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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-16
(54)【発明の名称】薬液投与装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/32 20060101AFI20240208BHJP
   A61M 5/20 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
A61M5/32 510K
A61M5/20 510
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518201
(86)(22)【出願日】2022-02-17
(85)【翻訳文提出日】2023-03-20
(86)【国際出願番号】 JP2022006448
(87)【国際公開番号】W WO2022181451
(87)【国際公開日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2021027881
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】松本 二三也
(72)【発明者】
【氏名】沖原 等
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD13
4C066EE14
4C066FF05
4C066LL30
4C066NN01
(57)【要約】
薬液投与装置(10)は、スリーブボディ(22)の内周面から径方向内側へ突出した少なくとも3つ以上のガイドリブ(34)と、プランジャロッド(82)の外周面に形成された複数のスライド溝(92)とを備える。スライド溝(92)は、プランジャロッド(82)の移動方向に沿って延在してガイドリブ(34)の先端が挿入される。また、ガイドリブ(34)とスライド溝(92)との間には、該ガイドリブ(34)の延在方向に第1クリアランス(Cr1)が設けられ、該延在方向と直交する方向に第2クリアランス(Cr2)が設けられる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空筒状に形成される筐体(12)と、前記筐体内に収容され薬液(M)の充填される筒体(20)及び該筒体と連通して生体内に薬液を投与する穿刺針(126)を有したシリンジ(16)と、前記筐体の内部に設けられ前記シリンジの先端側を覆うと共に穿刺対象に対して押し付けられることで前記筐体に対して基端方向に相対変位する中空筒状の針カバー(64)と、前記筐体の内部に設けられ先端が前記筒体の内部へと移動することで前記薬液を前記穿刺針から吐出させるプランジャ(82)と、前記針カバーの先端に着脱自在に設けられ穿刺対象への前記穿刺針の穿刺時に取り外されるキャップ(18)とを備え、前記薬液を生体内に投与するための薬液投与装置(10)であって、
前記筐体の内周面及び該内周面に臨む前記プランジャの外周面のいずれか一方には、他方に向けて突出した複数のガイドリブ(34)を備え、
前記筐体の内周面及び前記プランジャの外周面の他方には、前記ガイドリブの少なくとも一部が挿入され、前記プランジャの移動方向に沿って延在するガイド溝(70)を備え、
前記ガイドリブは、少なくとも3つ以上設けられ軸方向に沿って形成されると共に、前記ガイドリブと前記ガイド溝との間には、該ガイドリブの延在方向に設けられる第1クリアランス(Cr1)と、前記延在方向と直交する方向に設けられる第2クリアランス(Cr2)とを有する、薬液投与装置。
【請求項2】
請求項1記載の薬液投与装置において、
前記ガイドリブには、前記ガイド溝に挿通され延在方向に沿った端部に該延在方向と略直交方向へ突出した突部(36)を有する、薬液投与装置。
【請求項3】
請求項2記載の薬液投与装置において、
前記突部は、前記ガイドリブから離間する方向に向かって徐々に先細状となるように形成される、薬液投与装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の薬液投与装置において、
前記ガイドリブは、前記プランジャの周方向に沿って等間隔に配置される、薬液投与装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液を穿刺した生体内へと投与する薬液投与装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、投与対象となる使用者(患者)の皮膚を穿刺し、皮下注射に用いられる薬液を投与するための携帯型の薬液投与装置が知られている。このような薬液投与装置は、例えば、特許第6154061号公報に開示されるように、ケーシング内に摺動自在に設けられる針保護スリーブ及びピストンと、薬液を放出する際に前記ピストンに作用するスリーブ状の作動部材と、該作動部材に作用する第1ばねとを備えている。そして、針保護スリーブの先端を患部へと接触させることでケーシングが患部側へと移動し、且つ、針の先端が前記針保護スリーブより突出して前記患部を穿刺する。その後に、第1ばねの弾発力によってピストンが軸方向へと移動することで、製品容器内の薬液が針から放出され患部の皮下へと投与される。
【0003】
また、薬液の投与が終了した際に、作動部材に対する信号部材の係合状態が解除されることで、第1ばねの外周側に配置された第2ばねのばね力によって前記信号部材が前記薬液の投与方向とは反対方向へ移動してケーシングの基端部に設けられた信号ストッパへと当接する。これにより、聴覚的又は触覚的な信号が発信され、薬液の投与が終了したことが確認される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許第6154061号公報のような薬液投与装置では、針保護スリーブの軸方向への移動に伴ったピストンの先端側への移動が、薬液の投与開始であったり信号を発生させるためのトリガーとなっているため、前記ピストンには、ケーシングの内部において軸方向に沿った安定した動きが求められており、前記ピストンの径寸法を管理することで前記ケーシングに対する径方向への偏心を抑制している。
【0005】
しかしながら、上述したピストンは、樹脂製材料から成形された成形品であることが多く、成形による収縮や成形金型の寸法誤差等によって径寸法がばらつくことがあると共に、前記径寸法を高精度に管理することには限界があり、しかも、ケーシングに対して周方向へ回転してしまうことも懸念される。
【0006】
上記のようにケーシングに対するピストンの径方向への位置ばらつき(偏心)や周方向への相対回転が生じた場合には、ケーシング内で軸方向へ移動する際の直進性が低下して円滑に移動させることができず、それに伴って、薬液の投与開始や信号の発生に支障が生じる可能性がある。
