(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-16
(54)【発明の名称】眼科手術のための調整光窓技術
(51)【国際特許分類】
A61F 9/007 20060101AFI20240208BHJP
A61B 90/30 20160101ALI20240208BHJP
A61B 3/13 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
A61F9/007 200Z
A61F9/007 130F
A61B90/30
A61B3/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546300
(86)(22)【出願日】2022-02-01
(85)【翻訳文提出日】2023-07-31
(86)【国際出願番号】 IB2022050873
(87)【国際公開番号】W WO2022167938
(87)【国際公開日】2022-08-11
(32)【優先日】2021-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100165995
【氏名又は名称】加藤 寿人
(72)【発明者】
【氏名】ポール アール.ハレン
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316FA06
4C316FB12
4C316FC12
(57)【要約】
眼の前部の近くで手術ツールの端部を照明するための技術。この技術により、手術室の照明の増大及びそのような照明の増大に関連する外科医に対する課題が回避される。代わりに、調整された窓の光は、眼内に案内される手術ツールの端部に方向付けられ得る。この調整された窓の光は、最小の照明又は狭い単色の光のものであり、それにより、結果として外科医自身の眼を収縮させることなく視覚的な向上が提供される。更に、手術機器の端部を受けるためのカニューレも同様の蛍光光を用いて視覚的に向上され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術アセンブリであって、
所与の光の手術室での手術処置中に患者の眼内に到達するための器具を有する手術ツールと、
前記眼内への前記器具の前記到達を視覚的に容易にするために、前記所与の光と異なる調整光を前記器具に方向付けるための光機器と
を含み、前記光機器から放出される光は、前記器具が前記眼の外側にあるときの前記調整光と、前記器具が前記眼の内側に位置するときの異なる光との間で切り替え可能である、手術アセンブリ。
【請求項2】
前記光機器は、顕微鏡部分及び前記調整光を供給するための発光ダイオード(LED)を有するシャンデリアからなる群から選択される、請求項1に記載の手術アセンブリ。
【請求項3】
前記眼内への前記器具の前記到達を案内するために前記眼の強膜に予め配置されたカニューレを更に含む、請求項1に記載の手術アセンブリ。
【請求項4】
調整光窓は、約5%~30%の照度である光及び実質的に単色の光からなる群から選択される光の窓である、請求項1に記載の手術アセンブリ。
【請求項5】
前記実質的に単色の光は、約3,000nm(ナノメートル)未満の波長のものである、請求項4に記載の手術アセンブリ。
【請求項6】
前記実質的に単色の光は、約570nm~約620nmの琥珀色光、約800~約2,500nmの近IR光及び最大で約1,000nmのIR光からなる群から選択される、請求項5に記載の手術アセンブリ。
【請求項7】
室内で眼科手術を行う方法であって、前記行うことは、
眼の前部の近くでカニューレを固定することと、
前記手術中に外科医のために前記眼の内部におけるコントラストを高めるために、前記室内で所与の光強度を維持することと、
前記眼内に案内するために、手術ツールの端部を前記カニューレに向かって進めることと、
前記進めている間、前記所与の光と異なる、調整された窓の光を前記手術ツールの前記端部に向かって方向付けて、その視認性を高めることと、
前記手術ツールが前記眼内に挿入されたとき、前記光を異なる光に変更することと
を含む、方法。
【請求項8】
前記手術ツールの前記端部を前記進めている間、前記カニューレから蛍光光を放出することを更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記調整された窓の光を前記方向付けために光機器を利用することと、
前記眼内に前記機器の光源を進めることと、
前記手術ツールの前記端部を用いて手術処置を行うことと
