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  • 特表-低摩擦コーティング 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-15
(54)【発明の名称】低摩擦コーティング
(51)【国際特許分類】
   C23C 24/08 20060101AFI20240207BHJP
【FI】
C23C24/08 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549986
(86)(22)【出願日】2022-02-10
(85)【翻訳文提出日】2023-10-02
(86)【国際出願番号】 US2022015911
(87)【国際公開番号】W WO2022177798
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】63/150,278
(32)【優先日】2021-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515333499
【氏名又は名称】ジョン クレーン インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】518132226
【氏名又は名称】ユーシカゴ アーゴン,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100202326
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 大佑
(72)【発明者】
【氏名】アニルッダ ヴィー スマント
(72)【発明者】
【氏名】カルヤン シー ムティアラ
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ パチェコ
(72)【発明者】
【氏名】クラウス メック
【テーマコード(参考)】
4K044
【Fターム(参考)】
4K044AA02
4K044AB04
4K044BA18
4K044BA19
4K044BA21
4K044BB01
4K044BB11
4K044BC01
4K044CA24
4K044CA27
4K044CA53
(57)【要約】
シャフトを含む回転機械に使用するためのドライガスシールアセンブリであって、シールアセンブリは、シール面が二硫化モリブデン、酸化グラフェンおよび、随意的にポリドーパミンを含む固体コーティングを担持し、好ましくは、酸化グラフェン対二硫化モリブデンの比が8:10~10:8である。ドライガスシールアセンブリの製造方法は、酸化グラフェンおよび二硫化モリブデンの均質な分散液をシール面にコーティングするステップを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低摩擦、耐摩耗のシールアセンブリを形成する方法であって、
シール面基板を含むシールアセンブリ構成要素を準備するステップと、
キャリア液に二硫化モリブデンを懸濁して混合液を形成するステップと、
前記混合液に酸化グラフェンを添加する、好ましくは酸化グラフェン対二硫化モリブデンの重量比が8:10~10:8となるように添加するステップと、
二硫化モリブデン、酸化グラフェン、及び随意的にポリドーパミンの均質な混合液を形成するステップと、
前記均質な混合液を前記シール面基板の一部上または全体上に堆積するステップと、前記シール面基板上にウェットフィルムを形成するステップと、並びに
前記キャリア液を蒸発させてドライコーティング層を形成するステップと、
を備える、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、さらに、前記混合液にポリドーパミンを添加するステップであり、1ml混合液あたりのポリドーパミンmg量が、好ましくは0.01~0.2、より好ましくは0.02~0.1mgである、該添加ステップを備える、方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、前記シールアセンブリ構成要素を準備するステップは、整合リングシール面を有する整合リングおよびプライマリリングシール面を有するプライマリリングを準備するステップを含み、前記シール面基板上に堆積するステップは、前記整合リングシール面および前記プライマリリングシール面の少なくとも一方に堆積するステップと、及び前記ドライコーティング層を形成した後、前記整合リングをハウジング内に配設するステップとを含む、方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法において、前記キャリア液は、水、アルコールまたはその両方を含む、方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法において、前記均質混合液はオイルフリーである、方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法において、堆積ステップは、スプレーコーティングステップを含む、方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法において、前記シール面基板は炭化ケイ素を含む、方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法において、前記均質混合液を散布
するステップは、20℃~100℃の間の温度にして炭化ケイ素基板上で行う、方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法において、前記懸濁した二硫化モリブデンは300~500nmの寸法を有するフレークである、方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法において、前記懸濁した酸化グラフェンは、好ましくは1~5ミクロンの寸法を有する酸化グラフェンフレークを含む、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、前記懸濁した二硫化モリブデンフレーズは、前記酸化グラフェンフレークよりも小さい、方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法において、前記均質な混合液を散布する前の前記基板は、ISO4288―1996に沿って測定される表面粗さRaとして、0.05~0.4のRaを有する、方法。
【請求項13】
回転シャフトを含む回転機械に使用するドライガスシールアセンブリであって、該シールアセンブリは、
整合リングシール面を有する整合リングと、
プライマリリングシール面を有するプライマリリングであり、前記整合リングシール面及び前記プライマリリングシール面が互いに隣接かつ対向するように、前記整合リングおよび前記プライマリリングが位置決めされている、該プライマリリングと、
前記プライマリリングシール面を前記整合リングシール面に向けて押圧する第1付勢部材と、
を備え、
前記整合リングシール面および前記プライマリリングシール面のうち少なくとも一方は、その上に形成された凹部を含み、該凹部によって、前記プライマリリングと前記整合リングとの間の相対回転で、前記整合リングと前記プライマリリングとの間にガスを引き込ませ、前記プライマリリングを前記整合リングから遠ざける押圧を行うように前記整合リングと前記プライマリリングとの間にガス層を形成し、
前記整合リングシール面および前記プライマリリングシール面の少なくとも一方は、二硫化モリブデン、酸化グラフェン、および随意的なポリドーパミンを含む固体コーティングを担持し、好ましくは、酸化グラフェン対二硫化モリブデンの比が8:10~10:8である、
