(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-15
(54)【発明の名称】メタン酸化装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/86 20060101AFI20240207BHJP
F28D 7/16 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
B01D53/86 280
B01D53/86 ZAB
F28D7/16 A
F28D7/16 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574760
(86)(22)【出願日】2022-02-21
(85)【翻訳文提出日】2023-10-10
(86)【国際出願番号】 GB2022050458
(87)【国際公開番号】W WO2022180375
(87)【国際公開日】2022-09-01
(32)【優先日】2021-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523319069
【氏名又は名称】ゼルプ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ZELP LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ノリス, フランシスコ
(72)【発明者】
【氏名】ノリス, パトリシオ
(72)【発明者】
【氏名】ガンドリー, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ, クリストファー
【テーマコード(参考)】
3L103
4D148
【Fターム(参考)】
3L103AA05
3L103BB25
3L103CC21
3L103DD06
3L103DD08
4D148AA17
4D148AB01
4D148CC52
4D148CC54
4D148DA02
4D148DA05
4D148DA06
4D148DA07
4D148DA08
(57)【要約】
メタンを酸化するためのメタン酸化ユニットと、熱を回収して酸化に再利用するための熱交換器とを備える、熱を回収して酸化に再利用するためのメタン酸化装置であって、熱交換器が、使用中にメタン排出源と流体連通するように配置された入口と、出口と、入口を出口に流体接続させ、少なくとも一部分がメタン酸化ユニットを通る少なくとも1つの流路と、流路の反対側にあり、少なくとも一部分がメタン酸化ユニットを通る少なくとも1つの対向流路とを有し、使用中に少なくとも1つの流路および少なくとも1つの対向流路が、両者の間での熱伝達を可能にするように配置される、メタン酸化装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタンを酸化するためのメタン酸化ユニットと、
熱を回収して酸化に再利用するための熱交換器と
を備える、熱を回収して酸化に再利用するためのメタン酸化装置であって、
前記熱交換器が、
使用中にメタン排出源と流体連通するように配置された入口と、
出口と、
前記入口を前記出口に流体接続させ、少なくとも一部分が前記メタン酸化ユニットを通る少なくとも1つの流路と、
前記流路の反対側にあり、少なくとも一部分が前記メタン酸化ユニットを通る少なくとも1つの対向流路と
を有し、
使用中に前記少なくとも1つの流路および前記少なくとも1つの対向流路が、両者の間での熱伝達を可能にするように配置される、メタン酸化装置。
【請求項2】
使用中に流体が、前記少なくとも1つの流路および前記少なくとも1つの対向流路を経由して流れ、前記メタン酸化ユニットを出る流体からの熱が、前記メタン酸化ユニットに浸入する流体を加熱するために伝達される、請求項1に記載のメタン酸化装置。
【請求項3】
前記熱交換器が伝熱式熱交換器である、請求項1または2に記載のメタン酸化装置。
【請求項4】
前記熱交換器が再生式熱交換器である、請求項1または2に記載のメタン酸化装置。
【請求項5】
前記熱交換器がシングルパス熱交換器である、請求項1~4のいずれか一項に記載のメタン酸化装置。