を更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記調整された窓の光は、約5%~約30%の照度である光及び実質的に単色である光からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記実質的に単色の光は、約3,000nm未満である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記単色の光は、琥珀色、近IR及びIRの1つである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
眼の内部の高められた視覚的コントラストのための所与の照明の室内で眼科手術を行う方法であって、前記行うことは、
前記眼の前部に向かって手術ツールの端部を進めることと、
前記進めている間、前記所与の光と異なる、調整された窓の光を前記眼の前記前部の近くで前記手術ツールの前記端部に向かって方向付けて、その視認性を高めることと、
前記手術ツールが前記眼内に挿入されたとき、前記光を異なる光に変更することと
を含む、方法。
【請求項14】
前記調整された窓の光は、前記手術を行う外科医に見える光のスペクトルの外側の光である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記手術を行う外科医に見えるスクリーンに表示するために、前記手術ツールの前記端部の画像を生成することを更に含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、発明者がPaul R.Hallenである、2021年2月5日に出願された「TAILORED LIGHT WINDOW TECHNIQUE FOR EYE SURGERY」という名称の米国仮特許出願第63/146,066号明細書の優先権の利益を主張するものであり、あたかも本明細書に十分且つ完全に記載されているかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
長年にわたり、眼科手術の分野で多くの劇的な進歩が起こってきた。しかしながら、特定の処置に関係なく、一般に、いくつかの異なるタイプのツールが使用される。例えば、眼の一部に直接関与して影響を与える役割を果たす介入ツールが利用される。そのようなツールの一般的な例は、硝子体切除に使用される硝子体切除プローブである。硝子体切除とは、患者の眼から硝子体液の一部又は全部を除去することである。濁った硝子体液の除去に限定された手術の場合、いくつかの場合に硝子体切除が処置の大部分を占め得る。しかしながら、硝子体切除は、白内障手術、網膜修復手術、黄斑ひだ形成症又は多くの他の問題に対処する手術を伴い得る。
【0003】
硝子体液自体は、透明な繊維状ゲルであり、眼に予め配置されたカニューレを通して細長いプローブが挿入されると、細長いプローブによって除去され得る。より具体的には、プローブは、硝子体液を除去するための中央チャネルを含む。更に、カニューレは、毛様体扁平部などの眼の前部において、オフセットされた位置に戦略的に配置された構造的支持のための導管を提供する。このようにして、プローブは、患者の水晶体又は角膜への損傷を回避する方法で眼内に案内されるように挿入され得る。
【0004】
当然のことながら、硝子体切除又は他のそのような介入を成功裏に達成するために、いくつかの追加的なツールが必要とされ得る。例えば、硝子体切除の視覚化は、光機器の挿入によって補助され得る。硝子体切除プローブと同様に、光機器は、オフセットされた位置に再び位置付けられた予め配置された別のカニューレによって案内され得る。このように、所与の眼科手術では、眼内に介入的に到達する複数のツールが使用される可能性が高い。
【0005】
前述したように、予め配置されたカニューレを通して手術ツールを進める際に生じる1つの問題は、視認性である。当然のことながら、外科医が、カニューレと、カニューレ内に進められているツールの端部との両方を安全に見ることができることを確実にするように、明るい部屋を利用することは、1つの選択肢である。しかしながら、視認性に関して競合する関心場所が存在する。すなわち、視認性の競合する場所が手術に関与し得る。例えば、眼科手術に対して、多くの場合、眼内の眼の後部における網膜がターゲットとなる。しかしながら、手術室が明るすぎると、外科医に対する網膜の良好な視認性に対して十分なコントラストとならない場合がある。
【0006】
明るい部屋という発想に対する代替案として、外科医が、患者の眼の上に位置付けられた顕微鏡の光を利用して、カニューレ及びツールの端部を照明しながら、部屋が比較的薄暗く保たれ得る。このようにして、ツールの端部がカニューレに近づくにつれて、ツールの端部をカニューレ内に安全に進めるのに十分な両方の視認性を確実にすることができる。この状態が生じると、外科医は、顕微鏡の光をオフにするか又は薄暗くして、室内の照明により厳密に一致させることができる。理論的には、これにより、十分なコントラストに戻して、注目する網膜などの眼内の特徴を外科医が良好に見ることが可能になる。
