカリホスファターゼに対して約0.9mol/mol、約1.0mol/mol、約1.1mol/mol、約1.2mol/mol、約1.3mol/mol、約1.4mol/mol、約1.5mol/mol、約1.6mol/mol、約1.7mol/mol、約1.8mol/mol、約1.9mol/mol、約2.0mol/mol、約2.1mol/mol、約2.2mol/mol、約2.3mol/mol、約2.4mol/mol、約2.5mol/mol、約2.6mol/mol、約2.7mol/mol、約2.8mol/mol、約2.9mol/mol、約3.0mol/mol、約3.1mol/mol、約3.2mol/mol、約3.3mol/mol、約3.4mol/mol、約3.5mol/mol、約3.6mol/mol、約3.7mol/mol、約3.8mol/mol、約3.9mol/mol、約4.0mol/mol、約4.1mol/mol、約4.2mol/mol、約4.3mol/mol、約4.4mol/mol、約4.5mol/mol、約4.6mol/mol、約4.7mol/mol、約4.8mol/mol、約4.9mol/mol、約5.0mol/mol、約5.1mol/mol、約5.2mol/mol、約5.3mol/mol、約5.4mol/mol、約5.5mol/mol、約5.6mol/mol、約5.7mol/mol、約5.8mol/mol、約5.9mol/mol、または約6.0mol/molである。いくつかの実施形態では、TSACは、組換えアルカリホスファターゼに対して約3.2mol/molである。いくつかの実施形態では、TSACは、組換えアルカリホスファターゼに対して約5.0mol/molである。いくつかの実施形態では、TSACは、組換えアルカリホスファターゼに対して約5.9mol/molである。
【0018】
いくつかの実施形態では、組成物は、pH約7.3で、約10mMのリン酸塩、約140mMのプロリン、約140mMのショ糖、約0.05%のポリオキシエチレン(20)モノオレイン酸ソルビタン(例えば、PS80)を含み、かつTSAC値が約3.0mol/mol~約6.0mol/molである。
【0019】
いくつかの実施形態では、本方法により、患者の血液中で約50μg×時間/mL~約4000μg×時間/mLのAUC0-168hが生じる。例えば、本方法により、患者の血液中で約1000μg×時間/mL~約3000μg×時間/mLのAUC0-168hが生じ得る。いくつかの実施形態では、本方法により、患者の血液中で約0.5μg/mL~約25μg/mLのCmaxが生じる。例えば、本方法により、患者の血液中で約0.6μg/mL~約20μg/mLのCmaxが生じ得る。
【0020】
定義
用語「約」とは、列挙する値の±10%を意味する。本明細書で報告する全ての測定値は、明示的に別段の記載がない限り、明示的に使用されるかどうかにかかわらず、用語「約」によって修飾されるものと理解されるべきである。
【0021】
用語「骨標的化部分」とは、骨標的化部分が単独で骨基質に対して少なくとも約1×10-5M以上、例えば、約10-6M、約10-7M、約10-8M、約10-9M、またはそれを超えるインビボ結合親和性を有するように、骨基質に対して十分な親和性のある、長さが少なくとも3アミノ酸残基のアミノ酸配列を意味する。
【0022】
用語「触媒的能力のある」とは、本明細書で使用される場合、骨石灰化阻害因子である無機ピロリン酸(PPi)を加水分解して、無機リン酸(Pi)を生成し、それによってPPiの細胞外濃度が低下するようなsALPを指す。したがって、触媒的能力のあるsALPは、PPiの濃度を調節することによって骨格石灰化を改善する。
【0023】
用語「Fc」とは、免疫グロブリン重鎖のCH2及びCH3ドメインを含む免疫グロブリンの断片結晶化領域、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4を意味する。また、Fcは、Fab領域とFc領域とを連結するヒンジ領域の任意の部分を含む場合がある。Fcは、ヒトを含む哺乳動物に由来するものであり得、かつ、翻訳後修飾される(例えば、グリコシル化またはシアリル化によって)場合がある。非限定的実施例では、Fcは、配列番号4のヒトIgG2/4の断片結晶化領域であり得る。
【0024】
「断片」とは、好ましくは、参照核酸分子またはポリペプチドの全長の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上を含む、ポリペプチドまたは核酸分子の一部を意味する。断片は、例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、500、600、700、800、900、1,000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100個、もしくはそれ以上のヌクレオチドを含み、最大で核酸分子の全長に及ぶか、または10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、400、500、600、700個、もしくはそれ以上のアミノ酸残基を含み、最大でポリペプチドの全長に及ぶ場合がある。
【0025】
用語「低ホスファターゼ症」及び「HPP」とは、本明細書で使用される場合、例えば、組織非特異アルカリホスファターゼ(TNSALP)をコードする、ALPL(アルカリホスファターゼ、肝臓/骨/腎臓)遺伝子における1つ以上の機能喪失型変異が原因の稀な遺伝性骨格障害を指す。HPPは、さらに乳児性HPP、小児性HPP、出生時HPP(例えば、良性出生時HPPまたは致死性出生時HPP)、歯牙HPP、青年期HPP、または成人性HPPを特徴とする場合がある。例えば、「小児性HPP」は、年齢が約5歳~約12歳のHPP患者を表し、「青年期HPP」は、年齢が約13歳~約17歳のHPP患者を表し、かつ「成人性HPP」は、年齢が約18歳以上のHPP患者を表す。用語「成人性HPP」とは、本明細書で使用される場合、無機ピロリン酸(PPi)の血中レベル及び/または尿中レベルの上昇、低石灰化、高カルシウム尿症、1つ以上の骨格変形、筋緊張低下、筋力低下、リウマチ合併症、あひる歩行、歩行困難、骨痛、疼痛、骨折、ピロリン酸カルシウム二水和物結晶沈着、偽痛風、関節炎、ピロリン酸塩関節症、軟骨石灰化症、石灰沈着性関節周囲炎、及び偽骨折の症状のうち1つ以上の存在を特徴とする病態または表現型を指す。用語「青年期HPP」とは、本明細書で使用される場合、PPi、PEA、またはPLPの血中レベルまたは尿中レベルの上昇;骨軟化症、1つ以上の骨格変形、筋緊張低下、筋力低下、リウマチ合併症、関節炎、偽痛風、あひる歩行、歩行困難、骨痛、疼痛、歯の早期喪失、低石灰化、肺低形成、呼吸機能不全、発作、高カルシウム尿症、低身長、及び成長遅延の症状のうち1つ以上の存在を特徴とする病態または表現型を指す。用語「小児性HPP」とは、本明細書で使用される場合、PPi、PEA、またはPLPの血中レベルまたは尿中レベルの上昇;くる病、くる病肋骨、1つ以上の骨格変形、筋緊張低下、筋力低下、リウマチ合併症、関節炎、偽痛風、あひる歩行、歩行困難、骨痛、疼痛、歯の早期喪失、低石灰化、運動発達遅滞、発作、高カルシウム尿症、低身長、骨折、偽骨折、及び成長遅延の症状のうち1つ以上の存在を特徴とする病態または表現型を指す。
【0026】
用語「核酸」または「核酸分子」とは、2つ以上の共有結合した天然に存在するヌクレオチドまたは修飾されたヌクレオチドの配列を有する高分子、例えば、RNAまたはDNAを意味する。核酸分子は、例えば、一本鎖または二本鎖である場合があり、かつ、修飾ヌクレオチドもしくは未修飾ヌクレオチド、またはそれらの混合物もしくは組み合わせを含み得る。核酸分子の様々な塩、混合塩、及び遊離酸の形態も含まれる。
【0027】
「治療すること」、「治療する」、及び「治療」とは、例えば、医薬組成物(例えば、本明細書に記載のsALP)を投与することによる、HPP(例えば、小児性、青年期、または成人性HPP)、またはその1つ以上の症状などの病状の治療、緩和、安定化、病状の可能性の低減、または病状の防止を目的とした患者の医学的管理、及び/またはHPPなどの病状を示すか、病状を有する可能性のある患者の管理を意味する。治療すること(及び本明細書で使用される他の形態)には、積極的治療、すなわち、疾患、病理学的状態、障害または事象の改善を特に目的とするか、またはその治癒に関連する治療が含まれ、かつ、原因療法、すなわち、関連する疾患、病理学的状態、障害、または事象の原因を取り除くことを目的とする治療も含まれる。加えて、この用語には、緩和的治療、すなわち、疾患、病理学的状態、障害、または事象を治癒する代わりに、少なくとも1つの症状の軽減または改善のために設計された治療;対症療法、すなわち、関連する疾患、病理学的状態、障害、または事象の全身症状を対象とする治療;予防的治療、すなわち、例えば、まだ病気ではないが、特定の疾患、病理学的状態、障害、または事象に罹患しやすいか、またはそのリスクのある患者における、関連する疾患、病理学的状態、障害、または事象の発症を最小限に抑えるか、部分的にまたは完全に阻害することを目的とする治療;及び、支持療法、すなわち、関連する疾患、病理学的状態、障害、または事象の改善を目的とする別の特定の治療法を補足するために利用される治療も含まれる。
【0028】
用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」は同じ意味で用いられ、かつ、本明細書に記載するように、翻訳後修飾(例えば、グリコシル化、シアリル化、またはリン酸化)に関係なく、天然に存在するまたは天然に存在しないポリペプチドまたはペプチドの全て、または一部を構成する、2つ以上の天然または非天然のアミノ酸残基の任意の鎖を指す。
【0029】
用語「sALP」、「可溶性アルカリホスファターゼ」、及び「アルカリホスファターゼの細胞外ドメイン」は同じ意味で用いられ(文脈で別段の指示がない限り)、可溶性の非膜結合アルカリホスファターゼ、または生物学的に活性なその断片もしくはその多様体を意味する。sALPには、例えば、アルカリホスファターゼ活性、例えば、PPiまたは他の天然もしくは人工の基質(複数可)を加水分解する能力を保持する、C末端GPIシグナル配列を欠くアルカリホスファターゼ、ならびに追加の多様体及び類似体が含まれる。これには、特に明記しない限り、TNSALP、PALP、GLALP、及びIALPの細胞外ドメインに対応する可溶性断片、ならびに生物学的に活性な断片またはその多様体が含まれる。成熟したsALPは、GPI膜アンカー及びシグナルペプチドを欠いており、プロセシング中に切断される。
【0030】
用語「ALP」及び「アルカリホスファターゼ」とは、PPiまたは他の天然もしくは人工の基質を加水分解することができる、TNSALP、PALP、GLALP、及びIALPなどの天然に存在するアルカリホスファターゼを指す。
【0031】
用語「薬学的に許容される担体」または「薬学的に許容される賦形剤」とは、共に投与される化合物の治療的性質を保持しながら、治療される患者に対して生理学的に許容される担体または賦形剤を意味する。1つの例示的な薬学的に許容される担体物質は、生理的食塩水である。その他の生理学的に許容される担体及びそれらの処方は、当業者に周知であり、かつ、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Remington:The Science and Practice of Pharmacy,22nd Ed.,Allen,Ed.2012)に記載されている。
【0032】
用語「医薬組成物」とは、薬学的に許容される賦形剤と共に調製された本明細書に記載のポリペプチドまたは核酸分子を含有する組成物を意味し、かつ患者における疾患または事象を治療または予防するための治療レジメンの一部として、政府規制機関の承認を得て製造または販売されるものが含まれる。医薬組成物は、例えば、皮下投与用(例えば、腹部または大腿部への)、静脈内投与用(例えば、微粒子塞栓非含有の無菌溶液として、及び静脈内使用に適した溶剤系中で)、経口投与用(例えば、錠剤、カプセル、カプレット、ジェルキャップ、またはシロップ)に、または本明細書に記載の任意の他の製剤形態、例えば、単位投薬形態で、調製することができる。
【0033】
用語「患者」は、ヒト哺乳動物、またはウシ、ウマ、イヌ、ヒツジ、もしくはネコなどの非ヒト哺乳動物を含むがこれらに限定されない哺乳動物を意味する。
【0034】
用語「治療有効量」とは、本明細書に記載の疾患または病態の任意の症状、特にHPPを、実質的に治療、予防、遅延、抑制、または抑止するのに十分な、本明細書に記載のポリペプチドまたは核酸分子の量を意味する。本明細書に記載の組成物の治療有効量は、治療対象の障害の重症度、ならびに患者の病態、体重、及び全身状態に依存する場合があり、かつ、そのような要因を考慮して当業者によって決定され得る。本明細書に記載の組成物の治療有効量は、単回投与で、または一定の期間にわたって投与する反復投与で、患者に投与されてよい。
【0035】
用語「総シアル酸含量」または「TSAC」とは、本明細書で使用される場合、特定のタンパク質分子上のシアル酸(炭水化物)の量を指す。これは、タンパク質1モルあたりに組み込まれるシアル酸のモル数、すなわち「mol/mol」と表される。TSAC濃度は、精製プロセス中に測定される。例えば、TSAC定量化の1つの方法では、酸加水分解を用いてTSACをアルカリホスファターゼから放出させて、その後、放出したTSACを、パルス電流測定検出技術(「HPAE-PAD」)を用いる高速アニオン交換クロマトグラフィーを使用する電気化学的検出を介して検出する。
【0036】
用語「シアル酸」とは、一般に、炭素数9の主鎖を有する単糖類である、ノイラミン酸のN置換誘導体またはO置換誘導体を指す。シアル酸はまた、特に化合物N-アセチルノイラミン酸を指し、かつNeu5AcまたはNANAと略記されることがある。シアル酸の存在は、吸収、血清半減期、及び糖タンパク質の血清からのクリアランス、加えて糖タンパク質の物理的、化学的、及び免疫原性特性に影響を及ぼすことがある。本開示のいくつかの実施形態では、アルカリホスファターゼ、例えば、ALP201に関連するシアル酸は、生理的条件での分子のインビボ曝露量及び半減期に影響を与える。いくつかの実施形態では、アルカリホスファターゼの総シアル酸含量(TSAC)の正確かつ予測可能な制御は、品質管理属性として機能する。
【0037】
本明細書で使用される場合、ポリペプチドまたは核酸配列が参照配列と「少なくともX%の配列同一性」を有すると言及される場合、配列が最適にアラインメントされている場合に、ポリペプチドまたは核酸における少なくともXパーセントのアミノ酸残基またはヌクレオチドが、参照配列のものと同一であることを意味する。配列の最適なアラインメントは、当技術分野の範囲の種々の方法、例えば、Smith Watermanアラインメントアルゴリズム(Smith et al.,J.Mol.Biol.147:195-7,1981)及びBLAST(Basic Local Alignment Search Tool;Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403-10,1990)で決定することができる。これらの及び他のアラインメントアルゴリズム、例えば、GENEMATCHER PLUS(商標)(Schwarz and Dayhof,Atlas of Protein Sequence and Structure,Dayhoff,M.O.,Ed.,pp 353-358,1979)に組み込まれているような「Best Fit」(Smith and Waterman,Advances in Applied Mathematics,482-489,1981)、BLAST、BLAST-2、BLAST-P、BLAST-N、BLAST-X、WU-BLAST-2、ALIGN、ALIGN-2、CLUSTAL、またはMegalign(DNASTAR)などの、一般に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用してアクセス可能である。加えて、当業者は、比較される配列の長さにわたる最適のアラインメントを得るために必要とされる任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するために適切なパラメータを決定することができる。
【0038】
単語「好ましい」及び「好ましくは」とは、特定の状況下で特定の利益をもたらす可能性がある、開示される化合物、組成物、及び方法の実施形態を指す。しかし、他の実施形態もまた、同じまたはその他の状況下で好ましい場合もある。さらに、1つ以上の好ましい実施形態の記述は、他の実施形態が有用ではないことを意味するものではなく、かつ、この用語の使用は、本開示の範囲から他の実施形態を除外することを意図するものではない。
【0039】
個々の工程を含む本明細書にて開示する任意の方法では、工程は、実行可能な任意の順序で実行することができ、また、必要に応じて2つ以上の工程の任意の組み合わせが同時に行われてもよい。
【0040】
上記概要は、開示される各実施形態、または開示される化合物、組成物、及び方法の全ての実装形態を説明することを意図したものではない。以下の説明では、例示的な実施形態をより具体的に例示する。本願全体にわたるいくつかの箇所で、例のリストを通してガイダンスを提示する場合があり、これらの例は、種々の組み合わせで使用することができる。それぞれの事例において、列挙したリストは、代表的群としてのみ機能し、排他的なリストとして解釈されるべきではない。
【0041】
全ての見出しは、読み手の利便性を目的としており、特に指定がない限り、見出しに続く文章の意味を限定するために用いられるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】ALP201(配列番号5;左)及びアスホターゼアルファ(配列番号6;右)の、PPi加水分解の速度に伴って増加するPPiレベルの関係性を示す、1組の飽和曲線である。
図2】ALP201(左)及びアスホターゼアルファ(右)の、PLP加水分解の速度に伴って増加するPLPレベルの関係性を示す、1組の飽和曲線である。
図3】投与群ごとの試験終了時のAkp2GW(-/-)マウス血漿中の活性アルカリホスファターゼ酵素濃度を示すグラフである。略語:q1w=1週に1回;q2d=2日に1回;qd=1日1回。
図4】36/37日目の試験終了時のマウス大腿骨組織のアルカリホスファターゼ活性レベルを示すグラフである。略語:q2d=2日に1回;qd=1日1回。
図5】36日間の有効性試験におけるALP201及びアスホターゼアルファで治療されたAkp2GW(-/-)マウスの1組の代表的生存曲線である。略語:MED=最小有効用量;PBS=リン酸緩衝生理食塩水;q1w=1週に1回;q2d=2日に1回;qd=1日1回。
図6】ALP201とアスホターゼアルファとの用量反応モデリング結果の比較を示すグラフである。略語:ALP=アルカリホスファターゼ;D-R=用量反応;MED=最小有効用量;POC=概念実証。
図7】ファースト・イン・ヒューマン(FIH)コホートごとのシミュレートしたヒトALP201の濃度-時間プロファイルを示すグラフである。灰色の領域は、90%の予測期間、すなわち、5%~95%の範囲を表しており、黒色の実線は、シミュレートした濃度-時間プロファイルの中央値であり;LLOQは、PKアッセイの水平破線であり、略語:LLOQ=定量化の下限(0.15μg/mL)である。
図8】A及びBは、雄C57BL/6マウスへの静脈内投与(A)及び皮下投与(B)後の平均(SD)ALP201活性血漿中の濃度対時間プロファイルを示すグラフである。
図9】A及びBは、雄C57Bl/6マウスへの静脈内投与(A)及び皮下投与(B)後のALP201(TSAC=5.9のロット)の平均(SD)ALP201活性血漿中の濃度対時間プロファイルを示すグラフである。
図10】A及びBは、雄C57Bl/6マウスへの静脈内投与(A)及び皮下投与(B)後のALP201(TSAC=5.0のロット)の平均(SD)ALP201活性血漿中の濃度対時間プロファイルを示すグラフである。
図11】A及びBは、雄C57Bl/6マウスへの静脈内投与(A)及び皮下投与(B)後のALP201(TSAC=3.2のロット)の平均(SD)ALP201活性血漿中の濃度対時間プロファイルを示すグラフである。
図12】雄C57BL/6マウスへの静脈内投与後のALP201 TSAC値(3.2、5.0、及び5.9)の平均(SD)ALP201活性血漿中の濃度対時間プロファイルを示すグラフである。
図13】雄C57BL/6マウスへの皮下投与後のALP201 TSAC値の平均(SD)ALP201活性血漿中の濃度対時間プロファイルを示すグラフである。
図14】ラットにおける単回のIV及びSC投与後のALP201とアスホターゼアルファとの平均(±SD)血漿中の濃度対時間プロファイルの比較を示すグラフである。略語:IV静脈内;SC=皮下、SD=標準偏差。アスホターゼアルファのソースデータ:プールされた性別、3mg/kgでのIV、及びSC。
図15】サルにおける単回のIV及びSC投与後のALP201とアスホターゼアルファとの平均(±SD)血漿中の濃度対時間プロファイルの比較を示すグラフである。
図16】ALP201とアスホターゼアルファ(STRENSIQ(登録商標))との用量反応モデリングの比較を示すグラフである。略語:ALP=アルカリホスファターゼ;D-R=用量反応;MED=最小有効用量;POC=概念実証。
【発明を実施するための形態】
【0043】
可溶性アルカリホスファターゼポリペプチド(例えば、配列番号5の配列を有するもの、及びそれに対して最大80%以上の配列同一性を有するその多様体であって、ここで、該ポリペプチドは、配列番号5のE108M、N213Q、及びN286Qから選択される変異のうち1つ、2つ、または3つを含む)、その断片、及びその融合タンパク質、それをコードする核酸分子、ならびに、骨石灰化障害、例えば、低ホスファターゼ症(HPP)などの疾患、またはそれらの1つ以上の症状を治療するために、該ポリペプチド及び核酸分子を使用する方法を特徴とする。ポリペプチドは、天然に存在するアルカリホスファターゼ(ALP)に由来する可溶性アルカリホスファターゼ(sALP)またはその断片を含む。アルカリホスファターゼは、異なる組織で異なって発現する種々のアイソザイムを含む。4つの主要なALPアイソザイムとしては、組織非特異アルカリホスファターゼ(TNSALP)、胎盤アルカリホスファターゼ(PALP)、生殖細胞系アルカリホスファターゼ(GLALP)、及び腸アルカリホスファターゼ(IALP)が挙げられる。したがって、これらのALPアイソザイムに由来するタンパク質も特徴とされる。
【0044】
本明細書に記載のポリペプチドは、例えば、リン酸塩、プロリン、及びショ糖のうち1つ以上を含有する医薬組成物中に調製される。これらの成分は、製剤中の安定性の向上、凝集の減少、切断型タンパク質産物の減少、及び所望のタンパク質産物の純度の上昇などの、有益な特徴をポリペプチドに付与する。
【0045】
HPPは、最も重篤な形態の疾患の場合、発症率が100,000出生児あたり1例の稀な遺伝性骨格疾患である。この障害は、通常、TNSALPをコードする遺伝子の機能喪失型変異によって引き起こされる。HPPは、早期の歯牙喪失から子宮内での骨石灰化のほぼ完全な欠如に至るまで、非常に幅広い症状及び重症度を呈する。HPPの症状は、患者によって著しく異なり、患者の年齢によっても著しく異なる。多くのHPP患者が、骨格の変化、低身長、慢性疼痛、下肢の痛み、歩行障害、及び早期の非外傷性歯牙喪失を示す。内因性TNSALPの機能喪失型変異が原因で、HPP患者には、天然のALP活性を回復し、正常な骨基質石灰化をもたらすために、本明細書に記載のポリペプチドの機能的ALP活性が必要である。
【0046】
可溶性アルカリホスファターゼポリペプチド
本明細書に記載のポリペプチドは、変異型の組織非特異アルカリホスファターゼ(TNSALP)またはその断片などの可溶性アルカリホスファターゼ(sALP)を含む。sALPは、Fc領域及び配列n(「Dn」、nは、例えば、3~20に等しい)のポリアスパラギン酸に融合され得る(sALP-Fc-Dn)。ポリペプチドは、ヒトTNSALPの可溶性断片(例えば、配列番号1の残基1~491または1~485)などのヒトTNSALPを含み得る。ポリペプチドは、配列番号1に比べて、変異E108M、N213Q、及び/またはN286Qのうち1つ、2つ、または3つを含み得る。例えば、sALPは、配列番号2または3と少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、90%、95%、97%、99%、または100%)の同一性を有してよい。Fc領域は、IgG2/4Fc領域であってよい。例えば、Fc領域は、配列番号4に対して少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、90%、95%、97%、99%、または100%)の同一性を有してよい。ポリアスパラギン酸は、例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個のアスパラギン酸残基を含み得る。いくつかの実施形態では、ポリアスパラギン酸は、10個のアスパラギン酸残基(D10)を含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号5に対して少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、90%、95%、97%、99%、または100%)の同一性を有する。例えば、ポリペプチドは、配列番号5のポリペプチドを含むか、またはそれで構成され得る。ポリペプチドは、配列番号5で構成され得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドのアルカリホスファターゼ部分は、配列番号3に対して少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、90%、95%、97%、99%、または100%)の配列同一性を有する。このポリペプチドは、さらにFc領域(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4Fc領域)及び/またはポリアスパラギン酸領域に連結され得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、IgG2/4Fc領域を含み、例えば、配列番号4に対して少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、90%、95%、97%、99%、または100%)の同一性を有する。ポリアスパラギン酸は、例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個のアスパラギン酸残基を含み得る。いくつかの実施形態では、ポリアスパラギン酸は、10個のアスパラギン酸残基(D10)を含む。
【0048】
配列番号1-シグナルペプチドを欠くヒトTNSALP(UniProt P05186.4)
LVPEKEKDPKYWRDQAQETLKYALELQKLNTNVAKNVIMFLGDGMGVSTVTAARILKGQLHHNPGEETRLEMDKFPFVALSKTYNTNAQVPDSAGTATAYLCGVKANEGTVGVSAATERSRCNTTQGNEVTSILRWAKDAGKSVGIVTTTRVNHATPSAAYAHSADRDWYSDNEMPPEALSQGCKDIAYQLMHNIRDIDVIMGGGRKYMYPKNKTDVEYESDEKARGTRLDGLDLVDTWKSFKPRYKHSHFIWNRTELLTLDPHNVDYLLGLFEPGDMQYELNRNNVTDPSLSEMVVVAIQILRKNPKGFFLLVEGGRIDHGHHEGKAKQALHEAVEMDRAIGQAGSLTSSEDTLTVVTADHSHVFTFGGYTPRGNSIFGLAPMLSDTDKKPFTAILYGNGPGYKVVGGERENVSMVDYAHNNYQAQSAVPLRHETHGGEDVAVFSKGPMAHLLHGVHEQNYVPHVMAYAACIGANLGHCAPASSAGSLAAGPLLLALALYPLSVLF

