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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-15
(54)【発明の名称】障害物を回避するための方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240207BHJP
   B60W 30/09 20120101ALI20240207BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W30/09
B60W40/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550137
(86)(22)【出願日】2022-02-03
(85)【翻訳文提出日】2023-10-16
(86)【国際出願番号】 EP2022052617
(87)【国際公開番号】W WO2022175103
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】2101650
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ブリュノ, ジェオフレ
(72)【発明者】
【氏名】ド, アン-ラン
(72)【発明者】
【氏名】レヒム, マロワン
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA33
3D241BA50
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CE01
3D241CE04
3D241CE05
3D241DB01Z
3D241DB02Z
3D241DB08Z
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181CC24
5H181FF03
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
(57)【要約】
本発明は、自動車(10)による物体(C1、C2、C3、C4)を回避するための方法であって、自動車の周囲に位置する物体を検出するステップと、各物体の位置および/または動きを特徴付けるデータを取得するステップと、次いで、いくつかの物体が検出された場合、検出された物体のうちの少なくとも2つの物体の間の近接性の少なくとも1つの基準が満たされるかどうかを検証するステップと、満たされる場合、2つの物体を1つのグループ(G2)に組み合わせるステップと、グループの位置および/または動きを特徴付けるデータを算出するステップと、障害物回避のためのシステムを起動し、および/または、グループの位置および/または動きを特徴付けるデータに従って回避軌道を決定するステップとを含む、方法に関する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(10)のために物体(C1、C2、C3、C4)を回避する方法であって、
- 前記自動車(10)の周囲に位置する物体(C1、C2、C3、C4)を検出するステップと、
- 検出された各物体(C1、C2、C3、C4)の位置および/または動きを特徴付けるデータを取得するステップと
を含み、
複数の物体(C1、C2、C3、C4)が検出された場合に、
- 検出された前記物体(C1、C2、C3、C4)のうちの少なくとも2つの物体の間の近接性の少なくとも1つの基準が満たされるかどうかをチェックするステップと、そして、満たされる場合には、
- 前記2つの物体(C1、C2、C3、C4)を1つのグループ(G1、G2、G3)に組み合わせるステップと、
- 前記グループ(G1、G2、G3)の位置および/または動きを特徴付けるデータを計算するステップと、
- 障害物回避システム(AES)を起動し、および/または、前記グループ(G1、G2、G3)の位置および/または動きを特徴付けるデータに従って回避軌道(T1)を決定するステップとが規定されていることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記近接性基準は、前記2つの物体(C1、C2、C3、C4)の間の横方向距離に関係する、請求項1に記載の回避方法。
【請求項3】
前記取得するステップにおいて、前記データのうちの1つは、前記自動車(10)が各物体(C1、C2、C3、C4)を回避するためにとる必要がある横方向軌道逸脱(Eleft、Eright)であり、前記近接性基準は、一方における、前記2つの物体のうちの第2の物体に向いた側において第1の物体を回避するためにとるべき前記横方向軌道逸脱(Eleft)と、他方における、前記第1の物体に向いた側において前記第2の物体を回避するためにとるべき前記横方向軌道逸脱(Eright)との間の差(GapLeft_n、GapRight_n)が、所定の閾値(dsafe)以上であるかどうかをチェックすることに存する、請求項2に記載の回避方法。
【請求項4】
少なくとも3つの物体(C1、C2、C3、C4)が検出された場合、道路の一方の縁部から他方の縁部へと連続する順序において前記物体(C1、C2、C3、C4)をランク付けすることが規定され、前記連続する順序において連続する物体から成る各対の間で前記近接性基準が満たされるかどうかがチェックされる、請求項3に記載の回避方法。
【請求項5】
一方における、前記自動車(10)の高さにおける前記道路に対する接線に沿って方向付けられた第1の基準座標系(XLineEgo,YLineEgo)内で前記自動車(10)が走行している道路に対する前記自動車(10)の横方向速度(VyEgo/LineEgo)と、他方における、前記物体(C1、C2)の高さにおける前記道路に対する接線に沿って方向付けられた第2の基準座標系(XLineObj,YLineObj)内の前記道路に対する前記物体(C1、C2)の横方向速度(VyObj/lineObj)との間の逸脱に基づいて相対横方向速度(VRelRouteLat)を計算することが規定され、各横方向軌道逸脱(Eright、Eleft)が、前記相対横方向速度(VRelRouteLat)に基づいて決定される、請求項3または4に記載の回避方法。
【請求項6】
前記近接性基準は、前記2つの物体の間の長手方向距離に関係する、請求項1から5のいずれか一項に記載の回避方法。
【請求項7】
前記取得するステップにおいて、前記データのうちの1つは、前記自動車(10)が各物体(C1、C2、C3、C4)に衝突する前の残り時間(TTC)に関係し、前記近接性基準が満たされていることをチェックするために、前記2つの物体との衝突余裕時間(TTC)の間の逸脱(Δ2-3、Δ4-2)が閾値未満であるかどうかがチェックされる、請求項6に記載の回避方法。
【請求項8】
前記取得するステップにおいて、前記データのうちの1つは、同じ左側または右側において各物体(C1、C2、C3、C4)を回避するためにとるべき横方向軌道逸脱(Eleft、Eright)であり、前記計算するステップにおいて、前記グループを特徴付ける前記データのうちの1つは、同じ側において前記グループ(G1、G2、G3)の各物体(C1、C2、C3、C4)を回避するためにとるべき前記横方向軌道逸脱(Eleft、Eright)のうち最大の逸脱に等しくなるように選ばれる、請求項1から7のいずれか一項に記載の回避方法。
【請求項9】
前記取得するステップにおいて、各物体を特性付ける前記データのうちの1つは、前記自動車(101)が各物体(C1、C2、C3、C4)に衝突する前の残り時間(TTC)であり、前記計算するステップにおいて、前記グループを特徴付ける前記データのうちの1つは、前記自動車(101)が前記グループ(G1、G2、G3)の各物体(C1、C2、C3、C4)に衝突する前の前記残り時間(TTC)のうちの最小時間に等しくなるように選ばれる、請求項1から8のいずれか一項に記載の回避方法。
【請求項10】
少なくとも1つの被ステアリング車輪と、コンピュータ(C10)によって制御されるアクチュエータによって操作されるように設計されている各被ステアリング車輪のためのステアリングシステムとを備える自動車(10)であって、前記コンピュータ(C10)は、請求項1から9のいずれか一項に記載の回避方法を実施するように設計されていることを特徴とする、自動車(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、自動車運転補助手段に関する。
【0002】
本発明は、より詳細には、障害物を回避するための方法に関する。
【0003】
本発明はまた、この方法を実施するように設計されているコンピュータを装備した自動車に関する。
【背景技術】
【0004】
自動車の安全性を増大させることを目的として、自動車は、今日、運転支援システムまたは自立運転システムを装備している。
【0005】
これらのシステムは、特に、単純に自動車の従来の制動システムに作用することによって、車両が走行している車線内に位置する障害物との任意の衝突を回避するように設計されている自動非常制動(AEB)システムを含むことが知られている。
