(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-16
(54)【発明の名称】ナトリウムイオン電池正極活物質及びその製造方法と使用
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20240208BHJP
H01M 10/054 20100101ALI20240208BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240208BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20240208BHJP
C01B 35/12 20060101ALI20240208BHJP
C01B 25/45 20060101ALI20240208BHJP
C01G 53/00 20060101ALN20240208BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M10/054
H01M4/505
H01M4/131
C01B35/12 D
C01B25/45 Z
C01G53/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545953
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(85)【翻訳文提出日】2023-07-26
(86)【国際出願番号】 CN2022082410
(87)【国際公開番号】W WO2023137859
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】202210079041.9
(32)【優先日】2022-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523284653
【氏名又は名称】江蘇翔鷹新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU XIANGYING NEW ENERGY TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲ゴン▼ 黎明
(72)【発明者】
【氏名】鐘 歓
(72)【発明者】
【氏名】黄 傑
(72)【発明者】
【氏名】蒋 文
(72)【発明者】
【氏名】陳 亮
【テーマコード(参考)】
4G048
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD04
4G048AE05
5H029AJ03
5H029AJ05
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AL13
5H029AM03
5H029AM05
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5H029CJ02
5H029CJ08
5H029CJ28
5H029HJ01
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5H029HJ05
5H029HJ08
5H029HJ10
5H029HJ14
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA19
5H050BA15
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB12
5H050FA19
5H050GA02
5H050GA06
5H050GA10
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA08
5H050HA10
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
本発明は、ナトリウムイオン電池正極活物質及びその製造方法と使用を開示する。該ナトリウムイオン電池正極活物質の化学式は、Na
xNi
yFe
zMn
gM
hA
mO
2であり、ここで、Mは、Ti、Al、Mg、Ca、Zr、Y、Zn、Nb、及びWからなる群から選択される一種又は複数種の組み合わせであり、Aは、B、P、及びCからなる群から選択される一種又は複数種の組み合わせであり、0.80≦x≦1.40、0.05≦y≦0.95、0.05≦z≦0.95、0.05≦g≦0.95、0.01≦h≦0.50、0.01≦m≦0.30である。本発明は、三元鉄マンガンニッケルナトリウムイオン電池正極活物質に元素Mと元素Aを添加し、同時に、各元素の比率を制御することにより、ナトリウムイオン電池正極活物質が完全な層状単結晶構造を形成することを実現することができ、且つ粒子が大きく、最終的に安定した活物質が実現され、ナトリウムイオン電池で使用されると、より高いグラム容量を発揮することを確保する前提下で、高温でのサイクル性能が大幅に改善される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質は化学式Na
xNi
yFe
zMn
gM
hA
mO
2で表される物質であり、ここで、Mは、Ti、Al、Mg、Ca、Zr、Y、Zn、Nb、及びWからなる群から選択される一種又は複数種の組み合わせであり、Aは、B、P、及びCからなる群から選択される一種又は複数種の組み合わせであり、0.80≦x≦1.40、0.05≦y≦0.95、0.05≦z≦0.95、0.05≦g≦0.95、0.01≦h≦0.50、0.01≦m≦0.30であることを特徴とするナトリウムイオン電池正極活物質。
【請求項2】
前記化学式Na
xNi
yFe
zMn
gM
hA
mO
2において、0.90≦x≦1.20、1.2-(y+z+g+h)≧0であることを特徴とする請求項1に記載のナトリウムイオン電池正極活物質。
【請求項3】
前記化学式Na
xNi
yFe
zMn
gM
hA
mO
2において、0.95≦x≦1.05、0.1≦y≦0.5、0.1≦z≦0.6、0.1≦g≦0.5、0.01≦h≦0.3、0.01≦m≦0.2であることを特徴とする請求項1に記載のナトリウムイオン電池正極活物質。
【請求項4】
前記化学式Na
xNi
yFe
zMn
gM
hA
mO
2において、0.98≦x≦1.03、0.1≦y≦0.4、0.2≦z≦0.5、0.1≦g≦0.4、0.01≦h≦0.2、0.01≦m≦0.1であることを特徴とする請求項1に記載のナトリウムイオン電池正極活物質。
