(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-15
(54)【発明の名称】改善された接着剤コーティング、コーティングされた膜、コーティングされた電池セパレータ、および関連方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/451 20210101AFI20240207BHJP
H01M 50/426 20210101ALI20240207BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20240207BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20240207BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20240207BHJP
H01M 50/446 20210101ALI20240207BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20240207BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20240207BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20240207BHJP
【FI】
H01M50/451
H01M50/426
H01M50/42
H01M50/443 M
H01M50/434
H01M50/446
H01M50/443 C
H01M50/417
H01M50/414
H01M50/403 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549681
(86)(22)【出願日】2022-02-04
(85)【翻訳文提出日】2023-10-12
(86)【国際出願番号】 US2022015164
(87)【国際公開番号】W WO2022177754
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598064680
【氏名又は名称】セルガード エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】イン,ウェンビン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,チェンミン
(72)【発明者】
【氏名】ライナルツ,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】武田 久
(72)【発明者】
【氏名】ユー,シャン
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021BB12
5H021CC03
5H021CC04
5H021EE02
5H021EE03
5H021EE04
5H021EE06
5H021EE10
5H021EE21
5H021HH01
5H021HH03
(57)【要約】
【課題】本発明は、改善された接着性コーティング、コーティング膜、コーティングされた電池セパレータ、および関連方法を提供する。
【解決手段】膜またはリチウムイオン電池セパレータに使用される粘着性耐熱性コーティングが開示される。コーティングは、リチウムイオン電池用の電極に対して、少なくとも改善された乾燥接着性を有する。コーティングは、それらの表面に水溶性粘着性ポリマーを備える耐熱性粒子を含む。水溶性粘着性ポリマーは、ポリエチレンオキシド(PEO)であってよい。コーティングは、非水溶性粘着性ポリマーを含んでもよい。非水溶性粘着性ポリマーは、フッ化ポリビニリデン(PVDF)ホモポリマー、コポリマー、またはターポリマーであってよい。非水溶性粘着性ポリマーは、水溶性粘着性ポリマーを備える耐熱性粒子の表面上のコーティングと同一の層中にあってもよく、または異なる層中にあってもよい。粘着性耐熱性コーティングの形成方法もまた開示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質基材フィルムと、
前記多孔質基材フィルムの少なくとも片面上の粘着性耐熱性コーティングと、
を含む粘着性耐熱性コーティングセパレータであって、
前記粘着性耐熱性コーティングは、耐熱性粒子と水溶性粘着性ポリマーとを含み、
前記耐熱性粒子の少なくとも一部は、前記水溶性粘着性ポリマーでコーティングされている、
粘着性耐熱性コーティングセパレータ。
【請求項2】
前記耐熱性粒子と前記水溶性粘着性ポリマーとの比が1:1~15:1である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項3】
前記粘着性耐熱性コーティングは、非水溶性粘着性ポリマーから作製される粘着性粒子をさらに含み、
前記非水溶性粘着性ポリマーが、前記耐熱性粒子および前記水溶性粘着性ポリマーと同一のコーティング層中にあるか、または異なるコーティング層中にある、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項4】
前記コーティング中の耐熱性粒子の総量が、20%以上、または50%以上である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項5】
前記耐熱性粒子は、SiO
2、Al
2O
3、CaCO
3、TiO
2、SiS
2、SiPO
4、AlO(OH)、またはそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項6】
前記コーティング層は、バインダをさらに含む、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項7】
前記バインダは、アクリル系バインダを含む、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項8】
前記コーティングは、1~10μmの厚さを有する、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項9】
前記多孔質基材フィルムは、微多孔質ポリオレフィン基材フィルムである、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項10】
前記非水溶性粘着性ポリマーは、PVDFホモポリマー、PVDFコポリマー、PVDFターポリマー、アクリル系ポリマー、またはそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上である、請求項3に記載のセパレータ。
【請求項11】
前記水溶性粘着性ポリマーは、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシド系コポリマー、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項12】
請求項1に記載のセパレータを含むリチウムイオン電池。
【請求項13】
コーティングスラリーを塗布することを含む、
粘着性耐熱性コーティングセパレータの形成方法であって、
前記スラリーは、耐熱性粒子20%~99%と、水溶性粘着性ポリマーを含むポリマー5%~90%と、水からなるか、または本質的に水からなる溶媒と、を含み、
