(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-15
(54)【発明の名称】ピストン圧縮機、特にヒートポンプ用ピストン圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04B 39/06 20060101AFI20240207BHJP
F04B 39/12 20060101ALI20240207BHJP
F04B 39/10 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
F04B39/06 U
F04B39/12 D
F04B39/10 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023551083
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(85)【翻訳文提出日】2023-10-03
(86)【国際出願番号】 EP2022051951
(87)【国際公開番号】W WO2022167326
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】102021102648.2
(32)【優先日】2021-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523007395
【氏名又は名称】エスペーハー サステナブル プロセス ヒート ゲーエムベーハ-
【氏名又は名称原語表記】SPH SUSTAINABLE PROCESS HEAT GMBH
【住所又は居所原語表記】Zur Kaule 1,51491 Overath (DE)
(74)【代理人】
【識別番号】100109634
【氏名又は名称】舛谷 威志
(74)【代理人】
【識別番号】100129263
【氏名又は名称】中尾 洋之
(72)【発明者】
【氏名】ハマー,ティム
(72)【発明者】
【氏名】ムック,アンドレアス
【テーマコード(参考)】
3H003
【Fターム(参考)】
3H003AA02
3H003AC01
3H003BF05
3H003CC07
3H003CC08
3H003CD02
(57)【要約】
【要約】本発明は、ピストン圧縮機であって、シリンダ(1)と、シリンダ長手軸(L)に沿って直線運動するように搭載されたピストン(2)と、作動チャンバ(3)であって、第一の弁部(11)によって作動媒体入口チャンバ(5)に流体接続され、第二の弁部(12)によって作動媒体出口チャンバ(6)に接続された、前記作動チャンバ(3)と、を備え、作動チャンバ(3)は、内側側面(7)、ピストン端面(8)、及び作動チャンバヘッド部(9)によって区切られており、作動チャンバヘッド部(9)は、第一の及び第二の弁部(11、12)の幾何学的配置から形成される。確実に効率を向上させるために、第一の及び第二の弁部(11、12)は、作動チャンバ(3)が作動チャンバヘッド部(9)に向かってテーパー状となるように配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストン圧縮機、より詳細には、ヒートポンプ用のピストン圧縮機であって、シリンダ(1)と、シリンダ長手軸(L)に沿って直線運動するように前記シリンダ(1)内に搭載されたピストン(2)と、前記シリンダ(1)内に形成された作動チャンバ(3)であって、その容量がピストン運動を介して変動可能であり、弁装置(4)の第一の弁部(11)によって作動媒体入口チャンバ(5)に流体接続され、前記弁装置(4)の第二の弁部(12)によって作動媒体出口チャンバ(6)に接続された、前記作動チャンバ(3)と、を備え、前記作動チャンバ(3)は、前記シリンダ(1)の内側側面(7)、前記ピストン(2)の端部に形成されたピストン端面(8)、及び前記ピストン端面(8)の反対側に配置された作動チャンバヘッド部(9)によって区切られており、前記作動チャンバヘッド部(9)は、第一の及び第二の弁部(11、12)の幾何学的配置から形成される、ピストン圧縮機において、前記第一の及び第二の弁部(11、12)は、前記作動チャンバ(3)が前記作動チャンバヘッド部(9)に向かってテーパー状となるように配置されている、ことを特徴とするピストン圧縮機。