ドライガスシールアセンブリ。
【請求項14】
請求項13に記載のドライガスシールアセンブリにおいて、前記整合リング、前記プライマリリングおよび前記付勢部材はハウジング内に配設される、ドライガスシールアセンブリ。
【請求項15】
請求項13または14に記載のドライガスシールアセンブリにおいて、前記凹部が、前記プライマリリングの内径から前記プライマリリングの外径に向かってガスを引き込む、または、前記プライマリリングの外径から前記プライマリリングの内径に向かってガスを引き込む、ドライガスシールアセンブリ。
【請求項16】
請求項13~14のいずれか一項に記載のドライガスシールアセンブリにおいて、前記コーティングを担持する前記シール面は、ISO4288―1996に沿って測定される表面粗さRaとして、0.05~0.4、好ましくは0.1~0.25のRaを有する、ドライガスシールアセンブリ。
【請求項17】
請求項13~16のいずれか一項に記載のシールアセンブリの使用方法であって、以下の作動条件、すなわち、
-50℃~200℃の範囲の作動温度、
-40℃以下の露点を有するドライ窒素、
の一つ以上を含む作動条件で使用する、使用方法。
【請求項18】
低摩擦摩耗面を形成する方法であって、
ナノダイヤモンドとMoSおよびh-BNよりなる群から選択される2D材料とを含む溶液を基板上に散布して第1摺動構成要素を形成するステップと、
前記第1摺動構成要素を、摺動面にダイヤモンド・ライク・カーボンを有する第2摺動構成要素に対して摺動させるステップと、
前記ナノダイヤモンド周りに前記材料のスクロールを形成するステップと、及び
前記スクロール形成したナノダイヤモンドをナノオニオンに変換するステップと、
を備える、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[政府利益についての声明]
本発明は、米国エネルギー省からアルゴンヌ国立研究所を運営するユーシカゴ アーゴン、リミティド ライアビリティ カンパニーへ授与された、助成金番号DE―AC02―06CH11357の下、政府支援を受けて行われた。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0002】
[関連出願への相互参照]
この出願は2021年2月17日出願の米国仮出願第63/150278号に対する優先権を主張し、その内容は参照によってそれらの全体において組み込む。
本発明は低摩擦コーティングに関する。
【背景技術】
【0003】
可動式機械アセンブリ(「MMA」)の設計、製造、および運転では、工学的なスケールで高い潤滑性(非常に低い摩擦係数)を低減および/または達成することがしばしば目的とされる。MMAには、ボールベアリング、表面上のディスク、回転シャフトの相互作用など、様々なモーションスキームがある。低摩擦領域は、エネルギー、環境、およびコストにおいて高水準の節約を提供するため、多くのこれらの用途において魅力的である。摩擦係数(COF)が0.01以上から0.1までは低摩擦、またそれ以上では高摩擦と見なされる。一般的に、0.01以下のCOFは超低摩擦とみなされ、したがって、超潤滑領域に入る。このようなレベルの摩擦係数は、表面が空気力学的若しくは流体力学的に分離される、または、固体対固体の接触がほとんど若しくは全くない磁気的に浮揚されている、典型的な表面である。金属同士の直接接触が支配的で高い接触圧力が存在する摺動領域では、摺動面で同時に、そしてしばしば、非常に複雑な物理的、化学的、そして機械的相互作用が起きているため、低摩擦を実現することは困難である。
【0004】
さらに、低摩擦を必要とする、あるいは低摩擦の恩恵を受けるいくつかの用途には、低摩擦にとって理想的でない環境もある。例えば、ポンプ、タービン、遠心コンプレッサーに使用されるドライ(乾性)ガスシールまたは非接触型シールなどの機械式シャフトシールは、製紙、パルプそして化学から石油、石油探査、発電プラントまで、多くの産業で使用されているきわめて重要な構成要素である。これらのシャフトシールは、回転機器から製品が漏れ出ることを防ぐ。このようなポンプおよびコンプレッサーでは、摩擦および摩耗に関連した機械的故障が依然として最大の課題の一つであり、そのため、このような故障を減らすことができる新しい材料、コーティング、および潤滑材の探求が世界中で続けられている。ドライガスシールは、少なくとも一方が他方に対して回転可能な2つのリングの間にシールを設けることで作動する。一般に、一方のリング(シールリングまたはプライマリリングと称される)は、圧縮ばねまたはベローズによって軸線方向に移動可能であり、また軸線方向に対して固定されている他方のリング、整合リング(mating ring)、と対面接触するように付勢される。構成によっては、シールリングまたは整合リングの一方が回転機械の回転シャフト/ローターに整合し、それとともに回転する。回転リング(整合リング)は、シャフトスリーブを介してローターに整合させることができる。
【0005】
作動中、2つのリング間にシールを形成するガス層が形成され、リングが互いに接触することなく相対的に動くことを可能にする。ガス層は、ドライガスシールに注入されるプロセスガスまたはシールガスから形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらのシステムは、シール機能の一部として作用する要素間のガス層を形成するために、構成要素の動きに依存することができる。しかし、使用中、特に低い回転速度では、固体構成要素(例えばリング)が互いに接触することがある。したがって、対面する可動構成要素に耐久性があり、かつ、摩擦の少ないコーティングを施すことが望ましい。既存の技術の中には、固体潤滑材としてダイヤモンド・ライク・カーボン(「DLC」)コーティングに依存しているものもある。特に、炭化ケイ素(「SiC」)は高圧(>10MPa)ドライガスシール用途の主要材料である。これらのシールは、石油およびガスの掘削などの用途で標準的なものだが、SiC―SiC表面間の摩擦が高熱および高圧力を発生させ、それが、ダウンタイムにつながる摩耗を引き起こすおそれがある。この摩耗を減らす標準的な方法には、これらの表面にDLCまたはカーボン由来のコーティングを施すことが含まれる。これらのコーティングの成膜には、時間および資本がかかりうる。速度、温度、および作動条件の範囲は、これらの表面をシールするためのさらなる課題を生ずる。しかし、このような潤滑システムには、DLCコーティングが必要であることおよび、それぞれの回転リング(整合リング)および/またはプライマリリングの一方または両方に結合したままとなる潤滑システムの故障、を含む課題が存在する。従って、容易に塗布でき、良好な潤滑性を提供し、さらに/または、長期間の潤滑性を提供するドライガスシール用の潤滑材系に対する必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示されるのは、低摩擦で耐摩耗性のシールアセンブリを形成するのに有用な方法である。本方法は、シール面基板を含むシールアセンブリ構成要素を準備するステップと、二硫化モリブデンをキャリア液に懸濁して混合物を形成するステップと、前記混合液に酸化グラフェンを、好ましくは酸化グラフェン対二硫化モリブデンの重量比が8:10~10:8となるよう添加するステップと、随意的にポリドーパミンを混合物に添加するステップと(例えば、1ml混合物あたりのポリドーパミンのmg濃度が0.01~0.2または0.02~0.1mg、好ましくは0.02mg/ml~0.09mg/ml)、二硫化モリブデン、酸化グラフェンおよび随意的なポリドーパミンの均質な混合物を形成するステップと(例えば超音波処理による)、および均質な混合物を基板上に散布するステップと、を備える。均質な混合液は、エアスプレーコーティングのプロセスを介して炭化ケイ素基板上に均質混合液をスプレーし、基板上に湿潤膜を形成し、またキャリア液を蒸発させてドライコーティング層を形成することによって、散布することができる。