前記耐熱性粒子の少なくともいくつかは、前記水溶性粘着性ポリマーでコーティングされている、粘着性耐熱性コーティングセパレータの形成方法。
【請求項14】
前記コーティングスラリーは、バインダ1%~10%を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリマーは、非水溶性粘着性ポリマーをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記スラリーは、前記耐熱性粒子50%~99%と前記ポリマー5%~50%とを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記スラリーは、前記耐熱性粒子70%~99%と前記ポリマー5%~25%とを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記スラリーが、分散剤を含む添加剤をさらに1つ以上含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記耐熱性粒子は、SiO
2、Al
2O
3、CaCO
3、TiO
2、SiS
2、SiPO
4、AlO(OH)、またはそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記溶媒は、水からなる、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記溶媒は、本質的に水からなる、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記水溶性ポリマーは、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシドコポリマー、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上である、請求項13に記載の方法。
【請求項23】
前記非水溶性粘着性ポリマーは、PVDFホモポリマー、PVDFコポリマー、PVDFターポリマー、アクリル系ポリマー、またはそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上である、請求項13に記載の方法。
【請求項24】
前記水溶性粘着性ポリマーはコポリマーであり、前記コポリマーの1つのポリマーは、前記コポリマーの別のポリマーと比べて、耐熱性粒子の少なくとも1つと相溶性が高い、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項25】
前記コポリマーはPPO-PEOコポリマーであり、前記耐熱性粒子は耐熱性有機粒子である、請求項24に記載のセパレータ。
【請求項26】
前記水溶性粘着性ポリマーはコポリマーであり、前記コポリマーの1つのポリマーは、前記コポリマーの別のポリマーと比べて、耐熱性粒子の少なくとも1つと相溶性が高い、請求項13に記載の方法。
【請求項27】
前記コポリマーはPPO-PEOコポリマーであり、前記耐熱性粒子は耐熱性有機粒子である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
多孔質基材フィルムと、
多孔質または微多孔質ポリマー膜基材フィルムの少なくとも片面上の粘着性耐熱性コーティングと、
を含み、
前記粘着性耐熱性コーティングは、耐熱性粒子と水溶性粘着性ポリマーとを含み、
前記耐熱性粒子の少なくとも一部は、水溶性粘着性ポリマーでコーティングされている、
粘着性耐熱性コーティングポリマー膜。
【請求項29】
前記耐熱性粒子と前記水溶性粘着性ポリマーとの比が1:1~15:1である、請求項28に記載の膜。
【請求項30】
前記粘着性耐熱性コーティングは、非水溶性粘着性ポリマーから作製される粘着性粒子をさらに含み、
前記非水溶性粘着性ポリマーが、前記耐熱性粒子および前記水溶性粘着性ポリマーと同一のコーティング層中にあるか、または異なるコーティング層中にある、請求項28に記載の膜。
【請求項31】
コーティング中の前記耐熱性粒子の総量は、20%以上、または50%以上である、請求項28に記載の膜。
【請求項32】
前記耐熱性粒子は、SiO
2、Al
2O
3、CaCO
3、TiO
2、SiS
2、SiPO
4、AlO(OH)、またはそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項28に記載の膜。
【請求項33】
前記コーティング層は、バインダをさらに含む、請求項28に記載の膜。
【請求項34】
前記バインダは、アクリル系バインダを含む、請求項28に記載の膜。
【請求項35】
前記コーティングは、1~10μmの厚さを有する、請求項28に記載の膜。
【請求項36】
前記基材フィルムが微多孔質ポリオレフィン基材フィルムである、請求項28に記載の膜。
【請求項37】
前記非水溶性粘着性ポリマーは、PVDFホモポリマー、PVDFコポリマー、PVDFターポリマー、アクリル系ポリマー、またはそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上である、請求項30に記載の膜。
【請求項38】
前記水溶性粘着性ポリマーは、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシド系コポリマー、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上である、請求項28に記載の膜。
【請求項39】
請求項28に記載の膜を含む、織物、フィルタ、積層体、セパレータ、コンデンサ、または電池。
【請求項40】
コーティングスラリーを多孔質または微多孔質高分子膜基材フィルムの少なくとも片面上に塗布することを含む、
請求項28に記載の粘着性耐熱性コーティングポリマー膜の形成方法であって、
前記スラリーは、耐熱性粒子20%~99%と、水溶性粘着性ポリマーを含むポリマー5%~90%と、水からなるか、または本質的に水からなる溶媒と、を含み
前記耐熱性粒子の少なくともいくつかは、水溶性粘着性ポリマーでコーティングされている、粘着性耐熱性コーティングポリマー膜の形成方法。
【請求項41】
前記コーティングスラリーは、バインダ1~10%を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記ポリマーは、非水溶性粘着性ポリマーをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記スラリーは、前記耐熱性粒子50%~99%と前記ポリマー5%~50%とを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記スラリーは、前記耐熱性粒子70%~99%と前記ポリマー5%~25%とを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
前記基材フィルムは、微多孔質単層または多層ポリオレフィン基材フィルムであるか、またはポリエチレンおよび/またはポリプロピレンから作製される乾式微多孔質単層または多層ポリオレフィン基材フィルムである、請求項40に記載の方法。
【請求項46】
前記非水溶性粘着性ポリマーが、前記耐熱性粒子および前記水溶性粘着性ポリマーと同じコーティング層中にある、請求項3に記載のセパレータ。
【請求項47】
