(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-15
(54)【発明の名称】エマルション組成物、ならびに放射線によって引き起こされる皮膚損傷の予防および/または処置におけるその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/498 20060101AFI20240207BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20240207BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240207BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240207BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240207BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240207BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240207BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20240207BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240207BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20240207BHJP
A61P 17/18 20060101ALI20240207BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240207BHJP
A61K 47/08 20060101ALI20240207BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240207BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20240207BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
A61K31/498
A61K9/107
A61P9/00
A61K47/34
A61K47/32
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/44
A61K47/36
A61P39/06
A61P17/18
A61K47/22
A61K47/08
A61K47/18
A61K47/14
A61P17/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574755
(86)(22)【出願日】2022-02-18
(85)【翻訳文提出日】2023-08-18
(86)【国際出願番号】 EP2022054044
(87)【国際公開番号】W WO2022175434
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523316482
【氏名又は名称】タリアン・ファーマ
【氏名又は名称原語表記】TARIAN PHARMA
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【氏名又は名称】水島 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】ウィンクル,ガレス
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】チェルニエレフスキー,ヤヌシュ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076BB31
4C076CC11
4C076CC18
4C076DD07F
4C076DD37
4C076DD37S
4C076DD38
4C076DD39
4C076DD40S
4C076DD41
4C076DD41S
4C076DD45
4C076DD46F
4C076DD51S
4C076DD59S
4C076EE16
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4C076EE30
4C076EE45
4C076EE49
4C076EE53
4C076FF51
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC52
4C086GA07
4C086GA14
4C086MA03
4C086MA05
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA36
4C086ZA89
4C086ZC37
(57)【要約】
本発明は、血管収縮剤を含む局所投与に適した形態の水性組成物に関する。本発明は、液晶を含むエマルションの形態である組成物が、プロピレングリコールと組み合わせたポリエチレングリコール、単独でまたは組み合わせて、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、および非架橋、架橋または酢酸形態のポリビニルピロリドンから選択される親水性膜形成剤、グリセリン、ステアリン酸PEG-75およびモノステアリン酸グリセリルの組み合わせ、ならびにモノステアリン酸ポリオキシエチレン-20ソルビタン(ポリソルベート-60)およびセトステアリルアルコールの組み合わせから選択される乳化剤、オレイン酸またはオレイルアルコール、好ましくはオレイルアルコール、ならびに液晶を含むエマルションを得るのに適した油相を含む溶媒系相において、ブリモニジンまたはその塩から選択される血管収縮剤を含むことを特徴とする。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所投与に適した形態で、水性であり、血管収縮剤を含む組成物であって、前記組成物が、液晶を含むエマルションの形態であり、前記血管収縮剤が、
プロピレングリコールと組み合わせたポリエチレングリコールと、
単独でまたは組み合わせて、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、非架橋、架橋または酢酸形態のポリビニルピロリドンから選択される親水性膜形成剤と、
グリセリンと、
ステアリン酸PEG-75およびモノステアリン酸グリセリルの組み合わせ、ならびに、モノステアリン酸ポリオキシエチレン-20ソルビタン(POLYSORBATE-60)およびセトステアリルアルコールの組み合わせから選択される乳化剤と、
オレイン酸またはオレイルアルコール、好ましくはオレイルアルコールと、
液晶を含むエマルションを得るのに適した油相と
を含む溶媒系相中のブリモニジンまたはその塩から選択されることを特徴とする、組成物。
【請求項2】
親水性膜形成剤として、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマーを含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記油相が、単独でもしくは組み合わせて、セチルアルコールおよびステアリルアルコール、ならびに/または、単独でもしくは組み合わせて、ココナッツ/パーム核にて飽和されたカプリル脂肪酸およびカプリン脂肪酸と植物由来グリセロールとのトリグリセリドエステルおよびポリプロピレングリコール(PPG)-11のステアリルエーテルを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
セチルアルコールおよびステアリルアルコールの組み合わせを含むことを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ココナッツ/パーム核にて飽和されたカプリル脂肪酸およびカプリン脂肪酸と植物由来グリセロールとのトリグリセリドエステルならびに前記PPG-11のステアリルエーテルが、組み合わせられていることを特徴とする、請求項3または4に記載の組成物。
【請求項6】
キサンタンガムを含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
キサンタンガムを、組成物の総重量の0.1重量%から1.5重量%の間、好ましくは0.2重量%から1重量%の間、より好ましくは0.2から0.5重量%の濃度で含むことを特徴とする、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
天然もしくは合成の抗酸化剤、またはフリーラジカル捕捉剤を含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記抗酸化剤が、単独でまたは混合物として、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、DL-トコフェロール、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、プロピオンアルデヒド、アスコルビン酸塩、パルミチン酸塩またはグルタチオンから選択され、好ましくはBHAおよび/または前記DL-トコフェロールから選択されることを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
ブリモニジンまたはその塩を、組成物の総重量の0.15重量%から3.00重量%の間、好ましくは0.50%w/wから2.50%w/wの間、より好ましくは0.75%w/wから1.50%w/wの間、さらにより好ましくは1.00%w/wまたは1.50%w/wの濃度で含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
ブリモニジン塩が、酒石酸ブリモニジンであることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
