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特表2024-507003試料中のSARS-CoV-2などの分析物の存在を検出するためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-15
(54)【発明の名称】試料中のSARS-CoV-2などの分析物の存在を検出するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6851 20180101AFI20240207BHJP
   C12Q 1/70 20060101ALI20240207BHJP
   C12Q 1/6888 20180101ALI20240207BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20240207BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240207BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20240207BHJP
【FI】
C12Q1/6851 Z
C12Q1/70
C12Q1/6888 Z
C12M1/34 B
C12M1/00 A
C12Q1/686 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573009
(86)(22)【出願日】2022-02-07
(85)【翻訳文提出日】2023-10-04
(86)【国際出願番号】 US2022015512
(87)【国際公開番号】W WO2022170202
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】63/146,259
(32)【優先日】2021-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523301411
【氏名又は名称】エイディーエル ディアグノスティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】アトキンソン,ロバート ジー.
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA23
4B029BB11
4B029BB13
4B029FA03
4B029FA11
4B063QA01
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ10
4B063QR08
4B063QR42
4B063QR56
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】
試料中の分析物を検出するための方法が開示される。この方法は、病原菌のゲノムの特徴的部分などの分析物を選択的に増幅するように構成されたループ媒介等温増幅(LAMP)機器などの機器内に試料を配置することを含むことができる。ある時点での分析物の量の移動平均は、(1)前の時点での移動平均と(2)前の時点での移動標準偏差の倍数との和と比較することができる。ある時点での分析物の量が、(1)前の時点での移動平均と(2)前の時点での移動標準偏差の倍数との和よりも大きい場合、それは試料が分析物に対して陽性であることを示すことができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析物を選択的に増幅するように構成された機器内に試料を配置し、
各信号が、ある時点での分析物の量に関連する複数の信号を受信し、
各時点について、その時点で終了する期間に関連付けられた前記複数の信号のサブセットに基づいて、前記分析物の量の移動平均および前記分析物の量の移動標準偏差を計算し、
第1の時点での前記分析物の量の移動平均を、(1)前記第1の時点の前の時間量である第2の時点についての移動平均および(2)前記第2の時点での移動標準偏差の倍数との和と比較する、
ことを含む方法。
【請求項2】
前記試料が生体試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生体試料が、血清、血液、唾液分泌物、涙液分泌物、呼吸器分泌物、鼻液、粘液サンプル、および腸分泌物からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記分析物がポリヌクレオチド配列である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリヌクレオチド配列がウイルスのポリヌクレオチド配列である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法であって
前記機器は、FLOS-LAMP機器であり
前記分析物は、SARS-Cov-2ゲノムの特徴的な配列である、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって
前記第1の時点での前記分析物の量の移動平均が、(1)前記第2の時点に関する移動平均と(2)前記第2の時点での移動標準偏差の倍数との和よりも大きいことに基づいて、陽性結果を示す信号を送信することをさらに含む、方法。
【請求項8】
前記信号が、前記分析物が選択的に増幅され始めた後の所定の期間内に得られた場合、陽性結果が得られたことを示す前記信号をユーザに報告しない、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記分析物の量が、時間の関数として、前記分析物の選択的増幅の開始後の所定の期間内に正の傾きを有し、下に凹である間、陽性結果が得られたことを示す前記信号をユーザに報告しない、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の時点での前記分析物の量の移動平均が、(1)前記第2の時点についての移動平均と(2)前記第2の時点での移動標準偏差の倍数との和よりも大きいことを決定してから所定の時間内に、前記分析物の分析が終了される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、
複数の信号は第1の複数の信号であり、
前記方法は、さらに、
各信号がある時点での対照量に関連付けられた、第2の複数の信号を受信し;
各時点について、その時点に終了する期間に関連する第2の複数の信号のサブセットに基づいて、対照の量の移動平均と対照の量の移動標準偏差を計算し;
第1の時点での対照の量の移動平均を、(1)第1の時点より前の時間量である第2の時点での対照の量の移動平均と(2)前記第2の時点での対照の量の移動標準偏差の倍数の合計と比較し、
前記第1の時点での対照の量の移動平均が、(1)前記第2の時点での対照の量の移動平均と(2)前記第2の時点での対照の量の移動標準偏差の倍数との和よりも大きいこと、および、
前記第1の時点での分析物の量の移動平均が、(1)前記第2の時点での分析物の量の移動平均と(2)前記第2の時点での分析物の量の移動標準偏差の倍数との和よりも小さいこと
に基づいて陰性の結果を示す信号を送信する、
ことを含む、方法。
【請求項12】
陰性の結果を示す信号が、前記分析物が選択的に増幅され始めた後の所定の期間内に得られた場合、陰性の結果を示す信号はユーザに報告されない、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
分析物の量が、時間の関数として、前記分析物が選択的に増幅され始めた後の所定の期間内に正の傾きを有し、下に凹である間、前記信号はユーザに報告されない、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法であって、
前記複数の信号は、第1の複数の信号であり、
前記方法は、
各信号は、ある時点での対照の量に関連付けられた、第2の複数の信号を受信し、
各時点に対して、その時点で終了する期間に関連付けられる前記第2の複数の信号のサブセットに基づいて、対照の量の移動平均および対照の量の移動標準偏差を計算し、
前記第1の時点での対照の量の移動平均を、(1)前記第1の時点の前の時間量である第2の時点に対する対照の量の移動平均と(2)前記第2の時点での対照の量の移動標準偏差の倍数との和と比較し、