前記非水溶性粘着性ポリマーが、前記耐熱性粒子および前記水溶性粘着性ポリマーと異なるコーティング層中にある、請求項3に記載のセパレータ。
【請求項48】
別のコーティングスラリーを塗布することを含む、
粘着性耐熱性コーティングセパレータの形成方法であって、
前記別のコーティングスラリーは非水溶性粘着性ポリマーを含み、
前記コーティングスラリーは任意の方法で塗布されている、請求項13に記載の方法。
【請求項49】
前記別のコーティングスラリーが2番目に塗布されている、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記非水溶性粘着性ポリマーが、前記耐熱性粒子および前記水溶性粘着性ポリマーと同じコーティング層中にある、請求項30に記載の膜。
【請求項51】
前記非水溶性粘着性ポリマーが、前記耐熱性粒子および前記水溶性粘着性ポリマーと異なるコーティング層中にある、請求項30に記載の膜。
【請求項52】
別のコーティングスラリーを塗布することをさらに含む、
粘着性耐熱性コーティングポリマー膜の形成方法であって、
前記別のコーティングスラリーは非水溶性粘着性ポリマーを含み、
前記コーティングスラリーは任意の方法で塗布されている、請求項40に記載の方法。
【請求項53】
前記別のコーティングスラリーが2番目に塗布されている、請求項52に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、改善された粘着性コーティング、特に改善された粘着性耐熱性コーティングに関する。改善されたコーティングは、多孔質フィルムの表面に塗布され、粘着性の膜または電池セパレータを形成することができる。電池セパレータは、リチウムイオン電池に使用されてもよい。
【背景技術】
【0002】
耐熱性コーティングは、電池セパレータとして使用される微多孔質フィルムに塗布され、安全性を向上させている。このようなコーティングは、例えば、本分野において影響力のある特許である、セルガードの特許RE47,520号(以下‘520号と記載する。)において記載されている。‘520号特許は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
耐熱性であり、粘着性非水溶性粒子を含んだ水性コーティングは、例えばセルガードの特許公開公報US2016/0164060(以下、‘060公報と記載する。)に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。これらのコーティングは、耐熱性であり、電解質によって湿った電極に対して、非常に優れた接着性を示した。これが、コーティングの「湿潤接着性」特性である。しかし、例えば、電池の製造プロセスの間および電解質を加える前などの、乾燥状態の電極に対するコーティングの接着性は、いくつかのメーカーが望むものより低かった。これが、コーティングの「乾燥接着性」特性である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、改善された「乾燥接着性」特性を備える耐熱性コーティングが、必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示される本発明は、上述したような従来の粘着性耐熱性コーティングの有する数多くの問題を処理する。例えば、本明細書に記載の粘着性耐熱性コーティングは、従来の粘着性耐熱性コーティングと比べて、増大した乾燥接着性を示すことができる。乾燥接着性は、2つ以上の要素により増大することができる。
【0006】
一つの態様では、耐熱性粒子と水溶性粘着性ポリマーとを含む、粘着性耐熱性コーティングが記載されている。耐熱性粒子の少なくとも一部は、水溶性粘着性ポリマーでコーティングされている。水溶性粘着性ポリマーは、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上である。
【0007】
コーティングは、多孔質基材フィルムのような基材フィルム上に備えられていてもよい。コーティングと基材フィルムとの組み合わせは、接着性の耐熱性コーティングされた電池セパレータを提供することができる。コーティングは、1μm~10μmの厚みを有してよい。コーティングは、1つ、または2つ、またはそれより多くの層を有してよい。基材フィルムは、微多孔質ポリオレフィン基材フィルムであってよい。
【0008】
コーティングにおいて、耐熱性粒子と水溶性粘着性ポリマーとの比は、1:1~15:1である。コーティング中の耐熱性粒子の総量は、20%以上、または50%以上である。耐熱性粒子は、SiO2、Al2O3、CaCO3、TiO2、SiS2、SiPO4、AlO(OH)、耐熱性有機粒子、またはそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、コーティングは、さらに、非水溶性粘着性ポリマーから作製される粘着性粒子を含む。非水溶性ポリマーは、PVDFホモポリマー、PVDFコポリマー、PVDFターポリマー、アクリル系ポリマー、またはそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上である。いくつかの実施形態では、非水溶性粘着性ポリマーから作製される粘着性粒子は、耐熱性粒子および水溶性粘着性ポリマーと同一の層中、または異なる層中に添加されてよい。例えば、いくつかの実施形態では、耐熱性粒子と水溶性粘着性ポリマーとを第一の層に提供してもよく、水溶性粘着性ポリマーを第一の層の最表面にある第二の層に提供してもよい。
【0010】
いくつかの実施形態では、コーティングは、さらにバインダを含む。バインダは、アクリル系バインダであってよい。1つ、2つ、またはそれを超える層を含むコーティングでは、バインダは、一つの層、いくつかの層、または各層に存在してよい。複数の層中のバインダは、同一でも異なっていてもよい。
【0011】
別の態様では、上述の粘着性耐熱性コーティングまたは粘着性耐熱性電池セパレータを含むリチウムイオン電池が記載されている。
【0012】
別の態様では、粘着性耐熱コーティングの形成方法が記載される。本方法は、(1)耐熱性粒子20%~99%と、水溶性粘着性ポリマーを含むポリマー5%~90%と、水からなるか、または本質的に水からなる溶媒と、を含有するコーティングスラリーを提供することを含んでよい。スラリー中の耐熱性粒子の少なくともいくつかは、水溶性粘着性ポリマーによってコーティングされる。いくつかの実施形態では、本方法は、スラリーを多孔質基材フィルムに塗布して、例えば、粘着性耐熱性電池セパレータを形成するステップを含んでもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、スラリーは、耐熱性粒子50%~99%と、ポリマー5%~50%とを含む。その他、スラリーは、耐熱性粒子70%~99%とポリマー5%~25%とを含む。いくつかの実施形態では、スラリーは、バインダ1%~10%をさらに含んでもよい。
【0014】
水溶性粘着性ポリマーは、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール(PVA)、またはポリビニルピロリドン(PVP)、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上であってよい。
【0015】
