(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-16
(54)【発明の名称】物品、特にタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/00 20060101AFI20240208BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20240208BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240208BHJP
C08K 3/06 20060101ALI20240208BHJP
B32B 25/02 20060101ALI20240208BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
B60C11/00 B
C08L9/00
C08K3/013
C08K3/06
B32B25/02
B60C1/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544691
(86)(22)【出願日】2021-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-07-25
(86)【国際出願番号】 JP2021002996
(87)【国際公開番号】W WO2022162823
(87)【国際公開日】2022-08-04
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】前阪 将之
【テーマコード(参考)】
3D131
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131AA03
3D131AA04
3D131BB01
3D131BC44
3D131EA02U
4F100AA20B
4F100AA37B
4F100AK29A
4F100AK29B
4F100AL09A
4F100AL09B
4F100AN02A
4F100AN02B
4F100BA02
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CA03A
4F100CA03B
4F100CA04A
4F100CA04B
4F100CA23A
4F100CA23B
4F100GB32
4F100JA05B
4F100YY00A
4F100YY00B
4J002AC031
4J002AC061
4J002DA036
4J002DA047
4J002DJ016
4J002FD016
4J002FD147
4J002GN01
(57)【要約】
物品は、地面と接触することが意図されており、この物品は、FCから作製されたFPと、SCから作製されたSPとを含む、少なくとも2つの重なり合った部分を含む積層体を含み、SPは、FPよりも地面から遠くに位置しており、各FC及びSCは、少なくとも1種のエラストマーマトリックス、強化充填剤、可塑剤及び硫黄ベース加硫促進剤をベースとしており、SC中の強化充填剤のphr量は、FC中の強化充填剤のphr量よりも少なく、SC中の強化充填剤に対する可塑剤のphr量の比は、FC中の強化充填剤に対する可塑剤のphr量の比よりも高く、SC中の硫黄ベース加硫促進剤のphr量は、FC中の硫黄ベース加硫促進剤のphr量よりも少ない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面と接触することが意図された物品であって、
前記物品が、
第1のゴム組成物(FC)から作製された第1の部分(FP)と、
第2のゴム組成物(SC)から作製された第2の部分(SP)と
を含む、少なくとも2つの重なり合った部分を含む積層体を含み、
前記第2の部分(SP)が、前記第1の部分(FP)よりも地面から遠くに位置しており、
前記ゴム組成物(FC及びSC)各々が、少なくとも、
エラストマーマトリックス、
強化充填剤、
可塑剤及び
硫黄ベース加硫促進剤
をベースとしており、
前記第2のゴム組成物(SC)中の前記強化充填剤のphr量が、前記第1のゴム組成物(FC)中の前記強化充填剤のphr量よりも少なく、
前記第2のゴム組成物(SC)中の前記強化充填剤に対する前記可塑剤のphr量の比が、前記第1ゴム組成物(FC)中の前記強化充填剤に対する前記可塑剤のphr量の比よりも高く、
前記第2のゴム組成物(SC)中の前記硫黄ベース加硫促進剤のphr量が、前記第1のゴム組成物(FC)中の前記硫黄ベース加硫促進剤のphr量よりも少ない、
物品。
【請求項2】
前記第1のゴム組成物(FC)、前記第2のゴム組成物(SC)又はそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つが、前記エラストマーマトリックスが、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種のジエンエラストマーを含むものであり、好ましくは、前記ゴム組成物(FC及びSC)各々が、前記エラストマーマトリックスが、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種のジエンエラストマーを含むものである、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記第2のゴム組成物(SC)が、前記エラストマーマトリックスが、少なくとも50phrのポリイソプレンを含むものである、請求項1又は2に記載の物品。
【請求項4】
前記第2のゴム組成物(SC)が、前記強化充填剤の量が、最大110phrであるものである、請求項1~3のいずれか1項に記載の物品。
【請求項5】
前記第2のゴム組成物(SC)が、前記強化充填剤の量が、少なくとも15phrであるものである、請求項1~4のいずれか1項に記載の物品。
【請求項6】
前記第2のゴム組成物(SC)が、前記強化充填剤が、主に無機強化充填剤を含むものであり、好ましくは、前記第2のゴム組成物(SC)が、前記無機強化充填剤が、主にシリカを含むものである、請求項1~5のいずれか1項に記載の物品。
【請求項7】
前記第2のゴム組成物(SC)が、前記強化充填剤に対する前記可塑剤のphr量の比が、少なくとも1.0であるものである、請求項1~6のいずれか1項に記載の物品。
【請求項8】
前記第2のゴム組成物(SC)が、前記可塑剤の量が、少なくとも10phrであるものである、請求項1~7のいずれか1項に記載の物品。
【請求項9】
前記第2のゴム組成物(SC)が、前記可塑剤が、主に炭化水素樹脂を含むものである、請求項1~8のいずれか1項に記載の物品。
【請求項10】
前記第2のゴム組成物(SC)中の前記エラストマーマトリックスと前記可塑剤との組み合わせの平均ガラス転移温度が、前記第1のゴム組成物(FC)中の前記エラストマーマトリックスと前記可塑剤との組み合わせの平均ガラス転移温度よりも高い、請求項1~9のいずれか1項に記載の物品。
【請求項11】
前記第2のゴム組成物(SC)が、前記エラストマーマトリックスと前記可塑剤との組み合わせの平均ガラス転移温度が、-35℃以上であるものである、請求項1~10のいずれか1項に記載の物品。
【請求項12】
前記第2のゴム組成物(SC)中の前記硫黄ベース加硫促進剤のphr量が、1.5phr未満である、請求項1~11のいずれか1項に記載の物品。
【請求項13】
前記ゴム組成物(FC及びSC)各々が、硫黄をさらにベースとしており、前記第2のゴム組成物(SC)中の硫黄のphr量が、前記第1のゴム組成物(FC)中の硫黄のphr量よりも少ない、請求項1~12のいずれか1項に記載の物品。
【請求項14】
前記第1の部分(FP)が、前記物品の耐用年数中に地面と接触することが意図されており、好ましくは、前記第1の部分(FP)及び前記第2の部分(SP)が、前記物品の耐用年数中に地面と接触することが意図されている、請求項1~13のいずれか1項に記載の物品。
【請求項15】
前記物品がタイヤであり、好ましくは、前記積層体がタイヤトレッドに含まれる、請求項1~14のいずれか1項に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、物品、例えば、タイヤ、靴又はキャタピラトラック、特にタイヤの分野である。
【背景技術】
【0002】
地面と接触することが意図された物品、例えばタイヤについて、以下の特許文献1及び2には、物品が路面と接触することによって生じるノイズであるロードノイズを低減するために、特殊なキャップトレッド及びアンダートレッドを有するタイヤが開示されている。
