IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフトの特許一覧

特表2024-506921内燃機関用予燃焼室点火プラグおよび内燃機関
<>
  • 特表-内燃機関用予燃焼室点火プラグおよび内燃機関 図1
  • 特表-内燃機関用予燃焼室点火プラグおよび内燃機関 図2
  • 特表-内燃機関用予燃焼室点火プラグおよび内燃機関 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-15
(54)【発明の名称】内燃機関用予燃焼室点火プラグおよび内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F02B 19/18 20060101AFI20240207BHJP
   F02B 19/12 20060101ALI20240207BHJP
   F02P 13/00 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
F02B19/18 A
F02B19/12 A
F02B19/18 B
F02P13/00 302B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548965
(86)(22)【出願日】2022-01-26
(85)【翻訳文提出日】2023-08-14
(86)【国際出願番号】 EP2022051675
(87)【国際公開番号】W WO2022175032
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】102021000855.3
(32)【優先日】2021-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】ホリー,ヴェルナー
(72)【発明者】
【氏名】ベルチ,ディートマー
(72)【発明者】
【氏名】カデン,アーノルド
【テーマコード(参考)】
3G019
3G023
【Fターム(参考)】
3G019KA16
3G023AA01
3G023AB03
3G023AD06
3G023AD14
3G023AD25
3G023AD28
(57)【要約】
本発明は、内燃機関(10)の燃焼室(18)用予燃焼室点火プラグ(22)に関し、予燃焼室(30)と、複数の接続チャネル(36a、b)とを備え、接続チャネル(36a、b)を介して、予燃焼室(30)は燃焼室(18)と流体接続可能であり、それによって燃料と空気の混合気を燃焼室(18)から予燃焼室(30)の中に導入することができ、接続チャネル(36a、b)の少なくとも1つは、予燃焼室(30)の反対側にある端部(E1)を介して、燃料と空気の混合気を少なくとも1つの接続チャネル(36a)の中に導入することができ、端部(E1)において、少なくとも1つの接続チャネル(36a)の周方向に延在する、少なくとも1つの接続チャネル(36a)の斜面(F)を備える第1の部分領域(T1)と、少なくとも1つの接続チャネル(36a)の周方向に、第1の部分領域(T1)に隣接する、少なくとも1つの接続チャネル(36a)の周方向に延在する第2の部分領域(T2)と、を有し、第2の部分領域には、少なくとも1つの接続チャネル(36a)に斜面は設けられていない。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(10)の燃焼室(18)用予燃焼室点火プラグ(22)であって、予燃焼室(30)と、複数の接続チャネル(36a、b)とを備え、前記接続チャネル(36a、b)を介して、前記予燃焼室(30)は前記燃焼室(18)と流体接続可能であり、それによって燃料と空気の混合気を前記燃焼室(18)から前記予燃焼室(30)の中に導入することができる予燃焼室点火プラグ(22)において、
前記接続チャネル(36a、b)の少なくとも1つは、前記予燃焼室(30)の反対側にある端部(E1)を介して、前記燃料と空気の混合気を前記少なくとも1つの接続チャネル(36a)の中に導入することができ、前記端部(E1)において、前記少なくとも1つの接続チャネル(36a)の周方向に延在する、前記少なくとも1つの接続チャネル(36a)の斜面(F)を備える第1の部分領域(T1)と、前記少なくとも1つの接続チャネル(36a)の周方向に、前記第1の部分領域(T1)に隣接する、前記少なくとも1つの接続チャネル(36a)の周方向に延在する第2の部分領域(T2)と、を有し、前記第2の部分領域には、前記少なくとも1つの接続チャネル(36a)に斜面は設けられていないことを特徴とする予燃焼室点火プラグ(22)。
【請求項2】
前記斜面(F)は、想定された円錐台のセグメントであり、前記想定された円錐台はその中心軸(46)に対して回転対称的に形成されており、前記中心軸(46)は前記少なくとも1つの接続チャネル(36)の長手方向軸(42a)に対して平行かつ間隔(A)をあけて通り、前記接続チャネル(36)の幾何学的重心および/または体積中心および/または面積中心および/または中心点が、前記長手方向軸(42a)上にある、請求項1に記載の予燃焼室点火プラグ(22)。
【請求項3】
前記間隔(A)は、0ミリメートルよりも大きく、5ミリメートル以下、特に3ミリメートル以下であることを特徴とする、請求項2に記載の予燃焼室点火プラグ(22)。
【請求項4】
前記端部(E1)は、前記第1の部分領域(T1)に形成されている前記斜面(F)を唯一の斜面として有しており、それ以外は、前記斜面が設けられていないことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の予燃焼室点火プラグ(22)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの接続チャネル(36a)の内周側は、円形に形成されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の予燃焼室点火プラグ(22)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの接続チャネル(36a)は、孔として形成されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の予燃焼室点火プラグ(22)。