【請求項5】
前記Mは、Ti、Mg、及びCaからなる群から選択される一種又は複数種の組み合わせであり、前記Aは、B、P、及びCからなる群から選択される2種又は3種の組み合わせであり、前記B、P、Cのモル比は2~4:0.1~1.5:0.1~1.5であることを特徴とする請求項1に記載のナトリウムイオン電池正極活物質。
【請求項6】
前記正極活物質は、平均粒子径が1~30ミクロンの層状単結晶構造を有することを特徴とする請求項1に記載のナトリウムイオン電池正極活物質。
【請求項7】
前記正極活物質のタップ密度は、1.33~2.5g/cm
3、pH値は、12.6以下であることを特徴とする請求項1に記載のナトリウムイオン電池正極活物質。
【請求項8】
ニッケル塩、マンガン塩、及び水酸化物を錯化剤の存在下で反応させ、ニッケルマンガン水酸化物を生成するステップ(1)と、
ニッケルマンガン水酸化物、鉄源、元素Mを含む化合物、元素Aを含む化合物、ナトリウム源に水を加えてスラリーを作り、サンディングした後に混合スラリーを得るステップ(2)と、
前記混合スラリーを乾燥させて、焼結し、前記ナトリウムイオン電池正極活物質を得るステップ(3)と、を含むことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のナトリウムイオン電池正極活物質の製造方法。
【請求項9】
ステップ(1)の前記ニッケルマンガン水酸化物の化学式はNi
aMn
b(OH)
2であり、ここで、0.05≦a≦0.95、0.05≦b≦0.95、1-a-b>0であることを特徴とする請求項8に記載のナトリウムイオン電池正極活物質の製造方法。
【請求項10】
ステップ(1)の前記ニッケル塩は、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、及び硝酸ニッケルからなる群から選択される1種又は複数種の組み合わせであり、前記マンガン塩は、硫酸マンガン、塩化マンガン、及び硝酸マンガンからなる群から選択される1種又は複数種の
組み合わせであり、前記水酸化物は、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群から選択される1種または2種であり、前記錯化剤は、エチルアミン、エチレンジアミン四酢酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、及びアンモニア水からなる群から選択される1種または複数種の組み合わせであることを特徴とする請求項8に記載のナトリウムイオン電池正極活物質の製造方法。
【請求項11】
ステップ(1)において、ニッケル塩とマンガン塩を金属塩水溶液に調製し、次に水酸化物の水溶液と錯化剤とを混合して混合溶液を取得し、混合溶液をpH9~12、40~70℃及び撹拌下で反応させてニッケルマンガン水酸化物を生成させることを特徴とする請求項8に記載のナトリウムイオン電池正極活物質の製造方法。
【請求項12】
前記金属塩水溶液におけるニッケルイオン、マンガンイオンの総濃度は0.5~2mol/L、前記混合溶液における錯化剤の濃度は0.3~5mol/Lであることを特徴とする請求項11に記載のナトリウムイオン電池正極活物質の製造方法。
【請求項13】
ステップ(2)における前記鉄源は、酸化第一鉄、三酸化二鉄、及び四酸化三鉄からなる群から選択される1種又は複数種の組合せであり、前記ナトリウム源は、炭酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムから選択された1種または2種であることを特徴とする請求項8に記載のナトリウムイオン電池正極活物質の製造方法。
【請求項14】
ステップ(2)における前記元素Mを含む化合物は、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化亜鉛、酸化ニオブ、又は酸化タングステンから選択され、前記元素Aを含む化合物は、ホウ酸、酸化ホウ素、四ホウ酸ナトリウム、五酸化二リン、リン酸、リン酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、グルコース、スクロース、ポリエチレングリコール及びポリビニルアルコールからなる群から選択される1種又は複数種の組合せであることを特徴とする請求項8に記載のナトリウムイオン電池正極活物質の製造方法。
【請求項15】
ステップ(2)において、モル量によれば、前記ニッケルマンガン水酸化物におけるニッケル、マンガン、鉄源における鉄、元素Mを含む化合物における元素M及び元素Aを含む化合物における元素Aの合計モル量と、前記ナトリウム源におけるナトリウムのモル量との比率は1:0.90~1.20であることを特徴とする請求項8に記載のナトリウムイオン電池正極活物質の製造方法。
【請求項16】
ステップ(2)において、前記サンディング時間は0.5~8h、研磨体は、粒子径が0.1~0.8mmの酸化ジルコニウムボールであり、サンディング速度は800~3000rpmであることを特徴とする請求項8に記載のナトリウムイオン電池正極活物質の製造方法。
【請求項17】
前記混合スラリーにおける粒子の中央値粒子径は20~800nmであり、前記混合スラリーの固形物量は10%~60%であることを特徴とする請求項8に記載のナトリウムイオン電池正極活物質の製造方法。
【請求項18】
ステップ(3)において、前記乾燥は噴霧乾燥であり、噴霧乾燥装置の霧化ディスクの回転速度は1000~3000rpm、入口空気温度は150~300℃であり、出口空気温度は80~120℃であることを特徴とする請求項8に記載のナトリウムイオン電池正極活物質の製造方法。
【請求項19】
ステップ(3)において、前記焼結は、空気中で行われ、前記焼結温度は750~1000℃、時間は、5~25hであることを特徴とする請求項8に記載のナトリウムイオン
電池正極活物質の製造方法。
【請求項20】
ナトリウムイオン電池正極で使用される請求項1~7のいずれか一項に記載のナトリウムイオン電池正極活物質の使用。
【請求項21】
正極活物質、接着剤及び導電剤を含み、前記正極活物質は、請求項1~7のいずれか一項に記載のナトリウムイオン電池正極活物質を含むことを特徴とするナトリウムイオン電池正極材料。
【請求項22】
請求項21に記載のナトリウムイオン電池正極材料によって製造されることを特徴とするナトリウムイオン電池正極。
【請求項23】