【0008】
また、本明細書では、回転シャフトを含む回転機械に使用するシールアセンブリも開示されている。シールアセンブリは、非接触シールまたはドライガスシールとすることができる。シールアセンブリは基板および、炭化ケイ素基板上の耐摩耗性表面コーティングからなり、耐摩耗性表面コーティングは、二硫化モリブデン、酸化グラフェンおよび随意的にポリドーパミンからなり、酸化グラフェン対二硫化モリブデンの重量比は8:10~10:8が好ましい。例えば、ドライシールアセンブリは、整合リングシール面を有する整合リングと、プライマリリングシール面を有するプライマリリングであり、整合リングシール面及びプライマリリングシール面が互いに隣接かつ対向するように、前記整合リングおよび前記プライマリリングが位置決めされている、該プライマリリングと、前記プライマリリングシール面を前記整合リングシール面に向けて押圧する第1付勢部材と、を備え、整合リングシール及びプライマリリングシール面の少なくとも一方は、その上に形成された凹部を含み、該凹部によって、プライマリリングと整合リングの間の相対回転で、整合リングとプライマリリングとの間にガスを引き込ませ、プライマリリングを整合リングから遠ざける押圧を行うように前記整合リングと前記プライマリリングとの間にガス層を形成し、整合リングシール面及びプライマリリングシール面の少なくとも一方は、二硫化モリブデン、酸化グラフェン、および随意的なポリドーパミンを含む固体コーティングを担持し、好ましくは、酸化グラフェン対二硫化モリブデンの比が8:10~10:8である。
【0009】
本明細書においてさらに開示されるのは低摩擦摩耗面を形成する方法であり、本方法は、ナノダイヤモンドと、MoSおよびh-BNからなる群から選択される2D材料とを含む溶液を基板上に散布して第1の摺動部材を形成するステップと、第1の摺動部材を摺動面上にダイヤモンド・ライク・カーボンを有する第2の摺動構成要素に対して摺動させるステップと、ナノダイヤモンド周りに材料のスクロールを形成するステップと、及びスクロール形成したナノダイヤモンドをナノオニオンに変換するステップと、を備える。
【0010】
前述の概念および、以下でさらに詳細に説明される追加概念のすべての組み合わせ(そのような概念が相互に矛盾しないことを条件とする)が、本明細書に開示される発明的主題の一部であると意図されていることを理解されたい。特に、本開示の末尾に記載される特許請求される主題のすべての組み合わせは、本明細書に開示される発明的主題の一部であると意図されている。また、本明細書で明示的に使用される用語は、参照により組み込まれる任意の開示にも表れる可能性があるが、本明細書で開示される特定の概念と最も一致する意味が与えられるべきであることも理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
当業者であれば、図面は主として説明のためのものであり、本明細書に記載される発明的主題の範囲を限定することを意図するものではないことを理解するであろう。図面は必ずしも縮尺通りではなく、場合によっては、異なる特徴の理解を促すために、本明細書に開示される発明的主題の様々な態様が図面において誇張または拡大されて示されることがある。
図1A】二硫化モリブデン(「MoS」)およびナノダイヤモンド(「ND」)を含む低摩擦摩耗表面を形成するための方法の一例の概略フロー図である。
図1B】二硫化モリブデン(「MoS」)および酸化グラフェン(「GO」)を含む低摩擦摩耗表面を形成するための方法の一例の概略フロー図である。
図2】ドライガスシールのシールアセンブリの一例の一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の低摩擦性および低摩耗性グラフェン含有表面に関連する様々な概念およびその実施形態について、より詳細に説明する。開示された概念はどの特定の実施形態にも限定されないため、上記で紹介され、以下でさらに詳細に説明される様々な概念は、多くの方法のいずれかで実施されうることが理解されるべきである。具体的な実施例および応用例は、主として説明のために提供されている。
【0013】
超潤滑性は、摩擦が消失するまたはほぼ消失する運動領域、例えばCOFが0.01以下、として定義される。超潤滑摩擦は、低摩擦で耐摩耗性のある表面を、ボールオンディスク方式による摩耗試験で、一方向に滑らすことで測定する。本明細書で説明するコーティングされた基板は、超潤滑性に近づけられる(潜在的に達成できる)、極めて低い摩擦係数を達成することができる。
【0014】
一般的に言うと、本明細書で説明されている様々な態様は、2D(二次元材)料のコーティングを有する基板からなる、低摩擦または超低摩擦の耐摩耗性表面を含む。本明細書で使われている2D(二次元)とは、単層、二層または三層の原子層を有する結晶性材料を意味し、好ましくは単層の原子層である。2D材料は、二硫化モリブデンおよび酸化グラフェン(MoSGO)を含むことができる。二硫化モリブデンは非常に薄いフレークのような粒子になりうる。例えば、二硫化モリブデンは、例えば剥離によって製造されることで単層または数層となりうる。酸化グラフェンはフレーク状でもよく、好ましくは単層フレークでもよい。MoSGOは基板の固体潤滑材として利用できる。基板は炭化ケイ素(SiC)であっても良い。あるいは、基板は二硫化モリブデンとナノダイヤモンドの組み合わせ(MoSND)で構成してもよい。結果として得られた表面は、高温(例えば100℃)および高荷重下(例えば200MPa以上から最大1GPaまでの接触圧力)で、非常に低い摩擦係数を示すことができる。
【0015】
[MoSND]
コーティングが、回転基板、時に炭化ケイ素(SiC)基板の潤滑材としてナノダイヤモンドを有するMoSから構成される場合、摺動界面として潤滑材の基板に対する相互作用中にカーボンナノオニオンが形成されうる。溶液処理された材料(MoS)は、化学的および/または機械的剥離またはそれに類するものによって調整され、次いで、アルコール(例えばエタノール)によって懸濁されうる。直径3~50nmのダイヤモンド粒子(すなわちナノダイヤモンド)を、溶液1Lあたりナノダイヤモンド50~1000mgの割合で溶液に入れる。得られた溶液は、アルコール中で材料とナノダイヤモンドとがよく分散するように、ソニケーターバスなどで、20~30分間超音波処理するのがよい。その後、ナノダイヤモンド及びMoSの溶液は超音波処理によって混合し、スプレーまたはドロップキャストすることで、SiC材料に塗布する。
【0016】
実験では、MoSNDの存在下では、DLCと対になったSiCの場合、3600メートルの摺動(120分間)でさえ、超低定常摩擦および低摩耗が達成された。一方で、DLC/DLCとMoSNDとの組み合わせの場合は、摩擦および摩耗は一様であり、ディスクの摩耗深さは3分の1に減少した。我々はガスシール用途に最適な、高荷重かつ高速条件下で、マイクロスケールで試験を実施した。さらに、固体潤滑材の初期評価に続いて、潤滑材のトルクを低減する能力を試験したところ、ドライ窒素雰囲気下で80%の低減が確認され、摩耗も50%低減した。さらに、この固体潤滑材は、大気条件下でも作動することができ、85%のトルク低減という結果をもたらした。例えば、DLCコーティングを施したSiCとコーティングを施していないSiCとのCOFは、約45分後に著しいコーティング摩耗を示し、摩擦係数が初期レベルの約0.014から0.4、そしてさらには0.5以上に増加する結果となった。対照的に、DLCコーティングを施したSiCとMoSNDコーティングを施したSiC基板とのCOFは、試験期間中約0.013~0.014で安定していた。MoSNDコーティングを施したボール摩耗は、コーティングを施さない場合に比べて3桁も少なかった。
