(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-16
(54)【発明の名称】燃料ガスによるエネルギー貯蔵システム
(51)【国際特許分類】
F17C 5/06 20060101AFI20240208BHJP
H02J 15/00 20060101ALI20240208BHJP
H02P 9/04 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
F17C5/06
H02J15/00 C
H02J15/00 E
H02P9/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547785
(86)(22)【出願日】2022-02-09
(85)【翻訳文提出日】2023-09-01
(86)【国際出願番号】 EP2022053162
(87)【国際公開番号】W WO2022171695
(87)【国際公開日】2022-08-18
(32)【優先日】2021-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521566988
【氏名又は名称】グラビトリシティ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ライト、マーティン
(72)【発明者】
【氏名】フレンケル,ピーター
【テーマコード(参考)】
3E172
5H590
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172AB04
3E172AB05
3E172BA06
3E172DA90
3E172EA02
3E172EB02
3E172KA03
5H590CA30
5H590CE01
(57)【要約】
垂直変位を画定する第1の上部位置と第2の下部位置との間で移動可能な少なくとも1つの重りを有する、第1の重力ベースのエネルギー貯蔵サブシステムと、加圧燃料ガスを貯蔵するための容器を備える第2のエネルギー貯蔵サブシステムと、を有するエネルギー貯蔵システムは、外部電力システムとの電気入出力接続部と、外部燃料ガス供給源またはネットワークからエネルギー貯蔵システムに燃料ガスを供給するための燃料ガス入口とエネルギー貯蔵システムから外部燃料ガスユーザまたはネットワークに燃料ガスを供給するための燃料ガス出口とのうちの少なくとも1つを有し、および/または、エネルギーを燃料ガスから電気エネルギーに変換して、第1のエネルギー貯蔵サブシステムに貯蔵するか、または電気出力接続部を介して外部電力システムにエクスポートするための、ガス電力変換装置と、電気エネルギーを燃料ガスに変換して、第2のエネルギー貯蔵サブシステムに貯蔵するか、または燃料ガス出口を介して外部燃料ガスユーザまたはネットワークにエクスポートするための、電力ガス変換装置と、のうちの少なくとも1つを有し、制御システムは、外部電力システムおよび/もしくは外部燃料ガスネットワークまたはユーザの要件に従って、第1および第2のエネルギー貯蔵サブシステムの協調的または相補的な動作を制御するように構成される。定義されたシステムは、電力網などの外部電力システムにリンクされたシステムのエネルギー貯蔵(充電)および放電を可能にし、重力ベースの貯蔵装置を使用してエネルギーを貯蔵し、その迅速な応答時間および急速充電/放電速度を利用しながら、エネルギー貯蔵容量を増強することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー貯蔵システムであって、
第1の上部位置と第2の下部位置との間で移動可能な少なくとも1つの重りを備えた重力ベースのエネルギー貯蔵システムを備え、前記第1の上部位置と前記第2の下部位置は、前記重りまたは各重りの垂直変位を画定する、第1のエネルギー貯蔵サブシステムと、
加圧燃料ガスを貯蔵するための容器を備える第2のエネルギー貯蔵サブシステムと、
外部電力システムとの電気入力接続部および電気出力接続部と、
外部燃料ガス供給源またはネットワークから前記エネルギー貯蔵システムに燃料ガスを供給するための燃料ガス入口と、
前記エネルギー貯蔵システムから外部燃料ガスユーザまたはネットワークに燃料ガスを供給するための燃料ガス出口と、のうちの少なくとも1つ、
および/または、
エネルギーを燃料ガスから電気エネルギーに変換して、前記第1のエネルギー貯蔵サブシステムに貯蔵するか、または前記電気出力接続部を介して外部電力システムにエクスポートするための、ガス電力変換装置と、
電気エネルギーを燃料ガスに変換して、前記第2のエネルギー貯蔵サブシステムに貯蔵するか、または燃料ガス出口を介して外部燃料ガスユーザまたはネットワークにエクスポートするための、電力ガス変換装置と、のうちの少なくとも1つを備え、
前記エネルギー貯蔵システムは、前記外部電力システムおよび/もしくは外部燃料ガスネットワークまたはユーザの要件に従って、前記第1および第2のエネルギー貯蔵サブシステムの協調的または相補的な動作を制御するための制御システムをさらに備える、エネルギー貯蔵システム。
【請求項2】
前記第1のエネルギー貯蔵サブシステムが、前記第1の上部位置と第2の下部位置との間で前記少なくとも1つの重りが移動可能である垂直通路または立坑を備え、前記第2のエネルギー貯蔵サブシステムの前記容器が、前記第1のエネルギー貯蔵サブシステムの前記立坑を備える、請求項1に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項3】
前記立坑が地中に形成されている、請求項2に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項4】
前記第1のエネルギー貯蔵サブシステムが、立坑の上部の立坑開口部に、またはそれに関連して配置された、少なくとも1つのウインチを備えるウインチおよびケーブル装置を備え、これによりケーブルは前記ウインチによって巻き取られ、巻き戻されて、前記重りの昇降が可能であり、前記ウインチおよびケーブル装置は前記容器内に配置されている、請求項2または請求項3に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項5】
前記容器が、前記立坑の上部に配置され密閉されたキャップまたはドームを備える、請求項4に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項6】
前記ウインチおよびケーブル装置は、前記第1のエネルギー貯蔵サブシステムが電力を受け取っているか充電しているときは油圧駆動手段によって油圧で駆動され、前記第1のエネルギー貯蔵サブシステムが電力を放出しているかまたは放電しているときは油圧発電機を油圧で駆動し、前記油圧駆動手段および油圧発電機は前記第2のエネルギー貯蔵サブシステムの前記容器の外側に配置され、前記油圧駆動手段および油圧発電機を前記ウインチおよびケーブル装置と接続する油圧駆動供給パイプおよび戻りパイプは前記容器の壁に形成された開口を通過し、前記容器の内部から周囲の大気への加圧ガスの漏れを防ぐために前記パイプの周りの前記容器壁にシールが形成されている、請求項4または請求項5に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項7】
前記システムが、前記第2のエネルギー貯蔵サブシステムの前記容器内および/または前記容器周囲の材料から熱エネルギーを捕捉するように構成された熱捕捉および/または貯蔵サブシステムをさらに備える、請求項1~6のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項8】