正極を含み、前記正極は、請求項22に記載のナトリウムイオン電池正極を含むことを特徴とするナトリウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナトリウムイオン電池の分野に属し、具体的にはナトリウムイオン電池正極活物質及びその製造方法と使用に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、電気自動車、中型及び大型エネルギー貯蔵電力ステーション、電動二輪車、電気工具、ポータブル電子機器等の分野で広く使用されている。しかし、電気自動車や中型及び大型エネルギー貯蔵電力ステーション分野においてリチウムイオン電池の爆発的な成長により、構造的なリチウム資源不足の問題は顕著になり、リチウム塩の価格の高騰や、リチウムイオン電池コストの急増が引き起こされた。ナトリウムイオン電池はリチウムイオン電池と類似した電気化学的特性をもち、そして、ナトリウムイオン電池は資源が豊富であり、低コストであるため、近年では、人気のある開発対象となり、電動二輪車や中型及び大型のエネルギー貯蔵電力ステーション分野では広く使用されることが期待される。
【0003】
ナトリウムイオンの半径が大きいため、ナトリウムイオン電池は、選択された正極活物質が比較的限られ、現在、潜在的な利用可能性があるナトリウムイオン電池正極活物質は、プルシアンブルー、層状酸化物、ポリアニオンという3種類のシステムを含む。そのうち、O3構造の層状酸化物系は、リチウムイオン電池の三元系正極活物質と類似しており、大容量や高いコンパクト密度等の利点を有し、そのため最も潜在的な正極材料と見なされ、国内外のナトリウムイオン電池企業に採用されている。
【0004】
中国特許CN109817970Aは、単結晶ナトリウムイオン電池電極材料の製造方法を開示し、鉄塩、マンガン塩、M塩の混合水溶液、沈殿剤、錯化剤及び分散剤を混合して反応させた後、得られた固体は電池電極材料の前駆体であり、前駆体をナトリウム塩と混合し、焼結して冷却すると、単結晶ナトリウムイオン電池の電極材料が得られ、ここで分散剤は、ポリアクリル酸アンモニウムである。上記の特定のポリアクリル酸アンモニウム分散剤を使用しないと、結晶粒の結晶形状は明らかではなく、ミクロンレベルの大きな単結晶を形成することができず、対応する電池電極材料の放電容量と容量維持率も低い。
【0005】
層状酸化物正極活物質は優れた電気化学的特性を示すが、充電及び放電プロセス中に多くの構造相転移が起こり、空気貯蔵性能が低く、表面アルカリ性が高くなり、また電解液との副反応等の問題も存在するため、このような活物質の大規模な商業的使用は大幅に制限されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来技術の欠点に対して、ナトリウムイオン電池の優れたグラム容量(capacity per gram)性能を確保し、高温でのサイクル性能を改善でき、同時に安定した単結晶構造を形成でき、さらに表面アルカリが低いナトリウムイオン電池正極活物質を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の技術的問題を解決するために、本発明は、以下の技術的解決手段を採用する。
ナトリウムイオン電池正極活物質であって、前記正極活物質は化学式NaxNiyFezMngMhAmO2で表される物質あり、ここで、Mは、Ti、Al、Mg、Ca、Zr、Y、Zn、Nb、及びWからなる群から選択される一種又は複数種の組み合わせであり、Aは、B、P、及びCからなる群から選択される一種又は複数種の組み合わせであり、0.80≦x≦1.40、0.05≦y≦0.95、0.05≦z≦0.95、0.05≦g≦0.95、0.01≦h≦0.50、0.01≦m≦0.30。
【0009】
本発明のいくつかの好ましい側面と具体的な側面によると、前記化学式NaxNiyFezMngMhAmO2において、0.90≦x≦1.20、1.2-(y+z+g+h)≧0である。
【0010】
本発明のいくつかの好ましい側面と具体的な側面によると、前記化学式NaxNiyFezMngMhAmO2において、0.95≦x≦1.05、0.1≦y≦0.5、0.1≦z≦0.6、0.1≦g≦0.5、0.01≦h≦0.3、0.01≦m≦0.2である。
【0011】
本発明のいくつかの好ましい側面と具体的な側面によると、前記化学式NaxNiyFezMngMhAmO2において、0.98≦x≦1.03、0.1≦y≦0.4、0.2≦z≦0.5、0.1≦g≦0.4、0.01≦h≦0.2、0.01≦m≦0.1である。
【0012】
本発明のいくつかの発明を実施するための形態において、前記Mは、Ti、Mg、及びCaからなる群から選択される一種又は複数種の組み合わせであり、前記Aは、B、P、及びCからなる群から選択される2種又は3種の組み合わせであり、前記B、P、Cのモル比は2~4:0.1~1.5:0.1~1.5である。
【0013】
本発明のいくつかの発明を実施するための形態において、前記正極活物質は、平均粒子径が1~30ミクロンの層状単結晶構造を有する。
【0014】
本発明のいくつかの発明を実施するための形態において、前記正極活物質のタップ密度(tap density)は、1.33~2.5g/cm3 であり、pH値は12.6以下である。
【0015】
発明者は、研究により、ナトリウムイオン電池の正極活物質に、元素Mと元素Aを添加し、同時に元素ナトリウム、ニッケル、鉄、マンガン及び元素M、A、Oの比率を制御すると、ナトリウムイオン電池正極活物質が完全な層状単結晶構造を形成することを実現できることを発見し、この活物質は大きな粒子を形成することができ、粒子が密に成長しており、活物質のタップ密度が大幅に増加し、且つ該物質のpH値が低く、表面アルカリ性が低く、安定した表面特性を持ち、電解液との副反応が少なく、同時に、ナトリウムイオン電池に使用すると、より高いグラム容量を発揮することを確保する前提の下で、高温でのサイクル性能を大幅に改善することができる。
【0016】
本発明のナトリウムイオン電池正極活物質の中で、それぞれの元素が異なる役割を果たし、そのうち元素Ni及びMnはナトリウムイオン電池により高いグラム容量を発揮させる。元素Feには、グラム容量の発揮と材料放電電圧の改善という二重の効果があり、元素Mは、活物質の安定性を向上させ、元素Bは、活物質に大きな粒子単結晶構造を形成するように促進し、材料のタップ密度を改善し、元素Pは、活物質の高温でのサイクル性能を向上させることができ、また、それぞれの元素にも相乗的な相互作用を有し、互いに機能するため、本発明のナトリウムイオン電池正極活物質が上記のそれぞれの優れた性能を
実現し、高温でのサイクル性能を顕著に向上させる。
【0017】