【0006】
しかしながら、これらの非常制動システムが、衝突を回避することを可能にしないか、または、使用されることが可能でない(たとえば、別の車両がその自動車の直後を進んでいる場合)いくつかの状況が存在する。
【0007】
これらの状況について、先進操舵回避または自動操舵回避(AES)システムが開発されており、これらは、車両のステアリングに作用することによって、車両をその軌道から逸らすことにより障害物を回避することを可能にする。
【0008】
このAES機能を有効にするためには、最適な回避機動の計算に関連する自動車の周囲の部分を確実に検出することが必要である。
【0009】
この目的に一般的に使用される1つのパラメータは、衝突余裕時間(TTC)と呼ばれる。第2のパラメータは、検出された障害物を、障害物に衝突することなく通り過ぎるためにとられる逸脱によって形成される。したがって、潜在的な各障害物は、当該障害物のうち最も危険な障害物を決定し、当該障害物から最適な回避軌道を推定するために、別個に考慮される。
【0010】
したがって、これらのパラメータに依拠することによって、運転者が回避を実行するに任せることが好ましい一部の危険な状況において、AES衝突回避機能が自律モードにおいて(運転者からの働き掛けなしに)起動されることが分かる。同じ領域内に回避されるべき過度に多数の障害物があり、以て、機能が相対的に利用不可能になることに起因して衝突回避機能が起動しないこともあり得る。
【発明の概要】
【0011】
従来技術からの上述した欠点を修正するために、本発明は、検出された物体を、単独ではなく、可能な場合には物体をともにグループ化することによって処理することを提案する。
【0012】
より詳細には、本発明によれば、自動車のために物体を回避する方法であって、物体は、潜在的な障害物であると最初に考えられる、方法である。この方法は、
- 自動車の周囲に位置する物体を検出するステップと、
- 検出されている各物体の位置および/または動きを特徴付けるデータを取得するステップと、次いで、複数の物体が検出された場合に、
- 検出されている物体のうちの少なくとも2つの物体の間の近接性の少なくとも1つの基準が満たされるかどうかをチェックするステップと、そして、満たされる場合には、
- 2つの物体を1つのグループに組み合わせるステップと、
- 上記グループの位置および/または動きを特徴付けるデータを取得するステップと、
- 障害物回避システムを起動し、および/または、上記グループの位置および/または動きを特徴付けるデータに従って回避機動を決定するステップとを含む。
【0013】
標的をグループ化するための方法には、多数の利点がある。
【0014】
主な利点は、この方法が、AES機能が、一般規則としてのものよりも多数の状況において起動され得ることを意味することである。
【0015】
事実、処理されるべき過度に多数の障害物が存在する場合、一般的に、AES機能を非アクティブなままにすることが規定され、一方、この場合、物体がグループ化されることによって、多数の別個の物体を処理することが可能である。
【0016】
同様に、車両が2車線道路を走行しており、1つまたは複数の物体が各車線内に位置するとき、一般的に、AES機能を起動することを許容しないことが規定される。対照的に、本発明においては、AES機能を起動することが可能であるかどうかをチェックするために、様々な物体または物体グループの間の逸脱のみが考慮される。
【0017】
その上、一般的に、AES機能を起動する前に、各物体が位置する交通車線を検出することが規定される。物体が2つの交通車線にまたがって位置するとき、この物体を通り過ぎるための間隙は、物体がその車線内で中央に位置する場合よりも限定される。したがって、一般的に、AES機能を起動する前に、大きい安全マージンが考慮される。対照的に、本発明においては、各標的グループが回避されるべき領域を規定し、その位置は、交通車線の位置には依存しない。したがって、考慮されるべき安全マージンを限定することが可能であり、以て、より多数の状況においてAES機能を起動することが可能になる。
【0018】
より一般的には、この方法は、回避軌道を計算するときに交通車線の概念を無視することを可能にし、周囲を、物体外どうする単一の空間として管理することを選好する。
【0019】
本発明は、計算を単純化することを可能にすることも留意されよう。
【0020】
したがって、本発明はより多数の標的を同時に管理することを可能にし、これは、自転車乗りの集団が検出される場合に特に有用であることが分かる。
【0021】
本発明は、検出される物体のクラス(自転車乗り、自動車など)を無視し、1つまたは複数の近接性基準のみに従って任意のクラスの物体をグループ化することを選好することも留意されよう。
【0022】
個々にまたは任意の技術的に達成可能な組合せに従って採用される、本発明による方法の他の有利で非限定的な特徴は、以下のとおりである。
- 上記グループの位置および/または動きを特徴付けるデータが、グループの物体を個別に特徴付けるデータに基づいて計算される。
- 次に、グループの物体を個別に特徴付けるこれらのデータはもはや考慮されず、障害物回避システムが起動され、および/または、特に、グループの物体を個別に特徴付けるデータにかかわりなく、回避軌道が決定される。
- 近接性基準が、2つの物体の間の横方向距離(物体の高さにおける道路に対する接線に直交する軸に沿った)に関係する。
- 取得するステップにおいて、データのうちの1つは、自動車が各物体を回避するためにとる必要がある横方向軌道逸脱である。
- 近接性基準は、一方における、第2の物体に向いた側において2つの物体のうちの第1の物体を回避するためにとるべき横方向軌道逸脱と、第1の物体に向いた側において第2の物体を回避するためにとるべき横方向軌道逸脱との間の差が、所定の閾値以上であるかどうかをチェックすることに存する。
- この閾値は0以上である。
- 少なくとも3つの物体が検出された場合、道路の一方の縁部から他方の縁部へと連続する順序において物体をランク付けすることが規定され、次いで、上記連続する順序において連続する物体から成る各対の間で近接性基準が満たされるかどうかがチェックされる。
- 一方における、自動車の高さにおける道路に対する接線に沿って方向付けられた第1の基準座標系内で車両が走行している道路に対する自動車上の相対横方向速度と、他方における、上記物体の高さにおける道路に対する接線に沿って方向付けられた第2の基準座標系内の道路に対する物体の横方向速度との間の逸脱に基づいて相対横方向速度を計算することが規定され、次いで、各横方向軌道逸脱が、相対横方向速度に基づいて決定される。
- 上記近接性基準は、2つの物体の間の長手方向距離に関係する。
- 取得するステップにおいて、データのうちの1つは、自動車が各物体に衝突する前の残り時間に関係する。
- 上記近接性基準が満たされていることをチェックするために、2つの物体との衝突までの時間の間の逸脱が閾値未満であるかどうかがチェックされる。
- この閾値は0以上である。
- 取得ステップにおいて、データのうちの1つは、まったく同一の左または右側において各物体を回避するためにとるべき横方向軌道逸脱であり、計算するステップにおいて、グループを特徴付けるデータのうちの1つは、まったく同一の側においてグループの物体を回避するためにとるべき横方向軌道逸脱のうち最大の逸脱に等しくなるように選択される。
- 取得ステップにおいて、各物体を特徴付けるデータのうちの1つは、自動車が各物体に衝突する前の残り時間であり、計算するステップにおいて、グループを特徴付けるデータのうちの1つは、自動車がグループの物体のうちの1つに衝突する前の残り時間のうちの最小時間に等しくなるように選択される。
【0023】
本発明はまた、少なくとも1つの被ステアリング車輪と、コンピュータによって制御されるアクチュエータによって操作されるように設計されている各被ステアリング車輪のためのステアリングシステムとを備える自動車にも関し、コンピュータは、上述したようなトリガ方法を実施するように設計されている。
【0024】
無論、本発明の様々な特徴、変形形態および実施形態は、これらが不適合でなく、または相互に排他的でないことを条件として、様々な組合せにおいて互いに組み合わされてもよい。
【0025】
非限定的な例として与えられる、添付の図面を参照する以下の説明は、本発明の概念および本発明が実施され得る方法の良好な理解を与える。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明による自動車および2つの別個の交通車線内を走行している2つの標的自動車の概略図である。
図2図1からの自動車および2つの標的自動車のうちの1つの概略図である。
図3】標的自動車のうちの1つの位置を決定するプロセスの第2のステップを示す、図2に示すものと対応する図である。
図4】本発明の一部として使用される4つの基準座標系を示す、図2に示すものと対応する図である。
