IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セシュロン ソシエテ アノニムの特許一覧

特表2024-506944DC電源デバイス及びこれを組み込んだ鉄道用変電所
<>
  • 特表-DC電源デバイス及びこれを組み込んだ鉄道用変電所 図1
  • 特表-DC電源デバイス及びこれを組み込んだ鉄道用変電所 図2
  • 特表-DC電源デバイス及びこれを組み込んだ鉄道用変電所 図3
  • 特表-DC電源デバイス及びこれを組み込んだ鉄道用変電所 図4
  • 特表-DC電源デバイス及びこれを組み込んだ鉄道用変電所 図5
  • 特表-DC電源デバイス及びこれを組み込んだ鉄道用変電所 図6
  • 特表-DC電源デバイス及びこれを組み込んだ鉄道用変電所 図7
  • 特表-DC電源デバイス及びこれを組み込んだ鉄道用変電所 図8
  • 特表-DC電源デバイス及びこれを組み込んだ鉄道用変電所 図9
  • 特表-DC電源デバイス及びこれを組み込んだ鉄道用変電所 図10
  • 特表-DC電源デバイス及びこれを組み込んだ鉄道用変電所 図11
  • 特表-DC電源デバイス及びこれを組み込んだ鉄道用変電所 図12
  • 特表-DC電源デバイス及びこれを組み込んだ鉄道用変電所 図13
  • 特表-DC電源デバイス及びこれを組み込んだ鉄道用変電所 図14
  • 特表-DC電源デバイス及びこれを組み込んだ鉄道用変電所 図15
  • 特表-DC電源デバイス及びこれを組み込んだ鉄道用変電所 図16
  • 特表-DC電源デバイス及びこれを組み込んだ鉄道用変電所 図17
  • 特表-DC電源デバイス及びこれを組み込んだ鉄道用変電所 図18
  • 特表-DC電源デバイス及びこれを組み込んだ鉄道用変電所 図19
  • 特表-DC電源デバイス及びこれを組み込んだ鉄道用変電所 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-15
(54)【発明の名称】DC電源デバイス及びこれを組み込んだ鉄道用変電所
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240207BHJP
【FI】
H02M7/48 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549842
(86)(22)【出願日】2022-02-01
(85)【翻訳文提出日】2023-08-17
(86)【国際出願番号】 IB2022050865
(87)【国際公開番号】W WO2022175770
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】21158070.9
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507412955
【氏名又は名称】セシュロン ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】バルディビア ヴィルジーリオ
(72)【発明者】
【氏名】バスケズ ラモン
(72)【発明者】
【氏名】モレノ ムノス フランシスコ ホセ
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770BA03
5H770BA13
5H770DA03
5H770DA11
5H770DA22
5H770DA30
5H770DA41
5H770EA01
5H770KA01Y
(57)【要約】
本発明によるDC電源デバイスは、一次側(5)及び二次側(6)を有する変圧器(1)と、変圧器(1)の二次側(6)に入力側が接続されたダイオード整流器(2)と、変圧器(1)の二次側(6)に出力側が接続されたインバータ(3)と、コントローラ(4)と、を備える。インバータ(3)は、コントローラ(4)によって制御され、ダイオード整流器(2)の出力側のDC電圧を目標値に調整するように、変圧器(1)の二次側(6)に無効電力及び/又は高調波を発生させる。コントローラ(4)は、ダイオード整流器(2)によって出力される少なくとも1つのDC信号を入力側で受け取り、少なくとも1つのDC信号を用いてインバータ(3)を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側(5)及び二次側(6)を有する変圧器(1)と、
前記変圧器(1)の前記二次側(6)に入力側が接続されたダイオード整流器(2)と、
前記変圧器(1)の前記二次側(6)に出力側が接続されたインバータ(3)と、
前記ダイオード整流器(2)の前記出力側のDC電圧を目標値に調整するように前記インバータ(3)が前記変圧器(1)の前記二次側(6)に無効電力を発生するよう、前記インバータ(3)を制御するように構成されたコントローラ(4)と、を備え、
前記コントローラ(4)は、前記ダイオード整流器(2)によって出力される少なくとも1つのDC信号を入力側で受け取り、前記少なくとも1つのDC信号を用いて前記インバータ(3)を制御する、
ことを特徴とするDC電源デバイス。
【請求項2】
一次側(5)及び二次側(6)を有する変圧器(1)と、
前記変圧器(1)の前記二次側(6)に入力側が接続されたダイオード整流器(2)と、
前記変圧器(1)の前記二次側(6)に出力側が接続されたインバータ(3)と、
前記ダイオード整流器(2)の前記出力側のDC電圧を目標値に調整するように前記インバータ(3)が前記変圧器(1)の二次側(6)に高調波を発生するよう、前記インバータ(3)を制御するように構成されたコントローラ(4)と、を備え、
前記コントローラ(4)は、前記ダイオード整流器(2)によって出力される少なくとも1つのDC信号を入力側で受け取り、前記少なくとも1つのDC信号を用いて前記インバータ(3)を制御する、
ことを特徴とするDC電源デバイス。
【請求項3】
前記コントローラ(4)は、前記DC電圧が前記ダイオード整流器(2)の無負荷電圧から所定電圧まで低下したときに前記インバータ(3)が非アクティブとなり、前記DC電圧が前記所定電圧に達して前記DC電圧を前記目標値に調整するときに前記インバータ(3)がアクティブとなるように、前記インバータ(3)を制御するように構成されている、
