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特表2024-507068酸化物の直接製造のためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-16
(54)【発明の名称】酸化物の直接製造のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 21/04 20060101AFI20240208BHJP
   C22B 13/00 20060101ALI20240208BHJP
   C25C 1/18 20060101ALI20240208BHJP
   C25C 7/08 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
C01G21/04
C22B13/00 101
C25C1/18
C25C7/08
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023544194
(86)(22)【出願日】2022-01-21
(85)【翻訳文提出日】2023-09-20
(86)【国際出願番号】 US2022013296
(87)【国際公開番号】W WO2022159689
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】63/140,562
(32)【優先日】2021-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517394094
【氏名又は名称】アクア メタルズ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】AQUA METALS INC.
【住所又は居所原語表記】5370 Kietzke Ln #201,Reno,NV 89511 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100109634
【弁理士】
【氏名又は名称】舛谷 威志
(74)【代理人】
【識別番号】100129263
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 洋之
(72)【発明者】
【氏名】ドハティー,ブライアン ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】モハンタ,サマレシュ
(72)【発明者】
【氏名】テッカー,ベンジャミン ソル
(72)【発明者】
【氏名】レーガン,デイビット
【テーマコード(参考)】
4K001
4K058
【Fターム(参考)】
4K001AA20
4K001BA24
4K058BB02
(57)【要約】
【課題】
改良された酸化鉛製造のための組成物及び方法、特に、酸化鉛製造設備及び酸化鉛製造のための簡略化され、及びよりコスト効果的な原料を提供する。
【解決手段】
ボールミル又はバートンポット型プロセスで酸化鉛粒子が、連続的に金属鉛を生成する電解プロセスで形成される鉛生成物から製造される。該鉛生成物は電解質プロセスから直接得られる鉛フレーク、スポンジ状鉛、又はナノ及び/又はマイクロ結晶鉛マトリックスの形態であってよく、所望により洗浄され、及びボールミル又はバートンポット型プロセスに供給される前に、圧縮されてよい。注目すべきは、このようにして製造される酸化鉛粒子は、ボールミル又はバートンポットのための原料を製造する該電解プロセスからの残留水性溶液の存在にも拘わらず、所望の純度及びサイズ分布を有する。
【選択図】無し
【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜酸化鉛を製造する方法であって、
電解反応容器のカソードで金属鉛を水性鉛イオン含有電解質から作る工程、ここで該金属鉛は鉛フレーク、スポンジ状鉛、又はナノ及び/又はマイクロ結晶状鉛マトリクスの形態で形成され、及び該金属鉛は該水性鉛イオン含有電解質のいくらかを含む、工程;
該電解反応容器から該金属鉛を採集し、及び該金属鉛から該水性電解質の一部を除去して鉛原料を形成する工程;
該鉛原料を酸化装置に供給し、及び粒子形態の亜酸化鉛を形成する条件下で該酸化装置を作動させる工程、ここで該鉛亜酸化物は、鉛酸畜電池活性物質として使用するのに適したサイズ及び組成を有する複数の酸化鉛粒子及び複数の金属鉛粒子を含む、工程;及び
該酸化装置から該亜酸化鉛の少なくともいくらかを除去する工程;
を含む方法。
【請求項2】
該カソードの他の部分で該鉛イオン含有電解質から追加の金属鉛が形成される間に該金属鉛は該カソードの一部から除去される請求項1の方法。
【請求項3】
該カソードが該鉛イオン含有電解質に対して動く請求項1の方法。
【請求項4】
該水性電解質の該一部が該水性電解質を水で置換することによって、該金属鉛から除去される請求項1の方法。
【請求項5】
該水性電解質の該一部が該金属鉛を圧縮することによって、該金属鉛から除去される請求項1の方法。
【請求項6】
該酸化装置がボールミルである先行請求項のいずれか一項の方法。
【請求項7】
該酸化装置がバートンポットである請求項1~5のいずれか一項の方法。
【請求項8】
該亜酸化鉛が20~40%の金属鉛粒子及び60~80%の酸化鉛粒子を含む請求項1~5のいずれか一項の方法。
【請求項9】
該複数の金属鉛粒子及び該酸化鉛粒子が約0.1~10ミクロンの平均粒子サイズを有する請求項1~5のいずれか一項の方法。
【請求項10】
亜酸化鉛を製造する方法であって、
電解反応容器のカソードで金属鉛を水性鉛イオン含有電解質から作る工程であって、ここで該金属鉛が鉛フレーク、スポンジ状鉛、又はナノ及び/又はマイクロ結晶鉛マトリックスの形態で生成され、及び、該金属鉛は水性鉛イオン含有電解質のいくらかを含む、工程;
該水性電解質の一部を該金属鉛から除去し、それによってボールミルのための鉛原料を形成する工程;
該鉛原料を該ボールミルに供給し、及び該ボールミルを、亜酸化鉛を形成する温度及び時間で作動させる工程であって、ここで該亜酸化鉛は複数の酸化鉛粒子及び複数の金属鉛粒子を含む、工程;及び