単独でまたは組み合わせて、メチルパラベン、プロピルパラベンまたはイソプロピルパラベンから選択されるパラベン、フェノキシエタノール、安息香酸ナトリウム、フェニルエチルアルコールおよび/またはEDTAを含むことを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
医薬としての使用のための、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
放射線によって引き起こされる皮膚炎の予防および/または処置のため、特に放射線療法による処置内での、請求項13に記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局所投与(topical administration)に適した形態の医薬組成物の分野に関する。本発明は、より詳細には、血管収縮剤、例えばブリモニジンまたはその塩を含む医薬組成物、ならびに医薬としての、より詳細には皮膚への放射線損傷の予防および/または処置における使用のための組成物に関する。
【0002】
皮膚損傷を与え得る放射線の種類として、日焼けの原因となり得るUVAおよびUVBを含む紫外線(UV)、可視領域の光線、赤外線放射(IR)、電離放射線、例えばX線およびα、βまたはγ線、ならびに陽子からなる放射線が挙げられる。
【背景技術】
【0003】
組織への放射線曝露の初期影響の一つは、皮膚の血管拡張および発赤を引き起こす炎症反応である紅斑である。この反応は、UVへの曝露の約6~8時間後に見られ、36~48時間後に消失する。
【0004】
顔に対する選択性の高いα2-アドレナリン受容体アゴニストの皮膚適用は、直接的な皮膚の血管収縮によって紅斑を低減させることが知られている。皮膚の血管収縮の主な特徴は、真皮の細動脈および小血管の直径を減少させることによって、血流の即時減少を引き起こし、特に皮膚の色の減少として生じる蒼白である。
【0005】
MIRVASO(登録商標)ゲル(0.5%w/w酒石酸ブリモニジン)は、成人の酒さに関連する顔面紅斑の対症療法に適応されている。
【0006】
ブリモニジンは、特に選択性の高いα2-アドレナリン受容体アゴニストとして知られている。ブリモニジンは、α1-アドレナリン受容体よりもα2-アドレナリン受容体に対して1000倍超の選択性を有している。
【0007】
ブリモニジンは、酒さによって引き起こされる紅斑の処置に有用であることが示されており、他の皮膚障害に対しても提案されている。例えば、米国特許出願第10/853585号、米国特許出願第10/626037号、および米国特許出願第12/193098号を参照されたい。
【0008】
ブリモニジン(酒石酸塩)は、局所投与に適した化学的安定性と様々な製剤の選択肢を提供する溶解度プロファイルを有する。
【0009】
例えば、本出願人は、国際公開第2015/013709号を承知しており、この文献には、酒石酸ブリモニジンを用いることによる放射線に誘発された皮膚の過形成の低減および/または抑制が、例えばエマルション形態の局所投与により、0.01~5重量%、好ましくは0.1~2重量%の濃度であることが記載されている。例えば、この文献には、PVM/MAをベースとしたエチルエステルコポリマー、エタノールおよびジメチコンによるアルコール相、PVP/PAコポリマーをベースとした水相、ならびにoleth-20、コカミドMEAおよびsteareth-16を含む油相を含む組成物が記載されている。このような製剤には、エタノールが存在しており、皮膚損傷のある患者においてうずきおよびしゃく熱感を引き起こすことから、特に放射線誘発皮膚炎の処置には適さない。
【0010】
また、本出願人は、米国特許出願公開第2011/0224216号明細書に、例えば、物理的な手順、例えばレーザー放射、UV放射、高周波、放射線療法、発光ダイオードによって、または酒石酸ブリモニジン、PEG-300およびステアリン酸PEG-6を特に含む特にクリームの形態の組成物の局所投与によって、誘発された紅斑を処置する方法が記載されていることを承知している。
【0011】
さらに、本出願人は、国際公開第2012/075319号に、ブチルヒドロキシトルエン、PEG、グリコール、ステアリン酸PEG-32、セトステアリルアルコールおよびオレイルアルコールをさらに含む、酒さおよび酒さに関連する症状の処置のためのオキシメタゾリンベースの組成物が記載されていることを承知している。
【0012】
治療目的で設計された局所製品は、通常、活性成分および賦形剤からなる。処方の間、賦形剤の選択は、活性成分を溶解させてそれらの皮膚透過性を最適化することにより薬物の有効性を保証するため、ガレノス形態の安定性およびそのテクスチャのため、局所耐容性(local tolerance)のため、および患者のコンプライアンスのために必要なものである。これらの個々の構成要素のそれぞれの最適化だけでなく、複合的かつ補完的な問題が、これらの鍵となる因子の最適なバランスを同定して、患者、医療従事者および規制主体の要求を満たす製品を提供する。
【0013】
一方、塩を含むイオン化活性剤は、角質層(主に脂質からなるバリア)を迅速に透過しにくいため、活性剤の放出および皮膚リザーバー(release and cutaneous reservoirs)を形成することは、通常、困難である。また、このような活性剤は、その水への溶解度のために生体組織から急速に除去される傾向がある。
【0014】
実際、ブリモニジンは、親水性分子であるため、脂質の角質層を通過しにくい。
【0015】
しかし、ブリモニジンは、一旦角質層を横断すれば、親水性媒体(表皮、特に顆粒層および基底層、次いで真皮)に入り、次いで除去されるため、血管収縮に関する有効性を低下させる。
【0016】
したがって、皮膚によって形成されるバリアの構造は、活性な血管収縮剤が、外側の脂質層を通過し、より下層の親水性層で急速に除去されることなく、迅速かつ一貫した長期の血管収縮効果を16時間または24時間もの期間発揮できる、皮膚適用のために設計された局所製剤を得ることについて、真の難題をもたらすものである。
【0017】
また、活性な血管収縮剤の濃度は、次いで全身レベルの著しくかつ潜在的に有害な曝露のリスクをもたらすことから、高くしすぎてはならない。
【0018】
また、局所適用のための組成物に用いられる特定の化合物は、副作用を引き起こす可能性があり、それらの使用および有効性を制限し得る。例えば、特定の活性剤には、刺激(irritation)を引き起こすという大きなデメリットがあり、製品の耐容性の低下をもたらし得る。このことは、患者側において処置におけるノンコンプライアンスや処置に対する不満をもたらし得る。
【0019】
このような目的で、パラヒドロキシ安息香酸メチル、プロピレングリコール、カルボマー、フェノキシエタノール、グリセロール、二酸化チタン、水酸化ナトリウムおよび精製水をベースとするMIRVASO(登録商標)ゲルの製剤は、例えば、放射線と関連する病変の予防には適さない。この製剤は、最適化されていない薬物動態を有し、活性が適用後6~12時間に限定される。この製剤はまた、治療を目的として、例えば放射線皮膚炎の予防または処置で用いられる場合に、放射線を妨害するための二酸化チタンの粒子を含有する。
【0020】
このように、現在のところ、新規な組成物を開発し、放射線と関連する作用、特に放射線療法によるがんの処置の副作用を制限することを可能とすることが求められている。
【0021】
放射線皮膚炎(または放射線誘発皮膚炎)は、痛みを伴い、患者を悩まし得る病変を生み出して、処置の一時的または永続的な中断につながり得る。
【0022】
一方で、急性の放射線皮膚炎の処置に対するコンセンサスは、得られていない。様々な解決策が数多く提案されてきているが、現在のところ、必ず採用されるほど十分に満足がいくものはない。
【0023】
急性グレード1の放射線皮膚炎については、放射線セッションの数時間後に適用される皮膚軟化剤(例えば、DEXERYL(登録商標)またはTOPICREME(登録商標))は、皮膚に潤いを与えて、患者に短時間の幸福感(well-being)をもたらす。
【0024】
しかし、この選択肢は、ボーラス効果(放射線量の局部的増加)および熱傷のリスクを回避するために、これらの製品は、セッション前に適用されない必要があることに注意することが重要である。
【0025】
いくつかのより具体的な製品、例えばヒアルロン酸ベースのクリーム、TETA(登録商標)クリームまたはBIAFINE(登録商標)は、放射線皮膚炎の病変のために提供されている。しかし、これらの処置は有効性が証明されておらず、むしろ臨床研究では効果がないと結論付けられたことが想起される。
【0026】
局部的な局所コルチコステロイド(local topical corticosteroids)(例えば、DIPROSONE(登録商標))も、セッション後に適用される必要がある。これらの製品を使用する理論的な原理は、放射線療法によって引き起こされる炎症を低減させることにある。局所コルチコステロイドは、放射線皮膚炎の進行に対して真の利益をもたらさないが、局所アレルギー反応の場合(例えば、マーキング目的で用いた接着剤と関連する皮膚炎の場合)には有効なものである。
【0027】
急性の放射線皮膚炎の場合、放射線療法による処置の継続は、放射線療法士が処置の進捗および優先度に応じて必要または好ましいと判断した場合に、一時的に中断され得る。
【0028】
放射線療法を受ける乳がんの患者における、放射線皮膚炎の予防のための1つの局所血管収縮剤として、エピネフリンの使用が記載されている(James F.Clearyら、Significant suppression of radiation dermatitis in breast cancer patients using a topically applied adrenergic vasoconstrictor、Radiation Oncology、2017)。
【0029】
しかし、このような製品は、即席のアルコールベースの調製物であって、蒸発するため、放射線療法による処置の直前から最大20分前までに適用されることを必要とする。
【0030】
また、最も注目すべきは、その過度に短い作用持続時間によって効果が限定されることである。問題の研究においては、50%の患者にしか顕著な利益を示さなかった。
