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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-16
(54)【発明の名称】シリンダオイルの生成
(51)【国際特許分類】
   B63H 20/14 20060101AFI20240208BHJP
   F02B 67/00 20060101ALI20240208BHJP
   F16N 39/00 20060101ALI20240208BHJP
   B63H 21/14 20060101ALI20240208BHJP
   B63H 21/38 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
B63H20/14 500
F02B67/00 N
F16N39/00
B63H21/14
B63H21/38 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547873
(86)(22)【出願日】2022-02-10
(85)【翻訳文提出日】2023-08-18
(86)【国際出願番号】 EP2022053288
(87)【国際公開番号】W WO2022171758
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】PA202100158
(32)【優先日】2021-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502209039
【氏名又は名称】エー・ピー・モラー-マースク エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ジュマイン,シャンバ
(72)【発明者】
【氏名】バク ヴァイマル,ヘンリク
(72)【発明者】
【氏名】エンブルトン,マーク パトリック
(57)【要約】
船舶用レシプロ内燃エンジンのシリンダオイルを生成するための方法が開示される。方法は、第1の動粘度及び第1のBNを有する第1の流体を供給することと、第2の動粘度及び第2のBNを有する第2の流体を供給することと、第3の動粘度及び第3のBNを有する第3の流体を供給することと、生成するシリンダオイルの目標動粘度を特定するデータを取得することと、生成するシリンダオイルの目標BNを特定するデータを取得することと、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体のそれぞれの動粘度及びBNを特定するデータを取得することと、を含む。少なくとも第1の流体、第2の流体、及び第3の流体のそれぞれの動粘度及びBNに基づいて、方法はさらに、目標動粘度に対応する動粘度及び/または目標BNに対応するBNを有するシリンダオイルを生成するために、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定することと、決定した比率で第1の流体、第2の流体、及び第3の流体を調合して、シリンダオイルを生成することと、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶用レシプロ内燃エンジンのシリンダオイルを生成するための方法であって、
第1の動粘度及び第1のBNを有する第1の流体を供給することと、
第2の動粘度及び第2のBNを有する第2の流体を供給することと、
第3の動粘度及び第3のBNを有する第3の流体を供給することと、
生成するシリンダオイルの目標動粘度を特定するデータを取得することと、
生成する前記シリンダオイルの目標BNを特定するデータを取得することと、
前記第1の流体、前記第2の流体、及び前記第3の流体のそれぞれの前記動粘度及び前記BNを特定するデータを取得することと、
前記目標動粘度に対応する動粘度及び/または前記目標BNに対応するBNを有するシリンダオイルを生成するために、少なくとも前記第1の流体、前記第2の流体、及び前記第3の流体のそれぞれの前記動粘度及び前記BNに基づいて、前記第1の流体、前記第2の流体、及び前記第3の流体の比率を決定することと、
前記決定した比率で前記第1の流体、前記第2の流体、及び前記第3の流体を調合して、前記シリンダオイルを生成することと、
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記第1の流体、前記第2の流体、及び前記第3の流体の前記比率を前記決定することは、
生成する前記シリンダオイルの前記目標動粘度と、前記第1の流体、前記第2の流体、及び前記第3の流体のそれぞれの前記動粘度と、前記第1の流体、前記第2の流体、及び前記第3の流体のそれぞれの前記BNとに基づいて、上限及び下限を有する前記シリンダオイルのBN範囲を特定すること、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の流体、前記第2の流体、及び前記第3の流体の前記比率を前記決定することは、さらに、
前記シリンダオイルの前記目標BNが、前記特定されたBN範囲の前記上限もしくは前記下限に等しい、または前記特定されたBN範囲の前記上限と前記下限との間にあることを判断することと、
前記目標動粘度及び前記目標BNに対応する前記第1の流体、前記第2の流体、及び前記第3の流体の比率を決定することと、
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の流体、前記第2の流体、及び前記第3の流体の前記比率を前記決定することは、さらに、
前記シリンダオイルの前記目標BNが、前記特定されたBN範囲の前記特定された上限より高いことを判断することと、
前記目標動粘度及び前記特定されたBN範囲の前記上限に対応する前記第1の流体、前記第2の流体、及び前記第3の流体の比率を決定することと、
あるいは、
前記シリンダオイルの前記目標BNが、前記特定されたBN範囲の前記特定された下限より低いことを判断することと、
前記目標動粘度及び前記特定されたBN範囲の前記下限に対応する前記第1の流体、前記第2の流体、及び前記第3の流体の比率を決定することと、
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の流体、前記第2の流体、及び前記第3の流体の前記比率を前記決定することは、
生成する前記シリンダオイルの前記目標BNと、前記第1の流体、前記第2の流体、及び前記第3の流体のそれぞれの前記動粘度と、前記第1の流体、前記第2の流体、及び前記第3の流体のそれぞれの前記BNとに基づいて、上限及び下限を有する前記シリンダオイルの動粘度範囲を特定すること、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の流体、前記第2の流体、及び前記第3の流体の前記比率を前記決定することは、さらに、
前記シリンダオイルの前記目標動粘度が、前記特定された動粘度範囲の前記上限もしくは前記下限に等しい、または前記特定された動粘度範囲の前記上限と前記下限との間にあることを判断することと、
前記目標動粘度及び前記目標BNに対応する前記第1の流体、前記第2の流体、及び前記第3の流体の比率を決定することと、
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の流体、前記第2の流体、及び前記第3の流体の前記比率を前記決定することは、さらに、
前記シリンダオイルの前記目標動粘度が、前記特定された動粘度範囲の前記特定された上限より高いことを判断することと、
前記目標BN及び前記特定された動粘度範囲の前記上限に対応する前記第1の流体、前記第2の流体、及び前記第3の流体の比率を決定することと、
あるいは、
前記シリンダオイルの前記目標動粘度が、前記特定された動粘度範囲の前記特定された下限より低いことを判断することと、
前記目標BN及び前記特定された動粘度範囲の前記下限に対応する前記第1の流体、前記第2の流体、及び前記第3の流体の比率を決定することと、
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
生成する前記シリンダオイルの前記目標動粘度を特定するデータを前記取得することは、エンジン動作パラメータ及び/またはエンジン状態パラメータに基づいて前記目標動粘度を決定することを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
生成する前記シリンダオイルの前記目標BNを特定するデータを前記取得することは、エンジン動作パラメータ及び/またはエンジン状態パラメータに基づいて前記目標BNを決定することを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の流体は、システムオイルであり、及び/または、
前記第2の流体は、添加剤パケット、新鮮なシリンダオイル、もしくは使用済みのシリンダオイルであり、及び/または、
前記第3の流体は、基油である、
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
船舶用レシプロ内燃エンジンを作動させる方法であって、
請求項1~10のいずれかに記載の方法により、シリンダオイルを生成することと、
前記船舶用レシプロ内燃エンジンのシリンダに、前記シリンダオイルを供給することと、
を含む、前記方法。
【請求項12】
シリンダオイルを調製するための装置であって、
調合器と、
第1の動粘度及び第1のBNを有する第1の流体を収容するための第1の容器であって、前記調合器と選択可能に流体連通する前記第1の容器と、
第2の動粘度及び第2のBNを有する第2の流体を収容するための第2の容器であって、前記調合器と選択可能に流体連通する前記第2の容器と、
第3の動粘度及び第3のBNを有する第3の流体を収容するための第3の容器であって、前記調合器と選択可能に流体連通する前記第3の容器と、
コントローラと、
を備え、前記コントローラは、
生成する前記シリンダオイルの目標動粘度を特定するデータを取得することと、
生成する前記シリンダオイルの目標BNを特定するデータを取得することと、
前記第1の流体、前記第2の流体、及び前記第3の流体のそれぞれの前記動粘度及び前記BNを特定するデータを取得することと、
前記目標動粘度に対応する動粘度及び/または前記目標BNに対応するBNを有する前記シリンダオイルを生成するために、前記第1の流体、前記第2の流体、及び前記第3の流体の比率を決定することと、
前記調合器に、前記決定した比率で前記第1の流体、前記第2の流体、及び前記第3の流体を調合させて、前記シリンダオイルを生成することと、
を実行するように構成される、前記装置。
【請求項13】
前記コントローラは、第1のモード及び第2のモードで動作するように構成される、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記第1のモードでの動作時、前記第1の流体、前記第2の流体、及び前記第3の流体の前記比率を決定する際、前記コントローラは、
生成する前記シリンダオイルの前記目標動粘度と、前記第1の流体、前記第2の流体、及び前記第3の流体のそれぞれの前記動粘度と、前記第1の流体、前記第2の流体、及び前記第3の流体のそれぞれの前記BNとに基づいて、上限及び下限を有する前記シリンダオイルのBN範囲を特定することと、
前記シリンダオイルの前記目標BNが、前記特定されたBN範囲の前記上限もしくは前記下限に等しい、または前記特定されたBN範囲の前記上限と前記下限との間にあることを判断することと、
前記目標動粘度及び前記目標BNに対応する前記第1の流体、前記第2の流体、及び前記第3の流体の比率を決定することと、
あるいは、
前記シリンダオイルの前記目標BNが、前記特定されたBN範囲の前記特定された上限より高いことを判断することと、
前記目標動粘度及び前記特定されたBN範囲の前記上限に対応する前記第1の流体、前記第2の流体、及び前記第3の流体の比率を決定することと、
あるいは、
前記シリンダオイルの前記目標BNが、前記特定されたBN範囲の前記特定された下限より低いことを判断することと、
前記目標動粘度及び前記特定されたBN範囲の前記下限に対応する前記第1の流体、前記第2の流体、及び前記第3の流体の比率を決定することと、
を実行するように構成される、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記第2のモードでの動作時、前記第1の流体、前記第2の流体、及び前記第3の流体の前記比率を決定する際、前記コントローラは、
生成する前記シリンダオイルの前記目標BNと、前記第1の流体、前記第2の流体、及び前記第3の流体のそれぞれの前記動粘度と、前記第1の流体、前記第2の流体、及び前記第3の流体のそれぞれの前記BNとに基づいて、上限及び下限を有する前記シリンダオイルの動粘度範囲を特定することと、
