(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-15
(54)【発明の名称】組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 35/744 20150101AFI20240207BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240207BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20240207BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240207BHJP
A61K 35/745 20150101ALI20240207BHJP
A61K 35/747 20150101ALI20240207BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20240207BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240207BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20240207BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20240207BHJP
【FI】
A61K35/744
A61P17/00
A61P17/16
A61P43/00 121
A61K35/745
A61K35/747
A61P17/06
A61P37/08
A61P17/04
A23L33/135
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549978
(86)(22)【出願日】2022-02-17
(85)【翻訳文提出日】2023-09-29
(86)【国際出願番号】 GB2022050428
(87)【国際公開番号】W WO2022175667
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2021-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523312554
【氏名又は名称】アクシスバイオティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】オニール、キャサリン
【テーマコード(参考)】
4B018
4C087
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE03
4B018LE05
4B018MD02
4B018MD05
4B018MD20
4B018MD34
4B018MD36
4B018MD86
4B018ME14
4B018MF06
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC56
4C087BC57
4C087BC58
4C087BC59
4C087MA02
4C087MA43
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZA89
4C087ZB13
4C087ZC75
(57)【要約】
本発明は、対象における乾燥および/または敏感肌状態の治療および/または予防に使用するための組成物に関する。組成物は、対象におけるインターロイキン-17および/もしくはインターロイキン-23のレベルを低下させ、ならびに/または対象におけるインターロイキン-10のレベルを上昇させ、ならびに/または対象における腸のバリア機能を改善する細菌種を少なくとも2つ含む。少なくとも2つの細菌種は、ビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)および/またはラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)を含んでもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における乾燥および/または敏感肌状態の治療および/または予防における使用のための組成物であって、対象におけるインターロイキン-17および/もしくはインターロイキン-23のレベルを低下させ、対象におけるインターロイキン-10のレベルを上昇させ、ならびに/または対象における腸のバリア機能を改善する細菌種を少なくとも2つ含む、組成物。
【請求項2】
細菌種が、以下から選択される、請求項1に記載の使用のための組成物:ビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)/ラクトコッカス・クレモリス(Lactococcus cremoris)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバシルス・ペントーサス(Lactobacillus pentosus)、ラクトバチルス・パラカセイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)およびビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)。
【請求項3】
組成物が、以下からなる群より選ばれる細菌種を少なくとも2つ含む、請求項1に記載の使用のための組成物:ビフィドバクテリウム・アニマリス、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ロイテリおよびラクトコッカス・ラクティス/ラクトコッカス・クレモリス。
【請求項4】
組成物が、以下からなる群より選ばれる細菌種を少なくとも3つ含む、先行する請求項のいずれかに記載の使用のための組成物:ビフィドバクテリウム・アニマリス、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ロイテリおよびラクトコッカス・ラクティス/ラクトコッカス・クレモリス。
【請求項5】
組成物が、B.アニマリス(B. animalis)、L.ブレビス(L. brevis)、L.ロイテリ(L. reuteri)およびL.ラクティス(L.lactis)/Lc.クレモリス(Lc. Cremoris)を含む、先行する請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項6】
乾燥および/または敏感肌状態が、乾癬、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、湿疹または魚鱗癬を含む、先行する請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項7】
乾燥および/または敏感肌状態が、乾癬を含む、先行する請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項8】
細菌種が、10
6から10
12 cfu/gまでの濃度、好ましくはおよそ10
9cfu/gの濃度で組成物中に存在する、先行する請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項9】
組成物が経口投与のために製剤化される、先行する請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項10】
組成物が粉末を含む、先行する請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項11】
インターロイキン-17および/もしくはインターロイキン-23のレベルを低下させ、インターロイキン-10のレベルを上昇させ、ならびに/または腸のバリア機能を改善する細菌種を少なくとも2つ含む組成物。
【請求項12】
以下からなる群より選ばれる細菌種を少なくとも2つ含む、請求項11に記載の組成物:ビフィドバクテリウム・アニマリス、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ロイテリおよびラクトコッカス・ラクティス/ラクトコッカス・クレモリス。
【請求項13】
組成物が、B.アニマリス、L.ブレビス、L.ロイテリおよびL.ラクティス/Lc.クレモリスを含む、請求項11または12に記載の組成物。
【請求項14】
細菌種が、10
6から10
12 cfu/gまでの濃度、好ましくはおよそ10
9cfu/gの濃度で組成物中に存在する、請求項11~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
組成物が経口投与のために製剤化される、請求項11~14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
