(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-15
(54)【発明の名称】高性能の断熱性を有する菌糸体ベースの材料およびそれに関連する方法
(51)【国際特許分類】
C12N 1/14 20060101AFI20240207BHJP
C12M 1/42 20060101ALN20240207BHJP
【FI】
C12N1/14 A
C12M1/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574758
(86)(22)【出願日】2022-02-23
(85)【翻訳文提出日】2023-10-17
(86)【国際出願番号】 EP2022054572
(87)【国際公開番号】W WO2022180123
(87)【国際公開日】2022-09-01
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523320504
【氏名又は名称】バイオーム・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BIOHM Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】サイード,イーハブ
(72)【発明者】
【氏名】ドリーセン,アントニウス マリー
(72)【発明者】
【氏名】ジェンキンズ,サマンサ ジニ レベッカ
(72)【発明者】
【氏名】ドライバーグ,キャンディス-ロバイン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルデローザ,フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】バーネット,アイリーン リィ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA01
4B029AA09
4B029AA24
4B029BB08
4B029DA10
4B029DF06
4B029DG08
4B065AA58X
4B065AC20
4B065BB40
4B065BC06
4B065BC07
4B065BD08
4B065BD10
4B065BD50
4B065CA60
(57)【要約】
概して、高性能の断熱性を有する菌糸体ベースの材料およびそれに関連する方法を説明する。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、当該方法は、
第1グレイン・スポーンを産生するために菌糸体を培養する工程と、
マザー・スポーンを産生するために前記第1グレイン・スポーンを培養する工程と、
前記マザー・スポーンを用いて標的基質でコロニーを形成する工程と、
菌糸体を不活化する工程と
を含み、前記コロニーを形成する工程は、
二酸化炭素と水との第1混合物を生成させることと、
光合成種を含むコンテナに前記第1混合物を流すことと、
前記光合成種から酸素を生成させることと、
前記酸素を前記マザー・スポーンに流すことと、
二酸化炭素と水との第2混合物を生成させることと、
前記光合成種を含む前記コンテナに前記第2混合物を流すことと
を含む、方法。
【請求項2】
方法であって、当該方法は、
第1グレイン・スポーンを産生するために菌糸体を培養する工程と、
マザー・スポーンを産生するために前記第1グレイン・スポーンを培養する工程と、
前記マザー・スポーンを用いて標的基質でコロニーを形成する工程と、
前記マザー・スポーンおよび/または菌糸体を不活化する工程と
を含み、
前記培養する工程のいずれか1つは、栄養材料を菌糸体に供給することを含み、前記栄養材料は、酸と過酸化物との混合物で処理されている、方法。
【請求項3】
方法であって、当該方法は、
第1グレイン・スポーンを産生するために菌糸体を培養する工程と、
マザー・スポーンを産生するために前記第1グレイン・スポーンを培養する工程と、
前記マザー・スポーンを用いて標的基質でコロニーを形成する工程と、
前記マザー・スポーンおよび/または菌糸体を不活化する工程と
を含み、
前記コロニーを形成する工程は、前記マザー・スポーンおよび/または前記標的基質の少なくとも一部に電場を適用することを含む、方法。
【請求項4】
菌糸体ベースの材料であって、当該菌糸体ベースの材料は、
複数の菌糸フィラメントと、
前記複数の菌糸フィラメントと混合される標的基質と
を含み、
前記菌糸フィラメントのキチン質の量は、5重量%以上であり、
前記菌糸体ベースの材料の熱伝導率は、0.03W/m・K以下であり、
前記菌糸体ベースの材料の燃焼熱は、30MJ/kg以下であり、
前記菌糸体ベースの材料のポロシティは、1%以上である、
菌糸体ベースの材料。
【請求項5】
菌糸体ベースの材料であって、当該材料は、
複数の菌糸フィラメントと、
前記複数の菌糸フィラメントと混合される標的基質と
を含み、
前記菌糸フィラメントのキチン質の量は、5重量%以上であり、
前記菌糸体ベースの材料の熱伝導率は、0.1W/m・K以下であり、
前記菌糸体ベースの材料の燃焼熱は、17MJ/kg以下であり、
前記菌糸体ベースの材料のポロシティは、1%以上である、
菌糸体ベースの材料。
【請求項6】
菌糸体ベースの材料であって、当該材料は、
複数の菌糸フィラメントと、
前記複数の菌糸フィラメントと混合される標的基質と
を含み、
前記菌糸体ベースの材料における前記標的基質の量は、1重量%以上であり、
前記菌糸体ベースの材料の熱伝導率は、0.1W/m・K以下であり、
前記菌糸体ベースの材料の燃焼熱は、30MJ/kg以下であり、
前記菌糸体ベースの材料のポロシティは、1%以上である、
菌糸体ベースの材料。
【請求項7】
菌糸体ベースの材料であって、当該材料は、
複数の菌糸フィラメントと、
前記複数の菌糸フィラメントと混合される標的基質と
を含み、
秩序のないネットワークを形成するために前記複数の菌糸フィラメントが配置されており、
前記菌糸体ベースの材料の熱伝導率は、0.1W/m・K以下であり、
前記菌糸体ベースの材料の燃焼熱は、30MJ/kg以下であり、
前記菌糸体ベースの材料のポロシティは、1%以上である、
菌糸体ベースの材料。
【請求項8】
前記菌糸フィラメントのキチン質の量は、前記菌糸体ベースの材料の5重量%以上であり、かつ/または前記菌糸体ベースの材料の95重量%以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の菌糸体ベースの材料または方法。
【請求項9】
前記標的基質は、前記菌糸体ベースの材料の5重量%以上である、請求項1~8のいずれか1項に記載の菌糸体ベースの材料または方法。
【請求項10】
前記菌糸フィラメントは、少なくとも部分的に架橋しているか、または接合している、請求項1~9のいずれか1項に記載の菌糸体ベースの材料または方法。
【請求項11】
前記菌糸体ベースの材料のポロシティは、1%以上であり、かつ/または70%以下である、請求項1~10のいずれか1項に記載の菌糸体ベースの材料または方法。
【請求項12】
前記菌糸体ベースの材料の厚みは、1mm以上であり、かつ/または150mm以下である、請求項1~11のいずれか1項に記載の菌糸体ベースの材料または方法。
【請求項13】
前記菌糸体ベースの材料に存在する水の量は、20重量%以下である、請求項1~12のいずれか1項に記載の菌糸体ベースの材料または方法。
【請求項14】
前記菌糸体ベースの材料は、コーティングを含まない、請求項1~13のいずれか1項に記載の菌糸体ベースの材料または方法。
【請求項15】
前記基質のヤング率は、1GPa以上であり、かつ/または130GPa以下である、請求項1~14のいずれか1項に記載の菌糸体ベースの材料または方法。
【請求項16】
前記栄養材料は、前記標的基質を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の菌糸体ベースの材料または方法。
【請求項17】
前記培養する工程は、第1グレイン・スポーン、第2グレイン・スポーンおよび/または第3グレイン・スポーンを成長させることを含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記培養する工程は、マザー・スポーンを産生することを含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
酸と過酸化物との前記混合物は、クエン酸および/または過酸化水素を含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記培養する工程は、酵素産生エンハンサーを提供することを含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
コロニーを形成する工程は、前記菌糸体を前記標的基質と混合することを含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
さらに、前記菌糸体および/または前記基質を成形することを含む、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
(a)前記不活化する工程は、前記菌糸体を脱水すること、および/または前記菌糸体を加熱することを含み、かつ/または
(b)前記不活化する工程は、前記菌糸体に無線周波数を適用することを含み、かつ/または
(c)前記不活化する工程は、前記菌糸体を凍結乾燥することを含み、かつ/または
(d)前記不活化する工程は、第1の不活化の工程、必要に応じて第2の不活化の工程を含む、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記標的基質でコロニーを形成する工程は、マザー・スポーンの液体培地を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
概して、高性能の断熱性(又は絶縁性又はインシュレーション)を有する菌糸体ベースの材料(又は菌糸体に基づく材料又は菌糸体系材料)およびそれに関連する方法を説明する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
(要旨)
本開示では、高性能の断熱性(又は絶縁性又はインシュレーション)を有する菌糸体ベースの材料(又は菌糸体に基づく材料又は菌糸体系材料)およびそれに関連する方法を説明する。物品(又はアーティクル)は、菌糸体(又はマイセリウム(mycelium))の1以上の成分(又は要素又はコンポーネント)を含む菌糸体ベースの材料を含んでよい。本開示の主題は、いくつかの場合において、特定の問題に対して相互に関係のある製品(又は生成物又は産物又はプロダクト)、特定の問題に対する代替の解決策(又はソリューション)、および/または1以上のシステムの複数の異なる使用(又は使用方法又は用途)および/または1以上の物品の複数の異なる使用(又は使用方法又は用途)を包含する。
【課題を解決するための手段】
【0003】
1つの態様では、以下の方法を説明する。当該方法は、以下のこと(又は工程又はステップ)を含む。
第1グレイン・スポーン(又は第1グレイン種菌又はファースト・グレイン・スポーン(first grain spawn))を産生(又は形成又は生成又は製造)するために菌糸体(又はマイセリウム(mycelium))を培養すること(又は工程又はステップ)、
マザー・スポーン(又はマザー種菌又は母種菌(mother spawn))を産生(又は形成又は生成又は製造)するために第1グレイン・スポーンを培養すること(又は工程又はステップ)、および
マザー・スポーンを用いて標的基質(又は標的基体又は標的基材又はターゲット・サブストレート(target substrate))でコロニーを形成すること(又はコロニーを形成する工程もしくはステップ又はコロニー化又はコロナイゼーション又はコロニナイジング(colonizing))。
いくつかの実施形態において、コロニーを形成することは、
二酸化炭素と水との第1混合物を生成(又は形成又は発生)させることと、
光合成種(又はフォトシンセチック・スピーシーズ(photosynthetic species))を含むコンテナ(又は容器)に第1混合物を流す(又はフローさせる)ことと、
光合成種から酸素を生成(又は形成又は発生)させることと、
酸素をマザー・スポーンに流す(又はフローさせる)ことと、
二酸化炭素と水との第2混合物を生成(又は形成又は発生)させることと、
光合成種(又はフォトシンセチック・スピーシーズ(photosynthetic species))を含むコンテナ(又は容器)に第2混合物を流す(又はフローさせる)ことと
を含む。
いくつかの実施形態において、当該方法は、菌糸体(又はマイセリウム(mycelium))を不活化(又は不活性化又はデアクティベーション)することをさらに含む。
【0004】
別の態様では、方法を説明する。当該方法は、
第1グレイン・スポーンを産生(又は形成又は生成又は製造)するために菌糸体(又はマイセリウム(mycelium))を培養する工程と、
マザー・スポーンを産生(又は形成又は生成又は製造)するために第1グレイン・スポーンを培養する工程と、
マザー・スポーンを用いて標的基質(又は標的基体又は標的基材又はターゲット・サブストレート)でコロニーを形成する工程と、