前記第1の時点での対照の量の移動平均が、(1)前記第2の時点での対照の量の移動平均と(2)前記第2の時点での対照の量の移動標準偏差の倍数との和よりも小さく、かつ
前記第1の時点での分析物の量の移動平均が、(1)前記第2の時点での分析物の量の移動平均と(2)前記第2の時点での分析物の量の移動標準偏差の倍数との和よりも大きいこと
に基づいて陽性の結果を示す信号を送信する、
ことをさらに含む、方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法であって、
前記複数の信号は、第1の複数の信号であり、
前記方法は、
各信号が、ある時点での対照の量に関連付けられた第2の複数の信号を受信し、
各時点について、その時点において終了する期間に関連付けられる前記第2の複数の信号のサブセットに基づいて、対照の量の移動平均および対照の量の移動標準偏差を計算し、
前記第1の時点での対照の量の移動平均を、(1)前記第1の時点の前の時間量である第2の時点での対照の量の移動平均と(2)前記第2の時点での対照の量の移動標準偏差の倍数との和と比較し、
前記第1の時点での対照の量の移動平均が、(1)前記第2の時点での対照の量の移動平均と(2)前記第2の時点での対照の量の移動標準偏差の倍数との和よりも大きく、かつ、
第2の時点での分析物の量の移動平均が、(1)第2の時点での対照の量の移動平均と(2)前記第2の時点での分析物の量の移動標準偏差の倍数との和よりも大きい
ことに基づいて、陽性の結果を示す信号を送信する、
ことを含み、
前記第2の時点は、前記第1の時点後の所定の期間内に発生する、
方法。
【請求項16】
前記第1の時点で終了する期間は、少なくとも20秒の長さである、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の時点で終了する期間は、所定の一定の時間の長さである、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の時点で終了する期間の長さは、経過時間の関数に基づいて動的に決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記複数のシグナルが、増幅を受けているポリヌクレオチドの量を示す複数の電気化学的シグナルまたは複数の蛍光シグナルのうちの少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法であって、
前記複数のシグナルが、増幅反応を受けているポリヌクレオチドの量を示し、
前記第1の時点で終了する期間の長さが、前記増幅反応の温度の関数に基づいて動的に決定される、方法。
【請求項21】
前記第2の時点は、前記第1の時点の少なくとも180秒前である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記移動標準偏差の倍数は、少なくとも1.5である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記移動標準偏差の倍数は、所定の定数である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記移動標準偏差の倍数は、前記第1の時点での前記移動平均の関数として動的に決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
請求項1に記載の方法であって、
前記複数の信号は、第1の蛍光色素の強度に関連付けられた第1の複数の信号であり、
前記方法は、
各信号が、第2の蛍光色素の強度に関連付けられた第2の複数の信号を受信し、
各時点について、その時点において終了する期間に関連付けられた前記第2の複数の信号のサブセットに基づいて、前記第2の蛍光色素の強度の移動平均および前記第2の蛍光色素の強度の移動標準偏差を計算し、
第1の時点での前記第2の蛍光色素の強度の移動平均を、(1)前記第1の時点の前の時間量である第2の時点での移動平均と(2)前記第2の時点での移動標準偏差の倍数との和と比較する、ことをさらに含む、方法。
【請求項26】
請求項1に記載の方法であって、
前記複数の信号は、第1の複数の信号であり、
前記方法は、
各信号が、ある時点での前記試料中のRNasePの量に関連付けられる、第2の複数の信号を受信し、
各時点について、その時点で終了する期間に関連付けられた前記第2のRNasePの複数の信号のサブセットに基づいて、RNasePの量の移動平均およびRNasePの量の移動標準偏差を計算し、
第1の時点でのRNasePの量の移動平均を、(1)前記第1の選択された時点の前の時間量である第2の時点でのRNasePの量の移動平均と(2)前記第2の時点でのRNasePの量の移動標準偏差の倍数との和と比較し、
前記第1の時点でのRNasePの量の移動平均が、(1)前記第2の時点での前記RNasePの量の移動平均と(2)前記第2の時点でのRNasePの量の移動標準偏差の倍数との和よりも大きく、かつ
前記第1の時点での分析物の量の移動平均が、(1)前記第2の時点での分析物の量の移動平均と(2)前記第2の時点での分析物の量の移動標準偏差の倍数との和よりも小さい
ことに基づいて、前記試料の不十分な体積を示す信号を送信する、
ことを含む、方法。
【請求項27】
分析物の存在について試料を分析するためのシステムであって、
分析物を含有する反応管を受容するように構成されたウェル;
反応管内の分析物を照射するための波長で励起光を放出するように構成された発光源;
励起光によって照射されている分析物に応じた光学信号を受信するように構成された光学検出器;および、
前記発光源および前記光学検出器に動作可能に結合されたプロセッサであって、
前記発光源を起動し、
各信号が、前記光学信号に関連付けられ、ある時点での分析物の量を示す複数の信号を前記光学検出器から受信し、
各時点について、その時点で終了する期間に関連付けられた複数の信号のサブセットに基づいて、前記分析物の量の移動平均および前記分析物の量の移動標準偏差を計算し、
第1の時点での前記分析物の量の移動平均を、(1)第1の時点の前の時間量である第2の時点についての移動平均と(2)前記第2の時点での移動標準偏差の倍数との和と比較し、
第1の時点での前記分析物の量の移動平均が、(1)第2の時点についての移動平均と(2)前記第2の時点での移動標準偏差の倍数との和よりも大きいことに基づいて、陽性結果を示す信号を送信する
ように構成されたプロセッサ、
を備える、システム。
【請求項28】
各信号が、ある時点における分析物の量に関連付けられる複数の信号を受信し;
各時点について、その時点で終了する期間と関連付けられた前記複数の信号のサブセットに基づいて、分析物の量の移動平均および分析物の量の移動標準偏差を計算し;
第1の時点での分析物の量の移動平均を、(1)前記第1の時点の前の時間量である第2の時点での移動平均と(2)第2の時点での移動標準偏差の倍数とpの和と比較し;
第1の時点での分析物の量の移動平均が、(1)第2の時点での移動平均と(2)第2の時点での移動標準偏差の倍数との和よりも大きいことに基づいて、陽性結果を示す信号を送信する
ことを、プロセッサに実行させるように構成された命令を格納する非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項29】
生体試料中の分析物の存在または非存在を決定する方法であって、
分析物を選択的に増幅するように構成された機器内に生体試料を配置し;
各信号が、ある時点での分析物の量と関連付けられる複数の信号を受信し;
各時点について、その時点で終了する期間と関連付けられた前記複数の信号のサブセットに基づいて、前記分析物の量の移動平均および前記分析物の量の移動標準偏差を計算し;
第1の時点での分析物の量の移動平均を、(1)前記第1の時点の前の時間量である第2の時点での移動平均と(2)前記第2の時点での移動標準偏差の倍数との和と比較する、
ことを含み、
前記第1の時点での分析物の量の移動平均が、(1)前記第2の時点についての移動平均と(2)前記第2の時点での移動標準偏差の倍数との和よりも大きいとき、前記生体試料が、閾値量よりも多い分析物を含有すると判定し、
前記第1の時点での前記対照の量の移動平均が、(1)前記第2の時点での対照の量の移動平均と(2)前記第2の時点での対照の量の移動標準偏差の倍数との和よりも大きく、かつ、