【請求項7】
少なくとも1つのさらなる前記接続チャネル(36a、b)は、前記少なくとも1つのさらなる接続チャネル(36b)に前記燃料と空気の混合気を導入することのできる、前記予燃焼室(30)の反対側にあるさらなる端部(E1)において、斜面が設けられていないことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の予燃焼室点火プラグ(22)。
【請求項8】
前記少なくとも1つのさらなる接続チャネル(36b)は、さらなる端部(E1)から、前記予燃焼室(30)に向かい合う、前記さらなる端部(E1)の反対側にある第2の端部(E2)まで通る延伸部全体にわたって、前記燃料と空気の混合気が通流可能な一定の流れ断面を有することを特徴とする、請求項7に記載の予燃焼室点火プラグ(22)。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の少なくとも1つの予燃焼室点火プラグ(22)を備える、自動車の内燃機関(10)。
【請求項10】
内燃機関(10)の燃焼室(18)用予燃焼室点火プラグ(22)の製造方法であって、前記予燃焼室点火プラグ(22)の予燃焼室(30)および複数の接続チャネル(36a、b)が製造され、前記接続チャネル(36a、b)を介して、前記予燃焼室(30)は前記燃焼室(18)と流体接続可能であり、それによって燃料と空気の混合気を前記燃焼室(18)から前記予燃焼室(30)の中に導入することができる方法において、
前記接続チャネル(36a、b)の少なくとも1つは、前記少なくとも1つの接続チャネル(36a)が、前記予燃焼室(30)の反対側にある端部(E1)を介して、前記燃料と空気の混合気を前記少なくとも1つの接続チャネル(36a)の中に導入することができ、前記端部(E1)において、前記少なくとも1つの接続チャネル(36a)の周方向に延在する、前記少なくとも1つの接続チャネル(36a)の斜面(F)を備える第1の部分領域(T1)と、前記少なくとも1つの接続チャネル(36a)の周方向に、前記第1の部分領域(T1)に隣接する、前記少なくとも1つの接続チャネル(36a)の周方向に延在する第2の部分領域(T2)と、を有し、前記第2の部分領域には、前記少なくとも1つの接続チャネル(36a)に斜面は設けられていないように製造されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の、内燃機関の、特に自動車の予燃焼室点火プラグに関する。さらに本発明は、少なくとも1つのそのような予燃焼室点火プラグを備える内燃機関に関する。また、本発明は、請求項1の前提部に記載のそのような予燃焼室点火プラグの製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から、内燃機関の燃焼室用予燃焼室点火プラグが周知である。予燃焼室点火プラグは、複数の開口部を持つ予燃焼室を有しており、予燃焼室はそれらの開口部を介して燃焼室と流体接続可能である。これにより、開口部を介して燃料と空気の混合気を燃焼室から予燃焼室に導入することができる。さらに、開口部は、開口部を介して予燃焼室に流入する燃料と空気の混合気が渦状の流れを起こすように形成されていることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第102018007093号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、予燃焼室点火プラグ、そのような予燃焼室点火プラグを備える内燃機関、ならびにそのような予燃焼室点火プラグの製造方法を提供することであり、これにより、予燃焼室点火プラグにおける特に安定した燃焼が実現可能である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1の特徴を持つ用予燃焼室点火プラグによって、請求項9の特徴を持つ内燃機関によって、ならびに請求項10の特徴を持つ方法によって解決される。本発明の好的な発展形態による有利な実施形態はその他の請求項に記載されている。
【0006】
本発明の第1の態様は、内燃機関、特に自動車の燃焼室用予燃焼室点火プラグに関する。このことは、特に、例えば自動車として、特に乗用車として形成されている自動車が、完全に製造された状態において内燃機関を有しており、例えばレシプロエンジンまたは往復機関として形成されている内燃機関によって駆動可能であることを意味している。このとき、内燃機関は、例えば出力軸を有しており、この出力軸は、特に内燃機関がレシプロエンジンまたは往復機関として形成されている場合には、例えばクランクシャフトとして形成されていてよい。例えば、内燃機関は、特にシリンダハウジング、特にシリンダブロックとして形成されているエンジンハウジングを有しており、これはエンジンブロックとも呼ばれ、例えば少なくとも1つのシリンダを有しているか、形成しているか、または画成している。このとき、例えば、シリンダ内には内燃機関のピストンが移動可能に収容されており、従ってピストンとシリンダはそれぞれ部分的に燃焼室を画成している。ピストンは、例えばコンロッドによって、出力軸、特にクランクシャフトと確実に連結されているので、シリンダ内のピストンの並進運動を出力軸の回転運動に変換することができる。従って、出力軸は、モジュールハウジングに対して回転軸を中心に回転可能である。内燃機関は、自動車を駆動するためのトルクを、出力軸を介して提供することができる。特に内燃機関の燃焼運転中は、特に液体の燃料と空気が燃焼室に送られる。新気とも呼ばれる空気、そして燃料は、単純に混合気とも呼ばれる燃料と空気の混合気を形成しているか、または少なくとも一時的に燃焼室に収容されている混合気の成分である。このとき、単純に点火プラグとも呼ばれる予燃焼室点火プラグは、例えば予燃焼室点火プラグのハウジングによって少なくとも部分的に、特に少なくとも実質的に、および半分よりも多く、でなければ完全に、このハウジングによって、特に直接、画成または形成されている予燃焼室を有している。このとき、好ましくは、ハウジングが、エンジンハウジングとは別に形成された追加のハウジングであるように設けられており、このハウジングは少なくとも間接的にエンジンハウジングに保持されていてよい。