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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-15
(54)【発明の名称】多モード超伝導空洞共振器
(51)【国際特許分類】
   H10N 60/00 20230101AFI20240207BHJP
【FI】
H10N60/00 Z ZAA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549564
(86)(22)【出願日】2022-02-17
(85)【翻訳文提出日】2023-09-20
(86)【国際出願番号】 US2022016733
(87)【国際公開番号】W WO2022178087
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】63/150,955
(32)【優先日】2021-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】593152720
【氏名又は名称】イェール ユニバーシティー
【氏名又は名称原語表記】Yale University
【住所又は居所原語表記】2 Whitney Avenue, New Haven, CT 06510, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】レイ,チャン,ユー
(72)【発明者】
【氏名】ガンジャム,スハス
(72)【発明者】
【氏名】クレイズマン,レブ
(72)【発明者】
【氏名】シェールコプフ ザ サード,ロバート,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】フルンジオ,ルイージ
【テーマコード(参考)】
4M113
【Fターム(参考)】
4M113AC44
4M113AC45
4M113AC50
4M113CA12
(57)【要約】
超伝導空洞内に共振構造を整列することにより電磁共振器を構築するための技術が記載される。設計の構成は、複数のモードを示し得る低損失超伝導空洞共振器を提供し得る。この共振器の多モード性質は、そうでなければ従来の超伝導空洞共振器において必要とされるような、空洞の物理的寸法を変える必要とすることよりもむしろ、共振構造の調節により共振器のモードを調節することを可能にするような方法で、部分的に共振構造により作製される。いくつかの態様において、共振構造は、金属および/または金属化部品を含む、懸けられた超伝導体を含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超伝導マイクロ波空洞;および
空洞内に懸けられ、空洞により機械的に支持される共振構造を含む電磁共振器であって、該共振構造が、空洞内に自由に懸けられる少なくとも1つの末端を含む、電磁共振器。
【請求項2】
共振構造が:
空洞の第1の面から空洞の第2の面に伸長する第1の部分、ここで第2の面は第1の面の反対にある;および
第1の部分から伸長し、空洞内に自由に懸けられる少なくとも1つの末端を含む第2の部分
を含む、請求項1記載の電磁共振器。
【請求項3】
共振構造が誘電性基板を含む、請求項1記載の電磁共振器。
【請求項4】
誘電性基板がサファイアおよび/またはケイ素を含む、請求項3記載の電磁共振器。
【請求項5】
共振構造が誘電性基板をコーティングする超伝導材料の薄膜を含む、請求項4記載の電磁共振器。
【請求項6】
薄膜が誘電性基板を完全に被覆する、請求項5記載の電磁共振器。
【請求項7】
超伝導材料がアルミニウムを含む、請求項5記載の電磁共振器。
【請求項8】
空洞内に整列される非線形超伝導要素をさらに含む、請求項1記載の電磁共振器。
【請求項9】
非線形超伝導要素が少なくとも1つのジョセフソン接合を含む、請求項8記載の電磁共振器。
【請求項10】
非線形超伝導要素がトランスモンキュービットである、請求項8記載の電磁共振器。
【請求項11】
共振構造が1つ以上の誘電性要素を介して空洞にカップリングされる、請求項1記載の電磁共振器。
【請求項12】
共振構造が空洞と接触する、請求項1記載の電磁共振器。
【請求項13】
共振構造が平面である、請求項1記載の電磁共振器。
【請求項14】
共振構造が、下部要素および下部要素上に整列され、誘電性材料により下部要素から分離される上部要素を含む、請求項1記載の電磁共振器。
【請求項15】
下部要素が環状部分を含み、空洞内に自由に懸けられる少なくとも1つの末端が環状部分内に整列される、請求項14記載の電磁共振器。
【請求項16】
上部要素および下部要素が両方平面である、請求項14記載の電磁共振器。
【請求項17】
請求項1記載の電磁共振器を使用して第1の材料を特徴づける方法であって、共振構造が第1の材料を含み、該方法が:
電磁共振器の少なくとも1つの内部品質係数を測定する工程;および
測定された少なくとも1つの内部品質係数に少なくとも部分的に基づいて、第1の材料の少なくとも1つの材料特性を決定する工程
を含む、方法。
【請求項18】
少なくとも1つの材料特性が、表面抵抗、誘電正接および継ぎ目コンダクタンスの1つ以上を含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
電磁共振器のモードの第1の型に対応する第1の内部品質係数を測定する工程、および電磁共振器のモードの第2の型に対応する第2の内部品質係数を測定する工程を含む、請求項17記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の他所参照
本願は、その全体において参照により本明細書に援用される、2021年2月18日に出願され、発明の名称「Multimode Microwave Resonators」の米国仮特許出願第63/150,955号の35 U.S.C. § 119(e)下の利益を主張する。