【0007】
本発明の一般的な目的は、筐体に対するプランジャの偏心を抑制して直進性を高めることで動作の安定化を図ることが可能な薬液投与装置を提供することにある。
【0008】
本発明の態様は、中空筒状に形成される筐体と、筐体内に収容され薬液の充填される筒体及び筒体と連通して生体内に薬液を投与する穿刺針を有したシリンジと、筐体の内部に設けられシリンジの先端側を覆うと共に穿刺対象に対して押し付けられることで筐体に対して基端方向に相対変位する中空筒状の針カバーと、筐体の内部に設けられ先端が筒体の内部へと移動することで薬液を穿刺針から吐出させるプランジャと、針カバーの先端に着脱自在に設けられ穿刺対象への穿刺針の穿刺時に取り外されるキャップとを備え、薬液を生体内に投与するための薬液投与装置であって、
筐体の内周面及び内周面に臨むプランジャの外周面のいずれか一方には、他方に向けて突出した複数のガイドリブを備え、
筐体の内周面及びプランジャの外周面の他方には、ガイドリブの少なくとも一部が挿入され、プランジャの移動方向に沿って延在するガイド溝を備え、
ガイドリブは、少なくとも3つ以上設けられ軸方向に沿って形成されると共に、ガイドリブとガイド溝との間には、ガイドリブの延在方向に設けられる第1クリアランスと、延在方向と直交する方向に設けられる第2クリアランスとを有する。
【0009】
本発明によれば、薬液投与装置を構成する筐体の内部には、その先端がシリンジの内部へと移動することで薬液を穿刺針から吐出させるプランジャを備え、筐体の内周面及び内周面に臨むプランジャの外周面のいずれか一方に、他方に向けて突出した複数のガイドリブを備え、筐体の内周面及びプランジャの外周面の他方には、ガイドリブの少なくとも一部が挿入されプランジャの移動方向に沿って延在するガイド溝を備えている。そして、ガイドリブが、少なくとも3つ以上設けられ軸方向に沿って形成されると共に、ガイドリブとガイド溝との間には、ガイドリブの延在方向に第1クリアランスが設けられ、延在方向と直交する方向には第2クリアランスが設けられている。
【0010】
従って、筐体の内部において、プランジャロッドが先端側へと移動して薬液を穿刺針から吐出させる際、ガイド溝に挿入されたガイドリブに沿って案内されることで、筐体に対してプランジャが相対回転することがなく、しかも、先端側へ向かって一直線状に移動させることができる。また、ピストンの径寸法を管理することでケーシングに対する直進性を確保していた従来の薬液投与装置と比較し、ガイドリブ及びガイド溝の幅寸法を小さくすることで寸法公差を抑制し、筐体に対するプランジャの径方向への偏心を抑制することができる。
【0011】
その結果、薬液投与装置において、筐体に対するプランジャの偏心を抑制して直進性を高めることで、プランジャを先端側へ向けて円滑に移動させて薬液の投与を安定的に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係る薬液投与装置の外観斜視図である。
図2図1に示す薬液投与装置の分解斜視図である。
図3図1に示す薬液投与装置の全体断面図である。
図4図3の薬液投与装置の先端近傍を示す拡大断面図である。
図5図3の薬液投与装置の基端近傍を示す拡大断面図である。
図6図3のVI―VI線に沿った断面図である。
図7図3の薬液投与装置における別の断面を示す全体断面図である。
図8図7の薬液投与装置における基端近傍を示す拡大断面図である。
図9図9Aは、プランジャロッドの基端がエンドガイドのガイド溝に挿入された状態を示す一部切欠拡大斜視図であり、図9Bは、図9Aにおけるプランジャロッドの先端近傍における動作説明図である。
図10図10Aは、プランジャロッドが傾斜ガイド部に沿って回転し始めた状態を示す一部切欠拡大斜視図であり、図10Bは、図10Aにおけるプランジャロッドの先端近傍における動作説明図である。
図11図11Aは、プランジャロッドが直線ガイド部に沿って先端側へ移動する状態を示す一部切欠拡大斜視図であり、図11Bは、図11Aにおけるプランジャロッドの先端近傍における動作説明図である。
図12図4の薬液投与装置におけるキャップが先端側へと引っ張られた状態を示す拡大断面図である。
図13図12に示すキャップの保持アームの基端が径方向外側へと傾動した状態を示すさらなる拡大断面図である。
図14図3の薬液投与装置からキャップを取り外した状態を示す全体断面図である。
図15図14の薬液投与装置の先端近傍を示す拡大断面図である。
図16図14の薬液投与装置における基端近傍を示す拡大断面図である。
図17図14の薬液投与装置を皮膚に穿刺し始めた状態を示す全体断面図である。
図18図17の薬液投与装置における基端近傍を示す拡大断面図である。
図19図17の薬液投与装置による皮膚への穿刺が終了した状態を示す全体断面図である。
図20図19の薬液投与装置における基端近傍を示す拡大断面図である。
図21図19の穿刺が終了した薬液投与装置における別の断面を示す全体断面図である。
図22図19の薬液投与装置における基端近傍を示す拡大断面図である。
図23図21の薬液投与装置においてプランジャロッドが先端側へ移動し始めた状態を示す全体断面図である。
図24図23の薬液投与装置における基端近傍を示す拡大断面図である。
図25図19の薬液投与装置においてプランジャロッドがさらに先端側へ移動し、薬液投与が終了した状態を示す全体断面図である。
図26図25の薬液投与装置におけるプランジャロッドの基端近傍を示す拡大断面図である。
図27図25の薬液投与の終了した薬液投与装置においてプランジャロッドがさらに先端側へと移動した状態を示す全体断面図である。
図28】可撓部の外周面に第1及び第2接触リブを有した変形例に係るプランジャロッドの基端側近傍の拡大斜視図である。
図29図29Aは、図28のプランジャロッドの基端がエンドガイドのガイド溝に挿入された状態を示す拡大正面図であり、図29Bは、図29Aのプランジャロッドがガイド溝に沿って移動することで回転した状態を示す拡大正面図である。
図30図27の薬液投与装置において、穿刺針が基端側へと移動してカバースリーブ内に収容された状態を示す全体断面図である。
図31図30の薬液投与装置における基端近傍を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この薬液投与装置10は、例えば、使用者である患者の皮下に対して薬液Mを投与するために用いられるものであり、図1図5に示されるように、中空筒状に形成される筐体12と、該筐体12の内部に移動自在に収容されるカバースリーブ(針カバー)14と、該カバースリーブ14の内部に収容されるシリンジ16と、前記筐体12の先端に対して着脱自在に設けられるキャップ18とを含む。
【0014】