耐熱性粒子は、SiO2、Al2O3、CaCO3、TiO2、SiS2、SiPO4、AlO(OH)、耐熱性有機粒子、またはそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つを含んでよい。
【0016】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、非水溶性粘着性ポリマーをさらに含んでもよい。非水溶性ポリマーは、PVDFホモポリマー、PVDFコポリマー、PVDFターポリマー、アクリル系ポリマー、またはそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上である。
【0017】
いくつかの実施形態では、本方法は、非水溶性粘着性ポリマーを含むコーティングスラリーを塗布するステップをさらに含んでもよい。スラリーは、任意の方法で塗布することができる。いくつかの実施形態では、非水溶性粘着性ポリマーを含むスラリーは、2番目に塗布される。
【0018】
いくつかの実施形態では、スラリーは、1つ以上の添加剤をさらに含んでよく、添加剤は分散剤を含んでよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】耐熱性粒子のコーティングを示す概略図である。
【
図2】本明細書に記載のいくつかの実施形態による例示的なコーティングセパレータの概略図である。
【
図3】本明細書に記載のいくつかの実施形態による例示的なコーティングセパレータの概略図である。
【
図4】本明細書に記載のいくつかの実施形態から収集されたデータを含む表である。
【
図5】本明細書に記載のいくつかの実施形態から収集されたデータを含む表である。
【
図6】本明細書に記載のいくつかの実施形態から収集されたデータを含む表である。
【
図7】本明細書に記載のいくつかの実施形態から収集されたデータを含む表である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書に記載の粘着性耐熱性コーティングは、従来の粘着性耐熱性コーティングと比較して、とりわけ大きく向上した乾燥接着性を示している。コーティングは、多孔質フィルムの1つ以上の表面上に塗布されてもよい。また、粘着性耐熱性コーティングの形成方法についても、記載される。
【0021】
そのような粘着性耐熱性コーティングは、リン酸-鉄-リチウム(LFP)電池、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)電池、大型リチウム電池、またはそれに類するものを含む、リチウムイオン電池用の電池セパレータにおいて有用な場合がある。また、耐熱性コーティングは、コンデンサにおいても有用な場合がある。
【0022】
粘着性耐熱性コーティング
コーティングは、(1)耐熱性粒子と、(2)水溶性粘着性ポリマーと、を含むか、それらからなるか、または本質的にそれらからなってよい。いくつかの実施形態では、コーティングは、さらに(3)非水溶性粘着性ポリマー、(4)バインダ、またはその両方を含んでもよい。分散剤、界面活性剤、または他の添加剤を含む、追加成分(5)を追加してもよい。コーティングにおいて、非水溶性粘着性ポリマーを、耐熱性粒子および水溶性粘着性ポリマーと同じ層に提供してもよく、異なる層に提供してもよい。
【0023】
好ましい実施形態において、コーティングは、水からなるか、または本質的に水からなる溶媒であるコーティングスラリーから形成されるコーティングであることを意味する、水性コーティングであってよい。これは、溶媒が、100%水を含むか、または水と10%未満の極性溶媒、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール等とを含み得ることを意味する。しかしながら、有機溶媒の使用を妨げない。そのような実施形態では、有機溶媒に可溶なポリマーおよび有機溶媒に不溶な別のポリマーを使用してよい。
【0024】
他の好ましい実施形態では、コーティングを多孔質フィルムの1つ以上の面に塗布してもよい。コーティング厚みは、500nm~10μm、500nm~9μm、500nm~8μm、500nm~7μm、500nm~6μm、500nm~5μm、500nm~4μm、500nm~3μm、500nm~2μm、または500nm~1μmであってよい。
【0025】
コーティングは、単層コーティング、または2層、3層、4層、5層、6層、7層、8層、9層、もしくは10層コーティングであってよい。1つの好ましい実施形態において、コーティングは単層コーティングであってよい。別の好ましい実施形態において、コーティングは、コーティングの合計厚さが本明細書で上述した通りである2層コーティングであってよい。
【0026】
多孔質は、さほど限定されないが、任意のナノ多孔質、微多孔質、またはマクロ多孔質を含んでよい。いくつかの特に好ましい実施形態において、多孔質フィルムは、微多孔質である。例えば、セパレータは、0.1~1.0μmの平均孔径を有してもよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、多孔質フィルムは熱可塑性樹脂から作製される。熱可塑性樹脂は、ポリオレフィンであってよい。
【0028】
いくつかの好ましい実施形態では、多孔質フィルムは、溶媒または油を使用しないセルガード(登録商標)乾式延伸法等の乾式延伸法により形成されたフィルムであってよい。また、多孔質膜は、いくつかの実施形態において、溶媒や油を用いて細孔を形成する湿式法を使用して作製されてもよい。
【0029】
(1)耐熱性粒子
コーティング中の耐熱性粒子の量は、10wt%~99wt%、20wt%~95wt%、30wt%~90wt%、40wt%~85wt%、45wt%~80wt%、50wt%~75wt%、55wt%~70wt%、または60wt%~65wt%であってよい。10wt%未満、15wt%未満、または20wt%未満の使用は、リチウムイオン電池の安全性を向上させるための十分な耐熱性を備えるコーティングが得られない場合がある。
【0030】
耐熱性粒子は、さほど限定されないが、有機または無機の耐熱性粒子であってよい。無機耐熱性粒子の例は、酸化鉄、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、ベーマイト(AlO(OH))、二酸化ジルコニウム(ZrO2)、二酸化チタン(TiO2)、硫酸バリウム(BaSO4)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、マイカ、二酸化スズ(SnO2)、酸化インジウムスズ、遷移金属の酸化物、金属、およびこれらの組み合わせを含む。有機耐熱性材料の例は、ポリイミド類、ポリベンゾイミダゾール類(PBIs)、ポリアミドなどを含んでよい。
【0031】
耐熱性粒子の大きさは、さほど限定されないが、50nm~5μm、100nm~4μm、200nm~3μm、300nm~2μm、400nm~1μm、または500nm~2μmであってよい。
【0032】
耐熱性粒子の形状は、さほど限定されないが、球形、不規則な形状、板状、またはそれに類するものであってよい。
【0033】
好ましい実施形態では、耐熱性粒子の少なくともいくつかは、水溶性粘着性ポリマーでコーティングされている。これは、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、または100%の耐熱性粒子が水溶性粘着性ポリマーでコーティングされていることを意味する。好ましい実施形態では、水溶性粘着性ポリマーは、耐熱性粒子の表面に直接コーティングされている。