前記シリンダオイルの前記目標動粘度が、前記特定された動粘度範囲の前記上限もしくは前記下限に等しい、または前記特定された動粘度範囲の前記上限と前記下限との間にあることを判断することと、
前記目標動粘度及び前記目標BNに対応する前記第1の流体、前記第2の流体、及び前記第3の流体の比率を決定することと、
あるいは、
前記シリンダオイルの前記目標動粘度が、前記特定された動粘度範囲の前記特定された上限より高いことを判断することと、
前記目標BN及び前記特定された動粘度範囲の前記上限に対応する前記第1の流体、前記第2の流体、及び前記第3の流体の比率を決定することと、
あるいは、
前記シリンダオイルの前記目標動粘度が、前記特定された動粘度範囲の前記特定された下限より低いことを判断することと、
前記目標BN及び前記特定された動粘度範囲の前記下限に対応する前記第1の流体、前記第2の流体、及び前記第3の流体の比率を決定することと、
を実行するように構成される、請求項13または請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記コントローラは、エンジン動作パラメータ、エンジン状態パラメータ、及び/または流体状態パラメータを感知する1つ以上のセンサに通信可能に接続される、請求項12~15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記エンジン動作パラメータ、前記エンジン状態パラメータ、または前記流体状態パラメータは、燃料硫黄含有量、エンジン負荷、エンジン速度、相対空気湿度、シリンダの鉄摩耗排出、シリンダ総鉄含量、流体粘度(前記第1の流体、前記第2の流体、前記第3の流体、及び/または前記生成シリンダオイルの流体粘度)、流体BN(前記第1の流体、前記第2の流体、前記第3の流体、及び/または前記生成シリンダオイルの流体BN)、流体温度(前記第1の流体、前記第2の流体、前記第3の流体、及び/または前記生成シリンダオイルの流体温度)、シリンダの潤滑剤残留BN、及びシリンダオイルライナの温度のうちの少なくとも1つである、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
命令を格納する非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、前記命令は、プロセッサにより実行されると、
生成するシリンダオイルの目標動粘度を特定するデータを取得することと、
生成する前記シリンダオイルの目標BNを特定するデータを取得することと、
第1の流体、第2の流体、及び第3の流体のそれぞれの前記動粘度及び前記BNを特定するデータを取得することと、
前記目標動粘度に対応する動粘度及び/または前記目標BNに対応するBNを有する前記シリンダオイルを生成するために、前記第1の流体、前記第2の流体、及び前記第3の流体の比率を決定することと、
前記決定した比率で前記第1の流体、前記第2の流体、及び前記第3の流体を調合する命令を調合器に対し生成することと、
を前記プロセッサに実行させる、前記非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項19】
請求項12~17のいずれか一項に記載の装置及び/または請求項18に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体を備える船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶用レシプロ内燃エンジンのシリンダオイルの生成方法、船舶用レシプロ内燃エンジンの作動方法、シリンダオイルの調製装置、非一時的コンピュータ可読記憶媒体、及びシリンダオイルの調製装置を備えた船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
コンテナ船などの船舶は、重油などを燃料とするエンジンを備える。船舶の毎日のランニングコストに最も大きく影響するのは燃料消費量である。さらに、消費される燃料量は、生成される汚染物質(例えば二酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NO)及び/または硫黄酸化物(SO))の量に直接対応する。燃料消費量は、エンジンの動作効率及び/またはエンジンの動作速度に影響される。
【0003】
船舶のエンジンの構成部品は、運転中に潤滑を必要とする。潤滑の有効性は、エンジンの動作効率に影響し、ひいてはエンジン動作中に消費される燃料量にも影響する。好適な潤滑により、エンジンにおける摩擦損失を低減することができる。
【0004】
船舶用レシプロ内燃エンジン内のシリンダの潤滑に、シリンダオイルが使用される。シリンダオイルには、様々な機能があり、ピストン及び/またはピストンリングと、シリンダライナとの間に油膜を形成して、表面間の摩擦を低減することにより、ピストン、ピストンリング、及びシリンダライナの機械的摩耗を軽減することを含む。
【0005】
ピストン及び/またはピストンリングと、シリンダライナとの間に適切な潤滑特性を有する油膜を形成する能力は、シリンダオイルの粘度に少なくとも部分的に依存する。動粘度がより高いシリンダオイルは、通常、表面間により厚い油膜を成し、動粘度がより低いシリンダオイルは、通常、より薄い膜を成す。しかし、シリンダを潤滑するシリンダオイルに求められる動粘度は、エンジン負荷などのエンジン動作の変化により、エンジン動作中に変わり得る。
【0006】
シリンダオイルのさらなる機能は、硫黄含有燃料の燃焼により形成される硫黄酸を中和することにより、ピストンの材料及びライナの材料の腐食を低減することである。ピストンとシリンダライナの腐食を低減する能力は、シリンダオイルの塩基価(BN)と称されるシリンダオイルのアルカリ度に、少なくとも部分的に依存する。BNは、通常、オイル1グラムあたりの水酸化カリウムミリグラム(mg KOH/g)で表される。船舶用途では、シリンダオイルは、通常、エンジン駆動に使用される燃料の硫黄含有量に応じて、25~140のBNを有する。しかし、燃料の硫黄含有量またはエンジン負荷の変化により、シリンダオイルに求められるBNは、エンジン動作中に変わり得る。
【0007】
船舶には、エンジン動作中の変化する要件に応じて、様々なアルカリ度のシリンダオイルを船上で生成する調合システムが設けられ得る。プロセスは、必要なシリンダオイルの目標BNにより決まり、目標動粘度は考慮されていない。
【0008】
通常、船舶は陸上で潤滑油が積載され、航海中に特性の異なる潤滑油を入手することは不可能である。船上でシリンダオイルを生成するための調合に利用可能な流体によっては、目標BN(例えば現在の動作条件に理想的なBN)と、目標粘度(例えば現在の動作条件に理想的な動粘度)とを同時に有するシリンダオイルを供給することが、必ずしも可能ではない場合がある。
【0009】
本発明の実施形態の目的は、前述の問題に対処しながら、船舶用レシプロ内燃エンジンの動作中の燃料消費量及び生成汚染物質量を削減可能にすることである。
【発明の概要】
【0010】
本発明の第1の態様は、船舶用レシプロ内燃エンジンのシリンダオイルを生成する方法を提供し、方法は、第1の動粘度及び第1のBNを有する第1の流体を供給することと、第2の動粘度及び第2のBNを有する第2の流体を供給することと、第3の動粘度及び第3のBNを有する第3の流体を供給することと、生成するシリンダオイルの目標動粘度を特定するデータを取得することと、生成するシリンダオイルの目標BNを特定するデータを取得することと、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体のそれぞれの動粘度及びBNを特定するデータを取得することと、目標動粘度に対応する動粘度及び/または目標BNに対応するBNを有するシリンダオイルを生成するために、少なくとも第1の流体、第2の流体、及び第3の流体のそれぞれの動粘度及びBNに基づいて、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定することと、決定した比率で第1の流体、第2の流体、及び第3の流体を調合して、シリンダオイルを生成することと、を含む。
【0011】
前述の方法により、コントローラに提供される情報、例えば調合に利用可能な流体のパラメータに応じた動粘度及びBNを有するシリンダオイルの生成が可能であることを、本発明者らは確認した。調合する流体の粘度及びBNの両方を考慮することにより、目標動粘度に対応する動粘度及び目標BNに対応するBNのうちの少なくとも一方を有するシリンダオイルを生成する方法を、本発明者らは考案した。
【0012】
さらに、実施例では、シリンダオイルを供給するための調合に利用可能な流体では目標動粘度及び目標BNが達成できない場合でも、方法により、望ましい特性を有するシリンダオイルの生成が可能である。例えば、目標動粘度及び目標BNの両方を有するシリンダオイルを供給するように利用可能な流体を調合することができない場合、本明細書で提供される実施例では、目標動粘度に対応する動粘度と、利用可能な調合可能流体の特性に基づいた目標BNに近いBNとを有するシリンダオイル、または目標BNに対応するBNと、利用可能な調合可能流体の特性に基づいた目標動粘度に近い動粘度とを有するシリンダオイルが供給される。
【0013】
任意で、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定することは、生成するシリンダオイルの目標動粘度と、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体のそれぞれの動粘度と、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体のそれぞれのBNとに基づいて、上限及び下限を有するシリンダオイルのBN範囲を特定することを含む。
【0014】
有利なことに、これらの実施例では、目標動粘度は、目標BNよりも重要視される(例えば動粘度はBNよりも優先してユーザに選択される)。したがって、方法は、調合に利用可能な流体の特性に応じて、生成シリンダオイルが、目標動粘度に対応する動粘度と、目標BNに対応するまたは近いBNとを有するように実行される。
【0015】
任意で、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定することは、さらに、シリンダオイルの目標BNが、特定されたBN範囲の上限もしくは下限に等しい、または特定されたBN範囲の上限と下限との間にあることを判断し、目標動粘度及び目標BNに対応する第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定することを含む。
【0016】
有利なことに、これらの実施例では、利用可能な流体を調合して、目標動粘度に対応する動粘度及び目標BNに対応するBNを有するシリンダオイルを供給することが可能であると判断される。したがって、方法は、これらの特性を有するシリンダオイルが生成されるように、利用可能な流体を調合することを含む。
【0017】
任意で、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定することは、さらに、シリンダオイルの目標BNが、特定されたBN範囲の特定された上限より高いことを判断し、目標動粘度及び特定されたBN範囲の上限に対応する第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定することを含む。
【0018】
これらの実施例では、利用可能な流体を調合して、目標動粘度に対応する動粘度及び目標BNに対応するBNを有するシリンダオイルを供給することが不可能であると判断される。例えば、調合に利用可能な流体を使用して、目標BNより高いBNを有するシリンダオイルを供給することのみが可能である。しかし、有利なことに、方法は、目標動粘度に対応する動粘度及び目標BNに近いBNを有するシリンダオイルを供給する。
【0019】
任意で、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定することは、さらに、シリンダオイルの目標BNが、特定されたBN範囲の特定された下限より低いことを判断し、目標動粘度及び特定されたBN範囲の下限に対応する第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定することを含む。
【0020】
