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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-15
(54)【発明の名称】生分解性遮光塗料
(51)【国際特許分類】
   C09D 105/00 20060101AFI20240207BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20240207BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240207BHJP
   C09D 9/00 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
C09D105/00
C09D7/40
C09D7/61
C09D9/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549861
(86)(22)【出願日】2022-02-18
(85)【翻訳文提出日】2023-09-13
(86)【国際出願番号】 NL2022050087
(87)【国際公開番号】W WO2022177432
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】2027587
(32)【優先日】2021-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523311731
【氏名又は名称】ルミフォルテ ホールディング ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(72)【発明者】
【氏名】フィオーレ,マチュー ロベルト アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】ファン ウーアーレ,ペトルス コルネリス ヘラルドゥス マリア
(72)【発明者】
【氏名】ファン ハマーズフェルト,エリザベス アントワネット マリア
(72)【発明者】
【氏名】ウェイエス,ロエル アンリ マルティヌス
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038BA011
4J038DF012
4J038HA216
4J038HA286
4J038HA456
4J038HA546
4J038JA20
4J038JA21
4J038PB02
4J038PB05
4J038PB08
4J038PC03
4J038PC08
(57)【要約】
本発明は、架橋デンプン及び充填剤、並びに任意選択でポリオール可塑剤を含む生分解性コーティング組成物、並びに上記コーティング組成物を乾燥させることによって得られるコーティング層を備える温室などの外部構造に関する。本発明は更に、目的とする洗浄組成物を使用したコーティング層の除去に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋デンプン及び充填剤、並びに任意選択でポリオール可塑剤を含む、生分解性コーティング組成物。
【請求項2】
水、並びに/又は分散剤、湿潤剤、レベリング剤、接着促進剤、殺生物剤、消泡剤、凝集剤、増粘剤、pH改質剤、及び不凍剤からなる群から選択される少なくとも1つを更に含む、請求項1に記載の生分解性コーティング組成物。
【請求項3】
前記架橋デンプンが、予め糊化されている、請求項1又は2に記載の生分解性コーティング組成物。
【請求項4】
前記架橋デンプンは、架橋された前記デンプンの重量に対する架橋剤の重量%として定義される架橋の比率が1~50%、好ましくは5~25%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の生分解性コーティング組成物。
【請求項5】
前記架橋デンプンが、トリメタリン酸ナトリウム架橋デンプン、炭酸ジルコニウムアンモニウム架橋デンプン、銅架橋デンプン、マグネシウム架橋デンプン、ホウ砂架橋デンプン、ジルコニウム架橋デンプン、チタン架橋デンプン(例えば、乳酸チタン、リンゴ酸チタン、クエン酸チタン、乳酸チタンアンモニウム、チタンのポリヒドロキシ錯体、トリエタノールアミンチタン、又はチタンアセチルアセトネート架橋デンプン)、カルシウム架橋デンプン、アルミニウム架橋デンプン(例えば、乳酸アルミニウム又はクエン酸アルミニウム架橋デンプン)、ホウ素架橋デンプン、クロム架橋デンプン、鉄架橋デンプン、アンチモン架橋デンプン、グリオキサール架橋デンプン、p-ベンゾキノン架橋デンプン、ポリカルボキシレート架橋デンプン(例えば、クエン酸、マレイン酸、グルタル酸、コハク酸、フタル酸、及び/又はリンゴ酸架橋デンプン)、亜リン酸架橋デンプン、リン酸架橋デンプン、ケイ酸架橋デンプン(例えば、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS))、エピクロルヒドリン架橋デンプン、過ヨウ素酸架橋デンプン、ジアルデヒド架橋デンプン又は無水物架橋デンプンである、請求項1~4のいずれか一項に記載の生分解性コーティング組成物。
【請求項6】
前記ポリオール可塑剤が、ソルビトール、グリセロール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、キシリトール、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンニトール、スクロース、マルチトール、尿素、又はそれらの任意の混合物である、請求項1~5のいずれか一項に記載の生分解性コーティング組成物。
【請求項7】
前記充填剤が、炭酸カルシウム、酸化チタン、ベーマイト、雲母、ケイ酸塩、石膏、重晶石、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、タルク、粘土、干渉顔料、又はそれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の生分解性コーティング組成物。
【請求項8】
前記架橋デンプンの量が、1~50重量%、好ましくは1.5~30重量%、より好ましくは2.0~20重量%であり、かつ/又は前記ポリオール可塑剤の量が、0.05~20.0重量%、好ましくは0.5~15重量%、より好ましくは1~7重量%であり、かつ/又は前記充填剤の量が、1~97重量%、好ましくは50~95重量%、より好ましくは75~94重量%であり、全ての重量%が、前記組成物の乾燥重量に基づいて表される、請求項1~7のいずれか一項に記載の生分解性コーティング組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の自己分解生分解性コーティング組成物であって、架橋デンプンの量が、前記組成物の乾燥重量に基づいて、7重量%未満である、自己分解生分解性コーティング組成物。。
【請求項10】
請求項8に記載のオン/オフ型生分解性コーティング組成物であって、架橋デンプンの量が、前記組成物の乾燥重量に基づいて、2~30重量%である、オン/オフ型生分解性コーティング組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の生分解性コーティングを少なくとも部分的に備えた外部構造。
【請求項12】
前記外部構造が、温室又は工業用建物であり、好ましくは、前記外部構造が、前記生分解性コーティング組成物を少なくとも部分的に備えた透明パネルを備える、請求項11に記載の外部構造。
【請求項13】
外部構造、好ましくは温室又は工業用建物の内部気候を調節するための方法であって、a)前記外部構造の外面に、少なくとも部分的に、請求項2~10のいずれか一項に記載の水性生分解性コーティング組成物を提供することと、b)前記水性生分解性コーティング組成物を乾燥させて、生分解性コーティング層を得ることと、を含み、好ましくは、前記外部構造が、1つ以上の透明パネルを備え、前記透明パネルが、前記コーティング組成物で少なくとも部分的に、好ましくは、完全に覆われている、方法。
【請求項14】
