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特表2024-507112自動車のための加速度コントローラの増幅率の適正化
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  • 特表-自動車のための加速度コントローラの増幅率の適正化 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-16
(54)【発明の名称】自動車のための加速度コントローラの増幅率の適正化
(51)【国際特許分類】
   B60W 40/107 20120101AFI20240208BHJP
   B60W 60/00 20200101ALN20240208BHJP
【FI】
B60W40/107
B60W60/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547627
(86)(22)【出願日】2022-01-13
(85)【翻訳文提出日】2023-08-17
(86)【国際出願番号】 EP2022050683
(87)【国際公開番号】W WO2022171378
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】102021103357.8
(32)【優先日】2021-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】398037767
【氏名又は名称】バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】プチェッティ・ルカ
(72)【発明者】
【氏名】ヤセル・アフマド
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA08
3D241BB06
3D241BC01
3D241BC02
3D241CC01
3D241CC17
3D241CD11
3D241DB02B
3D241DB05B
(57)【要約】
本発明の態様は、自動車のための加速度コントローラの増幅率を適正化する装置に関し、この装置は、少なくとも二回の時間ステップについて、それぞれ自動車の目標速度、自動車の実速度およびそれらに基づいて設定された自動車の目標加速度を情報として保存し、情報の第一のサブセットを選出し、この第一のサブセットに基づいてモデルを訓練し、このモデルは、少なくとも一つの保存された実速度と少なくとも一つの保存された目標加速度から、後の時間ステップの実速度を予測するように設けられ、情報の第二のサブセットを選出し、この第二のサブセット、モデルおよび加速度コントローラに基づいて、増幅率を適正化するように設けられている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のための加速度コントローラ(BR)の増幅率(VF)を適正化する装置であって、
- 前記加速度コントローラ(BR)は、一回の時間ステップにおいて、前記自動車の目標速度(SG)、前記自動車の実速度(IG)および前記増幅率(VF)に基づいて、前記自動車の目標加速度(SB)を設定するように設けられ、
- 少なくとも二回の時間ステップについて、それぞれ前記目標速度(SG)、前記実速度(IG)およびそれらに基づいて設定された前記目標加速度(SB)を情報として保存し、
- 前記情報の第一のサブセット(ET)を選出し、
- 前記第一のサブセット(ET)に基づいてモデル(MU)を訓練し、当該モデル(MU)は、少なくとも一つの保存された実速度(IG)と少なくとも一つの保存された目標加速度(SB)から、後の時間ステップの実速度(IG)を予測するように設けられ、
- 前記情報の第二のサブセット(ZT)を選出し、
- 前記第二のサブセット(ZT)、前記モデル(MU)および前記加速度コントローラ(BR)に基づいて、前記増幅率(VF)を適正化する
ように設けられている装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、前記加速度コントローラ(BR)は、前記目標速度(SG)と前記実速度(IG)の差と前記増幅率(VF)との積から前記目標加速度(SB)を求めるように設けられている装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の装置であって、前記情報をリングバッファ(RS)に保存するように設けられ、当該リングバッファ(RS)の容量は、最大5000回分の時間ステップの情報の保存を限度とする装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の装置であって、
- 前記モデル(MU)の予測誤差を最小化するように第一の重み付け係数と第二の重み付け係数を最適化することによって、前記モデル(MU)を訓練するように設けられ、
- 前記第一の重み付け係数は、少なくとも一つの保存された前記実速度(IG)が前記予測に与える影響を規定し、
- 前記第二の重み付け係数は、少なくとも一つの保存された前記目標加速度(SB)が前記予測に与える影響を規定する