【0007】
外科医の視認性は、それ自体、照明の程度のかなり大きい変化によって影響を受ける外科医の眼に依存し得るため、部屋全体であろうと顕微鏡の光においてであろうと、光をオン及びオフにすることは、外科医の視力に影響を与え得る。たとえ外科医でない人でも、明るい光を弱めるか又はオフにすると、眼がその変化に対して調整するため、視認性が通常レベルに戻るまでにしばらく時間がかかることを理解している。説明した眼科手術の場合、これは、外科医が手術ツールの端部をカニューレ内に通すと、強い光を弱め、次いで焦点を眼の内部にシフトさせて処置を行うことを意味する。しかしながら、光の状態の変化により、手術を続ける前に外科医の視力をその変化に対して調整する必要があり得る(これによりいくらかの遅延を引き起こし得る)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
眼科手術を行う方法である。方法は、蛍光カニューレを眼の表面に固定することを含む。手術室内では、介入装置が蛍光カニューレに向かって進められるとき、低照度の光が維持され得る。しかしながら、低照度の光ではない別の光が装置に方向付けられる。むしろ、この別の光は、調整光窓範囲の光である。調整光は、約5%~約30%の照度である光及び/又は実質的に単色であり、且つ約3,000nm(ナノメートル)未満の波長の光であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、眼内の手術のために眼に予め配置された蛍光カニューレに近づいている手術ツールの図である。
【
図2】
図2は、手術のために顕微鏡の下に位置付けられた、手術室の環境での
図1の眼の概略図である。
【
図3】
図3は、調整された窓の光を方向付ける光機器を有する硝子体切除プローブの形態の
図1の手術ツールの斜視図である。
【
図4】
図4は、眼内の手術処置のために
図1及び
図2の眼内まで進められた
図3のツール及び光機器の斜視概略図である。
【
図5】
図5は、手術ツールの端部を患者の眼内に視覚的に案内するために、調整された窓の光を利用する一実施形態を要約したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明では、本開示の理解をもたらすために、多数の詳細が記述される。しかしながら、説明される実施形態は、これらの特定の詳細なしに実施され得ることが当業者に理解されるであろう。更に、具体的に説明する実施形態において依然として企図される多数の変形形態又は修正形態が採用され得る。
【0011】
実施形態を、特定のタイプの硝子体切除プローブ手術処置を参照して説明する。特に、硝子体出血に対処するために硝子体液を除去する処置が示される。しかし、本明細書中に詳述するツール及び技術は、他の様々な手法で用いられ得る。例えば、本明細書中に詳述する硝子体切除プローブの実施形態は、網膜剥離、黄斑ひだ形成症、黄斑円孔、硝子体浮遊物、糖尿病性網膜症又は様々な他の眼の状態に対処するために用いられ得る。それにもかかわらず、手術ツールが眼内に案内されるとき、手術ツールの端部に方向付けられる調整された窓の光の使用によって手術処置が補助される限り、かなりの利益が実現され得る。
【0012】
ここで、
図1を参照すると、眼150に予め配置された蛍光カニューレ130に近づいている手術ツール101の図が示されている。ツール101は、針175を有する硝子体切除プローブであり得、その目的は、眼150内の硝子体切除処置のために、カニューレ130を通して針175を案内的に挿入することである。この処置は、一般に低照度の周囲光(おそらく約2ルーメン未満)が存在する手術室110の環境内で行われることに留意されたい。これは、一般に、以下に更に詳述するように、処置のための視覚化及びコントラスト化補助技術が実施される非光支援環境である。より具体的には、
図1に示される実施形態では、眼150の内部に到達する前に、調整された窓の光100は、針175の器具の端部をカニューレ130内に案内するための視覚化補助として使用され得る。
【0013】