これらの実施例では、利用可能な流体を調合して、目標動粘度に対応する動粘度及び目標BNに対応するBNを有するシリンダオイルを供給することが不可能であると判断される。例えば、調合に利用可能な流体を使用して、目標BNより低いBNを有するシリンダオイルを供給することのみが可能である。しかし、有利なことに、方法は、目標動粘度に対応する動粘度及び目標BNに近いBNを有するシリンダオイルを供給する。
【0021】
任意で、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定することは、生成するシリンダオイルの目標BNと、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体のそれぞれの動粘度と、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体のそれぞれのBNとに基づいて、上限及び下限を有するシリンダオイルの動粘度範囲を特定することを含む。
【0022】
有利なことに、これらの実施例では、目標BNは、目標動粘度よりも重要視される(例えばBNは動粘度よりも優先してユーザに選択される)。したがって、方法は、調合に利用可能な流体の特性に応じて、生成シリンダオイルが、目標BNに対応するBNと、目標動粘度に対応するまたは近い動粘度とを有するように実行される。
【0023】
任意で、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定することは、さらに、シリンダオイルの目標動粘度が、特定された動粘度範囲の上限もしくは下限に等しい、または特定された動粘度範囲の上限と下限との間にあることを判断し、目標動粘度及び目標BNに対応する第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定することを含む。
【0024】
有利なことに、これらの実施例では、利用可能な流体を調合して、目標動粘度に対応する動粘度及び目標BNに対応するBNを有するシリンダオイルを供給することが可能であると判断される。したがって、方法は、これらの特性を有するシリンダオイルが生成されるように、利用可能な流体を調合することを含む。
【0025】
任意で、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定することは、さらに、シリンダオイルの目標動粘度が、特定された動粘度範囲の特定された上限より高いことを判断し、目標BN及び特定された動粘度範囲の上限に対応する第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定することを含む。
【0026】
これらの実施例では、利用可能な流体を調合して、目標動粘度に対応する動粘度及び目標BNに対応するBNを有するシリンダオイルを供給することが不可能であると判断される。例えば、調合に利用可能な流体を使用して、目標動粘度より高い動粘度を有するシリンダオイルを供給することのみが可能である。しかし、有利なことに、方法は、目標BNに対応するBN及び目標動粘度に近い動粘度を有するシリンダオイルを供給する。
【0027】
任意で、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定することは、さらに、シリンダオイルの目標動粘度が、特定された動粘度範囲の特定された下限より低いことを判断し、目標BN及び特定された動粘度範囲の下限に対応する第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定することを含む。
【0028】
これらの実施例では、利用可能な流体を調合して、目標動粘度に対応する動粘度及び目標BNに対応するBNを有するシリンダオイルを供給することが不可能であると判断される。例えば、調合に利用可能な流体を使用して、目標動粘度より低い動粘度を有するシリンダオイルを供給することのみが可能である。しかし、有利なことに、方法は、目標動粘度に対応する動粘度及び目標BNに近いBNを有するシリンダオイルを供給する。
【0029】
任意で、生成するシリンダオイルの目標動粘度を特定するデータを取得することは、エンジン動作パラメータ及び/またはエンジン状態パラメータに基づいて目標動粘度を決定することを含む。
【0030】
任意で、生成するシリンダオイルの目標BNを特定するデータを取得することは、エンジン動作パラメータ及び/またはエンジン状態パラメータに基づいて目標BNを決定することを含む。
【0031】
任意で、方法は、船舶上などの沖で実行される。有利なことに、陸上の場合と比べて、船舶上で方法を実行することにより、動作中のエンジンの要件を満たすようにシリンダオイルの特性を適合させることが可能となる。
【0032】
任意で、第1の流体は、システムオイルである。実施例では、システムオイルは、100℃で10~15mm/秒の動粘度を有する。通常、システムオイルは、SAE粘度グレードSAE30に相当する動粘度を有し、例えばシステムオイルは、100℃で11~12mm/秒の動粘度を有する。実施例では、システムオイルは、使用済みシステムオイルなど、少なくとも部分的に使用されたシステムオイルである。使用済みのシステムオイルを使用することにより、エンジンの運転コストが削減される。別の実施例では、システムオイルは、新鮮な(未使用の)オイルである。システムオイルは、通常、5~30のBN、例えば5~10などのBNを有する。システムオイルが新鮮なシリンダオイルであるような実施例では、システムオイルは、5~8のBNを有する。
【0033】
任意で、第2の流体は、添加剤パケット、新鮮なシリンダオイル、または少なくとも部分的に使用されたシリンダオイルである。実施例では、第2の流体は、基油及び1つ以上の添加剤を含む添加剤パッケージであり、1つ以上の添加剤には、例えば、過塩基性清浄剤及び/または中性清浄剤(金属アルカリ塩)、ならびに任意で他の性能の添加剤が挙げられる。これらの実施例では、添加剤パッケージは、通常、高い動粘度(多くの場合100℃で50~200mm/秒、例えば100mm/秒以上)及び高いBN(多くの場合150~400)を有する。実施例では、第2の流体は、未使用のシリンダオイル(例えばピストン及びシリンダライナの潤滑にまだ使用されていないシリンダオイル)であり、100℃で16~21mm/秒の動粘度、及び15~145のBNを有する。実施例では、第2の流体は、使用済みのシリンダオイル(例えばある時点でピストン及びシリンダライナの潤滑に使用されたシリンダオイル)である。
【0034】
任意で、第3の流体は、基油である。実施例では、基油は、100℃で3~8mm/秒の動粘度を有する。通常、基油は、SAE粘度グレードSAE20に相当する動粘度を有し、例えば基油は、100℃で4~7mm/秒の動粘度を有する。有利なことに、基油は通常、低コストであり、よって、調合に基油を含めることにより、シリンダオイルの生成コストが削減される。基油は通常、1未満のBN、例えば0.5未満、または0.1未満のBNを有する。
【0035】
任意で、第1の流体、第2の流体、または第3の流体のうちの少なくとも1つは、例えば使用済みオイルなど、少なくとも部分的に使用されたオイルである。使用済みのシステムオイル使用することにより、エンジンの運転コストが削減される。
【0036】
任意で、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体のうちの少なくとも1つは、モノグレードオイルであり、例えば、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体のそれぞれは、モノグレードオイルである。任意で、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体のうちの少なくとも1つは、マルチグレードオイルであり、例えば、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体のそれぞれは、マルチグレードオイルである。
【0037】
任意で、シリンダオイルは、全損シリンダオイルである。
【0038】
任意で、生成シリンダオイルは、100℃で14mm/秒以下の動粘度を有する。動粘度の低下した(例えばエンジン製造業者が推奨する最小動粘度を下回る)シリンダオイルを供給することにより、エンジン動作中の摩擦損失を低減するシリンダオイル潤滑が可能になることを、本発明者らは特定した。シリンダオイルの粘度がより低いということは、ピストンとシリンダライナとの間に形成される油膜がより薄いことを意味し、流体摩擦の減少につながる。摩擦損失の低減は、エンジン動作中の燃料消費量の低減につながり、ひいては生成される汚染物質量の削減につながる。
【0039】
驚くべきことに、動粘度の低下が、ピストン及び/またはシリンダライナの摩耗を制御するオイルの能力に重大な悪影響を及ぼさず、実施例ではエンジン構成部品の摩耗をより良く制御できることを、本発明者らはさらに特定した。よって、本発明者らは、船舶用レシプロ内燃エンジンに確実に使用できる低動粘度のシリンダオイルを、初めて供給した。
【0040】
本明細書に記載されるすべての動粘度は、別段の記載がない限り、100℃の温度で測定される。100℃でのオイルの動粘度は、センチストークス(cSt)で表すことができる。したがって、100℃で14mm/秒以下の動粘度を有するシリンダオイルは、14cStと同じである。実施例では、シリンダオイルは、13.5mm/秒以下、または13mm/秒以下、または12.5mm/秒以下、または10mm/秒以下の動粘度を有する。実施例では、シリンダオイルは、8mm/秒以上、例えば8mm/秒~14mm/秒、または8mm/秒~12.5mm/秒、または8mm/秒~10mm/秒の動粘度を有する。
【0041】
任意で、生成シリンダオイルは、SAE粘度グレードSAE40、またはSAE30、またはSAE20に対応する動粘度を有する。シリンダオイルは、エンジンのシリンダ内のピストンライナ及びピストンリングの潤滑に使用するのに適した任意の粘度指数を有する。実施例では、シリンダオイルは、59~120の粘度指数を有する。
【0042】
任意で、生成シリンダオイルは、15~160mg KOH/g、または25~150mg KOH/g、または40~140mg KOH/g、または50~120mg KOH/gのBNを有する。
【0043】
本発明の第2の態様は、船舶用レシプロ内燃エンジンの作動方法を提供し、方法は、前述の方法によりシリンダオイルを生成することと、船舶用レシプロ内燃エンジンのシリンダにシリンダオイルを供給することと、を含む。
【0044】
任意で、シリンダオイルは、100℃で14mm/秒以下の動粘度を有する。驚くべきことに、2ストローククロスヘッドエンジンなどの船舶用内部レシプロエンジンの安全な動作は、14mm/秒未満の粘度を有するシリンダオイルで維持できることを、本発明者らは特定した。
【0045】
任意で、シリンダオイルの動粘度は、船舶用レシプロ内燃エンジンに関して製造業者が推奨する最小シリンダオイル動粘度よりも低い。
【0046】
任意で、船舶用レシプロ内燃エンジンは、60%以下のエンジン負荷で動作している。例えば、エンジンは、エンジンの最大速度よりも大幅に低い速度で動作している場合がある(時に「スロースティーミング(低速蒸気運転)」と称される)。別の実施例では、船舶用レシプロ内燃エンジンは、60%を超える、例えば最大70%または80%のエンジン負荷で動作している。
【0047】
任意で、船舶用レシプロ内燃エンジンは、2ストローククロスヘッドエンジンである。実施例では、2ストローククロスヘッドエンジンは、低速エンジンである。
【0048】
本発明の第3の態様は、シリンダオイルの調製装置を提供し、装置は、調合器と、第1の動粘度及び第1のBNを有する第1の流体を収容するための第1の容器であって、調合器と選択可能に流体連通する当該第1の容器と、第2の動粘度及び第2のBNを有する第2の流体を収容するための第2の容器であって、調合器と選択可能に流体連通する当該第2の容器と、第3の動粘度及び第3のBNを有する第3の流体を収容するための第3の容器であって、調合器と選択可能に流体連通する当該第3の容器と、コントローラと、を備え、コントローラは、生成するシリンダオイルの目標動粘度を特定するデータを取得することと、生成するシリンダオイルの目標BNを特定するデータを取得することと、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体のそれぞれの動粘度及びBNを特定するデータを取得することと、目標動粘度に対応する動粘度及び/または目標BNに対応するBNを有するシリンダオイルを生成するために、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定することと、調合器に、決定した比率で第1の流体、第2の流体、及び第3の流体を調合させて、シリンダオイルを生成することと、を実行するように構成される。
【0049】