組成物が粉末を含む、請求項11~15のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、乾燥または敏感肌の状態、例えば乾癬の治療または予防における組成物および前記組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明への背景
ヒトは常に多くの微生物と接触して生活している。腸はとびぬけてコロニー形成が盛んで、腸内細菌叢は栄養の隔離や正常な免疫反応の発現など、正常な生理機能において複数の役割を果たしていることが示されている。さらに、腸内細菌叢は疾患や疾患の治療および管理にも役割を果たすことがだんだんと示されている。
【0003】
正常な腸内細菌叢の中には、いわゆるプロバイオティクス細菌が存在する。プロバイオティクスは、適切な量を投与することで宿主に健康上の利益をもたらす生きた微生物と定義されている。プロバイオティクスが腸の健康に有益であるという概念は、これまでにも詳細に研究され、プロバイオティクスが上皮バリア機能の向上や免疫反応の調節など、いくつかのメカニズムを通じて腸の機能を潜在的に改善することを研究は実証している。また、例えば、病原性因子のダウンレギュレーションや病原体の上皮への付着の阻害により、プロバイオティクスが病原体による腸のコロニー形成を防ぐことができるという証拠もある。
【0004】
プロバイオティクス細菌の摂取は、抗生物質関連下痢症や炎症性腸疾患などの胃腸障害を予防または治療することが示されている。しかしながら、一般に、プロバイオティクスの観察された効果を媒介する分子メカニズムに関する入手しうる情報は比較的少ない。
【0005】
プロバイオティクスは腸に良い影響を与える可能性があるため、口腔や泌尿生殖器など他の器官への潜在的な効果も研究され始め、また肌へのプロバイオティクスの局所適用は限られた数の研究において研究されている。胃腸(GI)障害が酒さ、乾癬およびアトピー性皮膚炎などのいくつかの炎症性皮膚疾患に関連していることを示唆する有力な証拠がある。乾癬患者は腸炎を発症するリスクが高く、また炎症性腸疾患患者の7~11%が乾癬と診断されている。また、乾癬やアトピー性皮膚炎の人は、免疫反応を制御する腸の能力の低下や局所的な炎症反応に関連しているかもしれない腸内マイクロバイオームの多様性が低いことを研究は示している。腸内マイクロバイオームの変化は、免疫系の反応性や肌ホメオスタシスの乱れおよび炎症性皮膚疾患にも関連している。さらに、腸-皮膚軸に関与する他のメカニズムとして、肌の状態に影響しうる、血流に乗って皮膚に蓄積しうる分子を合成する腸内細菌叢の能力や気分に及ぼす腸内細菌叢の効果などが実証されている。これらのメカニズムはまだ完全には解明されていないが、神経系、免疫系および分泌系の間の接続、ならびに環境因子が関与する腸内マイクロバイオームと肌の健康状態との関係を実証する否定できない証拠がある。
【0006】
乾癬は、鱗屑、紅斑および痛くてかゆい醜い乾燥肌局面として現れる複雑な慢性炎症状態である。これらの病変は通常、手足や頭皮にみられる。乾癬は深刻な精神的かつ社会的影響を有し、孤立を招き、就労に影響を及ぼし、不安や抑うつを引き起こすことがある。また、炎症性腸疾患、心血管疾患および糖尿病などの共存症にも関連している。乾癬の重症度は、1~2%の肌局面(軽度)からほぼ全身を覆うもの(重度)まで様々で、以下のタイプに分類される:局面(plaque)、滴状、逆性、膿疱性および紅皮症。尋常性乾癬は乾癬の最も一般的な形態であり、症例のおよそ85~90%を占める。このタイプの乾癬は、典型的には、肘、膝および頭皮に最も一般的に見られる、トップに白色または銀色の鱗屑を伴う赤色の斑点として現れる。英国における乾癬の有病率は2~4%で、乾癬の経済的影響は年間10億ポンドを超える。
【0007】
乾癬の発症に関連するプロセスは完全には理解されていないが、乾癬には免疫の要素があり、現在では免疫系が健康な皮膚細胞を攻撃する自己免疫状態であると多くの場合考えられている。さらに、上述の通り、乾癬患者は腸内マイクロバイオームの多様性が低く、乾癬をもつ人では「リーキーガット」が観察されている。乾癬のマウスモデルでは、腸内マイクロバイオームの調節が皮膚に影響を及ぼす。マイクロバイオームが皮膚にどのような効果を及ぼすかは特定されていないが、プロバイオティクスの全身性免疫に対する調節効果に関係しているかもしれないと考えられている。
【0008】
乾癬には多くの治療の選択肢が利用できるが、治療法はない。患者のケアは皮膚科医の指導の下に行われるが、多くの人は重症度や病変の範囲を低減させるために支持的商品も購入している。治療薬は有効であるが、疾患を良好にコントロールされている患者は少なく、かなりの副作用プロファイルを有する薬剤に対する治療上の不満が著しい。
【0009】
疑われる乾癬の免疫起源により、多くの治療法は免疫抑制剤の局所及び全身の両方の使用に焦点が当てられている。状態が軽症では、多くの場合、ビタミンDまたはコルチコステロイドなどの局所治療が用いられる。より重症例では光線療法や全身治療が利用される。乾癬患者は、多くの場合インターロイキン(特にインターロイキン-17(IL-17)およびインターロイキン-23(IL-23))などの炎症マーカーのレベルの上昇を示し、より最近では、かかる炎症マーカーのレベルの調節、または免疫経路に関連する分子経路に影響を与える治療法の開発に焦点が当てられている。
【0010】
アトピー性皮膚炎(AD)はアトピー性湿疹としても知られ、慢性の炎症性肌状態である。ADは最も一般的な湿疹の形態であり、欧米では現在、小児人口の約20%に悪影響を及ぼしている。ADは、肌のかゆみ、赤み、乾燥およびひび割れを引き起こす。掻くと症状が悪化し、影響を受けた個人の皮膚感染症のリスクが高まる。皮膚バリアが破られると、石鹸や洗剤などの刺激物が皮膚を乾燥させ、弱くなった皮膚バリアをさらに悪化させる。食物、微生物および他のアレルゲンも皮膚の上層部に侵入し、潜在的にアレルギー反応を引き起こす。乾燥肌の小さな斑点のみ有する人もいれば、全身に赤い炎症を起こした肌が広がる人もいる。
【0011】
症状のコントロールやADの管理に使用される治療としては、掻破の軽減および誘因の回避などのセルフケア技術、エモリエント剤(保湿剤)ならびに再燃時の腫脹、発赤およびかゆみの軽減に使用される外用コルチコステロイドなどが挙げられる。
【0012】
外用コルチコステロイドは、塗布時に軽いチクチク感を起こすことがあり、まれに皮膚の菲薄化、皮膚の肥厚、伸展裂創、皮膚の色の変化、ざ瘡および発毛の増加を引き起こすことがある。あまり一般的ではないがより重篤なステロイドの副作用としては、緑内障、白内障、皮膚の小さなピンク色のぶつぶつ、赤い膿をもった毛根、副腎抑制およびステロイド外用剤の依存症/離脱などが挙げられる。特に重症の再燃に対しては、コルチコステロイド錠剤が処方されることがあるが、重篤な副作用の潜在的なリスクがあるため、一般に7日間を超える治療期間は避けられる。
【0013】
代替の非ステロイド性AD治療としては、免疫系を抑制するピメクロリムスやタクロリムスなどの局所カルシニューリン阻害薬、光線療法、包帯または湿潤ラップ、免疫抑制剤錠剤および成人の手に影響を及ぼす重度の湿疹を治療するアリトレチノインなどが挙げられる。しかしながら、カルシニューリン阻害剤は皮膚癌またはリンパ腫のリスクを高めるかもしれないという懸念が存在している。
【0014】
魚鱗癬は、広範囲に持続的に厚く乾燥した鱗状の皮膚を生じる状態である。魚鱗癬には20を超える異なるタイプがあり、症状の重症度や外観には幅がある。魚鱗癬の最も一般的なタイプである尋常性魚鱗癬では、症状は比較的軽い。しかしながら、最も重症のタイプの魚鱗癬は生命を脅かすことがある。
【0015】
魚鱗癬の治療としては、典型的にはエモリエント剤やクリームの外用と、鱗屑を除去するための角質除去が挙げられる。さらに重症の場合は、皮膚細胞の産生を低減させるためにレチノイドの内服が処方されることもある。しかしながら、治療の選択肢は限られている。
【0016】
本発明の目的は、乾癬、アトピー性皮膚炎および魚鱗癬などの乾燥および/または敏感肌の状態に対して、上記の問題の1つ以上を回避または軽減すること、および/または改善された治療を提供することである。
【発明の概要】
【0017】
発明の概要
本発明は、乾燥および/または敏感肌状態の治療または予防における組成物ならびに組成物の使用に関する。本発明は、一部、一定のプロバイオティクス細菌種はインターロイキン-17(IL-17)およびインターロイキン-23(IL-23)の発現を低下、インターロイキン-10(IL-10)の発現を上昇ならびに腸のバリア機能を改善することができることを示す発明者らによる研究に基づく。本願発明者らは、かかるプロバイオティクス細菌種の経口使用、特にかかるプロバイオティクス細菌種のブレンド集団の経口使用が肌の健康状態を改善するという結果をもたらすことを示している。