前記第1の時点での分析物の量の移動平均が、(1)前記第2の時点での分析物の量の移動平均と(2)前記第2の時点での分析物の量の移動標準偏差の倍数との和よりも小さいとき、前記生体試料が、閾値量よりも少ない分析物を含有すると判定する、方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法であって、
前記生体試料が、血清、血液、唾液分泌物、涙液分泌物、呼吸器分泌物、鼻液、鼻腔ぬぐい液、口腔ぬぐい液、粘液サンプル、および腸分泌物からなる群より選択される、方法。
【請求項31】
前記分析物がポリヌクレオチド配列である、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
前記ポリヌクレオチド配列がウイルスのポリヌクレオチド配列である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記ウイルスがSARS-CoV2ウイルスまたはその変異体である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記機器がFLOS-LAMP機器である、請求項29または30に記載の方法。
【請求項35】
分析物の量がポリメラーゼ連鎖反応を含む方法を介して測定される、請求項1~3、7~26、29、または30のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮特許出願第63/146,259号に対する優先権およびその利益を主張し、その開示全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本明細書に記載される実施形態は、概して、標的分析物を選択的に増幅し、分析物の量に関連する信号の変化に基づいて標的分析物が試料中に存在するか否かを判定するためのシステムおよび方法に関する。本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、患者から採取された試料が、世界的なCOVID-19パンデミックの原因となる病原菌である重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)を含有するかどうかを決定するように構成された診断試験に特に好適である。
【背景技術】
【0003】
タンパク質、DNA、または他の適切なバイオマーカー、例えば、SARS-CoV-2に関連するものの存在を検出するために、いくつかの診断および分析技術が開発されている。多くのそのような技法は、所定の期間にわたって標的分析物を増幅し、次いで、標的分析物の量が検出できるかどうか、および/または「陽性」結果を示す所定の閾値を超えるかどうかを決定するように設計されている。そのような技術は、概して、完了するまで、または少なくとも標的分析物に関連する信号が所定の閾値を超えるまで実行されなければならないので、時間がかかる。このような技術の長い実行時間は、試験結果を得る際の著しい遅延の一因となっている。例えば、多くの場合、COVID-19試験結果を得るための待ち時間は7~10日である。したがって、試料中の分析物の存在を判定するのに必要な実行時間を短縮することができるシステム及び方法が必要とされている。本明細書に記載されるシステムおよび方法は、「迅速な」検査によく適しており、30分未満で患者が待っている間に結果をもたらす可能性があり、COVID-19の拡散を抑制することに著しく寄与することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“PCR Amplification - Acomprehensive instruction to PCR and qPCR methods, including video tutorialsand example protocols.”<URL: https://www.promega.com/resources/guides/nucleic-acid-analysis/pcr-amplification/>
【非特許文献2】O. L. Bodulev and I. Yu. Sakharov,“Isothermal Nucleic Acid Amplification Techniques and Their Use inBioanalysis”, Vol. 85, Biochemistry (Moscow), 2020, Vol. 85, No.2, pp.147-166
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、試料中の分析物の存在を検出するための方法に関する。この方法は、病原菌のゲノムの特徴的部分などの分析物を選択的に増幅するように構成されたループ媒介等温増幅(LAMP)機器などの機器内に試料を配置することを含むことができる。分析物の量は、分析物に関連する蛍光信号などの信号を受信することによって連続的に監視することができる。分析物の量の移動平均および分析物の量の移動標準偏差を計算することができる。ある時点での分析物の量の移動平均は、(1)前の時点での移動平均と(2)前の時点での移動標準偏差の倍数との和と比較することができる。ある時点での分析物の量が、(1)前の時点での移動平均と(2)前の時点での移動標準偏差の倍数との和より大きい場合、それは試料が分析物に対して陽性であることの示唆である可能性がある。
【0006】
本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、分析物を含むかどうかを判定するためにサンプルを評価するためのシステムに関する。
システムは次のものを含む:
検体を含む反応管を受け入れるように構成されたウェル;
反応管内の検体を照射する波長で励起光を発するように構成された発光源;
励起光によって照射されている検体に応答して光信号を受信するように構成された光検出器;および、
発光源および光検出器に動作可能に結合されるプロセッサ。
プロセッサは、
発光源を起動し、
光検出器から複数の信号を受信し、複数の信号からの各信号は、光学信号に関連付けられ、ある時点での分析物の量を示し、
各時点ごとに、その時点で終了する期間に関連付けられた複数の信号のサブセットに基づき、分析物の量の移動平均および分析物の量の移動標準偏差を計算し、
第1の時点での分析物の量の移動平均を、(1)第2の時点についての移動平均と(2)第2の時点での移動標準偏差の倍数との和と比較するように構成することができ、第2の時点は、第1の時点の前の時点である。
【0007】
本明細書で説明するいくつかの実施形態は、コンピュータで実行される方法(たとえば、プロセッサに方法を実行させるように構成された命令を記憶する非一時的コンピュータ可読媒体)に関する。
コンピュータで実行される方法は、複数の信号を受信することを含むことができ、複数の信号からの各信号は、ある時点での分析物の量に関連付けられる。分析物の量の移動平均及び移動標準偏差は、その時点で終了する期間に関連付けられた複数の信号のサブセットに基づいて、各時点について計算することができる。第1の時点での分析物の量の移動平均を、(1)第1の時点の前の量である第2の時点での移動平均と(2)第2の時点での移動標準偏差の倍数との和と比較することができる。第1の時点での分析物の量の移動平均が(1)第2の時点の移動平均と(2)第2の時点の移動標準偏差の倍数との和よりも大きいことに基づいて、陽性の結果を示す信号を生成および/または送信できる。
【0008】
本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、生体試料中の分析物の有無を判定する方法に関する。この方法は、分析物を選択的に増幅するように構成された機器内に生体試料を配置することを含むことができる。複数の信号を受信することができ、複数の信号からの各信号は、ある時点での分析物の量に関連付けることができる。分析物の量の移動平均および分析物の量の移動標準偏差は、その時点で終了する期間に関連付けられた複数の信号のサブセットに基づいて、各時点について計算することができる。
第1の時点での分析物の量の移動平均は、(1)第1の時点の前の時間量である第2の時点の移動平均と(2)前記第2の時点での移動標準偏差の倍数との和と比較することができる。
第1の時点での分析物の量の移動平均が、(1)第2の時点での分析物の量の移動平均と(2)第2の時点での分析物の量の移動標準偏差の倍数との和より大きい場合、生体試料は、閾値量より多い分析物を含有すると判定することができる。