【0034】
これらのコーティングされた耐熱性粒子は、粒子表面の50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、または100%をコーティングする水溶性粘着性ポリマーを含む。その結果は、コアが耐熱性粒子であり、シェルが水溶性粘着性ポリマーコーティングであるコア-シェル構造であってよい。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、この構造は、観察された乾燥接着性の増加に少なくとも部分的に関連すると考えられている。従来のコーティングでは、耐熱性粒子の表面はむき出しであり、コーティングの表面に露出していた。このようなむき出しの表面は、電極材料との接着性が悪かった。
【0035】
上記を達成するために、耐熱性粒子と水溶性粘着性ポリマーの比率は、1:1~25:1、1:1~20:1、1:1~15:1、1:1~10:1、または1:1~5:1の範囲であることが好ましい。25:1を超える比率で使用すると、耐熱性粒子の表面に水溶性粘着性ポリマーが十分にコーティングされない場合がある。
【0036】
(2)水溶性粘着性ポリマー
本明細書の目的のために、水溶性粘着性ポリマーは、表1により「極めて溶けやすい」、「溶けやすい」、または「やや溶けやすい」に特徴づけられる任意のポリマーを含む。
【0037】
【0038】
水溶性粘着性ポリマーは、60℃~120℃の範囲内で融点に達するか、または融点に近い(±5℃)任意のポリマーを含む。例えば、ポリエチレンオキシドは、融点(Tm)が65℃である。このようなポリマーは、セル製造工程で到達する典型的な温度、例えば約50℃~約110℃において、その融点(融解して電極に接着し始める)に達するか、または融点に近いため、「乾燥接着性」であると考えられる。約5N/mから約10N/mの電極への接着力は、許容可能な接着強度である。約10N/mから約30N/m以上の接着力は、優れた接着強度である。
【0039】
使用され得る水溶性粘着性ポリマーは、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、または上述の組み合わせを含むが、それに限られない。PEOは、イオン伝導性でもあるため、リチウムイオン電池セパレータ用コーティングへの使用に好ましい場合がある。
【0040】
いくつかの実施形態において、水溶性粘着性ポリマーは、1つの水溶性ポリマーと、使用された耐熱性粒子の少なくとも1つに対して改善された接着性または相溶性を示す別の水溶性ポリマーと、のコポリマーであってよい。例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリビニルアルコール(PVA)、またはポリビニルピリロドン(PVP)と、少なくとも1つの他のポリマーと、の共重合体を使用してよい。例えば、他のポリマーは、アルミナ粒子が使用される場合はPEOよりも親水性であってよく、高分子耐熱性粒子が使用される場合は疎水性であってよい。
【0041】
水溶性粘着性ポリマーは、本明細書に記載されるように「湿潤接着性」特性を示してもよい。
【0042】
(3)非水溶性粘着性ポリマー
本明細書では、「非水溶性」ポリマーは、表1により「やや溶けにくい」、「溶けにくい」、「極めて溶けにくい」に特徴づけられる任意のポリマーを含む。
【0043】
本明細書では、非水溶性粘着性ポリマーは、リチウムイオン電池に使用される電解質により湿潤するときの電極部材に接着するポリマーを含む。そのようなポリマーは、「湿潤接着性」ポリマーと考えられる。約5N/mから約10N/mの電極への接着力が、許容可能な接着強度である。約10N/mから約30N/m以上の接着力は、優れた接着強度である。
【0044】
非水溶性粘着性ポリマーは、本明細書で記載した「乾燥接着性」特性を示してもよい。
【0045】
使用される非水溶性粘着性ポリマーの例は、PVDFホモポリマー、PVDFコポリマー、PVDFターポリマー、アクリル系ポリマー、または上述の組み合わせを含んでもよく、それらに限られない。
【0046】
コーティング中の非水溶性粘着性ポリマーの粒子は、さほど大きさを限定されない。例えば、粒子は、50nm~5μm、100nm~4μm、200nm~3μm、300nm~2μm、400nm~1μm、または500nm~2μmであってよい。
【0047】
いくつかの好ましい実施形態において、非水溶性粘着性ポリマーは、耐熱性粒子および水溶性粘着性ポリマーを含む層とは別のコーティング層中に備えられてもよい。他の好ましい実施形態において、非水溶性ポリマーは、耐熱性粒子および水溶性粘着性ポリマーと同じ層中に備えられてもよい。
【0048】
(4)バインダ
バインダの使用は必須でなくてもよいが、除外されるものでもない。
【0049】
通常、バインダは、とりわけコーティングの一体性を維持するために耐熱コーティングに添加される。通常、バインダは10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%を超える量は添加されない。
【0050】
バインダはさほど限定されない。リチウムイオン電池の使用に適した任意のバインダを使用してよい。いくつかの実施形態では、バインダはアクリル系ポリマーであってよい。バインダは、ポリラクタムバインダ、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、またはそれらの混合物であってもよい。
【0051】
2つ以上の層を含むコーティングでは、各層はバインダを含んでいてもよく、各層のバインダは同一でも異なっていてもよい。
【0052】
(5)添加物
1つ以上の添加剤が、コーティングに含まれてよい。1つ以上の添加剤には、界面活性剤、分散剤、着色剤、静電防止剤、または上述の組み合わせを含んでよい。
【0053】
2層以上の層を含むコーティングでは、各層は添加剤を含んでよく、層中の添加剤は同じでも異なっていてもよい。
【0054】
方法
粘着性耐熱性粒子の形成方法は、コーティングスラリーを形成するステップを含むか、それからなるか、または本質的にそれからなってよい。本方法は、さらに多孔質フィルムの1つ以上の表面をスラリーで塗布するステップを含むか、それらからなるか、または本質的にそれらからなってよい。本方法は、さらに多孔質フィルムの1つ以上のスラリーを塗布された表面を乾燥させて粘着性耐熱性粒子を形成するステップを含んでよい。
【0055】
(1)コーティングスラリーの形成
コーティングスラリーの形成は、耐熱性粒子の少なくともいくつかの表面が水溶性粘着性ポリマーにコーティングされるように、耐熱性粒子と水溶性粘着性ポリマーとを組み合わせることを含むか、それらからなるか、または本質的にそれらからなってよい。いくつかの好ましい実施形態において、耐熱性粒子の少なくともいくつかの表面全体が水溶性粘着性ポリマーにコーティングされ、耐熱性粒子がコアとなり、水溶性粘着性ポリマーがシェルとなる、コア-シェル構造を形成する。これは、溶媒としての水の中で、耐熱性粒子と水溶性粘着性ポリマーとを組み合わせて混合物を形成することにより達成することができる。また、分散剤を混合物に加えてもよい。その後、水溶性粘着性ポリマーが、耐熱性粒子の少なくともいくつかの表面をコーティングするように、混合、撹拌等を行うことができる。例えば、混合、撹拌等を5分以上、10分以上、15分以上、20分以上、25分以上、または30分以上行ってもよい。得られた混合物は、水溶性粘着性ポリマーでコーティングされた耐熱性粒子を含む。