筐体12は、例えば、樹脂製材料から形成され、断面円形状で外径及び内径が軸方向(矢印A、B方向)に沿ってそれぞれ略一定の円筒体20と、該円筒体20の基端側(矢印A方向)に収容されるスリーブボディ22と、前記円筒体20の基端を塞ぐエンドキャップ24とから構成される。
【0015】
円筒体20は、軸方向(矢印A、B方向)に所定長さを有し、その先端及び基端が共に開口すると共に、その周壁には、軸方向中央より若干だけ先端側に設けられ、且つ、軸方向に沿って長尺に開口した確認窓26が形成される。この確認窓26は、円筒体20の周壁を貫通するように形成され、内部に収容されるシリンジ16の外筒124の位置に対応して開口することで、該外筒124内の薬液Mを確認することが可能となる。
【0016】
また、円筒体20の先端には、後述するキャップ18の保持アーム148に臨む位置に一対の凹部28が形成される(図4参照)。凹部28は、例えば、断面矩形状で円筒体20の内周面に対して径方向へ窪んで形成され、先端から基端側(矢印A方向)へ向けて所定長さで形成されると共に、円筒体20の軸線に対して対称となる位置に対となるように形成される。そして、凹部28は、円筒体20の先端にキャップ18が装着された際、その保持アーム148に臨むように配置される。
【0017】
スリーブボディ22は中空状に形成され、円筒状に形成されたボディ本体30と、該ボディ本体30の基端側(矢印A方向)に形成される拡径部32とを有し、前記ボディ本体30は、軸方向(矢印A、B方向)に沿って略一定径で形成されると共に、その内部には内周面から径方向内側へと突出した複数のガイドリブ34を備えている。
【0018】
ガイドリブ34は、図3図5及び図6に示されるように、例えば、ボディ本体30の周方向に沿って互いに等間隔離間し、少なくとも3本以上設けられると共に、略一定厚さで内周面から径方向内側へ直線状に突出し、且つ、前記内周面から径方向への突出長さが同一となるように同一形状で形成される。なお、ここでは、4本のガイドリブ34がボディ本体30の軸中心に対して90°毎に配置され、ボディ本体30の軸中心を挟んで一組のガイドリブ34が互いに対向するように配置される場合について説明する。
【0019】
また、ガイドリブ34の径方向内端には、図6に示されるように、その延在方向と直交する幅方向へ突出した突起部(突部)36を有し、該突起部36は、幅方向両側へ突出すると共に、例えば、幅方向先端に向かって徐々に先細となる断面三角形状にそれぞれ形成される。このガイドリブ34は、後述するプランジャロッド82が係合されることで軸方向(矢印A、B方向)に沿って移動自在に案内される。
【0020】
さらに、図2図3及び図5に示されるように、スリーブボディ22の内部には、後述するロックピン44及びプランジャロッド82が軸方向へ移動自在に収容され、図7及び図8に示されるように、拡径部32とボディ本体30との境界部には、径方向内側へ突出した複数の突部38が形成される。突部38は、ボディ本体30の内周面から所定高さだけ突出した断面矩形状、且つ、スリーブボディ22の軸方向から見て断面円弧状に形成されており、その基端面が径方向内側に向かって徐々に先端側(矢印B方向)へ向かうように傾斜したテーパ面となっている(図8参照)。
【0021】
この突部38には、図7及び図8に示されるように、後述するプランジャロッド82における可撓部86の鍔部96が基端側(矢印A方向)に係合されるように形成され、その数量及び配置は、複数設けられる可撓部86の数量及び配置に対応して設定される。
【0022】
そして、スリーブボディ22は、開口した円筒体20の基端側から内部に収容され、その拡径部32が前記円筒体20の内周部位に対して係合されることで、該拡径部32の基端が前記円筒体20の基端から所定距離だけ先端側(矢印B方向)となる位置に収容された状態で固定される。
【0023】
一方、ボディ本体30の外周面には、図2図3及び図5に示されるように、径方向内側へ窪んだロック溝40が形成され、このロック溝40は、スリーブボディ22の軸中心に対して対称となる位置に対となるように形成され、後述するロックピン44のロック爪62が係合可能に形成される。
【0024】
また、ボディ本体30の外周側には、円筒体20の内周面との間にコイルスプリングからなるスリーブばね42が挿通されている。このスリーブばね42は、その基端が拡径部32の先端に係合され、先端が後述するスライドスリーブ64の基端に係合されており、前記スライドスリーブ64を前記スリーブボディ22から離間させる方向、すなわち、先端側(矢印B方向)に向かって付勢している。
【0025】
さらに、上述したスリーブボディ22の内部には、拡径部32及びボディ本体30に跨るようにロックピン44が収容される。
【0026】
このロックピン44は、スリーブボディ22の内部で軸方向(矢印A、B方向)へ移動自在に設けられ、中心に形成され円筒状で軸方向に延在するピン本体46と、該ピン本体46の外周側に設けられる一対のアーム部48とを有し、前記アーム部48は該ピン本体46の基端側に一体的に接続されている。
【0027】
ピン本体46は、基端に形成され軸方向と直交した平坦状の端壁部50と、該端壁部50の中央から先端側(矢印B方向)へ延在する大径部52と、該大径部52の先端側(矢印B方向)に形成され外径の縮径した小径部54とを備え、軸中心に形成される孔部56が、端壁部50、前記大径部52及び小径部54を一直線状に貫通している。孔部56は、一体径で軸方向に沿って延在しエンドキャップ24の軸部78及び後述するインジェクションばね58が内部に挿通される。
【0028】
アーム部48は、その基端がピン本体46の端壁部50に接続され、前記ピン本体46に対して外周側に所定間隔離間して平行に形成されると共に、先端側(矢印B方向)へ向けてそれぞれ同一長さで延在している。そして、アーム部48の先端には、後述するスライドスリーブ64の基端と係合する係合端60と、該係合端60の径方向内側へ形成されたロック爪62とを有する。
【0029】
係合端60は、アーム部48の延在方向と直交する平坦状に形成され、ロック爪62は、係合端60に対して径方向内側、且つ、先端側(矢印B方向)へ突出するように形成されると共に、前記先端側に向かって先細状となる断面三角形状に形成される。
【0030】
また、円筒体20の内部において、ロックピン44の先端側(矢印B方向)には円筒状のスライドスリーブ64が設けられている。
【0031】
スライドスリーブ64は、円筒体20の内部で軸方向(矢印A、B方向)に移動自在に設けられ、その内部には、プランジャロッド82及びスリーブボディ22のボディ本体30が挿通されている。そして、スリーブボディ22の先端には、径方向外側へ拡径した受け部66を有し、外周側に設けられたスリーブばね42の先端が保持されることで、スリーブばね42の弾発力によってスライドスリーブ64がエンドキャップ24に対して先端側(矢印B方向)へと付勢されている。一方、スライドスリーブ64の基端は、基端側(矢印A方向)に配置されたロックピン44の係合端60へと係合可能に設けられる。
