(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-15
(54)【発明の名称】金型および製品の成形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/10 20060101AFI20240207BHJP
B29C 45/37 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
B29C33/10
B29C45/37
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549977
(86)(22)【出願日】2022-02-21
(85)【翻訳文提出日】2023-10-03
(86)【国際出願番号】 NL2022050090
(87)【国際公開番号】W WO2022177435
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523312587
【氏名又は名称】ペーパーフォーム ホールディング ビー.ヴィー.
【氏名又は名称原語表記】PAPERFOAM HOLDING B.V.
【住所又は居所原語表記】Hermesweg 22 3771 ND Barneveld The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】ブルーム,ヨヘム アレックス
(72)【発明者】
【氏名】ザンストラ,ニンケ マルハレータ
(72)【発明者】
【氏名】フルーネフェルト,メノ エドゥアルド
(72)【発明者】
【氏名】ハウスマン,ヤン ヴィーツ
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AA01
4F202AJ02
4F202AJ06
4F202CA11
4F202CA17
4F202CB01
4F202CD18
4F202CK12
4F202CK42
4F202CN01
4F202CP02
(57)【要約】
本発明は金型に関し、当該金型は、少なくとも金型壁によって画定された少なくとも1つの金型キャビティを備え、前記壁の少なくとも1つの部分が多孔質部であり、前記少なくとも1つの多孔質部が、前記壁内に、および好ましくは前記壁を貫通して延びる開口部に挿入された多孔質インサートによって形成されるか、または当該多孔質インサートを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも金型壁によって画定された少なくとも1つの金型キャビティを備え、前記壁の少なくとも1つの部分が多孔質部であり、前記少なくとも1つの多孔質部が、前記壁内に、および好ましくは前記壁を貫通して延びる開口部に挿入された多孔質インサートによって形成されるか、または当該多孔質インサートを含む、金型。
【請求項2】
前記少なくとも1つの多孔質インサートが多孔質体であるか、または多孔質体を含む、請求項1に記載の金型。
【請求項3】
前記多孔質体が金属製である、請求項2に記載の金型。
【請求項4】
前記多孔質体がスリーブ内に配置されている、請求項2または3に記載の金型。
【請求項5】
前記壁内に一連の多孔質インサートが設けられ、好ましくは少なくとも2つの多孔質インサートが設けられる、請求項1から4のいずれか1項に記載の金型。
【請求項6】
前記少なくとも1つの多孔質インサートが前記金型キャビティのための第1の通気口を形成し、少なくとも1つの別の通気口が前記金型キャビティのために設けられる、請求項1から5のいずれか1項に記載の金型。
【請求項7】
前記多孔質インサートが、焼結材料、特に焼結金属またはセラミックを用いて製造される、請求項1から6のいずれか1項に記載の金型。
【請求項8】
前記少なくとも1つの多孔質インサートまたは当該インサートの多孔質体が、少なくとも15%、好ましくは少なくとも20%の気孔率を有する、請求項1から7のいずれか1項に記載の金型。
【請求項9】
前記金型キャビティがキャビティ表面を有し、各多孔質インサートが、金型キャビティに面して、キャビティ表面内に多孔質表面を有し、1つの多孔質インサートの前記多孔質表面または複数の多孔質インサートの組み合わされた前記多孔質表面が、前記キャビティ表面によって画定される表面積の半分よりも小さい表面積を有する、請求項1から8のいずれか1項に記載の金型。
【請求項10】
前記金型が、前記金型キャビティおよび前記金型キャビティに挿入された材料を加熱するための少なくとも1つの発熱体を備える、請求項1から9のいずれか1項に記載の金型。
【請求項11】
前記金型が、前記金型キャビティ内にバッターを注入するためのインジェクターを備えるか、または当該インジェクターに接続されている、請求項1から10のいずれか1項に記載の金型。
【請求項12】
前記少なくとも1つの多孔質インサートにポンプが接続されている、請求項1から11のいずれか1項に記載の金型。
【請求項13】
前記少なくとも1つの多孔質インサートが、前記少なくとも1つの金型キャビティ内にバッターを保持し、当該バッターから発生する蒸気を前記少なくとも1つの金型キャビティから除去するように設計されている、請求項1から12のいずれか1項に記載の金型。
【請求項14】
前記少なくとも1つの多孔質インサートが、前記金型の外側で洗浄できるように、前記金型壁に取り外し可能に取り付けられている、請求項1から13のいずれか1項に記載の金型。
【請求項15】
金型内で液体バッターから製品を焼成する方法であって、前記金型は、少なくとも金型壁によって画定された金型キャビティを含み、バッターが前記少なくとも1つの金型キャビティ内に注入され、前記少なくとも1つの金型キャビティ内で加熱され、加熱中に前記バッター内の液体から蒸気が発生し、当該蒸気は、前記少なくとも1つの金型キャビティ内に圧力を生じさせ、前記蒸気は、少なくとも前記加熱中に前記少なくとも1つの金型キャビティから除去され、前記蒸気は、少なくとも前記金型壁に設けられた少なくとも1つの多孔質インサートを通して、前記少なくとも1つの金型キャビティから除去され、前記バッターは、少なくとも前記少なくとも1つの多孔質インサートによって前記少なくとも1つの金型キャビティ内に保持される、方法。
【請求項16】
少なくともデンプンなどの天然ポリマーと水とを含むバッターを使用する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記多孔質インサートが前記少なくとも1つの金型キャビティに面する組み合わされた表面積を有する金型が使用され、前記少なくとも1つの金型キャビティ内で成形された製品が乾燥重量を有し、前記少なくとも1つの金型キャビティの各々の組み合わされた表面積と当該金型キャビティ内に形成された製品の乾燥重量との比が0.07~0.7cm
2/グラム、好ましくは0.25~0.7cm
2/グラム、例えば0.3~0.5cm
2/グラムである、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの金型キャビティ内の前記バッターの加熱中に、1.5~6バールの過圧、好ましくは1.5~4バールの過圧の蒸気圧が生じる、請求項15から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの金型キャビティ内の前記バッターを加熱した後、前記金型を開き、加圧されたガスを少なくとも1つの多孔質インサートを通して前記金型キャビティ内に導入し、前記少なくとも1つの金型キャビティ内に形成された製品を前記金型キャビティから押し出す、請求項15から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つの多孔質インサートを通して前記加圧されたガスを導入する前に、前記金型内の圧力を低下させることによって、前記金型から蒸気および凝縮蒸気を除去する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