【0018】
本発明の第一の態様において、対象における乾燥および/または敏感肌状態の治療および/または予防に使用するための組成物であって、対象におけるインターロイキン-17および/もしくはインターロイキン-23のレベルを低下、ならびに/または対象におけるインターロイキン-10のレベルを上昇、ならびに/または対象における腸のバリア機能を改善する少なくとも2つの細菌種を含む組成物を提供する。
【0019】
本発明の第二の態様において、インターロイキン-17および/もしくはインターロイキン-23のレベルを低下、ならびに/またはインターロイキン-10のレベルを上昇、ならびに/または腸のバリア機能を改善する少なくとも2つの細菌種を含む組成物を提供する。
【0020】
細菌種はプロバイオティクス細菌種であってもよい。したがって、本発明の組成物は、少なくとも2つのプロバイオティクス細菌種を含んでもよいので、プロバイオティクス組成物として記載することができる。プロバイオティクス細菌は、世界保健機関によって、適量を投与された場合宿主に健康上の利益を与える生きた微生物と定義されている。したがって、当業者には理解されるように、本発明の「プロバイオティクス組成物」は、対象に適用する場合対象に有益な効果をもたらす少なくとも2つのプロバイオティクス細菌種を含む組成物である。
【0021】
本発明者らは、乾燥または敏感肌の状態を有する個人において炎症反応を管理することにより、これらの状態を治療し得ることを見出した。かかる状態の多く、例えば、乾癬は、制御不能または過剰な炎症反応に関連し、この炎症反応をより正常なレベル(すなわち、かかる状態によって影響されていない対象において確認されるレベル)に低下させることにより状態を管理し得る。本発明者らは、細菌種のブレンドを使用することにより(単一の菌株のアプローチよりも)、皮膚疾患の異なる生理的態様を標的にする、プロバイオティクスのブレンド集団の使用の利点を活用できる組成物を開発した。
【0022】
本明細書で使用するとき、フレーズ「インターロイキンのレベルを低下させる」は、対象におけるインターロイキンのレベルが、細菌種による治療前のレベルと比較して低下することを意味する。例えば乾癬のような乾燥または敏感肌の状態を有する対象において、インターロイキン(例、IL-17、IL-23)のレベルを低下させることにより、これらのインターロイキンのレベルを前記乾燥または敏感肌の状態がない対象において観察されるインターロイキンのレベルに低下させる。
【0023】
本明細書で使用するとき、フレーズ「インターロイキンのレベルを上昇させる」は、対象におけるインターロイキンのレベルが、細菌種による治療前のレベルと比較して上昇していることを意味する。例えば乾癬のような乾燥または敏感肌の状態を有する対象においてインターロイキン(例、IL-10)のレベルを増加させることにより、これらのインターロイキンのレベルを少なくとも前記乾燥または敏感肌の状態がない対象において観察されるインターロイキンのレベルに上昇させる。
【0024】
当業者には理解されるように、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて血液中の前記インターロイキンの濃度を試験することによるなど、インターロイキンのレベルが測定され得る様々な方法がある。
【0025】
上述したように、乾燥および敏感肌の状態、例えば乾癬は、変化したマイクロバイオームやリーキーガットと関連していることが見いだされた。本明細書で使用するとき、フレーズ「腸のバリア機能を改善する」は、腸を横切る病原体および他の有害分子の移動を防止する腸の機能が、細菌種による治療前の機能と比較して改善されることを意味する。腸の機能は、前記乾燥または敏感肌の状態のない対象の腸の機能により匹敵するように改善される。腸の機能は、例えば、マンニトールやラクチュロースのような糖の経口摂取後の尿中のマンニトール:ラクチュロースの比を測定することによって試験できることが、当業者には理解されよう。
【0026】
当業者には理解されるように、インターロイキンレベルを低下させ、および/またはインターロイキンレベルを上昇させ、および/または腸機能を改善する組成物中の細菌種について言及する場合、組成物が投与された対象におけるインターロイキンレベルおよび/または腸機能について言及している。
【0027】
実施形態において、細菌種は、ラクトバチルス種(Lactobacillus sp.)、ビフィドバクテリウム種(Bifidobacterium sp.)、ラクトコッカス種(Lactococcus sp.)、ストレプトコッカス種(Streptococcus sp.)および/またはそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。実施形態において、細菌種は、ラクトバチルス種、ビフィドバクテリウム種、ラクトコッカス種および/またはそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0028】
本発明の細菌種は、例えば、ビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)/ラクトコッカス・クレモリス(Lactococcus cremoris)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバシルス・ペントーサス(Lactobacillus pentosus)、ラクトバチルス・パラカセイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)およびビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)から選択され得る。
【0029】
本発明の実施形態において、組成物は少なくとも2つの下記細菌種を含む:ビフィドバクテリウム・アニマリス、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ロイテリおよびラクトコッカス・ラクティス。
【0030】
ラクトコッカス・ラクティスは、ラクトコッカス・クレモリスとしても知られ得る。したがって、実施形態において、組成物は少なくとも2つの下記細菌種を含む:ビフィドバクテリウム・アニマリス、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ロイテリおよびラクトコッカス・クレモリス。
【0031】
したがって、本発明は対象における乾燥および/または敏感肌状態の治療および/または予防に使用するための組成物を提供し、当該組成物は少なくとも2つの下記細菌種を含む:ビフィドバクテリウム・アニマリス、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ロイテリおよびラクトコッカス・ラクティス/ラクトコッカス・クレモリス。
【0032】
本発明は、少なくとも2つの下記細菌種を含む組成物も提供する:ビフィドバクテリウム・アニマリス、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ロイテリおよびラクトコッカス・ラクティス/ラクトコッカス・クレモリス。
【0033】
ビフィドバクテリウム・アニマリス(B.アニマリス(B. animalis))は、グラム陽性、嫌気性、桿状細菌であって、ヒトなどの多くの哺乳類の胃腸管領域に見られる。B.アニマリスの科学的分類は:界:細菌; 門:グラム陽性菌門(Firmicutes); 網:放線菌網(Actinobacteria); 目:ビフィドバクテリウム目(Bifidobacteria); 科:ビフィドバクテリウム科(Bifidobacteriaceae); 属:ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium);種:ビフィドバクテリウム・アニマリスである。B.アニマリスは、プロバイオティクスとして一般的に用いられる。
【0034】
ラクトバチルス・ブレビス(L.ブレビス(L. brevis))は、グラム陽性、桿状、乳酸菌であって、例えば、乳製品中に一般的に見られる。L.ブレビスの科学的分類は:界:細菌;門:グラム陽性菌門;網:桿菌網(Bacilli);目:ラクトバチルス目(Lactobacillales);科:ラクトバチルス科(Lactobacilliaceae); 属:ラクトバチルス属(Lactobacillus);種:ラクトバチルス・ブレビスである。
【0035】