マザー・スポーンおよび/または菌糸体を不活化(又は不活性化又はデアクティベーション)する工程と
を含む。
いくつかの実施形態において、培養する工程のいずれか1つの工程は、栄養材料(又は栄養マテリアル又はニュートリショナル・マテリアル)を菌糸体に供給(又は餌を与える又は給餌又はフィード)することを含む。栄養材料は、酸(又はアシッド)と過酸化物(又はパーオキシド)との混合物で処理されたものである。
【0005】
別の態様では、方法を説明する。当該方法は、
第1グレイン・スポーンを産生(又は形成又は生成又は製造)するために菌糸体(又はマイセリウム(mycelium))を培養する工程と、
マザー・スポーンを産生(又は形成又は生成又は製造)するために第1グレイン・スポーンを培養する工程と、
マザー・スポーンを用いて標的基質でコロニーを形成する工程と、
マザー・スポーンおよび/または菌糸体を不活化(又は不活性化又はデアクティベーション)する工程と
を含む。
コロニーを形成する工程は、マザー・スポーンおよび/または標的基質(又は標的基体又は標的基材又はターゲット・サブストレート)の少なくとも一部に電場(又は電界)を適用(又は印加又は付与)することを含む。
【0006】
異なる態様では、菌糸体ベースの材料を説明する。当該菌糸体ベースの材料は、
複数の菌糸フィラメント(hyphal filament)と、
複数の菌糸フィラメントと混合される標的基質(又は標的基体又は標的基材又はターゲット・サブストレート)と
を含み、
菌糸フィラメントのキチン質(又はキチン(chitin))の量(重量%)は、5重量%以上であり、
菌糸体ベースの材料の熱伝導率(又はサーマル・コンダクティビティ)は、0.03W/m・K以下であり、
菌糸体ベースの材料の燃焼熱(又は燃焼の熱)は、30MJ/kg以下であり、
菌糸体ベースの材料のポロシティ(又は多孔性又は多孔率又は多孔度)は、1%以上である。
【0007】
別の態様では、菌糸体ベースの材料を説明する。当該菌糸体ベースの材料は、
複数の菌糸フィラメント(hyphal filament)と、
複数の菌糸フィラメントと混合される標的基質(又は標的基体又は標的基材又はターゲット・サブストレート)と
を含み、
菌糸フィラメントのキチン質(又はキチン(chitin))の量(重量%)は、5重量%以上であり、
菌糸体ベースの材料の熱伝導率(又はサーマル・コンダクティビティ)は、0.1W/m・K以下であり、
菌糸体ベースの材料の燃焼熱(又は燃焼の熱)は、17MJ/kg以下であり、
菌糸体ベースの材料のポロシティ(又は多孔性又は多孔率又は多孔度)は、1%以上である。
【0008】
さらに別の態様では、菌糸体ベースの材料を説明する。当該菌糸体ベースの材料は、
複数の菌糸フィラメント(hyphal filament)と、
複数の菌糸フィラメントと混合される標的基質(又は標的基体又は標的基材又はターゲット・サブストレート)と
を含み、
菌糸体ベースの材料における標的基質の量(重量%)は、1重量%以上であり、
菌糸体ベースの材料の熱伝導率(又はサーマル・コンダクティビティ)は、0.1W/m・K以下であり、
菌糸体ベースの材料の燃焼熱(又は燃焼の熱)は、30MJ/kg以下であり、
菌糸体ベースの材料のポロシティ(又は多孔性又は多孔率又は多孔度)は、1%以上である。
【0009】
さらに別の態様では、菌糸体ベースの材料を説明する。当該菌糸体ベースの材料は、
複数の菌糸フィラメント(hyphal filament)と、
複数の菌糸フィラメントと混合される標的基質(又は標的基体又は標的基材又はターゲット・サブストレート)と
を含み、
秩序のないネットワーク(又は無秩序ネットワーク又はディスオーダー・ネットワーク又はディスオーダード・ネットワーク(disordered network))を形成(又は生成又は製造)するために複数の菌糸フィラメントが配置(又は配列又は整列又はアレンジメント)されており、
菌糸体ベースの材料の熱伝導率(又はサーマル・コンダクティビティ)は、0.1W/m・K以下であり、
菌糸体ベースの材料の燃焼熱(又は燃焼の熱)は、30MJ/kg以下であり、
菌糸体ベースの材料のポロシティ(又は多孔性又は多孔率又は多孔度)は、1%以上である。
【0010】
本開示の他の利点および新たな特徴(又はフィーチャ)は、添付の図面と関連付けて考慮すると、以下の本発明の様々な限定されない実施形態の詳細な説明から明らかとなる。本明細書および参考により組み込まれる文献が矛盾する開示および/または一致しない開示を含む場合、本明細書が支配(又は管理又はコントロール)する。
【0011】
本発明の制限されない実施形態は、添付の図面を参照した例(又は実施例)によって説明されている。図面は、概略図であり、縮尺をあわせて記載(又はスケール通りに記載)されることは意図していない。図面において、図示される個々の同一の成分(又は要素又はコンポーネント)またはほぼ同一の成分(又は要素又はコンポーネント)は、典型的には、1つの番号(又は同じ番号)で示されている。明確にすることを目的として、各図面において、すべての成分(又は要素又はコンポーネント)に符号が付されているわけではない。また、本発明の各実施形態のすべての成分が示されているわけではない。各図面において、図示したものは必須ではなく、当業者は本発明を理解することができる。図面については、以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】
図1Aは、1以上のグレイン・スポーン(grain spawn)(又はグレイン種菌)の成長(又は増殖)の概略図である(菌糸体の培養(又は培養物又はカルチャー)から開始する)(いくつかの実施形態に従う)。
【
図1B】
図1Bは、1以上のグレイン・スポーン(grain spawn)(又はグレイン種菌)の成長(又は増殖)の概略図である(菌糸体の培養(又は培養物又はカルチャー)から開始する)(いくつかの実施形態に従う)。
【
図2】
図2は、菌糸体(mycelium)に電流を適用(又は印加又は付与)するためのシステムの概略図である(いくつかの実施形態に従う)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(詳細な説明)
本開示では、菌糸体(マイセリウム(mycelium))を含む方法(又はメソッド)および物品(又はアーティクル)を説明する。菌糸体は、真菌(fungus)の栄養根部分(又はベジテーティブ・ルート・ポーション(vegetative root portion))を形成する。そして、菌糸体は、糸のような分岐した菌糸(hyphae)を有してよい。このような菌糸は、基質(又は基体又は基材又はサブストレート(substrate))の内部に延在(又は延長又は進入又は侵入)することができる。菌糸体を含む材料(又は物質又はマテリアル)を調製(又は製造)するために本開示に記載の方法を使用してよい。菌糸体ベースの材料に有用な特性(又はプロパティ)(例えば、構造的な支持(又はサポート)、低い熱伝導率(又はサーマル・コンダクティビティ))を提供するために菌糸体を使用してよい。あるいは、菌糸体ベースの材料は、菌糸体を含んでよい。または、菌糸体に由来する1以上の成分(又は要素又はコンポーネント)(例えば、菌糸のフィラメント(hyphal filament)、菌糸体(mycelium)の細胞壁)を含んでよい。標的基質に由来する材料(又は物質又はマテリアル)を成長(又は増殖)させるために菌糸体を使用する。そして、材料内の生きた菌糸体は、いくつかの実施形態において、実質的に不活化(又は不活性化又はデアクティベーション)されてよい。そうすることで、菌糸体ベースの材料は、生きた菌糸体を含まなくなる。その一方で、菌糸体ベースの材料は、菌糸体に由来する成分(又は要素又はコンポーネント)を含むようになる。
【0014】
本開示に記載される方法および物品は、菌糸体ベースの材料を産生(又は形成又は生成又は製造)するための特定の既存の方法に対して、いくつかの利点(又はアドバンテージ)を有することができる。1つの利点として、本開示に記載の菌糸体は、標的基質(又は標的基体又は標的基材又はターゲット・サブストレート)(例えば、ポリマーまたはプラスチック)を分解するために(又は少なくとも部分的に分解するために)、構成(又は形成)(例えば、培養)されてよい。このような標的基質は、特定の既存の方法を用いて分解することが難しいものであった。いくつかの場合において、標的基質は、菌糸体によって、少なくとも部分的または完全に消費されてよい。
【0015】
別の利点として、菌糸体(すなわち、菌糸体の菌糸(hyphae))は、特定の標的基質(又は標的基体又は標的基材又はターゲット・サブストレート)を分解するために調整(又は調節)され、適合されてよい。あるいは、そうでなければ、特定の標的基質(又は標的基体又は標的基材又はターゲット・サブストレート)を分解するために構成(又は形成)されてよい。例えば、標的基質が相対的(又は比較的)に硬質および/または非多孔性(又は非多孔質又はノン・ポーラス)である場合、菌糸体は、標的基質に入り込む(又は延在又は進入又は侵入する)ために、より硬質またはより剛性の高い菌糸を産生(又は形成又は生成又は製造)することができる。また、菌糸体は、化合物(例えば、酵素)を産生(又は形成又は生成又は製造)することができ、それにより、特定の標的基質の分解をさらに促進する。いくつかの場合において、生成(又は発生)する菌糸体ベースの材料は、特定の標的基質を分解することから利益を得てもよい。例えば、相対的(又は比較的)に硬質な標的基質を菌糸体が分解する場合、生成(又は発生)する菌糸は、より軟質の標的基質を分解する場合と比較して、構造上、より強固(又はロバスト)であってよいか、あるいは、菌糸体の菌糸フィラメントにおいて、より濃度の高いキチン質(又はキチン(chitin))を含んでよい。このような利点は、生成(又は発生)する菌糸体ベースの材料が特定の特性(例えば、硬さ(又は硬度又はハードネス)、熱伝導率(又はサーマル・コンダクティビティ)、耐火炎性(又はファイヤー・レジスタンス)、耐熱性(又はヒート・レジスタンス)を有するように調整または調節するために使用することができる。
【0016】
菌糸体では、基質(又は基体又は基材又はサブストレート)(例えば、標的基質(又は標的基体又は標的基材又はターゲット・サブストレート))を供給(又は餌を与える又は給餌又はフィード)することによって成長(又は増殖)させることができる。この文脈において、基質(又は基体又は基材又はサブストレート)は、任意の材料(又は物質又はマテリアル)である。このような材料において、菌糸体は、消化または分解することができる。あるいは、基質は、任意の他の栄養供給物(又は栄養フィードストック)である。このような栄養供給物は、菌糸体を接種させることができ、それにより、菌糸体ベースの材料を産生(又は形成又は生成又は製造)することができる。基質(又は基体又は基材又はサブストレート)は、様々な適切な材料(又は物質又はマテリアル)であってよい。いくつかの実施形態において、基質(又は基体又は基材又はサブストレート)は、リグノセルロースの材料(又は物質又はマテリアル)を含む。
いくつかの実施形態において、基質(又は基体又は基材又はサブストレート)は、生体材料(又はバイオ材料又はバイオマテリアル)を含む。例えば、ヘンプ(又は麻)、フラックス(又は亜麻)、コットン(又は綿)、コルク、シープ・ウール(又は羊毛)、ウッド(又は木材又は木)および/またはココナッツ・ファイバー(又はココナッツ繊維)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
いくつかの実施形態において、基質(又は基体又は基材又はサブストレート)として、非リグノセルロースの材料(又はリグノセルロースでない材料又はノン・リグノセルロースの材料)(例えば、合成材料)が挙げられる。
いくつかの実施形態において、基質(又は基体又は基材又はサブストレート)として、プラスチックまたはポリマーが挙げられる。適切なポリマーの非制限的な例として、ポリエチレン(例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン)、ポリプロピレン、ポリウレタンおよび/またはポリスチレンが挙げられる。
本開示の技術を見た当業者は、菌糸体に適した基質(又は基体又は基材又はサブストレート)を選択することができる。
【0017】
いくつかの実施形態において、基質(又は基体又は基材又はサブストレート)(例えば、標的基質(又は標的基体又は標的基材又はターゲット・サブストレート))は、特定の硬さ(又は硬度又はハードネス)を有する。基質(又は基体又は基材又はサブストレート)の硬さ(又は硬度又はハードネス)は、ヤング弾性率(Young’s elastic modulus)を使用して測定することができる。いくつかの実施形態において、基質のヤング弾性率は、1GPa以上、5GPa以上、10GPa以上、20GPa以上、30GPa以上、40GPa以上、50GPa以上、75GPa以上、100GPa以上、110GPa以上、120GPa以上、または130GPa以上である。