装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の装置であって、
当該装置が、
- 前記第二のサブセット(ZT)、前記モデル(MU)および前記加速度コントローラ(BR)に基づいて前記自動車の状態を予測し、
- 前記自動車の前記状態に関連するコントローラ品質度合を最小化するように前記増幅率(VF)を適正化する
ように設けられていることにより、前記増幅率(VF)を適正化する構成とされている装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置であって、前記自動車の前記状態には、少なくとも一回の時間ステップにおける前記自動車の前記実速度(IG)および/または前記自動車の前記目標加速度(SB)が含まれる装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の装置であって、
- 前記情報をリングバッファ(RS)に保存するように設けられ、当該リングバッファ(RS)の容量は、最大5000回分の時間ステップの前記情報の保存を限界とし、
- 前記モデル(MU)の予測誤差を最小化するようにレーベンバーグ・マルカート・アルゴリズムを用いて第一の重み付け係数と第二の重み付け係数を最適化することによって、前記モデル(MU)を訓練するように設けられ、前記第一の重み付け係数は、少なくとも一つの保存された前記実速度(IG)が前記予測に与える影響を規定し、前記第二の重み付け係数は、少なくとも一つの保存された前記目標加速度(SB)が前記予測に与える影響を規定し、
- 前記第二のサブセット(ZT)、前記モデル(MU)および前記加速度コントローラ(BR)に基づいて、前記自動車の状態を予測し、
- 前記自動車の前記状態に関連するコントローラ品質度合を最小化するようにレーベンバーグ・マルカート・アルゴリズムを用いて前記増幅率(VF)を最適化することにより、
前記増幅率(VF)を適正化するように
設けられている装置。
【請求項8】
自動車のための加速度コントローラ(BR)の増幅率(VF)を適正化する方法であって、
- 前記加速度コントローラ(BR)は、一回の時間ステップにおいて、前記自動車の目標速度(SG)、前記自動車の実速度(IG)および前記増幅率(VF)に基づいて、前記自動車の目標加速度(SB)を設定するように設けられ、
- 以下の;
- 少なくとも二回の時間ステップについて、前記目標速度(SG)、前記実速度(IG)およびそれらに基づいて設定された前記目標加速度(SB)を情報として保存し、
- 前記情報の第一のサブセット(ET)を選出し、
- 前記第一のサブセット(ET)に基づいてモデル(MU)を訓練し、当該モデル(MU)は、少なくとも一つの保存された実速度(IG)と少なくとも一つの保存された目標加速度(SB)から、後の時間ステップの実速度(IG)を予測するように設けられ、
- 前記情報の第二のサブセット(ZT)を選出し、
- 前記第二のサブセット(ZT)、前記モデル(MU)および前記加速度コントローラ(BR)に基づいて、前記増幅率(VF)を適正化する
ステップを有する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のための加速度コントローラの増幅率を適正化する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書の範囲において、“自動運転”という用語は、進行方向または横方向の自動操縦による走行、または進行方向および横方向の自動操縦による自律走行を意味する。“自動運転”という用語には、あらゆる自動化レベルによる自動運転が含まれる。例示的な自動化レベルは、支援運転、部分自動運転、高度自動運転ないし完全自動運転である。これらの自動化レベルは、連邦交通制度協会(Bundesanstalt fuer Strassenwesen)(BASt)によって定義がなされた。支援運転では、運転者が進行方向または横方向の操縦を継続的に実行しながら、システムが一定の制限内で他の機能を担う。部分自動運転(TAF)では、システムが一定期間および/または特殊な状況のもとで進行方向および横方向の操縦を担うが、支援運転時のように運転者がシステムを常に監視していなければならない。高度自動運転(HAF)では、運転者がシステムを常に監視する必要なしにシステムが一定期間進行方向および横方向の操縦を担うが、運転者は、一定時間内に車両の操縦を引き継ぐことができなければならない。完全自動運転(VAF)では、或る特化した利用例についてシステムがいかなる状況でも自動で運転を管理し、この利用例についてはもはや運転者を必要としない。BAStの定義による上述した四つの自動化レベルは、SAE J3016規格(SAE-Society of Automotive Engineering(自動車技術者協会))のSAE-レベル1-4に対応する。例えば、高度自動運転(HAF)は、SAE J3016規格のレベル3に対応する。また、SAE J3016には、BAStの定義に含まれていない最高の自動化レベルとしてSAEレベル5が設けられている。SAEレベル5は無人運転に対応し、その場合には、システムは、全走行期間中、人間の運転者であるかのようにあらゆる状況に自動で対処することができ、基本的にもはや運転者を必要としない。