配列番号2-ヒトTNSALP(1-485;E108M、N213Q、N286Q)
LVPEKEKDPKYWRDQAQETLKYALELQKLNTNVAKNVIMFLGDGMGVSTVTAARILKGQLHHNPGEETRLEMDKFPFVALSKTYNTNAQVPDSAGTATAYLCGVKANMGTVGVSAATERSRCNTTQGNEVTSILRWAKDAGKSVGIVTTTRVNHATPSAAYAHSADRDWYSDNEMPPEALSQGCKDIAYQLMHNIRDIDVIMGGGRKYMYPKQKTDVEYESDEKARGTRLDGLDLVDTWKSFKPRYKHSHFIWNRTELLTLDPHNVDYLLGLFEPGDMQYELNRNQVTDPSLSEMVVVAIQILRKNPKGFFLLVEGGRIDHGHHEGKAKQALHEAVEMDRAIGQAGSLTSSEDTLTVVTADHSHVFTFGGYTPRGNSIFGLAPMLSDTDKKPFTAILYGNGPGYKVVGGERENVSMVDYAHNNYQAQSAVPLRHETHGGEDVAVFSKGPMAHLLHGVHEQNYVPHVMAYAACIGANLGHCAPASS

配列番号3-ヒトTNSALP(1-491;E108M、N213Q、N286Q)
LVPEKEKDPKYWRDQAQETLKYALELQKLNTNVAKNVIMFLGDGMGVSTVTAARILKGQLHHNPGEETRLEMDKFPFVALSKTYNTNAQVPDSAGTATAYLCGVKANMGTVGVSAATERSRCNTTQGNEVTSILRWAKDAGKSVGIVTTTRVNHATPSAAYAHSADRDWYSDNEMPPEALSQGCKDIAYQLMHNIRDIDVIMGGGRKYMYPKQKTDVEYESDEKARGTRLDGLDLVDTWKSFKPRYKHSHFIWNRTELLTLDPHNVDYLLGLFEPGDMQYELNRNQVTDPSLSEMVVVAIQILRKNPKGFFLLVEGGRIDHGHHEGKAKQALHEAVEMDRAIGQAGSLTSSEDTLTVVTADHSHVFTFGGYTPRGNSIFGLAPMLSDTDKKPFTAILYGNGPGYKVVGGERENVSMVDYAHNNYQAQSAVPLRHETHGGEDVAVFSKGPMAHLLHGVHEQNYVPHVMAYAACIGANLGHCAPASSAGSLAA

配列番号4-IgG2/4Fc
VECPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK

配列番号5-ALP201
LVPEKEKDPKYWRDQAQETLKYALELQKLNTNVAKNVIMFLGDGMGVSTVTAARILKGQLHHNPGEETRLEMDKFPFVALSKTYNTNAQVPDSAGTATAYLCGVKANMGTVGVSAATERSRCNTTQGNEVTSILRWAKDAGKSVGIVTTTRVNHATPSAAYAHSADRDWYSDNEMPPEALSQGCKDIAYQLMHNIRDIDVIMGGGRKYMYPKQKTDVEYESDEKARGTRLDGLDLVDTWKSFKPRYKHSHFIWNRTELLTLDPHNVDYLLGLFEPGDMQYELNRNQVTDPSLSEMVVVAIQILRKNPKGFFLLVEGGRIDHGHHEGKAKQALHEAVEMDRAIGQAGSLTSSEDTLTVVTADHSHVFTFGGYTPRGNSIFGLAPMLSDTDKKPFTAILYGNGPGYKVVGGERENVSMVDYAHNNYQAQSAVPLRHETHGGEDVAVFSKGPMAHLLHGVHEQNYVPHVMAYAACIGANLGHCAPASSAGSLAAVECPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGKDDDDDDDDDD

配列番号6-アスホターゼアルファ
LVPEKEKDPKYWRDQAQETLKYALELQKLNTNVAKNVIMFLGDGMGVSTVTAARILKGQLHHNPGEETRLEMDKFPFVALSKTYNTNAQVPDSAGTATAYLCGVKANEGTVGVSAATERSRCNTTQGNEVTSILRWAKDAGKSVGIVTTTRVNHATPSAAYAHSADRDWYSDNEMPPEALSQGCKDIAYQLMHNIRDIDVIMGGGRKYMYPKNKTDVEYESDEKARGTRLDGLDLVDTWKSFKPRYKHSHFIWNRTELLTLDPHNVDYLLGLFEPGDMQYELNRNNVTDPSLSEMVVVAIQILRKNPKGFFLLVEGGRIDHGHHEGKAKQALHEAVEMDRAIGQAGSLTSSEDTLTVVTADHSHVFTFGGYTPRGNSIFGLAPMLSDTDKKPFTAILYGNGPGYKVVGGERENVSMVDYAHNNYQAQSAVPLRHETHGGEDVAVFSKGPMAHLLHGVHEQNYVPHVMAYAACIGANLGHC
APASSLKDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKDIDDDDDDDDDD
【0049】
総シアル酸含量
本明細書に記載するように、TSACは、生理的条件において、組換えアルカリホスファターゼの半減期に影響を与える可能性がある。したがって、TSACレベルは、組換えにより製造されたアルカリホスファターゼ、例えば、ALP201などに関する品質属性として機能する場合がある。ポリペプチドの製造中のTSAC範囲の制御により、バッチ間の再現性を向上させることでき、かつ作製したポリペプチドにおける不均質性を低減することができる。いくつかの実施形態では、TSACは、組換えアルカリホスファターゼに対して約0.8mol/mol~約8.0mol/molである。いくつかの実施形態では、TSACは、組換えアルカリホスファターゼに対して約0.9mol/mol~約7.0mol/molである。いくつかの実施形態では、TSACは、組換えアルカリホスファターゼに対して約1.0mol/mol~約6.0mol/molである。いくつかの実施形態では、TSACは、組換えアルカリホスファターゼに対して約1.2mol/mol~約6.0mol/molである。いくつかの実施形態では、TSACは、組換えアルカリホスファターゼに対して約1.5mol/mol~約6.0mol/molである。いくつかの実施形態では、TSACは、組換えアルカリホスファターゼに対して約2.0mol/mol~約6.0mol/molである。いくつかの実施形態では、TSACは、組換えアルカリホスファターゼに対して約3.2mol/mol~約5.9mol/molである。いくつかの実施形態では、TSACは、組換えアルカリホスファターゼに対して約0.9mol/mol、約1.0mol/mol、約1.1mol/mol、約1.2mol/mol、約1.3mol/mol、約1.4mol/mol、約1.5mol/mol、約1.6mol/mol、約1.7mol/mol、約1.8mol/mol、約1.9mol/mol、約2.0mol/mol、約2.1mol/mol、約2.2mol/mol、約2.3mol/mol、約2.4mol/mol、約2.5mol/mol、約2.6mol/mol、約2.7mol/mol、約2.8mol/mol、約2.9mol/mol、約3.0mol/mol、約3.1mol/mol、約3.2mol/mol、約3.3mol/mol、約3.4mol/mol、約3.5mol/mol、約3.6mol/mol、約3.7mol/mol、約3.8mol/mol、約3.9mol/mol、約4.0mol/mol、約4.1mol/mol、約4.2mol/mol、約4.3mol/mol、約4.4mol/mol、約4.5mol/mol、約4.6mol/mol、約4.7mol/mol、約4.8mol/mol、約4.9mol/mol、約5.0mol/mol、約5.1mol/mol、約5.2mol/mol、約5.3mol/mol、約5.4mol/mol、約5.5mol/mol、約5.6mol/mol、約5.7mol/mol、約5.8mol/mol、約5.9mol/mol、または約6.0mol/molである。いくつかの実施形態では、TSACは、組換えアルカリホスファターゼに対して約3.2mol/molである。いくつかの実施形態では、TSACは、組換えアルカリホスファターゼに対して約5.0mol/molである。いくつかの実施形態では、TSACは、組換えアルカリホスファターゼに対して約5.9mol/molである。
【0050】
医薬組成物
本明細書に記載のポリペプチド(例えば、配列番号5の配列を有するポリペプチド、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有するその多様体(例えば、配列番号1または配列番号5に比べて、変異E108M、N213Q、及びN286Qのうち1つ以上またはその全てを含むポリペプチド))は、当技術分野において知られている種々の方法によって医薬組成物として調製され得る。
【0051】
組成物は、リン酸塩、プロリン、及びショ糖のうち1つ以上またはその全てを含み得る。組成物は、例えば、リン酸塩及びショ糖を含み得る。例えば、組成物は、リン酸塩(例えば、リン酸ナトリウム)を、例えば、約1mM~約100mM、または約5mM~約20mMリン酸塩、例えば、約2mM、3mM、4mM、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、20mM、30mM、40mM、50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、または100mM、例えば、約10mMの濃度で含み得る。組成物は、さらにプロリン及び/またはショ糖を含み得る。組成物は、さらにプロリンを含み得る。組成物は、さらにショ糖を含み得る。例えば、組成物は、約1mM~約500mMのプロリン、例えば、約70mM~約280mM、例えば、約50mM~約200mM、例えば、約2mM、3mM、4mM、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、20mM、30mM、40mM、50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、100mM、110mM、120mM、130mM、140mM、150mM、160mM、170mM、180mM、190mM、200mM、300mM、400mM、または500mM、例えば、約140mMのプロリン、及び/または約1mM~約500mMのショ糖、例えば、約70mM~約280mM、例えば、約50mM~約200mM、例えば、約2mM、3mM、4mM、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、20mM、30mM、40mM、50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、100mM、110mM、120mM、130mM、140mM、150mM、160mM、170mM、180mM、190mM、200mM、210、mM、220mM、230mM、240mM、250mM、260mM、270mM、280mM、290mM、300mM、350mM、400mM、450mM、または500mM、例えば、約140mMのショ糖、または約210mMのショ糖を含み得る。いくつかの実施形態では、組成物は、約1:0~約1:3、例えば、約1:1のプロリン:ショ糖のモル比を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約140mMのプロリンを含む。いくつかの実施形態では、製剤は、約140mMのショ糖を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、約210mMのショ糖を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、約210mMのショ糖を含むが、プロリンは含まない。いくつかの実施形態では、組成物は、約210mMのショ糖、及び約10mMのリン酸塩(例えば、リン酸ナトリウム)を含む。製剤は、さらに約0.01%~約0.5%、例えば、約0.01%~約0.1%、例えば、約0.05%のポリオキシエチレン(20)モノオレイン酸ソルビタン(例えば、ポリソルベート80(PS80))などを含み得る。いくつかの実施形態では、組成物は、pH約7.0~pH約7.6(例えば、pH約7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、または7.6、例えば、約7.3)のpHで調製される。いくつかの実施形態では、組成物は、pH約7.3で、約10mMのリン酸塩、約140mMのプロリン、約140mMのショ糖、及び約0.05%のポリオキシエチレン(20)モノオレイン酸ソルビタン(例えば、PS80)を含む。
【0052】
組成物は、例えば、約0.1mg/mL~約200mg/mL、例えば、約100mg/mLの量で、ポリペプチドを含有する溶液として調製され得る。組成物は、静脈内投与または皮下投与用に、例えば、約0.1mg/mL~約10mg/mLのポリペプチドの投与量で調製され得る。組成物は、約0.1mL~約50mL(例えば、約0.1~約10mL、例えば、約0.1mL、0.2mL、0.3mL、0.4mL、0.5mL、0.6mL、0.7mL、0.8mL、0.9mL、または1.0mL、例えば、約1mL~約10mL、例えば、約2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、7mL、8mL、9mL、または10mL)の容量の溶液で調製され得る。いくつかの実施形態では、組成物は、約1mLで調製される。
【0053】
本開示はまた、本明細書に記載のような医薬組成物を含有するバイアルも特徴とする。バイアルは、例えば、約0.1mL~約10mL(例えば、約1mL)の容量で溶液を含有し得る。バイアルは、ポリペプチドを、例えば、ポリペプチド(例えば、配列番号5のポリペプチド、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有する多様体)の約0.1mg/mL~約500mg/mL、例えば、約1mg/mL~約200mg/mL、例えば、約50mg/mL~約150mg/mL、例えば、約100mg/mLの量で含有し得る。
【0054】
例えば、バイアルは、配列番号5のポリペプチドを約50~約100mg/mLの濃度で含有する、約0.25mL、約0.5mL、約0.75mL、または約1.0mLの容量の溶液を含有していてもよく、ここで、該溶液は、約7.3のpHで、約10mMのリン酸塩、約140mMのプロリン、約140mMのショ糖、及び約0.05%のポリオキシエチレン(20)モノオレイン酸ソルビタン(例えば、PS80)を含有する。
【0055】
製剤
sALP及びsALP融合ポリペプチド(例えば、配列番号5の配列を有するポリペプチド、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有するその多様体(例えば、配列番号1または配列番号5に比べて、変異E108M、N213Q、及びN286Qのうち1つ以上またはその全てを含むポリペプチド))を含む組成物は、標準的な方法に従って調製され得る。例えば、sALP組成物は、例えば、好適な濃度で、2~8℃(例えば、4℃)での保管に好適な緩衝溶液として調製され得る。sALP組成物はまた、0℃を下回る(例えば、-20℃または-80℃)の温度での保管向けに調製され得る。sALP組成物は、さらに最大2年間(例えば、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9が月、10ヶ月、11ヶ月、1年、1年半、または2年)にわたる、2~8℃(例えば、4℃)での保管向けに調製され得る。したがって、本明細書に記載の組成物は、少なくとも1年間にわたる、2~8℃(例えば、4℃)での保管において安定であるように調製され得る。組成物は、好適な容量、例えば、約0.1mL~約10mLの容量で調製され得る。
【0056】
sALP及びsALP融合ポリペプチド(例えば、配列番号5の配列を有するポリペプチド、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有するその多様体(例えば、配列番号1または配列番号5に比べて、変異E108M、N213Q、及びN286Qのうち1つ以上またはその全てを含むポリペプチド))を含む組成物は、液体形態とすることができる。
【0057】
例えば、全身送達または局所送達を目的とした組成物は、注射用溶液または不融性溶液の形態とすることができる。したがって、sALP組成物(例えば、配列番号5の配列を有するポリペプチド、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有するその多様体(例えば、配列番号1または配列番号5に比べて、変異E108M、N213Q、及びN286Qのうち1つ以上またはその全てを含むポリペプチド)を含有する組成物)は、非経口様式(例えば、皮下、静脈内、腹腔内、または筋肉内注射)による投与向けに調製され得る。「非経口投与」、「非経口的に投与する」、及び他の文法的に等しい語句は、本明細書で使用される場合、経腸及び局所投与以外の投与様式を指し、通常、注射によるものであり、限定されないが、皮下、皮内、静脈内、鼻腔内、眼内、肺、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、関節内、眼窩内、心臓内、皮内、肺内、腹腔内、経気管、表皮下、関節腔内、被膜下、くも膜下、髄腔内、硬膜外、脳内、頭蓋内、頸動脈内、及び胸骨内注射及び点滴を含む。特定の投与経路は、静脈内投与及び皮下投与を含む。
【0058】
組成物は、凍結乾燥された組成物として調製することができる。組成物は、投与前に溶液(例えば、本明細書に記載されるような)を用いて再水和することができる。
【0059】
投与量
本明細書に記載のsALPポリペプチド(例えば、配列番号5の配列を有するポリペプチド、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有するその多様体(例えば、配列番号1に比べて、変異E108M、N213Q、及びN286Qのうち1つ以上またはその全てを含むポリペプチド))は、HPPなどの骨石灰化障害を患うか、またはその傾向のある患者に、例えば、0.01mg/kg~500mg/kg(例えば、0.05mg/kg~500mg/kg、0.1mg/kg~60mg/kg、0.1mg/kg~50mg/kg、0.1mg/kg~20mg/kg、5mg/kg~500mg/kg、0.1mg/kg~100mg/kg、10mg/kg~100mg/kg、0.1mg/kg~50mg/kg、0.5mg/kg~25mg/kg、1.0mg/kg~10mg/kg、1.5mg/kg~5mg/kg、もしくは2.0mg/kg~3.0mg/kg)、または1μg/kg~1,000μg/kg(例えば、5μg/kg~1、000μg/kg、1μg/kg~750μg/kg、5μg/kg~750μg/kg、10μg/kg~750μg/kg、1μg/kg~500μg/kg、5μg/kg~500μg/kg、10μg/kg~500μg/kg、1μg/kg~100μg/kg、5μg/kg~100μg/kg、10μg/kg~100μg/kg、1μg/kg~50μg/kg、5μg/kg~50μg/kg、もしくは10μg/kg~50μg/kg)の範囲の個別の用量で、投与することができる。
【0060】
sALPの例示的用量としては、例えば、0.01、0.05、0.1、0.5、1、2、2.5、5、10、20、25、50、100、125、150、200、250、もしくは500mg/kg;または1、2、2.5、5、10、20、25、50、100、125、150、200、250、500、750、900、もしくは1,000μg/kgが挙げられる。本明細書に列挙する全ての用量または範囲に対して、列挙した値または範囲の端点の±10%でこれらの用量を修飾するために用語「約」が使用される場合がある。特に、本開示による組成物(例えば、配列番号5の配列を有するポリペプチド、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有するその多様体(例えば、配列番号1または配列番号5に比べて、変異E108M、N213Q、及びN286Qのうち1つ以上またはその全てを含むポリペプチド))は、約0.001mg/kg/日~約500mg/kg/日、約0.01mg/kg/日~約100mg/kg/日、または約0.01mg/kg/日~約20mg/kg/日の範囲の用量で、患者に投与することができる。例えば、sALP組成物(例えば、配列番号5の配列を有するポリペプチド、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有するその多様体(例えば、配列番号1または配列番号5に比べて、変異E108M、N213Q、及びN286Qのうち1つ以上またはその全てを含むポリペプチド))は、例えば、約0.5mg/kg/週~約140mg/kg/週、例えば、約0.8mg/kg/週~約50mg/kg/週、または約1mg/kg/週~約10mg/kg/週(例えば、約6~約9mg/kg/週)の範囲の1週あたりの投与量で、患者に投与することができる。特に、sALPは、1週に1回以上(例えば、1週あたり1、2、3、4、5、6、7回、もしくはそれ以上)、隔週に1回以上、または1ヶ月に1回以上(例えば、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、もしくは30日ごとに1回)投与することができる。いくつかの実施形態では、製剤は、1週に1回投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、2週に1回投与される。
【0061】
特に、sALP(例えば、配列番号5の配列を有するポリペプチド、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有するその多様体(例えば、配列番号1または配列番号5に比べて、変異E108M、N213Q、及びN286Qのうち1つ以上またはその全てを含むポリペプチド))は、1週に3回2mg/kg(総用量6mg/kg/週)、1週に6回1mg/kg(総用量6mg/kg/週)、1週に3回3mg/kg(総用量9mg/kg/週)、1週に3回0.5mg/kg(総用量1.5mg/kg/週)、または1週に3回9.3mg/kg(総用量28mg/kg/週)の投与量で投与することができる。投与量は、HPPなどの骨石灰化障害を患うか、またはその傾向のある患者の、疾患の程度及び異なるパラメータなどの従来の要因に基づいて臨床医によって調整されてよい。あるいは、約0.1mg/kg~約20mg/kg(例えば、約0.1mg/kg~約9mg/kg)が、1週に1回、または2週に1回投与されてよい。sALP組成物はまた、1週または2週に1~10回(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10回)、1回あたり1~90mgの投与量(例えば、0.1mL~100mLの容量)で投与することができる。いくつかの実施形態では、sALP組成物は、1週に1回投与される。いくつかの実施形態では、sALP組成物は、2週に1回投与される。
【0062】
sALPまたはsALP融合ポリペプチド(例えば、配列番号5の配列を有するポリペプチド、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有するその多様体(例えば、配列番号1または配列番号5に比べて、変異E108M、N213Q、及びN286Qのうち1つ以上またはその全てを含むポリペプチド))を含有する組成物は、単回投与レジメンで、または反復投与レジメンで患者に投与することができる。各用量は、例えば、1時間に1回、隔時間に1回、1日1回、隔日に1回、1週に2回、1週に3回、1週に4回、1週に5回、1週に6回、1週に1回、隔週に1回、1月に1回、隔月に1回、または1年に1回投与することができる。あるいは、各用量は、例えば、1日、1週、または1ヶ月に2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、または12回投与することができる。特に、投与レジメンは、1週に1回、2回、または3回である。投与レジメンの期間は、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30日(複数可)、週(複数可)、または月(複数可)、あるいはHPPなどの骨石灰化障害を患うか、またはその傾向のある患者の寿命が続く間とすることができる。量、頻度、及び投与の期間は、HPPなどの骨石灰化障害を患うか、またはその傾向のある患者の、疾患の程度及び異なるパラメータなどの従来の要因に基づいて臨床医によって調整することができる。
【0063】
例えば、sALPまたはsALP融合ポリペプチド(例えば、配列番号5の配列を有するポリペプチド、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有するその多様体(例えば、配列番号1または配列番号5に比べて、変異E108M、N213Q、及びN286Qのうち1つ以上またはその全てを含むポリペプチド))の投与量は、体重あたり約0.1mg/kg~体重あたり約10mg/kgで、1週に1回以上(例えば、2、3、4、5、6、または7回)皮下または静脈内投与されてよい。
【0064】
