IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アデイクセン・バキユーム・プロダクトの特許一覧

<>
  • 特表-ドライ真空ポンプ 図1
  • 特表-ドライ真空ポンプ 図2
  • 特表-ドライ真空ポンプ 図3
  • 特表-ドライ真空ポンプ 図4
  • 特表-ドライ真空ポンプ 図5
  • 特表-ドライ真空ポンプ 図6
  • 特表-ドライ真空ポンプ 図7
  • 特表-ドライ真空ポンプ 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-15
(54)【発明の名称】ドライ真空ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 25/02 20060101AFI20240207BHJP
   F04C 27/00 20060101ALI20240207BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
F04C25/02 K
F04C27/00
F04C29/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023551137
(86)(22)【出願日】2022-02-03
(85)【翻訳文提出日】2023-10-20
(86)【国際出願番号】 EP2022052543
(87)【国際公開番号】W WO2022179819
(87)【国際公開日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】2101779
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511148259
【氏名又は名称】ファイファー バキユーム
(74)【代理人】
【識別番号】110003292
【氏名又は名称】弁理士法人三栄国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エリック マンダラ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン オリヴィエール
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン ソミエ
(72)【発明者】
【氏名】パトリック フィリップ
【テーマコード(参考)】
3H129
【Fターム(参考)】
3H129AA06
3H129AA24
3H129AB06
3H129BB16
3H129BB33
3H129CC09
3H129CC19
(57)【要約】
【課題】ハーフシェル構造を有するドライ真空ポンプのステータの密封性を改善する。
【解決手段】本発明は、ドライ真空ポンプ(1)であって、第1ハーフシェル(3)は、第1シール(14)のサイドレール(14b)を収容するハーフシェル(3、4)の接合面(10)に設けられた少なくとも1つのシール溝(16)を有し、シール溝(16)の底部は、第1シール(14)のための滑らかな移行部を形成するように「サドル」の形状を有するハーフシェル(3、4)の間に開口する少なくとも1つの接合界面(17)を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 少なくとも第1および第2の相補的なハーフシェル(3、4)と、第1および第2のエンドピース(5、6)とを有するステータ(2)と、
- 少なくとも1つの吸排気段(T1-T6)で回転するようになっている2つのロータシャフトと、
- 第1シール(14)と、を有するドライ真空ポンプ(1)であって、
前記ハーフシェル(3、4)および前記エンドピース(5、6)は、前記吸排気段(T1-T6)の少なくとも1つの吸排気チャンバを形成するように互いに結合されており、
前記第1シール(14)は、
- それぞれの前記エンドピース(5、6)と前記ハーフシェル(3、4)との間に挿入される第1および第2環状端部(14a)と、
- 前記環状端部(14a)を接続し、前記ハーフシェル(3、4)の間に挿入される2本のサイドレール(14b)と、を備え、
前記第1ハーフシェル(3)は、前記第1シール(14)のサイドレール(14b)を収容する前記ハーフシェル(3、4)の接合面(10)に設けられた少なくとも1つのシール溝(16)を有し、前記シール溝(16)の底部は、前記第1シール(14)のための滑らかな移行部を形成するように「サドル」の形状を有する前記ハーフシェル(3、4)の間に開口する少なくとも1つの接合界面(17)を有することを特徴とするドライ真空ポンプ(1)。