【請求項6】
前記入口が入口マニホールドを備え、前記出口が出口マニホールドを備える、請求項1~5のいずれか一項に記載のメタン酸化装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの対向流路が、前記少なくとも1つの流路と平行である、請求項1~6のいずれか一項に記載のメタン酸化装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの流路の長さが、前記少なくとも1つの対向流路の長さと同一である、請求項1~7のいずれか一項に記載のメタン酸化装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの流路および前記少なくとも1つの対向流路が、略直線状である、請求項1~8のいずれか一項に記載のメタン酸化装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの流路および前記少なくとも1つの対向流路が、略曲線状またはU字状である、請求項1~8のいずれか一項に記載のメタン酸化装置。
【請求項11】
前記メタン酸化ユニットが、メタンの接触酸化用のチャンバを備える、請求項1~10のいずれか一項に記載のメタン酸化装置。
【請求項12】
前記メタン酸化ユニットが、前記熱交換器内に配置された少なくとも1つの触媒材料を備える、請求項1~10のいずれか一項に記載のメタン酸化装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つの触媒材料が、前記少なくとも1つの流路または前記少なくとも1つの対向流路のうち少なくとも1つの中に配置される、請求項12に記載のメタン酸化装置。
【請求項14】
前記メタン酸化ユニットが、前記少なくとも1つの流路および前記少なくとも1つの対向流路の長さと略等距離に配置される、請求項1~13のいずれか一項に記載のメタン酸化装置。
【請求項15】
前記熱交換器が、外部環境への熱損失を低減するために、前記メタン酸化装置を絶縁するための絶縁ユニットを備える、請求項1~14のいずれか一項に記載のメタン酸化装置。
【請求項16】
前記メタン酸化装置が、複数の熱交換器を備える、請求項1~15のいずれか一項に記載のメタン酸化装置。
【請求項17】
前記メタン酸化装置が、使用中に前記メタン酸化ユニット内の流体を加熱するためのヒータユニットを備える、請求項1~16のいずれか一項に記載のメタン酸化装置。
【請求項18】
前記メタン酸化装置が、略直方体である、請求項1~17のいずれか一項に記載のメタン酸化装置。
【請求項19】
前記メタン酸化装置が、略V字状である、請求項1~17のいずれか一項に記載のメタン酸化装置。
【請求項20】
前記メタン酸化装置が、前記入口をメタン収集ユニットに接続するための接続手段を備える、請求項1~19のいずれか一項に記載のメタン酸化装置。
【請求項21】
前記メタン酸化装置が、動物が放出したメタン排出物を収集するためのメタン収集ユニットを備える、請求項1~19のいずれか一項に記載のメタン酸化装置。
【請求項22】
前記メタン酸化装置が、動物の頭部の付近に前記メタン酸化装置を配置するための配置手段を備える、請求項1~21のいずれか一項に記載のメタン酸化装置。
【請求項23】
前記メタン酸化装置が少なくとも1つのセンサを備える、請求項1~22のいずれか一項に記載のメタン酸化装置。
【請求項24】
前記メタン酸化装置が、使用中に流体が前記メタン酸化装置を通って流れるのを補助するためのポンプを備える、請求項1~23のいずれか一項に記載のメタン酸化装置。
【請求項25】
前記メタン酸化装置が、使用中に少なくとも1つの排出物特性に基づき前記排出物を分離するための排出物セパレータユニットを備える、請求項1~24のいずれか一項に記載のメタン酸化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱を回収して酸化に再利用するためのメタン酸化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
