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特表2024-507045ブドウ種子抽出物調製プロセス及びそれにより得られる抽出物
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  • 特表-ブドウ種子抽出物調製プロセス及びそれにより得られる抽出物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-16
(54)【発明の名称】ブドウ種子抽出物調製プロセス及びそれにより得られる抽出物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/87 20060101AFI20240208BHJP
   A61K 31/365 20060101ALI20240208BHJP
   A61K 31/353 20060101ALI20240208BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20240208BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240208BHJP
   A61K 31/122 20060101ALI20240208BHJP
   A61K 36/45 20060101ALI20240208BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20240208BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20240208BHJP
【FI】
A61K36/87
A61K31/365
A61K31/353
A61K31/19
A61P31/12
A61K31/122
A61K36/45
A61P27/06
A23L33/105
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023539879
(86)(22)【出願日】2021-12-28
(85)【翻訳文提出日】2023-08-16
(86)【国際出願番号】 IB2021062373
(87)【国際公開番号】W WO2022144762
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】102020000032765
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523239608
【氏名又は名称】ディスティレリ ボノロ ウンベルト‐エッセ.ピ.ア.―コン シグラ“ウ.ビ.エッセ.ピ.ア.”
【氏名又は名称原語表記】DISTILLERIE BONOLLO UMBERTO‐S.P.A.―CON SIGLA U.B.S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】モラツォーニ、パオロ
(72)【発明者】
【氏名】アーシニ、フルビオ
(72)【発明者】
【氏名】サンティネロ、サンドロ
【テーマコード(参考)】
4B018
4C086
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4B018MD48
4B018MD90
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF06
4B018MF12
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086BA17
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA33
4C086ZB33
4C088AB44
4C088AB56
4C088AC04
4C088CA05
4C088CA11
4C088CA17
4C088MA08
4C088NA05
4C088NA14
4C088ZA33
4C088ZB33
4C206AA01
4C206AA02
4C206CB25
4C206DA14
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA05
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA33
4C206ZB33
(57)【要約】
選択された未発酵絞りかすからブドウ種子抽出物を調製するプロセスであって、ブドウ種子の選択、篩、脱水、水溶溶媒中での抽出、膜を介したタンジェンシャル精密ろ過、限外ろ過、ナノろ過、及び噴霧乾燥工程を含むプロセスが記載される。
それにより得られる抽出物は、眼科疾患のリスクを防止し、上気道のウイルス感染の初期段階を抑制するために有用な活性物質の分析プロファイルを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブドウ種子抽出物を調製するプロセスであって、
1.ブドウの搾汁から得られた絞りかすを供し、前記絞りかすを機械的篩にかけて、ブドウ種子を、つるの機械的剪定により生じる茎、皮及び他の残留物から分離する工程と、
2.それにより分離された前記ブドウ種子を、8%未満の残存湿度まで乾燥する工程と、
3.前記ブドウ種子を、pH3.0~3.5で、少なくとも一時間、少なくとも80℃の温度の水に浸す工程と、
4.前記ブドウ種子から、工程3.で得られた水溶液を分離する工程と、
5.前記水溶液に、0.2ミクロン膜を介してタンジェンシャル精密ろ過(tangential microfiltration through)を施し、そしてろ過生成物を回収・保存する工程と、
6.前記ろ過生成物に、カットオフが300kDaltonのタンジェンシャル限外ろ過(tangential ultrafiltration)を施し、そして保持液を回収・保存する工程と、