図5図4からの4つの基準座標系の表現図である。
図6図1からの標的自動車のうちの1つおよび当該自動車の交通車線の概略図である。
図7】本発明による自動車が配置される1つの例示的な構成、および、当該自動車に近接して走行している4つの自動車の概略図である。
図8】自動車の基準が順序付けし直されている、図7のものと対応する図である。
図9】自動車が1度目にグループ化されている、図8のものと対応する図である。
図10】自動車が2度目にグループ化されている、図8のものと対応する図である。
図11】本発明による自動車が配置される別の例示的な構成、および、当該自動車に近接して走行している3つの自動車から成るグループの概略図である。
図12】本発明による自動車が配置される別の例示的な構成、および、当該自動車に近接して走行している3つの自動車の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、自動車10に対する潜在的な障害物を形成する2つの「物体」が存在する道路上を走行している自動車10を示す。この場合、これらの2つの物体は、自動車C1、C2によって形成される。一変形形態として、これらの2つの物体は、他のタイプの物体(歩行者、自転車乗りなど)であってもよい。考慮されている物体は、好ましくは、移動している。
【0028】
本明細書の残りの部分において、自動車10は、本発明を実施するものであり、「自車両10」と呼ばれる。
【0029】
この自車両10は、従来通り、乗客区画を区切るシャーシと、うち2つが被ステアリング車輪である車輪と、ドライブトレインと、制動システムと、被ステアリング車輪の向きに対して作用するための従来のステアリングシステムとを備える。
【0030】
考慮されている例において、ステアリングシステムは、ハンドルの向きに基づいて、および/または、場合によっては、コンピュータC10によって発行される命令に基づいて被ステアリング車輪の向きに対して作用することを可能にする、支援ステアリングアクチュエータによって制御される。
【0031】
コンピュータC10は、少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つのメモリと、様々な入力および出力インターフェースとを備える。
【0032】
コンピュータの入力インターフェースによって、コンピュータC10は、様々なセンサから入力信号を受信することが可能である。
【0033】
当該センサの間で、たとえば、以下のものが規定される。
- 自車両の交通車線に対する自車両の位置を識別するための正面カメラなどのデバイス。
- 自車両10の軌道上に位置する障害物を検出するための、レーダまたはライダ遠隔検出器などのデバイス。
- 自車両の側方の周囲を観察するための、レーダまたはライダ遠隔検出器などの少なくとも1つの横方向デバイス。
【0034】
したがって、コンピュータC10は、複数のセンサから、自車両10の周囲に存在する物体に関係するデータを受信する。従来通り、これらのデータは、各物体に関する信頼可能な融合データを提供するように、互いに組み合わされる。
【0035】
コンピュータ出力インターフェースによって、コンピュータC10は、支援ステアリングアクチュエータに命令を送信することが可能である。
【0036】
したがって、車両が、可能な限り最良に、かつ、条件が許容する場合に、障害物回避軌道に従うことを保証することが可能になる。
【0037】
コンピュータのメモリによって、コンピュータC10は、後述する方法の一部として使用されるデータを記憶する。
【0038】
メモリは、特に、プロセッサによる実行によって、コンピュータが後述する方法を実施することを可能にする命令を含むコンピュータプログラムから成るコンピュータアプリケーションを記憶する。
【0039】
これらのプログラムは、特に、障害物回避軌道を計算し、自車両が当該軌道に従うように自車両10を制御するか、または、自車両が当該軌道に従うように自車両10を制御することによって運転者を支援するように設計されている「AESシステム」を含む。AESシステムは、運転者の支援なしに軌道に従う自律モード、および、AESシステムが、障害物を回避することによって運転者を支援し、運転者が操作手段の制御に留まる手動モードを有する。このAESシステムは、当業者には周知であるため、ここでは詳細には説明しない。
【0040】
コンピュータプログラムはまた、AESシステムを起動するための起動ソフトウェアも含み、これによって、AESシステムが起動されるべきであるかどうかを決定し(自車両の軌道および自車両の周囲に存在する物体の軌道を考慮に入れて)、AESシステムを起動する最良の瞬間まで待つことが可能になる。より具体的には、この起動ソフトウェアが、特に、本明細書における本発明の影響下にある。
【0041】
このソフトウェアは、自車両10が移動すると直ちにアクティブになる。
【0042】
このソフトウェアは、周期的な時間増分においてループして実施される。
【0043】
このソフトウェアは、自車両10および自車両の周囲に関係するデータを取得する予備ステップと、後続する9つのメインステップとを含む。次いで、これらの連続するステップが1つずつ説明され得る。
【0044】
予備ステップにおいて、コンピュータC10は、自車両10の正面カメラによって取得される少なくとも1つの画像を受信する。コンピュータは、さらに、遠隔検出器からのデータを受信する。次いで、これらの画像およびデータが融合される。
【0045】
したがって、この段階において、コンピュータC10は、自車両10の前に位置する道路の画像、および、特に、自車両10の周囲において検出され、周囲に位置する各物体を特徴付ける融合データを保持する。これらの周囲は、ここでは、車両のセンサがデータを取得するように設計されている、自車両の周りに位置する領域であると考えられる。
【0046】
図1の例において、自車両は、中央交通車線V内を走行しており、Vの両側には、2つの他の交通車線V、Vが存在する。
【0047】
次いで、コンピュータC10は、これらの交通車線V、V、Vの境界線NL、L、R、NLの位置および形状を決定することを模索する。
【0048】
この目的のために、この場合、これらの線の各々は、多項式によってモデル化される。ここで、選択される多項式は3次であり、そのため、以下のように書くことが可能である。
[数式1]
yLine=d.x+c.x+b.x+a
【0049】
この式において、
- 項yLineは、考慮されている車線境界線の横座標を表す。
- 項xは、この線の長手方向座標を表す。
- 項a、b、cおよびdは、自車両の正面カメラが見ている(または、自車両が移動しているロケーションの詳細マップを含むナビゲーションシステムからコンピュータC10によって取得される)車線の形状に基づいて決定される、多項式の係数である。
【0050】
実際には、これらの項は、データを融合することによって提供される。それらの項は、可視性条件が良好であるときは、約100メートルの距離までの車線境界線の形状をモデル化することを可能にする。
【0051】
この段階において、本開示の残りの部分において、「長手方向」と言われる項は、考慮されている基準座標系の横座標に沿ったベクトルの成分に対応し、「横方向」と言われる項は、考慮されている基準座標系の縦座標に沿ったベクトルの成分に対応することが留意されよう(本明細書において考慮されている基準座標系は常に直交する)。
【0052】
式[数式1]は、本明細書において、自車両10に結びつけられ、図1に示されている基準座標系(XEGO,YEGO)において表現されている。この基準座標系は、当該座標系の横座標軸が自車両10の長手方向軸に沿って延在するように方向付けられている。基準座標系は、自車両10の正面レーダを中心とする。
【0053】
一変形形態として、他のより単純な、または、車線境界線の幾何形状のより複雑なモデルが使用されてもよい。
【0054】
各車線境界線について係数a、b、c、dが決定されると、コンピュータC10は、必要なときに、AES障害物回避システムをトリガするために、検出されている物体が自車両にとって危険である程度を知覚することを可能にする方法の9つのステップを実施することができる。
【0055】
第1のステップは、自車両と考慮されている物体(自動車C1、C2のうちの1つ)との間の距離を決定することに存する。
【0056】
ここで計算される距離は、ユークリッド距離ではない。事実、自車両10および物体が互いに衝突する前にカバーする必要がある距離を決定するために、道路の形状を考慮に入れることが所望される。
【0057】
したがって、コンピュータC10は、ここで、弧距離LABを計算する。
【0058】
この目的のために、たとえば、文献FR3077547において詳述されているように、コンピュータは、以下の式を使用する。
[数式2]
【0059】
式中、
- LABは、2つの点AおよびB(自車両および考慮されている物体の位置に対応する)の間の弧の距離である。
- xは、自車両の(レーダの高さにおける)長手方向位置である。
- xは、基準座標系(XEGO,YEGO)内の、考慮されている物体の長手方向位置である。