物品の製造業者の一貫した目標は、ノイズ低減性能をさらに改善することである。
【0003】
研究の最中に、発明者は、特定のゴム組成物を含む少なくとも2つの重なり合った部分を含む積層体を有する物品が、改善されたロードノイズ性能を可能にすることを発見した。
本明細書では、特に明確に言及されない限り、示されるパーセンテージ(%)はすべて、質量パーセンテージ(wt%)である。
「エラストマーマトリックス」という表現は、所定の組成物において、該ゴム組成物中に存在するすべてのエラストマーを意味すると理解される。
「phr」という略語は、考慮されるゴム組成物中のエラストマーマトリックス100質量部当たりの質量部を意味する。
本明細書では、特に明確に示されない限り、各TgDSC(ガラス転移温度)は、規格ASTM D3418-08に従ってDSC(示差走査熱量測定)に従って、公知のようにして測定される。
「aとbとの間」という表現によって示される値の間隔はいずれも、「a」超かつ「b」未満の値の範囲(すなわち、限界値a及びbは除外される)を表すが、「a~b」という表現で示される値の間隔はいずれも、「a~b」にわたる値の範囲(すなわち、厳格な限界値a及びbを含む)を意味する。
「をベースとしている」という表現は、本出願では、使用される様々な構成成分の混合物、反応生成物又はその両方を含む組成物であって、構成成分の一部が、組成物の様々な製造段階の最中に、特に加硫(硬化)の最中に少なくとも部分的に一緒に反応することができるか、又はそうすることが意図されている、組成物を意味すると理解されるべきである。
【発明の概要】
【0004】
課題の解決策
本発明の第1の態様は、地面と接触することが意図された物品であって、この物品が、第1のゴム組成物(FC)から作製された第1の部分(FP)と、第2のゴム組成物(SC)から作製された第2の部分(SP)とを含む、少なくとも2つの重なり合った部分を含む積層体を含み、第2の部分(SP)が、第1の部分(FP)よりも地面から遠くに位置しており、ゴム組成物(FC及びSC)各々が、少なくとも1種のエラストマーマトリックス、強化充填剤、可塑剤及び硫黄ベース加硫促進剤をベースとしており、第2のゴム組成物(SC)中の強化充填剤のphr量が、第1のゴム組成物(FC)中の強化充填剤のphr量よりも少なく、第2のゴム組成物(SC)中の強化充填剤に対する可塑剤のphr量の比が、第1のゴム組成物(FC)中の強化充填剤に対する可塑剤のphr量の比よりも高く、第2のゴム組成物(SC)中の硫黄ベース加硫促進剤のphr量が、第1のゴム組成物(FC)中の硫黄ベース加硫促進剤のphr量よりも少ない、物品である。
【0005】
発明の有利な効果
特定のゴム組成物を含む部分を含む積層体を有する物品は、改善されたロードノイズ性能を可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0006】
特に明確に言及されない限り、以下の態様、実施形態、具体例、及び好ましい範囲、物質又はその両方を含む変形形態の各々を、本発明の他の態様、他の実施形態、他の具体例及び他の変形形態のいずれか1つに適用することができる。
本発明による物品の積層体の各ゴム組成物(FC及びSC)は、エラストマーマトリックスをベースとしている。
「ジエン」タイプのエラストマー(又は大まかに「ゴム」、これらの2つの用語は同義語であるとみなされる)は、ジエンモノマー(共役しているか否かに関係なく2つの炭素-炭素二重結合を有するモノマー)から少なくとも部分的に誘導された、ある(すなわち、1種以上の)エラストマー(すなわち、ホモポリマー又はコポリマー)として、公知のようにして理解されるべきである。
【0007】
これらのジエンエラストマーは、「本質的に不飽和」又は「本質的に飽和」の2つのカテゴリーに分類することができる。一般に、「本質的に不飽和」という表現は、15%(モル%)超の含有量のジエン由来(共役ジエン)の単位を有する共役ジエンモノマーから少なくとも部分的に得られるジエンエラストマーを意味すると理解され、したがって、ブチルゴム又はEPDMタイプのジエン/α-オレフィンコポリマーなどのジエンエラストマーは、前述の定義に該当せず、殊に、「本質的に飽和した」ジエンエラストマー(低い又は非常に低い含有量のジエン由来の単位であり、常に15%未満である)として説明され得る。「本質的に不飽和」のジエンエラストマーのカテゴリーにおいて、「高不飽和」ジエンエラストマーという表現は、特に、50%超の含有量のジエン由来(共役ジエン)の単位を有するジエンエラストマーを意味すると理解される。
これは、あらゆるタイプのジエンエラストマーに適用されるが、物品(例えばタイヤ)の当業者であれば、本発明が本質的に不飽和のジエンエラストマーとともに用いられることが好ましいと理解する。
これらの定義を考慮すると、本発明による組成物に使用することができるジエンエラストマーという表現は、特に、
(a) -共役ジエンモノマー、好ましくは4~12個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーの重合によって得られるあらゆるホモポリマー、
(b) -1種以上の共役ジエン同士の、又はこれと1種以上のビニル芳香族化合物との、好ましくは8~20個の炭素原子を有する1種以上のビニル芳香族化合物との共重合によって得られるあらゆるコポリマー
を意味すると理解される。
【0008】
以下のものが、共役ジエンとして特に好適である:1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、例えば2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジエチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-エチル-1,3-ブタジエン若しくは2-メチル-3-イソプロピル-1,3-ブタジエンなどの2,3-ジ(C1-C5アルキル)-1,3-ブタジエン、アリール-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン又は2,4-ヘキサジエン。例えば、以下のものがビニル芳香族化合物として好適である:スチレン、オルト-、メタ-若しくはパラ-メチルスチレン、「ビニルトルエン」市販混合物、パラ-(tert-ブチル)スチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン又はビニルナフタレン。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1のゴム組成物(FC)、第2のゴム組成物(SC)又はそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つについて、エラストマーマトリックスが、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種のジエンエラストマーを含み、好ましくは、ゴム組成物(FC及びSC)各々について、エラストマーマトリックスが、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種のジエンエラストマーを含む、第1の態様に記載の物品である。
第2の態様の好ましい実施形態によると、コポリマーは、好ましくは、ブタジエンコポリマー及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、より好ましくは、スチレン-ブタジエンコポリマー(SBR)、ブタジエン-イソプレンコポリマー(BIR)、スチレン-イソプレンコポリマー(SIR)、スチレン-ブタジエン-イソプレンコポリマー(SBIR)及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、より一層好ましくは、スチレン-ブタジエンコポリマー(SBR)及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0010】
ジエンエラストマーは、使用される重合条件、特に、変性剤、ランダム化剤又はその両方の有無、及び用いられる変性剤、ランダム化剤又はその両方の量に依存する任意の微細構造を有し得る。このエラストマーは、例えば、ブロックエラストマー、統計エラストマー、逐次エラストマー又は微小逐次エラストマーであり得、分散液又は溶液中で調製され得る。このエラストマーは、カップリングされ得るか、星型分岐であり得るか、又はその両方であり得るか、或いはカップリング剤、星型分岐剤若しくはその両方又は官能化剤で官能化され得る。