予燃焼室点火プラグは、複数の接続チャネルを有しており、これらの接続チャネルを介して予燃焼室は燃焼室と流体接続可能であるか、でなければ流体接続されている。例えば、それぞれの接続チャネルは、予燃焼室点火プラグのハウジング内に形成されており、すなわち例えば、特に完全に、予燃焼室点火プラグのハウジングによって、特に直接、画成されている。従って、好ましくは、予燃焼室点火プラグは、それぞれの接続チャネルによって実現されている、予燃焼室と燃焼室間のそれぞれの流体接続まで、特に完全に燃焼室から流体的に分離されているように設けられている。混合気は、接続チャネルを介して、燃焼室から予燃焼室に導入することができる。例えば前述のピストンが下死点から上死点に移動すると、例えばそれによって、最初に燃焼室に収容された混合気、すなわち少なくとも混合気の一部が、燃焼室から接続チャネルを介して、すなわち接続チャネルを通過して予燃焼室に送り込まれ、特に押し込まれる。予燃焼室において、予燃焼室点火プラグは少なくとも1つの点火火花を提供または生成することができる。この点火火花によって、予燃焼室内に流入し、それにより少なくとも一時的に予燃焼室内に収容された混合気が点火され、それによって燃焼する。このことから、いわゆる燃焼トーチが発生し、この燃焼トーチは接続チャネルを通流し、接続チャネルを介して燃焼室に入り込み、そこで燃焼室に残っている混合気に点火することで、結果的にその混合気が燃焼する。
【0007】
予燃焼室および予燃焼室点火プラグにおいて特に安定した燃焼を実現できるようにするため、本発明に基づき、少なくとも1つまたは正確に1つの接続チャネルは、予燃焼室の反対側にある端部、従って燃焼室側の端部を介して、燃料と空気の混合気を少なくとも1つの接続チャネルの中に導入することができるか、もしくは流入させ、その燃焼室側の端部において、少なくとも1つの接続チャネルの周方向に延在する、特に意図的に作製された斜面が端部に配置されている少なくとも1つまたは正確に1つの第1の部分領域と、少なくとも1つまたは正確に1つの第2の部分領域、すなわち、少なくとも1つの接続チャネルの周方向に、特に直接、第1の部分領域に隣接する、従って斜面に隣接する領域であって、少なくとも1つの接続チャネルの周方向に延在する第2の部分領域と、を有するように設けられており、この第2の部分領域には、少なくとも1つの接続チャネルまたはその燃焼室側の端部に、意図的に作製された斜面は設けられていない。言い換えると、これらの部分領域は、燃焼室側の端部の部分領域であり、従って少なくとも1つの接続チャネルの部分領域であり、燃焼室側の端部または少なくとも1つの接続チャネルの燃焼室側の端部は、第1の部分領域において意図的に作製された斜面を有しており、燃焼室側の端部または少なくとも1つの接続チャネルの燃焼室側の端部は、その第2の部分領域に意図的に作製された斜面は設けられていない。特に、少なくとも1つの接続チャネル、従って部分領域、特に斜面は、特に少なくとも1つの接続チャネルの長手延伸方向において、燃焼室の方に見て、端縁部とも呼ばれる燃焼室側の縁部で終了しているか、または逆に、特に少なくとも1つの接続チャネルの長手延伸方向において、予燃焼室の方に見て燃焼室から始まっており、例えばその縁部は、少なくとも1つの接続チャネルの周方向において、少なくとも1つの接続チャネルの入口開口部を、完全に取り囲む形で画成するように設けられている。その入口開口部を介して、少なくとも1つの接続チャネルが燃焼室につながっているので、混合気は入口開口部から少なくとも1つの接続チャネルの中に流入し、入口開口部から出発して少なくとも1つの接続チャネルを通流して、少なくとも1つの接続チャネルから流出し、チャンバ内に流入し、従って少なくとも1つの接続チャネルを介して予燃焼室内に流れ込むか、またはガイドされる。このとき、混合気は、例えば少なくとも1つの接続チャネルを通って1つの流れの方向に沿って、または燃焼室に向かう流れの方向に通流することができ、その流れの方向は、例えば少なくとも1つの接続チャネルの長手延伸方向と一致するか、または少なくとも1つの接続チャネルの長手延伸方向と平行に延在する。このとき、好ましくは、少なくとも1つの接続チャネルの、すでに言及した周方向は、流れの方向、すなわち少なくとも1つの接続チャネルの長手延伸方向の周りを取り囲むように設けられている。斜面は、第2の部分領域ではなく、第1の部分領域に配置または作製され、第2の部分領域には意図的に作製された斜面が設けられていないため、斜面は、少なくとも1つの接続チャネルの周方向において、入口開口部の周りに完全に延在しているのではなく、斜面は、少なくとも1つの接続チャネルの周方向において、入口開口部の周りの第1の部分にかけて延在しており、少なくとも1つの接続チャネルの周方向において、特に少なくとも1つの接続チャネルの周方向に、特に直接、第1の部分に隣接している入口開口部の第2の部分の周りには、縁部または第2の部分領域が延在し、従って斜面およびその他の意図的に作製された斜面は延在していない。
【0008】
再度言い換えると、例えば、特に固体として形成され、少なくとも1つの接続チャネルの縁部を、特に少なくとも1つの接続チャネルの周方向に完全に取り囲むように画成している予燃焼室点火プラグのハウジング壁は、少なくとも1つの接続チャネルの周方向において、入口開口部の周りの第1の部分にかけて延在している第1の壁領域と、少なくとも1つの接続チャネルの周方向において、入口開口部の第2の部分の周りに延在している第2の壁領域と、を有しており、好ましくは、第2の壁領域は、少なくとも1つの接続チャネルの周方向において、特に直接、第1の壁領域に隣接している。第1の壁領域は斜面を有し、すなわち第1の壁領域には斜面が意図的に作製されているが、第2の壁領域には意図的に作製された斜面が設けられていない。
【0009】
ここで、本発明は、特に以下の認識に基づいている。予燃焼室点火プラグは、通常、制限された作動領域を有している。予燃焼室点火プラグは、低負荷動作限界の低下(低負荷時のミスファイアの隠れた発生)または過早着火傾向の増大のいずれかを有する。予燃焼室点火プラグの作動領域、従って使用限界を改善または拡張するための有効な手段、すなわち優れた可能性は、例えば孔として形成されている接続チャネル内での流れの形成である。このことは、特に、作動領域を改善するために、それぞれの接続チャネルまたは接続チャネルの少なくとも1つを通る通過流に、特に意図的に影響を与えることを意味する。通過流とは、それぞれの接続チャネルを通流する混合気またはそれぞれの接続チャネルを通流する混合気の流れであると理解することができる。代替または追加として、通過流とは、それぞれの接続チャネルを相応に成形することで、それぞれの接続チャネルを通る混合気の流れに有利に、または意図的に影響を与えることであると理解できる。
