(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-15
(54)【発明の名称】ワクチンを作製する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/00 20060101AFI20240207BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20240207BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240207BHJP
C12P 21/00 20060101ALI20240207BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
A61K39/00 Z ZNA
A61K35/74 A
A61P35/00
C12P21/00 A
C12N1/21
C12P21/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549901
(86)(22)【出願日】2022-02-17
(85)【翻訳文提出日】2023-10-13
(86)【国際出願番号】 IL2022050192
(87)【国際公開番号】W WO2022175952
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】502379147
【氏名又は名称】イェダ リサーチ アンド デベロップメント カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュトラウスマン ラヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】サンドラー オデッド
(72)【発明者】
【氏名】リフ レウト
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B064AG02
4B064AG31
4B064CA02
4B064CA19
4B064CC03
4B064CC24
4B064CD13
4B064DA01
4B065AA19X
4B065AA42X
4B065AA46X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BB12
4B065BD33
4B065CA24
4B065CA44
4B065CA45
4C085AA03
4C085BB01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC30
4C087BC31
4C087BC55
4C087CA12
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB26
(57)【要約】
薬学的に許容される担体と、少なくとも1つのがん関連抗原を提示する細菌と、を含むワクチンが開示される。細菌は、少なくとも1つのがん関連抗原を発現するように遺伝子改変されたものではない。これらの使用も開示される。
【選択図】
図2-3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的に許容される担体と、少なくとも1つのがん関連抗原を提示する細菌とを含むワクチンであって、前記細菌が、前記少なくとも1つのがん関連抗原を発現するように遺伝子改変されたものではない、ワクチン。
【請求項2】
前記少なくとも1つのがん関連抗原が、前記細菌に含まれる修飾アミノ酸を介して前記細菌の細胞壁に組み込まれている、請求項1に記載のワクチン。
【請求項3】
前記がん関連抗原が、アルケン基、アルキン基、アジド基、シクロプロペニル基、及びジアジリン基からなる群から選択される少なくとも1つの反応性基を含む、請求項1又は2に記載のワクチン。
【請求項4】
前記修飾アミノ酸がD-アラニンを含む、請求項2又は3に記載のワクチン。
【請求項5】
前記D-アラニンが、D-アラニンアジド、D-アラニン-D-アラニンアジド、D-アラニンアルキン、D-アラニン-D-アラニンアルキンからなる群から選択される、請求項4に記載のワクチン。
【請求項6】
前記少なくとも1つのがん関連抗原が、アルケン基、アルキン基、アジド基、シクロプロペニル基、テトラジン基、ジベンゾシクロオクチル(DBCO)基、ジベンゾシクロクチン(DIBO)基、ビシクロノニン(BCN)基、トランスシクロオクテン(TCO)基、及び歪みトランスシクロオクテン(sTCO)基からなる群から選択される少なくとも1つの反応性基を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項7】
前記細菌がグラム陽性細菌である、請求項1~6のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項8】
前記細菌がグラム陰性細菌である、請求項1~6のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項9】
前記細菌が好気性細菌である、請求項1~8のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項10】
前記細菌が非好気性細菌である、請求項1~8のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項11】
前記細菌が生細菌である、請求項1~8のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項12】
前記細菌が弱毒化細菌である、請求項1~8のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項13】
前記少なくとも1つのがん関連抗原が、クリックケミストリー反応を介して前記修飾アミノ酸に結合している、請求項1~12のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項14】
前記細菌が、表1~表3のいずれかに記載の科、目、属、又は種の細菌である、請求項1~13のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項15】
前記細菌のゲノムが、配列番号24~310のいずれか1つに記載の16S rRNA配列を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項16】
前記がん関連抗原がネオアンチゲンである、請求項1~14のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項17】
前記細菌が、治療用タンパク質を発現するための遺伝子改変を有する、請求項1~16のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項18】
前記治療用タンパク質がサイトカインである、請求項17に記載のワクチン。
【請求項19】
アルミニウム塩を不含有である、請求項1~18のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項20】
前記担体がアジュバントを不含有である、請求項1~18のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項21】
抗原性組成物を作製する方法であって、
(a)細菌によって代謝される修飾アミノ酸を含む培養培地中で、前記細菌を前記細菌の細胞壁に組み込ませる条件下で、前記細菌をインキュベートする工程と、
(b)前記細菌を、がん関連抗原を前記修飾アミノ酸に結合させる条件下で少なくとも1つの前記がん関連抗原と接触させて、抗原性組成物を作製する工程と、
を含む、方法。
【請求項22】
前記修飾アミノ酸が、アルケン基、アルキン基、アジド基、シクロプロペニル基、及びジアジリン基からなる群から選択される少なくとも1つの反応性基を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記修飾アミノ酸がD-アラニンを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記D-アラニンが、D-アラニンアジド、D-アラニン-D-アラニンアジド、D-アラニンアルキン、D-アラニン-D-アラニンアルキンからなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1つのがん関連抗原が、アルケン基、アルキン基、アジド基、シクロプロペニル基、テトラジン基、ジベンゾシクロオクチル(DBCO)基、ジベンゾシクロクチン(DIBO)基、ビシクロノニン(BCN)基、トランスシクロオクテン(TCO)基、及び歪みトランスシクロオクテン(sTCO)基からなる群から選択される少なくとも1つの反応性基を含む、請求項21~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記工程(a)及び工程(b)を同時に実施する、請求項21~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記細菌がグラム陽性細菌である、請求項21~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記細菌がグラム陰性細菌である、請求項21~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記細菌が、Salmonella Typhimurium、Pseudomonas aeruginosa、及び/又はBacillus Subtillisを含む、請求項21~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記がん関連抗原に、クリックケミストリー反応を介して前記修飾アミノ酸を結合する、請求項21~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記がん関連抗原がネオアンチゲンである、請求項21~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記細菌が、治療用タンパク質を発現するための遺伝子改変を有する、請求項21~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記治療用タンパク質がサイトカインである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記細菌が、表1~表3のいずれかに記載の科、目、属、又は種の細菌である、請求項21~28、及び30~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記細菌のゲノムが、配列番号24~310のいずれか1つに記載の16S rRNA配列を含む、請求項21~28及び30~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
請求項21~34のいずれか一項に記載の方法を使用して作製される、請求項1に記載のワクチン。
【請求項37】
がんの治療が必要な対象において、がんを治療する方法であって、前記方法が、治療有効量の請求項1~20のいずれか一項に記載のワクチンを前記対象に投与して前記がんを治療することを含む、方法。
【請求項38】
前記がんが、乳がん、肺がん、胃がん、結腸直腸がん、黒色腫、膵臓がん、卵巣がん、骨がん、及び脳がんからなる群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記脳がんが、膠芽細胞腫である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
がんの予防が必要な対象において、がんを予防する方法であって、予防有効量の請求項1~20のいずれか一項に記載のワクチンを前記対象に投与して前記がんを予防することを含む、方法。
【請求項41】
前記がんが、乳がん、黒色腫、肺がん、胃がん、結腸直腸がん、膵臓がん、卵巣がん、骨がん、及び脳がんからなる群から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記脳がんが、膠芽細胞腫である、請求項41に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年2月18日に出願された米国仮特許出願第63/150,692号の優先権を主張し、その内容のすべてを本参照により本願に援用する。
【0002】
配列表に関する陳述
本出願の出願と同時に提出された、2022年2月15日付作成の「91250 SequenceListing.txt」と題された567,434バイトのASCIIファイルを本参照により本願に援用する。
【0003】
本発明は、そのいくつかの実施形態では、外表面上に疾患関連抗原を含むように操作され得る細菌ワクチンに関する。
【背景技術】
【0004】
分子生物学、次世代シーケンシング及び予測アルゴリズムによって免疫原性ネオアンチゲンを予測する能力、病原性細菌の生活様式、細菌工学、並びに合成生物学ツールの理解における進歩は、抗原運搬ベクターとしての細菌の合理的設計を著しく加速した。強力な免疫原であるため、細菌は、自身に対する、ひいては運搬したネオアンチゲンに対する、非常に大規模な免疫応答を誘発し得る。実際に、抗原情報(antigenic messages)を運搬する細菌ベクターは、リポ多糖類、リポタンパク質、フラジェリン、及びCpGなどの病原体関連分子パターン(PAMP)によって介在される強力な危険シグナルを送達することもできる。異なるクラスの病原体に由来するPAMPは、Toll様受容体(TLR)、C型レクチン様受容体(CLR)、レチノイン酸誘導遺伝子(RIG)様受容体(RLR)、及びヌクレオチド結合オリゴマー化ドメイン(NOD)様受容体(NLR)を含む、病原体認識受容体(PRR)の多様なファミリーに結合する。それぞれの病原体によるこれらの相互作用は、異なるシグナル伝達経路を活性化してAPCを差次的に活性化し、微生物によって、ひいては細菌によって運搬される抗原に対して特異的に適応させる様式で適応的なエフェクター応答を指示する。さらに、細菌が自身の病原性のために使用する固有の毒素は、エフェクター応答又は記憶応答を強化することができる。
【0005】
背景技術としては、米国特許出願第20200087703号明細書、同第20200054739号明細書、及び同第20190365830号明細書、Gopalakrishnan V et al, Science. 2018 Jan 5; 359(6371): 97-103、Geller et al., Science, Vol 357, Issue 6356 15 September 2017、Riquelme E et al Cell. 2019 Aug 8;178(4):795-806.e12. doi: 10.1016/j.cell.2019.07.008、Straussman R et al., Nature. 2012 Jul 26;487(7408):500-4. doi: 10.1038/nature11183が挙げられる。
【発明の概要】
【0006】
本発明の一態様によれば、薬学的に許容される担体と、少なくとも1つのがん関連抗原を提示する細菌とを含むワクチンであって、細菌は少なくとも1つのがん関連抗原を発現するように遺伝子改変されたものではない、ワクチンが提供される。
【0007】
本発明の一態様によれば、抗原性組成物を作製する方法であって、
(a)細菌によって代謝される修飾アミノ酸を含む培養培地中で、細菌を細菌の細胞壁に組み込ませる条件下で、細菌をインキュベートする工程と、
(b)前記細菌を、がん関連抗原を前記修飾アミノ酸に結合させる条件下で少なくとも1つの前記がん関連抗原と接触させて、抗原性組成物を作製する工程と、
を含む方法が提供される。
【0008】
本発明の一態様によれば、がんを治療する必要がある対象において、がんを治療する方法であって、治療有効量の本願に記載のワクチンを対象に投与してがんを治療することを含む方法が提供される。
【0009】