好ましい実施形態のより好ましい実施形態によると、第1のゴム組成物(FC)について、エラストマーマトリックスは、少なくとも50phr~100phrまで、好ましくは少なくとも55phr、より好ましくは少なくとも60phr、さらに好ましくは少なくとも65phr、特に少なくとも70phr、とりわけ少なくとも75phrの、スチレンブタジエンコポリマー、好ましくは溶液スチレンブタジエンコポリマーである第1のジエンエラストマーを含み、またエラストマーマトリックスは、第2のジエンエラストマーを含まないか、又は最大50phr、好ましくは最大45phr、より好ましくは最大40phr、より一層好ましくは最大35phr、特に最大30phr、とりわけ最大25phrの、第1のジエンエラストマーとは異なる第2のジエンエラストマーを含む。
より好ましい実施形態のより一層好ましい実施形態によると、第1のジエンエラストマーは、-45℃未満のガラス転移温度(TgDSC)を呈する。
より一層好ましい実施形態の特定の実施形態によると、第1のジエンエラストマーは、-110℃超、好ましくは-105℃超、より好ましくは-100℃超、より一層好ましくは-95℃超、特に-90℃超のガラス転移温度(TgDSC)を呈する。
【0011】
より好ましい実施形態のより一層好ましい実施形態によると、第2のジエンエラストマーは、ポリブタジエン(BR)、好ましくは、-60℃未満、好ましくは-70℃未満、より好ましくは-80℃未満、より一層好ましくは-90℃未満、特に-100℃未満のガラス転移温度(TgDSC)を呈するポリブタジエン(BR)である。
より一層好ましい実施形態の特定の実施形態によると、ポリブタジエンは、-140℃超、好ましくは-135℃超、より好ましくは-125℃超、より一層好ましくは-120超、特に-115℃超、とりわけ少なくとも-110℃のガラス転移温度(TgDSC)を呈する。
本発明の第3の態様は、第2のゴム組成物(SC)について、エラストマーマトリックスが、少なくとも50phr、好ましくは少なくとも55phr、より好ましくは少なくとも60phr、より一層好ましくは少なくとも65phr、特に少なくとも70phr、とりわけ少なくとも75phr、さらにとりわけ少なくとも80phr、有利には少なくとも85phr、より有利には少なくとも90phr、より一層有利には少なくとも95phr、殊に100phrのポリイソプレンを含む、第1の態様又は第2の態様に記載の物品である。
【0012】
第3の態様の好ましい実施形態によると、ポリイソプレンは、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)又はそれらの組み合わせである。合成ポリイソプレンは、合成シス-1,4-ポリイソプレン、好ましくは、90%超、より好ましくは95%超、より一層好ましくは少なくとも98%の含有量(モル%)のシス-1,4結合を有する合成シス-1,4-ポリイソプレンであり得る。
本発明による物品の積層体の各ゴム組成物(FC及びSC)は、強化充填剤をベースとしている。
強化充填剤は、有機強化充填剤(例えばカーボンブラック)、無機強化充填剤(例えばシリカ)又はそれらの組み合わせを含み得る。
物品の製造に使用することができるゴム組成物を強化するその能力で知られているあらゆるタイプの強化充填剤、例えば、カーボンブラックなどの有機強化充填剤、又はシリカなどの無機強化充填剤を使用することができ、これらとカップリング剤とを公知のようにして組み合わせる。
本発明による物品は、第2のゴム組成物(SC)中の強化充填剤のphr量が、第1のゴム組成物(FC)中の強化充填剤のphr量よりも少ないという必須の特徴を有する。
【0013】
本発明の好ましい実施形態によると、第2のゴム組成物(SC)中の強化充填剤のphr量は、第1のゴム組成物(FC)中の強化充填剤のphr量の95%未満、好ましくは90%、より好ましくは85%、より一層好ましくは80%、特に75%未満、とりわけ70%、さらにとりわけ65%、有利には60%、より有利には55%、より一層有利には50%である。
本発明の好ましい実施形態によると、第1のゴム組成物(FC)中の強化充填剤の量は、70phr超、好ましくは75phr超、より好ましくは80phr超、より一層好ましくは85phr超、特に90phr超、とりわけ95phr超、さらにとりわけ100phr超、有利には105phr超、より有利には110phr超である。
本発明の好ましい実施形態によると、第1のゴム組成物(FC)中の強化充填剤の量は、300phr未満、好ましくは280phr未満、より好ましくは260phr未満、より一層好ましくは240phr未満、特に220phr未満、とりわけ200phr未満、さらにとりわけ180phr未満、有利には160phr未満、より有利には140phr未満、より一層有利には120phr未満である。
本発明の第4の態様は、第2のゴム組成物(SC)について、強化充填剤の量が、最大110phr、好ましくは最大105phr、より好ましくは最大100phr、より一層好ましくは最大95phr、特に最大90phr、とりわけ最大85phr、さらにとりわけ最大80phr、有利には最大75phr、より有利には最大70phr、より一層有利には最大65phrである、第1~第3の態様のいずれか1つに記載の物品である。
【0014】
本発明の第5の態様は、第2のゴム組成物(SC)について、強化充填剤の量が、少なくとも15phr、好ましくは少なくとも20phr、より好ましくは少なくとも25phr、より一層好ましくは少なくとも30phr、特に少なくとも35phr、とりわけ少なくとも40phr、さらにとりわけ少なくとも45phr、有利には少なくとも50phr、より有利には少なくとも55phr、より一層有利には少なくとも60phrである、第1~第4の態様のいずれか1つに記載の物品である。
本発明の好ましい実施形態によると、第1のゴム組成物(FC)について、強化充填剤は、主に無機強化充填剤を含み、すなわち、強化充填剤は、強化充填剤100質量%当たり、50質量%超の無機強化充填剤を含み、好ましくは、強化充填剤は、強化充填剤100質量%当たり、60質量%超、より好ましくは70質量%超、より一層好ましくは80質量%超、特に90質量%超の無機強化充填剤を含む。
好ましい実施形態のより好ましい実施形態によると、無機強化充填剤は、無機強化充填剤100質量%当たり、60質量%超、好ましくは70質量%超、より好ましくは80質量%超、より一層好ましくは90質量%超、特に100質量%のシリカを含む。
【0015】
本発明の第6の態様は、第2のゴム組成物(SC)について、強化充填剤が、主に無機強化充填剤を含み、すなわち、強化充填剤が、強化充填剤100質量%当たり、50質量%超の無機強化充填剤を含み、好ましくは、無機強化充填剤が、主にシリカを含み、すなわち、無機強化充填剤が、無機強化充填剤100質量%当たり、50質量%超のシリカを含む、第1~第5の態様のいずれか1つに記載の物品である。
第6の態様の好ましい実施形態によると、第2のゴム組成物(SC)について、強化充填剤は、強化充填剤100質量%当たり、60質量%超、好ましくは70質量%超、より好ましくは80質量%超、より一層好ましくは90質量%超の無機強化充填剤を含む。
「無機強化充填剤」という表現は、ここでは、カーボンブラックとは対照的に、中間カップリング剤以外の手段を用いずにそれ自体単独でタイヤの製造が意図されたゴム組成物を強化することができる、言い換えるなら、その強化役割において従来的なタイヤグレードのカーボンブラックに置き換わることができる、その色及びその由来(天然又は合成)に関係なく、「白色充填剤」、「透明充填剤」又はさらには「非黒色充填剤」とも呼ばれる、あらゆる無機又は鉱物充填剤を意味すると理解されるべきであり、そのような充填剤は、一般に、公知のようにして、その表面にヒドロキシル(-OH)基が存在することを特徴とする。
【0016】
この充填剤の存在下での物理的状態、つまり、粉末、マイクロビーズ、顆粒、ビーズ又はその他の好適な高密度化された形態であるかどうかは、重要ではない。当然のことながら、様々な無機充填剤、好ましくは高分散性シリカ質、アルミナ質充填剤又はそれらの組み合わせの混合物の無機強化充填剤を以下に記載する。
シリカ質タイプ(好ましくはシリカ(SiO2))、アルミナ質タイプ(好ましくはアルミナ(Al2O3))又はそれらの組み合わせの各鉱物充填剤は、特に無機強化充填剤として好適である。
第6の態様又は好ましい実施形態のより好ましい実施形態によると、第2のゴム組成物(SC)について、無機強化充填剤は、無機強化充填剤100質量%当たり、60質量%超、好ましくは70質量%超、より好ましくは80質量%超、より一層好ましくは90質量%超、特に100質量%のシリカを含む。