亜酸化鉛の少なくともいくらかをボールミルから除去する工程;
を含む方法。
【請求項11】
該カソードが該電解質に対して動き及び/又は該電解質が該カソードに対して動かされ、及び、該カソードの動き又は該電解質の動きの間に該金属鉛が該カソードから除去される請求項10の方法。
【請求項12】
該金属鉛から該水性電解質の該一部を除去する工程が該金属鉛を水で洗う工程及び/又は該金属鉛を圧縮する工程を含む請求項10の方法。
【請求項13】
該水性鉛イオン含有電解質が有機酸及び/又は無機塩を含む酸性電解質である請求項10の方法。
【請求項14】
該ボールミルが作動されて、20~40%の金属鉛粒子及び60~80%の酸化鉛粒子を含む組成物を生成する請求項10の方法。
【請求項15】
ボールミルの工程が、平均粒子サイズが約0.1~10ミクロンの複数の鉛及び酸化鉛粒子を含む組成物を生成する請求項10の方法。
【請求項16】
該鉛原料がボールミルに供給されるとき残留電解質又は洗浄工程からの水を含む、先行請求項のいずれか一項の方法。
【請求項17】
亜酸化鉛を製造する方法であって、
電解反応容器のカソードで金属鉛を水性鉛イオン含有電解質から作る工程、ここで該金属鉛は鉛フレーク、スポンジ状鉛、又はナノ及び/又はマイクロ結晶状鉛マトリクスの形態で形成され、及び該金属鉛は該水性鉛イオン含有電解質のいくらかを含む、工程;
該金属鉛から該水性電解質の少なくとも一部を除去して、それによってボールミルのための鉛原料を形成する工程;
該鉛原料を溶融して液体鉛原料を形成する工程;
該液体鉛原料の少なくとも一部をバートンポットプロセスで酸化して亜酸化鉛を形成する工程であって、ここで該亜酸化鉛は複数の酸化鉛粒子及び複数の金属鉛粒子を含む、工程;及び
該バートンポットプロセスから該酸化鉛粒子の少なくともいくらかを除去する工程;
を含む方法。
【請求項18】
該カソードが該電解質に対して動き、及び/又は該電解質が該カソードに対して動かされ、及び該カソードの動き又は該電解質の動きの間、該金属鉛が該カソードから除去される請求項17の方法。
【請求項19】
該金属鉛から水性電解質の少なくとも一部を除去する工程が該金属鉛を水で洗う工程及び/又は該金属鉛を圧縮する工程を含む請求項17の方法。
【請求項20】
該水性鉛イオン含有電解質が有機酸又は無機塩を含む酸性電解質である請求項17の方法。
【請求項21】
該ボールミルが、20~40%の金属鉛粒子及び60~80%の酸化鉛粒子を含む組成物を生成するために作動される請求項17の方法。
【請求項22】
ボールミルの工程が、平均粒子サイズが約0.1~10ミクロンの複数の鉛及び酸化鉛粒子を含む組成物を生成する請求項17の方法。
【請求項23】
該鉛原料が該水性溶液を0.5~5重量%で含む請求項17の方法。
【請求項24】
該液体鉛原料が少なくとも華氏650度の温度を有する、請求項17の方法。
【請求項25】
請求項1~24のいずれか一項の方法で製造される亜酸化鉛。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、我々の係属する2021年1月22日出願の米国仮出願第63/140,562に基づく優先権を主張し、該仮出願は引用によりここに組み込まれる。
【0002】
本発明の分野は、鉛蓄電池に使用するための鉛酸化物の製造であり、及び特に、マイクロ又はナノ多孔性混合マトリックス中の高純度鉛からの鉛酸化物の製造のためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景記述は、本発明を理解する上で有用であり得る情報を含む。ここに提供される情報のいずれも先行技術である、もしくは現在請求されている発明に関連する、又は具体的にもしくは暗黙的に参照される任意の刊行物が先行技術である、と認めるものでは無い。
【0004】
明細書中の全ての刊行物及び特許出願は、各刊行物もしくは特許出願が特定的に及び個々に引用により包含される旨が示されているかのような程度で、引用により包含される。包含される参照文献中の文言の定義もしくは使用法が、ここで提供される文言の定義と不整合もしくは反する場合には、ここで提供される文言の定義が適用され、そして該参照文献中の該文言の定義は適用されない。
【0005】
鉛酸畜電池を製造する典型的な製造プロセスでは、酸化鉛を含有する電池ペーストが活性物質の形成のための鉛グリッドに施与される。注目すべきは、酸化鉛形成の概念的に簡単なプロセスにも拘わらず、酸化鉛の商業規模での製造にはたった2つの方法が現在採用されている。例えば英国特許GB1,072,923に記載されているように、研削ミル(例えばボールミル)を用いる固体形態の金属鉛の酸化で、新たに形成された酸化鉛が金属鉛原料材料から取り外され、強制的空気流によって分離される。鉛の酸化は発熱反応であるので、決められた生成物仕様を得るため及び鉛原料の溶融を避けるためにはミルの温度が厳しく管理されなければならない。加えて、多くの他の動作パラメータ、例えば原料粒子サイズ、負荷比率、振幅/回転速度等が、生成物組成に顕著に影響を及ぼすので、厳密に監視/制御されなければならない。最も典型的には、そのようにして製造された酸化鉛は通常60~65重量%のα-PbOを含み、残りは未反応金属鉛である。
【0006】
酸化鉛(化学式2PbO.Pbを有する、亜酸化鉛又は灰色酸化鉛としても知られている)を製造する殆どのボールミルは、鉛精錬操作から得られた鉛インゴッドを溶融する鉛溶融炉を備える前端を含む。溶融された鉛は、次いで、典型的には円筒形、半球形又は球形の幾何学的形状を有するより小さな物体に鋳造された後、ボールミルに供される。他のプラントでは、前段の鋳造操作からのより大きい鉛インゴッドがボールミルに供される前に、より小さいサイズへと切断され得る。容易に理解されるように、このような前処理はエネルギーと時間を消費し、しばしば追加の望ましくない排出物を生成する。
【0007】