いくつかの実施形態において、基質のヤング弾性率は、130GPa以下、120GPa以下、110GPa以下、100GPa以下、75GPa以下、50GPa以下、40GPa以下、30GPa以下、20GPa以下、10GPa以下、5GPa以下、または1GPa以下である。
また、上記に列挙した範囲の組み合わせ(又はコンビネーション)も可能である(例えば、1GPa以上かつ130GPa以下)。
【0018】
上記の通り、標的基質(又は標的基体又は標的基材又はターゲット・サブストレート)は、菌糸体ベースの材料に1以上の所望の物理的および/または化学的な特性を付与するために、選択することができる。
いくつかの実施形態において、菌糸体ベースの材料を産生(又は形成又は生成又は製造)するために、菌糸体は、標的基質を完全に消費する。しかし、他の実施形態では、標的基質は、部分的に消費されるだけである。そうすることで、生成(又は発生)する菌糸体ベースの材料は、少なくともいくつかの標的基質を含む。
標的基質を消費する際、菌糸体ベースの材料は、標的基質あるいは菌糸体の別の化学種(又はケミカル・スピーシーズ)の結果として、所望の特性を受けてもよい(例えば、菌糸体(例えば、菌糸フィラメント)における構造成分(例えば、キチン、ポリサッカリド)の増加した濃度(例えば、質量パーセント(又は質量%)、重量パーセント(又は重量%)、モル分率)。
いくつかの実施形態において、標的基質の消費によって、非構造成分の量(例えば、菌糸体ベースの材料におけるタンパク質または他の菌糸体の代謝産物の量)を変更(例えば、増加)させることができる。
本開示の技術を見た当業者は、標的基質を完全に消費させるかどうかを決定することができる。あるいは、標的基質が部分的にのみ消費されるかどうかを決定することができる。そうすることで、菌糸体ベースの最終産物(又は最終生成物又はエンド・プロダクト)は、少なくともいくつかの標的基質を含むようになる。
【0019】
菌糸体ベースの材料を産生(又は形成又は生成又は製造)するために、菌糸体の培養(又は培養物又はカルチャー)を開発(又は展開又はデベロップ)する。菌糸体の培養(又は培養物又はカルチャー)は、標的基質に接種させるため、あるいは、標的基質でコロニーを形成すること(又はコロニー化又はコロナイゼーション又はコロナイジング)するために、使用することができる。従って、本開示に記載の方法は、菌糸体を培養することを含んでよい。
いくつかの実施形態において、菌糸体の培養(又は培養物)は、その指数関数的な成長(又は増殖)の段階(又はフェーズ)で維持される。そうすることで、菌糸体の相対的(又は比較的)に高い成長速度(又は増殖速度)を達成する。様々な培養技術が知られている。例えば、菌糸体は、栄養材料(又は栄養マテリアル)(例えば、麦芽エキス(又はモルト・エキス)、酵母(又はイースト))を含むペトリ皿または液体培地(すなわち、液体培養物(又は液体カルチャー又はリキッド・カルチャー)を使用して培養してよい。菌糸体は、特定の特性(例えば、成長速度(又は増殖速度)、代謝)の選択のために成長(又は増殖)させてよい。かかる特性は、菌糸体ベースの材料の製造に有用であってよいものである。
いくつかの実施形態において、菌糸体の単一種(又はシングル・スピーシーズ)を培養する。しかし、他の実施形態では、1種以上の菌糸体を培養させることができる。
【0020】
菌糸体の成長(又は増殖)を促進させるのに適した条件下で菌糸体を培養することができる。例えば、菌糸体の成長温度(又は増殖温度)は、制御(又は調節又はコントロール)することができ、4℃以上、5℃以上、6℃以上、7℃以上、8℃以上、9℃以上、10℃以上、15℃以上、20℃以上、21℃以上、22℃以上、23℃以上、24℃以上、25℃以上、26℃以上、27℃以上、28℃以上、29℃以上、または30℃以上の温度であってよい。
いくつかの実施形態において、菌糸体を培養する成長温度(又は増殖温度)は、30℃以下、29℃以下、28℃以下、27℃以下、26℃以下、25℃以下、24℃以下、23℃以下、22℃以下、21℃以下、20℃以下、15℃以下、10℃以下、9℃以下、8℃以下、7℃以下、6℃以下、5℃以下、または4℃以下である。
また、上記に列挙した範囲の組み合わせ(又はコンビネーション)も可能である(例えば、20℃以上かつ30℃以下)。他の範囲も可能である。
【0021】
いくつかの実施形態において、菌糸体は、その培養および成長(又は増殖)の際、熱を発生(又は生成)させてもよい。そして、いくつかのこのような実施形態において、この熱は、インキュベーションのスペース(又は空間)において温度をパッシブで維持する(又は消極的に維持する)ために使用してよい(外部のヒーターを必要としない)。このことによって、菌糸体を培養する際に使用するエネルギーおよびコストを減少させることができる。しかし、いくつかの実施形態において、菌糸体の成長温度(又は増殖温度)を調整(又は調節)するために、ヒーター(および/またはエア・コンディショナー(又はエアコン)(例えば、HVACシステムで使用するものなど))を使用してよい。
いくつかの実施形態において、菌糸体の成長温度(又は増殖温度)を決定(又は測定)するために(すなわち、菌糸体を培養する環境の温度を決定(又は測定)するために)、1以上のセンサを使用してよい。そして、温度を所望の成長温度(又は増殖温度)に調整(又は調節)するために、1以上のセンサが構成されてよい(例えば、ヒーターおよび/またはエア・コンディショナー)への接続によって構成されてよい)。
【0022】
いくつかの場合において、古典的(又はクラシカル)な育種(又はストレイン・ブリーディング)を菌糸体の培養に適用してよい。そうすることで、菌糸体ベースの材料の所望の用途(又は応用又はアプリケーション)のために調整(又は調節)した固有株(又はユニークな株又はユニーク・ストレイン(unique strains))を開発(又は展開又はデベロップ)するために、様々な野生型株(又はワイルド・タイプ・ストレイン)(例えば、非育種株(又はノン・ブレッド・ストレイン(non-bred strain))の中から、特定の用途に適した特性を有する菌糸体を成長(又は増殖)させてよい。
いくつかのこのような実施形態において、変更(又はバリアブル(variable))、例えば、リグノセルロースの分解、スポーン実行速度(又は種菌実行速度又はスポーン・ラン・スピード(spawn run speed))(すなわち、コロニー化の速度(又はコロナイゼーション・スピード(colonization speed)))、および/または他の微生物に対する耐性(又はレジスタンス)は、有益な遺伝形質であってよく、選択的に使用される。
【0023】
いくつかの実施形態において、担子胞子(basidiospores)(少なくともいくつかの菌糸体によって産生(又は形成又は生成又は製造)される生殖胞子(reproductive spore))を回収する。そこから、一核体(又はモノカリオン)(子孫(又はオフスプリング))を成長(又は増殖)させる。
次いで、二核体(又はジカリオン)の菌糸体を形成するために、適合可能な相手の種類(又はコンパチブル・メイティング・タイプ(compatible mating types))を一緒にしてよい。これらは、利用可能な2倍の量の遺伝情報を有してよい。これらの子孫(又はオフスプリング)は、標的基質で試験(又はテスト)してよい。
いくつかの実施形態において、標的基質と好適に相互作用する単離物(又はアイソレート(isolates))を選択してよく、一緒にしてよい。そして、繰り返される繁殖サイクルに連続的に供してよい。最終的に、菌糸体の有益な変異(又はミューテーション)の蓄積(又はアキュムレーション)および種分化(又はスペシエーション)をもたらす。拮抗作用実験(又はアンタゴニズム実験(antagonism experiments))とランダム増幅多型DNA分析(random amplified polymorphic DNA analysis)において、試験片(又はスペシメン)の分化(又はディファレンシエーション)および進化(又はエボリューション)を確認することができる。
【0024】
菌糸体が消化するための栄養の「グレイン(grain)」(又は穀物)を菌糸体の培養(又は培養物)に接種させることができるようにすることによって、菌糸体の培養をさらに開発(又は展開又はデベロップ)してよい。グレイン(grain)を消化する際、菌糸体の固体数(又はポピュレーション)が増加し、「グレイン・スポーン(grain spawn)(又はグレイン種菌)」のサイズを拡大(又は膨張又はエキスパンション)させることができる。このようなグレイン・スポーンは、連続的に成長(又は増殖)させることができる。菌糸体の第1グレインの一部を取り出して、菌糸体の第2グレインに配置して接種する(又は植え付ける)。しかし、以下のことを理解すべきである。菌糸体は、グレイン以外の栄養材料(又は栄養マテリアル)(例えば、複合栄養基質又は複合栄養基体又はコンプレックス栄養サブストレート)に接種させてよい。かかる開示は限定されるものではない。
【0025】
図1Aは、フロー図(又はフロー・ダイアグラム)であり、菌糸体の最初の培養(又は培養物)(又はイニシャル・カルチャー)からのグレイン(grain)の産生(又は形成又は生成又は製造)を示す。
図1Aにおいて、菌糸体(又はマイセリウム(mycelium))110(菌糸体の培養(又は培養物)に由来するもの)に栄養材料(又は栄養マテリアル(nutritional material))120(例えば、「グレイン(grain)」)を提供して、第1グレイン・スポーン(又は第1グレイン種菌又はファースト・グレイン・スポーン(first grain spawn))130を産生(又は形成又は生成又は製造)させる。第1グレイン・スポーン130は、菌糸体110の培養(又は培養物)から成長(又は増殖)させた菌糸体を含むものである。栄養材料120は、菌糸体の成長(又は増殖)を促進する化合物(例えば、グレイン(grain)(又は穀物)、フィードストック(又は供給原料)、モルト・エキス(又は麦芽エキス)、イースト(又は酵母))、さらに他の成分(又は要素又はコンポーネント)(例えば、酵素、酵素産生エンハンサー)を含んでよい。
【0026】
第1グレイン・スポーンで成長(又は増殖)させた菌糸体を使用してよく、それにより、第2グレイン・スポーン(又は第2グレイン種菌又はセカンド・グレイン・スポーン(second grain spawn))において追加の菌糸体を産生(又は形成又は生成又は製造)させてよい。例えば、
図1Aに概略図として示す通り、第1グレイン・スポーン130に追加の栄養材料(又は栄養マテリアル)122を提供して、第2グレイン・スポーン132を産生(又は形成又は生成又は製造)させる。第2グレイン・スポーン132は、第1グレイン・スポーン130から新たに成長(又は増殖)させた菌糸体を含むものである。栄養材料が異なるいくつかの場合において、第1グレイン・スポーンを産生させるために使用した同一の栄養材料は、第2グレイン・スポーンを産生させるために使用した栄養材料の材料組成と同じ材料組成を有してよい。それは、つまり、いくつかの実施形態において、栄養材料120と栄養材料122は、同じであってよい。しかし、他の実施形態において、栄養材料120と栄養材料122は、異なるものである。
図1Aにおいて、図示する通り、いくつかの実施形態では、第2グレイン・スポーン(または第1グレイン・スポーン)を使用してよく、それにより、以下にて、より詳細に記載する通り、マザー・スポーン(又はマザー種菌又は母種菌(mother spawn))140を産生(又は形成又は生成又は製造)させてよい。マザー・スポーンは、菌糸体(又はマイセリウム(mycelium))を含んでよい。この菌糸体は、基質(又は基体又は基材又はサブストレート)(例えば、標的基質(又は標的基体又は標的基材又はターゲット・サブストレート))でコロニーを形成させるため(又はコロニー化又はコロナイゼーションのため)に使用され得るものである。
【0027】
栄養材料は、栄養物質であってよい。あるいは、栄養材料は、栄養物質を含んでよい。このような栄養物質は、菌糸体に供給(又は餌を与える又は給餌又は供給又はフィード)して菌糸体を成長(又は増殖)させるために使用できるものである。いくつかの場合において、栄養材料は、第1グレイン・スポーンから、後続のグレイン・スポーン(例えば、第2グレイン・スポーン、第3グレイン・スポーン、第4グレイン・スポーン)にかけて、より複雑になってよい。例えば、菌糸体の最初の培養(又は培養物)に供給(又は餌を与える又は給餌又はフィード)するために使用される栄養材料は、相対的(又は比較的)に単純(又は簡単又簡潔又はシンプル)な栄養材料(例えば、モルト・エキス(又は麦芽エキス)、イースト(又は酵母)、単純(又は簡単又簡潔又はシンプル)なカルボハイドレート(又は炭水化物))を含んでよい。その一方で、後続の栄養材料は、相対的(又は比較的)により複雑な栄養材料(例えば、消化がより難しい栄養材料)を含んでよい(例えば、植物ベースの物質、グラス(又は草)、グレイン(又は穀物)、シード(又は種)、ハスク(又は殻)、木材ベースの廃液流)。特定の理論に拘束されることは望まないが、消化がより難しい栄養物が存在することによって、菌糸体の細胞の組成に影響を与えてよい。例えば、脂質、タンパク質およびキチン質の濃度をより高濃度にシフトさせる。さらに、より複雑かつ/または消化がより難しい栄養材料(または栄養物質)を用いると、菌糸体の菌糸の先端(又はティップ)が、より硬質になってもよく、より丈夫になってもよい。なぜなら、より硬い、あるいは、より複雑な栄養材料を貫通することによる圧力に適応させるためである。いくつかの場合において、これらの組成の変化によって、菌糸体ベースの材料の品質(又はクオリティ)に有利な影響が与えられてよい(例えば、剛性、疎水性、不燃性)。いくつかの実施形態において、栄養材料は、少なくともいくつかの標的基質(又は標的基体又は標的基材又はターゲット・サブストレート)を含む。そうすることで、菌糸体の成長(又は増殖)の間、菌糸体は、標的基質に曝されるようになってよい。それにより、菌糸体ベースの材料の所望の特性を開発(又は展開又はデベロップ)するか、あるいは菌糸体ベースの材料の所望の特性を開発(又は展開又はデベロップ)する際の手助けとなってよい。