【0010】
通常、それぞれの接続チャネル内の混合気の流れは、周囲流に起因している。周囲流は、特に、主燃焼室とも呼ばれる燃焼室内の混合気の流れであり、この流れは少なくとも部分的に、特に少なくとも実質的に予燃焼室の周りを取り囲むことができる。燃焼室内の混合気の周囲流は、特に、渦状であってよく、すなわち、渦流とも呼ばれる、少なくとも実質的に渦状の流れと見なすことができる。このことにより、従来の予燃焼室点火プラグでは、接続チャネルの片寄った流れ、または非対称の流れ、または非軸方向の流れ、または不自由な流れが生じる可能性がある。この片寄った流れ、非対称の流れ、非軸方向の流れ、または不自由な流れは、それぞれの接続チャネルの通過流を変化させ、特にネガティブな影響を及ぼす可能性があり、それによって例えば予燃焼室内の流れおよびパージが変化する。
【0011】
それぞれの接続チャネルが、その燃焼室側の端部に、従って入口または孔入口とも呼ばれる入口開口部に斜面をまったく有しない場合、入口では流れの分離が強くなるので、それぞれの接続チャネルは、混合気が有効に、すなわち実際に通流する有効流れ断面を僅かしか有しなくなる。その結果、予燃焼室の残留ガスのパージが悪化する可能性がある。さらには、それぞれの接続チャネルの燃焼室側の端部に、それぞれの接続チャネルの周方向において、最初から完全に周囲を取り囲む斜面を、特にフライス加工によって設けることも考えられる。このために、例えば、周囲を完全に取り囲む斜面を作製するためのフライス加工は、それぞれの接続チャネルに対して軸方向に、またはそれぞれの接続チャネルに対して対称に行うことができるため、斜面は、それぞれの接続チャネルまたはその入口開口部の周囲を対称に途切れなく取り囲む。これにより、有利には、それぞれの接続チャネルでの分離を少なくすることはできるが、予燃焼室の周囲流の取込み度が悪くなり、結果的に予燃焼室のパージが不十分になることもあり得る。
【0012】
前述した問題および欠点は、本発明によって回避することができる。本発明により、特に有利な混合気の流れが、少なくとも1つの接続チャネル内において、特に少なくとも1つの接続チャネルを通って達成される。特に、予燃焼室の周囲流の高い取込み度により、少なくとも1つの接続チャネルの通過流を増やし、少なくともほとんど分離が生じないようにすることができる。これにより、従来の解決策に比べ、予燃焼室からの高温の残留ガスのパージが改善され、結果的にアイドリング安定性も改善され、過早着火傾向を減少させることができる。予燃焼室または残留ガスのパージとは、特に、予燃焼室および燃焼室の混合気の点火および燃焼後、混合気の燃焼から結果的に生じる排ガスが予燃焼室に収容されている可能性があり、この排ガスは残留ガスと呼ばれ、本発明において、特に有利にはこの排ガスを洗い流すことができる、すなわち新鮮な混合気が、特に有利には少なくとも1つの接続チャネルを通流し、従って少なくとも1つの接続チャネルを介して燃焼室から予燃焼室内に流入できることにより、排ガスを予燃焼室から外へ排出することができることを意味するものである。
【0013】
斜面またはその内周側の面が、想定された円錐台、すなわち実際には存在しないが想定上存在する円錐台のセグメントであり、想定された円錐台はその中心軸に対して回転対称的に形成されており、この中心軸は少なくとも1つの接続チャネルの長手方向軸に対して平行かつ間隔をあけて通り、接続チャネルの幾何学的重心および/または体積中心および/または面積中心および/または中心点が、長手方向軸上にある場合は、有利であることが確認された。少なくとも1つの接続チャネルの長手方向軸は、少なくとも1つの接続チャネルの長手延伸方向に対して平行に通っているか、または長手延伸方向と一致している。面積中心または中心点とは、特に、少なくとも1つの接続チャネルが、少なくとも長手領域において混合気の通流可能な流れ断面を有しており、この流れ断面は、長手延伸方向に対して垂直であり、従って流れの方向に対して垂直に通る想定された面に延在しており、このとき、面積中心または中心点は、流れ断面の面積中心または中心点であり得ると理解することができる。これにより、斜面は、いわゆる同軸斜面となることから、少なくとも1つの接続チャネル内の混合気にとって特に有利な流れの条件を作ることができる。
【0014】
同軸斜面とは、特に以下のことであると理解できる。斜面は、例えば予燃焼室点火プラグの製造工程において、機械的に、すなわち機械加工、特に切削加工によって作製される。例えば、斜面は、円錐形または円錐台形のフライスを用いて、従ってフライス加工によって作製され、このときフライスは、例えば特に円錐のエンドミルであってよい。斜面を作製するため、少なくとも1つの接続チャネルの燃焼室側の端部、または予燃焼室点火プラグのハウジングの少なくとも1つの接続チャネルの燃焼室側の端部は、フライスを用いて、長手方向中心軸に対して回転対称に形成されているフライスの長手方向中心軸が少なくとも1つの接続チャネルの長手方向軸に対して平行に、かつ長手方向軸に対して前述の間隔をあけて通るように加工され、その結果、フライスの長手方向中心軸は、想定された円錐台の中心軸と一致することになる。
【0015】
このとき、特に好適な流れの条件を実現するための範囲として、間隔が0ミリメートルよりも大きく、5ミリメートル以下、特に3ミリメートル以下である場合は有利であることが確認された。これにより、少なくとも1つの接続チャネルでの過剰な流れ分離を回避することができ、予燃焼室の周囲流の高い取込み度を実現できる。
【0016】
別の実施形態は、少なくとも1つの接続チャネルの燃焼室側の端部が、第1の部分領域に形成されている斜面を唯一の斜面として有しており、それ以外は、意図して作製された斜面は設けられていない。これにより、特に有利な流れの条件を実現できるので、予燃焼室点火プラグの作動領域を特に広くすることができる。
【0017】