【0032】
また、スライドスリーブ64の先端に臨むようにエンドガイド68が設けられ、このエンドガイド68は、スライドスリーブ64と略同一径からなる円筒状に形成され、その内部にプランジャロッド82が軸方向へ移動自在に挿通されると共に、内周面には、前記プランジャロッド82を回転動作させるためのガイド溝70(図9A図10A図11A参照)が形成されている。
【0033】
ガイド溝70は、図9A図10A図11Aに示されるように、エンドガイド68の内周面に対して径方向外側へ窪み、後述するプランジャロッド82における可撓部86の鍔部96が挿入可能に形成される。このガイド溝70は、例えば、可撓部86の数量及び配置に対応して周方向に等間隔離間して4か所設けられている。
【0034】
また、各ガイド溝70は、エンドガイド68の軸方向(矢印A、B方向)に対し先端側(矢印B方向)へ向けて傾斜した傾斜ガイド部72と、該傾斜ガイド部72の先端から前記先端側へと一直線状に延在する直線ガイド部74とを有しており、前記直線ガイド部74の周方向に沿った幅寸法は、後述するプランジャロッド82における鍔部96の幅寸法と略同等若しくは若干だけ大きく形成される。
【0035】
エンドキャップ24は、図2図3及び図5に示されるように、円筒体20の基端を塞ぐ蓋部76と、該蓋部76の中心から先端側(矢印B方向)に向けて延在する軸部78とを有し、前記蓋部76が前記円筒体20の外径と同一径で円盤状に形成されている。
【0036】
蓋部76には、先端側となる端面から突出した押さえ部80を有し、該押さえ部80は、前記端面から所定高さだけ突出した環状に形成され、スリーブボディ22の拡径部32の基端に当接することで、円筒体20の内部に収容された前記スリーブボディ22の基端側(矢印A方向)への移動を規制し保持している。
【0037】
軸部78は、軸方向に沿って先端側(矢印B方向)へと延在した軸体からなり、円筒体20及びスリーブボディ22の内部に収容されると共に、該円筒体20の軸方向中央近傍まで延在し、その外周側には、コイルスプリングからなるインジェクションばね58及びプランジャロッド82が挿通される。インジェクションばね58は、軸部78の軸方向長さに対応して長尺に形成され、後述するプランジャロッド82と蓋部76の端面との間に介装され、前記プランジャロッド82を先端側へ向けて付勢している。
【0038】
そして、エンドキャップ24は、円筒体20の基端に対して装着されることで、円盤状に形成された蓋部76によって開口した基端が塞がれると共に、軸部78が円筒体20の軸線上となるように配置される。
【0039】
プランジャロッド(プランジャ)82は、図2図3図5図8に示されるように、軸方向(矢印A、B方向)に長尺な円筒状に形成され、該軸方向に沿って一定径で形成されるロッド本体84と、該ロッド本体84の基端側(矢印A方向)に形成され周方向に分割された複数の可撓部86と、前記ロッド本体84の先端側(矢印B方向)に形成され後述するトップ部材88の装着される装着部90とを備える。
【0040】
ロッド本体84は断面円形状に形成され、その外周面には径方向内側へ窪んでスリーブボディ22のガイドリブ34が挿入される複数のスライド溝(ガイド溝)92が形成される。スライド溝92は、図6に示されるように、例えば、外周面に対して断面矩形状に窪み、ガイドリブ34の数量及び配置に対応して周方向に等間隔離間して設けられる。ここでは、ガイドリブ34に対応した4本のスライド溝92が設けられる場合について説明する。
【0041】
そして、プランジャロッド82がスリーブボディ22の内部に収容された際、図5及び図6に示されるように、各スライド溝92に対して各ガイドリブ34の先端が挿入されると共に、図6に示されるように、前記スライド溝92と前記ガイドリブ34の先端との間には、前記ガイドリブ34の延在方向にそれぞれ第1クリアランスCr1を有し、該延在方向と直交する方向にそれぞれ第2クリアランスCr2を有し、前記第2クリアランスCr2は、ガイドリブ34の突起部36とスライド溝92の内面との間のクリアランスとなる。すなわち、第1クリアランスCr1と第2クリアランスCr2とは互いに直交するように位置したクリアランスである。
【0042】
また、ロッド本体84の内部には、図3図5図8に示されるように、軸方向(矢印A、B方向)に沿って延在する第1ロッド孔94が形成され、エンドキャップ24の軸部78及びインジェクションばね58が挿通される。
【0043】
可撓部86は、ロッド本体84の基端から軸方向(矢印A方向)へ所定長さだけ突出し、隣接する2つのスライド溝92の間となるように周方向に互いに離間するように設けられ、前記ロッド本体84に接続された先端側(矢印B方向)を支点として基端側(矢印A方向)が径方向へ傾動自在に設けられる。この可撓部86の基端には、径方向外側へと張り出した鍔部96が形成され、該鍔部96は、その先端側(矢印B方向)となる面が径方向外側に向けて徐々に基端側へと傾斜したテーパ状に形成されている(図8参照)。
【0044】
また、可撓部86は、ロッド本体84に対して径方向外側へ拡径して形成され、その内部には、ロックピン44の小径部54が挿入可能に形成されている。すなわち、可撓部86の内周径は、第1ロッド孔94よりも大径となるように形成されている。
【0045】
さらに、図8に示されるように、可撓部86における鍔部96の外径D1は、スリーブボディ22におけるボディ本体30の内径D2よりも若干だけ大きく形成されている(D1>D2)。
【0046】
装着部90は、図2図3図5及び図7に示されるように、ロッド本体84に対して縮径して形成され、図9B図10B図11Bに示されるように、その外周面には径方向外側へ突出し後述するトップ部材88に係合される一対の係合片98を備えている。係合片98は、プランジャロッド82の軸方向と直交する水平方向に延在し、該プランジャロッド82の軸中心に対して対称となる位置に設けられている。
【0047】
また、装着部90の内部には、図5に示されるように、軸方向(矢印A、B方向)に沿って延在する第2ロッド孔100が形成され、前記第2ロッド孔100は第1ロッド孔94より小径に形成され、エンドキャップ24の軸部78が挿通されると共に、前記第2ロッド孔100と前記第1ロッド孔94との境界に形成された段部にインジェクションばね58の先端が係合される。これにより、インジェクションばね58の弾発力は、プランジャロッド82をエンドキャップ24から離間させる方向、すなわち、先端側(矢印B方向)へ付勢するように働く。
【0048】