ラクトバチルス・ロイテリ(L.ロイテリ(L. reuteri))は、グラム陽性、桿状、嫌気性細菌であり、ヒトなどの多くの哺乳類の胃腸管領域に見られる。L.ロイテリの科学的分類は:界:細菌; 門:グラム陽性菌門; 網:桿菌網(Bacilli);目:ラクトバチルス目(Lactobacillales);科:ラクトバチルス科(Lactobacilliaceae);属:ラクトバチルス属(Lactobacillus);種:ラクトバチルス・ロイテリである。
【0036】
ラクトコッカス・ラクティス(L.ラクティス(L. lactis))は、グラム陽性乳酸菌である。L.ラクティスの科学的分類は:界:細菌;門:グラム陽性菌門;網:桿菌網(Bacilli);目:ラクトバチルス目(Lactobacillales);科:連鎖球菌科(Streptococcaceae);属:ラクトコッカス属(Lactococcus);種:ラクトコッカス・ラクティスである。L.ラクティスは、Lc.クレモリス(Lc. cremoris)でもあり得る。
【0037】
本発明の実施形態において、組成物は、B.アニマリス、L.ブレビス、L.ロイテリおよびL.ラクティス/Lc.クレモリスの少なくとも2つを含む。
【0038】
本発明の実施形態において、組成物は、上記列挙した細菌種の2つを含んでもよい。例えば、実施形態において、組成物は、B.アニマリスおよびL.ブレビスを含んでもよい。実施形態において、組成物は、B.アニマリスおよびL.ロイテリを含んでもよい。実施形態において、組成物は、B.アニマリスおよびL.ラクティス/Lc.クレモリスを含んでもよい。実施形態において、組成物は、L.ブレビスおよびL.ロイテリを含んでもよい。実施形態において、組成物は、L.ブレビスおよびL.ラクティス/Lc.クレモリスを含んでもよい。実施形態において、組成物は、L.ロイテリおよびL.ラクティス/Lc.クレモリスを含んでもよい。
【0039】
本発明の実施形態において、組成物は、上記列挙した細菌種の3つを含んでもよい。例えば、実施形態において、組成物は、B.アニマリス、L.ブレビスおよびL.ロイテリを含んでもよい。実施形態において、組成物は、B.アニマリス、L.ブレビスおよびL.ラクティス/Lc.クレモリスを含んでもよい。実施形態において、組成物は、B.アニマリス、L.ロイテリおよびL.ラクティス/Lc.クレモリスを含んでもよい。実施形態において、組成物は、L.ブレビス、L.ロイテリおよびL.ラクティス/Lc.クレモリスを含んでもよい。
【0040】
本発明の好ましい実施形態において、組成物は、B.アニマリス、L.ブレビス、L.ロイテリおよびL.ラクティス/Lc.クレモリスを含んでもよい。
【0041】
本発明の実施形態において、組成物中に存在する細菌種は、上記組み合わせの1つ、例えば、B.アニマリス、L.ブレビス、L.ロイテリおよびL.ラクティス/Lc.クレモリスからなってもよい。
【0042】
本発明者らは、驚いたことに、これらの菌種は、IL-17および/もしくはIL-23のレベルを低下させ、ならびに/またはIL-10のレベルを上昇させ、ならびに/または腸バリアを改善するのに有効であるため、乾燥および/または敏感肌の状態の治療に特に有用になりうることを見出した。本発明者らはさらに、この菌種の組み合わせが結果として肌の健康状態を改善することを示した。この細菌種のブレンドを利用することにより、本発明者らは、皮膚疾患の異なる生理学的側面(例、免疫側面および腸関連側面)を標的とするプロバイオティクスのブレンド集団を使用する利点を得ることができる組成物を開発した。理論に拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、これらの炎症促進性インターロイキン(IL-17および/またはIL-23)のレベルを低下減少させ、および/または抗炎症性インターロイキンIL-10のレベルを上昇させ、および/または腸バリアを改善することによって、乾燥および敏感肌の状態、特に乾癬の改善が達成され得るという仮説を立てる。
【0043】
組成物がB.アニマリスを含む実施形態において、B.アニマリスは、例えば、ビフィドバクテリウム・アニマリスsubsp.ラクティス(Bifidobacterium animalis subsp. lactis)を含んでもよい。実施形態において、B.アニマリスは、例えば、ビフィドバクテリウム・アニマリスsubsp.ラクティスBB-12(登録商標)および/またはそれから誘導される菌株を含んでもよい。組成物がB.アニマリスを含む実施形態において、B.アニマリスは、Winclove Probiotics B.V.から市販されているB.アニマリス W53および/またはそれから誘導される菌株を含んでもよい。
【0044】
組成物がL.ブレビスを含む実施形態において、L.ブレビスは、例えば、L.ブレビス LP9および/またはそれから誘導される菌株を含んでもよい。組成物がL.ブレビスを含む実施形態において、L.ブレビスは、Winclove Probiotics B.V.から市販されているL.ブレビス W63および/またはそれから誘導される菌株を含んでもよい。
【0045】
組成物がL.ロイテリを含む実施形態において、L.ロイテリは、例えば、L.ロイテリ FN041および/またはそれから誘導される菌株を含んでもよい。組成物がL.ロイテリを含む実施形態において、L.ロイテリは、Winclove Probiotics B.V.から市販されているL.ロイテリ W192および/またはそれから誘導される菌株を含んでもよい。
【0046】
組成物がL.ラクティスを含む実施形態において、L.ラクティスは、例えば、L.ラクティス NZ9000および/またはそれから誘導される菌株を含んでもよい。組成物がL.ラクティスを含む実施形態において、L.ラクティスは、Winclove Probiotics B.V.から市販されているLc.クレモリスW224および/またはそれから誘導される菌株を含んでもよい。
【0047】
本明細書で使用するとき、フレーズ「それから誘導される菌株」は、元の菌株と比較してゲノム変異(例、挿入、欠失、置換)を有するが、対象におけるインターロイキン-17および/もしくはインターロイキン-23のレベルを低下させる、ならびに/または対象におけるインターロイキン-10のレベルを上昇させる、ならびに/または対象における腸のバリア機能を改善することによって肌状態を治療または予防する能力を保持する菌株を意味する。当業者であれば、かかる菌株が、例えば部位特異的突然変異誘発またはランダム突然変異誘発など、当技術分野で周知の突然変異誘発法を用いて、どのように誘導されるかを知っているであろう。
【0048】
組成物が、ビフィドバクテリウム・アニマリス、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ロイテリおよびL.ラクティス/Lc.クレモリスの少なくとも2つを含む本発明の実施形態において、組成物は、追加の細菌種、例、プロバイオティクス細菌種を含んでもよい。適当なプロバイオティクス細菌種としては、例えば、ラクトバチルス種(Lactobacillus sp.)、ビフィドバクテリウム種(Bifidobacterium sp.)、ラクトコッカス種(Lactococcus sp.)、ストレプトコッカス種(Streptococcus sp.)およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる細菌種が挙げられる。特に、本発明の組成物に含めるのに特に好適な細菌種としては、例えば、ラクトバチルス・アシドフィルス(例えば、LA5株)、ラクトバチルス・カゼイ(例えばDN001株)、ラクトバチルス・プランタルム(例えばHY7714/K8株)、ラクトバシルス・ペントーサス、ラクトバチルス・パラクセイ(Lactobacillus paracsei)(例えばCS3株)、ラクトバチルス・アシドフィルス(例えばIDCC3302株)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(例えば35624株)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(例えばB3株)が挙げられる。
【0049】
好ましくは、追加の細菌種は、IL-23および/またはIL-17のレベルを低下させる細菌種である。好ましくは、追加の細菌種は、IL-10のレベルを上昇させる細菌種である。好ましくは、細菌種は、腸バリア機能を改善する細菌種である。本発明者らによって示されるように、これらの活性を示す細菌種は、乾燥または敏感肌の状態の治療に特に適している。
【0050】
本発明の組成物中に存在する細菌種は、生きた細菌種、すなわち生きており、死滅または不活性化されていない。しかしながら、本発明の組成物は、生きたプロバイオティクス細菌を含むことに加えて、前記プロバイオティクス細菌の細胞成分(例えば、細胞壁成分、細胞膜成分、核酸、タンパク質など)、代謝産物および/または前記細菌から分泌される分子をさらに含み得ることが理解されるであろう。