本発明はまた、上記ナトリウムイオン電池正極活物質の製造方法を提供し、前記製造方法は、
ニッケル塩、マンガン塩、及び水酸化物を錯化剤の存在下で反応させ、ニッケルマンガン水酸化物を生成するステップ(1)と、
ニッケルマンガン水酸化物、鉄源(iron source)、元素Mを含む化合物、元素Aを含む化合物、ナトリウム源(sodium source)に水を加えてスラリーを作り、サンディングした後に混合スラリーを得るステップ(2)と、
前記混合スラリーを乾燥させて、焼結し、前記ナトリウムイオン電池正極活物質を得るステップ(3)と、を含む。
【0018】
さらに、ステップ(1)の前記ニッケルマンガン水酸化物の化学式はNiaMnb(OH)2であり、ここで、0.05≦a≦0.95、0.05≦b≦0.95、1-a-b>0。
【0019】
さらに、ステップ(1)の前記ニッケル塩は、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、及び硝酸ニッケルからなる群から選択される1種又は複数種の組み合わせであり、前記マンガン塩は、硫酸マンガン、塩化ニッケル、及び硝酸ニッケルからなる群から選択される1種又は複数種の組み合わせであり、前記水酸化物は、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群から選択される1種又は2種であり、前記錯化剤は、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、及びアンモニア水からなる群から選択される1種または複数種の組み合わせである。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態では、ステップ(1)において、ニッケル塩とマンガン塩を金属塩水溶液に調製し、次に水酸化物の水溶液と錯化剤とを混合して混合溶液を取得し、混合溶液をpH9~12、40~70℃及び撹拌下で反応させニッケルマンガン水酸化物を生成させる。
【0021】
より好ましくは、前記金属塩水溶液におけるニッケルイオン、マンガンイオンの総濃度は0.5~2mol/Lであり、前記混合溶液における錯化剤の濃度は0.3~5mol/Lである。
【0022】
より好ましくは、前記撹拌の速度は500~1200r/minであり、反応した後に老化、洗浄、乾燥させてNiaMnb(OH)2を得る。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態では、ステップ(2)における前記鉄源は、酸化第一鉄、三酸化二鉄、及び四酸化三鉄からなる群から選択される1種又は複数種の組合せであり、前記ナトリウム源は、炭酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムから選択された1種または2種である。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態では、ステップ(2)における前記元素Mを含む化合物は、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化亜鉛、酸化ニオブ、又は酸化タングステンから選択され、前記元素Aを含む化合物は、ホウ酸、酸化ホウ素、四ホウ酸ナトリウム、五酸化二リン、リン酸、リン酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、グルコース、スクロース、ポリエチレングリコール及びポリビニルアルコールからなる群から選択される1種又は複数種の組合せである。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態では、ステップ(2)において、モル量によると、前記ニ
ッケルマンガン水酸化物におけるニッケル、マンガン、鉄源における鉄、元素Mを含む化合物における元素M及び元素Aを含む化合物における元素Aの合計モル量と、前記ナトリウム源におけるナトリウムのモル量とのの比率は1:0.90~1.20である。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態では、ステップ(2)において、前記サンディングの時間は0.5~8h、研磨体は、粒子径が0.1~0.8mmの酸化ジルコニウムボールであり、サンディング速度は800~3000rpmである。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態では、前記混合スラリーの固形物量(solid content)は、10%~60%であり、前記混合スラリーにおける粒子の中央値粒子径は20~800nmである。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態では、ステップ(3)において、前記乾燥は噴霧乾燥であり、噴霧乾燥装置の霧化ディスクの回転速度は1000~3000rpm、入口空気温度は150~300℃であり、出口空気温度は80~120℃である。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態では、ステップ(3)において、前記焼結は、空気中で行われ、前記焼結温度は750~1000℃、時間は、5~25hである。好ましくは、焼結した後に粉砕する。
【0030】
本発明の製造方法において、均一な沈殿を形成しやすい元素Ni及びMnの場合、原材料としてその水酸化物を使用することで反応活性を改善することができ、均一な沈殿を形成しにくい元素Fe及びMの場合、原材料としてその酸化物又は元素Mを含む化合物を使用することで、対応する元素含有量の安定性を確保する。ニッケルマンガン水酸化物、元素Mを含む化合物、元素Aを含む化合物、ナトリウム源を混合させた後にサンディングすることは、各種の元素が十分に均一に混合することを確保することができ、噴霧乾燥を使用することは、さまざまな原材料が成形の過程で成分偏析しないことを確保できる。
【0031】
本発明はまた、ナトリウムイオン電池正極で使用される上記ナトリウムイオン電池正極活物質の使用を提供する。
【0032】
本発明はまた、ナトリウムイオン電池正極材料を提供し、正極活物質、接着剤及び導電剤を含み、前記正極活物質は、前述のナトリウムイオン電池正極活物質を含む。
【0033】
本発明はまた、前述のナトリウムイオン電池正極材料によって製造されたナトリウムイオン電池正極を提供する。
【0034】
本発明はまた、正極を含むナトリウムイオン電池を提供し、前記正極は、前述のナトリウムイオン電池正極を含む。
【発明の効果】