特に有利な流れの条件を、特に簡単に実現できるようにするため、本発明のさらなる実施形態では、少なくとも1つの接続チャネルの内周面が円形に形成されるように設けられている。従って、好ましくは、いわゆる流れ断面が円形に形成されている。
【0018】
本発明のもう1つの特に有利な実施形態では、少なくとも1つの接続チャネルが、孔として形成されている、すなわちドリルによって作製されている。これにより、特に有利な流れの条件を特に低コストで実現可能である。特に、少なくとも1つの接続チャネルが孔として形成されている場合、少なくとも1つの接続チャネルの長手方向軸は孔軸とも呼ばれ、この軸に対して、例えば少なくとも1つの接続チャネルは回転対称に形成されている。想定された円錐台の中心軸および少なくとも1つの接続チャネルの孔軸または長手方向軸は互いに平行に通り、互いに前述した間隔を有しており、これによって、予燃焼室点火プラグの作動領域を特に大きく、または特に広くすることが可能となる。
【0019】
少なくとも1つのさらなる接続チャネルは、少なくとも1つのさらなる接続チャネルに燃料と空気の混合気を導入することのできる、予燃焼室の反対側にある燃焼室側のさらなる端部において、斜面が設けられず、従って鋭角に形成されている場合は、特に有利であることが確認された。このことにより、予燃焼室点火プラグ、ひいては内燃機関全体の稼動を特に有利に行うことが可能となる。
【0020】
少なくとも1つのさらなる接続チャネルは、その燃焼室側のさらなる端部から、予燃焼室に向かい合う、燃焼室側のさらなる端部の反対側にある第2の端部まで通る延伸部全体にわたって、混合気が通流可能な一定の流れ断面を有することが考えられる。代替または追加として、少なくとも1つの接続チャネルと少なくとも1つのさらなる接続チャネルは、特に中心軸または長手延伸方向を中心とする予燃焼室の周方向において、少なくとも90°、特に少なくとも120°互いに間隔があいていることも考えられる。代替または追加として、少なくとも1つの接続チャネルは、斜面から予燃焼室まで通る残りの延伸部全体にわたって、混合気が通流可能な一定の流れ断面を有することが考えられる。
【0021】
好ましくは、機械加工によって、特に意図的に、斜面が形成または作製されていることから、斜面は、特に必要に応じて作製することが可能である。
【0022】
本明細書において、斜面とは、通常のように、少なくとも1つの接続チャネルの燃焼室側の端部に設けられている、ここでは特にその接続チャネルの縁部または境界部に設けられている斜めに切削された面であると理解され、この縁部または境界部は、例えば前述のハウジングによって、または壁領域によって形成されている。
【0023】
さらに、予燃焼室と燃焼室とを流体接続可能にする、または流体接続している接続チャネルの数またはすべての接続チャネルが最大15である場合は、有利であることが確認された。
【0024】
本発明の第2の様態は、自動車の内燃機関に関し、この内燃機関は、本発明の第1の様態に基づく少なくとも1つの予燃焼室点火プラグを有している。本発明の第1の様態の利点および有利な実施形態は、本発明の第2の様態の利点および有利な実施形態として見なすことができ、その逆もまた同様である。
【0025】
本発明の第3の様態は、内燃機関の燃焼室用予燃焼室プラグ、特に本発明の第1の様態に基づく予燃焼室点火プラグの製造方法に関する。本方法では、予燃焼室点火プラグの予燃焼室および複数の接続チャネルが製造され、それらの接続チャネルを介して、予燃焼室は燃焼室と流体接続可能であり、それによって燃料と空気の混合気を燃焼室から予燃焼室の中に導入することができる。
【0026】
燃焼室における特に安定した燃焼を実現し、それによって予燃焼室点火プラグの幅広い、または大きな作動領域を実現できるようにするため、本発明に基づき、少なくとも1つの接続チャネルは、予燃焼室の反対側にある、燃焼室側の端部を介して、燃料と空気の混合気を少なくとも1つの接続チャネルの中に導入することができるか、もしくは流入させ、その燃焼室側の端部において、少なくとも1つの接続チャネルの周方向に延在する、特に意図的に作製された斜面が燃焼室側の端部に配置されている少なくとも1つまたは好ましくは正確に1つの第1の部分領域と、少なくとも1つまたは好ましくは正確に1つの第2の部分領域、すなわち、少なくとも1つの接続チャネルの周方向に、特に直接、第1の部分領域に隣接する領域であって、少なくとも1つの接続チャネルの周方向に延在する第2の部分領域と、を有するように、接続チャネルの少なくとも1つが設けられており、この第2の部分領域には、少なくとも1つの接続チャネルまたはその燃焼室側の端部に、意図的に作製された斜面は設けられていない。本発明の第1の様態および第2の様態の利点および有利な実施形態は、本発明の第3の様態の利点および有利な実施形態として見なすことができ、その逆もまた同様である。
【0027】
本発明のその他の利点、構成要件、および具体的事項は、好ましい実施例についての以下の説明から、ならびに図面を参照して、明らかとなる。説明において上述した特徴及び特徴の組み合わせ、ならびに以下に図の説明において言及される、および/または図にのみ示される特徴及び特徴の組み合わせは、それぞれ記載された組み合わせだけでなく、本発明の範囲を逸脱することなく他の組み合わせ、または単独で使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に基づく予燃焼室点火プラグを備える本発明に基づく内燃機関の概略断面図の一部である。
図2】予燃焼室点火プラグの概略断面側面図である。
図3】予燃焼室点火プラグの別の概略断面側面図の一部である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図において、同じ、または同じ機能の要素には同じ参照符号が付されている。
【0030】