7.前記保持液に、タンジェンシャルナノろ過(tangential nanofiltration)を施して残留水を除去し、そしてブドウ種子抽出物を得る工程と、任意で
8.前記抽出物を濃縮且つ噴霧乾燥して、粉末を得る工程と
を含むプロセス。
【請求項2】
工程3.の前、及び/又は、工程3.中に、ペクチナーゼ、セルラーゼ、又はアミロペクチナーゼ等の加水分解酵素による処理を行う、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
工程5.の前記タンジェンシャル精密ろ過(tangential microfiltration through)の前記ろ過生成物を、熱分解樹脂の固定相に送って、前記抽出物中に存在する可能性のある汚染物質を除去する、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセスにより得られるブドウ種子抽出物であって、
抽出物の重量換算で、5wt%以下のモノマーフラバノールと、95wt%以上のオリゴマープロシアニジンとを含む抽出物。
【請求項5】
請求項4に記載のブドウ種子抽出物と、適切な添加物とを含む栄養補助又は医薬組成物。
【請求項6】
ケルセチンと、グリシルリジン酸とを更に含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
ウイルス感染の治療に使用するための、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
緑内障の治療に使用するための、請求項8に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択された未発酵絞りかすからブドウ種子抽出物を調製するプロセス、並びにそれにより得られる抽出物、及び栄養補助及び医薬組成物におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヨーロッパブドウ(Vitis vinifera L.)の様々な品種に由来するブドウ種子から得られ、カテキン由来のポリフェノールを含む抽出物は、慢性抹消静脈不全を治療するための薬物、及び特に心血管の健康に関連するサプリメント/食品サプリメント(栄養補助食品)の両方として長い間使用されている。最後に記載の使用は、疫学的観察に関連して1990年代前半以来、大きな弾みがついている。実際、この文脈において、フランス人において見られる食事脂肪の大量摂取と比べて低い変性心血管疾患の発生率が、ブドウを処理することで得られ且つ特に赤ワイン中に存在し、カテキン及びエピカテキンに由来するポリフェノール、特にオリゴマープロシアニジンの同時摂取と関連付けられた。現在では、心血管系や視覚機能に対する有益な効果を生み出したり、また、例えばウイルス感染対策に関連する新規の用途を示したりする上でのオリゴマープロシアニジンの重要な役割を裏付ける数多くの文献データが入手可能である。
【0003】
医薬及び栄養補助分野の両方で通常使用され、既存の先行技術に従って調製されるブドウ種子抽出物は、重合度が2~10のオリゴマー型と、ポリマー型と、とりわけ、15~30%の一貫した含有率でカテキン及びエピカテキン等のモノマーフラバノールとを含む。後者の生成物は、望ましくないと考えられ、活性成分として、また単一の成分としてカテキンを含む医薬品の市場からの撤退に至った副作用の事例が知られている。溶媒の可変の混合物を用いて所定のオリゴマー画分を選択的に得るために、数多くの試みもなされてきた。例えば、米国特許第5,484,594号公報には、抽出物の1.5%を超えないモノマー含有量が報告されているが、このプロセスは、アセトン、メタノール又は他のアルコール等の有機溶媒の混合物を使用したモノマー成分の選択的抽出を伴うため、これらの抽出物を栄養補助のための使用には不適切なものにしてしまう。
【0004】
より最近の試みは、予備の水抽出、及び、それに続く吸着クロマトグラフィ樹脂での精製工程、及び水アルコール混合物による溶出を組み合わせた使用によってなされてきたが、この場合も、モノマーフラバノールの含有率が10%未満のNO抽出物が得られる(WO2016/020855A1)。
【0005】
CN106496176Aにおいて、粉末化されたプロアントシアニジンを99.5%の純度で得られたことを確認している。記載の抽出方法は、ブドウ種子を水による抽出及び/又は超音波抽出で前処理して、その前処理されたブドウ種子を抽出することで抽出物を得る工程と、抽出物を精密ろ過膜、限外ろ過膜及びナノろ過膜で順にろ過してろ液を得る工程と、高分子樹脂を使用してろ液を吸着し、そして溶出及びプロシアニジンが豊富な溶出液の回収のためにエタノールを使用する工程と、プロアントシアニジンが豊富な溶出液の遠心分離、分離及び濃縮、及び逆浸透の3つの工程による濃縮で、抽出物を得て、その抽出物を凍結乾燥法又はマイクロ波法を使用して乾燥することで、プロアントシアニジン粉末を得る工程とを含む。しかしながら、溶出及び溶出液の回収のためにエタノールが使用されていることだけではなく、この方法がむしろ長い一連の工程を必要としていることが認められ、高価且つ複雑でもあり、結局この方法を非経済的にしている。
【0006】
このため、ブドウ種子に存在するオリゴマープロシアニジンの選択的抽出のための所定数の手順の存在にもかかわらず、生物学的活性オリゴマー型の天然成分を重視した、モノマー型の含有率の低い抽出物を得るための工業的態様は未だ不満足である。また、使用する溶媒や、特に栄養補助分野に関して、同じ抽出物を関連する生成物分野で使用できなくしうる汚染物質のレベル等、抽出手順の許容性の側面も不満足であると考えざるをえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,484,594号公報
【特許文献1】国際公開第2016/020855号