本発明の一態様によれば、がんを予防する必要がある対象においてがんを予防する方法であって、予防有効量の本願に記載のワクチンを対象に投与してがんを予防することを含む方法が提供される。
【0010】
本発明の実施形態によれば、少なくとも1つのがん関連抗原は、細菌に含まれる修飾アミノ酸を介して細菌の細胞壁に組み込まれる。
【0011】
本発明の実施形態によれば、がん関連抗原は、アルケン基、アルキン基、アジド基、シクロプロペニル基、及びジアジリン基からなる群から選択される少なくとも1つの反応性基を含む。
【0012】
本発明の実施形態によれば、修飾アミノ酸はD-アラニンを含む。
【0013】
本発明の実施形態によれば、D-アラニンは、D-アラニンアジド、D-アラニン-D-アラニンアジド、D-アラニンアルキン、D-アラニン-D-アラニンアルキンからなる群から選択される。
【0014】
本発明の実施形態によれば、少なくとも1つのがん関連抗原は、アルケン基、アルキン基、アジド基、シクロプロペニル基、テトラジン基、ジベンゾシクロオクチル(DBCO)基、ジベンゾシクロクチン(DIBO)基、ビシクロノニン(BCN)基、トランスシクロオクテン(TCO)基、及び歪みトランスシクロオクテン(sTCO)基からなる群から選択される少なくとも1つの反応性基を含む。
【0015】
本発明の実施形態によれば、細菌はグラム陽性細菌である。
【0016】
本発明の実施形態によれば、細菌はグラム陰性細菌である。
【0017】
本発明の実施形態によれば、細菌は好気性細菌である。
【0018】
本発明の実施形態によれば、細菌は、非好気性細菌である。
【0019】
本発明の実施形態によれば、細菌は生細菌である。
【0020】
本発明の実施形態によれば、細菌は弱毒化細菌である。
【0021】
本発明の実施形態によれば、少なくとも1つのがん関連抗原は、クリックケミストリー反応を介して修飾アミノ酸に結合している。
【0022】
本発明の実施形態によれば、細菌は、表1~表3のいずれかに記載の科、目、属、又は種の細菌である。
【0023】
本発明の実施形態によれば、細菌のゲノムは、配列番号24~310のいずれか1つに記載の16S rRNA配列を含む。
【0024】
本発明の実施形態によれば、がん関連抗原はネオアンチゲンである。
【0025】
本発明の実施形態によれば、細菌は、治療用タンパク質を発現するように遺伝子改変されたものである。
【0026】
本発明の実施形態によれば、治療用タンパク質はサイトカインである。
【0027】
本発明の実施形態によれば、ワクチンはアルミニウム塩を不含有である。
【0028】
本発明の実施形態によれば、担体はアジュバントを不含有である。
【0029】
本発明の実施形態によれば、修飾アミノ酸は、アルケン基、アルキン基、アジド基、シクロプロペニル基、及びジアジリン基からなる群から選択される少なくとも1つの反応性基を含む。
【0030】
本発明の実施形態によれば、修飾アミノ酸はD-アラニンを含む。
【0031】
本発明の実施形態によれば、D-アラニンは、D-アラニンアジド、D-アラニン-D-アラニンアジド、D-アラニンアルキン、D-アラニン-D-アラニンアルキンからなる群から選択される。
【0032】
本発明の実施形態によれば、少なくとも1つのがん関連抗原は、アルケン基、アルキン基、アジド基、シクロプロペニル基、テトラジン基、ジベンゾシクロオクチル(DBCO)基、ジベンゾシクロクチン(DIBO)基、ビシクロノニン(BCN)基、トランスシクロオクテン(TCO)基、及び歪みトランスシクロオクテン(sTCO)基からなる群から選択される少なくとも1つの反応性基を含む。
【0033】
本発明の実施形態によれば、工程(a)及び工程(b)は同時に実行される。
【0034】
本発明の実施形態によれば、細菌は、Salmonella Typhimurium、Pseudomonas aeruginosa、及び/又はBacillus Subtillisを含む。
【0035】
本発明の実施形態によれば、がん関連抗原は、クリックケミストリー反応を介して修飾アミノ酸に結合している。
【0036】
本発明の実施形態によれば、がん関連抗原はネオアンチゲンである。
【0037】
本発明の実施形態によれば、細菌は、治療用タンパク質を発現するように遺伝子改変されたものである。
【0038】
本発明の実施形態によれば、治療用タンパク質はサイトカインである。
【0039】
本発明の実施形態によれば、細菌は、表1~表3のいずれか1つに記載の科、目、属、又は種の細菌である。
【0040】
本発明の実施形態によれば、細菌のゲノムは、配列番号24~310のいずれか1つに記載の16S rRNA配列を含む。
【0041】
本発明の実施形態によれば、ワクチンは、本願に記載の方法を使用して作製される。
【0042】
本発明の実施形態によれば、がんは、乳がん、肺がん、胃がん、結腸直腸がん、黒色腫、膵臓がん、卵巣がん、骨がん、及び脳がんからなる群から選択される。
【0043】
本発明の実施形態によれば、脳がんは膠芽腫を含む。
【0044】
本発明の実施形態によれば、がんは、乳がん、黒色腫、肺がん、胃がん、結腸直腸がん、膵臓がん、卵巣がん、骨がん及び脳がんからなる群から選択される。
【0045】
本発明の実施形態によれば、脳がんは膠芽腫を含む。
【0046】
特に定義しない限り、本明細書で使用するすべての技術及び/又は科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により通常理解されるものと同じ意味を有する。本願に記載のものと同様の又は均等な方法及び材料を、本発明の実施形態の実施又は試験に使用することができるが、例示的な方法及び/又は材料を下記に記載する。矛盾する場合、定義を含め、本願特許明細書が優先する。さらに、材料、方法、及び実施例は単なる例示であり、必ずしも限定を意図するものではない。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態について、その例示のみを目的として添付の図面を参照して本願に記載する。以下、特に図面に詳細に言及するが、示される詳細は、例示を目的とし、また本発明の実施形態の例証的説明を目的とすることを強調する。この点に関して、図面を用いて説明することで、当業者には、本発明の実施形態をどのように実践し得るかが明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】
図1のA~Cは、ネオアンチゲン運搬のためのプラットフォームとして、クリック反応による処理がなされた細菌を示す。(A)クリック反応により処理した細菌の概略図。(B)クリック反応のフローサイトメトリーによる検証。OVAをクリック結合させた細菌画分をアビジン-Cy5とともにインキュベートし、フローサイトメトリーによって解析した。陰性対照には、D-alaとともにインキュベートしなかった細菌を用いた。(C)クリック反応及び腫瘍ホーミングの、インビボイメージングによる検証。Cy5でクリック反応させた細菌を、担腫瘍C57BL/6マウスにi.v(尾静脈)注射した。
【
図2-1】
図2のA~Eは、B16-OVA腫瘍モデルにおける、OVAをクリック結合させた細菌によるワクチン接種の長期有効性及び免疫原性を示す。(A)実験のタイムテーブル。(B)腫瘍増殖曲線。すべての処置マウスは、腫瘍増殖の遅延を示した。マウス814は完全に治癒した。(C)抗PD1処置コホートの代表的なマウス、及びPACMAN-CLICK-OVAと一緒に抗PD1で処置した、完全治癒を示したマウス814。(D)0~600mm
3の範囲の腫瘍体積においてPACMAN-CLICK-OVA(マウス:839,814,824,801,802)でワクチン接種したマウスの腫瘍増殖曲線の拡大。完全治癒したマウス(マウス番号814)は、2日目から腫瘍体積の減少を示した。(E)フローサイトメトリーによるSIINFEKL(配列番号11)特異的TCRの定量。ネオアンチゲン特異的T細胞クローンを定量するために、脾細胞をOVAネオアンチゲン(SIINFEKL、配列番号11)のテトラマーと共インキュベートした。CD3/CD8集団中のSIINFEKEL(配列番号11)陽性T細胞の割合は、非処置マウスと比較した中でもPACMNA-CLICK-OVAをワクチン接種したマウスにおいて最も高かった。注目すべきことに、マウス814(オレンジ色のドット)が最も高い割合のSIINFEKL(配列番号11)特異的T細胞を示した。
【
図3】
図3は、弱毒化(STM3120)サルモネラ菌の腫瘍ホーミングを示すグラフである。
【
図4】
図4は、弱毒化(STM3120)サルモネラ及び親(14028)サルモネラのi.v.投与における毒性を比較して示すグラフである。
【
図5】
図5は、NHSベースのアンカーを使用してOVAをクリック結合させたStaphylococcus pasteuri細菌の作製を示すFACS読み取りである。クリック反応させた細菌画分にマークを付している。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明は、そのいくつかの実施形態では、外表面上に疾患関連抗原を含むように操作され得る細菌ワクチンに関する。
【0050】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明の用途は、以下の発明を実施するための形態に示される詳細又は実施例によって例示される詳細に必ずしも限定されないことを理解されたい。本発明は他の実施形態が可能であり、又はさまざまな方法で実施若しくは実現することが可能である。
【0051】
抗原又は抗原をコードする核酸をAPCの細胞質ゾルに直接送達する細菌ベクターに基づくインビボ治療用がんワクチンのストラテジーは、それらの使用が容易であることから、学術研究所及び製薬産業において開発されている。典型的には、細菌は、疾患抗原を発現(さらには分泌)するように遺伝子改変される。代替的に、細菌は、疾患抗原をコードするプラスミドcDNAを免疫系に送達するために使用され得る。
【0052】
本発明者らは、遺伝子改変を伴わずに外表面上に疾患関連抗原を提示するように細菌が操作されている、新規ワクチンに想到した。
【0053】
本明細書における下記説明及び続く実施例の項において例示されるように、本発明者らは、遺伝子改変を伴わずにネオアンチゲンで細菌を標識することが可能であることを示す。まずは細菌を修飾アミノ酸(アルキン-D-アラニン-D-アラニン(D-Ala))とともにインキュベートして、ペプチドグリカンを含む細菌細胞壁(peptidoglycan bacterial cell wall)に修飾アミノ酸を組み込ませた。次に、
図1のAに示すように、N末端にアジド残基を含むOVAネオアンチゲンを細菌とクリック反応させた。
図1のBに示すように、OVAネオアンチゲンとクリック結合した細菌の存在が確認された。
【0054】
本発明をさらに実施に移している間に、本発明者らは、クリック反応させた細菌が、i.v.注射後に腫瘍部位に到達し(
図1のC)、治療効果をもたらすことができることを実証した(
図2のB及び
図2のD)。
【0055】
結果として、本教示は、修飾された他の細胞壁成分(例えば、MurNAc、タイコ酸、及びリポ多糖類)が、培養培地から細菌によって取り込まれ、細菌の細胞壁内に組み込まれ得ることを示唆し、がんの処置のためのワクチンの産生のための容易かつ費用対効果の高い方法の道を開く。さらに、最適なネオアンチゲンの提示のための、遺伝子操作によらない細菌操作は、遺伝子操作細菌に関係するバイオセーフティー及び規制における制約による主要な課題を解決する。細菌のあらゆる遺伝子操作は、冗長かつ費用のかかる承認プロセスを必要とするが、本開示のストラテジーは、迅速かつ安価なストラテジーを可能にする。さらに、本開示の方法は、ネオアンチゲン提示のための段取りとして遺伝子改変することが困難な細菌の使用を可能にする。
【0056】
結果として、腫瘍ネオアンチゲンを提示するように遺伝子改変された細菌は、個別化抗がんワクチンの分野におけるタイブレーカーになる可能性を有する。
【0057】
したがって、本発明の一態様によれば、薬学的に許容される担体と、少なくとも1つのがん関連抗原を提示する細菌とを含むワクチンであって、細菌が少なくとも1つのがん関連抗原を発現するように遺伝子改変されたものではない、ワクチンが提供される。
【0058】
本明細書で使用される場合、「ワクチン」という用語は、投与されると免疫応答、特にがん細胞を認識して攻撃する細胞性免疫応答を誘導する医薬製剤(医薬組成物)を指す。好ましくは、ワクチンは、標的抗原に対する長期免疫記憶の形成をもたらす。本発明のワクチンはまた、好ましくは、薬学的に許容される担体(すなわち、細菌を保持する液体)を含む。担体は、細菌の生存率に影響を及ぼさないものであってもよい。
【0059】
本発明のこの態様の単離細菌は、グラム陽性細菌若しくはグラム陰性細菌であってもよく、又は両方の組合せであってもよい。
【0060】
単離細菌は、好気性又は非好気性であり得る。
【0061】
一実施形態では、細菌は腫瘍部位に対しホーミングすることができる。
【0062】
別の実施形態では、細菌は腫瘍マイクロバイオーム中に存在する。
【0063】
特定の実施形態によれば、細菌は、Salmonella Typhimurium(例えば、Salmonella Typhimuriumの弱毒株VNP20009、Salmonella Typhimurium 14028のSTM3120株、Salmonella Typhimurium 14028のSTM1414株)、Pseudomonas aeruginosa(CHA-OST株)及び/又はBacillus Subtillis(PY79株)である。
【0064】
乳腺腫瘍のマイクロバイオームに存在することが知られている細菌の例を、本明細書の下記表1に記載する。このような細菌は、乳がんを処置するためのワクチンにおける使用に特に適切であり得る。
【0065】
【0066】
表2は、乳がん、肺がん、又は卵巣がんを処置するためのワクチンにおける使用に特に適切であり得る細菌分類群を含む。細菌は、腫瘍型ごとの濃縮のために、それらのp値(最低から最高)に従ってソートした。
【0067】
【0068】
表3は、特定の腫瘍型において優勢である様々な細菌種をまとめる。
【0069】
【0070】
「単離された」又は「濃縮された」という用語は、(1)産生された当初(天然であっても実験環境であっても)に関連していた成分の少なくとも一部から分離された、並びに/又は(2)人工的に産生、調製、精製、及び/若しくは製造された細菌を包含する。単離微生物は、それらが当初関連していた他の成分の少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、又はそれ以上から分離され得る。いくつかの実施形態では、単離微生物は、約80%超、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約99%超純粋である。本明細書で使用される場合、物質は、他の成分を実質的に含まない場合、「純粋」である。「精製する」、「精製している」及び「精製された」という用語は、微生物又は他の物質が、産生若しくは作製された当初(例えば、天然であっても実験環境であっても)又はその最初の産生後の任意の時間の間のいずれかで関連していた成分の、少なくとも一部から分離されていることを指す。微生物又は微生物集団が、産生時又は産生後に、例えば微生物又は微生物集団を含む材料又は環境から単離されている場合、精製されているとみなすことができ、精製微生物又は精製微生物集団は、最大約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、又は約90%超の他の材料を含んでいてもよく、それでも「単離されている」とみなすことができる。いくつかの実施形態では、精製微生物又は精製微生物集団は、約80%超、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約99%超純粋である。本明細書で提供される微生物組成物の場合、組成物中に存在する1種類以上の微生物系統(microbial type)は、かかる微生物系統を含む材料又は環境中で産生される及び/又は存在する1種類以上の他の微生物とは別に精製することができる。微生物組成物及びその微生物成分は、概して、生息環境からの持ち込み作製物から精製される。
