(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-16
(54)【発明の名称】抗トランスフェリン受容体融合タンパク質及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 47/68 20170101AFI20240208BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240208BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240208BHJP
C07K 16/40 20060101ALI20240208BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240208BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240208BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240208BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240208BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20240208BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240208BHJP
A61K 38/46 20060101ALI20240208BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240208BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
A61K47/68
C07K19/00 ZNA
C07K16/28
C07K16/40
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
A61K39/395 N
A61K38/46
A61K39/395 L
A61P3/00
A61P43/00 105
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547794
(86)(22)【出願日】2022-02-11
(85)【翻訳文提出日】2023-09-06
(86)【国際出願番号】 US2022016229
(87)【国際公開番号】W WO2022174114
(87)【国際公開日】2022-08-18
(32)【優先日】2021-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518086619
【氏名又は名称】デナリ セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Denali Therapeutics Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アルゲロ, アニー
(72)【発明者】
【氏名】ジース, ティナ
(72)【発明者】
【氏名】カナン, グナセカラン
(72)【発明者】
【氏名】カリオリス, ミハリス エス.
(72)【発明者】
【氏名】マホーン, カタル エス.
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ジュンファ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064AG26
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE10
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
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4B065AA88X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC21
4C076CC26
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA22
4C084BA41
4C084DC22
4C084NA13
4C084ZB21
4C084ZC19
4C084ZC21
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA21
4C085CC23
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045DA89
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA21
(57)【要約】
特定の実施形態は、イズロン酸2-スルファターゼ(IDS)アミノ酸配列、IDSバリアントのアミノ酸配列、またはその触媒活性断片、及び本明細書に記載の抗トランスフェリン受容体(TfR)抗体を含む融合タンパク質、ならびにその使用方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のGAG種のレベルの低下を必要とする対象においてそれを行う方法であって、約1mg/kg、3mg/kgまたは10mg/kgの用量で融合タンパク質を対象に投与することを含み、前記融合タンパク質が:
(a)イズロン酸2-スルファターゼ(IDS)アミノ酸配列、IDSバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片、及び
(b)抗ヒトトランスフェリン受容体抗体であって、
i)GYSFTNY(配列番号13)を含む重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、または配列番号13と比較して1もしくは2個の置換を有する配列、
ii)YPGGDY(配列番号15)を含む重鎖CDR-H2、または配列番号15と比較して1もしくは2個の置換を有する配列、
iii)SGNYDEVAY(配列番号16)を含む重鎖CDR-H3、または配列番号16と比較して1もしくは2個の置換を有する配列、
iv)RSSQSLVHSNGNTYLH(配列番号7)を含む軽鎖CDR-L1、または配列番号7と比較して1もしくは2個の置換を有する配列、
v)KVSNRFS(配列番号8)を含む軽鎖CDR-L2、または配列番号8と比較して1もしくは2個の置換を有する配列、及び
vi)SQSTHVPWT(配列番号9)を含む軽鎖CDR-L3、または配列番号9と比較して1もしくは2個の置換を有する配列を含む前記抗体を含む、前記方法。
【請求項2】
前記投与が、前記対象のCSF中の1つ以上のGAG種のレベルを少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、または70%低下させ、ここで前記低下が、前記投与前の前記対象のCSF中の対応する1つ以上のGAG種のレベルと比較したものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記GAGがヘパランスルフェートである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記GAGがデルマタンスルフェートである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記投与が、前記対象のCSF中の総GAGのレベルを少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、または70%低下させ、ここで前記低下が、前記投与前の前記対象のCSF中の総GAGのレベルと比較したものである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
ハンター症候群の治療を必要とする対象においてそれを行う方法であって、約1mg/kg、3mg/kgまたは10mg/kgの用量で融合タンパク質を前記対象に投与することを含み、前記融合タンパク質が:
(a)イズロン酸2-スルファターゼ(IDS)アミノ酸配列、IDSバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片、及び
(b)抗ヒトトランスフェリン受容体抗体であって、
i)GYSFTNY(配列番号13)を含む重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、または配列番号13と比較して1もしくは2個の置換を有する配列、
ii)YPGGDY(配列番号15)を含む重鎖CDR-H2、または配列番号15と比較して1もしくは2個の置換を有する配列、
iii)SGNYDEVAY(配列番号16)を含む重鎖CDR-H3、または配列番号16と比較して1もしくは2個の置換を有する配列、
iv)RSSQSLVHSNGNTYLH(配列番号7)を含む軽鎖CDR-L1、または配列番号7と比較して1もしくは2個の置換を有する配列、
v)KVSNRFS(配列番号8)を含む軽鎖CDR-L2、または配列番号8と比較して1もしくは2個の置換を有する配列、及び
vi)SQSTHVPWT(配列番号9)を含む軽鎖CDR-L3、または配列番号9と比較して1もしくは2個の置換を有する配列を含む前記抗体を含む、前記方法。
【請求項7】
前記融合タンパク質が、約1mg/kgの用量で投与される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記融合タンパク質が、約3mg/kgの用量で投与される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記融合タンパク質が、約10mg/kgの用量で投与される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記融合タンパク質が毎週投与される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記融合タンパク質が、薬学的に許容され得る賦形剤をさらに含む医薬組成物内に含まれる、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記抗体が:
a)GYSFTNY(配列番号13)を含む重鎖CDR-H1、
b)YPGGDY(配列番号15)を含む重鎖CDR-H2、
c)SGNYDEVAY(配列番号16)を含む重鎖CDR-H3、
d)RSSQSLVHSNGNTYLH(配列番号7)を含む軽鎖CDR-L1、
e)KVSNRFS(配列番号8)を含む軽鎖CDR-L2、及び
f)SQSTHVPWT(配列番号9)を含む軽鎖CDR-L3を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記抗体が、配列番号6と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記抗体が、配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記抗体が、配列番号5と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記抗体が、配列番号5を含む軽鎖を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記抗体が、配列番号11と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記抗体が、配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記抗体が、配列番号10と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記抗体が、配列番号10を含む重鎖を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記抗体が、配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖、及び配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記IDSアミノ酸配列、IDSバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片が、前記抗体重鎖のC末端に直接またはリンカーを介して連結されている、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記IDSアミノ酸配列、IDSバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片が、リンカーを介して前記抗体重鎖のC末端に連結されている、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記リンカーがペプチドリンカーである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ペプチドリンカーが、1~50アミノ酸長である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ペプチドリンカーが、単一のグリシン残基、単一のセリン残基、GGGGS(配列番号19)、GGGGGS(配列番号20)、SGGGG(配列番号21)、GGS(配列番号22)、GS(配列番号23)、及び連続して連結された前述の配列のいずれかの2~10個からなるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ペプチドリンカーが配列番号23である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記抗ヒトTfR抗体が、配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖、N’末端からC’末端方向に順に:配列番号10、配列番号23、及びIDSアミノ酸配列、IDSバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片を含むペプチドリンカーによって、IDSアミノ酸配列、IDSバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片に連結された重鎖を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記IDSアミノ酸配列が、配列番号1、2、3または4と少なくとも約80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記IDSアミノ酸配列が配列番号3または4を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記IDSアミノ酸配列に連結された前記重鎖が、配列番号17または18と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
前記IDSアミノ酸配列に連結された前記重鎖が、配列番号17または18のアミノ酸配列を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記抗ヒトTfR抗体が、配列番号5を含む軽鎖、及び配列番号18を含むIDSアミノ酸配列に連結された重鎖を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記融合タンパク質が、少なくとも約6mol/molのシアル酸:融合タンパク質を含む、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記融合タンパク質が、少なくとも約10mol/molのシアル酸:融合タンパク質を含む、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記融合タンパク質が、少なくとも約12mol/molのシアル酸:融合タンパク質を含む、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記融合タンパク質が、約6~約19mol/molのシアル酸:融合タンパク質を含む、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記融合タンパク質が、約12~約19mol/molのシアル酸:融合タンパク質を含む、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記融合タンパク質が、約15~約16mol/molのシアル酸:融合タンパク質を含む、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
約15mol/molのシアル酸:融合タンパク質を含む、請求項39に記載の融合タンパク質。
【請求項41】
約16mol/molのシアル酸:融合タンパク質を含む、請求項39に記載の融合タンパク質。
【請求項42】
約1.5~約2.5mol/molのマンノース-6-リン酸(M6P):融合タンパク質を含む、請求項1~41のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項43】
約1.5mol/molのM6P:融合タンパク質を含む、請求項42に記載の融合タンパク質。
【請求項44】
約1.7mol/molのM6P:融合タンパク質を含む、請求項42に記載の融合タンパク質。
【請求項45】
約2.3mol/molのM6P:融合タンパク質を含む、請求項42に記載の融合タンパク質。
【請求項46】
1つ以上のGAG種を減少させる方法で使用するための請求項1~45のいずれか1項に記載の融合タンパク質であって、前記方法が、約1mg/kg、3mg/kgまたは10mg/kgの用量で前記融合タンパク質をそれを必要とする対象に投与することを含む、前記融合タンパク質。
【請求項47】
医薬を約1mg/kg、3mg/kgまたは10mg/kgの用量でそれを必要とする対象に投与することによって、1つ以上のGAG種を減少させるための前記医薬の調製における、請求項1~45のいずれか1項に記載の融合タンパク質の使用。
【請求項48】
ハンター症候群を治療する方法において使用するための請求項1~45のいずれか1項に記載の融合タンパク質であって、前記方法が、約1mg/kg、3mg/kgまたは10mg/kgの用量で前記融合タンパク質をそれを必要とする対象に投与することを含む、前記融合タンパク質。
【請求項49】
約1mg/kg、3mg/kgまたは10mg/kgの用量で医薬をそれを必要とする対象に投与することによって、ハンター症候群を治療するための前記医薬の調製における、請求項1~45のいずれか1項に記載の融合タンパク質の使用。
【請求項50】
融合タンパク質であって:
(a)イズロン酸2-スルファターゼ(IDS)アミノ酸配列、IDSバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片、及び
(b)抗ヒトトランスフェリン受容体抗体であって、
i)GYSFTNY(配列番号13)を含む重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、または配列番号13と比較して1もしくは2個の置換を有する配列、
ii)YPGGDY(配列番号15)を含む重鎖CDR-H2、または配列番号15と比較して1もしくは2個の置換を有する配列、
iii)SGNYDEVAY(配列番号16)を含む重鎖CDR-H3、または配列番号16と比較して1もしくは2個の置換を有する配列、
iv)RSSQSLVHSNGNTYLH(配列番号7)を含む軽鎖CDR-L1、または配列番号7と比較して1もしくは2個の置換を有する配列、
v)KVSNRFS(配列番号8)を含む軽鎖CDR-L2、または配列番号8と比較して1もしくは2個の置換を有する配列、及び
vi)SQSTHVPWT(配列番号9)を含む軽鎖CDR-L3、または配列番号9と比較して1もしくは2個の置換を有する配列を含む前記抗体を含み、
前記融合タンパク質が、少なくとも約6mol/molのシアル酸:融合タンパク質を含む、前記融合タンパク質。
【請求項51】
前記融合タンパク質が、少なくとも約10mol/molのシアル酸:融合タンパク質を含む、請求項50に記載の融合タンパク質。
【請求項52】
前記融合タンパク質が、少なくとも約12mol/molのシアル酸:融合タンパク質を含む、請求項50に記載の融合タンパク質。
【請求項53】
前記融合タンパク質が、約6~約19mol/molのシアル酸:融合タンパク質を含む、請求項50に記載の融合タンパク質。
【請求項54】
前記融合タンパク質が、約12~約19mol/molのシアル酸:融合タンパク質を含む、請求項50に記載の融合タンパク質。
【請求項55】
前記融合タンパク質が、約15~約16mol/molのシアル酸:融合タンパク質を含む、請求項50に記載の融合タンパク質。
【請求項56】
約15mol/molのシアル酸:融合タンパク質を含む、請求項55に記載の融合タンパク質。
【請求項57】
約16mol/molのシアル酸:融合タンパク質を含む、請求項55に記載の融合タンパク質。
【請求項58】
約1.5~約2.5mol/molのマンノース-6-リン酸(M6P):融合タンパク質を含む、請求項50~57のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項59】
約1.5mol/molのM6P:融合タンパク質を含む、請求項58に記載の融合タンパク質。
【請求項60】
約1.7mol/molのM6P:融合タンパク質を含む、請求項58に記載の融合タンパク質。
【請求項61】
約2.3mol/molのM6P:融合タンパク質を含む、請求項58に記載の融合タンパク質。
【請求項62】
融合タンパク質であって:
(a)イズロン酸2-スルファターゼ(IDS)アミノ酸配列、IDSバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片、及び
(b)抗ヒトトランスフェリン受容体抗体であって、
i)GYSFTNY(配列番号13)を含む重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、または配列番号13と比較して1もしくは2個の置換を有する配列、
ii)YPGGDY(配列番号15)を含む重鎖CDR-H2、または配列番号15と比較して1もしくは2個の置換を有する配列、
iii)SGNYDEVAY(配列番号16)を含む重鎖CDR-H3、または配列番号16と比較して1もしくは2個の置換を有する配列、
iv)RSSQSLVHSNGNTYLH(配列番号7)を含む軽鎖CDR-L1、または配列番号7と比較して1もしくは2個の置換を有する配列、
v)KVSNRFS(配列番号8)を含む軽鎖CDR-L2、または配列番号8と比較して1もしくは2個の置換を有する配列、及び
vi)SQSTHVPWT(配列番号9)を含む軽鎖CDR-L3、または配列番号9と比較して1もしくは2個の置換を有する配列を含む前記抗体を含み、
前記融合タンパク質が、約1.5~約2.5mol/molのマンノース-6-リン酸(M6P):融合タンパク質を含む、前記融合タンパク質。
【請求項63】
約1.5mol/molのM6P:融合タンパク質を含む、請求項62に記載の融合タンパク質。
【請求項64】
約1.7mol/molのM6P:融合タンパク質を含む、請求項62に記載の融合タンパク質。
【請求項65】
約2.3mol/molのM6P:融合タンパク質を含む、請求項62に記載の融合タンパク質。
【請求項66】
前記抗体が:
a)GYSFTNY(配列番号13)を含む重鎖CDR-H1、
b)YPGGDY(配列番号15)を含む重鎖CDR-H2、
c)SGNYDEVAY(配列番号16)を含む重鎖CDR-H3、
d)RSSQSLVHSNGNTYLH(配列番号7)を含む軽鎖CDR-L1、
e)KVSNRFS(配列番号8)を含む軽鎖CDR-L2、及び
f)SQSTHVPWT(配列番号9)を含む軽鎖CDR-L3を含む、請求項50~65のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項67】
前記抗体が、配列番号6と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項50~66のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項68】
前記抗体が、配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項67に記載の融合タンパク質。
【請求項69】
前記抗体が、配列番号5と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項50~68のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項70】