メタンは強力な温室効果ガスであると知られており、地球温暖化係数が二酸化炭素のものより極めて高い。家畜はメタンガスの重要な供給源であると知られ、メタンガスは呼気および曖気によって放出される。家畜のメタン排出は、家畜生産者に対して直接的な経済的影響を及ぼすことが多く、家畜生産者は家畜のカーボンフットプリントに基づき税金を課される場合がある。加えて、畜牛は地球温暖化の主要な原因であるため、家畜からのメタン排出物を削減することが不可欠である。
【0003】
メタン排出物の量を削減する方法は、大気中に放出される前にメタンを捕捉し、酸化することである。このプロセスでは、メタンは酸素によって酸化されることで、二酸化炭素と水蒸気を生成し、放出される有害なメタンの量を削減する。このプロセスのエネルギー需要は高く、必要な酸化温度は約500℃である。加えて、家畜からの排出物の頻出は、このメタンを酸化する必要性が高頻度で生じることを意味する。
【0004】
そのため、メタン酸化からエネルギーを回収し、このエネルギーを酸化プロセスに再利用する手段が必要とされる。
【0005】
本発明の目的と態様は、少なくともこれら先行技術の問題を軽減しようとする。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、メタンを酸化するためのメタン酸化ユニットと、熱を回収して酸化に再利用するための熱交換器とを備える、熱を回収して酸化に再利用するためのメタン酸化装置であって、熱交換器が、使用中にメタン排出源と流体連通するように配置された入口と、出口と、入口を出口に流体接続させ、少なくとも一部分がメタン酸化ユニットを通る少なくとも1つの流路と、流路の反対側にあり、少なくとも一部分がメタン酸化ユニットを通る少なくとも1つの対向流路とを有し、使用中に少なくとも1つの流路および少なくとも1つの対向流路が、両者の間での熱伝達を可能にするように配置される、メタン酸化装置が提供される。
【0007】
このように、メタン排出物の酸化からのエネルギーを回収し、酸化プロセス内で再利用することができる。そのため、本プロセスにおけるあらゆる外部電源に対する依存を、低減または排除することができる。この熱回収により、軽量化によって携行性が改善された自立型メタン酸化装置の提供が可能になる。かかる装置は、特に、動物が放出したメタン排出物を捕捉して酸化するために装置が家畜または別の動物に取り付けられる用途において有効である。
【0008】
好ましくは、使用中に流体は、少なくとも1つの流路および少なくとも1つの対向流路を経由して流れ、メタン酸化ユニットを出る流体からの熱は、メタン酸化ユニットに浸入する流体を加熱するために伝達される。このように、メタン酸化ユニットに浸入する未加熱の流体は酸化の前に加熱され、メタン酸化ユニットを出る加熱済み流体は、外部環境に放出される前に冷却される。かかるプロセスは、酸化プロセスから熱を回収し、酸化対象の流体を酸化の前に加熱することによって熱を再利用する。
【0009】
一部の実施形態では、熱交換器はプレート熱交換器である。代替的または付加的に、熱交換器は伝熱式熱交換器である。代替的に、熱交換器は再生式熱交換器である。好ましくは、熱交換器はシングルパス熱交換器である。代替的に、熱交換器はダブルパス熱交換器である。
【0010】
好ましくは、入口は入口マニホールドを備え、出口は出口マニホールドを備える。このように、本装置は、メタン酸化装置を通る圧力降下および熱損失を最小限に抑えながら、1つの経路から別の経路に効率的かつ高速で熱を伝達するのを可能にする、複数の流路と複数の対向流路を備える。
【0011】
好ましくは、少なくとも1つの対向流路は、少なくとも1つの流路と平行である。このように、並流式熱交換器が設けられ、流路と対向流路との間、およびその逆での熱伝達に対する抵抗は、流路および対向流路の長さに沿って略同一である。
【0012】
好ましくは、少なくとも1つの流路の長さは、少なくとも1つの対向流路の長さと同一である。好ましくは、少なくとも1つの流路および少なくとも1つの対向流路は、略直線状である。代替的に、少なくとも1つの流路および少なくとも1つの対向流路は、略曲線状またはU字状である。
【0013】