金型を形成するための方法であって、少なくとも1つの金型キャビティを有する金型が形成され、前記少なくとも1つの金型キャビティの壁内に、好ましくは当該壁を貫通して、少なくとも1つの開口部が形成され、当該少なくとも1つの開口部にインサートが挿入され、当該インサートは、少なくとも多孔質体を有するように形成され、使用中に前記金型キャビティ内で発生した蒸気が、前記少なくとも1つの多孔質体を通して前記金型キャビティから除去される、方法。
【請求項22】
前記少なくとも1つの開口部が、前記壁内に、または前記壁を貫通して、穿孔またはフライス加工される、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品を成形するための金型に関する。本発明は、熱を利用して製品を成形するための金型であって、成形中に当該金型内で蒸気が発生し、これを除去する必要がある金型に関する。本発明はさらに、金型キャビティ内でバッター(batter)を加熱しつつ、発生する蒸気を金型キャビティから除去することによって、バッターから製品を成形する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第96/30186号明細書は、少なくとも1つの金型キャビティを有する射出成形用金型を用いて、少なくともデンプンなどの天然ポリマーからなる塊から製品を射出成形するための金型を開示している。この塊は金型キャビティ内で加熱され、塊がゲル化して焼成され、十分に形態安定した製品が形成される。金型キャビティから蒸気を排出するために、金型キャビティの外に向けて、1つ以上の開放された脱気チャネルが形成される。この公知の金型の欠点は、発泡剤として作用する蒸気が金型から直接排出されるため、金型キャビティ内で制御不能な発泡が生じる可能性があることである。さらに、バッターが脱気チャネルを通って排出されるため、脱気チャネルが詰まる可能性があり、また、製品の表面に好ましくないプルーム(羽毛状のもの)が形成されることになる。このプルームは焼成されず、ゆえに粘着質で柔軟である。これらのプルームは製品表面から取り除かなければならないが、特にその柔軟性と粘着性のために、時間がかかりかつ困難である。その上、これは材料の無駄遣いや製品の表面の欠陥につながる。
【0003】
国際公開第2004033179号明細書は、液体バッターから製品を形成するための金型を開示しており、この金型ではこれらの問題のいくつかが解決されている。この公知の金型は、金型内部の過投入空間に連通する1つ以上の脱気チャネルを備えており、この過投入空間で過投入のバッターを受け、少なくとも、形成されたプルームに粘着性がないか、少なくとも粘着性が低く、柔軟性が低く、より容易に除去できるような範囲まで焼成する。さらに、オーバーフローした材料は金型内に留まるため、金型周囲の汚れが防止され、金型キャビティ内での発泡構造の形成がよりよく制御される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この公知の金型には、構造や動作・保守がより複雑になるという欠点がある。さらにこの金型では、製品から取り除いて排出しなければならないプルームが形成されるが、このプルームは廃棄物である。さらに、プルームを取り除くと、製品の表皮に欠陥が生じる。
【0005】
本開示の目的は、これに代わる金型を提供することである。目的は、既存の金型の欠点を軽減し、好ましくは回避する金型を提供することである。本開示の目的は、バッターから製品を焼成するための金型を提供することであり、この金型では、バッターが少なくとも1つの金型キャビティから流出することが防止される。本開示の目的は、廃棄物および使用中の金型周辺の作業領域の汚れを防止または少なくとも低減する金型を提供することである。目的は、金型内で製品を成形するための代替的な方法、特に金型内で製品を焼成するための代替的な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様において、本開示による金型は、少なくとも金型壁によって画定された少なくとも1つの金型キャビティを備え、前記壁の少なくとも1つの部分が多孔質部である。前記少なくとも1つの多孔質部が、前記壁内に延びる開口部に挿入された多孔質インサートによって形成されるか、または当該多孔質インサートを含む。前記多孔質インサートは、好ましくは、前記壁を貫通して延びている。
【0007】
本開示による金型は、好ましくは、前記少なくとも1つの金型キャビティ内で製品が焼成されるような温度までバッターを加熱するための焼成金型である。本開示による金型は、好ましくは、バッターを製品に焼成するための射出金型である。本開示による金型または方法において使用されるバッターは、好ましくは、少なくともデンプンなどの天然ポリマーを含む。
【0008】
本開示による金型では、少なくとも1つの鋳型キャビティ内に蓄積した蒸気は、少なくとも1つの多孔質インサートを通して排出することができ、一方、バッターは、少なくとも多孔質インサートによって少なくとも1つの金型キャビティ内に保持される。バッターが多孔質インサートに流れ込むことは概ね抑制されるが、蒸気は多孔質インサートを通って排出することができる。多孔質インサートの気孔率は、金型内で使用するバッターに応じて選択できる。
【0009】
一態様において、本開示による金型は、多孔質体からなる少なくとも1つの多孔質インサートを含むことができる。多孔質体は、実施形態では、例えば青銅、アルミニウム、鋼などの金属製とすることができるが、これらに限定されるものではない。あるいは、多孔質インサートまたはその多孔質体をセラミック製とすることもできる。多孔質インサートまたはその多孔質体は、焼結によって製造することができる。実施形態では、多孔質体はスリーブ内に配置することができる。
【0010】
一態様において、本開示の金型は、前記少なくとも1つの多孔質インサートが前記金型キャビティのための第1の通気口を形成し、少なくとも1つの別の通気口が前記金型キャビティのために設けられるように設計され得る。このような別の通気孔は、例えば、金型の閉鎖面またはその近傍、あるいはインサート要素に設けられたスリットベントとすることができる。
【0011】
有利な実施形態では、少なくとも1つの多孔質インサートは、少なくとも15%、好ましくは少なくとも20%の気孔率を有する。気孔率は、インサートまたはインサート本体の組み合わされた気孔の体積と、多孔質インサートまたは多孔質体の総体積との間の比率(%)として理解されなければならない。
【0012】
本開示の金型の実施形態では、前記少なくとも1つの金型キャビティがキャビティ表面を有し、各多孔質インサートが、金型キャビティに面して、キャビティ表面内に多孔質表面を有する。好ましくは、多孔質表面は、別のキャビティ表面と実質的に面一である。多孔質表面は、平坦であってもよいし、例えば湾曲していたり、起伏があったり、その他平坦でない形状であってもよい。実施形態では、1つの多孔質インサートの多孔質表面または複数の多孔質インサートの組み合わされた多孔質表面は、キャビティ表面によって画定される合計表面積の半分より小さい、例えば4分の1より小さい、非限定的な例としては2%~25%、例えば2%~20%などの表面積を有する。
【0013】
本開示による金型は、好ましくは、金型または少なくとも1つの金型キャビティを加熱し、前記少なくとも1つの金型キャビティ内のバッターを焼成するための少なくとも1つの発熱体を備える。
【0014】