(a)第1の時点での対照の量の移動平均が、(1)第2の時点での対照の量の移動平均と(2)第2の時点での対照の量の移動標準偏差の倍数との和より大きい場合、および、
(b)第1の時点での対照の量の移動平均が、(1)第2の時点での分析物の量の移動平均と(2)第2の時点での分析物の量の移動標準偏差の倍数との和より小さい場合、生体試料は、閾値量より多い分析物を含有すると判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】一実施形態による、分析物を増幅し、分析物の量に関連する信号を測定するように動作可能な機器を示す。
図1B】一実施形態による、分析物を増幅し、分析物の量に関連する信号を測定するように動作可能な機器を示す。
図1C】一実施形態による、分析物を増幅し、分析物の量に関連する信号を測定するように動作可能な機器を示す。
図1D】一実施形態による、分析物を増幅し、分析物の量に関連する信号を測定するように動作可能な機器を示す。
図2】一実施形態による、分析物を検出する方法のフローチャートである。
図3】実施例の試料のFLOS-LAMP分析からの実験データである。
【0010】
〔定義〕
本明細書で別途定義しない限り、本出願で使用される科学用語および技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。一般に、本明細書に記載される化学、分子生物学、細胞生物学および癌生物学、免疫学、微生物学、薬理学、ならびにタンパク質化学および核酸化学に関連して使用される命名法およびその技術は、当技術分野でよく知られており、一般に使用されているものである。
【0011】
本明細書で使用される場合、以下の用語は、別段の指定がない限り、それらに帰属する意味を有する。
【0012】
「含む」という用語は、「含むがそれに限定されない」という意味で使用される。「含む」と「含むがこれらに限定されない」は同じ意味で使用される。
【0013】
単語「a」および「an」は、特に断りのない限り、1つまたは複数を意味する。
【0014】
「約」とは、参照の分量、レベル、値、数、サイズ、量、重量または長さに対して30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1%も変動する分量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量または長さを意味する。「約」という用語と併せて使用される数値の文脈で論じられる任意の実施形態では、約という用語が省略され得ることが具体的に企図される。
【0015】
文脈上他の意味に解すべき場合を除き、本明細書および特許請求の範囲を通して、「含む(comprise)」という単語およびその変形、例えば「含む(comprises)」および「含む(comprising)」は、オープンで包括的な意味で、すなわち「含むが、これらに限定されない」と解釈されるべきである。
【0016】
「からなる」とは、「からなる」という語句の前のものをすべて含み、それに限定されることを意味する。したがって、「からなる」という語句は、列挙された要素が必要または必須であり、他の要素が存在し得ないことを示す。
【0017】
「から本質的になる」とは、その語句の前に列挙される任意の要素を含むことを意味し、列挙された要素について本開示で特定される活性または作用を妨げない、またはそれに寄与しない他の要素に限定される。したがって、「から本質的になる」という句は、列挙された要素が必要または必須であるが、他の要素は任意選択であり、列挙された要素の活性または作用に影響を及ぼすか否かに応じて、存在しても存在しなくてもよいことを示す。
【0018】
本明細書を通して「一実施形態」または「ある実施形態」への言及は、その実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通して様々な場所における「一実施形態では」または「ある実施形態では」という句の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0019】
本明細書で使用される場合、「試料」という用語は、1つまたは複数の分析物を含有する組成物を指す。試料は、様々な成分を含有する異種のものであってもよく、または1つの成分を含有する同種のものであってもよい。いくつかの例において、試料は、天然に存在する、生物学的材料、および/または人工材料であり得る。
【0020】
いくつかの例において、試料は、生体試料である。場合によっては、試料は、単細胞(または単細胞の内容物)または多細胞(または多細胞の内容物)、唾液試料、粘液試料、血液試料、組織試料、皮膚試料、尿試料、水試料、および/または土壌試料であり得る。場合によっては、試料は、真核生物、原核生物、哺乳動物、ヒト、酵母菌、および/または細菌などの生体に由来するものであってもよいし、ウイルスに由来するものであってもよい。いくつかの実施形態では、試料は食品または飲料製品であり得る。いくつかの実施形態では、試料は、表面のぬぐい液、例えば、食物調製表面または容器のぬぐい液であり得る。生体試料には、対象から得られた組織、細胞、および体液が含まれるが、これらに限定されない。例えば、生体試料には、血液、ならびに血清、血漿、またはリンパ液などの血液の一部または成分、唾液、鼻液などが含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、生体試料は、血液試料、血清試料、唾液試料、粘膜試料、組織試料、皮膚試料、尿試料である。一実施形態では、生体試料は、試験対象由来のウイルスまたはタンパク質分子を含有する。生体試料は、対象から従来の手段によって単離された末梢血白血球試料であり得る。特定の実施形態では、生体試料は、血清、血液、唾液分泌物(例えば、唾液)、涙液分泌物(例えば涙)、呼吸器分泌物(例えば粘液)、鼻汁、鼻腔ぬぐい液、口腔ぬぐい液、粘液試料、及び腸内分泌物(例えば粘液)が挙げられる。
【0021】
本明細書で使用される場合、「分析物」という用語は、本明細書に記載されるように検出される任意の分子または化合物を指す。適切な分析物には、例えば、環境分子、臨床分子、化学物質、および汚染物質などの小さな化学分子および/または生体分子が含まれるが、これらに限定されない。より詳細には、そのような化学分子および/または生体分子は、農薬、殺虫剤、毒素、治療薬および/または乱用薬物、ホルモン、抗生物質、抗体、有機材料、タンパク質(例えば、酵素、免疫グロブリン、および/または糖タンパク質)、核酸(例えば、DNAおよび/またはRNA)、脂質、レクチン、炭水化物、全細胞(例えば、病原性細菌などの原核細胞および/または哺乳動物腫瘍細胞などの真核細胞)、ウイルス、胞子、多糖、糖タンパク質、代謝産物、補因子、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、遷移状態類似体、阻害剤、栄養素、電解質、増殖因子および他の生体分子および/または非生体分子、ならびにそれらの断片および組合せを含むことができるが、これらに限定されない。本明細書に記載されるいくつかの分析物は、酵素、薬物、細胞、抗体、抗原、細胞膜抗原、および/または受容体もしくはそれらのリガンド(例えば、神経受容体もしくはそれらのリガンド、ホルモン受容体もしくはそれらのリガンド、栄養素受容体もしくはそれらのリガンド、および/または細胞表面受容体もしくはそれらのリガンド)などのタンパク質であり得る。特定の実施形態では、分析物は、例えば、細菌、ウイルス、酵母、または真菌などの感染性または病理学的因子である。
【0022】
本明細書中で使用される場合、用語「タンパク質」は、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、およびアナログ(天然に存在しないアミノ酸およびアミノ酸アナログを含むタンパク質を含む)、ならびにペプチド模倣構造体をいう。「タンパク質」という用語は、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、および類似体も指す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1A図1Cは、一実施形態による、分析物を増幅し、分析物の量に関連する信号を測定するように動作可能なFLOS-LAMP(自己脱消光ループ媒介等温増幅時のループプライマーの蛍光)機器100を示す。は、図1Bは、開いた空の構成の機器100を示す。図1Cは、サンプルを含む反応管110が機器100内に配置されていることを示す。図1Aは、閉じた構成の機器100を示す。カバー104が閉じられた状態で、機器は、ポリヌクレオチド配列を選択的に増幅するように構成され得る。例えば、反応管110は、公知の技術(例えば、ループ媒介等温増幅)に従って、サンプル中の1つ以上の分析物および/または1つ以上の対照を選択的に増幅させるための好適なプライマーを含むことができる。