請求項1又は2に記載のDC電源デバイス。
【請求項4】
前記目標値は、前記所定電圧に等しいか又は前記所定電圧より低い、
請求項3に記載のDC電源デバイス。
【請求項5】
前記目標値は、前記ダイオード整流器(2)によって出力される前記DC電流の関数として変化する、
請求項3又は4に記載のDC電源デバイス。
【請求項6】
前記無負荷電圧と前記所定電圧との差が、前記ダイオード整流器(2)の前記無負荷電圧と前記公称電圧の差の少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%である、
請求項3乃至5の何れか1項に記載のDC電源デバイス。
【請求項7】
前記無負荷電圧と前記所定電圧との差が、前記ダイオード整流器(2)の前記無負荷電圧と前記公称電圧との差の最大125%、好ましくは最大110%である、
請求項3乃至6の何れか1項に記載のDC電源デバイス。
【請求項8】
前記所定電圧が、前記ダイオード整流器(2)の前記公称電圧に実質的に等しい、
請求項3乃至7の何れか1項に記載のDC電源デバイス。
【請求項9】
前記変圧器(1)の前記二次側(6)が、前記ダイオード整流器(2)及び前記インバータ(3)に各々接続された少なくとも2つの二次巻線を有する、
請求項1乃至8の何れか1項に記載のDC電源デバイス。
【請求項10】
前記変圧器(1)が、デルタY変圧器である、
請求項1乃至9の何れか1項に記載のDC電源デバイス。
【請求項11】
前記ダイオード整流器(2)が、少なくとも1つの6パルスダイオードブリッジを含む、
請求項1乃至10の何れか1項に記載のDC電源デバイス。
【請求項12】
前記ダイオード整流器(2)が、少なくとも2つのダイオードブリッジ(8)を含む、
請求項1乃至11の何れか1項に記載のDC電源デバイス。
【請求項13】
前記インバータ(3)が、例えばIGBT、MOSFET又はIGCTに基づく少なくとも1つのパワー半導体ブリッジ(9)を含む、
請求項1乃至12の何れか1項に記載のDC電源デバイス。
【請求項14】
前記コントローラ(4)が、前記インバータ(3)をパルス幅変調するように構成されている、
請求項1乃至13の何れか1項に記載のDC電源デバイス。
【請求項15】
前記インバータ(3)が一方向性である、
請求項1乃至14の何れか1項に記載のDC電源デバイス。
【請求項16】
前記コントローラ(4)が、DC電圧閉ループコントローラ(33)によって駆動されるAC電流閉ループコントローラ(36)を含む、
請求項1乃至15の何れか1項に記載のDC電源デバイス。
【請求項17】
前記コントローラ(4)は、前記ダイオード整流器(2)の前記出力側の前記DC電圧を前記目標値に調整するよう、前記インバータ(3)が前記変圧器(1)の前記二次側(6)に無効電力及び高調波を発生するよう、前記インバータ(3)を制御するように構成されている、
請求項1及び3乃至16の何れか1項に記載のDC電源デバイス。
【請求項18】
前記少なくとも1つのDC信号が、前記DC電圧を含む、
請求項1乃至17の何れか1項に記載のDC電源デバイス。
【請求項19】
前記コントローラ(4)は、前記DC電圧に基づいて前記インバータ(3)を制御するDC電圧閉ループコントローラ(33)を備える、
請求項18に記載のDC電源デバイス。
【請求項20】
前記少なくとも1つのDC信号は、前記ダイオード整流器(2)によって出力される前記DC電流を含む、
請求項1乃至19の何れか1項に記載のDC電源デバイス。
【請求項21】
前記コントローラ(4)は、ループアップテーブル又は解析関数(47)を用いて、前記DC電流に基づいて前記インバータ(3)を制御する、
請求項20に記載のDC電源デバイス。
【請求項22】
請求項1乃至21の何れか1項に記載のDC電源デバイスを含む鉄道用変電所。
【請求項23】
前記インバータ(3)が、車両のトラクション時に前記閉ループコントローラ(4)の制御下で前記ダイオード整流器(2)の前記出力側で前記DC電圧を調整し、AC配電網に注入するために前記車両の制動時にDC電力を回収するように構成されている、
請求項22に記載の鉄道用変電所。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電車、路面電車等のトラクション用に直流電流を供給するDC電源デバイスに関する。特定の用途によれば、DC電源デバイスは、DC鉄道変電所に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
直流電源デバイスは一般に、変圧器を介してAC電力配電回路網に接続された整流器を含み、整流器は、1又は2以上のダイオードブリッジから形成される。このようなDC電源デバイスの欠点は、直列漏れリアクタンス及び直列抵抗の存在に起因して、負荷(例えば、車両電力)が増加するにつれてDCライン電圧が低下することである。この電圧降下は、以下の問題につながる。
・電圧降下を補正するために、変電所間の間隔を制限しなければならない
・高負荷の下では、DCカテナリー電圧が過度に低下する可能性があり、その結果、電流が過度に増加する可能性があり、これは、車両に設置された電力コンバータにおいて、放熱、発熱又は回路遮断等の動作上の問題を引き起こす
【0003】
サイリスタ整流器は、新しい変電所システムにおいて、これらの問題に対処するために徐々に採用されつつある。DC電圧を制御することができる。しかしながら、サイリスタ整流器は、欠点がないわけではない。
・既存のトラクション整流器ユニットは、完全に交換する必要がある
・ダイオード整流器よりも高価である
・より低い力率を示す
【0004】
電圧降下の問題に加えて、ダイオード整流器及びサイリスタ整流器はともに、一方向の電力潮流を示し、すなわち、ブレーキ作動の間に、他の列車によって捕捉できないDCラインを流れるエネルギーは、大きな制動抵抗器によって浪費される必要がある。この制限に対処するため、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBTs)又はサイリスタの何れかをベースとする回生インバータが、鉄道変電所に組み込まれつつある。インバータを備えた変電所は可逆変電所と呼ばれる。現在のところ、複数の可逆変電所用のパワーエレクトロニクスアーキテクチャが見つかっており、これらは主に3つのグループ内に分類することができる。