【請求項2】
請求項1に記載のピストン圧縮機において、前記第一の及び第二の弁部(11、12)はそれぞれ、前記シリンダ長手軸(L)に対して90°ではない角度で配置されている、ことを特徴とするピストン圧縮機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のピストン圧縮機において、前記第一の及び第二の弁部(11、12)はそれぞれ、前記シリンダ長手軸(L)に対して相対的にズレた角度で配置されている、ことを特徴とするピストン圧縮機。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のピストン圧縮機において、前記第一の及び第二の弁部(11、12)はそれぞれ、前記シリンダ長手軸(L)に対して同じ角度で配置されている、ことを特徴とするピストン圧縮機。
【請求項5】
請求項1又は4に記載のピストン圧縮機において、前記作動チャンバヘッド部(9)がその断面に対して鋭角又は鈍角で終端し、前記鋭角又は鈍角は前記第一の及び第二の弁部(11、12)にまたがる、ことを特徴とするピストン圧縮機。
【請求項6】
請求項1又は4に記載のピストン圧縮機において、前記作動チャンバヘッド部(9)がその断面に対して直角に終端し、前記直角は前記第一の及び第二の弁部(11、12)にまたがる、ことを特徴とするピストン圧縮機。
【請求項7】
前記請求項のいずれか1項に記載のピストン圧縮機において、前記作動チャンバヘッド部(9)が、前記作動チャンバ(3)に向かう方向に凹状の断面形状を有する、ことを特徴とするピストン圧縮機。
【請求項8】
請求項1に記載のピストン圧縮機において、前記第一の及び第二の弁部(11、12)はそれぞれ、半球形状の作動チャンバヘッド部(9)を提供するように配置されている、ことを特徴とするピストン圧縮機。
【請求項9】
前記請求項のいずれか1項に記載のピストン圧縮機において、前記ピストン端面(8)が前記作動チャンバヘッド部(9)に外形的に対応する、ことを特徴とするピストン圧縮機。
【請求項10】
請求項1に記載のピストン圧縮機において、前記作動媒体入口チャンバ(5)と前記作動媒体出口チャンバ(6)は、前記作動チャンバヘッド部(9)に隣接するセパレータ(10)によって互いに分離されている、ことを特徴とするピストン圧縮機。
【請求項11】
請求項10に記載のピストン圧縮機において、前記セパレータ(10)は、前記作動媒体入口チャンバ(5)の壁と作動媒体出口チャンバ(6)の壁との間に配置された、より詳細にはエアギャップの形態で設計された、断熱層を備えていている、ことを特徴とするピストン圧縮機。
【請求項12】
請求項1~11の1項以上により設計されたピストン圧縮機を備えたヒートポンプ、特に、高温ヒートポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストン圧縮機に関し、特にヒートポンプ用のピストン圧縮機であって、シリンダと、シリンダ長手軸に沿って直線運動するようにシリンダ内に搭載されたピストンと、シリンダ内に形成された作動チャンバであって、その容量がピストン運動を介して変動可能であり、弁装置の第一の弁部によって作動媒体入口チャンバに流体接続され、弁装置の第二の弁部によって作動媒体出口チャンバに接続された、作動チャンバと、を備え、作動チャンバは、シリンダの内側側面、ピストンの端部に形成されたピストン端面、及びピストン端面の反対側に配置された作動チャンバヘッド部によって区切られており、作動チャンバヘッド部は、第一の及び第二の弁部の幾何学的配置から形成される、ピストン圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明により提案されるピストン圧縮機は、例えば、ヒートポンプ、特に高温ヒートポンプ等の熱力学的加熱システムに利用できる。但し、例えば冷蔵庫、空調システム等の熱力学的冷却システムも本発明の実施の形態から除外されない。本発明によって提案されるピストン圧縮機はまた、その他のシステムにも利用可能である。