前記抗体が、配列番号5を含む軽鎖を含む、請求項69に記載の融合タンパク質。
【請求項71】
前記抗体が、配列番号11と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項50~70のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項72】
前記抗体が、配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項71に記載の融合タンパク質。
【請求項73】
前記抗体が、配列番号10と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項50~72のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項74】
前記抗体が、配列番号10を含む重鎖を含む、請求項73に記載の融合タンパク質。
【請求項75】
前記抗体が、配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖、及び配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項50~66のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項76】
前記IDSアミノ酸配列、IDSバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片が、前記抗体重鎖のC末端に直接またはリンカーを介して連結されている、請求項50~75のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項77】
前記IDSアミノ酸配列、IDSバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片が、リンカーを介して前記抗体重鎖のC末端に連結されている、請求項76に記載の融合タンパク質。
【請求項78】
前記リンカーがペプチドリンカーである、請求項77に記載の融合タンパク質。
【請求項79】
前記ペプチドリンカーが、1~50アミノ酸長である、請求項78に記載の融合タンパク質。
【請求項80】
前記ペプチドリンカーが、単一のグリシン残基、単一のセリン残基、GGGGS(配列番号19)、GGGGGS(配列番号20)、SGGGG(配列番号21)、GGS(配列番号22)、GS(配列番号23)、及び連続して連結された前述の配列のいずれかの2~10個からなるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項79に記載の融合タンパク質。
【請求項81】
前記ペプチドリンカーが配列番号23である、請求項80に記載の融合タンパク質。
【請求項82】
前記抗体が、配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖、N’末端からC’末端方向に順に:配列番号10、配列番号23、及びIDSアミノ酸配列、IDSバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片を含むペプチドリンカーによって、IDSアミノ酸配列、IDSバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片に連結された重鎖を含む、請求項81に記載の融合タンパク質。
【請求項83】
前記IDSアミノ酸配列が、配列番号1、2、3または4と少なくとも約80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項50~82のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項84】
前記IDSアミノ酸配列が配列番号3または4を含む、請求項83に記載の融合タンパク質。
【請求項85】
前記IDSアミノ酸配列に連結された前記重鎖が、配列番号17または18と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項83または84に記載の融合タンパク質。
【請求項86】
前記IDSアミノ酸配列に連結された前記重鎖が、配列番号17または18のアミノ酸配列を含む、請求項83または84に記載の融合タンパク質。
【請求項87】
前記抗体が、配列番号5を含む軽鎖、及び配列番号18を含むIDSアミノ酸配列に連結された重鎖を含む、請求項86に記載の融合タンパク質。
【請求項88】
請求項50~87のいずれか1項に記載の融合タンパク質と、薬学的に許容され得る賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項89】
請求項50~87のいずれか1項に記載の融合タンパク質を含む宿主細胞。
【請求項90】
請求項50~87のいずれか1項に記載の融合タンパク質を産生する方法であって、前記融合タンパク質を産生するのに適した条件下の宿主細胞において、1)請求項50~70のいずれか1項に記載の軽鎖、及び2)請求項76~86のいずれか1項に記載のIDSアミノ酸配列に連結された重鎖を発現するように操作可能な1つ以上のポリヌクレオチドを発現することを含む、前記方法。
【請求項91】
請求項90に記載の方法によって産生される融合タンパク質。
【請求項92】
1つ以上のGAG種のレベルの低下を必要とする対象においてそれを行う方法であって、請求項50~87のいずれか1項に記載の融合タンパク質または請求項88に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項93】
前記投与が、前記対象のCSF中の1つ以上のGAG種のレベルを少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、または70%低下させ、ここで前記低下が、前記投与前の前記対象のCSF中の対応する1つ以上のGAG種のレベルと比較したものである、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記GAGがヘパランスルフェートである、請求項92または93に記載の方法。
【請求項95】
前記GAGがデルマタンスルフェートである、請求項92または93に記載の方法。
【請求項96】
前記投与が、前記対象のCSF中の総GAGのレベルを少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、または70%低下させ、ここで前記低下が、前記投与前の前記対象のCSF中の総GAGのレベルと比較したものである、請求項92または93に記載の方法。
【請求項97】
1つ以上のGAG種を減少させる方法で使用するための、請求項50~87のいずれか1項に記載の融合タンパク質または請求項88に記載の医薬組成物であって、前記方法が、前記融合タンパク質または医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、前記融合タンパク質または医薬組成物。
【請求項98】
医薬をそれを必要とする対象に投与することによって、1つ以上のGAG種を減少させるための前記医薬の調製における、請求項50~87のいずれか1項に記載の融合タンパク質の使用。
【請求項99】
ハンター症候群の治療を必要とする対象においてそれを行う方法であって、請求項50~87のいずれか1項に記載の融合タンパク質または請求項88に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項100】
ハンター症候群を治療する方法で使用するための、請求項50~87のいずれか1項に記載の融合タンパク質または請求項88に記載の医薬組成物であって、前記方法が、前記融合タンパク質または医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、前記融合タンパク質または医薬組成物。
【請求項101】
医薬をそれを必要とする対象に投与することによって、ハンター症候群を治療するための前記医薬の調製における、請求項50~87のいずれか1項に記載の融合タンパク質の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年2月11日に出願された米国仮出願第63/148,543号の優先権を主張する。上記で参照された出願の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ハンター症候群またはMPS IIは、IDS遺伝子変異によって引き起こされる稀なX連鎖劣性障害である。不十分なイズロン酸2-スルファターゼ(IDS)活性は、グリコサミノグリカン(GAG)ヘパランスルフェート(HS)及びデルマタンスルフェート(DS)の蓄積ならびに複数の臓器及び組織におけるリソソーム機能障害をもたらす。患者の約2/3が、ニューロン障害性表現型(nMPS II)を示す。IDSの組換え型は、ハンター症候群を治療するために承認されているが、血液脳関門(BBB)を越えて組換え酵素を送達することが困難であるため、脳にほとんど影響を及ぼさない。1つの可能なアプローチは、抗トランスフェリン受容体抗体を利用して、BBBを横切るIDSなどの大きな分子の通過を促進する技術を含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
したがって、特定の実施形態は、融合タンパク質であって:
(a)イズロン酸2-スルファターゼ(IDS)アミノ酸配列、IDSバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片、及び
(b)本明細書に記載の抗トランスフェリン受容体(TfR)抗体(例えば、抗ヒトTfR抗体)を含み、
融合タンパク質が、少なくとも約6mol/molのシアル酸:融合タンパク質を含み、及び/または約1.5~約2.5mol/molのマンノース6-リン酸(M6P):融合タンパク質を含む、融合タンパク質を提供する。特定の実施形態では、融合タンパク質は、約15~16mol/molのシアル酸:融合タンパク質(すなわち、約15~約16mol/molのシアル酸:融合タンパク質)を含む、及び/または約1.5~約2.5mol/molのM6P:融合タンパク質(すなわち、約1.5~約2.5mol/molのM6P:融合タンパク質)を含む。特定の実施形態では、融合タンパク質は、約15~16mol/molのシアル酸:融合タンパク質(すなわち、約15~約16mol/molのシアル酸:融合タンパク質)を含む、及び/または約1.5~約2.3mol/molのM6P:融合タンパク質(すなわち、約1.5~約2.3mol/molのM6P:融合タンパク質)を含む。
【0004】
特定の実施形態では、融合タンパク質は:
(a)イズロン酸2-スルファターゼ(IDS)アミノ酸配列、IDSバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片、及び
(b)抗ヒトトランスフェリン受容体抗体であって、
i)GYSFTNY(配列番号13)を含む重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、または配列番号13と比較して1もしくは2個の置換を有する配列、
ii)YPGGDY(配列番号15)を含む重鎖CDR-H2、または配列番号15と比較して1もしくは2個の置換を有する配列、
iii)SGNYDEVAY(配列番号16)を含む重鎖CDR-H3、または配列番号16と比較して1もしくは2個の置換を有する配列、
iv)RSSQSLVHSNGNTYLH(配列番号7)を含む軽鎖CDR-L1、または配列番号7と比較して1もしくは2個の置換を有する配列、
v)KVSNRFS(配列番号8)を含む軽鎖CDR-L2、または配列番号8と比較して1もしくは2個の置換を有する配列、及び
vi)SQSTHVPWT(配列番号9)を含む軽鎖CDR-L3、または配列番号9と比較して1もしくは2個の置換を有する配列を含む抗体を含み、
融合タンパク質は、少なくとも約6mol/molのシアル酸:融合タンパク質(例えば、約15~16mol/molのシアル酸:融合タンパク質(すなわち、約15~約16mol/molのシアル酸:融合タンパク質))を含む。
【0005】
特定の他の実施形態では、融合タンパク質は:
(a)イズロン酸2-スルファターゼ(IDS)アミノ酸配列、IDSバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片、及び
(b)抗ヒトトランスフェリン受容体抗体であって、
i)GYSFTNY(配列番号13)を含む重鎖CDR-H1、または配列番号13と比較して1もしくは2個の置換を有する配列、
ii)YPGGDY(配列番号15)を含む重鎖CDR-H2、または配列番号15と比較して1もしくは2個の置換を有する配列、
iii)SGNYDEVAY(配列番号16)を含む重鎖CDR-H3、または配列番号16と比較して1もしくは2個の置換を有する配列、
iv)RSSQSLVHSNGNTYLH(配列番号7)を含む軽鎖CDR-L1、または配列番号7と比較して1もしくは2個の置換を有する配列、
v)KVSNRFS(配列番号8)を含む軽鎖CDR-L2、または配列番号8と比較して1もしくは2個の置換を有する配列、及び
vi)SQSTHVPWT(配列番号9)を含む軽鎖CDR-L3、または配列番号9と比較して1もしくは2個の置換を有する配列を含む抗体を含み、
融合タンパク質は、約1.5~約2.5mol/molのM6P:融合タンパク質を含む。特定の実施形態では、融合タンパク質は、約1.5~約2.3mol/molのM6P:融合タンパク質(すなわち、約1.5~約2.3mol/molのM6P:融合タンパク質)を含む。
【0006】
特定の実施形態はまた、本明細書に記載の融合タンパク質及び薬学的に許容され得る賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0007】
特定の実施形態は、本明細書に記載の融合タンパク質を含む宿主細胞を提供する。
【0008】
特定の実施形態は、融合タンパク質を産生するのに適した条件下の宿主細胞において、1)本明細書に記載の軽鎖及び2)本明細書に記載のIDSアミノ酸配列に連結された重鎖を発現するように操作可能な1つ以上のポリヌクレオチドを発現させることを含む、本明細書に記載の融合タンパク質を産生する方法を提供する。
【0009】
特定の実施形態は、本明細書に記載の方法によって産生される融合タンパク質を提供する。
【0010】
特定の実施形態は、1つ以上のGAG種のレベルの低下を必要とする対象においてそれを行う方法であって、本明細書に記載の融合タンパク質または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与すること(例えば、本明細書中に記載されるような治療有効量を投与すること)を含む方法を提供する。
【0011】
特定の実施形態は、ハンター症候群の治療を必要とする対象においてそれを行う方法であって、本明細書に記載の融合タンパク質または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与すること(例えば、本明細書に記載ノ治療有効量を投与すること)を含む、方法を提供する。
【0012】
特定の実施形態はまた、1つ以上のGAG種のレベルの低下を必要とする対象においてそれを行う方法であって、約1mg/kg、3mg/kgまたは10mg/kgの用量で融合タンパク質を対象に投与することを含む方法を提供し、ここで融合タンパク質は、
(a)イズロン酸2-スルファターゼ(IDS)アミノ酸配列、IDSバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片、及び
(b)抗ヒトトランスフェリン受容体抗体であって、
i)GYSFTNY(配列番号13)を含む重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、または配列番号13と比較して1もしくは2個の置換を有する配列、
ii)YPGGDY(配列番号15)を含む重鎖CDR-H2、または配列番号15と比較して1もしくは2個の置換を有する配列、
iii)SGNYDEVAY(配列番号16)を含む重鎖CDR-H3、または配列番号16と比較して1もしくは2個の置換を有する配列、
iv)RSSQSLVHSNGNTYLH(配列番号7)を含む軽鎖CDR-L1、または配列番号7と比較して1もしくは2個の置換を有する配列、
v)KVSNRFS(配列番号8)を含む軽鎖CDR-L2、または配列番号8と比較して1もしくは2個の置換を有する配列、及び
vi)SQSTHVPWT(配列番号9)を含む軽鎖CDR-L3、または配列番号9と比較して1もしくは2個の置換を有する配列を含む抗体を含む。
【0013】
特定の実施形態は、ハンター症候群の治療を必要とする対象においてそれを行う方法であって、約1mg/kg、3mg/kgまたは10mg/kgの用量で融合タンパク質を対象に投与することを含む方法を提供し、ここで融合タンパク質は:
(a)イズロン酸2-スルファターゼ(IDS)アミノ酸配列、IDSバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片、及び
(b)抗ヒトトランスフェリン受容体抗体であって、
i)GYSFTNY(配列番号13)を含む重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、または配列番号13と比較して1もしくは2個の置換を有する配列、
ii)YPGGDY(配列番号15)を含む重鎖CDR-H2、または配列番号15と比較して1もしくは2個の置換を有する配列、
iii)SGNYDEVAY(配列番号16)を含む重鎖CDR-H3、または配列番号16と比較して1もしくは2個の置換を有する配列、
iv)RSSQSLVHSNGNTYLH(配列番号7)を含む軽鎖CDR-L1、または配列番号7と比較して1もしくは2個の置換を有する配列、
v)KVSNRFS(配列番号8)を含む軽鎖CDR-L2、または配列番号8と比較して1もしくは2個の置換を有する配列、及び
vi)SQSTHVPWT(配列番号9)を含む軽鎖CDR-L3、または配列番号9と比較して1もしくは2個の置換を有する配列を含む抗体を含む。
【0014】
特定の実施形態はまた、本明細書中に記載されるような融合タンパク質を調製するために有用である本明細書中に開示されるプロセス及び中間体を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】抗トランスフェリン受容体抗体を含むIgG:IDS融合タンパク質の概略図であり、各重鎖はIDS酵素に融合されている。
【
図2】マンノース-6-リン酸受容体(M6PR)へのIgG:IDSの結合を示す。様々な濃度のIgG:IDSを使用してELISA結合アッセイを実施して、代表的な結合曲線を作成した。
【
図3】MPSII線維芽細胞におけるIgG:IDSの細胞効力を示す。S
35-スルフェート蓄積アッセイを使用して、IgG:IDSの代表的な細胞効力曲線(細胞株全体の平均)を作成した。
【
図4】1、3、または10mg/kgのIgG:IDSの単回静脈内投与を受けたTfR
mu/huKIマウス(n=3/群)の血清中のIgG:IDSの薬物動態(PK)プロファイルを示す。投与の0.5、4、8及び24時間後に終末試料を収集した。
【
図5】1、3、または10mg/kgのIgG:IDSの単回静脈内投与を受けたTfR
mu/huKIマウス(n=3/群)の脳のIgG:IDSのPKプロファイルを示す。投与の0.5、4、8及び24時間後に終末試料を収集した。
【
図6】1、3、または10mg/kgのIgG:IDSの単回静脈内投与を受けたTfR
mu/huKIマウス(n=3/群)の肝臓のIgG:IDSのPKプロファイルを示す。投与の0.5、4、8及び24時間後に終末試料を収集した。
【
図7A】1、3または10mg/kgのIgG:IDSの単回静脈内用量を投与されたIds KO、TfR
mu/huKIマウス(n=5/群)由来の肝臓における総GAGレベルを示す。GAGレベルを投与の7日後に測定し、ビヒクル処置及びTfR
mu/huKIマウスと比較した。n=5/群。グラフは、平均±SEM及びp値を示し:テューキーの多重比較検定による一元配置ANOVA。****p<0.0001。
【
図7B】1、3または10mg/kgのIgG:IDSの単回静脈内用量を投与されたIds KO、TfR
mu/huKIマウス(n=5/群)由来の肝臓におけるヘパランスルフェート(HS)レベルを示す。GAGレベルを投与の7日後に測定し、ビヒクル処置及びTfR
mu/huKIマウスと比較した。n=5/群。グラフは、平均±SEM及びp値を示し:テューキーの多重比較検定による一元配置ANOVA。****p<0.0001。
【
図7C】1、3または10mg/kgのIgG:IDSの単回静脈内用量を投与されたIds KO、TfR
mu/huKIマウス(n=5/群)由来の肝臓におけるデルマタンスルフェート(DS)レベルを示す。GAGレベルを投与の7日後に測定し、ビヒクル処置及びTfR
mu/huKIマウスと比較した。n=5/群。グラフは、平均±SEM及びp値を示し:テューキーの多重比較検定による一元配置ANOVA。****p<0.0001。
【
図8A】1、3または10mg/kgのIgG:IDSの単回静脈内用量を投与されたIds KO、TfR
mu/huKIマウス(n=5/群)由来のCSFにおける総GAGレベルを示す。GAGレベルを投与の7日後に測定し、ビヒクル処置及びTfR
mu/huKIマウスと比較した。n=5/群。グラフは、平均±SEM及びp値を示し:テューキーの多重比較検定による一元配置ANOVA。**p<0.01、***p<0.001、及び****p<0.0001。
【
図8B】1、3または10mg/kgのIgG:IDSの単回静脈内用量を投与されたIds KO、TfR
mu/huKIマウス(n=5/群)由来のCSFにおけるヘパランスルフェート(HS)レベルを示す。GAGレベルを投与の7日後に測定し、ビヒクル処置及びTfR
mu/huKIマウスと比較した。n=5/群。グラフは、平均±SEM及びp値を示し:テューキーの多重比較検定による一元配置ANOVA。**p<0.01、***p<0.001、及び****p<0.0001。
【
図8C】1、3または10mg/kgのIgG:IDSの単回静脈内用量を投与されたIds KO、TfR
mu/huKIマウス(n=5/群)由来のCSFにおけるデルマタンスルフェート(DS)レベルを示す。GAGレベルを投与の7日後に測定し、ビヒクル処置及びTfR
mu/huKIマウスと比較した。n=5/群。グラフは、平均±SEM及びp値を示し:テューキーの多重比較検定による一元配置ANOVA。**p<0.01、***p<0.001、及び****p<0.0001。
【
図9A】1、3または10mg/kgのIgG:IDSの単回静脈内用量を投与されたIds KO、TfR
mu/huKIマウス(n=5/群)由来の脳における総GAGレベルを示す。GAGレベルを投与の7日後に測定し、ビヒクル処置及びTfR
mu/huKIマウスと比較した(n=5/群)。グラフは、平均±SEM及びp値を示し:テューキーの多重比較検定による一元配置ANOVA。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、及び****p<0.0001。
【
図9B】1、3または10mg/kgのIgG:IDSの単回静脈内用量を投与されたIds KO、TfR
mu/huKIマウス(n=5/群)由来の脳におけるヘパランスルフェート(HS)レベルを示す。GAGレベルを投与の7日後に測定し、ビヒクル処置及びTfR
mu/huKIマウスと比較した(n=5/群)。グラフは、平均±SEM及びp値を示し:テューキーの多重比較検定による一元配置ANOVA。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、及び****p<0.0001。
【
図9C】1、3または10mg/kgのIgG:IDSの単回静脈内用量を投与されたIds KO、TfR
mu/huKIマウス(n=5/群)由来の脳におけるデルマタンスルフェート(DS)レベルを示す。GAGレベルを投与の7日後に測定し、ビヒクル処置及びTfR
mu/huKIマウスと比較した(n=5/群)。グラフは、平均±SEM及びp値を示し:テューキーの多重比較検定による一元配置ANOVA。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、及び****p<0.0001。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ハンター症候群、具体的には神経認知表現型は、依然として重大な満たされていない医学的ニーズである。本明細書にはIgG:IDSと呼ばれる特異的酵素補充療法の評価が記載されており、これは、BBBを通過し、ハンター症候群の特定のCNS症状を治療する能力を有するIDS酵素アミノ酸配列を含む融合タンパク質である。実施例に記載されるように、IgG:IDSの産生は、シアル酸及びマンノース6-リン酸(M6P)修飾を含む融合タンパク質の特異的な翻訳後修飾(PTM)をもたらす。これらのPTMは、融合タンパク質への末梢(例えば血清)曝露に影響を及ぼし、CNS内の特定の細胞への融合タンパク質の適切な輸送、ならびに細胞内輸送を促進することができる。さらに、IgG:IDSに対する治療応答は、対象からの生理学的試料中に存在するグリコサミノグリカン(GAG)種のレベルを測定することによって評価することができる。これらのレベルは、IgG:IDSの治療有効用量を同定及び評価するために使用し得る。