前記熱捕捉および/または貯蔵サブシステムがヒートポンプ装置を備える、請求項7に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項9】
前記熱捕捉および/または貯蔵サブシステムが、熱交換要素を介して前記燃料ガス貯蔵サブシステム容器に加熱および/または冷却を提供して、前記燃料ガス貯蔵容器の温度を事前定義された動作限界内に維持するように構成されている、請求項7または請求項8に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項10】
前記燃料ガスが、水素、またはメタン、または容易に圧縮して貯蔵できるプロパンまたは天然ガスなどの他の商業的に有用なガスである、請求項1~9のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項11】
前記燃料ガスが水素である、請求項10に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項12】
前記水素または他の燃料ガスが、300バールまで、好ましくは100バールまで、例えば最大約85バールの圧力で前記容器内に貯蔵される、請求項10または請求項11に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項13】
前記第1のエネルギー貯蔵サブシステムが、立坑(または他の垂直通路)と、輸送機(例えばウインチおよびケーブル装置)によって前記立坑を通って昇降し、前記立坑の上部および/または底部の保管位置に保管されるように構成された複数の重りとを備える、多重重り重力ベースのエネルギー貯蔵装置を備える、請求項1~12のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項14】
前記第1のエネルギー貯蔵サブシステムが、一次エネルギー容量を有し、電力潮流能力の不連続性によって特徴付けられる、請求項13に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項15】
前記エネルギー貯蔵システムに、
i) 前記第1のエネルギー貯蔵サブシステムの少なくとも2つのエネルギー事象にわたる充電または放電サイクル中の連続的な入力電力または出力電力であって、これらのエネルギー事象は、前記第1のエネルギー貯蔵サブシステムからの出力の不連続性によって分離される、連続的な入力電力または出力電力と、
ii) 強化された、またはより速いシステム起動応答であって、これにより、前記システムは、外部電力システムの要件に対して、前記一次エネルギー貯蔵装置と前記二次エネルギー貯蔵装置の両方を同時に使用する前記外部電力システムの前記要件に応答することによって、事前定義されたまたは所望の電力入出力レベルに達することができる、強化された、またはより速いシステム起動応答と、
iii) 強化されたシステム放電停止能力であって、これにより、前記システムは、所望のシステム電力出力を超える電力出力サージを発生させることなく、外部電力システムへの放電を迅速に停止することができ、前記電力出力サージは、前記二次エネルギー貯蔵装置における一時的なエネルギー貯蔵を対象としている、強化されたシステム放電停止能力と、
iv) 電力サージ入出力能力であって、これにより、前記システムは、短期間、前記エネルギー貯蔵システムまたは前記一次電力貯蔵装置の電力定格を超える電力レベルで電力を入出力できる、電力サージ入出力能力と、のうちの1つまたは複数を提供するために、前記第1のエネルギー貯蔵サブシステムと協調的および/または相補的に動作するように構成された第3のエネルギー貯蔵サブシステムを備える、請求項13または請求項14に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項16】
前記システムが、前記システムエネルギー容量の範囲全体にわたって外部電力システムに対して入出力できる最大電力であるシステム電力定格を有する、請求項15に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項17】
前記第3のエネルギー貯蔵サブシステムが、前記システム電力定格に少なくとも等しい三次電力定格を有し、前記システム電力の入出力が前記システム電力定格で一定の場合、前記第1のエネルギー貯蔵サブシステムの電力入出力の不連続な性質から生じる最大エネルギーギャップに少なくとも等しい三次エネルギー容量を有する、請求項16に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項18】
前記三次エネルギー容量は、前記最大エネルギーギャップの10倍まで、好ましくは前記最大エネルギーギャップの5倍まで、より好ましくは前記最大エネルギーギャップの2倍まで、および任意選択で前記最大エネルギーギャップの1.8倍または1.5倍までである、請求項17に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項19】
前記一次電力定格が前記三次電力定格よりも大きい、請求項1~18のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項20】
前記第3のエネルギー貯蔵サブシステムが、バッテリ、キャパシタまたはスーパーキャパシタ、圧縮空気エネルギー貯蔵システム、フライホイール、または第2の重力ベースのエネルギー貯蔵システムから選択される、請求項15~19のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項21】
前記第2のエネルギー貯蔵サブシステムからガスネットワークパイプラインに燃料ガスを供給するための燃料ガス出口を備える、請求項1~20のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項22】
eV充電ステーションおよび/または燃料ガス車両補給ステーションを備える車両充電および/または補給ステーションを備え、前記車両充電ステーションおよび/または補給ステーションは、車両充電ステーション電気供給接続部および/または補給燃料ガス出口接続部を介して前記エネルギー貯蔵システムから供給される、請求項1~21のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項23】
エネルギー貯蔵システムであって、
容積(例えば、地中に形成された立坑によって画定される)を通って第1の上部位置と第2の下部位置との間で移動可能な少なくとも1つの重りを備えた重力ベースのエネルギー貯蔵システムを備え、前記第1の上部位置と第2の下部位置は、前記重りまたは各重りの垂直変位を画定する、第1のエネルギー貯蔵サブシステムと、
加圧燃料ガス貯蔵容器を備え、前記容器は、前記第1のエネルギー貯蔵サブシステムによって画定される前記容積を取り囲む燃料ガス貯蔵容積を画定する、第2のエネルギー貯蔵サブシステムと、を備える、エネルギー貯蔵システム。
【請求項24】
エネルギー貯蔵システムであって、
地中に形成された立坑(または他の垂直通路)を通って第1の上部位置と第2の下部位置との間で移動可能な少なくとも1つの重りを備えた重力ベースのエネルギー貯蔵システムを備え、前記第1の上部位置と第2の下部位置は、前記重りまたは各重りの垂直変位を画定する、第1のエネルギー貯蔵サブシステムと、
前記立坑内または前記立坑の周囲から熱エネルギーを捕捉するために、前記第1のエネルギー貯蔵サブシステムの前記立坑内または前記立坑の周囲に配置された熱捕捉要素を備える、熱エネルギー捕捉および/または貯蔵サブシステムと、を備える、エネルギー貯蔵システム。