【0071】
ある特定の実施形態では、ワクチン中の細菌の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%は、本明細書の上記の表1~3に掲載される属、種又は株のものである。
【0072】
特定の実施形態によれば、細菌のゲノムは、配列番号24~310に示される配列のいずれか1つに対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%同一である16S rRNA配列を含む。
【0073】
本明細書で使用される場合、「相同性パーセント」、「同一性パーセント」、「配列同一性」若しくは「同一性」、又は文法上の等価物は、2つの核酸配列又はポリペプチド配列に関して本明細書中で使用される場合、整列させた場合に同じである2つの配列中の残基への言及を含む。タンパク質を参照して配列同一性のパーセンテージが使用されるとき、同一ではない残基位置は、多くの場合、類似した化学特性(例えば、電荷又は疎水性)を有する別のアミノ酸残基でアミノ酸残基が置換された保存的アミノ酸置換により異なっているため、分子の機能特性には変化がないものと認識される。保存的置換により配列が異なる場合、この置換の保存的性質について補正するために配列同一性パーセントを上方に調整してもよい。このような保存的置換の点で異なる配列は、「配列類似性」又は「類似性」を有するとみなされる。この調整を行うための手法は当業者に周知である。典型的には、この調整は、保存的置換を完全なミスマッチではなく部分的なミスマッチとしてスコア付けして、配列同一性のパーセンテージを上げることを含む。したがって、例えば、同一のアミノ酸にはスコア1が与えられ、非保存的置換にはスコア0が与えられる場合、保存的置換には0~1のスコアが与えられる。保存的置換のスコアリングは、例えばHenikoff S and Henikoff JG[Amino acid substitution matrices from protein blocks. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 1992, 89(22): 10915-9]のアルゴリズムに従って計算される。
【0074】
同一性パーセントは、例えば、National Center of Biotechnology Information(NCBI)のBlastNソフトウェアを含む任意の相同性比較ソフトウェアを使用して、例えばデフォルトパラメータを利用することによって決定することができる。
【0075】
2つの配列間の相同性%又は同一性%を決定するために使用され得る他の例示的な配列アライメントプログラムとしては、FASTAパッケージ(精密(SSEARCH、LALIGN、GGSEARCH及びGLSEARCH)及びヒューリスティック(FASTA、FASTX/Y、TFASTX/Y及びFASTS/M/F)を含む)アルゴリズム、EMBOSSパッケージ(Needle、stretcher、water及びmatcher)、BLASTプログラム(BLASTN、BLASTX、TBLASTX、BLASTP、TBLASTNを含むがこれらに限定されない)、メガブラスト及びBLATが挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、配列アライメントプログラムはBLASTNである。例えば、95%相同性は、BLASTNによって、すべての非重複アライメントセグメントを組み合わせ(BLAST HSP)、それらの同一マッチ数を合計し、この合計をより短い配列の長さで割ることによって決定される95%配列同一性を指す。
【0076】
いくつかの実施形態では、配列アライメントプログラムは、基本的な局所アライメントプログラム、例えば、BLASTである。いくつかの実施形態では、配列アライメントプログラムは、ペアワイズグローバルアライメントプログラムである。いくつかの実施形態では、ペアワイズグローバルアライメントプログラムは、タンパク質-タンパク質アライメントのために使用される。いくつかの実施形態では、ペアワイズグローバルアライメントプログラムはNeedleである。いくつかの実施形態では、配列アライメントプログラムはマルチプルアライメントプログラムである。いくつかの態様において、マルチプルアライメントプログラムはMAFFTである。いくつかの実施形態では、配列アライメントプログラムは、全ゲノムアライメントプログラムである。いくつかの実施形態では、全ゲノムアライメントは、BLASTNを使用して実施される。いくつかの実施形態では、BLASTNは、デフォルトパラメータに対するいかなる変更もなしに利用される。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態によれば、同一性は、全体的な同一性すなわち、本発明の核酸配列全体にわたる同一性であり、その一部にわたる同一性ではない。
【0078】
ある特定の実施形態では、ワクチンは、本明細書の上記の表1~3に掲載する科/属/種/株の細菌を少なくとも1×103コロニー形成単位(CFU)、1×104コロニー形成単位(CFU)、1×105コロニー形成単位(CFU)、1×106コロニー形成単位(CFU)、1×107コロニー形成単位(CFU)、1×108コロニー形成単位(CFU)、1×109コロニー形成単位(CFU)、1×1010コロニー形成単位(CFU)で含む。
【0079】
細菌を産生するための方法は、3つの主要なプロセス工程を含み得る。この工程とは、生物のバンキング、生物の生産、及び保存である。
【0080】
バンキングのために、細菌に含まれる株は、(1)検体から直接単離するか、又はバンキングされたストックから取り出したもの、(2)任意選択で、生存しているバイオマスを作製するために、増殖を支持する栄養寒天又はブロス上で培養したもの、(3)任意選択で、長期保存用に複数のアリコートで保存されたバイオマスのいずれかであり得る。
【0081】
培養工程を用いる実施形態では、寒天又はブロスは、増殖を可能にする必須要素及び特定の因子を提供する栄養素を含有してもよい。一例は、20g/Lのグルコース、10g/Lの酵母エキス、10g/Lのダイズペプトン、2g/Lのクエン酸、1.5g/Lのリン酸二水素ナトリウム、100mg/Lのクエン酸鉄アンモニウム、80mg/Lの硫酸マグネシウム、10mg/Lの塩化ヘミン、2mg/Lの塩化カルシウム、1mg/Lのメナジオンから構成される培地である。別の例は、pH6.8で、10g/Lの牛肉抽出物、10g/Lのペプトン、5g/Lの塩化ナトリウム、5g/Lのデキストロース、3g/Lの酵母エキス、3g/Lの酢酸ナトリウム、1g/Lの可溶性デンプン、及び0.5g/LのL-システインHClから構成される培地である。さまざまな微生物用培地及びバリエーションが、当該分野で周知である(例えば、R. M. Atlas, Handbook of Microbiological Media (2010) CRC Press)。培養培地は、開始時に培養物に添加することができ、培養中に添加してもよく、又は培養物中に断続的/連続的に流入させてもよい。ワクチン中の株は、単独で、微生物組成物のサブセットとして、又は微生物組成物を含む全コレクションとして培養することができる。例えば、第1の株と第2の株を、混合連続培養において、培養から培養微生物がウォッシュアウトされることを防ぐために、いずれかの微生物の最大増殖速度よりも低い希釈率にて一緒に培養してもよい。
【0082】
接種した培養物は、バイオマスを形成させるのに十分な時間、好ましい条件下でインキュベートする。ヒトに使用する微生物組成物の場合、このようなインキュベートは、37℃の温度、正常なヒトにおける微小環境(normal human niche)と同様の値を有するpH、及びその他のパラメータ下で行われることが多い。環境は、能動的に制御されてもよく、(例えば、緩衝剤を介して)受動的に制御されてもよく、又はドリフトしてもよい。例えば、嫌気性細菌組成物については、無酸素/還元環境を用いることができる。このような環境は、システインなどの還元剤をブロスに添加すること、及び/又はブロスから酸素を除去することによって得ることができる。一例として、細菌組成物の培養物は、1g/Lのシステイン-HClで予め還元した上記培地中、37℃、pH7で増殖させることもできる。
【0083】
培養物が十分なバイオマスを作製したら、かかるバイオマスをバンキングのために保存することができる。対象生物を、凍結から保護(「抗凍結剤」の添加)、乾燥から保護(「凍結乾燥保護剤」)、及び/又は浸透圧ショックから保護(「浸透圧調節剤」)する化学環境中に置き、複数の(任意選択で同一の)容器中に分配して均一なバンクを作製し、次いで保存のために培養物を処理してもよい。容器は、概して不透過性であり、環境からの隔離を確保する閉鎖性を有する。凍結保存処理は、超低温(例えば、-80℃以下)で液体を凍結することによってなされる。乾燥保存は、蒸発(噴霧乾燥又は「冷却乾燥(cool drying)」の場合)又は昇華(例えば、凍結乾燥、噴霧凍結乾燥の場合)によって培養物から水分を除去する。水分の除去は、極低温より高い温度での微生物組成物の長期貯蔵安定性を改善する。微生物組成物が、例えば、胞子形成微生物種を含み、胞子の産生をもたらす場合、最終組成物は、上記の技術を使用して保存される密度勾配遠心分離などの追加の手段によって精製され得る。微生物組成物のバンキングは、株を個々に培養及び保存することによって、又は株を一緒に混合して組合せバンクを作製することによって行うことができる。凍結保存の例としては、微生物細胞を遠心分離によって培養培地からペレット化し、上清をデカントして15%のグリセロールを含む新鮮な培養ブロスに置き換えて微生物組成物培養物を回収し、次いでこの培養物を1mLのクライオチューブに分注し、密封し、長期生存性保持のために-80℃に置いてもよい。この手順では、凍結保存からの回復時に、許容可能な生存率が得られる。
【0084】
微生物の産生は、培地組成及び培養条件を含む、バンキングと同様の培養工程を用い行われてもよい。このような産生は、特に臨床開発又は商業生産のために、より大規模な運用で行うこともできる。大規模下では、最終的な培養の前に微生物組成物の継代培養が複数回あってもよい。培養の終わりに、投与のための剤形へとさらに製剤化するために培養物を回収する。これには、濃縮、望ましくない培地成分の除去、及び/又は微生物組成物を保存して選択経路による投与に許容可能なものとする化学環境への導入、が含まれる。乾燥後、粉末を適切な効力にブレンドし、他の培養物及び/又は充填剤と混合することができ、例えば、均一性及び取り扱いの容易さのための微結晶性セルロースと、本明細書において提供されるように製剤化されたワクチンの細菌とを混合することができる。
【0085】
特定の態様では、対象に投与するためのワクチン(すなわち、細菌組成物)が提供される。いくつかの実施形態では、ワクチンの細菌は、単回用量単位又は複数回用量形式であり得る最終作製物を作製するために、追加の活性材料及び/又は不活性材料と組み合わせる。
【0086】
ワクチン中に存在する細菌は、生細菌(viable)であってもよい(例えば、投与後に、適切な培地中又は体内で培養されたときに増殖することができる)。
【0087】
別の実施形態では、ワクチン中に存在する細菌は死細菌(non-viable)である。
【0088】
さらに別の実施形態では、細菌は、疾患を引き起こすことがないように弱毒化される。
【0089】
言及したように、本明細書に開示されるワクチンの細菌は、少なくとも1つのがん関連抗原を提示する。
【0090】
がん関連抗原は、典型的には、タンパク質の1つ以上の抗原決定基に相当する短いペプチドである。がん関連抗原は、典型的には、クラスI又はIIのMHC受容体と結合して三量複合体を形成する。この三量複合体は、適当な親和性でMHC/ペプチド複合体を結合するのに適したT細胞受容体を担持しているT細胞によって認識され得る。MHCクラスI分子に結合するペプチドは、典型的には約8~14アミノ酸長である。MHCクラスII分子に結合するT細胞エピトープは、典型的には約12~30アミノ酸長である。MHCクラスII分子に結合するペプチドの場合、同じペプチド及び対応するT細胞エピトープは共通のコア部分を共有し得るが、それぞれ、コア配列のアミノ末端の上流及びそのカルボキシ末端の下流の隣接配列の長さが異なることに起因して全長が異なり得る。T細胞エピトープは、免疫応答を引き起こす場合、抗原として分類され得る。
【0091】
ペプチド配列は、当業者に公知の方法、例えば、自動ペプチド合成機(例えば、Applied Biosystems,Inc.(カリフォルニア州、フォスターシティ)から入手可能なもの)を使用するペプチド合成によって合成され得る。より長いペプチド又はポリペプチドもまた、例えば、組換え法によって調製され得る。
【0092】
がんに対する抗原は、精巣がん、卵巣がん、膠芽腫などの脳がん、膵臓がん、黒色腫、肺がん、前立腺がん、肝臓がん、乳がん、直腸がん、結腸がん、食道がん、胃がん、腎臓がん、肉腫、膠芽細胞腫、ホジキン及び非ホジキンリンパ腫並びに白血病に由来する抗原であり得る。
【0093】
一実施形態では、がん関連抗原は、がん精巣抗原(例えば、黒色腫抗原タンパク質(MAGE)ファミリーのメンバー、扁平上皮細胞がん-1(NY-ESO-1)、BAGE(B黒色腫抗原)、LAGE-1抗原、Brother of the Regulator of Imprinted Sites(BORIS)及びGAGEファミリーのメンバー)である。
【0094】
別の態様において、がん関連抗原は、MART-1/Melan-Aタンパク質、例えば、MART1 MHCクラスIペプチド(Melan-A:26-35(L27)、ELAGIGILTV;配列番号1)及びMHCクラスIIペプチド(Melan-A:51-73(RR-23)RNGYRALMDKSLHVGTQCALTRR;配列番号2)に由来する。
【0095】
別の実施形態では、がん関連抗原は、糖タンパク質70、糖タンパク質100(gp100:25-33(MHCクラスI(EGSRNQDWL-配列番号7)又はgp100:44-59 MHCクラスII(WNRQLYPEWTEAQRLD-配列番号8)ペプチド)に由来する。
【0096】
さらに別の実施形態では、がん関連抗原は、チロシナーゼ、チロシナーゼ関連タンパク質1(TRP1)、チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP-2)又はTRP-2/INT2(TRP-2/イントロン2)に由来する。
【0097】
さらに別の実施形態では、がん関連抗原は、MUT30(キネシンファミリーメンバー18Bにおける変異、Kif18b-PSKPSFQEFVDWENVSPELNSTDQPFL-配列番号9)又はMUT44(cleavage and polyadenylation specific factor 3-like、Cpsf3l-EFKHIKAFDRTFANNPGPMVVFATPGM-配列番号10)を含む。
【0098】
さらに別の実施形態では、がん関連抗原は、前立腺がん特異的T細胞-SPAS-1の刺激因子に由来する。
【0099】
さらに別の実施形態では、がん関連抗原は、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)又はhTRT(ヒトテロメラーゼ逆転写酵素)に由来する。
【0100】
さらに別の実施形態では、がん関連抗原は、オボアルブミン(OVA)、例えば、OVA257-264 MHCI H-2Kb(SIINFEKL-配列番号11)及びOVA323-339 MHCII I-A(d)(ISQAVHAAHAEINEAGR-配列番号12)、RAS変異、p53の発ガン性変異(TP53)(p53mut(マウス変異p53R172H配列であるVVRHCPHHER-配列番号4(ヒト変異p53R175H配列であるEVVRHCPHHE-配列番号5)のペプチド抗原)、又はBRAF-V600Eペプチド(GDFGLATEKSRWSGS-配列番号13)に由来する。
【0101】
特定の実施形態によれば、がん関連抗原は配列番号11に記載されている。
【0102】