図1は、自動車、特に好ましくは乗用車として形成されている動力車の内燃機関2の一部を概略断面図で示したものである。この図は、自動車が、完全に製造された状態において、内燃機関10を有しており、この内燃機関10によって駆動可能であることを意味している。このとき、好ましくはレシプロピストンモーターまたはレシプロピストン内燃機関として形成されている内燃機関10は、例えばシリンダハウジング、特にシリンダクランクケースとして形成されているエンジンブロックを有しており、図1ではこのエンジンブロックが部分的に示されているが、非常に概略的にのみ図示され、12の符号が付けられている。このエンジンブロックは、少なくとも1つのシリンダ14を有する。このことは、特に、エンジンブロック12がシリンダ14を、特に直接、画成または形成していることを意味する。シリンダ14には、内燃機関10のピストン16が並進運動可能に収容されている。このとき、内燃機関10は、特にクランクシャフトとして形成されている出力軸を有しており、内燃機関10は、この出力軸を介して、自動車を駆動するためのトルクを提供することができる。ピストン16は、コンロッドによって、出力軸と確実に連結されているので、シリンダ14内のピストン16の並進運動を出力軸の回転運動に変換することができる。
【0031】
シリンダ14およびピストン16は、それぞれ部分的に内燃機関10の燃焼室18を画成しており、内燃機関10の燃焼室18は燃焼室ルーフ20によっても画成されている。燃焼室ルーフは、例えば特にシリンダヘッドとして形成されている、内燃機関10のさらなるハウジング要素によって形成されている。このさらなるハウジング要素は、好ましくは、エンジンブロック12とは別に形成され、エンジンブロック12に接続されている。内燃機関10は、さらに、燃焼室18に割り当てられている予燃焼室点火プラグ22を有しており、これについて、さらに以下で詳しく説明する。
【0032】
燃焼室18には、少なくとも1つの第1のガス交換バルブが、インテークバルブ24の形で割り当てられており、このバルブを介して、新気とも呼ばれる空気を燃焼室18内に導入することができる。さらに、特に液体燃焼を、燃焼室に送り込むことが可能であり、特に直接噴射可能である。空気および燃焼は、単に混合気とも呼ばれる燃料と空気の混合気を形成し、この混合気は、少なくとも一時的に燃焼室18に収容されているか、または収容可能である。主燃焼室とも呼ばれる燃焼室18内の混合気は、予燃焼室点火プラグ22によって点火され、それによって燃焼することができ、その結果、内燃機関10の排ガスが生じる。燃焼室18には、少なくとも1つの第2のガス交換バルブがエグゾーストバルブ26の形で割り当てられており、このバルブを介して排ガスを燃焼室18から排出することができる。
【0033】
矢印28によって、図1では、周囲流とも呼ばれる、特に燃焼室18内での混合気の流れが示されている。矢印28から、特に、矢印28によって示されている流れは、少なくとも実質的に渦状、すなわち円筒状であることが分かり、従って、矢印28によって示されている流れは渦流とも呼ばれる。矢印28によって示されている流れは、円筒状に、または円筒のように、特に想定された面に対して垂直に通る円筒軸(図示されていない)の周りを流れ、この想定された面はシリンダ14のシリンダ軸に対して平行に通り、シリンダ14は、例えばシリンダ軸に対して少なくともほぼ回転対称に形成されている。特に有利には、シリンダ軸は、シリンダ14の長手延伸方向に通っている。予燃焼室点火プラグ22は、少なくとも1つまたは正確に1つの予燃焼室30を有しており、この予燃焼室30は、少なくとも部分的に、特に少なくとも実質的に、従って少なくとも半分よりも多く、でなければ完全に、予燃焼室点火プラグ22のハウジング32によって、特に直接、画成されている。特に、予燃焼室30は、特に直接、ハウジング32の側方側の面34によって、特に直接画成されている。予燃焼室点火プラグ22は、複数の、すなわち少なくとも2つ、または正確に2つの、ノズルとも呼ばれる、例えば貫通開口部として形成されている接続チャネル36aを有しており、これを介して、予燃焼室30は、主燃焼室とも呼ばれる燃焼室18に流体接続可能であるか、または流体接続されている。これにより、燃焼室18内での流れが矢印28によって示されている燃料と空気の混合気(混合気)は、接続チャネル36a、bを介して、燃焼質18から流出し、従って、予燃焼室30に導入可能である。このことは、燃焼室18の混合気が、少なくとも部分的に接続チャネル36a、bを通って流出し、それによって予燃焼室30内に流入することができ、従って燃焼室18の混合気の少なくとも一部は接続チャネル36a、bを通流し、予燃焼室30の中に流入するか、または導入可能であることを意味している。
【0034】
特に図2から、予燃焼室点火プラグ22が、例えば電極領域に配置されている電極38を有していることがよく分かる。電極38により、予燃焼室30内の予燃焼室点火プラグ22は、少なくとも1つの点火火花を、特に電極38の間で生成および提供することができ、予燃焼室プラグ22は、電極領域内、従って予燃焼室30内で点火火花を生成または提供することができる。点火火花により、予燃焼室30内の混合気、すなわち予燃焼室30に流入する一部の混合気が点火され、それにより燃焼する。その結果、燃焼トーチが生じ、この燃焼トーチは接続チャネル36a、bを通流し、従って接続チャネル36a、bを介して予燃焼室30から燃焼室18に戻る。これにより、例えば燃焼室18に残っている混合気、すなわち燃焼室18内に残っている燃料と空気の混合気のさらなる部分が点火され、その結果燃焼し、そこから結果的に前述した排ガスが生じる。
【0035】
図2には、燃焼室から接続チャネル36a内を通って流れる混合気の流れが矢印40によって示されており、接続チャネル36aを通る、接続チャネル36a内の混合気の流れは、通過流とも呼ばれる。図2から、特に、それぞれの接続チャネル36a、bは、それぞれ予燃焼室30の燃焼室とは離れた、または反対側にある端部E1と、それぞれ予燃焼室30に向かい合う、それぞれ第1の端部E1の反対側にある、または離れている予燃焼室側の第2の端部E2を有しており、この端部E2は、さらなる端部とも呼ばれる。それぞれの接続チャネル36a、bは、連続的に、従ってそれぞれの端部E1からそれぞれの端部E2まで中断することなく延在しており、それぞれの端部E1またはE2で終了し、従ってそれぞれの端部E1またはE2から突出して延在することはない。図2および3には、それぞれの接続チャネル36a、bの各長手方向軸が42a、bによって示されており、接続チャネルの幾何学的重心および/または体積中心および/または面積中心および/または中心点は、それぞれの長手方向軸42a、b上にある。