【請求項25】
外部エネルギーシステムへの、および外部エネルギーシステムからのエネルギーの貯蔵および供給のための方法であって、請求項1に記載のエネルギー貯蔵システムを提供することと、第1の貯蔵サブシステム内の重りの上昇による位置エネルギーとして、または前記電力ガス変換装置による電気エネルギーの燃料ガスへの変換による化学エネルギーとして、外部電源またはネットワークからの前記電気エネルギーの前記貯蔵を制御するために前記制御システムを動作させることと、前記燃料ガスを前記第2のエネルギー貯蔵装置に供給することによって、またはガス電力変換装置を使用して前記燃料ガスの電気エネルギーへの変換により供給された燃料ガスを位置エネルギーとして貯蔵することによって、得られた燃料ガスを前記第2のエネルギー貯蔵サブシステムに貯蔵して、外部燃料ガス供給者またはネットワークからの燃料ガスからのエネルギーの前記貯蔵を圧縮燃料ガスとして制御することと、外部ガスおよび電力ネットワークまたは供給者のエネルギー貯蔵要件に従って、かつ、前記第1および第2のエネルギー貯蔵サブシステムの前記燃料ガスおよび電気エネルギー貯蔵容量、ならびに前記事前定義または予測された燃料ガスおよび電気エネルギー出力要件に応じて、第1の貯蔵サブシステムの重りの前記上昇によって前記エネルギーを位置エネルギーとして貯蔵することと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、エネルギー貯蔵の分野に関し、特に、電力システムまたはガスネットワークなどからのエネルギーを貯蔵し、電気または燃料ガスを供給するシステム、装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低炭素およびゼロ炭素エネルギーシステムへの移行と再生可能エネルギーへの依存の増大により、既存の化石燃料ベースのシステムと比較して、エネルギーの利用可能な供給と需要のタイミングの間の変動が大きくなる。この結果、エネルギーの貯蔵、特に再生可能資源由来のエネルギーがますます重要な役割を果たすようになる可能性がある。
【0003】
低炭素およびゼロ炭素システムへの移行には、低炭素電力への移行が含まれており、そのことについてはこれまでにかなりの進歩が見られるが、継続的な課題である暖房と輸送も含まれる。
【0004】
暖房の低炭素ソリューションへの移行は、電気促進暖房(空気源および地熱源ヒートポンプ)、将来の可能性のあるグリーンガス(バイオガスやグリーン水素など)、および地域暖房スキーム(低炭素源による)を通じて推進されている。
【0005】
陸上輸送は、例えば、電気車両、水素電気車両、ならびに水素動力列車(非電化路線)を含む低炭素システムへの移行が進んでいる。
【0006】
重力ベースのエネルギー貯蔵システムは、信頼性が高く効率的なエネルギー貯蔵およびグリッドバランシングの1つの方法としてますます認識されてきている。大規模な揚水発電はよく知られているが、最近では、重りの昇降(地中の立坑や穴を含む)に関する革新、特に重りやケーブルシステムにより、エネルギー貯蔵の効率が向上するだけでなく、地域および国の送電網のニーズと応答時間の改善に見合うエネルギー容量の利点も提供されている。
【0007】
例えば、英国特許第2509437号には、立坑内のケーブルから吊り下げられた重りを有して、重りを地中の立坑に降ろすときに電気エネルギーを生成し、立坑を通る重りを持ち上げるときに電気エネルギーを消費して蓄電するエネルギー貯蔵システムが記載されている。
【0008】
経済的に有利であり、外部電力システムからの高品質の電力受領または外部電力システムへの電力供給を提供するために、エネルギー貯蔵システムは、有利には、迅速な応答(すなわち、短い応答時間および需要を満たすために出力を調整する能力)、大きなエネルギー容量、そして、その全容量にわたる継続的な入出力を提供する。
【0009】
本発明者らは、エネルギー貯蔵システムの欠点に対処し、既存の技術を改善するエネルギー貯蔵システムの改良点を特定した。
【発明の概要】
【0010】
ケーブルおよび重り重力ベースのシステムを介して、より大容量で高品質のエネルギー貯蔵を提供するエネルギー貯蔵システムの改善が必要である。電力、熱、輸送のためのエネルギー貯蔵にも対処する必要がある。
【0011】
本発明の目的は、長期間のエネルギー貯蔵または供給を提供しながら、重力ベースのエネルギー貯蔵システムを使用してエネルギー貯蔵容量の向上を可能にするエネルギー貯蔵システムを提供することである。
【0012】
本発明の目的は、電源、加熱、輸送のための電力供給などの多目的のためのエネルギー貯蔵システムを提供することである。
【0013】
本発明の第1の態様によれば、エネルギー貯蔵システムであって、
第1の上部位置と第2の下部位置との間で移動可能な少なくとも1つの重りを備えた重力ベースのエネルギー貯蔵システムを備え、第1の上部位置と第2の下部位置は、その重りまたは各重りの垂直変位を画定する、第1のエネルギー貯蔵サブシステムと、
加圧燃料ガスを貯蔵するための容器を備える第2のエネルギー貯蔵サブシステムと、
外部電力システムとの電気入力接続部および電気出力接続部と、
外部燃料ガス供給源またはネットワークからエネルギー貯蔵システムに燃料ガスを供給するための燃料ガス入口と、
エネルギー貯蔵システムから外部燃料ガスユーザまたはネットワークに燃料ガスを供給するための燃料ガス出口と、
のうちの少なくとも1つ、
および/または、
エネルギーを燃料ガスから電気エネルギーに変換して、第1のエネルギー貯蔵サブシステムに貯蔵するか、または電気出力接続部を介して外部電力システムにエクスポートするための、ガス電力変換装置と、
電気エネルギーを燃料ガスに変換して、第2のエネルギー貯蔵サブシステムに貯蔵するか、または燃料ガス出口を介して外部燃料ガスユーザまたはネットワークにエクスポートするための、電力ガス変換装置と、
のうちの少なくとも1つを備え、
エネルギー貯蔵システムは、外部電力システムおよび/もしくは外部燃料ガスネットワークまたはユーザの要件に従って、第1および第2のエネルギー貯蔵サブシステムの協調的または相補的な動作を制御するための制御システムをさらに備える、
エネルギー貯蔵システムが提供される。
【0014】
本発明の第2の態様では、エネルギー貯蔵システムであって、
容積(例えば、地中に形成された立坑によって画定される)を通って第1の上部位置と第2の下部位置との間で移動可能な少なくとも1つの重りを備えた重力ベースのエネルギー貯蔵システムを備え、第1の上部位置と第2の下部位置は、その重りまたは各重りの垂直変位を画定する、第1のエネルギー貯蔵サブシステムと、
加圧燃料ガス貯蔵容器を備え、容器は、第1のエネルギー貯蔵サブシステムによって画定される容積を取り囲む燃料ガス貯蔵容積を画定する、第2のエネルギー貯蔵サブシステムと、
を備える、エネルギー貯蔵システムが提供される。
【0015】
本発明の第3の態様では、エネルギー貯蔵システムであって、
地中に形成された立坑(または他の垂直通路)を通って第1の上部位置と第2の下部位置との間で移動可能な少なくとも1つの重りを備えた重力ベースのエネルギー貯蔵システムを備え、第1の上部位置と第2の下部位置は、その重りまたは各重りの垂直変位を画定する、第1のエネルギー貯蔵サブシステムと、
立坑内または立坑の周囲から熱エネルギーを捕捉するために、第1のエネルギー貯蔵サブシステムの立坑内または立坑の周囲に配置された熱捕捉要素を備える、熱エネルギー捕捉および/または貯蔵サブシステムと、
を備える、エネルギー貯蔵システムが提供される。
【0016】