【0017】
摩擦プロットは、MoSNDが直ちに作用し、超低定常摩擦が維持されることを示唆している。MoSNDなしのベースライン試験では、ディスク上にコーティング摩耗が観察され、大きな摩擦係数と共に大きな摩耗が認められる。ラマン分光および顕微鏡画像の分析から、MoSNDは、低摩擦および低摩耗をもたらすとともにSiC/DLC系の完全性を維持するのに役立っていることが確認される。
【0018】
DLC/DLC材料ペアは、MoSND固体潤滑材によって試験され、ドロップキャスティング(「DPC」)およびスプレーコーティング(「SPC」)の2つの異なる方法を用いて成膜された。摩擦および摩耗の結果は、ボール上に定常摩擦および摩耗を示した。さらに、ディスク摩耗は3倍または66%減少した。
【0019】
MoSND固体潤滑材でコーティングされたDLC/DLC材料ペアは、その性能を理解するためにディスクオンディスク構成で試験され、トルクおよび摩耗の低減が乾燥窒素および大気条件下で驚異的であることが観察された。MoSNDは、乾燥窒素中では80%、大気中では85%のトルク低減という、良い結果をもたらした。しかし、合計8時間の試験のうち、コーティングが持続したのは4時間で、これはコーティングの接着に関する問題を示している。
【0020】
[MoSGO]
コーティングはMoSGOでもよい。本明細書に開示されるようなプロセスは、例えば二硫化モリブデン(MoS)および酸化グラフェン(GO)などの構成材料の均質な懸濁液または分散液をキャリア液中に形成することを含んでも良い。キャリア液は、水または、アルコール(メタノール、エタノールなど)のような極性溶媒でもよい。MoS及びGOは、(1±0.25):(1±0.25)の間の重量比の範囲(例えば、10:10を含む8:10~10:8)で均質な懸濁液を形成することができる。均質な懸濁液は、基板の一面に又は上に散布することができる。基板は常温(約20~22℃)でもよいし、常温~100℃でもよい。200℃以上の高温は必要ない。
【0021】
懸濁液処理は基板の温度で起きうる。水は、MoSおよびGOの均質な懸濁液を基板上に堆積させるためのキャリア液または媒体となりうる。固体ナノマテリアルを含む完全な球状の水滴が加熱された表面に衝突すると、キャビテーションのような、小規模ながら高エネルギーの爆発によって、瞬時に蒸発すると考えられている。これにより、液体が蒸発する際に、全ての固体材料全体が固体基板上に移動する。小さな水滴系に含まれるこの高い活性エネルギーが、固体粒子を強制的に結合させる。蒸着は例えば、懸濁液を基板上にスプレーすることで行うことができる。
【0022】
2つの相(MoSおよびGO)は、均質懸濁液の中で等しいまたはほぼ等しい割合で存在しうるので、それらが結合することを望まなくとも、最終的には、MoS層が酸化グラフェンに内包されるか、または、少なくとも部分的に内包される層構造を形成しうると考えられる。具体的には、温度範囲の下限点に関しては、キャリア液の沸点(この場合は100℃)、存在する固相の量(2g/Lなど)、および液滴の大きさが、これが発生する最低温度に影響すると考えられる。とりわけ、水滴中の固相は不純物として作用し、さらに、衝突噴流がライデンフロス効果を効果的に除去する。このプロセスは、乾燥、不活性、または窒素環境が必要な先行技術とは逆に、大気圧および気温、すなわち(大気中の)酸素にさらされ約20~22℃の温度で実施することができる。均質な溶液を基板上に散布するステップは、スプレーキャストまたは溶液処理法などの任意の適切なプロセスで達成することができる。
【0023】
図1bは、MoSおよびGOを含む低摩擦摩耗表面を形成するための一例の方法の概略フロー図である。この方法では、MoSを容器(例えばバイアル)に加えることができる。MoSは超微細なナノ結晶性フレークでもよい。MoSフレークの平均サイズ(例えば、長さ、幅、直径)は、例えば、300~500nmとするのがよく、GOフレークのサイズと同程度もしくはそれよりも小さくすべきである。例えば、分散液はキャリア液(例えば、水)1Lあたり、少なくとも1gのMoS超微細ナノ結晶性フレーク(例えば、1~15g/L)を有することができる。MoS粉末は、事実上ナノ結晶であればよく、フレークまたは単層フレーク(すなわち、2D)でなくてもよい。作動中の摺動プロセスの間に、MoSの剥離がおこり、MoSの2D(二次元)層が形成すると考えられる。
【0024】
次に、GO懸濁液を容器に加えることができる。GO溶液は、潤滑材を形成するために1~15g/Lの濃度を有することができる。酸化グラフェンのキャリアは、水または低級アルコールなどの極性溶媒でもよい。GO溶液は、グラファイトを剥離し、得られた酸化グラフェンフレークを液体中に投入することで得ることができる。酸化グラフェンは、グラフェンの場合は高配向性熱分解グラファイトの化学的剥離など、任意の適切な化学的または機械的剥離プロセスによって剥離することで調製することができる。キャリアは、水またはオイルフリー溶媒を含む水溶液としてもよい。いくつかの実施形態では、GOは水に懸濁される。オイルフリー溶液はより環境にやさしく、オイルに関連する危険性がなく、使用後に取り除くことが容易である。いくつかの実施形態では、コーティングは、コーティングされた基板を脱イオン化した水に浸し、3分間超音波処理をすることによって、または、圧力ジェット洗浄によって瞬時に、容易に除去することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1gのGO/L分散液、好ましくは5~10g/Lの分散液を作るために、GOはキャリア液に懸濁される。GOフレークの平均サイズ(例えば、長さ、幅、直径)は、1~5ミクロンとなりうる。個々のGOフレークの厚さは1nm以下となりうる。
【0025】
GOおよびMoSによって超低摩擦が実現できる。超低摩擦は、カプセル化したヘテロ構造の形成によって促進され、荷重が増加するにつれて層状の2D材料の全多的なせん断強度が低下すると考えられている。MoSとGOの非整合ヘテロ構造は、摺動時にせん断強度を低下させる。MoSのせん断強度は荷重が増加するにつれて低下する。MoS単独では、周囲の大気条件下で試験した場合、100℃で0.04程度の摩擦を生じさせることができる。ヘア氏及びブリス氏の非特許文献(The Effects of Environmental Water and Oxygen on the Temperature-Dependent Friction of Sputtered Molybdenum Disulfide,” Tribology Letters 52(3), pp. 485-493 (2013) )を参照。しかし、100℃を超える高温では、MoO化合物が形成されたことからもわかるように、酸素および水からMoS膜への急なインターカレーションによって潤滑特性が悪化した。GOを添加することが、このような有害な影響を防ぎ、MoSの寿命をより長期間に延長させることが発見されている。MoSは荷重および摺動速度の増加に伴い、基底面を徐々に再配向することが観察されている。このような形態変化は、MoSを酸素および水蒸気から保護できる、保護的な酸化グラフェンによって可能となっている。このような保護がなければ、一部のMoSは、摩擦または摩耗を減らすのに必要なMoSの再配向を阻害する、MoSに最終的に変化する可能性がある。