さらに別の実施形態では、がん関連抗原は、α-ラクトアルブミン(α-Lac)、Her2/neu、BRCA-2又はBRCA-1(RNF53)、KNG1K438-R457(キニノーゲン-1ペプチド)及びC3fS1304-R1320(変異型BRCA1を他のBC及び非発がん性変異型BRCA1から区別するペプチド)を含むがこれらに限定されない乳がん関連疾患抗原である。
【0103】
さらに別の実施形態では、がん関連抗原は、MUC1、KRAS、CEA(CAP-1-6-D[Asp6];YLSGADLNL-配列番号14)及びAdpgkR304M MC38(MHCI-Adpgk:ASMTNMELM-配列番号15;MHCII-Adpgk:GIPVHLELASMTNMELMSSIVHQQVFPT-配列番号16)を含むがこれらに限定されない結腸直腸がん関連疾患抗原である。
【0104】
さらに別の実施形態では、がん関連抗原は、CEA、CA 19-9、MUC1、KRAS、p53mut(マウスp53R172H変異配列VVRHCPHHER-配列番号4のペプチド抗原(ヒトp53R175H変異配列EVVRHCPHHE-配列番号5)及びMUC4又はMUC13、MUC3A又はCEACAM5、KRASペプチド(例えば、KRAS-G12R、KRAS-G13D、p5-21配列KLVVVGAGGVGKSALTI(配列番号17)、p5-21 G12D配列KLVVVGADGVGKSALTI(配列番号18)、p17-31配列SALTIQLIQNHFVDE(配列番号19)、p78-92配列FLCVFAINNTKSFED(配列番号20)、p156-170配列FYTLVREIRKHKEKM(配列番号21)、NRAS(例えばNRAS-Q61R)、PI3K(例えばPIK3CA-H1047R)、C-Kit-D816V、及びBRCA変異エピトープYIHTHTFYV(配列番号22)及びSQIWNLNPV(配列番号23)HLA-A*02:01拘束性ネオエピトープを含むが、これらに限定されない膵臓がん関連疾患抗原である。
【0105】
さらに別の実施形態では、がん関連抗原は、精子タンパク質17(SP17)、A-キナーゼアンカープロテイン4(AKAP4)及び下垂体腫瘍形質転換遺伝子1(PTTG1)、オーロラキナーゼA、HER2/neu、及びp53mutを含むがこれらに限定されない肺がん関連疾患抗原である。
【0106】
さらに別の実施形態では、がん関連抗原は、前立腺がん抗原(PCA)、前立腺特異的抗原(PSA)又は前立腺特異的膜抗原(PSMA)などの前立腺がん関連疾患抗原である。
【0107】
さらに別の実施形態では、がん関連抗原は、脳がん、特にGL261ネオアンチゲン(mImp3 D81N AALLNKLYA-配列番号6)などの膠芽腫がん関連疾患抗原である。
【0108】
別の実施形態では、がん関連抗原は腫瘍ネオアンチゲンである。
【0109】
本明細書で使用される場合、「ネオアンチゲン」という用語は、例えば、対応する野生型親抗原とは、腫瘍細胞における変異又は腫瘍細胞に特異的な翻訳後修飾により異なるものにする、少なくとも1つの変更を有するエピトープである。ネオアンチゲンは、ポリペプチド配列又はヌクレオチド配列を含み得る。変異は、フレームシフト若しくは非フレームシフト型のインデル(indel)、ミスセンス若しくはナンセンス置換、スプライス部位の変更、ゲノム再編成若しくは遺伝子融合、又はネオORFを生じる、任意のゲノム若しくは発現における変更を含み得る。変異はまた、スプライスバリアントを含み得る。腫瘍細胞に特異的な翻訳後修飾には、異常なリン酸化が含まれ得る。腫瘍細胞に特異的な翻訳後修飾はまた、プロテアソームにより作製されるスプライシングされた抗原を含み得る。
【0110】
APC変異抗原の例は、QATEAERSF(配列番号3)である。
【0111】
BRCA変異エピトープの例は、YIHTHTFYV(配列番号22)及びSQIWNLNPV(配列番号23)HLA-A*02:01拘束性ネオエピトープである。
【0112】
ユニバーサルHLA-DR結合性ヘルパーT細胞合成エピトープ(AKFVAAWTLKAAA、配列番号311)の例は、CD4+T細胞を活性化する13アミノ酸ペプチドである、汎DR結合エピトープ(pan DR-biding epitope、PADRE)である。
【0113】
別の企図されるがん関連ネオアンチゲンは、GL261ネオアンチゲン(mImp3 D81N、配列AALLNKLYA-配列番号6)である。
【0114】
上述したように、がん抗原は細菌の外表面上に提示される。
【0115】
いくつかの実施形態では、ワクチンに含まれる細菌は、架橋剤によってがん関連抗原に結合している。本明細書で使用される場合、「架橋剤」という用語は、タンパク質を含むさまざまな分子を一緒に結合するために使用することができる組成物を広く指す。架橋剤の例としては、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン、3,3’-ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)、ビス(2-スクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル)スルホン、ビス(スルホスクシンイミジル)スベラート、ジメチル3,3’-ジチオビスプロピオンイミデート、ジメチルアジピミデート、ジメチルピメルイミデート、ジメチルスベルイミデート、ジスクシンイミジルグルタレート、ジスクシンイミジルスベラート、ジスクシンイミジルタルトレート、ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)、エチレングリコール(ethylene glycosl)ビス(スクシンイミジルスクシネート)、エチレングリコール(ethylene glycosl)ビス(スルホスクシンイミジルスクシネート)、PEG化ビス(スルホスクシンイミジル)スベラート(PEGSを含む)、PEG化ビス(スルホスクシンイミジル)スベラート(PEGSを含む)及びトリス-(スクシンイミジル)アミノトリアセテートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0116】
いくつかの実施形態では、ワクチンに含まれる細菌は、核酸リンカーを介してがん関連抗原に連結される。例えば、いくつかの実施形態では、本願に記載の細菌は、細菌の表面上に、第1の核酸オリゴヌクレオチド(例えば、少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29若しくは30ヌクレオチド長及び/又は30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95若しくは100ヌクレオチド長以下のオリゴヌクレオチド)を提示して、第1の核酸オリゴヌクレオチドに対し特異的にハイブリダイズする第2の核酸オリゴヌクレオチド(例えば、少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29若しくは30ヌクレオチド長及び/又は30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95若しくは100ヌクレオチド長以下のオリゴヌクレオチド)を含む及び/又は第2の核酸オリゴヌクレオチドに連結された試薬のための結合部位を提供することができる。オリゴヌクレオチドを細菌細胞の表面に結合させるための方法は、当該技術分野において公知であり、例えば、参照により本明細書に援用する、Twite A. A., et al., Adv. Mater., 2012, 24(18):2380-5を参照されたい。いくつかの実施形態では、第1のオリゴヌクレオチドは、第2のオリゴヌクレオチドの配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一である配列を有する。薬剤をオリゴヌクレオチドに連結するための例示的な方法は、例えば、参照により本明細書に援用する、David A. Rusling & Keith R. Fox, Small Molecule-Oligonucleotide Conjugates, DNA Conjugates and Sensors, 2012, Ch3, 75-102に提供されている。いくつかの実施形態では、がん治療薬は、本願に記載される細菌の細胞表面上に提示される一本鎖核酸オリゴヌクレオチドに特異的にハイブリダイズする、一本鎖核酸オリゴヌクレオチドと共有結合している。ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドはハイブリダイズし、得られる二本鎖核酸デュプレックスは数日間安定である。いくつかの実施形態では、デュプレックスの安定性は、一方又は両方のオリゴヌクレオチドの5’末端及び/又は3’末端にホスホロチオエート結合(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、又は7個以上のホスホロチオエート結合)を組み込むことによって改善される。
【0117】
いくつかの実施形態では、本願に記載されるワクチンの細菌は、ビオチン/ストレプトアビジン相互作用を介してがん関連抗原に連結される。
【0118】
いくつかの実施形態では、本願に記載される細菌は、アミン反応性N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル又はN-ヒドロキシスルホスクシンイミド(スルホ-NHS)エステルを使用して、ビオチン又はがん関連抗原に連結される(PEGをNEH-エステルに付加すると、抗原を細胞外に保つように働き得る)。NHSエステル又はスルホ-NHSエステル(Life Technologies)は、当該技術分野で利用可能な方法を使用して、NHS又はスルホ-NHSを目的のカルボキシル含有分子及び脱水剤(例えば、カルボジイミドEDC)と混合することによって、目的とする実質的に任意のカルボキシル含有分子から作製され得る。NHSエステルを使用して細菌を標識する例示的な方法は、参照により本明細書に援用される、Bradburne J. A., et al., AppL Environ. Microbiol, 1993, 59(3):663-8で提供されている。
【0119】
NHSエステルは、細胞壁に直接結合する。NHSエステルをアルキン基に対してコンジュゲートさせると、標準的なクリックケミストリーによって、アジド残基を有する任意のペプチドに結合させることができる。
【0120】
タンパク質コンジュゲーションのための架橋剤反応基の例を、本明細書の下表4に要約する。
【0121】
【0122】
特定の実施形態によれば、がん関連抗原ペプチドは、C末端にNHS-エステルを有するように作製される。NHS-エステルは、あらゆるタンパク質のN末端又はリジン上に存在する遊離アミンに結合することができる。1つのペプチドのNHS-アジドが別のペプチド上の遊離アミンに結合することを防止するために、ペプチドのN末端は、遊離アミンを含まないように修飾されてもよい(例えば、アセチル化によって)。代替的に、ペプチド中のリジンは、それらの遊離アミンが露出されておらず、反応性がないように保護されてもよい。ペプチドが細菌に結合した後に、この保護が除去されてもよい。
【0123】
別の実施形態によれば、ヒドラジン基をがん関連抗原ペプチドに付加することができる。この基は、タンパク質のC末端、並びにアミノ酸アスパラギン酸及びグルタミン酸の側鎖などのアルデヒド含有分子に結合することができる。がん関連抗原ペプチドのC末端は、典型的には保護されている。この方法は、グルタミン酸又はアスパラギン酸を含まないペプチドに好ましい。
【0124】
いくつかの実施形態では、本願に記載されるワクチンの細菌は、配列特異的DNAハイブリダイゼーション相互作用を介してがん関連抗原に連結される。例えば、対象とする分子は、一本鎖DNAオリゴヌクレオチドと共有結合し、次いで、細胞表面上に相補的な一本鎖DNAオリゴヌクレオチドを提示している細菌細胞に結合する。2つの相補的オリゴヌクレオチドはハイブリダイズし、これにより得られる二本鎖DNAデュプレックスは数日間安定である。DNAデュプレックスの安定性及びヌクレアーゼ耐性は、両方のオリゴヌクレオチドの5’末端及び3’末端に4つのホスホロチオエート結合を組み込むことによってさらに改善される。
【0125】
いくつかの実施形態では、本願に記載の細菌の表面発現タンパク質に組み込まれる、ケトン、アジド、アルキン又は他の官能基を含有する非天然アミノ酸を使用して、細菌にがん関連抗原を連結する。ケトン、アジド、アルキン又は当業者に公知の他の官能基を含有する非天然のアミノ酸は、例えば、参照により本明細書に援用する、Marquis H., et aL, Infect. Immun., 1993, 61(9):3756-60に記載されるように、栄養要求性細菌株を使用する残基特異的様式で対象タンパク質に組み込むことができる。例えば、メチオニンのサロゲートとして機能し、タンパク質の生合成の間にメチオニンの代わりに取り込まれる、非天然のアミノ酸アジドホモアラニンの存在下で、メチオニン要求性細菌株を生育させて、細胞の表面に標識を施すことができる。これにより、通常では表面に露出しているメチオニンを含有する、細菌表面上の野生型タンパク質が、表面に露出しているアジド基で官能化され、このアジド基は、参照により本明細書に援用する、Link A. J. & Tirrell D. A., Cell surface labeling of Escherichia coli via copper(I)-catalyzed [3+2]cycloaddition, J. Am. Chem. Soc., 2003, 125(37):11164-5に記載されるクリックケミストリーの使用により、アルキン基を含有する対象分子(例えば、アルキン誘導小分子薬又はアルキン誘導タンパク質)で修飾することができる。これらの官能基は、表面発現タンパク質に組み込まれた後、例えば、参照により本明細書に援用する、Prescher J. A. & Bertozzi C. R., Nat. Chem. Biol, 2005, 1(1):13-21に記載される方法を用いて、対象とする小分子を付加される部分として機能することができる。別の実施形態では、野生型細菌は、修飾D-アラニン、例えば、D-アラニンアジド、D-アラニン-D-アラニンアジド、D-アラニンアルキン、D-アラニン-D-アラニンアルキンを添加して培養され、ネオアンチゲンにアジド基又はアルキン基が付加する。別の実施形態では、がん関連抗原を細菌に結合させるために、銅フリーのクリックケミストリー反応が(例えば、DB CO-アミンを使用して)行われる。
【0126】
いくつかの実施形態では、本願に記載される細菌はグラム陰性細菌であり、がん関連抗原が表面結合グリカンに連結される。がん関連抗原の表面結合グリカンへの連結は、例えば、2ステップの代謝/化学標識プロトコールを使用して施すことができる。第1のステップにおいて、細菌表面上の高分子構造に組み込まれるアジド官能基を含有する化学修飾単糖により、グラム陰性細菌を代謝標識して、表面に会合した糖ポリマーを修飾する。第2のステップにおいて、例えば、参照により本明細書に援用する、Dumont A., et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 2012, 51(13):3143-6)に記載されるように、クリックケミストリーを用いて、細菌細胞表面上の修飾ポリマーにがん関連抗原を選択的に連結させる。
【0127】
いくつかの実施形態では、がん関連抗原は、細菌細胞壁のペプチドグリカン(PG)に対して連結される。この連結は、グラム陽性細菌又はグラム陰性細菌に適切であり得る。しかしながら、グラム陽性細菌の細胞壁は、ペプチドグリカン(PG)が相互接続された多くの層を含むが、グラム陰性細菌の細胞壁は、ペプチドグリカンの層を1層又は2層のみ含む。したがって、細菌のPGへの連結は、グラム陽性細菌に関してより適切であり得る。
【0128】