任意で、コントローラは、第1のモード(例えば「粘度モード」)及び第2のモード(例えば「BNモード」)で、選択的に動作するように構成される。
【0050】
任意で、コントローラは、例えばユーザ入力デバイスから受信したユーザ入力に基づいて、第1のモードまたは第2のモードで動作するように構成される。実施例では、ユーザ入力デバイスは、ユーザインターフェースの一部である。
【0051】
任意で、コントローラはさらに、第3の動作モードで動作するように構成される。任意で、コントローラは、例えば入力デバイスから受信したユーザ入力に基づいて、第3のモードで動作するように構成される。
【0052】
任意で、第1のモードでの動作時、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定する際、コントローラは、生成するシリンダオイルの目標動粘度と、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体のそれぞれの動粘度と、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体のそれぞれのBNとに基づいて、上限及び下限を有するシリンダオイルのBN範囲を特定するように構成される。
【0053】
実施例では、シリンダオイルのBN範囲を特定することは、以下の等式を解くことを含む。
【数1】

BNC1は、シリンダオイルの第1の計算BNである。BNC2は、シリンダオイルの第2の計算BNである。BNC3は、シリンダオイルの第3の計算BNである。ViC(T)は、目標動粘度に対応する値である(例えば値は目標動粘度に比例する値である、または値は生成するシリンダオイルの目標動粘度に等しい)。Viは、第1の流体の動粘度に対応する値である(例えば値は第1の流体の動粘度に比例する値である、または値は第1の流体の動粘度に等しい)。Viは、第2の流体の動粘度に対応する値である(例えば値は第2の流体の動粘度に比例する値である、または値は第2の流体の動粘度に等しい)。Viは、第3の流体の動粘度に対応する値である(例えば値は第3の流体の動粘度に比例する値である、または値は第3の流体の動粘度に等しい)。BNは、第1の流体のBNである、または第1の流体のBNに対応する値(例えば第1の流体のBNに比例する値)である。BNは、第2の流体のBNである、または第2の流体のBNに対応する値(例えば第2の流体のBNに比例する値)である。BNは、第3の流体のBNである、または第3の流体のBNに対応する値(例えば第3の流体のBNに比例する値)である。
【0054】
実施例では、範囲を特定することは、さらに、BNC1、BNC2、及びBNC3のうちの最高値を特定することと、特定した最高値を、特定中のBN範囲の上限として設定することと、をさらに含む。実施例では、範囲を特定することは、さらに、BNC1、BNC2、及びBNC3のうちの2番目に高い値を特定することと、特定した2番目に高い値を、特定中のBN範囲の下限として設定することと、をさらに含む。
【0055】
任意で、コントローラは、シリンダオイルの目標BNが、特定されたBN範囲の上限もしくは下限に等しい、または特定されたBN範囲の上限と下限との間にあることを判断するように構成される。よって、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定する際、コントローラは、目標動粘度及び目標BNに対応する(例えばBNC(T)は生成するシリンダオイルの目標BNであり、ViC(T)及びBNC(T)の両方に対応する)第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定するように構成される。
【0056】
任意で、コントローラは、シリンダオイルの目標BNが、特定されたBN範囲の特定された上限より高いことを判断するように構成される。よって、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定する際、コントローラは、目標動粘度及び特定されたBN範囲の上限に対応する(例えばViC(T)、ならびにBNC1、BNC2、及びBNC3のうちの特定された最高値に対応する)第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定するように構成される。
【0057】
任意で、コントローラは、シリンダオイルの目標BNが、特定されたBN範囲の特定された下限より低いことを判断するように構成される。よって、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定する際、コントローラは、目標動粘度及び特定されたBN範囲の下限に対応する(例えばViC(T)、ならびにBNC1、BNC2、及びBNC3のうちの特定された2番目に高い値に対応する)第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定するように構成される。
【0058】
任意で、第2のモードでの動作時、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定する際、コントローラは、生成するシリンダオイルの目標BNと、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体のそれぞれの動粘度と、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体のそれぞれのBNとに基づいて、上限及び下限を有するシリンダオイルの動粘度範囲を特定するように構成される。
【0059】
実施例では、シリンダオイルの動粘度範囲を特定することは、以下の等式を解くことを含む。
【数2】

ViC1は、シリンダオイルの動粘度に対応する第1の計算値である(例えば値はシリンダオイルの第1の動粘度に比例する値である)。ViC2は、シリンダオイルの動粘度に対応する第2の計算値である(例えば値はシリンダオイルの第2の動粘度に比例する値である)。ViC3は、シリンダオイルの動粘度に対応する第3の計算値である(例えば値はシリンダオイルの第3の動粘度に比例する値である)。BNC(T)は、生成するシリンダオイルの目標BNである。等式4~6で使用される他の記号は、上記の等式1~3で使用されるものと同じ意味を有する。
【0060】
実施例では、範囲を特定することは、さらに、ViC1、ViC2、及びViC3のうちの最低値を特定することと、特定した最低値を、特定中の動粘度範囲の下限として設定することと、をさらに含む。実施例では、範囲を特定することは、さらに、ViC1、ViC2、及びViC3のうちの2番目に低い値を特定することと、特定した2番目に低い値を、特定中の動粘度範囲の上限として設定することと、をさらに含む。
【0061】
任意で、コントローラは、シリンダオイルの目標動粘度が、特定された動粘度範囲の上限もしくは下限に等しい、または特定された動粘度範囲の上限と下限との間にあることを判断するように構成される。よって、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定する際、コントローラは、目標動粘度及び目標BNに対応する(例えばViC(T)及びBNC(T)の両方に対応する)第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定するように構成される。
【0062】
任意で、コントローラは、シリンダオイルの目標動粘度が、特定された動粘度範囲の特定された上限より高いことを判断するように構成される。よって、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定する際、コントローラは、目標BN及び特定された動粘度範囲の上限に対応する(例えば BNC(T)、ならびにViC1、ViC2、及びViC3のうちの特定された2番目に低い値に対応する)第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定するように構成される。
【0063】
任意で、コントローラは、シリンダオイルの目標動粘度が、特定された動粘度範囲の特定された下限より低いことを判断するように構成される。よって、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定する際、コントローラは、目標BN及び特定された動粘度範囲の下限に対応する(例えばBNC(T)、ならびにViC1、ViC2、及びViC3のうちの特定された最低値に対応する)第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定するように構成される。
【0064】
任意で、コントローラは、前述の第1の動作モードで動作するように構成されるが、必ずしも第2の動作モードでも動作するように構成されるわけではない(例えばコントローラは、「粘度モード」で動作するように構成されるが、必ずしも「BNモード」でも代替的に動作するように構成されるわけではない)。任意で、コントローラは、前述の第2の動作モードで動作するように構成されるが、必ずしも第1の動作モードでも動作するように構成されるわけではない(例えばコントローラは、「BNモード」で動作するように構成されるが、必ずしも「粘度モード」でも代替的に動作するように構成されるわけではない)。
【0065】
任意で、コントローラは、エンジン動作パラメータ、エンジン状態パラメータ、及び/または流体状態パラメータを感知する1つ以上のセンサに通信可能に接続される。
【0066】
任意で、エンジン動作パラメータ、エンジン状態パラメータ、または流体状態パラメータは、燃料硫黄含有量、エンジン負荷、エンジン速度、相対空気湿度、シリンダの鉄摩耗排出、シリンダ総鉄含量、流体粘度(第1の流体、第2の流体、第3の流体、及び/または生成シリンダオイルの流体粘度)、流体BN(第1の流体、第2の流体、第3の流体、及び/または生成シリンダオイルの流体BN)、流体温度(第1の流体、第2の流体、第3の流体、及び/または生成シリンダオイルの流体温度)、シリンダの潤滑剤残留BN、及びシリンダオイルライナの温度のうちの少なくとも1つである。
【0067】
任意で、コントローラは、ユーザがデータを入力するユーザ入力デバイスなどの入力デバイスに、通信可能に接続され、データには、例えば、流体パラメータ(例えば第1の流体、第2の流体、または第3の流体の動粘度及び/またはBN)、目標シリンダオイルパラメータ(例えば目標動粘度及び/または目標BN)、エンジン動作パラメータ(前述の通り)、エンジン状態パラメータ(前述の通り)、及びモード選択(例えば第1の動作モード‐「粘度モード」または第2の動作モード‐「BNモード」で動作するようにコントローラに指示する)が挙げられる。
【0068】
本発明の第4の態様は、命令を格納する非一時的コンピュータ可読記憶媒体を提供し、命令は、プロセッサにより実行されると、生成するシリンダオイルの目標動粘度を特定するデータを取得することと、生成するシリンダオイルの目標BNを特定するデータを取得することと、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体のそれぞれの動粘度及びBNを特定するデータを取得することと、目標動粘度に対応する動粘度及び/または目標BNに対応するBNを有するシリンダオイルを生成するために、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定することと、決定した比率で第1の流体、第2の流体、及び第3の流体を調合する命令を調合器に対し生成することと、をプロセッサに実行させる。
【0069】
任意で、非一時的コンピュータ可読記憶媒体は、命令を格納し、命令は、プロセッサにより実行されると、前述の方法のうちのいずれかをプロセッサに実行させる。
【0070】
本発明の第5の態様は、第3の態様に関して前述された装置、及び/または第4の態様に関して前述された非一時的コンピュータ可読記憶媒体を備える船舶を提供する。
【0071】
任意で、船舶は、コンテナ船、タンカー、バラ積み乾貨物船、または冷凍船などの貨物船である。任意で、船舶は、旅客船である。
【0072】
任意で、船舶は、コンテナ船である。
【0073】
本発明の一態様に関連して説明される特徴は、互換性がある範囲で他のあらゆる態様と組み合わせて、明示的に開示される。
【0074】
本発明のさらなる特徴及び利点は、添付図面を参照する単なる例として提供される本発明の好ましい実施形態の下記の説明から、明らかになるであろう。
【0075】
ここで、本発明の実施形態が、単なる例として添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0076】