【0031】
患者が既に耐え難いと感じているがん処置においては、副作用が最適な処置プロセスを制限している場合があり、それを妨げる可能性がある。したがって、強力で長期の保護効果を発揮し、実質的に放射線療法による皮膚への副作用を低減することを可能とする、有効な新規製剤が真に求められている。
【0032】
このように、適用部位に制限された、強力で長期の制御された皮膚の血流低下を経時的にもたらし、放射線を受ける患者、特に放射線療法で処置されるがん患者の耐容性、有効性およびコンプライアンスに関する上記欠点を克服することを目的とした新規製剤の開発が必要とされている。
【発明の概要】
【0033】
[技術的問題]
上記事情に照らして、本発明が解決しようとする問題の一つは、確立された血管収縮剤、例えば酒石酸ブリモニジンに基づくものであり、放射線によって、特に放射線療法によるがんの処置によって引き起こされる主な皮膚への副作用を予防し、大きく低減させて、血管収縮剤の活性の持続時間および効能を改善することを目的とした、最適化された局所製剤を開発することにある。
【0034】
[得られる利点]
本出願人は、新規な局所組成物を開発し、処置される腫瘍または照射野への有効性を低下させ得る放射線療法の光線による妨害を回避しながら、血管収縮剤の真皮および表皮における12~14時間以上の生体利用を可能とし、放射線により引き起こされる損傷から、特に放射線療法による処置の副作用から皮膚を保護することによって、血管収縮の持続時間および効力を改善している。
【0035】
低分子量(150g/mol未満、好ましくは100g/mol未満)の極性溶媒およびより高分子量(150g/mol超、好ましくは350~650g/molの間)の極性溶媒を含有する、供給が複雑かつ困難な組み合わせが、皮膚表面および角質層の上層に酒石酸ブリモニジンのリザーバーを形成するために開発されている。しかし、極性化合物は親油性化合物ほど容易に角質層に分布しないため、親水性化合物のリザーバー形成は、親油性物質の場合よりもはるかに複雑なものである。さらに、親水性化合物は、それ自体が生体組織に自由に分布し、血液循環によって下層の局所血管系(local vascular system)へと除去される。したがって、最適で複雑な組成バランスが、変数、例えば熱力学、残留物の表面溶解度、角質層中の溶解度、生体組織における透過性および持続性(牽引効果(traction effect)/溶媒牽引(solvent drag))を調節するために特定される必要がある。
【0036】
上記パラメーターに加え、許容可能な剤形および完成品を形成するのに重要な要素もまた、本発明に係る組成物を開発する際に考慮されている。本発明に係る組成物は、適切な局所耐容性および美容上の優雅さに加えて、経皮投与を促進し、十分に物理的、化学的および微生物学的な安定性を提供する、最適な溶媒系を中心としたものである。
【0037】
本出願人によって提案され最適化された局所組成物は、血管収縮プロセスの持続時間(少なくとも14時間~24時間の期間)およびその力を改善しながら、放射線の皮膚通過を妨害することなく、その有効性の低下を回避する。
【0038】
本発明に係る組成物は、角質層において活性な極性血管収縮剤のリザーバーを形成することを可能とし、これは、通常、親油性分子、例えばコルチコステロイドによってのみ得られる現象であり、極性分子は通常血流によってすぐに「洗い流される(washed out)」。このことは、皮膚におけるある程度の持続性を可能とし、各再適用時の効果を最大化かつ迅速な効果を可能として、患者と放射線療法士に対して柔軟な使用性を提供する。
【0039】
最適化された組成物は、特に放射線療法による処置に適しており、患者のコンプライアンスを助長し、抗がん処置の有効性を最大化するのに役立つ。
【0040】
また、本出願人によって開発された新規な局所製剤は、従来の組成物と比較して殆どまたは全く刺激性がなく、皮膚透過性が改善して、酒石酸ブリモニジンの溶解度が増加することから、耐容性が良好である。
【0041】
最終的に、本発明によって開発された医薬組成物はまた、経済的であり、簡単かつ迅速に調製できるものである。
【0042】
[技術的解決策]
上記した問題の解決策の第1の目的は、血管収縮剤を含む水性の局所投与に適した形態の組成物であって、組成物は、液晶を含むエマルション、好ましくは油中水型または水中油型、より好ましくは水中油型の形態であり、血管収縮剤は、
- プロピレングリコールと組み合わせたポリエチレングリコール;
- 単独でまたは組み合わせでのポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、非架橋、架橋または酢酸形態のポリビニルピロリドン(PVP)から選択される親水性膜形成剤、好ましくは親水性膜形成剤としてのポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー;
- グリセリン;
- ステアリン酸PEG-75およびモノステアリン酸グリセリルの組み合わせ、ならびにモノステアリン酸ポリオキシエチレン-20ソルビタン(ポリソルベート-60)およびセトステアリルアルコールの組み合わせから選択される乳化剤;
- オレイン酸またはオレイルアルコール、好ましくはオレイルアルコール;ならびに
- 液晶を含むエマルション、好ましくは油中水型または水中油型、より好ましくは水中油型を得るのに適した油相
を含む溶媒系相(solvent based phase)中の、ブリモニジンまたはその塩から選択されるものである、組成物である。
【0043】
第2の目的は、医薬としての使用のための本発明に係る組成物である。
【0044】
本発明およびそれに由来する利点は、添付の図面との関連した以下の説明および非限定的な実施方法を読むことによってさらによく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】組成物19-0155.0045(Brij(登録商標)/ArlamolをベースとしたW/Oエマルション)、組成物19-0155.0065P(Brij/ArlamolをベースとしたW/Oエマルション)、組成物19-0155.0090(Gelot 64をベースとしたW/Oエマルション)および組成物19-0155.0091(PolawaxをベースとしたW/Oエマルション)についてのLUMiSizer(登録商標)を用いた安定性の測定を表す図である。
【
図2】19-0155.0044組成物、19-0155.0070P組成物、19-0155.0076/F2組成物、19-0155.0083組成物、19-0155.0086組成物、19-0155.0088組成物および19-0155.0089組成物についてのLUMiSizer(登録商標)を用いた安定性の測定を表す図である。
【
図3】実施例5、より詳細には表14に照らして行われたプロセス条件下で、参考組成物19-0155-0090P/F3を用いた、様々な組成物により得られた粘度測定を表す図である。
【
図4】様々なW/Oエマルション組成物、19.0155-0083/F1(Gelot-64ベース)、19.0155-0087/F1(Gelot-64ベース)および19.0155.0086A/F1(Polawaxベース)により得られた皮膚白化スコア(skin whitening scores)を表す図である。
【
図5】様々なエマルション組成物、19-0155.0091/F1(Polawaxベース)、19-0155.0089/F1(Brijベース)および19-0155-0090/F1(Gelotベース)により得られた皮膚白化スコアを表す図である。
【
図6】様々な活性(酒石酸ブリモニジンを含む)または非活性(ビヒクルのみを含む)水中油エマルションにより得られた皮膚白化スコアを表す図である。
【
図7】様々な活性(酒石酸ブリモニジンを含む、19-0155-0102/F5)または非活性(ビヒクルのみを含む、19.0155-0102P/F2)水中油エマルション組成物により得られた皮膚白化スコアを表す図である。
【
図8】様々な活性(酒石酸ブリモニジンを含む)または非活性(ビヒクルのみを含む)水中油エマルション組成物により得られた平均紅斑スコアを表す図である。
【
図9】血管収縮剤製品の参照により得られた皮膚白化スコアを表す図である。
【
図10】1.5%w/w酒石酸ブリモニジンの改質したMIRVASO組成物(19-0155-0098/F1)、ノルエピネフリン溶液およびMIRVASO(登録商標)(0.5%w/w酒石酸ブリモニジン)により得られた皮膚白化スコアを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明は、血管収縮剤を含む局所投与に適した形態の水性組成物に関する。
【0047】
本発明に係る局所組成物は、液晶を有するエマルション、好ましくは油中水型または水中油型、より好ましくは水中油型の形態であることを特徴とする。
【0048】
液晶は、溶解度を大きく改善し、かつ乳化を容易にする分子の無限の集合体である。
【0049】
微細構造の視点から、親水性非イオン性乳化剤と脂肪族アルコールとの組み合わせが、ラメラ相で取り囲まれた液晶を製造することにより、エマルションの連続相において特定の組織化を引き起こす。ラメラ相の広がりは、過剰な脂肪族アルコールに関連する。
【0050】
液晶製剤は、局所組成物のビヒクルとしていくつかの利点を提供し、その利点には、
- 皮膚バリアの修復;
- 皮膚への水分の送達;
- 優れた耐性;
- 一定の活性剤の改善した皮膚放出、
を含む。
【0051】
本発明に係る局所組成物は、
- プロピレングリコールと組み合わせたポリエチレングリコール;
- 単独でまたは組み合わせでのポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー(KOLLIDON VA 64(登録商標))、非架橋、架橋または酢酸形態のポリビニルピロリドン(PVP)から選択される親水性膜形成剤、好ましくは親水性膜形成剤としてのポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー;
- グリセリン;