【0002】
政府による資金供給
本発明は、米国陸軍研究室により授与されたW911NF-18-1-0212の下、政府支援によりなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
背景
高品質係数超伝導共振器は、それらの長い寿命のために量子コンピューター計算に有用な供給源である。量子コンピューター計算に対するいくつかのアプローチは、超伝導共振器のモードを、トランスモンキュービットなどのキュービットにカップリングし、それによりキュービットとのその相互作用を通して共振器の状態の普遍的な量子管理を提供する。超伝導共振器は低損失伝送線路を有するネットワークにつながれて、量子コンピューター計算にモジュール方式の大規模化可能なアプローチをもたらし得る。
【発明の概要】
【0004】
要約
いくつかの局面によると、超伝導マイクロ波空洞および空洞内にかけられ、空洞により機械的に支持される共振構造を含む電磁共振器が提供され、該共振構造は、空洞内に自由にかけられる少なくとも1つの末端を含む。
【0005】
いくつかの態様によると、共振構造は、空洞の第1の面から空洞の第2の面に伸長する第1の部分、ここで第2の面は第1の面の反対にある、および第1の部分から伸長し、空洞内に自由にかけられる少なくとも1つの末端を含む第2の部分を含む。
【0006】
いくつかの態様によると、共振構造は誘電性基板を含む。
【0007】
いくつかの態様によると、誘電性基板はサファイアおよび/またはケイ素を含む。
【0008】
いくつかの態様によると、共振構造は、誘電性基板をコーティングする超伝導材料の薄膜を含む。
【0009】
いくつかの態様によると、薄膜は誘電性基板を完全に被覆する。
【0010】
いくつかの態様によると、超伝導材料はアルミニウムを含む。
【0011】
いくつかの態様によると、該方法はさらに、空洞内に整列される非線形超伝導要素を含む。
【0012】
いくつかの態様によると、非線形超伝導要素は少なくとも1つのジョセフソン接合を含む。
【0013】
いくつかの態様によると、非線形超伝導要素はトランスモンキュービットである。
【0014】
いくつかの態様によると、共振構造は1つ以上の誘電性要素を介して空洞にカップリングされる。
【0015】
いくつかの態様によると、共振構造は空洞と接触する。
【0016】
いくつかの態様によると、共振構造は平面である。
【0017】
いくつかの態様によると、共振構造は、下部要素および下部要素上に整列され、誘電性材料により下部要素から分離される上部要素を含む。
【0018】
いくつかの態様によると、下部要素は環状部分を含み、空洞内に自由にかけられる少なくとも1つの末端が環状部分内に整列される。
【0019】
いくつかの態様によると、上部要素および下部要素は両方平面である。
【0020】
いくつかの局面によると、電磁共振器を使用して第1の材料を特徴づける方法が提供され、該共振構造は第1の材料を含み、該方法は、電磁共振器の少なくとも1つの内部品質係数を測定する工程および測定された少なくとも1つの内部品質係数に少なくとも部分的に基づいて第1の材料の少なくとも1つの材料特性を決定する工程を含む。
【0021】
いくつかの態様によると、少なくとも1つの材料特性は、表面抵抗、誘電正接(loss tangent)および継ぎ目コンダクタンスの1つ以上を含む。
【0022】
いくつかの態様によると、該方法はさらに、電磁共振器のモードの第1の型に対応する第1の内部品質係数を測定する工程および電磁共振器のモードの第2の型に対応する第2の内部品質係数を測定する工程を含む。
【0023】
前述の装置および方法の態様は、先に記載されたかまたは以下にさらに詳細に記載される局面、特徴および行為の任意の適切な組合せにより実行され得る。本教示のこれらのおよび他の局面、態様および特徴は、添付の図面と関連して、以下の説明からより十分に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図面の簡単な説明
以下の図面を参照して、種々の局面および態様を説明する。図は必ずしも一定の割合で描かれていないことが理解されるべきである。図面において、種々の図に図示されるそれぞれの同じであるかまたはほぼ同じである構成要素は、同様の番号で示される。明確化のために、全ての図において、全てではないが構成要素に符号が付されることがある。
図1図1A~1Bは、いくつかの態様による、例示的電磁共振器の異なる図を示す。
図2図2は、いくつかの態様による、電磁共振器の共振構造の製造プロセスを図示する。
図3図3は、いくつかの態様による、超伝導マイクロ波空洞の一部内に整列される例示的共振構造の写真である。
図4図4は、いくつかの態様による、材料の材料特性を決定するための、電磁共振器を操作する方法のフローチャートである。
図5図5Aは、いくつかの態様による、2つの一列に並んだ共振構造を含む例示的電磁共振器の分解図である。図5Bは、いくつかの態様による、図5Aに示される2つの一列に並んだ共振構造の平面図である。
図6-1】図6A~6Cは、いくつかの態様による、図5Aおよび5Bに示される電磁共振器の共振モードの異なる型を示す。
図6-2】図6A~6Cは、いくつかの態様による、図5Aおよび5Bに示される電磁共振器の共振モードの異なる型を示す。
図7図7A~7Bは、いくつかの態様による、非線形要素を含む例示的電磁共振器の分解図および断面平面図のそれぞれを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
詳細な説明
超伝導共振器を含む量子コンピューターの性能を向上するための1つの方法は、共振器における損失を低減することである。構成材料からの損失および伝送線路に連結する部分からの損失など、超伝導共振器がエネルギーを損失する多くの理由がある。
【0026】