・特許文献の豪国特許出願公告第523146号明細書、中国特許第10277429号明細書、中国特許第105226969号明細書、中国実用新案公告第204333980号明細書、欧州特許出願公開第3091631号明細書、欧州特許第2343213号明細書、中国特許出願公告第102267405号明細書及び中国実用新案公告第202906763号明細書に開示されているような、インバータに関連するダイオード整流器
・航空機、鉄道及び船舶推進用電気システム会議(2010年)に発表された、D.コーニック(D.Cornic)による論文「可逆DCサブステーションによる制動エネルギーの効率的回収」に開示されているような、インバータに関連したサイリスタ整流器
・IGBTをベースとした双方向パルス幅変調(PWM)コンバータ(米国特許第10554117号参照)。
【0005】
制動電力は、通常、駆動電力の25%から30%である。各電力潮流方向における電力レベルの差が大きいことで、ダイオード整流器とパルス幅変調(PWM)インバータ、特にIGBTベースのPWMインバータを組み合わせて使用することが、コストの観点から適切な選択となる。更に、これらは後付けを可能にする(すなわち、変圧器-整流器セクションを交換する必要がない)。しかしながら、これらは、DCリンク電圧の制御性に関しては依然として限界がある。
【0006】
特許文献の中国特許出願公告第102774294号明細書、中国特許出願公告第102267405号明細書及び中国実用新案公告第202906763号明細書に開示されているような幾つかの解決策は、有効電力注入によって、すなわちPWMインバータとダイオード整流器との間でDCラインに供給される有効電力を共有することによってDC電圧を調整することを提案している。しかしながら、整流器の全動作範囲にわたってDC電圧降下を緩和するためには、高いインバータ定格電力が必要である。
【0007】
別の解決策が、実用新案の中国実用新案公告第212323740号明細書で提案されており、この解決策は、ダイオード整流器によって引き出される無効電流及び高調波電流を、同じ大きさで逆位相の無効電流及び高調波電流を供給することによって補償することからなる。この方法を用いると、整流器の出力側のDC電圧は、必然的に整流器の無負荷電圧又はその近傍で、すなわち整流器の公称電圧よりもかなり高い電圧で安定化され、このことは、必要とされるインバータの定格電力及びひいてはインバータの消費電力を大幅に増加させ、システムの全体的なエネルギー効率を低下させる。更に、この方法では、ダイオード整流器のAC端子で循環する無効電流及び高調波を監視する必要があるため、典型的には電流及び電圧センサを追加する必要があるので、システムの複雑さとコストに影響を及ぼす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】豪国特許出願公告第523146号明細書
【特許文献2】中国特許第10277429号明細書
【特許文献3】中国特許第105226969号明細書
【特許文献4】中国実用新案公告第204333980号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第3091631号明細書
【特許文献6】欧州特許第2343213号明細書
【特許文献7】中国特許出願公告第102267405号明細書
【特許文献8】中国実用新案公告第202906763号明細書
【特許文献9】米国特許第10554117号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】D.コーニック著「可逆DCサブステーションによる制動エネルギーの効率的回収」、航空機、鉄道及び船舶推進用電気システム会議、2010年
【非特許文献2】I.ケサダら著「ハーモニック・キャンセレーション技術の解空間の境界の評価」、電気技術雑誌、第88巻、第1a号、21-25頁、2012年
【非特許文献3】L.リモンギら著「デジタル電流制御方式」、IEEEインダストリアル・エレクトロニクス・マガジン、第3巻、第1号、2009年
【発明の概要】
【0010】
本発明は、上記の欠点を改善することを目的とし、この目的を達成するために、DC電源デバイスであって、一次側及び二次側を有する変圧器と、変圧器の二次側に入力側が接続されたダイオード整流器と、変圧器の二次側に出力側が接続されたインバータと、ダイオード整流器の出力側のDC電圧を目標値に調整するようにインバータが変圧器の二次側に無効電力及び/又は高調波を発生させるよう、インバータを制御するように配置されたコントローラと、を備え、コントローラが、ダイオード整流器によって出力される少なくとも1つのDC信号を入力側で受け取り、少なくとも1つのDC信号を用いてインバータを制御する、DC電源デバイスを提供する。
【0011】
本発明の特定の実施形態は、添付の従属請求項において定義される。
【0012】
本発明はまた、上記で定義されたDC電源デバイスを含む鉄道変電所を提供する。
【0013】
本発明の他の特徴及び利点は、添付図面を参照してなされる以下の詳細な説明を読めば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明によるDC電源デバイスを示す図である。
図2】本発明によるDC電源デバイスの変圧器、ダイオード整流器及びインバータの異なる実施可能な実施形態を示す図である。
図3】本発明によるDC電源デバイスの変圧器、ダイオード整流器及びインバータの異なる実施可能な実施形態を示す図である。
図4】本発明によるDC電源デバイスの変圧器、ダイオード整流器及びインバータの異なる実施可能な実施形態を示す図である。
図5】本発明によるDC電源デバイスの変圧器、ダイオード整流器及びインバータの異なる実施可能な実施形態を示す図である。
図6】本発明によるDC電源デバイスの変圧器、ダイオード整流器及びインバータの異なる実施可能な実施形態を示す図である。
図7】本発明によるDC電源装置の変圧器、ダイオード整流器及びインバータの好ましい実施形態を示す図である。