【0060】
第2のステップは、各車線境界線の式および融合データを考慮に入れて、道路の交通車線に対する、検出されている各物体の位置を決定することに存する。
【0061】
コンピュータC10は、検出されている各物体の特徴点(以下、「アンカー点」と呼ぶ)の、自車両に結びつけられている基準座標系(XEGO,YEGO)内の座標を知る。この特徴点は、典型的には、正面カメラまたはレーダ遠隔検出器が見る物体の中心である。ここで、中心は、自動車C1、C2のラジエータグリルの中央であることが考慮される。
【0062】
2つの物体(2つの自動車)が検出されている図1の例において、アンカー点の座標はそれぞれ(X_rel1,Y_rel1)および(X_rel2,Y_rel2)と参照される。
【0063】
この図1はまた、基準座標系(XEGO,YEGO)の縦座標軸上の以下の値も示す。
- 横座標点X_rel1における、車線境界線NLの式[数式1]からの項yLineの値である、Y_road_NL_1。
- 横座標点X_rel2における、車線境界線NLの式[数式1]からの項yLineの値である、Y_road_NL_2。
- 横座標点X_rel1における、車線境界線Lの式[数式1]からの項yLineの値である、Y_road_L_1。
- 横座標点X_rel2における、車線境界線Lの式[数式1]からの項yLineの値である、Y_road_L_2。
- 横座標点X_rel1における、車線境界線Rの式[数式1]からの項yLineの値である、Y_road_R_1。
- 横座標点X_rel2における、車線境界線Rの式[数式1]からの項yLineの値である、Y_road_R_2。
- 横座標点X_rel1における、車線境界線NRの式[数式1]からの項yLineの値である、Y_road_NR_1。
- 横座標点X_rel2における、車線境界線NRの式[数式1]からの項yLineの値である、Y_road_NR_2。
【0064】
次いで、これらの値を自動車C1、C2の横座標Y_rel1、Y_rel2と比較することによって、2つの自動車の各々が位置する交通車線を決定することが可能である。
【0065】
例として、ここでの自動車C1の横座標Y_rel1は、値Y_road_R_1とY_road_L_1との間にあり、これは、この自動車が、車線境界線LとRとの間に位置することを意味する。
【0066】
したがって、この段階において、コンピュータC1は、検出されている各物体が位置する交通車線V、V、Vを確認することができる。
【0067】
第3のステップは、車線境界線に対する各物体の運動学的様態を特徴付けるパラメータを決定することを目標とする。
【0068】
本開示を明瞭にするために、このステップの説明の残りの部分において、これらの物体のうちの1つ(自動車C1)のみを対象とする。
【0069】
第3のステップは、コンピュータC10が車線境界線のうちの1つに対する物体の位置を決定する第1のサブステップを含む。考慮されている車線境界線は、好ましくは、中央交通車線を、考慮されている物体外地する交通車線から分離するものである。
【0070】
一変形形態として、考慮されている車線境界線は、たとえば、物体の交通車線と自車両10の交通車線との間に車線が検出されない場合の、車線縁線(図2および図3参照)などの、別の線であってもよい。
【0071】
その着想は、この車線境界線の間隔を有限数N個の点に離散化し、次いで、考慮されている物体に最も近いものを選択するというものである。この動作は、最終的に、考慮されている物体に最も近い交通車線の点の良好な推定値を求めるために、回ごとに低減される間隔にわたって、選択される点のいずれかの側に位置する車線境界線を離散化し直すことによって、複数回実行される。
【0072】
実際には、図2に示すように、コンピュータは、車線境界線Rを、自車両10の基準座標系内のN個の座標点(X,Y)に離散化することによって開始する。これらの座標点は、この線に沿って規則的に分散され(実際には、軸XEGOに沿った2つの連続する点の間の間隔は常に同じである)、第1の点は、最初の点は、自車両と同じ高さに位置する(0の横座標を有する)か、または、自車両から第1の所定の距離に位置し、最後の点は、自車両から第2の所定の距離に位置する。
【0073】
次に、ここで(Xrel;Yrel)と示される、自動車C1のアンカー点の座標が分かると、コンピュータは、当該座標から、以下の式を使用して、車線境界線Rの各離散化点と、自動車C1のアンカー点との間のユークリッド距離BirdDistanceを推測することが可能である。
[数式3]
【0074】
ユークリッド距離BirdDistanceが最小である離散化点は、自動車C1に最も近い点である。したがって、この座標点(X,Y)が選択される。
【0075】
次に、図3に示すように、この離散化動作が、より小さい間隔にわたって、より精細な離散化によって繰り返される。間隔の境界は、好ましくは、座標点(Xs-1,Ys-1)および(Xs+1,Ys+1)によって形成される。離散化点の数は、好ましくは依然としてNに等しい。このとき、この新たな動作は、新たな座標点(X,Y)を選択することを可能にする。
【0076】
一定数のループ(たとえば、10)を過ぎると、または、2つの離散化点の間の間隔が十分に小さくなると(たとえば、10cm未満)、コンピュータは、ループしたこれらの動作の繰り返しを停止する。
【0077】
選択されている最後の点は「投影点F」と呼ばれる。投影点Fは、自動車C1に最も近い境界線の点の良好な近似であることが考慮されよう。
【0078】
投影点Fの横座標Xの値は、DistanceXprojと呼ばれる。
【0079】
投影点Fと自動車C1との間のユークリッド距離BirdDistanceの値は、DistTarget2Laneと呼ばれる。
【0080】
第2のサブステップは、コンピュータC10について、道路に結びつけられており、この自車両10と同じ高さに位置する基準座標系内の自車両の速度、および、道路に結びつけられており、この自動車C1と同じ高さに位置する基準座標系内の自動車C1の速度を決定することに存する。
【0081】
このサブステップにおいて、投影点Fから、道路はこの点における接線に従うと仮定される。したがって、これは、自動車C1から始まる直線であると考えられる。
【0082】
計算の良好な理解を与えるために、図4は、本開示の残りの部分において使用される4つの基準座標系を示す。
【0083】
第1の基準座標系は、自車両に結びつけられている、すでに提示した基準座標系(XEGO,YEGO)である。
【0084】
この基準座標系は、自車両10と同時に移動することが留意されよう。したがって、測定時点においては第1の基準座標系と一致するが、固定されていると考えられる絶対基準座標系(Xabs,Yabs)も示されている。
【0085】
別の基準座標系が(XlineEGO,YlineEGO)として示されており、この基準座標は、車線境界線Rに結びつけられており、この基準座標系の横座標がこの車線境界線Rの接線であるように方向付けられ、自車両のレーダを中心とする(このレーダの横座標は第2の基準座標系内で0である)。
【0086】
さらに別の基準座標系が(Xobj,Yobj)として示されており、この基準座標は、自動車C1に結びつけられており、この基準座標系の横座標が自動車C1の移動方向と位置整合されるように方向付けられ、この自動車C1のアンカー点を中心とする。
【0087】
最後の基準座標系が(XlineObj,YlineObj)として示されており、この基準座標は、車線境界線Rに結びつけられており、この基準座標系の横座標がこの車線境界線Rの接線であるように方向付けられ、自動車C1のアンカー点を中心とする。
【0088】
図5は、これらの基準座標系を分離する角度を示す。
- AnglelineEGO/EGOは、基準座標系(XEGO,YEGO)から基準座標系(XlineEGO,YlineEGO)へと変化することを可能にする。
- AnglelineObj/EGOは、基準座標系(XEGO,YEGO)から基準座標系(XlineObj,YlineObj)へと変化することを可能にする。
- AngleObj/EGOは、基準座標系(XEGO,YEGO)から基準座標系(Xobj,Yobj)へと変化することを可能にする。
- AngleObj/LineObjは、基準座標系(XlineObj,YlineObj)から基準座標系(Xobj,Yobj)へと変化することを可能にする。
【0089】
AngleLineX/EGOは、より一般的には、基準座標系(XEGO,YEGO)の横座標と、(基準座標系(XEGO,YEGO)内で表現される)横座標点Xにおける車線境界線Rに対する接線とを分離する角度に与えられる名称である。
【0090】
したがって、以下のように書くことが可能である。
[数式4]
AngleLineX/EGO=arctan(d(yLine(x))/dx)
【0091】
ここで、
[数式5]
【0092】
したがって、x=0について、以下のように書くことが可能である。
[数式6]