【請求項2】
前記第2ハーフシェル(4)は、前記第1ハーフシェル(3)の接合界面(17)に面して前記ハーフシェル(3、4)から開口する少なくとも1つの接合界面(18)を有し、前記接合界面(18)は、前記第1シール(14)のための滑らかな移行部を形成するように丸みを帯びた形状であることを特徴とする請求項1記載のドライ真空ポンプ(1)。
【請求項3】
丸みを帯びた形状の前記接合界面(18)の曲率半径(R2)は、2mm以上であることを特徴とする請求項2記載のドライ真空ポンプ(1)。
【請求項4】
丸みを帯びた形状の前記接合界面(18)の前記曲率半径(R2)は、5mm以下であることを特徴とする請求項2または請求項3記載のドライ真空ポンプ(1)。
【請求項5】
前記ハーフシェル(3、4)は、前記エンドピース(5、6)のノーズ(12)と協働するように形成された少なくとも1つのそれぞれのハーフリセス(13)を有し、少なくとも1つの前記接合界面(17、18)は、前記ハーフリセス(13)に開口していることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載のドライ真空ポンプ(1)。
【請求項6】
丸みを帯びた形状の2つの前記接合界面(18)は、前記第2ハーフシェル(4)の前記ハーフリセス(13)の加工と連続した輪郭フライス加工によって実現されることを特徴とする請求項2から5のいずれか1項記載のドライ真空ポンプ(1)。
【請求項7】
サドル形状の2つの前記接合界面(17)は、シール溝(16)の加工と連続する輪郭フライス加工によって実現されることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載のドライ真空ポンプ(1)。
【請求項8】
サドル形状である前記接合界面(17)の断面の曲率半径(R1)は、2mm以上であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載のドライ真空ポンプ(1)。
【請求項9】
サドル形状である前記接合界面(17)の断面の前記曲率半径(R1)は、5mm以下であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載のドライ真空ポンプ(1)。
【請求項10】
前記ドライ真空ポンプ(1)は、少なくとも1つの第2シール(15)を有しており、前記第2シール(15)は、
- それぞれの前記エンドピース(5、6)および前記ハーフシェル(3、4)の間に挿入される第1および第2環状端部(15a)と、
- 前記環状端部(15a)を接続する2本のサイドレール(15b)と、を備え、
前記サイドレール(15b)は、前記ハーフシェル(3、4)の間に挿入され、前記第1シール(14)は、前記第1シール(14)および少なくとも1つの前記第2シール(15)が、ガスのための少なくとも2つの連続したシールバリアを形成するように、前記第2シール(15)の内側に配置されることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項記載のドライ真空ポンプ(1)。
【請求項11】
前記ドライ真空ポンプ(1)は、前記ステータ(2)を150℃より高い温度に加熱するようになっている加熱装置(11)を有することを特徴とする請求項1から10のいずれか1項記載のドライ真空ポンプ(1)。
【請求項12】
前記ステータ(2)の前記ハーフシェル(3、4)は、前記ドライ真空ポンプ(1)の吸気オリフィス(7)と排気オリフィス(8)との間に直列に取り付けられた少なくとも2つの吸排気段(T1-T6)を形成することを特徴とする請求項1から11のいずれか1項記載のドライ真空ポンプ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライ真空ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ドライ真空ポンプは、吸排気されるガスが循環する1つ以上の吸排気段を直列に備えている。公知の真空ポンプの中では、「ルーツ」ポンプとしても知られる回転ローブ付きのものと、「クロー」ポンプとしても知られる爪付きのものとに区別される。これらの真空ポンプは「ドライ」と呼ばれる。