【0056】
次のステップにおいて、水中で、水溶性粘着性ポリマーでコーティングされた耐熱性粒子を含む混合物は、非水溶性粘着性ポリマーと組み合わせてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、水中のPVDF粒子の分散剤(エマルジョン剤)は、水中の水溶性粘着性ポリマーでコーティングされた耐熱性粒子を備える混合物と組み合わせてもよい。
【0057】
しかしながら、いくつかの実施形態において、この混合物は非水溶性粘着性ポリマーと組み合わせなくてもよい。そのような実施形態では、非水溶性粘着性ポリマーを含むスラリーは別々に形成されてよく、そのスラリーは別々にコーティングされてもよい。
【0058】
バインダおよび他の添加剤を、上述のコーティングスラリーのいずれかに添加してもよい。
【0059】
(2)コーティングスラリーの塗布
本方法は、多孔質基材フィルムの少なくとも片面にコーティングスラリーを塗布することを含むか、それからなるか、または本質的にそれからなってよい。塗布されるコーティングスラリーの厚さは、500nm~10μm、500nm~9μm、500nm~8μm、500nm~7μm、500nm~6μm、500nm~5μm、500nm~4μm、500nm~3μm、500nm~2μm、または500nm~1μmであってよい。スラリーは、(a)耐熱性粒子20%~99%と、(b)水溶性粘着性ポリマーを含むポリマー5%~90%と、(c)水からなるか、または本質的に水からなる溶媒と、を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になってよい。いくつかの実施形態において、スラリーは、バインダ(d)または他の添加剤(e)をさらに含んでもよい。
【0060】
いくつかの実施形態では、耐熱性粒子と水溶性粘着性ポリマーとを含むコーティングスラリーは、非水溶性粘着性ポリマーを含むスラリーとは別にコーティングされ、別々の2つのコーティング層を形成する。いくつかの実施形態では、耐熱性粒子と水溶性粘着性ポリマーとを含むコーティングスラリーが最初にコーティングされ、その上に非水溶性粘着性ポリマーを含むスラリーがコーティングされる。
【0061】
耐熱性粒子の少なくともいくつかは、水溶性粘着性ポリマーでコーティングされている。これは、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、または100%の耐熱性粒子が、水溶性粘着性ポリマーでコーティングされていることを意味する。好ましい実施形態において、水溶性粘着性ポリマーは、耐熱性粒子の表面を直接コーティングする。これらのコーティングされた耐熱性粒子は、粒子表面の50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、または100%をコーティングする水溶性粘着性ポリマーを含む。その結果、コアが耐熱性粒子であり、シェルが水溶性粘着性ポリマーコーティングであるコア-シェル構造となってよい。
【0062】
(a)耐熱性粒子
耐熱性粒子は、上述した通りである。
【0063】
スラリー中の耐熱性粒子の量は、20%~99%、25%~99%、30%~99%、35%~99%、40%~99%、45%~99%、50%~99%、55%~99%、60%~99%、65%~99%、70%~99%、75%~99%、80%~99%、85%~99%、90%~99%、または95%~99%であってよい。
【0064】
(b)ポリマー
スラリー中のポリマーの量は、5%~90%、10%~90%、15%~90%、20%~90%、25%~90%、30%~90%、35%~90%、40%~90%、45%~90%、50%~90%、55%~90%、60%~90%、65%~90%、70%~90%、75%~90%、80%~90%、または85%~90%であってよい。
【0065】
ポリマーは、上述のような水溶性粘着性ポリマーを含むか、それからなるか、もしくは本質的にそれからなってよく、または上述のような水溶性粘着性ポリマーと非水溶性粘着性ポリマーとを含むか、それらからなるか、もしくは本質的にそれらからなってよい。
【0066】
耐熱性粒子と水溶性粘着性ポリマーとの比は、1:1~25:1、1:1~20:1、1:1~15:1、1:1~10:1、または1:1~5:1の範囲であることが好ましい。
【0067】
ポリマーが、水溶性粘着性ポリマーと非水溶性粘着性ポリマーとを含むか、それらからなるか、または本質的にそれらからなる場合、水溶性粘着性ポリマーと非水溶性粘着性ポリマーとの比率は、1:100~100:1、1:75~75:1、1:50~50:1、1:25~25:1、1:20~20:1、1:15~15:1、1:10~10:1、1:5~5:1、または1:2~2:1であってよい。
【0068】
(c)溶媒
溶媒は、水からなるか、または本質的に水からなることが好ましい。これは、溶媒が、100%水を含むか、または水と10%未満の極性溶媒、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコールとを含み得ることを意味する。そのような溶媒の添加は、塗布されたスラリーを乾燥させやすくすることができる。
【0069】
水性溶媒の使用が好ましいが、有機溶媒の使用を排除するものではない。そのような実施形態では、水溶性ポリマーおよび非水溶性ポリマーの代わりに、それぞれ有機溶媒に可溶なポリマーおよび有機溶媒に不溶な別のポリマーを使用してもよい。
【0070】
(d)バインダ
バインダは、本明細書で上述した通りである。
【0071】
スラリー中のバインダの量は、さほど限定されないが、1%~10%、1%~9%、1%~8%、1%~7%、1%~6%、1%~5%、1%~4%、1%~3%、または1%~2%であってよい。
【0072】
(e)添加剤
1つ以上の添加剤が、コーティングに含まれてよい。1つ以上の添加剤は、界面活性剤、分散剤、着色剤、帯電防止剤、または前述の組み合わせを含んでよい。
【0073】
添加剤は、0.01%~10%、0.1%~9%、0.5%~8%、1%~7%、1%~6%、1%~5%、1%~4%、1%~3%、または1%~2%の量で添加してよい。
【0074】
(3)コーティングスラリーの乾燥
本ステップは、熱、空気、またはその両方を用いて、コーティングされたスラリーを乾燥させることで、水、溶媒、またはその両方を除去することを含むか、それからなるか、または本質的にそれからなってよい。コーティングすることが2以上の異なるスラリーを塗布して2層以上の異なる層を形成することを含む実施形態において、乾燥ステップは、複数のコーティングステップの間に必要な場合がある。
【0075】
(実施例)
本発明のコーティング例1:アルミナ70%と、PVDF水性ラテックスおよびポリエチレンオキシド(PEO)を含むポリマー23%と、アクリル系バインダ1~3%とを含む水性コーティングスラリーを形成した。アルミナとPEOの比は7:1である。PEOは100,000の平均Mvを有する。混合/撹拌を行い、PEOを含むアルミナをコーティングした。その後、多孔質ポリオレフィンフィルム上に、3μmのコーティングを形成した。コーティングを乾燥させ、水を取り除いた。
【0076】