好ましくは、メタン酸化ユニットは、メタンの接触酸化用のチャンバを備える。接触酸化チャンバは、動物の呼気に存在するメタンを発熱により酸化して、エネルギーを流体流に放出する。代替的または付加的に、メタン酸化ユニットは、熱交換器内に配置される少なくとも1つの触媒材料(catalytic material)を備える。一部の実施形態では、少なくとも1つの触媒材料は、少なくとも1つの流路または少なくとも1つの対向流路のうち少なくとも1つの中に配置される。このように、メタンの酸化は熱交換器内で生じるので、別個の酸化チャンバが不要となる。
【0014】
好ましくは、メタン酸化ユニットは、少なくとも1つの流路および少なくとも1つの対向流路の長さと略等距離に配置される。このように、例えばメタン酸化ユニットを出る流体からの熱が、メタン酸化ユニットに浸入する流体を加熱するために伝達される場合、流路と対向流路との間、およびその逆での熱伝達には同等の容量が存在する。
【0015】
好ましくは、熱交換器は、外部環境への熱損失を低減するために、装置を絶縁するための絶縁ユニットを備える。外部環境への熱損失が低減されることで、酸化プロセス内で回収かつ再利用できる熱の量が増加する。
【0016】
一部の実施形態では、本装置は複数の熱交換器を備える。熱交換器は2つ以上を直列にして構成されてもよく、一方の熱交換器の入口を他方の熱交換器の出口に供給させると、あらゆる配管および適合の要求に起因した圧力損失が低減され、熱伝達効率が高まる。
【0017】
一部の実施形態では、本装置は、使用中にメタン酸化ユニット内の流体を加熱するためのヒータユニットを備える。動物のメタン排出物は、動物の約30℃の呼気温度から、約500℃の酸化温度まで加熱する必要がある。好ましい実施形態では、ヒータユニットは本装置に必要とされず、本装置によって回収かつ再利用される熱は、使用中に動物の排出物を酸化に必要な温度まで加熱するのに十分なものである。このように、本装置は実質的に自立型であり、ヒータユニットに電力供給するための電源に対する依存が排除される。代替的に、本装置によるヒータユニットに対する依存は断続的であるため、あらゆる電源からの電力需要が低減される。
【0018】
好ましくは、本装置は略直方体である。代替的に、本装置は略V字状である。代替的に、本装置は略曲線状またはU字状である。このように、本装置の形状は、使用中の装置の配置に合わせられる。かかる特徴により、使用中に動物上の装置の体積が減少するので、本装置が動物の視覚、飼料または水の摂取、反芻または他の正常な挙動を妨げるのを防止するのに役立つ。
【0019】
好ましくは、本装置は、入口をメタン収集ユニットに接続するための接続手段を備える。好ましくは、接続手段は、入口とメタン収集ユニットとの間で流体が移動する距離を最小限にするように構成される。このように、メタン収集ユニットとメタン酸化装置との間で流体が流れるのを補助するための、ポンプまたは外部流体移動装置の必要性は低減する。
【0020】
一部の実施形態では、本装置は、動物が放出したメタン排出物を収集するためのメタン収集ユニットを備える。好ましくは、使用中にメタン収集ユニットは、動物のメタン排出物を収集するために動物の鼻口部の付近に配置される。好ましくは、メタン収集ユニットは、メタン収集ユニットによる収集の前に、動物の呼気の希釈または事前散布を低減するように構成される。好ましくは、メタン収集ユニットは、動物の排出物の少なくとも1つの特性を検出するための少なくとも1つのセンサを備える。例えば、メタン収集ユニットは、メタンセンサ、二酸化炭素センサ、および/または温度センサを備えてもよい。
【0021】
一部の実施形態では、本装置は、動物の頭部の付近に装置を配置するための配置手段を備える。このように、本装置は、動物のメタン排出源の付近に確実に取り付けることができ、例えば、限定されないが、動物の肩、首、または頭部に取り付けることができる。代替的に、本装置は、動物のハーネスに装置を取り付けるための取付け手段を備える。このように、本装置は、動物により支持される既存の装具とともに使用できる。両構成によって、本装置が例えばメンテナンスのために取り外され得るように、装置を動物に取り外し可能に保持することが可能になる。他の実施形態では、本装置は、装置を固定構造体に配置するための配置手段を備える。例えば、本装置は、使用中にメタン排出物が存在する肥育場、家畜小屋、納屋、または他の好適な場所の付近に装置を取り付けるための配置手段を備えてもよい。このように、複数の動物からのメタン排出物を、本装置によって同時に酸化することができる。かかる実施形態では、本装置は、外部環境からメタン排出物を収集するように構成されたメタン収集ユニットを備えてもよい。一部の実施形態では、メタン酸化装置は、構造体に固定しての使用、および動物に携行させての使用の両方のために構成される。