【0017】
融合タンパク質
したがって、特定の実施形態は、融合タンパク質であって:
(a)イズロン酸2-スルファターゼ(IDS)アミノ酸配列、IDSバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片、及び
(b)本明細書に記載の抗トランスフェリン受容体(TfR)抗体(例えば、抗ヒトTfR抗体)を含む、融合タンパク質を提供する。本明細書に記載されるように、そのような融合タンパク質は、シアル酸及び/またはM6Pなどの特定のPTMの特定の分子量または量の範囲(例えば、本明細書に記載の量または範囲)を含む、特定のPTMを含み得る。
【0018】
特定の実施形態において、抗TfR抗体は、TfRに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、ヒトTfRに特異的に結合する抗体は、ヒトTfRに対応する別の種の1つ以上のタンパク質(すなわち、TfRオルソログ)との交差反応性を示す。例えば、いくつかの実施形態では、抗TfR抗体は、種間で保存されている(例えば、種間で構造的に保存されている)、例えば、非ヒト霊長類とヒト種との間で保存されている(例えば、非ヒト霊長類とヒト種との間で構造的に保存されている)TfR上のエピトープに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗TfR受容体抗体は、ヒトTfRに排他的に結合し得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、抗TfR抗体は抗ヒトTfR抗体である。いくつかの実施形態では、抗ヒトTfR抗体は、本明細書に記載の1つ以上の相補性決定領域(CDR)配列を含む。特定の実施形態において、抗ヒトTfR抗体は、(1)重鎖可変領域配列、重鎖配列、または重鎖とIDSアミノ酸配列とを含む融合ポリペプチド、及び/または(2)本明細書に記載の軽鎖可変領域配列または軽鎖配列を含む。例えば、表6は、IgG:IDS(実施例1参照)内に含まれる抗hTfR抗体の軽鎖可変領域のCDR1~CDR3及び重鎖可変領域のCDR1~CDR3に含まれる各アミノ酸配列の配列番号を示す。しかしながら、表6は、それらのアミノ酸配列を例として示しているにすぎず、各CDRのアミノ酸配列を表6のアミノ酸配列に限定するものではない。むしろ、それらは、これらの列挙された配列のいずれかを含むアミノ酸配列の領域であっても、またはこれらの配列の一部を含む3つ以上の連続したアミノ酸からなるアミノ酸配列のいずれかであってもよい。
【0020】
したがって、特定の実施形態では、抗ヒトTfR抗体は:
a)GYSFX1NY(配列番号12)を含む重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、または配列番号12と比較して1もしくは2個の置換を有するアミノ酸配列(式中、X1はMまたはTである)、
b)YPGGDY(配列番号15)を含む重鎖CDR-H2、または配列番号15と比較して1もしくは2個の置換を有するアミノ酸配列、
c)SGNYDEVAY(配列番号16)を含む重鎖CDR-H3、または配列番号16と比較して1もしくは2個の置換を有するアミノ酸配列、
d)RSSQSLVHSNGNTYLH(配列番号7)を含む軽鎖CDR-L1、または配列番号7と比較して1もしくは2個の置換を有するアミノ酸配列、
e)KVSNRFS(配列番号8)を含む軽鎖CDR-L2、または配列番号8と比較して1もしくは2個の置換を有するアミノ酸配列、及び
f)SQSTHVPWT(配列番号9)を含む軽鎖CDR-L3、または配列番号9と比較して1もしくは2個の置換を有するアミノ酸配列を含む抗体を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、CDRは、参照配列に対して1つのアミノ酸置換を有する。いくつかの実施形態では、CDRは、参照配列に対して2つのアミノ酸置換を有する。いくつかの実施形態では、アミノ酸置換(複数可)は、保存的置換である。
【0022】
したがって、いくつかの実施形態では、抗ヒトTfR抗体は:
a)GYSFX1NY(配列番号12)を含む重鎖CDR-H1、または配列番号12に対して1つの置換を有するアミノ酸配列(式中、X1はMまたはTである)、
b)YPGGDY(配列番号15)を含む重鎖CDR-H2、または配列番号15と比較して1個の置換を有するアミノ酸配列、
c)SGNYDEVAY(配列番号16)を含む重鎖CDR-H3、または配列番号16と比較して1個の置換を有するアミノ酸配列、
d)RSSQSLVHSNGNTYLH(配列番号7)を含む軽鎖CDR-L1、または配列番号7と比較して1個の置換を有するアミノ酸配列、
e)KVSNRFS(配列番号8)を含む軽鎖CDR-L2、または配列番号8と比較して1個の置換を有するアミノ酸配列、及び
f)SQSTHVPWT(配列番号9)を含む軽鎖CDR-L3、または配列番号9と比較して1個の置換を有するアミノ酸配列を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、抗ヒトTfR抗体は、GYSFX1NY(配列番号12)を含む重鎖CDR-H1(式中、X1はMまたはTである)、YPGGDY(配列番号15)を含む重鎖CDR-H2、SGNYDEVAY(配列番号16)を含む重鎖CDR-H3、RSSQSLVHSNGNTYLH(配列番号7)を含む軽鎖CDR-L1、KVSNRFS(配列番号8)を含む軽鎖CDR-L2、SQSTHVPWT(配列番号9)を含む軽鎖CDR-L3を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、抗ヒトTfR抗体は:GYSFX1NY(配列番号12)からなる重鎖CDR-H1(式中、X1はMまたはTであり)、YPGGDY(配列番号15)からなる重鎖CDR-H2、SGNYDEVAY(配列番号16)からなる重鎖CDR-H3、RSSQSLVHSNGNTYLH(配列番号7)からなる軽鎖CDR-L1、KVSNRFS(配列番号8)からなる軽鎖CDR-L2、及びSQSTHVPWT(配列番号9)からなる軽鎖CDR-L3を含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、抗ヒトTfR抗体は:GYSFTNY(配列番号13)を含む重鎖CDR-H1、YPGGDY(配列番号15)を含む重鎖CDR-H2、SGNYDEVAY(配列番号16)を含む重鎖CDR-H3、RSSQSLVHSNGNTYLH(配列番号7)を含む軽鎖CDR-L1、KVSNRFS(配列番号8)を含む軽鎖CDR-L2、SQSTHVPWT(配列番号9)を含む軽鎖CDR-L3を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、抗ヒトTfR抗体は:GYSFTNY(配列番号13)からなる重鎖CDR-H1、YPGGDY(配列番号15)からなる重鎖CDR-H2、SGNYDEVAY(配列番号16)からなる重鎖CDR-H3、RSSQSLVHSNGNTYLH(配列番号7)からなる軽鎖CDR-L1、KVSNRFS(配列番号8)からなる軽鎖CDR-L2、SQSTHVPWT(配列番号9)からなる軽鎖CDR-L3を含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、抗ヒトTfR抗体は:GYSFMNY(配列番号14)を含む重鎖CDR-H1、YPGGDY(配列番号15)を含む重鎖CDR-H2、SGNYDEVAY(配列番号16)を含む重鎖CDR-H3、RSSQSLVHSNGNTYLH(配列番号7)を含む軽鎖CDR-L1、KVSNRFS(配列番号8)を含む軽鎖CDR-L2、SQSTHVPWT(配列番号9)を含む軽鎖CDR-L3を含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、抗ヒトTfR抗体は:GYSFMNY(配列番号14)からなる重鎖CDR-H1、YPGGDY(配列番号15)からなる重鎖CDR-H2、SGNYDEVAY(配列番号16)からなる重鎖CDR-H3、RSSQSLVHSNGNTYLH(配列番号7)からなる軽鎖CDR-L1、KVSNRFS(配列番号8)からなる軽鎖CDR-L2、SQSTHVPWT(配列番号9)からなる軽鎖CDR-L3を含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、抗ヒトTfR抗体は、DIVMTQTPLSLSVTPGQPASISCRSSQSLVHSNGNTYLHWYLQKPGQSPQLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCSQSTHVPWTFGQGTKVEIK(配列番号6)と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、配列番号6と少なくとも90%の配列同一性を有する軽鎖可変領域は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個またはそれ以上の置換(例えば、保存的置換)または挿入を含むが、TfRに特異的に結合する能力を保持する。いくつかの実施形態において、軽鎖可変領域は、配列番号6に1個、2個または3個の置換(例えば、保存的置換)を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、抗ヒトTfR抗体は、配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、抗ヒトTfR抗体は、配列番号6のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、抗ヒトTfR抗体は、EVQLVQSGAEVKKPGESLKISCKGSGYSFTNYWLGWVRQMPGKGLEWMGDIYPGGDYPTYSEKFKVQVTISADKSISTAYLQWSSLKASDTAMYYCARSGNYDEVAYWGQGTLVTVSS(配列番号11)と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、配列番号11と少なくとも90%の配列同一性を有する重鎖可変領域は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個またはそれ以上の置換(例えば、保存的置換)または挿入を含むが、TfRに特異的に結合する能力を保持する。いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号11に1個、2個または3個の置換(例えば、保存的置換)を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、抗ヒトTfR抗体は、配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、抗ヒトTfR抗体は、配列番号11のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、抗ヒトTfR抗体は、配列番号6と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、配列番号11と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域をさらに含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、抗ヒトTfR抗体は、配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域をさらに含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、抗ヒトTfR抗体は、配列番号6のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含み、配列番号11のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域をさらに含む。
【0040】
本明細書に記載されるように、抗ヒトTfR抗体は、実質的に完全長の抗体、例えばIgG抗体、例えばIgG1抗体、または本明細書で定義される他の抗体クラスもしくはアイソタイプ(例えば、IgG2、IgG3またはIgG4抗体)であり得る。したがって、特定の実施形態において、抗体は、少なくとも1つの重鎖定常領域及び/または少なくとも1つの軽鎖定常領域(例えば、カッパまたはラムダ)を含む。
【0041】
特定の実施形態において、抗ヒトTfR抗体は軽鎖定常領域を含む。特定の実施形態において、抗ヒトTfR抗体は、DIVMTQTPLSLSVTPGQPASISCRSSQSLVHSNGNTYLHWYLQKPGQSPQLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCSQSTHVPWTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号5)と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、配列番号5と少なくとも90%の配列同一性を有する軽鎖は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個またはそれ以上の置換(例えば、保存的置換)または挿入を含むが、TfRに特異的に結合する能力を保持する。いくつかの実施形態において、軽鎖は、配列番号5に1個、2個または3個の置換(例えば、保存的置換)を含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、抗ヒトTfR抗体は、配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、抗ヒトTfR抗体は、配列番号5のアミノ酸配列からなる軽鎖を含む。
【0045】
特定の実施形態では、抗ヒトTfR抗体は、IgG1由来の定常領域(複数可)を含むIgG1抗体である。例えば、特定の実施形態において、抗ヒトTfR抗体は、IgG1 Fc領域(例えば、配列番号24を参照のこと)を含む。したがって、いくつかの実施形態では、抗ヒトTfR抗体は、以下と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖を含む:EVQLVQSGAEVKKPGESLKISCKGSGYSFTNYWLGWVRQMPGKGLEWMGDIYPGGDYPTYSEKFKVQVTISADKSISTAYLQWSSLKASDTAMYYCARSGNYDEVAYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号10)。
【0046】
いくつかの実施形態では、配列番号10と少なくとも90%の配列同一性を有する重鎖は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個またはそれ以上の置換(例えば、保存的置換)または挿入を含むが、TfRに特異的に結合する能力を保持する。いくつかの実施形態では、重鎖は、配列番号10に1個、2個または3個の置換(例えば、保存的置換)を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、抗ヒトTfR抗体は、配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、抗ヒトTfR抗体は、配列番号10のアミノ酸配列からなる重鎖を含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、抗ヒトTfR抗体は、配列番号5と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、配列番号10と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖をさらに含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、抗ヒトTfR抗体は、配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖をさらに含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、抗ヒトTfR抗体は、配列番号5のアミノ酸配列からなる軽鎖を含み、配列番号10のアミノ酸配列からなる重鎖をさらに含む。
【0052】
特定の実施形態では、イズロン酸2-スルファターゼ(IDS)アミノ酸配列、IDSバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片が、抗体重鎖のC末端に直接またはリンカーを介して連結されている(すなわち、重鎖融合ポリペプチドを生成する)。
【0053】
いくつかの実施形態では、IDSアミノ酸配列(すなわち、IDSアミノ酸配列、IDSバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片)は、抗体重鎖のC末端に直接(例えば、ペプチド結合によって)連結される。特定の他の実施形態では、IDSアミノ酸配列は、リンカー(例えば、ペプチドリンカー)によって抗体重鎖のC末端に連結される。ペプチドリンカーは、それが結合している抗hTfR抗体に対するIDS酵素の回転を可能にするように構成されてもよく、及び/またはプロテアーゼによる消化に耐性である。ペプチドリンカーは、天然アミノ酸、非天然アミノ酸またはそれらの組合せを含有し得る。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、例えば、Gly、Asn、Ser、Thr、Alaなどのようなアミノ酸を含有するフレキシブルリンカーであり得る。そのようなリンカーは、公知のパラメータを使用して設計され、任意長のものであり得、かつ任意長の反復単位(例えば、Gly残基及びSer残基の反復単位)を任意数含有し得る。特定の実施形態では、ペプチドリンカーは、1~50アミノ酸長、1~40アミノ酸長、1~30アミノ酸長、1~20アミノ酸長、1~15アミノ酸長、1~10アミノ酸長または1~5アミノ酸長(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50アミノ酸長)である。特定の実施形態では、ペプチドリンカーは、グリシンまたはセリンから構成され、例えば、グリシンまたはセリンのいずれかの単一アミノ酸からなり、アミノ酸配列Gly-Ser(配列番号23)、アミノ酸配列Gly-Gly-Ser(配列番号22)、アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号19)、アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号20)、アミノ酸配列Ser-Gly-Gly-Gly-Gly(配列番号21)、または連続して連結されたこれらのアミノ酸配列のいずれかの1~10もしくは2~5(例えば、2、3、4または5)を含む配列である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、例えば、中枢神経系に存在する酵素によって切断可能なプロテアーゼ切断部位を含み得る。
【0054】
特定の実施形態において、IDSアミノ酸配列は、重鎖のC末端に、1個のグリシン残基、1個のセリン残基、GGGGS(配列番号19)、GGGGGS(配列番号20)、SGGGG(配列番号21)、GGS(配列番号22)、GS(配列番号23)からなる群より選択されるアミノ酸配列、及び連続して連結された前述の配列のいずれかの2~10個からなるアミノ酸配列を含むペプチドリンカーによって連結される。特定の実施形態では、ペプチドリンカーは、単一のグリシン残基、単一のセリン残基、GGGGS(配列番号19)、GGGGGS(配列番号20)、SGGGG(配列番号21)、GGS(配列番号22)、GS(配列番号23)、及び連続して連結された前述の配列のいずれかの2~10個からなるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる。
【0055】
いくつかの実施形態において、IDSアミノ酸配列は、Gly-Serリンカー(配列番号23)によって重鎖のC末端に連結される。
【0056】
したがって、特定の実施形態において、本明細書に記載の融合タンパク質は、抗ヒトTfR抗体及び、N’末端からC’末端に向かって順に:重鎖(配列番号10)、Gly-Serリンカー(配列番号23)、及びIDSアミノ酸配列、IDSバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片を含むペプチドリンカー(すなわち、重鎖融合ポリペプチド)によって重鎖のC末端に連結されたIDSアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖、及びN’末端からC’末端に向かって順に:配列番号10、Gly-Serリンカー(配列番号23)、及びIDSアミノ酸配列、IDSバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片を含むペプチドリンカーによって、IDSアミノ酸配列、IDSバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片に連結された重鎖を含む抗ヒトTfR抗体を含む。
【0057】
特定の実施形態において、IDSアミノ酸配列は、野生型IDSアミノ酸配列であるか、または野生型IDS、例えば、野生型ヒトIDSの触媒的に活性なバリアントまたは断片である。いくつかの実施形態において、IDS酵素の触媒活性バリアントまたは断片は、野生型IDS酵素の活性の少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%またはそれを超える活性を有する。
【0058】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質中に存在するIDS酵素、またはその触媒活性バリアントもしくは断片は、抗TfR抗体に結合していない場合のその活性と比較して、その活性の少なくとも25%を保持する。いくつかの実施形態では、IDS酵素、またはその触媒活性バリアントもしくは断片は、抗TfR抗体に結合していない場合の活性と比較して、その活性の少なくとも10%、または少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%を保持する。いくつかの実施形態では、IDS酵素、またはその触媒活性バリアントもしくは断片は、抗TfR抗体に結合していない場合の活性と比較して、その活性の少なくとも80%、85%、90%、または95%を保持する。いくつかの実施形態では、抗TfR抗体への融合は、IDS酵素またはその触媒活性バリアントもしくは断片の活性を低下させない。いくつかの実施形態では、抗TfR抗体への融合は、IDS酵素の活性を低下させない。
【0059】
特定の実施形態では、IDSアミノ酸配列は、配列番号1、2、3または4と少なくとも約80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、IDSアミノ酸配列は、配列番号1、2、3または4と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、IDSアミノ酸配列は、配列番号1、2、3または4を含む。特定の実施形態では、IDSアミノ酸配列は、配列番号1、2、3または4からなる。
【0060】
特定の実施形態では、IDSアミノ酸配列は、配列番号3または4を含む。特定の実施形態では、IDSアミノ酸配列は、配列番号3を含む。特定の実施形態では、IDSアミノ酸配列は、配列番号3からなる。特定の実施形態では、IDSアミノ酸配列は、配列番号4を含む。特定の実施形態では、IDSアミノ酸配列は、配列番号4からなる。
【0061】