前記外部構造が、噴霧又はブラッシングによって前記水性生分解性コーティング組成物が提供される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、前記生分解性コーティング層を除去するステップを更に含み、前記ステップが、前記生分解性コーティング層を、デンプン分解酵素を含み、更に任意選択で、隔離剤、界面活性剤、及び/又はpH改質剤を含む水性洗浄組成物と接触させることと、前記洗浄組成物が前記生分解性コーティング層を少なくとも部分的に分解して、分解したコーティング層組成物を得ることを可能にすることと、前記分解したコーティング層組成物をすすぐことと、を含む、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記生分解性コーティング層が、乾燥物質に基づく重量%として、2~30重量%の架橋デンプンを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
架橋デンプン及び充填剤、並びに任意選択でポリオール可塑剤を含む生分解性コーティング層を外部構造から除去するための方法であって、前記外部構造上の前記生分解性コーティング層を、デンプン分解酵素を含む洗浄剤と接触させることと、前記外部構造をすすぐことと、を含む、方法。
【請求項18】
前記1つ以上の透明パネルが、ガラスパネル、ポリカーボネートパネル、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)パネル、ポリアクリルパネル、ポリ塩化ビニル(PVC)パネル、又はポリエチレンパネルである、請求項11に記載の外部構造、又は請求項13~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1~10のいずれか一項に記載の生分解性コーティング組成物を調製するための方法であって、前記架橋デンプン及び前記充填剤、並びに任意選択で前記ポリオール可塑剤を水中に分散させることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外用コーティング組成物、特に温室用遮光塗料の分野である。
【背景技術】
【0002】
園芸において、温室は、特定の植物の生育条件を適応させるための主要なツールである。温室を使用して、例えば、植物ベースの食品の安定した供給を保護するように、植物の生育条件を最適化することができる。しかしながら、季節的な天候の変化は、外気温及び光条件に影響を与え、更に地理的な場所にも影響される。光又は熱が多すぎると、作物の生育に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0003】
春及び夏の間に過剰な光及び熱から作物を保護するために、遮光塗料を塗布することが知られている。遮光塗料は、何らかの形態の顔料及び結合剤を含む水性組成物の形態で温室に塗布される。結合剤は、多くの場合、例えば、アクリルポリマーなどのポリマーである。組成物の塗布及び乾燥後、ポリマー結合剤に埋め込まれた顔料の層が温室に形成され、その層が遮光性を提供する。しかしながら、より少ない光及び熱で期間に対応するために、劣化するか、又は能動的に除去され得る遮光塗料を塗布することが好ましい。
【0004】
自己分解遮光塗料では、結合剤は紫外線及び水の影響を受けてゆっくりと分解され、数ヶ月の間に顔料が温室から洗い流される。したがって、遮光塗料の層は徐々により少ない遮光を提供し、最終的には、温室にほとんど遮光塗料が残っていない。一般的に、遮光塗料の分解速度は、遮光が不要になった夏以降に遮光塗料が多かれ少なかれ消失するように、気象条件に合わせて調整されている。
【0005】
第2の型の遮光塗料組成物は、除去可能な遮光塗料、又は能動的に除去され得る遮光塗料とも呼ばれ得るオン/オフ遮光塗料である。この型の遮光塗料は、できるだけ気象条件に耐えるように最適化されている。いつでも、栽培者は、温室の窓の通常の透明度を回復するために、遮光塗料を除去することを決定することができる。除去は、アルカリベースの洗浄剤などの専用洗浄剤の形態によって行われる。
【0006】
遮光塗料が自己分解であるか又は除去可能であるかに関わらず、温室から消える遮光塗料組成物は、最終的に温室の周りの環境に入る。自己分解遮光塗料の場合、環境中の結合剤の蓄積は、結合剤のゆっくりとした分解から始まり、雨が結合剤を温室の周りの土壌及び/又は地表水に洗い流す。遮光塗料のオン/オフ型の場合、洗剤は結合剤の迅速な可溶化を引き起こす。温室の表面のサイズは、除去された塗料の収集を妨げるため、この場合も、遮光塗料は、温室の周りの土壌及び/又は地表水に終わる。
【0007】
WO2018/169404では、好ましくは架橋されていない、40~250mgのKOH/gポリマー結合剤の酸価を有する2000~50000g/モルの分子量を有するポリマーポリエステル結合剤を含む、アルカリ除去可能な生分解コーティングが記載されている。結合剤は「生分解性」と呼ばれるが、実際には完全に生分解性ではなく、生分解性は23~83%であることが示される(OECD301F)。
【0008】
WO99/22588はまた、顔料及びビニル又はアクリレートポリマーなどのポリマー結合剤を含むアルカリ除去可能な保護コーティングも記載している。結合剤は、酸価が40~250であり、重量平均分子量が10000~100000である。生分解性に関する言及はなく、除去後の合成ポリマー鎖及びセグメントは、概して環境に優しいものではない。
【0009】
EP2361957は、結合剤及び顔料を含むアルカリ除去可能な保護コーティング調製物を記載し、結合剤は、アニオン重合によって生成されたポリマー、特に酸価が100~200、平均分子量が5000~10000のアクリレート又はビニルポリマーである。生分解性に関する言及はなく、除去後のポリマー鎖は、概して環境に優しいものではない。
【0010】
CN101914336及びCN102676006はいずれも、生分解性、又は除去後のポリマー鎖断片の環境への影響に関する報告がない水性ポリアクリレートコーティングも記載している。
【0011】
これらの遮光塗料では、ポリマー結合剤は合成ポリマーであり、少なくともある程度、遮光塗料を除去した後に環境を汚染する。環境に影響を与えない遮光塗料組成物を得ることは有益である。これを達成するために、遮光塗料組成物は完全に生分解性でなければならず、遮光塗料の残りの断片は環境に優しいものでなければならない。本発明は、かかる遮光塗料組成物を提供する。
【0012】
EP2370503は、優れた白色度及び明るさを提供する、コーティング紙及び段ボール用の組成物に使用するためのバイオラテックスコンジュゲートを記載する。バイオラテックスコンジュゲートは、更にスチレン-ブタジエンラテックス(「SBラテックス」)を含む紙コーティング製剤に含まれる。一般に知られているように、SBラテックスは生分解性ではなく、したがって、本明細書のコーティング組成物は生分解性ではない。
【0013】
CN105368164は、植物デンプンを含む生分解性内壁塗料組成物を記載している。内壁塗料組成物は、架橋剤としてホウ砂を含み、これは、0.3重量%を超える量のCMR(発がん性、変異原性、及び/又は生殖毒性)である。したがって、この文書の組成物は主にCMRであり、したがって、温室などの構造の外部に塗布することは危険である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】時間における400~800nmの平均光透過率によって表される、時間における自己分解塗料型の遮光性能の進化(式1~4)を示す。
図2】時間における400~800nmの平均光透過率によって表される、時間におけるオン/オフ型の塗料の遮光性能の進化(式7~10)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、架橋デンプン及び充填剤、並びに任意選択でポリオール可塑剤を含む、生分解性コーティング組成物、並びにコーティング組成物の塗布及び除去方法を提供する。
【0016】
本発明のコーティング組成物は、例えば、温室上の遮光塗料として、屋外で使用することを意図している。架橋デンプンを結合剤として使用することにより、結合剤は完全に生分解性で環境に優しいが、同時に、自己分解コーティング組成物及びオン/オフコーティング組成物の両方として製剤化を可能にするのに十分な耐候性を提供することが本発明の利点である。本開示のコーティングの耐候性は、合成ポリマー結合剤に基づくコーティングの耐候性と非常に類似しているが、生分解性及び低環境影響の追加の利点を提供する。
【0017】
この文脈では、生分解性は、実施例でより詳細に概説されるように、方法OECD301を使用して決定される生分解性として定義される。この方法は、生分解性を評価する一般的に知られている方法である。生分解性は、方法OECD301を使用して決定されるように、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の生分解性として定義される。
【0018】