【0024】
機器100は、反応管110を受け入れるように構成されたハウジング102を含む。カバー104は、図1Aに示すように、ハウジング102に結合することができる。例示的な実施形態では、カバー104は、反応管110の上部を覆うように移動可能に構成されたヒンジ付きカバー(または任意の他の好適な方法で機器100に取り付けられた任意の他の好適なカバー)であってもよい。場合によっては、カバー104は、反応管110をハウジング102内に収容する(場合によってはロックする)ように構成される。
【0025】
図1Aはまた、アッセイの実施中及び実施後に情報を表示するように構成された表示画面111を示す。さらに、機器100は、カバー104を開くためのカバーボタン121を有してもよい。さらに、画面111上に表示されるオプションを選択するための選択ボタンと、画面上のオプション間を上下に移動させるための上下それぞれのボタン122Aおよび122Bとがあってもよい。様々な実施形態において、オプションは、実行されているアッセイのタイプに関連付けることができる。
【0026】
カバー104の下に、筐体102は、図1Bに示されるように、反応管110を配置するためのウェル107を含んでもよい。図1Cは、区画102のウェル107内に配置された反応管110を示す。様々な実施形態において、機器100は、ポリマー連鎖反応(PCR)、ループ媒介等温増幅(LAMP)、リアルタイムFLOS(RT-LAMP)、自己脱消光時のループプライマーの蛍光(FLOS LAMP)またはその他の適切な技術を使用して分析物を増幅するように構成されている。一実施形態によれば、機器100はさらに、分析物の量に関連する信号を測定するように構成することができる。例えば、機器100は、ポリヌクレオチド配列を選択的に増幅するように構成されてもよい。例えば、反応管110は、公知の技術(例えば、LAMP等)に従って、試料中の1つ以上の分析物および/または1つ以上の対照を選択的に増幅させるための好適なプライマーを含むことができる。
【0027】
種々の実施形態では、反応管110は、底部において閉鎖される本体部分を含み、底部は、励起波長における励起光および放出波長における放出光に対して少なくとも部分的に透明である。
【0028】
図1Dは、反応管110が内部に配置された閉鎖構成にある機器100の断面図である。加熱ブロック130は、反応管および試料の温度を制御するように、例えば、(適切なプライマーを含有する)試料内の分析物の温度を維持して、分析物に等温増幅を受けさせるように構成される。加熱ブロック130は、発光源140(例えば、発光ダイオード、レーザ等)が所定の波長で試料を照射し、および/または反応管110内に含有される蛍光染料を励起することができるように、光学経路を提供する、穴を含む。加熱ブロック130を通る別の穴は、センサ150(例えば、フォトダイオード、光電子増倍管、電荷結合素子(CCD)、および/または任意の他の好適な光学検出器)が、蛍光色素によって放出され、分析物および/または対照の量および/または濃度と関連付けられる蛍光信号等の光学信号を検出することができるように、光学経路を提供する。他の実施形態では、機器100は、固有の蛍光、吸光度、および/または色(変化)を検出するように構成される光学センサ、電気化学センサ、pHセンサ、または分析物の濃度および/または量を示す信号を検出するように動作可能な任意の他のセンサ等、分析物および/または対照の量および/または濃度に特徴的な信号を検出するように動作可能な任意の他の好適なセンサを含むことができる。
【0029】
機器100は、プロセッサ162及び/又はメモリ164を含む。プロセッサ162は、例えば、汎用プロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向けIC(ASIC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、及び/又は同様のものとすることができる。プロセッサ162は、メモリ、例えば、メモリ164からデータを検索し、および/またはそこにデータを書き込むように構成されることができる。メモリ164は、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、メモリバッファ、ハードドライブ、データベース、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、リードオンリメモリ(ROM)、フラッシュメモリ、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、クラウドストレージ、及び/又はその他であり得る。
【0030】
プロセッサ162およびメモリ164は、加熱ブロック130、光源140、および/またはセンサ150に通信可能に結合され、反応管110内に配置された分析物および/または対照が選択的に増幅される実行を制御するように構成され得る。プロセッサおよびメモリは、分析物および/または対照の濃度に関連する信号を受信、処理、および/または記録するように動作可能であり得る。プロセッサおよび/またはメモリは、本明細書でさらに詳細に説明される方法に従って、反応管110内に含有される試料が1つ以上の分析物に対して「陽性」または「陰性」であるかどうかを判定するように構成され得る。機器110の筐体内に示されるが、他の実施形態では、プロセッサ162および/またはメモリ164は、別のデバイス内に配置されることができる。同様に述べると、機器110は、実行を制御し、および/または試料が陽性もしくは陰性であるかどうかを判定するように構成される、外部計算装置に通信可能に結合されることができる。
【0031】
図2は、一実施形態による、分析物を検出する方法のフローチャートである。図2に示され、説明される方法は、図1を参照して図示および説明される機器100、または、分析物を選択的に増幅するように構成される任意の他の好適な機器によって行われることができる。方法全体を通して、機器100は、経時的に試料を分析することができる。例えば、機器100は、SARS-CoV-2ゲノムの特徴的な配列などの分析物を増幅するためにLAMPを実行するように構成することができる。分析の間、機器100は、220において、分析物の量に関連する信号を継続的に受信することができる。機器100は、毎秒、5秒ごと、10秒ごと、20秒ごと、または任意の他の適切なサンプリングレートで、分析物の量に関連する信号を受信するように構成することができる。例えば、FLOS-LAMP技術では、試料が選択的に増幅されるときに、蛍光標識から放出される光の強度(L)を使用して分析物の量および/または濃度を決定することができるように、標識されたループプローブが分析物に結合したときに蛍光を発するように構成することができる。220で受信された信号は、蛍光色素分子の強度および/または分析物の濃度の時系列データを表すことができる。
【0032】
機器(または機器に結合された計算装置)は、220で受信された分析物に関連する信号を処理するように動作可能であり得る。この機器は、230で強度の移動平均(μL)と強度の標準偏差(σL)を計算できる。通常、移動平均と標準偏差には同じウィンドウが適用される。移動平均および移動標準偏差ウィンドウの幅は、事前に決定および/または動的に決定できる。FLOS-LAMP信号に関して、移動平均および/または標準偏差が計算される好適な固定窓は、少なくとももしくは約3分、少なくとももしくは約2分、少なくとももしくは約60秒、少なくとももしくは約30秒、少なくとももしくは約20秒、または任意の好適な時間長であることができる。いくつかの実施形態では、移動平均および/または標準偏差が計算されるウィンドウは、例えば、実行が進行するにつれてウィンドウの長さが減少するような、増幅反応の経過時間および/または温度の関数であり得る。
【0033】
他の実施形態では、機器は、強度測定をさらに処理して分析物の量を計算することができる。蛍光色素分子の強度ではなく分析物の量について移動平均および移動標準偏差を計算することができる。