【0022】
好ましくは、本装置は少なくとも1つのセンサを備える。例えば、メタン酸化装置は、メタンセンサ、二酸化炭素センサ、慣性センサ、圧力センサ、流量センサ、および/または温度センサを備えてもよい。このように、動物の排出物特性、酸化条件、または流動特性のうち少なくとも1つの特性は、ユーザによって検出かつ監視することができる。
【0023】
一部の実施形態では、本装置は、使用中に流体が装置を通って流れるのを補助するためのポンプを備える。ポンプの種類は特に限定されず、本装置は、遠心ポンプなどいずれかの好適なポンプまたは流体移動装置を備えてもよい。好ましくは、熱交換器は、各流路に沿った圧力降下が非常に少なくなるように構成される。このように、ポンプまたは外部流体移動装置の必要性が低減または排除され、装置の所要電力が低減される。
【0024】
好ましくは、本装置は、使用中に少なくとも1つの排出物特性に基づき排出物を分離するための排出物セパレータユニットを備える。好ましくは、少なくとも1つの排出物特性は、メタン純度である。好ましくは、本装置は、使用中に排出物が熱交換器に浸入する前に分離されるように構成される。このように、メタン排出物は、低純度の排出物が熱交換器を迂回し、高純度の呼気が熱交換器に浸入するように濾過することができる。一部の実施形態では、本装置は、外部環境と流体連通するバルブを備える。このように、本装置は、使用中に、メタン純度が特定の値を下回る呼気がすべて、バルブを経由して熱交換器を迂回し、その値を上回る呼気が、熱交換器に流入するように構成されてもよい。メタン純度によって排出物を分離することで、酸化を受ける低メタン排出物の量が減少し、その結果、酸化プロセスからのエネルギー生成が改善し、酸化の前に不必要に冷却される流体の量が減少する。
【0025】
ここで、本発明の実施形態を単なる例として、添付の図面を参照しつつ説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】使用中における、牛の頭部に配置された本発明によるメタン酸化装置を描く斜視図である。
【
図2】使用中における、牛の頭部に配置された
図1のメタン酸化装置を描く分解図である。
【
図3】使用中における、牛の頭部に配置された
図1のメタン酸化装置の第2の実施形態を描く図である。
【
図4】
図1のメタン酸化装置の第1の実施形態を描く分解図である。
【
図5】
図1のメタン酸化装置の第3の実施形態を描く分解図である。
【
図6】
図1の第1の実施形態のメタン酸化装置の、流路および対向流路を描く図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1と
図2を参照すると、使用中に牛101の頭部に取り付けられた、熱を回収して酸化に再利用するためのメタン酸化装置100が図示される。下記の実施形態は、牛101に対するメタン酸化装置100の使用を概説するが、本発明の装置100は、他のウシ亜科動物、および羊や山羊など非ウシ亜科動物に使用されてもよいことが想定される。このように、装置100は畜牛に対する使用に限定されない。
【0028】
メタン酸化装置100は、絶縁筐体110を備える本体部材102を備える。本体部材102は、メタンを酸化するためのメタン酸化ユニットと、熱を回収して酸化に再利用するための熱交換器109とを、絶縁筐体110内に配置させて備える。