【0051】
本発明の組成物は、対象における乾燥および/または敏感肌の状態の治療および/または予防に使用してもよい。
【0052】
本明細書で使用するとき、用語「治療(treatment)」、「治療する(treat)」または「治療する(treating)」は、組成物が、乾燥および/または敏感肌の状態の徴候または症状を軽減または緩和すること、状態の臨床経過を改善すること、増悪の数または重症度を減少させること、または状態の他の客観的または主観的兆候を減少させることを意味する。
【0053】
本明細書で使用するとき、用語「予防(prevention)」、「予防する(prevent)」または「予防する(preventing)」は、組成物が、特に、例えば、対象が状態の素因がある場合に、状態の発生を回避することを意味する。
【0054】
当業者は、フレーズ「乾燥および/または敏感肌の状態」が、対象の肌がかゆく、過敏になり、赤く、乾燥し、ひび割れ、および/または炎症を起こす状態を包含することを理解するであろう。かかる状態としては、例えば、乾癬、湿疹、魚鱗癬、皮膚炎(例、接触性皮膚炎またはアトピー性皮膚炎)、ざ瘡、酒さ、およびネザートン症候群が挙げられる。
【0055】
本発明の実施形態において、組成物は、乾癬、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、湿疹、魚鱗癬、ざ瘡、酒さまたはネザートン症候群の治療および/または予防に使用するためのものである。本発明の好ましい実施形態において、組成物は、乾癬、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、湿疹または魚鱗癬の治療および/または予防に使用するためのものである。
【0056】
本発明の組成物の使用は、有利には、かかる状態の治療のために頻繁に処方されるコルチコステロイドで見られる副作用を回避する。
【0057】
本発明の好ましい実施形態において、組成物は乾癬の治療および/または予防に使用するためのものである。上述したように、乾癬は、以下のタイプに分類され得る:局面(plaque)、滴状、逆性、膿疱性および紅皮症。本発明の組成物は、任意のタイプの乾癬の治療および/または予防に使用することができる。
【0058】
本発明者らは、驚いたことに、本発明の組成物が、IL-17やIL-23などの炎症マーカーのレベル上昇、変化したマイクロバイオームおよびリーキーガットと関連する乾癬の治療または予防に特に有効であり得ることを見出した。本発明者らは、乾癬に罹患している対象が本発明のプロバイオティクス細菌組成物で治療された場合、肌の状態が顕著に改善したことを示した。理論に拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、本発明のプロバイオティクス細菌の提供が、IL-17およびIL-23炎症マーカーを低下させ、ならびに/またはIL-10などの抗炎症マーカーのレベルを上昇させ、ならびに/または腸機能を回復もしくは改善させ、それによって肌状態の改善をもたらすという仮説を立てる。
【0059】
本明細書で使用するとき、用語「対象」は、乾燥または敏感肌の状態に苦しむ任意の個体を指すために使用される。本発明の実施形態において、対象は、例えば、ヒトまたは動物、例えば、イヌ、ネコ、ウサギ、鳥、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマまたはポニーであり得る。しかしながら、好ましい実施形態において、対象は哺乳動物、好ましくはヒトである。
【0060】
本発明の組成物中には、存在する細菌種、例えばビフィドバクテリウム・アニマリス、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ロイテリおよび/またはL.ラクティス/Lc.クレモリスは、治療上有効な量存在する。当業者は、用語「治療上有効な量」が、乾燥および/または敏感肌の状態を治療または予防する効果をもたらすのに必要な細菌種の量を意味するために本明細書において使用されることを理解するであろう。
【0061】
当業者には理解されるように、治療上有効な量は、対象の特徴、例えば、対象の年齢、体重および性別に基づいて変化し得る。治療上有効な量は、投与経路に基づいても変化し得る。
【0062】
本発明の実施形態において、組成物中のプロバイオティクス細菌種の総濃度は、106から1012cfu/gまでである。好ましくは、組成物中のプロバイオティクス細菌種の総濃度は、108から1010cfu/gまでである。より好ましくは、組成物中のプロバイオティクス細菌種の総濃度はおよそ109cfu/gである。
【0063】
本発明の実施形態において、細菌種の治療上有効な量は106から1012cfu/日までである。好ましくは、細菌種の治療上有効な量は、108から1010cfu/日までである。より好ましくは、細菌種の治療上有効な量は、およそ109cfu/日である。本明細書で細菌種の治療上有効な量について言及する場合、細菌種の総量が106から1012cfu/日まで、108から1010cfu/日まで、またはおよそ109cfu/日であることを指す。
【0064】
本発明の実施形態において、組成物中の細菌種、ビフィドバクテリウム・アニマリス、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ロイテリおよびラクトコッカス・ラクティス/Lc.クレモリスの総濃度は、106から1012cfu/gまでである。好ましくは、組成物中の細菌種、ビフィドバクテリウム・アニマリス、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ロイテリおよびL.ラクティス/Lc.クレモリスの総濃度は、108から1010cfu/gまでである。より好ましくは、組成物中の細菌種、ビフィドバクテリウム・アニマリス、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ロイテリおよびL.ラクティス/Lc.クレモリスの総濃度は、およそ109 cfu/gである。
【0065】
本発明の実施形態において、細菌種ビフィドバクテリウム・アニマリス、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ロイテリおよびラクトコッカス・ラクティス/ラクトコッカス・クレモリスの治療上有効な量は、106から1012cfu/gまでであろう。好ましくは、細菌種の治療上有効な量は、108から1010cfu/gまでである。より好ましくは、細菌種の治療上有効な量は、およそ109cfu/dayである。本明細書で細菌種の治療上有効な量について言及する場合、細菌種の総量が106から1012cfu/日まで、108から1010cfu/日まで、またはおよそ109cfu/日であることを指す。
【0066】
本発明の組成物は、乾燥肌または敏感肌の状態、例えば乾癬の治療または予防に有用であることが示されている。しかしながら、代替的に、または加えて、本発明の組成物は化粧品用途であってもよい。組成物は、肌の外観および/または質感を改善する化粧品用途であってもよい。例えば、組成物は、より滑らかおよび/もしくはより柔らかな肌、またはシミが少ない、ハリが増加、かさかさが減少、発赤が減少、肌の過敏性が減少もしくはかゆみが減少した肌をもたらし得る。本発明者らは、驚いたことに、本発明のプロバイオティクス組成物で処置された対象が、より滑らかでより柔らかい肌およびシミが少ないなど改善された肌の健康状態をしばしば見せることを示している。
【0067】
当業者は、本発明の組成物が、例えば溶液、ゲルまたは粉末など、任意の適切な形態であり得ることを理解するであろう。実施形態において、組成物は、対象への経口投与のために製剤化される。当業者には理解されるように、本明細書で使用するとき、「経口」とは、口から投与されること、または摂取されることを意味する。
【0068】
経口投与に適した製剤としては、液体、溶液(例、水性、非水性)、懸濁液(例、水性、非水性)、エマルジョン(例、水中油型、油中水型)、エリキシル剤、シロップ剤、舐剤、錠剤、顆粒剤、粉末剤、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、アンプル剤およびボーラス剤が挙げられる。あるいは、組成物は、食料品または食品添加物の形態であってもよい。組成物は、飲用可能な液体、固形または液体の食料品と混合可能なスプレッドおよび/または粉末の形態であってもよい。組成物は、例えば、食品/飲料とブレンド、または食品/飲料と一緒に消費するなど、栄養補助食品として使用することができる。
【0069】
組成物はカプセル化してもよい。カプセル化技術は当業者には明らかであり、採用される技術は、消化通過中の細菌種の必要な安定性に適合されるだろう。
【0070】