【0028】
本開示において使用する通り、グレイン(grain)とは、菌糸体を成長(又は増殖)させるために使用される供給原料(又はフィードストック)あるいは菌糸体を接種させる供給原料(又はフィードストック)を意味する。従って、「グレイン・スポーン(又はグレイン種菌(grain spawn))」は、栄養材料(例えば、グレイン)と菌糸体との混合物である。第1グレイン・スポーンは、最初の量(又は初期量)の菌糸体(例えば、菌糸体の培養(又は培養物又はカルチャー)に由来するもの)と栄養材料とから産生(又は形成又は生成又は製造)させる。
いくつかの実施形態において、追加のグレイン・スポーンは、第1グレイン・スポーンまたは第2グレイン・スポーンを用いて産生(又は形成又は生成又は製造)させることができる。
例えば、第1グレイン・スポーン(または、第1グレイン・スポーンの少なくとも一部、例えば10重量%)を使用してよく、それにより、第2グレイン・スポーンを産生(又は形成又は生成又は製造)させることができる。
第2グレイン・スポーンを使用してよく、それにより、第3グレイン・スポーンを産生(又は形成又は生成又は製造)させることができる。
第3グレイン・スポーンを使用してよく、それにより、第4グレイン・スポーンを産生(又は形成又は生成又は製造)させることができる(以下同様)。
それぞれ、後続のグレイン・スポーンは、その前のグレイン・スポーンに由来する菌糸体の少なくとも一部を含んでよい。
例えば、
図1Bにおいて、菌糸体の培養(又は培養物又はカルチャー)110は、供給原料(又はフィードストック)と混合して、第1グレイン・スポーン130を産生(又は形成又は生成又は製造)させる。
その後、第1グレイン・スポーン130の少なくとも一部を使用して、それにより、第2グレイン・スポーン132を産生(又は形成又は生成又は製造)させる。第2グレイン・スポーン132の少なくとも一部を使用して、それにより、第3グレイン・スポーン134を産生(又は形成又は生成又は製造)させる。
【0029】
いくつかの実施形態において、グレイン・スポーンの所望の総量の1重量%(wt%)以上、2重量%以上、3重量%以上、4重量%以上、5重量%以上、7重量%以上、10重量%以上、12重量%以上、15重量%以上、18重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、または30重量%以上を用いることでグレイン・スポーンを生成(又は形成)させる。
いくつかの実施形態において、グレイン・スポーンの所望の総量の30重量%(wt%)以下、25重量%以下、20重量%以下、18重量%以下、15重量%以下、12重量%以下、10重量%以下、7重量%以下、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、または1重量%以下を用いることでグレイン・スポーンを生成(又は形成)させる。
また、上記で列挙した範囲の組み合わせ(又はコンビネーション)も可能である(例えば、1重量%以上かつ30重量%以下)。他の範囲も可能である。
仮説の例示の実施例として、100gの第2グレイン・スポーンが望ましい場合、このような第2グレイン・スポーンを生成(又は形成)するためには、10g(すなわち、100gの10重量%)の第1グレイン・スポーンを使用してよい。その一方で、第2グレイン・スポーンの残りの90gは、栄養材料または他の成分(又は要素又はコンポーネント)(例えば、酵素産生エンハンサー(又は酵素プロダクション・エンハンサー)、メディエータ(又は媒体又は媒介物質(mediator)))を含む。
【0030】
いくつかの実施形態において、栄養材料は、パスツーリゼーション(又は低温殺菌法又は加熱殺菌)のプロセス(又は処理又は工程)を受ける(例えば、栄養材料を菌糸体に導入する前)。このプロセスを使用してよく、それにより、菌糸体の成長(又は増殖)を阻害し得る任意の潜在的な病原体または混入物(又は汚染物又は汚染物質又はコンタミネーション)を除去することができ、またはその量を低減することができる。様々な適切なパスツーリゼーションのプロセスを使用してよい。
例えば、いくつかの実施形態において、栄養材料は、スチーム(又は蒸気)によるパスツーリゼーションを受ける。
いくつかの実施形態において、栄養材料は、オートクレーブで処理される。
いくつかの実施形態において、栄養材料は、化学的なパスツーリゼーションを受ける(例えば、以下にて、より詳細に説明する通り、過酸化水素を用いるパスツーリゼーション)。
【0031】
いくつかの実施形態において、栄養材料は、酸(又はアシッド)および/または過酸化物(又はパーオキシド)の混合物を含んでよい。あるいは、このような混合物で処理されてよい(例えば、栄養材料を菌糸体に導入する前)。これは、つまり、培養すること(又は培養工程)が、菌糸体に栄養材料を供給(又は餌を与える又は給餌又はフィード)することを含んでよい。ここで、栄養材料は、酸と過酸化物の混合物で処理されたものである。
酸または過酸化物は、独立して使用してよく、あるいは組み合わせて使用してよい。それにより、栄養材料において、微生物を減少させるか、あるいは微生物を最小にすることができる。これは、他のパスツーリゼーション・プロセス(例えば、スチーム・パスツーリゼーション)と同様である。
栄養材料の処理に酸および/または過酸化物を使用することは、相対的(又は比較的)に大量の栄養材料を処理し得る場合、特に有利であってよい。なぜなら、酸および/または過酸化物の溶液によって、より良く材料を分解させることができ、そして、菌糸体への栄養物の栄養利用(又は栄養アベイラビリティ又はニュートリショナル・アベイラビリティ(nutritional availability))を促進させることができるからである。
【0032】
酸と過酸化物の組み合わせ(又はコンビネーション)は、特に有利であってよい。
いくつかの実施形態において、酸を過酸化物(例えば、過酸化水素)と組み合わせることによって、過酸化水素の酸化能力を増加させてよい。特定の理論に拘束されることは望まないが、このような組み合わせによって、熱に加えて、反応性の酸素種(又はオキシジェン・スピーシーズ)を生成(又は産生又は形成又は製造)してよい。このような反応性の酸素種は、酸または過酸化物をそれぞれ別々に使用する場合と比べて、栄養材料に存在する微生物の量の減少を強化してよい。いくつかの場合において、一旦、酸および/または過酸化物の混合物で栄養材料を処理すると、このような混合物は中和され得るか、あるいは、化学的に不活性となる。そうすることで、このような混合物は、グレイン・スポーンまたはマザー・スポーンに存在する菌糸体を阻害または不活化させることにはならない。
【0033】
いくつかの実施形態において、酸と過酸化物の混合物は、クエン酸および/または過酸化水素を含む。しかし、このような混合物において、様々な酸および/または過酸化物を使用してよい。
酸の非制限的な例として、有機酸(例えば、クエン酸、酢酸)、リン酸、塩酸、硝酸および/または硫酸が挙げられる。
過酸化物の非制限的な例として、過酸化水素(例えば、H2O2(30重量%H2O))、有機過酸化物(例えば、過酸化ベンゾイル)、または他の過酸化物が挙げられる。
【0034】
いくつかの実施形態において、栄養材料(または栄養物質)を処理するために使用する溶液において、過酸化物(例えば、過酸化水素)の濃度は、溶液の1重量%(wt%)以上、3重量%以上、5重量%以上、7重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、30重量%以上、または35重量%以上である。
いくつかの実施形態において、栄養材料(または栄養物質)を処理するために使用する溶液の過酸化物の濃度は、溶液の10重量%(wt%)以下、7重量%以下、5重量%以下、3重量%以下、または1重量%以下である。
また、上記に列挙した範囲の組み合わせ(又はコンビネーション)も可能である(例えば、1重量%以上かつ10重量%以下)。他の範囲も可能である。
【0035】
いくつかの実施形態において、使用する酸のpKaは、5以下、4以下、3以下、2以下、1以下、0以下、-1以下、-2以下、または-3以下である。
いくつかの実施形態において、酸のpKaは、-3以上、-2以上、-1以上、0以上、1以上、2以上、3以上、4以上、または5以上である。
また、上記に列挙した範囲の組み合わせ(又はコンビネーション)も可能である(例えば、0以上かつ4以下)。他の範囲も可能である。
【0036】
また、培養すること(又は培養工程)は、酵素産生エンハンサー(又は酵素プロダクション・エンハンサー)をグレイン・スポーン(例えば、第1グレイン・スポーン、第2グレイン・スポーン)に提供することも含んでよい。酵素産生エンハンサーは、菌糸体によって産生(又は形成又は生成又は製造)される酵素の量を増加させてよい。これは、菌糸体の成長(又は増殖)を向上させることができる。あるいは、基質(又は基体又は基材又はサブストレート)の崩壊において、菌糸体を援助することができる。
いくつかの実施形態において、酵素産生エンハンサーは、標的基質の消化に適した遺伝子の発現を増加(又はアップレギュレート)させるために含まれてよい。特定の理論に拘束されることは望まないが、酵素産生エンハンサーは、関心のある酵素(例えば、リグニン消化酵素様のラッカーゼおよびペルオキシダーゼ)の転写を増加させてよい。そして、酵素産生エンハンサーは、標的基質を導入する前において、グレイン・スポーンの段階(又はフェーズ)の間に添加されてよい(例えば、第1グレイン・スポーン、第2グレイン・スポーン、第3グレイン・スポーン)。
いくつかの実施形態において、酵素産生エンハンサーとして、金属イオンまたは金属塩(例えば、銅塩)、アンモニウム塩、スルフェート塩、ペプトン水、および/または有機化合物(例えば、キシリジン類(xylidines))が挙げられる。
【0037】
いくつかの実施形態において、メディエータ(又は媒体又は媒介物質(mediator))の存在下で菌糸体を培養する。この文脈で使用する通り、メディエータは、有機化合物である。このような有機化合物は、菌糸体によって産生(又は形成又は生成又は製造)される酵素(例えば、ラッカーゼ)によって酸化されてよく、それにり、特定の理論に拘束されることは望まないが、高い反応性のカチオン・ラジカル(又はカチオン基)を形成することができ、それにより、ラッカーゼ単独では酸化させることができない非フェノール性の化合物を酸化させることができる。
いくつかの実施形態において、メディエータとして、NHPI(N-ヒドロキシフタルイミド)、VLA(ビオルル酸(5-イソニトロソバルビツール酸))、TEMPO(2,2’,6,6’-テトラメチルピぺリジン)、TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)および/またはNHA(N-ヒドロキシ-N-フェニルアセトアミド)が挙げられる。
【0038】
いくつかの実施形態において、第1グレイン・スポーンまたは第2グレイン・スポーンを使用してよく、それにより、マザー・スポーンを産生(又は形成又は生成又は製造)させてよい。マザー・スポーンは、菌糸体を含んでよい。このような菌糸体は、グレイン・スポーンから開発(又は展開又はデベロップ)された後、1以上の標的基質でコロニーを形成するように調整(又は調節)されるものである。例えば、
図1Aにおいて、概略図で示す通り、第2グレイン・スポーン132は、マザー・スポーン140を産生(又は形成又は生成又は製造)させる。しかし、以下のことを理解すべきである。いくつかの実施形態において、マザー・スポーン140は、第1グレイン・スポーン130から産生(又は形成又は生成又は製造)させてよい。これは、つまり、いくつかの場合において、第2グレイン・スポーン132および/または任意の後続のグレイン・スポーンは、任意のものであってよい。そして、図には示していないが、いくつかの実施形態は、1以上の追加のグレイン・スポーン(例えば、第3グレイン・スポーン、第4グレイン・スポーン、第5グレイン・スポーン)を有してよい。これらは、マザー・スポーンのもととなってよい。本開示の技術を見た当業者は、マザー・スポーンを産生(又は形成又は生成又は製造)するために使用したグレイン・スポーンの数を決定することができる。
【0039】