【0026】
低摩擦摩耗表面を形成する方法は、均質な懸濁液を作るためにMoSとGOとキャリアの混合液とを超音波処理するステップを備える。この混合液は、液体懸濁液中に固体を形成するための、水中に懸濁している固体酸化グラフェンシートまたはフレークを含む。固体MoSは、懸濁液内でファンデルワールス力を介して固体GOシートが相互作用できると考えられる。この相互作用は、飽和/過飽和溶液からのMoS/GOの核生成によって進行するのではなく、それよりも、キャリア液の蒸発および基板上への固体材料の堆積によって進行する。前述したように、水滴が表面に衝突する際のキャビテーション型爆発によって、堆積および瞬時のコーティング形成が促進されうる。超音波処理は、試料中の粒子を攪拌するための音エネルギーを印加できる任意の装置で行うことができ、例えば、超音波浴または超音波プローブなどがあげられるが、これらに限定されない。一実施形態では、薄層が「ソニクシング(sonixing)」という超音波処理によって混合される。物理的な攪拌では、材料が均質に混合するための十分な攪拌が供給できないと考えられている。しかし、ソニクシングは全く母相の物質的変化を示さなかった。例えば、MoSおよびGOのd間隔は、超音波処理後も同じままであった。
【0027】
MoSおよびGOは、基板上に懸濁液(水などの溶媒を含む)をスプレーすることによるエアスプレーコーティング、および、その後溶媒を蒸発させるプロセス介して表面に導入することができる。一実施形態では、ミストを生成する任意の技術を使用して、コーティングを塗布することができる。ミスト液滴は、懸濁液中の2つの成分を含んでいなければならない。あるいは、キャリア液が固体材料およびキャリア液を供給するために使用されるが、化学反応は必要とされない、任意の物理的堆積技術は、MoSを物理的に変更/変化/損傷させることなく蒸発させることができ、GOを使用することができる。このような堆積は、オイルに懸濁させたグラフェンのように溶液中に留まるもの、または、化学的に塗布されるものとは異なる。例えば、溶液中のそのような物質は、明らかに溶液中にあり、基板表面に結合していない(例えば浮遊粒子を含む流動性のあるオイル)。対照的に、噴霧によって堆積された固体材料は溶液中ではなく、むしろそのような材料は、基板に材料を付着させるためにファンデルワールス力によって制御される。さらに、このような材料と、化学蒸着、原子層堆積などによって基板表面に固体として形成された材料との間には、構造上の違いもある。このような場合、材料は単にファンデルワールス力によって保持されるのではなく、基板と反応(共有結合)したり、化学吸着したりする。厚みは、サンプルのミスト曝露時間を変化させることで制御される。圧力/流速もまた、表面に衝突する固体含有液体キャリアの量を変えるのに効果的に使用することができる。
【0028】
懸濁液は機能化材を含んでもよい。機能化材は、コーティングの密着性および耐久性を向上させる機能を果たしうる。このような接着性向上機能化材の例は、ポリドーパミン(PDA)である。例えば、接着性向上機能化材(例えばPDA)は、0.01若しくは0.02から0.2または0.1または0.99mg/mlまでの濃度(例えば、溶液処理の前に、エタノールなどのキャリア液中で0.022mg/ml)で懸濁液に加えることができる。一実施形態では、MoSGOの最終濃度がおおよそ1.021mg/ml(1mg/ml±10%など)となるように、0.042mg/ml濃度のPDAがMoSGO固体潤滑材の分散液に加えられた。この種の機能化材はナノ粒子と基板表面との間で結合剤として働いていると考えられる。一実施形態では、このプロセスはポリマー溶液を形成することを含む。他の機能化材も潤滑性を高めうる。そのような代替機能化材の例は、ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)、および/または、ポリエーテルエーテルケトン(「PEEK」)である。一つ以上の機能化材を組み合わせて使用することもできる。
【0029】
高潤滑性(低摩擦係数)特性を生成する(そして使用時間にわたって維持する)のに有効なコーティングの厚さは、当業者であれば理解できるように、使用方法による。例えば、より低い試験荷重では高潤滑性領域により簡単に移行するため、より薄いコーティングで十分であり、一方、より高い荷重かつより長い摺動距離では、より厚いコーティングが必要となりうる。単一のコーティング層を使用することもできる。あるいは、最初の層が完全に乾燥し、基板にしっかりと付着した後に、後続のコーティングを施すこともできる。コーティングの厚さは0.5~2.5ミクロンとすることができる。また、接着性促進機能化材(例えばPDA)を使用することは、基板(例えばSiC表面)へのコーティングの接着性を向上させるのに、最初の層で有用である。後続の層は接着性促進機能化材なしでMoSGOを構成することができる。あるいは、接着性促進機能化材を各層に使用することもできる。
【0030】
いくつかの実施形態では、低摩擦摩耗表面を形成する方法は、溶媒成分を蒸発させることとGO内のMoSフレークをカプセル化または部分的にカプセル化することを一つのステップ(すなわち、蒸発とそれに伴うカプセル化の同時進行によって)に含める。MoSフレークをカプセル化または部分的にカプセル化すると、MoSフレークの有効使用温度範囲を約250℃まで高めることなどで、フレークが周囲の酸素および水分から不動態化または保護されるため、低摩擦摩耗の寿命および潤滑性が大幅に向上する。MoSフレークは、酸化グラフェンで完全にカプセル化または被覆することできるし、酸化グラフェンで部分的にカプセル化または被覆することもできる。MoSの密度を高くすることで、低密度の酸化グラフェンと実質的に同重量で完全なカプセル化が可能となる。これは、選択した二つの相の組成(wt%)によって保証される。また、このコーティングプロセスは大きな表面にも使用できる。このコーティングプロセスは、平坦でない表面、例えば、模様のある、テクスチャのある、湾曲している、凹部または突起のある表面などにも使用することができる。このような大規模な用途では、溶液中のグラフェンで広範囲を覆うために、走査型スプレーノズルを利用し、その後、溶媒を蒸発させることができる。
【0031】
基板の表面は、表面粗さを有しうる。例えば、表面粗さRaは、例えば、Taylor-Hobson(登録商標) Talysurf i 120のような、市販の粗面計を使用してISO 4288-1996に沿って測定したとき、最低でも0.1であるのがよい。表面粗さは、0.05~0.4または、0.05~0.25または、0.1~0.4または、0.1~0.25または、0.2~0.4であるのがよい。表面粗さは、コーティングの表面への接着を促進することができる。表面粗さが高すぎると、経時的に性能および耐久性が低下する可能性がある。極めて平滑な基板の場合、蒸着技術に適用できるよう、表面を処理することができる。そのような処理の例は、オゾン処理、基板(例えば炭化ケイ素)と初期層との結合を作る結合剤のドーピング、および、より高い基板温度(最高400℃)が含まれるが、これらに限定されない。
【0032】
基板は、炭化ケイ素(SiC)、炭化タングステン、窒化ホウ素、または窒化ケイ素を含むことができる。基板(例えばSiC)はガスシールの一部であってもよい。実験的試験では、得られたMoSGO材料は、高荷重および高速のピンオンディスク(「PoD」)試験において、自己整合の非コーティングSiC(SiC対SiC)そしてまたMoSGO存在下でのDLC対SiCの場合、超低定常摩擦および低摩耗を達成した。一実施形態では、蒸着したMoSGOは、MoSGOの対向摩耗面と共に使用され、他の実施形態では、対向摩耗面はDLCである。