- ステアリン酸PEG-75およびモノステアリン酸グリセリルの組み合わせ、ならびにモノステアリン酸ポリオキシエチレン-20ソルビタン(ポリソルベート-60)およびセトステアリルアルコールの組み合わせから選択される乳化剤;
- オレイン酸またはオレイルアルコール、好ましくはオレイルアルコール;ならびに
- 液晶を含むエマルション、好ましくは油中水型または水中油型、より好ましくは水中油型を得るのに適した油相;
を含む溶媒相(solvent phase)において、ブリモニジンまたはその塩から選択される血管収縮剤を含むことを特徴とする。
【0052】
「塩または薬学的に許容可能な塩」は、哺乳動物における局所使用について安全で効果的であり、かつ所望の生物学的活性を有する、目的の化合物のそれらの塩を指す。薬学的に許容可能な塩は、特定の化合物に存在する酸性基または塩基性基の塩を含む。薬学的に許容可能な酸付加塩は、これらに限定されないが、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、過リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩およびパモ酸塩(即ち1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸塩))を含む。本発明で用いられる一定の化合物は、様々なアミノ酸と薬学的に許容可能な塩を形成することができる。適切な塩基性塩は、これらに限定されないが、アルミニウム塩、カルシウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、亜鉛塩およびジエタノールアミン塩を含む。薬学的に許容可能な塩の総括については、Bergeら、66 J.PHARM.SCI.1~19(1977)を参照されたい。「水和物」は、非共有結合性分子間力によりそれに結合した化学量論量または非化学量論量の水をさらに含む、目的の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を指す。
【0053】
好ましくは、本発明に係る組成物で用いられるブリモニジンは、酒石酸ブリモニジンであるものの、塩形態は、油中水型または水中油型のエマルション製剤の安定性の観点から問題を示す。
【0054】
塩は、実際に、非イオン性界面活性剤およびポリマーと相互作用し、その水溶解度を低下させ、結果として半固形製剤の物理的安定性に害し得る。対照的に、塩形態の活性剤は、水溶解度が比較的高く、水性製剤の設計および評価を有利には可能とし、感覚および局所耐容性の観点から、改善した性能を提供できる。
【0055】
好ましくは、組成物の総重量の0.15重量%から3.00重量%の間の濃度のブリモニジンまたはその塩、好ましくは酒石酸ブリモニジンが、全身曝露のいかなるリスクも防止しながら、有効性、および適用後24時間までの効果持続時間の改善を得るために好ましくは用いられる。
【0056】
好ましくは、本発明に係る組成物は、ブリモニジンまたはその塩、好ましくは酒石酸ブリモニジンを、組成物の総重量の0.50重量%から2.50重量%の間、好ましくは0.75%w/wから1.50%w/wの間、より好ましくは1.00%w/wから1.50%w/wの間、さらにより好ましくは1.00%w/wまたは1.50%w/wの濃度で含む。
【0057】
ブリモニジン、好ましくは酒石酸ブリモニジンの濃度および適用される用量は、有利には適用箇所に従って適応させることができる。
【0058】
実際に、皮膚によって形成されるバリアは、特に通過される角質層について、頭皮よりも手足で厚く、他の身体部分、特に胸部では、中程度の厚みを有する。したがって、同用量に対して好ましく用いられる濃度は、他の身体部分で用いられる濃度、例えば胸部の0.75~1.5%w/wの濃度、または例えば1.5~3%w/wの手足と比較して、有利には頭皮で低く、例えば0.15~0.5%w/wの領域である。
【0059】
好ましくは、本発明に係る液晶からなる油中水型または水中油型のエマルションの油相は、単独でもしくは組み合わせて、セチルアルコールおよびステアリルアルコール、ならびに/または単独でもしくは組み合わせて、ココナッツ/パーム核の飽和カプリル脂肪酸および飽和カプリン脂肪酸と植物由来グリセロール(Miglyon 812N)とのトリグリセリドエステル、およびポリプロピレングリコール(PPG)-11のステアリルエーテル(Arlamol PS11E-LQ-[RB])を含む。
【0060】
好ましくは、油相は、セチルアルコールおよびステアリルアルコールの組み合わせを含む。
【0061】
本発明に係る液晶を含む油中水型または水中油型のエマルション組成物の油相は、好ましくは、組成物の総重量の1重量%から15重量%の間、好ましくは2.5%w/wから10%w/wの間の濃度でセチルアルコール、ステアリルアルコールおよびオレイルアルコールの組み合わせを含む。
【0062】
好ましくは、油相は、ココナッツ/パーム核で飽和されたカプリル脂肪酸およびカプリン脂肪酸と植物由来グリセロールとのトリグリセリドエステル、およびPPG-11のステアリルエーテルの組み合わせを含む。
【0063】
本発明に係る液晶を含む油中水型または水中油型のエマルション組成物の油相は、好ましくは、組成物の総重量の5重量%から10重量%の濃度でココナッツ/パーム核で飽和されたカプリル脂肪酸およびカプリン脂肪酸と植物由来グリセロールとのトリグリセリドエステル、およびPPG-11のステアリルエーテルの組み合わせを含む。
【0064】
本発明に係る局所組成物は、プロピレングリコール(PG)と組み合わせたポリエチレングリコール(PEG)を含むことを特徴とする。
【0065】
低分子量のポリエチレングリコール(PEG)は、通常、主に多くの種類の活性成分に有効な溶媒(solvent)であることから、局所製品に一般に用いられるが、これは、局所投与については、必ずしも最も効果的な賦形剤とはならない。
【0066】
これは主に、皮膚の吸収を制限するその高い極性と分子量によるものである。これらの特性は、皮膚において活性剤の溶媒のビヒクルとしての可能性(牽引効果)を制限する。これは通常、溶媒が皮膚に溶解し、溶解した溶質を皮膚に輸送する際に起こる。
【0067】
また、PEGの高い可溶化能力は、局所投与に準最適な熱力学をもたらし得、高濃度で使用した場合、揮発性成分、例えば水の蒸発としばしば関連する製品変質(product transformation)を、皮膚での放出を促進するために用いることはできない。全体的に見れば、高濃度は可能であるが、これらの特性は送達効率を低下させ得、局所剤の適用用量の大部分が皮膚表面に残るかまたは接触移動によって周囲へ消失する。
【0068】
送達効率の向上、僅かな適用用量は、経皮送達の目標レベルを達成するための用量増加の必要性および高いPEG濃度を使用する必要性を制限することができる。
【0069】
PEGの透過性および浸透性は、その分子量によることも示されている。
【0070】
それにも関わらず、本発明に係る油中水型または水中油型のエマルション組成物において、PEGは局所製剤に必要なものである。
【0071】
PEG-600までの低分子量のPEG、例えばPEG-200、PEG-300、PEG-400、またはPEG-400SRは、好ましく用いられ、より好ましくはPEG-400、さらに好ましくはPEG-400SRは、刺激の可能性を制限して、極性不純物を除去し、結果として賦形剤と活性剤(酒石酸ブリモニジン)との間の相互作用およびその後の活性剤の分解を低減することによって、本発明に係る油中水型または水中油型のエマルション組成物の安定性および耐容性に有利には助長する。
【0072】
PEG-400またはPEG-400SRは、その分子量および高い極性(低分配係数)によって角質層への透過性が比較的低いものの、表面可溶化のための皮膚表面および角質層の上層での活性剤の沈殿率を低下させるためのPEGであり、本発明に係るヒドロゲル組成物に好ましく用いられる。これは、皮膚の生存可能な層への、特に酒石酸ブリモニジンの標的部位が位置する皮膚網状組織の血管系への酒石酸ブリモニジンの長期投与に有利に働く。PEG-400またはPEG-400SRは、皮膚表面および角質層の上層における溶液中の酒石酸ブリモニジンのより良好な保持を促進するのに十分な溶解度を有する。
【0073】
好ましくは、本発明に係る組成物は、PEGを、組成物の総重量の1重量%から20重量%の間、好ましくは5重量%から15重量%の間、より好ましくは10重量%の濃度でを含む。
【0074】
プロピレングリコール(PG、1,2-プロパンジオール)は、様々な経口および非経口医薬製剤において溶媒および防腐剤として広く用いられる、無色透明で吸湿性(hygroscopic)の液体である。
【0075】
PGは、グリセリンより良好な一般的な溶媒として知られており、コルチコステロイド、フェノール、バルビツール酸塩、フェノール、バルビツール酸塩、ビタミン(AおよびD)、殆どのアルカロイドおよび多くの局所麻酔薬を含む多種多様な材料を溶解する。
【0076】
一方で、PGは、酒石酸ブリモニジンの場合、PGはグリセリンの可溶化能力の50%を示す。
【0077】
抗菌剤として、PGは、エタノールと同様の効果を有するが、カビに対しては効果が若干低く、プロファイルはグリセリンのプロファイルに匹敵する。
【0078】
PGはまた、ある程度の揮発性を示し、僅かな適用用量が皮膚への適用時または少なくとも適用から37時間以内に蒸発するものの、はるかに多い大部分が、角質層を透過して、皮膚の深層に入り込む。
【0079】
PGの角質層への比較的迅速な透過性および揮発性は、その溶媒の残留ビヒクルを枯渇させ、ビヒクル中の活性剤の熱力学的活性を高めて、拡散の推進力を調節する。また、PGの透過性および浸透性は、角質層の脂質バリアを破壊して、拡散抵抗を低減することができる。
【0080】
このように、PGは、皮膚への通過性および透過性について好ましい物理的および化学的特性を有し、皮膚を通って吸収される。したがって、PGによって容易に溶解される(すなわち、溶媒/ビヒクルへの高い親和性を有する)溶質は、有利には、耐溶媒性機序を介した皮膚透過性の向上または牽引効果から恩恵を得ることができる。
【0081】