視覚化補助として針175に方向付けられている調整された窓の光100は、様々な点で有益である。例えば、後述するように、眼150内の手術に有益な手術室110の低照度を変更する必要がない。調光器若しくはフットペダル又は他の何らかのものを動作させて部屋110を明るくし、その後、眼内の実際の手術のために適切な低レベルの照度を再度見つけようとする必要がない。代わりに、カニューレ130内に針175を通すための視覚的補助として別の調整光100が利用されるため、部屋110全体のその一般的な低レベルの照度が維持され得る。更に、部屋110内の光の全体的な照度が上げられないため、外科医自身の眼は、眼150の手術を進める前に、部屋110内の低レベルの照度に対して開けて戻すように収縮された虹彩の調整の期間を受ける必要がない場合がある。これは、外科医が、自身の視覚的に障害を受けた眼が部屋110の薄暗い光に対して調整して戻るのを待つ間、外科医が静止しようとする(場合により眼150の内部に器具を保持する)期間を回避することができため、特に有益である。
【0014】
引き続き
図1を参照すると、調整光100自体も特定の波長の窓のものであり得る。例えば、光100は、最大で10ルーメン(他のレベルも企図される(例えば、20ルーメン、50ルーメン、100ルーメンなど))であるスペクトル出力の約5%~約30%の照度であり得る。一般に部屋110の光を明るくすることを回避するのと同様に、調整光100の照度を狭い低レベルに制限することにより、上述のような外科医自身の眼の調整期間の導入を回避することができる。更に、別の実施形態では、光100は、代替的に又は追加的に、「琥珀色」光などの実質的に単色の性質のものであり得る。定量的な観点から、これは、波長が約3,000nm未満である実質的に単色の光を含み得る。より具体的な例として、これは、570~620nmの琥珀色光、約800~2,500nmの近赤外(IR)及び最大で1,000nmのIRなどを含み得る。他の波長も特定の手術の必要性に応じて使用され得る。
【0015】
更に
図3を参照すると、一実施形態では、調整光100は、
図3に示されるような従来のシャンデリアなどの光機器375を外科医が使用することによって導入される。これは、そのような機器375が眼150内の処置において利用されることが既に予定されている場合に特に有益であり得る。実際、強膜170のオフセットされた位置に複数の予め配置されたカニューレ130、115が存在して、より繊細な水晶体180及び角膜190の構造体を回避することに留意されたい。したがって、
図4に示されるように、眼150内の処置は、最終的に両方の機器101、375によって実施され得る。
【0016】
針175の端部に方向付けられる調整光100に加えて、カニューレ130、115から放出される追加の光125が存在することに留意されたい。この追加の光は、カニューレ構造体の蛍光体から発せられる蛍光光であり得る。すなわち、示される実施形態では、カニューレ130、115は、従来のポリカーボネート材料で構成され得、その中に燐光顔料が混合されている。ポリカーボネート及び顔料の両方は、従来の生体適合性材料であり得る。1つの実施形態では、選択される顔料は、酸化アルミン酸ストロンチウム化学反応に基づく。発光成分を供給するために燐光を利用する1つの利点は、結果としてのカニューレ130、115に供給される「光る」又は「暗闇で光る」性質である。このように、外科医の視点から、カニューレ130、115は、眼で見てわかることになり、同時に、針175の端部は、調整光100によって照明されることになる。したがって、一緒にされて嵌合されている構造体は、両方とも適切に照明され、部屋110の薄暗い光の中でも見える。他の自己照明型カニューレも企図されることが理解されるであろう。
【0017】
ここで、
図2を参照すると、
図1の眼150の概略図は、手術室110の環境において、手術のために顕微鏡200の下に位置付けられて示されている。この図では、開始されようとしている眼科手術に関連する部屋110の照明条件がより良好に示され得る。例えば、縮小レンズ230と広角レンズ250とを通して方向付けられる視線で接眼レンズ210、220を通して見ることにより、外科医は、物体を配向することができる。このようにして、視神経260及び網膜275などの眼150の内部特徴に対して特に焦点が引き出される。そのため、例えば、隣接領域280から硝子体液を除去するための視認性は、更に後述するように促進され得る。
【0018】
しかしながら、そのような領域280に手術ツールを進めようとする際、部屋110の初期環境での眼150の前部における視認性は、自動的に理想的なものとはならない場合がある。これは、特に角膜190及び水晶体180の繊細な性質を考慮すると重要であり得る。したがって、上述したように、眼150の前部に近い他の側面に視認性が提供されることを確実にするのを促進するために、追加の措置が講じられ得る。
図2に示されるように、蛍光光125は、カニューレ130、115から放出される。したがって、前部の近くのカニューレの視認性も可能にしながら、説明したように眼150の内部及び後部の特徴に対してコントラスト及び視認性を提供するために、部屋110内を比較的薄暗いレベルに保つことができる。更に