外因的に添加した対象分子をPGに付加させるために、2ステップの代謝/化学標識アプローチを使用することができる。まずは、グラム陽性細菌細胞を、細胞壁の生合成中に新生PG層に組み込まれるアルキン官能化Dアラニン類似体の存在下で生育させることによって、代謝標識する。アルキン基の組み込みにより、次に、例えば、参照により本明細書に援用する、Siegrist M. S., et al., ACS Chem. Biol., 2013, 8(3):500-5に記載されるように、銅触媒クリック反応を用いて、対象とするアジド官能化分子でPGを標識することができる。いくつかの実施形態では、グラム陽性細菌細胞を、シクロオクチン官能化Dアラニン類似体(例えば、exobcnDala又はendobcnDala)を含有する培地中で生育させることで、類似体は増殖細胞のPGに組み込まれる。細胞を新鮮な培地で洗浄し、アジド-PEG3基で誘導体化したがん関連抗原とともにインキュベートして、例えば、参照により本明細書に援用する、Shieh P., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2014, 111(15):5456-61に記載されるような銅フリーの反応で、対象分子をPGに付加させる。いくつかの実施形態では、グラム陽性細菌細胞を、ノルボルネン(NB)基を有する非天然D-アミノ酸(例えば、D-Lys-NB-OH、D-Dap-NB-OH、D-Dap-NB-NH2)を含む培地中で生育される。非天然のアミノ酸は、生育中の細菌細胞のPGに代謝により組み込まれ、ノルボルネンの環内にある歪み化アルケンに起因して反応性が増大したアルケン官能基を細菌細胞表面に備えさせる。次いで、参照により本明細書に援用する、Pidgeon S. E. & Pires M. M., Chem. Commun. (Camb). 2015, 51(51):10330-3に記載されるように、細胞をがん関連抗原のテトラジン誘導体とともにインキュベートし、がん関連抗原のPGへのライゲーションを可能にする。
【0129】
いくつかの実施形態では、がん関連抗原は、本願に記載されるグラム陰性菌のPG層に組み込まれる。グラム陰性細菌のPG層への分子の組み込み方法は、例えば、参照により本明細書に援用する、Liechti G. W., et al., Nature, 2014, 506(7489):507-10に提供されている。いくつかの実施形態では、グラム陰性菌は、Dアミノ酸ジペプチドEDA-DA(エチニル-Dアラニン-Dアラニン)又はDA-EDA(Dアラニン-エチニル-Dアラニン)の存在下で生育させる。EDA-DA又はDA-EDAは、活発に生育している細菌のPG層に組み込まれ、PGに表面露出アルキン基を備えさせる。銅触媒クリックケミストリーを用い、末端アジド基を含むがん関連抗原を、PG層の新たに導入されたアルキン基に付加する。いくつかの実施形態では、がん関連抗原のDアミノ酸誘導体は、例えば、参照により本明細書に援用する、Kuru E., et al., Nat. Protoc., 2015, 10(1):33-52に記載される方法を用いて、生育している細菌のPG層に直接組み込まれる。
【0130】
クリックケミストリーを行うために、がん関連抗原は、アルケン基、アルキン基、アジド基、シクロプロペニル基、テトラジン基、ジベンゾシクロオクチル(DBCO)基、ジベンゾシクロクチン(DIBO)基、ビシクロノニン(BCN)基、トランスシクロオクテン(TCO)基、及び歪みトランスシクロオクテン(sTCO)基からなる群から選択される少なくとも1つの反応性基を含み得る。
【0131】
がん関連抗原を反応性基に付加させる方法は、当該分野で公知であり、Johansson and Pedersen, European Journal of Organic Chemistry, Volume 2012, Issue 23, August 2012, pages 4267-4281に記載されている。
【0132】
反応性基がアミノ酸に付加された後、ペプチドは、ペプチド合成の当業者に公知の技術により合成され得る。固相ペプチド合成については、多くの技術の概要が、J. M. Stewart and J. D. Young, Solid Phase Peptide Synthesis, W. H. Freeman Co. (San Francisco), 1963及びJ. Meienhofer, Hormonal Proteins and Peptides, vol. 2, p. 46, Academic Press (New York), 1973に見出され得る。古典的な溶液合成については、G. Schroder and K. Lupke, The Peptides, vol. 1, Academic Press (New York), 1965を参照されたい。
【0133】
一般に、これらの方法は、伸長中のペプチド鎖に1つ以上のアミノ酸又は適切に保護されたアミノ酸を順次付加することを含む。通常、第1のアミノ酸のアミノ基又はカルボキシル基のいずれかは、適切な保護基によって保護されている。次いで、保護された又は誘導体化されたアミノ酸を不活性固体支持体に付加させることができ、又はアミド結合を形成するのに適した条件下で、適切に保護された相補的な(アミノ又はカルボキシル)基を有する配列において次のアミノ酸を付加することによって溶液中で利用することができる。次いで、この新たに付加されたアミノ酸残基から保護基を除去し、次いで、次のアミノ酸(適切に保護されている)を付加するなどである。所望のすべてのアミノ酸が適切な配列で連結された後、任意の残りの保護基(及び任意の固体支持体)を順次又は同時に除去して、最終ペプチド化合物が得られる。この一般的な手順に単純な変更を加えることにより、例えば、保護されたトリペプチドと、適切に保護されたジペプチドとを(キラル中心をラセミ化しない条件下で)カップリングして、脱保護後にペンタペプチドを形成するなどによって、伸長中の鎖に一度に2つ以上のアミノ酸を付加することが可能である。ペプチド合成のさらなる説明は、米国特許第6,472,505号明細書に記載されている。
【0134】
本発明のいくつかの実施形態のペプチド化合物を調製する好ましい方法は、固相ペプチド合成を含む。
【0135】
大規模なポリペプチド合成は、Andersson Biopolymers 2000;55(3):227-50に記載されている。
【0136】
本発明者らはさらに、ワクチンの細菌が、本明細書に上記したがん関連抗原以外の治療薬を含み得ることをさらに企図する。このような治療薬を、本明細書において上記した結合方法を使用して細菌の外側に付加することもできる。あるいは、治療薬を発現するように細菌を遺伝子改変してもよい。
【0137】
例えば、いくつかの実施形態では、細菌は、細菌プロモーターなどの転写調節エレメントに作動可能に連結させた治療薬をコードする核酸を含む。転写調節エレメントは、分泌シグナルをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、治療薬は、細菌によって恒常的に発現される。いくつかの実施形態では、治療用抗原は、誘導的により細菌で発現される(例えば、糖又は低pH環境若しくは嫌気性環境のような環境刺激に曝露されると発現される)。いくつかの実施形態では、細菌は、同じ細菌細胞によって発現され得る複数の治療薬をコードする複数の核酸配列を含む。
【0138】
細菌プロモーターの例としては、STM1787プロモーター、pepTプロモーター、pflEプロモーター、ansBプロモーター、vhbプロモーター、FF+20*プロモーター又はp(luxI)プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0139】
治療剤の例としては、サイトカインなどの免疫調節タンパク質が挙げられる。免疫調節タンパク質の例としては、Bリンパ球化学誘引物質(「BLC」)、C-Cモチーフケモカイン11(「エオタキシン-1」)、好酸球走化性タンパク質2(「エオタキシン-2」)、顆粒球コロニー形成刺激因子(「G-CSF」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM-CSF」)、I-309、細胞間接着分子1(「ICAM-1」)、インターフェロンγ(「IFN-γ」)、インターロイキン-1α(「IL-1α」)、インターロイキン-1β(「IL-1β」)、インターロイキン1受容体アンタゴニスト(「IL-1ra」)、インターロイキン-2(「IL-2」)、インターロイキン-4(「IL-4」)、インターロイキン-5(「IL-5」)、インターロイキン-6(「IL-6」)、インターロイキン-6可溶性受容体(「IL-6 sR」)、インターロイキン-7(「IL-7」)、インターロイキン-8(「IL-8」)、インターロイキン-10(「IL-10」)、インターロイキン-11(「IL-11」)、インターロイキン-12のサブユニットβ(「IL-12 p40」又は「IL-12 p70」)、インターロイキン-13(「IL-13」)、インターロイキン-15(「IL-15」)、インターロイキン-16(「IL-16」)、インターロイキン-17(「IL-17」)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド2(「MCP-1」)、マクロファージコロニー刺激因子(「M-CSF」)、γインターフェロンによって誘導されるモノカイン(「MIG」)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド2(「MIP-1α」)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド4(「MIP-1β」)、マクロファージ炎症タンパク質1-δ(「MIP-1δ」)、血小板由来増殖因子サブユニットB(「PDGF-BB」)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド5、RANTES(Regulated on Activation, Normal T cell Expressed and Secreted)、TIMPメタロペプチダーゼ阻害剤1(「TIMP-1」)、TIMPメタロペプチダーゼ阻害剤2(「TIMP-2」)、腫瘍壊死因子、リンホトキシンアルファ(「TNFα」)、腫瘍壊死因子、リンホトキシンベータ(「TNFβ」)、可溶性TNF受容体1型(「sTNFRI」)、sTNFRIIAR、
脳由来神経栄養因子(「BDNF」)、塩基性線維芽細胞増殖因子(「bFGF」)、骨形態形成タンパク質4(「BMP-4」)、骨形成タンパク質5(「BMP-5」)、骨形成タンパク質7(「BMP-7」)、神経増殖因子(「b-NGF」)、上皮増殖因子(「EGF」)、上皮増殖因子受容体(「EGFR」)、内分泌腺由来血管内皮増殖因子(「EG-VEGF」)、線維芽細胞増殖因子4(「FGF-4」)、ケラチノサイト増殖因子(「FGF-7」)、増殖分化因子15(「GDF-15」)、グリア細胞由来神経栄養因子(「GDNF」)、成長ホルモン、ヘパリン結合性EGF様増殖因子(「HB-EGF」)、肝細胞増殖因子(「HGF」)、インスリン様増殖因子結合タンパク質1(「IGFBP-1」)、インスリン様増殖因子結合タンパク質2(「IGFBP-2」)、インスリン様増殖因子結合タンパク質3(「IGFBP-3」)、インスリン様増殖因子結合タンパク質4(「IGFBP-4」)、インスリン様増殖因子結合タンパク質6(「IGFBP-6」)、インスリン様増殖因子1(「IGF-1」)、インスリン、マクロファージコロニー刺激因子(「M-CSF R」)、神経成長因子受容体(「NGF R」)、ニューロトロフィン-3(「NT-3」)、ニューロトロフィン-4(「NT-4」)、破骨細胞形成阻害因子(「オステオプロテゲリン」)、血小板由来成長因子受容体(「PDGF-AA」)、ホスファチジルイノシトール-グリカン生合成(「PIGF」)、Skp、カリン、F-box含有複合体(「SCF」)、幹細胞因子受容体(「SCF R」)、形質転換増殖因子アルファ(「TGFα」)、形質転換増殖因子ベータ-1(「TGFβ1」)、形質転換増殖因子ベータ-3(「TGFβ3」)、血管内皮細胞増殖因子(「VEGF」)、血管内皮細胞増殖因子受容体2(「VEGFR2」)、血管内皮細胞増殖因子受容体3(「VEGFR3」)、VEGF-D 6Ckine、チロシンプロテインキナーゼ受容体UFO(「Axl」)、ベータセルリン(「BTC」)、粘膜関連上皮ケモカイン(「CCL28」)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド27(「CTACK」)、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド16(「CXCL16」)、C-X-Cモチーフケモカイン5(「ENA-78」)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド26(「エオタキシン-3」)、顆粒球走化性タンパク質2(「GCP-2」)、GRO、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド14(「HCC-1」)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド16(「HCC-4」)、インターロイキン-9(「IL-9」)、インターロイキン-17F(「IL-17F」)、インターロイキン18結合タンパク質(「IL-18 BPa」)、インターロイキン28A(「IL-28A」)、インターロイキン29(「IL-29」)、インターロイキン31(「IL-31」)、C-X-Cモチーフケモカイン10(「IP-10」)、ケモカイン受容体CXCR3(「I-TAC」)、白血病抑制因子(「LIF」)、Light、ケモカイン(Cモチーフ)リガンド(「リンホタクチン」)、単球走化性タンパク質2(「MCP-2」)、単球走化性タンパク質3(「MCP-3」)、単球走化性タンパク質4(「MCP-4」)、マクロファージ由来ケモカイン(「MDC」)、マクロファージ遊走阻害因子(「MIF」)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド20(「MIP-3α」)、C-Cモチーフケモカイン19(「MIP-3β」)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド23(「MPIF-1」)、マクロファージ刺激タンパク質アルファ鎖(「MSPα」)、NAP-2(Nucleosome assembly protein 1-like 4)、分泌型リン酸化タンパク質1(「オステオポンチン」)、PARC(Pulmonary and activation-regulated cytokine)、血小板第4因子(「PF4」)、間質細胞由来因子1アルファ(「SDF-1α」)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド17(「TARC」)、胸腺発現ケモカイン(「TECK」)、胸腺間質リンパ球新生因子(「TSLP 4-IBB」)、