したがって、特定の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号17または18と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むIDSアミノ酸配列(すなわち、重鎖融合ポリペプチド)に連結した重鎖を含む抗ヒトTfR抗体を含む。特定の実施形態において、IDSアミノ酸配列に連結される重鎖(すなわち、重鎖融合ポリペプチド)は、配列番号17または18と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。特定の実施形態において、IDSアミノ酸配列に連結される重鎖は、配列番号17または18を含む。特定の実施形態において、IDSアミノ酸配列に連結される重鎖は、配列番号17または18からなる。
【0062】
特定の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号17と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むIDSアミノ酸配列(すなわち、重鎖融合ポリペプチド)に連結した重鎖を含む抗ヒトTfR抗体を含む。特定の実施形態において、IDSアミノ酸配列に連結される重鎖は、配列番号17を含む。特定の実施形態において、IDSアミノ酸配列に連結される重鎖は、配列番号17からなる。
【0063】
特定の実施形態では、抗ヒトTfR抗体は、配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖、及び配列番号17のアミノ酸配列を含むIDSアミノ酸配列に連結した重鎖を含む。特定の実施形態では、抗ヒトTfR抗体は、配列番号5からなる軽鎖、及び配列番号17からなるIDSアミノ酸配列に連結された重鎖を含む。
【0064】
特定の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号18と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むIDSアミノ酸配列(すなわち、重鎖融合ポリペプチド)に連結した重鎖を含む抗ヒトTfR抗体を含む。特定の実施形態において、IDSアミノ酸配列に連結される重鎖は、配列番号18を含む。特定の実施形態において、IDSアミノ酸配列に連結される重鎖は、配列番号18からなる。
【0065】
特定の実施形態では、抗ヒトTfR抗体は、配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むIDSアミノ酸配列に連結した重鎖を含む。特定の実施形態では、抗ヒトTfR抗体は、配列番号5からなる軽鎖、及び配列番号18からなるIDSアミノ酸配列に連結された重鎖を含む。
【0066】
特定の実施形態は、本明細書に記載の融合タンパク質を提供する。
【0067】
さらなる態様では、上記の実施形態のいずれかによる融合タンパク質、またはその中に含まれる抗ヒトTfR抗体は、以下に記載される特徴のいずれかを単独でまたは組み合わせて組み込むことができる。
【0068】
Fc領域バリアント
特定の実施形態において、1つ以上のアミノ酸修飾が、本明細書に記載される融合タンパク質/抗体のFc領域に導入され、それによってFc領域バリアントを生成してもよい。Fc領域バリアントは、1つ以上のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば、置換)を含む、ヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fc領域)を含んでもよい。
【0069】
特定の実施形態では、抗体バリアントは、全てではないが、いくつかのエフェクター機能を有することにより、in vivoでの抗体の半減期が重要ではあるが、特定のエフェクター機能(補体及びADCCなど)が不要または有害である用途に望ましい候補となる。in vitro及び/またはin vivo細胞傷害性アッセイを実行して、CDC及び/またはADCC活性の低減/枯渇を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを実行して、抗体がFcγR結合を欠いている(よって、ADCC活性を欠いている可能性が高い)が、FcRn結合能力を保持していることを確実にすることができる。ADCCを媒介するための主要な細胞にはNK細胞が挙げられ、これはFcγRIIIのみを発現するが、一方で単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞上のFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457-492(1991)の第464頁、表3に要約されている。対象となる分子のADCC活性を評価するためのin vitroアッセイの非限定的な例は、米国特許第5500362号(例えば、Hellstrom,I.et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 83:7059-7063(1986))及びHellstrom,I et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 82:1499-1502(1985);5,821,337(Bruggemann,M.et al.,J.Exp.Med.166:1351-1361(1987)を参照のこと)に記載されている。あるいは、非放射性アッセイ法を用いてもよい(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA、及びCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega,Madison,WI)を参照のこと)。かかるアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。あるいは、または追加的に、目的の分子のADCC活性は、例えば、Clynes et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 95:652-656(1998)に開示されるものなどの動物モデルにおいて、in vivoで評価されてもよい。C1q結合アッセイも行って、抗体がC1qに結合不可能であり、よってCDC活性を欠いていることを確認してもよい。例えば、WO 2006/029879及びWO 2005/100402のC1q及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評定するために、CDCアッセイが行われ得る(例えば、Gazzano-Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996)、Cragg,M.S.et al.,Blood 101:1045-1052(2003)、及びCragg,M.S.and M.J.Glennie,Blood 103:2738-2743(2004)を参照されたい)。FcRn結合及びin vivoクリアランス/半減期決定は、当該技術分野において既知の方法を使用しても行われ得る(Petkova,S.B.et al.,Int’l.Immunol.18(12):1759-1769(2006)を参照されたい)。
【0070】
低減されたエフェクター機能を有する抗体には、Fc領域残基238、265、269、270、297、327、及び329のうちの1つ以上の置換を有するものが含まれる(米国特許第6,737,056号)。そのようなFc変異体は、アラニンへの残基265及び297の置換を有するいわゆる「DANA」Fc変異体を含む、アミノ酸265位、269位、270位、297位及び327位のうちの2つ以上において置換を有するFc変異体を含む(米国特許第7332581号)。
【0071】
特定の実施形態において、野生型ヒトFc領域のPro329が、グリシン、アルギニン、セリン、または、Fcのプロリン329とFcγRIIIのトリプトファン残基Trp87及びTrp110との間に形成される、Fc/Fcγ受容体界面内のプロリンサンドイッチを破壊するのに十分に大きなアミノ酸残基で置換される(Sondermann et al.:Nature 406,267-273(20 July 2000))。さらなる一実施形態において、Fcバリアント内の少なくとも1つのさらなるアミノ酸置換は、S228P、E233P、L234A、L235A、L235E、N297A、N297D、またはP331Sであり、さらに別の実施形態において、該少なくとも1つのさらなるアミノ酸置換は、ヒトIgG1 Fc領域のL234A及びL235A、またはヒトIgG4 Fc領域のS228P及びL235Eである(米国特許第8969526号(参照によりその全体が組み込まれる))。
【0072】
特定の実施形態において、ポリペプチドは、野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含み、このポリペプチドは、グリシンで置換されたヒトIgG Fc領域のPro329を有し、Fcバリアントは、ヒトIgG1 Fc領域のL234A及びL235A、またはヒトIgG4 Fc領域のS228P及びL235Eにおいて少なくとも2つのさらなるアミノ酸置換を含み、残基は、KabatのEUインデックスに従って付番される(米国特許第8969526号、これは参照によりその全体が組み込まれる)。特定の実施形態において、野生型ヒトIgG Fc領域を含むポリペプチドによって誘発されるADCCの少なくとも20%へのADCCの下方調節、及び/またはADCPの下方調節について、P329G、L234A、及びL235Aの置換を含むポリペプチドは、ヒトFcγRIIIA及びFcγRIIAに対する親和性の低減を示す。(米国特許第8969526号、これは参照によりその全体が組み込まれる)。
【0073】
特定の一実施形態において、野生型ヒトFcポリペプチドのFcバリアントを含むポリペプチドは、三重変異、つまり、Pro329位におけるアミノ酸置換、L234A変異、及びL235A変異(P329/LALA)を含む(米国特許第8,969,526号、これは参照によりその全体が組み込まれる)。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、以下のアミノ酸置換:P329G、L234A、及びL235Aを含む。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、以下のアミノ酸置換:P329S、L234A、及びL235Aを含む。
【0074】
FcRへの結合が改善または減少した特定の抗体バリアントは、当該技術分野で公知であり、本明細書に記載される。(例えば、US 6737056、WO 2004/056312、及びShields et al.,(2001)J.Biol.Chem.9(2):6591-6604を参照されたい)。
【0075】
特定の実施形態において、抗体バリアントは、ADCCを改善する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298、333、及び/または334位(残基のEU付番)における置換を有する、Fc領域を含む。
【0076】
いくつかの実施形態において、例えば、米国特許第6194551号、WO 1999/51642、及びIdusogie et al.J.Immunol.164:4178-4184(2000)に記載されるように、変化した(すなわち、改善されたかまたは減少したかのいずれか)C1q結合及び/または補体依存性細胞傷害性(CDC)をもたらす変化が、Fc領域において行われる。
【0077】
母体IgGの胎児への移入の原因である、増加した半減期及び新生児型Fc受容体(FcRn)への改善された結合を有する抗体(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)及びKim et al.,J.Immunol.24:249(1994))は、US2005/0014934A1(Hinton et al.)に記載される。それらの抗体は、Fc領域のFcRnへの結合を改善する1つ以上の置換を有するFc領域を含む。かかるFcバリアントとしては、Fc領域残基238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、または434のうちの1つ以上での置換、例えば、Fc領域残基434の置換を有するものが挙げられる(米国特許第7371826号)。
【0078】
Fc領域バリアントの他の例に関しては、Duncan&Winter,Nature 322:738-40(1988)、US 5648260、US 5624821、及びWO 1994/29351もまた参照されたい。
【0079】
翻訳後修飾:シアル酸及びマンノース-6-リン酸
翻訳後修飾(PTM)は、共有結合的または酵素修飾によるアミノ酸側鎖、カルボキシル基または末端アミノの修飾を含む生物学的プロセスである。そのような修飾としては、例えば、タンパク質中の1つ以上のアミノ酸のグリコシル化、シアリル化、リン酸化またはアセチル化が挙げられ得る。特定のタンパク質のPTMは、配列のみに基づいて予測することができない可能性があり、タンパク質の産生及び精製方法に基づいて変化し得る。PTMは、タンパク質の機能及び安定性を決定するのに重要であることが示されている。例えば、グリコフォームの不均一性は、例えば、抗体安定性、薬物動態(PK)、有効性、免疫原性及び/またはFc受容体結合に影響を及ぼし得る。
【0080】
本明細書に記載のIgG:IDS融合タンパク質は、シアル酸及びマンノース6-リン酸修飾を含む特定のPTMを含む。これらのPTMは、CNS内の特定の細胞への融合タンパク質の適切な輸送、ならびに細胞内輸送を促進する。さらに、PTMは、in vivoでの融合タンパク質の曝露(例えば、薬物動態)に影響を及ぼし得る。例えば、マンノース-6-リン酸受容体(M6PR)に結合するマンノース-6-リン酸(M6P)グリカンは、細胞取込み及びリソソーム標的化に関与することが示されている。
【0081】
シアル酸またはM6Pなどの目的のタンパク質に存在する特定の修飾の分子量を評価する方法は、当該技術分野で公知である。そのようなアッセイの非限定的な例は、実施例3に記載されており、ここでは、M6P:融合タンパク質のmol/mol及びSA:融合タンパク質のmol/molを決定するために液体クロマトグラフィー-質量分析が使用されている。M6PR結合/親和性を調べるための様々な方法もまた、この技術分野では公知である。例えば、実施例2に記載されるような蛍光酵素アッセイが使用される場合がある。
【0082】
特定の実施形態では、本明細書に記載される融合タンパク質は、少なくとも約6mol/molのシアル酸:融合タンパク質を含む。特定の実施形態では、本明細書に記載される融合タンパク質は、少なくとも約8mol/molのシアル酸:融合タンパク質を含む。特定の実施形態では、本明細書に記載される融合タンパク質は、少なくとも約10mol/molのシアル酸:融合タンパク質を含む。特定の実施形態では、本明細書に記載される融合タンパク質は、少なくとも約12mol/molのシアル酸:融合タンパク質を含む。特定の実施形態では、本明細書に記載される融合タンパク質は、少なくとも約14mol/molのシアル酸:融合タンパク質を含む。特定の実施形態では、本明細書に記載される融合タンパク質は、少なくとも約15mol/molのシアル酸:融合タンパク質を含む。特定の実施形態では、本明細書に記載される融合タンパク質は、約6~約19mol/molのシアル酸:融合タンパク質(すなわち、約6~約19mol/molのシアル酸:融合タンパク質)を含む。特定の実施形態では、本明細書に記載される融合タンパク質は、約6~約16mol/molのシアル酸:融合タンパク質(すなわち、約6~約16mol/molのシアル酸:融合タンパク質)を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質は、約6mol/molのシアル酸:融合タンパク質を含む。特定の実施形態では、本明細書に記載される融合タンパク質は、約12~約19mol/molのシアル酸:融合タンパク質(すなわち、約12~約19mol/molのシアル酸:融合タンパク質)を含む。特定の実施形態では、本明細書に記載される融合タンパク質は、約15~16mol/molのシアル酸:融合タンパク質(すなわち、約15~約16mol/molのシアル酸:融合タンパク質)を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される融合タンパク質は、約15mol/molのシアル酸:融合タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される融合タンパク質は、約16mol/molのシアル酸:融合タンパク質を含む。
【0083】
特定の実施形態では、本明細書に記載される融合タンパク質は、約1.5~約2.5mol/molのM6P:融合タンパク質(すなわち、約1.5~約2.5mol/molのM6P:融合タンパク質)を含む。特定の実施形態では、本明細書に記載される融合タンパク質は、約1.5~約2.3mol/molのM6P:融合タンパク質(すなわち、約1.5~約2.3mol/molのM6P:融合タンパク質)を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される融合タンパク質は、約1.5mol/molのM6P:融合タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される融合タンパク質は、約1.7mol/molのM6P:融合タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される融合タンパク質は、約2.3mol/molのM6P:融合タンパク質を含む。
【0084】
親和性、結合速度、濃度/曝露及び機能的特性評価
本明細書に記載の融合タンパク質は、広範囲の結合親和性を有し得る。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、TfRに対して約1pM~2500pMの範囲の親和性を有する。例えば、いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、TfRに対して約1pM~500pMの範囲の親和性を有する。いくつかの実施形態では、TfRに対する親和性は、約10pM~250pMの範囲である。いくつかの実施形態では、TfRに対する親和性は、約50pM~200pMの範囲である。例えば、TfRに対する親和性は、約25pM、50pM、100pM、150pMまたは200pMであり得る。いくつかの実施形態では、TfR親和性は、ヒトTfR(hTfR)に対するものである。
【0085】
結合親和性、結合速度及び交差反応性を分析するための方法は、当該技術分野で公知である(例えば、実施例を参照のこと)。これらの方法としては、固相結合アッセイ(例えば、ELISAアッセイ)、免疫沈降、表面プラズモン共鳴(例えば、Biacore(商標)(GE Healthcare,Piscataway,NJ))、速度論的排除アッセイ(例えば、KinExA(登録商標))、フローサイトメトリー、蛍光活性化細胞選別(FACS)、BioLayer干渉法(例えば、Octet(商標)(ForteBio,Inc.,Menlo Park,CA))及びウエスタンブロット分析が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ELISAは、結合親和性、結合カイネティクス及び/または交差反応性を決定するために使用される。ELISAアッセイを実施するための方法は当該技術分野において公知であり、以下の実施例セクションにも記載されている。いくつかの実施形態では、表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して、結合親和性、結合カイネティクス、及び/または交差反応性を判定する。いくつかの実施形態では、結合親和性、結合カイネティクス、及び/または交差反応性を決定するために、結合平衡除外法(kinetic exclusion)が使用される。いくつかの実施形態では、BioLayer干渉法アッセイを使用して、結合親和性、結合カイネティクス、及び/または交差反応性を判定する。結合親和性を決定するための方法の非限定的な例、ならびにIgG:IDS融合タンパク質の比活性を決定するための方法の非限定的な例を実施例2に記載する。
【0086】
末梢器官(例えば、肝臓)、脳及び/または血漿中の本明細書に記載の融合タンパク質の濃度は、例えば、ヒトトランスフェリン受容体(hTfR)ノックインマウスモデルを使用して測定することができる。そのようなモデルは、例えば、最大脳内濃度(Cmax)及び/または脳曝露を測定及び/または比較するために、例えば、Cmaxが増加したか及び/または脳曝露が延長したかを判断するために、使用することができる。ヒトアピカルTfR(TfRms/hu)マウスノックインモデルの作製は、米国特許第10,143,187号に記載されている。脳及び/または血漿濃度または融合タンパク質の曝露の評価のために、融合タンパク質をマウスモデルに投与することができる(例えば、TfRms/hu)。血漿試料は、適切な期間後にマウスから得られ、続いて適切な溶液で血管系を灌流することができる。灌流後、末梢器官または脳(またはその一部)を抽出し、ホモジナイズし、溶解することができる。次いで、血漿、及び/または組織(例えば、脳)溶解物中の薬剤の濃度は、当業者に公知の標準的な方法を使用して決定し得る。非限定的な例として、実施例4に記載されているようなELISAベースのアッセイを使用して濃度を測定することができる。一連の用量をノックインマウスモデルに投与することにより、標準曲線を作成することができる。
【0087】
本明細書に記載される融合タンパク質(例えば、IgG:IDS)はまた、融合タンパク質が標的細胞の表現型または挙動を調節する能力が検査される様々な機能アッセイで評価され得る。in vitro機能アッセイの非限定的な例を実施例3に記載し、この実施例では、MPS II患者初代線維芽細胞においてIgG:IDS融合タンパク質の細胞効力を評価した。
【0088】
IDS活性はまた、細胞試料、組織試料または液体試料(例えば、CSFまたは尿)などの試料を、IDS欠損の結果として蓄積する1つ以上のグリコサミノグリカン(GAG)(例えば、ヘパランスルフェート、デルマタンスルフェート、または総GAG)の量についてアッセイすることによって評価し得る。ヘパラン及びデルマタンスルフェートの量は、試料中に存在するGAGをヘパリナーゼ及びコンドロイチナーゼで消化することによって決定される。次いで、得られた二糖を質量分析(例えば、LC-MS/MS)によってアッセイすることができる。高レベルのヘパラン及びデルマタンスルフェート蓄積を有する試料は、量が増加したヘパラン及びデルマタンスルフェート由来二糖を有する。したがって、二糖のレベルはIDS酵素活性に反比例する。質量分析(例えば、LC-MS/MS)アッセイは、細胞試料、組織試料、及び液体試料を含む、GAGが蓄積する任意の試料に対して行うことができる。そのような試料は、例えば、in vitroで細胞に投与されるか、またはいくつかの実施形態では、in vivoで対象に投与される、本明細書に記載のIDS含有タンパク質の活性をモニターするために評価することができる。対象は、げっ歯類、例えばマウス、または非ヒト霊長類などの動物であり得る。いくつかの実施形態において、対象はヒト患者であり、例えば、IDS療法による治療を受けているハンター症候群を有する患者などであり、アッセイは患者におけるIDS活性をモニターするために使用される。いくつかの実施形態では、ヒト患者は、本明細書に記載の融合タンパク質による治療を受けている。そのようなアッセイのための例示的なプロトコルを実施例4に記載する。
【0089】
融合タンパク質/抗体産生
IDSアミノ酸配列に連結された抗TfR抗体を含む融合タンパク質を調製する方法は、当該技術分野で公知であり、以下の実施例のセクションにも記載される。
【0090】
例えば、目的の抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子は、例えば米国特許第4816567号に記載されているように、組換え方法及び組成物を使用して細胞からクローニングすることができる。したがって、特定の実施形態は、本明細書に記載の抗体または融合タンパク質/融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。さらなる実施形態において、かかる核酸を含む1つ以上のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。さらなる実施形態において、かかる核酸を含む宿主細胞が提供される。そのような一実施形態では、宿主細胞は:(1)抗体のVL(例えば、軽鎖)を含むアミノ酸配列と、ペプチドリンカーもしくはペプチド結合を介してIDSアミノ酸配列に連結された抗体の重鎖を含むアミノ酸配列とをコードする核酸を含むベクター、または(2)抗体のVL(例えば、軽鎖)を含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクターと、ペプチドリンカーもしくはペプチド結合を介してIDSアミノ酸配列に連結された抗体の重鎖を含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクターとを含む(例えば、これらで形質転換されている)。一実施形態において、宿主細胞は、真核性、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはリンパ系細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。