【特許文献2】中国特許出願公開第106496176号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、既知の抽出プロセスの制約及び欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的は、請求項1において報告するようなブドウ種子抽出物を調製するプロセスによって実現された。
他の態様において、本発明は、そのようなプロセスによって得ることが可能なブドウ種子抽出物に関する。
更なる態様において、本発明は、そのようなブドウ種子抽出物と、適切な添加物とを含む栄養補助又は医薬組成物に関する。
【発明の効果】
【0010】
以下の詳細な説明から明らかなように、選択膜を用いたタンジェントろ過と組み合わせた浸出技術により、革新的な抽出プロセスが開発され、これにより、モノマーフラバノールの含有率が低い(5%以下)且つオリゴマープロシアニジンの含有率が高い(95%以上)抽出物を得ることが可能になる。浸出及び抽出溶媒として水のみを使用することを含むプロセスによって、国際規制を遵守した汚染物質が許容限度で、且つ、関連する生成物分野、特に栄養補助分野において使用可能な抽出物を得ることが可能になる。
本発明の特徴及び利点は、以下の詳細な説明、例示的且つ非限定の実施例により提供される実施形態、及び添付の図面から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、高いモノマー滴定量をもつ市販の抽出物(「RP」)のものと比較した、実施例1において得られるブドウ種子抽出物の高速液体クロマトグラフ法-ゲル浸透クロマトグラフィー(HPLC-GPC)プロファイルを示す。
図2図2は、プロセスの生産性を裏付ける、実施例1で6回の異なる繰り返しによるブドウ種子抽出物の、ほぼ重ねることが可能なフーリエ変換赤外分光法(FTIR)のスペクトルを示す。
図3図3A及び3Bは、マイナスイオンモードにおける液体クロマトグラフィー/エレクトロスプレーイオン化四重極・飛行時間型質量分析法(LC-Chip/ESI-QTOF-MS)により行われた分析データの量的処理により得られたものであり、それぞれ、総プロシアニジンの含有量の比較(図3A)、及び、モノマーカテキン、総プロシアニジン、カテキン、及び没食子酸でエステル化したカテキン(図3B)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
従って、本発明は、ブドウ種子抽出物を調製するプロセスであって、
1.ブドウの搾汁から得られた絞りかすを供し、前記絞りかすを機械的篩にかけて、ブドウ種子を、つるの機械的剪定により生じる茎、皮及び他の残留物から分離する工程と、
2.それにより分離された前記ブドウ種子を、8%未満の残存湿度まで乾燥する工程と、
3.前記ブドウ種子を、pH3.0~3.5で、少なくとも一時間、少なくとも80℃の温度の水に浸す工程と、
4.前記ブドウ種子から、工程3.で得られた水溶液を分離する工程と、
5.前記水溶液に、0.2ミクロン膜を介してタンジェンシャル精密ろ過(tangential microfiltration through)を施し、そしてろ過生成物を回収・保存する工程と、
6.前記ろ過生成物に、カットオフが300kDaltonのタンジェンシャル限外ろ過(tangential ultrafiltration)を施し、そして保持液を回収・保存する工程と、
7.前記保持液に、タンジェンシャルナノろ過(tangential nanofiltration)を施して残留水を除去し、そしてブドウ種子抽出物を得る工程と、任意で
8.前記抽出物を濃縮且つ噴霧乾燥して、粉末を得る工程とを含むプロセスに関する。
【0013】
特に、工程1.において、まず、本発明のプロセスにおける出発点である絞りかすを選択する。好ましくは、それは、イタリア東北部での品質保証(鮮度、プロシアニジン滴定量)のために予め選択された単一のセラーから得られる絞りかすであり、生産地(蒸留所)で搾汁し、その形態学的側面に基づき選択した直後に移送する。その後、絞りかすを機械的篩にかけて、機械的剪定により生じる茎、皮及び他の残留物を除去する。効率性を向上するために、異なる多孔性を有する2つの篩を使用してこの工程を行うのが好ましい。
【0014】
そして、工程2.において、ブドウ種子に、好ましくは70~110℃の温度で乾燥、次いで冷却を施し、残存湿度が8%未満であることを確認する。
好ましくは、その出力温度が、好ましくは30~60℃の温度、及びプロシアニジン滴定量が、好ましくは5%以上であることも確認する。
【0015】
工程3.において、ブドウ種子を、pH3.0~3.5で、少なくとも一時間、少なくとも80℃の温度の水に浸す。これは、実際の抽出工程であり、好ましくは、バッチシステム、特に内部撹拌システムをもつ浸出器により行うことができる。好ましい実施形態において、撹拌は、15分毎に1分間作動させる。
【0016】
上述のように、本発明のプロセスは、浸出及び抽出溶媒として水のみを使用することを含む。水が本発明のプロセスにおいて使用される唯一の溶媒であるため、従ってこれは、プロセスのどの工程においても他の溶媒や混合物を使用しないことを意味する。
【0017】
好ましくは、工程3.は、周囲圧力及び約90℃の水温で、約2時間行う。
所望のpHは、好ましくは、リン酸を添加することによって実現且つ維持される。
抽出収率を向上するために、工程3.の前、及び/又は、工程3.中に、超音波による再循環を使用して、加水分解酵素(例えば、ペクチナーゼ、セルラーゼ、アミロペクチナーゼ)による処理を行うことが可能である(ただし厳密に必要というわけではない)。
好ましくは、工程3.の最後に、得られた溶液を、約2mmの孔をもつグリルでろ過して排出し、更に2時間、浸出を繰り返す。最後に、2回目の抽出物の溶液を、約2mmの孔をもつグリルでろ過して排出する。
この意味において、工程3.を、二重浸出ミキサーが設けられたシステムで構成して、全体的な効率性を高めることもできる。