【0003】
ヒートポンプの技術は一般的によく知られている。例えば、ヒートポンプは、技術的又は機械的仕組みを用いて、第一の外部媒体(例えば、周囲の空気又は液体)から熱エネルギを吸収することにより、使用される駆動エネルギに加えて有用なエネルギ、又は有用な熱として、第二の外部媒体に伝達する。第二の外部媒体は、加熱される媒体である。このようなシステムを地熱発電所で実施する場合、土石に含まれる液体を第一の外部媒体とすることができる一方、工業処理では廃熱を第一の外部媒体とすることができる。
【0004】
現在、ヒートポンプは特に建物の暖房に使われている。しかし、工業処理に必要な熱を発生させるためにヒートポンプを使用するという用途も知られるようになった。工業処理では、媒体温度が> 100度の高温ヒートポンプが使用又は必要とされることが多い。
【0005】
独国特許出願公開第10 2011 086 476A1において、高温ヒートポンプを例に、基本的なヒートポンプの原理が明確に説明されている。当該ヒートポンプは、技術的な作動によって少なくとも一つの第一の貯留槽からの流体(作動媒体)の熱エネルギを吸収し、少なくとも一つの第二の貯留槽を加熱するための熱エネルギを、流体を介して少なくとも一つの第二の貯留槽に伝達する流体回路を有している。
【0006】
ヒートポンプ(高温ヒートポンプも含む)は、気化ユニット、凝縮ユニット、膨張ユニットに加えて、流体回路を循環する作動媒体を圧縮するための圧縮機を標準装備している。気化ユニットでは、液体から気体へと輸送される機器が圧縮機に吸引され、作動媒体の液化に必要な圧力レベルまで圧縮される。(例えば電気的に)駆動される圧縮機が、蒸気状の作動媒体を低い出口圧力レベルから高い最終圧力レベル圧縮機まで圧縮する一方、作動媒体の温度が上昇する。先行技術から、圧縮機に関して例えば往復動圧縮機、スクロール圧縮機、ねじ圧縮機、回転圧縮機、回転ピストン圧縮機等、種々のバリエーションが知られている(このリストは網羅的なものではない)。往復動圧縮機は、ピストンがシリンダ長手軸に沿って、ピストンを囲むシリンダ内へ向かって下方に移動する際に、移動するピストンによって、気体の作動媒体を吸引チャンバ(作動媒体入口チャンバ)から、吸引弁を介して作動チャンバの方向に吸引するという原理に基づいている。作動媒体は、ピストンがシリンダ長手軸に沿って上方に移動する際に圧縮される。往復動圧縮機では、作動媒体が圧縮される間、吸引弁は閉じている。シリンダ内又は作動室内の圧力が、圧縮機の作動チャンバの高圧側の圧力レベルを超えると、作動媒体は、作動媒体出口チャンバの方向に出口弁(圧力弁)を介して作動チャンバから出る。「圧縮機」とは、「コンプレッサ」と同義語であり得る。本発明では、圧縮機は全体的にピストン圧縮機を指すものとする。実際の圧縮機は、圧縮機を駆動する駆動部(例えば、電気モータ等)や潤滑剤貯留槽等の他のコンポーネントと直接相互作用することができる。
【0007】
本発明は、開放型圧縮機システム、半密閉型圧縮機システム、密閉型圧縮機システムを含む、圧縮機システムの異なる設計に関し得る。開放型圧縮機システムでは、駆動部(モータ)は構造的に圧縮機から分離している。圧縮機の駆動軸は筺体から導出され、駆動部に接続されている。半密閉型圧縮機システムでは、駆動部及び圧縮機が共通の筺体に配置されている。密閉型圧縮機システムでも、駆動部及び圧縮機が共通の筺体に配置されているものの、半密閉型圧縮機システムとは異なり、完全に外側に溶接されている。
【0008】
原則として、前述の圧縮機又は圧縮機システムは、潤滑剤を保持するための潤滑剤貯留槽を備えている。潤滑剤は、潤滑剤混合物と理解してもよい。潤滑剤は、圧縮機又は圧縮機システムの構成要素、特に圧縮機の可動部材(ピストン、シリンダ、ベアリング、弁等)を潤滑するために使用される。公知の潤滑剤貯留槽は、「油だめ(Oil Sumps)」と呼称されることが多い。油または潤滑剤は、油だめ又は潤滑剤貯留槽から吸い込まれ、潤滑すべき各ポイントに送られる。