【0033】
例えば、酸化グラフェン付きMoS(「MoSGO」)のコーティングを有する炭化シリコンディスク基板を、ダイヤモンドライクコーティング(DLC)を施したSiCボールに対して、ガスシール用途と一致する力および速度で120分間摺動した場合の摩擦係数(COF)および摩耗を測定する実験。MoSおよびGOの二つの懸濁液を水およびエタノール内で調製し、炭化ケイ素基板上にコーティングした。COFは、コーティングした基板では0.019~0.02であったのに対し、コーティングしていない基板では0.715となり、これは、DLCコーティングしたSiCボールをコーティングしていない基板上で摺動させた場合と比較して35~38分の1の減少である。ボールの摩耗は、DLCコーティングしたSiCボールをコーティングしていない基板上で摺動させた場合と比較して4~5桁減少した。ディスクの摩耗は、DLCコーティングしたSiCボールをコーティングしていない基板上で摺動させた場合と比較して6分の1に減少した。
【0034】
コーティングしていないSiCボールを使用する同様の実験では、COFの16分の1の減少を示した(コーティングした基板では0.043であるのに対し、コーティングしていない基板では0.697)。一方、コーティングしていない基板と比較して、ディスクの摩耗は16分の1、ボールの摩耗は3~4分の1の減少が観察された。
【0035】
摩擦プロットは、MoSGOが瞬時に作用し、定常状態の超低摩擦が維持されていることを示している。MoSGOなしのベースライン試験では、ディスク上のコーティング摩耗および大きな摩耗が大きな摩擦係数と共に認められた。さらに、SiC上の固体潤滑材MoSGOの初期評価に続いて、潤滑材はトルクを低減させる性能について試験された。固体潤滑材の付着は最適ではないことが認められた。
【0036】
懸濁液がPDAを含み、コーティングがコーティングされていないSiCボールに対して摺動して試験された追加実験で、コーティングされていない基板と比較して、COFが22分の1に減少(0.032対0.697)し、ディスク摩耗が25分の1に減少したことが示された。
【0037】
さらに、一つのディスク表面がもう一つのディスク表面に対して相対的に回転させられる(ディスクオンディスク試験)ディスクオンディスク試験が実施された。摩擦係数ではなくトルクが測定された。具体的には、乾燥窒素中でPDAにより改質したMoSGO潤滑材コーティングを施した、マットラッピングした(艶消し粗研磨済み)炭化ケイ素整合リングをマットラッピングした炭化ケイ素プライマリリングに対して回転させた。ドライ窒素中では84%、大気中では60%のトルク低減が観察された。
【0038】
別の試験では、マットラッピングした整合リングと研磨した(すなわち平滑な)プライマリリングの両方にMoSGOコーティングがされており、ディスクオンディスク試験を行った。試験後、走査型電子顕微鏡およびラマン分光法によって摩耗痕を検査したところ、研磨面はもはや表面にMoSGO潤滑材を含んでいなかった一方、マットラッピングされた表面はMoSGO層を保持していることが明らかになった。マットラッピングされた表面の粗さは約0.15Raである。研磨した表面は約0.055Raである。
【0039】
[組み合わせ]
MoSGOコーティングは他のコーティングと組み合わせて使用することができる。例えば、対向面にダイヤモンドライクコーティング(DLC)を施すことができる。ナノダイヤモンドを含む特定のコーティングは、基板、例えばMoSGOでコーティングされた基板と回転対向しているSiC基板、の潤滑材としてナノダイヤモンド付きMoS(MoSND)を含むことができる。カーボンナノオニオンは、摺動界面として基板に対する潤滑材の相互作用中に形成されうる。MoSNDコーティングを形成するには、溶液処理された材料(MoS)を、溶液1Lあたりナノダイヤモンド50~1000mgの溶液内に、スプレーまたはドロップキャストなどによって投入することでできる。
【0040】
[シールアセンブリ]
前述の通り、本明細書で開示されたコーティングは、ドライガスシールまたは非接触シール用途で使用することができる。
【0041】
例えば、図2は、回転シャフト604と外壁610およびボア609を有するハウジング606との間に配置できるシールアセンブリ600の断面を示している。シールアセンブリは、プライマリリング616のプライマリリングシール面に隣接して対向する整合リングシール面を有する整合リング614を含む。整合リングシール面とプライマリリングシール面の少なくとも一方は、本明細書に記載されているように、二硫化モリブデンとナノダイヤモンドとからなる、または、二硫化モリブデンと酸化グラフェンとからなるコーティングを有する。
【0042】
シール600は単一のシール構成として示されているが、シールアセンブリ600は他のシールと組み合わせて、デュアルドライガスシールアセンブリを形成することができることを理解されたい。
【0043】
シールアセンブリ600は、整合リング614とプライマリリング616との間の相対運動によって、整合リングシール面とプライマリリングシール面との間にガス層を発達させることで動作させることができる。特に、シーリングガス層は、チャンバー608内のガスが、シャフト604に沿ってそこから漏れないようにすることができる。シールアセンブリ600はまた、随意的に、プライマリリング616を整合リング614に向かわせる付勢部材638を含むことができる。互いに相対的なリングの回転によって、シーリングガスが面の間に存在しやすくなるように、整合リングシール面とプライマリリングシール面とは表面特徴のテクスチャ領域(例えば凹部)を含むことができる。表面テクスチャの特徴は、一方の面の外径から中心/内径に向かってガスを引き込むように構成することができる。このような構成は、外径の圧力が内径の圧力よりも高い場合に適用できる。逆の場合(例えば、圧力が内径の方が高い場合)には、表面のテクスチャパターンは内径から外径に向かって広がっている。
【0044】
シール面の一方だけにコーティングしてもよいし、両方のシール面にコーティングしてもよい。それぞれのシール面のコーティングは同じでも異なっていても良い。例えば、一方のシール面のコーティングは、本明細書に記載されているように、二硫化モリブデン、酸化グラフェン、および、随意的にポリドーパミンのような機能化材(MoSGO)で構成することができるとともに、他方のシール面はコーティングしない、ナノダイヤモンドでコーティングする、MoSNDでコーティングする、または、二硫化モリブデン、酸化グラフェンおよび、随意的にポリドーパミンのような機能化材でコーティングすることができる。
【0045】
シールアセンブリ600はまた、整合リング614がシャフト604と共に回転することを可能にする回転シャフト604に整合できるスリーブリング615を含むこともできる。整合リングシール面は、そこに溝を含むことができる。シールアセンブリ600は、本体668および表面672、674,676、678を有する随意的なリテーナー602を含むことができる。
【0046】
MoSNDまたはMoSGOコーティングは、シール面にテクスチャ(すなわち凹部)を形成した後にシール面に施すことができる。あるいは、コーティングをシール面に施した後に、凹部を形成するためにシール面をエッチングしてもよい。
【0047】
[定義]
本教示は、様々な実施形態および実施例と共に説明されてきたが、本教示はそのような実施形態または実施例に限定されることは意図されていない。それどころか、本教示は、当業者に理解されるように、様々な代案、修正および等価物を包含する。