【0018】
工程4.において、工程3.の水抽出液をブドウ種子から分離する。
好ましくは、そのような溶液は、その後静置して、60℃未満の温度まで冷却する。
【0019】
工程5.において、水抽出液に、0.2ミクロン膜を介してタンジェンシャル精密ろ過(tangential microfiltration through)を施し、ろ過生成物を回収・保存する。
実際、タンジェンシャル精密ろ過により以下が得られる:
-保持液、すなわち、0.2ミクロン細孔を通過しない画分、及び
-ろ過生成物、すなわち、0.2ミクロン細孔を通過して回収タンクに送られる画分。
【0020】
好ましくは、保持液に、90℃の水で洗浄後透析ろ過プロセスを行い、再びタンジェンシャル精密ろ過を施す。それにより得られる更なるろ過生成物を、それ以前のろ過生成物と混ぜ、残留保持液は廃棄する。これによって最終的な収率及びプロセスの全体効率性が高まる。
【0021】
好ましい実施形態において、タンジェンシャル精密ろ過のろ過生成物を、熱分解樹脂の固定相に浸透させ、これにより、抽出物に含まれている可能性のある殺虫剤の95%超を除去する。溶出比は好ましくは、固定相の1体積に対して時間当たり5体積である。そして、樹脂は、例えば、吸着された要素を除去する120℃での水蒸気処理によって再生して、その樹脂が再び機能するようにする。これらの実施形態において、ろ過生成物はその後、55℃未満まで冷却する。
【0022】
工程6.において、ろ過生成物に、カットオフが300kDaltonのタンジェンシャル限外ろ過(tangential ultrafiltration)を施し、保持液を回収・保存する。
従って、この工程において、ろ過生成物、すなわち、膜により保持されなかった画分を廃棄し、それにより得られた保持液は、肺(lung)に保存、且つ、好ましくは、部分的にタンジェンシャル限外ろ過に通過させる。廃棄したろ過生成物は、モノマーフラバノールが非常に豊富であり、保持液は、オリゴマープロシアニジンが豊富である。
【0023】
モノマーフラバノールは、DA201E樹脂、すなわち、高疎水性ポリスチレン/ビニルベンゼン系樹脂を使用し、続いて希釈ソーダ溶液で溶出し、続いて中和のためにカチオン樹脂上に流すことによって、タンジェンシャル限外ろ過生成物から回収できる。その後、この溶液を、タンジェンシャルナノろ過(tangential nanofiltration)に続く工程において使用して、最終生成物に、可変のモノマーフラバノール(例えば、40%)及びプロシアニジン(例えば、60%)含有率を与えることが可能である。
好ましくは、保持液に、2回目の限外ろ過工程(透析ろ過)を施すことでその純度を高めるが、最終濃縮前の洗浄工程中一定の体積を維持するよう90℃の水を徐々に添加する必要がある。
【0024】
工程7.において、保持液に、タンジェンシャルナノろ過(tangential nanofiltration)を施して残留水を除去し、それによりブドウ種子抽出物を得る。
実際、タンジェンシャルナノろ過によって、無機塩等の小さい分子も除去される。水がろ過生成物として廃棄されるとともに、保持液が、本発明に係るブドウ種子抽出物を形成する。
好ましい実施形態において、タンジェンシャルナノろ過の保持液は、25℃の温度で運転される体積濃縮器に送られる。それにより得られた濃縮物を、0~2℃まで冷却し、小型のタンクに入れて冷室で保存する。
【0025】
好ましくは、保持液は、濃縮されたものでも、噴霧乾燥システムでの乾燥のために送る。
好ましい実施形態において、噴霧乾燥システムは、以下の運転条件に設定される。
-吸気温度:190℃
-出口温度:80℃
-空気との接触時間:約2秒
-保持液の対重量空気体積(Air volume by weight of retentate):約300m3/kg
それにより得られる乾燥抽出物は、室温で安定している。
【0026】
最後に、それにより得られるブドウ種子抽出物、すなわち乾燥粉末の形態のブドウ種子抽出物は、好ましくはアルミニウムを用いたポリラミネートフィルムバリアをもつ1kg形態での包装プロセスが行われる。
【0027】
好ましくは、本発明のプロセスは、本質的に上述の工程1.~8.からなる。本発明の目的のために、「本質的に~からなる」という表現は、工程1.~8.のみが、本発明のブドウ種子抽出物を得るための決定的な工程であって、他の考えうる工程が、単なる付帯的なもの及び/又は最終包装のものであることを意味する。
【0028】
他の好ましい実施形態において、本発明のプロセスは、上述の工程1.~8.からなる。
上述したような本発明のプロセスの好ましく且つ有利な態様が、本質的に工程1.~8.からなるプロセスの実施形態、並びに工程1.~8.からなるプロセスの実施形態にとっても同様に好ましく且つ有利であることは理解されるべきである。
【0029】
他の態様において、本発明は、そのようなプロセスにより得られるブドウ種子抽出物であって、その抽出物の重量換算で、5wt%以上のモノマーフラバノールと、95wt%以上のオリゴマープロシアニジンとを含む抽出物に関する。
【0030】
既に述べたように、本発明のプロセスは、溶媒として水のみを使用するため、そのようなプロセスにより得られるブドウ種子抽出物は、望まれない溶媒を全く含まないため有利である。当然、本発明のプロセスにより得られるブドウ種子抽出物は、最大でも少量の水しか含まず、有機溶媒を全く含まない。
【0031】
モノマーフラバノールの量は、高速液体クロマトグラフ法(ドライベース)により測定される。
オリゴマープロシアニジンの量は、Bate-Smith法に従って測定される。
好ましくは、前記抽出物は、カテキン等の総ポリフェノールを80wt%以上含む(方法:フォリン-チオカルトー試薬による;精度±15)。
好ましくは、前記抽出物は、高速液体クロマトグラフ法(ドライベース)による測定で、没食子酸を0.05~0.5wt%含む。