図1及び
図3を参照すると、眼150の前部においてカニューレ130、115に近づいている機器の端部についても同じことが当てはまる。具体的には、調整光100は、硝子体切除プローブ101の針175と光機器375の端部の両方を眼150の前部の近くで外科医に見えるようにする。換言すれば、十分に照明されたツールの端部及びカニューレ130、115は、部屋110の薄暗い条件にもかかわらず、外科医に見える。
【0019】
ここで、
図3を参照すると、
図1の手術ツール101の斜視図が硝子体切除プローブの形態で示されている。しかしながら、プローブ101に加えて、調整された窓の光100をプローブ101に向かって方向付けるために利用される光機器375も示されている。より具体的には、機器の発光ダイオード(LED)355又は他の光源が利用されて、更に後述するポート377の近くで光100をプローブ101の針175に方向付ける。すなわち、プローブ101は、先細のハンドル350、ハウジング360及び/又は取外し可能なシェル325など、他の位置に様々な他の特徴を含む。しかしながら、
図4に示されるように、ペアリングされて、プローブ101をカニューレ115に対して眼150内に通す際、視認性が懸念されるのは、針175の端部である。この点に関して、本明細書で上述したように、光100は、フルスペクトル、低照度又は実質的に単色の性質の調整された窓のものであり得る。
【0020】
引き続き
図2を参照すると、調整された窓の光100が、例えば、外科医自身の肉眼の観点から可視スペクトルの外側にある光を含み得ることは、注目に値する。すなわち、特定の環境では、外科医のための視認性は、ビデオスクリーンによって間接的に提供される。したがって、たとえ外科医に見えなくても、ビデオ機器に見える光で十分な場合がある。特定の例では、波長が約400nm未満の実質的に単色の光は、外科医自身の可視スペクトルの外側であり得るが、それにもかかわらず、外科医に提示されるビデオスクリーンによって判読可能な画像を生成するのに十分であり得る。
【0021】
いくつかの実施形態では、機器375によって提供される光は、調整光100と、眼の内部の照明に対して好ましい光との間で切り替えられ得る。例えば、外科医は、光が眼の外側にある間、機器375を調整光に切り替え、次いで機器375が(例えば、カニューレ130、115を通して)眼内に挿入されると、機器に提供された光を眼の内部を照明するためのより明るい(又はより薄暗い)光に切り替えることができる。いくつかの実施形態では、光が眼内に挿入された後、光の他の特性も変更することができる(例えば、光を提供している赤色、緑色及び青色のLEDの独立したレベルを調整することができる)。いくつかの実施形態では、機器375が眼内に挿入されると、青色光を完全に省略することができる。
【0022】
調整光と眼の内部光との間の切り替えをトリガするための入力は、例えば、フットペダル上のボタンを押すこと、手術コンソール上のボタンを押すこと、機器375の側部上のボタンを押すことなどを通して外科医によって提供され得る。いくつかの実施形態では、機器375は、検出された光レベルを手術コンソールに提供して、機器375が眼の内側であるか又は外側であるかをコンソールが判定する(それに応じて調整光がオン(眼の外側)又はオフ(異なるタイプの光が放出され得る眼の内側)に切り替えられ得る)際に支援する、プローブの端部近くの光学センサを含むことができる。他の検出手段も企図される(例えば、コンソールは、カメラを通して撮影された手術部位の画像を分析して、機器375が眼の内側にあるか又は外側にあるかを判定し、それに応じて光を切り替えることができる)。
【0023】
いくつかの実施形態では、調整光は、例えば、眼に入るように構成されていない顕微鏡部分から放出され得る。この場合、コンソールは、手術ツール(例えば、硝子体切除プローブ)が眼の外側にある場合を判定し(例えば、硝子体切除プローブ上の光学センサを使用するか、又は手術部位の画像を分析して硝子体切除プローブの位置を判定する)、顕微鏡部分から調整光を放出することができる。更に、コンソールが、硝子体手術プローブが眼の内部にある(例えば、カニューレ115、130を通して挿入されている)と(例えば、光学センサ又は画像分析などを通して)判定すると、コンソールは、例えば、硝子体手術プローブが眼内に配置された後の光に対する外科医の選好に応じて、顕微鏡から放出される光を異なる特性(例えば、強度、周波数など)の光に切り替えることができる。
【0024】
ここで、
図4を参照すると、
図3のツール101及び光機器375の斜視概要図は、眼内の手術処置のために
図1及び