超伝導空洞で形成される電磁共振器は典型的に、部分的にそれらの小さな表面対体積の比のために、他の種類の電磁共振器と比較して、優れたコヒーレンスを有し、これは該共振器を、表面誘電性損失および/または伝導体損失に対して比較的非感受性にする。量子メモリとして少数の空洞を一体化する小規模な量子デバイスは示されている。しかしながら、空洞共振器にはいくつかの重要な欠点がある。第1に、超伝導空洞共振器は典型的に、限定された範囲の利用可能な材料および作製プロセスで形成され、ほとんどは、機械加工プロセスを使用して、嵩高い超伝導体で作製される。この制限は、単結晶超伝導体などの高品質材料または元の単結晶基板上で成長する高品質超伝導薄膜の使用を妨げ、共振器のコヒーレンスに対する向上を制限する。また、超伝導空洞共振器におけるモード構造および電磁場分布は空洞の形状の結果であり、これは作製され得る共振器の種類を制限する。
【0027】
本発明者らは、共振構造を超伝導空洞内に整列することにより電磁共振器を構築するための技術を認識および理解している。設計の構成は、複数のモードを発揮する低損失超伝導空洞共振器を提供し得る。この共振器の多モード性質は、そうでなければ従来の超伝導空洞共振器において必要とされるような、空洞の物理的寸法を変える必要があることよりもむしろ、共振構造の調節により共振器のモードを調節することを可能にするような方法で、部分的に共振構造により作製される。いくつかの態様において、共振構造は、金属および/または金属化部品を含む、懸けられた超伝導体を含み得る。
【0028】
いくつかの態様によると、共振構造は、超伝導空洞内に整列され得、空洞内の開口上に懸けられ得、共振構造の末端は、空洞により機械的に支持される。いくつかの場合において、共振構造の末端は、1つ以上の留め具(fastnener)を使用して、空洞に取り付けられ得る。かかる留め具は取り外し可能であり得るので、異なる共振構造が、同じ空洞に挿入され得、そこから取り外され得る。
【0029】
いくつかの態様によると、共振構造は、十分に金属で形成され得るかまたは十分に金属化された表面を有し得る。かかる場合において、共振構造は、空洞内で支持されない少なくとも1つの自由末端を有するように形作られ得る。いくつかの従来の共振器設計は、空洞内に懸けられるまっすぐなストリップライン(stripline)を使用し得るが、かかる設計においてはストリップラインを十分に金属化することでこれを伝送線路に変える。本開示のいくつかの態様によると、十分に金属で形成されるかまたは十分に金属化された表面を有する共振構造は、共振構造の懸けられた末端で電圧をゼロにする自由末端を有する共振構造により、共振挙動(resonant behavior)を用いて成功裡に操作され得る。
【0030】
いくつかの態様によると、本明細書に記載される電磁共振器は、量子情報の記憶のための高品質メモリを提供し得る。一般的に、従来の超伝導空洞は、長いコヒーレンス時間を有し得るが、単一の材料/プロセスの組合せおよび単一の周波数に拘束される。いくつかの態様によると、本明細書に記載される電磁共振器の共振構造は、異なる材料で作製され得、および/または空洞とは異なるプロセスを使用して形成され得、その品質を潜在的に向上し(例えば共振器の品質係数(「Q係数」)を増加する)、また新しい空洞の全体を作製する必要なく、共振構造を別の共振構造に交換して異なる周波数を有する共振器を作製することを可能にする。
【0031】
いくつかの態様によると、本明細書に記載される電磁共振器は、複数の種類の共振モードを示す共振構造を含み得る。特に、共振構造は、異なる種類のモード、すなわち単に異なる共振周波数を有するモードではなく異なる電磁場分布などの異なる共振挙動を有するモードを示し得る。かかる共振器は、これらのモードのそれぞれにおいて操作され得、共振構造および/または空洞の材料(およびいくつかの場合において空洞内の他の材料)の材料特性に依存する測定値を生じ得る。結果的に、この種類の共振器は、材料の特徴付けに有用であり得る。
【0032】
いくつかの態様によると、電磁共振器の空洞の内部の共振構造は、共振器のモード構造および/または電磁場分布を調整する方法を提供し得る。例えば、2Lに等しい波長を有する半波共振器は、空洞内で長さLを有する金属細片で形成される共振構造を懸けることにより形成され得る。別の例は、空洞内に、2つの近くに分離された要素で共振構造を形成することにより電磁場を閉じ込めることである。より複雑なモード構造および場の分布は、部品の構成を作り変えることにより実現され得る。
【0033】
いくつかの態様によると、共振構造は、任意の材料または(例えば精密機械加工、レーザーカッティング、エッチング等により)ミクロ機械加工され得る材料を含み得る。例えば該材料は、精密機械加工により形成される嵩高い超伝導体および/またはレーザーカッティングにより形成される単結晶超伝導体を含み得る。付加的にまたは代替的に、共振構造は、レーザーカッティングおよび/またはエッチング、次いで操作温度で超伝導である1つ以上の材料で部品を被覆するための薄膜蒸着(eビーム、スパッタ等)により形成される単結晶誘電性基板を含み得る。このアプローチは、高品質超伝導材料にアクセスする機会を開くだけでなく、材料の品質を下げ得る任意のナノ作製プロセスの使用を回避もし得る。
【0034】
いくつかの態様によると、共振構造が誘電性材料により保持されおよび/または曝露された誘電体を含む場合、誘電体は、それらが適切に設計されない場合はさらなる損失を誘導し得る。しかしながら、本発明者らは、以下のようにこの問題に対処する技術を認識し、理解している。誘電性損失は、少なくとも部分的に、誘電性材料中の電場の吸収のためであるので、それは、超伝導体空洞共振器のモードの電場ノードで誘電体を整列することにより抑制またはさらには排除され得る。この戦略は、コヒーレンスを犠牲にすることなく、複雑な3次元共振構造を構築する方法を提供し得る。
【0035】
本明細書に記載される超伝導体空洞共振器の設計の上述の利点のいずれか1つ以上は、高いコヒーレンスを有する複雑な量子デバイスを構築するために有用な共振器を生じ得る。
【0036】