好ましくは、前記抽出物は、高速液体クロマトグラフ法(ドライベース)による測定で、モノマー(エピカテキン+カテキン)を1.0~5.0wt%含む。
【0032】
好ましくは、本発明のプロセスにより得られるブドウ種子抽出物は、
カテキンとして80%以上の総ポリフェノール-フォリン-チオカルトー試薬、
95%以上のオリゴマープロシアニジン-Bate Smith、
0.05~0.5%の没食子酸-高速液体クロマトグラフ法(ドライベース)、
1.0~5.0%のモノマー(エピカテキン+カテキン)-高速液体クロマトグラフ法(ドライベース)、及び
1.0~5.0%のダイマー(プロシアニジンB1+プロシアニジンB2)-高速液体クロマトグラフ法(ドライベース)
を特徴とする。
【0033】
以下の実施例から分かるように、本発明のブドウ種子抽出物は、有利には、高い抗酸化能を有して、上述の調製プロセスの利便性を更に裏付ける。実際、そのような高い抗酸化能によって、本発明のプロセスが、これらの特性を変えることなく逆にそれらを高めることを確認される。
【0034】
更なる態様において、本発明は、そのようなブドウ種子抽出物と、適切な添加物とを含む栄養補助又は医薬組成物に関する。
「添加物」という用語は、栄養補助又は製剤処方において使用するのに適した化合物又は各混合物を意味する。例えば、製剤処方において使用される添加物は、概して、対象において副作用を生じてはならず、また活性成分の有効性を著しく阻害してはならない。
【0035】
適切な添加物は、酸性化剤、酸性中和剤、アンチケーキング剤、酸化防止剤、添加剤、防止剤、ゲル化剤、艶出し剤、加工デンプン、金属イオン封鎖剤、増粘剤、甘味料、希釈剤、溶媒、崩壊剤、スリップ剤、染料、結合剤、潤滑剤、安定剤、吸収剤、保存料、湿潤剤、香味料、塗膜形成物質、乳化剤、湿潤剤、放出遅延剤、及びそれらの混合物である。
【0036】
好ましくは、上述の添加物は、デンプン、加工デンプン、セルロース、変性セルロース、微結晶性セルロース、カルボキシルメチル・セルロース・ナトリウム、ペクチン、トラガカント、マンニトール、第二リン酸カルシウム、キサンタンガム、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、グアーガム、マルトデキストリン、二酸化ケイ素、又はそれらの混合物である。
【0037】
本発明の組成物は、当該技術分野で既知のプロセスによって調製できる。実際、経口投与の場合、その成分を、例えば1種以上の添加物と混合し、ソフトゲルカプセル、タブレット、ミニタブレット、マイクロタブレット、顆粒、微粒、ペレット、多粒子、微粒化粒子、粉末、溶液、懸濁剤、分散剤、乳剤、ゲル、点滴剤又はエアロゾルの形態に封入することができる。
【0038】
幾つかの実施形態において、本発明の組成物は、ビルベリー抽出物等の少なくとも1種の他の植物抽出物を更に含むことができる。
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、ケルセチン、グリシルリジン酸、アスタキサンチン、及びそれらの混合物から選択される少なくとも1種の活性成分を更に含む。
本発明の目的のために、「更に含む」という表現は、ブドウ種子抽出物中にそれが存在しているかどうかにかかわらず、組成物に、成分が更に追加されることを意味する。
【0039】
本発明の組成物は、単位投与剤型のものとできる。
好ましくは、その単位投与剤は、本発明のブドウ種子抽出物を20~200mg含む。
好ましくは、その単位投与剤は、ケルセチンを20~200mg含む。
好ましくは、その単位投与剤は、グリシルリジン酸を1~100mg含む。
好ましくは、その単位投与剤は、アスタキサンチンを0.1~20mg含む。
【0040】
好ましい実施形態において、単位投与剤であっても、本発明の組成物は、本発明のブドウ種子抽出物と、ケルセチンと、グリシルリジン酸とを含む。これらの実施形態は、ウイルス感染の治療において有利な適用を見出す。
【0041】
「治療」という用語は、感染性疾患を患っているヒト及び動物両方の患者に対して、例えば患者の症状の改善や病気の進行の遅延といった利益を付与することが可能な本発明の組成物の効果を指す。そのような組成物は、感染に対して予防及び治療効果も有することができる。本文献において、「感染」という用語又はその同義語である「感染性疾患」は、他の宿主生物内部又は上における微生物の侵襲、定着及び/又は増殖を意味する。「感染」という用語は、ウイルス、特に呼吸器ウイルスにより生じる感染性疾患を指す。本発明の目的のために、ウイルスは、好ましくは、呼吸器合胞体ウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、メタ肺炎ウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、及びコロナウイルスから選択される。
【0042】
コロナウイルス及びインフルエンザウイルスはいずれも、脂質二重層に基づく外被(宿主細胞の細胞膜系由来)によって構造的に特徴付けられる。脂質二重層はまた、外方に突出し、多くの場合各宿主細胞の高い応答認識、それに伴う物理的相互作用、宿主細胞へのそのウイルスのその後の付着及び侵襲の原因となる糖タンパク質を含む。これらのタンパク質の例としては、インフルエンザウイルスからの血球凝集素、及びコロナウイルスからのSタンパク質がある。飛沫感染を介したそのようなウイルスの証明された重要なエントリーポイントは鼻咽頭領域であり、それによりウイルスは、宿主上皮細胞のその後の定着に関して区別され、それは、インフルエンザウイルスの場合は気管支部分であり、SARS-Cov-2の場合は鼻咽頭領域である。
【0043】
これに基づき、COVID-19パンデミックに対する効果的な戦略として、ウイルス粒子の侵入に対して、鼻腔領域、口腔及び咽を保護することを考慮することを想定しうる。このアプローチは、感染の早期におけるウイルス複製を抑制する能力によって補強すべきでもある。
【0044】