細菌種は濃縮および/または凍結乾燥してもよい。有利なことに、多くのプロバイオティクス細菌は、優れた凍結乾燥生存性を示す。
【0071】
実施形態において、組成物は、液体、例えば水と混合することができる粉末を含む。粉末は、凍結乾燥された細菌種を含んでもよい。
【0072】
本発明の組成物は、1つ以上の薬学的または美容的に許容される成分または賦形剤をさらに含んでもよい。薬学的に許容される成分は当業者に周知であり、薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤、希釈剤、充填剤、緩衝剤、保存剤、酸化防止剤、滑沢剤、安定剤、可溶化剤、界面活性剤(例、湿潤剤)、マスキング剤、着色剤、香料および浸透剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
組成物は、1つ以上の他の活性剤、例えば、他の治療剤および/または予防剤をさらに含んでもよい。
【0074】
本発明のさらなる態様において、対象における乾燥および/または敏感肌の状態を治療および/または予防するための方法が提供され、該方法は、対象におけるインターロイキン-17および/もしくはインターロイキン-23のレベルを低下させ、ならびに/または対象におけるインターロイキン-10のレベルを上昇させ、ならびに/または対象における腸バリア機能を改善する、少なくとも2つの細菌種を含む組成物を対象に投与することを含む。
【0075】
組成物の詳細は、本発明の第1および第2の態様に関連して上述した。
【0076】
実施形態において、組成物は、少なくとも2つの下記細菌種を含む:ビフィドバクテリウム・アニマリス、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ロイテリおよびラクトコッカス・ラクティス/ラクトコッカス・クレモリス。
【0077】
したがって、本発明は、対象における乾燥および/または敏感肌の状態を治療および/または予防するための方法を提供し、該方法は、少なくとも2つの下記細菌種を含む組成物を対象に投与することを含む:ビフィドバクテリウム・アニマリス、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ロイテリおよびラクトコッカス・ラクティス/ラクトコッカス・クレモリス。
【0078】
本発明の方法の実施形態において、組成物は対象に経口投与される。したがって、本発明は、対象における乾燥および/または敏感肌の状態を治療および/または予防するための方法を提供し、該方法は、少なくとも2つの下記細菌種を含む組成物を対象に経口投与することを含む:ビフィドバクテリウム・アニマリス、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ロイテリおよびラクトコッカス・ラクティス/ラクトコッカス・クレモリス。
【0079】
当業者には理解されるように、本明細書で使用するとき、「経口」とは、摂取されることまたは口から投与されることを意味する。
【0080】
本発明の実施形態において、組成物は、1週間以上毎日、例えば、1週間毎日、2週間毎日、3週間毎日、4週間毎日、5週間毎日、6週間毎日、7週間毎日、8週間毎日対象に投与してもよい。本発明の実施形態において、組成物は、1ヶ月以上毎日、例えば、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月間毎日対象に投与してもよい。本発明の実施形態において、組成物は、長期間、例えば1年以上毎日投与してもよい。本発明の実施形態において、組成物は、対象に1日2回または3回、1週間以上毎日投与してもよい。
【0081】
組成物は、1日のうちいつでも対象に投与してもよい。しかしながら、好ましくは、組成物は空腹時に投与される。
【0082】
組成物は、単独で、または他の治療と組み合わせて、同時または逐次的のいずれかで投与してもよい。
【0083】
本発明はまた、乾燥および/または敏感肌の状態の治療および/または予防のための医薬の製造における組成物の使用を提供し、組成物は、インターロイキン-17および/もしくはインターロイキン-23のレベルを低下させ、ならびに/またはインターロイキン-10のレベルを上昇させ、ならびに/または腸バリア機能を改善する少なくとも2つの細菌種を含む。
【0084】
実施形態において、組成物は、少なくとも2つの下記細菌種を含む:ビフィドバクテリウム・アニマリス、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ロイテリおよびラクトコッカス・ラクティス/ラクトコッカス・クレモリス。
【0085】
したがって、本発明は、乾燥および/または敏感肌の状態の治療および/または予防のための医薬の製造における組成物の使用を提供し、組成物は、少なくとも2つの下記細菌種を含む:ビフィドバクテリウム・アニマリス、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ロイテリおよびラクトコッカス・ラクティス/ラクトコッカス・クレモリス。
【0086】
組成物の詳細は、本発明の第1および第2の態様に関連して上述した。
【0087】
本発明のさらなる態様において、肌の外観および/または質感を改善するのに使用するための化粧品組成物の製造における組成物の使用を提供し、該組成物は、インターロイキン-17および/もしくはインターロイキン-23のレベルを低下させ、ならびに/またはインターロイキン-10のレベルを上昇させ、ならびに/または腸バリア機能を改善する少なくとも2つの細菌種を含む。
【0088】
肌の外観および/または質感を美容的に改善するための本発明の組成物の使用も提供される。例えば、組成物は、より滑らかおよび/もしくはより柔らかな肌、またはシミが少ない、ハリが増加、かさかさが減少、発赤が減少、肌の過敏性が減少もしくはかゆみが減少した肌をもたらし得る。
【0089】
組成物の詳細は、本発明の第1および第2の態様に関連して上述した。
【0090】
記載され図示された実施形態は、例示的なものと考えられ、制限的な性格を有するものではなく、好ましい実施形態のみが示され、そして記載されて、特許請求の範囲に定義される発明の範囲内に入るすべての変更および修飾が保護されることが望まれることが理解される。
【0091】
本明細書に記載された任意の特徴は、適切な場合、特に添付の特許請求の範囲に記載されたような組み合わせにおいて、個々に、または互いに組み合わせて使用することができる。また、本明細書で記載される本発明の各態様または例示的な実施形態に対する任意の特徴は、適切な場合、本発明の他の態様または例示的な実施形態にも適用可能であるものとして読まれる。言い換えると、本明細書を読む当業者は、本発明の各例示的実施形態に対する任意の特徴を、異なる例示的実施形態間で交換可能かつ組み合わせ可能であると考えるべきである。
【0092】
明細書において、「好ましい(preferable)」、「好ましくは(preferably)」、「好ましい(preferred)」、または「より好ましい(more preferred)」などの語を使用することは、そのように記載された特徴が望ましいかもしれないことを示唆するが、それにもかかわらず、必要ではない場合があり、かかる特徴を欠く実施形態は、添付の特許請求の範囲において定義される本発明の範囲内として企図される場合があることを理解されるべきである。特許請求の範囲に関連して、「1つ(a)」、「1つ(an)」、または「少なくとも1つ(at least one)」などの単語が特徴の前置きに使用される場合、特許請求の範囲において反対のことが具体的に記載されない限り、特許請求の範囲をかかる1つの特徴のみに限定する意図はないことが意図される。
【0093】
発明の詳細な説明
次に、以下の図を参照して本発明をさらに説明する:
【図面の簡単な説明】
【0094】
【
図1】
図1:毎日のプロバイオティクス組成物による56日間の治療後の対象の肌の健康状態の改善。肌の健康状態の改善を示した対象の割合を示す。
【
図2】
図2:乾癬対象の肌の健康状態結果(全体的な肌の健康状態、肌の過敏性、肌のかゆみ、肌のかさかさおよび肌の発赤)。対象はプロバイオティクス組成物を56日間毎日服用した。肌の健康状態結果において、改善および変化なしの対象の割合を示す。
【
図3】
図3:乾癬対象における経時的肌の健康状態結果(肌の過敏性、肌のかゆみ、肌のかさかさおよび肌の発赤)。毎日のプロバイオティクス組成物による56日間にわたる治療で、肌の健康状態結果に変化なし、少し改善、かなり改善、または非常に改善の経験をした対象の割合を示す。
【
図4】
図4:試験を通して種々の時点(A、B、C)での乾癬被験者の肌を示す画像。
【
図5】
図5:肌の健康状態の改善を報告した乾癬被験者のエネルギー、睡眠および気分の利点。エネルギー、睡眠および気分の改善を示した、または変化なしの対象の割合を示す。