図2の眼150内まで進められている状態で示されている。この処置中、針175は、予め配置されたカニューレ130を通して挿入され、硝子体液を除去すべき領域280に向かって方向付けられる。具体的には、吸引が適用され、硝子体液又は他の物質を吸い上げるためにポート177が使用される。例えば、図示する処置において、領域280内で出血が起こる可能性があり、血液は、硝子体液と共にポート177に吸い込まれる。しかしながら、処置自体の特殊性にもかかわらず、機器101及び機器375の端部の視認性は、部屋110(
図1を参照されたい)の所与の光を損なわない、独自に調整された窓の光100によって向上する。したがって、これらの装置(101、375)は、視認性を犠牲にすることなく、且つその前部の眼150の部分に害を与える可能性なく、示された目的地に到達することができる。ここでもまた、この同じ光100は、
図4に示されるように、手術を行う際の視認性を更に補助するために使用され得る。しかしながら、別の実施形態では、光100は、
図2の顕微鏡200などの別の光源から発せられ得る。このようにして、外科医は、フットペダルを制御し、音声起動を利用し、ウェアラブルセンサ又は他の光作動手段を利用し、それにより手術処置中に別の手を自由にすることができる。
【0025】
示されるように、手術は、強膜170においてオフセットされた方法で位置付けられたカニューレ115、130を通して眼150内に到達するプローブ101及び光機器375を含む。このようにして、より繊細な角膜190及び水晶体180を回避することができる。同様に、視神経560及び網膜575も極めて繊細である。したがって、針175がこれらの繊細な特徴に到達することができることを考慮すると、外科医のために眼150の後部と針175の端部との両方を照明することは、重要な利益である。ここでもまた、本明細書の実施形態に対してこれが達成される方法では、外科医が自らの視認性のためにいかなる眼の調整のためにも一時停止する必要がない。
【0026】
ここで、
図5を参照すると、手術ツールの端部を患者の眼内に視覚的に案内するために、調整された窓の光を利用する一実施形態を要約したフローチャートが示されている。具体的には、535で示されるように、患者の眼の内部における視認性を強調表示してコントラスト化するように設定された手術室の所与の光を用いて、別の調整された窓の光が手術ツールの端部に方向付けられる(515を参照されたい)。このツールは、次いで、575で示されるように、カニューレを通して眼内に進められる。これと同時に、555で示されるように、カニューレ自体からも光が放出される。このように、眼の前部において、ツール及び任意選択的にカニューレに対しても視認性が提供される。これは、手術室の所与の光を変更する必要なく生じる。したがって、595で示されるように、手術は、眼内に到達するツールを用いて、外科医が自らの眼を再調整するために中断する必要なく行うことができる。実際、この手術は、調整光を供給する光機器がここでは眼内に供給されることによって更に容易にされることさえあり得る。その間にわたり、眼の内部の視認性のために手術室環境の所望の所与の光を維持することができる(535を参照されたい)。
【0027】
本明細書で上述した実施形態は、光条件における劇的な変化を提示しない方法において、眼内に進められた機器を用いて眼科手術を行うための技術を含む。すなわち、手術室全体であるか又はより中央の顕微鏡位置であるかを問わず、照明を劇的に増加させる必要がない。したがって、外科医自身の眼は、機器が眼に入ってから眼内で処置を開始するまでの間、任意の大きい調整期間を必要とする条件を提示されない。むしろ、そのような調整期間の原因を提示しない、独自に調整された窓の光は、外科医が処置のために眼に予め配置されたカニューレ内への案内である「針を通す」際に補助するために利用される。その結果、外科医は、患者の眼内に手術ツールを保持して、正常な視力に戻るのを待ちながら、落ち着いて静止しているのに膨大な時間を費やす必要がない。
【0028】
前述の説明は、現在の好ましい実施形態を参照して提示されている。しかし、開示されているが、上で詳述されていない他の実施形態及び/又は実施形態の特徴が採用され得る。更に、これらの実施形態が属する技術分野及び技術の当業者は、説明された構造及び動作方法における更に他の改変形態及び変更形態が、これらの実施形態の原理及び適用範囲から有意に逸脱することなく実施され得ることを理解するであろう。加えて、前述の説明は、説明し、添付の図面に示す正確な構造にのみ関係するものとして読み取るべきではなく、むしろ、それらの最大限且つ最も適正な範囲を有することになる以下の特許請求の範囲と整合し、それらを支持するものとして読み取るべきである。
【国際調査報告】