【0091】
したがって、特定の実施形態は、融合タンパク質を産生するのに適した条件下の宿主細胞において、1)本明細書に記載の軽鎖及び2)本明細書に記載のIDSアミノ酸配列に連結された重鎖を発現するように操作可能な1つ以上のポリヌクレオチドを発現させることを含む、本明細書に記載の融合タンパク質を産生する方法を提供する。特定の実施形態はまた、そのような方法によって産生される融合タンパク質を提供する。
【0092】
融合タンパク質の組換え産生のために、例えば本明細書に記載の融合タンパク質/ポリペプチドをコードする核酸を単離し、宿主細胞におけるさらなるクローニング及び/または発現のために1つ以上のベクターに挿入する。そのような核酸は、従来の手順を使用して(例えば、抗体/融合タンパク質の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能であるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)、容易に単離され、配列決定され得る。
【0093】
融合タンパク質をコードするベクターのクローン化または発現に好適な宿主細胞としては、本明細書に記載される原核生物細胞または真核生物細胞が挙げられる。例えば、融合タンパク質は、特にグリコシル化及びFcエフェクター機能が必要とされない場合に、細菌内で産生され得る。細菌における抗体断片及びポリペプチドの発現については、例えば、米国特許第5648237号、米国特許第5789199号及び米国特許第5840523号を参照されたい。(E.coliにおける抗体断片の発現を記載しているCharlton,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ,2003),pp.245-254も参照されたい)。発現後、融合タンパク質は、可溶性画分で細菌細胞ペーストから単離され得、さらに精製され得る。
【0094】
脊椎動物細胞もまた、宿主として使用され得る。例えば、懸濁液中で成長するように適合される哺乳類細胞株が、有用であり得る。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7)、ヒト胎児腎臓系統(例えば、Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977)に記載されるHEK293または293細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えば、Mather,Biol.Reprod.23:243-251(1980)に記載されるTM4細胞)、サル腎臓細胞(CV1)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76)、ヒト子宮頸癌細胞(HELA)、イヌ腎臓細胞(MDCK、バッファローラット肝細胞(BRL 3A)、ヒト肺細胞(WI38)、ヒト肝細胞(Hep G2)、マウス乳腺腫瘍(MMT 060562)、例えば、Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68(1982)に記載されるTRI細胞、MRC5細胞、及びFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株としては、DHFR- CHO細胞(Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980))を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、及び骨髄腫細胞株、例えばY0、NS0及びSp2/0が挙げられる。抗体産生に適した特定の哺乳動物宿主細胞株の総説については、例えば、Yazaki and Wu,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ),pp.255-268(2003)を参照されたい。
【0095】
組成物及び製剤
本開示において使用するための製剤を調製するための指針は、当業者に公知である医薬調製物及び製剤についての多くの便覧に見ることができる。
【0096】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載されている融合タンパク質を含み、1つ以上の薬学的に許容可能な担体及び/または賦形剤をさらに含む。例えば、特定の実施形態では、融合タンパク質は、薬学的に許容され得る賦形剤をさらに含む医薬組成物内に含まれる。医薬的に許容され得る担体としては、任意の溶媒、分散媒、またはコーティング剤が挙げられ、これらは、当該活性薬剤と生理学的に適合し、該活性薬剤の活性を妨害しないか、または阻害しない。
【0097】
いくつかの実施形態では、担体は、静脈内、髄腔内、脳室内、筋肉内、腹腔内または皮下投与に適している。薬学的に許容され得る担体は、例えば、組成物を安定化させるように、またはポリペプチドの吸収を増加もしくは減少させるように作用する1つ以上の生理学的に許容可能な化合物を含むことができる。生理学的に許容され得る化合物としては、例えば、グルコース、スクロースもしくはデキストランなどの炭水化物、アスコルビン酸もしくはグルタチオンなどの抗酸化剤、キレート剤、低分子量タンパク質、活性物質のクリアランスもしくは加水分解を減少させる組成物、または賦形剤もしくは他の安定剤及び/または緩衝液を挙げることができる。その他の薬学的に許容され得る担体及びその配合物もまた、当該技術分野で利用可能である。
【0098】
本明細書に記載の医薬組成物は、例えば、通常使用されている混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、乳化、カプセル化、封入、または凍結乾燥プロセスによって製造することができる。以下の方法及び賦形剤は例示的なものである。
【0099】
上で開示されたように、本明細書に記載されている融合タンパク質は、例えば、ボーラス注射または持続注入による注射による非経口投与用に製剤化することができる。注射の場合、融合タンパク質を水性または非水性溶媒、例えば、植物性または他の類似の油、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸のエステルまたはプロピレングリコールに溶解、懸濁または乳化させることによって、ならびに必要に応じて、可溶化剤、等張剤、懸濁剤、乳化剤、安定剤及び保存剤などの通常使用されている添加剤と共に、製剤に製剤化することができる。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、生理学的に適合性のある緩衝液などの水溶液中に製剤化することができ、その非限定的な例としては、ハンクス液、リンゲル液及び生理的食塩水緩衝液が挙げられる。注射用製剤は、保存剤を添加した単位剤形、例えばアンプルまたは複数回用量の容器で提供することができる。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、またはエマルションなどの形態をとることができ、また、懸濁剤、安定剤、及び/または分散剤などの製剤化剤を含有することができる。いくつかの実施形態では、組成物は凍結乾燥組成物である。例えば、凍結乾燥組成物(例えば、凍結乾燥粉末またはケーキ)は、浸透圧及び/またはpHを調整するための塩(例えば、NaCl、NaH2PO4、Na2HPO4、NaOH、HCl)、凍結保護剤(例えば、トレハロース、スクロース)、ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン-ポリプロピレングリコールなどのポリエーテルポリマーまたはブロックコポリマー)、及び増量剤(例えば、マンニトール、グリシン)からなる群から選択される1つ以上の賦形剤をさらに含み得る。凍結乾燥組成物は、使用前に注入可能な液体形態に再構成され得る(例えば、水、生理食塩水、またはデキストロース5%水を介して再構成される)。特定の実施形態では、凍結乾燥組成物は、Na+、Cl-、PO4
3-、スクロース、及びブロックコポリマーのポリエチレン-ポリプロピレングリコールを含む賦形剤を含み得る。
【0100】
典型的には、in vivo投与に使用するための医薬組成物は、滅菌されている。滅菌は、当該技術分野において公知の方法、例えば、加熱滅菌、蒸気滅菌、滅菌濾過、または照射によって実現され得る。
【0101】
本明細書に記載の医薬組成物の用量及び所望の薬物濃度は、想定される特定の使用に応じて異なり得る。特定の適切な投与量が本明細書に記載される。
【0102】
使用方法
IDS酵素活性が不十分であるか、または欠如すると、CNS及び末梢におけるグリコサミノグリカン(GAG)ヘパランスルフェート(HS、例えば、D0A0及びD0S0)及びデルマタンスルフェート(DS、例えば、D0a4)の蓄積、ならびに複数の臓器及び組織におけるリソソーム機能障害がもたらされる。したがって、特定の実施形態は、総GAGまたは1つ以上のGAG種のレベルの低下を必要とする対象においてそれを行う方法であって、本明細書に記載の融合タンパク質(すなわち、本明細書中に記載されるIgG:IDS融合タンパク質)またはそのような融合タンパク質を含む医薬組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。特定の実施形態では、治療有効量の融合タンパク質または融合タンパク質を含む医薬組成物(例えば、約1mg/kg~約10mg/kg、例えば約1mg/kg、3mg/kgまたは10mg/kgのタンパク質)を対象に投与する。
【0103】
総GAGの濃度または1つ以上のGAG種の濃度もまた、ハンター症候群を有する対象において(例えば、対象由来の生理学的試料、例えば、本明細書中に記載される融合タンパク質(例えば、IgG:IDS)を投与された対象由来の治療後試料において)評価することができる。そのような評価は、本明細書中に記載される融合タンパク質(例えば、IgG:IDS)に対する疾患活性または治療応答を評価するために使用される場合があり、これには、融合タンパク質(例えば、IgG:IDS)の安全な用量及び治療有効用量を同定及び評価することが含まれる。GAG濃度レベルの定量化は、当該技術分野で公知の方法を使用して、例えば、液体クロマトグラフィー質量分析(LCMS)アッセイ(例えば、実施例4を参照のこと)を使用して実施し得る。
【0104】
特定の実施形態では、1つ以上のGAG種の濃度を評価し、ベースラインレベルまたは対照と比較することができる。対照またはベースラインレベルは変化することがあり、評価されるパラメータに応じて適切な対照またはベースラインレベルを特定することは、当業者の技術の範囲内である。例えば、特定の実施形態では、「対照」という用語は、健康な対象もしくはIDS欠損を有さない対象、またはそれら由来の試料を指し得る。あるいは、「対照」という用語は、融合タンパク質を投与されなかったIDS欠損(例えば、IDS KOマウスまたはハンター症候群患者)を有する対象を指し得る。「対照」はまた、治療前にIDS欠損を有する対象(またはそれ由来の試料)を指す場合がある。同様に、「ベースラインレベル」は、例えば、健康な対象、またはIDS欠損を有さない対象において測定されるレベルまたはレベルの範囲を指す場合がある。本明細書に記載される特定の他の実施形態では、「ベースラインレベル」はまた、融合タンパク質を投与されなかったIDS欠損を有する対象、または融合タンパク質の投与前の対象におけるレベルまたはレベルの範囲を指し得る。特定の実施形態では、対照値またはベースラインレベルは、対照対象の集団からのデータを使用して確立され得る。いくつかの実施形態では、対象の集団は、年齢または性別などの1つ以上の対象の特徴に従って試験対象に適合する。いくつかの実施形態では、対照値は、試験対象の脂質/タンパク質のレベルを評価するために使用されるのと同じ種類の対象集団由来の試料(例えば、血液またはPBMCを含む試料)を使用して確立される。特定の実施形態において、特定の評価が、例えば、治療開始の7日後、4週間後、12週間後、6ヶ月後、12ヶ月後及び/または18ヶ月後に行われる。
【0105】
特定の実施形態では、本明細書に記載される融合タンパク質の投与は、対照と比較して、対象由来の試料中の1つ以上のGAG種のレベルを低下させる。特定の実施形態では、本明細書に記載される融合タンパク質の投与は、対照と比較して、対象由来の試料中の1つ以上のGAG種のレベルを少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれを超えて低下させる。特定の実施形態では、対照は、医薬組成物を投与されなかったIDS欠損を有する対象である。特定の実施形態において、対照は、治療前の対象である。
【0106】
本明細書で使用される場合、「試料」または「生理学的試料」という語句は、GAG種などの目的の分析物を含む対象から得られた生物学的試料を指すことを意味する。したがって、試料は、例えば、分子、脂質またはタンパク質レベルで評価され得る。特定の実施形態では、生理学的試料は、組織、脳脊髄液(CSF)、尿、血液、血清、または血漿を含む。特定の実施形態では、試料は、脳、肝臓、腎臓、肺または脾臓などの組織を含む。試料は液体を含んでいてもよい。特定の実施形態では、試料は、CSFを含む。特定の実施形態では、試料は血液及び/または血漿を含む。特定の実施形態では、試料は血清を含む。特定の実施形態では、試料はCNS組織(例えば、脳組織)を含む。
【0107】
特定の実施形態では、本明細書に記載される融合タンパク質の投与は、対照と比較して、対象の臓器、組織または体液(例えば、血液、血漿、血清、CSFまたは尿)中の1つ以上のGAG種のレベルを低下させる。特定の実施形態では、対象の臓器、組織または体液中の1つ以上のGAG種のレベルは、対照と比較して、少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれを超えて低下する。特定の実施形態では、対照は、医薬組成物を投与されなかったIDS欠損を有する(例えばハンター症候群)対象である。特定の実施形態において、対照は、治療前の対象である。例えば、特定の実施形態では、本明細書に記載される融合タンパク質の投与は、対象のCSF中の1つ以上のGAG種のレベルを少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれを超えて(例えば、少なくとも約30%、40%、50%、60%またはそれを超えて)低下させ、低下は、投与前の対象のCSF中の対応する1つ以上のGAG種のレベルと比較したものである。特定の実施形態では、投与は、対象のCSF中の1つ以上のGAG種(例えば、HS、DSまたは総GAG)のレベルを少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、または70%低下させ、ここで低下は、投与前の対象のCSF中の対応する1つ以上のGAG種(例えば、HS、DSまたは総GAG)のレベルと比較したものである。
【0108】
特定の実施形態では、本明細書に記載される融合タンパク質の投与は、対照と比較して、対象のCNS中の1つ以上のGAG種のレベルを低下させる。特定の実施形態では、対象のCNSにおける1つ以上のGAG種のレベルは、対照と比較して、少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれを超えて(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、またはそれを超えて)低下する。
【0109】
特定の実施形態では、本明細書に記載される融合タンパク質の投与は、対照と比較して、対象のCSF中の1つ以上のGAG種のレベルを低下させる。特定の実施形態では、対象のCSFにおける1つ以上のGAG種のレベルは、対照と比較して、少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれを超えて(例えば、少なくとも約30%、40%、50%、60%、またはそれを超えて)低下する。特定の実施形態では、対象のCSF中の1つ以上のGAG種の減少は、投与前の対象の1つ以上のGAG種のCSFレベルと比較したものである。
【0110】
特定の実施形態では、本明細書に記載される融合タンパク質の投与は、対照と比較して、対象の血清中の1つ以上のGAG種のレベルを低下させる。特定の実施形態では、対象の血清中の1つ以上のGAG種のレベルは、対照と比較して、少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれを超えて低下する。特定の実施形態では、対象の血清中の1つ以上のGAG種の減少は、投与前の対象の1つ以上のGAG種の血清レベルと比較したものである。特定の実施形態では、本明細書に記載される融合タンパク質の投与は、対象の血清中の1つ以上のGAG種のレベルをベースラインレベル(例えば、健康な対象またはIDS欠損(例えばハンター症候群)を有さない対象において測定したレベル)に低下させる。
【0111】
特定の実施形態では、総GAGレベルが低下する。特定の実施形態では、ヘパランスルフェートレベルが低下する(例えば、D0A0及び/またはD0S0レベルが低下する)。特定の実施形態では、デルマタンスルフェートレベルが低下する(例えば、D0a4レベルが低下する)。
【0112】
特定の実施形態は、1つ以上のGAG種を減少させる方法で使用するための本明細書に記載の融合タンパク質、またはそのような融合タンパク質を含む医薬組成物を提供し、この方法は、融合タンパク質または医薬組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む。特定の実施形態では、方法は、治療有効量の融合タンパク質または融合タンパク質を含む医薬組成物を対象に(例えば、約1mg/kg、3mg/kgまたは10mg/kgのタンパク質用量などの本明細書に記載の用量で)投与することを含む。
【0113】
特定の実施形態は、医薬をそれを必要とする対象に投与することによって、1つ以上のGAG種を減少させるための医薬の調製における、本明細書に記載の融合タンパク質の使用を提供する。特定の実施形態では、使用は、治療有効量の医薬を、それを必要とする対象に(例えば、約1mg/kg、3mg/kgまたは10mg/kgのタンパク質用量などの本明細書に記載の用量で)投与することによるものである。
【0114】
特定の実施形態はまた、本明細書に記載の融合タンパク質またはそのような融合タンパク質を含む医薬組成物を対象に投与することを含む、ハンター症候群の治療を必要とする対象においてそれを行う方法を提供する。
【0115】
特定の実施形態は、本明細書に記載の融合タンパク質、または医学療法に使用するためのそのような融合タンパク質を含む医薬組成物を提供する。
【0116】
特定の実施形態は、ハンター症候群を治療する方法で使用するための、本明細書に記載の融合タンパク質、またはそのような融合タンパク質を含む医薬組成物を提供し、方法は、融合タンパク質または医薬組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む。
【0117】
特定の実施形態では、方法は、治療有効量の融合タンパク質または融合タンパク質を含む医薬組成物を対象に投与することを含む。例えば、特定の実施形態では、本明細書に記載の用量、例えば約1mg/kg、3mg/kgまたは10mg/kgのタンパク質用量が対象に投与される。
【0118】
特定の実施形態はまた、ハンター症候群の治療を必要とする対象にその治療のための医薬を投与することにより、治療を行うための医薬の調製における本明細書中に記載の融合タンパク質の使用を提供する。特定の実施形態では、使用は、治療有効量の医薬を、対象に(例えば、約1mg/kg、3mg/kgまたは10mg/kgのタンパク質用量などの本明細書に記載の用量で)投与することによるものである。
【0119】
投与及び有効用量
本明細書に記載の融合タンパク質または本明細書に記載の融合タンパク質を含む医薬組成物は、例えば治療効果用量などの有効量または有効用量で対象に投与し得る。
【0120】
いくつかの実施形態において、用量(例えば、有効用量または治療有効用量)は、約1mg/kg~約10mg/kgのタンパク質(例えば、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、または約10mg/kg)である。いくつかの実施形態では、用量(例えば、有効用量または治療有効用量)は、約1mg/kg~約3mg/kgのタンパク質である。いくつかの実施形態では、用量(例えば、有効用量または治療有効用量)は、約3mg/kg~約10mg/kgのタンパク質である。特定の実施形態において、用量(例えば、有効用量または治療有効用量)は、約1mg/kgのタンパク質である。特定の実施形態において、用量(例えば、有効用量または治療有効用量)は、約3mg/kgのタンパク質である。特定の実施形態において、用量(例えば、有効用量または治療有効用量)は、約10mg/kgのタンパク質である。
【0121】
特定の実施形態では、本明細書に記載のそのような用量は、治療有効用量、例えば安全な治療有効用量(例えば、対象の尿中総GAG濃度の安定化または減少をもたらす用量)である。
【0122】
特定の実施形態では、医薬組成物は、毎週投与される。
【0123】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるタンパク質分子は、少なくとも約500単位(U)/mg、約1,000U/mg、または少なくとも約1,500、2,000、2,500、3,000、3,500、4,000、4,500、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、または10,000U/mgの酵素活性を有する。いくつかの実施形態において、酵素活性は少なくとも約11,000U/mg、または少なくとも約12,000、13,000、14,000、15,000、16,000、17,000、18,000、19,000、20,000、25,000、30,000、35,000、40,000、45000もしくは50,000U/mg、または約500U/mg~約50,000U/mgの範囲内のいずれかである。
【0124】
投与量は、選択された投与経路、組成物の製剤、患者の応答、状態の重症度、対象の体重、対象の年齢、対象の頭の大きさ及び/または頭の大きさと身長との比、ならびに処方医の判断を含むいくつかの要因に従って変動し得る。投与量は、個々の患者による必要に応じて経時的に増加または減少され得る。いくつかの実施形態では、患者には、まず最初に低用量が投与され、次いで、患者が耐えられる有効な投薬量まで増量される。有効量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0125】
種々の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物を非経口投与する。いくつかの実施形態では、医薬組成物を静脈内投与する。静脈内投与は、例えば、約10~約30分の期間にわたる、または少なくとも1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間もしくは10時間の期間にわたる、注入によるものであり得る。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約20分~6時間、または約30分~4時間の期間にわたって静脈内投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は静脈内ボーラスとして投与される。注入とボーラス投与の組合せも使用されてもよい。
【0126】
特定の実施形態では、融合タンパク質(例えば、IgG:IDS)の薬物動態(PK)を評価する。例えば、PKパラメータとしては、限定されないが:Cmax、トラフ濃度(Cmin)、Tmax、時間0から最後の定量可能な濃度の時間までの濃度-時間曲線下面積(AUC0-最後)、投与間隔にわたる濃度-時間曲線下面積(AUC0-T)、見かけの末端除去速度定数(λz)、見かけの末端除去t1/2、及び累積比が挙げられる。
【0127】
製品