【0009】
公知のピストン圧縮機は、平坦な作動チャンバヘッド部を有する作動チャンバを備えており、即ち、(作動チャンバを、作動媒体入口チャンバと作動媒体出口チャンバから区別する)弁板は平坦で、且つ、シリンダの長手軸に直角であり、シリンダの長手軸に沿って移動するシリンダ内に搭載されている。弁板の反対側のピストン端面もまた平坦である。弁板表面の一部は吸引弁に使用され、他の一部は出口弁に使用される。上述した配置において、吸引された気体が噴出された気体を直接通過して流れることになり、不要なエネルギ損失や熱損失の原因となり得る。
【0010】
より具体的には、高温ヒートポンプでピストン圧縮機を使用する際に、従来の作動媒体と比較して密度の高い作動媒体を使用することで、これに伴う高い圧力損失や低い流動特性が補償される。そうでなければ、圧縮機の効率に固有の損失を引き起こし、例えば高温ヒートポンプによって提供され得る、圧縮機を含むシステムの損失を引き起こす。
【0011】
したがって、本発明の目的はより効率的でより効果的なピストン圧縮機及びヒートポンプを提供することにある。
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1の特徴からなるピストン圧縮機と、請求項13の特徴からなるヒートポンプを提案する。
【0013】
また、本明細書で使用される接続詞「及び/又は」は、二つの特徴の間に配置され、それらを互いに連結するものであるが、本発明によるオブジェクトの第一の実施の形態では、第一の特徴のみが存在し得、第二の実施の形態では、第二の特徴のみが存在し得、第三の実施の形態では、第一の特徴及び第二の特徴の両方が存在し得るように常に解釈されることに留意すべきである。
【0014】
本発明において記載する特徴によれば、本発明によるピストン圧縮機及び本発明によるヒートポンプ両方の好ましい実施の形態を提供することができる。したがって、ここに記載する機能はすべて、請求項のカテゴリの境界を越えて使用することができる。
【発明の概要】
【0015】
本発明は、ピストン圧縮機に関し、特にヒートポンプ用のピストン圧縮機であって、シリンダと、シリンダ長手軸に沿って直線運動するようにシリンダ内に搭載されたピストンと、シリンダ内に形成された作動チャンバであって、その容量がピストン運動を介して変動可能であり、弁装置の第一の弁部によって作動媒体入口チャンバに流体接続され、弁装置の第二の弁部によって作動媒体出口チャンバに接続された、作動チャンバと、を備え、作動チャンバは、シリンダの内側側面、ピストンの端部に形成されたピストン端面、及びピストン端面の反対側に配置された作動チャンバヘッド部によって区切られており、作動チャンバヘッド部は、第一の及び第二の弁部の幾何学的配置から形成される。
【0016】
本発明によるピストン圧縮機において、第一の及び第二の弁部が、作動室が作動チャンバヘッド部に向かってテーパー状となるように配置されていることを特徴とする。
【0017】
本発明によるピストン圧縮機は単一のピストンシリンダ部又は複数のピストンシリンダ部で構成できることが強調される。しかし、本発明は、ピストンとシリンダから構成されるピストンシリンダ部で例示される。従って、各ピストンシリンダ部は、以下の特徴を有することができる。
【0018】
-シリンダと、
【0019】
-シリンダ長手軸に沿って直線運動するようにシリンダ内に搭載されたピストンと、
【0020】
-シリンダ内に形成された作動チャンバであって、その容量がピストン運動を介して変動可能であり、弁装置の第一の弁部によって作動媒体入口チャンバに流体接続され、弁装置の第二の弁部によって作動媒体出口チャンバに接続された、作動チャンバと、を備え、作動チャンバは、シリンダの内側側面、ピストンの端部に形成されたピストン端面、及びピストン端面の反対側に配置された作動チャンバヘッド部によって区切られており、作動チャンバヘッド部は、第一の及び第二の弁部の幾何学的配置から形成される。第一の及び第二の弁部が、作動室が作動チャンバヘッド部に向かってテーパー状となるように配置されていることを特徴とする。