図8】インバータが無効電力を生成してダイオード整流器のDC出力電圧を調整するようにインバータを制御するように配置されている、本発明によるDC電源装置の閉ループコントローラを示す図である。
図9】本発明によるDC電圧調整なし、及び本発明の第1の動作例によるDC電圧調整ありの2つの事例における、DC電源デバイスのDC出力電圧対負荷電流を示す図である。
図10】本発明によるDC電圧調整ありの場合と、本発明によるDC電圧調整なしの場合の、列車が走行運転をしているときのDC電源デバイスのDC出力電圧の応答を示す図である。
図11】本発明によるDC電源デバイスの変圧器、ダイオード整流器及びインバータの別の好ましい実施例を示す図である。
図12】インバータが無効電力及び高調波の両方を発生させてダイオード整流器のDC出力電圧を調整するように、図11に示すインバータを制御するように配置された閉ループコントローラを示す図である。
図13】中国実用新案公告第212323740号明細書に開示された制御方法を用いたDC電源デバイスのDC出力電圧対ダイオード整流器のDC負荷電力のシミュレーション結果(曲線C1)と、本発明の第2の動作例によるDC電圧調整あり(曲線C2)とDC電圧調整なし(曲線C3)の2つの事例における、本発明によるDC電源デバイスのDC出力電圧対ダイオード整流器のDC負荷電力のシミュレーション結果を示す図である。
図14】中国実用新案公告第212323740号明細書に開示された制御方法を用いたDC電源デバイスのインバータの皮相電力対そのダイオード整流器のDC負荷電力のシミュレーション結果(曲線C4)、並びに本発明の第2の動作例によるDC電圧調整あり(曲線C5)とDC電圧調整なし(曲線C6)の2つの事例における、本発明によるDC電源デバイスのインバータの皮相電力対そのダイオード整流器のDC負荷電力のシミュレーション結果を示す図である。
図15】本発明の第3の動作例による直流電圧調整あり(曲線C7)及びDC電圧調整なし(曲線C8)の2つの事例における本発明による直流電源デバイスの直流出力電圧対そのダイオード整流器の直流負荷電力のシミュレーション結果を示す図である。
図16】本発明の第3の動作例によるDC電圧調整あり(曲線C9)及びDC電圧調整なし(曲線C10)の2つの事例における、本発明によるDC電源デバイスのインバータの皮相電力対そのダイオード整流器のDC負荷電力のシミュレーション結果を示す図である。
図17】DC整流器出力電圧の代わりにDC整流器出力電流を入力信号として使用する、本発明によるDC電源デバイスのインバータを制御するコントローラの一部の代替の実施形態を示す図である。
図18】DC整流器出力電流と、図17の実施形態にて使用できる無効電力設定点との間の所定の関係を示す図である。
図19図17の実施形態にて使用できるDC整流器出力電流、AC電圧及び無効電力設定点間の所定の関係を示す図である。
図20】入力信号としてDC整流器出力電流とDC整流器出力電圧の両方を使用する、本発明によるDC電源デバイスのインバータを制御するコントローラの一部の別の代替の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照すると、DC鉄道変電所用の本発明によるDC電源デバイスは、変圧器1と、ダイオード整流器2と、インバータ(DC/ACコンバータ)3と、コントローラ4と、を備える。変圧器1の一次側5は、AC配電網、典型的には三相AC配電網、より詳細には三相中電圧AC配電網から電力を受け取る。変圧器1の二次側6は、AC電力をダイオード整流器2の入力側に供給する。ダイオード整流器2は、DC電圧Vrectを出力し、このDC電圧Vrectは、列車トラクション用の鉄道線路に供給される。インバータ3は、その入力側でDC電圧Vrectを受け取り、その出力側は変圧器1の二次側6に接続されている。インバータ3の入力側の1又は2以上のダイオード7は、インバータ3を一方向性にする。インバータ3は、好ましくは、IGBT、MOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)又はIGCT(集積ゲート共役サイリスタ)に基づくPWMインバータなどのパルス幅変調(PWM)インバータである。2レベル・インバータやマルチレベル・インバータを含む、様々なインバータ・トポロジーを使用できる。
【0016】
トラクションフェーズの間では、鉄道線路には、変圧器1及びダイオード整流器2を介してAC配電網から得られるDC電圧Vrectが供給され、コントローラ4は、後で説明するように、DC電圧Vrectが目標値Vrect*に調整されるようにインバータ3を制御する。制動フェーズの間では、列車の制動によって発生したDC電力は、インバータ3によってAC電力に変換され、変圧器1を介してAC配電網に注入される。これにより、DC制動電力がDC配電網に散逸することが回避され、トラクション電力のかなりの部分を回収することができる。
【0017】
変圧器1、ダイオード整流器2及びインバータ3に関して様々な実施形態が可能である。図2乃至図6に示すように、変圧器1は、デルタY変圧器とすることができ、ダイオード整流器2は、デルタY変圧器の二次巻線のそれぞれに各々が接続された、2つの6パルスダイオードブリッジなどの2つのダイオードブリッジ8を備えることができる。インバータ3は、それぞれのDCフィルタ10を介してDC電圧Vrectを受け取り、それぞれの出力でそれぞれのACフィルタ11を介して変圧器1の2つの二次巻線にそれぞれ接続された、2つの3相パワー半導体ブリッジ9を含むことができる(図2参照)。インバータ3の出力側のAC電圧レベルを調整するために、変圧器1の二次巻線にタップを使用することができる。タップを使用する代わりに、変圧器12(図3参照)又は自動変圧器13(図4参照)を、各ACフィルタ11と変圧器1の対応する二次巻線との間に設けてもよい。インバータ3は、2つのパワー半導体ブリッジ9を有する代わりに、DCフィルタ10を介してDC電圧Vrectを受け取り、そのパワー出力において、デルタY変圧器14及びACフィルタ11(図5)を介して又は自動変圧器15及びACフィルタ11(図6)を介して変圧器1の二次巻線に接続される単一の3相パワー半導体ブリッジ9を含むことができる。
【0018】