この文脈では、環境に優しいとは、結合剤が完全に生分解性であるだけでなく、更なる有害な環境への影響もないことを意味すると理解されている。したがって、結合剤は、発がん性、変異原性、又は生殖毒性ではない(非CMR)。
【0019】
架橋デンプン
コーティング組成物は、架橋デンプンを含み、架橋デンプンは結合剤として機能する。架橋デンプンは、乾燥後に平らな表面(温室の透明パネルなど)上に層を形成するために必要な接着を提供し、上記層は、架橋されたデンプン及び充填剤を含む。温室の遮光塗料として使用する場合、この層は温室内に遮光を提供し、光及び/又は熱低減をもたらす。不透明な外壁及び/又は屋根上の遮光塗料として使用される場合、この層は、熱低減を提供する。
【0020】
架橋デンプンは、任意の型のデンプンであってもよく、かつ2つ以上の型のデンプンを含む混合物であってもよい。デンプンは、穀物デンプン(例えば、米、小麦、及びトウモロコシ)、根デンプン(例えば、ジャガイモ及びキャッサバ)、又は豆デンプン(例えば、マングビーンズ、エンドウ豆、ファバ、レンズ豆及びひよこ豆)であり得るが、他の供給源(例えば、エイコーン、アロールート、大麦、ブレッドフルーツ、キビ、オート麦、サゴ、ソルガム、サツマイモ、ライ麦、タロイモ、栗、シログワイ及びヤムイモ)にも由来し得る。好ましいデンプン型は、穀物デンプン及び根デンプン、特にトウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンである。
【0021】
デンプンは粒状物質として植物から単離され、粒状物質はアミロース及びアミロペクチンを含む。アミロース及びアミロペクチンの両方は、グルコースの水溶性ポリマーであり、アミロースは、数百~数千のグルコース部分の本質的に直鎖であるが、アミロペクチンは、最大数十万のグルコース部分を含み得る分岐分子である。デンプン顆粒中のアミロースとアミロペクチンの比率は、デンプンの起源によって異なり、一般に知られている。一般に、通常の(「天然」)デンプンは、10~30重量%のアミロース及び70~90重量%のアミロペクチンを含む。
【0022】
また、デンプン型のアミロースとアミロペクチンとの間の「天然」比に対して、デンプンが、アミロース又はアミロペクチンが豊富なデンプンが単離され得る植物品種が存在する。アミロースが豊富なデンプン型は「アミロースリッチ」と呼ばれ、アミロペクチンが豊富なデンプン型は「ワキシー」と呼ばれる。ワキシーデンプンは、少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも98重量%のアミロペクチン含有量を有するデンプンである。アミロースリッチデンプンは、少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも40重量%、より好ましくは少なくとも50重量%のアミロース含有量を有するデンプンである。
【0023】
本文脈における架橋デンプンは、問題のデンプン型についてアミロース対アミロペクチンの「天然」比を有するデンプン型として定義される通常のデンプンであり得る。しかしながら、架橋デンプンはまた、アミロースリッチデンプン又は「ワキシー」型のデンプンであってもよい。好ましい一実施形態では、デンプンは、架橋ワキシーデンプンである。別の好ましい実施形態では、デンプンは、架橋された通常のデンプンである。
【0024】
架橋デンプンは、架橋反応を受けたデンプンであり、それによって同じ又は異なるグルコースポリマーの異なるセグメント間に共有結合を導入する。これは、デンプン分子のネットワークにつながる。架橋は、耐候性を大幅に向上させることが見出されているため、架橋デンプンは、使用可能なコーティングをもたらすのに十分な耐候性を有する。
【0025】
架橋剤の種類は、デンプンの少なくともいくらかの架橋が生じる限り、また架橋が環境的に優しくない特性を付与しない限り、特に限定的ではない。架橋デンプンは、好ましくは非CMRであり、更に架橋剤は、好ましくは非CMRである。更に好ましくは、架橋デンプンは非ホウ砂架橋デンプンであり、架橋剤はホウ砂ではないことが好ましい。
【0026】
架橋デンプンは、好ましくは、トリメタリン酸ナトリウム架橋デンプン、炭酸ジルコニウムアンモニウム架橋デンプン、銅架橋デンプン、マグネシウム架橋デンプン、ホウ砂架橋デンプン、ジルコニウム架橋デンプン、チタン架橋デンプン(例えば、乳酸チタン、リンゴ酸チタン、クエン酸チタン、乳酸チタンアンモニウム、チタンのポリヒドロキシ錯体、トリエタノールアミンチタン、又はチタンアセチルアセトネート架橋デンプン)、カルシウム架橋デンプン、アルミニウム架橋デンプン(例えば、乳酸アルミニウム又はクエン酸アルミニウム架橋デンプン)、ホウ素架橋デンプン、クロム架橋デンプン、鉄架橋デンプン、アンチモン架橋デンプン、グリオキサール架橋デンプン、p-ベンゾキノン架橋デンプン、ポリカルボキシレート架橋デンプン(例えば、クエン酸、マレイン酸、グルタル酸、コハク酸、フタル酸、及び/又はリンゴ酸架橋デンプン)、亜リン酸架橋デンプン、リン酸架橋デンプン、ケイ酸架橋デンプン(例えば、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS))、エピクロルヒドリン架橋デンプン、過ヨウ素酸架橋デンプン、ジアルデヒド架橋デンプン又は無水物架橋デンプンである。
【0027】
好ましい実施形態では、架橋デンプンは、トリメタリン酸ナトリウム架橋デンプン、炭酸ジルコニウムアンモニウム架橋デンプン、銅架橋デンプン、マグネシウム架橋デンプン、ジルコニウム架橋デンプン、チタン架橋デンプン(例えば、乳酸チタン、リンゴ酸チタン、クエン酸チタン、乳酸チタンアンモニウム、チタンのポリヒドロキシ錯体、トリエタノールアミンチタン、又はチタンアセチルアセトネート架橋デンプン)、カルシウム架橋デンプン、アルミニウム架橋デンプン(例えば、乳酸アルミニウム又はクエン酸アルミニウム架橋デンプン)、ホウ素架橋デンプン、クロム架橋デンプン、鉄架橋デンプン、アンチモン架橋デンプン、p-ベンゾキノン架橋デンプン、ポリカルボキシレート架橋デンプン(例えば、クエン酸、マレイン酸、グルタル酸、コハク酸、フタル酸、及び/又はリンゴ酸架橋デンプン)、亜リン酸架橋デンプン、リン酸架橋デンプン、ケイ酸架橋デンプン(例えば、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS))、過ヨウ素酸架橋デンプンである。
【0028】
最も好ましくは、架橋デンプンは、トリメタリン酸ナトリウム(STMP)架橋デンプン又は炭酸ジルコニウムアンモニウム(AZC)架橋デンプンである。
【0029】
架橋デンプンは、好ましくは、架橋されたデンプンの重量に対する架橋剤の重量%として定義される架橋の比率が1~50%、好ましくは3~25%、より好ましくは5~15%である。架橋の非常に好ましい比率は、3~50%、好ましくは5~50%である。架橋の比率は、デンプンの架橋の程度を表し、耐候性に直接影響を与える。架橋の程度が高いほど、耐候性が高くなる。
【0030】
当業者は、架橋の比率が架橋反応前の出発物質の量に基づいて表され、架橋デンプンを得るためには、デンプン及び架橋剤も、問題の架橋剤の種類に適した反応条件(溶媒、温度等)及びワークアップに供されなければならないことを理解する。適用可能な種類の架橋剤については、架橋デンプンを得るための適切な反応条件及び精製方法が一般的に知られている。
【0031】
好ましい実施形態では、架橋デンプンは、糊化架橋デンプンである。本文脈において、水性コーティング組成物中の糊化架橋デンプンは、デンプン分子が溶解しているが共有結合したネットワークを提供する。例えば、温室に塗布し、その後乾燥させた後、これは、十分な接着性及び耐候性を有する結合剤を提供する。
【0032】
デンプンの糊化は、一般に、(個々に可溶化された)アミロース及びアミロペクチン分子の溶液をもたらすように、水性環境中のデンプン顆粒が溶解するプロセスを意味することが知られている。デンプン糊化は、一般に、高温及び/又は高圧などの高エネルギーを必要とする。
【0033】
非常に好ましい実施形態では、架橋デンプンは、予め糊化された架橋デンプンである。予め糊化されたデンプンは、糊化に供されたデンプンであるが、その後、例えば、噴霧乾燥若しくはフラッシュ乾燥、又は当該技術分野で既知の他の方法によって乾燥されて、予め糊化されたデンプンを得る。予め糊化されたデンプンは、水に容易に溶解できるという利点を有する。
【0034】
コーティング組成物中の架橋デンプンは、好ましくは糊化される。より好ましい実施形態では、架橋デンプンは、予め糊化されたデンプンであり、その後架橋されて、予め糊化された架橋デンプンをもたらす。
【0035】