薬学的に関連する化合物の経皮送達がPGによって促進できることを示す様々な化合物のデータが文献に記載されているにも関わらず、複雑な溶媒系において、有効で、安定なかつ薬学的に許容される本発明に係る局所組成物を用いて得る場合、安定性、活性剤、特に酒石酸ブリモニジンの透過効率、ならびに耐容性についてこれらの特性を予測することは、当業者にとって明らかなことではない。
【0082】
さらに強い理由から、PGは、活性剤よりも迅速に皮膚を透過することが知られており、したがって皮膚表面での活性剤の沈殿はその作用の持続時間を制限する。
【0083】
加えて、インビボで用いられるPGの濃度は、局所的な刺激反応および全身毒性の問題を回避するため、通常、約20%w/w以下に制限される。
【0084】
本発明に係る局所組成物において、溶媒および透過促進剤(penetration enhancer)としてPGを用いる選択肢は、溶解度および他のビヒクル関連の変数によって容易に予測可能なことではない。
【0085】
好ましくは、本発明に係る組成物は、PGを、組成物の総重量の5重量%から40重量%の間、好ましくは10重量%から30重量%の間、より好ましくは15重量%から25重量%の間、さらに好ましくは20重量%の濃度で含む。
【0086】
本発明に係る油中水型または水中油型のエマルション組成物において、PEG:PG比を制御することは、特に利点がある。
【0087】
PGと組み合わせた、PEGの過度に高い濃度、50%w/wを超える濃度は、酒石酸ブリモニジンの血管収縮の強度の観点からマイナスの影響を及ぼす。
【0088】
好ましい一実施形態にて、PEGおよびPGは、1:1~1:5、好ましくは1:2の比で用いられる。
【0089】
好ましくは、本発明に係る組成物は、プロピレングリコール(PG)を、組成物の総重量の20重量%の濃度で組み合わせて、ポリエチレングリコール(PEG)を、組成物の総重量の10重量%の濃度で含む。
【0090】
本発明に係る局所組成物は、単独でまたは組み合わせて、非架橋、架橋または酢酸形態のポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー(PVP)から選択される親水性膜形成剤を含むことを特徴とする。
【0091】
好ましくは、本発明に係る組成物は、単独でまたは組み合わせて、組成物の総重量の0.1重量%から1.5重量%の間、好ましくは0.25重量%から1.4重量%の間、より好ましくは0.5重量%から1.3重量%の間、さらに好ましくは0.75重量%から1.25重量%の間、さらにより好ましくは1重量%の濃度の親水性膜形成剤からなる。
【0092】
好ましくは、本発明に係る局所組成物は、親水性膜形成剤としてポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー(KOLLIDON VA 64(登録商標))を含む。
【0093】
好ましくは、本発明に係る組成物は、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー(KOLLIDON VA 64(登録商標))を、組成物の総重量の0.1重量%から1.5重量%の間、好ましくは0.25重量%から1.4重量%の間、より好ましくは0.5重量%から1.3重量%の間、さらに好ましくは0.75重量%から1.25重量%の間、さらにより好ましくは1重量%の濃度で含む。
【0094】
本発明に係る局所組成物は、グリセリンをさらに含むことを特徴とする。
【0095】
グリセリン(グリセロール)は、角質層の水分保持を向上させ、水和を改善できる保湿剤として知られている。
【0096】
グリセリンは、皮膚バリアの正常な機能をサポートし、皮膚の弾力性および可塑性を促進し、皮膚の滑らかさを改善し、抗刺激効果を提供することが知られ、用いられている。グリセリンは、実際に表皮および大気から角質層に水を引き込むことができる。
【0097】
グリセリンは、その比較的高い極性により、プロピレングリコールと同様の程度および深さまで皮膚を透過することはないものの、角質層の親水性領域にリザーバーを蓄積および形成して、含水量を増加できる
【0098】
グリセリンと角質層の相互作用、皮膚におけるその分布(distribution、および酒石酸ブリモニジンに対するその比較的高い溶解度(プロピレングリコールの2倍の溶解度)は、皮膚表面のべたつきを生じさせずに、改善した経皮投与および長期的な透過性に関して利点を提供する。
【0099】
好ましくは、本発明に係る組成物は、グリセリンを、組成物の総重量の1重量%から20重量%の間、好ましくは2重量%から15重量%の間、より好ましくは3重量%から10重量%の間、さらに好ましくは4重量%の濃度で含む。
【0100】
特に有利な方法では、PGおよびグリセリンの組み合わせが、角質層における活性剤、好ましくは酒石酸ブリモニジンの分布)を改善する。
【0101】
本発明に係る局所組成物は、ステアリン酸PEG-75およびモノステアリン酸グリセリルの組み合わせ、ならびにモノステアリン酸ポリオキシエチレン-20ソルビタン(ポリソルベート-60)およびセトステアリルアルコールの組み合わせ、好ましくはステアリン酸PEG-75およびモノステアリン酸グリセリルの組み合わせ(Gelot 64)から選択される乳化剤をさらに含むことを特徴とする。
【0102】
好ましい一実施形態によれば、本発明に係る組成物は、46から66℃の間の融点を有する脂肪族成分を含む、ステアリン酸PEG-75およびモノステアリン酸グリセリルの組み合わせ(Gelot 64)を含む。
【0103】
製造プロセスを考慮すると、約65±5℃の温度で行われる乳化後の最も重要な工程は、冷却段階である。温度の低下は、それらが転移温度に達した際に脂肪族成分の結晶化を引き起こす。
【0104】
冷却段階の間、脂肪族乳化剤/補助乳化剤は、油滴周りで組織化される。親油性の補助乳化剤は、主に油滴内に残存する一方、親水性の乳化剤および両親媒性の脂肪族アルコールは、エマルションの油滴と連続水相との間の界面に残る。
【0105】
好ましくは、本発明に係る組成物は、乳化剤、例えばGELOT 64(登録商標)を組成物の総重量の1重量%から10重量%の間、好ましくは2重量%から7重量%の間、より好ましくは3重量%から5重量%の間、さらに好ましくは3%w/wの濃度で含むか、またはPOLAWAX(登録商標)を、組成物の総重量の3重量%から15%重量の間、好ましくは5重量%から12重量%の間、より好ましくは10%w/wの濃度で含む。
【0106】
本発明に係る局所組成物は、オレイン酸またはオレイルアルコール、好ましくはオレイルアルコール(KOLLICREAM OA(登録商標))をさらに含むことを特徴とする。
【0107】
好ましくは、本発明に係る組成物は、オレイン酸またはオレイルアルコールを、組成物の総重量の0.1重量%から7重量%の間、好ましくは1重量%から5重量%の間、より好ましくは2.5重量%の濃度で含む。
【0108】
好ましくは、本発明に係る局所組成物は、ゲル化剤としてキサンタンガムをさらに含む。
【0109】
好ましくは、本発明に係る組成物は、キサンタンガムを、組成物の総重量の0.1重量%から1.5重量%の間、キサンタンガムを、好ましくは0.2重量%から1重量%の間、より好ましくは0.2~0.5重量%の濃度で含む。
【0110】
柔らかい混合膜は、他の不揮発性溶媒、PGおよびPEGに加え、キサンタンガムおよび/またはHEC、ならびにポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー(KOLLIDON VA64(登録商標))を用いて皮膚表面に有利に形成され、ブリモニジン、好ましくは酒石酸ブリモニジンのリザーバーの形成を可能として、ブリモニジンの沈殿を減速し、その作用期間を延長する。
【0111】
好ましくは、本発明に係る局所組成物は、天然もしくは合成の抗酸化剤、またはフリーラジカル捕捉剤をさらに含む。
【0112】
抗酸化剤は、単独でまたは混合物として、好ましくは混合物として、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、DL-トコフェロール、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、プロピオンアルデヒド、アスコルビン酸塩、パルミチン酸塩またはグルタチオンから好ましくは選択され、好ましくはBHAおよび/またはDL-トコフェロールから選択される。
【0113】
抗酸化剤は、本発明に係る油中水型または水中油型のエマルション組成物において、組成物の総重量の0.01重量%から4.0重量%の間、より好ましくは0.1重量%から1.0重量%の間、さらに好ましくは0.1重量%で用いられ、例えばBHAは0.1%w/wおよび/またはDL-トコフェロールは0.1%w/wの濃度で好ましくは用いられる。
【0114】
好ましくは、本発明に係る局所組成物は、単独でまたは組み合わせて、メチルパラベン、プロピルパラベンまたはイソプロピルパラベンから選択されるパラベンをさらに含む。
【0115】
好ましくは、本発明に係る組成物は、単独でまたは組み合わせて、パラベンを、組成物の総重量の0.01重量%から0.5重量%の間、好ましくは0.1重量%から0.4重量%の間、より好ましくは0.3重量%の濃度で含む。
【0116】
好ましくは、本発明に係る組成物は、フェノキシエタノールを、好ましくは0.15%から1.5%の間、より好ましくは0.4%から1.25%の間、さらに好ましくは0.5%から1.1%の間、さらにより好ましくは1%w/wの濃度で、安息香酸ナトリウムを、好ましくは0.05%から0.5%の間、より好ましくは0.1%から0.3%の間、さらに好ましくは0.2%w/wの濃度で、代替的な防腐剤としてのフェニルエチルアルコールを、好ましくは0.1%から1%の間、より好ましくは0.25%から0.75%の間、さらに好ましくは0.5%w/wの濃度、および/または組成物の保存性および安定性を補助するキレート剤としてのEDTAを、好ましくは0.2%w/wの濃度でさらに含む。
【0117】
より好ましくは、組成物は、フェノキシエタノール、安息香酸ナトリウム、フェニルエチルアルコールおよびEDTAの組み合わせを含む。