いくつかの特定の実施形態では、ポリペプチド(例えば、配列番号5の配列を有するポリペプチド、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有するその多様体(例えば、配列番号1または配列番号5に比べて、変異E108M、N213Q、及びN286Qのうち1つ以上またはその全てを含むポリペプチド))またはそれを含有する医薬組成物は、約0.01mg/kg~約60mg/kgの投与量(例えば、約0.1mg/kg~約50mg/kg、例えば、約0.1mg/kg~約20mg/kg、例えば、約0.1mg/kg~約10mg/kg)で投与されてよい。ポリペプチドは、1日、1週、1ヶ月、または1年に1回(例えば、1週に1回)投与されてよい。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、または31日ごとに1回以上投与される。ポリペプチドは、約0.01mg/kg/週~約50mg/kg/週(例えば、約0.01mg/kg/週~約40mg/kg/週、例えば、約0.1mg/kg/週~約20mg/kg/週、例えば、約0.1mg/kg/週~約10mg/kg/週)の投与量で投与されてよい。ポリペプチドは、少なくとも1日間、1週間、1ヶ月間、1年間、またはそれ以上にわたって(例えば、1~5年間にわたって、または患者の生涯にわたって)投与されてよい。
【0065】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、皮下投与される。例えば、約10mg~約100mg(例えば、約10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、または100mg、例えば、約15mg、45mg、または90mg)が、例えば、1週に1回または2回、例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10週間、またはそれ以上にわたって患者に皮下投与されてよい。
【0066】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、静脈内投与される。例えば、約10mg~約100mg(例えば、約10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、または100mg、例えば、約15mg、45mg、または90mg)が、例えば、1週に1回または2回、例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10週間、またはそれ以上にわたって患者に静脈内投与されてよい。
【0067】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、静脈内及び皮下投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、同時に、静脈内及び皮下投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、静脈内投与され、その後皮下投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、皮下投与され、その後静脈内投与される。例えば、医薬組成物は、例えば、負荷用量として、1回以上の用量で(例えば、単回投与で)で患者に静脈内投与され、その後に、例えば、維持用量(例えば、治療期間にわたって約1週に1回投与される各用量)で、1回以上患者に皮下投与されてよい。
【0068】
治療方法
HPPなどの骨石灰化障害患者の少なくとも1つの症状を治療または緩和するための方法を本明細書で提供する。骨折、骨粗鬆症、硬結性骨化症、軟骨石灰化症、筋緊張低下、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、気管気管支軟化症、発作、神経線維腫症1(NF-1)、及び頭蓋骨早期癒合症などのその他の疾患または障害も、本明細書に記載の組成物及び方法によって治療することができる。患者は、筋力低下を患っている場合がある。患者は、ピロリン酸カルシウム沈着(CPPD)または家族性低リン酸血症などの筋力低下疾患を患っている場合がある。このような治療は、アルカリホスファターゼ(例えば、アルカリホスファターゼを含有する医薬組成物)またはアルカリホスファターゼ活性のあるポリペプチドを、そのような患者における上昇したPPi濃度を低下させるために投与することを含み得る。例えば、可溶性アルカリホスファターゼ(sALP、例えば、配列番号5の配列を有するポリペプチド、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有するその多様体(例えば、配列番号1または配列番号5に比べて、変異E108M、N213Q、及びN286Qのうち1つ以上またはその全てを含むポリペプチド))は、新生児、乳児、小児、青年または成人に投与されてよい。
【0069】
患者は、アルカリホスファターゼまたはアルカリホスファターゼ活性のあるポリペプチド(例えば、sALP、例えば、配列番号5の配列を有するポリペプチド、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有するその多様体(例えば、配列番号1または配列番号5に比べて、変異E108M、N213Q、及びN286Qのうち1つ以上またはその全てを含むポリペプチド))の投与の前に、骨石灰化障害(例えば、HPP)であると診断されている場合がある。加えて、HPPなどの骨石灰化障害を患うか、またはその傾向のある患者は、それ以前にsALP(例えば、配列番号5の配列を有するポリペプチド、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有するその多様体(例えば、配列番号1または配列番号5に比べて、変異E108M、N213Q、及びN286Qのうち1つ以上またはその全てを含むポリペプチド))による治療を受けたことのない未治療の患者であり得る。
【0070】
疾患の1つ以上の症状が、患者の新生児、乳児、または小児期に初めて現れる場合がある。その他の実施形態では、疾患の1つ以上の症状が、患者の成人期に初めて現れる場合がある。いくつかの実施形態では、成人になる前に、疾患の検出可能な症状が患者に現れない。いくつかの実施形態では、成人になる前に、疾患の検出可能な症状が患者に現れるが、疾患状態が成人になるまで未診断のままである。
【0071】
方法は、アルカリホスファターゼまたはアルカリホスファターゼ活性のあるポリペプチド(例えば、sALP、例えば、配列番号5の配列を有するポリペプチド、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有するその多様体(例えば、配列番号1または配列番号5に比べて、変異E108M、N213Q、及びN286Qのうち1つ以上またはその全てを含むポリペプチド))を、HPPなどの骨石灰化障害を患うか、またはその傾向のある患者に、単回投与で、または一定の期間にわたる反復投与で投与することを含む。特に、配列番号5の配列を有するポリペプチドなどのsALPは、無機ピロリン酸(PPi)濃度が上昇しているか、またはHPP症状(例えば、筋力低下)に対する少なくとも1つの所定のバイオマーカー/スコア、例えば、10未満の平均BOT-2筋力スコア、5未満の平均BOT-2走行速度スコア及び敏捷性スコア、約0.8超の平均CHAQ指数スコア、及び/または約40未満の平均PODCIスコア、予測される6MWT値の約80%未満の平均6MWT、5未満の筋力グレード、及び/または、例えば、予測されるHHD値の約80%未満の平均HHD値(例えば、平均HHD筋力値または握力値)を有するとこれまでに判定された患者に投与することができる。例えば、sALPは、サンプル(例えば、血漿サンプル)中のPPiの濃度が、乳児または小児(例えば、年齢が約12歳以下の患者)の場合、約5.71μM超である;青年(例えば、年齢が約13歳~約18歳の患者)の場合、約4.78μM超である;または成人(例えば、年齢が約18歳を超える患者)の場合、約5.82μM超であると、これまでに判定された患者に投与することができる。その他の実施形態では、本明細書に記載のHPPなどの骨石灰化障害は、少なくとも1つのアルカリホスファターゼ基質(例えば、PPi、PLP、PEAなど)の濃度の上昇が原因である。あるいは、アルカリホスファターゼまたはアルカリホスファターゼ活性のあるポリペプチド(例えば、sALP、例えば、配列番号5の配列を有するポリペプチド、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有するその多様体(例えば、配列番号1または配列番号5に比べて、変異E108M、N213Q、及びN286Qのうち1つ以上またはその全てを含むポリペプチド))は、HPPなどの骨石灰化障害を患うか、またはその傾向のある患者に、筋力低下スコア(例えば、BOT-2筋力スコア、BOT-2走行速度スコア及び敏捷性スコア、CHAQ指数スコア、BSID-IIIスケールスコア、PDMS-2標準スコア、筋力スコア、6MWT値、及び/またはHHD値を用いる)の判定に先立って、投与することができる。本明細書に記載の方法に従ったALPによる治療は、例えば、ADLの活性の増加、疼痛の軽減、及び/または運動発達の向上を促進する。
【0072】
加えて、本明細書に記載のHPPなどの骨石灰化障害を患うか、またはその傾向のある患者の記載されるスコアのそれぞれ(例えば、BOT-2筋力スコア、BOT-2走行速度スコア及び敏捷性スコア、CHAQ指数スコア、BSID-IIIスケールスコア、PDMS-2標準スコア、6MWT、12-POMA-G、改変された移動能力指向型評価(mPOMA-G、Phillips et al.2015 Bone Abstracts 4:P136に例示されているもの)、またはHHD値)を単独で、または任意の組み合わせで使用して、sALP(例えば、配列番号5の配列を有するポリペプチド、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有するその多様体(例えば、配列番号1または配列番号5に比べて、変異E108M、N213Q、及びN286Qのうち1つ以上またはその全てを含むポリペプチド))を用いた治療の有効性を評価することができ、この際、特定のテストスコアと比較した改善により、sALPがHPPなどの骨石灰化障害の治療に対して有効であることが実証される。
【0073】
例えば、アルカリホスファターゼまたはアルカリホスファターゼ活性のあるポリペプチド(例えば、sALP、例えば、配列番号5の配列を有するポリペプチド、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有するその多様体(例えば、配列番号1または配列番号5に比べて、変異E108M、N213Q、及びN286Qのうち1つ以上またはその全てを含むポリペプチド))が、HPPなどの骨石灰化障害を患うか、またはその傾向のある患者に投与されて、結果としてBOT-2筋力スコアが平均で約10または約10超に増加し、この際、患者の平均BOT-2筋力スコアが以前は約10未満であった場合、アルカリホスファターゼまたはアルカリホスファターゼ活性のあるポリペプチドによる治療は、例えば、HPPなどの骨石灰化障害に関連する身体的機能障害の治療において有効である。あるいは、sALPの投与により、結果としてBOT-2筋力スコアが平均で約10または約10超に増加しない場合、アルカリホスファターゼまたはアルカリホスファターゼ活性のあるポリペプチドの投与の投与量及び/または頻度を変更して(例えば、無期限または短期間にわたって(例えば、1~6ヶ月、または最大1年以上にわたって)増加させて)、患者に対するアルカリホスファターゼまたはアルカリホスファターゼ活性のあるポリペプチドの有効量を判定することができる。例えば、sALP(例えば、配列番号5の配列を有するポリペプチド、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有するその多様体(例えば、配列番号1または配列番号5に比べて、変異E108M、N213Q、及びN286Qのうち1つ以上またはその全てを含むポリペプチド))の投与量は、例えば、約0.1~1mg/kg/週を約1~2m/kg/週に、約0.5~3mg/kg/週を約3~6mg/kg/週に、または約3~6mg/kg/週を約6~9mg/kg/週に増加させることができる。同様に、投与頻度も、例えば、約3週に1回を約2週に1回に、または約2週に1回を約1週に1回に増やすことができる。あるいは、本明細書に記載の測定基準のうち1つの改善が実現する場合、投与量及び/または投与頻度は、そのまま継続するか、または、例えば、約6~9mg/kg/週を約3~6mg/kg/週に、約3~6mg/kg/週を約0.5~3mg/kg/週に、または約0.5~3mg/kg/週を約0.1~1mg/kg/週に減らすことができる。同様に、投与頻度も、約1週に1回を約2週に1回に、または約2週に1回を約3週に1回に減らすこともできる。
【0074】
加えて、アルカリホスファターゼまたはアルカリホスファターゼ活性のあるポリペプチド(例えば、sALP、例えば、配列番号5の配列を有するポリペプチド、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有するその多様体(例えば、配列番号1または配列番号5に比べて、変異E108M、N213Q、及びN286Qのうち1つ以上またはその全てを含むポリペプチド))が、HPPなどの骨石灰化障害を患うか、またはその傾向のある患者に投与されて、結果として1つ以上の患者の筋力グレード分類の改善(例えば、以前の低い筋力グレードから1、2、3、4、または5の筋力グレードの改善)がもたらされ、この際、患者の平均筋力グレードが以前は約5未満であった場合、アルカリホスファターゼまたはアルカリホスファターゼ活性のあるポリペプチドによる治療は、例えば、HPPなどの骨石灰化障害に関連する身体的機能障害の治療において有効である。あるいは、sALPの投与により、結果として1つ以上の患者の筋力グレード分類が以前の低い筋力グレードから改善しない場合、アルカリホスファターゼまたはアルカリホスファターゼ活性のあるポリペプチドの投与の投与量及び/または頻度を変更して(例えば、増加させて)、患者に対するアルカリホスファターゼまたはアルカリホスファターゼ活性のあるポリペプチドの有効量を判定することができる。例えば、sALP(例えば、配列番号5の配列を有するポリペプチド、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有するその多様体(例えば、配列番号1または配列番号5に比べて、変異E108M、N213Q、及びN286Qのうち1つ以上またはその全てを含むポリペプチド))の投与量は、例えば、約0.1~1mg/kg/週を約1~2m/kg/週に、約0.5~3mg/kg/週を約3~6mg/kg/週に、または約3~6mg/kg/週を約6~9mg/kg/週に増加させることができる。同様に、投与頻度も、例えば、約3週に1回を約2週に1回に、または約2週に1回を約1週に1回に増やすことができる。あるいは、本明細書に記載の測定基準のうち1つの改善が実現する場合、投与量及び/または投与頻度は、そのまま継続するか、または、例えば、約6~9mg/kg/週を約3~6mg/kg/週に、約3~6mg/kg/週を約0.5~3mg/kg/週に、または約0.5~3mg/kg/週を約0.1~1mg/kg/週に減らすことができる。同様に、投与頻度も、約1週に1回を約2週に1回に、または約2週に1回を約3週に1回に減らすこともできる。
【0075】
薬物動態(PK)パラメータ
いくつかの実施形態では、本治療法により、患者の血液中で約50μg×時間/mL~約4000μg×時間/mLのAUC0-168hが生じる。例えば、本方法により、患者の血液中で約1000μg×時間/mL~約3000μg×時間/mLのAUC0-168hが生じ得る。いくつかの実施形態では、本治療法により、患者の血液中で約0.5μg/mL~約25μg/mLのCmaxが生じる。例えば、本治療法により、患者の血液中で約0.6μg/mL~約20μg/mLのCmaxが生じ得る。
【実施例
【0076】
本開示は、以下の非限定的実施例によって説明される。特定の例、物質、量、及び処置が、本明細書に記載する開示の範囲及び趣旨に従って広く解釈されることを理解すべきである。
【0077】
実施例1
ALP201は、ヒト組換えTNSALP-Fc-デカアスパラギン酸融合タンパク質である。これは、ヒトTNSALPの触媒ドメイン(SwissProt,P05186)、ヒト免疫グロブリン(Ig)G2/4Fcドメイン(SwissProt,P01859,P01861)(精製及び半減期延長のための)、及びデカアスパラギン酸ペプチド(骨を標的とするための)から作製された、724個のアミノ酸の2つのポリペプチド鎖で構成される可溶性糖タンパク質である。
【0078】
ALP201は、欠陥のあるアルカリホスファターゼ酵素を置き換えることによって、HPPなどの骨石灰化障害の根本的な原因に対処するためのERTである。ALP201は、小児発症HPP患者に対して唯一承認されている治療剤(商標名STRENSIQ(登録商標)で市販されている)である、同じくTNSALP-Fc-デカアスパラギン酸融合タンパク質ERTであるアスホターゼアルファと一部の構造が類似している。
【0079】
ALP201は、アスホターゼアルファと等価の効力を有し、かつアスホターゼアルファと比較して活性が改善された次世代HPP療法である。また、ALP201により、半減期が長くなり、α相クリアランスが減少し、かつバイオアベイラビリティが増加するため、曝露量が増加する。これらの改善された特性は、アスホターゼアルファに比べて、ALP201のより低い用量及びより長い投与間隔を裏付けている。患者の経験は、注射量及び投与頻度を減らすことにより向上すると予想され、これは、注射部位反応の低減にもつながる可能性がある。
【0080】
ALP201
物理的及び化学的特性
ALP201は、分子量が約160kDaの可溶性Fc融合タンパク質であり、かつ2つのジスルフィド結合によって共有結合した2つのポリペプチド鎖で構成される。ポリペプチド鎖のそれぞれは、724個のアミノ酸を含んでおり、かつ、3つのセグメントで構成される。
・ ポリペプチドのN末端領域であるアミノ酸L1-A491は、ヒト組織非特異アルカリホスファターゼ酵素の可溶性部分であり、触媒機能を有する酵素TNSALPを含む。それぞれのポリペプチド鎖の酵素領域内に、酵素活性を向上させるために単一の点変異(E108M)を導入し、プロセス改善のために2つのN結合型グリコシル化部位(N213Q及びN286Q)を除去した。
・ ポリペプチドの第2の部分であるアミノ酸V492-K714は、ヒンジ、CH2及びCH3ドメインを含むヒト免疫グロブリンガンマ2/4(IgG2/4)のFc部分を含む。
・ ポリペプチドのC末端領域であるアミノ酸D715-D724は、10個のアスパラギン酸を含む。このペプチド配列は、ALP201の骨の鉱物相への結合を促進する。
【0081】
ALP201のそれぞれのポリペプチド鎖は、4つのグリコシル化部位(N123、N254、N413、及びN564)、ならびに11個のシステイン(Cys)残基を含む。Cys102は、遊離システインとして存在する。それぞれのポリペプチド鎖は、Cys122からCys184の間、Cys472からCys480の間、Cys528からCys588の間、及びCys634からCys692の間に4つの鎖内ジスルフィド結合を含む。2つのポリペプチド鎖は、Cys494とCys494との間、及びCys497とCys497との間の2つの鎖間ジスルフィド結合によって連結している。これらの共有結合構造的特徴に加えて、哺乳動物アルカリホスファターゼは、一般に、それぞれのポリペプチド鎖に4つの金属結合部位(亜鉛に対する2つの部位、マグネシウムに対する1つの部位、及びカルシウムに対する1つの部位)を有している。
【0082】
ALP201の一般特性
ALP201の一般特性を表1に列挙する。理論上の化学式及び理論上の平均分子量を、2つのシステイン残基を除く全てがジスルフィド結合していると仮定して計算した。
【表1】
【0083】
医薬品
ALP201 100mg/mLバイアル
ALP201医薬品(100mg/mL)は、単回投与用2mLバイアルに入れられた、ALP201及び賦形剤を含む無菌の保存剤非含有の製剤液体溶液である。医薬品は、動物またはヒト由来のいずれの新規賦形剤(複数可)も含んでいない。各2mLバイアルは、通常、バイアルあたり100mgのALP201を送達するために1.2mL(過量充填)の医薬品を含有する。医薬品は、アルミニウムシール付きの13mmクロロブチル栓を備えた2mLのI型透明ガラスバイアルに充填される。ALP201医薬品の定量的組成物を表2に提示する。
【表2】
【0084】
インビボ試験
薬理学的特性、PK/毒物動態(TK)、局所忍容性、及び潜在的な全身毒性の特性を明らかにするために、インビボ試験を使用してALP201を評価した。実施した薬理試験には、ALP201の最小有効用量を特定するために、HPPマウス(Akp2GW(-/-)マウス)での反復投与試験を含めた。ALP201のPK特性を理解するために、マウス、ラット、及びサルで単回投与PK試験を実施した。毒性試験で、ラット及びサルへのSC ALP201の投与による全身毒性を評価し、これらの試験には、安全性薬理評価項目(サルの試験では心臓血管、呼吸器、及びラットの試験では神経系機能)、TK評価、及び治療に関連した影響の可逆性を評価するための回復期間を含めた。
【0085】
ヒトでのその使用を裏付ける、ALP201を用いて実施したインビボ試験の概要を表3に提示する。
【表3-1】