更なる好ましい実施形態では、架橋デンプンは、酸加水分解又は酵素分解などによって、部分的に加水分解された架橋デンプン(「架橋デンプン加水分解物」)であり、これは更に好ましくは、付加的に予め糊化される。デンプン加水分解は、一般に知られているように、より短い鎖長をもたらす。本コーティング組成物において、部分的に加水分解されたデンプンの適用は、粘度低減の利点を有し、これは、コーティング組成物へのデンプンの組み込みを容易にし、例えば、温室へのコーティング組成物の塗布を容易にする。
【0036】
加水分解されたデンプンは、この文脈では、当該技術分野で知られているように、DE(「デキストロース当量」)値によって定義される。DEは、デンプンが加水分解された程度を表す。純粋なグルコースのDEは100であり、純粋なマルトースのDEは50であり、デンプンのDEは0に非常に近い。この文脈において、部分的に加水分解されたデンプンは、0.1~15、好ましくは0.1~10、より好ましくは0.5~10、又は1~10のDEを有するデンプンである。
【0037】
一般に、部分的に加水分解された架橋デンプンは、0.1~15、好ましくは0.1~10、より好ましくは0.5~10、又は1~10のDEを有する架橋デンプンである。
【0038】
架橋デンプンは、更なるデンプン修飾を受けている可能性がある。例えば、架橋デンプンは、エーテル化又はエステル化などによって更に安定化されてもよい。したがって、本発明の架橋デンプンはまた、例えば、ヒドロキシエチル化、ヒドロキシプロピル化、又はコハク酸化されてもよい。更に、架橋デンプンは、亜塩素酸化などによって酸化されていてもよい。また、架橋デンプンは熱的に阻害されている可能性がある。
【0039】
充填剤
生分解性コーティング組成物は更に、充填剤を含む。この点での充填剤は、顔料とも呼ばれ得る。充填剤は、例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン、ベーマイト、雲母、ケイ酸塩(ケイ酸マグネシウム又はケイ酸アルミニウムなど)、石膏、重晶石、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、タルク、粘土、干渉顔料、又はそれらの任意の組み合わせなどの無機顔料であり得る。
【0040】
温室又は別の外部構造を遮光する目的のため、当業者は、異なる型の充填剤が、異なる目的のために、及び異なる濃度で適用され得ることを理解する。例えば、酸化チタンは高い反射率を有するため、遮光及び熱低減のために比較的少量が必要とされる。炭酸カルシウムは、同様の遮光を達成するためにより多くの充填剤を必要とするが、より安価であり、濡れたときにわずかに半透明になるという追加の利点を有する。これにより、温室内の光強度を気象条件に適応させることができる。ベーマイトは、高い光散乱をもたらすことが知られており、均一な高光強度を必要とする作物に使用可能な拡散コーティングで温室を遮光するのに適している。
【0041】
本発明で使用される充填剤の型は、特に限定されない。充填剤:架橋デンプンの重量比は、好ましくは0.05~50、好ましくは0.1~40、より好ましくは0.5~30、より好ましくは1~28の範囲である。
【0042】
ポリオール可塑剤
より好ましい実施形態では、生分解性コーティング組成物は、ポリオール可塑剤を含む。可塑剤は、コーティング層の脆性を低減する効果があり、これにより耐候性が更に向上する。
【0043】
ポリオール可塑剤は、水素結合可能な2つ以上の基、好ましくはヒドロキシ基を含む任意の既知の可塑剤であり得る。好ましくは、ポリオール可塑剤は、ソルビトール、グリセロール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、キシリトール、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンニトール、スクロース、マルチトール、尿素、又はそれらの任意の混合物であり、最も好ましくは、ソルビトール、グリセロール又はエチレングリコールである。
【0044】
架橋デンプン対ポリオール可塑剤の重量比は、存在する場合、好ましくは0.2~10、好ましくは0.3~8、より好ましくは0.4~6の範囲である。
【0045】
コーティング組成物
生分解性コーティング組成物は、乾燥コーティング組成物又は水性コーティング組成物であり得る。乾燥コーティング組成物は、好ましくは、組成物の重量が最小化されるという利点を有する自由流動粉末である。
【0046】
しかしながら、好ましくは、本発明のコーティング組成物は、水性コーティング組成物である。本発明の水性コーティング組成物は、好ましくは、他の箇所で定義される架橋デンプン、充填剤、及び水を含む。これは、コーティングの均質化が大規模に制御された環境で実施され得るという利点を有する。
【0047】
更に好ましくは、水性コーティング組成物は、塗布現場で希釈することができる濃縮コーティング組成物である。これは、輸送重量を最小限に抑えながらも、制御された環境での大規模な均質化を可能にするという利点を有する。
【0048】
本発明の濃縮水性コーティング組成物は、組成物の総重量に基づいて、好ましくは10~90重量%の乾燥固形分を有し、より好ましくは25~70重量%、より好ましくは40~70重量%である。
【0049】
濃縮水性コーティング組成物は、塗布前に、濃縮水性コーティング組成物の総重量に対して、例えば、好ましくは1~20重量部の水、より好ましくは1~15重量部、より好ましくは1~10重量部、より好ましくは2~8重量部、最も好ましくは3~6重量部で希釈される。
【0050】
この希釈により、塗布される水性コーティング組成物中の乾燥固形分含量は、コーティング組成物の総重量に対して、好ましくは1~50重量%、好ましくは3~35重量%、より好ましくは5~20重量%である。
【0051】
したがって、本発明の水性コーティング組成物は、組成物の総重量に基づいて、1~90重量%、好ましくは3~70重量%、より好ましくは5~65重量%の乾燥固形分含量を有することができる。
【0052】
好ましい実施形態では、コーティング組成物は、組成物の乾燥重量の重量%として、1~50重量%、好ましくは1.5~30重量%、より好ましくは2.0~20重量%の架橋デンプンを含む。
【0053】
更に、コーティング組成物は、組成物の乾燥重量の重量%として、好ましくは、1~97重量%、好ましくは50~95重量%、より好ましくは75~94重量%の充填剤の量を含む。
【0054】
また、コーティング組成物は、組成物の乾燥重量の重量%として、0.05~20.0重量%、好ましくは0.5~15重量%、より好ましくは1.0~7.0重量%の量のポリオール可塑剤を任意選択で含み得る。
【0055】
更に、コーティング組成物は、好ましくは、分散剤、湿潤剤、レベリング剤、接着促進剤、殺生物剤、消泡剤、凝集剤、増粘剤、pH改質剤、及び不凍剤からなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0056】
分散剤は、例えば、フォスフェート、アクリル酸、スルホネート又はグルコネートであり得る。
【0057】
分散剤は、存在する場合、組成物の乾燥重量に対して0.05~2.5重量%の量で組成物中に含まれ得る。
【0058】
湿潤剤は、例えば、ポリ尿素又はポリエーテルであり得る。
【0059】
湿潤剤は、存在する場合、組成物の乾燥重量に基づいて、組成物に0.05~2.5重量%、好ましくは0.1~1.5重量%の量で含まれ得る。
【0060】
レベリング剤は、例えば、フッ素又はシリコーンを含む非イオン性界面活性剤、又はスルホサクシネートであり得る。
【0061】
レベリング剤は、存在する場合、組成物の乾燥重量に基づいて、組成物中に0.05~1.0重量%の量で含まれ得る。
【0062】
接着促進剤は、例えば、アミン又はエポキシ官能性を有するシラン系化合物、例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(メチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、Y-(2-アミノエチル-3-アミノプロピル)トリエトキシシラン及びY-(2-アミノエチル-3-アミノプロピル)メチルジメトキシシラン、又は金属系接着促進剤であり得る。
【0063】
接着促進剤は、存在する場合、組成物の乾燥重量に基づいて、組成物中に0.05~4.0重量%、好ましくは0.1~1重量%の量で含まれ得る。
【0064】