CD166抗原(「ALCAM」)、分化抗原群80(「B7-1」)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー17(「BCMA」)、分化抗原群14(「CD14」)、分化抗原群30(「CD30」)、分化抗原群40(「CD40リガンド」)、がん胎児性抗原関連細胞接着分子1(胆汁糖タンパク質)(「CEACAM-1」)、細胞死受容体6(「DR6」)、デオキシチミジンキナーゼ(「Dtk」)、1型膜糖タンパク質(「エンドグリン」)、受容体チロシンプロテインキナーゼerbB-3(「ErbB3」)、内皮白血球接着分子1(「E-セレクチン」)、アポトーシス抗原1(「Fas」)、Fms様チロシンキナーゼ3(「Flt-3L」)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー1(「GITR」)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー14(「HVEM」)、細胞間接着分子3(「ICAM-3」)、IL-1 R4、IL-1 R1、IL-10 Rβ、IL-17R、IL-2Rγ、IL-21R、リソソーム膜タンパク質2(「LIMPII」)、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(「リポカリン-2」)、CD62L(「L-セレクチン」)、リンパ内皮(「LYVE-1」)、MECクラスIポリペプチド関連配列A(「MICA」)、MECクラスIポリペプチド関連配列B(「MICB」)、NRG1-β1、β型血小板由来増殖因子受容体(「PDGF Rβ」)、血小板内皮細胞接着分子(「PECAM-1」)、RAGE、A型肝炎ウイルス細胞受容体1(「TIM-1」)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバーIOC(「TRAIL R3」)、トラッピンタンパク質トランスグルタミナーゼ結合ドメイン(「Trappin-2」)、ウロキナーゼ受容体(「uPAR」)、血管細胞接着タンパク質1(「VCAM-1」)、XEDARActivin A、アグーチ関連蛋白(「AgRP」)、リボヌクレアーゼ5(「アンジオゲニン」)、アンジオポエチン1、アンジオスタチン、カテプシンS、CD40、クリプティックファミリータンパク質1B(「Cripto-1」)、DAN、Dickkopf関連蛋白1(「DKK-1」)、E-カドヘリン、上皮細胞接着分子(「EpCAM」)、Fasリガンド(FasL又はCD95L)、Fcg RIIB/C、FoUistatin、ガレクチン-7、細胞間接着分子2(「ICAM-2」)、IL-13 R1、IL-13R2、IL-17B、IL-2 Ra、IL-2 Rb、IL-23、LAP、神経細胞接着因子(「NrCAM」)、プラスミノーゲン活性化抑制因子-1(「PAI-1」)、血小板由来増殖因子受容体(「PDGF-AB」)、レジスチン、間質細胞由来因子1(「SDF-1β」)、sgp130、分泌型Frizzled関連タンパク質2(「ShhN」)、シアル酸結合免疫グロブリン様レクチン(「Siglec-5」)、ST2、形質転換増殖因子ベータ2(「TGFβ2」)、Tie-2、トロンボポエチン(「TPO」)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー10D(「TRAIL R4」)、TREM-1(Triggering receptor expressed on myeloid cells 1)、血管内皮細胞増殖因子C(「VEGF-C」)、VEGFR1アディポネクチン、アディプシン(「AND」)、アルファフェトプロテイン(「AFP」)、アンジオポエチン様4(「ANGPTL4」)、ベータ2マイクログロブリン(「B2M」)、基底細胞接着分子(「BCAM」)、炭水化物抗原125(「CA125」)、がん抗原15-3(「CA15-3」)、がん胎児性抗原(「CEA」)、cAMP受容体タンパク質(「CRP」)、ヒト上皮増殖因子受容体2(「ErbB2」)、フォリスタチン、卵胞刺激ホルモン(「FSH」)、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1(「GROα」)、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(「βHCG」)、インスリン様増殖因子1受容体(「IGF-1 sR」)、IL-1 sRII、IL-3、IL-18 Rb、IL-21、レプチン、マトリックスメタロプロテアーゼ-1(「MMP-1」)、マトリックスメタロプロテアーゼ-2(「MMP-2」)、マトリックスメタロプロテアーゼ-3(「MMP-3」)、マトリックスメタロプロテアーゼ-8(「MMP-8」)、マトリックスメタロプロテアーゼ-9(「MMP-9」)、マトリックスメタロプロテアーゼ-10(「MMP-10」)、マトリックスメタロプロテアーゼ-13(「MMP-13」)、神経細胞接着分子(「NCAM-1」)、エンタクチン(「Nidogen-1」)、ニューロン特異的エノラーゼ(「NSE」)、オンコスタチンM(「OSM」)、プロカルシトニン、プロラクチン、前立腺特異抗原(「PSA」)、シアル酸結合Ig様レクチン9(「Siglec-9」)、ADAM17エンドペプチダーゼ(「TACE」)、サイログロブリン、メタロプロテアーゼ阻害物質4(「TIMP-4」)、TSH2B4、
ADAM-9(Disintegrin And Metalloprotease-9)、アンジオポエチン2、腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー13/酸性ロイシンリッチ核リンタンパク質32ファミリーメンバーB(「APRIL」)、骨形成タンパク質2(「BMP-2」)、骨形成タンパク質9(「BMP-9」)、補体成分5a(「C5a」)、カテプシンL、CD200、CD97、ケメリン、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6B(「DcR3」)、脂肪酸結合タンパク質2(「FABP2」)、線維芽細胞活性化タンパク質、アルファ(「FAP」)、線維芽細胞増殖因子19(「FGF-19」)、ガレクチン-3、肝細胞増殖因子受容体(「HGF R」)、IFN-ガンマアルファ/ベータ R2、インスリン様増殖因子2(「IGF-2」)、インスリン様増殖因子2受容体(「IGF-2R」)、インターロイキン1受容体6(「IL-1R6」)、インターロイキン24(「IL-24」)、インターロイキン33(「IL-33」)、カリクレイン14、アスパラギニルエンドペプチダーゼ(「レグマイン」)、酸化型低密度リポタンパク質受容体1(「LOX-1」)、マンノース結合レクチン(「MBL」)、ネプリライシン(「NEP」)、Notch-1(Notch homolog 1, translocation-associated (Drosophila))、腎芽腫過剰発現タンパク質(「NOV」)、オステオアクチビン、プログラム細胞死タンパク質1(「PD-1」)、N-アセチルムラミン酸-L-アラニンアミダーゼ(「PGRP-5」)、セルピンA4、分泌型frizzled関連タンパク質3(「sFRP-3」)、トロンボモジュリン、Toll様受容体2(「TLR2」)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー10A(「TRAIL R1」)、トランスフェリン(「TRF」)、WIF-1ACE-2、アルブミン、AMICA、アンジオポエチン4、B細胞活性化因子(「BAFF」)、糖鎖抗原19-9(「CA19-9」)、CD163、クラステリン、CRT AM、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド14(「CXCL14」)、シスタチンC、デコリン(「DCN」)、Dickkopf関連タンパク質3(「Dkk-3」)、デルタ様タンパク質1(「DLL1」)、フェチュインA、ヘパリン結合性成長因子1(「aFGF」)、葉酸受容体アルファ(「FOLR1」)、フーリン、GPCR関連ソーティングタンパク質1(「GASP-1」)、GASP-2(GPCR-associated sorting protein 2)、顆粒球コロニー刺激因子受容体(「GCSF R」)、セリンプロテアーゼヘプシン(「HAI-2」)、インターロイキン17B受容体(「IL-17B R」)、インターロイキン27(「IL-27」)、リンパ球活性化遺伝子3(「LAG-3」)、アポリポタンパク質A-V(「LDL R」)、ペプシノーゲンI、レチノール結合タンパク質4(「RBP4」)、SOST、ヘパラン硫酸プロテオグリカン(「シンデカン-1」)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー13B(「TACI」)、組織因子経路インヒビター(「TFPI」)、TSP-1、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー10b(「TRAIL R2」)、TRANCE、トロポニンI、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(「uPA」)、CD144としても知られるカドヘリン5タイプ2又はVE-カドヘリン(血管内皮)(「VE-カドヘリン」)、WISP-1(WNT1-inducible-signaling pathway protein 1)、及び核因子κB活性化受容体(「RANK」)が挙げられるが、これらに限定されない。免疫調節タンパク質は、当業者に公知の方法を用いて組換えにより作製することができる。免疫調節タンパク質は、細菌表面提示を利用して細菌の表面上に提示させることができる。細菌は、遺伝子操作による融合タンパク質(protein-protein fusion)、例えば膜タンパク質と免疫調節タンパク質との融合タンパク質を発現する。
【0140】
いくつかの実施形態では、本願に記載される細菌は、細菌内及び/又は細菌表面上に治療用タンパク質(例えば、がん治療用タンパク質)を発現するように操作される(すなわち、遺伝子操作による表面提示)。例えば、いくつかの実施形態では、細菌は、プロモーターなどの転写調節エレメントに作動可能に連結されたがん治療用タンパク質をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、タンパク質は、細菌によって構成的に発現される。いくつかの実施形態では、タンパク質は、誘導的により細菌で発現される(例えば、糖又は低pH環境若しくは嫌気性環境のような環境刺激に曝露されると発現される)。いくつかの実施形態では、細菌は、同じ細菌細胞によって発現され得る異なる複数の組換えタンパク質をコードする複数の核酸配列を含む。
【0141】
いくつかの実施形態では、細菌は、細菌表面提示システムにより組換え産生がん治療薬を表面上に提示する。細菌表面提示システムの例としては、外膜タンパク質システム(例えば、LamB、FhuA、OmpI、OmpA、OmpC、OmpT、OmpXに由来するeCPX、OprF、及びPgsA)、表面付属システム(例えば、F pillin、FimH、FimA、FliC、及びFliD)、リポタンパクシステム(例えば、INP、Lpp-OMPa、PAL、Tat依存性、及びTraT)、並びに病原性因子に基づくシステム(例えば、AIDA-1、EaeA、EstA、EspP、MSP1a、及びインベイシン)が挙げられる。例示的な表面提示システムは、例えば、参照により本明細書に援用する、van Bloois, E., et al., Trends in Biotechnology, 2011, 29:79-86に記載されている。
【0142】
いくつかの実施形態では、本願に記載される細菌は、がん治療薬を含む(例えば、がん治療薬は、対象への投与の前に細菌にロードされる)。いくつかの実施形態では、がん治療薬は、細菌細胞生育中のがん治療薬の組み込み又は細菌の外側へのがん治療薬の結合のいずれかをもたらす高濃度(例えば、少なくとも1mM)でがん治療薬を含有する培地で細菌を生育させることによって細菌にロードされる。がん治療薬は、受動的に(例えば、親油性細胞膜への拡散及び/又は分配によって)、又は膜チャネル若しくは輸送体を介して能動的に組み込まれ得る。いくつかの実施形態では、薬物のローディングは、対象分子の組み込みを増加させる(例えば、Pluronic F-127)か、又は細菌による組み込み後の分子の放出を防止する(例えば、ベラパミル、レセルピン、カルノシン酸(Carsonic acid)、又はピペリンのような排出ポンプ阻害剤)さらなる物質を増殖培地に添加することによって改善される。いくつかの実施形態では、例えば、参照により本明細書に援用する、Sustarsic M., et al., Cell Biol., 2014, 142(1):113-24に記載されているように、細菌をがん治療薬と混合し、次いで混合物をエレクトロポレーション法に供することによって、細菌にがん治療薬をロードする。いくつかの実施形態では、エレクトロポレーション後に細胞を排出ポンプ阻害剤(上記を参照されたい)で処理して、ロードした分子の放出を防止することもできる。
【0143】
いくつかの実施形態では、ワクチンの細菌は、免疫チェックポイントタンパク質-例えば抗CTLA4、抗CD40、抗41BB、抗OX40、抗PD1及び抗PDL1に対する阻害性の抗体又は小分子を含む。
【0144】
本発明のワクチンの細菌は、アジュバントとして働くことができるため、追加のアジュバントの使用を伴わない(not relevant)。
【0145】
一実施形態では、ワクチンは、アジュバント(細菌そのもの以外)を不含有である。
【0146】
別の実施形態では、ワクチンは、細菌に加えてアジュバントを含む。
【0147】
アジュバントは、免疫原性部分の免疫刺激特性を増強するために免疫原又はワクチン製剤に添加することができる物質である。免疫原タンパク質の有効性を高め得るアジュバント又は作用物質の例としては、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン)、硫酸ベリリウム、シリカ、カオリン、炭素、油中水型エマルション、及び水中油型エマルションが挙げられる。アジュバントの具体的な種類には、ムラミルジペプチド(MDP)並びに種々のMDP誘導体及び製剤(例えば、N-アセチル-D-グルコサミニル-(β1-4)-N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン(GMDP)(Hornung, R L et al. Ther Immunol 1995 2:7-14)又はISAF-1(0.4mgのトレオニル-ムラミルジペプチドを含むリン酸緩衝化溶液中の5%のスクアレン、2.5%のプルロニックL121、0.2%のTween 80;Kwak, L W et al. (1992) N. Engl. J. Med., 327:1209-1238を参照されたい)である。他の有用なアジュバントは、コレラ毒素、細菌エンドトキシン、lipid X、細菌Propionobacterium acnes又はBordetella pertussisの全細胞又は細胞成分画分、ポリリボヌクレオチド、アルギン酸ナトリウム、ラノリン、リゾレシチン、ビタミンA、QS21(White, A. C. et al. (1991) Adv. Exp. Med. Biol., 303:207-210)等のサポニン及びサポニン誘導体といった現在臨床で使用されているもの(Helling, F et al. (1995) Cancer Res., 55:2783-2788、Davis, T A et al. (1997)Blood, 90: 509)、レバミゾール、DEAE-デキストラン、ブロックコポリマー又は他の合成アジュバントであるか又はそれらに基づくものである。多くのアジュバント、例えば、Merck Adjuvant 65 (ニュージャージ州、ローウエイ、Merck and Company, Inc.)又は不完全/完全フロイントアジュバント(ミシガン州、デトロイト、Difco Laboratories)、Amphigen(水中油型)、Alhydrogel(水酸化アルミニウム)、又はAmphigenとAlhydrogelとの混合物が、さまざまな供給源から市販されている。アルミニウムはヒトへの使用が承認されている。
【0148】
言及したように、本願に記載されるワクチンは、がんを治療及び/又は予防するために使用され得る。
【0149】
本明細書で使用される場合、「治療する」という用語は、状態の進行を抑制し、実質的に阻害し、遅延、又は逆転させ、状態の臨床的若しくは審美的な症状を実質的に改善することを含む。
【0150】
特定の実施形態によれば、予防するという用語は、状態の臨床的又は審美的症状の出現を実質的に予防することを指す。
【0151】
処置される特定の対象は、哺乳動物対象、例えば、ヒトである。
【0152】
特定の実施形態によれば、対象はがんを有すると診断されている。
【0153】
がん
本明細書で使用される場合、「がん」という用語は、宿主における異常な細胞増殖の原発部位に対して周辺にある組織及び遠位にある潜在的な組織(potentially tissue)の浸潤をもたらし得る、宿主自身の細胞の、制御されない異常な増殖を指す。主要なクラスとしては、上皮組織(例えば、皮膚、扁平上皮細胞)のがんであるがん腫;結合組織(例えば、骨、軟骨、脂肪、筋肉、血管など)のがんである肉腫;血液形成組織(例えば、骨髄組織)のがんである白血病;免疫細胞のがんであるリンパ腫及び骨髄腫;並びに脳及び脊髄組織由来のがんを含む中枢神経系のがんが挙げられる。「がん」、「新生物」、及び「腫瘍」は、本明細書において交換可能に使用される。本明細書で使用される場合、「がん」は、初発であっても再発であっても、白血病、がん腫及び肉腫を含むすべてのタイプのがん又は新生物又は悪性腫瘍を指す。