図2は、絶縁筐体110が取り外された本体部材102の分解状態を図示する。絶縁筐体110は、外部環境への熱損失を低減するために、装置100を絶縁するための絶縁ユニットを備える。絶縁ユニットは、本体部材102からメタン酸化装置の外部環境への熱損失を低減するために、いずれか1つもしくは複数の好適な絶縁材料、器具、または構造体を備える。例えば、絶縁ユニットは、鉱物ウール絶縁体、エアロゲル、発泡フォーム、ガラス繊維絶縁体、ポリスチレン絶縁体、および/または多層アルミニウムを備えてもよい。
【0029】
メタン酸化装置100は、使用中に本体部材102が牛101の頭部の付近に配置されるように配置手段103を備える。本実施形態では、配置手段103は、メタン酸化装置100を牛101の頭部の下側に固定するための複数のストラップを備える。
【0030】
本体部材102は略直方体であり、本体部材102の第1の表面108上に配置された、第1の入口104aおよび第1の出口105aを備える。第1の入口104aは、使用中に、接続手段を経由して外部メタン収集ユニット106と流体連通するように配置される。本実施形態では、接続手段は、細長部材107を備える。メタン収集ユニット106は、鼻口部から放出された排出物がメタン収集ユニット106によって収集されるように、使用中に牛101の鼻口部に配置される。細長部材107は、牛101の頭部に沿ってメタン収集ユニット106から本体部材102まで通じており、本体部材において細長部材は第1の入口104aに接続する。メタン酸化装置100は、牛101の視覚、飼料または水の摂取、反芻または他の正常な挙動を妨げないように構成される。
【0031】
メタン酸化装置100は、本体部材102の第2の表面(図示せず)上に配置された第2の出口に隣接する、第2の入口をさらに備える。第2の表面は、本体部材102の第1の表面108よりも遠位の表面に配置される。使用中に、第1の出口105aは、第1の表面108上で第1の入口104aと牛101の鼻口部との間に配置され、第2の表面上で第2の入口は、第2の出口と牛101の鼻口部との間に配置される。
【0032】
第2の入口はまた、第1の入口104aと同様に、細長部材107を経由してメタン収集ユニット106と流体連通する。このように、細長部材107は、牛101の頭部の両側に沿って延在する。
【0033】
メタン酸化装置100は、使用中にメタン純度に基づき排出物を分離するための排出物セパレータユニットをさらに備える。装置100は、使用中に排出物が熱交換器109に浸入する前に分離されるように構成される。装置100は、使用中に、メタン純度が500パーツパーミリオン(ppm)を下回る呼気がすべて熱交換器を迂回し、500ppmを上回る呼気が熱交換器に流入するように構成される。
【0034】
図3を参照すると、使用中に牛201の頭部に取り付けられたメタン酸化装置200の第2の実施形態が、図示される。以下の説明では、本発明の実施形態の同様の部分に対して同様の符号が使用される。
【0035】
メタン酸化装置200は、略U字状の熱交換器を収容する略U字状の本体部材202を備える。このように、本体部材202は、牛101の首より上に配置され、メタン酸化装置200の重量は牛101の首によって支持される。メタン酸化装置200は、絶縁筐体210をさらに備える。
【0036】
本実施形態では、メタン酸化装置200は、本体部材202の第1の領域208に配置された、第1の入口204aおよび第1の出口205a、ならびに本体部材202の第2の領域(図示せず)に配置された、第2の入口および第2の出口を備える。第1の領域208および第2の領域は、本体部材202の遠位端に配置される。第1の入口204aは、第1の領域208において第1の出口205aと牛101の鼻口部との間に配置され、第2の領域において第2の出口は、第2の入口と牛201の鼻口部との間に配置される。メタン酸化装置200は、牛201の視覚、飼料または水の摂取、反芻または他の正常な挙動を妨げないように構成される。
【0037】
図4を参照すると、本体部分は、メタン酸化装置100の絶縁筐体110内に配置された熱交換器109を備える。熱交換器109は、2つの経路、すなわち流向Fを有する流路111、および流向CFを有する対向流路112を備える。対向流路112は、流路111の反対側にある。
【0038】