実施形態では、金型は、金型キャビティにバッターを注入するためのインジェクターを備えているか、または当該インジェクターに接続されている。実施形態では、前記少なくとも1つの多孔質インサートにポンプが接続され、当該ポンプは可逆性ポンプであり得る。あるいは、例えば、ガスや水分を除去するために、多孔質体内またはその近傍で真空に近いような圧力の低下を生じさせるためにベンチュリーを使用することができ、圧力の上昇と下降を切り替えるために三方弁を使用することができる。
【0015】
有利な実施形態では、少なくとも1つの多孔質インサートは、金型の外側で洗浄できるように、前記金型壁に取り外し可能に取り付けられている。
【0016】
本開示の一態様は、金型内で液体バッターから製品を焼成する方法であって、前記金型は、少なくとも金型壁によって画定された金型キャビティを含む。当該方法の特徴は、バッターが前記少なくとも1つの金型キャビティ内に注入され、前記少なくとも1つの金型キャビティ内で加熱され、加熱中に前記バッター内の液体から蒸気が発生し、当該蒸気は、前記少なくとも1つの金型キャビティ内に圧力を生じさせ、前記蒸気は、少なくとも前記加熱中に前記少なくとも1つの金型キャビティから除去され、前記蒸気は、少なくとも前記金型壁に設けられた少なくとも1つの多孔質インサートを通して、前記少なくとも1つの金型キャビティから除去され、前記バッターは、少なくとも前記少なくとも1つの多孔質インサートによって前記少なくとも1つの金型キャビティ内に保持される、ことである。
【0017】
本開示による方法では、好ましくは、少なくともデンプンなどの天然ポリマーと水からなるバッターを使用する。バッターは金型キャビティ内で加熱され、バッター、特に天然ポリマーがゲル化し、その後焼成され、製品が成形される。
【0018】
好ましくは、多孔質インサートの孔径は、バッター中の非ゲル化天然ポリマーのような固形物が、金型キャビティから細孔内に入れない、または細孔を通過できないように選択される。
【0019】
本開示の方法の実施形態では、前記多孔質インサートが前記少なくとも1つの金型キャビティに面する組み合わされた表面積を有する金型が使用され、前記少なくとも1つの金型キャビティ内で成形された製品が乾燥重量を有し、前記少なくとも1つの金型キャビティの各々の組み合わされた表面積と当該金型キャビティ内に形成された製品の乾燥重量との比が0.07~0.7cm2/グラム、好ましくは0.25~0.7cm2/グラム、例えば0.3~0.5cm2/グラムである。
【0020】
本開示の方法の実施形態では、前記少なくとも1つの金型キャビティ内の前記バッターの加熱中に、1.5~6バールの過圧、例えば、1.5~4バールの過圧の蒸気圧が生じる。このような圧力により、1つまたは複数の金型キャビティの完全な充填が達成されるとともに、金型内部での適切な発泡が行われ、成形された製品の各々に所望の表皮が形成される。
【0021】
有利な実施形態では、前記少なくとも1つの金型キャビティ内の前記バッターを加熱した後、前記金型を開き、加圧されたガスを少なくとも1つの多孔質インサートを通して前記金型キャビティ内に導入し、前記少なくとも1つの金型キャビティ内に形成された製品を前記金型キャビティから押し出す。これにより、機械式エジェクターのような金型内のエジェクターの必要性が減少、あるいは軽減される。好ましくは、前記少なくとも1つの多孔質インサートを通して前記加圧されたガスを導入する前に、圧力を低下させることによって、蒸気および凝縮蒸気を除去する。多孔質体の裏側を減圧することで、製品が金型から押し出される前に蒸気や凝縮水が除去され、蒸気や特に凝縮水が製品に吹き付けられることを防ぐことができる。
【0022】
本開示のさらなる態様は、金型を形成するための方法であって、少なくとも1つの金型キャビティを有する金型が形成され、前記少なくとも1つの金型キャビティの壁内に、好ましくは当該壁を貫通して、少なくとも1つの開口部が形成され、当該少なくとも1つの開口部にインサートが挿入され、当該インサートは、少なくとも多孔質体を有するように形成され、使用中に前記金型キャビティ内で発生した蒸気が、前記少なくとも1つの多孔質体を通して前記金型キャビティから除去される。実施形態では、前記少なくとも1つの開口部が、前記壁内に、または前記壁を貫通して、穿孔またはフライス加工される。
【0023】
本開示および本明細書に開示された発明を明確にするために、本開示による装置および方法の例示的な実施形態を、図面を参照しながら以下にさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
以下は模式的な図面である。
【
図2】成形装置内の開いた状態の金型を示す図である。
【
図3】金型の一部の部分断面図であり、脱気チャネルを示す。
【
図4】開いた状態の金型を示す図であり、雌型の半割りとヒンジのペーパーステーションを示す。
【
図5A】金型の開口部における
図5の多孔質体の断面図である。
【
図6】金型に使用する多孔質インサートを示す図である。
【
図6A】金型の開口部に挿入された
図5の多孔質インサートの断面図である。
【
図10】異なる金型構成における圧力とサイクル時間を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
この説明において、同一または類似の部分は、同一または対応する参照符号で示される。本明細書では主に、熱を利用してバッターから製品を焼成するために使用できる金型を開示する。バッターとは、少なくとも、例えば水などの液体と、例えばデンプンなどの天然ポリマーとの懸濁液を意味すると理解すべきである。バッターは、好ましくは、インジェクターを通して金型キャビティに挿入するのに十分な流動性を有することができる。しかし、バッターは生地のような流動性の低いものでもよく、バッターをプラテン(platen)セットのような開放型の金型に導入して金型内で圧縮することもできる。本開示による金型の様々な態様は、射出成形用金型や熱成形用金型などのプラスチック製品を成形するための金型のような他の金型にも使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
本開示では、一例として、金型で成形された包装製品を開示する。図示されている製品は、具体的には卵の包装製品である。このような製品は当技術分野で知られており、このような製品の具体的な実施形態は、例えば米国特許出願公開第2019/0367221号明細書に開示されている。しかしながら、例えば米国特許第6,641,758号から知られるように、本開示による金型と方法を用いて、異なる製品を形成することもできることは明らかである。
【0027】
本開示において、インサートまたはボディなどの製品が多孔性である、または多孔性を有するということは、少なくとも、非制限的な例として空気などの気体および水蒸気などの蒸気が通過することができる微細な間隙を製品が有することを意味すると理解されなければならない。このような製品の気孔率は、製品の気孔または間隙の体積の、製品の総体積に対する百分率で示される割合として理解することができる。多孔質製品は、固形材料から、または固形材料として、あるいは混練可能な塊などの非固形の塊として、または非固形の塊から作ることができる。本開示において、多孔質体とは、少なくとも、議論したような気体や蒸気が当該物体を通過できるような多孔性を有する物体を意味するが、これに限定されるものではないと理解すべきである。多孔質体は、全体が多孔質であることもあれば、部分的に多孔質であることもある。多孔質インサートは、多孔質体であってもよいし、少なくとも1つの多孔質体からなる要素または構成体であってもよい。
【0028】
本開示において、「実質的に」や「約」のような表現は、少なくとも通常の意味で理解されるべきであり、特に異なる指示がない限り、それが関連する数値または位置基準は、例えば25%以下、例えば15%以下、例えば5%以下の範囲で変動し得ることを示す。
【0029】