【
図6】
図6:毎日のプロバイオティクス組成物による56日間の治療後の湿疹の対象における肌の健康状態の改善。肌の健康状態の改善を示す対象の割合を示す。
【
図7】
図7:Lc.クレモリス W224株、L.ロイテリ W192株、L.ブレビス W63株およびB.アニマリス W53株の、72時間共培養後の抗CD3/抗CD28刺激PBMCによって産生されたIL-17に対する効果。未刺激PBMCおよび細菌株を添加しない刺激PBMCをコントロールとして用いた。刺激コントロールの値を100%とし、点線で示した。ドットは個々のドナーの値を表す。データは平均値±平均の標準誤差を表す。
【
図8】
図8:Lc.クレモリス W224株、L.ロイテリ W192株、L.ブレビス W63株およびB.アニマリス W53株が、24時間共培養後の活性化DCによって産生されるIL-23に及ぼす効果。未刺激DCおよびTH17カクテルで刺激したDCをコントロールとして用いた。デキサメタゾンをTh17阻害の陽性コントロールとして用いた。刺激コントロールの値を100%とし、点線で示した。ドットは個々のドナーの値を表す。データは平均値±平均の標準誤差を表す。
【
図9】
図9:TNF-αおよびIL-1βで24時間培養した後のサイトカイン誘発バリア機能障害に対するL.ブレビス W63およびB.アニマリス W53の効果。ストレッサーを添加しないコントロールの値を100%とした。点線は経上皮電気抵抗(TEER)を80%保護することを示し、逆三角形はサイトカイン誘発バリア障害から保護する能力を持つ株を示す。データは平均値±標準偏差を表す。
【0095】
上述したように、本発明は、一定のプロバイオティクス細菌種および菌株がIL-17およびIL-23レベルを低下させ、ならびに/またはIL-10レベルを上昇させ、および/または腸バリア機能を改善できることを示した本発明者らの研究に基づいている。乾癬などの乾燥および敏感肌の状態の対象は、IL-17およびIL-23のレベルが上昇し、マイクロバイオームが変化し、リーキーガットを有することが判明しているため、本発明者らは、プロバイオティクス細菌種が乾燥および敏感肌の状態の治療および予防に使用できるという仮説を立てた。本発明者らによって実施されたヒト消費者研究は、本発明によるプロバイオティクス細菌組成物で治療された対象が肌の健康状態の改善を見せることを示した。
【実施例】
【0096】
実施例1-ヒト消費者研究
乾癬、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、湿疹、ざ瘡、酒さおよび魚鱗癬などの乾燥および敏感肌の状態の被験者において本発明の組成物を使用する利点を確立するために、ヒト消費者研究が実施された。
【0097】
この研究には267人の被験者が参加した。被験者は男性または女性で、乾燥または敏感肌の状態(乾癬、湿疹、酒さ、ざ瘡など)を有する既往歴に基づいて選ばれた。抗生物質を服用している場合、または妊娠中、授乳中もしくは研究期間中に妊娠を計画している場合、または組成物の成分のいずれかにアレルギーもしくは不耐性のある被験者は除外された。
【0098】
被験者には、本発明の組成物が2ヶ月分提供された。研究で使用した組成物の製剤詳細を以下の表1に示す:
【0099】
【0100】
研究の前に、被験者はライフスタイルや肌の状態についていくつかの質問に記入し肌の写真を撮るよう求められた。研究は翌日開始された。サッシュ1袋(粉末3g含有)を少量のぬるま湯に加え、かき混ぜてから飲んだ。1日3g(1袋)の組成物を空腹時に摂取した。研究期間中、肌の健康状態に対する組成物の効果を評価するために、被験者は7日ごとに肌の健康状態についてコメントすること、および肌の写真をアップロードすることが求められた。
【0101】
被験者は、研究期間中7日ごとに、一般的な肌の健康状態、および以下の特定の肌の健康状態の結果についてコメントするよう求められた:かゆみ;過敏性;発赤;滑らかさ;柔らかさ;シミ;乾燥;かさかさおよびハリ。
【0102】
研究開始から56日後、被験者の65%が肌の健康状態の改善を報告した(
図1)。特に、75%はかゆみ減少と報告し、74%は過敏性低下と報告し、73%は発赤減少と報告し、62%は乾燥減少と報告し、そして64%はかさかさの斑点が少なくなったと報告した。このことは、例えば、乾癬、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、湿疹、魚鱗癬、ざ瘡、酒さまたはネザートン症候群などの乾燥および敏感肌の状態の治療における組成物の有効性を実証している。また、56日間のデータでは、かなりの割合の被験者が、より滑らかな肌(66%)、より柔らかい肌(63%)およびよりハリのある肌(48%)をより少ないシミ(59%)とともに報告し、組成物が美容的な肌の改善を促進するのに有効かもしれないことを示した。
【0103】
研究に参加した被験者のうち、177人が乾癬を有した。乾癬患者特有の肌の健康状態結果としては、肌の過敏性、肌のかゆみ、肌のかさかさおよび肌の発赤などが挙げられる。研究開始から56日後、91人の乾癬被験者が結果を報告した。乾癬被験者の72%が一般的な肌の健康状態の改善を報告した。乾癬特有の結果については、73%の乾癬被験者が肌の過敏性の改善を報告し、76%の乾癬被験者が肌のかゆみの改善を報告し、65%の乾癬被験者が肌のかさかさの改善を報告し、75%の乾癬被験者が肌の発赤の改善を報告した(
図2)。乾癬特有の結果(過敏性、かゆみ、かさかさおよび発赤)に加え、69%の乾癬被験者はより滑らかな肌を報告し、64%はより柔らかい肌を報告し、62%はシミが少ないことを報告し、49%はハリのある肌を報告した。
【0104】
乾癬の被験者における肌の健康状態の結果(かゆみ、過敏性、かさかさおよび発赤)を、研究開始後7日、14日、21日、28日および56日目に、改善なし、少し改善、かなり改善または非常に改善のいずれを経験したかを示した被験者で分析した(
図3)。興味深いことに、すべての肌の健康状態結果(かゆみ、過敏性、かさかさおよび発赤)に対して、かなり改善および非常に改善と報告した被験者は経時的に増加し、研究後56日目までに20から50%までの乾癬の被験者が、肌の健康状態の結果においてかなり改善および非常に改善を見せた。肌状態の改善は7日以内に見られ、改善は研究期間中継続した。
【0105】
被験者は肌の写真の提出も求められた。
図4は、乾癬の被験者から提出された写真を示す(A、B、C)。
図4に示されるように、被験者では乾癬性肌状態の改善が明らかであり、特に継続使用により、56日目までに最も改善が見られた。被験者からは書面でのフィードバックも提供された。被験者Bは、「肌は見た目が良くなっている。赤みも少なく、そんなに痛くはない。」そして42日目には、「うまく機能し、毎週良くなっている」とコメントした。被験者Cは、「肘の大きな斑点が消えた...また、膝の裏から太ももの上にかけての巨大な固い斑点も、かなり平らになった。」とコメントした。
【0106】
乾癬は心理的および社会的に大きな影響をもち、孤立を招き、不安やうつ病を引き起こす可能性がある。研究の一環として、被験者は様々なライフスタイルの結果、特に活動力レベル、睡眠および気分についてコメントを求められた。56日目に肌の健康状態(かゆみ、過敏性、発赤およびかさかさ)に良い変化があったと報告した乾癬の被験者のうち、大多数が活動的レベル、睡眠および気分における利点を経験した(
図5)。例えば、56日目に肌の過敏性が低下したと報告した73%の被験者のうち、64%はより活力を感じ、65%はより良く眠れ、67%は気分がより良くなった。また、かゆみ、発赤およびかさかさが減少したと報告した被験者にも、同様の幸福感の改善が見られた。
【0107】
これらのデータは、乾癬に罹患している被験者が、ビフィドバクテリウム・アニマリス、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ロイテリおよびラクトコッカス・ラクティス(ラクトコッカス・クレモリス)などのプロバイオティクス組成物の経口投与後、肌の健康状態とライフスタイルの結果(活動力レベル、睡眠および気分)の両方において顕著な改善を示したことを実証する。これらのデータは、本発明の組成物が乾癬などの乾燥および敏感肌の状態の治療に特に有効であることを実証する。
【0108】
研究の被験者のうち35人が湿疹に罹患していた。研究開始後56日目に、湿疹の被験者の64%が肌の健康状態の改善を報告した(
図6)。特に、71%がかゆみ減少を報告し、71%が過敏性低下を報告し、64%が発赤減少を報告し、57%が乾燥減少を報告し、さらに64%がかさかさの斑点の減少を報告した。さらに、湿疹の被験者の64%がより滑らかな肌を、64%がより柔らかい肌を、64%がより少ないシミを、さらに57%がよりハリのある肌を報告した。このデータは、本発明の組成物が、もう一つの乾燥および敏感肌の状態である湿疹の治療にも有効であることを示す。