それは、運転中に、ロータが、ステータの内部で、ロータ同士で、またはステータと機械的に接触することなく回転するので、吸排気段でオイルを使用しないことが可能になるためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、半導体、フラットパネルディスプレイ、太陽光発電産業で使用される吸排気方法やコーティング方法など、一部の吸排気用途では、使用されるガスにより真空ポンプを200℃程度の高温に保つ必要がある場合がある。これは、プロセスチャンバを洗浄する段階で使用されるガスのように、使用されるガスが腐食性である場合、またはこれらのガスが例えば樹脂蒸気を含む場合に、特に当てはまる。このような高温と攻撃的な化学種との関連から、ポンプのステータ部分の静的シールに高温FKMまたは高温FFKMタイプの高性能エラストマー材料を使用する必要がある。同様に、シール/シール溝のペアの設計は、低温時と高温時の両方のシール要件と、これらのエラストマーの固有の熱機械的特性を考慮するように工夫する必要がある。
【0004】
ステータが複数のステータエレメントの軸方向アセンブリで構成されるスライス構造を有する多段真空ポンプでは、矩形断面のシール溝に収容されたOリングシールを使用することで、この問題を容易に解決できる。これらのシールは、ステータエレメント間で軸方向に圧縮される。
【0005】
ハーフシェル構造を有する多段真空ポンプには、不利な点がある。具体的には、この構造では、シールペーストの使用または端と端を接合したシールの使用、または三次元シールの使用、またはこれらの実施形態の組み合わせの使用が必要となる。しかし、三次元シールを使用すると、エラストマーと金属材料の膨張係数が大きく異なるため、シール溝の入り口でシールに「ナイフ」効果が発生する可能性がある。この影響は、真空ポンプの運転温度が高くなると悪化する可能性があり、シールの不可逆的な劣化を引き起こし、最終的には真空ポンプの低温復帰に伴うシールの喪失につながる可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、上述の欠点の1つを少なくとも部分的に解決することであり、特に、ハーフシェル構造を有するドライ真空ポンプのステータの密封性を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のために、本発明の課題は、ドライ真空ポンプに関し、
- 少なくとも第1および第2の相補的なハーフシェルと、第1および第2のエンドピースとを有するステータと、
- 少なくとも1つの吸排気段で回転するようになっている2つのロータシャフトと、
- 第1シールと、を有するドライ真空ポンプであって、
前記ハーフシェルおよび前記エンドピースは、前記吸排気段の少なくとも1つの吸排気チャンバを形成するように互いに結合されており、
前記第1シールは、それぞれの前記エンドピースと前記ハーフシェルとの間に挿入される第1および第2環状端部と、前記環状端部を接続し、前記ハーフシェルの間に挿入される2本のサイドレールと、を備え、
前記第1ハーフシェルは、前記第1シールのサイドレールを収容する前記ハーフシェルの接合面に設けられた少なくとも1つのシール溝を有し、前記シール溝の底部は、前記第1シールのための滑らかな移行部を形成するように「サドル」の形状を有する前記ハーフシェルの間に開口する少なくとも1つの接合界面を有することを特徴とする。
【0008】
「サドル」の形状は、双曲放物面としても知られている。サドル型接合界面は、横方向断面において凸状である一連の円弧(または双曲線)から形成され、長手方向断面において凹状である部分を形成する。第1シールの環状端部とサイドレールとの間のほぼ直角の接合ゾーンは、接合界面の凹部に収容される。先行技術の溝の矩形断面の鋭利なエッジに代わる滑らかなサドル形状は、接合ゾーンでの第1シールの圧縮を均一にして、シールの熱機械的特徴に適合させることができる。
【0009】
ドライ真空ポンプは、単独で、または組み合わせて、以下に説明する特徴の1つ以上を有することもできる。
【0010】
第2ハーフシェルは、第1ハーフシェルの接合界面に面してハーフシェルから開口する少なくとも1つの接合界面を有することができ、この接合界面は、第1シールのための滑らかな移行部を形成するように丸みを帯びた形状である。第1シールの接合ゾーンも、接合界面の凸部によって圧縮される。先行技術のハーフシェルの鋭利なエッジに代わる滑らかな丸みを帯びた形状は、第1シールの圧縮を均一にして、接合界面の熱機械的特徴に適合させることができる。
【0011】
ハーフシェルは、エンドピースのノーズと協働するように形成された少なくとも1つのそれぞれのハーフリセスを有することができ、少なくとも1つの接合界面は、ハーフリセスに開口している。