図1は、少なくとも金型壁3によって画定された少なくとも1つの金型キャビティ2を含む、本開示による金型1を断面図で概略的に示している。図示の実施形態では、金型1は2つの金型キャビティ2A、2Bを含み、これらは互いに接続され、金型キャビティ2に材料5を供給するための入口チャネル4に接続されている。しかし、金型1が1つの金型キャビティ2のみを含むことも、3つ以上の金型キャビティ2を含むこともあり得ることは明らかであろう。入口チャネル4は、材料5を金型内に供給するための任意のシステムに接続することができる。このシステムは、バッターなどの材料を金型に注入するためのインジェクター(図示せず)などであるが、これに限定されない。このようなインジェクターは、例えば米国特許第6641758号明細書に開示されており、当該明細書は参照により本明細書に組み込まれる。壁3の少なくとも一部分は多孔質部6であり、この多孔質部は、壁3内に延びる開口部8に挿入された多孔質インサート7によって形成されているか、または多孔質インサート7を含む。
図1の断面には、このようなインサート7が3つ示されている。
【0030】
図示の実施形態の金型1は、2つの金型部品1A、1Bからなり、これらは公知の方法で閉鎖面9で互いに適合し、金型キャビティ2を形成する。金型部品1A、1Bは、
図2に示すような金型プレス10に設けることができる。当該技術分野で知られているように、金型プレス10は、金型1を
図2に示すような開放位置まで開き、
図1に示すような閉鎖位置において閉じることができる。各金型部品1A、1Bは、異なる組立部品で構成することも、1つの部品のみで構成することもできる。
図2に見られるように、閉鎖面9は実質的に垂直に延びることができ、開閉方向Fは実質的に水平に延びる。しかし、閉鎖面9と開閉方向Fの向きを変えることもできる。
【0031】
図3は、金型1の金型部品、特に雄型金型部品1Aの一部を部分的に断面で示し、金型1を用いて成形される製品の内部部分を画定するための閉鎖面9とキャビティ壁部11、12を示している。当業者には明らかなように、雌型金型部品1Bは、
図1に概略的に示されているように、金型1を用いて成形される製品の外面部を形成するための相補的なキャビティ壁部を有する。
図3には、卵パッケージ成形用の雄型金型部品1Aが2つ並んで示されており、それぞれ蓋成形部2A-1と底成形部2A-IIから構成されている。
図3の右側の雄型金型部品2Aのうち、底成形部2A-IIの半分だけが示されており、卵収容キャビティ形成要素2A-II-Nの1列15が示されている。このような要素2A-II-Nの第2の列16は、
図4に見られるように、鏡像位置でこれに接続されている。これら2つの列15、16の間には、金型1の壁3を貫通して延びる一連の4つの開口部8が設けられている。この実施形態では、開口部8は、金型キャビティ2と金型1の環境Vとの間のチャネルを形成する。各開口部8の金型キャビティ側の第1の端部17には、キャビティ2を形成する金型壁3の一部を形成する端部18を有する多孔質インサート7が設けられている。同様の一連の開口部8が蓋成形部2A-Iに設けられ、やはり、それぞれの開口部8のキャビティ2側の第1の端部17に設けられた多孔質インサート7を有する。
【0032】
使用中、金型1が閉じられると、金型キャビティ2に導入されたバッターは、多孔質インサート7によって開口部8への流入が防止される。多孔質インサート7の気孔率と、少なくとも対応する金型キャビティ2に面する端部18における間隙19または細孔の大きさは、例えばバッター5とインサート7の表面張力により、バッター5がこれらの間隙または細孔19に流入することを防止できるようになっている。
【0033】
図5は、多孔質体20によって形成された多孔質インサート7の実施形態を透視図で示す。この実施形態では、多孔質体20は、
図5Aに示すように、直径D
20および直径D
20に垂直な高さHを有する実質的に円筒形の形状を有する。
図5および
図5Aによるインサート7を開口部8に嵌合するために、開口部8は、例えば、多孔質体20の外径D
20に対応する直径D
8で、少なくとも多孔質体20の高さHに対応する深さにわたって穿孔することができ、さらに開口部8は、
図5Aに縞線で示すようにわずかに狭くすることができ、多孔質体20が突き当たる肩部23を形成し、インサート7の挿入深さを規定する。
【0034】
図6は、スリーブ21で囲まれた多孔質体20によって形成された多孔質インサート7の別の実施形態を透視図で示す。この実施形態では、多孔質体20は、
図6Aに示すように、直径Dおよび直径Dに垂直な高さHを有する実質的に円筒形の形状を有するが、スリーブ21は非多孔性であることが好ましい。本実施形態におけるスリーブ21は、外径D22及び高さH22を有する第1の部分22と、第1の部分22に接続され、第1の部分22の直径D22よりも小さい第2の直径D23を有する第2の部分23とから構成される。多孔質体20は、スリーブ21に圧入することもできるし、スリーブ21の内部に接着あるいは充填するなど、別の方法でスリーブ21に保持することもできる。
図6および
図6Aによるインサート7を開口部8に嵌合するために、開口部8は、例えば、スリーブ21の第1の部分22の外径D22に対応する直径D
8で、当該第1の部分22の高さH22に対応する深さにわたって穿孔することができ、さらに開口部8は、
図6Aに縞線で示すようにわずかに狭くすることができ、スリーブ21の第1の部分22が突き当たる肩部23を形成し、インサート7の挿入深さを規定する。多孔質体20は、ピン52によって、または接着、圧入などを含むがこれらに限定されない任意の他の適切な手段によって、スリーブ21内に固定される。
【0035】
図5および
図6の実施形態では、インサート7は、長手方向軸X-Xを中心に回転対称の形状を有している。これは、インサート7を嵌合する開口部8を形成するための穴あけ加工を簡単に行うことができるため有利である。しかしながら、本開示で使用する多孔質インサートは、多孔質インサート7の多孔性により、ガスまたは蒸気を金型キャビティから排出すること、および/またはガスまたは蒸気を金型キャビティに導入することが可能になり、一方、金型キャビティ内で製品を成形するために使用される材料、特にバッターが、多孔質インサート7を通って金型キャビティ2から出ることが防止される限り、任意の形状または構成を有することができる。多孔質インサート7は、例えば、正方形断面のような矩形断面、長方形断面または楕円形断面、六角形断面またはその他の多角形断面、対称または非対称、またはその他の適切な形状を有することができる。
【0036】
図5および
図6の実施形態では、多孔質体20およびスリーブ21は、キャビティ2に面する第1の端部18において実質的に平坦な端面24を有する。しかし、端面24は、湾曲、半球状、ドーム状などを非限定的な例とする、金型キャビティ2の隣接する壁面3Aに適合する平坦でない形状とすることもできる。円筒状多孔質体20は、例えば、直径10mm、高さ10mmまたは高さ3mm、または直径5mm、高さ3mmまたは高さ10mm、または直径14mm、高さ3mm、または直径100mm、高さ10mmを有することができるが、これらに限定されない。説明したように、金型の要求仕様に応じて異なるサイズを選択することができる。
【0037】
図7は、金型部品2Aの一部を断面で示し、製品Pの底部を成形する要素2A-Iの2つの列15、16と、製品Pの蓋部を形成する要素2A-IIの一部を示し、その間にヒンジ成形部25がある。列15、16の間には開口部8が示されており、その内部に
図6による多孔質インサート7が設けられている。多孔質インサート7の端面24は、金型壁面3Aの一部を形成する。多孔質インサート7は、好ましくは、開口部8のキャビティ側端部17とは反対側から開口部8に挿入されている。この構成は、特に、
図5Aおよび