【0118】
PGおよびグリセリンを含む、吸湿性、保湿性および皮膚コンディショニング特性を有する溶媒を含む親水性溶媒相の組込みは、角質層中の酒石酸ブリモニジンの溶解度を改善し、角質層の含水量を増加させるのに役立つ。
【0119】
抗酸化剤の組込みは、活性剤および油相の安定性を有益に改善する。
【0120】
また、用いた油相は、エマルション形成、物理的安定性、および所望の微細構造の達成に有利に働き、かつ皮膚送達を助け、適切な感覚的パフォーマンスを示すように選択されている。
【0121】
したがって、本発明に係る油中水型または水中油型のエマルション組成物は、酒石酸ブリモニジンの経皮送達を改善および延長し、十分な長期の局所血管収縮や酸素反応型および炎症性メディエータからの表皮と真皮の優れた保護によって、患者のニーズを満たすことを可能とする。
【0122】
本発明に係る組成物は、適用しやすく、潜在的に刺激される皮膚に適用できる。
【0123】
これらは、急速に乾燥して、皮膚にごく僅かな残留物を残す。
【0124】
本発明に係る局所組成物は、3.5.0から6.5の間、好ましくは4.0から5.5の間、より好ましくは4.5のpHを有する。
【0125】
本発明に係る油中水型または水中油型のエマルション組成物は、比較的多量のグリコール、例えば20%のPGおよび10%のPEG-400を含むように設計されている。比較的高濃度なこれらの成分は、界面を破壊して乳化剤および補助乳化剤を可溶性にし得ることから微細構造の安定性および維持を必ずしも支持するものではない。また、活性塩である酒石酸ブリモニジンを比較的高濃度で添加することには、界面およびエマルションが物理的に不安定化する可能性がある。
【0126】
しかしながら、これらの特性は、小さい油滴および液晶の密度が高く、これらの構造の表面積を改善して活性剤の角質層への透過を促進させる、油中水型または水中油型、好ましくは水中油型のエマルション組成物を得ることを可能としている。
【0127】
本発明の別の目的は、医薬としてのその使用のための、本発明に係る油中水型または水中油型、好ましくは水中油型のエマルション組成物に関する。
【0128】
好ましくは、本発明に係る油中水型または水中油型のエマルション組成物は、放射線により引き起こされる損傷の予防および/または処置に用いられ、放射線は、光子もしくは陽子に由来するか、または天然、治療上もしくは偶発的であり、紫外線(UV)、すなわち日焼けの原因となり得るUVAおよびUVB、可視領域の放射、赤外放射線(IR)またはさらには電離放射線、例えばX線およびα、β、γ線、またはさらには陽子ビームを含む。
【0129】
好ましくは、本発明に係る油中水型または水中油型のエマルション組成物は、特に放射線療法による放射線、例えばX線に起因する皮膚炎の予防および/または処置に用いられる。
【実施例】
【0130】
本発明はここで、以下の実施例により示される。
【0131】
[実施例1]純粋な溶媒における飽和溶解度の測定
(方法)
過剰な医薬物質を様々な溶媒に添加し、密封容器で24時間、室温で連続的に撹拌しながら試料を保存することにより、飽和方法を準備した。
【0132】
試料の大半はマグネチックスターラーにより撹拌したが、粘性試料(例えば純粋なグリセリン)の場合は回転ミキサーを用いて試料を撹拌した。回転ミキサーの速度を、試料の適正な混合を確実にするように調節した。これは一般に、よりゆっくりとした回転速度を含む。
【0133】
平衡化時間の後、試料を遠心分離またはろ過し、Thermo Scientific Dionex U3000 UPLC-UVシステムを用いて酒石酸ブリモニジンを定量化した。以下にクロマトグラフ条件を記載する。
・カラム:Sunfire C18 150mm×4.6mm、3.5μm
・カラム温度:40℃
・注入量:5μl
・流量:0.8ml/分
・UV検出:246nm
【0134】
(結果)
下記表1に、別々に使用した溶媒ごとの飽和溶解度の結果を要約する。
【0135】
【0136】
(結論)
得られた結果から、DMSOは、酒石酸ブリモニジンの優れた溶媒であると考えられる。8.5%w/wの酒石酸ブリモニジンの添加後でも飽和に達しなかった。
【0137】
水は、次に優れた溶媒であると考えられ、活性剤の塩形態は、おそらく水への溶解度に有利に働く。
【0138】
次いで、降順に、グリセリン(GLY)、glucam、プロピレングリコール(PG)およびPEG-400であった。
【0139】
他の溶媒について観察された溶解度は、著しく低く、酒石酸ブリモニジンの溶解度の結果は満足のいくものではなかった。
【0140】
興味深いことに、よく知られた溶媒、例えばTranscutolおよびDMIは、酒石酸ブリモニジンに対してグリセリンまたはプロピレングリコールよりはるかに効果が低い溶媒であると考えられる。
【0141】
[実施例2]溶媒の混合物における飽和溶解度の測定
(方法)
飽和溶液を実施例1と同様に調製し、インキュベートして測定した。
【0142】
(結果)
下記表2に、様々な溶媒混合物についての飽和溶解度の結果を要約する。
【0143】
【0144】
(結論)
予想した通り、溶媒の非水性混合物は、水を含有する混合物より低い溶解力(solubility power)を有するものと考えられる。
【0145】
それにも関わらず、得られた結果によれば、PG/PEG-400/GLY/PVP(20:10:5:1)を含む不揮発性の混合物は、水性混合物PG/PEG400/GLY/PVP/水(20:10:5:1:40)と比較して、約22%の活性剤を可溶性にすることができたことが考えられる。これは、水が蒸発した後でも、残留製剤において、水性ゲルの不揮発性の極性成分が、酒石酸ブリモニジンを皮膚表面および角質層に溶解するある程度の能力を有し得ることを示している。
【0146】
1%または1.5%の濃度の酒石酸ブリモニジンを使用する場合、活性剤は、適用前の当初の製剤の水性溶媒相中において、それぞれ約30%または50%飽和であってよい。しかし、製剤を皮膚表面に適用すると、水が比較的すぐに蒸発した。
【0147】
したがって、得られた結果は、製剤の物理的な安定性については有利であると思われるものの、従来の皮膚分布に関しては必ずしもそうではなく、熱力学的な活性が比較的低いものであった。
【0148】
[実施例3]単一溶媒および溶媒の予備的混合物における安定性の測定
下記表3に記載のように、溶媒の組み合わせを調製した。評価を促進するために、0.1%酒石酸ブリモニジンを各混合物に添加した。試料を、室温、40℃および50℃で1か月間貯蔵し、T=0およびT=1か月の間隔でサンプリングした。
【0149】
【0150】
下記表4に、本研究で生成した適合性データを要約する。
【0151】
【0152】
得られた結果から、平均値は99.36%から101.45%の間であり、相対標準偏差は、1%未満であった。
【0153】
Glucam E20のない溶媒混合物は、最も好ましい安定性プロファイルを示した。
【0154】
Glucam E20のない溶媒混合物が、最も好ましい安定性プロファイルを示し、グリセリンは、安定性を改善すると考えられる。Glucam E10が5%の濃度で組成物に含まれた場合、酒石酸ブリモニジンの安定性は改善した。酒石酸ブリモニジンの測定値は、Glucam濃度が上昇するにつれて減少する傾向があった。最も安定な溶媒の混合物は、M8(水中、30%Transcutol)で得られ、次いでM1(水中、10%DMSO、5%Glucam E10および5%グリセリン)で得られた。
【0155】
得られたデータは、Glucam E10およびE20を使用すると、酒石酸ブリモニジンの不安定性のリスクを高めることを示した。一方で、transcutol、DMSOおよびグリセリンは、許容可能な適合性プロファイルを示した。
【0156】
[実施例4]LUMiSizer(登録商標)技術による様々なエマルション組成物の安定性の評価
様々な組成物を調製して、それらの短期的な物理的安定性を評価した。
【0157】
遠心分離およびより定量的な迅速なスクリーニングツールであるLUMiSizer(登録商標)を用いて、効率を最大化し、様々な組成物のスクリーニングを容易にした。
【0158】
分布安定性、保存可能期間、ならびに粒子-粒子相互作用、粒子および破片の圧縮率、構造安定性、ならびに堆積物およびゲルの弾性挙動の特性評価および最適化のためには、多試料のLUMiSizer(登録商標)が理想的であった。
【0159】
浄化速度および不安定性指標、堆積速度および粒子浮遊速度、残った濁度、分離相(液体または固体)の容積、堆積物の圧密または脱水の観点から、脱混合現象を定量化した。
【0160】
下記表5~8に記載の組成物の安定性について、標準的なLUMiSizer(登録商標)プロトコルである3時間の持続時間、40℃の温度および4000rpmでの遠心分離を用いて、評価した。
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
図1に、LUMiSizer(登録商標)により得られた結果を示す。
【0166】
このような予備的な結果は、製剤19-0155.0045(Brij/Arlamolベースの水中油エマルション)が最も不安定であり、ビヒクルのみを含む同等の組成物(活性剤である酒石酸ブリモニジンなし)(19-0155.0065P)よりも安定性が低いことを示した。
【0167】
データは、活性物質である酒石酸ブリモニジンが、おそらくこの組成物におけるその生理食塩水の形態のために、不安定な効果を有することを示している。
【0168】
一方、Gelot 64(19-0155.0090)およびPolawax(19-0155.0091)から調製された活性物質を含む他の組成物は、驚くべきことに、ビヒクル19-0155.0065Pの組成物と同様の物理的な安定性を示した。
【0169】
同様に、下記表9~11に示す他の組成物について、LUMiSizer(登録商標)技術を用いて、補完的な分析を行った。
【0170】
【0171】
【0172】
【0173】
【0174】
従来の目視観察およびLumisizer(登録商標)により得られた結果は、Polawaxをベースとした組成物が最も不安定であると考えられ、40℃で3カ月後に相分離が観察されたことを示す。