AngleLineX/EGO=AnglelineEGO/EGO=arctan(b)
【0093】
横座標点x=DistanceXprojについて、以下のように書くことが可能である。
[数式7]
AngleObj/LineObj=AngleObj/EGO-AnglelineObj/EGO
【0094】
コンピュータは、以下の式によって、基準座標系(XlineEGO,YlineEGO)内の自車両10の速度の長手方向成分VxEGO/LineEGOおよび横方向成分VyEGO/LineEGOを計算することができる。
[数式8]
[数式9]
【0095】
これらの式において、
- VEGO/absは、たとえば、車両の車軸上に位置するセンサによって測定される、絶対基準座標系(Xabs,Yabs)内の自車両10の速度である。
- AngleVEgo/Egoは、基準座標系(XEGO,YEGO)の横座標に対する自車両10の速度ベクトルの角度である。この角度は、ここでは0であると仮定される。
【0096】
コンピュータはまた、絶対基準座標系内の自動車C1の速度VObj/absの長手方向成分VxObj/absおよび横方向成分VyObj/absも計算することができる。この目的のために、コンピュータは、以下の式を使用する。
[数式10]
VxObj/abs=VxObj/EGO+VxEgo/abs
[数式11]
VyObj/abs=VyObj/EGO+VyEgo/abs
【0097】
これらの式において、
- VxEGO/absおよびVyEGO/absは、絶対基準座標系(Xabs,Yabs)内の横座標および縦座標に沿った自車両10の速度の成分である。
- VxObj/EGOおよびVyObj/EGOは、基準座標系(XEGO,YEGO)内の横座標および縦座標に沿った自車両10に対する自動車C1の速度の成分である。
【0098】
したがって、以下のように書くことが可能である。
[数式12]
【0099】
以下の2つの式によって示すように、角度AnglelineObj/EGOおよびAnglelineEGO/EGOに基づいて、投影点Fにおける車線境界線Rに対する自動車C1の「車線境界線Rに沿った」相対速度の成分VxObj/LineObj、VyObj/LineObjを決定することが可能であり、以て、情報のより良好な代表性が可能になる。
[数式13]
[数式14]
【0100】
これら2つの式において、AngleVObj/Objは、自動車C1に結びつけられている基準座標系内の自動車C1の速度ベクトルの角度であり、AngleObj/EGOは、基準座標系(XEGO,YEGO)内の自動車の進行方向角度である。
【0101】
実際には、ここで、物体の速度ベクトルは物体の進行方向角度と同一直線上にあり、結果、角度AngleVObj/Objは0であると仮定される。
【0102】
同様のプロセスが、自車両と0横座標点における車線境界線Rとの間、および、自動車C1と投影点Fにおける車線境界線Rとの間の「車線境界線Rに沿った」相対化速度を決定するために適用される。
【0103】
したがって、コンピュータは、以下の式によって、基準座標系(XlineEGO,YlineEGO)内の自車両10の加速度の長手方向成分AxEGO/LineEGOおよび横方向成分AyEGO/LineEGOを計算することができる。
[数式15]
[数式16]
【0104】
コンピュータはまた、以下の式によって、基準座標系(XlineObj,YlineObj)内の自動車C1の加速度の長手方向成分AxObj/LineObjおよび横方向成分AyObj/LineObjも計算することができる。
[数式17]
[数式18]
【0105】
これらの式において、
- AEGO/absは、絶対基準座標系内の自車両10の絶対加速度である。
- AObj/absは、絶対基準座標系内の自動車C1の絶対加速度である。
【0106】
次いで、下記に定義される4つの式を使用して、走行されている道路に関連する、自車両および自動車C1の相対速度および相対加速度の長手方向成分VRelRouteLongi、ARelRouteLongiおよび横方向成分VRelRouteLat、ARelRouteLatを得るために、計算された速度と計算された加速度とを組み合わせることが可能である。
【0107】
実際には、自車両と自動車C1との間の相対速度の長手方向成分VRelRouteLongiは、一方における、自車両の高さにある交通車線に結びつけられている基準座標系(XlineEGO,YlineEGO)内で表現される自車両の速度の長手方向成分と、他方における、自動車C1の高さにある交通車線に結びつけられている基準座標系(XlineObj,YlineObj)内で表現される自動車C1の速度の長手方向成分との間の逸脱に等しいと考えられよう。
【0108】
同じように、自車両と自動車C1との間の相対速度の横方向成分VRelRouteLatは、一方における、自車両の高さにある交通車線に結びつけられている基準座標系(XlineEGO,YlineEGO)内で表現される自車両の速度の横方向成分と、他方における、自動車C1の高さにある交通車線に結びつけられている基準座標系(XlineObj,YlineObj)内で表現される自動車C1の速度の横方向成分との間の逸脱に等しいと考えられよう。
【0109】
したがって、以下のように書くことが可能である。
[数式19]
VRelRouteLongi=VxObj/LineObj-VxEGO/LineEGO
[数式20]
VRelRouteLat=VyObj/LineObj-VyEGO/LineEGO
【0110】
加速度の成分を同様に計算することが可能である。
[数式21]
ARelRouteLongi=AxObj/LineObj-AxEGO/LineEGO
[数式22]
ARelRouteLat=AyObj/LineObj-AyEGO/LineEGO
【0111】
本開示の残りの部分において詳細に明らかになるように、相対速度を使用することによって、他の様態では得ることが困難である衝突のリスクに関する指標を提供することが可能になる。
【0112】
この段階において、コンピュータC10には、車線境界線(投影点Fにおける)と自動車C1のアンカー点との間の距離DistTarget2Laneの値が分かることが想起され得る。
【0113】
第3のサブステップにおいて、コンピュータC10は、投影点Fと、車線境界線Rに最も近い自動車C1の点Pproxとの間の距離LaneDYを決定する(図6参照)。
【0114】
コンピュータは、ここでは、以下の式によってこの距離を計算する。
[数式23]
【0115】
この式において、項Widthは、自動車C1の幅に対応する。
【0116】
次いで、計算のセットは、第4のサブステップにおいて、考慮されている物体(自動車C1)との衝突余裕時間TTC、すなわち、両方とも速度を維持する場合の、自車両が自動車C1に衝突するのに必要な時間を決定することを可能にする。
【0117】
事実、この段階において、コンピュータには、式[数式2]から、自車両10を自動車C1から分離する弧の長さLABが分かる。コンピュータにはまた、式[数式19]から、道路の形状に対して参照される、自車両10と自動車C1との間の相対速度の長手方向成分VRelRouteLongiも分かる。最後に、コンピュータには、式[数式21]から、加速度の対応する長手方向成分ARelRouteLongiが分かる。
【0118】
これらの長手方向成分を使用することによって、道路が湾曲しており、車両が平行な軌道を有しないときに、衝突余裕時間TTCの良好な近似を得ることが可能になる。
【0119】
ここで、コンピュータC10は、次いで、以下の式を使用して、模索されている衝突余裕時間TTCを決定する。
[数式24]
【0120】
この式の2つの妥当性条件が、事前に満足される必要があることが留意されよう。これらの条件は以下のとおりである。
[数式25]
VRelRoute Longi+2*ARelRouteLongi*LAB≧0およびARelRouteLongi≠0
【0121】
逆に、相対化速度の長手方向成分ARelRouteLongiが0である場合、以下のように書くことが可能である。
[数式26]
【0122】
一変形形態として、たとえば、相対速度および/または相対化速度が一定であると仮定して、別の方法で衝突余裕時間TTCを計算することが可能であった。
【0123】
要約すると、この段階において、コンピュータは、融合データを探索することによって、周囲に位置し、軌道上に位置する潜在的な障害物でもある様々な物体を特徴付ける様々なパラメータを保持する。コンピュータは、特に、各物体について、以下を保持する。
- 衝突余裕時間TTC(式[数式24])。
- (ステップ2において決定される)道路上の物体の位置。
- (データ融合ステップにおいて提供される)物体の存在を確認する情報。
【0124】
次いで、第4のステップにおいて、コンピュータC10は、AES機能の実施に関連するもの(すなわち、潜在的な障害物を形成するもの)のみを維持するように、コンピュータが保持するパラメータに基づいて、様々な検出されている物体の第1のフィルタリングを実行する。