【0017】
シリカは、1種類のシリカであっても、又はいくつかのシリカの混合物であってもよい。使用されるシリカは、当業者に公知のあらゆる強化シリカ、特に、BET表面積及びCTAB比表面積がともに、最大450m2/g、好ましくは20~400m2/g、より好ましくは50~350m2/g、より一層好ましくは100~300m2/g、特に150~250m2/gであるあらゆる沈降シリカ又は熱分解法シリカであり得、BET表面積は、公知の方法、すなわち、‘‘The Journal of the American Chemical Society’’, Vol. 60, page 309, February 1938に記載されているBrunauer-Emmett-Teller法を使用したガス吸着によって、より具体的には、1996年12月のフランス規格NF ISO 9277(多点体積法(5点);ガス:窒素、脱気:160℃で1時間、相対圧力範囲p/po:0.05~0.17)に従って測定される。CTAB比表面積は、1987年11月のフランス規格NF T 45-007(方法B)に従って決定される。そのようなシリカは、被覆されていてもそうでなくてもよい。
【0018】
当業者は、この強化充填剤が、シリカなどの無機層で被覆されているか、又はそうでなければ、その表面に官能性部位、特にヒドロキシルを含み、充填剤とエラストマーとの間の接続を形成するためにカップリング剤の使用を必要とすることを条件として、別の性質、特に有機的性質の強化充填剤、例えばカーボンブラックが、本項に記載されている無機強化充填剤と同等の充填剤として使用され得ると理解する。例として、国際公開第96/37547号及び国際公開第99/28380号の特許出願に記載されているような、タイヤのためのカーボンブラックが挙げられ得る。
例えば、国際公開第03/002648号、国際公開第03/002649号及び国際公開第2004/033548号の出願に記載されているように、それらの特定の構造に応じて「対称」又は「非対称」と呼ばれるシランポリスルフィドを特に使用することができる。
特に好適なシランポリスルフィドは、以下の一般式(I):
(I)Z-A-Sx-A-Z
に対応し、
式中、
- xは、2~8(好ましくは2~5)の整数であり、
- Aは、二価炭化水素ラジカル(好ましくは、C1-C18アルキレン基又はC6-C12アリーレン基、とりわけC1-C10、特にC1-C4アルキレン、殊にプロピレン)であり、
- Zは、以下の式:
【0019】
【化1】
[式中、
- 非置換であるか又は置換されており、かつ互いに同一であるか又は異なるR
1基は、C
1-C
18アルキル、C
5-C
18シクロアルキル又はC
6-C
18アリール基(好ましくは、C
1-C
6アルキル、シクロヘキシル又はフェニル基、特にC
1-C
4アルキル基、とりわけ、メチル、エチル又はその両方)を表し、
- 非置換であるか又は置換されており、かつ互いに同一であるか又は異なるR
2基は、C
1-C
18アルコキシル又はC
5-C
18シクロアルコキシル基(好ましくは、C
1-C
8アルコキシル及びC
5-C
8シクロアルコキシルから選択される基、より好ましくは、C
1-C
4アルコキシル、特にメトキシル及びエトキシルから選択される基)を表し、先の定義に限定されることなく、特に好適である]
のうちの1つに対応する。
先の式(I)に対応するアルコキシシランポリスルフィドの混合物、特に、通常の市販の混合物の場合、「x」指数の平均値は、好ましくは2と5との間、より好ましくは約4の分数である。しかしながら、本発明は、例えばアルコキシシランジスルフィド(x=2)を用いて、有利に実行することもできる。
【0020】
シランポリスルフィドの例として、とりわけ、ビス((C1-C4)アルコキシル(C1-C4)アルキルシリル(C1-C4)アルキル)ポリスルフィド(特に、ジスルフィド、トリスルフィド又はテトラスルフィド)、例えば、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)又はビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドなどが挙げられる。これらの化合物のなかでも、特に、式[(C2H5O)3Si(CH2)3S2]2のTESPTと略されるビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、又は式[(C2H5O)3Si(CH2)3S]2のTESPDと略されるビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドが使用される。好ましい例として、ビス(モノ(C1-C4)アルコキシルジ(C1-C4)アルキルシリルプロピル)ポリスルフィド(特に、ジスルフィド、トリスルフィド又はテトラスルフィド)、とりわけ、国際公開第02/083782号(又は米国特許第7217751号)の特許出願に記載されているようなビス(モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィドも挙げられる。
【0021】
アルコキシシランポリスルフィド以外のカップリング剤としては、特に、国際公開第02/30939号(又は米国特許第6774255号)及び国際公開第02/31041号(又は米国特許出願公開第2004/051210号)の特許出願に記載されているような二官能性POS(ポリオルガノシロキサン)若しくはヒドロキシシランポリスルフィド(上記式(I)においてR2=OH)、又は例えば、国際公開第2006/125532号、国際公開第2006/125533号及び国際公開第2006/125534号の特許出願に記載されているようなアゾジカルボニル官能基を有するシラン若しくはPOSが挙げられる。
他の硫化シランの例としては、例えば、米国特許第6849754号、国際公開第99/09036号、国際公開第2006/023815号、国際公開第2007/098080号、国際公開第2008/055986号及び国際公開第2010/072685号の特許又は特許出願などに記載されているように、例えば、少なくとも1個のチオール(-SH)官能基(メルカプトシランと呼ばれる)、少なくとも1個のブロックされたチオール官能基又はその両方を有するシランが挙げられる。
当然のことながら、特に上述の特許出願である国際公開第2006/125534号に記載されているように、前述のカップリング剤の混合物も使用することができる。
本発明の好ましい実施形態によると、第1のゴム組成物(FC)、第2のゴム組成物(SC)又はそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つ、殊に各ゴム組成物(FC及びSC)は、無機強化充填剤(好ましくはシリカ)と、その量が無機強化充填剤(好ましくはシリカ)100質量%当たり0.5~15質量%であるカップリング剤とを含む。
【0022】
本発明の好ましい実施形態によると、第1のゴム組成物(FC)、第2のゴム組成物(SC)又はそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つ、殊に各ゴム組成物(FC及びSC)は、無機強化充填剤(好ましくはシリカ)と、その量が30phr未満(例えば、0phrと30phrとの間)、好ましくは25phr未満(例えば、0.2phrと25phrとの間)、より好ましくは20phr未満(例えば、0.4phrと20phrとの間)、より一層好ましくは15phr未満(例えば、0.6phrと15phrとの間)、特に10phr未満(例えば、0.8phrと10phrとの間)であるカップリング剤とを含む。
本発明の好ましい実施形態によると、第1のゴム組成物(FC)、第2のゴム組成物(SC)又はそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つ、殊に各ゴム組成物(FC及びSC)は、その量が15phr未満(例えば、0phrと15phrとの間)、好ましくは10phr未満(例えば、1phrと10phrとの間)、より好ましくは最大5phr(例えば2phrと5phrとの間)であるカーボンブラックを含む。
ゴム組成物(FC及びSC)中のカーボンブラックの含有量の上述の各範囲内では、無機強化充填剤によってもたらされる典型的な性能、すなわち低いヒステリシス損失へのさらなる悪影響なしでの、カーボンブラックの着色特性(黒色色素沈着剤)及び抗UV特性の利益がある。
【0023】