【0035】
従来技術に比べて、本発明は以下の技術的な利点を有する。
本発明のナトリウムイオン電池正極活物質は、完全な層状単結晶構造を形成することができ、その単結晶粒子が大きく、密に成長しており、正極活物質のタップ密度が大幅に増加し、且つ該物質は、pH値が低く、安定した表面特性を持ち、電解液との副反応が少なく、同時に、ナトリウムイオン電池に使用すると、より高いグラム容量を発揮することを確保する前提の下で、高温でのサイクル性能を大幅に改善することができる。
本発明の製造方法は、優れた性能であるナトリウムイオン電池正極活物質を大量かつ安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】実施例1で製造されたNaNi
0.25Fe
0.4Mn
0.25Ti
0.05B
0.05O
2の走査電子顕微鏡図である。
【
図2】実施例1で製造されたNaNi
0.25Fe
0.4Mn
0.25Ti
0.05B
0.05O
2のXRD図である。
【
図3】実施例1で製造されたNaNi
0.25Fe
0.4Mn
0.25Ti
0.05B
0.05O
2の充放電曲線図である。
【
図4】実施例1で製造されたNaNi
0.25Fe
0.4Mn
0.25Ti
0.05B
0.05O
2が2.0~4.0V/1C高温(60℃)でのサイクル図である。
【
図5】実施例2で製造されたNaNi
0.25Fe
0.40Mn
0.25Ti
0.03B
0.05P
0.02O
2の走査電子顕微鏡図である。
【
図6】実施例2で製造されたNaNi
0.25Fe
0.40Mn
0.25Ti
0.03B
0.05P
0.02O
2のXRD図である。
【
図7】実施例2で製造されたNaNi
0.25Fe
0.40Mn
0.25Ti
0.03B
0.05P
0.02O
2の充放電曲線図である。
【
図8】実施例2で製造されたNaNi
0.25Fe
0.40Mn
0.25Ti
0.03B
0.05P
0.02O
2が2.0~4.0V/1C高温(60℃)でのサイクル図である。
【
図9】比較例1で製造されたNaNi
0.25Fe
0.45Mn
0.25Ti
0.05O
2の走査電子顕微鏡図である。
【
図10】比較例1で製造されたNaNi
0.25Fe
0.45Mn
0.25Ti
0.05O
2のXRD図である。
【
図11】比較例1で製造されたNaNi
0.25Fe
0.45Mn
0.25Ti
0.05O
2の充放電曲線図である。
【
図12】比較例1で製造されたNaNi
0.25Fe
0.45Mn
0.25Ti
0.05O
2が2.0~4.0V/1C高温(60℃)でのサイクル図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の内容をよりよく理解するために、以下は具体的な実施例と添付図面を参照しながらさらに説明する。ただし、これらの実施例は、本発明の範囲を制限するものではなく、発明をさらに説明するためにのみ使用されることを理解すべきである。さらに、本発明の内容を読んだ後、本発明の原理から逸脱することなく、当業者によって本発明に対して行われた様々な改良及び調整は、依然として本発明の保護範囲に含まれることを理解されたい。以下において、特に明示がない限り、すべての原材料は商業的に入手したものである。
【0038】
以下の各実施例及び比較例において、次の方法を採用して充放電曲線及び高温サイクル性能テストを行った。まずナトリウムイオン電池を製造した。準備された正極活物質を20g秤取し、0.64gの導電剤SPとNMPに溶解した0.64gのPVDFを加え、均一に混合した後にアルミニウム箔に塗布して電極板を製造した。アルゴンガス雰囲気のグローブボックスでは、金属ナトリウムシートを負極、Celgard2700をダイアフラム、1mol/L NaPF6+EC:DEC(1:1)+5%FECを電解液として、ボタン電池を組み立てた。次に、電圧範囲2.0~4.0V、充電及び放電倍率0.1C、電流13mA、テスト温度25±2℃で充放電曲線をテストし、電圧範囲2.0~4.0V、充電及び放電倍率1C、電流130mA、60℃で100サイクルのサイクル性能をテストした。
【0039】
実施例1
本実施例は、ナトリウムイオン電池正極活物質を提供し、その化学式は、NaNi0.25Fe0.4Mn0.25Ti0.05B0.05O2であり、製造方法は、
硫酸ニッケル、硫酸マンガンをNi:Mnモル比=1:1で純水に添加し、金属元素の総濃度が1.3mol/Lである溶液に調製したステップ(1)と、
4.0mol/Lの水酸化ナトリウム溶液及び5.0mol/Lのアンモニア水溶液を調製したステップ(2)と、
ステップ(1)で得られた金属塩溶液及びステップ(2)で得られ水酸化ナトリウム溶液、アンモニア水溶液をそれぞれ2.5L/h、1.5L/h、0.2L/hの速度で反応釜に添加し、反応温度を50℃、反応のpHを11.5、撹拌速度を650rpmに制御し、12h反応させて前駆体を得ったステップ(3)と、
上記前駆体を純水で洗浄し、濾過し、乾燥させた後にNi0.5Mn0.5(OH)2を得たステップ(4)と、
2.0molのNi0.5Mn0.5(OH)2、0.8molのFe2O3、0.2molのTiO2、0.2molのH3BO3、2.0molのNa2CO3を取り、すべての原材料を3.5Lの水に加えてスラリーを調製したステップ(5)と、
ステップ(5)で得られたスラリーをサンドミルに入れ、3h研磨し、研磨体は、粒子径0.2mmの酸化ジルコニウムボールであり、サンディング回転速度は2500rpmであり、研磨して平均粒子径約350nmの混合スラリーを得ったステップ(6)と、
ステップ(6)で得られた混合スラリーを撹拌タンクに移し、十分に撹拌し、純水を添加して固形物量30±1%のスラリーを調製し、噴霧乾燥装置の霧化の周波数が35Hz、入口空気温度が190℃、出口空気温度が85℃である条件下で噴霧乾燥させ、乾燥後の生成物を空気雰囲気炉で850~940℃で12時間焼結し、80℃以下に冷却し、ジョークラッシュとロールで粉砕し、ナトリウムイオン電池正極活物質を得て、サンプル名称はNFM242-TBであったステップ(7)と、を含む。
【0040】
NFM242-TBの走査電子顕微鏡図を
図1に示すように、該材料が単結晶の外観であることがわかる。NFM242-TBのXRDを
図2に示すように、該材料がα-NaFeO
2型の純粋相層状構造であることがわかる。NFM242-TBの充放電曲線図を
図3に示すように、2.0~4.0Vの電圧ウィンドウでは、0.1C倍率での放電容量は124.8mAh/gであることがわかる。NFM242-TBの高温サイクル図を