殺生物剤は、例えば、1,2-ベンゾイソチアゾール-3(2H)-オン(BIT)、2-メチル-2H-イソチアゾール-3-オン(MIT)、5-クロロ-2-メチル-2H-イソチアゾール-3-オン(CMIT)、ブロモポール、ピリチオンナトリウム又はピリチオン亜鉛であり得る。
【0065】
殺生物剤は、存在する場合、組成物の乾燥重量に基づいて、組成物中に0.001~1.0重量%、好ましくは0.002~0.5%の重量で含まれ得る。
【0066】
消泡剤は、例えば、液体炭化水素、天然油、疎水性シリカ、又はシリコーンなどの非イオン性界面活性剤であり得る。
【0067】
消泡剤は、存在する場合、組成物の乾燥重量に基づいて、組成物中に0.1~2.0重量%、好ましくは0.25~1重量%の量で含まれ得る。
【0068】
凝集剤は、例えば、架橋デンプンを溶解することができる溶媒、例えば、テキサノール(イソブチル酸)、シトロフォール、オレオケミカルグリコールエーテル、メトキシプロピレン、アセチルトリブチルシトレート、又はヘキサノエートであり得る。
【0069】
凝集剤は、存在する場合、組成物の乾燥重量に基づいて、組成物中に0.05~5.0重量%、好ましくは0.1~1.0重量%の量で含まれ得る。
【0070】
増粘剤は、例えば、キサンタンガム、セルロース、セルロース誘導体、例えば、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)若しくはマイクロフィブリル化セルロース(MFC)、ポリウレタン系増粘剤、アクリルコポリマー、粘土、又は非架橋デンプン系増粘剤であり得る。
【0071】
増粘剤は、存在する場合、組成物の乾燥重量に基づいて、組成物中に0.05~5.0重量%、好ましくは0.08~1.5重量%の量で含まれ得る。
【0072】
pH改質剤は、例えば、当該技術分野において一般的に知られているような、強塩基及び弱塩基並びに強酸又は弱酸を含む、一般的な酸又は塩基であり得る。(非限定的な)例は、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム、重炭酸ナトリウム、アンモニア、塩酸、硫酸、クエン酸、及びグルコン酸である。
【0073】
pH改質剤は、存在する場合、当該技術分野で既知であるように、所望のpHに達するのに有効な量で組成物に含まれ得る。pH改質剤の量は、コーティング組成物の最終pHが4~12、好ましくは5~11、より好ましくは6~10を達成するように選択されることが好ましい。
【0074】
pH改質剤の量は、組成物の乾燥重量に基づいて、0.05~10.0重量%の範囲であることが好ましい。
【0075】
不凍剤は、例えば、尿素又はグリコールであってもよい。
【0076】
不凍剤は、存在する場合、組成物の乾燥重量に基づいて、組成物中に0.05~5.0重量%の量で含まれ得る。
【0077】
本発明のコーティング組成物は、攪拌下で容器内に異なる原材料を分散させることによって調製することができる。好ましい実施形態では、固体原料を水に分散させて、他の箇所で定義されているように、水性コーティング組成物を調製する。
【0078】
好ましくは、分散中の攪拌は、充填剤の所望の粒径を達成するように調整される。所望の充填剤粒径は、例えば、最大100μm、好ましくは最大70μmの粒径である。粒径は、例えば、当該技術分野で一般に知られているように、Malvern粒径分析器によって測定されてもよい。
【0079】
したがって、本発明は更に、架橋デンプン及び充填剤、並びに任意選択でポリオール可塑剤を含む生分解性コーティング組成物を、架橋デンプン及び充填剤、並びに任意選択でポリオール可塑剤を水中に分散させることを含む、他の箇所で定義されるように調製するための方法を提供する。好ましくは、分散は、当技術分野で一般に知られている均質化のための方法によって、バケツ又は閉鎖可能な容器などの好適な容器内での均質化によって達成される。より好ましい実施形態では、充填剤の所望の粒径が達成されるまで、高応力下で最初に均質化し、その後更に混合することによって、均質化が達成される。
【0080】
本発明のコーティング組成物は、オン/オフ型コーティング組成物として、又は自己分解型コーティング組成物として製剤化することができ、これらの型は、主に、塗布される条件におけるそれらの分解速度によって区別することができる。
【0081】
充填剤の量及び架橋デンプンの量は、主に、製剤がオン/オフ型組成物であるか、又は自己分解型組成物であるかを決定する。しかしながら、製剤の任意選択の更なる成分も、コーティングの分解に影響を与える。コーティングの分解は更に、天候などの外部条件の影響を受ける。このため、オン/オフ型コーティングと自己分解型コーティングとの間の「硬い」区別はできない。
【0082】
当業者は、2つの型のコーティング組成物の間にいくつかの重複が存在することを理解している。それが塗布される気象条件下でより高い分解速度を有するコーティング組成物は、より容易に自己分解型コーティング組成物とみなされ得る。逆に、より高い分解抵抗を有するコーティング組成物は、オン/オフ型コーティング組成物とみなされ得る。以下の製剤化例及び特定のコーティング製剤の分解速度に関する一般的な知識、並びにいくつかの例示的な日常的な実験に基づいて、当業者は、特定のコーティング製剤がオン/オフ型コーティング組成物、自己分解型コーティング組成物とみなされ得るかどうか、又は境界の場合、いずれかの型の割り当てが曖昧であるとみなされるかどうかを決定できる。
【0083】
自己分解遮光塗料
本発明のコーティング組成物が自己分解遮光塗料として製剤化される場合、コーティング組成物は、組成物の乾燥重量に対して、10重量%未満、好ましくは7.2重量%未満、好ましくは5重量%未満、好ましくは4重量%未満、しかし1重量%超、最も好ましくは1.5~7.2重量%である量の架橋デンプンを含む。そのような組成物は、それらを能動的に除去する必要がないという利点を有する。また、それらを現場の平均的な気象条件を考慮して、数週間又は数ヶ月間そのままに保つように製剤化することができる。
【0084】
濃縮された自己分解遮光塗料は、好ましくは、全組成物の重量%として、
水を35~55重量%、好ましくは40~50重量%、及び
充填剤を35~65重量%、好ましくは40~60重量%、より好ましくは45~55重量%、及び
架橋デンプンを0.5~7.0重量%、好ましくは1~6重量%、より好ましくは1.5~5重量%含み、
更に好ましくは、全組成物中の非水材料を重量%として、
消泡剤を0.05~0.8重量%、好ましくは0.1~0.5重量%、及び/又は
増粘剤を0.01~0.8重量%、好ましくは0.05~0.4重量%、及び/又は
湿潤剤を0.1~1重量%、好ましくは0.2~0.8重量%、及び/又は
殺生物剤を0.001~1.0重量%、好ましくは0.005~0.5重量%、及び/又は
可塑剤を0.1~5.0重量%、好ましくは0.5~3.0重量%、及び/又は
凝集剤を0.05~0.8重量%、好ましくは0.1~0.6重量%、及び/又は
接着促進剤を0.02~0.5重量%、好ましくは0.05~0.25重量%含む。
【0085】
より好ましい実施形態では、濃縮された自己分解遮光塗料は、上記の全てを組み合わせて含む。
【0086】
濃縮された自己分解遮光塗料は、好ましくは、濃縮組成物の1質量当量を1~10質量当量の水、より好ましくは濃縮組成物の1質量当量を2~5質量当量の水で希釈するなどの希釈された形態で塗布される。
【0087】
オン/オフ遮光塗料
本発明のコーティング組成物がオン/オフ遮光塗料として製剤化される場合、組成物中の架橋デンプンの量は、組成物の乾燥重量に対して、好ましくは2~30重量%、より好ましくは5~25重量%、より好ましくは6~20重量%である。そのような組成物は、2~9ヶ月、好ましくは3~6ヶ月など、多くの月数の間無傷のままであるという利点を有する。このような組成物は、適切な洗剤を用いた能動的洗浄によっていつでも除去できるという更なる利点を有する。
【0088】
濃縮オン/オフ遮光塗料は、好ましくは、全組成物の重量%として、
水を25~60重量%、好ましくは30~55重量%、及び
充填剤を35~64重量%、好ましくは40~60重量%、より好ましくは45~55重量%、及び
架橋デンプンを2~20重量%、好ましくは3~18重量%、より好ましくは4~15重量%含み、
更に好ましくは、
消泡剤を0.05~0.8重量%、好ましくは0.1~0.5重量%、及び/又は
増粘剤を0.01~0.8重量%、好ましくは0.05~0.4重量%、及び/又は
湿潤剤を0.1~1重量%、好ましくは0.2~0.8重量%、及び/又は
殺生物剤を0.001~1.0重量%、好ましくは0.005~0.5重量%、及び/又は
可塑剤を0.1~5.0重量%、好ましくは0.5~3.0重量%、及び/又は