或いは、金属鉛はバートンポット法として知られるプロセスで、液形態でも酸化されることができる。ここでは、最初に高純度鉛が別容器中で溶融され、次いで、反応ポットへとポンプで運ばれる。溶融された鉛は、強制空気流下で急速に攪拌され、攪拌により形成された鉛滴が部分的に酸化されて酸化鉛(PbO)となり、それが空気流により捕集システムへと運ばれる。そのようにして製造された酸化鉛は主として正方晶(α-PbO)と斜方晶酸化鉛(β-PbO)、及びいくらかの未反応金属鉛の混合物である。処理パラメータを変えることによって、酸化鉛の比率を、典型的には65~80重量%で変わるように調整することができる。
【0008】
例えば、米国特許US3,322,496及びUS3,244,563は、バートンポットプロセスを教示し、そこでは溶融鉛が強制空気流の存在下で隔壁に対して攪拌されて酸化鉛が製造され、それがポットの頂部スペースから取り除かれる。そのようなプロセスはボールミルプロセスに付随する少なくともいくつかの課題を克服するが、種々の困難性が残存する。とりわけ、酸化鉛の全体的生産率が典型的にはボールミルプロセスよりも低く、及びかなりの量のエネルギーを要する。さらに、所望の生成物仕様を維持するために、温度制御が未だに重要である。米国出願US2019/0217390に記載されるように、従来のバートンポットプロセスに付随する少なくともいくつかの問題を回避するために、連続製造反応容器を採用することができ、そこでは溶融鉛の層流又は霧化スプレーが加熱反応部で酸化される。
【0009】
酸化方法によらず、プロセスへの原料材料は、通常、99.9%より高い純度の、高純度の鉛原料であることが要求されることが理解されなければならない。原料は種々の成分、例えばカルシウム(米国出願US2006/0039852に記載される)、又はマグネシウム及び所望により銀(米国特許US6,664,003及び国際公開WO02/071511に記載される)により修飾することができるが、機能性添加物を除く鉛原料の純度は所望の収率で酸化鉛を得るためには大変重要であると広く解されている。さらに、双方のプロセスにおける温度変化は生成物の品質及び組成に致命的であり、及び温度変化をもたらし得る原料の不純物は大抵の場合、仕様外の生成物へとつながる。結果的に、殆どのバートンポットプロセスは原料として高純度鉛インゴットを要し、従ってコスト及び必要エネルギーを増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、酸化鉛製造の種々のシステム及び方法が当技術分野で知られているが、それら全て又は殆ど全てがいくつかの欠点を有する。従って、改良された酸化鉛製造のための組成物及び方法、特に、酸化鉛製造設備及び酸化鉛製造のための簡略化され、及びよりコスト効果的な原料の提供に関するものの必要性が未だに残っている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の概要
発明の主題は、高純度鉛インゴット等の高純度鉛原料以外の原料からの酸化鉛粒子の製造の種々のシステム及び方法に向けられる。そのために、本発明者らは、酸化鉛粒子を、電気化学的に製造された鉛フレーク、スポンジ状鉛、及び/又はナノ及び/又はマイクロ結晶の鉛マトリックスから、溶融及びインゴット化する必要なしに、所望の純度及びサイズ分布で一貫して直接製造することができることを予想外に発見した。有利なことに、本明細書で企図されるプロセスは、エネルギー消費および時間を大幅に節約するが、それは鉛製造電解槽のアウトプットをボールミル又はバートンポット型の酸化プロセスのインプットとして、直接使用すること(典型的には固形燃料(ブリケット)へと圧縮した後)ができるからである。
【0012】
本発明の主題の一態様では、本発明者らは、電解反応容器のカソードで水性鉛含有電解質から金属鉛を製造する工程を含み、該金属鉛は鉛フレーク、スポンジ状鉛、又はナノ及び/又はマイクロ結晶鉛マトリックスの形態で形成され、及び、該金属鉛はいくらかの水性鉛イオン含有電解質を含む、亜酸化鉛の製造方法を企図する。このような方法は、金属鉛を電解反応容器から採集し、及び該金属鉛から水性電解質の一部を除去して鉛原料を形成する工程を含み、及び鉛原料を酸化装置に供給し、及び該酸化装置を、亜酸化鉛を粒子の形態で形成する条件下で作動させる工程をさらに含む。このような方法において、亜酸化鉛は鉛蓄電池活性材料での使用に適するサイズ及び組成を有する複数の酸化鉛粒子及び複数の金属鉛粒子を含む。企図された方法は少なくともいくらかの亜酸化鉛を酸化装置から除去する工程をさらに含む。
【0013】
いくつかの実施態様において、該カソードの他の部分で該鉛イオン含有電解質から追加の金属鉛が形成される間に該金属鉛は該カソードの一部から除去され、及び/又は該カソードが該鉛イオン含有電解質に対して動く。最も典型的には、該水性電解質の該一部が、該水性電解質を水で置換することによって、及び/又は該金属鉛を圧縮することによって該金属鉛から除去される。
【0014】
さらに、該酸化装置がボールミルか、バートンポットであることが企図される。従って該亜酸化鉛が20~40%の金属鉛粒子及び60~80%の酸化鉛粒子を含み、及び/又は該複数の金属鉛粒子及び該酸化鉛粒子が約0.1~10ミクロンの平均粒子サイズを有する。
【0015】
続いて、本発明らは、亜酸化鉛を製造する方法を企図し、該方法は電解反応容器のカソードで金属鉛を水性鉛イオン含有電解質から作る工程であって、ここで該金属鉛が鉛フレーク、スポンジ状鉛、又はナノ及び/又はマイクロ結晶鉛マトリックスの形態で生成され、及び、該金属鉛は水性鉛イオン含有電解質のいくらかを含む工程を含む。他の工程では、該水性電解質の一部が該金属鉛から除去され、それによってボールミルのための鉛原料が形成され、さらに他の工程では該鉛原料が該ボールミルに投入され、及び、該ボールミルが、亜酸化鉛を形成する温度及び時間で作動され、ここで該亜酸化鉛は複数の酸化鉛粒子及び複数の金属鉛粒子を含む。最後に、亜酸化鉛の少なくともいくらかがボールミルから除去される。
【0016】