【0012】
丸みを帯びた形状の2つの接合界面は、第2ハーフシェルのハーフリセスの加工と連続した輪郭フライス加工によって実現することができる。そのため、工具を交換することなく、ハーフリセスの続きで接合界面を丸みを帯びた形状にすることができる。
【0013】
サドル形状の2つの接合界面は、シール溝の加工と連続する輪郭フライス加工によって実現することができる。そのため、工具を交換することなく、シール溝と連続して接合界面をサドルとして成形することができる。
【0014】
サドル形状である接合界面の断面の曲率半径および/または丸みを帯びた形状の接合界面の曲率半径は、例えば2mm以上である。
【0015】
サドル形状である接合界面の断面の曲率半径および/または丸みを帯びた形状の接合界面の曲率半径は、例えば5mm以下である。
【0016】
ドライ真空ポンプは、少なくとも1つの第2シールを有することができ、この第2シールは、
- それぞれのエンドピースおよびハーフシェルの間に挿入される第1および第2環状端部と、
- 環状端部を接続する2本のサイドレールと、を備え、
サイドレールは、ハーフシェルの間に挿入され、第1シールおよび少なくとも1つの第2シールが、ガスのための少なくとも2つの連続したシールバリアを形成するように、第1シールは、第2シールの内側に配置される。
【0017】
シールバリアの多重化により、外側から内側に向かっても、その逆方向でも良好なシール性を確保することが可能になり、吸排気チャンバからの距離に応じて低下する腐食性ガスおよび/または耐熱性能レベルに対応できる異なる材料を使用することが可能になる。具体的には、内側の少なくとも1つの第1シールの材料が、第2シールの材料よりも、特に腐食、摩耗、および/または高温に対してより耐性のある材料から形成されるように規定することができる。従って、第2シールの材料は、第1の内部シールの材料よりも経済的であると同時に、安全性の点でも許容可能である。第2シールは、例えば、フッ素化エラストマー材料(FKM)製であり、第1シールは、例えば、パーフルオロエラストマー材料(FFKM)製である。
【0018】
ハーフシェルから開口するシール溝のすべての接合界面は、各シールに対して滑らかな移行部を形成するように、例えばサドル状に形成されている。一つの接合界面は、第1ハーフシェルのサドルとして形成された複数の接合界面に面して丸みを帯びた形状とすることができる。
【0019】
ドライ真空ポンプは、ステータを150℃より高い温度に加熱するようになっている加熱装置を有することができる。
【0020】
ステータのハーフシェルは、真空ポンプの吸気オリフィスと排気オリフィスとの間に直列に取り付けられた、例えば少なくとも2つの吸排気段を形成する。
【0021】
その他の利点および特徴は、本発明の特定の、しかし決して限定するものではない実施形態に関する以下の説明、および添付の図面を検討することにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】ドライ真空ポンプの一例の構成要素を示す分解模式図である。
図2図1のドライ真空ポンプの構成要素を下方から見た場合を示す分解模式図である。
図3図1のドライ真空ポンプの構成要素のA部の拡大詳細図である。
図4図2のドライ真空ポンプの構成要素のB部の拡大詳細図である。
図5図1および図2のドライ真空ポンプのハーフシェルをA部およびB部において接合した図である。
図6図1および図2のドライ真空ポンプの1つのハーフシェルに2つのシールを接合させた図である。
図7】組み立てられた状態の図1のドライ真空ポンプの構成要素の断面図であり、この断面は、エンドピースのノーズに取り付けられた第2シールにおける断面を表す。
図8図7のドライ真空ポンプの構成要素のC部の拡大詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
これらの図では、同一または類似の構成要素には同じ符号が付されている。
【0024】
本発明の理解に必要な構成要素のみが示されている。
【0025】
以下の実施形態は一例である。本明細書は、1つ以上の実施形態に言及しているが、これは必ずしも各参照が同じ実施形態に関連していること、または特徴が単一の実施形態にのみ適用されることを意味するものではない。異なる実施形態の個々の特徴を組み合わせて、または入れ替えて、他の実施形態を提供することもできる。
【0026】