カーボンブラックとしては、タイヤで従来使用されているすべてのカーボンブラック(「タイヤグレード」ブラック)、例えば、ASTMグレードの100、200又は300シリーズの強化カーボンブラック(例えば、N115、N134、N234、N326、N330、N339、N347又はN375ブラックなど)、又は上位のシリーズのカーボンブラックであるASTMグレードの500、600、700又は800シリーズ(例えば、N550、N660、N683、N772、N774ブラックなど)が好適である。カーボンブラックは、例えば、マスターバッチの形態で、ジエンエラストマーなどのエラストマーマトリックスに既に組み込まれていてもよい(例えば、国際公開第97/36724号又は国際公開第99/16600号の出願を参照)。
本発明による物品の積層体の各ゴム組成物(FC及びSC)は、可塑剤をベースとしている。
可塑剤の役割は、エラストマー及び強化充填剤を希釈することによってマトリックスを軟化させることである。
本発明による物品は、第2のゴム組成物(SC)中の強化充填剤に対する可塑剤のphr量の比が、第1のゴム組成物(FC)中の強化充填剤に対する可塑剤のphr量の比よりも高いという必須の特徴を有する。
例えば、表1に示されているゴム組成物(C-0)では、可塑剤のphr量は、70phr[={55phr(炭化水素樹脂1)+5phr(液体可塑剤1)+10phr(液体可塑剤2)}]であり、強化充填剤のphr量は、113phr[={3phr(カーボンブラック1)+110phr(シリカ)}]であり、強化充填剤に対する可塑剤のphr量の比は、0.6[={55phr(炭化水素樹脂1)+5phr(液体可塑剤1)+10phr(液体可塑剤2)}/{3phr(カーボンブラック1)+110phr(シリカ)}]である。
【0024】
本発明の好ましい実施形態によると、第2のゴム組成物(SC)中の強化充填剤に対する可塑剤のphr量の比は、第1のゴム組成物(FC)中の強化充填剤に対する可塑剤のphr量の比の3/2倍超、好ましくは2倍超である。
本発明の好ましい実施形態によると、第1のゴム組成物(FC)について、強化充填剤に対する可塑剤のphr量の比は、1.0未満、好ましくは0.9未満、より好ましくは0.8未満、より一層好ましくは0.7未満である。
本発明の第7の態様は、第2のゴム組成物(SC)について、強化充填剤に対する可塑剤のphr量の比が、少なくとも1.0、好ましくは少なくとも1.1である、第1~第6の態様のいずれか1つに記載の物品である。
本発明の好ましい実施形態によると、第1のゴム組成物(FC)について、可塑剤の量は、30phr超、好ましくは35phr超、より好ましくは40phr超、より一層好ましくは45phr超、特に50phr超、とりわけ55phr超、さらにとりわけ60phr超、有利には65phr超である。
本発明の好ましい実施形態によると、第1のゴム組成物(FC)について、可塑剤の量は、110phr未満、好ましくは105phr未満、より好ましくは100phr未満、より一層好ましくは95phr未満、特に90phr未満、とりわけ85phr未満、さらにとりわけ80phr未満、有利には75phr未満である。
【0025】
本発明の第8の態様は、第2のゴム組成物(SC)について、可塑剤の量が、少なくとも10phr、好ましくは少なくとも15phr、より好ましくは少なくとも20phr、より一層好ましくは少なくとも25phr、特に少なくとも30phr、とりわけ少なくとも35phr、さらにとりわけ少なくとも40phr、有利には少なくとも45phr、より有利には少なくとも50phr、より有利には少なくとも55phr、より一層有利には少なくとも60phr、殊に少なくとも65phr、より殊には少なくとも70phrである、第1~第7の態様のいずれか1つに記載の物品である。
【0026】
本発明の好ましい実施形態によると、第2のゴム組成物(SC)について、可塑剤の量は、最大140phr、好ましくは最大130phr、より好ましくは最大120phr、より一層好ましくは最大110phr、特に最大100phr、とりわけ最大90phrである。
芳香族又は非芳香族の性質に関係なく、あらゆる伸展油、ジエンエラストマーなどのエラストマーマトリックスに関する可塑化特性で知られているあらゆる液体可塑剤を、エラストマー及び強化充填剤を希釈することによってマトリックスを軟化させるための液体可塑剤として使用することができる。大気圧下での周囲温度(20℃)では、より高い又はより低い粘性のこれらの可塑剤又は油は、大気圧下での周囲温度(20℃)で本質的に固体である炭化水素樹脂の可塑化とは対照的に、液体である(すなわち、最終的にそれらの容器の形状をとる能力を有する物質であることに留意されたい)。
本発明の好ましい実施形態によると、可塑剤は、液体ジエンポリマー、ポリオレフィン油、ナフテン油、パラフィン油、留出芳香族抽出物(DAE)油、媒体抽出溶媒和物(MES)、処理済み留出芳香族抽出物(TDAE)油、残留芳香族抽出物(RAE)油、処理済み残留芳香族抽出物(TRAE)油、安全残留芳香族抽出物(SRAE)油、鉱物油、植物油、エーテル可塑剤、エステル可塑剤、ホスフェート可塑剤、スルホネート可塑剤及びそれらの組み合わせからなる群から選択される液体可塑剤を含む。
【0027】
炭化水素樹脂は、当業者に周知のポリマーであり、本質的に炭素及び水素をベースとしており、したがって、ゴム組成物、例えばジエンエラストマー組成物中で本質的に混和性である。これらは、脂肪族若しくは芳香族であり得るか、又は脂肪族/芳香族タイプ、すなわち、脂肪族、芳香族若しくはその両方のモノマーをベースとしているものであり得る。これらは、天然又は合成であり得、石油ベース(その場合には、石油樹脂の名称でも知られている)であってもそうでなくてもよい。これらは、好ましくは、もっぱら炭化水素であり、すなわち、これらは、炭素原子及び水素原子のみを含む。
好ましくは、「可塑化する」ような炭化水素樹脂は、以下の特性:
- 20℃超(例えば、20℃と400℃との間)、好ましくは30℃超(例えば、30℃と300℃との間)、より好ましくは40℃超(例えば、40℃と200℃との間)のTgDSC、
- 400g/molと2000g/molとの間(より好ましくは、500g/molと1500g/molとの間)の数平均分子量(Mn)、
- 3未満、より好ましくは2未満の多分散指数(PI)(PI=Mw/Mnであり、Mwは質量平均分子量であることに留意されたい)
のうちの少なくとも1つ、より好ましくはすべてを呈する。
炭化水素樹脂のマクロ構造(Mw、Mn及びPI)は、立体排除クロマトグラフィー(SEC):溶媒テトラヒドロフラン;温度35℃;濃度1g/l;流量1ml/分;注入前に0.45μmの気孔率のフィルタを通して濾過された溶液;ポリスチレン標準でのMoore較正;順番に3つの「Waters」カラム(「Styragel」HR4E、HR1及びHR0.5)のセット;示差屈折計(「Waters 2410」)及びその関連オペレーティングソフトウェア(「Waters Empower」)によって決定される。
【0028】
本発明の好ましい実施形態によると、可塑剤は、シクロペンタジエン(CPDと略される)ホモポリマー又はコポリマー樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPDと略される)ホモポリマー又はコポリマー樹脂、テルペンホモポリマー又はコポリマー樹脂、C5留分ホモポリマー又はコポリマー樹脂、C9留分ホモポリマー又はコポリマー樹脂、アルファ-メチルスチレンホモポリマー又はコポリマー樹脂及びそれらの組み合わせからなる群から選択される炭化水素樹脂を含む。先のコポリマー樹脂のなかでも、(D)CPD/ビニル芳香族コポリマー樹脂、(D)CPD/テルペンコポリマー樹脂、(D)CPD/C5留分コポリマー樹脂、(D)CPD/C9留分コポリマー樹脂、テルペン/ビニル芳香族コポリマー樹脂、テルペン/フェノールコポリマー樹脂、C5留分/ビニル芳香族コポリマー樹脂、C9留分/ビニル芳香族コポリマー樹脂及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるものを使用することがより好ましい。
【0029】
ここで、「テルペン」という用語は、α-ピネン、β-ピネン及びリモネンモノマーを公知のようにして組み合わせたものであり、その化合物が公知のようにして3種の可能な異性体の形態で存在するリモネンモノマーを使用することが好ましい:L-リモネン(左旋性鏡像異性体)、D-リモネン(右旋性鏡像異性体)、又は右旋性及び左旋性鏡像異性体のラセミ体であるジペンテン。スチレン、α-メチルスチレン、オルト-、メタ-若しくはパラ-メチルスチレン、ビニルトルエン、パラ-(tert-ブチル)スチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ヒドロキシスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、又はC9留分(若しくはより一般にはC8-C10留分)から得られるあらゆるビニル芳香族モノマーが、例えばビニル芳香族モノマーとして好適である。好ましくは、ビニル芳香族化合物は、スチレンであるか、又はC9留分(若しくはより一般にはC8-C10留分)から得られるビニル芳香族モノマーである。好ましくは、ビニル芳香族化合物は、考慮中のコポリマーにおいてモル分率として表される少ないモノマーである。