流路111は、使用中に流体が第1の入口104aから第2の出口105bに流れるように、第1の入口104aを第2の出口105bに流体接続する。対向流路112は、使用中に流体が第2の入口104bから第1の出口105aに流れるように、第2の入口104bを第1の出口105aに流体接続する。このように、熱交換器109は、シングルパス熱交換器である。
【0039】
対向流路112は流路111と平行であり、流路111の長さは、対向流路112の長さと同一である。本実施形態では、流路111および対向流路112は、略直線状である。使用中に、流路111および対向流路112は、両者の間での熱伝達を可能にするように配置される。流路111および対向流路112は、熱交換器109を通る等しく好適な流れを促進させるように構成される。さらに、装置100は、望ましくない速度、圧力降下、汚損、および乱流など、装置内を流れる流体の望ましくない特性を最小限に抑えるように構成される。
【0040】
図5を参照すると、メタン酸化装置300の第3の実施形態の分解図が図示され、メタン酸化装置300は略V字状である。メタン酸化装置300は、
図4の実施形態と同様に、第1の入口304a、第1の出口、第2の入口、第2の出口305a、流路、および対向流路を備えた熱交換器309を備える。メタン酸化装置は、メタンの接触酸化用のチャンバ314を備えたメタン酸化ユニット313をさらに備える。
【0041】
メタン酸化ユニット313は、流路および対向流路の長さと略等距離に配置される。本実施形態では、チャンバ314は、第1の直線部分315、チャンバ314、および第2の直線部分316が流体連通するように、第1の直線部分315と第2の直線部分316との間に配置される。流路の一部はチャンバ314を通り、対向流路の一部はチャンバ314を通る。このように、使用中に流体は、第1の入口304aから第1の直線部分315を通ってチャンバ314に流れて、第2の直線部分316を通り、第1の出口を経由してメタン酸化装置300から出る。同様に、使用中に流体は、第2の入口から第2の直線部分316を通ってチャンバ314に流れて、第1の直線部分315を通り、第2の出口305aを経由してメタン酸化装置300から出る。
【0042】
図6を参照すると、第1の実施形態の熱交換器109が図示される。流れFを有する流路111は、第1の入口104aを第2の出口105bと流体接続させ、対向流CFを有する対向流路112は、第2の入口104bを第1の出口105aと流体接続させる。熱交換器109は、メタンの接触酸化用のチャンバを備えたメタン酸化ユニットを備える。チャンバ114は、流路111および対向流路112の長さと略等距離に配置される。
【0043】
使用中に、メタン排出物は、メタンの酸化に必要な温度よりも低い排出温度で、第1の入口104aおよび第2の入口104bを経由して熱交換器109に浸入する。次いで、排出物は、排出物の対応の流路111および112に沿って流れてチャンバ114に浸入し、チャンバにおいてメタンの接触酸化が生じる。メタン排出物を酸化するチャンバ114内での反応は、チャンバ114を出る酸化済みの排出物が最大500℃の高温で出るように、発熱性である。
【0044】
次いで、酸化済みの排出物は、チャンバ114を出て、排出物の対応の流路111および112に沿って第1の出口105aおよび第2の出口105bに流れ、酸化済みの排出物はメタン酸化装置100を出る。チャンバ114を出る流体の温度よりも著しく低い温度で、酸化済みの排出物を装置から排出することが有効である。高温の排出物は、装置100を着用する動物、および装置100の付近にあるあらゆる動物、人、または物体の両方に対して危険なおそれがある。このように、装置100のエネルギー効率を改善するだけでなく、放出される高温の酸化済みの排出物による危険性を低減するために、酸化プロセスから熱を回収して再利用することが有益である。
【0045】
使用中に、流体は、流路111および対向流路112を経由して流れ、メタン酸化ユニットを出る流体からの熱は、前記メタン酸化ユニットに浸入する流体を加熱するために伝達される。