パワー半導体ブリッジ9(図3及び図5)の出力側で1又は2以上の変圧器12、14が使用される場合、変圧器12、14によって提供されるガルバニック絶縁に起因して、各DCフィルタ10の入力側では単一のダイオード7で十分である。変圧器無し又は1又は2以上の自動変圧器13、15がパワー半導体ブリッジ9の出力側で使用される場合(図2、4及び6)、再循環を避けるために2つのダイオード7(各極性+及び-に対して1つ)が設けられる。
【0019】
DC及びACフィルタ10、11は、典型的にはインダクタ、場合によってはコンデンサ及び抵抗を含む。インバータ3の過変調を防ぐために、AC側で電圧レベルの適応が必要とすることができる。このような適応は、変圧器12(図3)、自動変圧器13(図4)又は変圧器1(図2)に組み込まれたタップによって行うことができる。
【0020】
図2乃至図4に示されたアーキテクチャは、3000Vdcの鉄道ネットワークで一般的に見られる整流器ダイオードブリッジの直列接続に適合させることができる。この場合、インバータ電力半導体ブリッジ9は、並列ではなく直列に接続されることになる。
【0021】
図7には、図5のアーキテクチャに基づき、及び2レベル電圧源コンバータトポロジーを有するインバータ3がより詳細に示されている。図7では、簡略化のため、保護回路、コンタクタ、プリチャージ回路などは省略されている。しかしながら、変圧器1、14の端子における巻線漏れインダクタンスが示されており、そしてACフィルタデューティーを果たすのに使用される。インバータ3の出力側でのAC電圧のスイッチング高調波を更に低減するために、変圧器14の漏れインダクタンスと直列又は並列に、追加のACフィルタリング構成要素(インダクタ、コンデンサ)を追加することができる。制御の実施形態のための主要電圧及び電流測定値が示されており、これには、DC電圧Vrect、三相パワー半導体ブリッジ9の入力及びDCフィルタ10の出力におけるDCリンク電圧Vdc_link、三相パワー半導体ブリッジ9の出力におけるAC電流ia、ib及びic、変圧器14の一方の二次巻線におけるAC電圧va、vb及びvc、並びにパワー半導体(ここではIGBT)スイッチング信号Q1乃至Q6が含まれる。
【0022】
図8は、コントローラ4の典型的な実施形態を示しており、コントローラ4は、ここでは、マルチループ制御方式に基づく閉ループコントローラである。コントローラ4は、位相ロックループ20、a-b-c乃至d-q変圧ユニット21、DCリンクインバータ制御ライン22、及びDC整流器制御ライン23を含む。
【0023】
位相ロックループ20は、AC電圧vqの「q」座標=0で設定するように調整され、三相電圧va、vb及びvcを電圧振幅Vd、位相角θ及び角周波数ωに変換する。
【0024】
a-b-c乃至d-q変圧ユニット21は、位相角θを用いて、三相電流ia、ib、icを同期基準フレーム(d-qフレーム)の2成分id、iqに変換する。
【0025】
DCリンクインバータ制御ライン22の機能は、それ自体既知である。この機能は、DCリンク電圧Vdc_linkを調整して、パワー半導体ブリッジ9がその動作に十分な電圧を受けるようにすることからなる。DCリンクインバータ制御ライン22は、インバータDCリンク電圧Vdc_linkから目標値Vdc_link*を減算する減算器25及び有効電力設定点P*を出力する比例積分(PI)補償器26を直列に備えたDC電圧閉ループコントローラ24を含む。DCリンクインバータ制御ライン22は、更に、AC電圧振幅Vdを用いて有効電力設定点P*を基準電流id*に変換するスケーリングユニット28と、基準電流id*からa-b-c乃至d-q変圧器21によって出力された実際の電流idを減算する減算器29と、比例積分補償器30と、比例積分補償器30による出力電圧から電圧ω、L、iqを減算する別の減算器31(ここでLは、インバータ3の出力側からみた等価ACインダクタンスである)、減算器31の出力信号をスケーリングユニット42を介して送られる電圧振幅Vdに加算してインバータ3の電圧指令Vidを出力する加算器32と、を直列に備えたAC電流閉ループコントローラ27を含む。
【0026】
DC整流器制御ライン23は、整流器DC電圧Vrectを目標値Vrect*から減算する減算器34と、無効電力設定点Q*を出力する比例積分(PI)補償器35と、を直列に備えるDC電圧閉ループコントローラ33を含む。DC整流器制御ライン23は更に、AC電圧振幅Vdを用いて無効電力設定値Q*を基準電流iq*に変換するスケーリングユニット37と、基準電流iq*からa-b-c乃至d-q変換ユニット21によって出力された実際の電流iqを減算する減算器38と、比例積分補償器39と、比例積分補償器39によって出力された電圧を電圧ω、L、id(ここでLは、インバータ3の出力側からみた等価ACインダクタンスである)に加算してインバータ3の電圧指令Viqを出力する加算器40とを直列に備えたAC電流閉ループコントローラ36を含む。
【0027】
電圧指令Vid及びViqは、位相角θと共にパルス幅変調器41に入力される。パルス幅変調器41は、インバータ3のパワー半導体ブリッジ9を制御するためのスイッチング信号Q1乃至Q6を出力する。パルス幅変調器41は、空間ベクトル変調、正弦波変調、不連続パルス幅変調の一種又はその他等の公知の様々な変調方式を実施することができる。
【0028】
列車が走行しているとき、インバータ3は、ブロッキングダイオード7の存在に起因して、DCネットワークに電力を供給することはできない。インバータDCリンク電圧Vdc_linkは、ダイオード整流器DC電圧Vrectよりも確実に高い(すなわち、Vdc_link*>Vrect*)ので、ダイオード7は遮断状態にある。補償器26は、有効電力設定点P*をインバータ3の電力損失を補償できる小さな値に駆動する。
【0029】
列車が制動しているとき、有効電力設定点P*は、DCネットワークからACネットワークに発生する総回生電力に設定される。このシナリオでは、ダイオード7が導通を開始し、Vrect≒Vdc_linkとなる。
【0030】
DC整流器制御に関しては、列車が走行しているとき、補償器35は、無効電力設定点Q*を駆動し、Vrectが目標値Vrect*に調整されるようにする。列車が制動しているとき、Vrectは、電圧制御のある限界を超えて増加し、Q*はゼロに設定される。