【0030】
先の好ましい樹脂は、当業者に周知であり、市販されており、例えば、
- ポリリモネン樹脂:「Dercolyte L120」(Mn=625g/mol;Mw=1010g/mol;PI=1.6;TgDSC=72℃)という名称でDRTによるもの又は「Sylvagum TR7125C」(Mn=630g/mol;Mw=950g/mol;PI=1.5;TgDSC=70℃)という名称でArizona Chemical Companyによるもの、
- C5留分/ビニル芳香族、とりわけ、C5留分/スチレン又はC5留分/C9留分、コポリマー樹脂:「Super Nevtac 78」、「Super Nevtac 85」若しくは「Super Nevtac 99」という名称でNeville Chemical Companyによるもの、「Wingtack Extra」という名称でGoodyear Chemicalsによるもの、「Hikorez T1095」及び「Hikorez T1100」という名称でKolonによるもの又は「Escorez 2101」及び「ECR 373」という名称でExxonによるもの、
- リモネン/スチレンコポリマー樹脂:「Dercolyte TS 105」という名称でDRTによるもの又は「ZT115LT」及び「ZT5100」という名称でArizona Chemical Companyによるもの
である。
【0031】
他の好ましい樹脂の例としては、フェノール変性α-メチルスチレン樹脂も挙げられ得る。これらのフェノール変性樹脂を特徴付けるために、「ヒドロキシル価」と呼ばれる数(規格ISO 4326に従って測定され、mgKOH/gで表される)が公知のように使用されることに留意されたい。α-メチルスチレン樹脂、特にフェノールで変性されたものは、当業者に周知であり、例えば「Sylvares SA 100」(Mn=660g/mol;PI=1.5;TgDSC=53℃);「Sylvares SA 120」(Mn=1030g/mol;PI=1.9;TgDSC=64℃);「Sylvares 540」(Mn=620g/mol;PI=1.3;TgDSC=36℃;ヒドロキシル価=56mgKOH/g);及び「Sylvares 600」(Mn=850g/mol;PI=1.4;TgDSC=50℃;ヒドロキシル価=31mgKOH/g)という名称でArizona Chemical Companyによって市販されている。
【0032】
本発明の好ましい実施形態によると、第1のゴム組成物(FC)について、可塑剤は、主に炭化水素樹脂を含み、すなわち、可塑剤は、可塑剤100質量%当たり、50質量%超の炭化水素樹脂を含み、好ましくは、可塑剤は、可塑剤100質量%当たり、60質量%超、より好ましくは70質量%超、より一層好ましくは80質量%超、特に90質量%超の炭化水素樹脂を含む。
本発明の第9の態様は、第2のゴム組成物(SC)について、可塑剤が、主に炭化水素樹脂を含み、すなわち、可塑剤が、可塑剤100質量%当たり、50質量%超の炭化水素樹脂を含み、好ましくは、可塑剤が、可塑剤100質量%当たり、60質量%超、より好ましくは70質量%超、より一層好ましくは80質量%超、特に90質量%超の炭化水素樹脂を含む、第1~第8の態様のいずれか1つに記載の物品である。
本発明の第10の態様は、第2のゴム組成物(SC)中のエラストマーマトリックスと可塑剤との組み合わせの平均ガラス転移温度が、第1のゴム組成物(FC)中のエラストマーマトリックスと可塑剤との組み合わせの平均ガラス転移温度よりも高くなっている、第1~第9の態様のいずれか1つに記載の物品である。
平均ガラス転移温度は、FOX式((TgDSC平均+273)-1=Σ(wi/(Σ(wi))/(TgDSCi+273))によって計算される。TgDSC平均:平均ガラス転移温度、wi:エラストマーマトリックス及び可塑剤中のi番目の成分のphr量;TgDSCi:i番目の成分の℃でのガラス転移温度。
【0033】
例えば、表1に示されているゴム組成物(C-0)では、成分は、BR、SBR1、炭化水素樹脂1、液体可塑剤1及び液体可塑剤2である。
本発明の好ましい実施形態によると、第1のゴム組成物(FC)について、エラストマーマトリックスと可塑剤との組み合わせの平均ガラス転移温度は、-35℃未満である。
本発明の好ましい実施形態によると、第1のゴム組成物(FC)について、エラストマーマトリックスと可塑剤との組み合わせの平均ガラス転移温度は、-110℃超である。
本発明の第11の態様は、第2のゴム組成物(SC)について、エラストマーマトリックスと可塑剤との組み合わせの平均ガラス転移温度が、-35℃以上、好ましくは-30℃以上、より好ましくは-25℃以上である、第1~第10の態様のいずれか1つに記載の物品である。
本発明の好ましい実施形態によると、第2のゴム組成物(SC)について、エラストマーマトリックスと可塑剤との組み合わせの平均ガラス転移温度は、35℃以下、好ましくは30℃以下、より好ましくは25℃以下、さらに好ましくは20℃以下、特に15℃以下、とりわけ10℃以下、さらにとりわけ5℃以下、有利には0℃以下である。
【0034】
本発明による物品の積層体の各ゴム組成物(FC及びSC)は、硫黄ベース加硫促進剤をベースとしている。
硫黄加硫反応を促進する硫黄ベース加硫促進剤は、分子内の少なくとも1個の硫黄原子をベースとしている加硫促進剤である。
硫黄ベース加硫促進剤は、各ゴム組成物(FC及びSC)における硫黄加硫反応を促進させ得る。
本発明による物品は、第2のゴム組成物(SC)中の硫黄ベース加硫促進剤のphr量が、第1のゴム組成物(FC)中の硫黄ベース加硫促進剤のphr量よりも少ないという必須の特徴を有する。
【0035】
本発明の好ましい実施形態によると、第1のゴム組成物(FC)中の硫黄ベース加硫促進剤のphr量は、最大10phr、好ましくは最大9.0phr、より好ましくは最大8.0phr、より一層好ましくは最大7.0phr、特に最大6.0phr、とりわけ最大5.0phr、さらにとりわけ最大4.0phr、有利には最大3.0phrである。
本発明の好ましい実施形態によると、第1のゴム組成物(FC)中の硫黄ベース加硫促進剤のphr量は、少なくとも1.5phr、好ましくは少なくとも1.6phr、より好ましくは少なくとも1.7phr、より一層好ましくは少なくとも1.8phr、特に少なくとも1.9phr、とりわけ少なくとも2.0phr、さらにとりわけ少なくとも2.1phr、有利には少なくとも2.2phrである。
【0036】
本発明の第12の態様は、第2のゴム組成物(SC)中の硫黄ベース加硫促進剤のphr量が、1.5phr未満、好ましくは1.4phr、より好ましくは1.3phr未満、より一層好ましくは1.2phr未満、特に1.1phr未満、とりわけ1.0phr未満である、第1~第11の態様のいずれか1つに記載の物品である。
本発明の好ましい実施形態によると、第2のゴム組成物(SC)について、硫黄ベース加硫促進剤の量は、0.1phr超、好ましくは0.2phr超、より好ましくは0.3phr超、より一層好ましくは0.4phr超、特に0.5phr超、とりわけ0.6phr超、さらにとりわけ0.7phr超、有利には0.8phr超である。
本発明の好ましい実施形態によると、硫黄ベース加硫促進剤は、スルフェンアミドタイプの加硫促進剤(例えば、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(TBBS)、2-(モルホリノチオ)ベンゾチアゾール(MBS)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(DCBS)、N-Tert-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(TBSI))、チアゾールタイプの加硫促進剤(例えば、2,2’-ジチオビスベンゾチアゾール(MBTS)、亜鉛2-メルカプトベンゾチアゾール(ZMBT))、チオ尿素タイプの加硫促進剤、チウラムタイプの加硫促進剤(例えば、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD))、ジチオカルバメートタイプの加硫促進剤(例えば、亜鉛エチルフェニルジチオカルバメート(ZEPC)、亜鉛ジベンジルジチオカルバメート(ZDBzC))又はそれらの組み合わせをベースとしている。