図1】本発明の実施形態による、船舶の実施例の概略側面図を示す。
図2】本発明の実施形態による、シリンダオイルを調製するための例示的な装置の概略図を示す。
図3】本発明の実施形態による、シリンダオイルを調製するための例示的な装置の概略図を示す。
図4】本発明の実施形態による、シリンダオイルを生成する方法の実施例を図示するフローチャートを示す。
図5】本発明の別の実施形態による、シリンダオイルを生成する方法の実施例を図示するフローチャートを示す。
図6】本発明の実施形態による、船舶用レシプロ内燃エンジンを作動させる方法の実施例を図示するフローチャートを示す。
図7】本発明の実施形態による、例示的なコンピュータ可読媒体の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0077】
図1は、実施例による、船舶の例の概略側面図を示す。この実施形態では、船舶は、コンテナ船1である。他の実施形態では、船舶は、タンカー、バラ積み乾貨物船、もしくは冷凍船などの別形態の貨物船、または旅客船、またはシリンダオイルを使用する任意の他の船舶であり得る。
【0078】
船舶1は、船体2と、船体2の内部に1つ以上のエンジン室3とを有する。船舶1は、エンジン室3に配置された1つ以上の大型内燃エンジン4、例えば4ストロークまたは2ストロークの自己着火燃焼エンジン4などにより、動力を供給される。エンジン(複数可)4は、推進機構(1つ以上のプロペラなど)を駆動する。船舶1は、船舶1上の様々な電力消費機器に電力及び/または熱を供給する1つ以上の補助エンジン(発電機セットとして知られる)も備え得る。船舶1は、エンジン(複数可)4にシリンダオイルを供給するためのシリンダオイル調製装置10、20も備える。装置10、20は、図2に示される装置または図3に示される装置など、本発明の実施形態として本明細書に説明される任意のシリンダオイル調製装置であり得る。
【0079】
エンジン4は、船舶用2ストローク内燃エンジンである。図1に示される実施例では、エンジン4は、船舶用重油により動力を供給される。別の実施例(図示せず)では、船舶用2ストローク内燃エンジンは、船舶用軽油、船舶用ディーゼル油、船舶用ガスオイル、液体天然ガス、液体石油ガス、バイオ燃料、メタノール、エタノール、アンモニア、水素、メタン、バイオメタン、またはこれらの組み合わせなど、重油以外の燃料により動力を供給される。これらの例では、燃料は、天然燃料でも合成燃料でもよい。2ストローク内燃エンジンは、ディーゼルユニフローエンジンまたはオットーサイクルエンジンなど、任意の適切なエンジンである。当業者は船舶1の構成部品及びシステムに精通しているため、これらのさらなる詳述は、簡潔さのために省略する。
【0080】
図2は、実施例による、シリンダオイルを調製するための装置10の概略図を示す。装置10は、図1に示される船舶のエンジン4または本明細書で説明されるエンジン4の任意の変形形態といったエンジンのシリンダのシリンダライナに、シリンダオイルを供給するためのものである。
【0081】
概して、装置10は、シリンダオイルを供給するために流体を調合する調合器110と、第1の動粘度及び第1のBNを有する第1の流体を収容するための第1の容器120であって、調合器110と選択可能に流体連通する当該第1の容器120と、第2の動粘度及び第2のBNを有する第2の流体を収容するための第2の容器130であって、調合器110と選択可能に流体連通する当該第2の容器130と、第3の動粘度及び第3のBNを有する第3の流体を収容するための第3の容器140であって、調合器110と選択可能に流体連通する当該第3の容器140と、コントローラ150と、を備える。コントローラ150は、生成するシリンダオイルの目標動粘度を特定するデータを取得することと、生成するシリンダオイルの目標BNを特定するデータを取得することと、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体のそれぞれの動粘度及びBNを特定するデータを取得することと、目標動粘度に対応する動粘度及び/または目標BNに対応するBNを有するシリンダオイルを生成するために、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定することと、調合器に、決定した比率で第1の流体、第2の流体、及び第3の流体を調合させて、シリンダオイルを生成することと、を実行するように構成される。
【0082】
より具体的には、図2では、第1の容器120は、バルブ122を介して調合器110に接続され、第1の流体は、バルブ122を通して第1の容器120から調合器110に流れる。バルブは、第1の容器120から調合器110への第1の流体の流れを制御するためのものである。例えば、バルブは、第1の容器120から調合器110への第1の流体の流れを防止するまたは妨げるために閉鎖可能であり、第1の容器120から調合器110への第1の流体の流れを可能にするために開放可能である。よって、第1の容器120は、調合器110と選択可能に流体連通している。任意で、バルブ122を操作して、第1の容器120から調合器110へ第1の流体の制限された流れを可能にすることができる(例えばバルブ122は「部分的に」閉じる、または「部分的に」開くことができる)。本明細書でさらに説明されるように、バルブは、手動で、またはコントローラを介して、操作可能である。別の実施例(図示せず)では、第1の容器120は、第1の流体を第1の容器120から調合器110に圧送するポンプを介して、調合器110と選択可能に流体連通している。
【0083】
実施例では、第1の容器120は、システムオイルなどの第1の流体を収容する。システムオイルは、船舶用低速2ストロークディーゼルエンジンのクランクケース潤滑システムに使用するのに適したオイルである。システムオイルは、未使用のオイル(例えばクランクケース潤滑システムで使用されていないオイル)であってもよく、この場合、第1の容器120は、通常、未使用のシステムオイルを貯蔵するための貯蔵タンクである。あるいは、システムオイルは、少なくとも部分的に使用されたシステムオイル、例えばクランクケース潤滑システムの周りを循環したシステムオイルである。この場合、実施例では、第1の容器120は、使用済みシステムオイルを貯蔵するための貯蔵タンクである。このような使用済みシステムオイルの貯蔵タンクは、実施例では、クランクケースと流体接続されて、クランクケースから使用済みシステムオイルを受け取る。実施例では、使用済みシステムオイルの貯蔵タンクは、使用済みシステムオイルをクランクケースから使用済みシステムオイルタンクに圧送するポンプを介して、クランクケースに接続される。システムオイルが少なくとも部分的に使用されたシステムオイルである別の実施例では、第1の容器120は、エンジンのクランクケース内に存在する、またはエンジンのクランクケースである。例えば、第1の容器120は、エンジンのクランクケース内のサンプである。
【0084】
図2では、第2の容器130は、バルブ132を介して調合器110に接続され、第2の流体は、バルブ132を通して第2の容器130から調合器110に流れる。より具体的には、バルブは、第2の容器130から調合器110への第2の流体の流れを制御するためのものである。例えば、バルブは、第2の容器130から調合器110への第2の流体の流れを防止するまたは妨げるために閉鎖可能であり、第2の容器130から調合器110への第2の流体の流れを可能にするために開放可能であり得る。よって、第2の容器130は、調合器110と選択可能に流体連通している。任意で、バルブ132を操作して、第2の容器130から調合器110へ第2の流体の制限された流れを可能にすることができる(例えばバルブ132は「部分的に」閉じる、または「部分的に」開くことができる)。本明細書でさらに説明されるように、バルブ132は、手動で、またはコントローラを介して、操作可能である。別の実施例(図示せず)では、第2の容器130は、第2の流体を第2の容器130から調合器110に圧送するポンプを介して、調合器110に接続される。
【0085】
実施例では、第2の容器130は、添加剤パッケージ、未使用のシリンダオイル、または少なくとも部分的に使用されたシリンダオイル(例えばピストン及びシリンダライナを潤滑するためにシリンダに供給され、その後回収されたシリンダオイル)など、第2の流体を収容する。
【0086】
第2の流体が添加剤パッケージである場合、第2の容器130は、添加剤パッケージを貯蔵するための貯蔵タンクである。添加剤パッケージは、通常、基油及び1つ以上の添加剤を含み、1つ以上の添加剤には、例えば、過塩基性清浄剤及び/または中性清浄剤(金属アルカリ塩)、ならびに任意で他の性能の添加剤が挙げられる。添加剤パッケージは、通常、高い動粘度(多くの場合100℃で50~200mm/秒、例えば100mm/秒以上)及び高いBN(多くの場合150~400)を有する。
【0087】
第2の流体が未使用のシリンダオイル(例えばピストン及びシリンダライナの潤滑にまだ使用されていないシリンダオイル)である場合、第2の容器130は、シリンダオイルを貯蔵するための貯蔵タンクである。通常、未使用のシリンダオイルは、16~21mm/秒の動粘度、及び15~145のBNを有する。
【0088】
第2の流体は、使用済みのシリンダオイル(例えばある時点でピストン及びシリンダライナの潤滑に使用されたシリンダオイル)であり、第2の容器130は、いくつかの実施例では、使用済みシリンダオイルを貯蔵するための貯蔵タンクである。別の実施例では、シリンダから調合器へ直接、使用済みシリンダオイルが代替的または付加的に供給される。この場合、第2の容器130は、エンジンのシリンダである。
【0089】
図2では、第3の容器140は、バルブ142を介して調合器110に接続され、第3の流体は、バルブ142を通して第3の容器140から調合器110に流れる。より具体的には、バルブは、第3の容器140から調合器110への第3の流体の流れを制御するためのものである。例えば、バルブは、第3の容器140から調合器110への第3の流体の流れを防止するまたは妨げるために閉鎖可能であり、第3の容器140から調合器110への第3の流体の流れを可能にするために開放可能であり得る。よって、第3の容器140は、調合器110と選択可能に流体連通している。任意で、バルブ142を操作して、第3の容器140から調合器110へ第3の流体の制限された流れを可能にすることができる(例えばバルブ142は「部分的に」閉じる、または「部分的に」開くことができる)。本明細書でさらに説明されるように、バルブ142は、手動で、またはコントローラを介して、操作可能である。別の実施例(図示せず)では、第3の容器140は、第3の流体を第3の容器140から調合器110に圧送するポンプを介して、調合器110に接続される。
【0090】
実施例では、第3の容器140は、基油などの第3の流体を収容する。第3の流体が基油である場合、第3の容器140は、基油を貯蔵するための貯蔵タンクである。基油は、通常、潤滑生産物を供給するために他の成分と組み合わせるのに適したオイルである。基油は、通常、4~7mm/秒の動粘度を有する。実施例では、基油は、未使用の基油(例えば機械構成部品の潤滑に使用されていない基油)である。別の実施例では、基油は、使用済みまたは再利用の基油(例えば機械構成部品の潤滑に使用済みであり、任意で調合器110に供給する前に添加剤及び/または汚染物質が除去された基油)である。
【0091】
装置10は、装置10を制御するコントローラ150を備える。この実施例では、コントローラ150は、第1の容器120から調合器110への第1の流体の流れを制御するための第1のバルブ122と、第2の容器130から調合器110への第2の流体の流れを制御するための第2のバルブ132と、第3の容器140からの第3の流体の流れを制御するための第3のバルブ142と、調合器110と、のそれぞれに通信可能に接続され、これらのそれぞれを制御する。いくつかの実施例では、これらの要素のうちのいくつかまたはすべては、コントローラ150以外のエンティティにより制御される。
【0092】
コントローラ150は、シリンダオイルを供給するために必要な流体の比率を決定するように構成される。例えば、コントローラ150は、シリンダオイルを供給するために調合する第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定するように構成され、当該比率は、シリンダオイルを供給するために調合器110に送達する第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の量に対応する。
【0093】