【0034】
移動平均および移動標準偏差を計算すると、データセットが、各時点(t)ごとに、瞬間強度(L(t))、その時点で終了する期間にわたる平均強度(μ(t))、およびその時点で終了する期間にわって取得された強度測定値の標準偏差(σ(t))を含むように、メモリに記憶され得るデータセットを生成する。移動平均および移動標準偏差は、強度測定が行われる際に実質的にリアルタイムで(例えば、1秒未満以内に)計算することができる。計算されると、240で、強度の移動平均を、時間内の前の時点に対して計算された強度の移動平均と、時間内のその前の時点に対して計算された強度の標準偏差の倍数との合計:
μ(t-x)+y*σ(t-x) (式1)
と比較することができる。
ここで、xは、現在の時点と前の時点との間の時間差を表し、
yは、移動標準偏差に乗算される定数又は関数である。
FLOS-LAMP分析に関して、好適なxは、約8分、約6分、約4分、約2分、または任意の他の好適な時間である。好適なyは、1.2、1.5、1.8、2、2.5、3、4、または任意の他の好適な値である。同様に述べると、FLOS-LAMP分析について、強度の現在の(例えば、直近に計算された)移動平均は、4分前に計算された強度の移動平均に、4分前に計算された強度の標準偏差の2倍を加えたものと比較され得る。時間内の前の時点に対して計算された強度の移動平均と、時間内のその前の時点に対して計算された強度の標準偏差の倍数との合計よりも現在の強度の移動平均のほうが大きいことを、「標的指標」と呼ぶことができる。
μ(t)>μ(t-x)+y*σ(t-x) (式2)
標的指標は、陽性結果、またはサンプル中の分析物の存在を表すことができる。いくつかの時点では、試料が陽性であると判定すると、250において、陽性の結果を示す信号を直ちに(例えば、3秒以内に)(例えば、ユーザまたは技術者に)送信することができ、および/または260において、試料の実行を終了することができる。他の時点では、陽性の結果の指標を、一定期間(例えば、5秒、10秒、15秒、30秒など)を標的指標に基づいて送信することができる。このようにして、増幅中に試料の陽性性について継続的に評価することができ、陽性結果を検出した時点で実行を終了できるため、所定の期間にわたって試料を増幅し、処理後に試料を評価する必要性を排除することができる。そのような技術は、多くの時点において、公知の方法と比較して実行時間を大幅に短縮することができる。
【0035】
いくつかの例では、同様の技術を対照信号に適用して、陰性結果(例えば、試料からの分析物の不在及び/又は検出閾値を下回る分析物の量を含有する試料)を検出することができる。試料は、1つまたは複数の内部対照と、対照の量を示す発光シグナルを生成するように構成された蛍光タグを含めることができる。通常、試料には、初期量および/または濃度が既知の対照が含まれる。この機器は、既知の初期量/濃度の対照があれば、その対照が示す時間を予測できるように、分析物と同時に対照を選択的に増幅するように構成できる。本明細書においてさらに詳細に考察されるように、対照が示す配列および/または対照が示す時間の差を使用して、試料が陽性であるか陰性であるかを決定することができる。したがって、対照の初期量/濃度は分析物の検出閾値と関連付けることができる。試料はまた、試料の実行が様々な理由で失敗したかどうかを示すように構成された追加の対照を含むことができる。例えば、対照を使用して、十分な量の試料が得られたかどうかを判断できる。RNasePは、ヒト鼻粘液中に予測可能な濃度で存在することが知られており、十分な量のヒト鼻粘液試料が存在するかどうかを評価するために使用することができる。したがって、RNaseP対照が(例えば、既知の濃度を有する対照が示す前に)表示できなかった場合、機器は、試料が不十分であることについて試験が決定的ではなかったことを示す信号を送信する可能性がある。
【0036】
いくつかの実施形態では、内部対照は試料、例えば生体試料に対して内因性であってもよく、または内部対照が試料に添加されてもよい。非限定的な一例では、生体試料中のウイルスDNAまたはRNAの存在を検出する場合、内部対照は、ハウスキーピング遺伝子から発現されたRNAまたはリボソームRNAであってもよい。典型的には、対照の量を示す発光信号は、分析物の量を示す発光信号とは異なるスペクトル特性および/または時間特性を有する。他の時点では、試料は、2つ以上のサブ試料に細分することができる。各サブ試料は、1つ以上の異なる分析物について分析され、かつ/または1つ以上の異なる分析物の対照として機能するように構成することができる。そのような実施形態では、通常、各サブ試料は、同時に増幅される。試料の分析中、機器は、225において、対照の量に関連する信号を継続的に受信することができる。
【0037】
機器(または機器に結合された計算デバイス)は、225で受信された対照に関連付けられた信号を処理するように動作可能であり得る。機器は、235で、対照信号(μ)の強度の移動平均および対照信号(σ)の強度の標準偏差を計算することができる。他の実施形態では、機器は、強度測定値をさらに処理して、対照の量を計算することができる。他の実施形態では、機器は、強度測定をさらに処理して、対照の量を計算することができる。移動平均と移動標準偏差は、対照の量に関連付けられた強度ではなく、対照の量に対して計算できる。
【0038】
移動平均および移動標準偏差を計算することは、データセットが、時間(t)の各時点について、対照信号の瞬間強度(C(t))、その時点で終了する期間にわたる対照信号の平均強度(μ(t))、および、その時点で終了する期間にわたって取得された対照信号の強度の標準偏差(σ(t))を含むように、メモリに記憶することができるデータセットを生成する。前の時点に対して計算された対照信号の強度の移動平均と、その前の時点について計算された対照信号の強度の標準偏差の倍数との和よりも、対照信号の強度の現在の移動平均が大きいことを、「対照指標」と呼ぶことができる。
μ(t)>μ(t-s)+v*σ(t-s) (式3)
(sは現在の時点と前の時点の間の時間の差を表し;
vは移動標準偏差に乗算する定数または関数である。)
FLOS-LAMP分析の場合、好適なsは、約8分、約6分、約4分、約2分、または任意の他の好適な時間である。好適なvは、1.2、1.5、1.8、2、2.5、3、4、または任意の他の好適な値である。いくつかの例では、sは(式1および/または2からの)xに等しくてもよく、および/またはvは(式1および/または2からの)yに等しくてもよい。他の時点では、対照指標かどうかを決定するために使用される定数/関数が、標的指標かどうかを決定するために使用される定数/関数とは異なり得る。例えば、xは240秒に等しく、yは2に等しく、sは360秒に等しく、vは1.5に等しくなり得る。加えて、または代替的に、標的および対照についての移動平均および標準偏差が適用されるウィンドウは、同じであっても異なっていてもよい。
【0039】
いくつかの例では、対照指標があり、標的指標がない場合、255において、陰性結果を示す信号を送信することができ、および/または260において、試料の実行を終了することができる。いくつかの実施形態では、255で陰性結果を送信することができ、及び/又は試料の実行は、試料がない対照指標の直後(例えば、3秒以内)260で終了することができる。他の実施形態では、対照が指標に基づいて、実行は、固定期間(例えば、3分、5分、または任意の他の好適な期間)にわたって、または、例えば、実行の開始からの時間の関数である動的に決定された期間にわたって継続することができる。対照指標の後の期間中に標的指標がある場合、陽性の検査結果を示す信号を250で送信することができ、および/または実行を260で終了することができる。さらに他の実施形態では、標的指標に基づいて、実行は、固定期間(例えば、3分、5分、または任意の他の好適な期間)にわたって、または例えば、実行の開始からの時間の関数である動的に決定された期間にわたって継続することができる。標的指標の後の期間中に対照指標がある場合、陰性試験結果を示す信号を255で送信することができ、及び/または実行を260で終了することができる。