本発明の第4の態様では、外部エネルギーシステムへの、および外部エネルギーシステムからのエネルギーの貯蔵および供給のための方法が提供され、この方法は、上で定義されたエネルギー貯蔵システムを提供することと、第1の貯蔵サブシステム内の重りの上昇による位置エネルギーとして、または電力ガス変換装置による電気エネルギーの燃料ガスへの変換による化学エネルギーとして、外部電源またはネットワークからの電気エネルギーの貯蔵を制御するために制御システムを動作させることと、燃料ガスを第2のエネルギー貯蔵装置に供給することによって、またはガス電力変換装置を使用して供給された燃料ガスの電気エネルギーへの変換により燃料ガスを位置エネルギーとして貯蔵することによって、得られた燃料ガスを第2のエネルギー貯蔵サブシステムに貯蔵して、外部燃料ガス供給者またはネットワークからの燃料ガスからのエネルギーの貯蔵を圧縮燃料ガスとして制御することと、外部ガスおよび電力ネットワークまたは供給者のエネルギー貯蔵要件に従って、かつ、第1および第2のエネルギー貯蔵サブシステムの燃料ガスおよび電気エネルギー貯蔵容量、ならびに事前定義または予測された燃料ガスおよび電気エネルギー出力要件に応じて、第1の貯蔵サブシステムの重りの上昇によってエネルギーを位置エネルギーとして貯蔵することと、を含む。
【0017】
本発明の利点
本発明のエネルギー貯蔵システムおよび方法は、電力網などの外部電力システムにリンクされたエネルギー貯蔵(充電)および放電を可能にし、重力ベースの貯蔵装置を使用してエネルギーを貯蔵し、その迅速な応答時間および急速充電/放電速度を利用しながら、エネルギー貯蔵容量を増強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態によるエネルギー貯蔵システムのプロセスフローおよびサブシステム間の相互関係を示す図である。
【
図2】本発明の別の実施形態のエネルギー貯蔵システムの概略断面図である。
【
図3】本発明のさらに別の実施形態のエネルギー貯蔵システムの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
第1の態様による発明は、エネルギー貯蔵システムである。それは、第1のエネルギー貯蔵サブシステムと第2のエネルギー貯蔵サブシステムと、任意選択で熱エネルギー貯蔵サブシステムとさらなるエネルギー貯蔵サブシステムとを備える。
【0020】
第1のエネルギー貯蔵サブシステムは、第1の上部位置と第2の下部位置との間で移動可能な少なくとも1つの重りを備える重力ベースのエネルギー貯蔵システムを備え、第1の上部位置と第2の下部位置は、その重りまたは各重りの垂直変位を画定する。
【0021】
第2のエネルギー貯蔵サブシステムは、加圧燃料ガスを貯蔵するための容器を備える。
【0022】
このシステムには、外部電力システムとの電気入力接続部および電気出力接続部と、外部燃料ガス供給源またはネットワークからエネルギー貯蔵システムに燃料ガスを供給するための燃料ガス入口とエネルギー貯蔵システムから外部燃料ガスユーザまたはネットワークに燃料ガスを供給するための燃料ガス出口と、のうちの少なくとも1つ、および/または、エネルギーを燃料ガスから電気エネルギーに変換して、第1のエネルギー貯蔵サブシステムに貯蔵するか、または電気出力接続部を介して外部電力システムにエクスポートするための、ガス電力変換装置と、電気エネルギーを燃料ガスに変換して、第2のエネルギー貯蔵サブシステムに貯蔵するか、または燃料ガス出口を介して外部燃料ガスユーザまたはネットワークにエクスポートするための、電力ガス変換装置と、のうちの少なくとも1つ、が設けられる。
【0023】
エネルギー貯蔵システムは、外部電力システムおよび/もしくは外部燃料ガスネットワークまたはユーザの要件に従って、第1および第2のエネルギー貯蔵サブシステムの協調的または相補的な動作を制御するための制御システムをさらに備える。
【0024】
第1のエネルギー貯蔵サブシステムは、好ましくは通路または立坑、好ましくは垂直通路または立坑を備え、それを通して少なくとも1つの重りは第1の上部位置と第2の下部位置との間で移動可能である。第2のエネルギー貯蔵サブシステムの容器は、好ましくは、第1のエネルギー貯蔵サブシステムの通路または立坑を備える。通路または立坑は、地中に形成されることが好ましく、例えば、既存の鉱山立坑を適応させたもの、または新たに掘削した特注の立坑であってもよい。
【0025】
好ましくは、重力ベースのエネルギー貯蔵サブシステムは、立坑の上部の立坑開口部に、またはそれに関連して配置された、少なくとも1つのウインチを備えるウインチおよびケーブル装置を備え、これによりケーブルはウインチによって巻き取られ、巻き戻されて、重りの昇降が可能であり、ウインチおよびケーブル装置は容器内に配置されている。ケーブルは、スチールケーブルまたは合成ケーブルなどの任意の適切な形状であってもよいが、好ましくは(特に水素などの燃料ガスの貯蔵容器で使用される場合)、水素の存在による脆化を受けない合成材料またはロープであり得る。
【0026】
好ましくは、容器は、立坑の上部に配置され密閉されたキャップまたはドームを備える。立坑はライニングされていてもよく、燃料ガスとしての水素による脆化または腐食に耐性のあるライニングまたはライニングコーティングを含むことが好ましい。
【0027】
ウインチおよびケーブル装置は、任意の適切な手段によって駆動することができる。燃料ガス貯蔵容器内に配置されるときでも、ウインチおよびケーブル装置は、空気が筐体または容器内に漏れている場合に燃料ガスの引火を引き起こす可能性のある火花を避ける必要性を念頭に置き、密閉性の高い電気モータ、または好ましくは油圧もしくは空気圧駆動システムによって駆動することができる。
【0028】
好ましくは、ウインチおよびケーブル装置は、第1のエネルギー貯蔵サブシステムが電力を受け取っているか充電しているときは油圧駆動システムによって油圧駆動され、第1のエネルギー貯蔵サブシステムが電力を放出しているかまたは放電しているときは油圧発電機を油圧で駆動する。油圧駆動システムは、第2のエネルギー貯蔵サブシステムの容器の外側に配置されたモータまたは発電機を有するように構成することができ、油圧駆動供給パイプおよび戻りパイプは、モータまたは発電機を、ウインチおよびケーブル装置を操作するためのウインチに隣接する容器内の対応する油圧モータ/ポンプと接続する。油圧駆動供給パイプおよび戻りパイプは、好ましくは容器壁に形成された開口を通過し、容器の内部から周囲大気への加圧ガスの漏れを防ぐために、パイプの周囲の容器壁にシールが形成される。
【0029】
好ましくは、システムは、第2のエネルギー貯蔵サブシステムの容器内および/または容器周囲の材料から、例えば1つまたは複数の熱交換要素または熱交換部材を介して熱エネルギーを捕捉するように構成された熱捕捉および/または貯蔵サブシステムをさらに備える。任意選択で、熱捕捉および/または貯蔵サブシステムは、第1または第2のエネルギー貯蔵サブシステムの立坑または容器からある程度の距離を置いて配置され、流体を運ぶ熱を運ぶための供給および戻りパイプによって熱捕捉手段または熱交換部材に接続され得るヒートポンプ装置を備える。
【0030】
任意選択で、熱捕捉および/または貯蔵サブシステムは、熱交換要素を介して燃料ガス貯蔵サブシステム容器に加熱および/または冷却を提供して、燃料ガス貯蔵容器の温度を事前定義された動作限界内に維持するように構成される。
【0031】