マザー・スポーンは、菌糸体を含む。このような菌糸体は、基質(又は基体又は基材又はサブストレート)(例えば、標的基質(又は標的基体又は標的基材又はターゲット・サブストレート))でコロニーを形成する(又はコロニー化又はコロナイゼーション又はコロナイジング)ために使用することができる。
いくつかの実施形態において、基質(又は基体又は基材又はサブストレート)では、菌糸体のプレート培養物(又はプレート・カルチャー)または菌糸体の液体培養物(又はリキッド・カルチャー)を用いてコロニーを形成することができる(又はコロニー化又はコロナイゼーション又はコロナイジング)。
いくつかの実施形態において、コロニーを形成すること(又はコロニー化又はコロナイゼーション又はコロナイジング)は、菌糸体を標的基質と混合することを含む。
標的基質でのコロニー化において、マザー・スポーンの菌糸体は、標的基質を崩壊または分解(少なくとも部分的に崩壊または分解)させることができる。このとき、菌糸体は、成長(又は増殖)して、新たな菌糸体を産生(又は形成又は生成又は製造)する。このような菌糸体は、標的基質に関連する特性を有するか、あるいは標的基質から誘導された特性を有する。
いくつかの実施形態において、菌糸体は、標的基質を部分的に分解するだけである。そうすることで、初期(又は最初)の標的基質の少なくとも一部は、生成する菌糸体ベースの材料または製品に存在することになる。
いくつかの実施形態において、菌糸体ベースの材料における標的基質の量は、菌糸体ベースの材料の総重量に対して、1重量%(wt%)以上、3重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、または70重量%以上である。
いくつかの実施形態において、菌糸体ベースの材料における標的基質の量は、菌糸体ベースの材料の総重量に対して、70重量%(wt%)以下、60重量%以下、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、3重量%以下、または1重量%以下である。
また、上記に列挙した範囲の組み合わせ(又はコンビネーション)も可能である(例えば、1重量%以上かつ70重量%以下)。他の範囲も可能である。
しかし、他の実施形態において、標的基質は、菌糸体によって顕著に消費される。それにより、標的基質は、生成する菌糸体ベースの材料または製品において、ほとんど存在しない(例えば、1重量%未満、0.1重量%以下)から全く存在しないようになる。
【0040】
いくつかの場合において、菌糸体は、酸素(例えば、酸素ガス)を消費する。なぜなら、それらは、コロニーを形成するか、または成長(又は増殖)して、副産物(又は副生成物)として、水と二酸化炭素とを産生(又は形成又は生成又は製造)するからである。
いくつかのこのような実施形態において、菌糸体によって産生(又は形成又は生成又は製造)される二酸化炭素および水を1以上の光合成生物(又は光合成する生物)に流してよい(又はフローしてよい)。次いで、光合成生物は、二酸化炭素および水を消費してよく、それにより、菌糸体に流して戻すことができる(又はフロー・バックできる)酸素を産生(又は形成又は生成又は製造)してよい。このようにして、循環ループまたは閉じた系(又はクローズド・システム)を維持してよい。ここでは、菌糸体によって、二酸化炭素および水が光合成種(又は光合成する種又は光合成スピーシーズ)に提供され、この光合成種は、菌糸体またはその誘導体に酸素を提供する。菌糸体またはその誘導体は、より多くの二酸化炭素を産生(又は形成又は生成又は製造)することができ、それにより、二酸化炭素を光合成種に提供することができる。
このような実施形態において、このシステムは、菌糸体からの二酸化炭素の放出を有利に減少または排除してよてい。また、このシステムは、菌糸体の環境を制御(又はコントロール)したり規制(又はレギュレート)したりするのに役立つものであってよい。
従って、いくつかの実施形態において、コロニーを形成する工程(又はコロニー化又はコロナイゼーション又はコロナイジング)は、以下のこと(又は工程又はステップ)を含む。
二酸化炭素と水との第1混合物を産生(又は形成又は生成又は製造)すること、
光合成種(又は光合成する種又は光合成スピーシーズ)を含むコンテナ(又は容器)および/または制御(又はコントロール)された環境(例えば、温室(又はグリーンハウス))に第1混合物を流すこと(又はフローすること)、
光合成種から酸素を産生(又は形成又は生成又は製造)させること、
酸素を菌糸体に流すこと(又はフローすること)(ここでは、いくつかの実施形態において、菌糸体は、保温室(又は培養室又はインキュベーション・ルーム)に含まれていてよい)、
二酸化炭素と水との第2混合物を産生(又は形成又は生成又は製造)させること、および/または
光合成種(又は光合成する種又は光合成スピーシーズ)を含むコンテナ(又は容器)および/または制御(又はコントロール)された環境に第2混合物(二酸化炭素と水との混合物)を流すこと(又はフローすること)
いくつかの実施形態において、閉じたループ(又はクローズド・ループ)を連続様式(又は連続マナー)または循環様式(又は循環マナー)で維持してよい。そうすることで、菌糸体および光合成種は、二酸化炭素/水および酸素を互いに連続して提供するようになる。
【0041】
いくつかの実施形態において、菌糸体を培養する前、菌糸体を培養する間、または菌糸体を培養した後に電流または電場(又は電界)を適用(又は印加又は付与)してよい。概して、電気(又は電流又は電力又はエレクトリシティ)は、菌糸体の培養の間または基質(又は基体又は基材又はサブストレート)でコロニーを形成すること(又はコロニー化またはコロナイゼーション又はコロナイジング)の間において、菌糸体の成長(又は増殖)を促進させることができる。
いくつかの実施形態において、コロニーを形成すること(又はコロニー化またはコロナイゼーション又はコロナイジング)は、マザー・スポーンおよび/または標的基質(又は標的基体又は標的基材又はターゲット・サブストレート)の少なくとも一部に電場(又は電界)を適用(又は印加又は付与)することを含む。特定の理論に拘束されることは望まないが、菌糸体は、ポイントの位置または中心の位置から、半径方向(又は放射状)の様式(又はラジアル・マナー)で自発的に成長(又は増殖)してよい。しかし、本開示の文脈において認識されていることは、以下の通りである。すなわち、電流または電場(又は電界)を菌糸体に適用(又は印加又は付与)することによって、菌糸体の半径方向(又は放射状)の成長(又は増殖)を中止または中断させてよい。そうすることで、菌糸体ベースの材料における菌糸体の配置(又は配列又は整列又はアレンジメント)または配向(又はオリエンテーション)を成長(又は増殖)の間に変更できるようになる(例えば、調整(又は調節)、制御(又はコントロール)、成形)。このことは、菌糸体の成長(又は増殖)の方向を制御(又はコントロール)するために有利に使用してよい。このような菌糸体は、菌糸体ベースの材料における菌糸体の配向(又はオリエンテーション)を選択的に制御(又はコントロール)するために使用されてよい。
また、いくつかの実施形態において、電流の適用(又は印加又は付与)は、菌糸体の成長(又は増殖)の速度(又は割合又はレート)を増加させてよい。
さらに、いくつかの実施形態において、菌糸体の成長(又は増殖)の方向を制御(又はコントロール)するために、電場(又は電界)または電流の適用(又は印加又は付与)を使用してよい。そうすることで、追加の成形(又はモールディング)又は形成(又はシェイピング)(例えば、モールド(又は型)の内部で菌糸体ベースの材料を成長(又は増殖)させること)が必要なくなる。
【0042】
電場(又は電界)または電流は、任意の適切な様式(又はマナー)で適用(又は印加又は付与)されてよい。例えば、いくつかの実施形態では、菌糸体に電圧を適用(又は印加又は付与)するために、ポテンシオスタットに接続された電極を使用してよい。
いくつかの実施形態において、1V以上、10V以上、20V以上、25V以上、50V以上、100V以上、250V以上、500V以上、1kV以上、2kV以上、3kV以上、4kV以上、5kV以上、または10kV以上の電位(又はポテンシャル)が菌糸体に適用(又は印加又は付与)される(例えば、培養中、コロニー形成中)。
いくつかの実施形態において、電位(又はポテンシャル)は、10kV以下、5kV以下、4kV以下、3kV以下、2kV以下、1kV以下、500V以下、250V以下、100V以下、50V以下、25V以下、20V以下、10V以下、または1V以下である。また、上記に列挙した範囲の組み合わせ(又はコンビネーション)も可能である(例えば、1V以上かつ10V以下で菌糸体に適用(又は印加又は付与)される)。他の範囲も可能である。
【0043】
いくつかの実施形態において、菌糸体に適用(又は印加又は付与)される電圧または電流は、パルス化されている(例えば、1秒パルス、10秒パルス、1分パルス、10分パルス)。
いくつかのこのような実施形態において、菌糸体の配向(又はオリエンテーション)は、電流をパルス化することによって、無秩序(又はディスオーダー又はディスオーダード)またはランダムになる。これにより、生成(又は発生)する菌糸体ベースの材料を有利に強くすることができる。
【0044】
いくつかの実施形態において、菌糸体は、不活化(又は不活性化又はデアクティベーション)されてよい。あるいは、そうでなければ、生物学的に不活性にしてよい(又はインアクティベーション)。このようにして、菌糸体ベースの材料は、生きている菌糸体を相対的にほとんど含まないか、または全く含まない。菌糸体ベースの材料に生きている菌糸体が相対的にほとんど存在しなくてよいか、または全く存在していなくてよい一方で、菌糸体の成分(又は要素又はコンポーネント)(例えば、菌糸フィラメント、タンパク質、脂質)は、菌糸体ベースの材料中に維持されてよい。また、菌糸体の成長(又は増殖)の配向(又はオリエンテーション)は、菌糸体の不活化後であっても(例えば、電流または電場(又は電界)によって制御(又はコントロール)された場合)、無傷(又はそのまま又はインタクト)のままであってよいことを理解すべきである。
いくつかの実施形態において、基質(又は基体又は基材又はサブストレート)(例えば、標的基質)でコロニーを形成する間またはその後において、菌糸体を不活化(又は不活性化又はデアクティベーション)する。
また、いくつかの実施形態において、菌糸体の不活化(又は不活性化又はデアクティベーション)は、菌糸体ベースの材料の硬化(又はキュア又はキュリング)を助けることもできる。
【0045】
いくつかの実施形態において、菌糸体の不活化(又は不活性化又はデアクティベーション)は、第1の不活化(又は不活性化又はデアクティベーション)の工程(又はステップ)、必要に応じて、第2の不活化(又は不活性化又はデアクティベーション)の工程(又はステップ)、および/または追加の不活化(又は不活性化又はデアクティベーション)の工程(又はステップ)を含む。第1の不活化の工程は、菌糸体を少なくとも部分的に不活化(又は不活性化又はデアクティベーション)してよい(例えば、相対的により低い温度で不活化してよい)。その一方で、後続の不活化の工程は、菌糸体をより完全に不活化(又は不活性化又はデアクティベーション)してよい(例えば、相対的により高い温度で不活化してよい)。菌糸体を不活化するために様々な技術を使用してよい。そのうちのいくつかについては、以下にて、より詳細に説明している。
【0046】
いくつかの実施形態において、菌糸体の不活化(又は不活性化又はデアクティベーション)は、菌糸体を加熱すること(又はヒーティング)、および/または脱水すること(又はデハイドレーティング)を含む。菌糸体を加熱および/または脱水するために、任意の適切な技術を使用してよい。例えば、減圧ポンプ(又はバキューム・ポンプ)、乾燥オーブン(又はドライ・オーブン)、減圧オーブン(又はバキューム・オーブン)、ヒーター、化学的な脱水剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
いくつかの実施形態において、菌糸体の不活化(又は不活性化又はデアクティベーション)(例えば、第1の不活化の工程)は、40℃以上、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上、または100℃以上の温度まで、菌糸体を加熱することを含む。
いくつかの実施形態において、菌糸体の不活化(又は不活性化又はデアクティベーション)は、100℃以下、90℃以下、80℃以下、70℃以下、70℃以下、50℃以下、40℃以下の温度まで、菌糸体を加熱することを含む。
また、上記に引用した範囲の組み合わせ(又はコンビネーション)も可能である(例えば、40℃以上かつ100℃以下)。他の範囲も可能である。
【0048】
いくつかの実施形態において、菌糸体の不活化(又は不活性化又はデアクティベーション)(例えば、第1の不活化の工程、第2の不活化の工程)は、110℃以上、120℃以上、130℃以上、140℃以上、150℃以上、160℃以上、170℃以上、180℃以上、190℃以上、200℃以上、210℃以上、または220℃以上の温度まで、菌糸体を加熱することを含む。