トップ部材88は、図2図3図5図7図9B図10B及び図11Bに示されるように、基端側(矢印A方向)が開口したカップ状に形成され、プランジャロッド82の装着部90に対して相対回転自在に設けられ、前記基端側に形成され円筒状のカップ部102と、該カップ部102の先端から先端側(矢印B方向)へ突出した取付部104とを備え、該取付部104の外周側を覆うように弾性材料からなるガスケット106が装着される。
【0049】
カップ部102には、基端側からプランジャロッド82の装着部90が内部に挿入されると共に、その外周面には、径方向に貫通しプランジャロッド82の係合片98が挿通される一対の案内溝108が形成される。
【0050】
案内溝108は、カップ部102の軸中心に対して対称となる位置に対となるように設けられ、前記カップ部102の基端近傍に形成され周方向に沿って延在する水平部110と、該水平部110と直交して周方向一端から先端側(矢印B方向)へと延在する鉛直部112とを有した略L字状に形成され、前記水平部110と前記鉛直部112との接続部位には、所定角度で傾斜した傾斜部114が形成される。
【0051】
そして、トップ部材88は、カップ部102の内部にプランジャロッド82の装着部90が挿入され、その係合片98が一対の案内溝108に対してそれぞれ挿入されることで軸方向に接続され、軸方向に沿って一体的に移動可能に設けられると共に、取付部104にガスケット106が装着された状態で、後述するシリンジ16の外筒124の内部へと挿入される。
【0052】
カバースリーブ14は、図2図5及び図7に示されるように、筐体12を構成する円筒体20の内部に移動自在に設けられ、先端側(矢印B方向)に形成された円筒状のスリーブ本体116と、該スリーブ本体116から基端側(矢印A方向)へと延在する一対のカバー部118とを有し、前記スリーブ本体116の中央には軸方向に貫通した孔部14aが開口し、前記カバー部118は、カバースリーブ14の軸線を中心として対称となるように設けられ、軸方向に沿って所定長さで延在している。
【0053】
また、一対のカバー部118には、そのスリーブ本体116側(矢印B方向)となる位置にキャップ18の保持アーム148が係合される係合孔120がそれぞれ開口し、該係合孔120の基端側(矢印A方向)には、軸方向に沿って長尺なシリンジガイド孔122がそれぞれ開口している。
【0054】
係合孔120は、例えば、カバースリーブ14の軸方向と直交する方向に長尺な長方形状に形成され径方向に貫通している。シリンジガイド孔122は、径方向に貫通して軸方向に沿って直線状に形成され、後述するシリンジホルダ130が軸方向に移動自在に係合される。すなわち、シリンジガイド孔122は、シリンジホルダ130を軸方向に案内するガイド機能を有している。
【0055】
シリンジ16は、薬液Mが内部に充填される中空状の外筒124と、該外筒124の内部に摺動自在に挿入されるガスケット106と、前記外筒124の先端に設けられ先端方向(矢印B方向)へ突出した穿刺針126と、前記外筒124の先端に取り付けられた保護カバー128とを備え、前記外筒124は、その外周側に設けられた円筒状のシリンジホルダ130によって保持される。なお、使用される薬液Mとしては、例えば、患者の皮下注射に用いられるものがある。
【0056】
外筒124は、略円筒形状に形成され基端に開口部を有した中空体であり、その基端外周部には径方向外側へと突出したフランジ132が形成されている。外筒124の先端には針保持部134が設けられ、該針保持部134は前記外筒124に対して縮径して先端方向へと突出し穿刺針126の基端を保持している。
【0057】
また、外筒124は、例えば、透明な樹脂製材料から形成され、内部に充填される薬液Mの残量を筐体12の確認窓26を通じて外部から視認可能である。そして、外筒124は、そのフランジ132がシリンジホルダ130の基端に係合されることで軸方向に相対移動することなく外周側が覆われた状態で一体的に保持される。
【0058】
ガスケット106は、例えば、ゴム等の弾性材料から形成され、トップ部材88の取付部104に装着された状態で外筒124の基端開口部を介して内部へと挿入されると共に、前記外筒124の内周面に沿って軸方向に摺動自在に設けられる。そして、ガスケット106が外筒124の内部に挿入されることで、外筒124の基端側が液密に封止され薬液Mが前記外筒124の内部に封入される。
【0059】
穿刺針126は、内部に薬液Mの流通する流路を有した中空体であり、針保持部134から先端方向へ突出すると共に、その流路は薬液Mが充填される外筒124の内部と連通している。そして、外筒124の内部に充填された薬液Mは、穿刺針126の先端から吐出されて患者に投与される。
【0060】
保護カバー128は、図2図4に示されるように、外筒124の先端に装着されることで穿刺針126を覆うものであり、ゴム等の弾性材料からなり針保持部134に装着される針シールド136と、該針シールド136のさらに外周側を覆う外カバー部材138とを備える。そして、穿刺針126を覆うように針シールド136の基端が針保持部134に対して装着されると共に、前記針シールド136の外周面に摺接するように外カバー部材138が嵌合される。また、外カバー部材138の外周面には、径方向内側へ窪んだ環状溝140が形成され、後述するキャップ18の保持片152が係合される。
【0061】
そして、シリンジ16を保持するシリンジホルダ130には、外周面から径方向外側へ突出した一対の凸部142が形成され、カバースリーブ14のシリンジガイド孔122にそれぞれ挿入されることで、前記シリンジホルダ130は、シリンジ16と共に前記カバースリーブ14の内部で軸方向(矢印A、B方向)に沿って移動自在に保持される。
【0062】
上述したシリンジ16は、シリンジホルダ130に保持されカバースリーブ14の内部に収容された状態で、その穿刺針126が先端側(矢印B方向)となり、且つ、筐体12に開口した確認窓26に臨むように外筒124が配置され、該外筒124内における薬液Mの残量を外部から視認可能な状態で収容される。
【0063】
キャップ18は、図1図4及び図12に示されるように、その先端に形成される底壁144と、該底壁144から基端側(矢印A方向)へと立設した環状の周壁146とを有した有底円筒状に形成され、前記基端側が開放されると共に、前記周壁146の基端から軸方向(矢印A方向)へ突出した一対の保持アーム148を備えている。
【0064】
保持アーム148は、図2図4図12及び図13に示されるように、キャップ18の周方向に所定幅を有し、周壁146に対して径方向内側に設けられ該周壁146との接続部位を支点として径方向へ傾動自在に設けられており、その基端には、径方向内側へ突出した外側フック150を備えている。また、保持アーム148は、キャップ18の軸中心を挟んで対称となる位置に対となるように設けられている。
【0065】