燃料ガスは、水素、メタン、あるいは容易に圧縮して貯蔵できるプロパンや天然ガスなどの他の商業的に有用なガスとすることができる。好ましくは、燃料ガスは水素である。燃料ガス、特に水素は、300バールまで、好ましくは100バールまで、例えば最大約85バールの圧力など、任意の適切な圧力で容器内に貯蔵することができる。いずれの場合でも、最大容量時の容器内の圧力は少なくとも30バールであることが好ましい。
【0032】
一実施形態では、第1のエネルギー貯蔵サブシステムは、立坑(または他の垂直通路)と、輸送機(例えば、ウインチおよびケーブル装置)によって立坑を通って昇降するように構成された複数の重りとを備える、多重重り重力ベースのエネルギー貯蔵装置を備える。1つのこのような実施形態では、複数の重り(例えば2つ)が並べて設けられ、それぞれのウインチ装置の制御下で重なり合わない経路をたどる。この実施形態では、ウインチは、ケーブルを介してそれぞれの重りと接続されたままであってもよい。別のそのような実施形態では、2つ以上の重りは重なり合うかまたは同じ経路を有し、この実施形態によれば、立坑の上部および/または底部の保管位置に保管され得る。例えば、立坑/容器の上部にあるキャップ付きの容積には、重り保管領域が含まれる場合がある。この後者の実施形態によるこのようなシステムは、電力潮流能力の不連続性による一次エネルギー容量を有することによって特徴付けられ得る。
【0033】
この実施形態では、エネルギー貯蔵システムに以下のうちの1つまたは複数を提供するために、第1のエネルギー貯蔵サブシステムと協調的および/または相補的に動作するように構成された第3のエネルギー貯蔵サブシステムが存在することが好ましい。
i) 第1のエネルギー貯蔵サブシステムの少なくとも2つのエネルギー事象にわたる充電または放電サイクル中の連続的な入力電力または出力電力。これらのエネルギー事象は、第1のエネルギー貯蔵サブシステムからの出力の不連続性によって分離される。
ii) 強化された、またはより速いシステム起動応答。これにより、システムは、外部電力システムの要件に対して、一次エネルギー貯蔵装置と二次エネルギー貯蔵装置の両方を同時に使用する外部電力システムの要件に応答することによって、所定のまたは所望の電力入出力レベルに達することができる。
iii) 強化されたシステム放電停止能力。これにより、システムは、所望のシステム電力出力を超える電力出力サージを発生させることなく、外部電力システムへの放電を迅速に停止することができ、電力出力サージは、二次エネルギー貯蔵装置における一時的なエネルギー貯蔵を対象としている。
iv) 電力サージ入出力能力。これにより、システムは、短期間、エネルギー貯蔵システムまたは一次電力貯蔵装置の電力定格を超える電力レベルで電力を入出力できる。
【0034】
このようなシステムでは、システムは、システムのエネルギー容量の範囲全体にわたって外部電力システムに対して入出力できる最大電力であるシステム電力定格を有し得る。第3のエネルギー貯蔵サブシステムは、システム電力定格に少なくとも等しい三次電力定格を有し、システム電力の入出力がシステム電力定格で一定の場合、第1のエネルギー貯蔵サブシステムの電力入出力の不連続な性質から生じる最大エネルギーギャップに少なくとも等しい三次エネルギー容量を有することが好ましい。好ましくは、三次エネルギー容量は、最大エネルギーギャップの10倍まで、好ましくは最大エネルギーギャップの5倍まで、より好ましくは最大エネルギーギャップの2倍まで、および任意選択で最大エネルギーギャップの1.8倍または1.5倍までである。好ましくは、一次電力定格は三次電力定格より大きい。
【0035】
第3のエネルギー貯蔵サブシステムは、バッテリ、キャパシタまたはスーパーキャパシタ、圧縮空気エネルギー貯蔵システム、フライホイール、または第2の重力ベースのエネルギー貯蔵システムから選択されることが好ましい。
【0036】
本発明のシステムは、第2のエネルギー貯蔵サブシステムからガスネットワークパイプラインに燃料ガスを供給するための燃料ガス出口を有することが好ましい。
【0037】
任意選択で、システムは、eV充電ステーションおよび/または燃料ガス車両補給ステーションを備える車両充電および/または補給ステーションを備え、車両充電ステーションおよび/または補給ステーションは、車両充電ステーション電気供給接続部および/または補給燃料ガス出口接続部を介してエネルギー貯蔵システムから供給される。
【0038】
一実施形態で、別の態様では、エネルギー貯蔵システムは、第1のエネルギー貯蔵サブシステムおよび第2のエネルギー貯蔵サブシステムを備える。第1のエネルギー貯蔵サブシステムは、容積(例えば、典型的には地中に形成された、好ましくは垂直の通路または立坑によって画定され)を通って第1の上部位置と第2の下部位置との間で移動可能な少なくとも1つの重りを備えた重力ベースのエネルギー貯蔵システムを備え、第1の上部位置と第2の下部位置は、その重りまたは各重りの垂直変位を画定する。第2のエネルギー貯蔵サブシステムは、加圧燃料ガス貯蔵容器を備え、容器は、第1のエネルギー貯蔵サブシステムによって画定される容積を取り囲む燃料ガス貯蔵容積を画定する。燃料ガスは、メタン、天然ガス、または他の燃料ガスなどの任意の適切な燃料ガスであってよいが、好ましくは水素である。燃料ガスは、上述したように、適切な圧力で容器内に貯蔵され得る。
【0039】
重力ベースのエネルギー貯蔵システムを備える第1のエネルギー貯蔵サブシステムと、水素などの加圧燃料ガスを貯蔵するための容器を備える第2のエネルギー貯蔵サブシステムとを備える、本明細書に記載される本発明の実施形態では、第1および第2のエネルギー貯蔵サブシステムが共有容積、好ましくは第1のエネルギー貯蔵サブシステムの重りの昇降に少なくとも必要な容積を収容する容器内の容積を占めることが好ましい。好ましくは、第1のエネルギー貯蔵サブシステムは、垂直経路容積を通して重りを昇降するためのウインチ(理想的には油圧駆動)およびケーブルを備え、好ましくは、ウインチ、ケーブルおよび重りおよび垂直経路容積は、第2のエネルギー貯蔵サブシステムの容器内にある。好ましくは、第1のエネルギー貯蔵サブシステムの垂直通路と第2のエネルギー貯蔵サブシステムの燃料ガス貯蔵容積を画定する容器は、少なくとも一部が地下にあるように、例えば地中の立坑をライニングすることによって形成されるように配置される。容器は、ライニングされた立坑(例えば円筒形立坑)上、例えば立坑のリムまたは他の上部リムフランジ上に形成されたキャップ、例えばドームを備え得る。任意選択で、立坑全体、好ましくは容器全体が地下に配置される。燃料ガス貯蔵サブシステム(第2のエネルギー貯蔵サブシステム)の容器を第1のエネルギー貯蔵サブシステムの立坑との共有容積として設けることは、同じインフラストラクチャ(つまり、地中に埋められた立坑)の使用によるコストの節約、および、例えば破裂に対する耐性への容器の構造的完全性に加えて、圧力容器と密接に接触している場合、地面の質量の利点に加えて貯蔵の平準化コストへの影響があり得るため、特に有益である。したがって、容器を形成するのに必要な材料またはライニング材料(例えば鋼)の量を大幅に削減しながら、適切な構造的完全性を達成するために必要な量を達成することができ、コストの削減につながり得る。さらに、加圧燃料ガスを貯蔵する際の火災や爆発の危険性の観点から、このように容器の一部または全部を地下に設けることで、火災や爆発が抑えられやすくなり、周囲の財産(人員)への被害を最小限に抑えることができる。
【0040】