さらに、それぞれの接続チャネル36a、bは、それぞれの長手延伸方向、従ってそれぞれの長手方向延伸部を有しており、それぞれの長手方向軸42a、bは、それぞれの接続チャネル36a、bのそれぞれの長手延伸方向に対して平行に通るか、またはそれぞれの接続チャネル36a、bのそれぞれの長手延伸方向と一致しているので、長手方向軸42a、bは、それぞれの長手延伸方向を示していることが分かる。さらに、それぞれの接続チャネル36a、bのそれぞれの貫通方向は、それぞれの長手方向軸42a、bと一致している。従って、それぞれの貫通方向は、それぞれの接続チャネル36a、bのそれぞれの長手延伸方向と一致している。このとき、それぞれの接続チャネル36a、bは、そのそれぞれの貫通方向に沿って、混合気、すなわち混合気の流れが通流可能である。それぞれの貫通方向、従ってそれぞれの接続チャネル36a、bの長手延伸方向は、中心軸もしくは長手方向中心軸とも呼ばれる、または中心軸もしくは長手方向中心軸として形成されている予燃焼室30の主軸44(図1)に対して斜めに通り、この予燃焼室30は、主軸44に対して少なくともほぼ回転対称的に形成されていることが分かる。
【0036】
予燃焼室点火プラグ22の特に広い作動領域、従って予燃焼室30の特に安定した燃焼を実現できるようにするため、図2および3から特によく分かるように、接続チャネル36a、特に接続チャネル36a、bに関して接続チャネル36aだけが、燃料と空気の混合気が燃焼室18(主燃焼室)から接続チャネル36aに導入可能な、予燃焼室30とは反対側にある燃焼室側の端部E1において、接続チャネル36aの長手方向軸42aの周囲を取り囲む、接続チャネル36aの周方向に延在する、意図的に作製された接続チャネル36aの斜面Fを備える第1の部分領域T1と、接続チャネル36aの周方向に直接第1の部分領域T1と隣接する、接続チャネル36aの周方向に延在する第2の部分領域T2と、を有しているように設けられており、この部分領域T2には、接続チャネル36aに意図して作製された斜面は設けられてない。図に示されている実施例において、例えば接続チャネル36aの端部E1に配置されている入口開口部を、接続チャネル36aの周方向に部分的に取り囲む形で画成している斜面Fまたはその内周側の面は、想定されている円錐台のセグメントであり、その中心軸46(図3)は、想定されている円錐台がこの中心軸46に対して回転対称的に形成され、接続チャネル36aの長手方向軸42aに対して平行かつ間隔Aをあけて通り、接続チャネルの幾何学的重心および/または体積中心および/または面積中心および/または中心点は、長手方向軸42a上にある。このとき、間隔Aは、0ミリメートルよりも大きく、3ミリメートル以内であるように設けられている。さらに、図に示されている実施例では、接続チャネル36aの端部E1が、第1の部分領域T1に形成されている斜面Fを唯一の斜面として有しており、それ以外は、意図的に作製された斜面がないように設けられている。
【0037】
図に示されている実施例では、接続チャネル36a、bが孔として、内周側が円形に形成されており、このことは、接続チャネル36aについて、特に、予燃焼室30に向かい合う斜面Fの端部から、接続チャネル36aの燃焼室側の端部E2まで連続して延在している接続チャネル36aの延伸部に関して有効である。さらに、接続チャネル36a、bは、孔として形成されている。接続チャネル36bは、予燃焼室30の反対側にあるさらなる燃焼室側の端部E1にも、予燃焼室30に向かい合う予燃焼室側の端部E2にも、斜面がまったく設けられていない。
【0038】
図2および3から、接続チャネル36bは、接続チャネル36bの燃焼室側の端部E1から予燃焼室30に向かい合う、接続チャネル36bの端部E1の反対側にある予燃焼室側の接続チャネル36bの端部E2まで通る延伸部全体にわたり、燃料と空気の混合気が通流可能な一定の、好ましくは円形の流れ断面を有していることが特によく分かる。
【0039】
図3には、予燃焼室点火プラグ22の製造方法が示されている。特に、図3から、接続チャネル36a、bは、特にそれぞれの接続チャネル36a、bの周方向を完全に取り囲む形で、ハウジング32によって、特に直接、形成または画成されていることが分かる。言い換えると、接続チャネル36a、bは、特に周方向全体にわたりハウジング32に形成されている。従って、斜面Fは、ハウジング32の壁領域に形成されており、すなわち作製されている。斜面Fの作製には、フライスヘッドとも呼ばれるフライス48が使用され、これを用いて、斜面Fは切削加工によって作製される。例えば、フライス48は、エンドミルである。フライス48は、円錐形のフライス、特に円錐形のエンドミルであることが分かる。このことは、特に部分領域T1およびT2に関して、部分領域T1にのみ斜面Fを作製するために、フライス48が円錐形または円錐台形であることを意味している。同軸間隔Aとしても実現するため、フライス48は、ハウジング32に対して、中心軸46と一致する円錐中心軸50を中心に回転し、このとき、フライス48、あるいは斜面Fを作製するために使用される円錐形または円錐台形の領域は、円錐中心軸50に対して回転対称的に形成されている。このとき、斜面Fを作製するために、フライス48は、円錐中心軸50が長手方向軸42aに対して平行に通り、長手方向軸42aから間隔Aだけあくように、ハウジング32と直接接触させられる。これにより、接続チャネル36aの端部E1では、部分領域T1にのみ斜面Fが作製され、それ以外は、端部E1に意図的に作製された斜面は設けられないままである。これにより、一方で、接続チャネル36aにおける過剰な流れ分離を回避することができる。他方では、予燃焼室の周囲流の特に高い取込み度を実現できるので、特に有利には、最初に、予燃焼室30に収容される残留ガスを予燃焼室30から外へ排出することができる。
【符号の説明】
【0040】
10 内燃機関
12 エンジンブロック
14 シリンダ
16 ピストン
18 燃焼室
20 燃焼室ルーフ
22 予燃焼室点火プラグ
24 インテークバルブ
26 エグゾーストバルブ
28 矢印
30 予燃焼室
32 ハウジング
34 面
36a、b 接続チャネル
38 電極
40 矢印
42a、b 長手方向軸
44 主軸
46 中心軸
48 フライス
50 円錐中心軸
E1 端部
E2 端部
F 斜面
T1 第1の部分領域
T2 第2の部分領域