【0037】
本発明の好ましい実施形態によると、第1のゴム組成物(FC)、第2のゴム組成物(SC)又はそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つ、特に各ゴム組成物は、硫黄ベース加硫促進剤以外の加硫促進剤をさらにベースとしており、好ましくは、硫黄ベース加硫以外の加硫促進剤は、グアニジン誘導体又はその組み合わせをベースとしており、より好ましくは、硫黄ベース加硫以外の加硫促進剤は、ジフェニルグアニジンをベースとしている。
硫黄ベース加硫促進剤以外の加硫促進剤は、各ゴム組成物(FC及びSC)における加硫反応を促進させ得る。
【0038】
本発明の好ましい実施形態によると、ゴム組成物(FC及びSC)のうちの少なくとも1つ、特に各ゴム組成物は、加硫活性化剤をさらにベースとしており、好ましくは、加硫促進剤は、亜鉛(特に、純亜鉛、亜鉛誘導体(例えば、亜鉛脂肪酸塩)又はそれらの組み合わせ)、脂肪酸(特にステアリン酸)又はそれらの組み合わせをベースとしている。
加硫活性化剤は、硫黄ベース加硫促進剤、硫黄ベース加硫以外の加硫促進剤又はそれらの組み合わせをベースとしている加硫促進剤の効率を増加させ得る。
【0039】
本発明の第13の態様は、ゴム組成物(FC及びSC)各々が、硫黄をさらにベースとしており、第2のゴム組成物(SC)中の硫黄のphr量が、第1のゴム組成物(FC)中の硫黄のphr量よりも少ない、第1~第12の態様のいずれか1つに記載の物品である。
硫黄は、硫黄、硫黄供与剤に由来する硫黄又はそれらの組み合わせをベースとし得る、加硫剤、すなわち、加硫硫黄である。
第13の態様の好ましい実施形態によると、各ゴム組成物(FC及びSC)中の硫黄のphr量は、10phr未満、好ましくは3.0phr未満である。
第13の態様の好ましい実施形態によると、各ゴム組成物(FC及びSC)中の硫黄のphr量は、0.1phr超、好ましくは0.5phr超である。
【0040】
本発明の好ましい実施形態によると、第1のゴム組成物(FC)、第2のゴム組成物(SC)又はそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つ、特に各ゴム組成物は、硫黄以外の加硫剤をさらにベースとしており、好ましくは、硫黄以外の加硫剤は、過酸化物、ビスマレイミド又はそれらの組み合わせである。
本発明による物品の積層体の各ゴム組成物(FC及びSC)は、エラストマー組成物で一般に使用されている通常の添加剤、例えば、保護剤、例えば、抗オゾンワックス、化学オゾン劣化防止剤、酸化防止剤、粘着付与樹脂、メチレン受容体(例えば、フェノールノボラック樹脂)若しくはメチレン供与体(例えば、ヘキサメチレンテトラミン(HMT)若しくはヘキサメトキシメチルメラミン(H3M))又はそれらの組み合わせのすべて又は一部をベースとし得る。
【0041】
本発明による積層体の各ゴム組成物(FC及びSC)は、当業者に周知の2つの連続した調製段階を使用して、適切なミキサ内で製造され得る:110℃と190℃との間、好ましくは130℃と180℃との間の最高温度までの高温での熱機械的加工又は混練の第1の段階(「非生産」段階と呼ばれる)、続いて、典型的には110℃未満、例えば40℃と100℃との間のより低い温度での機械的加工の第2の段階(「生産」段階と呼ばれる)、すなわち、硫黄ベース加硫促進剤が組み込まれる仕上げ段階、好ましくは、硫黄ベース加硫促進剤と、硫黄、過酸化物、ビスマレイミド、加硫遅延剤又はそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つとが組み込まれる仕上げ段階。
各そのような組成物(FC及びSC)の製造に使用することができる方法は、例えば、好ましくは、以下のステップ:
- 第1の段階(「非生産」段階と呼ばれる)の最中に、強化充填剤及び可塑剤をミキサにおいてエラストマーマトリックスに組み込み、すべてを110℃と190℃との間の最高温度に達するまで熱機械的に(例えば、1回以上のステップで)混練するステップ、
- 組み合わされた混合物を100℃未満の温度に冷却するステップ、
- その後、第2の段階(「生産」段階と呼ばれる)の最中に、硫黄ベース加硫促進剤、好ましくは硫黄ベース加硫促進剤と、硫黄、過酸化物、ビスマレイミド、加硫遅延剤又はそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つとを組み込むステップ、及び
- すべてを110℃未満の最高温度まで混練するステップ
を含む。
【0042】
例として、第1の(非生産)段階は、単一の熱機械的段階で実行され得、その段階の最中に、必要な構成成分すべてが標準的な内部ミキサなどの適切なミキサ内に導入され、続いて、第2のステップで、例えば1~2分にわたって混練した後に、硫黄ベース加硫促進剤(及び硫黄、過酸化物、ビスマレイミド、加硫遅延剤又はそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つ)を除いて、他の添加剤、任意の追加的な充填剤-被覆剤又は加工助剤が導入される。この非生産段階における総混練時間は、好ましくは、1分と15分との間である。
このようにして得られた混合物を冷却した後に、硫黄ベース加硫促進剤(及び硫黄、過酸化物、ビスマレイミド、加硫遅延剤又はそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つ)は、次いで、一般にオープンミルなどの外部ミキサ内で、低温(例えば、40℃と100℃との間)で組み込まれ得、組み合わされた混合物は、次いで、数分、例えば2分と15分との間にわたって混合される(第2の(生産)段階)。
このようにして得られた各最終組成物は、その後、特に実験室特性評価のために、例えばシート若しくはプラークの形態で押出若しくはカレンダー加工されるか、又はタイヤトレッドなどの物品の積層体として直接的に使用することができるゴムプロファイルドエレメントの形態で押出される。
本発明による物品の積層体は、第1のゴム組成物(FC)で作製された第1の部分(FP)と、第2のゴム組成物(SC)で作製された第2の部分(SP)とを含む、少なくとも2つの重なり合った部分を含む。
【0043】
本発明による物品の積層体の作製に関して、(第1のゴム組成物(FC)としての)均質なゴム組成物の(第1の部分(FP)としての)第1の層及び(第2のゴム組成物(SC)としての)均質なゴム組成物の(第2の部分(SP)としての)第2の層を構築し、次いで、第1の層を第2の層の上に重なり合わせて積層体を得ることが可能である。
本発明の好ましい実施形態によると、第2のゴム組成物(SC)から作製された第2の部分(SP)は、第1のゴム組成物(FC)から作製された第1の部分(FP)に隣接している。
本発明による物品は、地面と接触することが意図されており、物品の積層体の第2の部分(SP)は、第1の部分(FP)よりも地面から遠くに位置しており、すなわち、第1の部分(FP)は、第2の部分(SP)よりも地面に近くに配置されている。
本発明による物品の積層体の第2の部分(SP)は、第1の部分(FP)よりも地面から遠い。
【0044】
本発明の第14の態様は、第1の部分(FP)が、物品の耐用年数中に地面と接触することが意図されており、好ましくは、第1の部分(FP)及び第2の部分(SP)が、物品の耐用期間中に地面と接触することが意図されており、すなわち、第2の部分(SP)が、第1の部分(FP)が摩耗した後に物品の使用中に地面と接触することも意図されている、第1~第13の態様のいずれか1つに記載の物品である。
本発明の別の好ましい実施形態によると、第1の部分(FP)は、物品の耐用年数中に地面と接触することが意図されているが、第2の部分(SP)は、物品の耐用年数中に地面と接触することが意図されていない。
耐用年数は、物品を使用するための期間を意味する(例えば、物品がタイヤである場合、物品の新しい状態から最終状態までの期間であり、最終状態は、タイヤのトレッドにおける摩耗インジケータバーに達した状態を意味する)。
【0045】
本発明の好ましい実施形態によると、物品は、タイヤ、靴又はキャタピラトラックであり、好ましくは、物品の積層体は、タイヤトレッド、靴又はキャタピラトラックに含まれる。
本発明の第15の態様は、物品がタイヤであり、好ましくは、積層体がタイヤトレッドに含まれる、第1~第14の態様のいずれか1つに記載の物品である。