本発明の別の好ましい実施形態においてさらなる態様では、エネルギー貯蔵システムは、第1のエネルギー貯蔵サブシステムと、熱エネルギー捕捉および/または貯蔵サブシステムとを備える。この実施形態/態様によれば、第1のエネルギー貯蔵サブシステムは、好ましくは地中に形成された立坑(または他の好ましくは垂直通路)を通って第1の上部位置と第2の下部位置との間で移動可能な少なくとも1つの重りを備えた重力ベースのエネルギー貯蔵システムを備えることができ、第1の上部位置と第2の下部位置は、その重りまたは各重りの垂直変位を画定する。熱エネルギー捕捉および/または貯蔵サブシステムは、好ましくは、立坑の内部または周囲から熱エネルギーを捕捉するために、第1のエネルギー貯蔵サブシステムの立坑内または立坑の周囲に配置された熱捕捉要素を備える。
【0041】
さらに、外部エネルギーシステムへの、および外部エネルギーシステムからのエネルギーの貯蔵および供給のための方法が提供され、この方法は、上で定義されたエネルギー貯蔵システムを提供することと、第1の貯蔵サブシステム内の重りの上昇による位置エネルギーとして、または電力ガス変換装置による電気エネルギーの燃料ガスへの変換による化学エネルギーとして、外部電源またはネットワークからの電気エネルギーの貯蔵を制御するために制御システムを動作させることと、燃料ガスを第2のエネルギー貯蔵装置に供給することによって、またはガス電力変換装置を使用して燃料ガスの電気エネルギーへの変換により供給された燃料ガスを位置エネルギーとして貯蔵することによって、得られた燃料ガスを第2のエネルギー貯蔵サブシステムに貯蔵して、外部燃料ガス供給者またはネットワークからの燃料ガスからのエネルギーの貯蔵を圧縮燃料ガスとして制御することと、外部ガスおよび電力ネットワークまたは供給者のエネルギー貯蔵要件に従って、かつ、第1および第2のエネルギー貯蔵サブシステムの燃料ガスおよび電気エネルギー貯蔵容量、ならびに事前定義または予測された燃料ガスおよび電気エネルギー出力要件に応じて、第1の貯蔵サブシステムの重りの上昇によってエネルギーを位置エネルギーとして貯蔵することと、を含む。
【0042】
上記の態様のそれぞれにおいて、エネルギー貯蔵システムは、好ましくは、外部電力システムおよび/もしくは外部燃料ガスネットワークまたはユーザの要件に従って、第1および第2のエネルギー貯蔵サブシステムと、任意選択の熱エネルギー回収および/または貯蔵システムと、任意選択のさらなるエネルギー貯蔵サブシステムとの協調的または相補的な動作を制御するための制御システムを備える。これには、所望のサービスまたは予測されたサービスが確実に利用できるようにするための、2つ以上のサブシステム間でのエネルギーの形態の任意の変換が含まれる(例えば、急速な供給のための電力の提供、または貯蔵のための電気エネルギーを受け取るための容量の提供)。好ましくは、一般にカップ上で動作する制御ソフトウェアを含む制御システムは、利用可能な貯蔵の相対容量を考慮して所望のサービスを維持しながら、特にサブシステム間のエネルギー変換の回数を最小限に抑えるように構成される。
【0043】
次に、添付の図面を参照しながら、限定することなく本発明をより詳細に説明する。
【0044】
図1において、本発明の実施形態によるエネルギー貯蔵システム1は、多重重り重力エネルギー貯蔵サブシステム3と、圧縮水素(好ましい燃料ガスとして)貯蔵サブシステム5とを備える。このシステムは、任意選択で、熱エネルギー捕捉および貯蔵サブシステム7をさらに備える。
【0045】
電力は、外部電力網入力接続部9を介してエネルギー貯蔵システムに供給することができ、それを介して、第1のエネルギー貯蔵サブシステムとしての重力エネルギー貯蔵サブシステム3に電力が供給され得る。重力ベースのエネルギー貯蔵サブシステム3は、ケーブル(図示せず)を介して垂直通路または立坑(図示せず)を通して重り13を昇降させるように構成されたウインチ装置11を備え、ケーブルは、それが重力エネルギー貯蔵サブシステム3における貯蔵/充電イベントまたは放電イベントであるかどうかに応じて合成ケーブルであり得る。ウインチ装置11は、重り13を持ち上げるために貯蔵されている電気エネルギーを使用してモータ/発電機装置15によって駆動され、モータ/発電機装置15は、例えば、外部グリッドの要件を満たすために、放電イベント中にシステム電力出力接続部17を介して外部グリッドに供給するための電気エネルギーを生成する発電機として機能する。ウインチおよび重り装置が第2のエネルギー貯蔵サブシステムの容器内に、したがって燃料ガス雰囲気中に配置される場合、電気部品を密閉するか、できれば燃料ガスが入った圧力容器の外側に置くことが好ましい。この実施形態によれば、ウインチ用の動力ユニットは、燃料ガス環境に囲まれた場合、外部に配置された電気油圧ポンプ/モータによって加圧筐体の外側から油圧駆動されることが好ましい。
【0046】
第2のエネルギー貯蔵サブシステムは、燃料ガス貯蔵サブシステム5によって提供され、これは、好ましくは水素貯蔵サブシステム5である。水素貯蔵サブシステム5は、容器(図示せず)によって画定される貯蔵容積内に圧縮水素ガスを貯蔵するためのものであり、この貯蔵容積には、重力ベースのエネルギー貯蔵サブシステム3内の重り13が昇降する垂直通路または立坑の容積が含まれることが好ましい。この単一容積の利点の1つは、インフラストラクチャの共有であるが、それに加えて、より効率的に熱を捕捉できる利点ある。
【0047】
水素貯蔵サブシステム5に貯蔵するための水素は、エネルギー貯蔵の目的で多くの供給源から供給され得る。例えば、グリッドからの電力は、グリッドからの余剰電力の一部が分岐電力入口19を介して予備電解槽21に転換することにより、重力ベースのエネルギー貯蔵サブシステム3と水素貯蔵サブシステム5の両方にエネルギー貯蔵のために分割されて、水素を生成することができ、これを、通常は圧縮機を通過させて、水素を水素貯蔵サブシステム5に貯蔵するための所望の圧力または所望の最大圧力まで水素を加圧して水素エネルギー貯蔵サブシステム5に供給することができる。所望の圧力または最大圧力は、任意の適切な圧力、例えば800バールまで、または400バールまでであり得るが、好ましくは最大200バールまで、任意選択で最大100バール、例えば約85バールであり得る。圧力を高くすると、より多くの水素を貯蔵できるようになるが、これはエネルギーを大量に消費するため、実現するには追加のインフラストラクチャが必要になる。この構成により、水素貯蔵サブシステム5は、重力ベースのエネルギー貯蔵サブシステム3に対する補助システムとして機能することができ、システム1の出力および容量を潜在的に増加させる効果を有する。それはまた、重力ベースのエネルギー貯蔵サブシステム3のエネルギー容量よりもはるかに大量のエネルギーを貯蔵できるようにする役割もある。したがって、グリッドからの電気エネルギーは、重力ベースのエネルギー貯蔵サブシステム3内に位置エネルギーとして、また水素貯蔵サブシステム5内に燃料ガスまたは水素などのエネルギーキャリアの形態で化学エネルギーとして貯蔵することができる。
【0048】
任意選択で、将来の使用のために貯蔵するために、水素(燃料ガスとして)を水素システム入口接続部23からの水素源からシステム1に供給することもできる。入口接続部23は、水素ネットワークパイプライン(図示せず)、水素供給パイプライン(図示せず)(例えば、遠隔の再生可能水素生成施設から)またはタンカーによるものなどの任意の適切な水素源から供給され得る。供給される水素は、典型的には圧縮機を通過して、水素ガスを、水素エネルギー貯蔵サブシステム5の容器内で、任意の適切な圧力、例えば最大250バール、例えば約85バールなどの貯蔵のためのレベルまで加圧する。任意選択で、システム1に供給される水素は、分岐水素入口25を介して予備燃料電池27(またはエンジンなどの他の発電装置)に即座に供給されて電気エネルギーを生成し、その後、この電気エネルギーがウインチ11に動力を与えるモータ15に供給されてもよく、そのエネルギーは、重力ベースのエネルギー貯蔵サブシステム3に位置エネルギーとして貯蔵される。天然ガスやメタン、プロパンやブタンのような炭化水素などの代替燃料ガスを燃料ガス貯蔵サブシステムで使用できる。