凝集剤を0.05~0.8重量%、好ましくは0.1~0.6重量%、及び/又は
接着促進剤を0.02~0.5重量%、好ましくは0.05~0.25重量%含む。
【0089】
より好ましい実施形態では、濃縮オン/オフ遮光塗料は、上記の全てを組み合わせて含む。
【0090】
濃縮オン/オフ遮光塗料は、好ましくは、濃縮組成物の1質量当量を1~10質量当量の水、より好ましくは濃縮組成物の1質量当量を2~5質量当量の水で希釈するなどの希釈された形態で塗布される。
【0091】
コーティングの除去
本発明の明確な利点は、生分解性コーティング組成物は、洗浄組成物による処理によっていつでも除去することができることである。洗浄組成物は、一般的にオン/オフ型コーティング組成物を除去することが意図されているが、当業者はまた、自己分解コーティング組成物がオン/オフ型コーティング組成物と同じ方法で除去されてもよいことを理解している。
【0092】
従来技術のコーティング組成物は、概して、約12~14の高いpHを有するアルカリ洗浄組成物によって除去された。このコーティング組成物は、デンプン分解酵素を含む環境に優しい水性洗浄組成物で除去することができ、更に任意選択で、緩衝液、粘度付与剤、隔離剤及び/又は界面活性剤を含むという利点を有する。
【0093】
当業者は、どの酵素がデンプン分解酵素とみなすことができるかを認識している。酵素に適した反応条件下で、一定量の溶解デンプンを問題の酵素に供することによって、酵素がデンプン分解酵素とみなすことができるかどうかを試験することができる。デンプンが分解される場合(これは一般的に知られている方法によって確認することができる)、問題の酵素は、デンプン分解酵素とみなすことができる。
【0094】
好ましくは、デンプン分解酵素は、アルファ-アミラーゼ[EC3.2.1.1]又はベータ-アミラーゼ[EC3.2.1.2]を含む。デンプン分解酵素は、洗浄組成物に1つ以上の細菌(「プロバイオティクス」)を組み込むことによって導入されてもよく、プロバイオティクスは、少なくとも1つのデンプン分解酵素を放出する。
【0095】
デンプン分解酵素は、水性洗浄組成物中に、組成物全体に対する乾燥質量で0.001~1.0重量%、好ましくは0.01~0.5重量%、より好ましくは0.05~0.3重量%の量で存在することが好ましい。
【0096】
洗浄組成物は、好ましくは、pH改質剤を更に含む。酵素の種類のための適切なpHで酵素溶液を安定化するための好適なpH改質剤は、一般に知られており、一般に、少なくとも1つの弱酸及び上記弱酸の共役塩基、又は弱塩基及び上記弱塩基の共役酸を含む。あるいは、pHを特定の範囲に設定するために、強酸又は強塩基を使用してもよい。好適な酸及び塩基(及びそれらの共役酸/塩基)は当該技術分野において周知であり、例えば、クエン酸、ギ酸、グルコン酸、フッ酸、塩酸、アンモニア、炭酸塩及び炭酸水素塩を含み得る。
【0097】
pH改質剤は、存在する場合、組成物中に、組成物の総重量に対して乾燥質量で0.05~10重量%、好ましくは0.1~7.5重量%、より好ましくは0.2~5.0重量%の量で含まれ得る。pH改質剤は、洗浄組成物のpHを2~14、好ましくは3~9に設定することができる。
【0098】
洗浄組成物は、好ましくは、粘度付与剤を更に含む。粘度付与剤は、例えば、キサンタンガム、セルロース、セルロース誘導体、例えば、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)若しくはマイクロフィブリル化セルロース(MFC)、ポリウレタン系増粘剤、粘土、又は疎水性シリカであり得る。
【0099】
粘度付与剤は、存在する場合、洗浄組成物中に、全組成物に対して乾燥質量で0.05~5重量%の量で含まれ得る。
【0100】
洗浄組成物は、好ましくは、隔離剤を更に含む。隔離剤は、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸ナトリウム、グルコン酸、又はN,N-ジカルボキシメチルグルタミン酸四ナトリウム塩(GLDA)であり得る。
【0101】
隔離剤は、存在する場合、洗浄組成物中に、組成物の総重量に対して乾燥質量で1~20重量%、好ましくは5~15重量%の量で含まれ得る。
【0102】
洗浄組成物は、好ましくは、界面活性剤を更に含む。界面活性剤は、例えば、シリコーン、フォスフェート、スルホサクシネート、非イオン性界面活性剤、例えば、エトキシ若しくはプロポキシ基を含む脂肪族アルコールであり得る。界面活性剤は、存在する場合、洗浄組成物中に、組成物の総重量に対して乾燥質量で0.1~20重量%、好ましくは0.5~15重量%、より好ましくは0.5~5重量%の量で含まれ得る。
【0103】
洗浄組成物は、0.001~1重量%の既知の消泡剤を更に好ましく含み得る。
【0104】
より好ましい実施形態では、洗浄組成物は、上記の全てを組み合わせて含む。
【0105】
洗浄組成物は、原料を水に分散させ、適切に混合することによって得ることができる。
【0106】
コーティング組成物を含む外部構造
本発明は更に、他の箇所で定義されるような生分解性コーティング組成物を少なくとも部分的に備えた外部構造を提供する。この点で、外部構造は、家、オフィス、工業用建物、又は温室などの農業用建物などの人間の活動が行われる人工構造である。好ましい実施形態では、コーティング組成物は、外部構造の外面に塗布される。更なる好ましい実施形態では、少なくとも外部構造の屋根部分は、本質的に生分解性コーティング組成物で覆われる。これは、外部構造の内部気候、特に熱低減の調節を提供する。
【0107】
好ましい実施形態では、外部構造は、1つ以上の透明パネルを備える。より好ましい実施形態では、1つ以上の透明パネルは、外部構造の屋根部分に配置される。非常に好ましい実施形態では、外部構造は、工業用建物又は温室、最も好ましくは温室である。本発明のコーティングが、外部構造、好ましくはその屋根部分に含まれる1つ以上の透明パネルに塗布される場合、内部気候は、減光によって更に調節される。
【0108】
外部構造は、内部が熱低減及び/又は遮光を必要とする任意の構造であり得る。好ましい実施形態では、コーティング組成物は、外部構造の外面、特に工業用建物又は温室、最も好ましくは温室の外面に塗布される。
【0109】
したがって、本発明のコーティングを塗布することによって、外部構造が透明パネルを備えるか否かに関わらず、外部構造内の温度を低減することができる。したがって、外部構造の本質的に不透明なセクションへの本発明のコーティングの塗布は、熱低減を提供する。
【0110】
更に、光強度は、コーティングを少なくとも部分的に、好ましくは本質的に完全に、外部構造に含まれ、最も好ましくは外部構造の(少なくとも)屋根部分に位置する1つ以上の透明パネルに塗布することによって低減することができる。これは、減光だけでなく、「遮光」と総称される更なる温度低減も達成する。
【0111】
外部構造に含まれる透明パネルは、任意の型の透明パネルであり得る。好ましくは、透明パネルは、ガラスパネル、ポリカーボネートパネル、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)パネル、ポリアクリルパネル、ポリ塩化ビニル(PVC)パネル、又はポリエチレンパネルである。
【0112】
外部構造の内部気候を調節するための方法に関する本発明は、外部構造が温室であることを例示的に基礎として、以下で論じられる。しかしながら、本発明は、温室への塗布に限定されず、この生分解性コーティング組成物の内部での光及び/又は熱低減を達成するために、任意の外部構造にはこの生分解性コーティング組成物を備えてもよく、したがって、本発明によって達成される利点から利益を得ることができる。
【0113】
本発明は更に、外部構造、好ましくは温室又は工業用建物、最も好ましくは温室の内部気候を調節するための方法であって、a)外部構造に少なくとも部分的に他の箇所で定義される水性生分解性コーティング組成物を提供し、b)水性生分解性コーティング組成物を乾燥させて生分解性コーティング層を得ることを含む方法を提供する。コーティングは、好ましくは、外部構造の外面に塗布される。
【0114】
好ましい実施形態では、外部構造は、1つ以上の透明パネルを備える。更なる好ましい実施形態では、少なくとも1つ以上の透明パネルは、少なくとも部分的に、好ましくは本質的に完全に、水性生分解性コーティング組成物を備えている。
【0115】