本発明のコーティング例1と同様の実施形態を、
図2の右側に示す。
【0077】
比較コーティング例1:アルミナ70%と、PVDF水性ラテックス23%と、アクリル系バインダ1~3%とを含む水性コーティングスラリーを形成した。その後、多孔質ポリオレフィンフィルム上に、3.5μmのコーティングを形成した。コーティングを乾燥させ、水を取り除いた。
【0078】
比較コーティング例1と同様の実施形態を、
図2の左側に示す。
【0079】
乾燥電極接着性は、ホットプレス法により測定された。3×3cmの電極を切断し、4×15cmのセパレータ帯の上に置いた。圧力を1MPaに設定し、温度を80℃、95℃、または115℃に設定した。特定の温度で圧力をかけたホットプレス装置に、サンプルを10秒間置いた。その後、接着されたサンプルを剥離強度装置で試験し、接着性を確認した。
【0080】
MD収縮率は、8×8cmの正方形に切断し、MDおよびTD方向の両方に印をつけたサンプルにより測定された。その後、サンプルを150℃のオーブンに置き、1時間熱処理を行った。熱処理後、再度サンプルの寸法を測定した。収縮率は、(元の長さ-最終的な長さ)/元の長さで計算される。
【0081】
TD収縮率は、8×8cmの正方形に切断し、MDおよびTD方向の両方に印をつけたサンプルにより測定された。その後、サンプルを150℃のオーブンに置き、1時間熱処理を行った。熱処理後、再度サンプルの寸法を測定した。収縮率は、(元の長さ-最終的な長さ)/元の長さで計算される。
【0082】
【0083】
【0084】
水溶性粘着性ポリマーが添加された本発明の結果と、添加されていない比較例の結果とを比べるとわかるように、乾燥接着性は少なくとも2倍であり(115℃におけるアノードへの接着性の結果を比較)、場合によっては20倍以上(95℃におけるカソードへの接着性の結果を比較)増加する。
【0085】
また、本発明の実施形態は、上述のように80℃で試験した場合、乾燥接着性が10N/mより大きいことも示した。これは、より低い温度でも本発明のサンプルが優れた乾燥接着性を示すことを意味している。本発明の実施形態は、低くとも70℃、60℃、50℃、またはそれより低い温度において、10N/mより大きい乾燥接着強度を示す。
【0086】
本発明のコーティング例2:
この例は、コポリマーが使用され、アルミナよりも疎水性の耐熱性有機粒子が使用されていることを除き、上記の本発明の例と同様である。PPO-PEOコポリマーのようなコポリマーをここでは使用してもよく、ポリプロピレンオキシド(PPO)は、PEOよりも疎水性のポリマーであるため、耐熱性有機粒子との相溶性がより大きい。この例を
図1に示す。
【0087】
本発明のコーティング例3:
PEOとアルミナとを含む水性コーティングスラリーを形成した。撹拌/混合を行い、PEOを含むアルミナをコーティングした。PVDFを含む別の水性コーティングスラリーを形成した。第一に、PEOとアルミナとを含むコーティングスラリーを多孔質基材フィルムの少なくとも片面上に提供した。その後、PVDFを含むコーティングがその上にコーティングされた。
【0088】
本発明のコーティング例3と同様の実施例を、
図3の右側に示す。
【0089】
別々にセラミック(アルミナ)をコーティングすると、温度安定性を向上させることができる。加えて、別々に非水溶性ポリマー(PVDF)をコーティングすると、湿潤接着性、イオン伝導性などを増大させる。本発明のコーティング例1のように、アルミナの表面上に水溶性ポリマー(PEO)を備えると、向上した乾燥接着性を結果として得られる。露出されたアルミナは、それらの表面上にPEOが存在するため、接着性を有する。
【0090】
比較例2:
比較例2は、PEO(または別の水溶性粘着性ポリマー)がアルミナを含む水性コーティングスラリーに添加されなかったことを除いて、本発明のコーティング例2と同様である。得られたコーティングは、本発明のコーティング例3よりも低い乾燥接着性を有する。
【0091】
【手続補正書】
【提出日】2023-10-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質基材フィルムと、
前記多孔質基材フィルムの少なくとも片面上の粘着性耐熱性コーティングと、
を含む粘着性耐熱性コーティングセパレータであって、
前記粘着性耐熱性コーティングは、耐熱性粒子と水溶性粘着性ポリマーとを含み、
前記耐熱性粒子の少なくとも一部は、前記水溶性粘着性ポリマーでコーティングされている、粘着性耐熱性コーティングセパレータ。
【請求項2】
前記耐熱性粒子と前記水溶性粘着性ポリマーとの比が1:1~15:1で
あるか、
前記粘着性耐熱性コーティングは、非水溶性粘着性ポリマーから作製される粘着性粒子をさらに含み、前記非水溶性粘着性ポリマーが、前記耐熱性粒子および前記水溶性粘着性ポリマーと同一のコーティング層中にあるか、もしくは異なるコーティング層中にあるか、
前記コーティング中の耐熱性粒子の総量が、20%以上、もしくは50%以上であるか、
前記耐熱性粒子は、SiO
2
、Al
2
O
3
、CaCO
3
、TiO
2
、SiS
2
、SiPO
4
、AlO(OH)、もしくはそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つを含むか、
前記コーティング層は、バインダをさらに含むか、
前記バインダは、アクリル系バインダを含むか、
前記コーティングは、1~10μmの厚さを有するか、または、
前記多孔質基材フィルムは、微多孔質ポリオレフィン基材フィルムである、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項3】
前記粘着性耐熱性コーティングは、非水溶性粘着性ポリマーから作製される粘着性粒子をさらに含み、前記非水溶性粘着性ポリマーが、前記耐熱性粒子および前記水溶性粘着性ポリマーと同一のコーティング層中にあるか、または異なるコーティング層中に
あり、
前記非水溶性粘着性ポリマーは、PVDFホモポリマー、PVDFコポリマー、PVDFターポリマー、アクリル系ポリマー、またはそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項4】
前記水溶性粘着性ポリマーは、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシド系コポリマー、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項5】
請求項1に記載のセパレータを含むリチウムイオン電池。
【請求項6】
コーティングスラリーを塗布することを含
む粘着性耐熱性コーティングセパレータの形成方法であって、
前記スラリーは、耐熱性粒子20%~99%と、水溶性粘着性ポリマーを含むポリマー5%~90%と、水からなるか、または本質的に水からなる溶媒と、を含み、
前記耐熱性粒子の少なくともいくつかは、前記水溶性粘着性ポリマーでコーティングされている、粘着性耐熱性コーティングセパレータの形成方法。
【請求項7】
前記コーティングスラリーは、バインダ1%~10%を含む
か、
前記ポリマーは、非水溶性粘着性ポリマーをさらに含むか、
前記スラリーは、前記耐熱性粒子50%~99%と前記ポリマー5%~50%とを含むか、
前記スラリーは、前記耐熱性粒子70%~99%と前記ポリマー5%~25%とを含むか、
前記スラリーが、分散剤を含む添加剤をさらに1つ以上含むか、