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-08-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(10)の燃焼室(18)用予燃焼室点火プラグ(22)であって、予燃焼室(30)と、複数の接続チャネル(36a、b)とを備え、前記接続チャネル(36a、b)を介して、前記予燃焼室(30)は前記燃焼室(18)と流体接続可能であり、それによって燃料と空気の混合気を前記燃焼室(18)から前記予燃焼室(30)の中に導入することができる予燃焼室点火プラグ(22)において、
前記接続チャネル(36a、b)の少なくとも1つは、前記予燃焼室(30)の反対側にある端部(E1)を介して、前記燃料と空気の混合気を前記少なくとも1つの接続チャネル(36a)の中に導入することができ、前記端部(E1)において、前記少なくとも1つの接続チャネル(36a)の周方向に延在する、前記少なくとも1つの接続チャネル(36a)の斜面(F)を備える第1の部分領域(T1)と、前記少なくとも1つの接続チャネル(36a)の周方向に、前記第1の部分領域(T1)に隣接する、前記少なくとも1つの接続チャネル(36a)の周方向に延在する第2の部分領域(T2)と、を有し、前記第2の部分領域には、前記少なくとも1つの接続チャネル(36a)に斜面は設けられていないことを特徴とする予燃焼室点火プラグ(22)。
【請求項2】
前記斜面(F)は、想定された円錐台のセグメントであり、前記想定された円錐台はその中心軸(46)に対して回転対称的に形成されており、前記中心軸(46)は前記少なくとも1つの接続チャネル(36)の長手方向軸(42a)に対して平行かつ間隔(A)をあけて通り、前記接続チャネル(36)の幾何学的重心および/または体積中心および/または面積中心および/または中心点が、前記長手方向軸(42a)上にあることを特徴とする、請求項1に記載の予燃焼室点火プラグ(22)。
【請求項3】
前記間隔(A)は、0ミリメートルよりも大きく、5ミリメートル以下であることを特徴とする、請求項2に記載の予燃焼室点火プラグ(22)。
【請求項4】
前記端部(E1)は、前記第1の部分領域(T1)に形成されている前記斜面(F)を唯一の斜面として有しており、それ以外は、前記斜面が設けられていないことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の予燃焼室点火プラグ(22)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの接続チャネル(36a)の内周側は、円形に形成されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の予燃焼室点火プラグ(22)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの接続チャネル(36a)は、孔として形成されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の予燃焼室点火プラグ(22)。
【請求項7】
少なくとも1つのさらなる前記接続チャネル(36a、b)は、前記少なくとも1つのさらなる接続チャネル(36b)に前記燃料と空気の混合気を導入することのできる、前記予燃焼室(30)の反対側にあるさらなる端部(E1)において、斜面が設けられていないことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の予燃焼室点火プラグ(22)。
【請求項8】
前記少なくとも1つのさらなる接続チャネル(36b)は、さらなる端部(E1)から、前記予燃焼室(30)に向かい合う、前記さらなる端部(E1)の反対側にある第2の端部(E2)まで通る延伸部全体にわたって、前記燃料と空気の混合気が通流可能な一定の流れ断面を有することを特徴とする、請求項7に記載の予燃焼室点火プラグ(22)。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の少なくとも1つの予燃焼室点火プラグ(22)を備える、自動車の内燃機関(10)。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の、内燃機関の、特に自動車の予燃焼室点火プラグに関する。さらに本発明は、少なくとも1つのそのような予燃焼室点火プラグを備える内燃機関に関する
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
この課題は、請求項1の特徴を持つ用予燃焼室点火プラグによって、ならびに請求項9の特徴を持つ内燃機関によって解決される。本発明の好的な発展形態による有利な実施形態はその他の請求項に記載されている。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
燃機関の燃焼室用予燃焼室プラグ、特に本発明の第1の様態に基づく予燃焼室点火プラグの製造方法も開示される。本方法では、予燃焼室点火プラグの予燃焼室および複数の接続チャネルが製造され、それらの接続チャネルを介して、予燃焼室は燃焼室と流体接続可能であり、それによって燃料と空気の混合気を燃焼室から予燃焼室の中に導入することができる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
燃焼室における特に安定した燃焼を実現し、それによって予燃焼室点火プラグの幅広い、または大きな作動領域を実現できるようにするため、少なくとも1つの接続チャネルは、予燃焼室の反対側にある、燃焼室側の端部を介して、燃料と空気の混合気を少なくとも1つの接続チャネルの中に導入することができるか、もしくは流入させ、その燃焼室側の端部において、少なくとも1つの接続チャネルの周方向に延在する、特に意図的に作製された斜面が燃焼室側の端部に配置されている少なくとも1つまたは好ましくは正確に1つの第1の部分領域と、少なくとも1つまたは好ましくは正確に1つの第2の部分領域、すなわち、少なくとも1つの接続チャネルの周方向に、特に直接、第1の部分領域に隣接する領域であって、少なくとも1つの接続チャネルの周方向に延在する第2の部分領域と、を有するように、接続チャネルの少なくとも1つが設けられており、この第2の部分領域には、少なくとも1つの接続チャネルまたはその燃焼室側の端部に、意図的に作製された斜面は設けられていない
【国際調査報告】