例えば、温室の内部気候は、遮光を増減させることによって調節することができる。本発明の生分解性コーティング組成物は、塗布及び乾燥後、温室の内部の遮光を増加させる。遮光の増加は、温室内の光強度を低下させる効果があり、これは特に晩春又は夏に、特定の作物の成長に有益であり得る。遮光を増やすと、更に温室内の温度が低下し、これは晩春又は夏にも適していることが多い。
【0116】
本発明のコーティングの能動的又は受動的除去は、パネルの透明度を増加させ、したがって、例示的な温室内の光強度を増加させる。同時に、除去は内部温度を上昇させる効果がある。これは、例えば、特定の作物が強化された光条件の利益を得る可能性があり、もはや遮光を増やす必要がない、晩夏又は秋に有利になる可能性がある。
【0117】
外部構造、及び/又は外部構造に含まれる透明パネルに水性コーティング組成物を備えさせることは、任意の手段によって行うことができる。好ましくは、水性コーティング組成物は、コーティング組成物を、その中に含まれる任意の透明パネルを含む外部構造上に噴霧又はブラッシングすることによって塗布される。これは手動で行うことができるが、専門の噴霧装置などの専門的な装置を使用して行うこともできる。その中には、個人の背中、ヘリコプター、又はドローンに取り付けられた噴霧ホース及びノズルを備えたタンクがある。水性コーティング組成物の塗布後、透明パネルの表面に水層が形成される。その後の乾燥は、乾燥コーティング層が遮光を提供する乾燥コーティング層の形成をもたらす。
【0118】
例示的な温室の透明パネル、又は外部構造の任意の非透明部分は、生分解性コーティング組成物で完全に覆われる必要はない。いくつかの実施形態では、透明パネルの一部又は非透明部分は、熱及び光条件を更に調節するために、覆われないままにしておくことができる。他の実施形態では、温室が複数の透明パネルを備える状況では、パネルのいくつかは完全に覆われ得るが、他の透明パネルは完全に覆われないままである。これはまた、温室の内部気候の調節をもたらす。
【0119】
しかしながら、好ましい実施形態では、例示的な温室屋根の少なくとも全ての透明パネルが、コーティング組成物で実質的に完全に覆われており、それによって温室内部の遮光を最大化する。更なる好ましい実施形態では、例示的な温室の全ての透明パネルが、コーティング組成物で実質的に完全に覆われる。外部構造の非透明部分にコーティングを塗布する場合、熱低減の同様の目的で、部分的又は完全な被覆が等しく可能である。
【0120】
生分解性コーティング組成物を乾燥することは、能動的なステップである必要はない。コーティング組成物の乾燥は、好ましくは、天候が乾燥をもたらすことを可能にすることによって達成される。しかしながら、いくつかの実施形態では、乾燥ステップは、例えば、送風によって、又は熱を適用することによって、加速され得る。
【0121】
透明パネル又は他の箇所に塗布され、その後乾燥されたコーティング組成物は、乾燥されたコーティング層、又は単にコーティング層とも呼ばれ得る。コーティング層は、架橋デンプン及び充填剤、並びに他の任意選択の成分を、他の箇所で定義された水性コーティング組成物と同じ相対量で含む。
【0122】
自己分解型のコーティング組成物及びオン/オフ型のコーティング組成物の両方は、乾燥したコーティング層を備えた外部構造の表面を、他の箇所で定義された洗浄組成物と接触させることによって除去され得る。上記接触は、任意の考えられる手段、好ましくは、手動で、又は他の箇所で定義されているように、専門的な装置を使用して、噴霧又はブラッシングによって達成され得る。
【0123】
コーティング層を洗浄組成物と接触させると、生分解性コーティング層、特にその中に含まれる架橋デンプンが分解される。この分解は、アミロース及び/又はアミロペクチン断片を含む、少なくとも部分的に分解されたコーティング組成物をもたらす。
【0124】
外部構造のすすぎは、少なくとも部分的に分解されたコーティング組成物の除去を可能にする。これは、内部温度の上昇をもたらし、また、コーティングが1つ以上の透明パネルに塗布された場合には、光強度の上昇をもたらす。すすぎは、水ホースによって、又は水を噴霧することによって達成され得る。しかしながら、好ましくは、すすぎは、雨が外部構造をすすぐことを可能にすることによって達成される。
【0125】
上記洗浄は、アミロース及び/又はアミロペクチン断片が外部構造の周りの土壌及び/又は地表水に転位することをもたらす。アミロース及びアミロペクチン、並びにそれらの断片は、環境的に優しく、微生物によって土壌中で更に分解され得る。洗浄組成物の他の成分についても同様である。したがって、本発明のコーティング並びにその除去は、環境に優しく、生分解性である。
【0126】
したがって、本発明は更に、架橋デンプン及び他の箇所で定義されるような充填剤を含む生分解性コーティング層を、外部構造、好ましくは、上記外部構造内に位置する透明パネルから除去する方法であって、外部構造上の上記生分解性コーティング組成物を、他の箇所で定義されるようなデンプン分解酵素を含む洗浄剤と接触させることと、外部構造をすすぐことと、を含む、方法を提供する。
【0127】
より好ましい実施形態では、温室などの外部構造から除去される生分解性コーティング組成物は、乾燥重量に基づいて、2~30重量%、好ましくは5~25重量%、より好ましくは6~20重量%の架橋デンプンを含むオン/オフ型コーティング組成物として製剤化されたコーティング組成物である。
【0128】
明確化及び簡潔な説明の目的のために、特徴は、同じ又は別個の実施形態の一部として本明細書に記載されるが、本発明の範囲は、記載される特徴の全て又はいくつかの組み合わせを有する実施形態を含み得ることが理解されるであろう。
【0129】
次に、本発明を、以下の非限定的な実施例を参照して説明する。
【実施例
【0130】
生分解性
生分解性は、標準化された方法OECD301を使用して評価される。これらの例では、バージョンOECD301A及び/又はOECD301Fが適用され、これは、生分解性に関して同等の結果を提供する。CODを検出する方法だけが異なる。
【0131】
簡潔に言えば、生分解性を以下のように分析する。より詳細な方法の説明は、OECDから入手できる。
15mg/Lの固形分含量の水中の試験組成物の懸濁液は、微生物と接種され、暗闇の好気性条件下において二連でインキュベートされる。同じ量の接種物を有するが試験した組成物を含まないブランク(同じく二連)を並行して実行するとともに、同じ量の接種物を有する参照化合物(15mg/L酢酸ナトリウム)を実行する。また、阻害の程度を検証するために、試験濃度で試験された組成物及び対照物質を含有するアッセイを実行する。全てのアッセイは、穏やかな攪拌下で、全体を通して22℃で保たれ、28日間実行される。
【0132】
COD(化学的酸素要求量)は、アッセイの開始及び終了時に測定され、更なるCOD測定は、1日目、4日目、7日目、11日目、14日目、17日目、21日目及び25日目に行われる。試験は、試験した組成物の生分解性を%として表し、100%の生分解性が最適な結果である。
【0133】
充填剤は、概して無機鉱物であるため、そのようなものとして「生分解性」ではないが、また、本発明のコーティング組成物の環境への影響に寄与しない。水性組成物中の水についても同様である。したがって、本発明のコーティング組成物の「生分解性」は、本質的に、コーティング組成物の主な有機成分である結合剤(架橋デンプン)に基づいて決定される。
【0134】
耐候性(耐摩耗性)
コーティング層の耐候性を評価するために、以下のプロトコルに従う。
コーティング組成物は、4mmの厚さの標準的なガラスパネル(特定の処理なし)又は200μmのPVCパネル(5 Star Office、特定の処理なし)の2つの型の透明パネルに塗布される。2つの型のパネルで比較可能な結果が得られ、示されている結果はガラスパネルについてのものである。
【0135】
コーティング層の耐候性は、実際に塗布されるコーティングに基づいて分析される。調製及び分配される濃縮コーティング(以下のレシピ)を、25重量%の濃縮コーティング及び水の75重量%を使用して、水で希釈する。
【0136】
コーティング層の塗布は、特定のノズルを介して2バールの空気を吹き込む空気圧系統でコーティングを噴霧することによって行われ、小さな液滴の光線が発生する。コーティングは、22(±2)℃の温度で、40~60%の相対湿度でパネルに塗布される。温室の傾斜度を再現するために、パネル(ガラス又はプラスチックパネル)を、希釈されたコーティング組成物の塗布中に30°の角度で傾斜させる。
【0137】
コーティング層は、送風システム又は加熱システムを使用せずに、周囲温度で乾燥される。コーティング層が乾燥すると、コーティング層の耐候性の評価を行うことができる。コーティングされたパネルは、外に配置され、夏の条件下で、雨及び太陽からの紫外線によって自然に老化され、次のパラメータについて繰り返し分析される。