いくつかの実施形態において、菌糸体の不活化(又は不活性化又はデアクティベーション)は、220℃以下、210℃以下、200℃以下、190℃以下、180℃以下、170℃以下、160℃以下、150℃以下、140℃以下、130℃以下、120℃以下、または110℃以下の温度まで、菌糸体を加熱することを含む。
また、上記で列挙した範囲の組み合わせ(又はコンビネーション)も可能である(例えば、110℃以上かつ180℃以下)。他の範囲も可能である。
【0049】
いくつかの実施形態において、菌糸体の不活化(又は不活性化又はデアクティベーション)は、菌糸体に無線周波数(又はレディオフリーケンシー)(例えば、マイクロ波(又はマイクロウェーブ))を適用(又は付与)することを含む。いくつかの場合において、菌糸体に無線周波数を適用(又は付与)することは、菌糸体(または菌糸体内または菌糸体に隣接する1以上の成分(又は要素又はコンポーネント)、例えば、栄養材料)を熱的に活性化する。その一方で、菌糸体を直接的な熱に曝露させることを回避する。無線周波数を提供するために、任意の適切な方法を使用してよい。
【0050】
いくつかの実施形態において、菌糸体の不活化(又は不活性化又はデアクティベーション)は、凍結乾燥(lyophilization)(すなわち、凍結乾燥(freeze drying)(又はフリーズ・ドライ))を含む。凍結乾燥(lyophilization)は、例えば、研究室または市販の凍結乾燥器(lyophilizer)を用いて達成することができる。
【0051】
上記の通り、菌糸体ベースの材料を産生(又は形成又は生成又は製造)させるために、菌糸体を使用してよい。菌糸体ベースの材料は、菌糸体の1以上の成分(又は要素又はコンポーネント)(例えば、菌糸フィラメント)を含む。菌糸体ベースの材料は、最終製品(又は最終生成物又は完成品又はファイナル・プロダクト)であってよい。最終製品は、例えば、家屋またはビルの断熱材(又は絶縁材又はインシュレーション(insulation))として販売または使用され得るものであってよい。あるいは、菌糸体ベースの材料は、最終製品(又は最終生成物又は完成品又はファイナル・プロダクト)の前駆体(又はプリカーサ)であってよい。前駆体は、さらに処理(又は加工又はプロセス)されてよいものである(例えば、乾燥)。
【0052】
いくつかの実施形態において、菌糸体ベースの材料は、複数の菌糸フィラメント(hyphal filament)を含む。菌糸フィラメントは、支持(又はサポート)および構造(又はストラクチャ)を菌糸体に提供する。また、菌糸体が不活化(又は不活性化又はデアクティベーション)された後であっても、他の特性とともに、支持(又はサポート)および構造(又はストラクチャ)を菌糸体ベースの材料に提供するために使用されてよい。いくつかの実施形態において、菌糸フィラメントは、標的基質(又は標的基体又は標的基材又はターゲット・サブストレート)と組み合わされてよい。また、これは、支持(又はサポート)を菌糸体ベースの材料に提供するのに役立ってもよい。いくつかの場合において、菌糸フィラメントは、化合物(例えば、キチン質(又はキチン(chitin))および/またはポリサッカリド)を含む。このような化合物は、菌糸体ベースの材料に所望の特性を与えることができる。
いくつかの実施形態において、複数の菌糸フィラメントは、菌糸体ベースの材料において、無傷(又はインタクト(intact))のままであるか、崩壊(又は破壊)していないままである。しかし、他の実施形態において、菌糸体の菌糸フィラメントの内容(又はコンテンツ)の少なくとも一部は、崩壊(又は破壊)していてよい。そうすることで、菌糸内の化合物は、菌糸体ベースの材料において、崩壊(又は破壊)することになる。
【0053】
いくつかの実施形態において、菌糸体ベースの材料は、菌糸フィラメントにおいて、または菌糸体ベースの材料において、特定の重量割合(又は重量パーセンテージ又は重量%)のキチン質(又はキチン(chitin))を有する。
いくつかの実施形態において、キチン質(又はキチン(chitin))の量(重量%)は、菌糸体ベースの材料の総重量に対して、1重量%(wt%)以上、3重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、12重量%以上、15重量%以上、18重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、または50重量%以上である。
いくつかの実施形態において、キチン質(又はキチン(chitin))の量(重量%)は、菌糸体ベースの材料の総重量に対して、50重量%(wt%)以下、40重量%以下、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、18重量%以下、15重量%以下、12重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、または3重量%以下、または1重量%以下である。また、上記に列挙した範囲の組み合わせ(又はコンビネーション)も可能である(例えば、1重量%以上かつ50重量%以下)。他の範囲も可能である。
いくつかの実施形態において、菌糸体ベースの材料(例えば、複数の菌糸フィラメント)におけるキチン質(又はキチン(chitin))は、向上した耐火炎性(又はファイヤー・レジスタント)(又は改善された耐火炎性(又はファイヤー・レジスタント))(例えば、相対的(又は比較的)に低い熱伝導率(又はサーマル・コンダクティビティ)および/または増加した燃焼熱(又は燃焼の熱))を菌糸体ベースの材料に提供してよい。菌糸体ベースの材料におけるキチン質(又はキチン(chitin))の量(重量%)は、キチン・アッセイ(又はキチン質の評価又はキチンの評価(chitin assay))を使用して決定(又は測定)することができる。キチン質の評価は、菌糸体ベースの材料の脱タンパク質(又はデプロテイナイゼーション)および/または脱アセチル(又はデアセチレーション)によって行うことができる。続いて、菌糸体ベースの材料を脱重合して、グルコサミンを産生(又は形成又は生成又は製造)させて、グルコサミン・アッセイを使用して、菌糸体ベースの材料において、キチン質(又はキチン(chitin))の量を間接的に決定(又は測定)することができる。当業者は、菌糸体ベースの材料において、キチン質(又はキチン(chitin))の量を決定(又は測定)するための適切なグルコサミン・アッセイを選択することができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、菌糸体ベースの材料において、特定の量の水が存在する。
いくつかの実施形態において、菌糸体ベースの材料に存在する水の量は、菌糸体ベースの材料の総重量に対して、20重量%(wt%)以下、15重量%以下、12重量%以下、10重量%以下、7重量%以下、5重量%以下、3重量%以下、または1重量%以下である。
いくつかの実施形態において、菌糸体ベースの材料に存在する水の量は、菌糸体ベースの材料の総重量に対して、1重量%(wt%)以上、3重量%以上、5重量%以上、7重量%以上、10重量%以上、12重量%以上、15重量%以上、または20重量%以上である。
また、上記で列挙した範囲の組み合わせ(又はコンビネーション)も可能である(例えば、1重量%以上かつ20重量%以下)。他の範囲も可能である。
【0055】
いくつかの実施形態において、菌糸体ベースの材料は、特定の熱伝導率(又はサーマル・コンダクティビティ)を有してよい。いくつかの実施形態において、菌糸体ベースの材料の熱伝導率は、0.1W/m・K以下、0.09W/m・K以下、0.08W/m・K以下、0.07W/m・K以下、0.06W/m・K以下、0.05W/m・K以下、0.04W/m・K以下、0.03W/m・K以下、または0.02W/m・K以下である。
いくつかの実施形態において、菌糸体ベースの材料の熱伝導率(又はサーマル・コンダクティビティ)は、0.02W/m・K以上、0.03W/m・K以上、0.04W/m・K以上、0.05W/m・K以上、0.06W/m・K以上、0.07W/m・K以上、0.08W/m・K以上、0.09W/m・K以上、または0.1W/m・K以上である。
また、上記で列挙した範囲の組み合わせ(又はコンビネーション)も可能である(例えば、0.02W/m・K以上かつ0.03W/m・K以下)。他の範囲も可能である。
熱伝導率は、ASTM・スタンダード・テスト(又はASTM標準テスト(ASTM Standard Test))C177-63を使用する定常状態の技術(又はステディ・ステート・テクニック(steady state technique))によって測定することができる。
【0056】
本開示で説明する菌糸体ベースの材料は、特定の燃焼熱(又は燃焼の熱)を有してよい。
いくつかの実施形態において、菌糸体ベースの材料の燃焼熱(又は燃焼の熱)は、30MJ/kg以下、25MJ/kg以下、20MJ/kg以下、15MJ/kg以下、10MJ/kg以下、8MJ/kg以下、5MJ/kg以下、3MJ/kg以下、2MJ/kg以下、または1MJ/kg以下である。
いくつかの実施形態において、菌糸体ベースの材料の燃焼熱(又は燃焼の熱)は、1MJ/kg以上、2MJ/kg以上、3MJ/kg以上、5MJ/kg以上、8MJ/kg以上、10MJ/kg以上、15MJ/kg以上、20MJ/kg以上、25MJ/kg以上、または30MJ/kg以上である。
また、上記で列挙した範囲の組み合わせ(又はコンビネーション)も可能である(例えば、30MJ/kg以下かつ1MJ/kg以上)。他の範囲も可能である。
いくつかの実施形態において、菌糸体ベースの材料の燃焼熱(又は燃焼の熱)は、化学的な被覆(又はコーティング)または処理(又はトリートメント)がない状態で達成することができ、あるいは化学的な被覆(又はコーティング)または処理(又はトリートメント)を適用することなく、達成することができる。菌糸体ベースの材料の燃焼熱(又は燃焼の熱)は、スタンダード・テスト(又は標準試験(standard test))を用いて決定(又は測定)することができる。例えば、EN ISO スタンダード・テスト(EN ISO standard test)1716:2018。
【0057】
いくつかの実施形態において、菌糸体ベースの材料は、特定のポロシティ(又は多孔度又は多孔率又は多孔性)(例えば、平均ポロシティ(又はアベレージ・ポロシティ(average porosity)))を有する。
いくつかの実施形態において、菌糸体ベースの材料のポロシティ(又は多孔度又は多孔率又は多孔性(porosity))は、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、または1%以下である。
いくつかの実施形態において、菌糸体ベースの材料のポロシティ(又は多孔度又は多孔率又は多孔性)は、1%以上、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、50%以上、60%以上、または70%以上である。
また、上記に列挙した範囲の組み合わせ(又はコンビネーション)も可能である(例えば、1%以上かつ70%以下)。他の範囲も可能である。
ポロシティ(又は多孔度又は多孔率又は多孔性(porosity))およびポア・サイズ・ディストリビューション(又は孔径分布又は細孔径分布(pore size distribution))は、スタンダード・テスト(又は標準試験(standard test))(例えば、スタンダード・テスト BS ISO 15901-01:2016)を用いて、水銀圧入ポロシメトリーによって測定することができる。
【0058】
菌糸体ベースの材料のポア(又は孔又は細孔(pore))は、任意の適切なサイズ(又は寸法および大きさ)を有してよい(例えば、断面の平均の孔径(又はポア径又はポア直径))。
いくつかの実施形態において、ポアの断面の平均の径(又は直径)は、1nm以上、2nm以上、5nm以上、10nm以上、20nm以上、30nm以上、40nm以上、50nm以上、75nm以上、100nm以上、250nm以上、500nm以上、1ミクロン(μm)以上、10ミクロン以上、20ミクロン以上、25ミクロン以上、50ミクロン以上、100ミクロン以上、200ミクロン以上、300ミクロン以上、400ミクロン以上、または500ミクロン以上である。
いくつかの実施形態において、ポアの断面の平均の径(又は直径)は、500ミクロン(μm)以下、400ミクロン以下、300ミクロン以下、200ミクロン以下、100ミクロン以下、50ミクロン以下、25ミクロン以下、20ミクロン以下、10ミクロン以下、1ミクロン以下、500nm以下、250nm以下、100nm以下、75nm以下、50nm以下、40nm以下、30nm以下、20nm以下、10nm以下、5nm以下、または未満である。
また、上記で列挙した範囲の組み合わせ(又はコンビネーション)も可能である(例えば、1nm以上かつ100nm以下)。他の範囲も可能である。
【0059】
いくつかの実施形態において、菌糸体ベースの材料の菌糸フィラメントは、接合(又は融合又は縮合又はフュージョン)および/または架橋(又はクロスリンク)していてよい。理論に拘束されることは望まないが、菌糸体が標的基質でコロニーを形成して(又はコロニー化又はコロナイゼーション又はコロナイジング)、標的基質で成長(又は増殖)する場合、その菌糸の先端(又はティップ)は、菌糸体ベースの材料が形成(又は生成又は製造)される際、標的基質に延在(又は延長又は進入又は侵入)してよく、標的基質に位置(又は生息)してよい。