【0049】
位置エネルギーとして重力ベースのエネルギー貯蔵サブシステム3に貯蔵されたエネルギーは、重力ベースのエネルギー貯蔵サブシステムから中間電解槽/圧縮機29に電力を供給することによって、水素貯蔵サブシステムに貯蔵される化学エネルギーに変換され得る。この中間電解槽/圧縮機29は、生成された加圧水素ガスを水素貯蔵サブシステム5の容器に供給する。したがって、重力エネルギー貯蔵サブシステム3がほぼ最大容量に達している(すなわち、システム内の重りの大部分が上昇している)が、さらに迅速に応答する電気エネルギー貯蔵の容量が必要または予測されている場合、重力ベースのエネルギー貯蔵サブシステムに貯蔵されたエネルギーの一部は、水素に変換され(またはむしろ水素を生成するために使用され)、水素貯蔵サブシステム5に貯蔵され得る。任意選択で、水素貯蔵サブシステム5から中間膨張器/燃料電池31に水素を供給することによって、水素貯蔵サブシステム5に化学エネルギーとして貯蔵されたエネルギーを、重力ベースのエネルギー貯蔵サブシステムに貯蔵された位置エネルギーに変換することができる。したがって、重力エネルギー貯蔵サブシステム3が大幅に放電される場合(すなわち、重りが大幅に降下される場合)、および/または電力需要が予想される場合、システム1は、重力ベースのエネルギー貯蔵サブシステム3からの利用可能なエネルギーを迅速な応答と急速な放電で増加させるように構成することができる。システム1内で1つのエネルギー貯蔵形態から別のエネルギー貯蔵形態にエネルギーを移動させる能力により、十分な柔軟性が可能になる。このような柔軟性により、エネルギーは、利用可能な容量、予測される容量要件、および出力需要に従って、重力ベースのエネルギー貯蔵サブシステム3内の位置エネルギーまたは水素貯蔵サブシステム5内の水素の形態の化学エネルギーのいずれかとして貯蔵されること、そして任意選択で2つのサブシステム間のエネルギー貯蔵レベルのバランスを再調整することが可能になる。制御システム(図示せず)は、2つのシステム間のエネルギー貯蔵装置を制御して、貯蔵需要(応答時間と貯蔵速度の両方の点で急速な貯蔵要件となり得る)、必要なエネルギー貯蔵量、予測される出力需要(出力されるエネルギーの性質、速度、量)、およびエネルギー貯蔵の効率(これによって貯蔵形態間でのエネルギー交換を最小限に抑える必要がある)を満たす優先順位付けを容易にするように構成され得る。
【0050】
一般に、システム1には、水素ガスネットワークまたは水素が事前定義されたパーセンテージだけ注入され得るガスネットワーク(例えば、天然ガス/メタン)などの出力水素需要に水素を供給するシステムガス出力コネクタ33が設けられこのネットワークは、ローカルネットワーク、または輸送もしくは他の水素ガス使用(例えば、原料として)のためのタンカーに対するものであり得る。システムガス出力コネクタ33には、容器出口35から膨張機37を介して供給される。
【0051】
一実施形態では、システム1は、電気車両またはハイブリッド電気車両の充電、および/または水素車両またはハイブリッド水素車両(例えば、自動車、トラック、バス、または列車)の燃料補給のための車両充電/補給ステーション39を収容または供給することができる。したがって、任意選択で、システム1は、充電ステーション電源出口接続部41および/または燃料補給水素出口43を備え得る。
【0052】
任意選択で、第1および第2のエネルギー貯蔵サブシステムのそれぞれの下流に、水素貯蔵サブシステムから対応する電力出口17、41に電力を供給するための、または、重力ベースのエネルギー貯蔵サブシステム3からの水素出口33、43を供給するための、ガス電力コンバータおよび/または電力ガスコンバータ(図示せず)を設けることができる。
【0053】
好ましくは、熱エネルギー捕捉および貯蔵サブシステム7(熱エネルギーシステム)がシステム1に統合される。熱エネルギーシステム7は、典型的には、熱エネルギーを収集する熱エネルギー収集ループまたは、回路47を介して、典型的には循環流体を介して、予備燃料電池27および電解槽21、中間電解槽/圧縮機29および中間燃料電池および膨張機31から、またモータ15およびウインチ11から、収集されたエネルギーを貯蔵することができる、水タンク(または他の熱エネルギー担体液体タンク)または相変化材料などの、熱エネルギー貯蔵部45を備えることができる。地熱源熱ループ/熱交換器49は、典型的には、周囲の材料から地熱源熱を収集するために、重力ベースのエネルギー貯蔵サブシステム3の垂直通路または立坑の周囲に配置され、および/または、水素貯蔵容器内から熱を収集するために、水素貯蔵サブシステム5の貯蔵容器の内部に、またはそれに関連して配置され得る。動作中のモータおよび構成要素の熱を収集し、垂直通路/立坑および/または水素貯蔵容器からの熱を収集して別の場所で使用することによって、システム1におけるエネルギーの貯蔵の有効効率が増加する。熱エネルギー貯蔵部45に貯蔵された熱エネルギーは、例えば熱需要回路51を介してエクスポートするなど、任意の適切な方法で使用することができる。これは、地域暖房スキーム、近隣の産業用(低グレード)熱利用者、またはモータ15への電力供給にフィードバックするための熱電力変換器(熱電発電機など)に対するものであってもよい。
【0054】
好ましい実施形態のエネルギー貯蔵システム1の断面図を示す
図2では、水素エネルギー貯蔵サブシステムが重力ベースのエネルギー貯蔵サブシステムの垂直通路または立坑53を取り囲んでいる。水素貯蔵サブシステムは、立坑53を含む貯蔵容器55からなり、立坑53は、鋼(またはコンクリートライニングまたは他の材料)で形成されたライニング57を有し、任意選択で、鋼ライニングを水素ガスによる脆化から保護するためのコーティングを備えており、立坑53の上部にドーム59を配置して容器55を完成させている。ライニング55は、立坑53の頂部の周りでドーム59との境界まで延びる。水素は、加圧供給パイプ63によって圧縮機/膨張機65と水素システム入口接続部23およびシステム水素出力接続部33に連結されたドーム59内に配置されたバルブ61を介して容器55にポンプで出し入れすることができる。
【0055】
重力ベースのエネルギー貯蔵サブシステムは、複数の重り13(ここでは2つ示されている)を備えており、これらの重り13は、エネルギーを貯蔵するために下方位置から上方位置まで巻き上げられ、エネルギーを放出するために上方位置から下方位置まで降ろされ得る。ウインチ67には合成ケーブル69(耐水素脆化材料)が設けられており、これは連結部材71を介して重り13の側面に接続されている。ウインチ67は、貯蔵容器55の外側に配置され、ドーム59の密封された開口77を通過する油圧ケーブル75によってウインチ13に連結される油圧モータ/発電機73によって油圧駆動される(およびそれを油圧駆動する)。油圧モータ/発電機73はグリッド入出力接続部79に接続される。
【0056】
ライニング57の背後または内部には、協働する熱エネルギー収集回路83の熱交換要素81があり、好ましくはライニングと熱伝導的に連通している。熱交換要素81は、立坑の周囲の材料からの地熱源熱、および立坑53内からのあらゆる熱を収集するために使用され得る。またそれは、立坑53内の熱変化を調節して、水素の貯蔵効率を高めるために使用することもできる。任意選択で、失われた熱を捕捉するために、熱エネルギー収集回路83を油圧モータ/発電機73および圧縮機/膨張機65に接続することもできる。モータ/発電機73や圧縮機/膨張機65などの構成要素によって生成される熱を捕捉して使用することによって、システム1のエネルギー貯蔵の全体効率は改善することができ、知熱源収集器を介して立坑壁を介してアクセスできる地熱エネルギーを利用することによってまたさらに改善することができる。任意選択で、収集された熱エネルギーは、貯蔵され、ローカルの熱利用者によって使用され、または電気エネルギーに変換されて、油圧モータ73への入力として提供され得る。