シリンダオイルを供給するための流体の比率を決定する目的で、コントローラ150は、メモリ及び1つ以上のプロセッサを備える。メモリ回路は、機械可読命令を格納するように構成され、命令は、1つ以上のプロセッサにより実行されると、生成するシリンダオイルの目標動粘度を特定するデータを取得することと、生成するシリンダオイルの目標BNを特定するデータを取得することと、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体のそれぞれの動粘度及びBNを特定するデータを取得することと、目標動粘度に対応する動粘度及び/または目標BNに対応するBNを有するシリンダオイルを生成するために、少なくとも第1の流体、第2の流体、及び第3の流体のそれぞれの動粘度及びBNに基づいて、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定することと、決定した比率で第1の流体、第2の流体、及び第3の流体を調合する命令を調合器(調合器110など)に対し生成することと、をコントローラ150に実行させる。実施例では、コントローラ150の1つ以上のプロセッサは、1つ以上のマイクロプロセッサ(複数可)を含む。
【0094】
コントローラ150はさらに、調合器に、決定した比率で第1の流体、第2の流体、及び第3の流体を調合させて、シリンダオイルを生成するように構成される。図2の装置10では、コントローラ150は、決定した比率に従って、制御された量の第1の流体を調合器110に供給するように、第1のバルブ122を制御することと、決定した比率に従って、制御された量の第2の流体を調合器110に供給するように、第2のバルブ132を制御することと、決定した比率に従って、制御された量の第3の流体を調合器110に供給するように、第3のバルブ142を制御することと、を実行するように構成される。比率は、通常、質量比であるが(よってコントローラ150は、調合器110に送達する第1の流体の質量及び第2の流体の質量を決定するように構成される)、いくつかの事例では、体積比であり得る(よってコントローラ150は、調合器110に送達する第1の流体の体積及び第2の流体の体積を決定するように構成される)。
【0095】
実施例では、コントローラ150は、1つ以上の他のエンティティ(図示せず)から受信したデータに基づいて、流体の比率を決定するように構成され、データは、少なくとも、生成するシリンダオイルの目標動粘度を特定するデータと、生成するシリンダオイルの目標BNを特定するデータと、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体のそれぞれの動粘度及びBNを特定するデータと、を含む。
【0096】
いくつかの実施例では、コントローラ150は、このようなデータを、1つ以上のユーザ入力デバイス(複数可)(図示せず)から受信するように構成され、当該1つ以上のユーザ入力デバイス(複数可)には、生成するシリンダオイルの目標動粘度、生成するシリンダオイルの目標BN、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の動粘度及びBNのうちの少なくとも1つに関する情報が、ユーザにより提供される。適切なユーザ入力デバイスには、タッチスクリーン、キーボード、ホイール、及びジョイスティックが含まれる。実施例では、1つ以上のユーザ入力デバイス(複数可)は、ユーザインターフェースの一部として設けられる。
【0097】
コントローラ150は、前述のデータのうちの少なくともいくつかを示すデータを受信すると、コントローラ150のメモリに格納されたアルゴリズムに基づいて、目標粘度及び/または目標BNを有するシリンダオイルを供給するために必要な流体の比率を決定するように構成される。
【0098】
いくつかの実施例では、コントローラは、図3に関してより詳細に説明されるように、エンジン状態パラメータ、エンジン動作パラメータ、または流体パラメータを示すデータを受信するように構成される。別の実施例では、コントローラは、第1の流体、第2の流体、生成シリンダオイル、またはこれらの任意の組み合わせに関する流体状態パラメータを示すデータを受信するように構成される。例えば、コントローラは、第1の流体、第2の流体、生成シリンダオイル、またはこれらの任意の組み合わせの動粘度、アルカリ度(BN)、及び/または温度を示すデータを受信するように構成される。
【0099】
実施例では、コントローラ150は、14mm/秒以下の目標動粘度を有するシリンダオイルを供給するために、調合器110に供給する第1の流体の量、第2の流体の量、及び第3の流体の量を決定するように構成される。
【0100】
図3は、別の実施例による、シリンダオイルを調製するための装置20の概略図を示す。図3に示される装置20のいくつかの要素は、図2に関連して既に説明された要素に対応し、その場合、参照記号には、図2で使用される参照記号に100を加えたものが使用される。
【0101】
概して、装置20は、シリンダオイルを供給するために流体を調合する調合器210と、第1の動粘度及び第1のBNを有する第1の流体を収容するための第1の容器220であって、調合器210と選択可能に流体連通する当該第1の容器220と、第2の動粘度及び第2のBNを有する第2の流体を収容するための第2の容器230であって、調合器210と選択可能に流体連通する当該第2の容器230と、第3の動粘度及び第3のBNを有する第3の流体を収容するための第3の容器240であって、調合器210と選択可能に流体連通する当該第3の容器240と、所望の目標粘度及び/または目標BNを有するシリンダオイルを供給するために、調合器210に供給する第1の流体の量、第2の流体の量、及び第3の流体の量を決定するように構成されたコントローラ250と、を備える。実施例では、目標動粘度は、14mm/秒以下である。
【0102】
より具体的には、装置20は、システムを通して流体を圧送する1つ以上のポンプを備える。1つ以上のポンプは、任意の適切な形態を有し得る。1つ以上のポンプは、任意で、流体の流れを制御するそれぞれのバルブ(図示せず)とともに設けられる。このようなバルブがない場合、装置の要素間の選択的流体連通、例えば各容器220、230、240と調合器210との選択的流体連通に、1つ以上のポンプが使用され、ポンプが各容器220、230、240から調合器210への流体の流れを制御する。いくつかの実施例では、ポンプが動作していない時(例えばポンプが圧送していない時)、ポンプを通る流れまたは逆流があり得るが、このような流れまたは逆流は程度が小さく、調合器210に供給される流体の量に実質的に影響を及ぼさない。よって、容器220、230、240のそれぞれは、調合器210と選択可能に流体連通している。
【0103】
この実施例では、装置20は、第1の容器220から調合器210に第1の流体を圧送するポンプ222を備える。本明細書でさらに説明されるように、ポンプ222は、コントローラ250により選択的に制御される。第1の容器220は、図2に示される装置10の第1の容器に対応し、図3に示される実施例による装置で機能するように必要に応じて適合される。
【0104】
装置20は、第2の容器230から調合器210に第2の流体を圧送するポンプ232を備える。本明細書でさらに説明されるように、ポンプ232は、コントローラ250により選択的に制御される。第2の容器230は、図2に示される装置10の第2の容器130に対応し、図3に示される実施例による装置で機能するように必要に応じて適合される。
【0105】
装置20は、第3の容器240から調合器210に第3の流体を圧送するポンプ242を備える。本明細書でさらに説明されるように、ポンプ242は、コントローラ250により選択的に制御される。第3の容器240は、図2に示される装置10の第3の容器140に対応し、図3に示される実施例による装置で機能するように必要に応じて適合される。
【0106】
いくつかの実施例(図示せず)では、第1の流体を圧送するポンプ222及び/または第2の流体を圧送するポンプ232及び/または第3の流体を圧送するポンプ242は省略される。例えば、これらはバルブに置き換えられ、第1の流体及び/または第2の流体及び/または第3の流体は、重力の影響下で、または装置20の別のポンプが作動することにより、調合器210に流れる。
【0107】
別の実施例(図示せず)では、各容器220、230、240はそれぞれのポンプを介して調合器210に接続されるのではなく、容器220、230、240のそれぞれに対して選択的に接続及び切断される1つのポンプを介して、容器220、230、240のそれぞれは調合器210に接続され、ポンプは調合器210の1つの入口に流体接続される。作動時、例えば、ポンプは、第1の容器220に接続され、第2の容器230及び第3の容器240から切断され、第1の容器220から調合器210に、ある量の第1の流体を圧送する。続いて、ポンプは、第1の容器220から切断され、第2の容器230に接続され、第2の容器230から調合器210に、ある量の第2の流体を圧送する。続いて、ポンプは、第2の容器230から切断され、第3の容器240に接続され、第3の容器240から調合器210に、ある量の第3の流体を圧送する。
【0108】
図2に示される実施例と同様に、装置20は、装置20を制御するコントローラ250を備える。
【0109】
コントローラ250には、第1の流体(例えばシステムオイル)、第2の流体(例えば添加剤パッケージ)、及び第3の流体(基油)の必要な割合を決定するアルゴリズムが提供され、これにより、調合器210内に、目標動粘度に対応する動粘度及び/または目標BNに対応するBNを有する調製されたシリンダオイルが得られる。例えば、コントローラ250は、命令を格納する非一時的コンピュータ可読媒体を備え、命令は、コントローラ250のプロセッサ(図示せず)により実行されると、前述のように、調製されたシリンダオイルを供給するために、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の必要な割合を決定することを、プロセッサに実行させる。
【0110】
コントローラ250は、調合器210及びポンプ222、232、242を制御して、適切な量のそれぞれの流体を調合器210に送達するように構成される。例えば、コントローラ250は、コントローラ250により決定された流体の必要な割合に従って、好適な量の流体を調合器210に供給するように、各ポンプを一定期間作動させるように構成される。
【0111】
実施例では、コントローラ250は、異なる粘度及び/またはBNを有する第2のシリンダオイルを供給するために、流体の比率を再計算するように構成される。例えば、第1のシリンダオイルを調合した後、コントローラ250が、シリンダライナの温度の変化及び/または燃料の硫黄含有量の変化を示すデータ、及び/または入力データ生成器(ユーザ入力デバイスまたはセンサなど)からのデータを受信すると、コントローラ250は、変化した状態、前のシリンダオイルとは異なる動粘度及び/またはBNでシリンダライナを潤滑するために、新たな目標動粘度に対応する動粘度及び/または新たな目標BNに対応する適切なBNを有する第2のシリンダオイルを生じる第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の必要な割合を決定するように構成される。
【0112】
コントローラ250は、エンジンに関する情報を示すデータを生成する1つ以上の入力データ生成器から、エンジンに関する情報を示すデータを受信する。実施例では、データのうちの少なくともいくつかは、パラメータを検出する1つ以上のセンサにより提供される。実施例では、データのうちの少なくともいくつかは、メモリから提供され、メモリは、ユーザが、例えばユーザインターフェース(図示せず)の一部として設けられるユーザ入力デバイスを用いてデータを入力することにより、提供される情報を含む。実施例では、データは、コントローラ250のメモリに含まれるルックアップテーブルから取得される。
【0113】
コントローラ250は、入力データ生成器アレイ280の1つ以上の入力データ生成器に通信可能に接続され、これらからデータを受信する。各入力データ生成器は、エンジン動作パラメータ及び/またはエンジン状態パラメータ及び/または流体パラメータを示すデータを、コントローラ250に提供する。通常、各入力データ生成器は、エンジン動作パラメータ、エンジン状態パラメータ、または流体パラメータ(または当該パラメータを示すパラメータ)を感知するセンサであり、あるいはエンジン動作パラメータまたはエンジン状態パラメータを示すデータを含むメモリである。例えば、入力データ生成器は、コントローラ250に伝達され得るパラメータ(例えばエンジン4に供給される硫黄含有燃料)に関する情報が入力されたメモリを備え得る。入力データ生成器またはコントローラ250は、通常、メモリまたはセンサから受信したデータと、コントローラ250または入力データ生成器に格納されたルックアップテーブルとに基づいて、エンジン動作パラメータまたはエンジン状態パラメータを特定する。