この文脈において、数多くの植物が、鼻咽頭領域を介したウイルスの感染及び伝播の初期段階に対抗する特定の目的のために指摘されている興味深い生物学的特性を授けられていることが最近示されている。この意味において、いかなる理論にも拘束されることを望むわけではないが、上述の好ましい実施形態のブドウ種子プロシアニジン、ケルセチン及びグリシルリジン酸の組み合わせが、感染を抑制する有効な戦略を表す、宿主細胞へのウイルス侵入の阻害並びに鼻咽頭領域における感染の初期段階におけるウイルス複製を阻害する能力に寄与していると考えられる。
【0045】
これらの実施形態の組成物は、持続放出経口タブレットや、更には鼻腔/口腔スプレーの形態のものとできる。用量は、侵入及びウイルス複製の両方に対して報告されているインビトロでの抑制性があった濃度に基づき、鼻咽頭腔の粘膜で覆われている面積を考慮して計算することができ、体積100mLを超えないものにできる。
他の好ましい実施形態において、単位投与剤であっても、本発明の組成物は、本発明のブドウ種子抽出物と、ビルベリー抽出物、アスタキサンチン又は両方とを含む。
【0046】
これらの実施形態は、緑内障の治療において有利な適用を見出す。
【0047】
緑内障は現在、世界中で失明の主な原因の一つである。緑内障の最も一般的な種類である開放隅角緑内障(OAG)は、視神経乳頭の陥凹の増大に対応する視神経視野の変化と組み合わせられた視神経頭(ONH)及び視神経線維層(RNFL)の欠損の進行が遅いリモデリングによって特徴付けられる。原発開放隅角緑内障は、眼圧が21mmHgより高い高眼圧開放隅角緑内障(POAG)と、眼圧が正常範囲内(21mmHgより低い)である正常眼圧緑内障(NTG)とに分類される。
【0048】
開放隅角緑内障は、病因が不明の多因子視神経症であり、上昇した眼圧が疾患の最も重要な危険因子であるが、高眼圧症を緑内障の視神経症及びそれに伴う視野欠損と結びつける正確な経路は未だ解明されていない。眼圧は、臨床治療可能であり容易に測定できることから最も研究されている危険因子でもある。正常眼圧緑内障患者において測定される眼圧以外の機序も、緑内障の損傷に寄与しうる。
【0049】
高眼圧開放隅角緑内障の原因として想定される2つの考えうる機序がある。
・視神経頭において局所貧血を生じる血管機能不全-血液供給の慢性障害も、高齢、全身性血管疾患、近視等の他の危険因子と関連付けられる。最も関連する病因の一つであることに加えて、血管機能不全は、神経組織の損傷に寄与する付随的現象でもある。その結果、血管機能不全の調節、特に眼血流を改善することは、緑内障に対する第二の治療選択肢になってきている。
・軸索の圧迫を生じる機械的機能障害。
【0050】
現在、信用できる一連の証拠が、特に加齢プロセス中に一般的な血管機能不全が主に血管構造の変化及び内皮機能不全によるものであるという考えを裏付けている。
後者は、一酸化窒素及びエンドセリン-1の産生及び放出におけるバランスに高く依存している。
【0051】
これに基づき、いかなる理論にも拘束されることを望むわけではないが、本発明の上述の実施形態に存在するアントシアニサイド及びプロシアニジン等の幾つかの植物誘導体が、阻害され上昇した血流力学的眼圧の軽減を結果として伴う、内皮機能不全及び血管構造の変化の軽減に寄与していると考えられる。
【0052】
特に、アントシアニサイドが、毛様体血管の過透過性を調節し、ブドウ種子抽出物のプロシアニジンが同時に、内皮機能及び血行動態を改善する。これらの組み合わせられた効果が、毛様体の毛細血管のろ過作用の正常化に収束し且つアスタキサンチンの作用と平行して、眼圧の低下及び関連する損傷において共に作用しうる。
【0053】
先に指摘したようなプロセスの工程、抽出物、組成物及び関連する使用の好ましい態様の全ての可能な組み合わせもまた、説明され、従って同様に好ましいものであることは理解すべきである。
また、プロセス及び抽出物において好ましく且つ有利であるとして特定した全ての態様も、組成物及びその活性化合物及びその使用において同様に好ましく且つ有利であると考えられることは理解すべきである。
【実施例
【0054】
以下は、例示目的で提供する本発明の実施例である。
【0055】
実施例1.
本発明に係るブドウ種子抽出物の調製
イタリア東北部での品質保証(鮮度、プロシアニジン滴定量)のために予め選択された単一のセラーから得られた絞りかすを、生産地(蒸留所)で搾汁し、その形態学的側面に基づき選択した直後に移送する。その後、絞りかすを異なる直径の細孔をもつ2つの篩を用いてふるいにかけて、機械的剪定により生じる茎、皮及び他の残留物を除去する。そして、40℃でのその出口温度、残存湿度(8%未満)及びプロシアニジン滴定量(5%以上)を制御しながら、ブドウ種子に乾燥(70~110℃)、そして冷却を施す。
【0056】
【表1】
【0057】
抽出を、バッチシステムにより行う。
選択した乾燥ブドウ種子を800kg取り出し、最初の3,200リットルをリン酸で酸性化した(pH3.0~3.5まで)90/95℃の脱塩した熱水として、約5,000リットルの抽出ミキサーに入れる。抽出器に、熱水を供給できるジャケットと、プログラム式に作動させることができる内部攪拌器とを設ける。現在の状態で、混合を、15分毎に1分間作動させる。抽出収率を向上させるために、抽出プロセスを開始する前に加水分解酵素(ペクチナーゼ、セルラーゼ、アミロペクチナーゼ)による工程を導入すること、及び/又は、実際の抽出プロセス中に超音波による再循環システムを使用することも可能である(しかし必須ではない)。
【0058】
2時間の抽出の最後に、得られた溶液を、約2mmの多孔性をもつグリルでろ過して排出し、更に2時間、リン酸で酸性化した(pHを3.0~3.5に維持する)3,000リットルの90℃の脱塩水を用いて第二の抽出を行い、その最後に、第二の抽出物の溶液を、約2mmの孔をもつグリルでろ過して排出する。
上述の抽出プロセスは、二重浸出ミキサーが設けられたシステムで構成して、プロセス自体の効率性を向上することもできる。