【0003】
全ての進行方向誘導システムは、車両の目標速度と車両の実速度から車両の目標加速度を求める加速度コントローラをベースにしている。そして、少なくともこの目標加速度に応じて自動車の進行方向の誘導が制御される。
【0004】
加速度コントローラのパラメータ化は、非常に手間がかかる。それは、加速度コントローラを各車両モデルに合わせて適正化する必要があり、例えば、車両質量やドライブトレインの様々な特性がパラメータ化に影響を及ぼすからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、加速度コントローラのパラメータ化を簡素化することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、独立特許請求の特徴によって解決される。有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。独立特許請求項に従属する特許請求項の追加的な特徴部は、独立特許請求項の特徴部が無くても、または、独立特許請求項の特徴部の一部と組み合わされるだけでも、独立特許請求項の全ての特徴部を組み合わせたものから独立した独自の発明を形成することができ、それが独立請求項の主題、分割出願の主題または後願の主題になり得ることを指摘しておく。このことは、明細書に記載された技術的教示にも同様に当てはまり、独立特許請求項の特徴部から独立した発明を形成することができる。
【0007】
本発明の第一の態様は、自動車、特に自動化された自動車のための加速度コントローラの増幅率を適正化する装置に関する。
【0008】
加速度コントローラは、一回の時間ステップにおいて、自動車の目標速度、自動車の実速度および増幅率(VF)に基づいて、自動車の目標加速度を設定するように設けられている。
【0009】
進行方向の自動車の誘導は、次に、少なくともこの目標加速度に基づいて行われる。特に、駆動制御または原動機制御の目標加速度が、目的の加速度として設定される。代替的または付加的に、目標加速度は、目標加速度が駆動制御または原動機制御に目的の加速度として設定される前にさらに処理される。
【0010】
本装置は、少なくとも二回の時間ステップについて、それぞれ目標速度、実速度およびそれらに基づいて設定された目標加速度を情報として保存するように設けられている。
【0011】
特に、この装置は、目標速度、実速度およびそれらに基づいて設定された目標加速度をタプルとして個々に保存するように設けられていることで、保存された情報から、上述の複数データが同じ時間ステップに対応することがさらに分かるようになっている。
【0012】
特に、この装置は、少なくとも二回の時間ステップについて、それぞれ目標速度、実速度、それらに基づいて設定された目標加速度およびそれぞれの時間ステップを情報として保存するように設けられていることで、保存された情報から、上述のデータの因果的または経時的な順番も分かるようになっている。
【0013】
加えて、この装置は、上記の情報の第一のサブセットを選出し、その第一のサブセットに、特に、目標速度、実速度および/または目標加速度からなる最大150または200のタプルが含まれるように設けられている。ここで、本発明は、実時間条件下での処理、つまり、拘束的な期限遵守のもとでの処理ができるような数のタプルを選ぶという知見に基づいている。
【0014】
この装置は、上記の第一のサブセットに基づいてモデルを訓練するように設けられ、そのモデルは、少なくとも一つの保存された実速度と少なくとも一つの保存された目標加速度から、後の時間ステップの実速度を予測するように設けられている。
【0015】
ここで、本発明は、第一の時間ステップにおける実速度と目標加速度から、第一の時間ステップと第一の時間ステップに続く第二の時間ステップの時間差を考慮して、第二の時間ステップにおける実速度を予測することができるという知見に基づいている。
【0016】
実加速度は、自動車でコントロールできる影響だけに依らず、例えば、路面の傾斜、自動車内で信号伝送時間および/またはシステムの慣性などに依存するため、自動車の実加速度は、確かに自動車の目標加速度からずれることが多い。しかし、自動車の実速度は、いくつかの時間ステップについて保存されており、したがって既知であるため、教師あり学習法によってモデルを遡及的に訓練することができる。
【0017】
さらに、この装置は、上記情報の第二のサブセットを選出し、その第二のサブセットに、特に、目標速度、実速度および/または目標加速度からなる最大20、50、100または150のタプルが含まれるように設けられている。
【0018】
さらに、この装置は、上記の第二のサブセット、上記のモデルおよび上記の加速度コントローラに基づいて、上記の増幅率を適正化するように設けられている。
【0019】
ここで、本発明は、自動車の実速度がいかに迅速に且ついかなる品質で実速度から外れた目標速度に等しくなるかに対して、増幅率の選択が強い影響を持っているという知見に基づいている。例えば、非常に大きな増幅率は、実速度が目標速度に迅速に等しくなるのには確かに役立つが、時間の遅れを伴う非常に大きな増幅率の場合には、振動のリスクがある。