【0114】
図3では、入力データ生成器アレイ280は、燃料の硫黄含有量を示すデータを生成する入力データ生成器282と、エンジン4のエンジン負荷を示すデータを生成する入力データ生成部284と、エンジン4のエンジン速度を示すデータを生成する入力データ生成器286と、シリンダ内の相対空気湿度を示すデータを生成する入力データ生成器288と、シリンダの鉄摩耗放出を示すデータを生成する入力データ生成器290と、シリンダの潤滑剤残留BNを示すデータを生成する入力データ生成器292と、シリンダオイルライナの温度を示すデータを生成する入力データ生成器294と、を備える。実施例では、図2に関連して前述されたように、入力データ生成器のうちの1つ以上は、ユーザインターフェースに含まれるユーザ入力デバイスである。
【0115】
実施例では、入力データ生成器は、エンジン動作パラメータまたはエンジン状態パラメータを感知して、パラメータを示すデータを生成するセンサ、あるいはエンジン動作パラメータまたはエンジン状態パラメータの関連パラメータを感知するセンサであり、当該関連パラメータに基づいて、センサ及び/またはコントローラ250は、エンジン動作パラメータまたはエンジン状態パラメータを特定する。例えば、燃料の硫黄含有量を示すデータを生成する入力データ生成器282は、例えば燃料油の硫黄含有量など、エンジン4に供給される燃料油の特性を感知する燃料センサ(例えばインラインまたはオフラインの蛍光X線油中硫黄分析器)であり、相対空気湿度を示すデータを生成する入力データ生成器288は、相対空気湿度を感知するためにエンジン4のシリンダ内またはシリンダ近くに配置された湿度計であり、シリンダの鉄摩耗放出を示すデータを生成する入力データ生成器290は、シリンダ内の鉄摩耗放出を検出するように配置された磁力計であり、シリンダの潤滑剤残留BNを示すデータを生成する入力データ生成器292は、シリンダ内のシリンダオイルを分析するように配置された赤外線分光計であり、シリンダオイルライナの温度を示すデータを生成する入力データ生成器294は、エンジン4のシリンダ内またはシリンダ近くに配置された温度を感知する温度センサ、例えば温度計、熱電対、またはサーミスタなどである。
【0116】
別の実施例では、コントローラ250は、前述の入力データ生成器の任意の組み合わせに通信可能に接続され、これらからデータを受信する。
【0117】
別の実施例(図示せず)では、コントローラ250は、システムオイル、添加剤パケット、基油、生成シリンダオイル、またはこれらの任意の組み合わせに関する流体状態パラメータを示すデータを受信するように構成される。コントローラ250は、1つ以上の入力データ生成器に通信可能に接続され、これらから流体状態パラメータを示すデータを受信する。通常、各入力データ生成器は、流体状態パラメータ(または当該パラメータを示すパラメータ)を感知するセンサであり、または流体状態パラメータに関する情報を含むメモリである。
【0118】
流体状態パラメータには、流体の動粘度、アルカリ度(BN)、及び/または温度が含まれる。実施例では、動粘度を示すデータを生成する入力データ生成器は、流体の動粘度を検出するように配置された粘度センサであり、アルカリ度を示すデータを生成する入力データ生成器は、流体のアルカリ度を検出するように配置された赤外線分光計であり、流体温度を示すデータを生成する入力データ生成器は、流体内または流体近くに配置された温度を感知する温度センサ、例えば温度計、熱電対、またはサーミスタなどである。
【0119】
実施例では、コントローラ250は、生成シリンダオイルの目標BNを取得または特定するように構成される。コントローラ250は、情報(例えば燃料の硫黄含有量を示す入力データ生成器282からのデータ)を受信し、コントローラ250のメモリに格納されたルックアップテーブルにから、またはコントローラ250のメモリに格納されたアルゴリズムを使用することにより、目標BNを特定するように構成される。
【0120】
調合器210は、調合器で調製されたシリンダオイルを貯蔵するための貯蔵タンク260と、選択可能に流体連通している。貯蔵タンク260は、例えばデイタンクである。調合器210と貯蔵タンク260との間には、調製されたシリンダオイルを貯蔵タンク260に圧送するポンプ212が配置される。コントローラ250は、調製されたシリンダオイルを調合器210から貯蔵タンク260に圧送することを、ポンプ212に選択的に実行させるように構成される。別の実施例(図示せず)では、コントローラ250は、ポンプ212に通信可能に接続されておらず、ポンプ212は、代わりに別個のコントローラにより制御される。
【0121】
貯蔵タンク260は、エンジン4のシリンダライナ270と選択可能に流体連通している。貯蔵タンク260とシリンダライナ270との間には、貯蔵されたシリンダオイルを貯蔵タンク260からシリンダライナ270に圧送するポンプ262が配置される。図3の実施例では、ポンプ262は、調合装置20の一部ではないコントローラにより制御される。別の実施例(図示せず)では、調合装置20のコントローラ250は、貯蔵されたシリンダオイルを貯蔵タンク260からシリンダライナ270に圧送することを、ポンプ262に選択的に実行させるように構成される。
【0122】
別の実施例(図示せず)では、貯蔵タンク260が省略され、調製された流体が調合器210からシリンダライナ270に直接供給されるように、調合器210は、ポンプを介してシリンダライナ270に流体接続される。
【0123】
実施例(図示せず)では、装置20は、ユーザが装置20/コントローラ250の動作モードを選択するためのユーザ入力デバイスを備える。これらの実施例では、ユーザ入力デバイスは、コントローラ250に通信可能に接続され、選択された動作モードを示すデータをコントローラ250に送信するように構成される。コントローラ250は、ユーザが第1の動作モードを選択したことを示すデータを受信すると、装置20を第1のモードで動作させるように構成され、コントローラ250は、ユーザが第2の動作モードを選択したことを示すデータを受信すると、装置20を第2のモードで動作させるように構成される。いくつかの実施例では、さらなる動作モードが選択可能であり、動作可能である。別の実施例では、コントローラ250及び装置20は、前述のような入力データ生成器から受信したデータに基づく動作モードで動作させられる。
【0124】
図4は、実施例による船舶用レシプロ内燃エンジンのシリンダオイルを生成するための方法を図示するフローチャートを示す。方法30は、第1の動粘度及び第1のBNを有する第1の流体を供給すること(310)と、第2の動粘度及び第2のBNを有する第2の流体を供給すること(312)と、第3の動粘度及び第3のBNを有する第3の流体を供給すること(314)と、生成するシリンダオイルの目標動粘度を特定するデータを取得すること(316)と、生成するシリンダオイルの目標BNを特定するデータを取得すること(318)と、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体のそれぞれの動粘度及びBNを特定するデータを取得すること(320)と、を含む。方法30は、さらに、目標動粘度に対応する動粘度及び/または目標BNに対応するBNを有するシリンダオイルを生成するために、少なくとも第1の流体、第2の流体、及び第3の流体のそれぞれの動粘度及びBNに基づいて、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定すること(322)を含む。方法は、さらに、シリンダオイルを生成するために、決定した比率で第1の流体、第2の流体、及び第3の流体を調合すること(324)を含む。実施例では、図4の方法30は、前述のような装置を使用して実行される。
【0125】
調合(324)の比率は、調合器110、210に供給される第1の流体の量、調合器110、210に供給される第2の流体の量、及び調合器110、210に供給される第3の流体の量に依存する。
【0126】
第1の流体を供給すること(310)は、通常、第1の流体、例えばシステムオイルを含む第1の容器120、220から、制御された量の第1の流体を供給することを含む。制御された量は、決定した比率で流体を調合するのに必要な第1の流体の量に対応する。実施例における供給(310)は、コントローラ150、250により制御され、例えばコントローラ150、250は、ポンプに、ある量の第1の流体を第1の容器120、220から調合器110、210に圧送させる。別の実施例では、供給(310)は手動で制御され、例えばオペレータがバルブ122またはポンプ222を操作して、制御された量を調合器110、210に供給する。
【0127】
第2の流体を供給すること(312)は、通常、第2の流体、例えば添加剤パケットを含む第2の容器130、230から、制御された量の第2の流体を供給することを含む。制御された量は、決定した比率で流体を調合するのに必要な第2の流体の量に対応する。実施例における供給(312)は、コントローラ150、250により制御され、例えばコントローラ150、250は、ポンプに、ある量の第2の流体を第2の容器130、230から調合器110、210に圧送させる。別の実施例では、供給(312)は手動で制御され、例えばオペレータがバルブ132またはポンプ232を操作して、制御された量を調合器110、210に供給する。
【0128】
第3の流体を供給すること(314)は、通常、第3の流体、例えば基油を含む第3の容器140、240から、制御された量の第3の流体を供給することを含む。制御された量は、決定した比率で流体を調合するのに必要な第3の流体の量に対応する。実施例における供給(314)は、コントローラ150、250により制御され、例えばコントローラ150、250は、ポンプに、ある量の第3の流体を第3の容器140、240から調合器110、210に圧送させる。別の実施例では、供給(314)は手動で制御され、例えばオペレータがバルブ142またはポンプ242を操作して、制御された量を調合器110、210に供給する。
【0129】
生成するシリンダオイルの目標動粘度を特定するデータを取得すること(316)は、通常、コントローラ150、250が目標動粘度を示すデータを受信することを含む。実施例では、データは、ユーザ入力デバイスから受信される(例えばコントローラ150、250に通信可能に接続されたユーザ入力デバイスにユーザが目標動粘度を入力した)、またはセンサから受信される(例えばコントローラ150、250に通信可能に接続されたセンサによりデータが生成される)。
【0130】
生成するシリンダオイルの目標BNを特定するデータを取得すること(318)は、通常、コントローラ150、250が目標BNを示すデータを受信することを含む。実施例では、データは、ユーザ入力デバイスから受信される(例えばコントローラ150、250に通信可能に接続されたユーザ入力デバイスにユーザが目標BNを入力した)、またはセンサから受信される(例えばコントローラ150、250に通信可能に接続されたセンサによりデータが生成される)。
【0131】
第1の流体、第2の流体、及び第3の流体のそれぞれの動粘度及びBNを特定するデータを取得すること(320)は、通常、コントローラ150、250が、第1の流体の動粘度、第1の流体のBN、第2の流体の動粘度、第2の流体のBN、第3の流体の動粘度、及び第3の流体のBNを示すデータを受信することを含む。実施例では、データは、1つ以上のユーザ入力デバイス(複数可)から受信される(例えばコントローラ150、250に通信可能に接続されたユーザ入力デバイスに、ユーザが前述のパラメータのうちの少なくともいくつかに関するデータを入力した)、またはセンサから受信される(例えばコントローラ150、250に通信可能に接続された、前述の流体パラメータを感知する1つ以上のセンサがデータを生成した)。いくつかの実施例では、取得すること(320)は、ユーザ入力デバイス及び1つ以上のセンサの両方から、データを受信することを含む。
【0132】
シリンダオイルを生成するための第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定すること(322)は、少なくとも第1の流体、第2の流体、及び第3の流体のそれぞれの動粘度及びBNに基づく。実施例では、決定は、生成するシリンダオイルの目標粘度にも基づく。別の実施例では、決定は、生成するシリンダオイルの目標BNにも基づく。決定(322)の実施例は、下記で説明される図5に示される。
【0133】