以下に続くものは、電磁共振器に関連する種々の概念およびその態様、超伝導空洞内に共振構造を整列することによりそれを構築するための技術のより詳細な説明である。本明細書に記載される種々の局面は、多くの方法のいずれかにおいて実行され得ることが理解されるべきである。具体的な実行の例は、例示目的のみのために本明細書に提供される。また、以下の態様に記載される種々の局面は、単独または任意の組合せで使用され得、本明細書に明示的に記載される組合せに限定されない。
【0037】
図1A~1Bは、いくつかの態様による例示的電磁共振器の異なる図を示す。図1A~1Bの例において、共振器100は、上部部分および下部部分101および102で形成される超伝導空洞を含む。空洞内で、共振構造110は、整列され、空洞の下部部分内の開口の上に懸けられる。共振構造110は、誘電性材料120を介して空洞により機械的に支持される末端111および112を含む交差形状、ならびに空洞内に懸けられる2つの自由末端113および114を有する。図1Bは、空洞および共振構造の下部部分の平面図を示し、図1Aは、図1Bに示される断面A-A'を通る空洞の上部部分および下部部分の分解図を示す。空洞102の下部部分の異なる平坦表面103および104は、図面においてそれらを単に視覚的に区別するために、図1Bにおいて異なる影をつけて示される。
【0038】
電磁共振器100の操作の間に、電磁共振器の1つ以上の共振モードは、(例えば共振器にカップリングされた伝送線路を使用して適切な電磁信号を空洞に送達することにより)励起され得る。機械的共振器とは異なり、電磁共振器100の共振モードは電磁放射線のモードに関連することが注意されるべきである。結果的に、(例えば操作の間に振動する機械的共振器とは異なり)共振構造110は、操作の間に静止であることが理解され得る。
【0039】
図1A~1Bの例において、空洞102は、超伝導材料を含み得るかまたはそれからなり得る。本明細書において言及されるように、超伝導材料は、臨界温度未満に冷却される場合に超伝導挙動を示す(すなわち0抵抗により電流を運ぶ)任意の材料をいい得る。超伝導材料の適切な例としては、アルミニウム、ニオブ、例えば6061アルミニウムおよび5N5アルミニウムなどの種々のアルミニウム合金、鉛、ドーピングされた炭化ケイ素およびニオブ-チタン合金が挙げられ得る。いくつかの態様において、空洞102は、マイクロ波空洞であり得る。
【0040】
いくつかの態様によると、空洞のそれぞれの部分101および102は、機械加工されるかまたはそうでなければ共振器が集合される場合に該部分が隙間なく一緒に噛み合うように滑らかに処理される嵌合表面を有し得る。例えば、図1Aに示されるように、上部部分101の一番下の表面および下部部分102の一番上の表面は、磨かれ得るか、ダイヤモンドターン(diamond turned)され得るかまたはそうでなければ平坦になるように作製され得る。いくつかの態様によると、空洞のそれぞれの部分101および102は、2つの部分を一緒に連結するためのコネクタのための穴(例えばボルトのためのねじ山のついた穴)を含み得る。
【0041】
図1A~1Bの例において、共振構造110は、上述のこれらの例などの超伝導材料を含み得るかまたはそれからなり得る。いくつかの態様において、共振構造110は、金属を含み得るかまたはそれからなり得る。いくつかの態様において、共振構造110は、その上に金属が堆積される基板(例えば誘電性基板)(例えば基板は金属化され得る)で形成され得る。例えば超伝導材料は、サファイアまたはケイ素などの基板の表面に堆積されて、共振構造110を形成し得る。いくつかの態様において、かかる金属化された構造は、全ての表面上で金属化されて、十分に金属化された共振構造を作製し得る。以下にさらに記載されるように、金属化プロセスは、そうでなければ空洞のみで形成される共振器に利用可能でない共振器100において特定の材料が利用され得るという利点を有し得る。例えば、共振器における使用に望ましいいくつかの材料は、基板上の薄膜として容易に形成され得るが、従来の機械加工によりこれらの材料を使用して空洞を作製することは、困難であり得るかまたは不可能であり得る。
【0042】
いくつかの態様によると、共振構造は、基板上に堆積される薄膜を含み得、該薄膜は、1nm以上、10nm以上、100nm以上、500nm以上、1μm以上、5μm以上または10μm以上の厚さを有する。いくつかの態様によると、共振構造は、基板上に堆積された薄膜を含み得、該薄膜は、50μm以下、10μm以下、5μm以下、1μm以下、500nm以下、100nm以下または10nm以下の厚さを有する。上述の範囲の組合せも可能である(例えば500nm以上、1μm以下の厚さを有する薄膜)。
【0043】
いくつかの態様によると、共振構造110は、末端111および112が、空洞101/102の電場のノードに配置されるように整列され得る。電場ノードは、(例えばシミュレーションによる)空洞の内部空間の形状の分析によりおよび/または操作の間の空洞の測定により決定され得る。
【0044】
上述のように、共振構造は、空洞内で支持されない少なくとも1つの自由末端を有するように形作られ得る。図1A~1Bの例において、共振構造110は2つのかかる自由末端113および114を含むが、1つの自由末端を含む他の共振構造が構想され得る。また、共振構造110の例よりも複雑な形状も構想され得る。いくつかの態様において、共振構造110は、図1A~1Bの例に示されるように平面であり得るが、非平面形状も企図され得る。
【0045】
いくつかの態様によると、共振構造110は、互いに最近位に整列され得る複数の別々の要素を含み得る(例えば1つの要素は別の要素の上に整列される)。いくつかの場合において、共振構造の複数の要素は、同じ支持位置または異なる支持位置のいずれにせよ、その全てが空洞101/102により機械的に支持され得る。いくつかの場合において、共振構造の複数の要素は、1つの要素が別の要素の上に整列され、該要素の間にスペーサー(例えば誘電性スペーサー)が整列されて整列され得る。