いくつかの実施態様において、該カソードが該電解質に対して動き及び/又は該電解質が該カソードに対して動かされる。最も典型的には該カソードの動き又は該電解質の動きの間に該金属鉛が該カソードから除去される。さらに、該金属鉛から該水性電解質の該一部を除去する工程が、該金属鉛を水で洗う工程及び/又は該金属鉛を圧縮する工程を含むことが企図される。典型的な例では、該水性鉛イオン含有電解質が有機酸及び/又は無機塩を含む酸性電解質である。さらに、該ボールミルが作動されて、20~40%の金属鉛粒子及び60~80%の酸化鉛粒子を含む組成物が生成されることが好ましく、及び/又はボールミルの工程が、平均粒子サイズが約0.1~10ミクロンの複数の鉛及び酸化鉛粒子を含む組成物を生成する。注目すべきは該鉛原料がボールミルに投入されるとき残留電解質又は洗浄工程からの水を含む。
【0017】
発明者らは亜酸化鉛を製造する方法をさらに企図し、該方法は電解反応容器のカソードで金属鉛を水性鉛イオン含有電解質から作る工程、ここで該金属鉛は鉛フレーク、スポンジ状鉛、又はナノ及び/又はマイクロ結晶状鉛マトリクスの形態で形成され、及び該金属鉛は該水性鉛イオン含有電解質のいくらかを含む工程を含む。他の工程では、該金属鉛から該水性電解質の少なくとも一部が除去されてボールミルのための鉛原料を形成され、該鉛原料を溶融して液体鉛原料(少なくとも華氏650度の温度を有する)が形成される。さらに他の工程で、該液体鉛原料の少なくとも一部をバートンポットプロセスで酸化して亜酸化鉛を形成する工程であって、ここで該亜酸化鉛は複数の酸化鉛粒子及び複数の金属鉛粒子を含む。最後にバートンポットプロセスから酸化鉛粒子の少なくともいくらかが除去される。
【0018】
いくつかの実施態様において、該カソードが該電解質に対して動き、及び/又は該電解質が該カソードに対して動かされ、及び該カソードの動き又は該電解質の動きの間該金属鉛が該カソードから除去される。さらに、該金属鉛から水性電解質の少なくとも一部を除去する工程が、該金属鉛を水で洗う工程及び/又は該金属鉛を圧縮する工程を含むことが企図される。最も典型的には該水性鉛イオン含有電解質が有機酸又は無機塩を含む酸性電解質である。
【0019】
好ましくは、該ボールミルが、20~40%の金属鉛粒子及び60~80%の酸化鉛粒子を含む組成物を生成するために作動され、及び/又はボールミルの工程が、平均粒子サイズが約0.1~10ミクロンの複数の鉛及び酸化鉛粒子を含む組成物を生成する。最も典型的には、しかし必ずしも必要ではなく、該鉛原料が0.5~5重量%の該水性溶液を含む。
【発明の効果】
【0020】
発明の主題の種々の目的、特徴、側面及び利点は、以下の好ましい実施形態の詳細な記載からより明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0021】
詳細な説明
本発明者らは、鉛酸畜電池ペーストの製造に適した亜酸化鉛を、電気化学式鉛イオン還元プロセスのアウトプット材料から、該アウトプット材料の溶融及びインゴット化を必要とせずに、調製することができることを予想外に発見した。このような発見は特別に予想外であった。なぜなら従来の当業界の知恵は、ボールミル又はバートンポット型プロセスのための鉛原料が非常に高純度であることを一般的に要求したからである。
【0022】
対照的に、発明者らに使用される該アウトプット材料は、典型的にはブリケットへと圧縮され、かなりの量の電解質及び/又は水を含んですらいる、フレーク、スポンジ状の鉛、又はナノ及び/又はマイクロ結晶の鉛マトリックスであった。実際、該アウトプット材料中に電解質又は水中に硫黄含有酸、例えばメタンスルホン酸が存在していても、ボールミル又はバートンプロセスで生成される酸化鉛は、一貫して所望の化学組成及びサイズを有した。
【0023】
一の典型的な実施形態では、金属鉛が連続プロセスにおいて電気化学的に製造され、該プロセスでは回転するカソードが部分的に鉛イオン含有酸性電解質に浸漬され、浸漬されたカソード部分上で鉛が還元され、及び、金属鉛がカソードの非浸漬部分から除去される。最も典型的には、電解質はメタンスルホン酸の水溶液であり、及び回転するカソードは典型的にはアルミニウムからなる。
【0024】
このようなプロセスでは、金属鉛が、マイクロ及び/又はナノ多孔性の混合マトリックスの形態でカソードから回収され、この混合マトリックスでは、金属鉛がマイクロ及び/又はナノメートルサイズの構造(典型的には、針状/針金状/樹状/デンドライト)を有し、該構造は電解処理用溶媒の一部およびいくらかの分子状水素(すなわち、H)をトラップし、それらの一部はマトリックスの自重下での圧縮で排出される。最も注目するのは、そのようなマトリックスは黒い外観及び非常に低い嵩密度を有した。実際、いくつかの実施形態において、マトリックスが溶媒の上に浮き、及び1g/cmの密度を有することが観察された。マトリックスを圧縮するか、他の力を施与すると、密度が増大し(例えば1~3g/cm又は3~5g/cm又はそれ以上)及び金属銀様の光沢が現れた。他の実施形態では、混合マトリックスがカソードから除去され(例えばふき取り又は削り出し)及び密度3~5g/cm、5~7g/cm、7~9g/cm、又はそれ以上を有する。異なる観点から見た場合、該混合マトリックスは、分子状水素及び残留電解質と共に、金属鉛を高い純度で含んだ(例えば少なくとも99.9%、又は少なくとも99.99%、又は少なくとも99.999%、又は少なくとも99.9999%)ことが認められなければならない。
【0025】
混合マトリックスを形成する最も典型的な工程では、還元された鉛イオンがカソード上に密着膜を形成せず、カソードを電解液に対して単に移動させるか、カソードを振動させるか、又はカソードを鉛が付着できる材料(例えば、プラスチック、鉛フィルムなど)で拭くだけで、カソードから容易に除去することができる。従って、鉛の回収を連続的に行うことができる。特に、回転又は往復電極が採用された場合、鉛イオンが電極又は電極アセンブリの一部上で還元されることが可能であり、同時に金属鉛が電極又は電極アセンブリの他の部分から回収できる。他の例では、鉛は、カソードを振動させるか、又は流体をカソードに亘って噴射することで、カソードから除去できる。発明の主題に従うプロセスにおいて使用される混合マトリックスを生成するための例示的な企図されたシステム、方法及び装置は、米国特許第9、837、689号及び米国特許第10、340、561号に記載されており、これらはいずれも引用により本明細書に組み込まれる。
【0026】