図6Aを参照して説明したように、挿入深さを規定するために開口部8に肩部23または同様の要素が使用されている場合に採用される。このような挿入方法により、特に金型キャビティ2内の圧力上昇によって、インサート7を容易に配置でき、定位置に容易に維持できるという利点が得られる。
図5Aの実施形態では、多孔質インサート7はキャビティ2からチャネル8に挿入される。
図6Aでは、多孔質インサート7は、キャビティ2とは反対側からチャネル8内に挿入され、中空のボルト50またはクリップなどによってチャネル8内にロックされている。
【0038】
図面に見られるように、単一の多孔質インサート7を金型1内に設けることができるが、好ましくは、複数の多孔質インサート7を金型1内に、特に各金型キャビティ2ごとに設け、金型キャビティ2内の様々な位置に、金型キャビティ2と金型キャビティ2の外側の領域、例えば金型1の環境V、または
図7に概略的に示すように金型キャビティ2から分離された金型1内の空間Sとを接続するチャネルを設けるようにする。この空間Sは、使用中、例えば金型キャビティ2から排出されるガスおよび/または蒸気を回収し、これを例えばポンプ36を使用して金型1から除去するために使用することができる。本開示による金型1では、好ましくは少なくとも5つの多孔質インサート7が設けられ、より好ましくは金型キャビティごとに少なくとも5つのそのような多孔質インサート7が設けられる。これにより、金型キャビティ壁3の全表面積に比べて比較的小さな断面を有する多孔質インサート7、特に多孔質体20を得ることができる。
【0039】
これらのまたは各々の多孔質インサート7は、金型キャビティ2の第1の通気孔を形成し、金型キャビティ2からガスや蒸気を排出できるようにする。ガスまたは蒸気を、これらのまたは各々の多孔質インサート7を通して金型キャビティ2内に導入することもできることは明らかである。例えば、金型キャビティ2内で製品Pを成形し、金型1を開いた後、1つまたは複数のインサート7を通して金型キャビティ2内に空気などの気体を強制的に送り込み、製品Pを金型キャビティ2から強制的に外して取り出すことができる。これにより、従来、製品Pを押し出すために製品Pを押し付けていたプッシュロッドなどの機械式エジェクターのような、製品Pを損傷する可能性があり、さらに製造、使用、メンテナンスが複雑であるエジェクターの必要性が克服されるか、少なくとも低減される。
【0040】
実施形態では、例えば
図3、
図8、および
図9に示すように、金型1の閉鎖面9は複数の要素から構成することができる。
図3の実施形態では、閉鎖面9のエッジ部27は、カラー28とも呼ぶことができる1つまたは複数のエッジ要素28によって形成されており、このエッジ部27は、別の金型部品2Aとともに、金型キャビティのための追加の、別のまたは第2の通気口30を提供する。これについては、エッジ部27の断面を示す
図8においてさらに詳細を示す。1つまたは複数のエッジ要素28は、金型キャビティ表面3Aに近接して配置されるノーズ部31を有し、それらの間にスリット32を画定する。スリット32は、0.01~0.2mmの間、例えば0.03~0.15mmの間、より好ましくは0.05~0.1mmの間の幅X
32を有し、エッジ部27に沿った長さL
32はこれよりも実質的に長い。エッジ部27と金型部品2Aの隣接部分との間には、スリット32に接続するチャンバー33が設けられ、このチャンバーは、例えば、金型の周囲Vまたは
図7に開示されているような空間Sまたは類似の空間Sに通気することができる。このような小さな幅を有するスリット32を設けることにより、やはりガスや蒸気を金型キャビティ2から排出することができる一方、材料5、特にバッターがチャンバー33内に入ることは防止される。
【0041】
ここで上述した第2の通気口30に加えて、またはそれに代えて、同様のスリット32を有する第2のまたは別の通気口を設けることができる。このスリット32は、例えば金型キャビティ2内の中実インサートと金型キャビティ表面3Aとの間、および/または金型1の閉鎖面9の間に設けることができる。多孔質インサート7による第1の通気口と上述の第2の通気口30との組合せを設けることにより、第2の通気口30は、材料5、特にバッターが通気口30内に、および/または通気口30を通って入ったり、通気口30を詰まらせたりすることなく、金型キャビティ2からガスおよび蒸気を排出するのに比較的効果的であるように設計できることが見出された。さらに、上述のように追加の通気口を設けることで、金型1内でバッターを焼成する際に1つまたは複数の金型キャビティ2内の圧力上昇を最適化できることが見出された。
【0042】
図示の実施形態では、開口部8は実質的に直線状のチャネルを形成し、金型1の閉鎖面9に対して実質的に垂直な流れの方向Qを有する。しかし、開口部8は、例えば、
図9に概略的に示すように、閉鎖面9に実質的に平行な方向、上方または下方、あるいは金型の側方など、異なる流れの方向Qを有するチャネルを形成することができることは明らかであろう。あるいは、チャネルは、その全部または一部が、前記表面9に対して約90度または0度以外の角度、例えば、非限定的な例としては、1~89度の間の角度、例えば、30~60度の間の角度で延びることができ、そのようなチャネルは、当該チャネルを使用して金型キャビティ2からガスおよび/または蒸気を除去することができる限り、曲線状またはその他の流れの方向の変化を構成することができる。
【0043】
本開示で使用するための多孔質インサート7または少なくとも多孔質体20は、当該技術分野で知られているように、任意の適切な方法で、例えば金属、プラスチックまたはセラミックで作ることができる。実施形態では、多孔質インサート7、または少なくとも多孔質体20は、焼結材料、特に焼結した金属またはセラミックを使用して製造することができる。実施形態では、多孔質インサート7、特に多孔質体20は、非限定的な例として焼結青銅などの青銅、非限定的な例としてAISI316L鋼などのオーステナイト鋼またはステンレス鋼などのスチール、または多孔質アルミニウムで作ることができる。このような材料の例は、表1にさらに詳細に記載されており、多孔質アルミニウムは、例えば、40~50μmの孔径を有するフィルターグレードとすることができる。青銅は、例えばスチールよりも酸化による錆の発生が少なく、多孔質アルミニウムよりも脆くなりにくいという利点がある。
【表1】
【0044】
本発明で使用する多孔質体20は、好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%の気孔率を有する。気孔率は、例えば15%~70%、好ましくは20%~70%、例えば20%~65%とすることができる。例えば、青銅製の多孔質体20の場合、気孔率は約20%~50%、スチール製の多孔質体の場合、気孔率は約25%~50%、アルミニウム製の多孔質体の場合、気孔率は50%~70%、例えば55%~65%とすることができる。以下の表2、表3、表4では、青銅、スチール、アルミニウム製の多孔質体20について、適切な材料とその特性のいくつかを例示している。
【表2】
【表3】
【表4】
【0045】
これらの表は例として開示したものに過ぎない。
【0046】
金型1の1つまたは複数の金型キャビティ2の各々はキャビティ表面3Aを有し、各多孔質インサート7は、金型キャビティ2に面する、キャビティ表面3A内の多孔質表面24を有する。1つの多孔質インサート7の多孔質表面24、または金型キャビティ2の複数の多孔質インサート7の組み合わされた多孔質表面は、キャビティ表面3Aによって画定される表面領域Zの半分よりも小さい、好ましくは顕著に小さい表面領域Wを有する。ここで、表面領域Zは、閉鎖面9上の投影面として、または少なくとも金型1の開閉方向Fに垂直な投影面と見なされる。金型キャビティ表面3Aは、金型1の雄型部品2Aによって画定される表面領域を意味すると理解すべきである。例として