【0175】
BRIJ/ARLAMOLをベースとした組成物から有益な観察をすることができた。
【0176】
ビヒクル(19-0155.0070P/F1)は、活性剤である酒石酸ブリモニジンを含む同様の組成物(19-0155.CR2.0044A/F1)よりも安定性があった。
【0177】
10%w/wのPEG-400の添加により、活性剤を含む全ての試験組成物の安定性は、向上した(19-0155.0076/F2および19-0155.0089/F1対19-0155.CR2.0044A/F1)。
【0178】
安定性は、キサンタンガムの添加によっても向上し、組成物19-0155.0089/F1は、組成物19-0155.0076/F2(40℃での3カ月の保存後に浸出液、および僅かに高い不安定性指標を示す)よりも僅かに安定性があった。
【0179】
2つのGelot 64をベースとしたエマルション(19-0155-0083/F1および19-0155-0087/F1)は、安定剤としてのキサンタンガムの有益な含有がなくても、良好な安定性を示し、最も良好な結果を示した。
【0180】
下記表12に記載の組成物を用いて、参考としてGelot 64をベースとした組成物(19-0155.0087/F1)を用い、同様の追加分析においてポリマーの添加も試験した。
【0181】
【0182】
得られた更なる結果から、キサンタンガム(0.2%w/w)の添加により、参考製剤19-0155.0087/F1と比較して、エマルション19-0155.0103/F1の安定性は、劇的に向上した。
【0183】
一方、成分、例えばSEPINEO P600(登録商標)の含有は、エマルション19-0155.0104/F1を不安定化し、安定性が参考製剤19-0155.0087/F1の安定性よりもかなり低くなった。
【0184】
[実施例5]水中油型エマルション組成物の製造において様々なプロセス工程を変化させる影響の評価
下記表13に記載のビヒクルを用いて、外観および安定性の観点から、組成物について様々な製造プロセス工程を変化させる影響を評価した。表中には、外観、pH、および粘度の観点からのビヒクルの初期の特徴も記載する。
【0185】
【0186】
下記表14に、様々なプロセス変化について得られた結果を記載する。
【0187】
【0188】
【0189】
特に以下に記載の「デフロキュレーター」および「Croda」プロセスを比較して試験した。
【0190】
「デフロキュレーター」プロセスでは、解膠または分布ブレードを用い、一方「Croda」プロセスでは、製造プロセスを通してパドルスターラーを用いた。
【0191】
(「デフロキュレーター」プロセス)
(フェーズA
使用装置:ビーカー:600ml;撹拌の種類:解膠または分布ブレード
【0192】
工程1:ビーカーに水、PGおよびPEG-400を量って添加する。
70℃に加熱し、解膠または分布ブレードにより均一になるまで混合する。
【0193】
工程2:工程1で得られた混合物にKOLLIDONを量って添加する。解膠または分布ブレードにより均一になるまで混合する。
【0194】
工程3:工程2で得られた混合物に、グリセリンに事前に分布させたキサンタンガムを添加する。
【0195】
工程4:工程3で得られた混合物の内容物が均一になったら、メチルパラベンを量って添加する。
【0196】
工程5:乳化前20分以内に、工程4で得られた混合物にフェノキシエタノールを導入する。
【0197】
(フェーズB)
使用装置:別のビーカー;撹拌の種類:マグネチックバー
【0198】
工程6:脂肪族相を構成する全ての賦形剤を量って添加する。70℃に加熱し、均一になるまで混合する。
【0199】
(乳化フェーズ)
撹拌の種類:解膠または分布ブレード
【0200】
工程7:70℃で、500rpmで10分間混合しながら、工程6で得られたフェーズB混合物を工程5で得られたフェーズA混合物に注ぐ。
【0201】
(冷却工程)
撹拌の種類:解膠または分布ブレード
【0202】
工程8:工程7で得られた混合物をホットプレートから取り外し、200~300rpmで撹拌しながら35℃まで放冷する。
【0203】
工程9:30℃から35℃の間で、製剤の粘度が上昇し、ヘラを用いてビーカーの壁から製品を取り除く。
【0204】
工程10:工程9で得られた混合物が均一になったら、10%クエン酸溶液を用いて約pH4.5~5に調整する。
【0205】
工程11:pHを調整したら、約200rpmで20分間、解膠/分布ブレードを用いて混合する。
【0206】
工程12:工程11を行ったら、水(qs)で仕上げる。
【0207】
(「Croda」プロセス)
(フェーズA)
使用装置:ビーカー:600ml;撹拌の種類:パドルスターラー
【0208】
工程1:ビーカーに水およびメチルパラベンを量って添加する。
70℃に加熱し、パドルスターラーにより均一になるまで混合する。
【0209】
工程2:工程1で得られた混合物にKOLLIDONを量って添加する。パドルシェーカーにより均一になるまで混合する。
【0210】
工程3:65℃で、工程2で得られた混合物に、グリセリンに事前に分布させたキサンタンガムを添加する。
【0211】
(フェーズB)
使用装置:別のビーカー;撹拌の種類:マグネチックバー
【0212】
工程4:脂肪族相を構成する全ての賦形剤を量って添加する。70℃に加熱し、均一になるまで混合する。
【0213】
(乳化フェーズ)
撹拌の種類:Ultra Turrax
【0214】
工程5:70℃で、11,500rpmで2分間混合しながら、工程4で得られたフェーズB混合物を工程3で得られたフェーズA混合物に注ぐ。
【0215】
(冷却工程)
撹拌の種類:パドルスターラー(ホールを有する)
【0216】
工程6:工程5で得られた混合物をホットプレートから取り外し、200~300rpmで撹拌しながら35℃まで放冷する。
【0217】
工程7:冷却しながら、工程6で得られた混合物にPGおよびPEG-400を導入する。
【0218】
工程8:35℃~40℃で、工程7で得られた混合物にフェノキシエタノールを量って添加する。
【0219】
工程9:約30℃で、製剤の粘度が上昇し、ヘラを用いてビーカーの壁から製品を取り除く。
【0220】
工程10:工程9で得られた混合物が均一になったら、10%クエン酸溶液を用いて約pH4.5~5に調整する。
【0221】
工程11:pHを調整したら、約200rpmで30分間、パドルシェーカーを用いて混合する。
【0222】
工程12:工程11を行ったら、水(qs)で仕上げる。
【0223】
「デフロキュレーター」プロセスによる参考製剤について、最も良好な結果が得られた。
【0224】
製剤19-0155-0090P/F3について、このプロセスにより、適切な粘度および高密度の単分布した液晶/ラメラゲル相を得た。
【0225】
液滴および液晶/ラメラゲル相が小さく高密度であることから、これらの条件下で得られた微細構造は薬物送達に最も効果的であった。
【0226】
このような微細構造は、液晶/ラメラゲル相の比表面積を最大化し、皮膚への活性剤の輸送を容易にして、血管収縮の強度および血管収縮の長期の持続時間に関する血管収縮を改善した。
【0227】
したがって、液滴サイズは、用いたプロセスにより影響を受け、「Croda」プロセスは、「デフロキュレーター」プロセスよりも大幅に液滴サイズを低下させる傾向があった。これは、おそらく、乳化プロセス中の高せん断ミキサーの使用およびその後のパドルスターラーの使用のためである。
【0228】
重要な変数として冷却速度も同定し、大気冷却が、行った試験のうち最も満足のいく結果を生み出した。
【0229】
したがって、この試験によりいくつかの他の観察を行った。
【0230】
フェノキシエタノールは、好ましくは乳化工程後に導入される必要がある。
【0231】
活性相(活性剤を含む)が乳化後に導入される場合、加熱されない必要がある。
【0232】
微細構造は、グリコールの除去によってかなり影響を受け、「デフロキュレーター」プロセスおよび「Croda」プロセスにより、液滴サイズおよび液晶/ラメラゲル相サイズが変化した。
【0233】
「デフロキュレーター」プロセスにおける1%w/wのジメチコンの含有は(製剤0090P/F10)、製剤を塗る/適用する場合に観察されたソーピング/ホワイトニング効果を取り除くと考えられる。
【0234】
微細構造は、デフロキュレータープロセスを用いて製造された場合、この小さな剤形変化に大きく影響されるとは考えられない。
【0235】
[実施例6]インビボ血管収縮モデルを用いた様々な組成物の皮膚白化効果の評価
以下に記載のインビボ血管収縮プロトコルを用い、各組成物について3回試験した。
【0236】
60マイクロリットルの各組成物を、プラスチック製Oリングを用いて規定した10cm2の面積に、容積式ピペットを用いて上胸部に8a.m.に盲検無作為方式で1回適用した。
【0237】
適用後、30秒のマッサージが続き、続いて次に適用後の製品を10分間乾燥させた。
【0238】
0~3(3=最大)の従来のスケールでの白化スコアを、適用の1、2、3、4、8、10、12、14、16および24時間後に測定した。
【0239】
2つのGelot 64をベースとしたエマルション(上述した表10)および1つのPolawax NFをベースとしたエマルション(上述した表11)を評価した。
【0240】
【0241】
試験した全てのエマルションに同様の作用発現が生じた。
【0242】
Polawax NFエマルション(19-0155,0086A/F1)は、Gelot 64をベースとした組成物(19-0155-0083/F1および19-0155-0087/F1)よりも僅かに良好な全般プロファイルを生じた。組成物19-0155.0086A/F1もオレイルアルコール(KOLLICREAM OA、2,5%)およびKOLLIDON VA-64を含み、これらの両方が、局所適用される活性剤の経皮投与を改善および延長することに注目する必要がある。
【0243】
Gelot 64をベースとした組成物(19-0155-0083/F1)は、いずれのポリマーもオレイルアルコールも含まず、一方でGelot 64をベースとした組成物19-0155-0087/F1は、KOLLIDON VA-64およびオレイルアルコールを含む。両方のGelot 64をベースとした組成物が、Polawaxをベースとした製剤と比較して優れた物理的安定性を示した。