【0046】
いくつかの態様によると、電磁共振器100は、空洞101/102内に複数の異なる共振構造を含み得る。これらの共振構造は、互いに分離され得、空洞により別々に支持され得る。例えば、空洞102の下部部分は、互いに並んで整列される共振構造110の複数の例を支持するように整列され得る。共振構造110が空洞101/102内に懸けられる方法のために、複数の構造をこの方法で含むことは、従来の機械加工技術では作製することが困難または不可能である共振器幾何学構造を可能にし得る。
【0047】
いくつかの態様によると、末端111から末端112までの共振構造110の長さは、10mm以上、20mm以上、30mm以上、40mm以上または50mm以上であり得る。いくつかの態様によると、末端111から末端112までの共振構造110の長さは、100mm以下、50mm以下、40mm以下、30mm以下または20mm以下であり得る。上述の範囲の組合せも可能である(例えば共振構造の長さは、30mm以上、50mm以下である)。
【0048】
図1A~1Bの例において、誘電性材料120は、共振構造が空洞により機械的に支持されるが、共振構造と空洞の間に機械的または電気的接触がないように、共振構造110の末端111および112の下に整列される。しかしながらいくつかの場合において、誘電性材料における電場の吸収のために誘電性損失が生じ得る。しかしながらいくつかの態様において、誘電性材料120は、共振器100のモードの電場ノードに整列され得、それにより誘電性材料120の存在により生じる任意の誘電性損失が抑制または排除される。適切な誘電性材料120としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはナイロンなどのポリマーが挙げられ得る。
【0049】
図1Aに示される整列の代替的として、いくつかの態様において、誘電性材料は、共振構造が空洞101により支持され、それと接触するように省略され得る。例えば共振構造110は、空洞101と機械的に接触する非導電性部分を含み得る。このように図1Bの図と一致して、共振構造110は、空洞のいずれかの面で表面103と直接接触し得る。
【0050】
いくつかの態様において、共振構造は、構造110の残りにおいて金属化される下にある基板のみを含む末端111および112を除いて十分に金属化され得る。このアプローチは、共振構造と空洞101の間の直接の電気的接触を回避しながら、さらなる誘電性材料120を使用することなく所望の共振構造を作製し得る。得られる電磁モードは、曝露された基板をモードの電場ノードに整列することにより、曝露された誘電性基板のための損失に対して非感受性であり得る。
【0051】
上述のように、いくつかの態様において、共振構造は、(介在誘電性材料を介するかまたは直接のいずれにせよ)共振構造を空洞から取り外す留め具により空洞にカップリングされ得る。例えば留め具は、ねじ、クリップまたは共振構造110を空洞に関して静止するように保持する任意の他の適切な構造を含み得る。いくつかの場合において、留め具は、生じ得る共振構造の任意の振動を最小化するように選択され得る。適切な留め具は、PTFEまたはナイロンなどの誘電性材料で形成され得るかまたは金属を含み得る。金属留め具(例えば金属ねじ)の場合において、空洞内に金属構造を含むことの負の効果は、金属留め具(1つまたは複数)と共振構造の導電性の部分の間の導電性の電気的接続を回避することにより抑制され得るかまたは排除され得る。例えば、上述の共振構造の誘電性部分は、共振構造の導電性部分と空洞の間に電気的接続を生じることなく空洞と接触し得、金属留め具により空洞に留められ得る。
【0052】
図2は、いくつかの態様による、電磁共振器の共振構造のための製造プロセスを図示する。図2の例において、共振構造(例えば図1A~1Bに示される共振構造110)について所望の形状に形成される誘電性基板210は、ホルダー220により保持される。材料(例えば金属、超伝導材料)の薄膜は、物理的気相成長(例えば電子ビーム物理的気相成長)および/またはスパッタリングを含み得る任意の適切なプロセス230を介して基板上に堆積され得る。堆積の間に、ホルダー220は、共振構造の全ての曝露された表面が薄膜によりコーティングされるように、図2に示される環状部分の周りに回転し得る。
【0053】
いくつかの態様において、基板210は、ケイ素またはサファイアなどの材料を含み得る。いくつかの場合において、基板210は、単結晶誘電体で形成され得る。いくつかの態様において、基板上に堆積される薄膜は、アルミニウム、ニオブ、例えば6061アルミニウムおよび5N5アルミニウムなどのアルミニウム合金、鉛、ドーピングされた炭化ケイ素および/またはニオブ-チタン合金を含み得るかまたはそれからなり得る。
【0054】
図3は、いくつかの態様による、超伝導マイクロ波空洞の一部内に整列される例示的共振構造の写真である。図3の例において、マイクロ波空洞302の下部部分は、空洞302の部分にカップリングされ、該空洞の部分により機械的に支持される例示的共振構造310と共に示される。共振構造310は、サファイアの基板をレーザーカッティングして、次いでアルミニウムの層を、電子ビーム物理的気相成長によりサファイア上に堆積させることにより形成された。空洞302の下部部分は、6061アルミニウムで形成され、ダイヤモンドターンされた上部嵌合表面を有する。共振構造310は、アルミニウムねじ341を使用して空洞302の下部部分にカップリングされる。また、ベリリウム-銅などの適切な材料で形成されるクリップ342を、ねじと共振構造の間に整列する。
【0055】
図3の例において、共振構造310は、空洞302の下部部分との直接機械的接触において整列される。この例において、共振構造310は、構造が空洞の下部部分と接触する誘電性部分を含み得る。クリップ342は、共振構造を空洞302の下部部分に保持するように提供され得、ねじは、それぞれのクリップの一端を空洞の下部部分に固定する。