2つ以上の対照が使用される時点では、各対照指標および/または標的指標の絶対的および/または相対的タイミングを使用して、陽性結果または陰性結果の指示を送信するかどうかを決定することができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、陽性試験結果および/または陰性試験結果の表示は、それが分析の最初の部分で発生する場合、無視される(例えば、分析されない、抑制されない、送信されない、報告されない、記録されない、および/または実行を終了する根拠ではない)。LAMP分析では、試料は、典型的には、予熱されたヒーターブロックに挿入される。典型的には、蛍光色素分子の特性により、(例えば、試料がヒーターブロックとの熱平衡に達する前の)低温では標的および対照信号は弱くなる。このような弱い信号は、試料の陽性/陰性の信頼できる指標ではない可能性がある。加えて、試料が熱平衡に近づくにつれて蛍光色素分子の強度が増加する速度は、通常減少する。同様に、試料がヒーターブロックとの熱平衡に近づいているときの試料実行の初期部分の間、標的および対照信号は、典型的には、上昇および下降している。したがって、いくつかの例では、標的信号および/または対照信号がそれぞれ正の傾きを有し、負の凹みを有する(下に凹である)場合、陽性の試験結果および/または陰性の試験結果を無視することができる。標的信号および/または対照信号の傾きおよび凹みの測定は、上で論じた移動平均および移動標準偏差と同様に、時間ウィンドウキューに基づくことができる。標的信号および/または対照信号の負の傾きまたは正の凹み(下に凹)が検出されると、その信号の表示はもはや無視できなくなる。他の例では、陽性の試験結果および/または陰性の試験結果は、所定の固定期間にわたって無視することができる。例えば、標的指標は、実行の最初の180秒、240秒、300秒、360秒、420秒、または任意の他の適切な期間の間無視することができる。別の例として、対照指標は、最初の630秒、690秒、750秒、810秒、870秒、または任意の他の適切な期間の間無視することができる。
【0041】
図3は、実施例の試料のFLOS-LAMP分析からの実験データである。線310は、標的分析物の量に関連する蛍光色素分子の強度の移動平均を表す。線320および322は、それぞれ、時間でオフセットされた蛍光色素分子の強度の移動平均±蛍光色素分子の強度の標準偏差の倍数を表す。この例では、オフセットは240秒であり、標準偏差の倍数は3である。したがって、線320はμ(t-240)+3σ(t-240)であり、線322はμ(t-240)-3σを表す。実行開始から約3000 秒で、線310と線320が交差し、μ(3000)>μ(3000-240)+3σ(3000-240)となり、標的指標を表す。したがって、約3000秒で、陽性の結果を示す信号を送信することができ、任意選択で、実行を終了することができる。あるいは、標的指標があり続けることを保証するために、追加の期間実行を続行することもできます。
【0042】
種々の実施形態が上述されたが、それらは、限定ではなく、一例としてのみ提示されたことを理解されたい。上記の概略図および/または実施形態が、ある配向または位置に配列されるある構成要素を示す場合、構成要素の配列は、修正されてもよい。実施形態が具体的に示され、説明されてきたが、形態および詳細における種々の変更が行われてもよいことが理解されるであろう。特定の特徴及び/又は構成要素の組み合わせを有するものとして様々な実施形態を説明してきたが、上述した実施形態のいずれかからの任意の特徴及び/又は構成要素の組み合わせを有する他の実施形態も可能である。
【0043】
例えば、本明細書に記載の方法は、一般にFLOS-LAMP分析に関し、SARS-CoV-2検出に特によく適しているが、本明細書に記載の技術は、多くの他の分析物および/または標的検出スキームに適用することができることを理解されたい。同様に、本明細書に記載の実施形態は、SARS-CoV-2検出に限定されず、例えば、LAMP、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、化学合成、電気化学、バイオ生産、クロマトグラフィー、電気泳動、等電点電気泳動、重量分離などによって選択的に増幅または濃縮することができる任意の分析物に適用することができる。本明細書に記載される実施形態は、概して、分析物の量または濃度に関連する、または相関し得る蛍光信号を記載するが、分析物は、例えば、リアルタイムループ媒介等温増幅(RT-LAMP)からのpH駆動比色信号、または他の適切な比色信号、電気信号、電気化学信号、光吸光度信号などの任意の適切な手段によって検出することができる。同様に、図2を参照して図示し説明した方法は、「陽性」結果が比較的低いベースラインからの信号の指数関数的またはその他の急速な増加によって特徴付けられる任意の適切な分析に非常に適している。
【0044】
特定の実施形態において、本明細書に開示される方法は、PCRを介して生成されたシグナルを検出および/または測定することによって、分析物の存在または非存在を決定するために使用され得る。例えば非特許文献1およびその中で論じられている参照文献に記載されている、基本PCR、逆転写酵素(RT)-PCR、ホットスタートPCR、競合PCR、または定量的リアルタイム(qRT)-PCRを含むが、これらに限定されない、様々な異なるPCR法を使用することができる。
【0045】
特定の実施形態において、本明細書に開示される方法は、等温核酸増幅を介して生成された信号を検出および/または測定することによって分析物の存在または非存在を決定するために使用され得る。核酸の等温増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の代替法である。これらの方法の利点は、周期的な温度変化を必要とするPCRとは異なり、核酸の増幅を一定の温度で実行できることである。特定の実施形態では、等温核酸増幅は、例えば、以下を使用して行われる:ループ媒介等温増幅(LAMP)、核酸配列ベースの増幅(NASBA)、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)、核酸の指数関数的増幅反応(EXPAR)、鎖置換増幅(SDA)、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)。例えば非特許文献2およびその中に引用されている参照文献に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0046】
図2を参照して示され、上述されたパラメータ(例えば、移動平均のウィンドウ、標準偏差のウィンドウ、時間オフセット(x)、および標準偏差の倍数(y))は、概して、FLOS-LAMPの文脈で説明され、陽性の標的信号および/または対照信号の特徴的形状に基づいて選択される。熟練したデータサイエンティストは、上記を考慮に入れて、異なる特性を有する信号に対して他の適切なパラメータを容易に選択することができる。
【0047】
特定の実施形態において、本明細書に開示される方法は、分析物の存在(例えば、(1)検知可能な量及び/若しくは濃度、並びに/又は(2)閾値を超える量及び/若しくは濃度)、又は分析物の非存在(例えば、(1)検知可能な量及び/若しくは濃度の欠如、並びに/又は(2)閾値未満の量及び/若しくは濃度)を決定するために使用され得る。例えば、特定の実施形態では、方法は、例えばPCRを使用して分析物の核酸成分の存在または非存在を測定し、それにより試料中の分析物の存在または非存在を決定する。特定の実施形態では、分析物は、感染因子もしくは病原体、またはそれらの成分である。特定の実施形態では、感染因子または病原体は、ウイルス、細菌、または真菌である。特定の実施形態では、感染因子は、インフルエンザウイルスまたはコロナウイルス、例えば、SARS-CoV-2である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、例えば、試料中の感染因子のDNAまたはRNAの存在を検出することによって、感染因子または病原体の存在を決定するために使用される。いくつかの実施形態では、試料は、感染と診断された対象、または感染を有するもしくは発症するリスクがあると考えられる対象から得られた生体試料である。他の実施形態では、試料は食品または飲料製品である。いくつかの実施形態では、試料は、表面、例えば、食品調製表面、食品もしくは飲料パッケージ表面、または家庭、賃貸住宅、もしくはホテル内の表面、例えば、限定されないが、キッチンカウンター表面、浴室カウンターの表面、トイレ、シャワー、もしくはバスタブ表面、またはテーブルもしくはドレッサー表面から得られる。