【0125】
したがって、フィルタリング動作は、関連する物体(以下「標的」と呼ぶ)が、その存在がデータ融合中に検証されており、その位置が危険である可能性があり(本発明の例では、これは、物体が1つの交通車線内に位置することをチェックすることに等しい)、衝突余裕時間TTCが所定の閾値未満である物体であると考えることに存する。
【0126】
複数の標的がまったく同一の交通車線内で検出される場合、それらの標的のうちの限られた数(たとえば、4)、特に、自車両10までの距離が最小であるもののみを考慮することも可能である。
【0127】
第5のステップは、コンピュータC10について、道路上に存在する他の物体を同時に回避しながら、各標的または各標的グループを右および左に回避するために必要とされる側方軌道逸脱(または重複)を識別することに存する。
【0128】
このステップは、5つのサブステップにおいて実施される。
【0129】
第1のサブステップの前に、コンピュータC10は、各標的を、この標的に特有の基準を通じて識別する。
【0130】
図7は、自車両10の前で、自車両10の周囲に4つの標的が位置する状況の一例を示す。
【0131】
例として、各標的は、コンピュータによって、ここではCnの形態で書かれる基準によって識別され、nは、ここでは1、2、3または4に等しい自然整数である。
【0132】
標的Cnの数nは、ここではランダムに与えられる。
【0133】
第1のサブステップは、各標的Cnを独立して考慮すること、および、この標的Cnを右に回避するために必要とされる逸脱ovLnおよびこの標的Cnを左に回避するために必要とされる逸脱ovRnを計算することに存する。
【0134】
標的C1を回避するためにとられるべき逸脱ovL1、ovR1が、図7に示されている。
【0135】
これらの右および左の逸脱ovLnおよびovRnは、自車両10の軌道および融合データを考慮に入れて決定される。事実、データ融合は、自車両の軌道とともに、これらの逸脱を計算するために使用される、自車両10に対する標的に関連する運動学的情報を提供する。したがって、これらの逸脱は、自車両10の動き、標的の動き、および車線の形状に基づいて動的に計算される。
【0136】
図7の例は、自車両10および標的が直線車線内で移動している事例に対応する。
【0137】
その中で、標的を右に回避するために逸脱がとられるべきである場合、逸脱ovRnの値が0よりも大きいことが観察される。そうでない場合、この値は0以下である。より具体的には、自車両10が、同時に標的の可能な限り近くを通過しながら、標的を回避するためにその軌道を変更する必要がない場合、逸脱ovRnは0に等しい。対照的に、自車両10が、標的を回避するためにその軌道を変更する必要はないが、標的の可能な限り近くを通過することを所望する場合には変更する必要がある場合、逸脱ovRnは、厳密には0未満である。
【0138】
同じように、標的を左に回避するために逸脱がとられるべきである場合、逸脱ovLnの値が0よりも大きい。そうでない場合、この値は0以下である。
【0139】
道路が直線でない場合、以下の情報を考慮に入れてこれらの逸脱の計算を見直すことが提案される。
- 走行されている道路に沿った、自車両と考慮されている標的との間の相対速度の横方向成分VRelRouteLat(式[数式20])。
- 角度AngleObj/LineObj。
- 衝突余裕時間TTC。
【0140】
これらの情報項目のうちの第1の情報項目は、交通車線の形状を考慮に入れた、自車両10と標的との間の現実の横方向速度を考慮に入れることを可能にする。
【0141】
このパラメータの利点の良好な理解を得るために、自車両および標的が、2つの別個の交通車線内を反対方向に、これら2つの交通車線の湾曲に正確に従って走行している例が考察され得る。このとき、理論的には、事故のリスクは0であることが理解されよう。本発明の例において、標的に対する自車両の相対速度の横方向成分VRelRouteLatは0になり、これは、計算される逸脱が0以下になることを意味し、これは、衝突のリスクが理論的に0であるという着想を正確に表現している。
【0142】
言い換えれば、横方向成分VRelRouteLatおよび衝突余裕時間TTCは、左および右の逸脱ovLn、ovRnの計算に対する、横方向および長手方向相対速度の影響を重み付けすることを可能にする。
【0143】
同様に、情報AngleObj/LineObjは、車両の長さおよび幅を重み付けすることによって、考慮されている標的の衝突面のより精密な値を決定することを可能にする。
【0144】
これらの右および左の逸脱Eright、Eleftは、ここでは、文献FR1907351に記載されているものと対応する方法で計算されるが、これらの計算が、上述した3つの情報項目を考慮に入れる点が異なっている。
【0145】
したがって、標的の半幅が、情報AngleObj/LineObjに基づいて計算される。次いで、この半幅は、標的を回避するための安全半径を考慮に入れない各逸脱の予備値を計算するために使用される。横方向成分VRelRouteLatは、その部分について、その後、所望の逸脱を得るためにこの予備逸脱に加算されるように、衝突余裕時間TTCを乗算される。
【0146】
言い換えれば、逸脱を計算するために文献FR1907351を考慮する場合、横座標dVyの計算において横方向成分VRelRouteLatと衝突余裕時間TTCとの積を使用することが必要になる。当該文献において使用されている座標Y(ここでは、座標Yrelに対応する)は、その部分について、データ融合から生じる座標、および、標的の長さと角度AngleObj/LineObjの余弦との積に等しい項の合計に等しいと考えられる。
【0147】
したがって、以下のように書くことが可能である。
[数式27]
【0148】
この式において、erは横方向測定誤差を補償するための項であり、Longは標的の長さである。
[数式28]
【0149】
データ融合が使用される場合、項erは、データ融合から生じる誤差も考慮に入れる。この項は、予め定められ、コンピュータのメモリに記憶される。
【0150】
第2のサブステップは、道路上の標的の位置に依存し、より精密には、道路の縁線のうちの1つに対する標的の逸脱に依存する順序において標的をランク付けするために標的をソートすることに存する。
【0151】
ここで、この動作は、降順における、計算された左逸脱ovLnに基づいて実行される。一変形形態として、無論、別のソート方法を適用することが可能である。
【0152】
ここで使用されている方法の利点は、逸脱の計算が、自車両10および標的の横方向相対速度だけでなく、計算された衝突余裕時間TTCにも基づいて、シーンの相対的動きを考慮に入れることであり、これは、自車両および標的の相対位置を予測するという概念を組み込んでいる。
【0153】
ここで、図8に示すように、これまでCnとして参照されてきた標的が、ここではCとして参照される。
【0154】
図7および図8において以下のことが分かる。
- 標的C1が標的Cになる。
- 標的C2が標的Cになる。
- 標的C3が標的Cになる。
- 標的C4が標的Cになる。
【0155】
同じように、ovLn、ovRnとして参照されてきた逸脱が、ここではovL、ovRとして参照される。
【0156】
したがって、以下のようになる。
- 逸脱ovL、ovRがovL、ovRになる。
- 逸脱ovL、ovRがovL、ovRになる。
- 逸脱ovL、ovRがovL、ovRになる。
- 逸脱ovL、ovRがovL、ovRになる。
【0157】
標的のこの分類は、標的を自車両10に対して左から右へとランク付けすることを可能にする。
【0158】
以降、標的Cについて計算された衝突余裕時間を示すために、TTCを使用する。
【0159】
このように決定された順序において連続している各標的を考慮して、コンピュータC10は、次いで、この標的の右または左に移動することが可能であるかどうかを決定することができる。
【0160】
この目的のために、第3のサブステップにおいて、コンピュータは、以下の式を解く(本発明の例では1~4に及ぶnのすべての値について)。
[数式29]
GapLeft_n=-(ovL+ovRn-1)-dSafe
[数式30]
GapRight_n=-(ovR+ovLn+1)-dSafe
【0161】
これらの式において、パラメータdSafeは、厳密に正の値を有し、標的の過度に近くに移動することを回避するように標的の周りに形成することが所望される安全距離に対応する。dSafeの値は、たとえば、標的の速度および自車両または交通条件(天候など)に基づいて変化し得る。この値は、少なくとも、自車両の幅に等しい。
【0162】
以降、左間隙と呼ばれるパラメータGapLeft_nは、他の標的を考慮に入れて標的の左に移動するための幅に対応する。
【0163】
以降、右間隙と呼ばれるパラメータGapRight_nは、他の標的を考慮に入れて標的の右に移動するための幅に対応する。
【0164】