【表3-2】

【表3-3】

【表3-4】
【0086】
インビトロ薬理学的特性
ピロリン酸(PPi)は、TNSALPの重要な天然基質であり、HPP患者においてTNSALPレベルが低いと、循環PPi血中レベルが上昇する。上昇したピロリン酸レベルは、適切な骨石灰化を妨げ、HPP患者で観察される骨の異常な症状を引き起こす。したがって、PPiを、操作した第二世代アスホターゼアルファ分子によって、より高い酵素活性レベルで標的とする天然基質と見なした。
【0087】
ALP201及びアスホターゼアルファによるピロリン酸加水分解の基質飽和曲線を図1に示す。ALP201は、ピロリン酸に対して、アスホターゼアルファのKm値(53mM)と類似のKm値(47mM)を保持するが、ALP201は、極めて高い代謝回転数で機能する(ALP201はkcat=11,619min-1、それに対しアスホターゼアルファは6,714min-1)。ALP201及びアスホターゼアルファの野生型TNSALP触媒ドメインの類似のKm値は、ALP201が同等の血清アルカリホスファターゼ活性レベルで存在する場合、アスホターゼアルファよりも循環PPiレベルを危険なほど低下させる可能性は高くないことを示唆している。
【0088】
ピリドキシル-5‘-リン酸は、HPPと臨床的に関連するTNSALPの第2の天然基質である。TNSALPは、PLPを切断して、組織に最も容易に取り込まれるB6ビタマーであるピリドキサールを形成する。血清アルカリホスファターゼレベルが非常に低い場合、全身ビタミンB6代謝が損なわれる可能性がある。HPPでは、脳におけるPLP欠乏症は発作として現れ、またTNSALPによるPLP加水分解の全身欠乏は、一部のHPP患者が経験する、疼痛、筋力低下、及び筋緊張低下の一因となる可能性がある。したがって、HPPの治療のためにERTを使用することで、十分なPLP加水分解活性を得ることができる。
【0089】
ALP201及びアスホターゼアルファによるPLP加水分解の基質飽和曲線を図2に示す。ALP201は、PLPに対するKm値がアスホターゼアルファ(1.71mM)と比べて、わずかに弱い(2.76mM)が、ALP201は、極めて高い代謝回転数で機能し(ALP201はkcat=3,324min-1、それに対しアスホターゼアルファは2,623min-1)、結果として、2つの分子のPLP活性飽和曲線は非常に類似するものとなる。基質反応速度パラメータを表4に示す。
【表4】
【0090】
インビボ薬理学的特性
ヒトHPPの動物モデルであるAkp2GW(-/-)マウスを使用して、ALP201に対する前臨床有効性研試験を実施した。Akp2GW(-/-)マウスは、アスホターゼアルファの前臨床評価で先に使用したAkp2(-/-)マウスで使用のものと同じHPP誘導TNSALP変異を有している。Akp2GW(-/-)マウスの開発中にAlexionで行われた自然経過試験により、ホモ接合体TNSALP活性ノックアウトAkp2GW(-/-)マウスは、Akp2(-/-)マウスとほぼ同一の骨石灰化及び生存表現型を呈することが明らかとなっている(Akp2GW-NH-01-02)。
【0091】
Akp2GW(-/-)マウスモデルを使用したALP201の有効性を評価するのに使用した有効性試験では、生後1日目から35日目まで被験物質を皮下投与した。全ての試験で報告した結果には、全生存期間、体重増加率、36日目(または試験終了[EOS]前の場合は死亡時)の後肢の骨の骨石灰化、及びEOSトラフ血漿中酵素活性レベルを含めた(1日1回[qd]及び1週に1回[q1w]投与群では36日目、及び2日に1回[q2d]投与群では37日目に記録した)。一部の試験では、EOSの大腿骨及び脛骨の長さ、ならびにマウスの大腿骨のアルカリホスファターゼ活性を決定した。
【0092】
Akp2(-/-)マウスを使用した以前の試験では、アスホターゼアルファは、被験物質の特異的活性に応じて、アスホターゼアルファの活性調製物に対して7~10mg/kg/日の用量で、骨石灰化及び全生存期間試験評価項目の両方で有効性を示した。アスホターゼアルファの推定最小有効用量(MED)を、試験の終了までに、または試験の終了の前に死亡した場合は死亡時に、群内の測定可能なマウスの85%が正常な骨石灰化スコアを得る結果となった用量として定義した。有効性データの分析では、被験物質の特異的活性に応じて、この値はおよそ2.0~2.5mg/kg/日であった。
【0093】
HPPのマウスモデルにおけるALP201の有効性を、Akp2GW(-/-)マウスで、2つの反復投与試験で、様々なSC用量及び投与間隔でテストした。これらの試験では、ALP201の有効性を、アスホターゼアルファのSC投与を毎日行った陽性対照群で観察された有効性と比較した。
【0094】
以前の試験では、qd投与スケジュールで9.8mg/kg/日の最大有効用量で、SC投与によってアスホターゼアルファを投与した。ALP201の等価の4-MUP活性用量をPBS中で、qd、q2d、及びq1w投与間隔でSC投与によって投与した。1つの投与群では、25日目のマウスの離乳後、ALP201の用量を対数的に半分まで減少させた。qdのスケジュールでのPBSの皮下投与を、陰性対照として使用した。これらの投与群の一覧は、表5で確認することができる。
【0095】
HPP-MED-01の試験では、qd投与スケジュールで2.5mg/kg/日の最小有効用量で、SC投与によってアスホターゼアルファを投与した。ALP201を、q2dの投与スケジュールで、2.0、0.8、0.3、及び0.15mg/kgの用量で、PBS中で皮下投与した。q2dのスケジュールでのPBSの皮下投与を、陰性対照として使用した。これらの投与群の一覧は、表5で確認することができる。
【表5】
【0096】
骨石灰化の結果
治療したAkp2GW(-/-)マウスの後肢のX線分析によって、36/37日目の骨石灰化の結果を決定した。後肢の骨石灰化のX線可視化物を、4つの分類カテゴリー、すなわち、影響なし、軽度の欠損、中程度の欠損、及び重度の欠損を例示する36日目の基準X線画像と比較した。これらの分類の詳細な説明は、表6で確認することができる。盲検化された個人がマウスごとの画像にスコアを割り当て、完了後、個々の投与群内でスコアを集計した。
【表6】

投与群ごとの観察されたEOSの後肢の骨石灰化指標スコアの分布は、表7で確認することができる。
【表7】
【0097】
ALP201によるAkp2GW(-/-)マウスの治療は、Q2Dの投与間隔でALP201用量が増加するにつれて無影響の後肢の骨石灰化を有するマウスの割合が増加するといった用量反応を示した。全てのALP201投与群は、PBS治療Akp2GW(-/-)対照と比較して、統計的に有意な改善を示した(1元配置ANOVA分析でp<0.001)。これらのデータを使用して、モデルベースの分析を通知し、ヒト用量見込みを予測した。
【0098】
試験終了時のトラフ血漿中活性酵素濃度の結果
トラフ血漿中活性TNSALP酵素濃度を、36/37日目の血漿サンプル中のTNSALP活性レベルを測定することによって決定した。測定したTNSALP活性を、既知の酵素活性及び濃度の標準曲線に適合させて、血漿の単位容積あたりの活性酵素レベルを定量化した。EOSトラフ血漿中活性酵素濃度の分布を図3に示す。投与群ごとの平均EOSトラフ血漿中活性酵素濃度の一覧の概要を表8に示す。
【表8-1】

【表8-2】
【0099】
治療したAkp2GW(-/-)マウスにおける反復投与後のEOSトラフ血漿中活性酵素及び対応する酵素活性レベルの分析は、アスホターゼアルファと比較すると、ALP201の絶対蓄積及び用量正規化した蓄積がより大きいことを明確に示しており、これはおそらくSC投与後のALP201の優れたPKプロファイルによるものである。
【0100】
36/37日目の治療したAkp2GW(-/-)マウスの試験終了時の骨酵素活性レベル
治療したAkp2GW(-/-)マウス大腿骨組織におけるアルカリホスファターゼ活性レベルを、4-MUPを基質として使用してHPP-MED-01試験終了時にエクスビボアッセイで決定した。このアッセイでは、依然として高レベルのALP201またはアスホターゼアルファを保持している可能性のある血液または血流量の多い組織による潜在的な汚染を避けるために、活性について、大腿骨の石灰化した部分のみをアッセイした。治療したAkp2GW(-/-)マウス大腿骨に付随する酵素活性レベルの分布を図4に示す。ここで、データは、石灰化した大腿骨組織1mgあたりの4-MUP加水分解活性をマイクロ単位で示している。
【表9】
【0101】
骨活性データは、ALP201用量が増加するにつれてEOS骨組織活性レベルが増加するといった用量反応を示した。試験終了時、ALP201の0.15mg/kgのq2d群のマウスは、野生型アルカリホスファターゼ活性が22.6%回復したのに対し、アスホターゼアルファの2.5mg/kgのqd群では26.9%であった。0.3、0.8、及び2.0mg/kgのq2dのALP201投与により、野生型活性がそれぞれ34.4%、37.6%、及び44.9%回復した。0.8及び2.0mg/kgのq2dのALP201用量間における試験終了時の骨活性レベルの差は、アスホターゼアルファの2.5mg/kgのq2d群と比較して、1元配置ANOVAで分析した場合に、調整されたp値がそれぞれ0.0048及び<0.0001で統計的に有意であった。
【0102】
治療したAkp2GW(-/-)マウスの生存結果
PBSで治療した全てのAkp2GW(-/-)は、試験の26日目またはその前に死亡し、生存時間の中央値は20日であった。Akp2GW(-/-)マウスへのALP201による治療は、PBS溶媒対照と比較して、全ての投与群において36日の生存率が有意に改善した(図5及び表10)。全てのALP201投与群は、EOS生存率が少なくとも69%に達し、用量が0.15mg/kg/日を超える全てのqd及びq2d間隔投与群で全生存率が88%以上であった。ALP201の4.8mg/kgのq1w群及びアスホターゼアルファの9.8mg/kgのqd群の生存曲線は、非常に類似する結果を示した。
【表10】
【0103】
体重の結果
ALP201及びアスホターゼアルファで治療したAkp2GW(-/-)マウスの平均体重は、全ての群において、PBSで治療したその野生型同腹仔の平均体重よりも一貫して低かった。全てのALP201投与群の試験終了時の体重は、アスホターゼアルファ投与群と統計的な差はなかった。
【0104】
安全性薬理学的特性
ALP201に対して、独立した安全性薬理学的特性試験は実施しなかった。しかし、心臓血管、呼吸器、及び血圧の評価項目を、中心的なGLPに準拠したサル毒性試験の一部として測定し、神経系機能評価項目を、ラットGLP毒性試験の一部として評価した。ALP201治療により低用量群でのみ心拍数が上がる結果(対照群と比較して28%)となり、それに伴い、RR、PR、QT間隔が減少したが、QRS期間の目立った変化はなかった。中用量及び高用量群では、生物学的に意味のある変化は観察されなかった。したがって、心拍数のわずかな増加とALP201用量との間には用量-応答関係はなかった。心拍数の増加の程度はわずかであったため、これらの所見は有害でないと考えられる。さらに、本試験で評価した最高濃度の20mg/kgまで、3日に1回28日間のSC投与後、サルで評価したECG、血圧、または呼吸器パラメータにALP201に関連する所見は見られなかった。ALP201は、本試験で評価した最高濃度の30mg/kgまで、3日に1回28日間のSC投与後、ラットにおいて行動指標または運動活性に影響を及ぼさなかった。
【0105】
動物における薬物動態及び薬物代謝
マウス、ラット、及びサルで単回投与PK試験を実施した。これらの試験からのデータを使用して、前臨床種におけるALP201の動態(吸収、分布、及び排出)を評価した。
【0106】
吸収
ALP201のPKをSprague-Dawleyラット及びカニクイザルで評価した。ALP201の単回用量投与及び反復用量投与後の非GLP及びGLP試験の概要を、本明細書に提示する。
【0107】
平均バイオアベイラビリティは、マウス、ラット、及びサルで、それぞれ96%、58%、及び78%であった。最高濃度に到達するまでの時間(tmax)は、投与後17~48時間の範囲であり、これは、SC注射部位からのALP201の吸収が遅いことを示唆している。
【0108】
分布
マウス、ラット、及びサルへの単回静脈内投与後、ALP201の見かけの分布容積は、0.08~0.15L/kgの範囲であった。この値は、これらの種における血漿量よりもはるかに大きく(>2倍)、これはALP201が血管内区画を超えて分布することを示唆している。
【0109】
単回投与試験における薬物動態
雄C57BL/6マウスにおける単回投与によるPK(試験HPP-PK-01)
雄C57BL/6マウスへの単回用量IVまたはSC投与後、ALP201のPKを評価した。4mg/kgの用量でALP201の単回IVまたはSC投与を16匹の動物に行った。投与経路ごとに、マウスをそれぞれ4匹ずつの4つのサンプル採取コホートにランダムに細分した。半連続サンプル採取デザインを使用して、投与後最長20日まで血液サンプルを採取した。ALP201のPKパラメータの概要を表11に示す。
【表11】
【0110】
IV投与後、濃度-時間プロファイルは、多次指数関数的に減少した。CLは、0.0019L/h/kgであり、見かけの終末相t1/2は、48時間であった(表11)。Vは、0.13L/kgであり、これは、血管内空間を超えたALP201分布を示すマウスの血漿量よりも大きい。SC投与後、最高濃度に到達するまでの時間(tmax)は、投与後48時間であった。これは、SC注射部位からの吸収が比較的遅いことを示唆している。SC投与後の絶対バイオアベイラビリティは96%であった。
【0111】
ラットにおける単回投与PK試験
ラットへの単回IVまたはSC投与後、ALP201のPKを評価した。ALP201の単回IVまたはSC漸増投与(1、3、9、もしくは27mg/kgの用量でのIVボーラス、または2もしくは27mg/kgの用量でのSC)を4匹の動物(性別/用量あたり2匹)に行った。ALP201血漿中濃度は、投与後最大28日間にわたって定量可能であった。ALP201のPKパラメータでは明らかな性特異的差は観察されなかったため、プールした性別値を提示する。ALP201のPKパラメータの記述統計を、プールした性別群ごとに表12に要約する。ALP201平均血漿中濃度対時間プロファイルを図14に示す。比較できるように、アスホターゼアルファの背景データが追加されていることに留意されたい。
【表12】
【0112】
IV投与の場合、ALP201のPK曝露量(Cmax及びAUC)は、試験用量範囲の1mg/kg~27mg/kgで、用量比よりもわずかに下回る形で増加した。ALP201の平均CL及びVは、用量全体にわたって一貫したままであった。平均CL値は、0.0012~0.0019L/h/kgの範囲であり、平均V値は、0.12~0.15L/kgの範囲であった。同様に、IV用量全体にわたって比較的類似したままのALP201のt1/2は、平均して約2日であった。SC投与の場合、CL/F、V/F、及びt1/2値は、異常値と思われる27mg/kgのSC投与群を除いて、IV投与から推定したものと同様であった。平均tmaxは、投与後30~48時間の範囲であった。これは、SC注射部位からの吸収が比較的遅いことを示唆している。SC投与後の絶対バイオアベイラビリティは、2及び27mg/kg用量でそれぞれ61%及び54%であった。
【0113】
サルにおける単回投与PK試験
サルへの単回IVまたはSC投与後、ALP201のPKを評価した。ALP201の単回IVまたはSC漸増投与(2、6、もしくは20mg/kgの用量でのIVボーラス、または2もしくは20mg/kgの用量でのSC)を3匹の雄サルに行った。ALP201血漿中濃度は、投与後最大28日間にわたって定量可能であった。ALP201のPKパラメータの記述統計を、表13に要約する。ALP201平均血漿中濃度対時間プロファイルを図15に示す。比較できるように、アスホターゼアルファの背景データが追加されていることに留意されたい。
【表13】
【0114】
IV投与の場合、Cmax及びAUC値の上昇は、試験用量範囲の2mg/kg~20mg/kgで、用量比に近かった。ALP201のCL及びVは、用量全体にわたって一貫したままであり、平均CL値は0.0008~0.0011L/h/kgの範囲であり、平均V値は、0.08~0.10L/kgの範囲であった。同様に、用量全体にわたって比較的類似したままのALP201のt1/2は、平均して約3日であった。SC投与の場合、平均CL/F、V/F、及びt1/2値は、IV投与後に推定したものと一致するものであった。平均tmaxは、投与後17~19時間の範囲であった。これは、SC注射部位からの吸収が比較的遅いことを示唆している。絶対バイオアベイラビリティは、2mg/kg及び20mg/kg用量でそれぞれ69.6%及び86.9%であった。
【0115】
ALP201を用いた反復投与毒物動態試験
ラットへの4週間のSC投与(1727-227):2、10、または30mg/kg/用量で、3日に1回で4週間ALP201をラットにSC投与した。加えて、IV及びSC経路バイオアベイラビリティを比較するために、10mg/kgの単回投与でALP201をラットに静脈内投与した。ノンコンパートメント解析を使用して、0日目及び24日目の投与後のALP201複合血漿中濃度に基づいて計算した薬物動態パラメータを、表14に示す。
【0116】
ALP201の全身曝露量は、0日目及び24日目におけるALP201のSC投与後、ならびに0日目におけるALP201の単回IVボーラス注射後、性別とは無関係であるように見えた。3日に1回のALP201のSC投与後、0日目及び24日目におけるALP201のCmax及びAUC0-72h値は、用量比よりもわずかに下回る形で用量の増加に伴い増加した。ALP201の全身曝露量(AUC0-72h)は、反復SC投与後、減少するように見えた。曝露量の減少は用量に依存するように見え、30mg/kgのALP201の反復SC投与後の最大減少は最大2倍であった。ALP201の皮下バイオアベイラビリティ(10mg/kgでのAUC0-72h値に基づく)は、およそ44.2%であった。
【表14-1】