【0031】
AC電流閉ループコントローラ27、36により、インバータ3の出力におけるAC電流の力率を調整することができる。AC電流閉ループコントローラ27、36は、両方の動作モード(列車走行及び列車制動)において有用であるが、このような内側AC電流閉ループのない制御の実施形態も可能である。
【0032】
図9は、整流器DC電圧Vrectを負荷電流(すなわち、出力側で消費されるDC電流)の関数として示している。図9は、本発明によるDC電圧調整なし(インバータ3が無効;図9の連続線)と本発明によるDC電圧調整あり(インバータ3及びDC整流器制御ライン23が有効;図9の破線)の負荷電流(DCネットワークによってダイオード整流器2の出力側で消費されるDC電流、公称DC電流に対応する100%の負荷電流)の関数としての整流器DC電圧Vrectを示している。図に示すように、DC電圧調整がない場合、負荷電流が増加するにつれて電圧が低下することで、所与の電力値に対して電流が増加し、放熱、発熱、及び回路破壊の危険性が発生する。インバータ3が有効になると、DC整流器制御ライン23は、インバータ3に変圧器1の二次側に無効電力を発生させ、DC電圧Vrectを目標値に調整させるが、この値は一定でも負荷電流に応じて変化してもよい。図では、DC電圧Vrectは負荷電流10%で調整され始め、負荷電流50%でダイオード整流器2及びDCネットワークの公称電圧である750Vまで徐々に低下する。50%を超えると、DC電圧は750Vに調整されたまま維持される。インバータのDCリンク電圧Vdc_linkは、その後、有効電力設定点P*を介して調整される。
【0033】
従って、本発明は、変圧器と組み合わせた場合にダイオード整流器が通常示すDC電圧降下を生じることなく、安価で信頼性が高く長寿命の整流器、すなわちダイオード整流器2を使用できるという利点を有する。
【0034】
有効電力発生に基づくDC電圧調整のための既存の解決策と比較して、本発明の利点は、整流器電圧の調整を達成するためにインバータ3に必要な定格電力が低減されることである。実際に、無効電力は通常、DC電源デバイスでは有用ではない。本発明は、デバイスのACセクションで循環する無効電力を、整流DC電圧を調整する目的で使用する。
【0035】
更に、インバータ3の一方向性により、インバータ3は、総電力ではなく回生電力用のみの寸法にすることができるので、小さな寸法を有することが可能となる。インバータは通常、制動エネルギー回収の目的で整流器電力の25%から30%の範囲の定格電力を必要とする。本発明では、インバータ3は、回生電力用にのみ寸法にすることができ、電圧調整目的のためにインバータの定格電力を増加させる必要はない。
【0036】
シミュレーション結果を図10に示す。ダイオード整流器2及びDCネットワークの公称電圧は750V、ダイオード整流器2の公称電力は3MWである。鉄道電力は、50%から300%まで漸次的に階段状にされる(公称電力に対応する100%の負荷)。インバータ3が無効の場合、整流器電圧は、765Vから665Vに低下する。無効電力コントローラを作動させてインバータ3を有効にすると、整流器電圧は、全ての電力レベルの下で750Vに調整される。負荷電力が約100%までは、インバータ3はある程度の誘導電力(負符号の無効電力)を発生する。負荷電力が100%を超えて増加すると、インバータ3は容量性電力(正符号の無効電力)を発生する。整流電圧補償のレベルが高いほど、必要な無効電力は高くなる。
【0037】
図8の実施形態において多くの変更が可能であることは、当業者には明らかであろう。例えば、DCリンクインバータ制御ライン22及び/又はDC整流器制御ライン23のDC電圧閉ループコントローラ24、33において、比例積分補償器の代わりに、PID(比例-積分-微分)補償器、モデル予測制御等に基づくコンポーネントを使用することも可能である。AC電流閉ループコントローラ27、36は、上記に開示されたもの以外の制御ループソリューション、例えば、定常フレーム制御又はヒステリシス制御を使用することができる。更に、無効電力設定点範囲を正の値のみに制限することも可能であり、その場合、図9の破線は、0から100%の間の負荷電流に対して連続線に従うことになり、整流器DC電圧Vrectの昇圧のみを実行するようになる。
【0038】
Vrectを調整するためにインバータ3から必要とされる電流量を更に低減するために、本発明によって満たされる調整機能を高調波補償機能で補完することができる。この場合、整流器DC電圧Vrectは、無効電力と同様に変圧器1に電圧降下を発生させるダイオード整流器2によって引き出される電流高調波を(部分的又は全体的に)補償することによって増加させることができる。必要な補償レベルは、コントローラ24、33と同様のDC電圧閉ループコントローラによって指令することができ、又は最大補償に設定することもできる。高調波の補償は、電気技術雑誌(2012年)第88巻の第1a号の21-25頁に掲載されているI.ケサダら(I.Quesada et al.)による「ハーモニック・キャンセレーション技術の解空間の境界の評価」と題する論文に開示されている選択的高調波キャンセル法に基づくか、又はIEEEインダストリアル・エレクトロニクス・マガジン(2009年)第3巻の第1号に掲載されているL.リモンギら(L.Limongi et al.)による「デジタル電流制御方式(Digital Current-Control Schemes)」と題する論文に開示されている高調波補償ネットワークを用いた電流制御方式に基づいた変調方式など、有効電力フィルタリングに適用される既存の技術を用いて実施することができる。
【0039】