他の態様では、本明細書に記載の融合タンパク質を含む製品が提供される。製品は、容器、及び容器上のまたは容器と関連したラベルまたは添付文書を含む。好適な容器には、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、IV溶液バッグなどが含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの多様な材料から形成され得る。容器は、組成物を単独でまたは別の組成物と組み合わせて保持し、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、静脈内溶液バッグまたは皮下注射針によって穿刺可能なストッパーを有するバイアルであり得る)。組成物中の少なくとも1つの活性薬剤は、本明細書に記載の融合タンパク質である。ラベルまたは添付文書は、組成物がハンター症候群を治療するために使用されることを示す。さらに、製品は、(a)本明細書に記載の融合タンパク質を含む組成物が収容された第1の容器、及び(b)治療剤を含む組成物が収容された第2の容器を含み得る。本実施形態における製品は、組成物がハンター症候群を治療するために使用され得ることを示す添付文書をさらに含み得る。代替的に、または追加的に、製品は、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝食塩水、リンゲル液またはデキストロース溶液などの、薬学的に許容される緩衝液を含む、第2の(または第3の)容器をさらに含んでもよい。それは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む、商業的及びユーザの立場から望ましい他の材料をさらに含んでもよい。
【0128】
特定の定義
別途定義されない限り、本明細書に使用される技術及び科学用語は、当該技術分野の当業者に一般的に理解されているものと同じ意味を有し、それらは、Singleton et al.(1994)Dictionary of Microbiology and Molecular Biology,2nd Ed.,J.Wiley&Sons,New York,NY、及びJaneway,C.,Travers,P.,Walport,M.,Shlomchik(2001)Immunobiology,5th Ed.,Garland Publishing,New Yorkと一致する。
【0129】
本明細書で使用する場合、「約」及び「およそ」という用語は、数値または範囲で指定された量を修正するために使用される場合、その数値及び当業者に公知の値からの妥当な偏差、例えば、±20%、±10%または±5%が、記載された値の意図する意味の範囲内であることを示す。
【0130】
用語「投与する」は、薬剤(例えば、本明細書中に記載されるIgG:IDS融合タンパク質など)、化合物または組成物(例えば、医薬組成物)を所望の生物学的作用部位に送達する方法を指す。これらの方法としては、経口、局所送達、非経口送達、静脈内送達、皮内送達、筋肉内送達、髄腔内送達、結腸送達、直腸送達、または腹腔内送達が挙げられるがこれらに限定されない。一実施形態では、本明細書に記載のポリペプチドは、静脈内投与される。
【0131】
「親和性」は、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の、総計の非共有性相互作用の強度を指す。別途指定されない限り、本明細書で使用されるとき、「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば、抗体及び抗原)間の1:1の相互作用を反映する、本来の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般的に、解離定数(「Kd」、「KD」、または「KD」と呼ばれる)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載される方法を含む、当該技術分野で既知の一般的な方法によって測定することができる。結合親和性を測定するための具体的な例証的かつ例示的な実施形態は本明細書に記載される。
【0132】
「アミノ酸」という用語は、天然アミノ酸及び合成アミノ酸、ならびに天然アミノ酸と同様の形で機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣物を指す。
【0133】
天然アミノ酸は、遺伝暗号によってコードされるものと、それらのアミノ酸が後で改変されたもの、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタメート及びO-ホスホセリンである。
【0134】
天然に存在するα-アミノ酸としては、アラニン(Ala)、システイン(Cys)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、フェニルアラニン(Phe)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、アルギニン(Arg)、リジン(Lys)、ロイシン(Leu)、メチオニン(Met)、アスパラギン(Asn)、プロリン(Pro)、グルタミン(Gln)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、バリン(Val)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、及びそれらの組合せが挙げられるがこれらに限定されない。天然に生じるα-アミノ酸の立体異性体は、D-アラニン(D-Ala)、D-システイン(D-Cys)、D-アスパラギン酸(D-Asp)、D-グルタミン酸(D-Glu)、D-フェニルアラニン(D-Phe)、D-ヒスチジン(D-His)、D-イソロイシン(D-Ile)、D-アルギニン(D-Arg)、D-リジン(D-Lys)、D-ロイシン(D-Leu)、D-メチオニン(D-Met)、D-アスパラギン(D-Asn)、D-プロリン(D-Pro)、D-グルタミン(D-Gln)、D-セリン(D-Ser)、D-トレオニン(D-Thr)、D-バリン(D-Val)、D-トリプトファン(D-Trp)、D-チロシン(D-Tyr)、及びその組合せを含むが、これらに限定されない。
【0135】
アミノ酸は、本明細書では、一般的に知られている3文字記号またはIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionが推奨する1文字記号のいずれかで言及され得る。
【0136】
本明細書で使用される、「抗体」という用語は、免疫グロブリンフォールドを有し、可変領域を介して抗原と特異的に結合するタンパク質を指す。本明細書において「抗体」は、最も広義に使用され、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、二量体、多量体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び所望される生物活性を呈する限りにおいて抗体断片が含まれる(Miller et al.(2003)Jour.of Immunology 170:4854-4861)。抗体は、マウス、ヒト、ヒト化、キメラであり得るか、または他の種に由来するものであり得る。(Janeway,C.,Travers,P.,Walport,M.,Shlomchik(2001)Immuno Biology,5th Ed.,Garland Publishing,New York)。標的抗原は、一般的に、複数の抗体上のCDR(相補性決定領域)によって認識される、エピトープとも呼ばれる多数の結合部位を有する。異なるエピトープに特異的に結合する各抗体は、異なる構造を有する。したがって、1つの抗原は、2つ以上の対応する抗体を有し得る。抗体は、完全長免疫グロブリン分子、または目的の標的の抗原もしくはその一部(例えば、TfR)に免疫特異的に結合する抗原結合部位を含む完全長免疫グロブリン分子の一部を含む。本明細書に開示される免疫グロブリンは、免疫グロブリン分子の任意の種類(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、及びIgA)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)、またはサブクラスのものであり得る。免疫グロブリンは、任意の種に由来し得る。しかしながら、一態様において、免疫グロブリンは、ヒト、マウス、またはウサギ起源のものである。
【0137】
「TfRに結合する抗体」及び「抗TfR抗体」という用語は、抗体が血液脳関門を通過する輸送のためにTfRに結合することができるように、十分な親和性でその可変領域を介してTfRに結合することができる抗体を指す。一実施形態では、抗TfR抗体が無関係の非TfRタンパク質に結合する程度は、例えば放射免疫測定法(RIA)によって測定される、抗体のTfRへの結合の約10%未満である。特定の実施形態において、TfRに結合する抗体は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、0.1nM以下、0.01nM以下または0.001nM以下(例えば10-8M以下、例えば10-8M~10-13M、例えば10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。特定の実施形態において、抗TfR抗体は、異なる種由来のTfR間で保存されるTfRのエピトープに結合する。
【0138】
「抗原結合部分」及び「抗原結合断片」という用語は、本明細書において互換的に使用され、その可変領域を介して抗原(例えば、TfR)に特異的に結合する能力を保持した抗体の1つ以上の断片を指す。抗原結合断片の例としては、Fab断片(VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価断片)、F(ab’)2断片(ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結された2つのFab断片から構成される二価断片)、一本鎖Fv(scFv)、ジスルフィド結合Fv(dsFv)、相補性決定領域(CDR)、VL(軽鎖可変領域)、ならびにVH(重鎖可変領域)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0139】
本明細書で使用する場合、「CH3ドメイン」及び「CH2ドメイン」という用語は、免疫グロブリン定常領域ドメインポリペプチドを指す。本出願の目的で、CH3ドメインのポリペプチドとは、EUに従ってナンバリングされるほぼ341位からほぼ447位のアミノ酸のセグメントを指し、CH2ドメインのポリペプチドとは、EUナンバリングスキームに従ってナンバリングされるほぼ231位からほぼ340位のアミノ酸のセグメントを指し、ヒンジ領域の配列を含まない。CH2及びCH3ドメインのポリペプチドはまた、IMGT(ImMunoGeneTics)ナンバリングスキームによってもナンバリングされる場合があり、この場合、IMGT Scientific chartのナンバリング(IMGTウェブサイト)によれば、CH2ドメインのナンバリングは1~110であり、CH3ドメインのナンバリングは1~107である。CH2及びCH3ドメインは、免疫グロブリンのFc領域の一部である。Fc領域とは、EUナンバリングスキームに従ってナンバリングされるほぼ231位からほぼ447位のアミノ酸のセグメントを指すが、本明細書で使用される場合、抗体のヒンジ領域の少なくとも一部を含むことができる。例示的なヒンジ領域配列は、ヒトIgG1ヒンジ配列のEPKSCDKTHTCPPCP(配列番号25)である。
【0140】
「対照」または「対照試料」という用語は、使用される検出技術に適切な任意の試料を指す。対照試料は、使用される検出技術の生成物または試験される材料を含有し得る。さらに、対照は陽性対照または陰性対照であり得る。
【0141】
「キメラ」抗体という用語は、重鎖及び/または軽鎖の一部分が特定の源または種に由来する一方で、重鎖及び/または軽鎖の残りの部分が異なる源または種に由来する、抗体を指す。いくつかの実施形態では、キメラ抗体は、ある供給源または種(例えば、マウス)に由来する可変領域と、別の供給源または種(例えば、ヒト)に由来する定常領域とを含むモノクローナル抗体である。キメラ抗体を作製する方法は、当該技術分野において説明されている。
【0142】
抗体の「クラス」は、その重鎖によって保有される定常ドメインまたは定常領域の型を指す。5つの主要な抗体クラスIgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、これらのうちの数個は、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2にさらに分割され得る。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。
【0143】
「相補性決定領域」または「CDR」という用語は、軽鎖及び重鎖可変領域によって確立される4つのフレームワーク領域を分断する各鎖中の3つの超可変領域を指す。CDRは、抗原のエピトープへの抗体結合を主として担う。各鎖のCDRは、通常、N末端から順番にナンバリングしてCDR1、CDR2及びCDR3と称され、通常、特定のCDRが位置する鎖によっても識別される。従って、VH CDR3またはCDR-H3は、それが見出される抗体重鎖の可変領域に位置する一方、VL CDR1またはCDR-L1は、それが見出される抗体軽鎖の可変領域に由来するCDR1である。
【0144】
「交差反応する」という用語は、本明細書で使用する場合、抗体を産生させた抗原とは別の抗原に結合する、抗体の能力を指す。いくつかの実施形態では、交差反応性は、抗体が産生された抗原の種とは異なる種由来の抗原に結合する抗体の能力を指す。非限定的な例として、ヒトTfRペプチドに対して産生される本明細書に記載の抗TfR抗体は、TfRオルソログ(例えば、サル)との交差反応性を示し得る。
【0145】
「有効量」という語句は、(i)特定の疾患、状態もしくは障害を治療または予防するか、(ii)特定の疾患、状態もしくは障害の、1つ以上の症状を減弱、改善もしくは除去するか、または(iii)本明細書に記載の特定の疾患、状態もしくは障害の、1つ以上の症状の発症を予防または遅延化させる、化合物の量を意味する。
【0146】
「エフェクター機能」は、抗体アイソタイプにより様々である、抗体のFc領域に起因し得る生物活性を指す。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合及び補体依存性細胞傷害作用(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害作用(ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御、ならびにB細胞活性化が挙げられる。
【0147】
「エピトープ」という用語は、抗体が結合する抗原分子上の特定の部位を指す。抗体が結合するエピトープは、当該技術分野で公知のエピトープビニング法、例えばペアワイズコンビナトリアル法によって決定することができる。いくつかの実施形態において、抗体が結合する抗原分子上の特定の部位は、ヒドロキシルラジカルフットプリント法によって決定される。
【0148】
「発現」は、内在性遺伝子、導入遺伝子の細胞における転写及び/または翻訳、ならびにセンス(mRNA)または機能性RNAの転写及び安定な蓄積を指す。アンチセンス構築物の場合、発現は、アンチセンスDNAのみの転写を指し得る。発現はまた、タンパク質の産生を指し得る。
【0149】
「Fab」断片(F(ab)とも呼ばれる)はまた、軽鎖定常領域及び重鎖定常領域(CH1)を含む。例えば、抗体のパパイン消化は、2種類の断片:単一の抗原結合ドメインとして働く重鎖及び軽鎖の可変領域を含む、Fab断片と呼ばれる抗原結合断片:及び結晶化しやすいため「Fc」と呼ばれる残りの部分を産生する。Fab’断片は、抗体のヒンジ領域由来の1つ以上のシステイン残基を含む重鎖CH1領域のカルボキシル末端に由来するいくつかの残基も有する点で、Fab断片とは異なる。しかしながら、Fab’断片は、共に単一の抗原結合ドメインとして働く重鎖及び軽鎖の可変領域を含む抗原結合断片であるという点で、Fabと構造的に等価である。本明細書では、単一の抗原結合ドメインとして機能する重鎖及び軽鎖の可変領域を含み、パパイン消化によって得られるものと同等である抗原結合断片を、プロテアーゼ消化によって産生される抗体断片と同一でない場合であっても、「Fab様抗体」と称する。Fab’-SHは、その定常領域に遊離チオール基を有する1つ以上のシステイン残基を有するFab’である。F(ab’)断片は、F(ab’)2のヒンジ領域内のシステイン残基間のジスルフィド結合を切断することによって生成される。他の化学的に架橋された抗体断片も当該技術分野の当業者に公知である。抗体のペプシン消化は、2つの断片を生じる。一方は、2つの抗原結合ドメインを含み、抗原と交差反応することができるF(ab’)2断片であり、他方は残りの断片(pFc’と呼ばれる)である。本明細書では、ペプシン消化によって得られたものと同等の抗体断片を、2つの抗原結合ドメインを含み、抗原と交差反応することができる場合、「F(ab’)2様抗体」と称する。このような抗体断片は、例えば遺伝子工学によっても産生することができる。
【0150】
本明細書における「Fc領域」または「Fcポリペプチド」という用語は、構造ドメインとしてのIgフォールドを特徴とする免疫グロブリン重鎖ポリペプチドのC末端領域を定義するために使用される。Fc領域は、少なくともCH2ドメイン及び/またはCH3ドメインを含む定常領域の一部を含み、ヒンジ領域の少なくとも一部を含み得る。この用語は、天然配列Fc領域及びバリアントFc領域を含む。一実施形態では、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226から、またはPro230から、重鎖のカルボキシル末端に及ぶ。しかしながら、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在する場合もあれば、しない場合もある。本明細書において別段明記されない限り、Fc領域または定常領域内のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991に記載される、EUインデックスとも呼ばれるEU番号付けシステムに従う。一般に、Fc領域は可変領域を含有しない。
【0151】
「FcRn」という用語は、胎児性Fc受容体を指す。FcポリペプチドのFcRnへの結合は、Fcポリペプチドのクリアランスを低下させ、血清半減期を延長する。ヒトFcRnタンパク質は、主要組織適合性(MHC)クラスIタンパク質に類似した約50kDaのサイズのタンパク質と、約15kDaのサイズのβ2-ミクログロブリンからなるヘテロ二量体である。
【0152】
本明細書で使用される場合、「FcRn結合部位」は、FcRnに結合するFcポリペプチドの領域を指す。ヒトIgGでは、EUインデックスを使用して付番したFcRn結合部位には、T250、L251、M252、I253、S254、R255、T256、T307、E380、M428、H433、N434、H435及びY436が含まれる。これらの位置は、配列番号1の位置20~26、77、150、198及び203~206に対応する。
【0153】
本明細書で使用する場合、「天然FcRn結合部位」は、FcRnに結合し、かつFcRnに結合する天然Fcポリペプチドの領域と同じアミノ酸配列を有するFcポリペプチドの領域を指す。
【0154】
「フレームワーク」または「FR」は、種内で比較的保存されている超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般に、4つのFRドメイン、FR1、FR2、FR3、及びFR4からなる。したがって、HVR及びFR配列は、一般に、VH(またはVL)において次の配列で現れる:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
【0155】
「完全長抗体」、「インタクトな抗体」、及び「全抗体」という用語は、本明細書で、天然抗体構造と実質的に同様の構造を有する、または本明細書に定義されるFc領域を含有する重鎖を有する、抗体を指すように交換可能に使用される。
【0156】
本明細書で使用される「融合タンパク質」または「抗体融合タンパク質」は、IDS酵素、IDS酵素バリアント、またはその触媒活性断片に連結または融合された抗TfR抗体(例えば、抗ヒトTfR抗体)を指す。本明細書に記載されるように、特定の実施形態では、IDS酵素、IDS酵素バリアント、またはその触媒活性断片(集合的に「IDSアミノ酸配列」と称する)は、重鎖のC末端に連結され得る(すなわち、重鎖融合ポリペプチド)。抗体内の一方または両方の重鎖は、IDSアミノ酸配列に連結され得る。特定の実施形態では、融合タンパク質は、IDSアミノ酸配列に連結された1つの重鎖を含む抗TfR抗体を含む。特定の他の実施形態において、融合タンパク質は、両方の重鎖がそれぞれ独立してIDSアミノ酸配列に連結されている抗TfR抗体を含み得る。IDS酵素、IDS酵素バリアントまたはその触媒活性断片は、ペプチド結合またはポリペプチドリンカーによって抗TfR抗体に連結され得る。
【0157】
本明細書で使用される「融合ポリペプチド」または「重鎖融合ポリペプチド」は、IDS酵素、IDS酵素バリアント、またはその触媒活性断片に連結された(例えば、融合した)重鎖アミノ酸配列を指す。重鎖融合ポリペプチドは、ペプチド結合またはポリペプチドリンカーによってIDS酵素、IDS酵素バリアントまたはその触媒活性断片に連結され得る。
【0158】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、及び「宿主細胞培養物」という用語は、交換可能に使用され、外因性核酸が導入された細胞を指し、かかる細胞の子孫を含む。宿主細胞には、初代形質転換細胞及び継代の数に関わらずそれに由来する子孫を含む、「形質転換体」及び「形質転換細胞」が含まれる。子孫は、核酸含量において親細胞と完全に同一でない場合があるが、突然変異を含有し得る。元々形質転換された細胞においてスクリーニングまたは選択されたものと同じ機能または生物活性を有する突然変異体子孫が、本明細書に含まれる。
【0159】
「ヒト抗体」または「完全ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞により産生された抗体、またはヒト抗体レパートリーもしくは他のヒト抗体コード配列を利用する非ヒト源に由来する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を所有するものである。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を具体的に除外する。
【0160】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免役グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択において最も一般的に生じるアミノ酸残基を代表する、フレームワークである。一般に、ヒト免役グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列の下位集団から行われる。一般に、配列の下位集団は、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication 91-3242,Bethesda MD(1991),vols.1-3にあるような下位集団である。一実施形態において、VLについて、下位集団は、上記のKabatらにあるような下位集団カッパIである。一実施形態において、VHについて、下位集団は、上記のKabatらにあるような下位集団IIIである。
【0161】
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVRからのアミノ酸残基及びヒトFRからのアミノ酸残基を含む、キメラ抗体を指す。特定の実施形態において、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むことになり、そのHVR(例えば、CDR)の全てまたは実質的に全てが、非ヒト抗体に対応し、そのFRの全てまたは実質的に全てが、ヒト抗体のそれらに対応する。ヒト化抗体は任意に、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部分を含んでもよい。抗体、例えば非ヒト抗体の、「ヒト化型」は、ヒト化を経た抗体を指す。
【0162】