図4に示すように、60℃、2.0~4.0Vの電圧ウィンドウでは、1C倍率で、100回にサイクルした後の容量保持率は89.04%であることがわかる。
【0041】
実施例2
本実施例のナトリウムイオン電池正極活物質の化学式は、NaNi0.25Fe0.40Mn0.25Ti0.03B0.05P0.02O2である。
【0042】
製造方法は基本的に実施例1と同じであり、相違点は、ステップ(5)を、2.0molのNi0.5Mn0.5(OH)2、0.8molのFe2O3、0.12molのTiO2、0.2molのH3BO3、0.08molのH3PO4、2.0molのNa2CO3を取り、すべての原材料を3.5Lの水に添加してスラリーを調製したことに置き換えるだけである。サンプル名称はNFM242-TBPである。
【0043】
NFM242-TBPの走査電子顕微鏡図を
図5に示すように、該材料が単結晶の外観であることがわかる。NFM242-TBPのXRDを
図6に示すように、該材料がα-NaFeO
2型の純粋相層状構造であることがわかる。NFM242-TBPの充放電曲線図を
図7に示すように、2.0~4.0Vの電圧ウィンドウでは、0.1C倍率での放電容量は125mAh/gであることがわかる。NFM242-TBPの高温サイクル図を
図8に示すように、60℃、2.0~4.0Vの電圧ウィンドウでは、1C倍率で、100回にサイクルした後の容量保持率は93.31%であることがわかる。
【0044】
実施例3
本実施例のナトリウムイオン電池正極活物質の化学式は、NaNi0.25Fe0.4Mn0.25Ti0.05P0.05O2である。
【0045】
製造方法は基本的に実施例1と同じであり、相違点は、ステップ(5)を、2.0molのNi0.5Mn0.5(OH)2、0.8molのFe2O3、0.20molのTiO2、0.2molのH3PO4、2.0molのNa2CO3を取り、すべての原材料を3.5Lの水に添加してスラリーを調製したことに置き換えるだけである。サンディング、噴霧乾燥、焼結、ジョークラッシュとロールで粉砕することにより、最終的にナトリウムイオン電池正極活物質NaNi0.25Fe0.4Mn0.25Ti0.05P0.05O2を得て、サンプル名称はNFM242-TPであった。
【0046】
実施例4
本実施例のナトリウムイオン電池正極活物質の化学式は、NaNi0.25Fe0.4Mn0.25Ca0.05B0.05O2である。
【0047】
製造方法は基本的に実施例1と同じであり、相違点は、ステップ(5)を、2.0molのNi0.5Mn0.5(OH)2、0.8molのFe2O3、0.2molのCaCO3、0.2molのH3BO3、2.0molのNa2CO3を取り、すべての原材料を3.5Lの水に添加してスラリーを調製したことだけである。サンディング、噴霧乾燥、焼結、ジョークラッシュとロールで粉砕することにより、最終的にナトリウムイオン電池正極活物質NaNi0.25Fe0.4Mn0.25Ca0.05B0.05O2を得て、サンプル名称はNFM242-CaBであった。
【0048】
実施例5
本実施例のナトリウムイオン電池正極活物質の化学式は、NaNi0.25Fe0.4Mn0.25Ca0.05P0.05O2である。
【0049】
製造方法は基本的に実施例1と同じであり、相違点は、ステップ(5)を、2.0molのNi0.5Mn0.5(OH)2、0.8molのFe2O3、0.2molのCaCO3、0.2molのH3PO4、2.0molのNa2CO3を取り、すべての原材料を3.5Lの水に添加してスラリーを調製したことだけである。サンディング、噴霧乾燥、焼結、ジョークラッシュとロールで粉砕することにより、最終的にナトリウムイオン電池正極活物質NaNi0.25Fe0.4Mn0.25Ca0.05P0.05O2を得て、サンプル名称はNFM242-CaPであった。
【0050】
実施例6
本実施例のナトリウムイオン電池正極活物質の化学式は、NaNi0.25Fe0.40Mn0.25Ca0.03B0.05P0.02O2である。
【0051】
製造方法は基本的に実施例1と同じであり、相違点は、ステップ(5)を、2.0molのNi0.5Mn0.5(OH)2、0.8molのFe2O3、0.12molのCaCO3、0.2molのH3BO3、0.08molのH3PO4、2.0molのNa2CO3を取り、すべての原材料を3.5Lの水に添加してスラリーを調製したことに置き換えるだけである。サンディング、噴霧乾燥、焼結、ジョークラッシュとロールで粉砕することにより、最終的にナトリウムイオン電池正極活物質NaNi0.25Fe0.40Mn0.25Ca0.03B0.05P0.02O2を得て、サンプル名称はNFM242-CaBPであった。
【0052】
比較例1
基本的に実施例1と同じであり、その相違点は、ステップ(5)を、2.0molのN
i0.5Mn0.5(OH)2、0.9molのFe2O3、0.2molのTiO2、2.0molのNa2CO3を取り、すべての原材料を3.5Lの水に添加してスラリーを調製したことに置き換えるだけである。サンディング、噴霧乾燥、焼結、ジョークラッシュとロールで粉砕することにより、最終的にナトリウムイオン電池正極活物質NaNi0.25Fe0.45Mn0.25Ti0.05O2を得て、サンプル名称はNFM242-Tであった。
【0053】
NFM242-Tの走査電子顕微鏡図を
図9に示すように、該材料は小さな一次顆粒から凝集したゆるい球状構造を有し、単結晶構造を形成することはできないことがわかる。NFM242-TのXRDを
図10に示すように、該材料がα-NaFeO
2型の純粋相層状構造であることがわかる。NFM242-Tの充放電曲線図を
図11に示すように、2.0~4.0Vの電圧ウィンドウでは、0.1C倍率での放電容量は126.6mAh/gであることがわかる。NFM242-Tの高温サイクル図を
図12に示すように、60℃、2.0~4.0Vの電圧ウィンドウでは、1C倍率で、100回にサイクルした後の容量保持率は82.8%であることがわかる。
【0054】
比較例2
基本的に実施例1と同じであり、その相違点は、ステップ(5)を、2.0molのNi0.5Mn0.5(OH)2、0.9molのFe2O3、0.2molのCaCO3、2.0molのNa2CO3を取り、すべての原材料を3.5Lの水に添加してスラリーを調製したことに置き換えるだけである。サンディング、噴霧乾燥、焼結、ジョークラッシュとロールで粉砕することにより、最終的にナトリウムイオン電池正極活物質NaNi0.25Fe0.45Mn0.25Ca0.05O2を得て、サンプル名称はNFM242-Caであった。