【0056】
図4は、いくつかの態様による、材料の材料特性を決定するために電磁共振器を操作する方法のフローチャートである。上述のように、本明細書に記載される電磁共振器のいくつかの態様は、共振構造および/または空洞の材料の材料特性に依存する測定値を生じるように操作され得る。方法400は、いくつかの態様による、共振器を形成してかかる測定値を生じ、次いで該測定値を使用して材料特性を誘導する方法である。
【0057】
図4の例において、方法400は、共振構造が空洞内に整列されて、電磁(EM)共振器を形成する行為402で始まる。そのように作製される共振器は、例えば図1A~1Bに示される共振器100または図1A~1Bに関して上で議論される記載の態様のいずれかにおける共振器であり得る。適切な共振器のさらなる例を以下に記載する。いくつかの場合において、共振構造は、空洞が形成される(または空洞の内部をコーティングする)ものと同じ材料で形成され得るかまたはそれを含み得る。例えば、共振構造は、アルミニウムの表面薄膜を含み得、空洞も、アルミニウムで形成され得る。
【0058】
行為404において、行為402で形成される電磁共振器は、(例えば共振器にカップリングされる伝送線路を使用して空洞に適切な電磁信号を送達することにより)操作され、空洞の内部品質係数が測定される。いくつかの態様において、共振器の異なるモードが励起され得、モードのそれぞれについて内部品質係数が測定される。これらの異なるモードは、異なる共振周波数を有するモードおよび/または異なる共振挙動を有するモードであり得る。いくつかの態様において、共振器は、異なる型の損失に対し異なるレベルの感受性を有する異なる型のモードを示し得;この場合、これらのモードの1つについて内部品質係数を測定することは、他のモードの1つについての内部品質係数測定値とは異なる、共振器に関する情報を提供し得る。
【0059】
行為406において、行為404において得られた1つ以上の内部品質係数測定値に基づいて、1つ以上の材料特性が計算され得る。特定の共振器設計についてのこのプロセスの例を以下に記載する。行為406において計算された材料特性は、共振構造の材料および/または空洞の材料の1つ以上の臨界温度、浸透深さおよび/または表面抵抗性を含み得る。また、共振器が1つ以上の誘電体を含む場合(例えばその上に共振構造が積載されるおよび/または共振構造の要素の間のスペーサーとして)、誘電体の誘電正接が決定され得る。さらに、空洞の上部部分と下部部分の間の連結の継ぎ目抵抗が決定され得る。
【0060】
いくつかの態様において、行為406は、異なる予測される損失を共振器500の所定のモードについての内部品質係数に関連づける複数の式を解くことを含み得る。複数の式は、(上で同定されるものなどの)モード独立材料特性についての値を含み得るが、これは互いに線形に関連し得、それぞれのモードについての内部品質係数の複数の測定値から材料特性の値を決定することを可能にする。
【0061】
任意に、行為406の後、方法400は再度、新規の共振構造が空洞内に整列される行為402で始まり得る。例えば、該方法は、空洞内の共振構造を新規の共振構造で置き換えて、新規の共振器を形成することにより、任意の回数、反復され得る。この様式で、異なる共振構造の材料が評価され得る。
【0062】
方法400を実行する例示的な例を提供するために、図5Aは、いくつかの態様による、2つの一列に並んだ共振構造を含む例示的電磁共振器の分解図を示す。図5Aの例において、共振器500は、上部部分および下部部分501および502で形成される超伝導空洞を含む。上部要素511および下部要素512を含む共振構造は、空洞内に整列され、空洞502の下部部分中の開口の上に懸けられる。共振構造511/512は、誘電性スペーサー531を介して空洞により機械的に支持され、それぞれの要素の環状領域の内部に整列される、要素511および512のそれぞれ内に2つの4つの自由末端を有する。共振構造の上部要素511および下部要素512は、誘電性スペーサー532により分離され、誘電性ねじ533を使用して、空洞502の下部部分に取り付けられる。いくつかの態様において、スペーサー531および532は、PTFEワッシャー(例えば0.1mmの厚さのワッシャー)を含み得、誘電性ねじ533は、ナイロンねじを含み得るが、他の材料も使用され得る。
【0063】
いくつかの態様による共振構造511/512の平面図を図5Bに示す。図5Bに示される図は、共振器500が集合される場合にそれらがどのように重複するかを図示するために、上部要素511および下部要素512の中心領域のみに焦点を当てる。
【0064】
図5A~5Bの例について注意され得る場合、共振器500は、誘電性スペーサーにより分離され、空洞内に囲まれる2つの平面要素を含む。例えば、上部要素および下部要素511および512は、金属または金属化された部品を含み得る。空洞は、上述のように超伝導材料で形成され得る。上部要素および下部要素511および512のそれぞれは、平面の長円形(または円形)リングを含み、2つの支持アームがリングの反対の面でリングの外側に連結され、2つのフォークがリングの内側に連結される。両方の平面部品上の支持アームは、リングの短軸に沿って方向づけられ得る。頂部平面部品551上の2つのフォークは、リングの長軸に沿って方向づけられ得、底部平面部品552上の2つのフォークは、リングの短軸に沿って方向づけられる。そのため、例示的共振器500は、長円形リングの両方の軸の周囲に反射対称性を示し得る。
【0065】
例示的共振器500は、マイクロ波周波数領域中で複数の共振モードを含む多モード共振器であり得る。いくつかの態様において、これらのモードは、共振器により示される異なる損失チャンネルに対して異なる感受性を有し得る。共振器500のモードの3つの例示的な型をここで説明する。
【0066】