【0048】
特定の実施形態では、分析物はウイルスまたはその成分である。いくつかの実施形態において、試料は、ウイルスに感染していると診断されたか、またはその疑いがあるか、またはそのリスクがある対象から得られた生体試料である。特定の実施形態では、ウイルスは、ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルス、アストロウイルス、インフルエンザウイルス、コロナウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトTリンパ指向性ウイルス(HTLV)、ライノウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、エプスタイン・バーウイルス、または西ナイルウイルスである。特定の実施形態では、ウイルスは、SARS-CoV-2である。
【0049】
ある実施態様において、ウイルスは、本明細書に開示されるタイプ若しくはサブタイプ、系統、又はクレードのいずれかを含むが、これらに限定されないインフルエンザウイルスである。4つのタイプのインフルエンザウイルス:A、B、C、及びDが存在する。ヒトのインフルエンザAウイルスとBウイルスは、米国ではほぼ毎年冬に、季節性疾患の流行(インフルエンザシーズンとして知られている)を引き起こす。A型インフルエンザウイルスは、インフルエンザのパンデミック、すなわち、インフルエンザ疾患の世界的なエピデミックを引き起こすことが知られている唯一のインフルエンザウイルスである。C 型インフルエンザ感染は一般に軽度の症状を引き起こし、ヒトのインフルエンザの流行を引き起こすとは考えられていない。D型インフルエンザウイルスは主に牛に感染し、人に感染したり病気を引き起こしたりすることは知られていない。
【0050】
A型インフルエンザウイルスは、ウイルスの表面上の2つのタンパク質:ヘマグルチニン(H)及びノイラミニダーゼ(N)に基づいてサブタイプに分類される。18の異なるヘマグルチニンサブタイプ及び11の異なるノイラミニダーゼサブタイプ(それぞれ、H1~H18及びN1~N11)が存在する。人々の中で日常的に流行するインフルエンザAウイルスの現在のサブタイプには、A(H1N1)およびA(H3N2)が含まれる。特定の流行インフルエンザA(H1N1)ウイルスは、2009年の春に出現し、インフルエンザのパンデミックを引き起こしたパンデミック2009 H1N1ウイルスに関連する。学術的には「A(H1N1)pdm09ウイルス」と呼ばれ、より一般的には「2009 H1N1」と呼ばれるこのウイルスは、それ以来、季節的に流行し続けている。インフルエンザA(H3N2)ウイルスは、近年、遺伝的に異なる多くの別々の系統群を形成し、共流行を続けている。
【0051】
B型インフルエンザウイルスは、サブタイプに分けられないが、代わりに、2つの系統:B/ヤマガタおよびB/ビクトリアにさらに分類される。
【0052】
特定の実施形態では、ウイルスは、本明細書に開示されるタイプまたはサブタイプまたはグループ分けのいずれかを含むがこれらに限定されないコロナウイルスである。コロナウイルスは、表面にある王冠のようなスパイクにちなんで名付けられた。アルファ、ベータ、ガンマ、およびデルタとして知られる、コロナウイルスの4つの主要なサブグループが存在する。人々に感染し得る7つのコロナウイルスは、一般的なヒトコロナウイルス:229E(アルファコロナウイルス);NL63(アルファコロナウイルス);OC43(ベータコロナウイルス);HKU1(ベータコロナウイルス);ならびに他のヒトコロナウイルス:MERS-CoV(中東呼吸症候群またはMERSを引き起こすベータコロナウイルス);SARS-CoV(重症急性呼吸器症候群またはSARSを引き起こすベータコロナウイルス);およびSARS-CoV-2(コロナウイルス疾患2019またはCOVID-19を引き起こす新型コロナウイルス)である。ヒトは、一般に、ヒトコロナウイルス229E、NL63、OC43、およびHKU1に感染する。
【0053】
特定の実施形態では、ウイルスは、SARS-CoV-2である。コロナウイルス病2019(COVID-19)と呼ばれる新たな新型コロナウイルスが報告されている。COVID-19は、新型コロナウイルス、SARS-CoV-2または2019-nCoVの感染によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、分析物は、COVID-19と診断された対象、またはCOVID-19に罹患もしくは発症するリスクがあると考えられる対象から得られた生体試料中で検出される。
【0054】
特定の実施形態では、分析物は細菌またはその成分である。いくつかの実施形態において、試料は、細菌感染を有すると診断されたか、または細菌感染を有するリスクがあると考えられる対象から得られた生体試料である。特定の実施形態では、細菌は以下のいずれかである:Acinetobacter、Bacteroides、Burkholderia、Clostridium、Enterobacteriaceae、Enterococcus、Klebsiella、Staphylococcus、Streptococcus、Morganela、Mycobacterium、Neisseria、Pseudomonas、またはStenotrophomonas(Acinetobacter baumannii、Bacteroides fragilis、Burkholderia cepacia、Clostridium difficile、Clostridium sordellii、カルバペネム耐性Enterobacteriaceaeのいずれかを含む);Enterococcus faecalis、Klebsiella pneumonia、Staphylococcus aureus(メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)およびバンコマイシン耐性Staphylococcus aureusを含む)、Morganella morganii、Mycobacterium abscessus、Psuedomonas aeruginosa、Stenotrophomonas maltophilia、Mycobacterium tuberculosis、Streptococcus pneumonia、Neisseria meningitidis、またはバンコマイシン耐性Enterococci。
【0055】
特定の実施形態では、分析物は真菌である。特定の実施形態では、試料は、真菌感染と診断された対象、または真菌感染を有するもしくは発症するリスクがあると考えられる対象から得られた生体試料である。特定の実施形態では、真菌は以下のいずれかである:アスペルギルス、カンジダ(カンジダ・アウリスを含む)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス、ニューモシスチス(ニューモシスチス・ジロベシを含む)、ムコール菌、タロミセス、カンジダ、ブラストミセス、コクシジオイデス、ヒストプラズマ、クリプトコッカス(クリプトコッカス・ガッティを含む)、またはパラコクシジオイデス。。
【0056】
加えて、本明細書で説明されるいくつかの方法は、標的または対照が示すときに(任意に、待機期間後に)、試料実行を終了することを説明する。しかしながら、他の実施形態では、試料を最大継続時間(例えば、60分、90分等)まで実行することができる(例えば、標的分析物を選択的に増幅することができる)ことを理解されたい。そのような実施形態では、標的がその期間に示した場合に、肯定的な結果の示唆を送信することができる(任意で、除外された初期期間中に示唆を受け入れる)。対照がその期間内に示した場合、陰性の結果の示唆を送信することができる。他のシナリオでは、テストが失敗したか、または不確定であることを示す信号を送信することができる。
【0057】
上述の方法および/または事象が、特定の順序で発生する特定の事象および/または手順を示す場合、特定の事象および/または手順の順序は変更されてもよい。加えて、特定の事象および/または手順は、上述のように順次実行されるだけでなく、可能であれば並列プロセスで同時に実行されてもよい。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
【国際調査報告】