ここで、標的Cの左に移動することが可能であることは分かっているため、左間隙GapLeft_nは、必然的に、1に等しいnについては計算されないことが留意されよう。
【0165】
同じように、標的Cの左に移動することが可能であることは分かっているため、右間隙GapRight_nは、必然的に、4に等しいnについては計算されないことが留意されよう。
【0166】
この段階において、左間隙GapLeft_nが0以上である場合かつその場合に限り、自車両10は、考慮されている標的Cの左に移動することが可能であると考えることができる。
【0167】
同じように、右間隙GapRight_nが0以上である場合かつその場合に限り、自車両10は、考慮されている標的Cの右に移動することが可能であると考えることができる。
【0168】
したがって、図8の例において、以下が得られる。
- GapRight_1≧0。
- GapLeft_2≧0。
- GapRight_2<0。
- GapLeft_3<0。
- GapRight_3<0。
- GapLeft_4<0。
【0169】
この状況は図9に示されている。
【0170】
値GapRight_2、GapLeft_3、GapRight_3、GapLeft_4はすべて、厳密に0未満であることが観察され、これは、先験的に、標的C、CおよびCの間に移動することが可能でないことを意味する。
【0171】
値GapRight_4およびGapLeft_2は0以上であることも観察され、これは、標的C、CおよびCから成るこのグループのいずれかの側に移動することが可能であることを意味する。項GapRight_1は0以上であるため、標的Cの右に移動することも可能である。
【0172】
したがって、この段階において、コンピュータは、先験的に標的の間に移動することが可能でないとき、標的をグループ化することができる。
【0173】
この目的のために、標的の間の近接性の少なくとも1つの基準が使用される。
【0174】
第1の近接性基準は、標的間の横方向距離に関係する。
【0175】
したがって、グループを形成するために、コンピュータC10は、考慮されている標的Cと隣接する標的Cn+1(連続の順序における)との間の間隙GapRight_nまたはGapLeft_n+1が厳密に0未満であるかどうかを識別する。そうである場合、2つの標的はグループ化される。
【0176】
したがって、これは、図9の例において、以降、予備グループGと呼ばれる、3つの標的から成るグループを与える。
【0177】
標的を複数の標的から成るグループに組み合わせることは、そこで停止し得る。
【0178】
しかしながら、ここで、グループを形成するための第2の近接性基準を考慮することが規定される。この第2の近接性基準は、標的間の長手方向距離に関係する。
【0179】
具体的には、この着想は、自車両10が予備グループGの標的のうちのいくつかの間に適合することが可能でない場合に限り、グループを形成することである。
【0180】
この目的のために、コンピュータC10は、ここで、予備グループが、互いから長手方向に離間された標的を含むとき、1つまたは複数の予備グループGを分割するようにプログラムされる。
【0181】
各グループ内の標的のこのソートは、ここで、各標的Cの衝突余裕時間TTCを比較することによって実行される。一変形形態として、このソートは、他のパラメータ(特に、弧距離LAB)を使用して実行されていてもよい。ここでこのパラメータTTCを使用する利点は、標的Cの長手方向相対速度および加速度を考慮に入れることである。
【0182】
コンピュータC10は、複数の標的から成る各グループに対して同じように働き掛ける。
【0183】
コンピュータC10は、このグループの標的を、標的の衝突余裕時間に基づいて、たとえば、降順にランク付けする。
【0184】
図10の例において、このとき、標的は、C、C、Cの順序でランク付けされる。
【0185】
次いで、コンピュータは、(決定された順序において)連続する標的の各対の間の逸脱を計算する。
【0186】
したがって、図10の例において、コンピュータは、以下を計算する。
- 標的Cと関連付けられる衝突余裕時間TTCと標的Cと関連付けられる衝突余裕時間TTCとの間のΔ4-2
- 標的Cと関連付けられる衝突余裕時間TTCと標的Cと関連付けられる衝突余裕時間TTCとの間のΔ2-3
【0187】
次いで、コンピュータは、これらの逸脱Δ4-2、Δ2-3の各々を閾値Sxと比較する。
【0188】
この閾値は、定数であってもよい。しかしながら、好ましくは、閾値は、少なくとも自車両10の長手方向速度に基づいて選択される。
【0189】
2つの連続する標的と関連付けられる衝突余裕時間の間の逸脱がこの閾値よりも大きい場合、コンピュータは、予備グループを2つのグループに分割する。
【0190】
図10の例において、この動作の終わりに、標的CおよびCはその後、第1のグループG2を形成し、一方、標的Cは分離される。
【0191】
したがって、この段階において、コンピュータは、各グループを同じように分離された標的として考える。したがって、コンピュータは、左逸脱ovL、右逸脱ovR、および衝突余裕時間TTCをグループと関連付ける(iは考慮されているグループのインデックスである)。
【0192】
このとき、これらのパラメータは以下のように計算される。
【0193】
理解を容易にするために、考慮されているグループG3が3つの標的C、C、Cを含む、図11の例が参照され得る。
【0194】
グループの衝突余裕時間TTCは、グループの標的C、C、Cの衝突余裕時間TTCの中から最小の衝突余裕時間TTCに等しくなるように選択される。
【0195】
グループの左逸脱ovLは、グループの標的の左逸脱ovLの中から最大の左逸脱ovLに等しくなるように選択される。
【0196】
グループの右逸脱ovRは、グループの標的の右逸脱ovRの中から最大の右逸脱ovRに等しくなるように選択される。
【0197】
本開示の残りの部分において、単純にするために、複数の標的から成るグループと任意のグループの部分を形成しない単一の標的の両方を指定するために一般用語「標的」が使用される。
【0198】
第6のステップは、コンピュータについて、危機的である標的を他の標的から区別するために、標的の間で第2のフィルタリングを実行することに存する。
【0199】
標的は、回避されるためにAES機能の起動を必要とする場合に、危機的であると言われる。最も危機的な標的(標的MCT)は、AES機能の最も早い起動を必要とする標的である。
【0200】
標的の位置が、従うべき回避軌道を決定するときに考慮に入れられるべきであるようなものである場合、標的は、「中リスク」であると言われる。したがって、中リスク標的は、AES機能の起動を阻害する傾向にある。
【0201】
この着想は、検出された各標的を連続的に独立して(したがって、標的の周囲から独立して)考慮することである。
【0202】
初めに、コンピュータC10は、自車両10の交通車線内に位置する標的のすべてが危機的であると考える。
【0203】
自車両10が走行している車線に隣接する車線に位置する標的に関して、コンピュータは、それらの標的が追加の基準を順守するかどうかをチェックする。
【0204】
ここで、これらの基準は、以下のパラメータに関係する。
- 弧距離LAB
- 投影点Fと、車線境界線に最も近い標的の点との間の距離LaneDY(式[数式23])。
- 投影点Fにおける車線境界線に対する標的の速度の横方向成分VyObj/lineObj最も近い標的の点との間の距離LaneDY(式[数式14])。
【0205】
図12は、自車両10が走行している車線に隣接する2つの車線内に位置する3つの標的C、C、Cを示す。
【0206】
各標的が危機的であるかどうかを決定するために、コンピュータは、以下の2つの条件i)およびii)が満たされるかどうかをチェックする。
【0207】
第1の条件i)をチェックするために、コンピュータは、標的と考慮されている車線境界線との間の距離LaneDYを計算することによって開始する(式[数式23])。これによって、標的が考慮されている車線境界線に相対的に近いか、または、対照的に遠いかを確認することが可能になる。
【0208】
コンピュータC10は、その距離から、VythresholdMinとして示される、最小横方向速度閾値を推測する。
【0209】
次に、成分VyObj/lineObjが最小閾値VythresholdMinを超える場合、第1の条件(標的を危機的と考えるための)が満たされる。そうでない場合、標的は単純に中リスクであると考えられる。
【0210】
したがって、使用される閾値は標的と考慮されている車線境界線との間の距離に依存する変数であり、以て、この距離が小さくなるほど、衝突のリスクが大きくなるという事実を考慮に入れることが可能になることが留意されよう。
【0211】
使用される閾値は、さらに、標的が前回の増分において特性化された様態(危機的または非危機的)に依存し得る。具体的には、この着想は、標的の特性化が、融合されるべきデータの測定におけるノイズに起因して、各回の増分において変化しないということである。この目的のために、標的が非危機的から危機的に変化するために使用される閾値は、標的が危機的から非危機的に変化するために使用される閾値よりも高い(ヒステリシス関数と同様)。