共振器500のモードの第1の型は、本明細書において、示差的ささやき回廊(differential whispering gallery)モード(「DWGモード」)と称され得る。図6Aにより示されるこれらのモードは、上部要素および下部要素511および512からの2つの長円形リングにより支持される。2つの長円形リング上の反対の電荷(図においてEと標識される)および電流(図においてJsurfと標識される)の分布は、リングの間の真空ギャップ内に電場および磁場の両方を閉じ込め、これらのモードを超伝導体の表面導電性損失および表面誘電性材料からの誘電性損失に対して感受性にする。図6A、6Bおよび6Cのそれぞれにおいて、共振構造の上部要素および下部要素511および512は、別々の平面図に示されるが、図5Bに示されるように、操作の間に互いに対して整列されることが理解され得る。
【0067】
共振器500のモードの第2の型は、本明細書において示差的フォーク(differential fork)モード(「DFモード」)と称され得る。図6Bに示されるこれらのモードは、上部要素および下部要素511および512からのフォークにより支持される。頂部フォークおよび底部フォーク上の反対の電荷分布は、フォークの間の真空ギャップ内に電場を集中させ、これらのモードを、表面誘電性材料からの誘電性損失に対して感受性にする。これらのモードの磁場は真空ギャップ内に集中されないので、それらは、DWGモードと比較して、表面導電性損失に対して比較的感受性が低い。
【0068】
共振器500のモードの第3の型は、本明細書において共通ささやき回廊(common whispering gallery)モード(「CWGモード」)と称され得る。DWGモードとは異なり、これらのモードは、図6Cに示されるように2つの長円形リング上で同じ電荷および電流分布を有し得る。そのため、リングの間の真空ギャップ内に電磁場はない。これらのモードの電磁場は、長円形リングと空洞表面の間にあり、DWGモードおよびDFモードよりもかなり大きいモード体積を生じる。そのため、それらは表面導電性損失および表面誘電性損失に対して感受性が比較的低くあり得る(または感受性でない)が、超伝導空洞の連結からの継ぎ目損失に対しては感受性が比較的高い。
【0069】
いくつかの態様によると、DWGモード、DFモードおよびCWGモードの逆内部品質係数
【数1】
は、参加マトリックス(participation matrix)を通じて、空洞および共振構造材料(これは以降超伝導材料であると推定される)の表面抵抗性、誘電体531、532および533の誘電正接ならびに空洞501および502の上部部分および下部部分の間の連結の継ぎ目抵抗に対して線形に関連し得る。参加マトリックスは、幾何学因子である対応するモードにおける損失チャンネルの参加因子、表面参加因子ならびにDWGモード、DFモードおよびCWGモードについての継ぎ目アドミタンスを含み得る。これらの参加因子は、モードの電磁場分布により決定され得る。それらは、有限要素電磁シミュレーションにより計算され得る。DWGモード、DFモードおよびCWGモードが異なる損失チャンネルに対して感受性である場合、それらの参加因子は、互いに線形に独立し得る。そのため、それらの参加マトリックスは逆転可能であり、測定された逆品質係数を、超伝導空洞および共振構造材料の表面抵抗性、誘電体の誘電正接ならびに空洞継ぎ目の抵抗に変換するために使用され得る。
【0070】
例えば、所定のモード(i)についての内部品質係数
【数2】
は:
【数3】
により与えられ得、ここでRSは、共振構造および空洞が形成される超伝導金属の表面抵抗であり、G(i)は、モード(i)についての幾何学的因子であり、
【数4】
は、モード(i)についての超伝導金属と空気の間の参加因子であり、δMAは、モード(i)についての誘電正接であり、
【数5】
は、モード(i)についての継ぎ目アドミタンスであり、gseamは、継ぎ目抵抗である。DWGモード、DFモードおよびCWGモードのそれぞれについての
【数6】
を測定することならびにそれぞれのモードについての
【数7】
の値をモデリングすることにより、RS、δMAおよびgseamのモード独立値が決定され得る。
【0071】
いくつかの態様によると、DWGモード、DFモードおよびCWGモードは、カップリングポートに同時にカップリングされ得、単一クールダウンプロセスの間に単一デバイス内のそれらの反射スペクトルからのそれらの内部品質係数の高精密測定を可能にする。これは、異なるデバイスおよび異なるクールダウン条件のバリエーション由来の測定された内部品質係数の不確かさを排除し得、表面抵抗性、誘電正接および継ぎ目抵抗に対する感度を増加する。DWGモード、DFモードおよびCWGモードに加えて、共振器500は、スペーサーおよびねじ由来の誘電性損失に感受性のモードも示し得る。これらのモードは、ねじおよびスペーサーの誘電正接に対する非常に密な結合を提供し得、例えば上述のように、DWGモード、DFモードおよびCWGモードにおけるこれらの誘電体の損失に対する非感受性を正当化するために使用され得る。
【0072】
上述の例は共振器500に関連して記載されるが、共振器内の予測される損失チャンネルをモデリングすることおよび共振器の異なるモードがそれぞれの損失チャンネルに感受性であると予想される程度を同定することにより、本明細書に記載される任意の適切な電磁共振器について、同様のプロセスが構想され得る。DWGモード、DFモードおよびCWGモードの例について、CWGモードは、継ぎ目損失により感受性であると予想され得るので、他の2つの型のモードについて観察されるものよりも相当大きな
【数8】
の値を有する。いくつかの場合において、特定の型のモードは特定の損失チャンネルに非感受性であり得、この場合において関連のある値は0であり得、それにより異なる損失を内部品質係数に関連付ける式において未知の材料特性を決定するための計算が簡略化される。
【0073】