【0154】
本明細書中に記載される細菌を使用して処置され得るがんの具体例としては、副腎皮質腫瘍、遺伝性;膀胱がん;乳がん;乳がん、乳管;乳がん、浸潤乳性管内;乳がん、散発性;乳がん、感受性;乳がん、タイプ4;乳がん、タイプ4乳がん-1;乳がん-3;乳がん-卵巣がん;トリプルネガティブ乳がん、バーキットリンパ腫;子宮頸がん;結腸直腸腺腫;結腸直腸がん;結腸直腸がん、遺伝性非ポリポーシス、タイプ1;結腸直腸がん、遺伝性非ポリポーシス、タイプ2;結腸直腸がん、遺伝性非ポリポーシス、タイプ3;結腸直腸がん、遺伝性非ポリポーシス、タイプ6;結腸直腸がん、遺伝性非ポリポーシス、タイプ7;隆起性皮膚線維肉腫;子宮内膜がん;食道がん;胃がん;線維肉腫、多形神経膠芽腫;グロムス腫瘍、多発性;肝芽腫;肝細胞がん;肝細胞がん腫;白血病、急性リンパ芽球性;白血病、急性骨髄性;白血病、好酸球増加症を伴う急性骨髄性;白血病、急性非リンパ球性;白血病、慢性骨髄性;Li-Fraumeni症候群;脂肪肉腫、肺がん;肺がん、小細胞;リンパ腫、非ホジキン; 家族性リンチ症候群II(lynch cancer family syndrome II);男性の生殖細胞腫瘍;マスト細胞白血病;甲状腺髄様がん;髄芽腫; 黒色腫、悪性黒色腫、髄膜腫;多発性内分泌腫瘍;多発性骨髄腫、骨髄性悪性腫瘍、素因(predisposition to);粘液肉腫、神経芽腫;骨肉腫;骨がん、卵巣がん;卵巣がん、漿液性;卵巣がん;卵巣性索腫瘍;膵臓がん;膵内分泌腫瘍;傍神経節腫、家族性非クロム親和性;毛母腫;下垂体腫瘍、浸潤性;前立腺腺がん;前立腺がん;腎細胞がん、乳頭状、家族性がん及び散発性;網膜芽細胞腫;ラブドイド素因症候群、家族性;ラブドイド腫瘍;横紋筋肉腫;肺の小細胞がん;軟部肉腫、扁平上皮がん、基底細胞がん、頭頸部;T細胞急性リンパ芽球性白血病;神経膠芽腫を伴うターコット症候群;食道がんを伴う胼胝腫;子宮頸がん、ウィルムス腫瘍、タイプ2;ウィルムス腫瘍、タイプ1などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0155】
特定の実施形態によれば、がんは、乳がん、黒色腫、膵臓がん、卵巣がん、骨がん、及び脳がん(例えば、膠芽細胞腫)からなる群から選択されるがんである。
【0156】
別の実施形態によれば、がんは、黒色腫である。
【0157】
悪性黒色腫は、ABCD(E)システムに基づいて臨床的に認識される。このシステムでは、Aは非対称性形状を表し、Bは不規則な境界を表し、Cは多彩な色調を表し、Dは直径>5mmを表し、Eは経過の変化を表す。さらに、顕微鏡評価を使用して診断を確証するために切除生検が行われ得る。浸潤性悪性黒色腫は、伝統的に4つの主要な病理組織学的サブグループ:表在拡大型黒色腫(SSM)、結節性悪性黒色腫(NMM)、悪性黒子黒色腫(LMM)、及び末端黒子性黒色腫(ALM)に分けられる。線維形成性悪性黒色腫(desmoplastic malignant melanoma)などの他の稀なタイプも存在する。悪性黒色腫の実質的な下位分類は、色素細胞性母斑から生じるようであり、浸潤性黒色腫の近傍には異形成母斑の特徴が見出されることが多い。黒色腫は、正常なメラノサイト又は母斑細胞から形成異常母斑の段階を経て、さらに浸潤性になる前のin situ段階へと進行する、複数の段階を経て生じると考えられている。サブタイプのいくつかは、水平増殖期(RGP)及び垂直増殖期(VGP)と呼ばれる異なる腫瘍進行期を通じて発達する。
【0158】
特定の実施形態では、黒色腫は、BRAF及び/又はMEKの阻害剤による治療に抵抗性である。
【0159】
腫瘍は、原発性腫瘍又は続発性腫瘍(すなわち、転移腫瘍)であり得る。
【0160】
組成物は、例えば経口投与、直腸投与、局所投与、吸入(経鼻)、又は注射などの任意の経路を使用して投与することができる。注射による投与としては、静脈内(IV)、筋肉内(IM)、腫瘍内(IT)、腫瘍下(ST)、腫瘍周囲(PT)、及び皮下(SC)投与が挙げられる。本願に記載される医薬組成物は、腫瘍内、経口、非経口、経腸、静脈内、腹腔内、局所、経皮(例えば、任意の標準パッチを使用して)、皮内、眼、(鼻内)、局所、エアロゾルなどの非経口、吸入、皮下、筋肉内、バッカル、舌下、(経)直腸、膣、動脈内、及び髄腔内、経粘膜(例えば、舌下、舌、(経)バッカル、(経)尿道、膣(例えば、経膣及び膣周囲))、膀胱内、肺内、十二指腸内、胃内、及び気管支内を含むがこれらに限定されない任意の有効な経路によって任意の形態で投与することができる。好ましい実施形態では、本願に記載される医薬組成物は、経口投与、直腸投与、腫瘍内投与、局所投与、膀胱内投与、流入領域リンパ節への若しくはリンパ節近傍への注射による投与、静脈内投与、吸入若しくはエアロゾルによる投与又は皮下投与がなされる。
【0161】
本発明は、がんの治療のための少なくとも2つの異なるワクチン接種サイクルを企図し、ワクチン接種サイクルの少なくとも1つは、細菌の1つの株を含み、ワクチン接種サイクルの少なくとも別のものは、第2の(前記細菌と同一ではない細菌の)株を含む。加えて、又は代替的に、本発明者らは、ワクチン接種サイクルのうちの少なくとも1つが生細菌を含み、ワクチン接種サイクルのうちの少なくとも別のもの(例えば、後続のワクチン接種)が弱毒化(又は死んだ)細菌を含むことを企図する。
【0162】
本発明のワクチンは、追加の抗がん剤とともに投与され得る。
【0163】
いくつかの実施形態では、追加の抗がん剤は免疫チェックポイントタンパク質-例えば抗CTLA4、抗CD40、抗41BB、抗OX40、抗PD1及び抗PDL1に対する阻害性の抗体又は小分子である。
【0164】
本願に記載される細菌と組み合わせて対象に投与され得る他の企図される抗がん剤としては、アシビシン(Acivicin)、アクラルビシン、アコダゾール塩酸塩、アクロニン、アドリアマイシン、アドゼレシン、アルデスロイキン、アルトレタミン、アンボマイシン、酢酸アメタントロン、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、アントラマイシン、アスパラギナーゼ、アスペルリン、アザシチジン、アゼテパ、アゾトマイシン、バチマスタット、ベンゾデパ、ビカルタミド、塩酸ビスアントレン、ジメシル酸ビスナフィド、ビゼレシン、ブレオマイシン硫酸塩、ブレキナールナトリウム、ブロピリミン、ブスルファン、カクチノマイシン、カステロン、カラセミド、カルベチマー、カルボプラチン、カルムスチン、塩酸カルルビシン、カルゼレシン、セデフィンゴール、クロラムブチル、シロレマイシン、シスプラチン、クラドリビン、メシル酸クリスナトール、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン塩酸塩、デシタビン、デキソーマプラチン、デザグアニン、メシル酸デザグアニン、ジアジクオン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ドキソルビシン塩酸塩、ドロロキシフェン、クエン酸ドロロキシフェン、ドロモスタノロンプロピオネート、ズアゾマイシン、エダトレキセート、塩酸エフロルニチン、エルサミトルシン、エンロプラチン、エンプロマート、エピプロピジン、エピルビシン塩酸塩、エルブロゾール、塩酸エソルビシン(Esorubicin Hydrochloride)、エストラムスチン、エストラムスチンリン酸ナトリウム、エタニダゾール、エトポシド、リン酸エトポシド、エトプリン、塩酸ファドロゾール、ファザラビン、フェンレチニド、フロクスウリジン、リン酸フルダラビン、フルオロウラシル、フルロシタビン、ホスキドン;ホストリエシンナトリウム、ゲムシタビン、ゲムシタビン塩酸塩、ヒドロキシ尿素、イダルビシン塩酸塩、イフォスファミド、イルモホシン、インターフェロンα-2a、インターフェロンα-2b、インターフェロンα-n1、インターフェロンα-n3、インターフェロンβ1a、インターフェロンγ1b、イプロプラチン、塩酸イリノテカン、ランレオチド酢酸塩、レトロゾール、酢酸ロイプロリド、塩酸リアロゾール、ロメトレキソールナトリウム、ロムスチン、塩酸ロソキサントロン、マソプロコール、メイタンシン、塩酸メクロレタミン、酢酸メゲストロール、酢酸メレンゲストロール、メルファラン、メノガリル、メルカプトプリン、メトトレキサート、メトトレキサートナトリウム、メトプリン、メトレデパ、ミチンドミド、ミトカルシン、ミトクロミン、マイトギリン、マイトマルシン、マイトマイシン、マイトスパー、ミトタン、ミトキサントロン塩酸塩、ミコフェノール酸、ノコダゾール、ノガラマイシン、オルマプラチン、オキシスラン、パクリタキセル、ペガスパルガーゼ、ペリオマイシン、ペンタムスチン、ペプロマイシン硫酸塩、ペルフォスファミド、ピポブロマン、ピポスルファン、塩酸ピロキサトロン、プリカマイシン、プロメスタン、ポルフィマーナトリウム、ポルフィロマイシン、プレドニムスチン、プロカルバジン塩酸塩、プロマイシン、塩酸プロマイシン、ピラゾフリン、リボプリン、ログレチミド、サフィンゴール、塩酸サフィンゴール、セムスチン、シムトラゼン、スパルホサートナトリウム、スパルソマイシン、スピロゲルマニウム塩酸塩、スピロムスチン、スピロプラチン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、スロフェヌール、タリソマイシン、タキソール、テコガランナトリウム、テガフール、テロキサントロン塩酸塩、テモポルフィン、テニポシド、テルオキシロン、テストラクトン、チアミプリン、チオグアニン、チオテパ、チアゾフイリン(Tiazofuirin)、チラパザミン、塩酸トポテカン、トレミフェンクエン酸塩、トレストロン酢酸塩、リン酸トリシリビン、トリメトレキサート、グルクロン酸トリメトレキサート、トリプトレリン、塩酸ツブロゾール、ウラシルマスタード、ウレデパ、バプレオチド、ベルテポルフィン、ビンブラスチン硫酸塩、ビンクリスチン硫酸塩、ビンデシン、ビンデシン硫酸塩、ビネピジン硫酸塩、ビングリシネート硫酸塩、ビンロイロシン硫酸塩、ビノレルビン酒石酸、ビンロシジン硫酸塩、ビンゾリジン硫酸塩、ボロゾール、ゼニプラチン、ジノスタチン、ゾルビシン塩酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。さらなる抗新生物薬としては、Goodman and Gilmanの“The Pharmacological Basis of Therapeutics”, Eighth Edition, 1990, McGraw-Hill, Inc. (Health Professions Division)中のChapter 52, Antineoplastic Agents (Paul Calabresi and Bruce A. Chabner)及びIntroduction, 1202-1263に開示されるものが挙げられる。
【0165】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、±10%を表す。
【0166】
「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語及びその活用形は、「限定されるものではないが、含む(including but not limited to)」ことを意味する。
【0167】
「からなる(consisting of)」という用語は、「含み、限定される」ことを意味する。
【0168】
「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、組成物、方法又は構造が、追加の成分、工程、及び/又は部分を含み得るが、当該追加の成分、工程、及び/又は部分が、特許請求の範囲に記載された組成物、方法、又は構造の基本的及び新規な特徴を大きく変化させない場合に限られることを意味する。
【0169】
本明細書で使用する場合、単数形を表す「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかに他を示さない限り、複数も対象とする。例えば、「化合物(a compound)」又は「少なくとも1種の化合物」は、複数の化合物を含み、それらの混合物も含み得る。
【0170】
本願全体を通して、本発明のさまざまな実施形態は、範囲形式にて示され得る。範囲形式での記載は、単に利便性及び簡潔さのためであり、本発明の範囲の柔軟性を欠く制限をなすものと解釈するべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の記載は、可能な部分範囲の全部、及びその範囲内の個々の数値を具体的に開示しているとみなされるべきである。例えば、1~6などの範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲のみならず、その範囲内の個々の数値、例えば1、2、3、4、5及び6も具体的に開示するとみなされるべきである。これは、範囲の大きさに関わらず適用される。
【0171】
本明細書において数値範囲を示す場合は常に、示された範囲内の任意の記載された数(分数又は整数)を含むことを意図する。第1の指示数と第2の指示数と「の間の範囲」という語句と、第1の指示数「から」第2の指示数「までの範囲」という語句とは、本明細書で互換的に使用され、第1の指示数及び第2の指示数と、第1の指示数と第2の指示数との間の分数及び整数の全部とを含むことを意図する。
【0172】
本明細書で使用する場合、「方法」という用語は、所定の課題を達成するための様式、手段、技術及び手順を意味し、化学、薬理学、生物学、生化学及び医学の分野の従事者に既知のもの、又は既知の様式、手段、技術及び手順から従事者が容易に開発できるものを含むが、これらに限定されない。
【0173】
明確さのために別個の実施形態との関連において記載した本発明の特定の特徴はまた、単一の実施形態において組み合わせて提供され得ることを理解されたい。逆に、簡潔さのために単一の実施形態との関連において記載した本発明の複数の特徴はまた、別々に、又は任意の好適な部分的な組み合わせ、又は適宜、本発明の他の任意の記載された実施形態に対しても提供され得る。さまざまな実施形態に関連して記載される特定の特徴は、その要素なしでは実施形態が動作不能でない限り、その実施形態の必須の特徴であるとみなすべきではない。
【0174】
本明細書に上記され、特許請求の範囲において特許請求される本発明のさまざまな実施形態及び態様は、以下の実施例において実験的裏付けが見出される。
【実施例】
【0175】
以下では実施例を参照する。本実施例は、上記の説明とともに本発明のいくつかの実施形態を非限定的な様式で例示するものである。
【0176】