図6の流路111に図示されるように、チャンバ114を出て第2の出口105bに向かって流れる流体からの熱は、チャンバ114に向かって流れる対向流路112中の流体に伝達される。加えて、対向流路112では、チャンバ114を出て第1の出口105aに向かって流れる流体からの熱は、チャンバ114に向かって流れる流路111中の流体に伝達される。酸化を受けた流体から熱が伝達されると、流体は冷却され、好適な温度で装置100から排出されることが可能となる。
【0046】
このように、装置100は、家畜から吐き出されたメタンを除去するためにチャンバ114内で接触酸化反応を行う前に、畜牛の呼気を加熱する必要性を低減または取り除くことにより利益を得る。装置100が、メタンの酸化が生じ得るよう接触チャンバ114を所望の温度に維持するために酸化反応からエネルギーを採取することにより利益を得るだけでなく、チャンバ114を出る流体は、安全な温度で装置100を出る前に、チャンバの望ましくない熱を流体から伝達する。
【0047】
熱交換器109内の温度伝達手段は特に限定されず、例えば、熱交換器109は、シェルアンドチューブ、プレート、プレートフィン、プリント回路、フィルム冷却、または他の好適な熱交換器としてもよい。これら熱交換器109の多くは、使用中に、各流路での流体が壁部を通して流体間で熱を伝達するのを可能にする。流路111と対向流路112との間、およびその逆での熱伝達は、熱交換器109内の熱損失が最小限に抑えられるように構成されることが好ましい。さらに熱は、伝導および/または対流など、熱伝達を補助する外部手段の必要性を削減する手段によって、流路111と対向流路112との間で伝達されることが好ましい。
【0048】
装置100は、装置全体の熱損失と圧力損失を最小限に抑えるように構成される。このように、装置100は、効率の向上、バッテリなどの外部エネルギー入力に対する依存の低減から利益を得るので、実質的に自立型とすることができる。
【0049】
装置100は、装置が着用可能かつ携行可能であるように、配置手段103によって牛101に直接取り付けられるために構成される。酸化プロセスから熱を回収して再利用することにより、装置100におけるバッテリの必要性が低減される。しかし、装置100はさらに、例えば装置100を納屋に、または肥育場もしくは他の既存の構造体の付近に取り付けることによって、固定型システムとして構成されてもよい。装置100は、メタン収集ユニットによって外部環境からメタン排出物を収集するように構成することができる。このように、装置100は、複数の動物からのメタン排出物を同時に酸化するように構成される。かかる構成では、酸化プロセスから熱を回収して再利用することにより、装置100の電力要求が低減される。
【0050】
本発明の範囲内にある、上述されていないさらなる実施形態が想定される場合もある。例えば、本発明のさらなる実施形態では、熱交換器109は、ダブルパス熱交換器を備えてもよいことが想定される。この特定の実施形態では、この熱交換器は、接続手段により第1の出口105aを第2の入口104bと流体接続させて達成される。かかる実施形態では、メタン酸化装置100は、接続手段において流体が移動する経路の長さを短くすることにより装置100の熱伝達効率を高めることなどによって、装置100内の圧力損失を低減するように配置される。
【0051】
本発明の選択された実施形態では、メタン酸化装置100は、流体が流路および対向流路を流れるのを補助するために、遠心ポンプなどのポンプを備える。
【0052】
本発明の一部の実施形態では、メタン酸化装置は、既存の配置手段に取り付けられるように構成されることが想定される。付加的または代替的に、メタン酸化装置は、使用中に外部メタン収集ユニットと流体連通するように構成されることが想定される。このように、メタン酸化装置は、ユーザが所有する既存の器具に適合するように構成される。
【0053】
本装置の材料は、屋外曝露に好適な材料であるなど、動物に取り付けるのに好適でなければならない。熱交換器は、型抜き、溶接、拡散接合、ガスケッチング、および機械的締結を含むがこれらに限定されない標準の大量生産技法の使用により、あらゆる好適な材料、例えば非限定的な例としてステンレス鋼やアルミニウムで構築される。本発明は、図示された特定の例または構造には限定されず、例えば、図面で図示されるよりも多くの構成要素を使用することができる。
【国際調査報告】