そして、キャップ18が筐体12の先端に装着される際、周壁146の基端が円筒体20の先端に当接すると共に、一対の保持アーム148が前記円筒体20とカバースリーブ14との間の間隙に挿入され、凹部28及び係合孔120に臨む位置に配置されることで、前記保持アーム148の外側フック150が前記係合孔120へと係合される。
【0066】
この係合孔120の軸方向長さL1は、図13に示されるように、外側フック150の軸方向長さL2よりも大きく形成されている(L1>L2)。すなわち、外側フック150は、係合孔120に対して軸方向(矢印A、B方向)へ移動可能な状態で係合される。
【0067】
また、図4に示されるカバースリーブ14の先端に対するキャップ18の装着状態において、凹部28は係合孔120よりも先端側(矢印B方向)にオフセットするように配置されており、外側フック150を有した保持アーム148の基端は、前記凹部28の基端よりも基端側(矢印A方向)となるように配置される。
【0068】
さらに、キャップ18の内部には、底壁144の中央部から基端側(矢印A方向)へと突出した4つの保持片152が設けられる。この保持片152は、周方向に互いに分割された略円筒状に形成され、その内部にシリンジ16を構成する保護カバー128の外カバー部材138が挿入されることで、前記保持片152の基端に形成され径方向内側へ突出した内側フック154が、前記外カバー部材138の環状溝140へと係合される。
【0069】
これにより、キャップ18は、保持片152を介して保護カバー128に係合され、且つ、カバースリーブ14の先端に対して係合されることで、保護カバー128を保持した状態で、前記カバースリーブ14及び筐体12の先端を覆うように装着される。
【0070】
本発明の実施の形態に係る薬液投与装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。
【0071】
先ず、キャップ18が装着され使用前の状態にある薬液投与装置10を、前記キャップ18側(先端側)から誤って床面等に落下させてしまった場合について説明する。
【0072】
図3に示される薬液投与装置10において、例えば、床面等との接触に起因した衝撃がカバースリーブ14へと伝わり、該カバースリーブ14が筐体12に対して所定位置から基端側(矢印A方向)へと相対移動することがある(図4中、二点鎖線形状参照)。この場合には、カバースリーブ14の移動に伴って、係合孔120の先端部位と保持アーム148の外側フック150とが接触することで、前記外側フック150を含む前記保持アーム148の基端側が径方向外側へと押圧されるが、保持アーム148の基端の径方向外側には凹部28が設けられておらず、前記保持アーム148の径方向外側への傾動が円筒体20の内周面によって規制される。
【0073】
その結果、薬液投与装置10をキャップ18側から床面等に落下させてしまい、カバースリーブ14に対して基端側(矢印A方向)への衝撃力が付与され、カバースリーブ14が基端側へと移動した場合であっても、係合孔120に対する保持アーム148(外側フック150)の係合状態が確実に維持されるため、キャップ18が筐体12及びカバースリーブ14の先端から外れてしまうことがなく、前記筐体12の先端を覆った状態で確実に保持される。そのため、筐体12及びカバースリーブ14の内部に収容された穿刺針126が誤発動して外部に露呈してしまうことが阻止される。
【0074】
次に、上述した薬液投与装置10によって薬液の投与を行う場合には、図3及び図4に示される使用前の状態にある薬液投与装置10において、筐体12及びカバースリーブ14の先端に装着されているキャップ18を取り外す。この場合、患者が筐体12の円筒体20を把持し、キャップ18を前記筐体12から離間させる方向(矢印B方向)へと引っ張ることで、図12に示されるように、前記キャップ18がカバースリーブ14の先端から離間するように移動し、その外側フック150が係合孔120内で先端側(矢印B方向)へと移動する。
【0075】
これにより、図12及び図13に示されるように、外側フック150が凹部28に臨む位置となり、さらにキャップ18を先端側(矢印B方向)へと引っ張ることで、保持アーム148が外側フック150と前記係合孔120の先端部との接触作用下に径方向外側へと傾動し、外側フック150を有した保持アーム148の基端側が凹部28内へと移動することで、係合孔120に対する係合状態が解除され、その後に、前記凹部28及び円筒体20とカバースリーブ14との間の間隙を介して先端側へと移動する。
【0076】
そして、図14及び図15に示されるように、キャップ18の先端側への移動に伴って、保持片152に保持された保護カバー128が前記キャップ18と共に移動することで外筒124の針保持部134から離脱する。すなわち、キャップ18をカバースリーブ14の先端から取り外すことで、シリンジ16の保護カバー128を同時に取り外すことが可能な構成としている。
【0077】
そして、保持アーム148によるカバースリーブ14に対するキャップ18の係合状態が解除され、前記カバースリーブ14の先端から完全に取り外すことで、図14及び図15に示されるように、筐体12及びカバースリーブ14の先端が開放されると共に、穿刺針126を覆っていた保護カバー128が同時に取り外された状態となる。
【0078】
次に、上述したようにキャップ18の取り外された薬液投与装置10を用いて薬液Mの投与を行う。
【0079】
先ず、図14図16に示される薬液投与装置10を患者が筐体12を把持した状態で、筐体12の先端から突出したカバースリーブ14の先端を所望の穿刺部位となる皮膚Sに対して略直角となるように押し当てた後、図17及び図18に示されるように、さらに前記皮膚S側(先端側、矢印B方向)に向けて筐体12を押し込んでいく。これにより、筐体12は、図19及び図20に示されるように、スリーブばね42を先端側(矢印B方向)へ圧縮しながらカバースリーブ14に対して相対的に先端側へと移動していく。
【0080】
また、スリーブボディ22は、カバースリーブ14の基端に当接しているため互いに相対移動することがなく、ロックピン44も同様に、スリーブボディ22の基端に当接しているため先端側へ移動することはない。
【0081】
そして、図19に示されるように、シリンジ16の穿刺針126がカバースリーブ14の孔部14aから先端側(矢印B方向)へと露出することで、皮膚Sを穿刺して所定深さまで挿入される。この際、プランジャロッド82は、図21及び図22に示されるように、可撓部86の内部にロックピン44の小径部54が挿入されており、径方向内側への傾動が規制された状態にあるため、スリーブボディ22の突部38に対する係合状態が維持され、筐体12に対する相対移動が規制されているため一体的に移動する。すなわち、プランジャロッド82による薬液Mの投与がまだ行われない状態となる。
【0082】