【0048】
本明細書では様々な発明的実施形態が説明および図示されてきたが、当業者であれば、本明細書に記載された機能を実行し、さらに/または、結果ならびに/または、一つまたはそれ以上の利点を得るための様々な手段および/または構成を用意に想定するだろう。より一般的には、当業者は、本明細書に記載されたすべてのパラメータ、寸法、材料および構成は例示的なものであることを意味し、実際のパラメータ、寸法、材料および/または構成は具体的な用途または本発明の教示が使用される用途によることを容易に理解するだろう。当業者は、本明細書に記載された具体的な発明的実施形態の等価物を多く思いつくだろう。したがって、前述の実施形態は例示として提示されたにすぎず、添付の請求項およびそれに相当するものの範囲内において、発明的実施形態は、具体的に記載され請求された以外の方法で実施してもよいと理解される。本明細書に記載されている本開示の発明的実施形態は、個々の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法に向けられたものである。加えてこのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法の任意の二つ以上の組み合わせは、それらの特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法が相互に矛盾しない場合、本開示の発明的範囲内に含まれる。
【0049】
本明細書で定義され使用されたすべての定義は、辞書の定義、参照により組み込まれる文章における定義、および/または定義された用語の通常の意味を支配すると理解されるべきである。
【0050】
本明細書および特許請求の範囲において使用される不定冠詞「a」および「an」は、反対のことが明確に示されない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。本明細書で引用されるあらゆる範囲は包括的である。
【0051】
本明細書を通して使用される「実質的に/ほぼ(substantially)」および「約(about)」という用語は、小さな変動を説明し、説明するために使用される。例えば、±5%以下、例えば±2%以下、例えば±1%以下、例えば±0.5%以下、例えば±0.2%以下、例えば±0.1%以下、例えば±0.05%以下を指すことがある。
【0052】
本明細書および特許請求の範囲で使用される「および/または(and/or)」というフレーズは、そのように結合した要素の「いずれかまたは両方(either or both)」、すなわち、ある場合には結合的に存在し、他の場合には分離的に存在する要素を意味すると理解されるべきである。「および/または」で列挙された複数の要素も同じように解釈されるべきであり、すなわち、そのように結合された要素の「1つ以上」をである。他の要素は、「および/または」節によって具体的に特定された要素以外に、具体的に特定されたそれらの要素と関連するか否かに関わらず、任意に存在することができる。従って、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「構成する」のような自由形式言語と合わせて使用されるとき、ある実施形態ではAのみ(任意選択でB以外の要素を含む);別の実施形態では、Bのみ(任意選択でA以外の要素を含む);さらに別の実施形態では、AおよびBの両方(任意選択で他の要素を含む);など言及する場合がある。
【0053】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、「または(or)」は上記で定義されたように「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト中の項目を区切る場合、「または」または「および/または」は包括的に、すなわち、要素の数またはリストのうち、少なくとも一つを含むが、一つ以上も含むこと、および、任意選択で追加的なリストされていない項目、と解釈されるものとする。逆を明確に示す用語、例えば、「~のうち一つだけ(only one of)」または「~のうちまさに一つ(exactly one of)」または特許請求の範囲で「から成る(consisting of)」、のみが、要素の数またはリストのうちまさに一つの含むことを指す。一般的に、本明細書で使用される用語「または」は、「どちらか(either)」、「のうちの一つ(one of)」、「のうちの一つのみ(only one of)」または「のうちのまさに一つのみ(exactly one of.)」といった排他的な用語が先立つ場合のみ、排他的な選択肢(すなわち、「一方又は他方だが両方ではない(one or the other but not both)」)を示すと解釈されるべきである。特許請求の範囲において使用される「実質的に/ほぼ~からなる(Consisting essentially of)」は、特許法の分野で使用される通常の意味を有するものとする。
【0054】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、一つ以上のリストに関して「少なくとも一つ(at least one)」というフレーズは、要素のリスト内の任意の一つ以上の要素から選択される少なくとも一つの要素を意味すると理解されるべきだが、必ずしも、要素のリスト内に具体的に列挙された各要素および全ての要素の少なくとも一つを含む必要はなく、要素のリスト内の任意の要素の組み合わせを除外するものではない。この定義はまた、「少なくとも一つ」という表現が指す要素のリスト内で具体的に特定された要素以外の要素が、具体的に特定された要素に関連するか否かにかに関わらず、任意に存在する可能性があることを認めている。従って、非限定的な例として、「AおよびBのうち少なくとも一つ」(または、等価的に「AまたはBのうち少なくとも一つ」、または、等価的に「Aおよび/またはBのうち少なくとも一つ」)は、一実施形態では、Bが存在せず(および任意選択でB以外の要素を含む)、少なくとも一つの、随意的に一つ以上の、Aを含むことを指し、別の実施形態では、Aが存在せず(および随意的にA以外の要素を含む)、少なくとも一つの、随意的に一つ以上のBを含むことを指し、さらに別の実施形態では、少なくとも一つの、随意的に一つ以上のAを含む、および、少なくとも一つの、随意的に一つ以上のBを含む(および随意的に他の要素を含む)ことを指す、等々である。
【0055】
上記明細書と同様に、特許請求の範囲において、「備える/含む(comprising)」、「含む(including)」、「担持する(carrying)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「伴う(involving)」、「保持する(holding)」、「~からなる(composed of)」などのすべての移行句は、オープンエンド、すなわち、含むがこれらに限定されないことを意味すると理解されるものとする。米国特許庁特許審査手順マニュアルのセクション2111.03に規定されているように、移行句「~で構成される/より成る(consisting of)」及び「実質的に/ほぼ~より成る(consisting essentially of)」のみがそれぞれ閉鎖的または半閉鎖的な移行句とされる。
【0056】
特許請求の範囲、そのように記載されていない限り、記載された順序または要素に限定されるものとして読まれるべきではない。添付の特許請求の範囲の要旨および範囲から逸脱することなく、一般的な当業者によって形態および細部における様々な変更がなされうることを理解されるべきである。以下の特許請求の範囲およびその均等物の要旨および範囲内に入るすべての実施形態が特許請求される。