【0021】
作動チャンバの容量は、シリンダ内のピストン(ピストンは対応する駆動部によって駆動される)の位置に応じて、増減する。作動チャンバは、ピストンが作動チャンバヘッド部近傍に位置するとき(即ち、作動媒体入口チャンバ及び作動媒体出口チャンバに最も近いとき)に、最も低い死容量となる。ピストンの「直線運動」とは、特に、シリンダ内部におけるピストンの往復運動を意味すると理解される。
【0022】
作動媒体入口チャンバは、システムの低圧側を提供し、作動媒体出口チャンバが、システムの高圧側を提供する。作動媒体入口チャンバと作動チャンバとの間の流路接続は、作動媒体入口チャンバからの作動媒体が対応するピストン位置で作動チャンバに流入することを意味する。作動媒体は、作動チャンバにおいて圧縮されて、(ピストンの移動によって促されて)作動媒体出口チャンバに向かって作動チャンバを出る。作動チャンバと、前述した入口又は出口チャンバとの間の流路接続を提供するために、第一の及び第二の弁部は弁開口部(例えば、溝、穴、開口)を有してもよい。
【0023】
第一の及び第二の弁部は、例えば弁板の形態等、よく知られた形態で設計されてもよい。作動チャンバヘッド部は、第一の及び第二の弁部によって排他的に区画されてもよい。作動チャンバの作動チャンバヘッド部へ向かうテーパー状の形状によって、作動チャンバとそれぞれのチャンバとの間の接触面が確実に大きくなる。これにより、弁部(例えば、弁板)として利用可能な面積が拡大する。弁部の面積が増加することによって、圧力損失が減少する。提案される形状によって、作動チャンバに流入し、作動チャンバから流出する作動媒体は、互いに直接通過しなくなる。流れの分離が改善され、不要な熱の伝達が避けられる。
【0024】
以下では、本発明の良好な実施の形態を記載するが、当該実施の形態は、本発明によるピストン圧縮機の良好な実施の形態でもあり、本発明によるヒートポンプ、より詳細には高温ヒートポンプの良好な実施の形態でもあり得る。
【0025】
本発明により提案されるピストン圧縮機の第一の良好な実施の形態では、第一の及び第二の弁部はそれぞれ、シリンダの長手軸Lに対して90°ではない角度で配置されている。これは、弁装置がシリンダの長手軸に直角に配置されていないが、作動チャンバが作動チャンバヘッド部の方向にテーパー状となるように、屋根状のものを断面に提供することを意味する。弁部の一つが作動媒体入口チャンバに流路接続し、弁部の一つが作動媒体出口チャンバと流路接続している。このような配置によって、作動チャンバから流出する作動媒体を通過して、作動媒体が作動チャンバに流入する直接的な流れを回避することができる。また、これによって先行技術で知られる配置と比較して、弁装置の面積を増加させることができる。
【0026】
本発明により提案されるピストン圧縮機の第一の良好な実施の形態では、第一の及び第二の弁部はそれぞれ、シリンダの長手軸Lに対して相対的にズレた角度で配置されている。これにより、第一の及び第二の弁部が互いに対称となるように配置できないことが理解できる。非対称の配置も可能である。
【0027】
本発明により提案されるピストン圧縮機の別の良好な実施の形態では、第一の及び第二の弁部はそれぞれ、シリンダの長手軸Lに対して同じ角度で配置されている。このような実施の形態では、弁部は対称に配置され、好ましくは同一の形状、同一の寸法(長さ、幅、直径)を有しており、即ち同一の面積を提供する。
【0028】
本発明により提案されるピストン圧縮機のさらに良好な実施の形態では、作動チャンバヘッド部がその断面に対して鋭角又は鈍角で終端し、鋭角又は鈍角は第一の及び第二の弁部にまたがる。第一の及び第二の弁部にまたがる角度は、ピストン圧縮機の設置空間の要求又は構造的条件に応じて選択される。本発明により提案されるピストン圧縮機のさらに良好な実施の形態では、作動チャンバヘッド部がその断面に対して直角で終端し、直角は第一の及び第二の弁部にまたがる。