このように皮膚S側への筐体12の押し込み動作によって、図21に示されるように、円筒体20の先端がカバースリーブ14の先端と略同一位置となるまで移動し、穿刺針126が前記皮膚Sに対して所定の深さまで穿刺されて穿刺が終了した状態となる。
【0083】
このように穿刺終了時において、図21及び図22に示されるように、筐体12の移動に伴ってロックピン44が基端側(矢印A方向)へと相対的に移動し、それに伴って、前記ロックピン44の小径部54がプランジャロッド82における可撓部86の内側から基端側(矢印A方向)へと離脱する。そして、プランジャロッド82は、インジェクションばね58の弾発力によって先端側(矢印B方向)へと付勢され、図23及び図24に示されるように、前記先端側へと移動することで、4つの鍔部96がテーパ状の先端面と突部38との接触作用下に径方向内側へと押され、各可撓部86がピン本体46に対して径方向内側へと傾動して前記鍔部96が前記突部38を乗り越えて先端側へと移動する。
【0084】
また、プランジャロッド82は、4本のスライド溝92に挿入されたスリーブボディ22の各ガイドリブ34の案内作用下に先端側へ向かって回転することなく軸方向に移動し、先端のトップ部材88に装着されたガスケット106がシリンジ16の外筒124内に挿入されていく。
【0085】
この際、図6に示されるように、プランジャロッド82及びスリーブボディ22の軸方向から見て、各ガイドリブ34と各スライド溝92との間には、前記ガイドリブ34の延在方向に第1クリアランスCr1をそれぞれ有し、該延在方向と直交する方向に第2クリアランスCr2をそれぞれ有している。
【0086】
詳細には、図6において、紙面左右方向に配置される2本のガイドリブを34aとし、紙面上下方向に配置される2本のガイドリブを34bとすると、スライド溝92に対する前記ガイドリブ34aの径方向への移動は、該ガイドリブ34aと直交配置されたガイドリブ34bによって抑制され、一方、スライド溝92に対する前記ガイドリブ34bの径方向への移動は、該ガイドリブ34bと直交配置されたガイドリブ34aによって抑制される。また、ガイドリブ34a、34bの延在方向と直交する幅方向に沿った幅寸法は、従来技術に係る薬液投与装置におけるピストンの径寸法に対して小さく設定できるため、前記ピストンと比較して寸法公差を小さく抑制することが可能となり、それに伴って、スリーブボディ22に対するプランジャロッド82の径方向への位置ばらつき(偏心)が好適に抑制される。
【0087】
そのため、スリーブボディ22に対するプランジャロッド82の偏心が好適に抑制され、しかも、前記スリーブボディ22に対する前記プランジャロッド82の相対回転も抑制される。その結果、プランジャロッド82を、筐体12(スリーブボディ22)に対して略同軸状に維持しながら先端側(矢印B方向)へ向けて直線状に移動させることが可能となる。
【0088】
そして、図25及び図26に示されるように、プランジャロッド82の先端側(矢印B方向)への移動によって、外筒124内の薬液Mがガスケット106によって先端側へと押圧されていき、穿刺針126から吐出されて患者の皮下に対する投与がなされる。
【0089】
また、プランジャロッド82の移動に伴って薬液Mの投与が開始される際、該プランジャロッド82の鍔部96が、径方向外側へと付勢する弾性を有しているため、図24に示されるスリーブボディ22の突部38を乗り越えて先端側(矢印B方向)へと移動した後に、再び径方向外側へと拡がって外縁部がボディ本体30の内周面に対して接触する。この際、鍔部96の外径D1が、スリーブボディ22におけるボディ本体30の内径D2よりも若干だけ大きく形成されているため(図8参照)、前記ボディ本体30に対する前記鍔部96の接触時に接触音(打音)である第1認知音が発生し、この第1認知音を確認することで患者は薬液Mの投与が開始されたことを確認することが可能となる。
【0090】
そして、薬液Mの投与が開始された後、プランジャロッド82はインジェクションばね58の弾発力によって連続的に一定速度で先端側(矢印B方向)へと移動し続け、外筒124内を先端側へ移動するガスケット106によって押し出された薬液Mが穿刺針126から吐出されていく。このプランジャロッド82のさらなる先端側への移動によって、その可撓部86がエンドガイド68の基端へと到達し、図9Aに示されるように鍔部96が傾斜ガイド部72へと接触することで、該傾斜ガイド部72に沿って鍔部96が時計回りに回転しながら先端側(矢印B方向)へと移動していく。すなわち、エンドガイド68の傾斜ガイド部72に沿ってプランジャロッド82を移動させることで、前記プランジャロッド82に回転力を与えている。
【0091】
また同時に、プランジャロッド82が回転することで、図9Bに示されるように、先端に設けられた係合片98がトップ部材88の案内溝108において水平部110に沿って移動する。なお、プランジャロッド82は、図25に示されるように、スリーブボディ22の各ガイドリブ34の先端まで到達し、スライド溝92及びガイドリブ34による軸方向へのガイド状態が解除され回転可能な状態にある。
【0092】
図10Aに示されるように、この可撓部86が傾斜ガイド部72に沿って回転しながら先端側へと移動して直線ガイド部74に到達した時点で、図27に示されるように、プランジャロッド82によって外筒124内の薬液Mが予め設定された所定量だけ穿刺針126を介して皮膚Sへと投与され薬液Mの投与が終了する。また、上述した薬液Mの投与が終了する前に、回転動作しているプランジャロッド82の係合片98は、図10Bに示されるように、案内溝108の傾斜部114まで到達した状態となる。上述したようにガイド溝70は、プランジャロッド82を所定量だけ回転させた後に、先端側(矢印B方向)へ直線移動させるガイド手段として機能する。
【0093】
そして、上述した薬液Mの投与が終了した後に、プランジャロッド82の係合片98が、傾斜部114に沿って回転しながら鉛直部112側へと移動していくことで、前記鉛直部112に沿って先端側へと案内され移動し、このプランジャロッド82は、再び先端側(矢印B方向)へ向けて軸方向に沿って移動し、図11Bに示されるように、案内溝108の鉛直部112に沿って移動した係合片98の先端面が該鉛直部112の先端縁へと接触することで接触音(打音)である第2認知音が発生する。
【0094】
この第2認知音は、薬液Mの投与が終了してから所定時間遅れて発生しており、前記第2認知音の発生によって患者は患部(皮膚S)への薬液投与が終了したことを確認することができ、前記第2認知音を確認した後に、患者は前記患部から薬液投与装置10を離間させる。
【0095】
すなわち、薬液投与装置10による薬液投与が終了した後に、エンドガイド68のガイド溝70によってプランジャロッド82を回転させ軸方向への移動速度を減速させることにより、前記プランジャロッド82に接続されたトップ部材88のガスケット106が外筒124の先端まで到達する時間を遅らせ、薬液投与が終了してから所定時間経過した後に、薬液投与が終了したことを知らせるための第2認知音を発生させている。