前記耐熱性粒子は、SiO
2
、Al
2
O
3
、CaCO
3
、TiO
2
、SiS
2
、SiPO
4
、AlO(OH)、もしくはそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つを含むか、
前記溶媒は、水からなるか、
前記溶媒は、本質的に水からなるか、
前記水溶性ポリマーは、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシドコポリマー、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、もしくはそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上であるか、または、
前記非水溶性粘着性ポリマーは、PVDFホモポリマー、PVDFコポリマー、PVDFターポリマー、アクリル系ポリマー、もしくはそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上である、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記水溶性粘着性ポリマーはコポリマーであり、前記コポリマーの1つのポリマーは、前記コポリマーの別のポリマーと比べて、
前記耐熱性粒子の少なくとも1つと相溶性が高い、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項9】
前記コポリマーはPPO-PEOコポリマーであり、前記耐熱性粒子は耐熱性有機粒子である、請求項
8に記載のセパレータ。
【請求項10】
前記水溶性粘着性ポリマーはコポリマーであり、前記コポリマーの1つのポリマーは、前記コポリマーの別のポリマーと比べて、
前記耐熱性粒子の少なくとも1つと相溶性が高い、請求項
6に記載の方法。
【請求項11】
前記コポリマーはPPO-PEOコポリマーであり、前記耐熱性粒子は耐熱性有機粒子である、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
多孔質基材フィルムと、
多孔質または微多孔質ポリマー膜基材フィルムの少なくとも片面上の粘着性耐熱性コーティングと、
を含み、
前記粘着性耐熱性コーティングは、耐熱性粒子と水溶性粘着性ポリマーとを含み、
前記耐熱性粒子の少なくとも一部は、水溶性粘着性ポリマーでコーティングされている、粘着性耐熱性コーティングポリマー膜。
【請求項13】
前記耐熱性粒子と前記水溶性粘着性ポリマーとの比が1:1~15:1である、請求項
12に記載の膜。
【請求項14】
前記粘着性耐熱性コーティングは、非水溶性粘着性ポリマーから作製される粘着性粒子をさらに含み、
前記非水溶性粘着性ポリマーが、前記耐熱性粒子および前記水溶性粘着性ポリマーと同一のコーティング層中にあるか、または異なるコーティング層中にある、請求項
12に記載の膜。
【請求項15】
コーティング中の前記耐熱性粒子の総量は、20%以上、または50%以上である、請求項
12に記載の膜。
【請求項16】
前記耐熱性粒子は、SiO
2、Al
2O
3、CaCO
3、TiO
2、SiS
2、SiPO
4、AlO(OH)、
もしくはそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つを含む
か、
前記コーティング層は、バインダをさらに含むか、
前記バインダは、アクリル系バインダを含むか、
前記コーティングは、1~10μmの厚さを有するか、または、
前記基材フィルムが微多孔質ポリオレフィン基材フィルムである、請求項
12に記載の膜。
【請求項17】
前記非水溶性粘着性ポリマーは、PVDFホモポリマー、PVDFコポリマー、PVDFターポリマー、アクリル系ポリマー、またはそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上である、請求項
14に記載の膜。
【請求項18】
前記水溶性粘着性ポリマーは、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシド系コポリマー、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上である、請求項
12に記載の膜。
【請求項19】
請求項
12に記載の膜を含む、織物、フィルタ、積層体、セパレータ、コンデンサ、または電池。
【請求項20】
コーティングスラリーを多孔質または微多孔質高分子膜基材フィルムの少なくとも片面上に塗布することを含
む請求項
12に記載の粘着性耐熱性コーティングポリマー膜の形成方法であって、
前記スラリーは、耐熱性粒子20%~99%と、水溶性粘着性ポリマーを含むポリマー5%~90%と、水からなるか、または本質的に水からなる溶媒と、を含み、
前記耐熱性粒子の少なくともいくつかは、水溶性粘着性ポリマーでコーティングされている、粘着性耐熱性コーティングポリマー膜の形成方法。
【請求項21】
前記コーティングスラリーは、バインダ1~10%を含む
か、
前記ポリマーは、非水溶性粘着性ポリマーをさらに含むか、
前記スラリーは、前記耐熱性粒子50%~99%と前記ポリマー5%~50%とを含むか、
前記スラリーは、前記耐熱性粒子70%~99%と前記ポリマー5%~25%とを含むか、または、
前記基材フィルムは、微多孔質単層もしくは多層ポリオレフィン基材フィルムであるか、もしくは主にポリエチレンおよび/もしくはポリプロピレンから作製される乾式微多孔質単層もしくは多層ポリオレフィン基材フィルムである、請求項
20に記載の方法。
【請求項22】
前記粘着性耐熱性コーティングは、非水溶性粘着性ポリマーから作製される粘着性粒子をさらに含み、前記非水溶性粘着性ポリマーが、前記耐熱性粒子および前記水溶性粘着性ポリマーと同一のコーティング層中にあるか、
もしくは異なるコーティング層中に
あり、
前記非水溶性粘着性ポリマーが、前記耐熱性粒子および前記水溶性粘着性ポリマーと同じコーティング層中にあるか、または、
前記非水溶性粘着性ポリマーが、前記耐熱性粒子および前記水溶性粘着性ポリマーと異なるコーティング層中にある、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項23】
別のコーティングスラリーを塗布することを含
む粘着性耐熱性コーティングセパレータの形成方法であって、
前記別のコーティングスラリーは非水溶性粘着性ポリマーを含み、
前記コーティングスラリーは任意の方法で塗布されている、請求項
6に記載の方法。
【請求項24】
前記別のコーティングスラリーが2番目に塗布されている、請求項
23に記載の方法。
【請求項25】
前記非水溶性粘着性ポリマーが、前記耐熱性粒子および前記水溶性粘着性ポリマーと同じコーティング層中にある、請求項
14に記載の膜。
【請求項26】
前記非水溶性粘着性ポリマーが、前記耐熱性粒子および前記水溶性粘着性ポリマーと異なるコーティング層中にある、請求項
14に記載の膜。
【請求項27】
別のコーティングスラリーを塗布することをさらに含
む粘着性耐熱性コーティングポリマー膜の形成方法であって、
前記別のコーティングスラリーは非水溶性粘着性ポリマーを含み、
前記コーティングスラリーは任意の方法で塗布されている、請求項
20に記載の方法。
【請求項28】
前記別のコーティングスラリーが2番目に塗布されている、請求項
27に記載の方法。
【国際調査報告】