【0029】
本発明により提案されるピストン圧縮機の別の良好な実施の形態では、作動チャンバヘッド部が、作動チャンバに向かう方向に凹状の断面形状を有する。この場合、凹形状は、作動チャンバが作動チャンバヘッド部に向かってテーパー状となる、湾曲した断面と理解してもよい。この場合、凹形状は第一の及び第二の弁部の間の前述した角度の一つに関連する配置を意味することもある。
【0030】
本発明により提案されるピストン圧縮機の別の良好な実施の形態では、第一の及び第二の弁部はそれぞれ、半球形状の作動チャンバヘッド部を提供するように配置されている。これにより、先行技術から既知のシステムと比較して、弁装置又は弁部の面積をさらに増加させることができる。尚、先行技術と比較して面積を増加させるとは、使用されるピストン圧縮機のそれぞれの大きさに対して相対的な面積の増加であることを留意されたい。
【0031】
本発明により提案されるピストン圧縮機の別の良好な実施の形態では、ピストン端面が作動チャンバヘッド部に外形的に対応する。つまり、ピストンが作動媒体を圧縮する際、作動チャンバから作動媒体を可能な限り完全に排出することができる。また、これにより死容量を最小限に抑える。例えば、作動チャンバヘッド部が作動チャンバに向かう方向に凹形状を有する場合、ピストン端面は作動チャンバヘッド部に向かう方向に凸形状を有することが好ましい。作動チャンバヘッド部とピストン端面の幾何学的設計は、キーロックの原理に従って設計することができる。
【0032】
本発明により提案されるピストン圧縮機の別の良好な実施の形態では、作動媒体入口チャンバ及び作動媒体出口チャンバは、作動チャンバヘッド部に隣接するセパレータを介して互いに分離している。一方では、セパレータが作動媒体入口チャンバに含まれる作動媒体と作動媒体出口チャンバとの間の直接的な物質移動を防止し(作動チャンバを介して行われる)、もう一方では、セパレータが作動媒体入口チャンバと作動媒体出口チャンバとの間での熱移動を低減又は防止する。この目的で、セパレータは、作動媒体入口チャンバの壁と作動媒体出口チャンバの壁との間に配置された断熱層、より詳細にはエアギャップ、を備えていてもよい。断熱層がエアギャップであれば、空気が断熱媒体となる。これにより、構築の手間が減り、断熱層の交換も簡素化することができる。空気は、適切な弁を介して放出または供給することができる。別の断熱素材でセパレータを形成してもよく、作動媒体入口チャンバと作動媒体出口チャンバとの間の空洞に配置してもよい。また、複数の空洞チャンバ又はチャネルを提供することによりセパレータを形成することができる。断熱素材はまた、セラミック材、プラスチック、複合材料、繊維材料、ガラス、油、又はその他の断熱特性を有する適切な断熱剤であってもよい。
【0033】
前述したように、本発明はさらにヒートポンプ、より詳細には、本発明に従って設計された一つ以上のピストン圧縮機を備える高温ヒートポンプに関する。
【0034】
本発明によるピストン圧縮機が使用されるヒートポンプでは、高温ヒートポンプであることが好ましい。これは、熱吸収外部媒体の温度が100℃を超える高温ヒートポンプとすることができる。上述したピストン圧縮機を一つ以上提供することができ、各ピストン圧縮機は、上述した一つ以上のピストンシリンダ部で構成することができる。この目的において、往復動圧縮機が特に適している。
【0035】
本発明のさらなる特徴および利点は、以下の概略的な図面を参照して、さらに詳細に説明される本発明の非制限的な実施の形態に関する説明からもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1は、先行技術から既知のピストン圧縮機のピストンシリンダ部の一部を示す図である。
【0037】
【
図2】