低真空ポンプとは、2つのロータシャフトを使用して、大気圧で排気するガスを吸引し、移送し、排出するようになっている容積移送式真空ポンプとして定義される。ロータシャフトは、低真空ポンプのモータによって回転駆動される。低真空ポンプは、大気圧から起動することができる。
【0027】
ルーツ式真空ポンプまたはルーツコンプレッサ(ルーツブロワーとも呼ばれる)とは、ルーツ式のロータを使用して、排気するガスを吸引し、移送し、排出するようになっている容積移送式真空ポンプとして定義される。ルーツ式真空ポンプは、低真空ポンプの上流に、低真空ポンプと直列に取り付けられる。ロータは、ルーツ式真空ポンプのモータによって回転駆動される2本のシャフトによって支えられている。ルーツ真空ポンプは、1段から3段の吸排気段を有している。
【0028】
「上流」の構成要素とは、吸排気されるガスの循環方向に対して、他の構成要素より前に位置する構成要素として理解されるべきである。対照的に、「下流」の構成要素とは、吸排気されるガスの循環方向に対して、他の構成要素の後に位置する構成要素として理解されるべきである。
【0029】
軸方向とは、ロータシャフトの軸が延びるポンプの長手方向として定義される。横方向とは、軸方向に対して直角な方向である。横方向断面は、長手方向断面に対して直角な断面である。
【0030】
図1および図2は、ドライ真空ポンプ1の一例を示す。
【0031】
ドライ真空ポンプ1は、少なくとも第1および第2の相補的なハーフシェル3、4と、第1および第2のエンドピース5、6とを有するステータ2を備えている。ハーフシェル3、4およびエンドピース5、6は、吸排気段T1~T6の少なくとも1つの吸排気チャンバを形成するように互いに結合されている。
【0032】
ステータ2のハーフシェル3、4は、例えばドライ真空ポンプ1の吸気オリフィス7と排気オリフィス8の間に直列に取り付けられた少なくとも2つの吸排気段T1~T6を形成し、例えば2~10の吸排気段(図示の例では6段)を形成する。ドライ真空ポンプ1は、低真空ポンプ(図1)またはルーツ式真空ポンプとすることができる。
【0033】
ドライ真空ポンプ1は、少なくとも1つの吸排気段T1~T6で回転するようになっている2つのロータシャフト(図示せず)も備えており、これによりロータが吸気オリフィス7と排気オリフィス8との間で吸排気されるガスを駆動する。
【0034】
ロータは、例えば、「ルーツ」式または「クロー」式、または他の同様な容積移送式真空ポンプの原理に基づく、同一の輪郭のローブを有する。ロータを支えるシャフトは、例えばドライ真空ポンプ1の一端に配置されたモータ(図示せず)によって駆動される。
【0035】
各吸排気チャンバは、2つの嵌合ロータを収容しており、吸排気チャンバは、それぞれの入口と出口を備える。回転中、入口から吸い込まれたガスは、ロータとステータ2とによって作られた容積に閉じ込められ、ロータによって次のステージに向かって駆動される。
【0036】
連続する吸排気段T1~T6は、前の吸排気段の出口を次の吸排気段の入口に接続するそれぞれの段間チャネル9によって次々と直列に接続される。最初の吸排気段T1の入口は吸気オリフィス7と連通している。最後の吸排気段T6の出口は、排気オリフィス8と連通している。ロータの軸方向寸法と吸排気チャンバの軸方向寸法(したがって掃引容積出力)は、例えば、吸排気段に応じて同じであるか、または減少し、吸気オリフィス7側に位置する吸排気段T1は、最大の軸方向寸法のロータを収容し、最大の掃引容積出力を有する。
【0037】
これらの真空ポンプは「ドライ」と呼ばれる。これは、運転中、ロータ同士またはロータとステータ2とが機械的接触をすることなく、ロータがステータ2内で回転するためである。これにより、吸排気段でオイルを使用しないことが可能になる。
【0038】
ドライ真空ポンプ1は、ステータ2を150℃より高い温度に加熱するようになっている加熱装置11を有することができる(図1)。
【0039】
ハーフシェル3、4は、接合面10で互いに接合される。少なくとも1つの圧縮チャンバおよび必要に応じて段間チャネル9は、一部が第1ハーフシェル3に、一部が第2ハーフシェル4に形成される。
【0040】
接合面10は、例えばドライ真空ポンプ1の中央面を通る平坦な接合面である。平坦な接合面10は、例えばロータシャフトの軸を含んでいる。
【0041】
ハーフシェル3、4の第1端部は、第1エンドピース5によって閉じられ、ハーフシェル3、4の第2端部は第2エンドピース6によって閉じられている。もちろん、オリフィスが、必要に応じて、吸排気チャンバを隔てるハーフシェル3、4の横方向の壁に、また、ロータシャフトを通すためのエンドピース5、6に設けられている。