【0244】
これらの結果に基づき、キサンタンガムおよびKOLLIDON VA 64にオレイルアルコールを加えた組み合わせが活性剤の経皮投与を改善し、一方で必要とされる物理的安定性を提供すると考えられる。
【0245】
したがって、このような水中油型エマルションは、皮膚白化の発現、強度および持続時間の観点から改善した性能特性を示した。
【0246】
[実施例7]インビボ血管収縮モデルを用いた様々な組成物の皮膚白化効果の評価
様々な製剤について試験し、結果をO/Wエマルション[水中油型](Gelot 64、表14)およびO/Wエマルション(Polawax、表15)の2群に分割した。試験した製剤は全て、安定性の観点から利点を有するキサンタンガムを含んでいた。
【0247】
【0248】
【0249】
図5に、W/Oエマルション(Polawax、BrijおよびGelot起源)の皮膚白化結果を、3回反復の平均に基づいて示す。
【0250】
Polawaxエマルション(19-0155.0091/F1)は、4から10時間の間にスコア3の最も高い皮膚白化を達成した。Gelotエマルション(19.0155-0090/F1)については、同様だが僅かに低い強度プロファイルを観察した。
【0251】
Brijをベースとした組成物は、(0.2%のキサンタンガムが存在するにも関わらず)いくらかの不安定性を示し、満足のいくものではないと思われた。
【0252】
[実施例8]インビボ血管収縮モデルを用いた様々な組成物の皮膚白化効果の評価
下記表17および表18に、試験したGelot 64およびPolawaxをベースとしたエマルションについての組成および物理的安定性データを記載する。
【0253】
【0254】
【0255】
用いたGelotをベースとした組成物は、Gelot 64エマルション(19-0155-0090/F1および19.0155-0103/F1)の最適化バージョンであり、一方、Polawaxエマルションは、Polawaxエマルション(19-0155.0091/F1)の最適化した変形物である。
【0256】
上記のようなインビボ血管収縮プロトコルを用いて、それぞれの組成物について3回試験した。
【0257】
図6に、得られた結果を示す。結果から、1.5%w/wの酒石酸ブリモニジンを含む製剤は、血管収縮を示す高レベルの長期皮膚白化を生じた。
【0258】
試験したGelotをベースとしたエマルションは、最大限の白化性能を達成し、Polawax 19-0155-0133/F1をベースとしたエマルションよりも僅かに低い性能であった。この製剤は、他の試験した組成物および他の活性なPolawax製剤(19-0155-0132/F2)と同様の濃度の活性剤を含む。組成物19-0155-0133/F1は1.0%w/wのトコフェロールを含み、19-0155-0132/F2は0.1%w/wのトコフェロールを含む点のみで異なる。
【0259】
Gelot 64(19-0155-0102/F5)およびPolawax(19-0155-0132/F2)をベースとしたエマルション製剤は、同様の血管収縮プロファイルをもたらした。血管収縮の程度も同様であり、適用後に約1~1.5であり、約4時間後に最大値となった。血管収縮の強度は、適用後14時間まで約3.0のままであり、24時間後に1.0~1.5に低下した。
【0260】
図7に、一例として、活性な製剤19-0155-0102/F5および対応するビヒクル19-0155-0102P/F2の平均皮膚白化プロファイル±標準偏差を示し、血管収縮試験の優れた再現性も示す。
【0261】
[実施例9]UV誘発性紅斑モデルへの有効性の評価
下記表19に列挙した酒石酸ブリモニジンおよびビヒクルを含む活性組成物について、UV誘発性紅斑モデルを用いて評価した。
【0262】
組成物を、以下に記載するプロトコルを用いて適用した。方法は、3人の健康なボランティアにおけるUV照射前の夜およびUV照射の2時間前の適用を含んだ。
【0263】
実験の24時間前に、各対象の個々の最小紅斑線量(MED)を決定した。9つの小区域を各対象の背側胴体にマーク付けし、組成物を5mg/cm2の線量でこれらの区域に適用した。UV線量を、1×MED、2×MEDs(2MEDs)および3×MEDs(3MEDs)で投与し、この線量と同等とした。
【0264】
実験的な読み取りを、調査員の紅斑スコアおよびChromameter比色計を用いて照射の24時間後に行った。
【0265】
【0266】
【0267】
1.5%の酒石酸ブリモニジンを含む活性な組成物は、ビヒクルと比較して、紅斑スコアの実質的な低下を示した。1.5%w/wの酒石酸ブリモニジンを抗酸化剤と組み合わせた場合に、抗紅斑効果に関する更なる利点が観察された。抗酸化剤モデルとして、BHAおよびα-トコフェロールを、0.1%w/wおよび1%w/wの濃度で用いた。1%のBHAまたは1%のα-トコフェロールを含む製剤は、最も強力な抗紅斑効果を示し、2MEDsを効率的に防止した。製剤19-0155.0102/F5(液晶エマルションO/W Gelot 64)は、最も強力な抗紅斑効果を生じた。
【0268】
[実施例10]皮膚白化モデルへの参考製品の性能
皮膚白化/血管収縮を引き起こすことが知られている参考薬剤を用いて、皮膚白化(血管収縮)モデルを試験した。初期研究は、Fahl(Effect of topical vasoconstrictor exposure upon tumoricidal radiotherapy.Int J Cancer;135(4):981~988、2014)により用いられているように、かつClearyら(Significant suppression of radiation dermatitis in breast cancer patients using a topically applied adregernic vasoconstrictor.Radiation Oncology、2017)により用いられた製剤と同様に、以下を用いて行った。
・MIRVASO(登録商標)ゲル(0.5%w/w酒石酸ブリモニジン)
・プロピオン酸クロベタゾールクリーム、0.05%w/w
・塩酸ノルエピネフリン溶液(70:30 エタノール:水中、82mg/ml)
【0269】
皮膚白化モデルは、皮膚白化の発現、強度および持続時間の観点から、様々な製剤で適用されるいくつかの活性剤により引き起こされる皮膚白化性能の差別化を可能にする。
【0270】
このモデルは、十分な再現性、および製剤スクリーニング段階のための識別性能を有する。
【0271】
皮膚の白化に関して明確に定義された製品/活性剤として、プロピオン酸クロベタゾールクリームを選択した。実際、この血管収縮効果を用いて、局所コルチコステロイドの有効性およびインビボでの生物学的同等性が評価されている(1997 FDAガイダンス、https://www.fda.gov/media/70931/download)。
【0272】
図9に、MIRVASO(登録商標)ゲル、プロピオン酸クロベタゾールクリーム、0.05%w/wおよび塩酸エピネフリン溶液(70:30 エタノール:水中、82mg/ml)の皮膚白化データを図示する。
【0273】
MIRVASO(登録商標)ゲルは大きな白化を生じなかった。このことは、それが酒さの処置の間に比較的薄く敏感な顔面の皮膚に適用するために設計されたことから、予測されたことであった。一般則として、これらの製品は、酒さ患者の皮膚が敏感であるために、高濃度の皮膚に透過する可能性のある物質は含まない。さらに、顔面の皮膚は胸部の皮膚より薄く、結果として皮膚への透過および浸透に対してのバリアが低い。強度および作用の持続時間は、所望の放射線誘発皮膚炎の要求を満たすには不十分である。
【0274】
ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)溶液は、適用後1時間に迅速な中間の皮膚白化を生じた。しかしながら、4時間の観察間隔後に効果は消え始めた。白化は10時間後に0.5以下であり、たったの16時間後には観察開始点に戻った。初期の影響が見込まれた一方で効果の持続時間および強度は十分ではない。
【0275】
極性のノルエピネフリン分子およびその水性エタノールビヒクルとは対照的に、プロピオン酸クロベタゾールクリームはゆっくりとした作用発現を示し、2時間から徐々に上昇して14から16時間の間に2.0のピーク白化スコアとなった。16時間から白化が迅速に低下し、24時間に開始点に戻る。クロベタゾールの白化のよりゆっくりとした作用発現は、活性剤の物理化学的特徴と関連することがあり、これによって、その親油性の性質は、リザーバーの形成、およびより親水性のノルエピネフリンと比較した生存可能な表皮におけるより制限された分布をもたらす。血管収縮の薬力学的メカニズムもまたプロピオン酸クロベタゾールおよびノルエピネフリンで異なることに注目することも重要である。
【0276】
改質MIRVASO製剤を1.5%w/w酒石酸ブリモニジンの高用量で調製した(19-0155-0098/F1)。MIRVASOと同様のビヒクルにおける皮膚白化への上昇した用量の影響を評価するために、この評価を行った。
【0277】
2つの製剤の対応する皮膚白化結果を
図10に示す。ノルエピネフリン溶液および市販のMIRVASO(登録商標)ゲル(0.5%酒石酸ブリモニジン)もまた比較のために含まれる。
【0278】
改質MIRVASOゲル(1.5%酒石酸ブリモニジン19-0155-0098/F1)は、市販のMIRVASO(登録商標)ゲル(0.5%酒石酸ブリモニジン)と比較して、皮膚白化の強度および持続時間の実質的な上昇を引き起こした。
【0279】
一方、皮膚白化の強度は、本発明における技術的な問題を解決するのに望しい程度の長時間は続かなかった。
【0280】
この性能制限はまた、放射線皮膚炎にMIRVASOビヒクルが適さないことと関連する。上述のように、MIRVASOビヒクルに二酸化チタン粒子が存在することは、用いられる高エネルギー電磁波と関連する放射線量を阻害および妨害するのであろう。
【国際調査報告】