さらに他の実施形態では、金属鉛が、国際公開WO2019/171282に記載されているような、典型的には水性電解質からの電気化学的プロセスにおいて製造することもできる。ここで、電解質は典型的には塩化アンモニウム水溶液であり、電極は大抵の場合、電気化学的フロースルーセル内に配置される。典型的には鉛フレークの形態の金属鉛を除去するために、カソードは、超音波処理、電解質の噴射、及び/又はカソードの運動に供されてもよい。このようにして取り出された金属鉛は次いで、ボールミル又はバートンポット酸化装置に原料として直接酸化プロセスにおいて使用されることができる。
【0027】
鉛フレーク、スポンジ状鉛、又は混合マトリックスが生成されると、典型的には、トラップされた電解質及び所望により水素の少なくとも一部を除去するために、鉛材料が圧縮処理に付されることが好ましく、及び該材料が、電解質及び/又は水分含有量が低減された鉛固形燃料を生成する固形燃料化プロセスに供されることが好ましい。代替的な側面では、圧縮は、排水プロセスとして重力駆動されるフィルタープレス等を使用して行うこともできる。容易に理解されるように、電気化学的に製造された金属鉛は、固形燃料化の前に、酸又は他の成分の少なくとも一部を除去するために、及び/又は1つ又は複数の合金化金属、例えばマグネシウム、カルシウム、銀等を洗い入れる(ウォッシュイン)するために、洗浄工程に付されることができる。最も典型的な態様では、圧縮された鉛材料は次いでボールミル又はバートンポット型プロセスに原料として直接的に使用される。
【0028】
容易に理解されるように、存在する可能性がある電解質又は他の溶媒の少なくともいくらかを除去するために鉛材料は圧縮されてよい。例えば、鉛材料がアクアリファイニングプロセスから得られる場合、圧縮は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%の電解質又は他の溶媒を除去し得る。所望された場合、鉛材料は残留電解質及び/又は他の望ましくない成分を除去するために、水又は他の溶媒で洗浄され得ることも留意されるべきである。圧縮は、当技術分野で知られている多くの方法で実施することができる。 例えば、圧縮はフィルタープレス、ローラープレス、及び/又は固形燃料化法(ブリケッティング)を使用して実行することができる。さらに、ボールミルに適した形状因子を達成するために圧縮も使用され、ボールミルのために現在使用されているすべての形態、サイズ及び形状が、本明細書で使用するのに適していると考えられる。例えば、想定される形状は、円柱、球体、半球、ペレット、規則的な形状、及び不規則な形状の形態を含む。さらに、圧縮鉛は、例えば、100g~1000g、又は300g~3000gの間、又は600g~6000gの間、又は1000g~10000gの間、又は10000g~50000g、又はそれ以上でさえある、任意のボールミルに適する重量を有することができることに留意されたい 。
【0029】
次いで、ボールミルによる粉砕が、当技術分野でよく知られている従来の設備及びプロセスを使用して行われてよい。最も典型的には、 ボールミルプロセスは、20~40%の金属鉛と60~80%の亜酸化鉛、及び/又は複数の鉛と亜酸化鉛粒子であって、約0.1~10ミクロンの平均粒径を有する粒子を含む組成物を生成する。もちろん、ボールミルプロセスは(例えば、温度、酸化ガス流、材料滞留時間など)の当業界で知られている調整を使用して、異なる製品仕様および組成を提供するように調整することができることを認識すべきである。さらに、ボールミルは、溶融および再キャスティングモジュールを取り外すことができる既存のボールミル、又は、鉛原料材料(例えば、アクアリファイニングプロセスで製造されたもの)が供給された、新たな設置装置でもよいことに留意されたい。従って、ボールミルは鉛材料製造と共に位置されてよく又は遠隔地(例えば少なくとも1マイル、又は少なくとも5マイル、又は少なくとも10マイル、又は少なくとも50マイル、又は少なくとも100マイル)に位置されてもよいことが認められるべきである。
【0030】
好ましいバートンポット型プロセスは、圧縮された鉛材料を、典型的には少なくとも華氏650度の温度での、溶融形態で使用する。バートンポット型プロセスのための他の適切な選択肢は、特に企図されるプロセスは、例えば米国特許出願US2019/0217390に記載されているように、液体鉛原料が酸素含有雰囲気中に噴霧されるもの、及び米国特許US3、332、496号に記載されているような酸素含有空気流の存在下で撹拌されるものを含み、両者は引用により本明細書に包含される。容易に理解されるように、ここで企図されるバートンポット型プロセスは、特定のバートンポット型プロセス用に設定された特定の動作条件に依存して、金属鉛粒子を製造することもできる。最も典型的には、酸化鉛粒子(及び存在する及び/又は所望の、金属鉛粒子)の少なくとも一部が、さらなる使用、及び最も典型的には鉛酸畜電池ペースト製造、のためにプロセスから取り除かれる。換言すれば、バートンポットプロセスは酸化鉛粒子及び金属鉛粒子を含む亜酸化鉛を製造することができる。
【0031】
本文脈において、従来の知恵とは対照的に、比較的不均一な/不純な原料、及び特に金属鉛及び水性溶液、例えば水、又は硫黄含有酸(例えば、アルカンスルホン酸、硫酸、スルファミン酸等)、及び/又は無機塩であって、酸化鉛粒子の所定含有量において、所望のサイズ分布及び純度を有する酸化鉛粒子の一貫製造のために未だに許容されるもの、を含む水性電解質を含む、鉛原料を使用することが認識されるべきである。特定の理論又は仮説によって制限されることを望むものではないが、本発明者らは、残留硫黄化合物は、バートンポットプロセスのための液体原料を形成するために溶融すると、SO、SO、COとして焼失する事、及び残留硫黄化合物が鉛と反応してPbSO及びPbSを形成し、それらが原料中の水から生成されるOにより酸化されると考える。さらに、原料中の水素は、容易にHS及びHOへと反応して、両者がさらに金属鉛と反応して酸化鉛及びPbS(これは、次いで酸化鉛へと酸化される)を生成することができる。鉛原料がボールミル内で発熱工程を経る所では類似の反応が起こると考えられる。このようにして、さもなければプロセスの不安定性へとつながる不純物及び汚染が、生成物の純度及び酸化鉛粒子のサイズ分布に顕著に影響を及ぼすことなく、有利に追い出される。