図3では、金型キャビティ表面領域Zは、金型キャビティ2の蓋成形部、底成形部、およびヒンジ成形部25の組み合わされた投影面によって画定することができ、インサート7の表面領域Wは、インサートの端面24によって画定することができる。表面領域Wを表面領域Zに比べて相対的に小さくすることにより、金型キャビティ2内の圧力上昇を適切に制御することができる。
【0047】
説明したように、本開示による金型1は、バッター5から製品Pを焼成するために使用することができる。この目的のために、金型1は、金型キャビティ2および当該金型キャビティ2に挿入された材料5を加熱するための少なくとも1つの発熱体35を備えることができる。本開示による金型1においてまたは金型1のために使用することができる発熱体35は、例えば、蒸気式発熱体、電気式発熱体、ガス式発熱体、または当該技術分野で知られているような類似の発熱体であり得るが、これらに限定されない。開口部8は、例えば、
図1および
図3に示すように、発熱体35の間で延在してもよい。
【0048】
例えば、加熱、特に焼成によってバッターから製品Pを成形するために本開示の金型1を使用する間、金型キャビティ2内にガスおよび/または蒸気が発生し得る。これは例えば、化学反応によるか、バッターから生じた流体、特に水の蒸発によるか、またはそれらの組み合わせによるものである。金型1内での蒸気の発生は、金型キャビティ2内の圧力を高めるため、およびバッターの発泡のために有利であり得るが、過剰な蒸気は、例えば、金型への適切な充填、製品中の発泡セルの適切な形成、および製品の表皮の成長を確実にするため、および製品Pの乾燥のために、金型キャビティから除去されることが好ましいが、目的はこれらに限定されない。説明したように、開口部8は、金型キャビティ2からガスおよび/または蒸気を除去するために使用することができる。この目的のために、開口部8は、金型1の環境Vに直接開口するかまたは金型1内の1つ以上の空間Sを介して開口するチャネル37を形成することができる。これらのチャネル37は、ガスおよび/または蒸気を開口部8を通して排出するために、ガスおよび/または蒸気の圧力、特にキャビティ2内の高い圧力とキャビティ2外の低い圧力との間の圧力差を利用する。しかしながら、実施形態では、
図1、
図7および
図9に概略的に示されるように、ポンプ36を、直接、またはインサート7が設けられている開口部8を介して、あるいは開口部8と連通するチャネル37のシステムを介して、少なくとも1つの多孔質インサート7に接続することができる。このようなポンプ36は、例えば、金型キャビティ2からガスおよび/または蒸気を能動的に吸引するために使用することができる。
【0049】
代替的または付加的に、ポンプ36を使用して、空気などの加圧気体を、金型キャビティ2の中に設けられた多孔質インサート7を通して金型キャビティ2内に強制的に送り込むことができる。このようなガスを金型キャビティ2内に強制的に送り込むことにより、金型1を開いた後に、金型キャビティ2内に形成された製品を、このガスを用いて排出することができる。金型1から製品を排出するためにこのような加圧ガスを使用することの利点は、成形で通常使用される空気圧式または油圧式エジェクターなどの従来の機械式エジェクターがもはや必要ないか、少なくともその必要性の程度が低いことである。これにより、金型や成形装置の複雑さが軽減されるだけでなく、メンテナンスや操作も簡単になる。さらに、金型1の金型キャビティ2から製品を排出するために空気などの気体を使用することで、製品に損傷を与える可能性を低減、あるいは排除することができる。実施形態において、ポンプ36は可逆ポンプ36とすることができる。これにより、同じポンプ36を用いて、ガスおよび/または蒸気をキャビティ2から除去することと、キャビティ2の中に形成された製品Pを排出するために、空気などの気体をキャビティ2に導入することの両方が可能になる。
【0050】
別の実施形態では、
図7と
図9に概略的に示すように、ポンプ36を三方弁51に接続し、ベンチュリー効果を利用して空間Sとチャネル8および37の内部の圧力を下げることができる。
【0051】
開口部8に接続されたポンプ36により、金型キャビティ2内に気体を強制的に送り込んで金型から製品Pを排出する前に、特に金型1がまだ閉じているときに、開口部8およびチャネル37、場合によっては空間Sから空気を吸引することによって圧力を下げることができる。これは、例えば、製品を排出するために金型キャビティ3に気体を強制的に送り込む前に、多孔質インサート7、20の裏側、すなわち多孔質体20とポンプ36との間に残っている水分を除去して排出することができるので有利である。従って、例えば金型キャビティ2から製品を排出する際に、金型1内の開口部8またはチャネル37などに集まった凝縮水などの水分が製品表面に押し付けられることを回避することができる。このようにしなければ、製品Pに損傷を与えるか、または、例えば水分含有量、製品表面の不要な粘着性、または汚染のために、製品Pに有害となる可能性がある。
【0052】
例として、73秒のサイクル時間を有するプロセスにおいて金型1内で製品Pを成形する場合、金型キャビティ内への材料5の注入後約55秒で、ポンプ36を使用してチャネル8、37内の圧力を能動的に、例えば真空に近い状態まで低下させることができ、金型1、特に金型キャビティ2、開口部8、多孔質インサート7、および通気孔30(該当する場合)から残存する蒸気および遊離水分を除去することができる。その後、約70秒後に金型を開くことができ、その後、材料5の射出後約73秒で、インサート7を通して空気を吹き込むことにより、成形された製品Pを金型1から排出することができる。
【0053】
説明したように、1つまたは複数の多孔質インサート7の各々は、金型壁3内に取り外し可能に取り付けることができるため、容易に配置および取り外すことができ、例えば金型外部で洗浄したり、または例えば異なる気孔率、異なる孔径、異なる材料などを有する、類似のインサート7または異なる種類のインサートであり得る別の多孔質インサート7と交換したりすることが可能である。
【0054】
本開示による金型1は、本開示による方法を実施するために使用することができる。このような方法は、金型1内で液体バッター5から製品Pを焼成する方法とすることができ、金型1は、少なくとも金型壁3によって画定された金型キャビティ2を含む。バッター5が少なくとも1つの金型キャビティ2内に注入され、当該少なくとも1つの金型キャビティ2内で加熱され、加熱中にバッター5内の液体から蒸気が発生し、この蒸気が少なくとも1つの金型キャビティ2内に圧力を発生させ、この圧力が発泡を生じさせ得る。蒸気は、少なくとも加熱の間に、少なくとも1つの金型キャビティ2からほとんど除去される。蒸気は、少なくとも金型壁3内に設けられた少なくとも1つの多孔質インサート7を通して、少なくとも1つの金型キャビティ2から除去される。多孔質インサート7は、例えば、
図5に従って多孔質体20を使用するか、
図6に従ってスリーブ21の中に多孔質体20を使用することができる。バッター5は少なくとも、少なくとも1つの多孔質インサート7によって、少なくとも1つの金型キャビティ2内に保持される。1つまたは複数のインサート7の各々の端面24は、金型1のキャビティ壁3の一部を形成し、金型キャビティ2からガスや蒸気が出ることを許容するが、固形物がキャビティ2から出ることを阻止する。
【0055】
本開示による方法では、デンプンなどの少なくとも天然ポリマーなどの固体物質と、水などの発泡剤とからなるバッター5を使用することができる。
【0056】