【0057】
持ち上げられた重り71によって貯蔵された位置エネルギーは、重りを下げるときに発電機73からの出力を使用することによって化学エネルギーに変換され、電解槽(図示せず)に電力を供給して水素ガスを生成することができ、この水素ガスは圧縮機65に供給され、例えば85バールの圧力で圧縮水素として貯蔵され、これにより、システム1のエネルギー貯蔵容量が大幅に増加し、同時にその迅速な応答と高速充放電能力(重力ベースのエネルギー貯蔵サブシステムに関連する)が維持され、任意選択で、充放電サイクル要件がその容量の範囲内である場合に、重力ベースのエネルギー貯蔵サブシステムの往復貯蔵効率を維持する。逆の変換も容易にされ得る。
【0058】
水素エネルギー貯蔵サブシステムは、システムのエネルギー貯蔵容量を大幅に拡大する。例えば、直径6メートル、単一の重り1,000トンの深さ500メートルの穴または立坑を使用すると、重力ベースのエネルギー貯蔵サブシステムは約1.2MWhのエネルギー貯蔵容量を有する。同じ空間に50バールの水素が充填されると、その発熱量は約1,800MWhとなり、効率が30%しかない発電機を考慮しても、重りを1回降下させた場合の少なくとも500倍の電気エネルギーが生成される。言い換えれば、加圧された形で水素を貯蔵すると、重りを約500回上昇させる容量を増やすことができ、それによってシステムの貯蔵能力が約500倍になる(すべてのガスが使用できると仮定するが、当然ながらすべて使用される前に圧力がある最小許容レベルまで低下する)。
【0059】
このシステムは、分散ベースで導入できる他のどの貯蔵システムよりもはるかに多くの電気エネルギー(ガスからの変換)を蓄え、グリッドの安定性を提供できる、迅速な応答を備えた複合貯蔵システムを提供する。
【0060】
したがって、システム1は、(特定の時点での優先順位に応じて)最も効率的および/または効果的な方法でサブシステム間のエネルギー貯蔵のバランスを管理するコントローラによって制御され、ガスと電気エネルギーの両方に、効果的な熱収集と貯蔵/使用によって効率が向上した柔軟なエネルギー貯蔵ソリューションを提供する。
【0061】
図3には、エネルギー貯蔵システム1の代替実施形態が示されており、このシステムには地中93内の垂直通路または立坑53が多重重り重力エネルギー貯蔵サブシステム3のために設けられており、その立坑容積は、上部を密閉するドーム/キャップ59を有し、また、燃料ガス貯蔵サブシステムの一部として水素などの燃料ガスを収容するために地中93内に設けられる、容器55によって画定されている。多重重り重力貯蔵サブシステム3の立坑53および容器55は、同じ容積を占有するかまたは画定し、インフラストラクチャの共有、コストおよび土地効率の向上につながる。
【0062】
一実施形態による多重重り重力エネルギー貯蔵システム3は、立坑53内のプラットフォーム95上に配置され、第1の合成ケーブル69を介して第1の重り13が吊り下げられる第1のウインチ装置11と、プラットフォーム95の上に配置され、第2の合成ケーブル91を介して第2の重り89が吊り下げられる第2のウインチ装置87とを備える。ウインチ11、87は、容器55内の油圧モータ/ポンプ(図示せず)によって操作され、油圧モータ/発電機73から密閉開口部を介して密閉サービスリンク85を通って延在する油圧パイプ75を介して供給される油圧流体によって駆動される。油圧モータ/発電機には、入口/出口79を介して外部電力網から電力が供給される。使用中、送電網に過剰なエネルギーがある場合、電力は入口/出口79を介して油圧モータ73に供給され、油圧モータ73は油圧パイプ75を通して流体を圧送してウインチモータを駆動し、ウインチ11、87の一方または他方、または両方が重り13、89を上昇させるようにする。外部送電網にエネルギーをエクスポートしたい場合には、重り13、89を降下させることができ、ウインチ11、87が作動油パイプ75を介して密封されたサービスリンク機構85を介して油圧発電機73に作動油を汲み上げ、電力入出力コネクタ79を介してエクスポートされる電気エネルギーを生成する。重り13、89の昇降は、例えば外部グリッドの要件に従ってコントローラ(図示せず)によって制御される。
【0063】
水素(またはいくつかの実施形態では他の燃料ガス)は、ウインチおよび重り装置が任意の適切な圧力(例えば、800バールまで、しかし好ましくは400バールまで、より好ましくは100バールまで、例えば最大約85バールまで)で配置される容器55内に貯蔵され得る。水素は、任意選択で、水素入出力接続部23を介して外部水素源から供給されてもよく、貯蔵後、任意選択で、天然ガスネットワークまたはローカル水素ネットワークまたは水素補給ステーションへの注入などによって、入出力接続部23を介して外部水素ユーザにエクスポートされてもよい。外部水素ネットワークから供給される水素は、圧縮機/膨張機65を通過した後、密封されたサービスリンク85を通過する水素入口パイプを介して供給され、容器55内に貯蔵され得る。
【0064】
重り13、89に貯蔵された位置エネルギーが最大値であるかまたはその最大値に近いとき、またはコントローラまたは制御ソフトウェアが電力貯蔵に対する多大な需要を予測または予想するとき、システム1は、貯蔵されたエネルギーの形態を位置エネルギーから化学エネルギー(水素の形態)に変換させることができる。これは、重り13、89を立坑/容器53、55内で降下させて、上述した方法で発電機73において電気エネルギーを生成し、得られた電気エネルギーが電解槽29に供給されて(水から)水素ガスを形成することによって達成され、その後、圧縮機65を介して圧縮され、同じ容器55に戻されて保管され得る。同様に、電気エネルギーの必要性が予測される場合、より具体的には、重り13、85が立坑53の底部に近いときに外部グリッドへの急速な電力供給(例えばブラックスタート)の必要性が予測される場合、容器55からの水素が密封サービスリンク機構85および膨張機65を介してガス供給パイプを介して燃料電池31に供給され、油圧モータ73を作動させてウインチ11、87に動力を供給し、立坑内の重り13、89を持ち上げて、容易に展開可能な位置エネルギーとして保存される電気エネルギーを提供することができる。
【0065】
システム1の効率および柔軟性をさらに高めるために、熱エネルギー貯蔵サブシステムは、立坑/容器53、55の外側の地面93から地熱源熱を収集するために立坑53の周囲に設けられ、容器55の内部から(例えば、圧力変化の結果として)熱を収集する、熱交換要素を備える。この熱は、熱エネルギー収集回路83を介して熱エネルギー貯蔵部(図示せず)または外部使用(例えば、地域暖房スキーム)にエクスポートすることができる。したがって、外部システムのニーズに応じて熱、燃料、および電力を供給する、柔軟で効率的なエネルギー貯蔵システムを単一の立坑内に提供することができる。
【0066】
本発明を、好ましい実施形態を参照して説明した。しかし、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく変形および修正を行うことができることが理解されよう。
【国際調査報告】