【0032】
適切な鉛原料に関して、鉛原料は必ずしも上記のように調製される必要はないことを理解されたいが、そのような原料が(電解精製方法で得ることができるような)固体金属鉛デポジットの形態で無い限り、全ての電気化学的及びレドックスに基づく化学的方法がここでの使用に適すると考えられる。従って、及び他の視点から見て、鉛原料は少なくともいくらかの溶媒、例えば水性溶液、非水性溶液、及び/又は電解質を含む。他の観点から、企図される原料は精錬又はインゴット化以外の鉛製造プロセスで用意される材料を含む全ての金属鉛を含む。従って、原料は水性電解質、それは酸性の(例えば、カルボン酸、硫酸、スルファミン酸、アルカンスルホン酸、フッ化ホウ素酸などの酸を含む)もしくは塩基性の(例えば、ナトリウム又は水酸化カリウム、炭酸ナトリウムなどを含む)電解質、有機及び/又は無機塩、非水もしくは溶融塩電解質、及び/又は水を含む。
【0033】
例えば、鉛原料中に残留(水性)溶液が、少なくとも0.1重量%、又は0.2重量%、又は少なくとも0.3重量%、又は少なくとも0.4重量%、又は少なくとも0.5重量%、又は少なくとも1重量%、又は少なくとも1.5重量%、又は少なくとも2.5重量%、又は少なくとも3.5重量%、又は少なくとも5重量%、又は少なくとも7重量%、又は少なくとも10重量%の量で存在してよい。即ち、鉛原料中に残留(水性)溶液が、0.1~0.5重量%、又は0.5~1.0重量%、又は1.0~2.5重量%、又は2.5~5.0重量%、又は5.0~7.5重量%、又は5.0~10重量%の量で存在してよい。残留(水性)溶液の種類に依存して、溶液は塩、酸、及び/又は塩基性成分を、典型的には0.01~0.1重量%、又は0.05~0.5重量%、又は0.5~2.5重量%、又は2.5~5重量%、又は5~10重量%、又は10~20重量%、又は15~35重量%、又は25~50重量%、又は更に高い量で含んでよい。このように、塩、酸、及び/又は塩基性成分は、溶液中に少なくとも5重量%又は少なくとも10重量%、又は少なくとも20重量%、又は少なくとも30重量%の量で存在する。
【0034】
鉛原料中の金属鉛の純度は、通常、少なくとも98%、少なくとも99%、より好ましくは少なくとも99.9%、又は少なくとも99.99%、又は少なくとも99.999%、又は少なくとも99.9999%である。しかし、鉛原料はまた、酸化を改善するために1つ以上の金属でドープされてもよく、特に好ましい金属は、カルシウム、マグネシウム、および銀を含むことを理解されたい。
【0035】
バートンポット型プロセスの特定の性質および動作パラメータ又はボールミル動作条件に依存して、プロセス製品は酸化鉛粒子のみ、又は酸化鉛と金属鉛粒子の混合物であってもよいことを理解されたい。従って、酸化鉛粒子と金属鉛粒子の種々の比率が企図され、及びプロセス製品中の好適な酸化鉛粒子の量は、少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも98%、又はさらに高くさえあろう。従って、金属鉛粒子に対する酸化鉛粒子の比は99:1~9:1、又は95:5~8:2、又は9:1~75:25、又は8:2~7:3、又は8:2~65:35等であってもよい。
【0036】
さらに企図される側面では、酸化鉛及び鉛粒子の純度は、一般に99%を超える。例えば、酸化鉛及び/又は金属鉛粒子の純度は、少なくとも99%、又は少なくとも99.9%、又は少なくとも99.95%、又は少なくとも99.99%、又は少なくとも99.995%、又はさらに高くさえある。1つ以上の実施形態では、ボールミル又はバートンポット型プロセスの製品は、0重量%~100重量%の斜方晶系酸化鉛を含んでよい。例えば、製品材料は、斜方晶系酸化鉛を0重量%~10重量%、10重量%~20重量%、20重量%~30重量%、30重量%~40重量%、40重量%~50重量%、50重量%~60重量%、60重量%~70重量%、 70重量%~80重量%、80重量%~90重量%、90重量%~100重量%、又はこれらの任意の組み合わせの量で含むことができる。追加の実施形態では、ボールミル又はバートンポット型プロセスの製品は、0重量%~100重量%の正方晶系一酸化鉛を含むことができる。例えば、製品材料は、0重量%~10重量%、10重量%~20重量%、20重量%~30重量%、30重量%~40重量%、40重量%~50重量%、50重量%~60重量%、60重量%~70重量%、70重量%~80重量%、80重量%~90重量%、90重量%~100重量%、又はこれらの任意の組み合わせの量で、正方晶系一酸化鉛を含んでよい。
【0037】
追加の実施形態によれば、現在記載されているボールミル又はバートンポット型プロセスの製品材料は、正方晶系酸化鉛、斜方晶系酸化鉛及び金属鉛(さもなければ遊離鉛と呼ばれる)の混合物を、任意の一成分について0重量%~100重量%の全ての割合で含んでよい。鉛蓄電池用活物質の典型的な要件は、正方晶系酸化鉛を主成分とし、金属鉛を副成分とし、及び斜方晶系鉛酸化物を少量で許容する混合物である。例えば製品は正方晶系酸化鉛、斜方晶系鉛酸化物、及び金属鉛の混合物で重量%の比が90:0:10、85:0:15、80:0:20、75:0:25、70:0:30、65:0:35、90:5:5、85:5:10、80:5:15、75:5:20、70:5:25、65:5:30、60:5:35、80:15:5、75:15:10、70:15:15、65:15:20、60:15:25、55:15:30、50:15:35又は3成分の他の組み合わせの任意のものを含んでよい。しかし、いくつかの鉛酸蓄電池技術は、より大きい割合の斜方晶系酸化鉛を含む混合物を必要とし得る。例えば、製品は正方晶系酸化鉛、斜方晶系酸化鉛、及び金属鉛の混合物であって、斜方晶系酸化鉛を15重量%~20重量%、20重量%~25重量%、25重量%~30重量%、30重量%~35重量%、35重量%~40重量%、40重量%~45重量%、45重量%~50重量%、又はこれらの任意の組み合わせで含む。