【0059】
抽出された種子は、約500リットルの水の除去と共に廃棄し、60℃未満に冷却した後の2つの抽出溶液を、0.2ミクロン膜を介してタンジェンシャル精密ろ過(tangential microfiltration through)システムに送り、ここから2つの画分が得られる:
・保持液、すなわち、0.2ミクロン細孔を通過しないもの、約200リットル、400リットルの90℃の脱塩水で洗浄後、透析ろ過プロセスを施し(再び精密ろ過を施す)、得られる更なるろ過生成物をそれ以前のろ過生成物と混ぜ、保持液の残渣は廃棄する。
・ろ過生成物、すなわち、0.2ミクロン細孔を通過するもの、約5,900リットル、回収タンクに送られる。
【0060】
タンジェンシャル精密ろ過のろ過生成物は、熱分解樹脂の固定相に送られて、抽出物に含まれている可能性のある殺虫剤を含む汚染物質の95%超を除去する。溶出比は、樹脂の1体積に対して時間当たり5体積である。そして、樹脂は、その樹脂に吸着された汚染物質を除去する120℃での水蒸気処理によって再生して、その樹脂が再び機能するようにする。
【0061】
熱分解樹脂で処理した溶液は、その後、55℃未満まで冷却し、カットオフが300kDaltonのタンジェンシャル限外ろ過(tangential ultrafiltration)システムに送る。ろ過生成物(膜を通過するもの)を廃棄し、それにより得られた保持液は、肺(lung)に保存、且つ、部分的にタンジェンシャル限外ろ過に再び通過させる。
【0062】
モノマーフラバノールが豊富な限外ろ過生成物は、DA201E樹脂を使用し、続いて希釈ソーダ溶液で溶出し、続いて中和のためにカチオン樹脂上に流すことによって回収できる。その後、この溶液を以下のナノろ過工程で使用して、モノマーフラバノール(例えば、40%)及びプロシアニジン(例えば、60%)含有率が可変の最終生成物を生じさせることが可能である。
【0063】
この限外ろ過工程の終わりに、約1,100リットルの保持液が得られ、これに第二の限外ろ過工程(透析ろ過)を施すことでその純度を高めるが、限外ろ過で保持液が濃縮される間タンクに90℃の熱水を2,000L徐々に追加して、それを一定の体積に常に維持する必要があり、2,000リットルの水が廃棄されるまでその作業を続ける。
そして、限外ろ過保持液に、ナノろ過を施して、水及び無機塩等の小さい分子を除去し、且つ、水の量を減らすことによりポリフェノールの純度を高める。水をろ過生成物として廃棄すると共に、保持液としての生成物、約300リットルを次の工程に移す。
【0064】
ナノろ過の保持液を、25℃の温度で運転される体積濃縮器に送る。その濃縮器が、約90~100リットルの濃縮物を生成する。濃縮物を、0~2℃まで冷却し、小型のタンクに入れて冷室で保存する。
濃縮された液体生成物を、以下の運転条件で動作する噴霧乾燥システムでの乾燥のために送る:
-吸気温度:190℃
-出口温度:80℃
-空気生成物接触時間:約2秒
-対生成物重量空気体積(Air volume by product weight):約300m3/kg
最後に、アルミニウムを用いたポリラミネートフィルムバリアをもつ1kg形態での包装プロセスが続く。この最後の工程から、期待されるポリフェノールプロファイルをもつオレンジ色~薄茶色の乾燥ブドウ種子抽出物が約30~35kg得られ、表1に報告する。
【0065】
【表2】
【0066】
それにより得られる生成物は、室温で安定している。
【0067】
抽出物の特化:
上述のように得られた抽出物を、以下の分析技術:高速液体クロマトグラフ法-ゲル浸透クロマトグラフィー(図1)、フーリエ変換赤外線分光法(図2)及び質量分析(図3)により特性化した。
そのような分析の結果を、モノマー、を5~15%と、オリゴマープロシアニジンを85%以上と含む参照用の市販のブドウ種子抽出物(簡潔に「RP」)と比較した。
特に図3から観察できるように、実施例1から得られた抽出物は、約99%のプロシアニジンの割合を示し、モノマーカテキンの割合は約1%であった。
【0068】
実施例2.
抗酸化能の評価
DPPH試験
DPPH試験によって、分析対象の試料をDPPH[2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル、PM 394.33、C18H72N5O6]の溶液と反応させることにより抗酸化力を判定し、且つ、紫外線吸光光度法でのDPPHラジカルの517でのピークにおける低下を分析できる。水素原子をラジカルに移動させることが可能な抗酸化化合物によって、溶液の吸光度の損失が生じる。そして、所定の培養時間後に、分光測色法によって、517nmにおけるDPPHラジカルピークの低下を分析する。この低下(変色)は、試料中に存在する抗酸化物質の負荷に比例する。結果はまた、IC50、すなわち、DPPHにおける最初の50%の低下を生じさせる抗酸化化合物の濃度で表すことができる。
実施例1に記載のプロセスに従って得られたこれらの試料を試験し、相対結果を以下の表に報告する:
【0069】
【表3】
【0070】
ORAC試験
ORAC法(酸素ラジカル吸収能)は、ペルオキシルラジカルに対するラジカル捕捉能を判定するための最も一般的な方法の一つである。本試験の原理は、アゾ化合物の熱分解により発生する一定流量のペルオキシルラジカル下での蛍光標的分子(例えばフルオレセイン)の蛍光強度における低下の測定に基づく。結果は、この化合物を参照基準として使用したトロロックス(登録商標)ミクロモル当量として表される。
実施例1に記載のプロセスに従って得られたこれらの試料を試験し、相対結果を以下の表に報告する:
【0071】
【表4】
【0072】
実施例3.
以下の活性成分を含む以下の組成物を単位投与剤型で調製した:
【0073】
【表5】
【0074】
及び適切な添加物。
この組成物は、ウイルス性疾患、特に気道の治療に使用できる。
【0075】
実施例4.