【表14-2】
【0117】
サルへの4週間のSC投与:1、5、または20mg/kg/用量で、3日に1回4週間、ALP201をサルにSC投与した。1日目及び24日目の投与後のALP201血漿中濃度に基づいてノンコンパートメント解析を使用して計算したPKパラメータを、表15に示す。
【表15】
【0118】
ALP201の全身曝露量は、0日目及び24日目におけるALP201のSC投与後、性別とは無関係であるように見えた。3日に1回のALP201の皮下投与後、0日目及び24日目におけるALP201のCmax及びAUC0-72h値は、ほぼ用量比で用量の増加に伴い増加した。ALP201の全身曝露量(AUC0-72h値)は、24日目のALP201の反復皮下投与後、増加するように見えた。
【0119】
反復投与試験における薬物動態、薬力学的動態、及び免疫原性
28日間の回復期間を伴うラットでの28日間毒性試験
雄及び雌ラットで、ALP201のTK/ADAを、3日に1回で4週間(合計10回の投与)の2、10、または30mg/kgのSC投与(10/性別/投与群、5/性別/時点)、及び10mg/kgの単回IV投与(合計1回の投与)後に評価した。TK分析用の血液サンプルを0日目及び24日目に開始して72時間にわたって全ての動物から採取した。ALP201のPKパラメータの概要を表16に示す。
【表16】
【0120】
ALP201の全身曝露量は、ALP201の反復SC投与後、及びALP201の単回IVボーラス注射後、性別とは無関係であるように見えた。したがって、表16には、プールした性別の結果を含めた。3日に1回(q3d)のALP201のSC投与後、0日目及び24日目におけるALP201曝露量(Cmax及びAUC72h)は、用量比よりもわずかに下回る形で用量の増加に伴い増加した。24日目の全身曝露量(Cmax及びAUC72h)は、反復SC投与後、減少するように見えた。曝露量の減少は用量に依存するように見え、30mg/kgのALP201の反復SC投与後の最大減少は最大60%であった。ALP201の皮下バイオアベイラビリティは、およそ44.2%であった。
【0121】
ADA応答は、全ての投与前サンプルで陰性であった。ADAの発生率は、D28及びD56の投与後ADAサンプルに対して、それぞれ58%及び90%であった。30mg/kgの投与の24日目における曝露量の減少(60%)は、免疫原性応答によるものであったと考えられる。
【0122】
28日間の回復期間を伴うサルでの28日間毒性試験
雄及び雌サルで、ALP201のTK/ADAを、3日に1回で4週間(合計10回の投与)、1、5、または20mg/kgでSC投与後(5/性別/投与群)、評価した。TK分析の血液サンプルを0日目及び24日目に採取した。ALP201のPKパラメータの記述統計を、表17に要約する。
【表17】
【0123】
0日目及び24日目におけるALP201の全身曝露量の性差はなかった。したがって、表17には、プールした性別の結果を含めた。3日に1回のALP201の皮下投与後、0日目及び24日目におけるALP201(Cmax及びAUC72h)は、ほぼ用量比で用量の増加に伴い増加した。ALP201の全身曝露量(AUC72h値)は、24日目のALP201の反復皮下投与後、増加するように見え、平均蓄積AUC72h率は、1、5、及び20mg/kgで、それぞれ2.12、1.83、及び2.15であった。
【0124】
ADA応答は投与前サンプルでは陰性であった。ADAの発生率は、D28及びD56の投与後ADAサンプルに対して、それぞれ23%及び92%であった。反復投与後、ADAサンプルをTK採取日にサンプル採取しなかったため、陽性ADA応答と全身曝露の濃度-時間プロファイルとの間に直接的な相関関係が起こることはなかったが、≦5mg/kgでの一部の動物における異常な濃度-時間プロファイルは、抗ALP201抗体による影響を受けたように見えた。
【0125】
モデルベース分析及び予測されるヒト用量レジメン
ALP201モデリング
母集団薬物動態(Pop-PK)モデル
マウス用量-応答結果からヒトにおけるALP201曝露量を予測するために、体重ベースの相対成長スケーリングを使用し、かつマウス、ラット、及びサルPKデータをプーリングして、ヒトPKパラメータ推定を予測するPop-PKモデルを開発した。マウスPKデータには、単回投与野生型マウス試験(HPP-PK-01)及び2回の反復投与Akp2GW(-/-)マウス有効性試験(HPP-PoC-01及びHPP-MED-01)による単一のCトラフ測定値(D36/D37)を含めた。ラット及びサルについては、単回投与、ラット及びカニクイザルでの用量範囲決定試験、ならびにラット及びカニクイザルでの反復投与による4週間のGLP毒性試験も含めた。
【0126】
相対成長原理を用いて体重差を考慮して、3種の動物種からIV及びSCのPKデータを同時に分析するNONMEMソフトウエアプログラム、バージョン7.2(ICON solutions)を使用して、現在のPop-PKモデルを開発した。ここで、動物の体重は、70kgを中心とし、相対成長指数は、クリアランスパラメータに対しては0.75、分布容積パラメータに対しては、1.0に固定した。PKに対するADAの影響を、4週間のTKに基づいてCLで評価し、ラット、及び程度は低いがサルでは、ADA+動物のALP201濃度が低下するように見えた。現在の最良のPop-PKモデルは、線形性の消失を伴う2コンパートメントモデルである。ALP201濃度に対するADA+の影響のテストは不確定であった。ヒトにおける推定バイオアベイラビリティは、約75%であり、ヒトに対して計算した有効半減期は、7~9日であった。ヒトPKシミュレーションでは、ヒトアスホターゼアルファPop-PKモデルから推定した変動性、及びHPPに対する治療法としてアスホターゼアルファを評価する臨床試験に参加したHPP患者の平均(及び標準偏差)成人ベースライン体重を使用した。
【0127】
用量-応答モデル
maxファミリーのモデルをテストすることによって、開発用量-応答モデルを選択した。ほとんどの用量-応答関係は、Emaxモデルパラメータ化の1つによって説明することができる。現在の最良の用量-応答特性評価は、Emax+E(ベースライン)モデルを使用するものである。有効性評価項目である骨石灰化は、X線撮影による評価であり、これは、非臨床用量-応答評価で使用されるアスホターゼアルファの有効性の臨床的定義と同じであるため、選択した。2つの有効性試験(HPP-PoC-01及びHPP-MED-01)に基づくアスホターゼアルファまたはALP201による治療後の骨石灰化を、用量に対してプロットした(図6)。以前の有効性試験からのアスホターゼアルファデータを、比較のために含めた。y軸は、骨石灰化スコアが4の投与群におけるマウスの割合として定義された正常値%を表している。x軸は、mg/kg/日に正規化した用量を表している。治療済み母集団(ED85)の85%に正常な石灰化をもたらす用量を、目標有効用量として選択した。
【0128】
マウスからヒトへの用量換算及びヒトの開始用量の提案
相対成長スケーリングをマウスの目標有効用量(ED85)に適用して、ヒトへの用量を決定した。マウスED85からヒト等価用量(HED、mg/kg/日)を予測するために使用した式は、ED85×(0.025kgマウス/70kgヒト)0.25であった。HEDを換算すると、45mg/週の毎週の一定用量であった。これを、FIH試験コホート2(IV及びSCの両方)に対する用量として使用する。コホート3(IV及びSC)には、90mg/週を使用する。コホート1には、15mg/週のNOAELベースの開始用量を(IV及びSCの両方で)使用する。
【0129】
ALP201の予測ヒト曝露量及びPK安全域
Pop-PKモデルを使用して、ヒトに対して、相対成長に基づいて調整した用量に基づいて詳細なPKプロファイルをシミュレートした(図7)。シミュレートしたPKデータを使用して、曝露量測定基準Cmax及びAUCを計算した。
【0130】
提案するFIH ALP201用量に対する予測ヒト曝露量(Cmax及びAUC168h)及び予想PK安全域を表18に示す。提案するFIH ALP201用量に対するPK安全域は、予測ヒト曝露量及び4週間のGLPサル毒性試験からの観察NOAEL曝露量(20mg/kg/Q3DのSC投与でのNOAEL用量)を使用して計算した。
【表18】
【0131】
毒性試験
非臨床安全性試験をラット及びサルで実施して、最大28日間にわたるALP201のSC投与後の、局所忍容性、全身毒性、及び安全性薬理パラメータを評価した。また、SC ALP201のバイオアベイラビリティの特性を明らかにするために、ALP201の単回投与IV投与の非臨床安全性評価もラットの28日間毒性試験で評価した。
【0132】
単回投与毒性試験
ALP201に対する独立した単回投与忍容性試験は実施しなかった。しかし、ラット及びサルにおけるALP201忍容性を、単回投与PK試験の一部として評価した。ALP201の忍容性を、注射部位反応及び臨床病理学データを含む臨床観察によって評価した。ラットまたはサル単回投与PK試験では、注目すべきALP201に関連する注射部位反応、臨床観察結果、及び臨床病理学的観察結果は見られなかった。要約すると、ALP201の単回投与は、ラットに最大27mg/kg、及びサルに最大20mg/kgをIVまたはSCを介して投与した場合、忍容性が良好であった。ALP201反復用量確定(GLP)毒性試験の用量を、得られた忍容性及び臨床病理学データに基づいて選択した。
【0133】
反復投与毒性試験
確定的またはGLPに準拠した28日間毒性試験を、Sprague-Dawleyラット及びカニクイザルで実施した。ラットの28日間毒性試験では、雄及び雌CD(登録商標)ラットへの3日に1回28日間(1、4、7、10、13、16、19、22、25、及び28日目)合計10回の投与の皮下注射を介したALP201の投与は、本試験で評価した最高SC用量である30mg/kg/用量まで忍容性が良好であった。加えて、10mg/kgのALP201のIV投与もまた、単回注射後、忍容性が良好であった。臨床観察、体重、体重増加量、定量的食物摂取量、眼科的検査、機能観察総合評価、血液学的検査、尿検査、肉眼所見、及び臓器重量においてALP201に関連する変化は見られなかった。投与段階の終了時に、≧2mg/kg/用量のALP201のSCで、アルカリホスファターゼ(ALP)活性に用量関連増加(予想薬理学効果)が見られたが、28日間の回復期間後、完全に回復した。非有害な微視的変化は、流入領域リンパ節の反応性変化を伴う注射治療に関連するものであった。注射部位または流入領域リンパ節で、発症率、重症度、または変化の微視的特徴の認識可能なALP201に関連する変化は見られなかった。回復群の動物ではそれほど顕著ではなかったが、回復動物の注射部位及び流入領域リンパ節の微視的変化は、終末時剖検動物で示されたものと類似していた。結論として、皮下投与では、30mg/kg/用量の用量レベルが、無毒性量(NOAEL)であると考えられ、これは、24日目の雄及び雌を組み合わせた、43.9μg/mLのCmax値、及び2120hr*μg/mLのAUC0-72hr値に相当する。
【0134】
ラットへの10mg/kgのALP2-1の単回IVボーラス注射後、AUC0-72hrは、3690h*μg/mLであった。ラットにおけるALP201のSCバイオアベイラビリティ(10mg/kg/用量でのSCのAUC0-72hr値に基づく)は、およそ44.2%であった。
【0135】
サルの28日間毒性試験では、1mg/kg、5mg/kg、または20mg/kgの用量での雄及び雌カニクイザルへの3日に1回28日間(1、4、7、10、13、16、19、22、25、及び28日目、合計10回)のSC注射を介したALP201の投与は、本試験で評価した最高用量である20mg/kg/用量まで忍容性が良好であった。注射部位反応(皮膚スコアリング)、体重、体重増加量、定性的食物摂取、眼科的検査、用手呼吸率、間接血圧、定性的心電図検査、血液学的検査、尿検査、肉眼所見、及び臓器重量においてALP201に関連する変化は見られなかった。投与段階の終了時に、アルカリホスファターゼ(ALP)活性に用量関連増加(予想薬理学効果)が見られたが、28日間の回復期間後、完全に(1mg/kg/用量の場合)、またはほぼ(≧5mg/kg/用量の場合)回復した。非有害なALP201に関連する微視的変化は、注射部位に限られ、軽微ないし軽度の変性/壊死、石灰化、及び混合細胞炎症/浸潤が見られた。注射部位(複数可)の変性/壊死の部分的な回復及び混合細胞炎症/浸潤が、回復群で観察されたが、軽微ないし軽度の石灰化が、回復雄では≧1mg/kg/用量で、かつ雌では20mg/kg/用量で見られた。全ての動物で1mg/kg/用量で、かつ一部の動物では≧5mg/kg/用量で心拍数の増加が観察された。これらの心拍数の増加は、全身曝露量データの不一致に加え、心拍数及びECG値がこの年齢のサルの生物学的変動の正常範囲内に留まっていたため、有害ではないと考えられる。結論として、20mg/kg/用量の用量レベルが、無毒性量(NOAEL)であると考えられ、これは、24日目の雄及び雌を組み合わせた、それぞれ、254μg/mLのCmax値、及び15400hr*μg/mLの平均AUC0-72hr値に相当する。
【0136】
局所忍容性試験
局所忍容性を評価するために、独立した非臨床試験は実施しなかった。ただし、注射部位の評価は、ラット及びサルの一般毒性試験でのSC ALP201、及びラットの一般毒性試験でのIV ALP201で実施した。ALP201の皮下及びIV投与では、注射部位で観察される有害な所見は見られず、サルでは局所的に忍容性が良好であった。
【0137】
ALP201の臨床試験に関連する非臨床観察結果の概要
安全性評価
臨床観察、体重、体重増加量、定量的食物摂取量、眼科的検査、機能観察総合評価(CNS)観察結果、心臓血管評価項目、呼吸器評価項目、血液学的検査、尿検査、肉眼所見、及び臓器重量28日間毒性試験においてALP201に関連する変化は見られなかった。投与段階の終了時に、ラットまたはサルで、アルカリホスファターゼ(ALP)活性に、予想薬理学効果である有意な用量関連増加が見られた。対応する試験で評価したいずれの用量においても、ラットまたはサルで、注目すべき全身臓器毒性は観察されなかった。
【0138】
ラット及びサルへのSC投与後、ALP201は、局所的に忍容性が良好であった。サル試験における非有害なALP201に関連する微視的変化は、注射部位に限られ、雄及び雌で軽微ないし軽度の変性/壊死が見られた。注射部位(複数可)の変性/壊死及び混合細胞炎症/浸潤は、回復群では発症率及び重症度が低かったか、慢性化(石灰化)の特徴があり、部分的な回復を示した。ラット試験における非有害な微視的変化は、流入領域リンパ節の反応性変化を伴う注射治療に限ったものであった。注射部位または流入領域リンパ節で、発症率、重症度、または変化の微視的特徴の認識可能なALP201に関連する変化は見られなかった。回復群の動物ではそれほど顕著ではなかったが、回復動物の注射部位及び流入領域リンパ節の微視的変化は、終末時剖検動物で示されたものと類似していた。
【0139】
GLP SCサル毒性試験に基づく20mg/kg/用量でのNOAELの観察された曝露量は、15mgのIVの提案したヒト開始単回投与または15mgのqw×3SCの予測AUC曝露量よりもおよそ113倍(IVの場合)、及び83倍(SCの場合)高かった(表18)。ALP201を用いた28日間ラット及びサル毒性試験での、安全域、及び全身毒性の欠如、もしくは局所忍容性所見を考えると、15mgの開始用量に対するヒトへの安全性リスクは非常に低いものである。
【0140】
免疫原性
ALP201の免疫原性の可能性を、GLPラット及びサルの28日間毒性試験から採取した血清におけるALP201抗薬物抗体(ADA)を測定することによって評価した。
【0141】
ラット毒性試験において、PK28日目に、対照群の動物20匹中9匹(雄6匹、雌3匹)、2mg/kg/用量での動物19匹中10匹(雄6匹、雌4匹)、10mg/kg/用量での動物20匹中12匹(雄7匹、雌5匹)、30mg/kg/用量での動物20匹中12匹(雄6匹、雌6匹)で、SC投与によるADA応答が陽性であった。さらに、PK28日目に、動物20匹中14匹(雄8匹;雌6匹)において、10mg/kgの単回投与IV ALP201投与で、ADA応答が陽性であった。24日目の30mg/kg/用量の全身曝露量の明らかな減少にADAが寄与した可能性があるが、陽性ADA応答は、24日目に、2及び10mg/kg/用量SC投与群の複合血漿中濃度-時間プロファイルに一貫して影響を与えないように見えた。実施した調査によれば、対照動物での陽性ADA応答は、ALP201の誤用量が原因である可能性は低い。ALP201の予想薬理学的効果であるALPの用量依存的な増加が、終末時剖検前に≧2mg/kgSC投与群で観察されたが、これは回復期剖検時に回復した。対照群の動物のALP結果は、終末時剖検前及び回復期剖検前の両方で類似していた。さらに、投与及び回復段階でのALP201に関連する生存中の所見はなかった。したがって、総合すると、PK28及び56日目(試験日の29日目及び57日目)に対照動物で観察されたADA陽性応答は、主に採血時の汚染が原因である可能性が高く、試験に影響を与ないと考えられる。
【0142】
サルの毒性試験では、抗ALP201抗体応答は、0日目の全ての投与前サンプルで陰性であった。ADA応答は、28日目に、1mg/kg/用量での動物10匹中4匹、5mg/kg/用量での動物10匹中6匹、及び20mg/kg/用量での動物10匹中5匹で陽性であった。反復投与後、ADAサンプルをTK採取日にサンプル採取しなかったため、陽性ADA応答と全身曝露の濃度-時間プロファイルとの間に直接的な相関関係が起こることはなかったが、≦5mg/kgでの一部の動物の濃度-時間プロファイルは、抗ALP201抗体による影響を受けたように見えた。抗ALP201抗体によって影響を受けた動物は、1mg/kg/用量で動物3匹(雄2匹及び雌1匹)、及び5mg/kg/用量で動物3匹(雌3匹)であり、これらの動物に関して、濃度-時間プロファイルに影響を与えた日は、18日目~の24日目の範囲であった。
【0143】
実施例2
複数の種におけるアスホターゼアルファの薬物動態プロファイルは、絶対バイオアベイラビリティ及び半減期の低下の組み合わせにより、頻繁な投与が必要であることを示唆している。ヒトTNSALPの触媒ドメインは、高度にグリコシル化した分子である。非シアル化グリカンの存在により、肝臓でアシアロ糖タンパク受容体(ASGPR)を介したクリアランスが起こる。
【0144】
これらの考慮事項を念頭に置いて、ALP201を次世代アルカリホスファターゼERTとして開発した。ALP201は、アスホターゼアルファで使用されているTNSALP-IgG-Fc-D10構造を保持し、かつ2つの非必須のN結合型グリカンの除去、ヒトFcアイソタイプのIgG2/4への変更、及び分子の発現における多数のプロセスの改善を組み込んでおり、それにより、より高いTSACの取り込み量がもたらされる。この報告では、静脈内及び皮下投与による雄C57BL/6マウスの単回投与試験で判定したALP201の薬物動態パラメータを提示する。また、どのPKパラメータが非シアル化グリカンのクリアランスによって最も強く影響を受けたかを決定するのを助けるために、様々なレベルのTSACの取り込み量で発現させて、精製したALP201の複数のロットのPKパラメータについても報告する。
【0145】
材料及び方法
動物系統
これらの試験と、アスホターゼアルファに対して実施した以前の薬物動態試験との一貫性を維持するために、本試験は、投与時に約11~12週齢の雄C57BL/6マウスを使用して実施した。テスト分子の情報を表19に示す。
【表19】
【0146】
動物への投与及び血液サンプル採取
11~12週齢の動物を、体重によってランダム化し、4つの群に割り当てた。ALP201の4mg/kgの用量を、0日目に静脈内送達(IV)(群1)または皮下(SC)(群2)によって16匹のマウス/群に投与した。当量調整した容積のPBSを、0日目に、IV(群3)またはSC(群4)によって4匹のマウス/群に投与した。尾静脈を介してIV投与を行った。肩上部の肩甲部にSCボーラス投与を行った。
【0147】
グループごとに4つのコホート、コホートごとにn=4、さらに群ごとに1匹の追加のマウスの半連続サンプル採取デザインを使用した。Alexionで行った試験では、マウスごとに終末時採血を含めて3回採血した。コホートごとの時点(投与後時間)を表20に示す。
【0148】
非終末時採血の場合、100mLの全血を顎下採取によって、事前にコーティングされたリチウムヘパリン加チューブに採取して、各動物で各時点に少なくとも50μLの血漿を採取した。終末時採血時に、心臓穿刺して可能な限りなるべく多くの血液をリチウムヘパリン加採取チューブに採取した。血液を4℃に維持し、採取後、可能な限り早く遠心分離によって血漿を処理した。各血漿サンプルを、2つの等容積アリコートに分け、その後、CO/エタノール中で急速冷凍し、-80℃で保存した。
【表20】