【0212】
第2の条件ii)は、過度に大きいかまたは異常な横方向速度を有するものとともに、可能な知覚エラーから生じる標的を考慮に入れないことを可能にする。この目的のために、コンピュータは、横方向成分VyObj/lineObjの絶対値を所定の最大閾値VythresholdMaxと比較する。この成分が最大閾値よりも大きい場合、第2の条件は満たされず、標的は中リスクであると考えられる。最大閾値は、時として不合理な値を有する、誤検出を考慮しないように厳密であるべきである。
【0213】
この最大閾値は、好ましくは2m/sよりも大きく、好ましくは3m/sに等しい。
【0214】
条件i)およびii)のうちの一方および/または他方を満たさない標的は、中リスク標的であると考えられる。他の標的は、危機的であると考えられる。
【0215】
知覚された標的を危機的標的および中リスク標的に分類することによって、計算時間を短縮することが可能になる。その上、標的のこの分類は、AESシステムを起動するかどうかに関する判定を単純化し、行われる判定を、人間の運転者に対して正当化することができる。
【0216】
図12において、他の2つの標的のいずれも条件i)を満たさないため、標的Cのみが2つの条件i)およびii)を満たすと考えることができる。
【0217】
第7のステップは、コンピュータC10について、運転者に対するAES機能の押しつけがましい特性を最小化しながら障害物回避を保障することに関連する2つの別個の情報項目を統合する危機的時間Tcritを各危機的標的について決定することに存する。
【0218】
このパラメータを計算する利点は、特に、危機的標的の中でいずれの標的が最も危機的な標的MCTであるかを求めることを可能にすることである。
【0219】
このパラメータがどのように得られるかを説明する前に、AES回避システムは、完全に自動的に動作させられてもよく(この場合、支援ステアリングアクチュエータが回避軌道に自律的に従う)、または、半自動的に動作させられてもよい(この場合、回避は運転者によって手動で実行され、支援ステアリングアクチュエータは、運転者が回避をトリガすると回避軌道に従うことで運転者を支援するように制御される)ことが想起され得る。本明細書の残りの部分において、これら2つの方法をそれぞれ指定するために自律モードおよび手動モードが参照される。
【0220】
手動モードにおける回避は、自律モードにおける回避よりも有効でない可能性がある。したがって、AESシステムによって計算される回避軌道は、手動モードおよび自律モードにおいて同じでなくなる。この回避軌道(クロソイドの形態の)の計算は、本発明の対象ではないことが留意されよう。単純に、この軌道の形状は、車両の動的性能および(手動モードにおいて)運転者の能力に基づいて計算されることが想起され得る。
【0221】
いずれにせよ、計算された逸脱ovL、ovRを考慮に入れて、危機的標的を手動モードおよび自律モードにおいて右および左に回避するために、4つの回避軌道(4つのクロソイド)を構築することが可能である。
【0222】
これらのクロソイドは、車両の最大動的能力に依存する曲率を有する。このとき、これらのクロソイドの形状は、自車両10の速度に基づいて、データベースから読み出される。
【0223】
これらの逸脱および決定された回避軌道を考慮に入れて、これらから、各モードにおいて左または右への回避操作を実行するのに必要な時間に対応する4つの操作時間TTS(図7参照)を推測することが可能である。
【0224】
これら操作時間TTSが得られる様態は、自車両10の動的特性および運転者のパフォーマンスに依存するため、ここでは説明しない。実際には、これらの操作時間は、テストバッテリを使用して確立されるデータベースから読み出されてもよい。
【0225】
各危機的標的の衝突余裕時間TTCおよび操作時間TTSが分かると、コンピュータは、以下の式を使用して、それらの値から危機的時間Tcritを推測することができる。
[数式31]
Tcrit=TTC-TTS
【0226】
したがって、この危機的時間は、AES機能を起動し、考慮されている危機的標的を考慮されている側で回避することによって、考慮されている危機的標的との衝突を回避することがまだ可能である最後の瞬間においては0になる。
【0227】
したがって、この危機的時間Tcritは、考慮されている標的に関する3つの必須の情報項目、すなわち、標的を回避することになる側、システム(および運転者)のパフォーマンスおよび標的との衝突余裕時間TTCを担持する。
【0228】
次いで、第8のステップは、計算された危機的時間Tcritを使用して、危機的標的を分類し、最も危機的な標的MCTを求めることに存する。
【0229】
運転者が手動モードにおいて操作を制御している場合(たとえば、自律モードを起動することができなかったため)、コンピュータは、右に回避する場合に危機的時間が最小である危機的標的、および、左に回避する場合に危機的時間が最小である危機的標的を選択する。
【0230】
次に、運転者が回避操作を始動していることをコンピュータC10が検出すると直ちに、コンピュータは、2つの選択された危機的時間に基づいて運転者の操作を支援するためにAESシステムを起動することを判断することができる。
【0231】
この目的のために、コンピュータは、運転者が回避操作(右または左への)を開始するときにハンドルを回している側を決定し、次いで、2つの選択された危機的時間から、運転者が回避操作を開始した側に対応するものを選択する。
【0232】
最も危機的な標的MCTは、選ばれた危機的時間に対応する標的である。
【0233】
自律モードにおいては、コンピュータは別様に作用する。事実、自車両10が1つまたは複数の障害物を回避すべき側を決定する必要がある。
【0234】
このとき、この着想は、各危機的標的について、標的を回避するための最良の側を決定し、次いで、最も危機的な標的MCTを決定することである。
【0235】
実際には、コンピュータは、各危機的標的について、危機的時間Tcritが最も高い側を選択する。
【0236】
このとき、コンピュータは、このように選択された危機的時間の中から、最小であるものを選ぶ。
【0237】
コンピュータは、次いで、最も危機的な標的MCTは、危機的時間Tcritが選ばれたものであると考える。
【0238】
第9のステップは、コンピュータC10について、必要に応じて、かつ最適な瞬間に、AES機能をトリガすることに存する。
【0239】
この場合、自律モードにおいて、AES機能は、選ばれた危機的時間Tcritが、たとえば、0秒に等しい所定の閾値を下回って下降すると直ちにトリガされる。
【0240】
対照的に、手動モードにおいて、このAES機能は別様にトリガされる。
【0241】
この着想は、AES機能をトリガし、状況に対して調節された様式で運転者に回避を行わせることである。
【0242】
事実、運転者がハンドルを回し始めるのが早すぎる場合、状況はこの時点においてこのタイプの運転者からの措置を日宇町としないため、それらの操作は非緊急であると考えられる。このとき、AESシステムは起動されない。
【0243】
同様に、衝突が差し迫っている場合、かつ、前に自律モードを起動することができなかった場合、AESシステムが運転者に任意の支援を提供することができるようになるのは遅すぎると考えられ得る。このとき、コンピュータは、影響を最小限に抑えるために、別の安全システムに責任を引き渡す。
【0244】
したがって、手動モードにおいて、運転者によって実施される回避措置が検出される場合にAESシステムが起動される時間間隔を決定することが必要になる。
【0245】
この時間間隔は、2つの境界によって区切られる。
【0246】
そこから開始すると、運転者が回避操作を始動する場合に運転者が支援される第1の境界は、厳密に0よりも大きい危機的時間Tcritに対応する。
【0247】
そこから開始すると、AESシステムがトリガするのが遅すぎる第2の境界は、0以下であり、好ましくは厳密に0未満である危機的時間Tcritに対応する。
【0248】
したがって、AES機能を起動するために、コンピュータは、選ばれた危機的時間Tcritがこれら2つの境界の間にあるかどうかを決定し、これが当てはまる場合にのみ、AES機能を起動する。
【0249】
本発明は、説明され図示されている実施形態に決して限定されず、当業者には、本発明による実施形態に対する任意の変形形態を提供する方法が分かる。
【0250】
横方向でも長手方向でもなく、標的間の逸脱のみを考慮する単一の近接性基準が考慮され得る。
【0251】
別の変形形態として、第1のステップは、車両の長手方向逸脱に従って車両をグループ化し、次いで、このように得られた各グループを、必要に応じて、グループの車両間の横方向逸脱に従って分割することであってもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】