【0020】
この装置は、特に、モデルの訓練と加速度コントローラの適正化とを何度も実行し、反復的に最適な増幅率に収束するように設けられている。例えば、モデルの訓練と加速度コントローラの適正化を行う頻度を適切に選択することで、低い演算能力で最適なものを見つけることができる。
【0021】
本発明の有利な一実施形態において、加速度コントローラは、目標速度と実速度の差と増幅率との積から目標加速度を求めるように設けられている。
【0022】
本発明のさらに他の有利な実施形態において、この装置は、情報をリングバッファに保存するように設けられ、リングバッファの容量は、最大5000回分の時間ステップの情報の保存を限度とする。
【0023】
リングバッファは、一定期間データを保存し続け、予め決められた時間が経過すると、新しいデータのための記憶領域を再び解放するために、これらのデータを再び上書きする。
【0024】
特に、どの2回の時間ステップの間の時間差も最大20msなので、リングバッファは、最大100s間の情報を保存することができる。
【0025】
本発明のさらに他の有利な実施形態において、この装置は、モデルの予測誤差を最小化するように第一の重み付け係数と第二の重み付け係数を最適化することによって、モデルを訓練するように設けられている。
【0026】
特に、第一の重み付け係数と第二の重み付け係数の最適化は、レーベンバーグ・マルカート・アルゴリズムを用いて行われる。ここで、本発明は、レーベンバーグ・マルカート・アルゴリズムが、この課題設定では、他の最適化アルゴリズムに比べて非常に速く収束し、このことが、他の構成と相まって、本発明を自動車で(つまり、データセンターでの“オフライン”訓練とは対照的に、“オンライン”で)使用することを可能にするという知見に基づいている。
【0027】
第一の重み付け係数は、少なくとも一つの保存された実速度が予測に与える影響を規定する。特に、少なくとも一つの保存された実速度に、実速度がちょうど一つよりは多く含まれれば、複数の第一の重み付け係数を使用することができる。こうして例えば、複数の実速度のそれぞれに対して、それぞれ一つの固有の第一の重み付け係数を使用することができる。
【0028】
第二の重み付け係数は、少なくとも一つの保存された目標加速度が予測に与える影響を規定する。特に、少なくとも一つの保存された目標加速度に、目標加速度がちょうど一つよりは多く含まれれば、複数の第二の重み付け係数を使用することができる。こうして例えば、複数の目標加速度のそれぞれに対して、それぞれ一つの固有の第二の重み付け係数を使用することができる。
【0029】
本発明のさらに他の有利な実施形態において、この装置は、第二のサブセット、モデルおよび加速度コントローラに基づいて、自動車の状態を予測することにより、増幅率を適正化するように設けられている。
【0030】
自動車の状態は、特に、自動車の実際のダイナミクスを記述するものおよび/または将来において自動車のダイナミクスに影響を与える自動車のシステムのための制御規準または目標規準を記述するものである。例えば、自動車の状態には、現在の時間ステップにおける自動車の目標加速度、現在の時間ステップにおける自動車の実速度、現在の時間ステップにおける自動車の目標速度が含まれる。加えて、自動車の状態には、少なくとも一つの過去の時間ステップにおける実速度および/または少なくとも一つの過去の時間ステップにおける目標加速度が含まれてもよい。
【0031】
特に、自動車の完全な状態は、かなり手間をかけてしか記述できないので、本発明のこの実施形態では、自動車の状態は、例えば、自動車の少なくとも一つの実速度、自動車の少なくとも一つの目標速度および/または自動車の少なくとも一つの目標加速度によって、部分的にのみ記述可能である。
【0032】
さらに、この装置は、自動車の状態に関連するコントローラ品質度合を最小化するように増幅率を適正化するように設けられている。
【0033】
コントローラの品質度合はここで、特に、制御偏差および/または乗客の快適性の指標を記述する。
【0034】
特に、増幅率の適正化は、レーベンバーグ・マルカート・アルゴリズムを用いて行われる。ここで、本発明は、レーベンバーグ・マルカート・アルゴリズムが、この課題設定では、他の最適化アルゴリズムに比べて非常に速く収束し、このことが、他の構成と相まって、本発明を自動車で使用することを可能にするという知見に基づいている。
【0035】
自動車の状態には、特に、一回の時間ステップにおける自動車の少なくとも一つの実速度および/または自動車の少なくとも一つの目標加速度および/または自動車の少なくとも一つの目標速度が含まれる。
【0036】
こうして例えば、モデルを用いることで、加速度コントローラの増幅率に対して異なる値を仮定した場合に、自動車の初期状態から出発して、自動車の目標加速度、目標速度および実速度が将来の時間ステップにおいてどのように変化していくかの予測を立てることができる。
【0037】