【0055】
比較例3
基本的に実施例1と同じであり、その相違点は、ステップ(5)を、2.0molのNi0.5Mn0.5(OH)2、1.0molのFe2O3、2.0molのNa2CO3を取り、すべての原材料を3.5Lの水に添加してスラリーを調製したことに置き換えるだけである。サンディング、噴霧乾燥、焼結、ジョークラッシュとロールで粉砕することにより、最終的にナトリウムイオン電池正極活物質NaNi0.25Fe0.50Mn0.25O2を得て、サンプル名称はNFM252であった。
【0056】
性能テスト
上記実施例1~7及び比較例1~3で得られた正極活物質に対して物理化学的性能テストを行い、ここでpH値のテスト方法は、調製された層状酸化物正極材料を5g秤取し、50mlの脱イオン水に分散させ、マグネチックスターラーで5分間撹拌し、25℃で30分間静置してから、混合液をろ過して、pH計でろ液のpH値をテストした。物理化学的性能結果を以下の表1に示す。
【0057】
【0058】
上記の実施例1~7及び比較例1~2で得られた正極活物質を、ナトリウムイオン電池性能テストに使用し、ナトリウムイオン電池の製造方法は、準備された正極活物質を20g秤取し、0.64gの導電剤SPとNMPに溶解した0.64gのPVDFを加え、均一に混合した後にアルミニウム箔に塗布して電極板を製造した。アルゴンガス雰囲気のグローブボックスでは、金属ナトリウムシートを負極、Celgard2700をダイアフラム、1mol/L NaPF6+EC:DEC(1:1)+5%FECを電解液として、ボタン電池を組み立てたことである。テスト電圧区間は2.0~4.0V、0.1C電流は13mAであり、テスト結果を表2に示す。
【0059】
【0060】
上記の表1~2から、本発明はナトリウムイオン電池正極活物質に元素B及びPを添加し、すべての元素の比率を制御することにより、正極活物質が完全な層状単結晶構造を形成することを実現でき、且つ単結晶粒子が大きく、密に成長しており、正極活物質のタップ密度が大幅に増加し、pH値が低下し、該正極活物質をナトリウムイオン電池に使用する場合、より高いグラム容量を発揮することを確保する前提の下で、高温でのサイクル性能を大幅に改善できることがわかる。
【0061】
上記の実施例は、本発明の技術的概念及び特徴を説明するためのものであり、当業者に本発明の内容を理解させ、それに基づいて実施することを目的としている。これらの実施例は本発明の保護範囲を制限するものではなく、本発明の精神に基づいて行われたすべての同等の変更や修正は、本発明の保護範囲に含まれるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質は化学式Na
xNi
yFe
zMn
gM
hA
mO
2で表される物質であり、ここで、Mは、Ti、Al、Mg、Ca、Zr、Y、Zn、Nb、及びWからなる群から選択される一種又は複数種の組み合わせであり、Aは、B、P、及びCからなる群から選択される一種又は複数種の組み合わせであり、0.80≦x≦1.40、0.05≦y≦0.95、0.05≦z≦0.95、0.05≦g≦0.95、0.01≦h≦0.50、0.01≦m≦0.30であることを特徴とするナトリウムイオン電池正極活物質。
【請求項2】
前記化学式Na
xNi
yFe
zMn
gM
hA
mO
2において、0.90≦x≦1.20、1.2-(y+z+g+h)≧0であることを特徴とする請求項1に記載のナトリウムイオン電池正極活物質。
【請求項3】
前記化学式Na
xNi
yFe
zMn
gM
hA
mO
2において、0.95≦x≦1.05、0.1≦y≦0.5、0.1≦z≦0.6、0.1≦g≦0.5、0.01≦h≦0.3、0.01≦m≦0.2であることを特徴とする請求項1に記載のナトリウムイオン電池正極活物質。
【請求項4】
前記化学式Na
xNi
yFe
zMn
gM
hA
mO
2において、0.98≦x≦1.03、0.1≦y≦0.4、0.2≦z≦0.5、0.1≦g≦0.4、0.01≦h≦0.2、0.01≦m≦0.1であることを特徴とする請求項1に記載のナトリウムイオン電池正極活物質。
【請求項5】
前記Mは、Ti、Mg、及びCaからなる群から選択される一種又は複数種の組み合わせであり、前記Aは、B、P、及びCからなる群から選択される2種又は3種の組み合わせであ
ることを特徴とする請求項1に記載のナトリウムイオン電池正極活物質。
【請求項6】
前記AはB、P及びCの3種の組み合わせであり、前記B、P、Cのモル比は2~4:0
.1~1.5:0.1~1.5であることを特徴とする請求項1に記載のナトリウムイオン電池正極活物質。
【請求項7】
前記AはB及びPの2種の組み合わせであり、前記B、Pのモル比は2~4:0.1~1.5であることを特徴とする請求項1に記載のナトリウムイオン電池正極活物質。
【請求項8】
前記正極活物質は、平均粒子径が1~30ミクロンの層状単結晶構造を有
し、又は
前記正極活物質のタップ密度は、1.33~2.5g/cm
3
、pH値は、12.6以下であることを特徴とする請求項1に記載のナトリウムイオン電池正極活物質。
【請求項9】
ニッケル塩、マンガン塩、及び水酸化物を錯化剤の存在下で反応させ、ニッケルマンガン水酸化物を生成するステップ(1)と、
ニッケルマンガン水酸化物、鉄源、元素Mを含む化合物、元素Aを含む化合物、ナトリウム源に水を加えてスラリーを作り、サンディングした後に混合スラリーを得るステップ(2)と、
前記混合スラリーを乾燥させて、焼結し、前記ナトリウムイオン電池正極活物質を得るステップ(3)と、を含むことを特徴とする請求項1~
8のいずれか一項に記載のナトリウムイオン電池正極活物質の製造方法。
【請求項10】
ステップ(1)の前記ニッケルマンガン水酸化物の化学式はNi
aMn
b(OH)
2であり、ここで、0.05≦a≦0.95、0.05≦b≦0.95、1-a-b
≧0であ
り、又は
ステップ(2)において、モル量によれば、前記ニッケルマンガン水酸化物におけるニッケル、マンガン、鉄源における鉄、元素Mを含む化合物における元素M及び元素Aを含む化合物における元素Aの合計モル量と、前記ナトリウム源におけるナトリウムのモル量との比率は1:0.90~1.20であることを特徴とする請求項
9に記載のナトリウムイオン電池正極活物質の製造方法。
【請求項11】