【0042】
ハーフシェル3、4およびエンドピース5、6は、アセンブリによって、例えば、エンドピース5、6によって支えられるノーズ12とハーフシェル3、4の端部に設けられるハーフリセスとの相補的なアセンブリによって互いに結合される。ノーズ12は、軸方向に突出している。ノーズ12は、例えば楕円形の横断形状を有し、例えば中実である。ハーフリセス13は、例えば、最初の吸排気段T1の吸排気チャンバおよび最後の吸排気段T6の吸排気チャンバに設けられている。
【0043】
ドライ真空ポンプ1は、第1シール14も有する。この第1シール14は、三次元的であり、単一ピース、すなわち一体にすることができ、または端から端まで接合すること、すなわち複数の弾性シール部品を端から端まで配置することによって形成することができる。
【0044】
第1シール14は、それぞれのエンドピース5、6とハーフシェル3、4との間に挿入される第1および第2環状端部14aと、これらの環状端部14aを接続する2本のサイドレール14bとを有する。サイドレール14bは、ハーフシェル3、4の間に挿入される。
【0045】
第1シール14は、特にエラストマー材料からなるので、弾性的である。例えば、第1シール14は、プレス成形または射出成形によって得られる。第1シール14は、例えば、非圧縮状態では、ほぼ円形の断面を有する。
【0046】
少なくとも1つの環状溝19は、第1シール14の環状端部14aを収容するように、少なくとも1つのノーズ12(図1および図2)および/または少なくとも1つの凹部に設けることができる。
【0047】
第1ハーフシェル3(図示の例では下部に記載のもの)は、ハーフシェル3、4の接合面10に設けられた少なくとも1つのシール溝16を有する。シール溝16は、第1シール14のサイドレール14bを収容する。
例えば、第1シール14のそれぞれのサイドレール14bを収容するように、少なくとも1つの圧縮チャンバの両側に第1ハーフシェル3の接合面10に設けられた2つのシール溝16がある。
【0048】
図3および図5でより明確に分かるように、シール溝16の底部には、第1シール14のための滑らかな移行部を形成するように「サドル」の形状をした、ハーフシェル3、4から開口する少なくとも1つの接合界面17がある。「サドル」の形状は、双曲放物面としても知られている。
【0049】
接合界面17は、横方向断面において凸状である一連の円弧(または双曲線)から形成され、長手方向断面において凹状である部分を形成する。接合界面17の断面の曲率半径R1は、例えば2mm以上、および/または5mm以下、例えば2.65mmである(図7および図8)。
【0050】
図示の例では、接合界面17は、ハーフリセス13のアセンブリによって形成される凹部に開口している。接合界面17は、シール溝16の底面と、この場合はハーフリセス13の面との間に滑らかな移行部を形成する。
【0051】
第1シール14の環状端部14aとサイドレール14bとの間のほぼ直角の接合ゾーンは、接合界面17の凹部に収容される(図6)。先行技術の溝の矩形断面の鋭利なエッジに代わる滑らかなサドル形状は、接合ゾーンでの第1シール14の圧縮を均一にして、シールの熱機械的特徴に適合させることができる。
【0052】
サドル形状の2つの接合界面17は、シール溝16の加工と連続した輪郭フライス加工によって実現することができる。シール溝16の径を加工する工具は、まずシール溝16の一端にある第1接合界面17を加工し、次にシール溝16を加工し、次にシール溝16の他端にある第2接合界面17を加工する。そのため、工具を交換することなく、シール溝16と連続して接合界面17をサドル形状に成形することができる。
【0053】
図4および図5で分かるように、第2ハーフシェル4は、第1ハーフシェル3の接合界面17に面してハーフシェル3、4から開口する少なくとも1つの接合界面18を有することができ、この接合界面18は、第1シール14のための滑らかな移行部を形成するように丸みを帯びた形状である。
【0054】
丸みを帯びた形状の接合界面18の曲率半径R2は、例えば2mm以上および/または5mm以下、例えば2.65mmである(図7および図8)。
【0055】
第1シール14の接合ゾーンも、接合界面18の凸部によって圧縮される(図8)。先行技術のハーフシェルの鋭利なエッジに代わる滑らかな丸みを帯びた形状は、第1シール14の圧縮を均一にして、接合界面18の熱機械的特徴に適合させることができる。
【0056】