「超可変領域」または「HVR」という用語は、本明細書で使用される場合、配列中で超可変であり、及び/または構造的に定義されたループ(「超可変ループ」)を形成する、抗体可変ドメインの領域の各々を指す。一般に、天然4本鎖抗体は、6つのHVRを含み、3つはVH(H1、H2、H3)中にあり、3つはVL(L1、L2、L3)中にある。HVRは一般に、超可変ループからの及び/または「相補性決定領域」(CDR)からのアミノ酸残基を含み、このうち後者が、配列可変性が最も高く、及び/または抗原認識に関与する。例示的な超可変ループは、アミノ酸残基26~32(L1)、50~52(L2)、91~96(L3)、26~32(H1)、53~55(H2)、及び96~101(H3)において生じる。(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987)。)例示的なCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3)は、アミノ酸残基24~34(L1)、50~56(L2)、89~97(L3)、31~35B(H1)、50~65(H2)、及び95~102(H3)において生じる。(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)。)VH中のCDR1を除いて、CDRは一般的に超可変ループを形成するアミノ酸残基を含む。CDRはまた、抗原に接触する残基である、「特異性決定残基」または「SDR」も含む。SDRは、短縮型(abbreviated)CDR、またはa-CDRと呼ばれるCDRの領域内に含有される。例となるa-CDR(a-CDR-L1、a-CDR-L2、a-CDR-L3、a-CDR-H1、a-CDR-H2、及びa-CDR-H3)は、アミノ酸残基L1の31~34、L2の50~55、L3の89~96、H1の31~35B、H2の50~58、及びH3の95~102において生じる。(Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)参照)。別途指示されない限り、可変ドメインにおけるHVR残基及び他の残基(例えば、FR残基)は、本明細書において上記のKabatらに従って番号付けされる。
【0163】
2つ以上のポリペプチド配列との関連における「同一の」または「同一性」パーセントという用語は、配列比較アルゴリズムを使用して、または手動アラインメント及び目視検査により測定した場合に、比較ウィンドウまたは指定された領域にわたり最大限一致するように比較及びアラインメントされた場合に、特定の領域にわたって、同一であるかまたは特定のパーセンテージ、例えば、少なくとも60%の同一性、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%以上同一であるアミノ酸残基を有する、2つ以上のポリペプチド配列または部分配列を指す。
【0164】
ポリペプチドの配列比較については、通常、1つのアミノ酸配列が候補配列と比較する参照配列として機能する。アラインメントは、当業者に利用可能な様々な方法、例えば、視覚によるアラインメントを用いて、または既知のアルゴリズムを用いた公開されているソフトウェアを用いて行い、最大のアラインメントを達成することができる。かかるプログラムとしては、BLASTプログラム、ALIGN、ALIGN-2(Genentech,South San Francisco,Calif.)、またはMegalign(DNASTAR)が挙げられる。最大のアラインメントを達成するためにアラインメントに使用されるパラメータは、当業者によって決定され得る。本出願の目的で、ポリペプチド配列の配列比較に関しては、2種のタンパク質配列をデフォルトのパラメータで整列させるためのBLASTPアルゴリズム標準タンパク質BLASTが使用される。
【0165】
ポリペプチド配列における所与のアミノ酸残基の特定との関連で使用される場合の「~に対応する」、「~に準拠して決められる」、または「~に準拠してナンバリングされる」という表現は、該所与のアミノ酸配列が最大に整列され、特定の参照配列と比較される場合の該参照配列の残基の位置を指す。参照配列に整列されるポリペプチドは、該参照配列と同じ長さである必要はない。
【0166】
本明細書で使用される「イズロン酸スルファターゼ」、「イズロン酸-2-スルファターゼ」または「IDS」は、グリコサミノグリカンヘパランスルフェート及びデルマタンスルフェートのリソソーム分解に関与する酵素であるイズロン酸2-スルファターゼ(EC 3.1.6.13)を指す。IDSの欠損は、ハンター症候群としても知られるムコ多糖症IIに関連する。本明細書で使用される「IDS」または「IDS酵素」という用語は、任意で抗TfR抗体を含む融合タンパク質の成分として、触媒活性であり、野生型IDS及び対立遺伝子及びスプライス変異体を含む機能的バリアント、ならびにその触媒活性断片を包含する。カノニカル配列と呼ばれるヒト配列であるヒトIDSアイソフォームIの配列は、UniProtエントリーP22304で入手可能であり、Xq28でヒトIDS遺伝子によってコードされる。完全長配列は、配列番号1として示される。本明細書で使用される「成熟」IDS配列は、天然に存在する完全長ポリペプチド鎖のシグナル及びプロペプチド配列を欠くポリペプチド鎖の形態を指す。成熟ヒトIDSポリペプチドのアミノ酸配列は、完全長ヒト配列のアミノ酸34~550に対応する配列番号2として示される。本明細書で使用される「切断型」IDS配列は、天然に存在する完全長ポリペプチド鎖の触媒活性な断片を指す。例示的な切断型ヒトIDSポリペプチドのアミノ酸配列は、完全長ヒト配列のアミノ酸26~550に対応する配列番号3として示される。ヒトIDSの構造は十分に特徴づけられている。例示的な構造はPDBアクセッションコード5FQLの下で入手可能である。構造はNat.Comm.8:15786 doi:10.1038/ncomms15786,2017にも記載されている。チンパンジー(UniProtエントリーK7BKV4)及びアカゲザル(UniProtエントリーH9FTX2)を含む非ヒト霊長類IDS配列も記載されている。マウスIDS配列は、UniprotエントリーQ08890で入手可能である。IDSバリアントは、例えば、同一の条件下でアッセイした場合、対応する野生型IDSまたはその断片の活性の少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%を有する。触媒活性IDS断片は、例えば、同一の条件下でアッセイした場合、対応する完全長IDSまたはそのバリアントの活性の少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%を有する。
【0167】
「IDS酵素バリアント」とは、野生型IDS酵素またはその断片の機能的バリアント、例えば対立遺伝子バリアント及びスプライスバリアントを指し、IDS酵素バリアントは、例えば、同一条件下でアッセイした場合、対応する野生型IDS酵素またはその断片の活性の少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%を有する。
【0168】
「免疫コンジュゲート」は、1つ以上の異種性分子(複数可)にコンジュゲートされる抗体である。
【0169】
本明細書で互換的に使用される「個体」、「対象」、及び「患者」という用語は、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類(例えば、ラット、マウス及びモルモット)、ウサギ、ウシ、ブタ、ウマ、及び他の哺乳動物種を含むがこれらに限定されない哺乳動物を指す。本明細書中に記載される特定の実施形態において、対象はヒト対象である。特定の実施形態では、対象は男性対象である。
【0170】
重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、無傷抗体には、異なる「クラス」が割り当てられ得る。無傷免疫グロブリン抗体には、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMの5つの主要なクラスが存在し、これらのうちのいくつかは、「サブクラス」(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、及びIgA2にさらに分けられ得る。抗体の異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元構成は、周知である。Ig形態には、ヒンジ修飾またはヒンジなし形態が含まれる(Roux et al.(1998)J.Immunol.161:4083-4090、Lund et al.(2000)Eur.J.Biochem.267:7246-7256、US 2005/0048572、US 2004/0229310)。
【0171】
「単離された」抗体とは、その天然環境の成分から分離された抗体である。いくつかの実施形態において、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動法(IEF)、キャピラリー電気泳動法)またはクロマトグラフ(例えば、イオン交換もしくは逆相HPLC)によって決定される、90%、95%または99%を超える純度に精製される。抗体の純度の評価のための方法の概説については、例えば、Flatman et al.,J.Chromatogr.B848:79-87(2007)を参照されたい。
【0172】
「単離された」核酸とは、その天然環境の成分から分離された核酸分子を指す。単離核酸には、核酸分子を通常含有する細胞内に含有される核酸分子が含まれるが、その核酸分子は、染色体外に、またはその天然の染色体位置とは異なる染色体位置に、存在する。
【0173】
「抗TfR抗体をコードする単離核酸」とは、抗体重鎖及び軽鎖(またはそれらの断片)をコードする1つ以上の核酸分子を指し、単一のベクターまたは別個のベクター内のそのような核酸分子(複数可)を含み、そのような核酸分子(複数可)は、宿主細胞内の1つ以上の位置に存在する。
【0174】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体の集団から得られた抗体を指し、すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る天然に存在する変異の可能性を除いて同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原部位を対象としている。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対して指向される異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して指向される。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、それらが他の抗体が混入することなく合成され得るという点で有利である。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体集団から得られるという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものと解釈されるべきではない。例えば、本明細書に記載のモノクローナル抗体は、Kohler et al.(1975)Nature 256:495が初めて述べたハイブリドーマ法によって作製してもよく、または組換えDNA法(例えば、US 4816567、US 5807715を参照されたい)によって作製してもよい。モノクローナル抗体はまた、例えば、Clackson et al.(1991)Nature,352:624-628、Marks et al.(1991)J.Mol.Biol.,222:581-597に記載の技術を用いてファージ抗体ライブラリから単離し得る。
【0175】
本明細書におけるモノクローナル抗体には、重鎖及び/または軽鎖の一部分が、特定の種に由来するか、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体内の対応する配列と同一または相同である一方で、鎖(複数可)の残りが、別の種に由来するか、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同である「キメラ」抗体、ならびにそのような抗体の断片を具体的に含み、これは、それらが所望される生物活性を呈する限りにおいてである(US 4816567、及びMorrison et al.(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855)。本明細書において対象となるキメラ抗体としては、非ヒト霊長類(例えば、旧世界ザル、類人猿など)に由来する可変ドメイン抗原結合配列と、ヒト定常領域配列とを含む、「霊長類化」抗体が挙げられる。
【0176】
本明細書で使用される場合、変異体ポリペプチドまたは変異体ポリヌクレオチドに関する「変異体」という用語は、「バリアント」と互換的に使用される。変異には、置換、挿入、及び欠失が含まれ得る。
【0177】
「天然抗体」は、様々な構造を有する、自然発生免役グロブリン分子を指す。例えば、天然IgG抗体は、ジスルフィド結合されている2つの同一の軽鎖及び2つの同一の重鎖から構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端まで、各重鎖は、可変重ドメインまたは重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)、続いて3つの定常ドメイン(CH1、CH2、及びCH3)を有する。同様に、N末端からC末端まで、各軽鎖は、可変軽ドメインまたは軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)、続いて定常軽(CL)ドメインを有する。抗体の軽鎖には、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの型うちの1つが割り当てられ得る。
【0178】
「患者から試料を得ること」、「患者から得られる」という用語及び同様の表現は、患者から直接試料を得ること、ならびに中間個体を介して患者から間接的に試料を得ること(例えば、患者から試料を得た看護師から試料を得た宅配業者から試料を得ること)を指すために使用される。
【0179】
「添付文書」という用語は、そのような製品の使用条件、適応症、使用法、投与量、投与、併用療法、禁忌症についての情報、及び/またはその使用に関する警告を含有する、研究ツールまたは治療製品のパッケージに通例含まれる指示書を指すように使用される。
【0180】
「医薬製剤」という用語は、調製物の中に含有される活性成分の生物活性が有効になるような形態であり、製剤が投与されるであろう対象にとって許容できないほど有毒である追加の構成成分を何ら含有しない、調製物を指す。
【0181】
「薬学的に許容され得る賦形剤」という用語は、限定されないが、緩衝液、担体、または保存剤などの、ヒトまたは動物における使用に生物学的または薬理学的に適合する非活性薬学的成分を指す。
【0182】
「ポリペプチド」及び「ペプチド」という用語は本明細書において互換的に使用され、単一鎖中のアミノ酸残基のポリマーを指す。用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工的な化学的模倣体であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマー及び非天然に生じるアミノ酸ポリマーに適用される。アミノ酸ポリマーは、完全にL-アミノ酸、完全にD-アミノ酸、またはLアミノ酸及びDアミノ酸の混合物を含み得る。
【0183】
本明細書で使用する場合、「タンパク質」という用語は、単一鎖ポリペプチドの1つのポリペプチドまたは二量体(すなわち、2つ)または多量体(すなわち、3つ以上)のいずれかを指す。タンパク質の一本鎖ポリペプチドは、共有結合、例えば、ジスルフィド結合によって、または非共有相互作用によって結合され得る。
【0184】
「ポリヌクレオチド」及び「核酸」という用語は、交換可能に、任意の長さのヌクレオチド鎖を指し、DNA及びRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドもしくは塩基、及び/またはそれらの類似体、あるいは、DNAまたはRNAポリメラーゼによって鎖の中に組み込むことができる任意の基質であり得る。ポリヌクレオチドは、修飾ヌクレオチド、例えば、メチル化ヌクレオチド及びそれらの類似体を含み得る。本明細書で企図されるポリヌクレオチドの例としては、一本鎖及び二本鎖DNA、一本鎖及び二本鎖RNA、ならびに一本鎖ならびに二本鎖DNA及びRNAの混合物を有するハイブリッド分子が挙げられる。
【0185】
本明細書で使用する場合、「結合親和性」という用語は、2つの分子間、例えば、ポリペプチド上の単一の結合部位と、それが結合する標的、例えばトランスフェリン受容体との間の非共有結合相互作用の強さを指す。したがって、例えば、別段示されない限り、または文脈から明らかでない限り、この用語はポリペプチドとその標的との間の1:1の相互作用を指す場合がある。結合親和性は、平衡解離定数(KD)を測定することにより定量化することができ、これは、結合速度定数(ka、時間-1M-1)で除した解離速度定数(kd、時間-1)を指す。KDは、複合体形成及び解離の動態の測定、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)方法、例えばBiacore(商標)システム、KinExA(登録商標)などの結合平衡除外法アッセイ、及びBioLayer干渉法(例えば、ForteBio(登録商標)Octet(登録商標)プラットフォームを使用する)を使用することによって決定され得る。本明細書で使用される場合、「結合親和性」は、ポリペプチドとその標的との間の1:1の相互作用を反映するものなどの公式の結合親和性のみならず、強力な結合を反映し得るKDが算出される見かけの親和性も含む。
【0186】
本明細書で使用される場合、本明細書に記載のTfR結合抗体またはそのような抗体を含む融合タンパク質に言及する場合、標的、例えばTfRに「特異的に結合する」または「選択的に結合する」という用語は、TfR結合抗体または融合タンパク質が、構造的に異なる標的に結合するよりも高い親和性、高いアビディティー、及び/または高い持続時間で標的に結合する結合反応を指す。典型的な実施形態では、TfR結合抗体または融合タンパク質は、同じ親和性アッセイ条件下でアッセイした場合、無関係の標的と比較して、特定の標的、例えばTfRに対して少なくとも5倍、10倍、50倍、100倍、1,000倍、10,000倍、またはそれを超える親和性を有する。本明細書で使用される場合、特定の標的(例えば、TfR)に「特異的結合」、「特異的に結合すること」または「特異的である」という用語は、例えば、例えば10-4M以下、例えば10-5M、10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、または10-12Mの、それが結合する標的の平衡解離定数KDを有する分子によって示され得る。いくつかの実施形態では、TfR結合抗体または融合タンパク質は、種間で保存されている(例えば、種間で構造的に保存されている)、例えば、非ヒト霊長類とヒト種との間で保存されている(例えば、非ヒト霊長類とヒト種との間で構造的に保存されている)TfR上のエピトープに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、TfR結合抗体または融合タンパク質は、ヒトTfRに排他的に結合し得る。
【0187】
本明細書で使用される、「トランスフェリン受容体」または「TfR」とは、トランスフェリン受容体タンパク質1を指す。ヒトトランスフェリン受容体1ポリペプチド配列は、配列番号26で規定される。他の種に由来するトランスフェリン受容体タンパク質1の配列も知られている(例えば、チンパンジー、アクセッション番号XP_003310238.1、アカゲザル、NP_001244232.1、イヌ、NP_001003111.1、畜牛、NP_001193506.1、マウス、NP_035768.1、ラット、NP_073203.1、及びニワトリ、NP_990587.1)。「トランスフェリン受容体」という用語はまた、例示的な参照配列、例えば、トランスフェリン受容体タンパク質1染色体座における遺伝子によってコードされるヒト配列の対立遺伝子バリアントも包含する。完全長トランスフェリン受容体タンパク質は、短いN末端細胞内領域、膜貫通領域、及び大きな細胞外ドメインを含む。細胞外ドメインは、3つのドメイン、すなわち、プロテアーゼ様ドメイン、ヘリカルドメイン、及びアピカルドメインによって特徴づけられる。ヒトトランスフェリン受容体1のアピカルドメイン配列は、配列番号27に記載される。
【0188】
本明細書で使用されるとき、「治療」(及び「治療する」または「治療すること」などのその文法上の変形)とは、治療されている個体の自然経過を変更するための臨床介入を指し、予防のために、または臨床病理過程中のいずれかに実施され得る。治療の望ましい効果には、疾患の発生または再発の予防、症状の緩和、疾患の任意の直接的または間接的病理学的帰結の縮小、疾患進行速度の減少、病状の回復または寛解、及び緩解または予後の改善が含まれるが、これらに限定されない。
【0189】
本明細書に開示される物質/分子の「治療有効量」は、個体の疾患状態、年齢、性別及び体重、ならびに個体において所望の応答を誘発する物質/分子の能力などの要因に従って変化し得る。治療有効量は、物質/分子の任意の毒性または有害作用に治療的に有益な作用が勝る量を包含する。「予防上有効な量」は、所望の予防結果を達成するために必要な用量及び期間に有効な量を指す。典型的であって必ずしもそうではないが、疾患の早期段階前または早期段階で予防用量が対象において用いられるため、予防上有効な量は、治療上有効な量よりも少ない。
【0190】
「形質転換」という用語は、遺伝的に安定な遺伝をもたらす、宿主細胞のゲノムへの核酸断片の移入を指す。形質転換された核酸断片を含む宿主細胞を「トランスジェニック」細胞と称し、トランスジェニック細胞を含む生物は「トランスジェニック生物」と称する。
【0191】
「形質転換された」、「トランスジェニック」及び「組換え」は、異種核酸分子が導入された宿主細胞または生物を指す。核酸分子は、当該技術分野で一般的に知られている方法を使用してゲノムに安定に組み込むことができる。PCRの公知の方法としては、ペアードプライマー、ネステッドプライマー、単一特異的プライマー、縮重プライマー、遺伝子特異的プライマー、ベクター特異的プライマー、部分的ミスマッチプライマーなどを使用する方法が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、「形質転換された」、「形質転換体」及び「トランスジェニック」細胞は、形質転換プロセスを経ており、その染色体に組み込まれた外来遺伝子を含み得る。「非形質転換」という用語は、形質転換プロセスを経ていない正常細胞を指す。
【0192】
「トランスジェニック」生物は、発現ベクターを含む1つ以上の細胞を有する生物である。
【0193】
「可変領域」、「可変ドメイン」、「V領域」または「Vドメイン」という用語は、抗原への抗体の結合に関与する抗体の重鎖または軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれ、VH及びVL)は一般に、同様の構造を有し、各ドメインは、4つの保存されたフレームワーク領域(FR)及び3つの超可変領域(HVR)を含む。(例えばKindt et al.Kuby Immunology,6th ed.,W.H.Freeman and Co.,page 91(2007)を参照されたい。)抗原結合特異性を付与するには、単一のVHまたはVLドメインで十分であり得る。さらに、抗原に結合する抗体からのVHまたはVLドメインを使用して、それぞれ、相補的VLまたはVHドメインのライブラリをスクリーニングして、特定の抗原に結合する抗体を単離してもよい。例えば、Portolano et al.,J.Immunol.150:880-887(1993)、Clarkson et al.,Nature 352:624-628(1991)を参照されたい。
【0194】
「バリアント」ポリペプチドとは、天然タンパク質のN末端及び/またはC末端への1つ以上のアミノ酸の欠失(いわゆる切断)または付加、天然タンパク質の1つ以上の部位における1つ以上のアミノ酸の欠失または付加、または天然タンパク質の1つ以上の部位における1つ以上のアミノ酸の置換による天然タンパク質に由来するポリペプチドを意図する。そのようなバリアントは、例えば、遺伝子多型またはヒト操作から生じ得る。そのような操作のための方法は、当該技術分野で一般的に知られている。
【0195】
したがって、本明細書に記載されるポリペプチドは、アミノ酸の置換、欠失、切断及び挿入を含む様々な方法で変更され得る。そのような操作のための方法は、当該技術分野において一般的に公知である。例えば、ポリペプチドのアミノ酸配列バリアントは、DNA中の突然変異によって調製することができる。突然変異誘発及びヌクレオチド配列変更のための方法は、当該技術分野で周知である。
【0196】