【表21】

【表22】
【0149】
ロット2、3、及び4では、32匹のマウスの群を、投与経路ごとに4匹の動物/時点の8つのコホートにした。IV投与群では、投与後およそ0.5、1、3、8、12、21、26、32、45、49、72、96、120、192、264、及び336時間で、各コホートから2回採血した(初回の時点は生存採取、2回目は終末時)。SC投与群では、投与後およそ1、3、6、8、12、21、26、32、45、49、72、96、120、192、264、及び336時間で、各コホートから2回採血した(初回は生存採取、2回目は終末時)。
【0150】
血漿中の活性ALP201濃度の決定
人工基質であるリン酸4-メチルウンベリフェリル(4-MUP)を使用してアルカリホスファターゼ活性に関して血漿サンプルをアッセイした。4-MUPのリン酸エステル結合の加水分解により、蛍光光度計で容易に検出できる蛍光性化合物4-メチルウンベリフェロン(4-MU)が放出される。酵素活性標準曲線を介して活性の定量化を行った。
【0151】
社内PK試験のサンプル分析
4-MUPアッセイにおいて同じプレート上での活性が既知のアスホターゼアルファタンパク質参照標準の階段希釈を用いて作成した酵素活性標準曲線を介して活性の定量化を行った。解凍した血漿サンプルをアッセイ緩衝液(50mMのHEPES、150mMのNaCl、1mMのMgCl、pH7.4、及び1mg/mLのBSA)中に100倍~2,000倍に希釈して、アッセイし、活性ALP201酵素濃度を決定した。各プレートの最終タンパク質標準範囲は、4~80ng/mLであった。
【0152】
希釈したサンプルを以下のように定量化した。4-MUPをタンパク質サンプルに加えることによって希釈した全てのサンプルをアッセイの反応開始前に37℃にし、最終濃度、10mM 4-MUPを得た。360nmの励起波長及び465nmの発光波長で4-MUの生成を測定した。37℃で維持したプレートリーダーでデータを収集した。この際、40秒ごと合計20分間プレートを読み取った。血漿及び標準サンプルの反応速度を、Microsoft Excelを用いて、1分あたりの相対蛍光単位(RFU)の単位で反応勾配の線形回帰によって計算した。標準サンプルの反応速度を使用して、RFU/分/Uの単位で線形標準曲線を作成した。血漿サンプルで測定した反応速度の比較を、標準曲線と比較して、U/mLでALP201の血漿中活性を決定した。単位/mLのサンプル活性を、サンプル活性をテストしたタンパク質サンプルの特異的活性(単位U/mg)で割ることによってmg/Lの質量単位に換算した。独立したサンプル採取ポイントごとにデータをまとめるために、サンプルを2つ組で2回実行した。
【0153】
PK試験のサンプル分析
同じ4-MUP加水分解アッセイを実施した。アッセイ当日、標準物質、品質対照(QC)、希釈対照(DC)、及びブランクをアッセイ緩衝液で250倍に希釈した。さらに、標準物質、QC、DC、及びブランクを、合計500倍の最小必要希釈(MRD)となるように、基質であるリン酸4-メチルウンベリフェリル(4-MUP)で2倍に希釈した。MRDを実施する前に、DCをマウス血漿で200倍に希釈した。アッセイで使用した4-MUP基質の加水分解からもたらされる蛍光生成物メチルウンベリフェロンに基づいてALP201を定量化した。プレートをプレートリーダーに置き、37℃で25分間、360nm(励起)、455nm(カットオフ)、及び465nm(発光)の動力学的蛍光設定で60秒に1回読み取りを行った。酵素活性は、基質反応速度と直接的に比例していた。データを通して最も適合する直線から、Vmax(蛍光強度/minの速度)を決定した。ブランクは曲線適合に含めなかった。結果はmg/Lで報告した。値を、被験物質とタンパク質活性標準物質との間の特異的活性の差について補正した。
【0154】
薬物動態分析
Phoenix WinNonlin v8.0(Certara)を使用してPK分析を実施した。ノンコンパートメント解析を使用して薬物動態パラメータを計算した。
【0155】
以下のノンコンパートメントPKパラメータを計算した。時間0(投与)から最終検出可能濃度までの濃度-時間曲線下面積(AUC)、時間0(投与)から最終検出可能濃度までの用量正規化した濃度-時間曲線下面積(AUC/用量)、時間0(投与)か無限まで外挿した濃度-時間曲線下面積(AUCinf)、時間0(投与)か無限まで外挿した用量正規化した濃度-時間曲線下面積(AUCinf/用量)、観察された最高血漿中濃度(Cmax)、用量正規化した観察された最高血漿中濃度(Cmax/用量)、観察された最高血漿中濃度の時間(Tmax)、終末期消失半減期(t1/2)、総クリアランス(CL)、見かけの分布容積(V)、及びバイオアベイラビリティ(F)。実際のサンプル収集時間を使用して、PKパラメータを計算した。実際の用量を使用して、用量正規化したPKパラメータを計算した。
【0156】
結果及び考察
マウスにおけるIV及びSC投与後のALP201の薬物動態パラメータ
雄C57BL/6マウスへの単回IVまたはSC投与後、ALP201のPKを評価した。群あたり16匹のマウスに投与し、かつ群あたり4匹のマウスに細分類したコホートから、投与後0.25、1、6、24、48、72、96、120、192、264、336、及び480時間の時点で血液を採取した。
【0157】
ALP201のアルカリホスファターゼ触媒活性を測定する酵素活性アッセイを使用して血漿中のALP201濃度を測定した。次に、ALP201の酵素活性を報告向けに質量単位(mg/L)に換算した。
【0158】
IV及びSC投与後の平均活性ALP201血漿中の濃度対時間プロファイルを、図8A及び8Bに片対数スケールで提示する。ALP201のPKパラメータの概要は、前述の表7及び11に示している。
【0159】
IV群の一部のマウスの個々のマウスの血漿中活性プロファイルは、用量の一部が皮下に送達された可能性があることを示唆していると思われ、これは、IV投与プロファイルの初期の時点で観察された比較的高い変動の原因である可能性がある。これが起こった場合、IV投与群に対して計算したCmaxの値もまた、人為的に低くなる可能性がある。IV投与後、濃度-時間プロファイルは、多次指数関数的に減少した(図8A及び8B)。CLは、0.0019L/h/kgであり、見かけの終末相t1/2は、48時間であった。SC投与後、最高濃度に到達するまでの時間(tmax)は、投与後48時間であった。これは、SC注射部位からの吸収が比較的遅いことを示唆している。SC投与後の絶対バイオアベイラビリティは96%であった。
【0160】
マウスにおける様々な総シアル酸含量値を有するALP201ロットの薬物動態パラメータ
測定したTSAC値、すなわち、タンパク質単量体1molあたり5.9、5.0、及び3.2モルのシアル酸で精製したALP201の3つの別々のロットを、32匹のマウスにIV及びSC投与によって投与した。投与群あたり4匹のマウスに細分類したコホートから、IV投与の場合、投与後0.5、1、3、8、12、21、26、32、45、49、72、96、120、192、264、及び336時間;及びSC投与の場合、投与後1、3、6、8、12、21、26、32、45、49、72、96、120、192、264、及び336時間の時点で血液を採取し、この際、各マウスから2回採血した。
【0161】
ALP201のアルカリホスファターゼ触媒活性を測定するアッセイを使用して血漿中のALP201濃度を測定した。ALP201の酵素活性は、Charles Riverによって質量単位(mg/L)で報告した。
【0162】
タンパク質ロットごとのIV及びSC投与後の平均活性ALP201血漿中の濃度対時間プロファイルを、図9A及び9B、10A及び10B、ならびに11A及び11Bに片対数スケールで提示する。種々のTSAC値でのIV投与の血漿中の濃度対時間プロファイルの収集を図12に示す。SC投与の血漿中の濃度対時間プロファイルの収集を図13に示す。IV及びSC投与後の平均PKパラメータ及び平均用量正規化したPKパラメータの概要を表にしたものは、それぞれ、表21及び22で確認することができる。
【表23】