丸みを帯びた形状の2つの接合界面18は、第2ハーフシェル4のハーフリセス13の加工と連続する輪郭フライス加工によって実現することができる。工具は、まずハーフリセス13の一端に第1接合界面18を加工し、次にハーフリセス13を加工し、次にハーフリセス13の他端に第2接合界面18を加工する。そのため、工具を交換することなく、ハーフリセス13の続きで接合界面18を丸みを帯びた形状にすることができる。
【0057】
接合界面17、18により、熱機械的挙動の相違の結果として第1シール14が破損する危険性を低減させることが可能となり、これにより、密封性が失われるリスクを低減することが可能となり、前後のメンテナンス作業間の期間を長くすることが可能となる。
【0058】
ドライ真空ポンプ1には、2つのシール14、15を設けることもできる。
【0059】
第1シール14と同様に、第2シール15は、三次元的であり、単一ピース、すなわち一体にすることができ、または端から端まで接合することもできる。それぞれのエンドピース5、6とハーフシェル3、4との間に挿入される第1および第2環状端部15aと、これらの環状端部15aを接続する2本のサイドレール15bとを有する。サイドレール15bは、ハーフシェル3、4の間に挿入される。
【0060】
第1シール14は、第2シール15の内側に配置され、第1シール14と少なくとも1つの第2シール15とが、ガスに対して少なくとも2つの連続したシールバリアを形成するようになっている。
【0061】
環状端部14a、15aは、互いに平行であり、サイドレール14b、15bに対して直角である。第1環状端部14a、15aは、例えば、ハーフシェル3、4の第1軸端部において、第1エンドピース5のノーズ12と最初の吸排気段T1の吸排気チャンバのハーフリセスとの間に挿入される。第2環状端部14a、15aは、ハーフシェル3、4の第2軸端部において、第2エンドピース6のノーズ12と最後の吸排気段T6の吸排気チャンバのハーフリセスとの間に挿入される。従って、例えば2つのエンドピース5、6の各々のノーズ12に軸方向にオフセットされた2つの環状溝19がある。
【0062】
シールバリアの多重化により、外側から内側に向かっても、その逆方向でも良好なシール性を確保することが可能になり、吸排気チャンバからの距離に応じて低下する腐食性ガスおよび/または耐熱性能レベルに対応できる異なる材料を使用することが可能になる。具体的には、内側の少なくとも1つの第1シール14の材料が、第2シール15の材料よりも、特に腐食、摩耗、および/または高温に対してより耐性のある材料から形成されるように規定することができる。従って、第2シール15の材料は、内部にある第1シール14の材料よりも経済的であると同時に、安全性の点でも許容可能である。第2シール15は、例えば、フッ素化エラストマー材料(FKM)製であり、第1シール14は、例えば、パーフルオロエラストマー材料(FFKM)製である。
【0063】
ハーフシェル3、4から開口するシール溝16のすべての接合界面17(この場合は4か所)は、各シール14、15に対して滑らかな移行部を形成するように、例えばサドル状に形成されている。
【0064】
接合界面18は、各シール14、15(この場合は2つ)に対して滑らかな移行部を形成するように、第1ハーフシェル3のサドルとして形成された複数の接合界面17に面して丸みを帯びた形状とすることができる。
【0065】
図には、エンドピースにノーズ12が設けられ、ハーフシェル3、4に相補的なハーフリセスが設けられたドライ真空ポンプ1が示されているが、本発明は、ノーズやハーフリセスのないドライ真空ポンプにも適用される。この場合、サドル形状および/または丸みを帯びた接合界面は、ハーフシェル3、4の端部の横方向の面から開口する。次いで、1つ以上のシール14、15が、エンドピースの面とハーフシェル3、4の端部の横方向の面との間で圧縮される。
【符号の説明】
【0066】
1 ドライ真空ポンプ
2 ステータ
3 第1ハーフシェル
4 第2ハーフシェル
5 第1エンドピース
6 第2エンドピース
7 吸気オリフィス
8 排気オリフィス
9 段間チャネル
10 接合面
11 加熱装置
12 ノーズ
13 ハーフリセス
14 第1シール
14a 環状端部
14b サイドレール
15 第2シール
15a 環状端部
15b サイドレール
16 シール溝
17 接合界面
18 接合界面
19 環状溝
T1~T6 吸排気段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】