【0057】
本発明は以下の態様を含む。
【0058】
態様1:低摩擦で耐摩耗性のシールアセンブリを形成する方法であって、シール面基板を含むシールアセンブリ構成要素を準備するステップと、二硫化モリブデンをキャリア液に懸濁して混合液を形成するステップと、好ましくは酸化グラフェン対二硫化モリブデンの重量比が8:10~10:8となるように酸化グラフェンを混合液に添加するステップと、(例えば、超音波処理によって)二硫化モリブデン、酸化グラフェンおよび随意的なポリドーパミンによる均質な混合液を形成するステップと、並びにシール面基板上にウェットフィルムを形成し、またキャリア液を蒸発させてドライコーティング層を形成するよう、均質な混合液をシール面基板の部分上に堆積するステップと、を備える、方法。
【0059】
態様2:態様1の方法であって、さらに、混合液にポリドーパミンを添加するステップであり、1ml混合液あたりのポリドーパミンmg量が、好ましくは0.01~0.2、より好ましくは0.02~0.1、さらに好ましくは0.02~0.09、もっとも好ましくは0.022~0.088mgである添加ステップを備える、方法。
【0060】
態様3:態様1または2の方法において、前記シールアセンブリ構成要素を準備するステップは、整合リングシール面を有する整合リングおよびプライマリリングシール面を有するプライマリリングを準備するステップを含み、また前記シール面基板上に堆積するステップは、前記整合リングシール面および前記プライマリリングシール面の少なくとも一方に堆積するステップを含む、方法。
【0061】
態様4:態様3の方法であって、さらに、ドライコーティング層を形成した後、前記整合リングおよび前記プライマリリングをハウジング内に配設するステップを含む、方法。
【0062】
態様5:態様3または4の方法において、前記配設するステップは、整合リングシール面がプライマリリングシール面と隣接し、かつ対向するように整合リングを配設するステップを含む、方法。
【0063】
態様6:前記態様1~5のうちいずれか一態様の方法において、前記キャリア液は、水、アルコールまたはその両方を含む、方法。
【0064】
態様7:前記態様1~6のうちいずれか一態様の方法において、前記均質な混合液はオイルフリーである、方法。
【0065】
態様8:前記態様1~7のうちいずれか一態様の方法において、堆積ステップは、スプレーコーティングステップを含む、方法。
【0066】
態様9:前記態様1~8のうちいずれか一態様の方法において、前記シール面基板は炭化ケイ素を含む、方法。
【0067】
態様10:前記態様1~9のいずれか一態様の方法において、前記均質な混合液を散布するステップは、20℃~100℃、好ましくは大気温度で前記シール面基板上に散布する、方法。
【0068】
態様11:前記態様1~10のうちいずれか一態様の方法において、前記懸濁した二硫化モリブデンは、300~500nmの厚さに対して直交する寸法を有するフレークを含む、方法。
【0069】
態様12:前記態様1~11のうちいずれか一態様の方法において、前記懸濁された酸化グラフェンは、好ましくは1~5ミクロンの厚さに対して直交する寸法を有する酸化グラフェンフレークである、方法。
【0070】
態様13:態様12の方法において、前記懸濁した二硫化モリブデンフレークは前記酸化グラフェンフレークよりも小さい、方法。
【0071】
態様14:前記態様1~13のうちいずれか一態様の方法において、前記均質な混合液を散布する前の前記基板は、ISO4288―1996に沿って測定される表面粗さRaとして、0.05~0.4、好ましくは0.1~0.25または0.2~0.4の、Raを有する、方法。
【0072】
態様15:前記態様1~14のうちいずれか一態様の方法において、前記均質な混合液の第2のコーティング層は、前記ドライコーティング層上に塗布される、方法。
【0073】
態様16:態様15の方法において、前記シール面基板上に堆積した均質な組成物は、接着促進機能化材、好ましくはポリドーパミンを含む、方法。
【0074】
態様17:態様16の方法において、前記均質な混合液の前記第2のコーティングは接着促進機能化材を含まない、方法。
【0075】
態様18:前記態様1~17のうちいずれか一態様の方法において、前記シール面は溝を含む、方法。
【0076】
態様19:態様18の方法において、前記堆積ステップは、前記溝を含むシール面上で行う、方法。
【0077】
態様20:態様18の方法において、前記ドライコーティング層を形成した後、前記シール面に前記溝をエッチングする、方法。
【0078】
態様21:低摩擦摩耗表面を形成する方法であって、ナノダイヤモンドとMoSおよびh―BNよりなる群から選択される2D材料とを含む溶液を基板上に散布して第1の摺動構成要素を形成するステップと、前記第1摺動構成要素を、摺動面にダイヤモンド・ライク・カーボンを有する第2摺動構成要素に対して摺動させるステップと、前記ナノダイヤモンド周りに材料のスクロールを形成するステップと、スクロール形成したナノダイヤモンドをナノオニオンに変換するステップと、を備える、方法。
【0079】
態様22:請求項1~20のいずれか1項の方法で作成されたドライガスシールアセンブリ。
【0080】
態様23:回転シャフトを含む回転機械に使用するドライガスシールアセンブリであって、該シールアセンブリは、整合リングシール面を有する整合リングと、プライマリリングシール面を有するプライマリリングであり、前記整合リングシール面及びプライマリリングシール面が互いに隣接かつ対向するように、前記整合リングおよび前記プライマリリングが位置決めされている、該プライマリリングと、前記プライマリリングシール面を前記整合リングシール面に向けて押圧する第1付勢部材と、を備え、前記整合リングシール面及びプライマリリングシール面のうち少なくとも一方は、その上に形成された凹部を含み、該凹部によって、前記プライマリリングと前記整合リングとの間の相対回転で、整合リングとプライマリリングとの間にガスを引き込ませ、前記プライマリリングを前記整合リングから遠ざける押圧を行うように前記整合リングと前記プライマリリングとの間にガス層を形成し、前記整合リングシール面とプライマリリングシール面の少なくとも一方は、二硫化モリブデン、酸化グラフェン、および随意的なポリドーパミンを含む固体コーティングを担持し、好ましくは、酸化グラフェン対二硫化モリブデンの比が8:10~10:8である、ドライガスシールアセンブリ。
【0081】
態様24:態様23のドライガスシールアセンブリにおいて、前記整合リング、前記プライマリリングおよび前記付勢部材はハウジング内に配設される、ドライガスシールアセンブリ。
【0082】
態様25:態様23または24のガスシールアセンブリにおいて、前記凹部が、前記プライマリリングの内径から前記プライマリリングの外径に向かってガスを引き込む、または、前記プライマリリングの外径から前記プライマリリングの内径に向かってガスを引き込む、ガスシールアセンブリ。
【0083】
態様26:態様23~25のいずれか一態様のドライガスシールアセンブリにおいて、前記コーティングを担持するシール面は、ISO4288―1996に沿って測定される表面粗さRaとして、0.05~0.4、好ましくは0.1~0.25のRaを有する、ドライガスシールアセンブリ。
【0084】
態様27:請求項23~26のいずれか1項に記載のシールアセンブリの使用方法であって、作動条件が、-50℃~200℃の範囲の作動温度、-40℃以下の露点を有するドライ窒素のうち一つ以上を含む、使用方法。

図1A
図1B
図2
【国際調査報告】