いくつかの場合において、菌糸の先端(又はティップ)は、互いの間で架橋するようになってよい。このことは、菌糸体ベースの材料の特性を有利に改善してよい(例えば、向上(又は改善)した機械強度(又はメカニカル・ストレングス)、向上(又は改善)した耐火炎性(又はファイヤー・レジスタンス))。
いくつかの場合において、菌糸の先端(又はティップ)は、菌糸体の他の菌糸の先端(又はティップ)と接触するようになってよい。そして、互いに接合(又は融合又は縮合又はフュージョン)してよい。有利には、菌糸フィラメントの接合(又は融合又は縮合又はフュージョン)によっても、菌糸体ベースの材料の特性を向上(又は改善)させることもできる。
【0060】
いくつかの実施形態において、菌糸フィラメント(例えば、複数の菌糸フィラメント)は、菌糸体ベースの材料において、特定の配向(又はオリエンテーション)を有してよい。例えば、いくつかの実施形態において、菌糸フィラメントは、平行(又はパラレル)または平行でない(又は反平行又は逆平行又はアンチパラレル)の配置(又は配列又は整列又はアレンジメント)を有してよい。しかし、いくつかの実施形態において、菌糸フィラメントは、特定の配向(又はオリエンテーション)を有していない。また、菌糸フィラメントは、ランダムまたは無秩序(又はディスオーダー又はディスオーダード)の様式(又はマナー)でならんでよい(例えば、曲がったネットワーク(又はねじれたネットワーク)(tortuous network))。
【0061】
菌糸体ベースの材料は、任意の適切な厚みを有してよい。
いくつかの実施形態において、菌糸体ベースの材料の厚みは、1mm以上、2mm以上、3mm以上、4mm以上、5mm以上、6mm以上、7mm以上、8mm以上、9mm以上、10mm以上、15mm以上、20mm以上、25mm以上、30mm以上、40mm以上、50mm以上、60mm以上、70mm以上、75mm以上、80mm以上、90mm以上、100mm以上、110mm以上、120mm以上、130mm以上、140mm以上、または150mm以上である。
いくつかの実施形態において、菌糸体ベースの材料の厚みは、150mm以下、140mm以下、130mm以下、120mm以下、110mm以下、1cm以下、90mm以下、80mm以下、75mm以下、70mm以下、60mm以下、50mm以下、40mm以下、30mm以下、25mm以下、20mm以下、15mm以下、10mm以下、9mm以下、8mm以下、7mm以下、6mm以下、5mm以下、4mm以下、3mm以下、2mm以下、または1mm以下である。
また、上記に列挙した範囲の組み合わせ(又はコンビネーション)も可能である(例えば、1mm以上かつ30mm以下)。他の範囲も可能である。
【0062】
いくつかの実施形態において、菌糸体ベースの材料は、コーティング(又は被覆)を含まない(又はコーティング・フリーである)。特定の理論に拘束されることは望まないが、本開示の菌糸体ベースの材料の有益で有利な少なくともいくつかの特徴は、菌糸体ベースの材料にコーティング(又は被覆)を適用(又は付与)することなく達成することができる。いくつかのこのような実施形態では、このことによって、菌糸体ベースの材料の特性を向上(又は改善)させることができる(例えば、菌糸体ベースの材料を通過するエア・フロー(又は空気流又は気流)の向上(又は改善)(コーティング(又は被覆)を適用(又は付与)した菌糸体ベースの材料に対する向上(又は改善)))。しかし、いくつかの実施形態において、コーティング(又は被覆)が存在することを理解すべきである。なぜなら、本開示は、そのように限定されないからである。
【0063】
いくつかの実施形態において、本開示で説明する菌糸体ベースの材料は、任意の適切な形状(又はシェイプ)に形成(又は成形)されてよい。いくつかのこのような実施形態において、菌糸体ベースの材料は、自由な形状の材料(又はフリーフォーム・マテリアル)であってよい。ここで、このような材料は、規則正しい形状または構造(又はレギュラーの形状または構造)に一致するものではない(又は従うものではない)。
いくつかの実施形態において、電場(又は電界)または電流は、菌糸体を成形するために使用してよい(例えば、規則正しい形状(又はレギュラー形状又はレギュラー・シェイプ)、自由な形状(又はフリーフォーム形状又はフリーフォーム・シェイプ)への成形)。
例えば、いくつかの実施形態において、菌糸体ベースの材料は、成長(又は増殖)する菌糸体材料に電流を適用(又は印加又は付与)することによって形成または成形されてよい。これは、菌糸体ベースの材料の菌糸体の成長(又は増殖)または配向(又はオリエンテーション)を方向付けるために使用してよい。
いくつかの実施形態において、菌糸体ベースの材料の特定の形状への成形またはその援助のために、コンテナ(又は容器)またはトレイを使用してよい。例えば、菌糸体(例えば、マザー・スポーン)は、コンテナ(又は容器)またはトレイにおいて培養またはコロニー化(又はコロナイゼーション又はコロナイジング)されてよい。そうすることで、菌糸体ベースの材料は、コンテナ(又は容器)またはトレイの形状(又はシェイプ)を有するようになる。本開示の技術を見た当業者は、所望の用途に応じて、菌糸体ベースの材料を成形することができる。
【0064】
本開示で説明する方法および物品は、適切な用途(又はアプリケーション)の数に応じて使用してよい。1つの例示の用途として、建築環境(又は建築設定又はコンストラクション・セッティング)(例えば、家屋およびビル)における断熱材(又は絶縁材)として菌糸体ベースの材料を使用することが挙げられる。
いくつかの実施形態において、本開示で説明する菌糸体ベースの材料は、相対的(又は比較的)に低い熱伝導率(又はサーマル・コンダクティビティ)を有してよい。このような熱伝導率によって、かかる材料を断熱材(又は絶縁材)として特に有用にすることができる。このような材料は、生きた菌糸体によって製造されるので、生成(又は発生)する生物ベースの断熱材(又は絶縁材)は、合成材料(例えば、プラスチック)に対して、環境に配慮した代替品であることが理解され得る。
【0065】
いくつかの実施形態において、本開示で説明する菌糸体ベースの材料は、難燃性(又は防炎性又はファイヤー・リターダント)または耐火炎性(又はフレーム・レジスタント)の材料(又はマテリアル)として有用であってよい。
いくつかの場合において、菌糸体ベースの材料は、相対的(又は比較的)に低い燃焼熱(又は燃焼の熱)を有する。このような燃焼熱によって、材料の難燃性(又は防炎性又はファイヤー・リターダント)の特性を向上(又は改善)させることができる。
【0066】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を示すことを意図しているが、本発明のすべての範囲を例示するものではない。
【実施例】
【0067】
(実施例)
以下の実施例は、菌糸体ベースの材料の製造(又は調製)を説明する。これは、菌糸体を培養することから開始するものであって、菌糸体ベースの材料において、生きた菌糸体の不活化(又は不活性化又はデアクティベーション)を経由するものである。
【0068】
培養(又はカルチャー又はカルチャリング(Culturing))
この段階(又はステージ)は、菌糸体の培養の開始地点(又はスタート・ポイント)であった。新鮮なプレートに移し(又はプレート・トランスファ)、豊富(又はリッチ)な寒天培地で成長(又は増殖)させて、その後、グレイン(grain)に移すか、新しいプレートに移した。様々な栄養材料(又は栄養マテリアル)を使用することができる。培養物の移し替え(又はトランスファ)や保存(又はストア)にプレートを使用した。
【0069】
プレート培養(又はプレート・カルチャー(Plate Cultures))
プレート・トランスファは、中空針(又はホロー・ニードル)、または外科用メスを用いて切り取った小さな角切り寒天培地のいずれかを用いて、親プレートから、新しいプレートに組織サンプルを移すことによって、無菌状態で行った。21~30℃の温度でプレートをインキュベートした。また、湿度が制御された環境を使用した。このとき、菌糸体の適切な成長(又は増殖)の速度(又はレート)を達成させた。
【0070】
液体培養(又は液体培養物又はリキッド・カルチャー(Liquid Cultures))
また、菌糸体を培養するために、液体培養(又は液体培養物又はリキッド・カルチャー(liquid culture))を使用した。プレート・トランスファ(plate transfer)、クリオストック(cryostock)からの液体培地(又はリキッド・メディア)において、あるいは別の液体培養物からの液体培地において、菌糸体を成長(又は増殖)させることができた。その後、より複雑な基質(又は基体又は基材又はサブストレート)、または新しい培地に移すことができた。様々な栄養材料(又は栄養マテリアル)を使用することができる。液体培養物は、基質(又は基体又は基材又はサブストレート)の全体にわたって、菌糸体をさらに均一に分散させることができた。また、さらに、基質(又は基体又は基材又はサブストレート)に注入する際には、さらにより大きく分散させるためにブレンドや混合によって均質化することができた。
【0071】
液体培養物を調製(又は準備)するために、液体培地のボトルを滅菌した。滅菌後、選んだ菌株の菌糸体をボトルに接種させて、この基質(又は基体又は基材又はサブストレート)でコロニーを形成させた(又はコロニー化又はコロナイゼーション又はコロナイジング)。基質(又は基体又は基材又はサブストレート)への接種に使用する場合には、培地および菌糸体の量を計量し、基質(又は基体又は基材又はサブストレート)に注いで、その後、基質(又は基体又は基材又はサブストレート)と混合した。
【0072】
グレイン・スポーン(Grain Spawn)
プレート培養物(又はプレート・カルチャー)または液体培養物(又はリキッド・カルチャー)から菌糸体をグレインに移した(又はトランスファ)(グレイン・コンテナ(又はグレイン容器)に移した)。いくつかの場合において、予め確立(又は調製)しておいたグレインをより大きなグレイン・コンテナ(又はグレイン容器)にさらに膨張(又は拡大又はエキスパンション)させた。様々なグレインを使用または混合することができる。例えば、本開示の他の箇所に記載のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。グレインを水和して、滅菌して、コロニーが形成されたグレイン・スポーンを接種させるか、あるいはプレート培養物または液体培養物を接種させた。21~30℃の温度で調節(又は制御又はコントロール)した環境において、サンプルをインキュベートした。
【0073】
プレートまたは液体のグレインへのトランスファ
無菌の環境において、調製したグレインにプレート培養物または液体培養物に由来する菌糸体を移し(トランスファ)、徹底的に混合し、保温室(又はインキュベーション・ルーム)で適切な温度(単数または複数)(21~30℃の温度)で保存し、進行(又はプログレス)を観察した。
【0074】
グレイン・トゥ・グレイン・エキスパンション(コロニーが形成されたグレインの一部を用いた新鮮(又はフレッシュ)で滅菌されたグレインへの接種)
無菌の環境において、コロニーが形成された一定量のグレイン・スポーンを新鮮なグレイン(例えば、2~40重量%の新たなグレイン(又はフレッシュ・グレイン)を秤量したもの)に移した(又はトランスファ)。そして、グレインの新たなコンテナ(又は容器)に移し(又はトランスファ)、すべてのコンテナ(又は容器)においてコロニーが形成されるまで、繰り返した。
【0075】
基質(又は基体又は基材又はサブストレート)の前処理(処理/滅菌+接種のプロセス)
このプロセス(又は工程又は方法)では、基質(又は基体又は基材又はサブストレート)(例えば、農業廃棄物流(又は農業廃棄物ストリーム)を処理した。そうすることで、基質(又は基体又は基材又はサブストレート)を滅菌し、続いて、接種して、菌糸体を成長(又は増殖)させるための準備を行った。
【0076】
いくつかの場合において、スチーム・パスツーリゼーション・メソッドを行った。基質(又は基体又は基材又はサブストレート)をスチーム(又は蒸気)で処理した。加熱サイクルは、完全であったと考えられる。ただし、基質(又は基体又は基材又はサブストレート)のコア温度は、5~30分間にわたって、65~95℃に到達した後、または、このような温度を超えた後であり、このような温度は、具体的な用途や懸案の基質(又は基体又は基材又はサブストレート)に依存する。基質(又は基体又は基材又はサブストレート)は、次いで、冷却され、その後、グレイン・スポーンの菌糸体による接種を受ける。
【0077】
いくつかの場合において、過酸化物(又はパーオキシド)も使用して、基質(又は基体又は基材又はサブストレート)を滅菌する。このとき、スチーム・パスツーリゼーションの代わりに、またはスチーム・パスツーリゼーションと組み合わせて、過酸化物を使用した。処理すべき所望の量の乾燥した基質(又は基体又は基材又はサブストレート)を過酸化物の希釈溶液で化学的に滅菌した。