図2は、本発明に基づき設計されるピストン圧縮機のピストンシリンダ部の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1には、先行技術から既知のピストン圧縮機のピストンシリンダ部の一部が示されており、シリンダ1(シリンダ筐体とも称する)と、シリンダ長手軸に沿って直線運動するようにシリンダ1内に搭載されたピストン2とが示されている。シリンダ1内には作動チャンバ3が形成され、その容量がピストン2の移動によって変化する。
【0039】
作動チャンバ3は、弁装置4の第一の弁部11を介して、作動媒体入口チャンバ5と流路接続しており、弁装置4の第二の弁部12を介して作動媒体出口チャンバ6と流路接続している。作動チャンバ3は、シリンダ1の内側側面7、ピストン2の一ピストン端部に形成されたピストン端面8、及び、ピストン端面8の反対側の作動チャンバヘッド部9により区分され、作動チャンバヘッド部9は、第一の及び第二の弁部11、12の幾何学的配置によって形成されている。
図1に示され、先行技術から既知の配置の場合、第一の弁部11は、(中央に配置される)第二の弁部12と同じ高さに配置されている。弁部11、12は、シリンダの長手軸Lに対して90°の角度で配置されている。ピストン2は、シリンダ1の内径に対応する外径を有する。ピストン端面8は、作動チャンバヘッド部9に対応する外形を有する。本実施例でも、ピストン端面8は、シリンダの長手軸Lに対して直角に配置され、平坦な形状を有する。
【0040】
このようなピストン圧縮機の場合、作動チャンバ3は、前述のように、作動チャンバヘッド部9から構成されている。これは平坦であり、シリンダ1のシリンダ長手軸Lに対して直角であり、ピストン2のシリンダ長手軸Lに沿って移動するように搭載されている。弁部11、12の反対側にあるピストン端面8も平坦である。第一の弁部11(本実施の形態では二つの第一の弁部11が外側に設けられている)の一部は、吸引弁として使用される。部分的に出口弁として使用される第二の弁部(中央)の領域についても同様である。上述した配置において、吸引された気体が噴出された気体を直接通過して流れることになり、不要なエネルギ損失や熱損失の原因となり得る。
【0041】
図2は、本発明に基づき設計されるピストン圧縮機のピストンシリンダ部の一部を示す図である。第一の及び第二の弁部11、12は、明確に、作動チャンバ3が作動チャンバヘッド部9に向かってテーパー状となるように配置されている。この場合、作動チャンバヘッド部9は屋根形状に設計されている。第一の及び第二の弁部11、12はそれぞれ、シリンダ長手軸Lに対して90°ではない角度で配置されている。ピストン端面8は、作動チャンバヘッド部9に対応する外形を有する。この場合、点線は、ピストン端面8も屋根形状であることを示しており、特に三角形状の断面を有していることを示している。
【0042】
作動チャンバ3の作動チャンバヘッド部9へ向かうテーパー状の形状によって、作動チャンバ3とそれぞれのチャンバ(作動媒体入口チャンバ5、作動媒体出口チャンバ6)との間の接触面が確実に大きくなる。これにより、弁部11、12として利用可能な面積が拡大する。弁部11、12の面積が増加することによって、圧力損失が減少する。提案される形状によって、作動チャンバ3に流入し、作動チャンバ3から流出する作動媒体は、先行技術同様に、互いに直接通過しない。流れの分離が改善され、不要な熱の伝達が避けられる。
【0043】
作動媒体入口チャンバ5と作動媒体出口チャンバ6は、作動チャンバヘッド部9に隣接するセパレータ10(点線で示す)によって互いに分離されている。セパレータ10は、作動媒体入口チャンバ5の壁と作動媒体出口チャンバ6の壁との間に配置された、より詳細にはエアギャップの形態で設計された、断熱層を備えていている。これにより熱損失も低減される。
【符号の説明】
【0044】
1 シリンダ
2 ピストン
3 作動チャンバ
4 弁装置
5 作動媒体入口チャンバ
6 作動媒体出口チャンバ
7 内側側面
8 ピストン端面
9 作動チャンバヘッド部
10 セパレータ
11 第一の弁部
12 第二の弁部
L シリンダ長手軸
【国際調査報告】