「保存的置換」、「保存的変異」、または「保存的に修飾されたバリアント」という用語は、類似の特徴を有すると分類され得る別のアミノ酸でのアミノ酸の置換を生じる改変を指す。このようにして定義される保存的アミノ酸群の分類の例としては、Glu(グルタミン酸またはE)、Asp(アスパラギン酸またはD)、Asn(アスパラギンまたはN)、Gln(グルタミンまたはQ)、Lys(リジンまたはK)、Arg(アルギニンまたはR)、及びHis(ヒスチジンまたはH)を含めた「荷電/極性群」、Phe(フェニルアラニンまたはF)、Tyr(チロシンまたはY)、Trp(トリプトファンまたはW)、及び(ヒスチジンまたはH)を含めた「芳香族群」、ならびにGly(グリシンまたはG)、Ala(アラニンまたはA)、Val(バリンまたはV)、Leu(ロイシンまたはL)、Ile(イソロイシンまたはI)、Met(メチオニンまたはM)、Ser(セリンまたはS)、Thr(トレオニンまたはT)、及びCys(システインまたはC)を含めた「脂肪族群」を挙げることができる。各群内で、下位群もまた識別され得る。例えば、荷電または極性アミノ酸の群は、Lys、Arg、及びHisを含む「正に荷電した下位群」、Glu及びAspを含む「負に荷電した下位群」、ならびにAsn及びGlnを含む「極性下位群」を含めた下位群に分割され得る。別の例では、該芳香族または環状群は、Pro、His、及びTrpを含む「窒素環下位群」、ならびにPhe及びTyrを含む「フェニル下位群」を含めた下位群に分割され得る。別のさらなる例では、該脂肪族群は、下位群、例えば、Val、Leu、Gly、及びAlaを含む「脂肪族非極性下位群」ならびにMet、Ser、Thr、及びCysを含む「脂肪族微極性下位群」に分割され得る。保存的変異の分類の例としては、上記下位群内のアミノ酸、例えば、限定されないが、正の荷電が維持され得るようにLysによるArgのアミノ酸置換、またはその逆、負の荷電が維持され得るように、GluによるAspのアミノ酸置換、またはその逆、遊離の-OHが維持され得るように、SerによるThrのアミノ酸置換、またはその逆、及び遊離の-NH2が維持され得るように、GlnによるAsnのアミノ酸置換、またはその逆を含む。いくつかの実施形態では、疎水性アミノ酸は、天然に存在する疎水性アミノ酸で、例えば、活性部位を置き換え、疎水性を保存する。
【0197】
本明細書で使用される「ベクター」という用語は、連結している別の核酸を増殖することが可能な核酸分子を指す。この用語には、自己複製核酸構造としてのベクター、ならびに導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターが含まれる。特定のベクターは、作動的に連結された核酸の発現を導くことが可能である。かかるベクターは、本明細書で「発現ベクター」と称される。
【0198】
「野生型」は、正常な遺伝子、またはいかなる既知の突然変異も有さずに自然界で見出される生物を指す。
【0199】
以下の実施例は、非限定的であることが意図される。
【実施例】
【0200】
実施例1:IgG:IDSの構築
クローニング及びアーキテクチャ
IgG:IDS分子は、2つのIDS酵素に連結されたTfR抗体を含有する。1つのIDS酵素を、ペプチドリンカーによってTfR抗体重鎖の各Fc部のC末端に連結する(
図1)。IgG:IDS中の抗体定常領域はヒトIgG1であった。重鎖IDS配列は配列番号17または配列番号18で表され、軽鎖配列は配列番号5で表される。
【0201】
タンパク質発現
IgG:IDS構築物を、製造者の説明書に従ってExpiCHO細胞(Thermo Fisher Scientific)の一過性トランスフェクションによって発現させた。培養物を、IgG:IDS(重鎖及び軽鎖)及びSUMF1 cDNAを2:2:1の比でコードするプラスミドで共トランスフェクションした。
【0202】
タンパク質精製
IgG:IDSを、一連のクロマトグラフィー工程によって無血清CHO培養物から均一になるまで精製した。IgG:IDSを、プロテインA、続いてアニオン交換クロマトグラフィーを使用して親和性精製した。分析的サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)及び/またはマイクロキャピラリー電気泳動及びLCMSによって評価されるように、高純度及び負に帯電した翻訳後修飾(PTM)が比較的濃縮された(例えば、約12~19mol/molのシアル酸:融合タンパク質)最終画分の両方をプールし、濃縮し、20mMリン酸ナトリウム、pH6.5及び130mM NaClに透析した。調製物を使用前に4℃または-80℃で保存し、SEC、比活性及びエンドトキシン含有量によって日常的に分析した。
【0203】
実施例2:IgG:IDSの特性評価
表面プラズモン共鳴(SPR)を用いたKD決定
ヒトトランスフェリン受容体(hTfR)に対するIgG:IDSの親和性を、以前に記載されたものと同様の二つの方法を使用して、Biacore(商標)T200装置での表面プラズモン共鳴によって決定した(Kariolis et al.2020.Sci Transl Med 12(545):eaay1359)。方法1では、一価TfR結合親和性を評価するために、IgG:IDSをプロテインAコーティングBiacore(商標)シリーズS CM5センサーチップ上に捕捉し、hTfRのアピカルドメインの段階希釈物(hTfRアピカル)を捕捉した試料上に注入した。方法2では、IgG:IDSの見かけのhTfR結合親和性を評価するために、ビオチン化完全長hTfRをストレプトアビジンコーティングCM5センサーチップに固定化した後、IgG:IDSの段階希釈物を注入した。両方の方法について、単一サイクル速度論モードを試料注入(会合時間、90秒、解離時間、600秒)に使用し、Biacore T200評価ソフトウェアv3.0を使用して結合親和性を計算した。
【0204】
SPRを使用して、IgG:IDSはTfRに二価で結合することができ、受容体密度によって強く影響されることが観察された。IgG:IDSは、hTfRアピカルに対して2.6nMの一価親和性及び完全長受容体に対して約100pMの見かけの親和性を有するとして測定した。
【0205】
In vitro IDS活性
IgG:IDSの比活性を、前述のように人工基質を使用した二段階蛍光酵素アッセイで測定した(Ullman et al.2020.Sci Transl Med 12(545):eaay 1163)。簡潔に記載すると、4-メチルウンベリフェロン(脱離基)標準曲線を線形回帰によってフィッティングして生成物の量を計算し、全基質切断の10%未満であることを確認した。比活性pmol生成物/分/タンパク質mgを計算した。
【0206】
in vitro活性アッセイに基づいて、IgG:IDSの比活性は非常に活性であり、約4400pmolの生成物/分/タンパク質mgと測定された(n=5の測定で平均)。
【0207】
マンノース-6-リン酸結合
ELISAプレートを、PBS中の1μg/mLのヒトカチオン非依存性マンノース6-リン酸受容体(ciM6PR、Uniprot P11717)の第9のドメインのFc融合物で4℃で一晩コーティングした。翌日、プレートを洗浄緩衝液(0.02%Tween(登録商標)-20を含むPBS)で3回洗浄し、ブロッキング緩衝液(0.02%Tween(登録商標)-20及び5%BSAを含むPBS)を各ウェルに添加した。ブロッキングは室温で1時間行った後、プレートを3回洗浄し、IgG:IDSを25nMの濃度でプレートの第1のカラムに添加した。プレート全体で3倍段階希釈を行った。結合反応の一次インキュベーションを室温で1時間行った。結合後、プレートを3回洗浄し、試料緩衝液で0.0625μg/mLに希釈したビオチン化抗IDS抗体を用いて結合を検出した。プレートを検出抗体と共に室温で1時間インキュベートし、次いで3回洗浄した。次いで、試料緩衝液で1:50,000に希釈したストレプトアビジン-HRPを各ウェルに添加した。プレートを室温で30分間インキュベートし、次いで3回洗浄した。ELISAを、TMB試薬を使用して発色させた。ELISAプレートをHighRes BioTek Synergyプレートリーダーで読み取り、450nmでの吸光度を記録した。
【0208】
ELISA結合アッセイに基づくと、マンノース-6-リン酸受容体へのIgG:IDSの結合は、約55~76pMのEC50と測定された。IgG:IDSの代表的な結合曲線を
図2に示す。
【0209】
実施例3:IgG:IDSの薬物動態学的特性評価
細胞効力を評価するためのS35-スルフェート蓄積アッセイ
IgG:IDSの細胞活性を、MPS II患者由来線維芽細胞において、35Sが新たに合成されたGAGに組み込まれる35Sパルスチェースアッセイを使用して評価した(Ullman et al.2020.Sci Transl Med 12(545):eaay1163)。MPS II患者(GM01928、GM12366、GM01583)の初代線維芽細胞をCoriellから入手した。細胞S35蓄積アッセイは、Lu及び共著者(Lu et al.2010.Bioconjug Chem 21:151-156)から改変した方法を使用して行った。簡潔に説明すると、線維芽細胞を96ウェルプレートに25,000細胞/ウェルで播種し、10%FBS(Sigma)を含むDMEM高グルコース(Gibco)中で増殖させた。3日間の培養後、培地を、10%透析ウシ胎児血清及び40mCi/mL[S35]硫酸ナトリウム(PerkinElmer)を補充した低スルフェートF12培地(Gibco)と96時間交換した。[S35]硫酸ナトリウムのインキュベーション後、細胞をIgG:IDSで処理した。24時間のインキュベーション後、培地を吸引し、細胞を冷PBSで洗浄し、0.01N NaOHで溶解した。組み込まれたS35をシンチレーションカウンティング(Microbeta Trilux)によって測定した。EC50曲線を、対数(アゴニスト)vs応答、可変勾配(4つのパラメータ)フィットを使用してPrismソフトウェアを使用して作成した。
【0210】
IgG:IDSは、このアッセイにおいて高活性であることが見出され、
35S標識基質の蓄積を減少させ、細胞EC50値は約16pM~23pMの範囲であった(表1参照)。データは、IgG:IDSが低pM範囲でMPS II患者由来細胞において効果的に内在化され、基質蓄積が減少したことを示している。IgG:IDSの代表的な細胞効力曲線(細胞株全体の平均)を
図3に示す。
【0211】
【0212】
マンノース-6-リン酸(M6P)及びシアル酸(SA)の液体クロマトグラフィー-質量分析
組換え精製IgG:IDSタンパク質(5μg)を50mM酢酸アンモニウム、pH7.2に緩衝液交換した。正規化された量のタンパク質を、内部標準として安定同位体標識(SIL)13C6マンノース-6-リン酸(SIL-M6P、Omicronbio Inc、カタログ番号、MAN-05、試料あたり62.5ng)及び13C3-シアル酸(SIL-SA、Omicronbio Inc、カタログ番号NEU-004、試料あたり200ng)でスパイクし、次いで、分析のために加水分解または消化した。M6Pを、振とうしながら90℃のヒーターブロックにおいて6.6Mトリフルオロ酢酸溶液150μLを使用して90分間タンパク質から加水分解した。次いで、高速真空試料をアセトニトリル(ACN)で1回洗浄し、乾燥させた。ACN:水(20:80、v:v)50μLに再懸濁した最終ペレットをLC-MS/MSによって分析した。SAを、SialEXO Enzyme(Genovis)によってタンパク質から消化した。簡潔に説明すると、タンパク質5μgを20ng/μLのSIL-SA 10μLと混合し、1M Tris緩衝液(pH7.5)3μLを添加し、MiliQ水で60μLにし、次いでSialEXO(10単位/μL)1μLを添加し、37℃で2時間インキュベートした。SA試料をさらなるプロセスなしで注入した。
【0213】
M6P及びSA分析は、UV/Vis及びQ Exactive Orbitrapエレクトロスプレーイオン化質量分析計(Thermo Scientific,CA,USA)に連結されたUHPLC Vanquish(Thermo Scientific,CA,USA)での液体クロマトグラフィーによって行った。試料をACQUITY UPLC BEH Amide 1.7mm、2.1×150mmカラム(Waters Corporation)に注入し、(A)0.1%ギ酸を含む水及び(B)0.1%ギ酸を含むアセトニトリルの移動相を用いた負イオン化モード質量分析によって、60%B、次いで1.8分で42%Bから開始し、2.2分で10%Bに低下させ、3分まで保持し、次いで60%Bまで上昇させ、4.5分まで保持する4.5分勾配を使用して分析した。流量は0.45mL/分であり、カラム温度は60℃である。
【0214】
M6P及びSIL-M6P内部標準を含むネガティブモード下での並行反応モニタリング(PRM)取得を使用してデータを収集した。包含リストは、M6P及びSIL-M6Pについてそれぞれ1.6~2.2分の259.0224及び265.0426(陰イオン)であり、SA及びSIL-SAについて、それぞれ1.0~1.6分の308.0992及び311.175(陰イオン)である。M6P/SIL-M6P及びSA/SIL-SAのAUC比を用いて、M6P及びSAの分子量を算出し、M6P:タンパク質のmol/mol及びSA:タンパク質のmol/molを求めた。
【0215】
IgG:IDSの測定されたM6P含有量は、約1.5mol/mol~2.3mol/molのM6P:タンパク質の範囲であった。IgG:IDSの測定されたシアル酸含有量は、SA:タンパク質の約15~16mol/molであった。
【0216】
実施例4:IgG:IDSの投与は脳及びCSFのGAGをIDS KO、TfRmu/huマウスにおいて減少させる。
材料及び方法
動物の管理
マウスを12時間の明/暗サイクル下で収容し、水及び標準的なげっ歯類飼料(LabDiet(登録商標)番号25502、照射)を自由に摂取させた。
【0217】
マウス系統
以前に記載されたB6NバックグラウンドのIds KOマウスは、The Jackson Laboratoriesから入手した(JAX系統024744)。マウス受容体にノックされたヒトTfRアピカルドメインを有するTfRmu/huKIマウス系統の開発及び特性決定は、以前に記載された(米国特許第10,143,187号)。TfRmu/hu雄マウスを雌のIdsヘテロ接合マウスに交配して、Ids KO、TfRmu/huKIマウスを作製した。この試験で使用したマウスは全て雄であった。
【0218】
IgG:IDSの薬物動態(PK)
2~3月齢のTfRmu/huKIマウス(n=3/群)に、1mg/kg、3mg/kgまたは10mg/kg体重のIgG:IDSを尾静脈を介して注射し、投与の0.5、4、8及び24時間後に屠殺した。最終試料採取のために、動物を腹腔内(i.p.)2.5%Avertinの注射を介して深く麻酔した。血清採取のために心臓穿刺を介して血液を採取し、室温で少なくとも30分間凝固させた。次いで、チューブを、4℃で7分間、12,700rpmで遠心分離した。血清を新鮮なチューブに移し、ドライアイス上で急速凍結した。蠕動ポンプ(Gilson Inc.Minipuls Evolution)を用いて動物に氷冷PBSを経心的に灌流し、脳及び肝臓を解剖した。肝臓及び脳組織(50mg)をドライアイス上で急速凍結し、以下に記載されるようにIDS/IDS ELISAのために調製した。
【0219】
PK分析のための組織調製
組織(50mg)を、Qiagen TissueLyzer IIを使用して27Hzで3分間2回、3mmステンレス鋼ビーズを用いて、組織重量で10倍体積の冷1%NP40溶解緩衝液(10%NP-40 Surfact-Amps界面活性剤溶液1mL、1×PBS 9mL、cOmpleteプロテアーゼ阻害剤1錠、PhosSTOPプロテアーゼ阻害剤1錠)中でホモジナイズした。次いで、ホモジネートを氷上で20分間インキュベートし、4℃で20分間14,000rpmで回転させた。得られた溶解物を単回使用アリコートに移し、-80℃で保存した。
【0220】
IDS:IDS ELISA及びPK分析
IgG:IDSを、イズロン酸-2-スルファターゼサンドイッチELISAを使用して血清、肝臓溶解物及び脳溶解物において測定した。384ウェルマキシソーププレート(Thermo、カタログ番号464718)を抗IDS抗体(R&D Systems、カタログ番号AF2449)で一晩コーティングし、翌日、カゼイン-PBS緩衝液(Thermo、カタログ番号37528)でブロッキングした。IgG:IDSを含有する試料をプレートに添加し、室温で1時間インキュベートした。その後の洗浄後、ビオチン化抗IDS抗体(R&D Systems、カタログ番号BAF2449)を添加して、固定化IgG:IDS及びIgG:IDSを捕捉した。次いで、ストレプトアビジン-西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート(Jackson Immuno Research、カタログ番号016-030-084)を用いてIDSサンドイッチを検出し、続いて、3,3’,5,5’テトラ-メチル-ベンジジン(TMB)基質(Thermo、カタログ番号34028)と共にインキュベートした。反応物を4N塩酸(Life Technologies、カタログ番号SS04)でクエンチし、プレートをプレート分光光度計で450nmの吸光度波長で読み取った。TMB発色は、試料中のIgG:IDSの濃度に正比例する。検量線は、0.00137nM~1nMのアッセイ範囲で5パラメータロジスティックフィットを使用して作成した。IgG:IDSの血清、肝臓及び脳への曝露は、Dotmaticsバージョン4.8(Bishop’s Stortford,UK)のVortexモジュールからのNCAを用いて計算した。標準偏差を有する半対数線形グラフ及び表形式の結果をPrism 8(GraphPad,San Diego,CA)でキュレートした。
【0221】
IgG:IDSの薬力学
2~3月齢のTfRmu/huKI(n=5/群)及びIds KO、TfRmu/huマウス(n=5/群)に、0、1mg/kg、3mg/kg、または10mg/kg体重のIgG:IDSの単回用量を尾静脈を介して投与し、投与の7日後に屠殺した。最終試料収集のために、動物を腹腔内2.5%Avertinの注射を介して深く麻酔した。CSF収集のために、動物の頭蓋骨の後部で矢状切開を行い、皮下組織及び筋肉を分離して大槽を露出させ、予め引張したガラス毛細管を使用して大槽を穿刺してCSFを収集した。CSFをLow Protein LoBindエッペンドルフチューブに移し、4℃で10分間遠心分離した。CSFを新鮮なチューブに移し、ドライアイス上で急速凍結した。420nmでの試料の吸光度を測定することによって、マウスCSFにおける血液汚染の欠如を確認した。血液、血清及び組織を上記のように得て、ドライアイス上で急速凍結した。
【0222】
薬力学的GAG分析のための組織及び液体製剤
50mgの組織を、Qiagen TissueLyzer IIを使用して30Hzで3分間、750μLの水中でホモジナイズした。ホモジネートを96ウェル深プレートに移し、96チップソニケーター(Q Sonica)を用いて10×1秒パルスで超音波処理した。超音波処理したホモジネートを2,500xgで4℃で30分間回転させた。得られた溶解物を清浄な96ウェル深プレートに移し、BCAを行って総タンパク質を定量化した。総タンパク質溶解物10μgまたはCSF 3μLをその後のHS/DS消化に使用した。消化を以下のようにPCRプレート中で行った:HS及びDSの内部標準混合物(合計20ng)を各試料に添加し、消化緩衝液中でヘパリナーゼI、II、III及びコンドリオチナーゼBと、30℃で振とうしながら3時間混合した。消化後、EDTAを各試料に添加し、混合物を95℃で10分間沸騰させた。消化後の試料を5分間回転させ、セルロースアセテートフィルタープレート(Millipore、MSUN03010)に移して5分間回転させた。得られたフロースルーをガラスバイアル中で等量のアセトニトリルと混合し、以下に記載されるように質量分析によって分析した。
【0223】
GAGの質量分析
GAGの定量化を、エレクトロスプレー質量分析(Sciex QTRAP 6500+,Sciex,Framingham,MA,USA)に連結した液体クロマトグラフィー(Shimadzu Nexera X2システム、Shimadzu Scientific Instrument,Columbia,MD,USA)によって行った。それぞれの分析について、試料をACQUITY UPLC BEH Amide 1.7mm,2.1×150mmカラム(Waters Corporation)に流速0.55mL/分、カラム温度55℃で注入した。移動相A及びBは、それぞれ10mMギ酸アンモニウム及び0.1%ギ酸を含む水、ならびに0.1%ギ酸を含むアセトニトリルからなっていた。勾配を以下のようにプログラムした:80%Bで0.0~0.5分、80%Bから50%Bまで0.5~3.5分、50%Bから80%Bまで3.5~4.0分、80%Bで保持4.0~4.5分。エレクトロスプレーイオン化を、以下の設定を適用して陰イオンモードで実施した:カーテンガス25、衝突ガスを中に設定、イオンスプレー電圧-4500、温度600℃、イオン源ガス1 50、イオン源ガス2 60。Analyst 1.6.3(Sciex)を使用して多重反応モニタリングモード(MRM)で、各種の滞留時間50(msec)でデータ取得を行った。衝突エネルギー(CE)を-30に設定、デクラスタリング電位(DP)を-80、入射電位(EP)を-10、衝突セル出口電位(CXP)を-10に設定した。以下のMRMトランジションを使用して、GAGを[M-H]-として検出した:D0A0 m/z 378.1>87.0、D0S0 m/z 416.1>138.0、D0a4 m/z 458.1>300.0、D4UA-2S-GlcNCOEt-6S(Iduron Ltd,Manchester,UK)m/z 472.0(ソースフラグメントイオン中)>97.0を内部標準として使用した。個々の二糖種を、市販の参照標準(Iduron Ltd)を使用して、その保持時間及びMRM転移に基づいて同定した。MultiQuant 3.0.2(Sciex)を用いて、内部標準に対するD0A0(HS)、D0S0(HS)及びD0a4(DS/CS)のピーク面積比によりGAGを定量化した。報告されたGAG量を、BCAアッセイ(Pierce)によって測定される総タンパク質レベルに対して正規化した。TfR
mu/huKI値に対する倍数を以下のように計算した:
【数1】
ビヒクル処理されたIds KO、TfR
mu/huKIマウスからの減少パーセントを以下のように計算した:
【数2】
【0224】
ヘパランスルフェート(HS)及びデルマタンスルフェート(DS)検量線
D0a4(DS/CS)、D0A0(HS)、及びD0S0(HS)の純粋な標準をアセトニトリル:水50/50(v/v)に溶解して、1mg/mLストックを生成した。PBSにおける8点希釈曲線を、0.12ng~1000ngの範囲で作成した。続いて、内部標準D4UA-2S-GlcNCOEt-6S(20ng)を各段階希釈液に添加した。次いで、試料を95℃で10分間煮沸し、次いで、回転させて粒子状物質をペレット化した。上清を、室温において3364xgで5分間回転させることによって、30kD MWCOセルロースアセテートフィルタープレート(Millipore、MSUN03010)を使用して濾過した。得られたフロースルーをガラスバイアル中で等量のアセトニトリルと混合し、上記のように質量分析によって分析した。
【0225】
結果
IgG:IDSの薬物動態学的プロファイルを
図4~
図6に示す。IgG:IDSの血清曝露を
図4に示し、用量依存的効果を示す。IgG:IDS脳PKプロファイルを
図5に示し、最大濃度が投与後4~8時間で観察された。IgG:IDS肝臓PKレベルを
図6に示し、IgG:IDSは良好な肝臓取込みを示した。
【0226】
薬力学的効果を調べるために、TfR
mu/hu KIマウスに1、3、または10mg/kgのIgG:IDSの単回静脈内投与を行い、7日後に肝臓、CSF、及び脳のGAGレベル(総GAGレベル、HSレベル、及びDSレベル)を評価した(
図7~
図9を参照されたい)。肝臓、CSF及び脳におけるTfR
mu/huKI総GAGレベルの倍数を表2に示す。肝臓、CSF及び脳におけるIds KO、TfR
mu/huKI+ビヒクル総GAGレベルからの減少パーセントを表3に示す。肝臓、CSF及び脳におけるIds KO、TfR
mu/huKI+ビヒクルHS及びDSレベルからの減少率パーセントをそれぞれ表4及び5に示す。
【0227】
【0228】
【0229】
【0230】
【0231】
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【表6-4】
【表6-5】
【表6-6】
【0232】
全ての刊行物、特許及び特許文献は、参照により個々に組み込まれるかのように、参照により本明細書に組み込まれる。本開示は、様々な特定の好ましい実施形態及び技術を参照して説明されている。しかしながら、本発明の主旨及び範囲内に留まりながら、多くの変形及び修正が行われ得ることを理解されたい。
【配列表】
【国際調査報告】