制御された量の第1の流体、第2の流体、及び第3の流体を調合器110、210が受け取ると、決定した比率で調合すること(324)は、決定した比率で流体を混合するように調合器110、210を作動させ、これにより目標動粘度に対応する動粘度及び/または目標BNに対応するBNを有するシリンダオイルを供給することを含む。
【0134】
図5は、シリンダオイルを生成する方法40を図示するフローチャートを示す。方法40のいくつかの要素は、図4で説明された方法30の要素に対応する。これが当てはまる場合、図5の参照記号には、図4で使用される参照記号に100を加えたものが使用される。
【0135】
方法40は、方法30のステップ310~318にそれぞれ対応するステップ410~418を実行することを含む。方法40は、さらに、方法30のステップ320を参照して前述されたように、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体のそれぞれの動粘度及びBNを特定するデータを取得すること(420)を含む。
【0136】
方法40は、さらに、シリンダオイルを生成するための第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定すること(422)を含む。
【0137】
シリンダオイルを生成するための第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定すること(422)は、コントローラ150、250及び/または装置10、20の動作モードの選択を示すデータを受信すること(450)を含む。通常、データを受信すること(450)は、ユーザ入力デバイス(例えばユーザインターフェースに含まれる)からユーザの動作選択を示すデータを受信することを含み、ユーザの動作選択は、装置10、20が第1のモードで動作すべきか、または第2のモードで動作すべきかを示す。別の実施例(図示せず)では、データを受信すること(450)は、装置10、20が第3のモードで動作すべきことを示すデータを受信することを含む。
【0138】
ユーザが第1の動作モード選択を入力すると、方法40は、第1の動作モードがユーザにより選択されたことを判断すること(454)を含む。実施例では、第1の動作モードは、「粘度モード」と称される。
【0139】
第1の動作モードでは、シリンダオイルを生成するための第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定すること(422)は、生成するシリンダオイルの目標動粘度と、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体のそれぞれの動粘度と、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体のそれぞれのBNとに基づいて、上限及び下限を有するシリンダオイルのBN範囲を特定すること(454)を含む。
【0140】
実施例では、シリンダオイルのBN範囲を特定すること(454)は、以下の等式を計算することを含む(記号は発明の概要で与えられた意味を有する)。
【数3】
【0141】
等式を解くことで、計算値BNC1、BNC2、及びBNC3が得られる。BN範囲を特定すること(454)は、さらに、BNC1、BNC2、及びBNC3のうちの最高値を特定して、特定した最高値を、特定中のBN範囲の上限として設定することと、BNC1、BNC2、及びBNC3のうちの2番目に高い値を特定して、特定した2番目に高い値を、特定中のBN範囲の下限として設定することと、を含む。
【0142】
実施例では、方法40は、シリンダオイルの目標BNが、特定されたBN範囲の上限もしくは下限に等しい、または特定されたBN範囲の上限と下限との間にあることを判断すること(456)を含む。これらの実施例では、方法40は、さらに、目標動粘度及び目標BNに対応する(例えばViC(T)及びBNC(T)の両方に対応する)第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定すること(458)を含む。
【0143】
実施例では、方法40は、シリンダオイルの目標BNが、特定されたBN範囲の特定された上限より高いことを判断すること(460)を含む。これらの実施例では、方法40は、さらに、目標動粘度及び特定されたBN範囲の上限に対応する(例えばViC(T)、ならびにBNC1、BNC2、及びBNC3のうちの特定された最高値に対応する)第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定すること(462)を含む。
【0144】
実施例では、方法40は、シリンダオイルの目標BNが、特定されたBN範囲の特定された下限より低いことを判断すること(464)を含む。これらの実施例では、方法40は、さらに、目標動粘度及び特定されたBN範囲の下限に対応する(例えばViC(T)、ならびにBNC1、BNC2、及びBNC3のうちの特定された2番目に高い値に対応する)第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定すること(466)を含む。
【0145】
ユーザが第2の動作モード選択を入力すると、方法40は、第2の動作モードがユーザにより選択されたことを判断すること(468)を含む。実施例では、第2の動作モードは、「BNモード」と称される。
【0146】
第2の動作モードでは、シリンダオイルを生成するための第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定すること(422)は、生成するシリンダオイルの目標BNと、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体のそれぞれの動粘度と、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体のそれぞれのBNとに基づいて、上限及び下限を有するシリンダオイルの動粘度範囲を特定すること(470)を含む。
【0147】
実施例では、シリンダオイルの動粘度範囲を特定すること(470)は、以下の等式を計算することを含む(記号は発明の概要で与えられた意味を有する)。
【数4】
【0148】
等式を解くことで、計算値ViC1、ViC2、及びViC3が得られる。動粘度範囲を決定すること(470)は、さらに、ViC1、ViC2、及びViC3のうちの最低値を特定して、特定した最低値を、特定中のVi範囲の下限として設定することと、ViC1、ViC2、及びViC3のうちの2番目に低い値を特定して、特定した2番目に低い値を、特定中のVi範囲の上限として設定することと、を含む。
【0149】
実施例では、方法40は、シリンダオイルの目標動粘度が、特定された動粘度範囲の上限もしくは下限に等しい、または特定された動粘度範囲の上限と下限との間にあることを判断すること(472)を含む。これらの実施例では、方法40は、目標動粘度及び目標BNに対応する(例えばViC(T)及びBNC(T)の両方に対応する)第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定すること(474)を含む。
【0150】
実施例では、方法40は、シリンダオイルの目標動粘度が、特定された動粘度範囲の特定された上限より高いことを判断すること(476)を含む。これらの実施例では、方法40は、目標BN及び特定された動粘度範囲の上限に対応する(例えばBNC(T)、ならびにViC1、ViC2、及びViC3のうちの特定された2番目に低い値に対応する)第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定すること(478)を含む。
【0151】
実施例では、方法40は、シリンダオイルの目標動粘度が、特定された動粘度範囲の特定された下限より低いことを判断すること(480)を含む。これらの実施例では、方法40は、目標BN及び特定された動粘度範囲の下限に対応する(例えばBNC(T)、ならびにViC1、ViC2、及びViC3のうちの特定された最低値に対応する)第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定すること(482)を含む。
【0152】
方法40は、さらに、ブロック422で実行された決定の結果に応じて、ブロック458、462、466、474、478、または482に従って決定された比率で第1の流体、第2の流体、及び第3の流体を調合すること(424)を含む。
【0153】
図6は、船舶用レシプロ内燃エンジンを作動させる方法50を図示するフローチャートを示す。方法50は、シリンダオイルを生成すること(510)を含む。シリンダオイル510を生成すること(510)は、前述の方法のうちのいずれかを実行することを含む。方法50は、さらに、生成シリンダオイルを船舶用レシプロ内燃エンジンのシリンダ、例えばシリンダのシリンダライナに、供給すること(520)を含む。供給することは、通常、生成シリンダオイルを貯蔵タンク260(例えばデイタンク)からシリンダライナ270へ圧送することを含む。
【0154】
実施例では、前述の方法のうちのいずれかは、装置10、20のコントローラ150、250により少なくとも部分的に実行され得る。よって、命令を格納する非一時的コンピュータ可読記憶媒体も提供され、命令は、コントローラ150、250のプロセッサにより実行されると、前述の方法をプロセッサに実行させる。
【0155】
図7は、非一時的コンピュータ可読記憶媒体604に格納された命令を実行するように配置されたプロセッサ602の例60を示す。記憶媒体604は、ランダムアクセスメモリなどの揮発性メモリ、または不揮発性メモリを備え得る。あるいは、記憶媒体604は、ハードディスクドライブまたはソリッドステートメモリなどの不揮発性データストレージを含み得る。実施例では、プロセッサ602及び記憶媒体604は、船舶用のシリンダオイル調合装置の一部を成す。実施例では、プロセッサ602及び記憶媒体604は、組み込みコンピューティングシステムの一部を成す。
【0156】
図7の記憶媒体604に格納されたいくつかの命令は、図4で説明された方法30のステップに対応するステップを、プロセッサ602に実行させる。これが当てはまる場合、図7の参照記号には、図4で使用される参照記号に100を加えたものが使用される。
【0157】
命令616を介して、生成するシリンダオイルの目標動粘度を特定するデータを取得するように、プロセッサ602は命令される。これは通常、メモリ604に格納されたデータ、またはユーザ入力デバイスもしくはセンサなどの1つ以上の入力データ生成器からのデータを、取得することを含む。命令618を介して、生成するシリンダオイルの目標BNを特定するデータを取得するように、プロセッサ602は命令される。これは通常、メモリ604に格納されたデータ、またはユーザ入力デバイスもしくはセンサなどの1つ以上の入力データ生成器からのデータを、取得することを含む。命令620を介して、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体のそれぞれの動粘度及びBNを特定するデータを取得するように、プロセッサ602は命令される。これは通常、メモリ604に格納されたデータ、及び/またはユーザ入力デバイスもしくはセンサなどの1つ以上の入力データ生成器からのデータを、取得することを含む。命令622を介して、目標動粘度に対応する動粘度及び/または目標BNに対応するBNを有するシリンダオイルを生成するために、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の比率を決定するように、プロセッサ602は命令される。実施例では、これは、図5に示されるような比率を決定することを含む。命令630を介して、決定した比率で第1の流体、第2の流体、及び第3の流体を調合する命令を調合器に対し生成するように、プロセッサは命令される。実施例では、命令630を介してプロセッサが調合器に対し命令を生成することは、図4を参照して説明されたように、装置に流体を調合させることを含む。
【0158】
実施例では、非一時的コンピュータ可読記憶媒体604は、前述の方法のうちのいずれかのステップを関連コンポーネントにより実行させるステップをプロセッサに実行させる、さらなる命令を含む。
【0159】
別の実施形態では、前述の実施形態のうちの2つ以上が組み合わされ得る。別の実施形態では、一実施形態の特徴が、1つ以上の別の実施形態の特徴と組み合わされ得る。
【0160】
本発明の実施形態は、図示された実施例を特に参照して説明された。しかしながら、説明された実施例に対して、本発明の範囲内で変形及び変更が行われてもよいことが、理解されよう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】