高調波補償法と整流器出力電圧制御法を組み合わせた実施形態の例を以下に説明する。図11は、図3に示したAC相互接続の概念を用いたアーキテクチャの詳細な実施形態を示している。これは、変圧器1、2つの6パルスダイオードブリッジ81、82を備えたダイオード整流器2と、2つのIGBTインバータブリッジ91、92を備えたインバータ3と、を含む。IGBTインバータブリッジ91、92はそれぞれ、変圧器121、122を介してダイオードブリッジ81、82と相互接続されている。この例では、電流測定信号ia、b、c及び各インバータブリッジ91、92のIGBTのスイッチング指令信号Q1-6は別々に制御される。サブインデックス「1」を有する信号は、インバータブリッジ91に対応し、サブインデックス「2」の信号はインバータブリッジ92に対応する。ダイオード整流器ブリッジ81、82への入力電流は、ia1_rect、ib1_rect、ic1_rect、ia2_rect、ib2_rect、ic2_rectと表記され、ダイオード整流器2のDC出力電流は、idc_rectと表記される。
【0040】
図12は、整流器出力電圧制御方式と組み合わせた高調波補償方式の電流制御に基づくコントローラ4の実施形態を示している。コントローラ4は、ここでは閉ループコントローラであり、図8の対応するユニットと同様のユニット20、25、26、28、34、35、37を含む。第1のダイオードブリッジ81における入力整流器電流ia1_rect、ib1_rect、ic1_rectが測定され、高調波補償基準計算ユニット431に入力される。このユニット431には、a-b-cフレームからd-qフレームへの変圧及びフィルタ機能が組み込まれる。ユニット431は、コントローラ4によって補償されるべきダイオードブリッジ81の高調波を含む2つの基準信号id1_rect_h*及びiq1_rect_h*を、符号適合された状態で出力する(基本波成分はフィルタリングされる)。第1のインバータブリッジ91の三相電流ia1、ib1、ic1は、a-b-c乃至d-q変圧器211によって、同期基準フレームにおける2つの成分id1、iq1に変換される。
【0041】
加算器/減算器291において、信号id1は、基準信号id1_rect_h*とスケーリングユニット28からの基準信号id*との和から減算される。専用の高調波補償器441は、通常、目標とする高調波周波数における電流コントローラ4の補償能力を高めるために、図8の補償器30と同様の比例積分補償器301に並列に追加される。信号ω.L.iq1は、加算器/減算器311においてユニット441及び301の出力の和から減算され、その結果は加算器321に供給され、加算器321は、位相同期ループ20によって出力された電圧Vdを受信するスケーリングユニット421の出力に加算する。加算器321は電圧指令Vid1を出力する。
【0042】
加算器/減算器381において、信号iq1は、基準信号iq1_rect_h*及びスケーリングユニット37からの基準信号iq*の和から減算される。専用の高調波補償器451は、通常、対象とする高調波周波数における電流コントローラ4の補償能力を強化するために、図8の補償器39と同様の比例積分補償器391に並列に追加される。信号ω.L.id1及びユニット451及び391の出力は、加算器401によって加算され、別の電圧指令Viq1を生成する。電圧指令Vid1及びViq1は、位相ロックループ20が出力する位相角θと共にパルス幅変調器411に供給される。パルス幅変調器411は、スイッチング信号Q11、Q21、Q31、Q41、Q51、Q61を出力し、第1のインバータブリッジ91を制御する。
【0043】
第2インバータブリッジ92の三相電流ia2、ib2、ic2及び第2ダイオードブリッジ82の入力整流器電流ia2_rect、ib2_rect、ic2_rectに対して、211、431、291、301、441、311、321、421、381、391、401、451と同じユニットが設けられ、簡単のため1つのブロック462として示されている。こうして電圧指令Vid2及びViq2が生成され、位相ロックループ20によって出力された位相角θと共にパルス幅変調器412に供給される。パルス幅変調器412は、スイッチング信号Q12、Q22、Q32、Q42、Q52、Q62を出力し、第2のインバータブリッジ92を制御する。
【0044】
高調波補償器441、451(及びブロック462のもの)は、6・ffund(これは第5高調波の負列及び第7高調波の正列を補償する)、及び場合によっては12・ffund等の他の周波数で共振する共振補償器に基づくことがあり、ffundは基本周波数である。その結果、インバータ電圧指令Vid及びViqは、インバータAC電流が整流器AC電流高調波を部分的に補償するように変調される。複数の同期参照フレーム及び他の方式に基づく高調波補償のための他の実施形態も可能である(IEEEインダストリアル・エレクトロニクス・マガジン(2009年)第3巻の第1号に掲載されているL.リモンギらによる「デジタル電流制御方式」と題する論文参照)。
【0045】
図12の実施形態で行われているように制御ライン22、23に追加する代わりに、高調波の補償をDC整流器制御ライン23に置き換えてもよい、すなわち、図8の制御ライン23と同様の制御ラインを使用してもよいが、無効電力の代わりに高調波を発生させるためであり、高調波は整流器DC電圧Vrectを調整する目的で発生する。
【0046】
明らかなように、上述の本発明の実施形態では、コントローラ4はDC電圧Vrectを入力として受け取り、この電圧をフィードバック信号として使用して、DC電圧Vrectを目標値Vrect*に調整するようにインバータ3を制御する。目標値Vrect*は一定である場合もあれば、負荷電流の関数として変化する場合もある。後者の場合、ダイオード整流器2の出力側に配置された従来のDC電流センサがDC負荷電流データをコントローラ4に提供し、コントローラ4が所定の規則に従って目標値Vrect*を変化させることを可能にすることができる。
【0047】
コントローラ4に入力されるフィードバック信号としてDC電圧を使用することにより、本発明は、中国実用新案公告第212323740号明細書に開示されたデバイスに関して、無効電力及び高調波を補償するためにダイオード整流器の入力(AC側)でその無効電力及び高調波を測定するための電圧及び電流センサを含む高価な検知スキームを必要としないという利点を有する。
【0048】