【0078】
菌糸体ベースの材料の成長(又は増殖)
パスツーリゼーションおよび接種を行った基質(又は基体又は基材又はサブストレート)を所望の形状(又はシェイプ)に成形するか、または所望の形状(又はフォーム)に削った。基質(又は基体又は基材又はサブストレート)でコロニーが形成されるまで、保温室(又はインキュベーション・ルーム)において、パスツーリゼーションおよび接種を行って、成長(又は増殖)させた。HVACシステムを使用して、保温室(又はインキュベーション・ルーム)の周囲の湿度を60~95%の湿度に調節(又はコントロール)することができた。使用する菌株に適したレベルでそれぞれのインキュベーションのスペース(又は空間)の温度を維持した。
【0079】
菌糸体に適用する電流
いくつかの場合において、電気(又は電流又は電力又はエレクトリシティ)を使用して、菌糸体の成長(又は増殖)を増加させた。そして/または菌糸体の成長(又は増殖)の方向または配向(又はオリエンテーション)を変更させた。パスツーリゼーションおよび接種した基質(又は基体又は基材又はサブストレート)をインキュベーションのために用意(又は準備)すると、様々なインターバルの設定した期間にわたって、最大で6kVの電圧(又はボルテージ)を菌糸体に適用(又は印加又は付加)することができた。成長(又は増殖)をモニタリングした。時間のスケール(又は軸)(又はタイム・スケール)は、電圧(又はボルテージ)に反比例した。例えば、それぞれ、3日間~5日間のインターバルで、約6kVの電圧を適用(又は印加又は付与)する場合、分単位の期間を使用した。
【0080】
図2に概略図を示す。セットアップは、容易に再設計することができ、さまざまなサイズ(又は寸法又は大きさ)およびシェイプ(又は形状)にあわせて調節することができる。
【0081】
菌糸体の不活化(又は不活性化又はデアクティベーション)
菌糸体ベースの材料に含まれる生きた菌糸体を不活化(又は不活性化又はデアクティベーション)した。サンプルの成長(又は増殖)が完了すると、菌糸体を不活化(又は不活性化又はデアクティベーション)するために以下の1または2のプロセス(又は工程又は方法)を使用した。
(1)長期の期間にわたって、低温を使用して脱水すること
(2)より短い期間にわたって、より高い温度を用いて脱水すること
菌糸体ベースの材料のサイズ(又は寸法又は大きさ)によって、菌糸体ベースの材料が完全に乾燥するのに必要な期間を決定する。温度プローブを用いることによって、菌糸体ベースの材料の内側部分の温度を読んで得ることができた。そして、その温度が所望の値に到達すると、加熱を続けることを停止した。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態について説明し、本開示にて示している。その一方で、当業者は、様々な他の手段および/または構造を簡単に想像する。それにより、機能(又はファンクション)を果たし、そして/または本開示において説明する結果および/または1以上の利点を得る。そして、このような変形(又はバリエーション)および/または変更(又はモディフィケーション)は、いずれも、本開示の範囲内であるとみなされる。より一般的には、当業者は、以下のことを簡単に理解する。本開示で説明するパラメータ、ディメンジョン(又は寸法又は次元)、マテリアル(又は材料)およびコンフィギュレーション(又は形状又は構成)のすべてが、例示的であることを意味する。実際のパラメータ、ディメンジョン(又は寸法又は次元)、マテリアル(又は材料)および/またはコンフィギュレーション(又は形状又は構成)は、具体的な用途(単数又は複数)に依存するものである。そのために本開示の教示が使用されている。当業者は、慣用の実験手順(又はルーチン・エクスペリメンテーション)ではなく、本開示に記載の本発明の具体的な実施形態の多くの均等物(又は等価体)を使用することを理解するか、または確認することができる。従って、以下のことを理解するべきである。上記の実施形態は、例示のみによって示されている。また、添付の特許請求の範囲およびその均等物(又は等価体)の範囲内において、本発明を実施してよい。そうでなければ、具体的に説明されて特許請求の範囲に具体的に記載されているものである。本開示は、それぞれ個々のフィーチャ(又は特徴)、システム、アーティクル(又は物品)、マテリアル(又は材料)および/またはメソッド(又は方法)に関し、本開示で説明する通りである。さらに、2以上のこのようなフィーチャ(又は特徴)、システム、アーティクル(又は物品)、マテリアル(又は材料)および/またはメソッド(又は方法)の任意の組み合わせ(又はコンビネーション)は、本開示の範囲内に包含されている(ただし、このようなフィーチャ(又は特徴)、システム、アーティクル(又は物品)、マテリアル(又は材料)および/またはメソッド(又は方法)が互いに矛盾しない場合)。
【0083】
不定冠詞「a」および「an」は、本開示の明細書および特許請求の範囲において使用されている通り、「少なくとも1つ(at least one)」を意味することを理解するべきである(ただし、反対の旨が明確に示されていない場合)。
【0084】
「および/または(又はかつ/または、又はそして/または)(and/or)」との語句は、本開示の明細書および特許請求の範囲において使用されている通り、そのようにまとめられた要素(又はエレメント)の「いずれか一方または両方」を意味することを理解すべきである。すなわち、要素(又はエレメント)は、いくつかの場合では、一緒にまとめて存在するものであり、他の場合では、分離して存在するものである。「および/または(又はかつ/または、又はそして/または)」の節によって具体的に同定されている要素(又はエレメント)ではなく、必要に応じて、他の要素(又はエレメント)も存在してよい(ただし、反対の旨が明確に示されていない場合)。他の要素(又はエレメント)は、具体的に示された要素(又はエレメント)に関連していても、関連していなくてもよい。
従って、非限定的な例として、「Aおよび/またはB(又はAかつ/またはB、又はAそして/またはB)」との言及は、オープン・エンドの語句(例えば、「含む(comprising)」と併せて使用する場合、以下のように意味することができる。
1つの実施形態では、A(Bなし)(必要に応じて、B以外の要素(又はエレメント)を含んでよい);
別の実施形態では、B(Aなし)(必要に応じて、A以外の要素(又はエレメント)を含んでよい);
さらに別の実施形態では、AとBの両方(必要に応じて、他の要素(又はエレメント)を含んでよい);
など。
【0085】
本開示の明細書および特許請求の範囲で使用する通り、「または(又はあるいは、又はもしくは)(or)」は、上記で規定(又は定義)した「および/または(又はかつ/または、又はそして/または)」と同じ意味を有するものとして理解しなければならない。例えば、列挙したアイテム(又は項目)を分ける場合、「または(又はあるいは、又はもしくは)(or)」あるいは「および/または(又はかつ/または、又はそして/または)」は、包含的なものとして解釈される。すなわち、少なくとも1つの要素(いくつかの要素またはリストの要素(又は列挙した要素))を含む(1以上の要素を含む)。必要に応じて、リストにない追加のアイテムも含む。
「1つのみ(only one of)」、または「ちょうど1つ(exactly one of)」、または「からなる(consisting of)」(特許請求の範囲で使用する場合)などの明確に反対を示す用語だけは、厳密に1つの要素(又はエレメント)(いくつかの要素またはリストの要素(又は列挙した要素))を含むことを意味する。
概して、用語「または(又はあるいは、又はもしくは)(or)」は、本開示で使用する通り、排他的な代替(すなわち、「一方または他方(両方ではない)(one or the other but not both)」)を示すものとして解釈されるだけである(ただし、排他的な用語が先行する場合(例えば、「いずれか(either)」、「一方(one of)、「一方だけ(only one of)」または「ちょうど1つ(exactly one of)」))。
「~から本質的になる(consisting essentially of)」は、特許請求の範囲において使用する場合、その通常の意味を有し、特許法の分野で使用する通りである。
【0086】
本開示の明細書および特許請求の範囲において使用する通り、「少なくとも1つ(at least one)」との語句は、1以上の要素(又はエレメント)のリスト(又は列挙)を参照するものであり、要素(又はエレメント)のリスト(又は列挙)において、任意の1以上の要素(又はエレメント)から選択される少なくとも1つの要素(又はエレメント)を意味するものであることを理解するべきである。ただし、要素(又はエレメント)のリストにおいて具体的に列挙されたそれぞれおよび全ての要素(又はエレメント)の少なくとも1つを含むことを必須とするものではない。また、要素(又はエレメント)のリスト(又は列挙)において、要素(又はエレメント)の任意の組み合わせ(又はコンビネーション)を排除するものではない。
また、この規定(又は定義)によって、以下のことも可能となる。「少なくとも1つ(at least one)」との語句が意味する要素(又はエレメント)のリスト(又は列挙)に具体的に同定されている要素(又はエレメント)ではなく、必要に応じて、他の要素(又はエレメント)も存在してよい。他の要素(又はエレメント)は、具体的に同定した要素(又はエレメント)に関連しても、関連していなくてもよい。従って、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも1つ(at least one of A and B)」(あるいは、等しくは、「AまたはBの少なくとも1つ(at least one of A or B)」、あるいは、等しくは、「Aおよび/またはBの少なくとも1つ(at least one of A and/or B)」)は、以下のことを意味することができる。
1つの実施形態において、少なくとも1つのA(必要に応じて、1以上のA)を含み、Bは存在していないこと(そして、必要に応じて、B以外の要素(又はエレメント)を含んでよい);
別の実施形態において、少なくとも1つのB(必要に応じて、1以上のB)を含み、Aは存在していないこと(そして、必要に応じて、A以外の要素(又はエレメント)を含んでよい);
さらに別の実施形態において、少なくとも1つのA(必要に応じて、1以上のA)を含み、少なくとも1つのB(必要に応じて、1以上のB)を含む(そして、必要に応じて、他の要素(又はエレメント)を含んでよい);
など。
【0087】
いくつかの実施形態は、方法として具体化されてよい。方法の様々な例を以下にて説明している。方法の一部として行われる行為(又は工程又はアクト(act))は、任意の適切な方法で順序付けることができる。従って、実施形態を作成(又は構築)することができ、このような実施形態では、示した順番とは異なる順番で行為が行われる(説明した行為とは異なる行為(例えば、説明した行為よりも多い行為または少ない行為)を含んでよい)。そして/または、いくつかの行為が同時に行われることが含まれていてよい。ただし、上記で具体的に説明した実施形態では、連続して行為が行われるように行為を示している。
【0088】
例えば、「第1(又はファースト(first))」、「第2(又はセカンド(second))」、「第3(又はサード(third))」などの序数の用語の使用は、特許請求の範囲において、請求項の要素(又はエレメント)を修飾するためのものであり、それ自体が、優先、先行または順番(ある請求項の要素(又はエレメント)を他の請求項の要素(又はエレメント)に優先させる順番)または時系列(方法の実行が行われる時系列)を含むものではない。しかし、特定の名称を有する請求項の要素(又はエレメント)と、同一の名称を有する別の要素(又はエレメント)とを区別して、請求項の要素(又はエレメント)を区別するためのラベルとして単に用いられる(ただし、序数の用語として用いられている)。
【0089】
特許請求の範囲において、ならびに上記の明細書において、例えば、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(carrying)」、「有する(having)」、「含む(containing)」、「含む(involving)」、「有する(holding)」などのすべての移行句(又はトランジショナル・フレーズ)は、オープン・エンドのものとして理解されなければならない。すなわち、包含するものであって、限定するものではないことを意味するものとして理解されるべきである。移行句(又はトランジショナル・フレーズ)である「~からなる(consisting of)」および「~から本質的に成る(consisting essentially of)」だけは、それぞれ、クローズドまたはセミ・クローズドの移行句であり、米国特許庁「特許審査手続マニュアル」第211.03の項(the United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures, Section 2111.03)に記載されている通りである。
【国際調査報告】