【表24】
【0163】
TSAC値が5.9、5.0、及び3.2mol/molのALP201タンパク質ロットは、共通N結合型グリカン部位あたり1.48、1.25、及び0.80モルのシアル酸に相当し、かつ全てのロット(IV及びSC投与の両方の)のPKプロファイルは、形状が類似しており、Tmax及びt1/2値も類似していた。
【0164】
TSAC値を増加させると、クリアランスがわずかに減少し、IV及びSC経路の両方によるCmax及びAUCが増加し、かつ分布容積が減少した。これらの変化の全ては、TSAC値が低いほど、未成熟なN結合型グリカンのレベルが高くなるという考えと一致し、この未成熟なN結合型グリカンは、ASGPRのような細胞受容体によって素早く除去され得、かつタンパク質サンプルのクリアランスが高くなり、Cmaxが低下し、AUCが低下する。これらのパラメータの変化は比較的小さく、最大で2倍の違いがある。
【0165】
マウスにおけるALP201のPKパラメータとマウスにおけるアスホターゼアルファのPKパラメータとの比較
第二世代アルカリホスファターゼERTとして、雄C57BL/6マウスを用いたマウスPK試験で以前にテストしたアスホターゼアルファのPKパラメータに基づいて改善するようにALP201を設計した。アスホターゼアルファのPKパラメータの概要を表25に示す。
【表25】
【0166】
雄C57BL/6マウスにおけるALP201に関して収集した全てのPKデータセットでは、ALP201は、優れたインビボ半減期(t1/2によって測定した場合)、インビボ曝露量(Cmax及びAUCによって測定した場合)、及びバイオアベイラビリティを示した。また、全てのテストしたサンプルで、ALP201は、マウスにおいてアスホターゼアルファよりもてクリアランスが大幅に低いことも示した。
【0167】
アスホターゼアルファの放出規格では、分子のTSAC値が1.2~3.0mol/molに制限されており、かつ分子は、単量体あたり6つのN結合型グリコシル化部位を有しているため、アスホターゼアルファのシアル酸の取り込み量は、グリカンあたりわずか0.20~0.50モルのシアル酸である。これは、アスホターゼアルファ上の多くのグリカンがシアル酸部位を含有しておらず、ASPGRクリアランスに対する効果的な基質である可能性があることを示している。これは、ALP201に比べてアスホターゼアルファではクリアランスが高く、用量正規化したCmax及びAUCが低いことの説明となり得る。
【0168】
ALP201のこれらのサンプルの全ては、アスホターゼアルファよりもバイオアベイラビリティがはるかに高く、ALP201の最小の生体利用可能なサンプルは、アスホターゼアルファの観察されたバイオアベイラビリティのおよそ2倍である(72.1%対38.8%)。2つの構築物間のヒトIgG Fcドメインアイソタイプの違いは、この観察の原因である可能性がある。本発明者らは、ALP201のIgG2/4 Fcドメインは、共通のFcg受容体のパネルと結合しないが、アスホターゼアルファのIgG1 Fcドメインは、それらのうち少なくとも2つに強く結合することを以前に明らかにしている(出典:Research Technical Report 036)。これらのFcg受容体が、皮下空間に存在する場合、アスホターゼアルファは体循環に入る前に既に除去され、それによりバイオアベイラビリティ及び曝露量が低下する可能性がある。
【0169】
結論
これらの試験の所見は、ALP201は、より高いバイオアベイラビリティ、用量正規化したCmax及び用量正規化した曝露量を伴って、IVまたはSC投与後アスホターゼアルファに比べてマウスにおいて用量補正した薬物動態プロファイルを大幅に改善することを示している。種々のレベルのTSAC取り込み量を有するALP201サンプルを使用した追加のPK試験は、TSACレベルが増加するにつれてCmax及びインビボ曝露量がわずかに増加することを示した。消失半減期、Tmax、及びバイオアベイラビリティは、TSAC値の変化によって比較的影響を受けないように見えた。
【0170】
実施例3
ALP201を用いた単回投与PK試験の概要
アスホターゼアルファ非臨床開発プログラムの一環として、それぞれSprague-Dawleyラット及びカニクイザルでの2つの単回投与PK試験を実施した(表26)。ALP201単回投与試験は、これらの試験によって裏付けられた。
【表26】
【0171】
単回投与IV投与後、アスホターゼアルファの全身クリアランス(CL)は、0.0193~0.0492L/h/kgの範囲であり、見かけの半減期は、27~34時間の範囲であった。定常状態での分布容積(Vss)は、0.432~1.39L/kgの範囲であった。ラット及びサルへの単回SC投与後、最高濃度に到達するまでの時間(tmax)は、投与後10~32時間であり、これは、SC注射部位からのアスホターゼアルファの吸収が遅いことを示唆している。SC投与経路の推定バイオアベイラビリティは、ラット及びサルにおいて26%~35%の範囲であった。
【0172】
単回投与PK試験に基づく結論
ALP201は、有効性/活性、全身曝露量、絶対バイオアベイラビリティ、及び半減期の改善を伴って、承認済みの製品であるアスホターゼアルファの特性に基づいて改善するように設計した。ALP201におけるIg Fcドメインアイソタイプは、アスホターゼアルファ中に存在するIgG1 Fcドメインの代わりにG2/4である。この改変は、全身PK曝露量、半減期、及びバイオアベイラビリティを含むALP201の薬物動態特性を改善するように設計した。
【0173】
3種の動物種(マウス、ラット、及びサル)からの前臨床データは、これらの目的が達成したエビデンスを裏付けている。アスホターゼアルファとの比較では、ALP201は、3種の動物種で、IV/SC投与後、PK曝露量(>10倍)、絶対バイオアベイラビリティ(2倍)、及び半減期(2倍)の大幅な改善を示した。前臨床母集団PKモデリングでも、ALP201のPK特性の改善がヒトにも当てはめられることが期待され、これにより、注射量の低減、投与頻度の低減、及び年間総量の低減により患者の治療が容易になり、それにより、患者の治療負担が軽減されることが予測される。
【0174】
非臨床安全性試験
ファースト・イン・ヒューマン試験を裏付ける毒性試験の概要
ALP201に対する独立した単回投与毒性/忍容性試験は実施しなかった。反復用量確定(GLP)毒性試験でのALP201用量は、ラット及びサルにおけるALP201単回投与IV及びSCのPK試験から得られたデータに基づいて選択した。ALP201の忍容性を、ラット及びサルにおける単回投与IV及びSCのPK試験で、注射部位反応及び臨床病理学データを含む臨床観察によって評価した。要約すると、ALP201は、ラットに最大27mg/kg、及びサルに最大20mg/kgをIVまたはSCを介して単回投与した場合、忍容性が良好であった。
【0175】
カニクイザル及びSprague-Dawleyラットにおける確定的なGLPに準拠したALP201の28日間毒性試験は進行中である。ラット及びサル試験の回復期を含む生存中部分は、完了しており、報告書が準備されている。これらの試験の監査済みの報告書草案は入手可能ではないが、ADAデータを除く両方の試験からの全てのデータは、入手可能であり、その所見の概要を表27に示す。要約すると、ラット及びサルにおけるALP201の28日間毒性試験からの結果は、ALP201治療が、安全性薬理評価項目を含む試験の両方で評価された毒性評価項目のいずれかからも、いずれの注目すべき/生物学的に意味のある治療に関連した有害な影響をもたらさなかったことを示している。
【表27-1】

【表27-2】
【0176】
後期臨床開発ALP201の非臨床安全性戦略
ALP201は、Alexionから販売されているERT製品アスホターゼアルファ(STRENSIQ(登録商標))と比較して改善されたERTである。ALP201のヒトTNSALP触媒ドメインは、より高い酵素活性を付与するために3つの位置に合理的に設計された変化を含む。ALP201のFc部分は、ヒト免疫グロブリンガンマ2/4(IgG2/4)であるが、その一方で、アスホターゼアルファのFc部分は、ヒト免疫グロブリンIgG1である。骨を標的とするALP201及びアスホターゼアルファのC末端領域は、同一である。
【0177】
ALP201及び選択したアスホターゼアルファ試験から得られる所見は以下の通りである。
1.ラット及びサルにおけるALP201のGLP28日間毒性試験による毒性所見は、非常に類似している(表31)
2.サル及びラットにおける同じ期間のALP201及びアスホターゼアルファの毒性試験(4週間/28日間)による毒性所見は、非常に類似している(それぞれ表32及び表33)
3.アスホターゼアルファの完全な非臨床安全性パッケージによる毒性所見は、ラットにおける一過性の局所忍容性所見に限られ、その他の注目すべき有害なアスホターゼアルファ治療に関連した所見はない。
【0178】
ALP201の長期/6ヶ月一般毒性試験戦略
単一種の長期毒性試験戦略は、以下の観察結果により裏付けられる。
4.ラット及びサル28日間GLP毒性試験において、3日に1回(Q3D)のSCによるALP201の10回の反復投与後、注目すべき全身毒性及び/または局所忍容性所見は観察されなかったが、ALP201の全身曝露量は、アスホターゼアルファと比べて極めて高かった。全身曝露量の概要を表31及び32に示す。
5.ALP201ラット及びサル28日間GLP毒性試験による毒性所見は、非常に類似していた。これらの試験による所見の概要を表28に示す。
6.短期間の一般毒性試験による毒物学的所見は類似している場合、通常、1種での長期間の一般毒性試験で十分である。
7.ラットは、ALP201を用いた長期毒性試験用の好ましい種である。加えて、長期間の一般毒性試験を実施するのに1種のみを使用する場合、ラットは好ましい種である。
【表28-1】

【表28-2】

【表28-3】

【表29-1】

【表29-2】

【表29-3】
【0179】
モデルベース分析及び予測されるヒト用量レジメン
ALP201モデリング
現在のモデルで使用したデータ
マウス(疾患モデル種)からヒトへの用量外挿を行うために、相対成長に基づいて調整した用量からヒト曝露量をシミュレートする十分なPK分析が必要である。限られたマウスPKデータ、単回投与野生型マウス試験(HPP-PK-01)及び2回の反復投与Akp2GW(-/-)マウス有効性試験(HPP-PoC-01及びHPP-MED-01)による単一のCトラフ測定値(D36/D37)が利用可能であった。ALP201の確実なPK特性評価を作成するために、ラット及びカニクイザルにおける用量範囲決定試験からのPKデータでマウスデータを強化した。表30は、母集団薬物動態(Pop-PK)モデリング手法を使用してこれまでに分析したデータ(47匹の動物及び387個のPK濃度)を示す。用量-応答モデリングには、2つのAkp2GW(-/-)マウス有効性試験(HPP-PoC-01及びHPP-MED-01)からの有効性(骨石灰化)データを使用した。
【表30】
【0180】
現在のPop-PKモデル
相対成長原理に基づく体重によるPK動態における種の差異を考慮して、3種の動物種からPKデータを同時に分析するNONMEMソフトウエアプログラム、バージョン7.2(ICON solutions)を使用して、現在のPop-PKモデルを開発した。ここで、動物の体重は、70kgを中心とし、相対成長指数は、クリアランスパラメータに対しては0.75、分布容積パラメータに対しては、1.0に固定した。血管外パラメータ、例えば、SC注射後の絶対バイオアベイラビリティを推定するために、IV及びSCデータもまた同時に適合した。現在のモデルは、線形性の消失を伴う2コンパートメントモデルであり、モデルパラメータ推定値を表31に示す。
【表31】
【0181】
PKパラメータの標準値または平均パラメータ推定値を十分に推定した。CLの変動性(BSV)は、許容範囲内であり、良好に推定したが、Ka及びFの変動性は大きく(それぞれ86%及び76%)良好に推定されなかった。収縮は、PKパラメータの推定値をデータがどのように通知したかを評価したものであり、値が<30%であれば良好である。Ka及びFの高い収縮値(それぞれ40%及び59%)を考慮すると、4週間GLP毒性試験からの追加のデータにより、Ka及びFパラメータの推定値は改善されるはずである。全体として、現在のPop-PKモデルは、良好な平均パラメータ推定値を考慮すると、合理的な用量シミュレーションを提供するはずである。ただし、変動領域が過度に幅広い可能性がある。
【0182】
現在の用量-応答モデル
maxファミリーのモデルをテストすることによって、開発用量-応答モデルを選択した。ほとんどの用量-応答関係は、Emaxモデルパラメータ化の1つによって説明することができる。現在の最良の用量-応答特性評価は、Emax+E(ベースライン)モデルを使用するものである。有効性評価項目である骨石灰化は、X線撮影による評価であり、かつ非臨床用量-応答評価で使用されているアスホターゼアルファの有効性の臨床的定義と同じであるために選択した。2つの有効性試験(HPP-PoC-01及びHPP-MED-01)に基づくアスホターゼアルファまたはALP201による治療後の骨石灰化を、用量に対してプロットした(図16)。以前の有効性試験ALP-PT-12からのアスホターゼアルファデータを、比較のために含めた。y軸は、骨石灰化スコアが4の投与群におけるマウスの割合として定義された正常値%を表している。x軸は、mg/kg/日に正規化した用量を表している。治療済み母集団(ED85)の85%に正常な石灰化をもたらす用量を、目標有効用量として選択した。
【0183】
マウスからヒトへの用量換算及びヒトの開始用量の提案
相対成長スケーリングをマウスの目標有効用量(ED85)に適用して、ヒトへの用量を決定した。マウスED85からヒト等価用量(HED、mg/kg/日)を予測するための式は、ED85×(0.025kgマウス/70kgヒト)0.25であった。HEDを換算すると、45mg/週の毎週の一定用量であり、これを、FIH試験のMADアームの開始用量として使用する。NOAEL及びMABEL法からの結果を考慮した後、SADアームに対する最大推奨開始用量(MRSD)を選択した。最小オンターゲット薬理学的応答をもたらす試験用量を選択し、一定のヒト用量(5mg)に換算することを決定した。
【0184】
その他の実施形態
前述の発明を実施するための形態及び実施例は、理解を明確にするためのみに提示したものである。不必要な制限が、そこから理解されるべきではない。本開示は、図示し、説明した詳細に厳密に限定するものではなく、当業者にとって明らかな変形形態は、特許請求の範囲によって定義付けられる範囲内に含まれるものとする。
【0185】
特に記載がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される成分の量、分子量などを表す全ての数字は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、特にそれとは反対の記載がない限り、本明細書及び特許請求の範囲に記載されている数値パラメータは、得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。最低限において、また特許請求の範囲と同等である均等の原則を限定する試みとしてではなく、各数値パラメータは少なくとも、通常の丸め技術を適用することによって、報告される有効桁数を考慮して解釈されるべきである。
【0186】
本開示の広い範囲を示す数字範囲及びパラメータは近似値であるにもかかわらず、特定の実施例中に示される数値は可能な限り正確に報告される。しかし、全ての数値は、それらの対応するテスト計測値で見られる標準偏差から必然的に生じるある特定の範囲を本質的に含有する。
【0187】
本明細書に記載する全ての特許、仮特許出願を含む特許出願、特許公報及び非特許公報を含む刊行物、ならびに電子的に入手可能な資料(例えば、GenBank及びRefSeqにおけるヌクレオチド配列の提出物、及び、例えば、SwissProt、PIR、PRF、PDBにおけるアミノ酸配列の提出物、及び、GenBank及びRefSeqの注釈付きコード領域からの翻訳物を含む)の完全な開示は、参照として援用される。前述の発明を実施するための形態及び実施例は、理解を明確にするためのみに提示したものである。不必要な制限が、そこから理解されるべきではない。本開示は、図示し、説明した詳細に厳密に限定するものではなく、当業者にとって明らかな変形形態は、特許請求の範囲によって定義付けられる実施形態の範囲内に含まれるものとする。
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【配列表】
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【国際調査報告】