【0096】
また、図28図29Bに示されるプランジャロッド82aのように、可撓部86の外周面に、鍔部96から先端側(矢印B方向)へ向けて軸方向に延在し、且つ、前記外周面から径方向外側へ突出した2本の第1及び第2接触リブ156a、156bを設けるようにしてもよい。この第1接触リブ156aの先端が第2接触リブ156bの先端よりも鍔部96側となるように、前記第1接触リブ156aの長さが前記第2接触リブ156bの長さよりも短く形成されると共に、前記第2接触リブ156bが前記第1接触リブ156aに対してプランジャロッド82aの回転方向となる位置に所定間隔離間して略平行に設けられる。なお、接触リブの数は2本に限定されるものではない。
【0097】
これにより、プランジャロッド82aの先端側(矢印B方向)への移動に伴って、図29Aに示されるように、第1及び第2接触リブ156a、156bの先端がエンドガイド68の基端へと到達して前記先端がガイド溝70の傾斜ガイド部72へと接触することで、該傾斜ガイド部72に沿って前記第1及び第2接触リブ156a、156bを含むプランジャロッド82aを時計回りに回転しながら先端側(矢印B方向)へと移動させることができる(図29B参照)。
【0098】
すなわち、第1及び第2接触リブ156a、156bをエンドガイド68の傾斜ガイド部72に沿って移動させることで、プランジャロッド82aに回転力を与えることが可能となる。なお、第1接触リブ156aの先端と第2接触リブ156bの先端とを結ぶ仮想線と傾斜ガイド部72とが略平行となるように形成される。
【0099】
この薬液投与装置10に対する皮膚S側への押圧力を解除することで、図30に示されるように、カバースリーブ14はスリーブばね42の弾発力によって筐体12のスリーブボディ22に対して先端側(矢印B方向)へと付勢されて移動し、該スリーブボディ22の先端が穿刺針126よりも前記先端側となる位置まで移動することで前記穿刺針126が覆われた状態となる。
【0100】
また、ロックピン44は、図30及び図31に示されるように、カバースリーブ14と共に先端側(矢印B方向)へと移動し、そのロック爪62がスリーブボディ22のロック溝40へと係合されることで、前記ロックピン44の前記スリーブボディ22に対する軸方向への移動が規制され、それに伴って、前記スリーブボディ22の先端に当接したスライドスリーブ64、該スライドスリーブ64の先端に当接したカバースリーブ14の基端側(矢印A方向)への移動も規制される。
【0101】
これにより、図30及び図31に示されるように、薬液投与が終了して患者が皮膚Sから離脱させた薬液投与装置10において、カバースリーブ14によって穿刺針126が完全に覆われると共に、前記カバースリーブ14の基端側への移動が規制されているため前記穿刺針126が前記カバースリーブ14によって外部に露出することがなく安全である。
【0102】
以上のように、本実施の形態では、薬液投与装置10を構成する筐体12の内部に、プランジャロッド82が軸方向(矢印A、B方向)に移動自在に収容されており、前記プランジャロッド82の外周面に臨むスリーブボディ22の内周面には、径方向内側へ突出した複数のガイドリブ34を備えている。一方、プランジャロッド82の外周面には、径方向内側へ窪んで各ガイドリブ34の挿入される複数のスライド溝92が軸方向に沿って形成される。そして、ガイドリブ34及びスライド溝92は、スリーブボディ22及びプランジャロッド82の周方向に沿って少なくとも3つ以上設けられ軸方向に沿って形成されると共に、前記ガイドリブ34と前記スライド溝92との間には、該ガイドリブ34の延在方向に第1クリアランスCr1が設けられ、前記延在方向と直交する方向に第2クリアランスCr2が設けられている。
【0103】
これにより、ピストンの径寸法を管理することでケーシングに対する直進性を確保していた従来の薬液投与装置と比較し、各ガイドリブ34及びスライド溝92の幅寸法をピストンの径寸法よりも小さくすることで寸法公差を小さく抑制することができるため、スリーブボディ22に対するプランジャロッド82の径方向への位置ばらつき(偏心)を好適に抑制して直進性を高めることができる。
【0104】
そのため、筐体12の内部において、プランジャロッド82がインジェクションばね58の弾発力によって先端側へと付勢され移動する際、各スライド溝92に挿入された各ガイドリブ34に沿って前記プランジャロッド82が案内されることで、前記筐体12に対してプランジャロッド82が相対回転することがなく、しかも、先端側(矢印B方向)へ向かって一直線状に移動させることができる。
【0105】
その結果、薬液投与装置10において、筐体12に対するプランジャロッド82の偏心を抑制して直進性を高めることで、前記プランジャロッド82を先端側へ向けて円滑に移動させて薬液の投与や第1及び第2認知音の発生を安定的に行うことができる。
【0106】
さらに、各ガイドリブ34には、スライド溝92に挿通され延在方向に沿った端部に該延在方向と直交する幅方向へ突出した突起部36を有しているため、プランジャロッド82がガイドリブ34に沿って軸方向へ移動する際に、前記スライド溝92に対して突起部36のみが接触することで、例えば、前記ガイドリブ34の幅方向端部が前記スライド溝92に全面で面接触した場合と比較して接触抵抗を低減させることができる。その結果、プランジャロッド82が筐体12に沿って軸方向へ移動する際の摺動抵抗が抑制され、より一層円滑に前記プランジャロッド82を先端側へと移動させることが可能となる。
【0107】
さらにまた、複数のガイドリブ34を、プランジャロッド82の周方向に沿って等間隔に配置することで、筐体12に対する前記プランジャロッド82の偏心をより一層好適に抑制して同軸状に近づけることが可能となる。
【0108】
またさらに、上述した薬液投与装置10では、プランジャロッド82(ロッド本体84)の外周面に4本のスライド溝92を設け、前記外周面に臨むスリーブボディ22(ボディ本体30)の内周面に径方向内側へ突出して前記スライド溝92へ挿入される4本のガイドリブ34を備える構成について説明したが、上記とは反対に、前記プランジャロッド82の外周面に径方向外側へ突出したガイドリブ34を形成し、スリーブボディ22の内周面に前記ガイドリブ34の挿入されるスライド溝92を形成するようにしてもよい。
【0109】
なお、本発明に係る薬液投与装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
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【国際調査報告】