【0038】
さらに、本明細書に提示される鉛原料を用いたボールミル又はバートンポットプロセスによって製造される酸化鉛(及び金属鉛)粒子のサイズ分布は、比較的均一であり、及び1000ミクロン以下(例えば、500ミクロン以下、400ミクロン以下、300ミクロン以下、200ミクロン以下、100ミクロン以下、50ミクロン、25ミクロン以下、さらに小さくさえある)直径を有するであろうことが企図される。例えば、酸化鉛(及び金属鉛)粒子は、50メッシュUS標準篩を丁度通り、及び従って直径300ミクロン以下を有する。例えば、企図される酸化鉛(及び金属鉛)粒子は、d50(メジアン)径が1~5ミクロン、5ミクロン~10ミクロン、10ミクロン~25ミクロン、25ミクロン~50ミクロン、50ミクロン~100ミクロン、100ミクロン~150ミクロン、150ミクロン~200ミクロン、200ミクロン~250ミクロン、250ミクロン~300ミクロン又はこれらの任意の組み合わせである。異なる観点から見た場合、従って、酸化鉛粒子の95重量%が100ミクロン以下の直径を有する酸化鉛粒子、又は金属鉛粒子の95重量%が1000ミクロン以下の直径を有する、酸化鉛粒子が調製され得ることが企図される。
【実施例
【0039】
鉛含有水性電解質を、~25重量%総メタンスルホネートと共に、遊離酸と金属イオン塩の混合物として、回転カソード上に鉛元素が形成されるような条件下で作動されている電解槽を通してポンプで汲み上げた。金属鉛がマイクロ及び/又はナノ多孔性混合マトリクスとして形成され、約40重量%の保持された電解質を含んだ。金属鉛が、動くカソードからスクレーパーによって連続的に除去され、コンベヤー上に置かれ、圧搾加工機へと(典型的には洗浄工程無しに)送られ、巻き込まれている電解質の約85~90%を鉛から搾り出して約95重量%の固体鉛と該ブリケットの孔に保持された約5重量%の電解質を含む鉛ブリケットを生成した。該ブリケットを数日から数週間(好ましくは3日間以内)の間、空気乾燥して表面の水分を乾かしたが、ブリケットの孔及び本体内部に相当量の水分が残った。鉛ブリケットに巻き込まれた電解質の組成は~25重量%のメタンスルホネート、~4重量%の溶解鉛、及び~1.3重量%の金属不純物であった。メタンスルホン酸の成分としての硫黄は、電解質の約8重量%を占めた。
【0040】
バートンポットプロセス:
該ブリケットをパートンポット酸化鉛製造プロセスに接続された溶融ポット内で溶融した。ブリケットが溶融される間、該溶融ポットの温度は、約華氏630~650度に維持された。ブリケットを溶融して形成された浮きカスは、溶融鉛を酸化物へと転換する反応ポットへと供給する前に、溶融ポットから(不純物の蓄積を低下するために)除去された。形成された酸化鉛は、(累積して)0.002重量%未満の重大な不純物、例えばFe、Cu、Zn、Cd、As、Sn、Sb、Ni、及びBiを含み、少なくとも99.97%の純度を有することが見出された。大半の不純物は、例えばNa、Al、K、Ca、及びBa等の重要ではない元素であった。注目すべきことに、製造された鉛酸化物中にSは検出されなかった。
【0041】
いくつかの実施態様では、本願発明のいくつかの実施態様を記載及び主張するために使用される成分の量、濃度、反応条件などの特性を表す数が、用語「約」によって修飾される事が理解されるべきである。従って、いくつかの実施態様では、明細書及び請求の範囲中の数値パラメータは特定の態様によって求められる所望の特性に依存して変わり得る概数である。ここでの数値範囲の記載は、該範囲内の各別個の値を個別に参照する単なる簡略法としての役割を果たすことが意図される。本明細書中で別段の指示が無い限り、各個別値は個別に言及されているかのように明細書中に組み込まれる。
【0042】
本明細書で説明されるすべての方法は、本明細書で別段の指示がない限り、また文脈と明確に矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。 本明細書の特定の実施形態に関して提供される任意の及びすべての例、又は例示の用語(「例えば」等)は、単に発明の範囲をより良く示すことが意図され、他のやり方で請求される本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中の言語のいずれも、クレームされていない本発明の実施に不可欠な要素を示すものとして解されるべきではない。
【0043】
本明細書の説明および特許請求の範囲を通して使用されるように、「a」「an」「the」は、文脈がそうでないことを明確に指示しない限り、複数の参照を含む。また、本明細書の説明において使用されるように、文脈がそうでないことを明確に指示しない限り、「in」は「in」及び「on」を含む。ここで使用されるように、及び文脈がそうでないことを明確に指示しない限り、用語「に結合され」は直接結合(2つの要素が互いに結合されている)および間接結合(少なくとも1つの追加要素が2つの要素の間に配置される)を含むことを意図している。従って、「に結合された」および「と結合された」という用語は、同義的に使用される。
【0044】
本明細書の発明概念から逸脱することなく、既に説明したもの以外の多くの修正が可能であることは当業者には明らかである。本発明の主題は、従って、特許請求の範囲を除いて制限されない。さらに、本明細書と特許請求の範囲の両方の解釈において、すべての用語は、文脈と一致する最も広い可能な様式で解釈されるべきである。特に、用語「含む及び含んでいる」は要素、成分、又は工程を非排他的に参照すると解釈されるべきであり、参照された要素、成分、又は工程が存在し、又は使用され、又は明示的に参照されていない他の要素、成分、又は工程と組み合わされ得ることを示す。本明細書又は特許請求の範囲がA、B、C・・・及びNからなる群から選択される少なくとも1つを指すとき、A+N又はB+Nなどではなく、群から1つの要素のみを必要とすると解釈されるべきである。


【手続補正書】
【提出日】2022-07-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜酸化鉛を製造する方法であって