1.コーティングの分解を視覚的に評価するために、コーティング層の写真は、規範的な光源(D65)を使用して光キャビン内で撮影される。
2.コーティング層の光透過率測定は、紫外線可視分光光度計(OCEAN OPTICSのJASCO UV-Visible又はJAZ20C、これらは同等の結果を提供する)を使用して実施される。400~800nmの範囲の光透過率を平均して、光透過率の単一の値を提供し、これは、コーティング層によって遮られる光の量を定量化することを可能にする。
【0138】
各測定(画像と光透過率測定)の間に、コーティングは外部の天候状況にさらされる。コーティング層は、温室の傾斜を再現するために、30°傾斜した外側の支持体の上に置かれる。外部条件(温度、雨、風など)は常に異なるため、試験は、既知の性能を持つ参照コーティング層を並行して実行される。
【0139】
洗浄性能
オン/オフコーティング層(及び必要に応じて、自己分解コーティング組成物)は、適切な洗浄剤組成物で除去することができる。
【0140】
洗浄組成物の試験は、15週間外気気象条件に置かれたオン/オフコーティング層を使用して実施した。コーティング組成物を塗布し、上記のように乾燥させた。
【0141】
洗浄組成物の塗布は、コーティング組成物の塗布と同じ方法で行われる。洗浄組成物は、レシピが以下に与えられる濃縮洗浄組成物に対して、1:6の重量希釈で塗布された。洗浄組成物をコーティングされた表面に残し、気象条件によって示されるように乾燥させた。
【0142】
洗浄組成物、特にその中に含まれる酵素は、結合剤構造を分解し、基板への接着の損失をもたらす。洗浄組成物の他の成分は、コーティング層中に存在する充填剤の除去を可能にする。
【0143】
洗浄剤及びコーティング層は、連続した雨によってすすがれる。雨の力学的作用は、洗浄組成物及びコーティング層の混合物を溶解させる。
【0144】
コーティング層の目視検査は、すすぎ後に行う。洗浄性能は、基板上に残留物が残っていない場合に最適と定義される。洗浄性能は、結合剤が除去されたが、いくつかの充填剤が依然として基板上に存在するときの媒体として定義される。
【0145】
洗浄性能は、すすぎ後にコーティングが基板上に依然として存在する場合に低いと定義される。
【0146】
自己分解遮光塗料
表は、異なる自己分解式(濃縮溶液として)を表す。式1~3では、様々な量のTACKIDEX I231(ROQUETTE由来)を使用した。この糊化されたジャガイモデンプンは、リン酸系架橋剤を使用してサプライヤーによって既に架橋されている。式4では、TACKIDEX 036SP(ROQUETTE由来)を使用した。この糊化されたジャガイモデンプンは、サプライヤーによって架橋されていない。式5では、非架橋エンドウ豆デンプン、TACKIDEX N735を使用した。式6は、デンプンなしで調製した。
【0147】
以下の表に記載されている様々な原材料を、好適な容器内で均質化した。充填剤を添加する前に攪拌速度を800RPM超に上げ、粉末の十分な分散が得られたときに600RPM未満に下げた。
【0148】
市販の自己分解塗料Eclipse F4と比較して、異なる式の耐摩耗性を図1に示す。式3は、耐摩耗性の点でEclipse F4と同等である。式3は、12週間後でさえ、より高い耐摩耗性を有する。式1及び式2は、遮光塗料としても好適である。
【0149】
コーティング1~3のコーティング層は、目視検査に基づく週を通しての参照に類似している。
【表1】
消泡剤=Foamaster NXZ/BASF、増粘剤=Kelzan RD/CP KELCO、湿潤剤=BYK 347/BYK、凝集剤=Texanol/EASTMANN、充填剤スラリー(78重量% 炭酸カルシウム)=Omyaflow 15-ME/OMYA、接着促進剤=Silquest A1100/MOMENTIVE、殺生物剤=Acticide MBS/THOR、可塑剤=Neosorb 70/02/ROQUETTE。
【0150】
式1~3の生分解性は、コーティング組成物全体に対して行われた方法OECD301Aを用いて28日間で100%に達する。
【0151】
式1~3の生分解性は、充填剤を水に置き換えた状態で、方法OECD301Fを用いて28日間で96%に達する。
【0152】
遮光塗料のオン/オフ
下表に記載の原材料を好適な容器内で均質化した。充填剤を添加する前に攪拌速度を800RPM超に上げ、粉末の十分な分散が得られたときに600RPM未満に下げた。
【表2】
消泡剤=Foamaster NXZ/BASF、増粘剤=Kelzan RD/CP KELCO、湿潤剤=BYK 347/BYK、凝集剤=Texanol/EASTMANN、充填剤スラリー(78重量% 炭酸カルシウム)=Omyaflow 15-ME/OMYA、接着促進剤=Silquest A1100/MOMENTIVE、殺生物剤=Acticide MBS/THOR、可塑剤=Neosorb 70/02/ROQUETTE。
【0153】
式7~10の使用したデンプンに関して、
式7及び9では、様々な量のTACKIDEX I231(ROQUETTEから入手)を使用した。この予め糊化されたジャガイモデンプンは、リン酸系架橋剤を使用してサプライヤーによって既に架橋されている。式8及び10において、TACKIDEX036SP(ROQUETTEから入手)を使用する。この予め糊化されたジャガイモデンプンは、サプライヤーによって架橋されないが、デンプンの重量に対する11.4重量%の架橋剤(式8)又はデンプンの重量に対する10重量%の架橋剤(式10)を使用してハウス内で架橋され、架橋剤は、MEL CHEMICALSから入手のBACOTE20である。
【0154】
異なる式の耐摩耗性を、以下の参照と比較して図2に示す。
-Eclipse F4-1:3希釈で塗布される自己分解性の遮光参照
-Eclipse LD-1:3希釈で塗布されるオン/オフ遮光参照
全ての式7~10は、オン/オフ遮光塗料として使用できる。式8及び10は、架橋度が高いため、式7及び9よりも優れた性能を有する。
【0155】
目視検査によると、全てのコーティング層7~9は、観察期間を通して類似している。20週間(5ヶ月)は、洗浄組成物によって除去される前のオン/オフコーティング組成物の中程度の寿命である。全てのコーティング7~10の生分解性は、OECD301Fに基づいて、98±2%であった。
【0156】
洗浄組成物
オン/オフコーティング組成物を除去するための異なる洗浄組成物を、(濃縮溶液として)以下の表に記載する。
【0157】
洗浄剤1はpH中性洗浄剤である。処方に酵素を加えて、デンプンコーティング層を分解する。界面活性剤などの他の成分が添加され、洗浄性能が向上する。
【0158】
洗浄剤2は、クエン酸がpH改質剤として使用される酸洗浄剤である。酸性pHの処方及び酵素の存在は、デンプンコーティング層の分解を可能にする。
【0159】
洗浄剤3は、酒石酸がpH改質剤として使用される酸洗浄剤である。この式には酵素は使用されないが、充填剤の除去を助けるために隔離剤が添加される。
【表3】
消泡剤=SAG 1572/VAN MEEUWEN、増粘剤=Kelzan RD/CP KELCO、界面活性剤=Berol 1 8 5/NOURYON、pH改質剤=クエン酸/ BRENNTAG、酵素=Amplify Prime/NOVOZYME、隔離剤=グルコン酸/ROQUETTE。
【0160】
洗浄剤1及び2は、残留物なしで、コーティング層7~10の最適なクリアランスを提供する。洗浄剤3はまた、いくらかのクリーニングを提供するが、コーティングの完全な除去を提供することができないことが判明した樹脂及び充填剤の残留物は、基板表面に存在したままであった。
【0161】
実施例2
2つの同じ木製の小屋は、その内部は、晴れた夏の条件下では一般的に暑くなるが、工業用建物のモデルとして使用された。小屋のうちの1つの(不透明な)屋根部分に、式10に従ったオン/オフ遮光塗料を塗布した。晴れた夏の条件下では、遮光塗料を塗布した小屋は、陰影塗料のない小屋よりも著しく涼しかった。コーティング組成物は、デンプン分解酵素を含む洗浄組成物で除去することができた。
【0162】
実施例から導き出される洞察
従来の合成ポリマー結合剤の代わりに架橋デンプンを結合剤として使用して、例えば温室の遮光塗料として使用可能な生分解性コーティング組成物を作製することが可能であることが見出されている。架橋デンプンを使用して、遮光性能は、より高い生分解性で維持又は改善される。これにより、環境への影響が少ない遮光塗料が提供される。
図1
図2
【国際調査報告】