更に、図13のシミュレーション曲線C1で示されるように、中国実用新案公告第212323740号明細書に開示されたデバイスのDC電圧は、ダイオード整流器によって引き出される無効電力と高調波を完全に補償することによって、ダイオード整流器の全動作範囲にわたって調整されるため、無負荷電圧(図13では約790V)付近に維持され、従って公称電圧(750V)を十分に上回る。この結果、インバータによる消費電力が高くなる(図14、曲線C4参照)。中国実用新案公告第212323740号明細書に開示されたデバイスのシミュレーションでは、整流器ブリッジのDC正端子間に変圧器が組み込まれているが、これはそうしないとインバータとダイオード整流器間を循環するAC電流の第5及び第7高調波の量が過大になるからである。
【0049】
一方、本発明では(図13、曲線C2参照)、コントローラ4は、インバータ3を次のように制御することができ、
-DC電圧Vrectがダイオード整流器2の無負荷電圧からダイオード整流器2の公称電圧(本実施例では750V)まで低下すると、インバータ3は非作動状態になる、
-DC電圧Vrectがダイオード整流器2の公称電圧に達するとインバータ3はアクティブになり、公称電力(例では3000kW)から最大過負荷(例では公称電力の300%)までのダイオード整流器2の動作範囲にわたって前記DC電圧を前記公称電圧に調整する。
【0050】
このようにして、インバータによって消費される電力が大幅に削減され(図14、曲線C5参照)、グローバルなエネルギー効率及び装置寿命が向上する。特に、インバータ3の定格電力は、エネルギー回収に必要な電力よりも高くする必要がなく、インバータ3は、DC電圧が公称電圧レベルよりも低下した場合にのみ動作させればよい。
【0051】
図13及び図14には、比較のために、インバータ3が無効の場合のDC電圧Vrect及びインバータ3の皮相電力の変化も示されている(曲線C3及びC6)。
【0052】
図13及び図14の実施例では、図9及び図10に示した実施例と同様に、本発明によるDC電源デバイスのインバータ3によって、DC電圧Vrectを調整するために無効電力のみが生成される。ただし、図9及び図10に示した例では、100%負荷の前に誘導電力を発生させて調整を開始するのとは異なり、図13及び図14の例では、無効電力は容量性のみであり、100%負荷からと同様に発生する。
【0053】
図15及び図16は、本発明によるDC電源デバイスの別の動作例を示している。この例(曲線C7参照)では、ダイオード整流器の最大過負荷容量が450%であると仮定している。DC電圧Vrectは、公称負荷電力から例えば300%負荷電力までの動作範囲にわたって公称電圧に調整され、その後、公称電圧よりも下側であるが調整なしのDC電圧よりも高いままであり(曲線C8参照)、負荷電力の関数として減少する目標値に調整される。特に、図示のように、変化する目標値は、電圧降下補償が、300%の負荷電力を超えて、及び最大過負荷、すなわち450%まで一定のままであるように選択することができ、それにより、インバータ3の消費電力をクランプすることが可能になり(曲線C9参照)、インバータ3は、DC電圧を調整する目的のためだけに過大寸法にする必要がなくなる。
【0054】
DC電圧Vrectをダイオード整流器2の公称電圧に調整し、及び公称電圧で調整を開始することは、単純化及びエネルギー効率の理由から好ましい。しかしながら、代替実施形態では、ダイオード整流器2の無負荷電圧より低いが公称電圧とは異なる(より高い又はより低い)DC電圧Vrectの所定値で調整を開始してもよい。
【0055】
一般的な態様において、本発明では、ダイオード整流器2の無負荷電圧から降下するDC電圧Vrectが所定電圧(公称電圧と等しいか又は異なる)に達したときに調整を開始することができ、DC電圧Vrectは、所定電圧と等しいか又は下側である一定又は変化する目標値に調整される。無負荷電圧と所定電圧との差は、通常、ダイオード整流器2の無負荷電圧と公称電圧との差の少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%である。無負荷電圧と所定電圧との差は、典型的には、ダイオード整流器2の無負荷電圧と公称電圧との差の多くとも125%、好ましくは多くとも110%である。
【0056】
上述した全ての実施形態において、コントローラ4は、フィードバック信号としてDC電圧Vrectを用いてインバータ3を制御する。しかしながら、他の実施形態では、コントローラ4は、DC電圧Vrectの代わりに、又はDC電圧Vrectに加えて、ダイオード整流器2が出力するDC電流を用いてインバータ3を制御することができる。図17はそのような実施形態を示し、図8のDC電圧閉ループコントローラ33又は図12の対応するDC電圧閉ループコントローラは、DC整流器出力電流と無効電力設定値との間の所定関係を用いて、無効電力設定値Q*をDC整流器出力電流idc_rectの関数として変調するルックアップテーブル又は解析関数47に置き換えられている。この入出力関係は、DC整流器出力電流の増加によって生じるDC側の電圧降下を補償することを目的として計算され、AC電圧Vdも入力とすることができる。図18及び図19は、単純な線形手法に基づく入出力関係の2つの実施例を示す図である。図18の例は、DC整流器出力電流のみを入力とする。図19の例は、DC整流器出力電流とAC電圧の両方を入力とする。DC電圧自体の代わりにDC整流器出力電流を用いたDC電圧の調整は、無効電力注入、AC電圧、DC電圧及びDC電流間の関係がモデルに基づいているため、精度が低い、すなわち、目標DC電圧レベルと測定DC電圧レベルとの差を補償する閉ループ制御動作がない。しかしながら、このような制御にも次のような大きな利点がある。
・応答時間は基本的にインバータの内部電流ループによって定義され、制御帯域幅が大きい
・外側の制御ループを調整する必要がないため、潜在的な安定性の問題を回避できる
・DC整流器電圧センサを必要としない
【0057】
DC電圧閉ループ制御が無効電力設定点の微調整を実行し、電圧を目標レベルに正確に制御する一方で、DC電流測定がシステムの応答時間を早めることができるように、両方の技術を組み合わせて使用することもできる。図20は、両方の方法を統合した実施形態を示している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【国際調査報告】