電解反応容器のカソードで金属鉛を水性鉛イオン含有電解質から作る工程であって、ここで該金属鉛は鉛フレーク、スポンジ状鉛、又はナノ及び/又はマイクロ結晶状鉛マトリクスの形状で形成され、及び該金属鉛は該水性鉛イオン含有電解質のいくらかを含む、工程;
該電解反応容器から該金属鉛を採集する工程
該金属鉛から該水性鉛イオン含有電解質の一部を除去して、少なくとも1重量%の該水性鉛イオン含有電解質を含む鉛原料を形成し、ここで該水性鉛イオン含有電解質は不純物を含み、及び場合によって該不純物は硫黄化合物を含む、工程;
該鉛原料を酸化装置に供給し、及び粒子形態の鉛亜酸化物を形成し及び該不純物を酸化する条件下で該酸化装置を作動させる工程であって、ここで該鉛亜酸化物は、鉛酸畜電池活性物質として使用するのに適したサイズ及び組成を有する複数の酸化鉛粒子及び複数の金属鉛粒子を含み、及び該鉛亜酸化物は、0.01重量%未満の不純物を含む、工程;及び
該酸化装置から該亜酸化鉛の少なくともいくらかを除去する工程;
を含む方法。
【請求項2】
該カソードの他の部分で該鉛イオン含有電解質から追加の金属鉛が形成される間に該金属鉛は該カソードの一部から除去される請求項1の方法。
【請求項3】
該カソードが該鉛イオン含有電解質に対して動く請求項1の方法。
【請求項4】
該水性電解質の一部が該水性電解質を水で置換することによって、該金属鉛から除去される請求項1の方法。
【請求項5】
該水性電解質の該一部が該金属鉛を圧縮することによって、該金属鉛から除去される請求項1の方法。
【請求項6】
該酸化装置がボールミルである先行請求項のいずれか一項の方法。
【請求項7】
該酸化装置がバートンポットである請求項1~5のいずれか一項の方法。
【請求項8】
該亜酸化鉛が20~40%の金属鉛粒子及び60~80%の酸化鉛粒子を含む請求項1~5のいずれか一項の方法。
【請求項9】
該複数の金属鉛粒子及び該酸化鉛粒子が約0.1~10ミクロンの平均粒子サイズを有する請求項1~5のいずれか一項の方法。
【請求項10】
亜酸化鉛を製造する方法であって、
電解反応容器のカソードで金属鉛を水性鉛イオン含有電解質から作る工程であって、ここで該金属鉛が鉛フレーク、スポンジ状鉛、又はナノ及び/又はマイクロ結晶鉛マトリックスの形態で生成され、及び、該金属鉛は水性鉛イオン含有電解質のいくらかを含む、工程;
該水性電解質の一部を該金属鉛から除去し、それによってボールミルのための鉛原料を形成する工程であって、該鉛原料は該水性鉛イオン含有電解質を少なくとも1重量%で含み、該水性鉛イオン含有電解質は不純物を含み、及び場合によって該不純物は硫黄化合物を含む、工程;
該鉛原料を該ボールミルに供給し、及び該ボールミルを、亜酸化鉛を形成し及び該不純物を酸化する温度及び時間で作動する工程であって、ここで該亜酸化鉛は複数の酸化鉛粒子及び複数の金属鉛粒子を含み、及び該亜酸化鉛は0.01重量%未満の該不純物を含む、工程;及び
亜酸化鉛の少なくともいくらかをボールミルから除去する工程、
を含む方法。
【請求項11】
該カソードが該電解質に対して動き及び/又は該電解質が該カソードに対して動かされ、及び、該カソードの動き又は該電解質の動きの間に該金属鉛が該カソードから除去される請求項10の方法。
【請求項12】
該金属鉛から該水性電解質の該一部を除去する工程が該金属鉛を水で洗う工程及び/又は該金属鉛を圧縮する工程を含む請求項10の方法。
【請求項13】
該水性鉛イオン含有電解質が有機酸及び/又は無機塩を含む酸性電解質である請求項10の方法。
【請求項14】
該ボールミルが作動されて、20~40%の金属鉛粒子及び60~80%の酸化鉛粒子を含む組成物を生成する請求項10の方法。
【請求項15】
ボールミルの工程が、平均粒子サイズが約0.1~10ミクロンの複数の鉛及び酸化鉛粒子を含む組成物を生成する請求項10の方法。
【請求項16】
該鉛原料がボールミルに供給されるとき残留電解質又は洗浄工程からの水を含む、先行請求項のいずれか一項の方法。
【請求項17】
亜酸化鉛を製造する方法であって、
電解反応容器のカソードで金属鉛を水性鉛イオン含有電解質から作る工程、ここで該金属鉛は鉛フレーク、スポンジ状鉛、又はナノ及び/又はマイクロ結晶状鉛マトリクスの形態で形成され、及び該金属鉛は該水性鉛イオン含有電解質のいくらかを含む、工程;
該金属鉛から該水性鉛イオン含有電解質の少なくとも一部を除去してボールミルのための鉛原料を形成する工程であって、該鉛原料は該水性鉛イオン含有電解質を少なくとも1重量%で含み、該水性鉛イオン含有電解質は不純物を含み、及び場合によって該不純物は硫黄化合物を含む、工程;
該鉛原料を溶融して液体鉛原料を形成する工程;
該液体鉛原料の少なくとも一部をバートンポットプロセスで酸化して亜酸化鉛を形成し及び不純物を酸化する工程であって、ここで該亜酸化鉛は複数の酸化鉛粒子及び複数の金属鉛粒子を含み、及び該亜酸化鉛は該不純物を0.01重量%未満で含む、工程;及び
該バートンポットプロセスから該酸化鉛粒子の少なくともいくらかを除去する工程;
を含む方法。
【請求項18】
該カソードが該電解質に対して動き、及び/又は該電解質が該カソードに対して動かされ、及び該カソードの動き又は該電解質の動きの間、該金属鉛が該カソードから除去される請求項17の方法。
【請求項19】
該金属鉛から水性電解質の少なくとも一部を除去する工程が該金属鉛を水で洗う工程及び/又は該金属鉛を圧縮する工程を含む請求項17の方法。
【請求項20】
該水性鉛イオン含有電解質が有機酸又は無機塩を含む酸性電解質である請求項17の方法。
【請求項21】
該ボールミルが、20~40%の金属鉛粒子及び60~80%の酸化鉛粒子を含む組成物を生成するために作動される請求項17の方法。
【請求項22】
ボールミルの工程が、平均粒子サイズが約0.1~10ミクロンの複数の鉛及び酸化鉛粒子を含む組成物を生成する請求項17の方法。
【請求項23】
該鉛原料が該水性溶液を0.5~5重量%で含む請求項17の方法。
【請求項24】
該液体鉛原料が少なくとも華氏650度の温度を有する、請求項17の方法。
【請求項25】
請求項1~24のいずれか一項の方法で製造される亜酸化鉛。
【国際調査報告】