図7A~7Bは、いくつかの態様による、非線形要素を含む例示的電磁共振器の分解および断面平面図のそれぞれを示す。図7の例に示されるように、電磁共振器700は、空洞701および702の上部部分および下部部分のそれぞれ、ならびに空洞の下部部分により機械的に支持される、懸けられた共振構造710を含み得る。共振器700は、ジョセフソン接合などの非線形超伝導要素720も含み得る。いくつかの場合において、共振器700は、非線形超伝導要素720としてジョセフソン接合を含むトランスモンキュービットを含み得る。
【0074】
図7の例において、非線形要素720は、共振構造と接触することなく空洞内に懸けられ得るが、適切な駆動信号を介した共振器の操作により、共振構造710および/または空洞701/702の非線形要素とモード(複数のモードのいずれかを含む)の間に相互作用が生じ得る。図7の例において、共振構造710は、超伝導材料711で金属化された中心領域および低損失誘電性基板で形成されるその末端712での外部領域を含む。いくつかの場合において、中心領域は、超伝導材料の薄膜でコーティングされた同じ基板を含み得る。
【0075】
図7の例において、かけられた共振構造710および非線形要素720は、図に示されないばねクリップまたは他のクランピング機構を有する台(pedestal)に取り付けられ得る。非線形要素720の設計および非線形要素と共振構造の間の距離は、共振器700と非線形要素720の高いQモードの間のカップリングの強度を決定し得る。いくつかの場合において、数MHzの分散カップリングが達成可能であり得る。いくつかの態様において、非線形要素720の非線形性は、共振器700における高いQモードのユニバーサル量子操作を提供し得、それにより長持ちする量子メモリを提供する。
【0076】
いくつかの態様において、単一の空洞は、それぞれ単一の非線形要素720にカップリングされる複数の共振構造710を含み得る。この構成は、単一のパッケージ内に整列されるいくつかの高Qデバイスを効果的に提供し得、例えば量子メモリとして使用され得る。
【0077】
本発明の少なくとも一態様のいくつかの局面はこのように記載されるが、種々の変更、改変および向上は当業者に容易であることが理解されよう。
【0078】
かかる変更、改変および向上は、本開示の一部であることが意図され、本発明の精神および範囲にあることが意図される。さらに、本発明の利点が示されるが、本明細書に記載される技術の全ての態様が記載される利点の全てを含むわけではないことが理解されるべきである。いくつかの態様は、本明細書において有利であると記載される特徴を何ら実行しないこともあり、いくつかの例においては記載される特徴の1つ以上を実行して、さらなる態様が達成されることもある。したがって、前述の記載および図面は、例示のみのためのものである。
【0079】
本発明の種々の局面は、単独、組合せまたは前述のものに記載される態様中に具体的に記載されない種々の配置で使用され得、そのためその適用において前述の記載に示されるかまたは図面に示される構成要素の詳細および配置に限定されない。例えば、一態様に記載される局面は、何らかの様式で他の態様に記載される局面と組み合されてもよい。
【0080】
また、本発明は、方法として具体化され得、その例示が提供される。該方法の一部として実施される行為は、任意の適切な方法で順序づけられ得る。したがって、例示態様において連続的な行為として示されてはいるが、示されるものとは異なる順序で行為が実施される態様が構成され得、これにはいくつかの行為を同時に実施することが含まれ得る。
【0081】
請求項要素を修飾するための特許請求の範囲における例えば「第1」、「第2」、「第3」などの順序を示す用語の使用は、それ自体では、別の請求項要素に対する1つの請求項要素の優先、先行もしくは順序または方法の行為が実施される時間的な順序のいずれも意味しないが、単に、特定の名称を有する1つの請求項要素を、同じ名称(順序を示す用語の使用以外)を有する別の要素と区別して、複数の請求項要素を区別するための標識として使用される。
【0082】
用語「約(approximately)」および「約(about)」は、いくつかの態様において目的の値の±20%以内、いくつかの態様において目的の値の±10%以内、いくつかの態様において目的の値の±5%以内、およびさらにいくつかの態様において目的の値の±2%以内を意味するように使用され得る。用語「約(approximately)」および「約(about)」は目的の値を含み得る。用語「実質的に等しい」は、いくつかの態様において互いの±20%以内、いくつかの態様において互いの±10%以内、いくつかの態様において互いの±5%以内、およびさらにいくつかの態様において互いの±2%以内にある値をいうために使用され得る。
【0083】
用語「実質的に」は、いくつかの態様において比較上の基準の±20%以内、いくつかの態様において±10%以内、いくつかの態様において±5%以内、およびさらにいくつかの態様において±2%以内にある値をいうために使用され得る。例えば、第2の方向に対して「実質的に」垂直な第1の方向は、いくつかの態様において第2の方向と90°の角度をなすことの±20%以内、いくつかの態様において第2の方向と90°の角度をなすことの±10%以内、いくつかの態様において第2の方向と90°の角度をなすことの±5%以内、およびさらにいくつかの態様において第2の方向と90°の角度をなすことの±2%以内にある第1の方向をいい得る。
【0084】
また、本明細書で使用される語法および用語法は、説明を目的とするものであり、限定とみなされるべきではない。本明細書中の「含む(including)」、「含む(comprising)」または「有する(having)」、「含む(containing)」、「含む(involving)」およびそれらの変形の使用は、以降に列挙される項目およびそれらの同等物ならびにさらなる項目を包含することを意味する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図7
【国際調査報告】