本開示による実施形態における方法、特にデンプンなどの天然ポリマーの水性懸濁液などのバッターを使用する方法では、多孔質インサート7が少なくとも1つの金型キャビティ3に面する組み合わされた表面領域Wを有する金型1を使用することができ、少なくとも1つの金型キャビティ内に形成された製品Pは、金型キャビティ2から取り出されたときに乾燥重量を有する。1つまたは複数の金型キャビティ2の各々の多孔質インサート7の組み合わされた表面領域Wと、そこで成形される製品Pの乾燥重量との比は、好ましくは0.07~0.7cm2/グラム、好ましくは0.25~0.7cm2/グラム、例えば0.3~0.5cm2/グラムである。製品の乾燥重量とは、この文脈では、金型1内で形成され排出された、10重量%未満、例えば7~1重量%、例えば5~3重量%の残留含水率を有する製品Pの重量を意味すると理解されるべきである。
【0057】
少なくとも1つの金型キャビティ2内でのバッター5の加熱中、好ましくは、製品Pを形成するためのバッターの加熱の少なくとも一部の間に、1.5~6バールの過圧、好ましくは1.5~4バールの過圧の蒸気最大圧力が生じる。金型キャビティ2内に生じる圧力は、インサート7を選択することによって、例えば、その気孔率を修正することによって、その断面D20および/または高さHを修正することによって、および/またはその材料を選択することによって調節できることが見出されている。
【0058】
説明したように、蒸気は少なくとも1つの金型キャビティ2から除去することができ、蒸気を除去する速度は、インサート7と、設置されている場合には、別の通気孔30によって調節することができる。通気孔30の非限定的な例は、本明細書ですでに説明し、例えば
図2、
図8および
図9に示したような、金型1の閉鎖面9におけるかまたはその近傍の通気孔である。蒸気の一部を除去することで、金型1内の圧力を制御することができる。金型キャビティ2の、例えば隆起部、エッジ部など、材料5を充填するのが比較的困難な部分に配置されたスリットベントなどの追加の通気口30を使用することにより、スリット32がこれらの領域の圧力を低減するのに役立ち、これらの部分または領域においても、金型キャビティ2のより良好な充填を可能にするという利点を有することができる。ここで、スリット32は、バッターが当該スリット30を通って金型キャビティ2から出ないような寸法、特に非常に小さい幅を有することができる。
【0059】
前述したように、金型キャビティ2内で製品を成形する成形サイクルの終了時または終了間際に、好ましくは、蒸気およびガス(該当する場合)のほとんど、より好ましくは実質的にすべてが、金型キャビティ2から、好ましくは金型1から除去された後か、または除去されている途中である。こうして製品は実質的に乾燥し、金型1から取り出すことができる。前述のように、製品Pの水分含有率、特に水の含有率は、約3~5重量%まで低減することができる。
【0060】
少なくとも1つの金型キャビティ2内のバッター5を加熱した後、特に製品Pを焼成した後、製品Pを取り出すために金型1を開くことができる。実施形態では、空気などの加圧された気体を、少なくとも1つの多孔質インサート7を通して金型キャビティ3内に導入し、少なくとも1つの金型キャビティ2内で成形された製品Pを金型キャビティ2から押し出すことができる。圧縮空気などの気体によって製品Pを金型キャビティ2から吹き出すことには、前述したような利点がある。前述のように、好ましくは、少なくとも1つの多孔質インサート7を通して金型キャビティ2内に加圧された気体を導入する前に、蒸気および凝縮した蒸気が、減圧によって多孔質インサート7の裏側から、例えばチャネル8、37および空間Sから除去されるため、少なくとも多孔質インサート7を通して気体を導入する前に、蒸気が除去される。
【0061】
図10は、複数の金型キャビティ2を有する金型1の金型キャビティ2内の圧力Kとサイクル時間Tをグラフで示したものである。これら複数の金型キャビティ2の各々は、投影表面積が約56,000mm
2、体積が0.1975リットルである。金型1は、従来のプルームベント(PV)、閉鎖面ベント(CSV)、カラーベント(CV)、インサートベント(IV)、および前述の多孔質インサート7を様々な組み合わせで使用した、異なるベント構成で試験された。
【0062】
CVは、
図8を参照して前に説明した通気口30である。CSVは、
図9に模式的に示すように、金型の閉鎖面9の間にスリット32によって設けられた通気口30であり、その幅は、閉鎖面9に対して垂直に測定した閉鎖面9の間の距離によって定義される。IVは、金型キャビティ2の壁3Aに挿入された中実インサートと金型キャビティの周囲の壁3Aとの間にスリット32によって設けられた通気口30であり、スリット32の幅は、前記中実インサートの周縁に垂直な隣接面3Aに平行に測定された、インサートと周囲の壁3Aとの間の最大距離として測定される。この点で、中実とは少なくとも多孔質ではないと理解すべきである。
【0063】
従来のプルームベント(PV)は、1.2mm×1.2mmの実質的に正方形の開口部からなり、蒸気とバッター5の一部を通過させることができた。このようなPVベントは、例えば国際公開第2004/033179号明細書に開示されており、そこに開示されているように、金型キャビティとオーバードーズチャネルの間に配置されている。PVベントを通過したバッター5も加熱され、ゲル化し、少なくとも一部が焼成され、プルームが形成された。これして形成されたプルームは、除去する必要があった。カラーベントCVは、幅0.05mmと0.1mmのものを使用した。閉鎖面ベントCSVは幅0.1mmのものを使用した。インサートベントIVの幅は0.05mmであった。CSV、IV、CVベントには、使用時に有意な量のバッターが入ることはなかった。
【0064】
使用された多孔質インサート7は、表1に定義された青銅製で、表2によるグレードはB85であった。各インサート7は、直径10mmの平坦な端部24を有する円筒状の多孔質体20を有していた。多孔質体20の気孔率は40%であった。金型1を閉じた後、約0.1975リットルのバッター5を各金型キャビティ2に注入し、金型キャビティを完全に充填した。
【0065】
図10に見られるように、破線L
1では、金型キャビティ2内の圧力は、約20秒で約3.5バールまで上昇し、その後、比較的ゆっくりと低下して、サイクル時間80秒の終了時には大気圧レベルになっている。このグラフL
1を基準線とする。
図10の黒実線L
2は、幅が0.1mmのCV、0.1mmのCSV、および0.05mmのIVを有する金型1における圧力を示す。
図10に見られるように、金型キャビティ2内の圧力はより急速に上昇し、約25秒後には約5.4バールまで上昇し、その後大気圧レベルまで低下したが、サイクル時間Tは85秒であった。
図10の薄緑色の線L
3は、幅が0.1mmのCV、0.1mmのCSV、および0.1mmのIVを有する金型における金型キャビティ2内の圧力を示している。
図10に見られるように、金型キャビティ2内の圧力は比較的急速に上昇し、約25秒後には約4.57バールまで上昇し、その後大気圧レベルまで低下したが、サイクル時間Tは83秒であった。
図10の線L
4~L
10は、それぞれ1~7個の多孔質インサートを使用した場合の、成形サイクル中の金型キャビティ2内の圧力Kの経時変化を示している。
図10および表5からわかるように、多孔質インサート7は、金型キャビティ2内の最大圧力Kを低下させ、金型キャビティ2内の圧力上昇は、プルームベントPVを有する基準金型よりもわずかに緩やかであった。サイクル時間Tは、多孔質インサート7の数が増えるにつれて短くなった。
【表5】
【0066】
これらの試験から、サイクル時間の短縮は、金型キャビティ壁3Aにおける多孔質インサート7の多孔質表面領域Wの増加に伴って実質的に線形であることが分かる。従って、ここに開示したような金型に合計12個の多孔質インサート7を使用すると、例えば、約2バールの内部最大圧力Kが得られ、サイクル時間は約60秒となり、従って、プルームベントPVのみを有する金型1のサイクル時間と同等のサイクル時間となるが、金型キャビティ2内の最大圧力Kは著しく低くなる。この結果、例えばこの金型1では、後述の実施例1で説明するように、デンプンなどの天然ポリマーと水とを少なくとも含むバッター5で作られた製品Pに対して、多孔質インサート7の多孔質体20の多孔質表面積が約10cm2となり、製品Pの乾燥重量は32グラム、すなわち乾燥重量に対する多孔質表面の比は0.31cm2/グラムとなる。