全般的に、本明細書で使用される命名法及び本発明で利用される実験手順には、分子、生化学、微生物学、及び組換えDNAの技術が含まれる。このような技術は、文献で十分に説明されている。例えば、“Molecular Cloning: A laboratory Manual” Sambrook et al., (1989)、“Current Protocols in Molecular Biology” Volumes I-III Ausubel, R. M., ed. (1994)、Ausubel et al., “Current Protocols in Molecular Biology”, John Wiley and Sons, Baltimore, Maryland (1989)、Perbal, “A Practical Guide to Molecular Cloning”, John Wiley & Sons, New York (1988)、Watson et al., “Recombinant DNA”, Scientific American Books, New York、Birren et al. (eds) “Genome Analysis: A Laboratory Manual Series”, Vols. 1-4, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (1998)、米国特許第4,666,828号明細書、同第4,683,202号明細書、同第4,801,531号明細書、同第5,192,659号明細書、及び同第5,272,057号明細書に示される方法論、“Cell Biology: A Laboratory Handbook”, Volumes I-III Cellis, J. E., ed. (1994)、“Culture of Animal Cells - A Manual of Basic Technique” by Freshney, Wiley-Liss, N. Y. (1994), Third Edition、“Current Protocols in Immunology” Volumes I-III Coligan J. E., ed. (1994)、Stites et al. (eds), “Basic and Clinical Immunology” (8th Edition), Appleton & Lange, Norwalk, CT (1994)、Mishell and Shiigi (eds), “Selected Methods in Cellular Immunology”, W. H. Freeman and Co., New York (1980)を参照されたい。利用可能なイムノアッセイは、例えば、米国特許第3,791,932号明細書、同第3,839,153号明細書、同第3,850,752号明細書、同第3,850,578号明細書、同第3,853,987号明細書、同第3,867,517号明細書、同第3,879,262号明細書、同第3,901,654号明細書、同第3,935,074号明細書、同第3,984,533号明細書、同第3,996,345号明細書、同第4,034,074号明細書、同第4,098,876号明細書、同第4,879,219号明細書、同第5,011,771号明細書、及び同第5,281,521号明細書、“Oligonucleotide Synthesis” Gait, M. J., ed. (1984)、“Nucleic Acid Hybridization” Hames, B. D., and Higgins S. J., eds. (1985)、“Transcription and Translation” Hames, B. D., and Higgins S. J., eds. (1984)、“Animal Cell Culture” Freshney, R. I., ed. (1986)、“Immobilized Cells and Enzymes”IRL Press, (1986)、“A Practical Guide to Molecular Cloning” Perbal, B., (1984)及び“Methods in Enzymology” Vol. 1-317, Academic Press、“PCR Protocols: A Guide To Methods And Applications”, Academic Press, San Diego, CA (1990)、Marshak et al., “Strategies for Protein Purification and Characterization - A Laboratory Course Manual” CSHL Press (1996)の特許及び科学文献に広く記載されている。これらのすべては参照によりそのすべてが本明細書に示されるように組み込まれる。他の全般的な参考文献は、本明細書全体にわたって提供されている。これらの文献中の手順は当該技術分野で周知であると考えられるが、読者の便宜のために提供されている。上記文献に含まれるすべての情報は、参照により本明細書に援用する。
【0177】
材料及び方法
ネオアンチゲン:
B16-OVA腫瘍のネオアンチゲンを得るために、オボアルブミンのc末端(aa252~386)をpcDNA-OVA(Addgene 64599)から増幅した。増幅されたオリゴは、オボアルブミンのエピトープであるSIINFEKL(配列番号11)に対応する配列を含む。
【0178】
MC38腫瘍のネオアンチゲンを得るために、Adpgk(aa289~421)部分をMC38細胞のcDNAから増幅した。増幅されたオリゴは、Yadav et al.(PMID: 25428506)に基づいて検証されたMC38のネオアンチゲンに対応する配列を含む。
【0179】
両方のネオアンチゲンを、NEBuilderクローニングキットによってプラスミドバックボーンに挿入した。
【0180】
細菌:
弱毒化したSalmonella TyphimuriumのVNP20009株(YS1646とも命名、ATCC、カタログ番号202165)及びSTM3210株(PMID: 20231149)を使用した。簡潔に述べると、ODが0.6~0.8になるまで細菌を培養し、1mMのHepesで3回洗浄し、DDW中の10%のグリセロールに懸濁した。
【0181】
細菌のクリック反応:
クリックケミストリーによってOVAネオアンチゲンを細菌細胞壁にコンジュゲートさせるために、細菌を1.25mMの濃度のアジド-D-アラニン(VNP20009)又はエチニル-D-アラニン-D-アラニン(STM3210)とともに一晩インキュベートした。新鮮なスターターを一晩培養物から播種し、1.25mMのD-アラニン誘導体を添加してODが0.6~0.8のODになるまで増殖させた。PBSで洗浄した後、細菌を、クリック溶液(アスコルビン酸ナトリウム:2.5mM、CuSO4:50μM、BTTAA:300μM)及び50μMのアジド-SIINFEKL-ビオチン又はアルキン-SIINFEKL-ビオチンのそれぞれにおいて、室温で1時間インキュベートした。
【0182】
クリック反応をFACSにより検証するために、D-アラニン誘導体とのインキュベーション後に、細菌画分をFACS標識緩衝液(PBS中1%のFBS)で洗浄した。D-アラニンとインキュベートしなかった細菌を陰性対照とした。クリック反応後、上記で詳述したように、細菌を標識緩衝液中で洗浄し、2ug/mLの中性アビジン-Cy5(Southern Biotech、7200-15)を添加して4℃で30分間インキュベートした。次に、細菌を標識緩衝液で洗浄し、2%のPFA中に室温で45分間再懸濁した。最後に、細菌をFACS標識緩衝液に再懸濁し、フローサイトメトリーによって解析した。
【0183】
細菌細胞壁へのクリック反応を介した結合を増強するために、NHS-アルキンアンカーを使用した。D-ala-アルキンは新たに形成された細胞壁に組み込まれるのに対し、NHS-アルキンアンカーは露出しているすべての第一級アミンに結合する。D-ala-アルキンアンカーとは対照的に、NHS-アンカーは、D-ala-アルキンにおけるようなプレインキュベーションを必要としない。対数増殖するStaphylococcus pasteuriを、NHS-アルキンとともにインキュベートした。次に、N末端にアジド残基を含むOVAネオアンチゲンを細菌とクリック反応させた。検証目的のために、ネオアンチゲンのC末端のビオチン残基を使用して、フルオロフォアCy5とのビオチン-アビジン反応させた。クリック反応により得られたネオアンチゲンはアジド-SIINFEKL-ビオチンであった。インキュベーション後、細菌を固定し、FACSの定量にはcy5を使用した(
図5を参照されたい)。
【0184】
マウスモデル:
B16-OVAマウス黒色腫細胞株(106)又はMC38マウスCRC細胞株(105)を、7週齢の雌性C57BL/6の右側腹部に皮下注射した。腫瘍体積を、幅2×長さ/2として計算した。
【0185】
FACSによる脾細胞の免疫プロファイリング:
切除した新鮮な脾臓を70ミクロンのストレーナーで冷PBS中にすりつぶした。赤血球を溶解させるために、脾細胞をACK溶解緩衝液(Quality Biological、カタログ番号118-156-101)にインキュベートし、次いでPBS中で十分に洗浄し、FACS標識緩衝液中に懸濁した。100μLの脾細胞を、Fcブロッカー(BD、カタログ番号553142、1:100)、SIINFEKL(配列番号11)テトラマー(NIH Tetramer Core Facility、1:500)、抗CD4(BioLegend、カタログ番号100438、1:800)、抗CD8(Invitrogen、カタログ番号2021-05-05、1:400)、抗CD3(Invitrogen、カタログ番号2023-07-31、1:1000)、及びBrilliant Buffer(BD、カタログ番号566349、1:5)を含む混合物とともに4℃で1時間インキュベートした。次に、細胞を標識緩衝液で2回洗浄し、CytoFix/CytoPerm溶液(BD、カタログ番号51-2090KZ)により4℃で20分間固定した。最後に、細胞をPerm/Wash緩衝液(BD、カタログ番号51-2091KZ(DDWで1:10に希釈))で2回洗浄し、標識緩衝液に懸濁し、FACSに供した。
【0186】
ELISAによるIFNgの定量:
血清IFNgレベルを定量するために、マウスから、20μLのヘパリン(10mg/ml)を含むエッペンドルフチューブに採血した。10,000gで10分間遠心分離した後、-20℃での長期保存のために血清を新しいチューブに移した。製造業者の使用説明書(R&D、カタログ番号DY485)に従って1:4に希釈した血清を用いてELISAを行った。
【0187】
肝臓及び腫瘍における細菌の定量:
腫瘍及び肝臓の切片を、LB及び金属ビーズを含む滅菌チューブに懸濁した。最大速度で10分間ボルテックスした後、200μLの上清を、適切な抗生物質を含むLBプレート上に播種し、37℃で一晩インキュベートした。
【0188】
結果
OVAネオアンチゲンとクリック結合させた細菌ワクチンを作製するために、STM3210細菌をアルキン-D-アラニン-D-アラニン(D-ala)とともに終夜インキュベートして、D-alaを細菌細胞壁内に組み込ませた。次に、
図1のAに示すように、N末端にアジド残基を含むOVAネオアンチゲンを細菌とクリック反応させた。検証目的のために、ネオアンチゲンのC末端には、フルオロフォアCy5とビオチン-アビジン反応させるためのビオチン残基を含めた。クリック反応により、アジド-SIINFEKL-ビオチンがネオアンチゲンとして得られた。
【0189】
OVAをクリック結合させた細菌画分をアビジン-Cy5とともにインキュベートし、フローサイトメトリーによって解析した。陰性対照には、D-alaとともにインキュベートしなかった細菌を用いた。実際、
図1のBに示すように、クリック反応させた細菌はcy5陽性細胞で濃縮され、クリック反応が確認された。
【0190】
Cy5でクリック反応させた細菌を、担腫瘍C57BL/6マウスにi.v.(尾静脈)注射した。
図1のCに示すように、IVISイメージングにより、予想通り、細菌は注射の24時間後及び48時間後に腫瘍組織において観察された。留意すべきことに、この実験では、メラノサイトに富むB16腫瘍組織の暗色がCy5蛍光シグナルをマスクするので、MC38腫瘍を使用した。
【0191】
クリック結合させた細菌をベースとしたPACMANワクチンの有効性を実証するために、弱毒化Salmonella Typhimurium STM3210をOVAネオアンチゲン(PACMAN-CLICK-OVA)とクリック反応させた。C57BL/6マウスに、106個のB16 OVA発現細胞を右脇腹に注射した。腫瘍が約100mm3の体積に達したとき、マウスにPACMAN-CLICK-OVA(106CFU、静脈注射)を注射し、続いて抗PD1(75μg、腹腔内)を毎週投与した。55日目に脾臓を採取し、免疫プロファイリングに供した。
【0192】
図2Bに示すように、処置したマウスはすべて、腫瘍増殖の遅延を示した。マウス814は完全に治癒した。
図2のCに示すように、PACMAN-CLICK-OVAで処置したマウスの腫瘍は徐々に消失したが、抗PD1のみで処置したマウスの腫瘍は対数増殖し続けた。完全に治癒したマウス(マウス814番)は、
図2のDに示すように、2日目から腫瘍体積の減少を示した。ネオアンチゲン特異的T細胞クローンを定量するために、脾細胞をOVAネオアンチゲンの四量体(SIINFEKL-配列番号11)と共インキュベートした。CD3/CD8集団のうちのSIINFEKEL(配列番号11)陽性T細胞の割合は、非処置マウスと比較した中でもPACMNA-CLICK-OVAをワクチン接種したマウスにおいて最も高かった。注目すべきことに、マウス814(オレンジ色のドット)が最も高い割合のSIINFEKL(配列番号11)特異的T細胞(
図2のE)を示した。
【0193】
MC38腫瘍に対するサルモネラの選択的ホーミングを実証するために、弱毒化サルモネラ(STM3120)を、記載の数でMC38 CRC腫瘍を担持するマウスの尾静脈に注射した。9日後、腫瘍、肝臓及び脾臓を切除し、1mlのLB及び金属ボール中で激しく振とうした。上清をLBプレートに播種し、37℃で24時間インキュベートした後にコロニーを計数した。CFUを希釈係数及び組織質量に対して正規化した。1×10
6、1×10
5はN=4であり、1×10
4はN=3である。
図3に示すように、細菌は、肝臓及び脾臓と比較して腫瘍に選択的にホーミングした。
【0194】
弱毒化サルモネラ(STM3120)対親サルモネラ(14028)の最大耐容量を比較するために、サルモネラをさまざまな濃度で尾静脈に注射し、体重をモニターした。
図4に示すように、STM3120 1×10
6を除くすべての用量において、コホート(N=4~5)のすべてのマウスが死亡した(Xで示す)。
【0195】
本発明をその具体的な実施形態と併せて説明してきたが、多くの代替、改変、及び変形が当業者に明らかであることは明白である。したがって、このような代替、改変、及び変形はすべて、添付の特許請求の範囲の趣旨及び広い範囲に含まれるものとする。
【0196】
本明細書中で言及されるすべての刊行物、特許及び特許出願は、あたかも各個々の刊行物、特許又は特許出願が参照により本明細書中に組み込まれることが言及されるときに具体的かつ個別に言及されているかのように、その全体が参照により本明細書中に組み込まれることは本出願人の意図である。加えて、本出願における任意の参考文献の引用又は特定は、このような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることを認めるものとして解釈されるべきではない。
【0197】
章の見出しが使用される範囲において、当該見出しは必ずしも限定を加えるものと解釈されるべきではない。さらに、本出願の任意の優先権書類は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【配列表フリーテキスト】
【0198】
配列番号1: がん関連抗原
配列番号2: がん関連抗原
配列番号3: 変異APC抗原の例
配列番号4: がん関連抗原
配列番号5: がん関連抗原
配列番号6: がん関連抗原
配列番号7: がん関連抗原
配列番号8: がん関連抗原
配列番号9: がん関連抗原
配列番号10: がん関連抗原
配列番号11: OVAネオアンチゲン
配列番号12: がん関連抗原
配列番号13: がん関連抗原
配列番号14: がん関連抗原
配列番号15: がん関連抗原
配列番号16: がん関連抗原
配列番号17: がん関連抗原
配列番号18: がん関連抗原
配列番号19: がん関連抗原
配列番号20: がん関連抗原
配列番号21: がん関連抗原
配列番号22: BRCA変異エピトープの例
配列番号23: BRCA変異エピトープの例
配列番号175: 未知の細菌の16SリボソームRNA
配列番号197: 未知の細菌の16SリボソームRNA
配列番号198: 未知の細菌の16SリボソームRNA
配列番号211: 未知の細菌の16SリボソームRNA
配列番号229: 未知の細菌の16SリボソームRNA
配列番号250: 未知の細菌の16SリボソームRNA
配列番号256: 未知の細菌の16SリボソームRNA
配列番号294: 未知の細菌の16SリボソームRNA
配列番号311: ユニバーサルHLA-DR結合Tヘルパー合成エピトープの例
【配列表】
【国際調査報告】