第15の態様の好ましい実施形態によると、物品は、地面と少なくとも部分的に接触することが意図されたトレッド、外気と接触するが地面と接触しないことが意図された2つのサイドウォール、2つのビード、2つのビードで終わる2つのサイドウォールによって延長されたクラウン、ラジアルテキスタイルカードによって強化された少なくとも1つのプライに形成されたカーカス強化材であるいくつかのタイヤ部分を含み、カーカス強化材が、クラウン及びサイドウォールに入り込み、カーカス強化材が、2つのビードに固定されている、タイヤであって、好ましくは、カーカス強化材とトレッドとの間に配置されたクラウン強化材をさらに含み、より好ましくは、タイヤ内部の空間からの空気の拡散からカーカス強化材を保護することが意図されたインナーライナーをさらに含み、インナーライナーが、カーカス強化材よりも半径方向で内側に配置されている、タイヤである。
「ラジアル」は、タイヤの回転軸に垂直な方向である「半径方向」を意味する。
第15の態様の好ましい実施形態によると、タイヤは、4×4(四輪駆動)車両及びSUV(スポーツユーティリティビークル)車両を含む乗用自動車、並びにバン及び大型車両(すなわち、バス又は大型道路輸送車両(ローリー、トラクター、トレーラー))から特に選択される産業車両に装備することが特に意図されている。
【0046】
加硫(又は硬化)は、硬化温度、採用された加硫システム及び考慮中の組成物の加硫速度論に特に依存して、例えば5分と90分との間で変化し得る十分な時間にわたって、一般に110℃と190℃との間の温度で、公知のようにして実行される。
本発明は、生の状態(すなわち、硬化前)及び硬化状態(すなわち、架橋又は加硫後)の両方での、上記のゴム組成物、積層体、物品、タイヤ及びタイヤトレッドに関する。
本発明を以下の非限定的な例によってさらに説明する。
【実施例】
【0047】
本発明の効果を確認するために、4種のゴム組成物(C-0~C-3)を使用した。ゴム組成物は、(強化充填剤としての)シリカとカーボンブラックとのブレンド、(可塑剤としての)炭化水素樹脂、液体可塑剤又はその両方、及び(「CBS」と略される、硫黄ベース加硫促進剤としての)N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミドで強化された、(SBRとBRとのブレンド又はIRのみである、エラストマーマトリックスとしての)ジエンエラストマーをベースとしている。ゴム組成物の配合は、phrで表される様々な生成物の量とともに表1に示されている。強化充填剤に対する可塑剤のphr量の各比及びエラストマーマトリックスと可塑剤との組み合わせの各平均ガラス転移温度も表1に示されている。
各ゴム組成物は、以下のように製造した:強化充填剤と、可塑剤と、エラストマーマトリックスと、硫黄及び硫黄ベース加硫促進剤(さらに、C-0の場合には加硫遅延剤(N-シクロヘキシルチオフタルイミド(「CTP」と略される))を除く他の様々な成分とを、約60℃の初期容器温度を有する内部ミキサに連続的に導入した;ミキサは、このようにして約70%(体積%)満たされた。次いで、165℃の最大「落下」温度に達するまで、合計で約3~4分続く熱機械加工(非生産段階)を1段階で実行した。このようにして得られた混合物を回収及び冷却し、次いで、硫黄及びスルフェンアミドタイプの加硫促進剤(さらに、C-0の場合にはCTP)を20~30℃で外部ミキサ(ホモフィニッシャー)に組み込み、すべてを適切な時間(例えば、5分と12分との間)にわたって混合した(生産段階)。
【0048】
その後、このようにして得られたゴム組成物を、それらの物理的若しくは機械的特性を測定するために、ゴムのシート(厚さ2~3mm)若しくは微細シートの形態、又は例えばタイヤ半完成品、特にタイヤトレッドとしての所望の寸法への切断、組み立て若しくはその両方の後に直接的に使用することができるプロファイルドエレメントの形態のいずれかでカレンダー処理した。
さらに、第1のゴム組成物から作製された半径方向外側部分と第2のゴム組成物から作製された半径方向内側部分とを含む積層体を含むトレッドを有し、半径方向外側部分が、半径方向内側部分に隣接しており、積層体が、表2に示されているように、第1のゴム組成物(C-0)及び第2のゴム組成物(C-0、C-1、C-2及びC-3)のシートを重ね合わせることによってそれぞれ製造されている、4つのタイヤ(T-0:比較例、T-1:参照、T-2及びT-3:本発明による例)を比較する。
【0049】
周方向、軸方向又はその両方に延在する溝を含むトレッドを有するこれらのタイヤは、従来的に製造し、タイヤトレッドのゴム組成物及び積層体を除いてすべての点で同一であった。これらのタイヤは、ラジアルカーカス乗用車タイヤであり、これらのサイズは、235/45R18である。
ロードノイズ性能評価として、4輪すべてに先の同種のタイヤを装着し、かつ窓近傍の乗員の耳元にマイクを設置した2500ccの乗用車を、80kphの一定速度で直線路の風化したアスファルトにおいて走行させ、マイクを使用して室内ノイズを測定し、50~500HzのA特性音圧レベルを計算した。表2に示されている結果は、参照(T-1)に対するdB(A)での差で表され、値が低いほど、性能がより良好であることを示す。
表2の結果は、本発明による例(T-2及びT-3)が、比較例及び参照(T-0又はT-1)よりも良好なロードノイズ性能値を有することを実証している。
結論として、本発明による物品は、改善されたロードノイズ性能を可能にする。
【0050】
【0051】
【0052】
【手続補正書】
【提出日】2023-12-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面と接触することが意図された物品であって、
前記物品が、
第1のゴム組成物(FC)から作製された第1の部分(FP)と、
第2のゴム組成物(SC)から作製された第2の部分(SP)と
を含む、少なくとも2つの重なり合った部分を含む積層体を含み、
前記第2の部分(SP)が、前記第1の部分(FP)よりも地面から遠くに位置しており、
前記ゴム組成物(FC及びSC)各々が、少なくとも、
エラストマーマトリックス、
強化充填剤、
可塑剤及び
硫黄ベース加硫促進剤
をベースとしており、
前記第2のゴム組成物(SC)中の前記強化充填剤のphr量が、前記第1のゴム組成物(FC)中の前記強化充填剤のphr量よりも少なく、
前記第2のゴム組成物(SC)中の前記強化充填剤に対する前記可塑剤のphr量の比が、前記第1ゴム組成物(FC)中の前記強化充填剤に対する前記可塑剤のphr量の比よりも高く、
前記第2のゴム組成物(SC)中の前記硫黄ベース加硫促進剤のphr量が、前記第1のゴム組成物(FC)中の前記硫黄ベース加硫促進剤のphr量よりも少ない、
物品。
【請求項2】
前記第1のゴム組成物(FC)、前記第2のゴム組成物(SC)又はそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つが、前記エラストマーマトリックスが、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種のジエンエラストマーを含むものである、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記第2のゴム組成物(SC)が、前記エラストマーマトリックスが、少なくとも50phrのポリイソプレンを含むものである、請求項1又は2に記載の物品。
【請求項4】
前記第2のゴム組成物(SC)が、前記強化充填剤の量が、最大110phrであるものである、請求項1~3のいずれか1項に記載の物品。
【請求項5】
前記第2のゴム組成物(SC)が、前記強化充填剤が、主に無機強化充填剤を含むものである、請求項1~
4のいずれか1項に記載の物品。
【請求項6】
前記第2のゴム組成物(SC)が、前記強化充填剤に対する前記可塑剤のphr量の比が、少なくとも1.0であるものである、請求項1~
5のいずれか1項に記載の物品。
【請求項7】
前記第2のゴム組成物(SC)が、前記可塑剤が、主に炭化水素樹脂を含むものである、請求項1~
6のいずれか1項に記載の物品。
【請求項8】
前記第2のゴム組成物(SC)中の前記硫黄ベース加硫促進剤のphr量が、1.5phr未満である、請求項1~
7のいずれか1項に記載の物品。
【請求項9】
前記第1の部分(FP)が、前記物品の耐用年数中に地面と接触することが意図されている、請求項1~
8のいずれか1項に記載の物品。
【請求項10】
前記物品がタイヤである、請求項1~
9のいずれか1項に記載の物品。
【国際調査報告】