【0067】
本開示による金型1は、少なくとも1つの金型キャビティ2を形成することによって製造することができ、前記少なくとも1つの金型キャビティ2の壁3に、好ましくは貫通するように、少なくとも1つの開口部8が形成される。前記少なくとも1つの開口部8には、インサート7が挿入され、インサート7は、少なくとも多孔質体20を有して形成され、金型1内で製品Pを製造するための使用中に、金型キャビティ2内で発生する蒸気を、少なくとも1つの多孔質体20を通してそこから除去することができ、製品を形成するための材料5をキャビティ2内に保持することができるようになっている。実質的に円筒形の多孔質インサート7を使用すると、壁3に開口部8を容易に穿孔できるという利点が得られる。より一般的には、インサート7用の開口部8は、例えば、壁3に開口部8を穿孔またはフライス加工することによって作成することができる。
【0068】
以下では、本開示による金型1内で製品Pを成形するための方法の例を、例示としてのみ示す。
【0069】
実施例1
図2および
図3に従った金型1において、以下の表5に開示されているバッター5を使用し、製品Pとして卵トレイを製造した。これらの卵トレイは概ね欧州特許第3470345号明細書に開示されている通りであり、製品Pの例としてのみ示したものであって、本開示を限定するものとみなされるべきではない。
【表6】
【0070】
金型1は、
図3に示すように2つの金型キャビティ2を有し、投影表面積は256×217mm、すなわち約56,000mm
2であり、これらの金型キャビティを合わせた容積は0.1975リットルである。各金型キャビティには、表1に定義された青銅製で、表2に従ったグレードB85の7つの多孔質インサート7が設けられた。各インサート7は、直径10mmの平坦な端部18を有する円筒状の多孔質体20を備えていた。したがって、キャビティ内の多孔質体の組み合わされた表面積は5.5cm
2であった。多孔質体20の気孔率は40%であった。金型1はさらに、金型キャビティ2の外周に沿って
図8に示すようなスリットベント30を有し、スリットの幅は0.05mmであった。
【0071】
金型1は、
図4に示すように、閉鎖面9が垂直に延びるように閉じられた。金型1を閉じた後、約0.1975リットルのバッター5を各金型キャビティ2に注入し、金型キャビティを完全に充填した。その後、金型1をバッター5の焼成温度まで加熱し、その加熱中にバッター中の水分の一部が加熱により蒸発し、金型キャビティ2内の圧力を上昇させ、発泡剤として作用した。蒸気は多孔質インサート7とスリットベント30を通って金型キャビティ2から排出されるため、金型キャビティ2の内部では、最高圧力が約3.13バールの過圧となった。
【0072】
製品Pを金型内で焼成するサイクル時間は70秒であった。70秒後に金型1を開き、製品Pを金型から取り出した。製品の水分含量は3~5重量%であった。バッター5が多孔質インサート7を通って金型キャビティから出ることはなかった。製品は実質的に欧州特許第3470345号明細書に開示されている通りであった。
【0073】
実施例2
実施例1の実験を繰り返したが、使用した金型1は、金型キャビティ2あたり2つの多孔質インサート7のみを有し、合わせて約1.6cm2の多孔質表面領域を画定した。バッター5を金型1内で実施例1と同じ温度で加熱し、製品Pを焼成した。サイクル時間は80秒であったが、金型キャビティ2内の最大圧力は約4.2バールの過圧であった。
【0074】
実施例3
実施例1の実験を繰り返したが、多孔質インサート7のない金型を使用した。この金型には、金型キャビティ2の外周に沿って
図8に示すようなスリットベント31が幅0.05mmで設けられていた。再び同じ製品Pが金型内で製造され、サイクル時間は85秒、金型キャビティ2内の最大圧力は約5.42バールの過圧であった。
【0075】
実施例4
実施例1の実験を繰り返したが、金型は7つの多孔質インサート7のみを備えた。この実験では、サイクル時間は90秒で、金型キャビティ2内の最大圧力は5バールの過圧であった。
【0076】
実施例5
実施例1と同じ例を使用した。しかし、この例では、バッター5の注入後約55秒後に、ポンプ36を使用して金型1内の遊離した空気と水分をすべて吸い出すことにより、金型キャビティ2内の圧力を能動的に低下させた。注入から70秒後に金型1を開いた。その後、製品Pに対して多孔質インサート7を通して圧縮空気を強制的に送り込むことによって、製品Pを金型1から、特に金型1の雄型部分2Aから取り出した。製品Pは、目に見える損傷を受けることなく、雄型部品2Aから簡単に外れた。
【0077】
インサート7の高さは、その機能には比較的関係がないことがわかった。ここで取り上げた実験は、あくまでも一例として示したものであり、決して保護範囲を限定するものと考えるべきではない。
【0078】
多孔質インサートは、比較的長期間にわたって清潔に保つことができることが判明している。これはつまり、多孔質体20の中に有意な量のバッター5が入り込まないため、多孔質体20の十分な多孔性が維持されるということを意味する。例えば、実施例1に記載されたプロセスでは、多孔質体20を通る空気の流れは、開始時の100%から、金型1内で連続的に焼成した4日後には約82%に、12日後には約79%に減少し、その後、この流れは数日間比較的一定に保たれることが判明した。インサート7は、開口部から容易に取り外して、例えばインサート7、特に多孔質体20をすすぐことによって洗浄できることが判明した。
【0079】
本発明は、説明および図面に示した実施形態に決して限定されるものではない。多くの変形例が考えられる。
【0080】
例えば、金型は、例えば1つだけ、または2つ以上など、異なる数の金型キャビティを有するものを使用することができる。多孔質インサート7の数、形状および寸法は、例えば、金型キャビティ2内の圧力を変更するため、または金型キャビティへの空気の流入および/または金型キャビティからの空気の流出を最適化するために、異なるものを選択することができる。図示の実施形態では、金型キャビティ内または金型キャビティ用の多孔質インサート7または少なくとも多孔質体20はすべて同じ構成を有する。しかし、実施形態では、同じ金型キャビティ2内で、または同じ金型キャビティ2に対して、異なる多孔質インサートおよび/または異なる多孔質体20を使用することができる。これらは例えば、異なる材料で作られ、および/または異なる気孔率、異なる断面およびサイズ、またはそれらの組み合わせを有してもよい。製品を製造するための金型や方法には、デンプンとは異なる天然ポリマーからなるバッターや、異なるポリマーの組み合わせなど、さまざまな材料を使用することができるが、これらに限定されるものではない。この材料は、非天然ポリマー、繊維、他の発泡剤等から構成することもできる。特に、米国特許第6641758号明細書、国際公開第96/30186号明細書、国際公開第2004033179号明細書、または米国特許出願公開第2019/0367221号明細書で知られているような、しかしこれらに限定されない他のバッターを使用することができる。実施形態では、材料は金型を閉じる前に金型キャビティ内に投入することができる。開口部8には、金型の使用中に1つまたは複数の開口部を一時的に閉鎖し、金型キャビティへの蒸気やガスの流入、および/または金型キャビティからの蒸気やガスの流出を制御するためのバルブなどの閉鎖具を設けることができる。
【0081】
これらおよびその他のさまざまな変形も、ここに開示されたとみなされるべきである。
【国際調査報告】