以下の活性成分を含む以下の組成物を、単位投与剤型で調製した:
【0076】
【表6】
【0077】
及び適切な添加物。
この組成物は、眼疾患、特に緑内障の治療に使用できる。
【0078】
実施例5
以下の活性成分を含む以下の組成物を、単位投与剤型で調製した:
【0079】
【表7】
【0080】
及び適切な添加物。
この組成物は、眼疾患、特に緑内障の治療に使用できる。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-01-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブドウ種子抽出物を調製するプロセスであって、
1.ブドウの搾汁から得られた絞りかすを供し、前記絞りかすを機械的篩にかけて、ブドウ種子を、つるの機械的剪定により生じる茎、皮及び他の残留物から分離する工程と、
2.それにより分離された前記ブドウ種子を、8%未満の残存湿度まで乾燥する工程と、
3.前記ブドウ種子を、pH3.0~3.5で、少なくとも一時間、なくとも80℃の温度の水に浸す工程と、
4.前記ブドウ種子から、工程3.で得られた水溶液を分離する工程と、
5.前記水溶液に、0.2ミクロン膜を介してタンジェンシャル精密ろ過(tangential microfiltration through)を施し、そしてろ過生成物を回収・保存する工程と、
6.前記ろ過生成物に、カットオフが300kDaltonのタンジェンシャル限外ろ過(tangential ultrafiltration)を施し、そして保持液を回収・保存する工程と、
7.前記保持液に、タンジェンシャルナノろ過(tangential nanofiltration)を施して残留水を除去し、そしてブドウ種子抽出物を得る工程と、任意で
8.前記抽出物を濃縮及び噴霧乾燥して、粉末を得る工程と
を含むプロセス。
【請求項2】
工程3.の前、及び/又は、工程3.中に、ペクチナーゼ、セルラーゼ、又はアミロペクチナーゼ等の加水分解酵素による処理を行う、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
工程5.の前記タンジェンシャル精密ろ過(tangential microfiltration through)の前記ろ過生成物を、熱分解樹脂の固定相に送って、前記抽出物中に存在する可能性のある汚染物質を除去する、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセスにより得られるブドウ種子抽出物であって、有機溶媒を含まず、且つ、前記抽出物の重量換算で、5wt%以下のモノマーフラバノールと、95wt%以上のオリゴマープロシアニジンとを含む抽出物において、
総ポリフェノールの80%以上をカテキンとし(方法:フォリン-チオカルトー試薬による;精度±15)、
95%以上のオリゴマープロシアニジン(方法:Bate Smith)、
0.05~0.5%の没食子酸(方法:ドライベースで高速液体クロマトグラフ法)、
1.0~5.0%のモノマー(エピカテキン+カテキン)(方法:ドライベースで高速液体クロマトグラフ法)、及び
1.0~5.0%のダイマー(プロシアニジンB1+プロシアニジンB2)(方法:ドライベースで高速液体クロマトグラフ法)
を特徴とする抽出物
【請求項5】
請求項4に記載のブドウ種子抽出物と、適切な添加物と含む栄養補助又は医薬組成物。
【請求項6】
ケルセチンと、グリシルリジン酸とを更に含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
ウイルス感染の治療に使用するための、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
ビルベリー抽出物、アスタキサンチン、又は両方を更に含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
緑内障の治療に使用するための、請求項8に記載の組成物。
【誤訳訂正書】
【提出日】2024-01-24
【誤訳訂正1】
【訂正対象書類名】特許請求の範囲
【訂正対象項目名】全文
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブドウ種子抽出物を調製するプロセスであって、
1.ブドウの搾汁から得られた絞りかすを供し、前記絞りかすを機械的篩にかけて、ブドウ種子を、つるの機械的剪定により生じる茎、皮及び他の残留物から分離する工程と、
2.それにより分離された前記ブドウ種子を、8%未満の残存湿度まで乾燥する工程と、
3.前記ブドウ種子を、pH3.0~3.5で、少なくとも一時間、少なくとも80℃の温度の水に浸す工程と、
4.前記ブドウ種子から、工程3.で得られた水溶液を分離する工程と、
5.前記水溶液に、0.2ミクロン膜を介してタンジェンシャル精密ろ過(tangential microfiltration through)を施し、そしてろ過生成物を回収・保存する工程と、
6.前記ろ過生成物に、カットオフが300kDaltonのタンジェンシャル限外ろ過(tangential ultrafiltration)を施し、そして保持液を回収・保存する工程と、
7.前記保持液に、タンジェンシャルナノろ過(tangential nanofiltration)を施して残留水を除去し、そしてブドウ種子抽出物を得る工程と、任意で
8.前記抽出物を濃縮且つ噴霧乾燥して、粉末を得る工程と
を含むプロセス。
【請求項2】
工程3.の前、及び/又は、工程3.中に、ペクチナーゼ、セルラーゼ、又はアミロペクチナーゼ等の加水分解酵素による処理を行う、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
工程5.の前記タンジェンシャル精密ろ過(tangential microfiltration through)の前記ろ過生成物を、熱分解樹脂の固定相に送って、前記抽出物中に存在する可能性のある汚染物質を除去する、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセスにより得られるブドウ種子抽出物であって、
抽出物の重量換算で、5wt%以下のモノマーフラバノールと、95wt%以上のオリゴマープロシアニジンとを含む抽出物。
【請求項5】
請求項4に記載のブドウ種子抽出物と、適切な添加物とを含む栄養補助又は医薬組成物。
【請求項6】
ケルセチンと、グリシルリジン酸とを更に含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
ウイルス感染の治療に使用するための、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
ビルベリー抽出物、アスタキサンチン、又は両方を更に含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
緑内障の治療に使用するための、請求項8に記載の組成物。
【国際調査報告】