本発明のさらに他の有利な実施形態において、この装置は、情報をリングバッファに保存するように設けられ、当該リングバッファの容量は、最大5000回分の時間ステップの情報の保存が限界とされ、モデルの予測誤差を最小化するようにレーベンバーグ・マルカート・アルゴリズムを用いて第一の重み付け係数と第二の重み付け係数を最適化することによって、モデルを訓練するように設けられ、第一の重み付け係数は、少なくとも一つの保存された実速度が予測に与える影響を規定し、第二の重み付け係数は、少なくとも一つの保存された目標加速度が予測に与える影響を規定し、第二のサブセット、モデルおよび加速度コントローラに基づいて、自動車の状態を予測し、自動車の状態に関連するコントローラ品質度合を最小化するようにレーベンバーグ・マルカート・アルゴリズムを用いて増幅率を最適化することにより、増幅率を適正化するように設けられている。
【0038】
この有利な実施形態は、自動車制御ユニットのリソースが限られているにもかかわらず、本発明を自動車にそのまま使えるほど効率的にするすべての特徴を兼ね備えている。
【0039】
本発明の第二の態様は、自動車のための加速度コントローラの増幅率を適正化する方法であって、加速度コントローラは、一回の時間ステップにおいて、自動車の目標速度、自動車の実速度および増幅率に基づいて、自動車の目標加速度を設定するように設けられている方法に関する。
【0040】
一つのステップは、少なくとも二回の時間ステップについて、目標速度、実速度およびそれらに基づいて設定された目標加速度を情報として保存することである。
【0041】
この方法のさらなるステップは、情報の第一のサブセットを選出することである。
【0042】
この方法のさらなるステップは、第一のサブセットに基づいてモデルを訓練し、当該モデルは、少なくとも一つの保存された実速度と少なくとも一つの保存された目標加速度から、後の時間ステップの実速度を予測するように設けられていることである。
【0043】
この方法のさらなるステップは、情報の第二のサブセットを選出することである。
【0044】
この方法のさらなるステップは、第二のサブセット、モデルおよび加速度コントローラに基づいて、増幅率を適正化することである。
【0045】
本発明の第一の態様に係る本発明による装置についての先の説明は、本発明の第二の態様に係る本発明による方法に対しても対応させた形で当てはまる。この箇所並びに特許請求項において明示的に記載されていない本発明による方法の有利な実施例は、上述の或いは特許請求項に記載の本発明による装置の有利な実施例に対応する。
【0046】
以下、添付の図面を用いて本発明を一実施例により説明する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】自動車のための加速度コントローラBRの増幅率VFを適正化する本発明による装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
加速度コントローラBRは、一回の時間ステップにおいて、自動車の目標速度SG、自動車の実速度IGおよび増幅率VFに基づいて、自動車の目標加速度SBを設定するように設けられている。
【0049】
さらに、加速度コントローラBRは、目標速度SGと実速度IGの差と増幅率VFとの積から目標加速度SBを求めるように設けられている。
【0050】
本装置は、少なくとも二回の時間ステップについて、それぞれ目標速度SG、実速度IGおよびそれらに基づいて設定された目標加速度SBを情報として保存するように設けられている。
【0051】
特に、この装置は、上記の情報をリングバッファRSに保存するように設けられ、そのリングバッファRSの容量は、最大5000回分の時間ステップの情報の保存を限度とする。
【0052】
さらに、この装置は、情報の第一のサブセットETを選出し、その第一のサブセットETに基づいてモデルMUを訓練するように設けられ、このモデルMUは、少なくとも一つの保存された実速度IGと少なくとも一つの保存された目標加速度SBから、後の時間ステップの実速度IGを予測するように設けられている。
【0053】
特に、この装置は、モデルMUの予測誤差を最小化するように第一の重み付け係数と第二の重み付け係数を最適化することによって、モデルMUを訓練するように設けられ、このとき、第一の重み付け係数は、少なくとも一つの保存された実速度IGが予測に与える影響を規定し、第二の重み付け係数は、少なくとも一つの保存された目標加速度SBが予測に与える影響を規定する。
【0054】
さらに、この装置は、情報の第二のサブセットZTを選出し、その第二のサブセットZT、モデルMUおよび加速度コントローラBRに基づいて、例えば、最適化手段CUを用いることで、増幅率VFを適正化するように設けられている。
【0055】
特に、この装置は、第二のサブセットZT、モデルMUおよび加速度コントローラBRに基づいて自動車の状態を予測し且つ自動車の状態に関連するコントローラ品質度合を最小化するように増幅率VFを適正化するように装置が設けられていることにより、増幅率VFを適正化する構成とされている。
【0056】
この場合、自動車の状態には、一回の時間ステップにおける自動車の少なくとも一つの実速度IGおよび/または自動車の少なくとも一つの目標加速度SBが含まれる。
図1
【国際調査報告】