ステップ(1)の前記ニッケル塩は、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、及び硝酸ニッケルからなる群から選択される1種又は複数種の組み合わせであり、前記マンガン塩は、硫酸マンガン、塩化マンガン、及び硝酸マンガンからなる群から選択される1種又は複数種の組み合わせであり、前記水酸化物は、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群から選択される1種または2種であり、前記錯化剤は、エチルアミン、エチレンジアミン四酢酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、及びアンモニア水からなる群から選択される1種または複数種の組み合わせであ
り、又は
ステップ(2)における前記鉄源は、酸化第一鉄、三酸化二鉄、及び四酸化三鉄からなる群から選択される1種又は複数種の組合せであり、前記ナトリウム源は、炭酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムから選択された1種または2種であり、又は
ステップ(2)における前記元素Mを含む化合物は、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化亜鉛、酸化ニオブ及び酸化タングステンからなる群から選択される1種又は複数種の組合せであり、前記元素Aを含む化合物は、ホウ酸、酸化ホウ素、四ホウ酸ナトリウム、五酸化二リン、リン酸、リン酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、グルコース、スクロース、ポリエチレングリコール及びポリビニルアルコールからなる群から選択される1種又は複数種の組合せであることを特徴とする請求項
9に記載のナトリウムイオン電池正極活物質の製造方法。
【請求項12】
ステップ(1)において、ニッケル塩とマンガン塩を金属塩水溶液に調製し、次に水酸化物の水溶液と錯化剤とを混合して混合溶液を取得し、混合溶液をpH9~12、40~70℃及び撹拌下で反応させてニッケルマンガン水酸化物を生成させ
、又は
ステップ(2)において、前記サンディング時間は0.5~8h、研磨体は、粒子径が0.1~0.8mmの酸化ジルコニウムボールであり、サンディング速度は800~3000rpmであり、又は
前記混合スラリーにおける粒子の中央値粒子径は20~800nmであり、前記混合スラリーの固形物量は10%~60%であり、又は
ステップ(3)において、前記乾燥は噴霧乾燥であり、噴霧乾燥装置の霧化ディスクの回転速度は1000~3000rpm、入口空気温度は150~300℃であり、出口空気温度は80~120℃であり、
ステップ(3)において、前記焼結は、空気中で行われ、前記焼結温度は750~1000℃、時間は、5~25hであることを特徴とする請求項
9に記載のナトリウムイオン電池正極活物質の製造方法。
【請求項13】
正極活物質、接着剤及び導電剤を含み、前記正極活物質は、請求項1~
8のいずれか一項に記載のナトリウムイオン電池正極活物質を含むことを特徴とするナトリウムイオン電池正極材料。
【請求項14】
請求項
13に記載のナトリウムイオン電池正極材料によって製造されることを特徴とするナトリウムイオン電池正極。
【請求項15】
正極を含み、前記正極は、請求項
13に記載のナトリウムイオン電池正極を含むことを特徴とするナトリウムイオン電池。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
本発明のいくつかの発明を実施するための形態において、前記Mは、Ti、Mg、及びCaからなる群から選択される一種又は複数種の組み合わせであり、前記Aは、B、P、及びCからなる群から選択される2種又は3種の組み合わせである。
本発明のいくつかの発明を実施するための形態において、前記AはB、P及びCの3種の組み合わせであり、前記B、P、Cのモル比は2~4:0.1~1.5:0.1~1.5である。
本発明のいくつかの発明を実施するための形態において、前記AはB及びPの2種の組み合わせであり、前記B、Pのモル比は2~4:0.1~1.5である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
さらに、ステップ(1)の前記ニッケルマンガン水酸化物の化学式はNiaMnb(OH)2であり、ここで、0.05≦a≦0.95、0.05≦b≦0.95、1-a-b≧0。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
より好ましくは、前記金属塩水溶液におけるニッケルイオン、マンガンイオンの総濃度は0.5~2mol/Lである。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
本発明のいくつかの実施形態では、ステップ(2)における前記元素Mを含む化合物は、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化亜鉛、酸化ニオブ及び酸化タングステンからなる群から選択される1種又は複数種の組合せであり、前記元素Aを含む化合物は、ホウ酸、酸化ホウ素、四ホウ酸ナトリウム、五酸化二リン、リン酸、リン酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、グルコース、スクロース、ポリエチレングリコール及びポリビニルアルコールからなる群から選択される1種又は複数種の組合せである。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0058
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0058】
上記の実施例1~7及び比較例1~2で得られた正極活物質を、ナトリウムイオン電池性能テストに使用し、ナトリウムイオン電池の製造方法は、準備された正極活物質を20g秤取し、0.64gの導電剤SPとNMPに溶解した0.64gのPVDFを加え、均一に混合した後にアルミニウム箔に塗布して電極板を製造した。アルゴンガス雰囲気のグローブボックスでは、金属ナトリウムシートを負極、Celgard2700をダイアフラム、1mol/L NaPF6+EC:DEC(1:1)+5%FECを電解液として、ボタン電池を組み立てたことである。次に、電圧範囲2.0~4.0V、充電及び放電倍率0.1C、電流13mA、テスト温度25±2℃で充放電曲線をテストし、電圧範囲2.0~4.0V、充電及び放電倍率1C、電流130mA、60℃で100サイクルのサイクル性能をテストした。テスト結果を表2に示す。
【国際調査報告】