【0109】
実施例2-in vitro試験
本発明者らは、様々なプロバイオティクス細菌種のin vitro試験を実施し、乾燥または敏感肌の状態の治療における使用の適合性を決定した。特に、本発明者らは、IL-17、IL-23およびIL-10レベル、ならびに腸バリア機能(腸上皮細胞におけるTEER測定)および炎症in vitroモデル(末梢血単核球によるサイトカイン放出)に対するこれらの細菌種の効果を調べた。
【0110】
驚いたことに、本発明者らは、一定の細菌種、例えばビフィドバクテリウム・アニマリス、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ロイテリおよびラクトコッカス・ラクティスが、IL-17およびIL-23レベルを低下させ、ならびに/またはIL-10レベルを上昇させ、ならびに/または腸バリア機能を改善するのに特に有効であることを見出し、それにより乾癬などの乾燥および/または敏感肌の状態の治療に対する適合性を実証した。
【0111】
活性化PBMCによって産生されるIL-17の阻害
乾癬の病因におけるIL-17の重要な役割が示唆されているので、IL-17を減少させることは治療上有益であると考えられている。IL-17とTh17リンパ球の主要な供給源。そこで、末梢血単核球(PBMC)を用いて、IL-17レベルに対するプロバイオティクス細菌種の効果を調べた。
【0112】
方法
PBMCは、リンパ球、単核球およびマクロファージなどの末梢血から単離された単核細胞である。PMBCを3人の異なるヒトドナーから単離し、Tリンパ球の活性化因子である抗CD3/抗CD-28モノクローナル抗体で刺激して炎症状態を刺激した。その後、PBMCを異なるプロバイオティクス株と共培養した。培地のみで培養したPBMCと、培地と刺激剤で培養したPBMCを、各ドナーのコントロールとして用いた。凍結乾燥したプロバイオティクス株は、PBMC培養に加える前に細胞培養液で再構成した。72時間後に培養上清を回収し、LuminexのマルチプレックスサイトカインアッセイでIL-17レベルを測定した。
【0113】
結果
図7に示す結果から、抗CD3/抗CD-28刺激は、未刺激コントロール(左側のバー)と比較して、3人すべてのドナーにおけるPBMCによるIL-17の分泌を増加させることが確認される(右側のバー)。細菌を刺激PBMCと共培養すると、プロバイオティクス株はIL-17の分泌を減少させた。最も顕著な効果は、Lc.クレモリス(L.ラクティス) W224およびL.ロイテリ W192で観察された。有益な効果は、L.ブレビス W63とB.アニマリス W53でも見られた。
【0114】
活性化DCによって産生されるIL-23の阻害
乾癬の免疫病因におけるIL-23/IL-17軸の中心的役割が提唱されている。活性化樹状細胞(DC)によって産生されるIL-23は、Th17リンパ球の生存と増殖の中心であるのでこれらの細胞によるIL-17産生を刺激する。IL-17などのサイトカインのこの増加は、乾癬性疾患につながる炎症カスケードをもたらす。よってIL-23を減少させることは乾癬患者にとって炎症を抑える治療的価値があると考えられている。したがって、DCによるin vitroでのIL-23産生に対するプロバイオティクス細菌株の効果を調べた。
【0115】
方法
3人の異なるヒトドナーからPBMCを単離した。その後、CD14+単核球を精製し、7日間かけてTh17 DCに分化させた。その後、DCを異なるプロバイオティクス株と共培養した。各ドナーのコントロールとして、未処理およびデキサメタゾン処理したDCを用いた。デキサメタゾンはTh17阻害の陽性コントロールとして用いた。凍結乾燥したプロバイオティクス株は、DC培養に加える前に細胞培養液で再構成した。プロバイオティクス株で6時間インキュベーションした後、TH17カクテルをDCに添加した。プロバイオティクス株と24時間共培養した後、上清を回収した。IL-23はLuminexによりデュプリケートで測定した。
【0116】
結果
図8に示す結果から、TH17カクテルは3つのすべてのDCドナーにおいて、非刺激コントロールと比較してIL-23分泌を誘導することが確認される。Th17阻害の陽性コントロールであるデキサメタゾンは、3つのすべてのドナーにおいてIL-23の分泌を確信的に阻害する(
図8)。細菌株と刺激されたDCとの共培養後、L.ロイテリ W192、L.ブレビス W63、B.アニマリス W53およびLc.クレモリス(L.ラクティス)W224はIL-23分泌を減少させた。L.ロイテリ W192およびL.ブレビス W63は、3つのすべてのドナーにおいて、刺激されたDCと比較してIL-23分泌を55%以下に減少させた。
【0117】
サイトカイン誘発バリア分解の阻害(TEER)
腸管バリアは、腸と人体の他の部分の間のコミュニケーションにおいて重要な役割を果たしている。腸上皮の完全性、ひいてはバリア機能の維持は、必要不可欠な生理学的プロセスにとって重要であり、透過性の亢進は、乾癬など様々な疾患の特徴である全身性の低悪性度炎症につながる循環血液中の細菌抗原レベルの上昇につながる可能性がある。したがって、本発明者らは、腸管上皮バリアのプロバイオティクス細菌種の効果を測定しようとした。経上皮電気抵抗(TEER)の測定は、上皮単層の細胞培養モデルにおけるタイトジャンクション動態の完全性を測定するための、広く受け入れられている定量的技術である。TEERの低下は、腸のバリア機能が損なわれていることを示す。
【0118】
方法
Caco-2細胞の単層をまずプロバイオティクス細菌株に2時間暴露し、その後同じプロバイオティクス細菌株の存在下で炎症性ストレッサー(TNF-αおよびIL-1β)に暴露した。24時間後、単層のTEERを測定した。その結果を、ストレッサーだけに暴露したCaco-2単層、およびストレッサーに暴露しなかったCaco-2単層のTEERと比較した。この最後のコントロールは100%とした(
図9参照)。各条件はデュプリケートで測定した。
【0119】
結果
図9に示すように、B.アニマリスW53とL.ブレビス W63は、サイトカイン誘発バリア機能障害から上皮細胞を保護する顕著な効果を示した。また、炎症性ストレス後のTEERを90%超えで維持することができ、腸のバリア機能に有益な効果を示した。
【0120】
実施例3-ヒト臨床研究
本発明の組成物をさらに開発するために、本発明者はイングランド北西部の皮膚科で行われるヒト臨床試験を計画した。
【0121】
被験者は18~70歳の男性または女性で、PASIスコアが3より高く、研究開始前の4週間に再燃のない安定した尋常性乾癬の既往歴に基づいて選択された。抗生物質を服用している場合、GI疾患を患っている場合、または特別な食事療法を受けている場合、過去3ヵ月以内に光線療法もしくは全身療法(メソトレキセートを除く)を受けた場合、試験前の2週間にプロバイオティクスおよび/もしくはプレバイオティクスを服用した場合、妊娠中、授乳中、もしくは試験期間中に妊娠を計画している場合、または組成物の成分のいずれかにアレルギーもしくは不耐性のある被験者は除外された。
【0122】
試験製品は、被験者および臨床チームに対して盲検化される。各被験者は、合計6ヵ月間、試験製品を毎日服用することが求められる。試験には2つのアームがあり、それぞれ軽度から中等度の乾癬のボランティア50名(プラセボ25名、発明組成物25名)を募集する。アーム1:現在メソトレキセートが処方されている乾癬患者、およびアーム2:治療歴がなく薬剤が処方されていない乾癬患者。各被験者は、第1週、第6週、第12週、第26週に評価を受けるためにセンターを訪れる。各訪問時に肌、血液および便のサンプルを採取してマイクロバイオーム解析を行い、バイオマーカー(IL1β、IL17、IL23およびTNF-α)と疾患の重症度評価を行う。被験者は毎週質問票を記入する。
【0123】
結果は研究終了時に評価される。
【0124】
添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲から逸脱することなく、上記の方法に対する多数の改変がなされ得ることが理解されよう。 例えば、組成物の粉末形態が例示されているが、組成物は任意の適切な形態、例えば液体、溶液、懸濁液、シロップ、錠剤、顆粒またはカプセルであってもよいことが理解されるであろう。さらに、実施例では、ビフィドバクテリウム・アニマリス、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ロイテリおよびラクトコッカス・ラクティス(ラクトコッカス・クレモリス)を含む組成物に焦点を当てているが、他の適切なプロバイオティクス細菌を本発明の組成物に含めることもできる。
【国際調査報告】